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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60R
審判 一部申し立て 特174条1項  B60R
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B60R
管理番号 1358620
異議申立番号 異議2019-700090  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-07 
確定日 2019-12-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6373547号発明「乗員拘束システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6373547号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕、16について訂正することを認める。 特許第6373547号の請求項1、3、6、7、9、11、13?16に係る特許を維持する。 特許第6373547号の請求項2、5及び8に係る特許についての特許異議申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6373547号の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成23年10月12日(パリ条約による優先権主張2010年10月13日、米国(US))に出願され、平成30年7月27日に特許権の設定登録がされ、同年8月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?3、5?9、11、13?16に係る特許について、平成31年2月7日に特許異議申立人佐藤義光(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、令和1年5月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月30日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年9月5日付けで訂正請求があった旨が通知されたが(特許法第120条の5第5項)、申立人から意見書の提出はなかったものである。

第2 訂正の適否
1 訂正請求について
1-1 訂正の内容
令和1年8月30日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?16について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記袋体は側面衝突時に、該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で」とあるのを、「前記袋体は側面衝突時に、前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2乃至15も同様に訂正する。)。
なお、本件訂正により、請求項2、5及び8は削除されているので、上記「請求項2乃至15も同様に訂正する。」との記載は、「請求項3、4、6、7、9乃至15も同様に訂正する。」の誤記と認める。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し、」とあるのを、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2乃至15も同様に訂正する。)。
なお、本件訂正により、請求項2、5及び8は削除されているので、上記「請求項2乃至15も同様に訂正する。」との記載は、「請求項3、4、6、7、9乃至15も同様に訂正する。」の誤記と認める。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「エアバッグの展開の際に」とあるのを、「前記袋体の展開の際に」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「エアバッグ展開の際に」とあるのを、「前記袋体の展開の際に」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に「エアバッグの展開の際に」とあるのを、「前記袋体の展開の際に」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項16に「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し、」とあるのを、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、」に訂正する。
上記訂正事項1?8に係る本件訂正は、一群の請求項〔1?15〕に対して請求されたものである。

