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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1358603
異議申立番号 異議2019-700154  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-27 
確定日 2019-11-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6382461号発明「酢酸含有飲食品及びその製造方法、酢酸含有穀類加工品のための調製用飲食品、酢酸含有飲食品の酸味酸臭抑制・風味増強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6382461号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-5、7〕、6、8、9について訂正することを認める。 特許第6382461号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6382461号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成30年2月5日(優先権主張 平成30年2月1日)の出願であり、同年8月10日にその特許権の設定登録がされ、同年8月29日にその特許公報が発行され、その後平成31年2月27日に特許異議申立人 特許業務法人 藤央特許事務所(以下、「申立人A」という。)、同年2月28日に特許異議申立人 森田弘潤(以下、「申立人B」という)により、それぞれ、特許異議の申立てがされ、令和1年5月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月26日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年9月30日付けで申立人Bより上申書が提出されたものである。
なお、申立人Aは、令和1年8月26日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であることを特徴とする酢酸含有飲食品」と記載されているのを、「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であることを特徴とする、醤油を含有しない酢酸含有飲食品」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「リモネン、テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、リモネン、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」と記載されているのを、「テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上0.2質量%未満である酢酸含有穀類加工品を製造するのに使用され、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有することを特徴とする酢酸含有穀類加工品のための調製用飲食品」と記載されているのを、「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上0.2質量%未満である酢酸含有穀類加工品を製造するのに使用され、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有することを特徴とする酢酸含有穀類加工品のための、醤油を含有しない調製用飲食品」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「リモネン、テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、リモネン、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」と記載されているのを、「テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下となるように酢酸を調整するとともに、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を、以下の分量となるように含有量を調整することを特徴とする酢酸含有飲食品の製造方法」と記載されているのを、「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下となるように酢酸を調整するとともに、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を、以下の分量となるように含有量を調整することを特徴とする、醤油を含有しない酢酸含有飲食品の製造方法」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「リモネン、テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、リモネン、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」と記載されているのを、「テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「酢酸含有飲食品の酸味酸臭を抑制し、かつ、被添加飲食品が本来有する風味を増強する方法」と記載されているのを、「醤油を含有しない酢酸含有飲食品の酸味酸臭を抑制し、かつ、被添加飲食品が本来有する風味を増強する方法」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「リモネン、テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、リモネン、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」と記載されているのを、「テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1)一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1?5、7について、請求項2?5、7は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1?5、7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正事項1、3、5、7について
ア 訂正の目的
訂正事項1、5、7は、訂正前の請求項1、8、9における酢酸含有飲食品について、「醤油を含有しない」ものに限定する訂正であるから、訂正事項1、5、7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、訂正前の請求項6における調製用飲食品について、「醤油を含有しない」ものに限定する訂正であるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の段落【0196】には、
「なお、酢酸含有飲食品としては、酢酸含有量が0.01質量%?0.18質量%の範囲においては、白飯及び煮物料理を調製して試験に供した。白飯は実施例1に準じて調製し、煮物料理は次の処方で調製した。
市販の煮物用調味料(ミツカン社製「追いがつおつゆ(2倍濃縮)」、酢酸換算酸度:0.39質量%、原材料:しょうゆ(本醸造)、果糖ぶどう糖液糖、食塩、砂糖、かつおぶし(粗砕、粉砕)、醸造酢、たん白加水分解物、酵母エキス、濃縮だし(かつおぶし、乾しいたけ)、魚介エキス、こんぶエキス、アルコール、調味料(アミノ酸等))300mL、水700mLを用い、具材として、サトイモ10個(約700g)、豚バラ肉(約275g)、しょうが25gを加え、蓋をして中火で20分煮込み、煮物料理である「里芋と豚バラ肉の煮物(調理後の煮物全量(調味液+具材)1g当りの酢酸含有量は、酢酸換算酸度として、0.059質量%)」(以下、煮物料理)を調製した。」(下線は、当審による。)
と記載されており、酢酸含有飲食品として、醤油を含有しない白飯と、醤油を含有する煮物料理が記載されているところ、訂正事項1、3、5、7は、酢酸含有飲食品又は調製用飲食品のうち、醤油を含有しないものに限定するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、醤油を含有しない酢酸含有飲食品が願書に添付した明細書に記載されているといえるから、醤油を含有しない酢酸含有飲食品のための調製用飲食品も願書に添付した明細書に記載されているといえる。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記アで説示したとおり、訂正事項1、3、5、7は、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項2、4、6、8について
訂正事項2、4、6、8は、訂正前の請求項1、6、8、9において記載されていた、「リモネン、テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、リモネン、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」のうち、「リモネン」を削除するものであって、択一的に記載されていた要素を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2、4、6、8による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
そして、訂正事項2、4、6、8による訂正は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5、7〕、6、8、9について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正後の請求項1?9に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、令和1年7月26日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有し、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であることを特徴とする、醤油を含有しない酢酸含有飲食品。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下
【請求項2】
以下(C)及び(D)から選ばれる少なくとも1種の香気成分をさらに以下の分量含有することを特徴とする請求項1に記載の酢酸含有飲食品。
(C)フルフラール、フルフリルアルコール、2-アセチルフラン、3-メチルフラン、2-メチルフラン及び2-(5H)フラノンから選ばれる少なくとも1種のフラン化合物;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、フルフラールのときに酢酸1部に対して0.0001部以上5部以下、フルフリルアルコール及び2-アセチルフランのときに酢酸1部に対して10ppm部以上15部以下、3-メチルフラン、2-メチルフラン及び2-(5H)フラノンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上15部以下
(D)ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール及びノナナールから選ばれる少なくとも1種の脂肪族アルデヒド類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上15部以下
【請求項3】
前記酢酸含有飲食品の喫食時における酢酸含有量が、0.015質量%以上0.2質量%未満である請求項1または2に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項4】
前記酢酸含有飲食品が、酢酸含有穀類加工品であることを特徴とする請求項3に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項5】
前記酢酸含有穀類加工品が、酢酸を含有する白飯または塩飯であることを特徴とする請求項4に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項6】
喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上0.2質量%未満である酢酸含有穀類加工品を製造するのに使用され、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有することを特徴とする酢酸含有穀類加工品のための、醤油を含有しない調製用飲食品。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下
【請求項7】
前記酢酸含有飲食品が、前記酢酸含有飲食品の喫食時における酢酸含有量が0.2質量%以上5質量%以下である酢酸含有調味料または酢酸含有飲料であることを特徴とする請求項1または2に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項8】
酢酸含有飲食品を製造する方法であって、
喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下となるように酢酸を調整するとともに、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を、以下の分量となるように含有量を調整することを特徴とする、醤油を含有しない酢酸含有飲食品の製造方法。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下
【請求項9】
喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下となるように酢酸を調整するとともに、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を、以下の分量となるように含有量を調整することにより、醤油を含有しない酢酸含有飲食品の酸味酸臭を抑制し、かつ、被添加飲食品が本来有する風味を増強する方法。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?9に係る特許に対して、当審が令和1年5月27日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、申立人Aによる特許異議申立ての証拠の甲第1号証?甲第4号証、甲第6号証?甲第11号証をそれぞれ「甲A1」?「甲A4」、「甲A6」?「甲A11」といい、申立人Bによる特許異議申立ての証拠の甲第1号証、甲第3号証、甲第13号証、甲第15号証、甲第16号証、甲第20号証、甲第24号証?甲第27号証、甲第36号証をそれぞれ「甲B1」、「甲B3」、「甲B13」、「甲B15」、「甲B16」、「甲B20」、「甲B24」?「甲B27」、「甲B36」という。

(1)取消理由1(新規性)
訂正前の請求項1、7?9に係る発明は、甲A1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。
(2)取消理由2(進歩性)
訂正前の請求項1、3?9に係る発明は、甲A1に記載された発明及び甲A9、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)取消理由3(新規性)
訂正前の請求項1、3、8に係る発明は、甲A2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。
(4)取消理由4(進歩性)
訂正前の請求項7に係る発明は、甲A2に記載された発明及び甲A1、B1、B3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(5)取消理由5(進歩性)
訂正前の請求項1、7に係る発明は、甲A3に記載された発明及び甲A1、B1、B3、B16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(6)取消理由6(新規性)
訂正前の請求項1、2、7、8に係る発明は、甲A4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。
(7)取消理由7(進歩性)
訂正前の請求項3?6に係る発明は、甲A4に記載された発明及び甲A6?A8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(8)取消理由8(新規性)
訂正前の請求項1、8に係る発明は、甲B1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。
(9)取消理由9(進歩性)
訂正前の請求項2?7に係る発明は、甲B1に記載された発明及び甲A2、A3、B16、B20、B24?B27、B36に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(10)取消理由10(新規性)
訂正前の請求項1、8に係る発明は、甲B3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。
(11)取消理由11(進歩性)
訂正前の請求項2?7に係る発明は、甲B3に記載された発明及び甲A2、A3、B20、B24?B27、B36に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(12)取消理由12(明確性)
訂正前の請求項1?9は、甲B13、B15を参酌しても、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(13)取消理由13(サポート要件)
訂正前の請求項1?9は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

引用文献一覧
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甲A2:Chinese Journal of Chromatography,2008,Vol.26,No.3,p.285-291
甲A3:Food Chemistry,2015,Vol.167,p.220-228
甲A4:日本食品科学工学会誌、2013年、第60巻、第2号、第59?71頁
甲A6:調理科学、1968年、第1巻、第3号、第131?135頁
甲A7:「しょうゆ分析法 第2版」、日本醤油技術会、昭和41年3月31日発行、第17頁
甲A8:「醸造酢の日本農林規格」、農林水産省、平成20年10月16日改正
甲A9:「マイユ 白ワインビネガー 500ml」、カルディコーヒーファーム オンランショップ、https://kaldi-online.com/item/8722700210832.html
甲A10:「お酢で美肌や便秘の改善!ビネガードリンクの効果・おすすめレシピ」、bibien tv、2017年7月26日、http://bibien.tv/beauty/10128
甲A11:加工酢の商品情報、キューピー醸造株式会社、https://www.kewpie-jyozo.co.jp/product/index06.html
甲B1:特許第5993526号公報
甲B3:特開2001-299263号公報
甲B13:社団法人日本分析化学会編、「ガスクロ自由自在Q&A?分離・検出編?」、丸善株式会社、平成20年8月31日第3刷発行、第186?187頁
甲B15:有機化合物の分析(ガスクロによる分析)、技術情報館「SEKIGIN」、http://sekigin.jp/science/chem/chem_06_04_03_2.html
甲B16:分析報告書、森田弘潤、2019年2月28日甲B20:「醸造物の成分」、財団法人日本醸造協会編集発行、平成11年12月10日、第478?493頁
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甲B24:特開2014-103946号公報
甲B25:特開2010-124696号公報
甲B26:【夏の裏ワザ】ご飯を「ポン酢」で炊いたら超さっぱり!冷めてもウマい!!むしろ冷やしたほうがウマい!!!、https://youpouch.com/2015/07/31/287247/
甲B27:マツコも驚愕した!箸が止まらなくなる「ポン酢ご飯」を【作ってみた】、https://www.lettuceclub.net/weblettuce/article/134450/
甲B36:Food Chemistry,2003, Vol.83,p.619-629

2 甲号証の記載
(1)甲A1
(甲A1-1)(13頁右欄下から5行?14頁右欄2行)
「2.実験方法
(1)試料の調製
1)ハーブ
ハーブは、ディル(Anethum graveolens L.)、ローズマリー(Rosmarinus offcinalis L.)、バジル(Ocimum basilicum L.)の3種類を対象とし、いずれも市販品(エスビー食品(株))のフレッシュハーブを使用した。
2)ハーブを使用したビネガーの調製
各フレッシュハーブは軽く押し洗いし、キッチンペーパーで水気をとり、15.0gを1L容量の保存瓶に入れた。さらにハーブのビネガーに対する重量%が3%になるように、白ワインビネガー(MAILLE、フランス製、エスビー食品(株)、以下、ワインビネガー)を500mL入れた。各ハーブの入ったワインビネガーは3、7、14、21、30、60日間保存し、ハーブを取り出したものを各々ディルビネガー、ローズマリービネガー、バジルビネガーとした。これら3種類を総称して「ハーブビネガー」とした。
3)合わせ酢の調合
合わせ酢は料理書を参考にし、各ハーブビネガー:薄口しょうゆ:水の割合を1.5:0.5:8.0(容量比)として調合した。なお、薄口しょうゆはキッコーマン食品(株)の市販品(食塩相当量18.6g)を使用した。調合した合わせ酢はそれぞれディル合わせ酢、ローズマリー合わせ酢、バジル合わせ酢とした。以下3種類の合わせ酢を総称して「ハーブ合わせ酢」とした。なお、ワインビネガーで調合したものを「合わせ酢」とした。
(2)香気成分の分析
1)フレッシュハーブの香気成分
フレッシュハーブの香気成分は、Direct Sample Introduction(DSI)法により、各フレッシュハーブを約0.01gにカットしてDSI専用のマイクロバイヤル(30μL容)に投入後、DSI専用のライナーにセットしてGC/MSおよびGC/O分析を行った。
GC/MS測定条件はGCMS-QP2010 Ultra((株)島津製作所製)を使用し、キャピラリーカラムはDB-WAX(30m×0.25mm i.d.、膜厚0.25μm、Agilent technologies製)を用いた。カラム温度条件は40℃から3℃/分で230℃まで昇温し、230℃で10分間保持した。注入口およびイオン源温度は230℃とした。
なお、GC/MSの昇温気化注入口としてOPTIC-4(ジーエルサイエンス(株)製)を使用し、昇温気化の注入口昇温条件は60℃/秒で35℃から200℃とした。
2)ハーブビネガーおよびハーブ合わせ酢の香気成分
ハーブビネガーの香気成分は、嗅覚によって知覚される香りとして気相の香気成分をMMSE法により捕集した。すなわち、試料10mLを入れたバイアル瓶(40mL容)の気相に加熱脱着用MonoTrapRSC18TD(以下MT)を投入し、常温で30分間香気成分の捕集を行った。その後、DSI法と同様の専用ライナーにMTをセットし前述の測定条件と同様にGC/MSおよびGC/O分析を行った。
本研究ではハーブ合わせ酢を食した時の香りの表現として、咀嚼するときに生じる香りと共に知覚される複合的な味覚を風味とした。そこでハーブ合わせ酢は、液相の香気成分をハーブビネガーと同様にMMSE法を用いて捕集し、GC/MSおよびGC/O分析を行った。」

