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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B22F
審判 一部申し立て 2項進歩性  B22F
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:83  B22F
管理番号 1358613
異議申立番号 異議2019-700373  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-07 
確定日 2019-12-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6414085号発明「金属ナノ微粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6414085号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6414085号の請求項1、5、6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6414085号の請求項1?8に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての2015年(平成27年)2月12日(優先権主張 平成26年2月13日)を国際出願日とする出願は、平成30年10月12日に特許権の設定登録がされ、同年10月31日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の経緯は以下のとおりである。

令和1年 5月 7日 異議申立書(請求項1、5及び6に対して)提出
特許異議申立人 藤井正剛
代理人 永田元昭 外4名
(以下、「申立人」という。)
同年 7月 3日 取消理由通知及び審尋(申立人に対して)の発送
(起案日 共に令和1年6月28日)
同年 8月 6日 意見書及び訂正請求書の提出(以下、本訂正請求書
による訂正請求を「本件訂正請求」という。)
同年 8月30日 通知書の発送
(特許権者の意見書及び訂正請求書の発送)

なお、審尋と、特許権者の意見書及び訂正請求書の発送に対して、申立人から期間内に応答はなかった。

第2 訂正請求について
1.訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6414085号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について訂正することを求める、というものである。

2.訂正事項
訂正前の、
「【請求項1】
金属化合物(a)とアミン化合物(b)を含有する組成物を反応させる平均粒子径が53.7nm以上200nm以下の金属ナノ微粒子の製造方法であって、組成物中のアミン化合物(b)の含有量が、金属化合物(a)に含まれる金属原子の物質量1molに対して、0.2mol以上0.9mol以下の範囲であり、反応が、50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応であることを特徴とする方法。」を、
訂正後に、
【請求項1】
金属化合物(a)とアミン化合物(b)を含有する組成物を反応させる平均粒子径が53.7nm以上200nm以下の金属ナノ微粒子の製造方法であって、金属化合物(a)の金属種が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、組成物中のアミン化合物(b)の含有量が、金属化合物(a)に含まれる金属原子の物質量1molに対して、0.2mol以上0.9mol以下の範囲であり、反応が、50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応であることを特徴とする方法。」と訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?8についても同様である。
なお、下線部は訂正箇所である。(以下同じ。)

3.訂正の可否
(1)訂正の目的、新規事項及び拡張変更の有無
本件訂正請求は、訂正事項として、訂正前の請求項1に「金属化合物(a)の金属種が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、」を追加して特定するものであるので、特許請求の範囲の記載を減縮することを目的とするものであり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。
そして、本件明細書には「【0023】金属化合物(a)の金属種としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム等を例示することができる。中でも、導電性、及び耐酸化性の点で、金、銀、白金が好ましく、コスト及び低温焼結性の点で、銀がより好ましい。また、銅、ニッケル、アルミニウムも好ましい。」と記載されているから、本訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって新たな技術的事項を追加するものではない。

(2)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?8について、訂正前の請求項2?8はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるので、本件訂正前の請求項1?8は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項について訂正の請求をするものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
また、本件訂正請求は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1-8〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。

(3)独立特許要件について
ア 本件特許の設定登録時の請求項1、5、6に対して特許異議申立がなされたが、本件訂正請求は一群の請求項である〔1-8〕に対してなされたので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に基づき、特許異議申立のなされていない請求項2?4、7、8に係る発明が、本件特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかを検討する。

イ 後記するように、訂正後の請求項1、5、6に係る発明は、申立人が提出した理由、証拠をみても新規性及び進歩性を有しないものとはいえないから、訂正後の請求項1、5、6を直接又は間接的に引用する請求項2?4、7、8に係る発明も同様に申立人が提出した理由、証拠から新規性及び進歩性を有しないものとはいえない。
また、訂正前の請求項1?8に係る発明の記載要件についての不備はないところ、異議申立において記載要件についての申立理由はなく、訂正後の請求項2?4、7、8は訂正前と文言が同じだから、訂正後の請求項2?4、7、8に係る発明についても、記載要件についての不備はないものである。
さらに、他に請求項2?4、7、8に係る発明について特許を受けることができない理由を発見しない。

ウ 以上から、訂正後の請求項2?4、7、8に係る発明は独立特許要件を満たすものである。

4.訂正請求についての結言
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5?7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正を認める。