1-2 訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1-1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「袋体」について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「本件明細書等」という。)の「コンソールの上面より下の位置に展開する袋体の底部は、膨張室の少なくとも一部を含んでもよく」(段落【0003】)との記載等を根拠に、「該袋体の底部」が「前記膨張室の少なくとも一部を含む」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書に記載された事項の範囲内において、「袋体」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し」との記載について、「前記コンソールの上面に隣接して展開し」という構成、及び「前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し」という構成が技術的に不明確であったため、訂正前の請求項1の「前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構」との記載、訂正前の請求項2の「前記コンソールの上面より下の位置に展開する前記袋体の底部は、前記膨張室の少なくとも一部を含む」との記載、及び本件明細書の「膨張室253の底部253Aがセンターコンソール33に横方向に隣接して展開し、膨張室253の上方部253Bがセンターコンソール33の上におよび/または接して展開することが可能になる」(段落【0027】)との記載等を根拠に、上記不明確な記載を正すものである。
したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-3)訂正事項3?5について
訂正事項3?5は、訂正前の請求項3の「エアバッグの展開の際に」と記載、訂正前の請求項9の「エアバッグ展開の際に」との記載、及び、訂正前の請求項11の「エアバッグの展開の際に」との記載について、それらの記載事項と上記請求項3、9及び11が引用する請求項1に記載された「膨張室を含む袋体」との関係が技術的に不明確であったため、訂正前の請求項1の「前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体」との記載等を根拠に、上記不明確であった記載を正すものである。
したがって、訂正事項3?5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-4)訂正事項6?8について
訂正事項6は特許請求の範囲の請求項2を削除し、訂正事項7は特許請求の範囲の請求項5を削除し、訂正事項8は特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、訂正事項6?8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当しない。また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-5)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項9の「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し」との記載について、「前記コンソールの上面に隣接して展開し」という構成、及び「前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し」という構成が技術的に不明確であったため、請求項1の「前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構」との記載、請求項2の「前記コンソールの上面より下の位置に展開する前記袋体の底部は、前記膨張室の少なくとも一部を含む」との記載、及び本件明細書の「膨張室253の底部253Aがセンターコンソール33に横方向に隣接して展開し、膨張室253の上方部253Bがセンターコンソール33の上におよび/または接して展開することが可能になる」(段落【0027】)との記載等を根拠に、上記不明確な記載を正すものである。
したがって、訂正事項9は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)独立特許要件
ア 本件において、訂正前の請求項1?3、5?9、11、13?16について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?3、5?9、11、13?16に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
イ 他方、訂正事項1は、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項4、10及び12について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
したがって、かかる訂正により訂正された請求項4、10及び12に係る発明については、上記独立特許要件について検討する必要があるので、以下検討する。
ウ 検討
訂正後の請求項4に係る発明は、少なくとも「前記第1膨張室、第2膨張室は、別々のインフレータからそれぞれ供給された流体が2個の膨張室の間で直接移動しないように織物からなる分割層によって分けられた」との事項(以下「事項A」という。)を備え、訂正後の請求項10に係る発明は、少なくとも「前記位置決め機構は、互いに連結された複数層の布帛を有することにより強化された耳部を含む」との事項(以下「事項B」という。)を備え、訂正後の請求項12に係る発明は、少なくとも「前記位置決め機構は、前記袋体の非膨張部のスロットを通る経路をとる」との事項(以下「事項C」という。)を備えるものであるところ、上記事項A?Cが当業者にとって容易想到であるとする理由はない。また、他に訂正後の請求項4、10及び12に係る発明が特許を受けることができないとする理由も発見しない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5?7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕、16について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?16に係る発明(以下「本件発明1?16」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、請求項2、5及び8は本件訂正により削除された。
「【請求項1】
上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して、自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、
前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構と、
を前記座席システム内に備えてなる拘束システムにおいて、
前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し、
前記袋体は側面衝突時に、前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように、前記座席システム側から展開し、
前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の一部分が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、
この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げることで、前記乗員をさらに拘束できるようにしたことを特徴とする拘束システム。
【請求項3】
前記袋体の第1膨張室の膨張可能容積よりも小さな膨張可能容積を有して構成された第2膨張室をさらに備え、該第2膨張室は前記袋体の展開の際に、前記第1膨張室と前記コンソールとの間で力に対抗することを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項4】
前記第1膨張室、第2膨張室は、別々のインフレータからそれぞれ供給された流体が2個の膨張室の間で直接移動しないように織物からなる分割層によって分けられたことを特徴とする請求項3に記載の拘束システム。
【請求項6】
前記乗員が前記袋体に負荷をかけた際に、前記位置決め機構の少なくとも一部は、前記コンソールに接触し、横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によって前記袋体にかけられた力に対抗することを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項7】
前記位置決め機構の形状は、セイルパネル形状、ストラップ形状、および先細りからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項9】
前記位置決め機構の前記第2の端部は、前記袋体の展開の際に該第2の端部の移動を許容するように摺動可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項10】
前記位置決め機構は、互いに連結された複数層の布帛を有することにより強化された耳部を含むことを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項11】
前記位置決め機構は、前記袋体の展開の際に機構の有効長さを減らすように、前記袋体の一方の側から、前記袋体の別の側に経路をとることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項12】
前記位置決め機構は、前記袋体の非膨張部のスロットを通る経路をとることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項13】
前記位置決め機構の前記第1の端部は、前記袋体の少なくとも一部と連結し、その一部は耳部、膨張部、および非膨張部からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項14】
前記位置決め機構は、前記位置決め機構が格納形状から展開形状に移行するように、前記座席システムの外面を通って展開されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項15】
前記座席システムの外面は、テアシーム、ベルクロ開閉およびスナップ開閉からなる群より選択される機能材を含み、前記位置決め機構はその機能材を介して展開することを特徴とする請求項14に記載の拘束システム。
【請求項16】
上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、上部と、底部と、車両の乗員に対し拘束を提供するために膨張するよう構成された膨張室とを含む袋体と、
前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構とを備え、前記袋体と前記インフレータとが前記座席システム内に備えられてなる拘束システムにおいて、
前記袋体の底部は前記膨張室の少なくとも一部を含み、
前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し、
前記袋体は側面衝突時に、該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように、前記座席システム側から展開し、
前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の少なくとも一部が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、
この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げ、前記乗員に対してさらなる拘束を提供することを特徴とする拘束システム。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和1年5月28日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「本件取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
〔取消理由1〕(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
〔取消理由2〕(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 当審の判断
2-1 取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
(1)取消理由1の概要
ア 請求項1及び16の「前記袋体は側面衝突時に、該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように、前記座席システム側から展開し」という記載について、「前記位置決め機構の一部」が、「第1の端部」と同じものであるのか、それとも別のものであるのか不明であり、また、「袋体の底部」がコンソールの上面より下に位置するものにおいて、「コンソールの上面に隣接して」展開する構成が不明である。
イ 請求項3、9及び11の「エアバッグ」が、請求項1における「膨張室を含む袋体」とどのような関係であるのか不明である。
ウ 請求項8の「前記位置決め機構の前記第2の端部は、座席システム、コンソール、シートベルトシステム、および車両の床部材からなる群より選択された装置に連結されること」という記載は、同項が引用する請求項1の「前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構と」という記載と整合せず不明である。