(甲A1-2)(15頁左欄2行?23行)
「2)ハーブ合わせ酢の官能評価
ハーブ合わせ酢は、食材と組み合わせて一緒に食べたときの食味について分析型評価および嗜好型評価を行った。
分析型評価では、味覚として「酸味の強さ」と「塩味の強さ」について、嗜好型評価では嗅覚として「香りの好ましさ」、風味として「風味の好ましさ」、さらに「総合評価(美味しさ)」について、7段階尺度による採点法を用いて評価した。
パネルは実践女子大学に在籍する女子学生(21?22歳)30名とした。
評価サンプルは、ハーブ合わせ酢または合わせ酢をジュレにし、生食用ホタテ貝柱またはモッツァレラチーズとジュレをスプーン上で順に盛り合わせたものを使用した。ジュレは、ハーブ合わせ酢または合わせ酢にアガー(パールアガー8、(株)富士商事)を1.5w/v%加え、IHクッキングヒーター(1450W、KZ-KL22C3、パナソニック(株)製)で5分間加熱した後、冷却して調製し、スプーンにのせる量は2gとした。食材の量はジュレの感じ方が同程度になるように検討し、ホタテ貝柱は5g、モッツァレラチーズは2gとした。スプーンにのせた評価サンプルを一口で食させ、サンプルとサンプルの間は水で口をすすぐように指示した。」

(甲A1-3)(15頁右欄7行?9行)
「2)ハーブビネガーの香気成分
7日間保存した3種のハーブビネガーの香気成分、およびその割合を図1に示した。」

(甲A1-4)(16頁)




(甲A1-5)(16頁左欄12行?14行)
「(3)ハーブ合わせ酢の香気成分
ハーブ合わせ酢において、TICCの各香気成分のArea%を図2に示した。」

(甲A1-6)(17頁)




(甲A1-7)(16頁右欄5行?下から4行)
「(4)ハーブ合わせ酢の官能評価
ハーブ合わせ酢のジュレとホタテ貝柱を一緒に食べた場合の官能評価の結果を図3に示した。
その結果、「酸味の強さ」では合わせ酢とローズマリー合わせ酢の間で有意差(p<0.05)が認められ、ローズマリー合わせ酢は「酸味」を和らげる傾向があると思われた。・・・
次にハーブ合わせ酢のジュレとモッツァレラチーズを食べた場合の官能評価の結果を図4に示した。」

(甲A1-8)(17頁)




(甲A1-9)(17頁)




(2)甲A2
(甲A2-1)(286頁左欄7行?18行)
「1.1装置及び材料
クロマトグラフ分離は、DB-WAX溶融シリカキャピラリーカラム(・・・)を備えたTrace GC/MS(・・・)で実施した。SPMEホルダー、並びにポリアクリレート(・・・)、ポリジメチルシロキサン(・・・)、Carboxen-ポリジメチルベンゼン(・・・)、ポリジメチルシロキサン/ジビニルベンゼン(・・・)及びジビニルベンゼン/Carboxen/ポリジメチルベンゼン(・・・)の繊維は、米国のSupelcoから購入した。醤油サンプル(日本のキッコーマン株式会社によって醸造された)は、スーパーマーケットから購入した。」

(甲A2-2)(288?290頁)




(3)甲A3
(甲A3-1)(221頁左欄29行?35行)
「2.1.醤油サンプル
市販醤油の27つのサンプル(9つの異なるブランドから14つの高塩分の液体発酵醤油(HLFSS)、6つの異なるブランドから8つの低塩固体発酵醤油(LSFSS)、5つの異なるブランドから5つの濃口醤油(KSS))を、それらの当初の容器で保存し、抽出前に実験室の冷蔵庫(4℃)で保存した。」

(甲A3-2)(221頁右欄24行?30行)
「2.3 揮発性化合物の抽出
27つの醤油からの揮発性化合物の抽出は、Yanらの方法(2008年)を基に修正された新しく公開されたプロトコル(Fengら、2014年)に従って行われた。この研究では、75μmのCarboxen/ポリジメチルシロキサン繊維を備えたSPME Trisplus自動サンプラー(CAR/PDMS、Supelco社、ペンシルベニア州ベルフォント)を用いた。」

(甲A3-3)(222頁左欄15行?30行)
「2.5 定量
揮発性化合物の定量は、内部標準(2-メチル-3-ヘプタノン)及び対応する純粋な揮発性化合物の検量線(外部標準として)を使用して行った。標準溶液は、真正の標準化合物をモデル醤油溶液(すなわち、Milli-Q水中に17%のNaClを含有する)に溶解することによって調製した。検量線は、7つの濃度(醤油中の様々な揮発性化合物の濃度範囲をシミュレートしたもの)で各標準溶液を3回分析した後に得られた。検量線の直線回帰、すなわち、揮発性化合物の濃度(x,mg/L)の関数としての分子イオンピーク(y)に関連する[揮発性化合物/内部標準]ピーク面積比の後に、直線性を評価した。純粋な化合物が入手できなかった場合、類似体を用いて定量を行った。各化合物の濃度は、μg/kgで計算した。」

(甲A3-4)
「表1 様々なカテゴリーの醤油に見られる主な香気活性揮発性物質



(4)甲A4
(甲A4-1)(60頁右欄4行?61頁左欄11行)
「1.材料
市販のつゆは“つゆの素”(株式会社にんべん)を使用した。鰹節は本カツオ“直火焼きソフト削り”(マルトモ株式会社)を,昆布はマコンブ“道南産だし昆布”(日東海藻株式会社)を,醤油は“淡口醤油”(キッコーマン株式会社)を,砂糖は“上白糖”(大日本明治製糖株式会社)を使用した。ブイヨンは“マギーブイヨン”(ネスレ日本株式会社)を使用した。
2.試料の調製
自作つゆの配合割合をTable 1に示す。
自作つゆは大富らの報告をもとに,コントロールのつゆとコントロールに対しコクが有意に強いとされるつゆ(昆布増量つゆ)の二種類を調製した2)。
だし汁はRO water(Reverse Osmotic Water)に昆布を30分漬け込んだ後,中火で加熱し,沸騰直前で昆布を取り出し,鰹節を加え,弱火で5分間の沸騰後,キッチンペーパーでこし,蒸発分のRO water を補充することで調製した。次いで,だし汁に醤油と砂糖を溶解させ,つゆ試料とした。原材料に昆布を含まないコントロールサンプルは鰹節を加える工程から調製した。
3.揮発性成分の捕集
SDE法により香気成分を捕集した.市販のつゆ(濃縮タイプ)に限りRO waterを用いて3倍希釈した。試料100mlに内部標準として0.2mg/ml Tricosane(関東化学)溶液100μlを加え,連続水蒸気蒸留装置に取り付け,20分間抽出を行った。抽出溶媒はDiethyl ether(80ml)を使用した。このとき,試料側オイルバス125℃,エーテル側ウォーターバス42℃とした。この操作を30回繰り返し,香気成分の捕集・濃縮を行った。揮発性成分抽出後のエーテル溶液にはSodium sulfate anhydrousを加え,4℃で一晩脱水を行った。このエーテル溶液は38℃,常圧下での濃縮,次いで窒素ガスふきつけによる濃縮を行い,最終的に15μlまで濃縮した。
4.GC,GC-MS,GC-Oの分析条件
香気濃縮物はGC,GC-MS,GC-Oの分析に供した。
GC分析はGC-2014(Shimadzu Co.)を使用し,カラムはTC-WAX(60m×0.25mm i.d.,膜厚0.25μm)(GLサイエンス)を用い,窒素をキャリアガスとして40℃で5分保持後,200℃まで2℃/minで昇温しFIDで検出した。
GC-MS分析はGC装置としてHP6890(Hewlett-Packard Co.)を使用し,ヘリウムをキャリアーガスとしてGCと同様の昇温条件で分離後,Automass-50(JEOL Co.)によりEIモード(70eV)で質量分析した。香気成分の同定はマススペクトルのNIST databaseとの比較,Kovats Index(K.I.)の文献,標品との比較,および匂いの文献情報との一致によって行った。
GC-OはGC353B(GL-Science Co.)を使用し,TC-WAX(30m×0.53mm i.d.)でヘリウムをキャリア?ガスとしてGCと同様の昇温条件で分離し,FID検出器と臭い嗅ぎ装置(GLサイエンス)に導入して臭い嗅ぎを行った。」

(甲A4-2)(60頁)
「表1 つゆの原料の量



(甲A4-3)(62?63頁)
「Table2 SDE法により市販つゆから得られる揮発性化合物の相対量とFD係数



(甲A4-4)(65?66頁)
「Table3 SDE法により、昆布あり又は昆布なしで鰹節から得られたつゆから得られる揮発性化合物の相対量とFD係数



(5)甲A6
(甲A6-1)(132頁右欄3行?133頁右欄4行)
「II 大阪で入手したそばつけ汁の組成
i)試料
そばつけ汁(濃いだし)は大阪市内の有名なうどん屋、そば屋9件より入手した。いずれも6月下旬につくられたもので、夏用として使われるものである。これらのつけ汁と比較する意味で、一般につくられるつけ汁を試作し、その分析も行った。試作品の材料割合は次の通りである。水1l、昆布20g、かつお節20g、濃口醤油150ml、砂糖25g、味淋40ml、グルタミン酸ソーダ2g。
ii)分析方法
・・・酸度は試料5mlをpH7.0まで中和するに要するN/20 NaOH soln.ml数で示した。・・・
iii)結果
得られた結果は総括して第3表および第4表に示した。」

(甲A6-2)(133頁)




(6)甲A7
(甲A7-1)(17頁1行?11行)
「11.滴定酸度
器具1.100mlビーカー
2.10mlピペツト
3.50mlメスシリンダー
4.ガラス電極pHメーター
5.pH試験紙:(B.C.P.)(フェノールレツド、又はコンゴーレツド)
方法 しようゆ10mlをピペツトでビーカーにとり沸騰して炭酸ガスを駆逐した水40mlを加え、ガラス棒で撹拌しながら1/10Nカセイソーダで滴定する。1ml滴定するごとに試験紙でpHをしらべてpH7.0で滴定を終る。滴定の終点は(pH=7.0)ガラス電極pHメーターで決定する。
本滴定値を酸度Iとし、さらに滴定をつづけて、pH8.3で滴定をやめる。これに要したカセイソーダ滴定値を酸度IIとする。両者の合計を滴定酸度とする。」

(7)甲A8
(甲A8-1)(3頁下から4行?4頁7行)
「4 計算
酢酸換算値とし、次の算式によって算出した百分比を酸度とする。
酸度(%)=0.03×(T-B)×F/V×100
T:試料における0.5mol/L水酸化ナトリウム標準溶液の滴定量(ml)
B:空試験における0.5mol/L水酸化ナトリウム標準溶液の滴定量(ml)
F:0.5mol/L水酸化ナトリウム標準溶液の力価
V:試料採取量(ml)
0.03:0.5mol/L水酸化ナトリウム溶液1mlに相当する酢酸の重量(g)」

(8)甲A9
(甲A9-1)
「マイユ 白ワインビネガー500ml」

(甲A9-2)
「【酸度】:7.0%」

(9)甲A10
(甲A10-1)
「お酢で美肌や便秘の改善!ビネガードリンクの効果・おすすめレシピ
2017.7.26」

(甲A10-2)
「7.殺菌作用
お酢でしめた魚が腐りにくくなることが知られているように、お酢には防腐・殺菌効果があります。
食中毒の予防にもお酢は効果が期待できます。」

(甲A10-3)
「スタンダードに!水、お湯で割ってドリンクに
フルーツビネガーを水、お湯などで薄めれば飲みやすいドリンクになります。
おすすめはビネガー:水またはお湯=1:4程度の割合ですが、お好みで濃さは調整してみてください。
薄めに作れば水と同じような感覚で食事と一緒に飲むこともできます。
また、お湯で割ればお酢のツンとしたカドがとれて更に飲みやすくなります。
体の冷えが気になる方はビネガーのお湯割りが良いでしょう。」

(10)甲A11
(甲A11-1)
「米飯用加工酢
・・・
ライフプラス-2
特徴 米飯の日持ち向上用の加工酢です。食品素材である醸造酢の持つ抗菌力をベースにしておりますので、案恣意・安全な米飯を提供することができます。」

(11)甲B1
(甲B1-1)
「【請求項1】
柑橘果汁、食酢、及び醤油を含有するぽん酢醤油調味料であって、該調味料中の成分(a)?(e)の含有量が以下の範囲であることを特徴とする、ぽん酢醤油調味料。
(a)p-シメン:0.0006?4.0ppm
(b)カリウムイオン:0.02?5.0質量%
(c)ナトリウムイオン:0.5?4.0質量%
(d)酢酸:0.5?3.5質量%
(e)クエン酸:0.2?4.5質量%」