第3 本件発明について
以上のとおり本件訂正請求が認められるので、本件特許の請求項1?8に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
金属化合物(a)とアミン化合物(b)を含有する組成物を反応させる平均粒子径が53.7nm以上200nm以下の金属ナノ微粒子の製造方法であって、金属化合物(a)の金属種が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、組成物中のアミン化合物(b)の含有量が、金属化合物(a)に含まれる金属原子の物質量1molに対して、0.2mol以上0.9mol以下の範囲であり、反応が、50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応であることを特徴とする方法。
【請求項2】
組成物が、さらに、20℃の水に対して1g/L以上溶解する有機溶媒(c)を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒(c)が、エーテル結合とヒドロキシル基を有する溶媒を含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒(c)が、グリコールエーテル類、及びアルコキシ基を有するアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
金属化合物(a)が、蓚酸金属塩である請求項1?4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
アミン化合物(b)が、第1級アミン、及び第1級アミンと第3級アミンを有するジアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1?5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
組成物が、さらに、脂肪酸(d)を含有する請求項1?6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
組成物中の脂肪酸の含有量が、金属化合物(a)1重量部に対して、0.1重量部以上15重量部以下である請求項7に記載の製造方法。」

第4 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として後記する甲第1号証、甲第2号証を提出し、以下の理由により、請求項1、5及び6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
なお、本件特許第6414085号の特許公報に記載の請求項1?8に記載の発明をそれぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。

1.申立理由1(本件特許発明1について)
本件特許発明1は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

2.申立理由2(本件特許発明5について)
本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術手段に基いて、又は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

3.申立理由3(本件特許発明6について)
本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

<証拠>
甲第1号証:Journal of Materials Research Vol.26,No.5,Mar 14,2011,pp.652-657
甲第2号証:Journal of Nanoscience and Nanotechnology Vol.9,No.11,2009,pp.6655-6660

第5 当審の判断
令和1年7月3日発送(令和1年6月28日起案)の取消理由通知では、上記申立理由1?3の内の甲第1号証を主引用例とする場合について通知したが、以下では、上記申立理由全てについて、訂正後の本件発明1、5、6について以下にまとめて検討する。

1.甲第1号証の記載事項
<1ア>「Tungsten nanoparticles (W-NPs) with average sizes ranging between 30 and 80nm were prepared by thermolytic decomposition of tungsten hexacarbonyl in presence of a mixture of surfactants,oleic acid and oleyl amine. Fourier transform infrared spectroscopy and x-ray photoelectron spectroscopy (XPS)results reveal that the surfactants oleic acid and oley] amine bonded to the surface of W-NP through their functional groups, which in turn render stability to the nanopowders with respect to coarsening or aggregation. XPS results also confirm that carbon is present only at the surface of the W-NPs. The as-synthesized W-NPs were amorphous. and on heat treatment at 600 °C for 1 h, the amorphous powders transform into a body-centered cubic crystalline form(α-W).」(652頁の冒頭の要約欄)
(和訳)「平均粒径が30?80nmであるタングステンナノ微粒子(W-NPs)を、界面活性剤であるオレイン酸およびオレイルアミンの混合物の存在下でヘキサカルボニルタングステンを熱分解して調製した。フーリエ変換赤外分光、X線光電子分光(XPS)の結果は、界面活性剤であるオレイン酸およびオレイルアミンがそれらの官能基を介してW-NPの表面に結合していることを示しており、それらの官能基は凝集や粗大化を防いでナノ粉体の安定化に寄与している。また、XPSの結果により、W-NPsの表面にのみ炭素が存在することが確認された。合成されたW-NPsは、アモルファス構造であり、600℃で1時間の熱処理において、かかるアモルファスの粉体は、体心立方結晶構造(α-W)に変換された。」

<1イ>「II. EXPERIMENTAL DETAILS
A. Materials
Tungsten hexacarbonyl [W(C0)_(6); (99.9%)],diphenil
ether (98%),oleic acid (90%),oleyl amine(90%),ethanol
(99.8%), and hexane (99%) were purchased from Acros
Organics (Belgium, IL),and were used to prepare W-Ps.