(2)判断
上記「第2」で述べたとおり、訂正事項2及び9により、請求項1及び16の「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し」との記載は、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し」に訂正されることで、上記「(1)ア」の理由は解消した。
また、訂正事項3?5により、請求項3、9及び11の「エアバッグの展開の際に」との記載は、「前記袋体の展開の際に」に訂正されることで、上記「(1)イ」の理由は解消した。
さらに、訂正事項8により、特許請求の範囲の請求項8は削除され、上記「(1)ウ」の理由は解消した。
したがって、この取消理由1は解消した。

2-2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について
(1)取消理由2の概要
請求項1に係る発明は、コンソールの上面より下の位置で展開する「袋体の底部」が「膨張室」の少なくとも一部を含む場合(請求項2)と、「袋体の底部」が「膨張室」を含まない場合(請求項5)を含み得ると解されるが、後者の「袋体の底部」が「膨張室」を含まない場合(すなわち「袋体の底部」が「膨張室」以外の非膨張室等からなる場合)について、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。

(2)判断
上記「第2」で述べたとおり、訂正事項1に係る本件訂正により、訂正前の請求項1に記載された「袋体」について、「該袋体の底部」が「前記膨張室の少なくとも一部を含む」ものとして限定されるとともに、訂正事項6及び7に係る本件訂正により、請求項2及び請求項5が削除された。
その結果、袋体と膨張室との関係は、本件訂正によって、本件明細書等の記載と整合するものとなり、この取消理由2は解消した。

第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。なお、請求項2、5及び8は本件訂正により削除されている。
(1)申立理由1(特許法第29条第2項:甲第1号証を主たる証拠とするもの)
請求項1、2、6、8及び13?16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2?5号証)、又は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2?5号証)並びに甲第6号証に記載された技術事項に基いて、請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2?5号証)並びに甲第7号証に記載された技術事項、又は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2?5号証)並びに甲第6及び7号証に記載された技術事項に基いて、請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、周知技術(甲第2?5号証)及び周知技術(甲第2?6号証)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(特許異議申立書23?61頁「4-1」の項、94頁「5(1)」の項)。
・甲第1号証:特開2010-36665号公報
・甲第2号証:特開2008-213614号公報
・甲第3号証:米国特許出願公開第2006/119082号明細書
・甲第4号証:米国特許出願公開第2006/119083号明細書
・甲第5号証:特開2001-163162号公報
・甲第6号証:米国特許第3981520号明細書
・甲第7号証:特開2009-280023号公報

(2)申立理由2(特許法第29条第2項:甲第8号証を主たる証拠とするもの。)
請求項1、2、6?8及び13?16に係る発明は、甲第8号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第2?5号証)、又は、甲第8号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第2?5号証)並びに甲第6号証に記載された技術事項に基いて、請求項5に係る発明は、甲第8号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第2?5号証)並びに甲第7号証に記載された技術事項に基いて、又は、甲第8号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項及び周知技術(甲第2?5号証)並びに甲第6及び7号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(特許異議申立書61?88頁「4-2」の項、94頁「5(2)」の項)。
・甲第1?7号証は、上記(1)と同様
・甲第8号証:特開2008-296642号公報

(3)申立理由4(特許法第36条第4項第1号)
請求項1及び16において、「袋体の底部」がコンソールの上面より「上の位置」で展開する部位をも含む、との解釈をとることができるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、「袋体の底部」はコンソールの上面より「下の位置」で展開する構成しか記載されていない。また、請求項1及び16には、「袋体の底部」が「コンソールの上面に隣接して展開」するとあるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、「袋体の底部」はコンソールに横方向に隣接して展開する構成しか開示されていない。
したがって、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない(特許異議申立書92?93頁「4-4」の項、95頁「5(4)」の項)。

(4)申立理由5(特許法第17条の2第3項)
平成30年2月22日付け手続補正書において、請求項1及び16について、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し、」と補正されたが、特許権者が補正の根拠とする明細書の段落【0035】、【0037】、【0039】?【0041】、図12?20には、袋体の部位として、コンソールの上面より「下の位置」で展開するものは記載されてない。
したがって、上記補正事項は新規事項に該当し、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである(特許異議申立書93?94頁「4-5」の項、95頁「5(5)」の項)。