(甲B1-2)
「【0012】
本発明の調味料は、柑橘果汁、食酢、及び醤油を含有し、かつ、該調味料中の上記成分(a)?(e)の含有量が上記の所定の範囲であれば特に限定はされず、例えば、ぽん酢醤油、調味酢、つゆ類(天つゆ、麺つゆ、鍋つゆ等)、ドレッシング等が挙げられる。特にヒネ臭は、高温で揮発して目立つため、本発明の調味料は、食材を高温の状態で喫食する際に、また、加熱調理する際に使用するのに適している。例えば、本発明の調味料は、揚げ物、焼き物(ステーキ、焼き魚、餃子等)のような熱い食材にかける、しゃぶしゃぶや湯豆腐のように熱い食材を浸す、野菜炒めや鍋物のように食材とともに加熱する、パスタソースのように熱い食材と和えるという態様で使用するのに特に有用である。」

(甲B1-3)
「【0054】
(実施例1)カリウムイオン及びナトリウムイオンの含有量の検討
(1)試験品の調製 表1-1に示す処方で各原料を十分に混合し、加熱殺菌し、70℃でガラス瓶に充填して樹脂製のキャップにて密封し、キャップ裏部に液が接触するように転倒攪拌した後、自然放冷し、試験品のぽん酢醤油調味料を調製した。また、得られた試験品の一部については、既報(業界の動向 「賞味期限延長」技術の考え方 JAS情報,503,2-5(2011))を参考に44℃にて30日間保存することによって24℃120日間相当の劣化度合いを再現するサンプルを調製し、「保存時のヒネ臭」の官能検査に供した。また、上記の各原料の混合液の一部を混合直後にサンプリングして加熱殺菌処理なしのサンプルを調製し、「非加熱時のヒネ臭」及び「非加熱時の柑橘感」の官能検査に供した。
【0055】
【表1-1】

【0056】
(2)官能評価方法
(1)で調製した試験品について、「カリウム味」、「加熱後の香りのまろやかさ」、「加熱後の醤油のボディ感」、「加熱後/非加熱時の柑橘感」、「加熱殺菌時の劣化臭」、「非加熱時/保存時のヒネ臭」の官能検査を行った。官能検査は熟練したパネル10名にて行い、各試験項目の評価基準は以下のとおりとした。なお、評価基準の「3」は、熟練したパネルが通常のぽん酢醤油と比べて「変化がない」と評価できるレベルである。
【0057】
(カリウム味)、
1:強く感じる、2: やや感じる、3:感じない、4:ほとんど感じない、5:まったく感じない
(加熱後の香りのまろやかさ)
1:まったくない、2: ほとんどない、3:普通、4:ある、5:非常にある
(加熱後の醤油のボディ感)
1:弱い、2: やや弱い、3:普通、4:やや強い、5:強い
(加熱後/非加熱時の柑橘感)
1:弱い、2: やや弱い、3:普通、4:やや強い、5:強い
(加熱殺菌時の劣化臭)
1:強い、2: やや強い、3:普通、4:やや弱い、5:弱い
(非加熱時/保存時のヒネ臭)
1:強い、2: やや強い、3:普通、4:やや弱い、5:弱い
【0058】
(3)結果
調味料分析値と官能評価結果を下記表1-2に示す。
【0059】
【表1-2】

【0060】
表1-2に示すように、「保存時のヒネ臭」及び「加熱殺菌時の劣化臭」が弱く、「カリウム味」が感じられず、かつ「加熱後の香りのまろやかさ」、「加熱後の醤油のボディ感」、「加熱後の柑橘感」についても良い評価となった試験品は、カリウムイオンの含有量が0.02?5.0質量%、ナトリウムイオンの含有量が0.5?4.0質量%の範囲であった(No.2?7、9?12)。なお、これらの試験品のp-シメン含有量は、いずれも0.0006?4.0ppmの範囲内であった。これに対し、カリウムイオンの含有量及びナトリウムイオンの含有量が上記範囲を下回る試験品(No.1)は「保存時のヒネ臭」及び「加熱殺菌時の劣化臭」が強く、「加熱後の香りのまろやかさ」がなく、「加熱後の醤油のボディ感」が弱かった。また、カリウムイオンの含有量が上記範囲を超える試験品(No.8)は「カリウム味」が感じられ、ナトリウムイオンの含有量が上記範囲を超える試験品(試験No.13)が「保存時のヒネ臭」及び「加熱殺菌時の劣化臭」が強く感じられた。また、原料ゆず果汁を微生物汚染しない密閉環境で44℃で30日間保存することによって24℃で120日間保存に相当する劣化度合いを再現したサンプルを調製し(No.10)、未保存のゆず果汁を使用したサンプル(No.9)と共に評価した結果、非特許文献2に記載された傾向とは異なり、44℃で保存後のゆず果汁の方がp-シメン量が減少する傾向が認められた。No.10では非加熱時/加熱後の柑橘感がNo.9に比べて低い値となったものの、ヒネ臭の発生抑制などの本発明の効果には顕著な差は認められなかった。すなわち、最終的な調味料中の各成分値が所望の値になるものであれば、加熱処理などを施した柑橘果汁を用いることができる。また、柑橘果汁を保存した際に発生するオフフレーバーの発生と、本発明で定義したぽん酢醤油調味料のヒネ臭発生傾向が一致しないことから、これらの臭気の生成は異なるメカニズムであると推測される。
【0061】
(実施例2)p-シメンの含有量の検討
(1)試験品の調製
表2-1に示す処方(p-シメンの添加により含有量を変更)で各原料を十分に混合し、実施例1と同様にして試験品を調製した。
【0062】
【表2-1】

【0063】
(2)官能評価方法
(1)で調製した試験品について、実施例1と同様に「カリウム味」、「加熱後の香りのまろやかさ」、「加熱後の醤油のボディ感」、「加熱後/非加熱時の柑橘感」、「加熱殺菌時の劣化臭」、「非加熱時/保存時のヒネ臭」の官能検査を行い、評価した。
【0064】
(3)結果
調味料分析値と官能評価結果を下記表2-2に示す。
【表2-2】

【0065】
表2-2に示すように、「保存時のヒネ臭」及び「加熱殺菌時の劣化臭」が弱く、「カリウム味」が感じられず、かつ「加熱後の香りのまろやかさ」、「加熱後の醤油のボディ感」、「加熱後の柑橘感」についても良い評価となった試験品は、p-シメンの含有量が0.0006?4.0ppmの範囲であった(No.15?19)。これに対し、p-シメンの含有量が上記範囲を下回る試験品(No.14)は「保存時のヒネ臭」及び「加熱殺菌時の劣化臭」が強く、p-シメンの含有量が上記範囲を上回る試験品(試験No.20)は「非加熱時の柑橘感」及び「加熱後の柑橘感」が弱かった。」

(12)甲B3
(甲B3-1)
「【0013】
【実施例】[実施例1]ゆず果汁を製造する際に発生したゆず果皮をダイサーで粉砕し、約2mmの大きさのゆず果皮粉砕物(生)を得た。この粉砕物を用い、下記の配合割合の酸性液体調味料(ノンオイルタイプ)を製造した。つまり、各原料をミキサー内に投入し、均一となるまで十分に混合した後、300ml容量のペット容器に充填した。
【0014】
<配合割合>
・食酢(酸度:4%) 20.0%
・醤油 20.0%
・ブドウ糖果糖液糖 15.0%
・ゆず果皮粉砕物(生) 5.0%
・ゆず果汁 5.0%
・みりん 3.0%
・食塩 1.5%
・煮干しエキス(固形分:95%) 0.6%
・キサンタンガム 0.1%
・清水で 100.0%
【0015】得られた酸性液体調味料は、pHが3.9、粘度が200mPa・s[B型粘度計((株)東京計器製)でローターNo.1、品温20℃、回転数20rpmで測定開始1分後の粘度]であり、果皮由来の苦味が低減され、ゆずの香りと風味、また食味に優れた酸性液体調味料であった。また、ゆず果皮粉砕物に代え、かぼす、あるいはすだちの果皮粉砕物を用いたところ同様な結果が得られた。
【0016】[実施例2]実施例1で得たゆず果皮粉砕物(生)を用い、下記の配合割合の酸性液体調味料(分離タイプ)を製造した。つまり、菜種精製油以外の各原料をミキサー内に投入し、均一となるまで十分に混合し、300ml容量のペット容器に充填した後、さらに菜種精製油を充填した。
【0017】
<配合割合>
・菜種精製油 20.0%
・食酢(酸度:4%) 20.0%
・醤油 20.0%
・ブドウ糖果糖液糖 15.0%
・ゆず果皮粉砕物(生) 5.0%
・ゆず果汁 5.0%
・みりん 3.0%
・食塩 1.5%
・イワシエキス(固形分:40%) 1.0%
・昆布エキス(固形分:90%) 0.5%
・キサンタンガム 0.1%
・清水で 100.0%
【0018】得られた酸性液体調味料は、pHが3.8、調味料が入った容器を振って乳化状態としたときの粘度が900mPa・s[B型粘度計((株)東京計器製)でローターNo.2、品温20℃、回転数20rpmで測定開始1分後の粘度]であり、ゆず果皮由来の苦味が低減され、ゆずの香りと風味、また食味に優れた酸性液体調味料であった。」

(13)甲B13
(甲B13-1)
「 GC/MSなどのクロマトグラフと質量分析計を結合したシステムではいくつかの測定モードがあり、それぞれに対応する用語、略語は表1のようにまとめられます。
表1 GC/MSにおける各種測定モードにおける、用語と略語
日本語・・・ 略語
全イオン検出・・・ TIM
マスクロマトグラフィー・・・MC
選択イオン検出・・・ SIM
選択反応検出・・・ SRM」

(14)甲B15
(甲B15-1)(4枚目下から5行?5枚目5行)
「ピーク高さ、ピーク面積の求め方
JIS K 0214では、
“ピーク高さ(peak height)はピークの頂点からピークの両すそを結ぶ直線に時間軸に垂直に下ろした直線の長さ、ピーク面積(peak area)はピークの両すそをむすぶ直線とピークとが囲む面積、実際には、半価幅法による近似値又はピーク時の出力を積算したカウント数で求める”と定義している。
ピーク面積については、ピークが孤立(完全分離ピーク)している場合にJISに規定する方法を適用できるが、下図に示すようにピークの重なる不完全分離ピークの場合は、JISに規定の方法では適切な面積が得られない。」

(15)甲B16
(甲B16-1)




(甲B16-2)




(16)甲B20
(甲B20-1)(478頁右欄25行?479頁15行)
「1-オクテン-3-オールは1937年に松茸から初めて単離、同定されてマツタケアルコールまたはマツタケオールと命名され、その名のとおり松茸を連想させる香りを有する。その後マツタケ以外にもマシュルームをはじめ多くの茸から茸臭の中心的な成分として、微量ではポテト、れんげの花、魚類中にも確認されている。茸ではリノール酸から生合成されることが報告されている。しょう油では1973年、しょう油の香味成分の研究にGC-MSを最初に導入した後藤等が初めて確認した。大豆中に存在し、大豆の浸漬時にも新たに生成し、蒸煮大豆にも確認されている。しかし、それらの要因よりも麹菌による生産能力が大きいことから、しょう油中の大部分は製麹時の麹菌の働きに由来すると推定される。また、生産量が菌株や培養条件によっても変動すること、および水中での香りの閾値が1.0ppbという極めて高い活性から判断すると、麹中の含量の変動が麹の香りの強さや、個性、ひいてはしょう油の品質にも影響を及ぼしていると推察される。しょう油麹をジクロルメタンで抽出、濃縮した液を常法により分別抽出を行うと中性部にしょう油麹を連想させ得る強い香りが集まる。この中性画分をGC分析し、溶剤のピークを除くすべてのピーク面積の和に対する個々の成分のピーク面積比の最大のピークは1-オクテン-3-オールで、全体の36.06%を占めた。さらに、しょう油のジクロクメタン抽出濃縮液の分別抽出でも中性画分に多量に含まれていることが確認されており、しょう油香味への影響が大きい重要成分の一つと推察される。本物質以外にしょう油麹の香りに寄与する成分としてはフェニールアセトアルデヒド、2-メトキシ-5-ビニルフェノールおよびフェニール酢酸が重要視されている。
ヘキサノールはリノール酸のLipoxygenase等による酵素的酸化で生成したn-ヘキサナールがAlcohol dehydrogenaseの作用を受けて生成する。しょう油醸造においては、大豆の浸漬中にこの反応が起り生成するが、最終製品に残存する量は少なく品質に影響を及ぼすことはない。
フルフリールアルコールは弱い焦臭を有し、メイラード反応生成物と推定されているが、それを裏付けるかのように生しょう油の火入れの進行につれてフルフリールアルコールの含量が直線的に増加するので、火入れの程度の目安にすることができる。一方、フルフラールが酵母によって代謝されることによっても生成するといわれている。」

(甲B20-2)(479頁右欄29行?38行)
「ヘキサナールやヘキセナール[trans-2-ヘキセナール(青葉アルデヒド)、cis-3-ヘキセナールおよびtrans-3-ヘキセナール]は青臭み成分で大豆中の中性脂肪がLipolytic acylhydrolaseの作用を受けて遊離したリノール酸やリノレイン酸がLipoxygenaseにより一部がリノール酸9-ヒドロペルオキシド酸やリノレン酸13-ヒドロペルオキシドにそれぞれ変化し、さらに開裂酵素であるHydroperoxide Lyaseの作用を受けて生成するといわれている。しょう油醸造においても大豆の浸漬中にこの反応が起り生成するが最終製品に残存する量は少なく品質に影響を及ぼすことはない。」

(甲B20-3)(478頁)