B.Synthesis
To a 250-mL three-neck distillation flask containing 40
mL of solvent diphenyl ether,a(1:1)mixture of surfac-
tants oleic acid and oleyl amine (6 mmol each)were
added and mixed thoroughly.High purity nitrogen was
flushed into the system for lO min to eliminate any traces
of oxygen.The reaction mixture was preheated to 100 °c
for 5 min and then W(CO)_(6) at vaiious concentrations
(2-10 mmol)were added into the system, and reaction
mixture was refluxed for 1 h. The details of experimental
conditions and respective particle sizes with standard
deviations are given in Table I.On heating for 1 h,the
solution turns from pale yellow to brown and subsequently
to black color, which indicates completion of W(C0)_(6 )
decomposition. 0n cooling to room temperature,awell-
dispersed solution was obtained without any precipitates at
the bottbm. W-NPs were recovered from the reaction
mixture by treating it with ethanol (60 mL)under ambient
conditions and centrifuging the solution at 6000 rpm for
15 min. Recovered W-NPs were subsequently washed
several times with ethanol and redisperssedin hexane.」(653頁左欄3?29行)
(和訳)「II.実験の詳細
A.材料
ヘキサカルボニルタングステン[W(CO)_(6) ; (99.9%)]、ジフェニルエーテル(98%)、オレイン酸(90%)、オレイルアミン(90%)、エタノール(99.8%)およびヘキサン(99%)をAcros Organics社(ベルギー、I L)から購入し、W-NPsの調製に使用した。

B.合成
40mLの溶媒:ジフェニルエーテルを含む250mL容量3つ口蒸留フラスコに、界面活性剤であるオレイン酸とオレイルアミンとの1:1混合物(各6mmol)を添加し、十分攪拌した。高純度の窒素ガスをこの系に10分間ほど流しこみ、微量含まれる酸素を除去した。反応混合物は、100℃で5分間プレヒートし、次いで、所定濃度(2?10mmol)のW(CO)_(6)をこの系に添加し、1時間の還流処理を行った。実験条件の詳細ならびにそれぞれの粒径および標準偏差は表1に示している。
1時間の加熱処理後、溶液は淡黄色から茶色に変化し、続いて黒色に変化した。このことはW(CO)_(6)の分解が完了したことを示す。室温まで冷却後、よく分散した溶液を得た。容器の底には沈殿物は認められなかった。大気条件下でエタノール(60mL)にて反応物を処理し、次いで6000rpmで15分間の遠心分離を行うことによって、W-NPsを回収した。回収したW-NPsは、次にエタノールで数回洗浄し、ヘキサン中に分散させた。」

<1ウ>TABLE I(653頁左欄)を以下に示す。

(和訳)

<1エ>「III. RESULTS AND DISCUSSION
In the synthesis of W-NPs, metal precursor W(CO)_(6)
was decomposed in diphenyl ether in presence of oleic
acid and oleyl amine. Choice of diphenvl ether as solvent
with a boiling point of 220℃ was based on decomposi-
tion temperature of 140 ℃ for W(C0)_(6). The choice of
surctants was based on previous literature that oleic
and oleyl amine stabilizes a variety of colloids. A
synergistic effect of mixture of these two surfactants was
much more profound than that of their individual contri-
butions. Present reaction process takes the advantage of
oleic acid and oleyl amine as a means to passivate the
surface and render W-NPs stable with respect to coarsen-
ing or aggregation.」(653頁右欄下から9行?654頁左欄5行)
(和訳)「III.結果および考察
W-NPsの合成において、金属前駆体W(CO)_(6)は、オレイン酸およびオレイルアミンの存在下、ジフェニルエーテル中で分解した。溶媒として沸点が220℃であるジフェニルエーテルを選択したのは、W(CO)_(6)の分解温度が140℃であることに基づいている。
界面活性剤の選択は、先の文献における「オレイン酸およびオレイルアミンは種々のコロイドを安定化する」との知見に基づいている。これら二つの界面活性剤の相乗効果は、それらを単独で用いた場合よりもかなり大きい。本反応プロセスでは、オレイン酸およびオレイルアミンの表面不動態化作用を利用しており、凝集や粗大化を防いでW-NPsの安定化に寄与している。」

<1オ>TABLE II(655頁右欄)を以下に示す。

(和訳)

<1カ>「When the particle size increases
from 30 to 80 nm,it is accompanied by the corresponding
decrease in nonmetal concentrations such as C,0,and N
(Table II). This could be attributed to the decrease in
surface to volume ratio of W-NPs with increase in particle
size from 30 to 80 nm.」(656頁左欄8?13行)
(和訳)「粒径が30nmから80nmに増大するときは、それに対応して非金属の濃度(例えばC、OおよびN)が減少する(表2参照)。このことは、粒径が30nmから80nmに増大するに伴い、W-NPsの容積に対する表面積割合が減少することに起因している。」