2 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証の記載事項等
甲第1号証には次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。以下同様。)。
(1a)「【請求項1】
左右一対の乗員拘束用のウエビングを有する4点式シートベルト装置と、
前記左右一対のウエビングにおける乗員の上体を拘束する上体拘束部のそれぞれに設けられ、ガス供給手段からのガス供給により膨張して乗員上体の前側で展開される左右一対の第1膨張部と、
前記第1膨張部が膨張する際にガス供給手段からのガス供給により膨張して、該第1膨張部をシート幅方向外側から支持するように展開される第2膨張部と、
を備えた車両用乗員拘束装置。
(1b)「【0001】
本発明は、少なくとも衝突時にシートに着座した乗員を該シートに拘束するための車両用乗員拘束装置に関する。」
(1c)「【0062】
(第3の実施形態)
図4(A)には、本発明の第3の実施形態に係る車両用乗員拘束装置60が図1に対応する正面図にて示されおり、図4(B)には車両用乗員拘束装置60が側面図にて示されている。これらの図に示される如く、車両用乗員拘束装置60は、4点式シートベルト装置12を構成するラップウエビング16に設けられたラップエアベルト35に代えて、それぞれ第2膨張部としてのアウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64を備える点で、第1の実施形態に係る車両用乗員拘束装置10とは異なる。
【0063】
アウタサイドエアバッグ62は、車両用シート11を構成するシートバック24内の車幅方向外端部分(サイドドア46側)に折り畳み状態で配置されており(図示省略)、該シートバック24内に配置されたインフレータ66からのガス供給を受けることで、図4(A)に示される如く膨張、展開される構成とされている。インナサイドエアバッグ64は、シートバック24内の車幅方向内端部分(センタコンソール48側)に折り畳み状態で配置されており(図示省略)、該シートバック24内に配置されたインフレータ68からのガス供給を受けることで、図4(A)及び図4(B)に示される如く膨張、展開される構成とされている。
【0064】
アウタサイドエアバッグ62は、例えば側面衝突の際に、乗員Pとサイドドア46との間で膨張、展開され、該側面衝突に対し乗員Pを保護するように構成されている。インナサイドエアバッグ64は、例えば側面衝突の際に、乗員Pと車幅方向に隣り合う車両用シート11(の乗員P)との間で膨張、展開され、該側面衝突に対し乗員Pを保護するように構成されている。
【0065】
そして、車両用乗員拘束装置60では、図4(A)に示される如く、アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64は、それぞれ膨張、展開される左右同じ側のショルダエアベルト30に対し、膨張してシート幅方向外側から接触するように、その展開形状が設定されている。すなわち、この実施形態に係る車両用乗員拘束装置60では、ショルダエアベルト30が前突に対する乗員保護機能を発揮するために膨張、展開される際に、アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64が対応するショルダエアベルト30をシート幅方向外側から支持する構成とされている。
【0066】
また、車両用乗員拘束装置60では、図4(A)に示される如く、アウタサイドエアバッグ62の反力は、サイドドア46にて支持され、インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるようになっている。なお、インナサイドエアバッグ64として、単独で(車体や車室内部材に頼ることなく)ショルダエアベルト30を支持可能なエアバッグを採用しても良い。
【0067】
さらに、車両用乗員拘束装置60では、ショルダエアベルト30はインフレータ32からフレキシブルチューブ34等を通じてガス供給を受ける一方、アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64は上記の通り対応するインフレータ66、68からガス供給を受ける構成とされている。」
(1d)甲第1号証には、以下の図が示されている。


甲第1号証(摘示(1a)?(1d))には、「車両用乗員拘束装置」に関する技術について開示されているところ(【0001】)、その特許請求の範囲の請求項1には、上記「車両用乗員拘束装置」について、摘示(1a)のとおり記載されている。
また、上記「車両用乗員拘束装置」の第3の実施形態として(摘示(1c))、以下の事項が認定できる。
・第2膨張部として、アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64を備えること(【0062】)
・アウタサイドエアバッグ62は、車両用シート11を構成するシートバック24内の車幅方向外端部分に折り畳み状態で配置されており、該シートバック24内に配置されたインフレータ66からのガス供給を受けることで膨張、展開される構成とされ、インナサイドエアバッグ64は、シートバック24内の車幅方向内端部分のセンタコンソール48側に折り畳み状態で配置されており、該シートバック24内に配置されたインフレータ68からのガス供給を受けることで膨張、展開される構成とされていること(【0063】)
・インナサイドエアバッグ64は、例えば側面衝突の際に、乗員Pと車幅方向に隣り合う車両用シート11との間で膨張、展開され、該側面衝突に対し乗員Pを保護するように構成されていること(【0064】)
・アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64は、それぞれ膨張、展開される左右同じ側のショルダエアベルト30に対し、膨張してシート幅方向外側から接触するように、その展開形状が設定されていること(【0065】)
・インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるようになっていること(【0066】)
さらに、図4(A)(B)(摘示(1d))より、センターコンソール48が上面を有すること、センターコンソール48に隣接して車両用シート11が配置されていること、インナサイドエアバッグ64の底部がセンターコンソール48の上面より下の位置でセンターコンソール48の上面より下の位置に横方向に隣接して展開していること、及びインナサイドエアバッグ64の上部がセンターコンソール48の上面より上の位置で展開していること、が看取できる。