(17)甲B24
(甲B24-1)
「【0018】
本発明の酸性液状調味料は、その他の香気成分を適宜選択して組み合わせることができる。下記エーテル類、ケトン類、脂肪酸類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、テルペン類、ピラジン類、エステル、フラン類、ラクトン類等から選択される1又は2以上の物質を含有させることが、酢酸特有の鼻に抜けるツンとした酸味を抑制する点から好ましい。
【0019】
例えば、エーテル類、ケトン類は、2-ブチルフラン、2,5-ジエチルテトラヒドロフラン、2,2-ジメチル-5-(1-メチルプロプ-1-エニル)テトラヒドロフラン、2,5-ジメチルフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、エチルフラン、2-メチル-3-メチルチオフラン、2-メチルフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、N-フルフリルピロール、2-ペンチルフラン、2-プロピルフラン、3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-アセチルピロール、2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、ジプロピルケトン、エチル2-フリルケトン、エチルアミルケトン、エチルアニシリデンケトン、エチルブチルケトン、マルトール、エチルマルトール、フラネオール、エチルシクロペンテノロン、エチルヘキシルケトン、エチルプロピルケトン、エチルビニルケトン、5-エチル-4-ヒドロキシ-2-メチル-3(2H)-フラノン、ファルネシルアセトン、フルフリルメチルケトン、フルフリデンアセトン、1-(2-フルフリルチオ)プロパノン、4-フルフリルチオ-4-メチルペンタノン-2、4-(メチルチオ)ブタン-2-オン、9-メチルチオメガスティグマ-3,5-ジエン-7-オン、8-(メチルチオ)-p-メンタン-3-オン、3-アセチルピロール、3-ノネン-2-オン、ヌートカトン、5-オクタジエン-2-オン、1,5-オクタジエン-3-オン、3-オクテン-2-オン、オクテン-3-オン、2-オクテン-4-オン、3-ペンタノン、3-ペンテン-2-オン、ペンチルフリルケトン、2-プロピオニルピロール、ラズベリーケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ブチロフェノン、3,4-ジメトキシアセトフェノン、2,4-ジメチルアセトフェノン、p-イソプロピルアセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、ビチスピラン等が挙げられる。
【0020】
脂肪酸類は、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、デサン酸、安息香酸、2-メチル酪酸、3-メチル酪酸、フェニル酢酸、アルコール類は、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、2,4-ジメチル-4-オクタノール、3,7-シクロデカジエン-1-メタノール、2-メチルドデカノール、フルフリルアルコール、フェネチルアルコール、カジノール、ボルボナール、トルロソール、メントール、等が挙げられる。フェノール類は、オイゲノール、グアヤコール、イソオイゲノール、5-メチルグアヤコール、ビニルグアヤコール、2-メトキシ-4-ビニルフェノール、チモール、カルバクロール、チャビコール、マルトール、フラネオール、ホモフラネオール、4-エチルグアイヤコール、エチルフェノール等が挙げられる。
【0021】
アルデヒド類は、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、シトラール、2-オクテナール、trans-2-オクテナール、2,4-デカジエナール、フェニルアセトアルデヒド、ベンスアルデヒド、バニリン、テルペン類は、ピネン、リモネン、セドレン、ヒマカレン、イソプレゴール、メントール、リナロール、ムロレン、カジネン、クルクメン、カラメネン、グリーノール、キュベノール、エレモール、セドロール、オイデスモール、トレヨール、コンゴール、クリプトメリオン、カラコレン、スクラレオリド等が挙げられる。
【0022】
ピラジン類は、ジメチルピラジン、トリメチルピラジン、2-(sec-ブチル)-3-メトキシピラジン、2-エトキシ-3,5or6-メチルピラジン、2-エトキシ-3-エチルピラジン、2-エトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-4-メチル-1,3-ヂオキソラン、2-ヘキシル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロポキシ-3-メチルピラジン、2-イソプロピル-(3,5or6)メトキシピラジン、2-メトキシ-(3,5or6)-メチルピラジン、2-メトキシ-3,5-ジメチルピラジン、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-メトキシピラジン、2-メチル-6-プロポキシピラジン、2-アセチル-3,5(3,6)-ジメチルピラジン、2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン、2-アセチルピラジン、2-メチル-3(5,6)-フルフリルチオピラジン、2-メチル-3(5,6)-メチルチオピラジン、2-メチルチオ-3-エチルピラジン、メチルチオピラジン、2-メルカプトメチルピラジン、2-メチル-5-ヒドロキシメチルピラジン、2-(フルフリルチオ)-3-メチルピラジン、2-イソプロピル-3-(メチルチオ)ピラジン等が挙げられる。
【0023】
エステル類は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸フェニルエステル等の酢酸エステル、それと同様にアクリル酸エステル、アセト酢酸エステル、アニス酸エステル、安息香酸エステル、アントラニル酸エステル、N-メチルアントラニル酸エステル、イソ吉草酸エステル、イソ酪酸エステル、ウンデシレン酸エステル、オクタン酸エステル、オクテン酸エステル、オクチンカルボン酸エステル、カプロン酸エステル、ヘキセン酸エステル、吉草酸エステル、ギ酸エステル、クロトン酸エステル、ケイ皮酸エステル、コハク酸エステル、サリチル酸エステル、シクロヘキシルアルカン酸エステル、ステアリン酸エステル、セバチン酸エステル、デカン酸エステル、ドデカン酸エステル、乳酸エステル、ノナン酸エステル、ノネン酸エステル、ヒドロキシヘキサン酸エステル、フェニル酢酸エステル、フェノキシ酢酸エステル、フタル酸エステル、フランカルボン酸エステル、プロピオン酸エステル、ヘキサン酸エステル、ヘプタン酸エステル、ヘプチンカルボン酸エステル、ミルシチン酸エステル、フェニルグリシド酸エステル、2-メチル酪酸エステル、3-メチル酪酸エステル、酪酸エステル、ラウリン酸エステル、ヒドロキシ酪酸エステル等が挙げられる。
【0024】
フラン類は、フラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン、2-エチルフラン、メントフラン、2,5-ジエチルテトラヒドロフラン、3-ヒドロキシ-2-メチルテトラヒドロフラン、2-(メトキシメチル)フラン、2,3-ジヒドロフラン、フルフラール、5-メチルフルフラール、3-(2-フリル)-2-メチル-2-プロペナール、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン(フラネオール)、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン(ソトロン)、2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン(ホモフラノオール)、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)フラノン(ホモソトロン)、3-メチル-1,2-シクイロペンタンジオン(シクロテン)、2(5H)-フラノン、4-メチル-2(5H)-フラノン、5-メチル-2(5H)-フラノン、2-メチル-3(2H)-フラノン、5-メチル-3(2H)-フラノン、2-アセチルフラノン、2-アセチル-5-メチルフラン、フルフリルアルコール、2-フランカルボン酸メチル、2-フランカルボン酸エチル、2-ヒドロキシメチル-5-フルフラール酢酸フリフリル等が挙げられる。」

(18)甲B25
(甲B25-1)
「【請求項1】
酢酸を0.1?10質量%含有し、且つ、酢酸とヘキサナールの含有質量比が100対0.00001?100対0.001となるようにヘキサナールを含有することを特徴とする酢酸含有飲食物。」

(甲B25-2)
「【0008】
以上のように、簡便な手段で、且つ、味に悪影響を及ぼさず汎用性のある、酢酸含有飲食物の効果的な酢酸臭の低減方法は未だ報告されていない。
そこで、本発明の目的は、簡便な手段であり、且つ、食品の味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酢酸臭(酢酸由来の鋭い刺激臭)を低減する方法を提供することであり、また、酢酸臭が低減されている酢酸含有飲食物を提供することにある。」

(甲B25-3)
「【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、酢酸を含有した飲食物に青臭さのある物質として知られるヘキサナールを酢酸に対して一定割合で含有することにより、酢酸臭発生を低減し、さらにヘキサナール自身の青臭さを感じることなく風味に優れた飲食物を製造することができることを見出した。
【0011】
その際、酢酸含有量が0.1?10質量%と比較的高い飲食物(「明らかに酸味を感じる飲食物(酢酸飲料等)」)については、酢酸とヘキサナールの質量比が100対0.00001?100対0.001となるようにヘキサナールを含有することで、酢酸臭を低減できることを見出した。
その一方で、酢酸含有量が0.01?0.06質量%と比較的低い飲食物(「酸味をほぼ感じない穀物加工食品等の飲食物」)については、酢酸とヘキサナールの質量比が100対0.0001?100対0.01となるようにヘキサナールを含有することで、酢酸臭をほぼ感じなくできることを見出した。」

(19)甲B26
(甲B26-1)(1頁下から3行?末行)
「【ポン酢ご飯の簡単すぎる作り方】
ポン酢ご飯の作り方といいましても、通常炊くご飯のお水の半量をポン酢にするだけです!」

(20)甲B27
(甲B27-1)(1頁下から8行)
「レシピはびっくるするほど簡単で「米2合をポン酢100cc、水260ccで炊く」というもの。」

(21)甲B36
(甲B36-1)
「タイ醤油中の揮発性化合物の定量法の比較」

(甲B36-2)
「要旨
タイ醤油の揮発性化合物のサンプル前処理において、ダイナミックヘッドスペース(DHS)サンプリング、直接溶媒抽出(DSE)及び真空同時水蒸気蒸留-要害抽出(V-SDE)が用いられていた。」

(甲B36-3)(621頁右欄16行?21行)
「3.結果及び検討
図1及び2のクロマトグラムは、DHS、DSE及びV-SDEにより得られたタイ醤油のブランドA及びBの揮発性物質の分析結果である。揮発性化合物及びその関連するピーク範囲のDHS、DSE及びV-SDEによってそれぞれ特定した結果は表1-3のとおりである。」

(甲B36-4)(624頁)
「表1 DHS分析によるタイ醤油の揮発性化合物



3 当審の判断
(1)取消理由1(甲A1に記載された発明を引用発明とする新規性欠如)
ア 甲A1に記載された発明
上記記載事項(甲A1-1)、(甲A1-5)及び(甲A1-6)によれば、甲A1には、次の発明が記載されていると認められる。
「ローズマリービネガー:薄口しょうゆ:水の割合を1.5:0.5:8.0(容量比)で調合したローズマリー合わせ酢のジュレであって、気相の香気成分をMMSE法により捕集した後、GC/MS分析を行った結果、以下のピーク面積割合を示す香気成分を含有するローズマリー合わせ酢のジュレ

」(以下、「甲A1-1発明」という。)

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲A1-1発明とを対比する。
甲A1-1発明の「ローズマリー合わせ酢のジュレ」は、acetic acidすなわち、酢酸を含むものであるから、本件発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
そうすると、両者は、「酢酸含有飲食品」である点で一致し、次の点で一応相違する。

相違点A1-1
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲A1-1発明はそのような特定はない点
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

相違点A1-2
本件発明1は、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であるのに対し、甲A1-1発明はそのような特定はない点

相違点A1-3
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲A1-1発明は、醤油を含有するものである点

(イ)判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、相違点A1-3について、先に検討する。
本件発明1は、上記第2において示したとおり、酢酸含有飲食品は、「醤油を含有しない」ものに限定する訂正がなされたため、甲A1-1発明と明確に相違するものとなった。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、相違点A1-1及びA1-2について検討するまでもなく、甲A1-1発明ということはできない。

ウ 本件発明7?9
本件発明7?9は、いずれも、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明7?9は甲A1-1発明ではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、7?9に係る特許は、取消理由1によって取り消すべきものではない。

(2)取消理由2(甲A1に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
ア 甲A1に記載された発明
上記記載事項(甲A1-1)及び(甲A1-3)によれば、甲A1には、次の発明が記載されていると認められる。
「気相の香気成分をMMSE法により捕集した後、GC/MS分析を行った結果、以下のピーク面積割合を示す香気成分を含有するローズマリービネガー。

」(以下、「甲A1-3発明」という。)

「気相の香気成分をMMSE法により捕集した後、GC/MS分析を行った結果、以下のピーク面積割合を示す香気成分を含有するディルビネガー。

」(以下、「甲A1-4発明」という。)

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲A1-3発明又は甲A1-4発明とを対比する。
甲A1-3発明のローズマリービネガー及び甲A1-4発明のディルビネガーは、酢酸を含むものであり、また、醤油は含有しないものであるから、両者は、「醤油を含有しない酢酸含有飲食品」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点A1-4
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲A1-3発明又は甲A1-4発明はそのような特定はない点
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

相違点A1-5
本件発明1は、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であるのに対し、甲A1-3又は甲A1-4発明はそのような特定はない点

(イ)判断
上記相違点A1-4について検討する。
甲A1-3発明は、香気成分として、リモネン、リナロール、酢酸ボルニル(bornyl acetate)、酢酸(acetic acid)を含むものであることは特定されており、甲A1-4発明は、香気成分として、リモネン、ディルエーテル(dillether)、酢酸(acetic acid)を含むものであることは特定されているものの、本件発明1の(A)で規定する「1-オクテン-3-オール」、及び本件発明1の(B)で規定する「テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類」のいずれも含有するものではなく、甲A1の記載をみても、甲A1-3発明であるローズマリービネガー又は甲A1-4発明であるディルビネガーにおいて、本件発明1の(A)で規定する「1-オクテン-3-オール」、及び本件発明1の(B)で規定する「テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類」のいずれかの香気成分を添加することを動機付ける記載は見当たらない。
他の証拠について検討すると、甲A9は、ワインビネガーの酸度を示すための証拠であり、甲A10は、ワインビネガーを含む飲料が知られていることを示すための証拠であり、甲A11は、酢を用いた酢飯は一般に知られていることを示すための証拠であって、いずれの証拠にも、甲A1-3発明又は甲A1-4発明のビネガーに本件発明1の(A)又は(B)で規定する成分を添加することを動機付ける記載は見当たらない。
そして、本件発明1は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができるという当業者が予測できない効果を奏するものである。

(ウ)まとめ
よって、本件発明1は、相違点A1-5について検討するまでもなく、甲A1-3発明又は甲A1-4発明、及び甲A9、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

ウ 本件発明3?9
本件発明3?9は、いずれも、上記相違点A1-4に係る発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明3?9は、甲A1-3発明又は甲A1-4発明、及び甲A9、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、3?9に係る特許は、取消理由2によって取り消すべきものではない。