2.甲第2号証の記載事項
<2ア>「Silver (I) oxalate, Ag_(2)(C_(2)O_(4)), reacts with two equivalents of oleylamine(Ag:oleyiamine =1:1mole/mole)to form an oxalate-bridged silver-oleylamine complex, [(oleylamine)Ag(μ-C_(2)O_(4))Ag(oleylamine)].The precursor complex is thermally decomposed at150℃ with CO_(2) evolution to produce Ag nanoparticles with?11 nm dimension. The Ag nanoparticles contain?12 wt% of oleylamines as the surface stabilizer. In the synthetic mechanism, the oxalate ligand acts as a two-electron reducing agent.
The precursor complex is directly transformed into oleylamine-stabilized Ag nanoparticles in high yields of more than 80% without any additional synthetic organic solvents and reduction agents.
」(6655頁の冒頭の要約欄)
(和訳)「蓚酸銀、Ag_(2)(C_(2)O_(4))を、2倍当量のオレイルアミン(Ag:オレイルアミン=1 : 1モル/モル)と反応させ、蓚酸エステル結合銀-オレイルアミン複合体[(オレイルアミン)Ag(μ-C_(2)O_(4))Ag(オレイルアミン)]を形成した。かかる前駆体を150℃までの加熱温度でCO_(2)発生を伴う熱分解処理し、11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子を製造した。当該Agナノ微粒子は、表面安定剤として、12wt%またはそれ以下のオレイルアミンを含む。かかる合成メカニズムにおいて、上記蓚酸エステルリガンドは、二電子還元剤として機能する。他に合成有機溶媒や還元剤を添加することなく、80%以上の高収率で上記前駆体たる複合体をAgナノ微粒子に直接的に変換することができる。」

<2イ>「the alkylamine-stabilized Ag nanoparticles are among the most useful candidates for low-temperature sintering materials, realizing fine printed circuits on organic polymer substrates that are unstable at temperatures above 150℃. There has been also increasing importance of alkylamine-stabilized Au,Pt, Pd, and Cu nanoparticles, which will show higher catalytic performance of their zero-valent surfaces bearing the neutral surfactance.」(6655頁右欄下から15?7行)
(和訳)「アルキルアミンで安定化されたAgナノ微粒子は、低温焼成マテリアルに対して最も利用しやすい材料候補であり、150℃以上では不安定な有機ポリマー基材上に微細なプリント基板を形成することを実現する。
また、アルキルアミンで安定化されたAuナノ微粒子、Ptナノ微粒子、Pdナノ微粒子、Cuナノ微粒子の重要性が高まっており、かかるナノ微粒子は、中性界面活性剤を有するゼロ価の表面において高い触媒活性を示し得る。」

3.甲第1号証に記載された発明を主引用例とする場合
3-1.甲第1号証に記載された発明
i)甲第1号証の記載事項<1ア><1イ>から、甲第1号証には、
「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」と、「オレイルアミン」を含み「オレイン酸」と「ジフェニルエーテル」も含む「組成物」を「還流処理」して、「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」を分解し「オレイン酸およびオレイルアミンがそれらの官能基を介してW-NPの表面に結合している」「平均粒径が30?80nmであるタングステンナノ微粒子(W-NPs)」を製造する方法が記載されているといえる。
ii)同<1ウ>から、「実験3」に注目すると、原料の「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」「10mmol」したがって「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」に含まれる「W」「10mmol」に対して「オレイルアミン」は「6mmol」で反応するから、これは、上記「組成物」中の「オレイルアミン」の含有量が、「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」に含まれる「W原子」の物質量1molに対して、0.6molで反応するといえる。
iii)同<1ウ>、<1オ>で「実験3」に注目すると、製造された「タングステンナノ微粒子(W-NPs)」の平均粒径は「80±9nm」である。
iv)以上から、甲第1号証には、
「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)と、オレイルアミンを含みオレイン酸とジフェニルエーテルも含む組成物を、還流処理して、ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)を分解しオレイン酸およびオレイルアミンがそれらの官能基を介してW-NPの表面に結合させて、平均粒径が80±9nmのタングステンナノ微粒子(W-NPs)とする製造方法であって、組成物中のオレイルアミンの含有量が、ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)に含まれるW原子の物質量1molに対して、0.6molである、方法。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