以上を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「左右一対の乗員拘束用のウエビングを有する4点式シートベルト装置と、
前記左右一対のウエビングにおける乗員の上体を拘束する上体拘束部のそれぞれに設けられ、ガス供給手段からのガス供給により膨張して乗員上体の前側で展開される左右一対の第1膨張部と、
前記第1膨張部が膨張する際にガス供給手段からのガス供給により膨張して、該第1膨張部をシート幅方向外側から支持するように展開される第2膨張部と、
を備えた車両用乗員拘束装置であって、
第2膨張部として、アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64を備え、
アウタサイドエアバッグ62は、車両用シート11を構成するシートバック24内の車幅方向外端部分に折り畳み状態で配置されており、該シートバック24内に配置されたインフレータ66からのガス供給を受けることで膨張、展開される構成とされ、
インナサイドエアバッグ64は、シートバック24内の車幅方向内端部分のセンタコンソール48側に折り畳み状態で配置されており、該シートバック24内に配置されたインフレータ68からのガス供給を受けることで膨張、展開される構成とされ、
インナサイドエアバッグ64は、例えば側面衝突の際に、乗員Pと車幅方向に隣り合う車両用シート11との間で膨張、展開され、該側面衝突に対し乗員Pを保護するように構成され、
アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64は、それぞれ膨張、展開される左右同じ側のショルダエアベルト30に対し、膨張してシート幅方向外側から接触するように、その展開形状が設定され、
インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるようになっており、
センターコンソール48が上面を有し、
センターコンソール48に隣接して車両用シート11が配置され、
インナサイドエアバッグ64の底部がセンターコンソール48の上面より下の位置でセンターコンソール48の上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、
インナサイドエアバッグ64の上部がセンターコンソール48の上面より上の位置で展開している、
車両用乗員拘束装置。」

(2)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には次の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、車両用のサイドエアバッグ装置に関する。
・・・
【0023】
姿勢規制具30は、サイドエアバッグ22の展開したときの姿勢(位置)を規制するために設けられる。姿勢規制具30は、図1に示すように、シートバック40に配設される。姿勢規制具30は、サイドエアバッグ22のうち展開時に少なくともシートフレーム40bよりも車両前方に位置する部分と、シートフレーム40bとに連結されている。姿勢規制具30は、展開したサイドエアバッグ22の少なくとも車両前方側端部またはその近傍とシートフレーム40bとに連結されている。姿勢規制具30は、ほとんど伸縮しない材質からなる。姿勢規制具30は、サイドエアバッグ22の展開時、ピンと張った状態にあり、それ以上サイドエアバッグ22が姿勢規制具30を引っ張る方向に移動することを規制する。
【0024】
姿勢規制具30が、展開時に少なくともシートフレーム40bよりも車両前方に位置するエアバッグ部分とシートフレーム40bとに連結されており、ほとんど伸縮しない材質からなるため、図2に示すように、サイドエアバッグ22が展開しておらず姿勢規制具30がシートバック40に収納されているとき、姿勢規制具30には余長(たるみ)がある。そのため、サイドエアバッグ22の非展開時、姿勢規制具30は、図4に示すように、折り畳まれた状態で結束部材33にて保持されている(まとめられている、束ねられている)。
・・・
【0029】
本発明実施例1は、さらに、つぎの構成を有する。
姿勢規制具30は、サイドエアバッグ22と別体に形成されてサイドエアバッグ22に連結されている。姿勢規制具30は、少なくとも一本のテザー30aと、テザー30aをシートフレーム40bに連結するためのブラケット30bと、を備える。なお、テザー30aをサイドエアバッグ22に連結するためのブラケットが設けられていない理由は、サイドエアバッグ22の展開時にテザー30aをサイドエアバッグ22に連結するためのブラケットが乗員に当たることを防止するためである。」
(2b)甲第2号証には、以下の図が示されている。