(3)取消理由3(甲A2に記載された発明を引用発明とする新規性欠如)
ア 甲A2に記載された発明
上記記載事項(甲A2-1)及び(甲A2-2)によれば、酢酸含有量は、「562mg/L」すなわち、0.0562質量%であるから、甲A2には、次の発明が記載されていると認められる。
「揮発性香気化合物を固相マイクロ抽出によって抽出してGC-MSで測定した結果、以下の相対ピーク面積を示す香気成分を含有する醤油であって、酢酸濃度は0.0562質量%である醤油。
1-オクテン-3-オール;0.0997%
酢酸;0.835%」(以下、「甲A2発明」という。)

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲A2発明とを対比する。
甲A2発明の醤油は酢酸を含有するものであるから、本件発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
また、甲A2発明に含まれる1-オクテン-3-オールは香気成分である。
さらに、甲A2発明の酢酸含有量は、0.0562質量%であり、これは、本件発明1の「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下」に包含される。
そうすると、両者は、「1-オクテン-3-オールである香気成分を含有し、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下である酢酸含有飲食品」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点A2-1
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲A2発明は1-オクテン-3-オールを含有するものの、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合における酢酸1部に対するピーク面積比が特定されていない点
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

相違点A2-2
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲A2発明は、醤油自体である点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点A2-2について、先に検討する。
本件発明1は、上記第2において示したとおり、酢酸含有飲食品は、「醤油を含有しない」ものに限定する訂正がなされたため、甲A2発明と醤油自体とは明確に相違するものとなった。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、相違点A2-1について検討するまでもなく、甲A2発明ということはできない。

ウ 本件発明3、8
本件発明3、8は、いずれも、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明3、8は甲A2発明ではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、3、8に係る特許は、取消理由3によって取り消すべきものではない。

(4)取消理由4(甲A2に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
ア 本件発明7
本件発明7は、本件発明1又は2において、前記酢酸含有飲食品の喫食時における酢酸含有量が0.2質量%以上5質量%以下であることを特定したものである。
本件発明7と甲A2発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記(3)イ(イ)で述べた相違点A2-2で相違するものである。
そして、甲A2発明は醤油自体であるところ、これに基づいて、醤油を含有しない酢酸含有飲食品を調製することは、当業者が容易に想到し得ることではないことは明らかである。
他の証拠について検討すると、甲A1、B1、B3は、醤油は酢酸含有調味料に一般的に使用されているものであることを示すための証拠であって、いずれの証拠にも、甲A2発明において、醤油を含有しないようにすることを動機付ける記載は見当たらない。
そして、本件発明7は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制できるという当業者が予測し得ない効果を奏するものである。
したがって、本件発明7は、甲A2発明及び甲A1、B1、B3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明7に係る特許は、取消理由4によって取り消すべきものではない。

(5)取消理由5(甲A3に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
ア 甲A3に記載された発明
上記記載事項(甲A3-4)によれば、甲A3に記載された醤油であるKSSについて、それに含まれる1-オクテン-3-オールの濃度は、中央値で38.9μg/kgであり、また、酢酸含有量は、中央値で「3.58e4μg/kg」すなわち、0.00358質量%であるから、甲A3には、次の発明が記載されていると認められる。
「1-オクテン-3-オールを38.9μg/kgの濃度で含有し、酢酸含有量が0.00358質量%である醤油。」(以下、「甲A3発明」という。)

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲A3発明とを対比する。
甲A3発明の醤油は酢酸を含有するものであるから、本件発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
また、甲A3発明に含まれる1-オクテン-3-オールは香気成分である。
そうすると、両者は、「1-オクテン-3-オールである香気成分を含有する酢酸含有飲食品。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点A3-1
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲A3発明は1-オクテン-3-オールを含有するものの、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合における酢酸1部に対するピーク面積比が特定されていない点
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

相違点A3-2
本件発明1は、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であるのに対し、甲A2発明は0.00358質量%である点

相違点A3-3
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲A3発明は、醤油自体である点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点A3-3について、先に検討する。
甲A3発明は醤油自体であるところ、これに基づいて、醤油を含有しない酢酸含有飲食品を調製することは、当業者が容易に想到し得ることではないことは明らかである。
他の証拠について検討すると、甲A1、B1、B3は、醤油は酢酸含有調味料に一般的に使用されているものであることを示すための証拠であり、甲B16は、1-オクテン-3-オールと酢酸におけるピーク面積比率と重量含有量比の関係を示すための証拠であって、いずれの証拠にも、甲A3発明において、醤油を含有しないようにすることを動機付ける記載は見当たらない。
そして、本件発明1は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制できるという当業者が予測し得ない効果を奏するものである。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲A3発明及び甲A1、B1、B3、B16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明7
本件発明7は、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明7は甲A3発明及び甲A1、B1、B3、B16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、7に係る特許は、取消理由5によって取り消すべきものではない。

(6)取消理由6(甲A4に記載された発明を引用発明とする新規性欠如)
ア 甲A4に記載された発明
上記記載事項(甲A4-1)?(甲A4-4)によれば、甲A4には、次の発明が記載されていると認められる。
「SDE法により香気成分を捕集し、GC-MS分析を行った結果、以下の相対ピーク面積を示す香気成分を含有する、市販つゆ。
酢酸;1.25±0.43
1-オクテン-3-オール;0.26±0.03
フルフラール;1.70±0.46
2-アセチルフラン;0.20±0.01
2-フランメタノール;1.21±0.39」(以下、「甲A4-1発明」という。)

「SDE法により香気成分を捕集し、GC-MS分析を行った結果、以下の相対ピーク面積を示す香気成分を含有する、自作つゆ。
酢酸;1.86±0.29又は1.65±0.55
1-オクテン-3-オール;1.20±0.15又は2.87±0.32
オクタナール;0.13±0.05又は0.31±0.06
2-アセチルフラン;0.70±0.05又は0.84±0.04」(以下、「甲A4-2発明」という。)

なお、「甲A4-1発明」及び「甲A4-2発明」をまとめて「甲A4発明」ともいう。

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲A4発明とを対比する。
甲A4発明は酢酸を含有するものであるから、本件発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
また、甲A4発明は香気成分を含有するものである。
そして、上記記載事項(甲A4-1)の記載からみて、甲A4発明は、醤油を含有するものである。
そうすると、両者は、「香気成分を含有する酢酸含有飲食品」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点A4-1
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲A4発明はそのような特定はない点
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

相違点A4-2
本件発明1は、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であるのに対し、甲A4発明はそのような特定はない点

相違点A4-3
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲A4発明は、醤油を含有するものである点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点A4-3について、先に検討する。
本件発明1は、上記第2において示したとおり、酢酸含有飲食品は、「醤油を含有しない」ものに限定する訂正がなされたため、本件発明1と甲A4発明とは明確に相違するものとなった。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、相違点A4-1及び相違点A4-2について検討するまでもなく、甲A4発明ということはできない。

ウ 本件発明2、7、8
本件発明2、7、8は、いずれも、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明2、7、8は甲A4発明ではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、7、8に係る特許は、取消理由6によって取り消すべきものではない。

(7)取消理由7(甲A4に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
ア 本件発明3?6
本件発明3?6は、いずれも、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものであるから、本件発明3?6と甲A4発明は、少なくとも、上記相違点A4-3で相違する。
そして、甲A4の記載をみても、醤油を含有するつゆに係る発明である甲A4発明において、醤油を含有しないようにすることを動機付ける記載は見当たらない。
他の証拠について検討すると、甲A6は、そばのつけ汁の酸度を示すための証拠であり、甲A7は、滴定酸度の測定方法を示すための証拠であり、甲A8は、酸度の計算方法を示すための証拠であって、いずれの証拠にも、甲A4発明に係るつゆにおいて、醤油を含有しないようにすることを動機付ける記載は見当たらない。
そして、本件発明3?6は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができるという当業者が予測し得ない効果を奏するものである。
したがって、本件発明3?6は、甲A4発明及び甲A6、A7、A8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件発明3?6に係る特許は、取消理由7によって取り消すべきものではない。

(8)取消理由8(甲B1に記載された発明を引用発明とする新規性欠如)
ア 甲B1に記載された発明
上記記載事項(甲B1-3)からみて、甲B1には、次の発明が記載されていると認められる。
「以下の含有量の成分を含むぽん酢醤油調味料。

」(以下、「甲B1発明」という。)

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲B1発明を対比する。
甲B1発明は酢酸を0.812?1.12質量%含有するものであるから、本件発明1の「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下である」「酢酸含有飲食品」に相当する。
また、甲B1発明は、p-シメンといった香気成分を含有するものである。
甲B1発明は、ぽん酢醤油調味料に係る発明であるから、醤油を含むものである。
そうすると、両者は、「p-シメンである香気成分を含有する、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下である酢酸含有飲食品」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点B1-1
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲A4発明は、p-シメンを含有するものの、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合における酢酸1部に対するピーク面積比が特定されていない点。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

相違点B1-2
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲B1発明は、醤油を含有するものである点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点B1-2について、先に検討する。
本件発明1は、上記第2において示したとおり、酢酸含有飲食品は、「醤油を含有しない」ものに限定する訂正がなされたため、本件発明1と甲B1発明とは明確に相違するものとなった。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、相違点B1-1について検討するまでもなく、甲B1発明ということはできない。

ウ 本件発明8
本件発明8は、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明8は甲B1発明ではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、8に係る特許は、取消理由8によって取り消すべきものではない。

(9)取消理由9(甲B1に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
ア 本件発明2?7
本件発明2?7は、いずれも、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものである。
本件発明2?7と甲B1発明は、少なくとも、上記相違点B1-2で相違する。
そして、甲B1の記載をみても、醤油を含有するぽん酢醤油調味料に係る発明である甲B1発明において、醤油を含有しないようにすることを動機付ける記載は見当たらない。
他の証拠について検討すると、甲A2、A3、B20及びB36は、醤油に含まれる成分を示すための証拠であり、甲B16は、1-オクテン-3-オールと酢酸とのピーク面積比率と重量含有量比の関係を示すための証拠であり、甲B24、甲B25は、酸味、酢酸臭を改善する成分を示すための証拠であり、甲B26、甲B27は、ぽん酢を用いてご飯を炊くことは本願優先日前における周知技術であることを示す他めの証拠であって、いずれの証拠にも、甲B1発明に係るぽん酢醤油調味料において、醤油を含有しないようにすることを動機付ける記載は見当たらない。
そして、本件発明2?7は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができるという当業者が予測し得ない効果を奏するものである。
したがって、本件発明2?7は、甲B1発明及び甲A2、A3、B16、B20、B24、B25、B26、B27、B36に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件発明2?7に係る特許は、取消理由9によって取り消すべきものではない。

(10)取消理由10(甲B3に記載された発明を引用発明とする新規性欠如)
ア 甲B3に記載された発明
上記記載事項(甲B3-1)の段落【0014】によれば、
以下の発明が記載されていると認められる。
「下記の配合割合の酸性液体調味料。
<配合割合>
・食酢(酸度:4%) 20.0%
・醤油 20.0%
・ブドウ糖果糖液糖 15.0%
・ゆず果皮粉砕物(生) 5.0%
・ゆず果汁 5.0%
・みりん 3.0%
・食塩 1.5%
・煮干しエキス(固形分:95%) 0.6%
・キサンタンガム 0.1%
・清水で 100.0%」(以下、「甲B3発明」という。)

イ 本件発明1
(ア)対比
上記記載事項(甲B3-1)によれば、甲B3発明は、食酢を20.0%配合しているが、食酢の酸度が4%であるので、酢酸の濃度は0.8%程度である。そうすると、本件発明1の「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下である」「酢酸含有飲食品」に相当する。
そうすると、両者は、「喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下である酢酸含有飲食品」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点B3-1
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲B3発明はそのような特定はない点。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

相違点B3-2
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲B3発明は、醤油を含有するものである点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点B3-2について、先に検討する。
本件発明1は、上記第2において示したとおり、酢酸含有飲食品は、「醤油を含有しない」ものに限定する訂正がなされたため、本件発明1と甲B3発明とは明確に相違するものとなった。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、相違点B3-1について検討するまでもなく、甲B3発明ということはできない。

ウ 本件発明8
本件発明8は、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明8は甲B3発明ではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1、8に係る特許は、取消理由10によって取り消すべきものではない。

(11)取消理由11(甲B3に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
ア 本件発明2?7
本件発明2?7は、いずれも、「醤油を含有しない」という発明特定事項を含むものである。
本件発明2?7と甲B3発明は、少なくとも、上記相違点B3-2で相違する。
申立人Bは、令和1年9月30日付け意見書にて、甲B3発明において、醤油を配合するか否かは設計事項に過ぎず、醤油を配合しない態様とすることは、当業者が容易になし得ることである旨主張する。
しかし、甲B3の記載をみても、20%もの醤油を含有する酸性液体調味料に係る発明である甲B3発明において、醤油を含有しないようにすることは、当業者にとって動機付けられるものではない。
他の証拠について検討すると、甲A2、A3、B20及びB36は、醤油に含まれる成分を示すための証拠であり、甲B16は、1-オクテン-3-オールと酢酸とのピーク面積比率と重量含有量比の関係を示すための証拠であり、甲B24、甲B25は、酸味、酢酸臭を改善する成分を示すための証拠であり、甲B26、甲B27は、ぽん酢を用いてご飯を炊くことは本願優先日前における周知技術であることを示すための証拠であって、いずれの証拠にも、甲B3発明に係る酸性液体調味料において、醤油を含有しないようにすることを動機付ける記載は見当たらない。
そして、本件発明2?7は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができるという当業者が予測し得ない効果を奏するものである。
したがって、本件発明2?7は、甲B3発明及び甲A2、A3、B16、B20、B24、B25、B26、B27、B36に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件発明2?7に係る特許は、取消理由11によって取り消すべきものではない。