3-2.本件発明1と引用発明1との対比
i)本件発明1の「金属種が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であ」る「金属化合物(a)」と、引用発明1の「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」とは、「金属化合物」である点で共通する。
ii)引用発明1の「オレイルアミンを含みオレイン酸とジフェニルエーテルも含む組成物」は、「オレイルアミン」が「アミン化合物(b)」に相当するから、本件発明1の「アミン化合物(b)を含有する組成物」に相当する。
iii)引用発明1の「還流処理して、ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)を分解しオレイン酸およびオレイルアミンがそれらの官能基を介してW-NPの表面に結合させ」ることは、本件発明1の「反応させる」ことに相当する。
iv)引用発明1の「平均粒径が80±9nmのタングステンナノ微粒子(W-NPs)とする製造方法」は、本件発明1の「平均粒子径が53.7nm以上200nm以下の金属ナノ微粒子の製造方法」に相当する。
v)引用発明1の「組成物中のオレイルアミンの含有量が、ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)に含まれるW原子の物質量1molに対して、0.6molである」は、本件発明1の「組成物中のアミン化合物(b)の含有量が、金属化合物(a)に含まれる金属原子の物質量1molに対して、0.2mol以上0.9mol以下の範囲であ」ることに相当する。
vi)以上から、本件発明1と引用発明1とは、
「金属化合物(a)とアミン化合物(b)を含有する組成物を反応させる平均粒子径が53.7nm以上200nm以下の金属ナノ微粒子の製造方法であって、組成物中のアミン化合物(b)の含有量が、金属化合物(a)に含まれる金属原子の物質量1molに対して、0.2mol以上0.9mol以下の範囲である、方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
「金属化合物(a)」の「金属種」について、本件発明1では「金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であ」るのに対して、引用発明1では「W」(タングステン)である点。
<相違点2>
「反応」について、本件発明1が「50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応である」のに対して、引用発明1は「還流処理して、ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)を分解しオレイン酸およびオレイルアミンがそれらの官能基を介してW-NPの表面に結合させ」るものである点。

3-3.本件発明1と引用発明1との相違点の検討
(1)相違点1について
i)甲第1号証の記載事項<1ア>に「平均粒径が30?80nmであるタングステンナノ微粒子(W-NPs)を、界面活性剤であるオレイン酸およびオレイルアミンの混合物の存在下でヘキサカルボニルタングステンを熱分解して調製した。」とあるように、甲第1号証には「タングステンナノ微粒子」の製造について記載されるのみで、「タングステン」ではない「金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウム」の微粒子の製造については記載も示唆も見いだせないから、引用発明1はそもそも他の金属粒子の生成を意図するものとはいえない。
また、仮に当該意図を当業者が認識できたとしても、「平均粒径が30?80nmであるタングステンナノ微粒子」の製造方法が、直ちに「金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウム」の微粒子の製造方法に用いることができるものとも認められない。
ii)そこで甲第2号証について検討すると、甲第2号証には上記記載事項<2ア>に記載されるように、「蓚酸銀」を「オレイルアミン」と加熱して反応させて、オレイルアミンが表面安定剤として表面に存在する銀の微粒子が製造されており、これは、引用発明1が「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」を「オレイルアミン」と加熱して反応させて、「オレイルアミン」がタングステンの微粒子の表面に存在するものであるのに対して、製造される微粒子の金属の種類が異なるだけのものであり、しかも、「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」の分解温度が140℃(上記<1エ>)であるのに対して、「蓚酸銀」の分解温度も140℃である。
iii)しかし、引用発明1では、後記するように、「ヘキサカルボニルタングステン」を分解して「オレイン酸およびオレイルアミンがそれらの官能基を介してW-NPの表面に結合」させるための加熱温度は「257又は259℃程度」であるのに対して、甲第2号証の技術手段では「かかる前駆体」を「CO_(2)発生を伴う熱分解処理し、11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子を製造」するための「加熱温度」は「150℃まで」(上記<2ア>)である。
すると、引用発明1と甲第2号証の技術手段とは、少なくとも反応物質や反応条件(加熱温度)が相違するから、引用発明1において「ヘキサカルボニルタングステン」に代えて甲第2号証の技術手段の「蓚酸銀」を適用した場合でも、生成する銀粒子の大きさは予測できず、また、引用発明1の溶媒を変えて「還流処理」の加熱温度を甲第2号証の技術手段と同じ「150℃まで」とすると、生成する銀粒子の大きさは「11nmまたはそれ以下」になるから、本件発明1の「平均粒子径が53.7nm以上200nm以下」にはならない。
iv)したがって、引用発明1において、「ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)」に代えて、他の金属の微粒子を製造しようとした場合に、甲第2号証に記載の技術手段である「蓚酸銀」を用いることは、当業者が容易になし得るものとはいえない。
したがって、相違点1は実質的な相違点であり、相違点1に係る特定事項は容易に成し得るものとはいえない。