(3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には次の事項が記載されている(なお、翻訳文は、申立人が特許異議申立書に記す翻訳文を参考に当審で作成した。以下同様。)。
(3a)「[0001]1. Field of the Invention
[0002]The present invention relates to a vehicular seating system in which a side airbag serves not only as a direct occupant reaction device, but also as a positioning device for additional occupant reaction surface members in which, when combined with the airbag provide increased occupant reaction capability.
・・・
[0015]・・・Similarly, lower reaction member 50 includes a fabric panel having first linear edge 52 which is generally vertical and a second linear edge, 54 , which is generally horizontal, and which is joined, either by stitching, bonding, mechanical fastening, weaving, or by other means to reaction surface 32 of airbag 26 at a position which is generally mediate midpoint M and lowermost portion 36 of occupant reaction surface 32 . ・・・」
(翻訳文)「[0001]1.発明の分野
[0002]本発明は、サイドエアバッグが直接の乗員反応装置としてだけでなく、エアバッグと組み合わされたときに増加した乗員反作用能力を提供する追加の乗員反作用表面部材の位置決め装置としても機能する車両座席システムに関する。
・・・
[0015]・・・同様に、下側リアクション部材50は、おおむね鉛直である第1の直線端部52と、おおむね水平の直線端部54とを有するファブリックパネルを備えており、第2の直線端部54は、乗員リアクション表面32のおおむね中間の中央M且つ最下端部36の位置で、縫い、結合、機械的固定、編み又はその他の手段によって、エアバック26のリアクション表面32に連結されている。・・・」
(3b)甲第3号証には、以下の図が示されている。


(4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には次の事項が記載されている。
(4a)「[0001]1. Field of the Invention
[0002]The present invention relates to a seating system for an automotive vehicle having a seat-mounted airbag which is positioned at least in part by a flexible tension member extending from the seat's structure to the airbag.
・・・
[0020]・・・Lower flexible tension member 34 is shown in FIG. 1 as being a cable having a first end, 34 a, attached to frame 24 of seatback 26 and a second end, 34 b, attached to lower outboard portion 30 a of airbag 30 . ・・・」
(翻訳文)「[0001]1.発明の分野
[0002]本発明は、シート構造からエアバッグまで延びる可撓性テンション部材によって少なくとも部分的に位置決めされる座席搭載エアバッグを有する自動車用座席システムに関する。
・・・
[0020]・・・下部フレキシブル張力部材34は、シートバック26のフレーム24に取り付けられた第1の端部34aと、エアバッグ30のアウトボード部材30に取り付けられた第2の端部34bとを有するケーブルとして図1に示されている。・・・」
(4b)甲第4号証には、以下の図が示されている。


(5)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には次の事項が記載されている。
(5a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車の乗員とドアとの間に展開して側面衝突時に乗員を保護するエアバッグに関する。
・・・
【0031】例えば、図6に示すように、エアバッグ26の袋部35は、図1に示す実施の形態と同様に、2枚の基布31,32を重ねて所定の線33で縫合して袋状に形成し、基端部に位置する取付部36の上下方向の寸法は、他の部分に対して相対的に小さくする。また、引っ張り部となる支持部51は、別体の帯状の基布でいわゆるテザー状に構成し、先端部をエアバッグ26の袋部35の下側の縫い代部分に縫合などして連結し、基端部には、シートバックフレーム4の被固定部である係止突起に係止などして固定される支持部取付部としての円孔状の係止孔52を形成する。なお、支持部51を袋部35に連結する位置は、エアバッグ26展開方向の長さを1としたとき、基端側から2/5?4/5の位置とすることが好ましい。」
(5b)甲第5号証には、以下の図が示されている。



(6)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には次の事項が記載されている。
(6a)「

」(1欄5?9行)
(翻訳文)「発明の背景
本発明は、一般に輸送車両用の安全システムに関し、より詳細にはそのような車両用の安全シートと拘束機構の組合せに関する。」
(6b)「

」(2欄64?66行)
(翻訳文)「シート23の間に位置しているのは、支柱26によって支持された一対のインボードエア緩衝バッグ25を保持するコンソール24である。」
(6c)「


」(3欄8?11行)
(翻訳文)「インボードバッグ25のぞれぞれに固定されているのは、車両21の床上のコネクタ36にしっかりと固定された反対側の端部を有するメインステイ33の一端である。」
(6d)甲第6号証には、以下の図が示されている。



(7)甲第7号証の記載事項
甲第7号証には次の事項が記載されている。
(7a)「【0001】
本発明は、車両が側突を受けた場合等に、運転席と助手席との間で膨張展開して、横方向の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置に関するものである。
・・・
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明にかかるエアバッグ装置の第1の実施形態を例示する図である。エアバッグ装置100は、車両内の座席(運転席110A)の車両中央側に設けられ、運転席110Aのシートバック112Aの前方に膨張展開可能なエアバッグ120を有する。図1ではエアバッグ120は、シートバック112A内に埋め込まれたカバー122Aに収容されている。」
(7b)甲第7号証には、以下の図が示されている。