(12)取消理由12(明確性)
ア 取消理由12の概要
令和1年5月27日付けで通知した取消理由12は、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第2号に記載する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものであるというものであり、具体的な理由は、以下のとおりである。
理由(ア)
本件発明1?9は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定したピーク面積比をもって規定しているが、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法による測定条件が特定されていないため、特許を受けようとする発明が明確ではない。
理由(イ)
本件発明1?9には、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法において用いるサンプルの調製方法が特定されていないため、特許を受けようとする発明が明確ではない。
理由(ウ)
本件発明1?9には、ガスクロマトグラフ分析質量分析法において使用する具体的なクロマトグラムが特定されていないから、どのようなクロマトグラムを選択し、どのピークを元に面積を測定すべきか不明であるため、特許を受けようとする発明が明確でない。
理由(エ)
ピーク面積の算出に関して、不完全分離ピークの場合には、その面積を特定する方法が一義的に定まるものではないため、ピーク面積が明確ではない。
理由(オ)
香気成分が複数種類含まれている場合には、本件発明1?9に規定する(A)?(D)の各成分の配合量が具体的にどのような数値範囲を意味するのか不明確である。
理由(カ)
本件発明1?9において、「酢酸含有量」と記載されているが、本件明細書の段落【0029】の記載を参酌すると、本件発明1?9において「酢酸含有量」は酢酸の含有量を意味するのか、それとも酸度を意味するのか不明である。

イ 判断
(ア)理由(ア)について
本件明細書の段落【0081】において、
「【0081】前記各香気成分の含有量の調整は、各香気成分を前記範囲の含有量になるように濃度が既知の香気成分そのもの、あるいは各香気成分を含有する食品素材を配合・添加することにより行ってもよい。また、上記各香気成分の含有量は、香気成分を測定する一般的な方法を用いて測定することができる。例えば、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)で測定したピーク面積比が前記の濃度範囲になっているか確認すればよい。」
と記載され、段落【0082】には、
「【0082】
〔各香気成分の測定方法・条件〕
固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)による測定
〔1〕香気成分の分離濃縮方法
以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー StableFlex 50/30μm,DVB/Carboxen/PDMS(SUPELCO社製)
・揮発性成分抽出装置
PAL3 RSI120(CTC Analytics社製)
予備加熱:40℃15min
攪拌速度:300rpm
揮発性成分抽出:40℃20min
脱着時間:10分
〔2〕香気成分の測定方法
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、酢酸のピーク面積に対する各香気成分のピーク面積の比を測定する。
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7980B GC System (Agilent Technologies社製)
・GCカラム:DB-WAX (Agilent Technologies社製) 長さ30m,口径0.25mm,膜厚0.25μm
・キャリア:Heガス、ガス流量1.0mL/min
・温度条件:35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温→220℃まで15℃/min昇温→6分間保持
<質量分析条件>
・測定機器:Agilent 7000C GC/MS Triple Quad(Agilent Technologies社製)
・イオン化方式:EI(イオン化電圧70eV)
・スキャン質量:m/z 29.0?350.0」
と記載されている。
このような記載を参酌すれば、当業者は、本件発明1?9の固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定したピーク面積比は、これらの段落に記載された条件により測定されたものであると理解することができ、特許を受けようとする発明が不明確であるということはない。
申立人Bは、令和1年9月30日付け意見書において、段落【0081】はあくまでも例示として記載されているに過ぎず、測定条件を定義するものではない旨主張するが、本件明細書において他の測定条件を記載しているわけでもないため、当業者であれば、段落【0081】及び【0082】に記載された測定条件により特定されていると把握するものである。

(イ)理由(イ)について
固相マイクロ抽出についての概説書、分析例といった資料(乙1:日本食品化学工学会誌、(2018)65巻4号215頁、乙2:「始めてみよう!固相マイクロ抽出(SPME)の基礎」、シグマアルドリッチ社、jttps://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/SAJ/Brochure/2/jasis17_spme.pdf、乙3:「分析パフォーマンスを極めるためのサンプル前処理の手引き アジレントのサンプル前処理製品」、Agilent Technologies社、https://www.chem-agilent.com/pdf/low_5994-0156JAJP.pdf)は、当業者が容易に入手可能であり、このような資料を参考にすれば、測定したい試料の状態に応じて、適切な試料量や抽出方法を決定することができるといえる。
申立人Bは、令和1年9月30日付け意見書において、バイアル瓶の大きさ、試料量やSPMEファイバーを挿入する際の温度は分析結果を左右する要素であるにもかかわらず、これらの事項が特許請求の範囲にも本件明細書にも記載がない旨主張する。
しかし、仮に、上記により決定したバイアル瓶の大きさ、試料量、測定の際の温度等に若干の幅があることにより、香気成分のピーク面積に影響があったとしても、本件発明で規定しているのは、各香気成分の酢酸1部に対するピーク面積比であり、サンプルの調製方法の若干の幅により大きく影響を受けるものではないと認められる。
よって、当該ピーク面積比が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とまではいえない。

(ウ)理由(ウ)について
ガスクロマトグラフ分析には、主にスキャンモードとSIMモードがあり、スキャンモード分析で得られた各マススペクトルにおいて、すべてのm/zの信号を加算して得られるクロマトグラムが全イオンクロマトグラム(TIC)であるところ(甲B14)、本件明細書の段落【0082】には、ガスクロマトグラフ条件として、「スキャン質量:m/z 29.0?350.0」と記載されていることから、全イオンクロマトグラム(TIC)を選択していることは当業者であれば理解することができる。
また、段落【0082】に挙げられたAgilent Technologies社製の特定品番の分析装置には、所定の解析用ソフトウェアが搭載されており、分析装置の使用時には、ソフトウェアによって適切な測定条件が自動的に設定され、解析が行われるから(乙5:「MassHunter「未知のサンプルの解析」ソフトウェアによる異臭成分の解析」、Aglient Technologies社、https://www.chem-agilent.com/appnote/pdf/GC-MS-201609NK-003.pdf)、各香気成分のピーク面積の算出に当たり、どのピークを元に面積を測定すべきか不明ということはない。

(エ)理由(エ)について
本件明細書段落【0082】に挙げられたAgilent Technologies社製の特定品番の分析装置には、あらかじめ所定の解析用ソフトウェアが搭載されており、分析装置の使用時にはこのソフトウェアによるクロマトグラムデコンボリューションによって不完全分離ピークが自動的に分離されたうえで解析が行われ、ピーク面積を特定することができることから(乙5、乙6:「デコンボリューションによる高速かつ正確なEPA8270の定量」、Agilent Technologies社、https://www.chem-agilent.com/cimg/low_5990-3253JAJP.pdf)、当業者にとって、その面積を特定する方法が技術常識から一義的に定まらないということはない。
申立人Bは解析用ソフトウェアの選択は購入者次第であること、化合物の検出はデコンボリューション以外にも方法があること、様々なパラメータを手動で設定する必要があること等の理由を挙げて、ピーク面積が明確でない旨主張する。
しかし、解析用ソフトウェアや各種条件等の相違により、香気成分のピーク面積に多少の影響があったとしても、本件発明で規定しているのは、各香気成分の酢酸1部に対するピーク面積比であり、解析ソフトウェアや各種条件等の相違により大きく影響を受けるものではないと認められる。
よって、当該ピーク面積比が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とまではいえない。

(オ)理由(オ)について
本件発明1、6、8、9は、(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を所定の含有量で含むことを規定するものであるから、このうち一つの成分の含有量がその数値範囲に含まれていれば、他の成分の有無ないし含有量にかかわらず、本件発明1、6、8、9の範囲に含まれるものであることは、その記載から理解できる。
本件発明2における(C)及び(D)から選ばれる少なくとも1種の香気成分についても同様である。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明3?5、7も同様である。

(カ)理由(カ)について
本件発明1、3、6?9には、「酢酸含有量」と記載されている以上、酢酸の含有量を意味すると解される。
本件明細書の段落【0029】には、「なお、酢酸含有飲食品の酢酸含有量は、醸造酢の日本農林規格で規定された「酸度」の測定方法に準じて測定すればよい。」と記載されているが、この記載は、有機酸として酢酸を主体として含む酢酸含有飲食品の場合は、酸度の測定方法に準じて測定すればよいことを規定したものであると当業者であれば理解できる。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、4、5も同様である。

(キ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?9に係る特許は、取消理由12によって取り消すべきものではない。

(13)取消理由13(サポート要件)
ア 取消理由13の概要
令和1年5月27日付けで通知した取消理由13は、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものであるというものであり、具体的な理由は、以下のとおりである。
理由(ア)
本件明細書に記載された官能評価は、評価結果を1点挙げる基準を共通にするなどの手順が踏まれたことや、各パネラーの個別の評価結果が記載されていないから、酸味酸臭や風味を正確に評価したものとはいえない。
理由(イ)
仮に、(A)又は(B)のうち一つの成分でその含有量がその数値範囲に含まれていれば、他の成分の有無ないし含有量にかかわらず、本件発明1の範囲に含まれると解釈した場合、他の成分が規定する数値範囲を超えた場合は、課題を解決し得ることを示す試験例が本件明細書には記載されていない。
仮に、(B)に規定された数値範囲は、香気成分の合計量を意味すると解釈した場合、本件明細書には、複数の香気成分を配合することによって、その数値範囲に含まれるような例において、課題を解決し得ることを示す試験例が開示されていない。
理由(ウ)
「酢酸含有量」が純粋な酢酸自体の含有量を意味していると解釈した場合、酢酸以外の酸を多く含む酢酸含有飲食品においては、酸味酸臭の抑制が不十分になることが理解される。

イ 判断
(ア)理由(ア)について
本件明細書の段落【0011】の「本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができる酢酸含有飲食品及びその製造方法を提供することにある。」との記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができる酢酸含有飲食品及びその製造方法の提供である。
パネラー間で評価を揃えるための手順、各パネラーの個別の評価結果が本件明細書に記載がないからといって、本件明細書の段落【0091】には、「酸味酸臭の抑制効果や、飲食品が本来有する風味の維持・増強効果の評価は、専門のパネラー5名によって次の基準により行った。」と記載され、段落【0092】?【0094】には、その評価基準が
「【0092】
評価基準1(酸味酸臭抑制効果)
5:酸味酸臭が著しく強く抑制される。
4:酸味酸臭が強く抑制される。
3:酸味酸臭が抑制される。
2:酸味酸臭がやや抑制される。
1:酸味酸臭が変化しない。
【0093】
評価基準2(飲食品が本来有する風味の維持・増強効果)
5:飲食品本来の風味が特に強く感じられる。
4:飲食品本来の風味が強く感じられる。
3:飲食品本来の風味が感じられる。
2:飲食品本来の風味がやや感じられる。
1:飲食品本来の風味がほとんど感じられない。
【0094】
評価基準3(総合評価)
5:著しく優れる
4:優れる
3:やや優れる
2:普通
1:劣る」
と記載されている以上、その基準にしたがって、酸味酸臭が抑制された旨の結果が示されることにより、本件発明の上記課題を解決できると当業者が認識できるといえ、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。

(イ)理由(イ)について
本件明細書において、本件発明1の(A)及び(B)に規定された成分のうち、各々の成分について、本件発明1において規定された分量で含有されることにより、酸味及び酸臭の両方をともに抑制できる酢酸含有飲食品の提供という課題が解決できることが示されている以上、(A)及び(B)に規定された成分のうち、一つの成分を本件発明1に規定された分量で包含し、かつ、他の成分をも包含する場合であっても、当該一つの成分は、酸味及び酸臭の抑制効果を発揮するといえ、他の成分が当該一つの成分による作用を妨害することが示されているわけでもないから、上記課題が解決できることを当業者は理解できるものである。

(ウ)理由(ウ)について
酢酸含有飲食品中に含有される酢酸以外の主たる酸である、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸等は、揮発性が極めて弱く、酢酸のような酸味及び酸臭を養成するものではないから、酢酸以外の酸を含む場合であっても、本件発明1?9の課題の発生に大きく関与するものではない。したがって、各香気成分の分量の数値範囲内であれば、上記課題が解決できると当業者は認識できるものである。
申立人Bは、令和1年9月30日付け意見書において、本件明細書の実施例の記載からみて、本件発明においてりんご酢を用いることは通常想定される実施態様であるから、酢酸含有飲食品に含有される有機酸としては酢酸が主体であるとの被申立人の主張は、本件明細書の記載と整合しない旨主張する。
しかし、本件明細書の実施例には、りんご酢を用いた飲用酢が記載されているところ、りんご酢の主成分は酢酸であるから、りんご酢を用いた飲用酢は、酢酸が主体の酢酸含有飲食品に該当するものであり、被申立人の主張に矛盾するところはない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?9に係る特許は、取消理由13によって取り消すべきものではない。

第5 特許異議申立理由の概要及び提出した証拠
1 申立人Aの主張する申立理由
申立人Aは、以下の甲第1?13号証を提出し、以下の申立理由A1?A3を主張している。なお、以下では、各甲号証を指して、それぞれ、単に「甲A1」?「甲A13」という。

甲A1:日本調理科学会誌、2017年、第50巻、第1号、第13?19頁
甲A2:Chinese Journal of Chromatography,2008,Vol.26,No.3,p.285-291
甲A3:Food Chemistry,2015,Vol.167,p.220-228
甲A4:日本食品科学工学会誌、2013年、第60巻、第2号、第59?71頁
甲A5:調理科学、1980年、第13巻、第4号、第315?319頁
甲A6:調理科学、1968年、第1巻、第3号、第131?135頁
甲A7:「しょうゆ分析法 第2版」、日本醤油技術会、昭和41年3月31日発行、第17頁
甲A8:「醸造酢の日本農林規格」、農林水産省、平成20年10月16日改正
甲A9:「マイユ 白ワインビネガー 500ml」、カルディコーヒーファーム オンランショップ、https://kaldi-online.com/item/8722700210832.html
甲A10:「お酢で美肌や便秘の改善!ビネガードリンクの効果・おすすめレシピ」、bibien tv、2017年7月26日、http://bibien.tv/beauty/10128
甲A11:加工酢の商品情報、キューピー醸造株式会社、https://www.kewpie-jyozo.co.jp/product/index06.html
甲A12:知られざるしょうゆのパワー、キッコーマン株式会社、https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/museum/power/index.html
甲A13:日本調理科学会大会研究発表要旨集、2014年、26(0)、124