(2)相違点2について
以下、予備的に相違点2についても検討する。
i)本件発明1の相違点2に係る「50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応」は、本件明細書に「本発明の反応工程における熱分解反応の反応温度としては、熱分解反応が進行し、金属ナノ粒子が生成する温度であればよく、50℃以上であればよく、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。この範囲であれば、金属ナノ粒子が効率よく生成する。また、反応温度は、約250℃以下であればよく、240℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。この範囲であれば、保護層構成成分の揮発が抑えられて、金属ナノ粒子表面に効率よく保護層を形成できる。」(【0046】)と記載されているから、「金属化合物(a)」が熱分解して「金属ナノ粒子」が生成し、「金属ナノ粒子」の周囲に「保護層」が構成される反応であるといえる。
すると、結局のところ、本件発明1の「50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応」と、引用発明1の「還流処理して、ヘキサカルボニルタングステン W(CO)_(6)を分解しオレイン酸およびオレイルアミンがそれらの官能基を介してW-NPの表面に結合させ」る反応とは、「金属化合物(a)」が熱分解して「金属ナノ粒子」が生成し、「金属ナノ粒子」の周囲に「保護層」が構成される反応である点で同じものであるので、反応温度について、本件発明1は「50℃以上250℃以下」であるのに対して、引用発明は「還流処理」の温度である点で相違していることに帰着する。
ii)そこで、引用発明1の「還流処理」の温度について検討する。
甲第1号証の記載事項<1エ>には、「W-NPsの合成において、金属前駆体W(CO)_(6)は、オレイン酸およびオレイルアミンの存在下、ジフェニルエーテル中で分解した。溶媒として沸点が220℃であるジフェニルエーテルを選択したのは、W(CO)_(6)の分解温度が140℃であることに基づいている。」と記載され、この記載からは甲第1号証の「還流処理」が220℃で行われるようにも理解され得る。
しかし、以下に述べることから、甲第1号証の「還流処理」は257又は259℃程度で行われると考えるのが自然である。
iii)すなわち、「還流」(reflux)とは、「広義の還流は、蒸溜により発生した蒸気が種々の原因で凝縮して液となり流下することをいう.」(化学辞典(普及版)、1993年10月30日普及版第9刷発行、志田正二 代表編集、森北出版(株))もので、実験室においては、液体を入れたフラスコに冷却器をつないで加熱することで達成されるもので、液体が常に沸騰と凝縮を繰り返している状態のことであり、甲第1号証での「還流処理」に則してみれば、「3つ口蒸溜フラスコ」と組み合わせると、例えば以下の図(特開2007-137826号公報【図1】)のようになっていると考えると理解しやすい。(ただし、以下の図は「還流処理」と「3つ口蒸溜フラスコ」の組合せについて図解するだけのもので本件発明と直接の関係はない。)

同図からも明らかなように、甲第1号証での「還流処理」では、「ジフェニルエーテル」に少量の「オレイン酸」「オレイルアミン」が含まれた液体に還流処理を施しており、「3つ口蒸溜フラスコ」内の当該液体が沸騰と凝縮を繰り返している状態にあるものなので、当該液体の温度は、その沸点になっているといえる。
そして、甲第1号証には「3つ口蒸溜フラスコ」内の圧力について記載はないから、大気圧下に開放されていると考えるのが自然である。(上記図では「リービッヒ冷却管14の上端にはN_(2)ガスが封入された風船18が取り付けられて、フラスコ13内をN_(2)ガス雰囲気に保つ構成となっている。」(【0020】)ものである。)
iv)ここで、「ジフェニルエーテル」の沸点についてみてみると、上記<1エ>の「220℃」と記載されている文献は見いだせず、例えば以下に示されるように257又は259℃であるのが技術常識といえる。
○「沸点259℃」(化学大辞典7縮刷版、1997年9月20日縮刷版第36刷発行、化学大辞典編集委員会、共立出版(株))
○ 「ジフェニルエーテルの沸点(259℃)」(特開昭60-23338号公報2頁右下欄5行)
○「沸点259℃」(化学辞典(普及版)、1993年10月30日普及版第9刷発行、志田正二 代表編集、森北出版(株))
○「257℃ at 101.3kPa」(ウイキペディア 最終更新2018年12月24日(月)07:00)
○「257℃(沸点)」(職場のあんぜんサイト:化学物質:ジフェニルエーテル http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0792.html)