(8)甲第8号証の記載事項等
甲第8号証には次の事項が記載されている。
(8a)「【請求項1】
車両の側面衝突を検出する側面衝突検出手段と、
車両の隣り合う2つのシートそれぞれの車両内側部に収容され、膨張展開の際、車幅方向内側から乗員を拘束する中央エアバッグと、
前記両シートそれぞれに収容され、車両の側面衝突の際、対応する前記中央エアバッグにガス供給するインフレータと、を備え、
車両の側面衝突の際、前記両中央エアバッグは、それぞれ車両内側方向に傾斜して膨張展開し、互いに当接した状態で係止する、
ことを特徴とするエアバッグ装置。」
(8b)「【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に関し、特に、側面衝突の際、車幅方向内側への乗員の移動を規制するサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるエアバッグ装置として、車両の正面衝突の際、乗員の車両進行方向への移動を規制し、乗員にかかる衝撃を緩和させる運転席用エアバッグ装置や助手席用エアバッグはよく知られている。」
(8c)「【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエアバッグ装置の中央エアバッグ10A、10Bが膨張展開した様子を示す車室内斜視図であり、図2は、図1の状態を上方から見た平面図である。図1及び図2において、シート1A、1Bは、車両の前席シートを構成し、例えば、シート1Aは、運転席であり、シート1Bは、助手席である。
【0017】
中央エアバッグ10A、10Bは、車両の側面衝突の際、図1に示すように、それぞれ、乗員P1、P2の腹部から頭部に到るまでの側部をカバーできる程度の大きさまで膨張展開する。中央エアバッグ10A(10B)は、通常時では、シート1Aのシートバック2A(シート1Bのシートバック2B)の車両内側(車両中央側)の側部に折り畳まれて収容されている。
【0018】
図2に示すように、シートバック2A(2B)には、エアバッグを膨張させるためのガス供給装置であるインフレータ3A(3B)が収容されている。インフレータ3A(3B)は、図示しない側突検知センサによって側面衝突が検知されると、ガス(例えば、アルゴンガス等の不活性ガス)を噴出する。噴出されたガスは、ガス供給管30A(30B)を介して中央エアバッグ10A(10B)に供給される。
【0019】
本実施形態の中央エアバッグ10A、10Bは、膨張展開時において、図2に示すように、互いに当接した状態(換言すれば、互いに支え合う状態)で係止する。かかる状態になると、一方のエアバッグに加えられる車両内側方向への力が、他方のエアバッグの膨張力により弱まることになる。このため、車両内側(車幅方向内側)への乗員の移動を効果的に規制することができる。」
(8d)甲第8号証には、以下の図が示されている。



甲第8号証(摘示(8a)?(8d))には、「エアバッグ装置」に関する技術について開示されているところ(【0001】)、その特許請求の範囲の請求項1には、上記「エアバッグ装置」について、摘示(8a)のとおり記載されている。
また、上記「エアバッグ装置」の第1の実施形態として(摘示(8c))、以下の事項が認定できる。
・中央エアバッグ10A、10Bは、乗員P1、P2の腹部から頭部に到るまでの側部をカバーできる程度の大きさまで膨張展開するものであって、通常時では、シート1A、1Bのシートバック2A、2Bの車両内側の側部に折り畳まれて収容されていること(【0017】)
・シートバック2A、2Bには、エアバッグを膨張させるためのガス供給装置であるインフレータ3A、3Bが収容されており、側突検知センサによって側面衝突が検知されると、ガスを噴出し、噴出されたガスは、ガス供給管30A、30Bを介して中央エアバッグ10A、10Bに供給されること(【0018】)
・中央エアバッグ10A、10Bは、膨張展開時において、互いに当接した状態で係止し、かかる状態になると、一方のエアバッグに加えられる車両内側方向への力が、他方のエアバッグの膨張力により弱まることになり、車両内側への乗員の移動を効果的に規制することができること(【0019】)