(1)申立理由A1(新規性)
訂正前の請求項1、7?9に係る発明は、甲A1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、特許を受けることができないものである。

(2)申立理由A2(進歩性)
(2-1)訂正前の請求項1、3?9に係る発明は、甲A1に記載された発明及び甲A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2-2)訂正前の請求項1、3?8に係る発明は、甲A2に記載された発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2-3)訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲A3に記載された発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2-4)訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲A4に記載された発明及び甲A6、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)申立理由A3(サポート要件)
訂正前の請求項1?9は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 申立人Bの主張する申立理由
申立人Bは、以下の甲第1?36号証を提出し、以下の申立理由B1?B5を主張している。なお、以下では、各甲号証を指して、それぞれ、単に「甲B1」?「甲B36」という。

甲B1:特許第5993526号
甲B2:特開2017-35003号公報
甲B3:特開2001-299263号公報
甲B4:ミツカンやさしいお酢 瓶360ml、https://mognavi.jp/assessment/4628931
甲B5:ミツカンごまぽん 350ml 1本、http://web.archive.org/web/20161007090633/https:/lohaco.jp/product/3220231/
甲B6:ミツカン金のごまだれ焙煎荒挽き仕上げ、https://web.archive.org/web/20160528033023/http:/www.mizkan.co.jp/products/detail/series10/986289.pdf#expand
甲B7-1:届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)、ミツカンまろやかりんご酢はちみつりんご、2016年9月12日、https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=41612050330200
甲B7-2:ミツカンまろやかりんご酢はちみつりんご、ラベル
甲B8:Aglientカラム分析機器部品カタログサンプル前処理、2018/2019、Aglient Technologies
甲B9:広島市衛研年報、2010、第29巻、第91?94頁
甲B10:福岡県保健環境研究所年報、2008年、第35号、第71?76頁
甲B11:ガスクロマトグラフPAL3オートサンプラ、アジレント・テクノロジー株式会社、https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1003385
甲B12:Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi、1983年、Vol.30,No.3,p.133?139
甲B13:社団法人日本分析化学会編、「ガスクロ自由自在Q&A?分離・検出編?」、丸善株式会社、平成20年8月31日第3刷発行、第186?187頁
甲B14:ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS分析の基礎、株式会社島津製作所、https://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/support/faq/fundamentals/scansim.htm
甲B15:有機化合物の分析(ガスクロによる分析)、技術情報館「SEKIGIN」、http://sekigin.jp/science/chem/chem_06_04_03_2.html
甲B16:分析報告書、森田弘潤、2019年2月28日
甲B17:醸造酢の日本農林規格、農林水産省、http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000994.html
甲B18:静岡県環境衛生科学研究所、平成20年6月、No.134、食酢
甲B19:石井翔、「酸味を感じる仕組み」、バイオミディア、2012年、第5号、第255頁
甲B20:「醸造物の成分」、財団法人日本醸造協会編集発行、平成11年12月10日、第478?493頁
甲B21:WO2011/030650
甲B22:特開2005-15686号公報
甲B23:Food Sci. Technol. Res.,2008,14(4),p.359-366
甲B24:特開2014-103946号公報
甲B25:特開2010-124696号公報
甲B26:【夏の裏ワザ】ご飯を「ポン酢」で炊いたら超さっぱり!冷めてもウマい!!むしろ冷やしたほうがウマい!!!、https://youpouch.com/2015/07/31/287247/
甲B27:マツコも驚愕した!箸が止まらなくなる「ポン酢ご飯」を【作ってみた】、https://www.lettuceclub.net/weblettuce/article/134450/
甲B28:ポン酢炊き込みご飯のレシピ、クックパッド、https://cookpad.com/search/%E3%83%9D%E3%83%B3%E9%85%A2%E7%82%8A%E3%81%8D%E8%BE%BC%E3%81%BF%E3%81%94%E9%A3%AF
甲B29:手巻き寿司、ミツカン、https://www3.mizkan.co.jp/sapari/menu/cook/recipe/index.html?id=3890
甲B30:米1合は何グラム、クックパッド、https://cookpad.com/cooking_basics/5638
甲B31:みんなの知識ちょっと便利帳、計量スプーン・計量カップによる重量表、https://www.benricho.org/doryoko_cup_spoon/
甲B32:ミツカンごまぽんde酢飯、クックパッド、https://cookpad.com/recipe/4371195
甲B33:金のごまだれ、ごまだれレシピ満載!レシピ集、和食、鶏とさつまいものごま風味おむすび、https://web.archive.org/web/20121118083933/http://www.mizkan.co.jp/kingoma/recipe/jstyle/jstyle23.html
甲B34:料理のいろは、さやいんげんの重さは1本、1パックで何グラム、大きさやカロリーは?、https://www.seikatu-cb.com/omosa/sayaingen.html
甲B35:生姜のひとかけ(一片)はグラムやチューブにするとどのくらいの量?、http://kitchen-report.net/ginger/
甲B36:Food Chemistry, 2003, Vol.83, p.619-629

(1)申立理由B1及びB2(新規性進歩性)
(1-1)訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲B1に記載された発明であるか、甲B1に記載された発明及び甲B16、B20?B27、B36に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであるか、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(1-2)訂正前の請求項1?3、7?9に係る発明は、甲B2に記載された発明であるか、甲B2に記載された発明及び甲B16、B20?B22、B24、B25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであるか、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(1-3)訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲B3に記載された発明であるか、甲B3に記載された発明及び甲B16、B20?B27、B36に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであるか、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(1-4)訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲B4に記載された発明であるか、甲B4に記載された発明及び甲B16、B21、B22、B24、B25、B29、B30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであるか、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(1-5)訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲B5に記載された発明であるか、甲B5に記載された発明及び甲B16、B21、B22、B24、B25、B32に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであるか、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(1-6)訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲B6に記載された発明であるか、甲B6に記載された発明及び甲B16、B21、B22、B24、B25、B30、B31、B33?B35に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであるか、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(1-7)訂正前の請求項1?3、7?9に係る発明は、甲B7に記載された発明であるか、甲B7に記載された発明及び甲B7-2、B16、B21、B22、B24、B25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであるか、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2)申立理由B3(明確性)
訂正前の請求項1?9に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができないものである。
(3)申立理由B4(サポート要件)
訂正前の請求項1?9に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができないものである。
(4)申立理由B5(実施可能要件)
訂正前の請求項1?9に係る発明は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができないものである。

第6 甲号証の記載
(1)甲B2
(甲B2-1)
「【請求項1】
レモン酢及びリンゴ果汁を含み、酢酸含有量(w/v%)に対するリンゴ果汁の含有量(果汁率換算 w/v%)の比が、2.3以上22.6以下である、酢酸含有飲料。」

(甲B2-2)
「【0006】
本願発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、爽やかな酸味に優れる酢酸含有飲料を提供することを目的とする。」

(甲B2-3)
「【0069】
【表5】

【0070】
表5から、リモネンの含有量が、酢酸含有飲料全体に対しおよそ100ppbであるとき、リンゴ酸/酢酸(質量比)が0.003以上0.098の範囲であれば、酢カド、爽やかな酸味及び酢酸含有飲料らしさに優れる酢酸含有飲料が得られることが示された。」

(甲B2-4)
「【0072】
【表6】

【0073】
表6から、リンゴ酸/酢酸(質量比)が0.010の場合、酢酸の含有量は2001mg/L以上8006mg/L以下の範囲で、酢カド、爽やかな酸味及び酢酸含有飲料らしさに優れる酢酸含有飲料が得られることが示された。」

(甲B2-5)
「【0075】
【表7】

【0076】
表7から、リンゴ酸/酢酸(質量比)が0.003、及び、酢酸の含有量が8006mg/L又は6004mg/Lの場合、リモネンの含有量が16.6ppb以上の範囲であれば、酢カド、爽やかな酸味及び酢酸含有飲料らしさに優れる酢酸含有飲料が得られることが示された。」

(2)B4
(甲B4-1)




(3)B5
(甲B5-1)




(4)B6
(甲B6-1)




(5)B7
(甲B7-1)




(6)B21
(甲B21-1)
「【請求項1】
炭素数3?10の直鎖脂肪族アルデヒド類及び炭素数4?10の直鎖脂肪族アルコール類から選択される1種又は2種以上を有効成分とする味覚増強剤。
・・・
【請求項7】
前記直鎖脂肪族アルコール類が、1-オクテン-3-オールである請求項1に記載の味覚増強剤。」

(甲B21-2)
「【0010】
このように、生活習慣病予防のために食品中の塩分と糖分を低減したときに、充分な塩味や甘味、さらにうま味を増強する成分は見出されていない。本発明では、このような問題点に鑑み、生活習慣病予防のための食品中の塩分や糖分を低減したときにも充分な塩味や甘味を得るための味覚増強剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、それ自身では甘味、塩味、うま味を呈さない炭素数3?10の直鎖脂肪族アルデヒド類及び炭素数4?10の直鎖脂肪族アルコール類に甘味、塩味、うま味を増強する効果のあることを見出し、本発明を完成した。
・・・
【0022】
また、前記方法の直鎖脂肪族アルコール類は、炭素数6?8であることが好ましく、更に好ましくは1-オクテン-3-オールである。」

(7)B22
(甲B22-1)
「【請求項1】
天然香料類、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、アセタール類、ケトン類、ケタール類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素及び/又は含硫化合物類、酸類の群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有することを特徴とするフルーツ様香料組成物。
・・・
【請求項57】
アルコール類が、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、2-ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘプチルアルコール、3-メチル-1-ペンタノール、1-オクタノール、3-オクタノール、2-エチルヘキサノール、2-ペンタノール、2-ヘプタノール、1-ペンチン-3-オール、1-ノナノール、2-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカ
ノール、3,4,5,6,6-ペンタメチチル-2-ヘプタノール、プレノール、ヘキサノール、シス又はトランス-3-ヘキセノール、シス又はトランス-2-ヘキセノール、シス-4-ヘキセノール、オクタノール、1-オクテン-3-オール、シス又はトランス-2-ノネノール、シス又はトランス-3-ノネノール、シス-6-ノネノール、2,6-ノナジエノール、トランス-2,シス-6-ノナジエノール、シス-3,シス-6-ノナジエノール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、3,7一ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、6β-ジメチル-2-ノナノール、テルピネオール、ペリラアルコール、ピノカルベオール、ファルネソール、ネロリドール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、クミンアルコール、β-フェニルエチルアルコール、α-フェニルエチルアルコール、ヒドラトロパアルコール、フェノキシエチルアルコール、α-プロピルフェニルエチルアルコール、3-フェニルプロピルアルコール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、3-メチル-1-フェニル-3-ペンタノール、シンナミックアルコール、フェニルエチルカルビノール、ロジノールおよびフルフリルアルコールから選ばれる1種以上の香料からなる請求項1のフルーツ様香料組成物。」

(甲B22-2)
「【0002】
より詳細には、本発明は、例えば飲料、冷菓、デザート、菓子、調味料などの食品に清涼感、爽快感を有し、快適な使用感を付与することができ、また、上記食品の原材料、例えば着色料、苦味料、甘味料、調味料、酸化防止剤、酸味料、保存料、強化剤、増粘安定剤、乳化剤、溶剤、ガムベース、油脂、光沢剤などの香味(渋味、苦味、甘味、塩味、酸味、粉っぽさ、金属味など)の改善、原材料の匂い(脂肪臭、醗酵臭、焦げ臭、酸臭、薬品臭、金属臭などの悪臭)のマスキングなどに有効で、持続性があり且つ液性が酸性あるいは塩基性領域で安定であり、上記食品の原材料の作用・機能を阻害することのない優れた嗜好性を有するフルーツ様香料組成物および該香料組成物を含有する食品に関する。」

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
1 申立理由A2(甲A2に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
申立人Aは、訂正前の請求項1、3?6、8に係る発明は、甲A2発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

しかしながら、上記第4 3(3)で説示したとおり、本件発明1は甲A2発明と少なくとも相違点A2-2で相違するものである。
相違点A2-2
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲A2発明は、醤油自体である点

そして、上記第4 3(4)で説示したとおり、相違点A2-2について、醤油自体に係る発明である甲A2発明に基づいて、醤油を含有しない酢酸含有飲食品を調製することは、当業者が容易に想到し得ることではないことは明らかであるから、本件発明1は、甲A2発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると、「醤油を含有しない」という発明特定事項を有する本件発明3?6、8に係る発明もまた、甲A2発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人Aが主張する、甲A2発明に基づく申立理由A2は理由がない。

2 申立理由A2(甲A3に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如)
申立人Aは、訂正前の請求項2?6、8に係る発明は、甲A3発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

しかしながら、上記第4 3(5)で説示したとおり、本件発明1は、甲A3発明と少なくとも相違点A3-3で相違するものである。
相違点A3-3
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲A3発明は、醤油自体である点

甲A3発明は、醤油自体であるところ、これに基づいて、醤油を含有しない酢酸含有飲食品を調製することは、当業者が容易に想到し得ることではないことは明らかであるから、本件発明1は、甲A3発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると、「醤油を含有しない」という発明特定事項を有する本件発明2?6、8に係る発明もまた、甲A3発明及び甲A5、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人Aが主張する、甲A3発明に基づく申立理由A2は理由がない。