甲第1号証での「還流処理」では、「ジフェニルエーテル」40mLに「オレイン酸」6mmol、「オレイルアミン」6mmolが含まれた液体に還流処理を施されており、ジフェニルエーテルについては、分子量は170.2[g/mol]、比重は1.08[g/ml]だから、40mLは40×1.08/170.2=253.8mmolにあたる。
そして、「オレイン酸」の沸点は360℃程度、「オレイルアミン」の沸点が350℃程度であることを考えると、ジフェニルエーテルに少量の「オレイン酸」「オレイルアミン」が含まれた上記液体は、その主たる構成であるジフェニルエーテルの沸点である257又は259℃程度で「還流処理」されていると考えられる。
さらにいえば、ジフェニルエーテルに少量の「オレイン酸」「オレイルアミン」が含まれることによる当該液体の沸点への影響は、物理的な「沸点上昇」の可能性はあっても「沸点降下」はしないだろうし、甲第1号証での「還流処理」では、当該液体は大気圧下(1atm=101.3kPa)にあるといえるので、減圧されて沸点が下がっているものともいえない。
v)そうであれば、甲第1号証での「還流処理」の温度は257又は259℃程度であって、250℃よりも高温であるといえる。
そして、「還流処理」の温度を250℃よりも下げることは、ジフェニルエーテルを他の溶媒に変えなければ実現できず、引用発明1において、他の溶媒に代えることの動機付けは見いだせず、また具体的にどのような溶媒にするかも見いだせないから、困難なくなし得ることととはいえない。
vi)この点で甲第2号証の記載を参酌すると、上記甲第2号証の記載事項<2ア>には、「蓚酸銀、Ag_(2)(C_(2)O_(4))を、2倍当量のオレイルアミン(Ag:オレイルアミン=1 : 1モル/モル)と反応」させて、「蓚酸エステル結合銀-オレイルアミン複合体[(オレイルアミン)Ag(μ-C_(2)O_(4))Ag(オレイルアミン)]」を形成し、当該形成した「前駆体を150℃までの加熱温度でCO_(2)発生を伴う熱分解処理し、11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子を製造した。当該Agナノ微粒子は、表面安定剤として、12wt%またはそれ以下のオレイルアミンを含む。」ものを製造することは記載されているが、「かかる合成メカニズムにおいて・・・他に合成有機溶媒や還元剤を添加することなく、80%以上の高収率で上記前駆体たる複合体をAgナノ微粒子に直接的に変換することができる」と記載され、甲第2号証に記載の技術手段においては、溶媒を使用しないで加熱しているものであり、溶媒であるジフェニルエーテルを利用して「還流処理」を行う引用発明において、溶媒を使用しない甲第2号証に記載の技術手段を適用することはできないといえる。
したがって、相違点2は実質的な相違点であり、相違点2に係る特定事項は容易に成し得るものとはいえない。

(3)甲第1号証に記載された発明を主引用例とする場合の結言
以上から、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものでもないから、同発明に係る特許は取り消されるべきものでない。
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明5、6に係る特許ついても同様である。

4.甲第2号証に記載された発明を主引用例とする場合
4-1.甲第2号証に記載された発明
i)上記甲第2号証の記載事項<2ア>から、甲第2号証には、「蓚酸銀、Ag_(2)(C_(2)O_(4))」と、「2倍当量のオレイルアミン」を反応させて「11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子」を製造する方法であって、「Ag:オレイルアミン=1 : 1モル/モル」で反応させる「150℃までの加熱温度でCO_(2)発生を伴う熱分解処理」を行い、「11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子」は「オレイルアミン」を含む「表面安定剤」を有するものであることが記載されているといえる。
ii)すると、甲第2号証には、
「蓚酸銀すなわちAg_(2)(C_(2)O_(4))と2倍当量のオレイルアミンを反応させ、オレイルアミンを含む表面安定剤を有する11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子を製造する方法であって、Ag:オレイルアミン=1 : 1モル/モルで反応させ、その反応が150℃までの加熱温度でCO_(2)発生を伴う熱分解処理である、方法。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

4-2.本件発明1と引用発明2との対比
i)引用発明2の「蓚酸銀すなわちAg_(2)(C_(2)O_(4))」は、本件発明1の「金属種が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であ」る「金属化合物(a)」と、「金属種が、銀であ」る「金属化合物(a)」の点で一致する。
ii)引用発明2の「2倍当量のオレイルアミン」は、本件発明1の「アミン化合物(b)を含有する組成物」に相当する。
iii)本件発明1の「平均粒子径が53.7nm以上200nm以下の金属ナノ微粒子」と、引用発明2の「オレイルアミンを含む表面安定剤を有する11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子」とは、本件発明1の「金属ナノ微粒子」が上記「3-3.(2)i)」から「保護層」を有し、引用発明2の「オレイルアミンを含む表面安定剤」が該「保護層」に相当するといえるから、「金属ナノ微粒子」である点で共通する。
iv)引用発明2の「その反応が150℃までの加熱温度でCO_(2)発生を伴う熱分解処理である」は、本件発明1の「反応が、50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応である」に相当する。
v)以上から、本件発明1と引用発明2とは、
「金属化合物(a)とアミン化合物(b)を含有する組成物を反応させる金属ナノ微粒子の製造方法であって、金属化合物(a)の金属種が、銀であり、反応が、50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応である、方法。」の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
「金属ナノ微粒子」の粒径について、本件発明1では「平均粒子径が53.7nm以上200nm以下」であるのに対して、引用発明2では「11nmまたはそれ以下」である点。
<相違点2>
本件発明1では、「組成物中のアミン化合物(b)の含有量が、金属化合物(a)に含まれる金属原子の物質量1molに対して、0.2mol以上0.9mol以下の範囲であ」るのに対して、引用発明2では「Ag:オレイルアミン=1 : 1モル/モルで反応させ」ている点。