3 申立理由A2(甲A4に記載された発明を引用発明とする進歩性)
申立人Aは、訂正前の請求項3?6、9に係る発明は、甲A4発明及び甲A6、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

しかしながら、上記第4 3(6)で説示したとおり、本件発明1は、甲A4発明と少なくとも相違点A4-3で相違するものである。
相違点A4-3
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲A4発明は、醤油を含有するものである点

そして、上記第4 3(7)で説示したとおり、醤油を含有するつゆに係る発明である甲A4発明において、醤油を含有しないようにすることは、当業者が容易に想到し得ることではない以上、本件発明1は、甲A4発明及び甲A6、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると、「醤油を含有しない」という発明特定事項を有する本件発明3?6、9もまた、甲A4発明及び甲A6、A10、A11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人Aが主張する、甲A4発明に基づく申立理由A2は理由がない。

4 申立理由A3(サポート要件)
(1)申立人Aの主張
申立人Aは、訂正前の請求項1?5、7?9に係る発明は、以下の理由により、サポート要件を満たしていない旨主張する。
理由(ア)
本件発明は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することを課題としているが、風味や酸味及び酸臭は、被添加飲食品の種類に影響されることが技術常識であるし(甲A1図3、4)、風味や酸味及び酸臭は、酢酸含有飲食品の種類によっても影響されることが技術常識であるから、被添加飲食品の種類によっては、又は、酢酸含有飲食品の種類によっては、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭を抑制できない可能性が高く、被添加飲食品の種類が特定されておらず、また、酢酸含有飲食品の種類が特定されていない本件発明は、上記の課題を解決し得ない部分を包含している。

理由(イ)
本件明細書の実施例1では、(C)と(D)については、単体での使用効果は、(A)、(B)と比べると不十分であると記載されており、(A)又は(B)の添加濃度を変化させた評価の結果である表3-1、3-2をみると、不十分とされた(C)又は(D)の場合と評点が同程度のものがいくつか存在しているから(1-オクテン-3-オールが1ppm、5ppm)、実施例の酢酸含有飲食品が、実際に、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制できることを当業者は理解できない。

(2)判断
ア 理由(ア)について
本件明細書の段落【0011】の記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができる酢酸含有飲食品及びその製造方法の提供である。
本件明細書の実施例1では、酸味酸臭が異質な風味として認知しやすい白飯を用いた実験において、成分(A)又は(B)を含有することにより、酸味酸臭が抑制されること、及び、食品が本来持つ風味がより感じやすくなることが確認されている以上、白飯以外の酢酸含有飲食品においても、成分(A)又は(B)は、酢酸に対して同様の作用を及ぼすことを当業者は理解できる。
よって、本件発明1?5、7?9は、上記課題を解決し得ない部分を包含しているとはいえない。

イ 理由(イ)について
本件明細書の表3-1、3-2には、「白飯の酸味・酸臭抑制効果」について評点が2のものも存在するが、評点2は「酸味酸臭がやや抑制される」であり(本件明細書段落【0092】)、本件発明の上記課題が解決できないとまではいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、申立人Aが主張する申立理由A3は理由がない。

5 申立理由B1及びB2(甲B2に記載された発明を引用発明とする新規性進歩性欠如)
(1)申立人Bの主張
申立人Bは、訂正前の請求項1?3、7?9に係る発明は、甲B2に記載された発明であるか、甲B2に記載された発明及び甲B16、B20?B22、B24、B25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

(2)甲B2に記載された発明
上記記載事項(甲B2-3)?(甲B2-5)によれば、甲B2には、次の発明が記載されていると認められる。
「穀物酢、リンゴ果汁、リモネンを含む酢酸含有飲料」(以下、「甲B2発明」という。)

(3)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲B2発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
相違点B2-1
本件発明1は、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有するのに対し、甲B2発明はそのような特定はない点。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下

イ 判断
(ア)新規性についての判断
本件発明1と甲B2発明は、少なくとも上記相違点B2-1で実質的に相違するものであるから、本件発明1は甲B2発明ではない。

(イ)進歩性についての判断
申立人Bは、甲B21には、甘味、塩味、うま味を増強することによる食品の味を改善する目的で、1-オクテン-3-オールを配合することが記載されており、甲B22には、酸味料などの酸味の改善、酸臭のマスキングを目的として、1-オクテン-3-オールを配合することが記載されていることから、爽やかな酸味に優れる酢酸含有飲料の提供を目的としている甲B2発明において、1-オクテン-3-オールを配合することは、当業者が容易になし得ることである旨主張する。
まず、甲B2発明は、酢酸含有飲料は酸味及び刺激臭を有するものであるところ、レモン酢及びリンゴ果汁を含有させることにより、それらの問題点を解決したものである。
一方、甲B21には、食品中の塩分や糖分を低減したときにも十分な塩味や甘味を得るための味覚増強剤として、1-オクテン-3-オールを用いることは記載されているものの、酢酸含有飲料における酸味及び刺激臭を抑制するために、1-オクテン-3-オールを配合することは記載されていない。
また、甲B22は、食品の原材料の香味の改善、特異臭のマスキングに効果があるフルーツ様香料組成物を提供することを目的としたものであって、当該組成物は、アルコール類を含むものであり、当該アルコール類として、多数列挙されている化合物の一つに1-オクテン-3-オールが記載されているものであるが、とりわけ、1-オクテン-3-オールが、酢酸含有飲料における酸味及び刺激臭を抑制するために使用できることを示したものでもない。
また、甲B16、B20、B24、B25の記載を検討しても、酢酸含有飲料における酸味及び刺激臭を抑制するために、1-オクテン-3-オールを配合することが技術常識であるといえる根拠を見出すことはできない。
してみると、甲B2発明の酢酸含有飲料において、1-オクテン-3-オールを配合することは、当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件発明1は、風味に悪影響を及ぼすことなく酢酸含有飲食品の酸味及び酸臭をともに抑制することができるという当業者の予測し得ない効果を奏するものである。

ウ まとめ
本件発明1は、甲B2発明ではなく、また、甲B2発明及び甲B16、B20?B22、B24、B25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2、3、7?9
本件発明2、3、7?9は、いずれも、上記相違点B2-1に係る発明特定事項を有するものであるから、上記イで説示したのと同様に、本件発明2、3、7?9は甲B2発明ではないし、また、甲B2発明及び甲B16、B20?B22、B24、B25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)小括
以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B2発明に基づく申立理由B1及びB2は理由がない。

6 申立理由B1及びB2(甲B3に記載された発明を引用発明とする新規性進歩性)
(1)申立人Bの主張
申立人Bは、訂正前の請求項9に係る発明は、甲B3発明であるか、甲B3に記載された発明及び甲B16、B20?B27、B36に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

(2)判断
上記第4 3(10)で説示したとおり、本件発明1は、甲B3発明と少なくとも相違点B3-2で相違するものである。
相違点B3-2
酢酸含有飲食品が、本件発明1では、醤油を含有しないものであるのに対し、甲B3発明は、醤油を含有するものである点

そして、上記第4 3(11)で説示したとおり、20%もの醤油を含有する酸性液体調味料に係る発明である甲B3発明において、醤油を含有しないようにすることは、当業者が容易に想到し得ることではない以上、本件発明1は、甲B3発明及び甲B16、B20?B27、B36に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。そうすると、「醤油を含有しない」という発明特定事項を有する本件発明9もまた、甲B3発明及び甲B16、B20?B27、B36に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B3発明に基づく申立理由B1及びB2は理由がない。

7 申立理由B1及びB2(甲B4?B7それぞれに示された製品を引用発明とする新規性進歩性欠如)
(1)申立人Bの主張
申立人Bは、訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲B16の分析報告書によれば、甲B4?B7それぞれに記載された発明であるか、甲B4?B7それぞれに記載された発明及び甲B16、B21、B22、B24、B25、B29?B35に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

(2)判断
甲B16は、「ミツカンやさしいお酢」なる製品、「ミツカンごまぽん」なる製品、「ミツカン金のごまだれ焙煎荒挽き仕上げ」なる製品及び「まろやかりんご酢はつみつりんご」なる製品に含まれる香気成分を分析し、香気成分と酢酸のピーク面積比を算出した結果を示したものであるが、甲B16において分析された各製品自体が(上記記載事項(甲B16-2))、本件優先日前に公然実施された製品であるかは不明である。
したがって、甲B16の分析報告書は、本件優先日前に公然実施された製品における香気成分と酢酸のピーク面積比を示した証拠として採用することはできない。
よって、本件発明1は、本件優先日前に公然実施された発明であるとはいえないし、また、公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明2?9についての申立人Bの主張は、本件発明1についてのものと趣旨を同じくするものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2?9は、本件優先日前に公然実施された発明であるとはいえないし、公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B4?B7それぞれに記載された発明に基づく申立理由B1及びB2は理由がない。

8 申立理由B3(明確性)
(1)申立人Bの主張
申立人Bは、酢酸と香気成分の割合につき、その配合量を重量比率等、当該技術分野において汎用されている比率で規定することが容易に行うことができるにもかかわらず、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定したピーク面積比で規定していることの技術的意味が不明である旨主張する。

(2)判断
本件明細書によると、酢酸含有飲食品は、酢酸由来の刺激的な酸味及び酸臭を有するという問題点があるところ、本件発明1?9は、特定種類の香気成分を含有させることで、酸味及び酸臭をともに抑制できることを新規に知見したことにより完成されたものであり、本件発明1?9では、酸味及び酸臭の原因となる酢酸とそれを抑制する作用を有する香気成分の割合を、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定したピーク面積比で特定したものであって、その技術的意味は理解できるものである。
そして、上記第4 3(12)で説示したとおり、本件発明1?9における「固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比」について、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法による測定条件、サンプルの調製方法、クロマトグラムの選択及びピーク面積比率の算出方法は明確であるから、本件発明1?9の「固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比」を当業者は明確に把握することができる。
酢酸と香気成分の割合を他の方法で規定することができることをもって、本件発明1?9におけるピーク面積比での特定が明確ではないという理由にはならない。
以上のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B3は理由がない。

9 申立理由B5(実施可能要件)
(1)申立人Bの主張
申立人Bは、明確性要件違反で述べたとおり、本件発明は、酢酸含有量に関する規定、香気成分の配合割合に関する規定の定義が不明確であるから、第三者がこれらの構成を充足するか否かを判断することは不可能であり、第三者において過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できない旨主張する。

(2)判断
上記第4 3(12)で説示したとおり、本件発明1?9において、酢酸含有量に関する規定、香気成分の配合割合に関する規定の意味は明確である以上、当業者が本件発明1?9を実施することができないということはない。
以上のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B5は理由がない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、本件請求項1?9に係る特許について、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有し、喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下であることを特徴とする、醤油を含有しない酢酸含有飲食品。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下
【請求項2】
以下(C)及び(D)から選ばれる少なくとも1種の香気成分をさらに以下の分量含有することを特徴とする請求項1に記載の酢酸含有飲食品。
(C)フルフラール、フルフリルアルコール、2-アセチルフラン、3-メチルフラン、2-メチルフラン及び2-(5H)フラノンから選ばれる少なくとも1種のフラン化合物;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、フルフラールのときに酢酸1部に対して0.0001部以上5部以下、フルフリルアルコール及び2-アセチルフランのときに酢酸1部に対して10ppm部以上15部以下、3-メチルフラン、2-メチルフラン及び2-(5H)フラノンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上15部以下
(D)ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール及びノナナールから選ばれる少なくとも1種の脂肪族アルデヒド類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上15部以下
【請求項3】
前記酢酸含有飲食品の喫食時における酢酸含有量が、0.015質量%以上0.2質量%未満である請求項1または2に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項4】
前記酢酸含有飲食品が、酢酸含有穀類加工品であることを特徴とする請求項3に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項5】
前記酢酸含有穀類加工品が、酢酸を含有する白飯または塩飯であることを特徴とする請求項4に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項6】
喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上0.2質量%未満である酢酸含有穀類加工品を製造するのに使用され、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を以下の分量含有することを特徴とする酢酸含有穀類加工品のための、醤油を含有しない調製用飲食品。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下
【請求項7】
前記酢酸含有飲食品が、前記酢酸含有飲食品の喫食時における酢酸含有量が0.2質量%以上5質量%以下である酢酸含有調味料または酢酸含有飲料であることを特徴とする請求項1または2に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項8】
酢酸含有飲食品を製造する方法であって、
喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下となるように酢酸を調整するとともに、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を、以下の分量となるように含有量を調整することを特徴とする、醤油を含有しない酢酸含有飲食品の製造方法。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下
【請求項9】
喫食時における酢酸含有量が0.015質量%以上5質量%以下となるように酢酸を調整するとともに、以下(A)及び(B)から選ばれる少なくとも1種の香気成分を、以下の分量となるように含有量を調整することにより、醤油を含有しない酢酸含有飲食品の酸味酸臭を抑制し、かつ、被添加飲食品が本来有する風味を増強する方法。
(A)1-オクテン-3-オール;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下
(B)テルピネン、p-シメン、ムロロール及びカダレンから選ばれる少なくとも1種のモノテルペン類またはセスキテルペン類;固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法で測定した場合におけるピーク面積比が、テルピネン及びp-シメンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上5部以下、ムロロール及びカダレンのときに酢酸1部に対して1ppm部以上10部以下
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-14 
出願番号 特願2018-17843(P2018-17843)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 雄三  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 冨永 みどり
神野 将志
登録日 2018-08-10 
登録番号 特許第6382461号(P6382461)
権利者 株式会社Mizkan Holdings 株式会社Mizkan
発明の名称 酢酸含有飲食品及びその製造方法、酢酸含有穀類加工品のための調製用飲食品、酢酸含有飲食品の酸味酸臭抑制・風味増強方法  
代理人 渥美 久彦  
代理人 渥美 久彦  
代理人 渥美 久彦  

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