4-3.本件発明1と引用発明2との相違点の検討
事案に鑑み相違点1について検討する。
i)甲第2号証には、「11nm」以上の粒径の「Agナノ微粒子」を生成することについての記載は見いだせず、その条件等についても不明である。
また、仮に、引用発明2において「11nm」以上の粒径の「Agナノ微粒子」を生成できるとしても、生成する積極的な動機付けは認められない。 ii)そこで、引用発明2において、甲第1号証に記載の技術手段における「平均粒子径」が適用できるかを検討するに、甲第1号証に記載の技術手段は、「平均粒子径が53.7nm以上200nm以下」の「W-NP(タングステンナノ微粒子)」を得るために、「ヘキサカルボニルタングステン」と「オレイン酸およびオレイルアミン」に「257又は259℃程度」の加熱を加えるという条件を必要とするもので、この条件は、引用発明2における「11nmまたはそれ以下のAgナノ微粒子」を得るために「蓚酸銀すなわちAg_(2)(C_(2)O_(4))」と「オレイルアミン」に「150℃までの加熱温度」で「CO_(2)発生を伴う熱分解処理」を行わせるという条件とは、粒子自体の材質と粒子の生成条件(加熱温度)の点で明らかに異なるものである。
したがって、引用発明2において、甲第1号証に記載の技術手段における「平均粒子径」のみ適用しようとしても、粒子自体の材質と粒子の生成条件が異なる以上、適用すること自体が成し得ないし、適用できたとしても、適用の結果、生成した粒子の「平均粒子径が53.7nm以上200nm以下」となるかは予測できるものではない。
iii)したがって、相違点1は実質的な相違点であり、相違点1に係る特定事項は容易に成し得るものともいえない。

4-4.甲第1号証に記載された発明を主引用例とする場合の結言
以上から、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとも、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものでもないから、同発明に係る特許は取り消されるべきものでない。
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明5、6に係る特許についても同様である。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立理由によっては、請求項1、5、6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、5、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物(a)とアミン化合物(b)を含有する組成物を反応させる平均粒子径が53.7nm以上200nm以下の金属ナノ微粒子の製造方法であって、金属化合物(a)の金属種が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、組成物中のアミン化合物(b)の含有量が、金属化合物(a)に含まれる金属原子の物質量1molに対して、0.2mol以上0.9mol以下の範囲であり、反応が、50℃以上250℃以下の温度での熱分解反応であることを特徴とする方法。
【請求項2】
組成物が、さらに、20℃の水に対して1g/L以上溶解する有機溶媒(c)を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒(c)が、エーテル結合とヒドロキシル基を有する溶媒を含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒(c)が、グリコールエーテル類、及びアルコキシ基を有するアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
金属化合物(a)が、蓚酸金属塩である請求項1?4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
アミン化合物(b)が、第1級アミン、及び第1級アミンと第3級アミンを有するジアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1?5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
組成物が、さらに、脂肪酸(d)を含有する請求項1?6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
組成物中の脂肪酸の含有量が、金属化合物(a)1重量部に対して、0.1重量部以上15重量部以下である請求項7に記載の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-22 
出願番号 特願2015-562841(P2015-562841)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (B22F)
P 1 652・ 83- YAA (B22F)
P 1 652・ 121- YAA (B22F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河口 展明  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
中澤 登
登録日 2018-10-12 
登録番号 特許第6414085号(P6414085)
権利者 株式会社大阪ソーダ
発明の名称 金属ナノ微粒子の製造方法  
代理人 西村 弘  
代理人 北村 吉章  
代理人 永田 良昭  
代理人 岩谷 龍  
代理人 永田 元昭  
代理人 岩谷 龍  
代理人 大田 英司  
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