以上を総合すると、甲第8号証には、次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているものと認められる。
「車両の側面衝突を検出する側面衝突検出手段と、
車両の隣り合う2つのシート1A、1Bそれぞれの車両内側部に収容され、膨張展開の際、車幅方向内側から乗員を拘束する中央エアバッグ10A、10Bと、
前記両シート1A、1Bそれぞれに収容され、車両の側面衝突の際、対応する前記中央エアバッグ10A、10Bにガス供給するインフレータ3A、3Bと、を備え、
車両の側面衝突の際、前記両中央エアバッグ10A、10Bは、それぞれ車両内側方向に傾斜して膨張展開し、互いに当接した状態で係止する、エアバッグ装置であって、
中央エアバッグ10A、10Bは、乗員P1、P2の腹部から頭部に到るまでの側部をカバーできる程度の大きさまで膨張展開するものであって、通常時では、シート1A、1Bのシートバック2A、2Bの車両内側の側部に折り畳まれて収容されており、
シートバック2A、2Bには、エアバッグを膨張させるためのガス供給装置であるインフレータ3A、3Bが収容されており、側突検知センサによって側面衝突が検知されると、ガスを噴出し、噴出されたガスは、ガス供給管30A、30Bを介して中央エアバッグ10A、10Bに供給され、
中央エアバッグ10A、10Bは、膨張展開時において、互いに当接した状態で係止し、かかる状態になると、一方のエアバッグに加えられる車両内側方向への力が、他方のエアバッグの膨張力により弱まることになり、車両内側への乗員の移動を効果的に規制することができる、
エアバッグ装置。」

3 検討
3-1 申立理由1(特許法第29条第2項:甲第1号証を主たる証拠とするもの)について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「センタコンソール48」が、ユーティリティを提供するよう構成されていることは技術常識であるから、甲1発明の「上面を有する」「センタコンソール48」は、本件発明1の「上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソール」に相当する。
(イ)甲1発明の「車両用シート11」が、自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを構成することは明らかであるから、上記「車両用シート11」は、本件発明1の「自動車の乗員が着席できるように構成された座席システム」に相当する。
(ウ)甲1発明の「車両用乗員拘束装置」は、その技術的意義において、本件発明1の「自動車のための乗員拘束システム」及び「拘束システム」に相当する。
(エ)甲1発明において、「車両用乗員拘束装置」は、「車両用シート11」を備えるものであるところ、上記「車両用シート11」は、「センターコンソール48に隣接して」「配置され」るものであるから、甲1発明の「車両用乗員拘束装置」は、上記(ア)?(ウ)をも踏まえると、本件発明1の「上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して、自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システム」に相当するものといえる。

(ア)甲1発明の「第2膨張部として」の「インナサイドエアバッグ64」は、本件発明1の「膨張室を含む袋体」に相当する。
(イ)甲1発明の「インナサイドエアバッグ64」は、「例えば側面衝突の際に、乗員Pと車幅方向に隣り合う車両用シート11との間で膨張、展開され、該側面衝突に対し乗員Pを保護するように構成され」るものであるから、上記「インナサイドエアバッグ64」は、乗員に隣接して膨張し、乗員に衝撃拘束を提供するよう構成されていることが明らかである。
したがって、甲1発明の「シートバック24内の車幅方向内端部分のセンタコンソール48側に折り畳み状態で配置されて」いる「インナサイドエアバッグ64」は、本件発明1の「折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体」に相当するものといえる。

(ア)甲1発明の「インフレータ68」は、本件発明1の「インフレータ」に相当する。
(イ)甲1発明において、「インナサイドエアバッグ64」は、「該シートバック24内に配置されたインフレータ68からのガス供給を受けることで膨張、展開される構成とされ」ているから、甲1発明の「インフレータ68」は、上記イをも踏まえると、本件発明1の「前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータ」に相当するものといえる。

甲1発明の「車両用乗員拘束装置」は、「シートバック24内の車幅方向内端部分のセンタコンソール48側に折り畳み状態で配置されて」いる「インナサイドエアバッグ64」、及び、「該シートバック24内に配置されたインフレータ66」を備えるものであるから、かかる「車両用乗員拘束装置」と、本件発明1の「折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構と、を前記座席システム内に備えてなる拘束システム」とは、上記ア?ウをも踏まえると、「折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、を前記座席システム内に備えてなる拘束システム」の点で共通するものといえる。

甲1発明の「インナサイドエアバッグ64」は、「例えば側面衝突の際に、乗員Pと車幅方向に隣り合う車両用シート11との間で膨張、展開され」るものであるから、側面衝突時に展開されることが明らかである。
また、甲1発明の「インナサイドエアバッグ64」は、「シートバック24内の車幅方向内端部分のセンタコンソール48側に折り畳み状態で配置されており、該シートバック24内に配置されたインフレータ68からのガス供給を受けることで膨張、展開される構成とされ」ているから、車両用シート11側から展開されることも明らかである。
したがって、甲1発明の「インナサイドエアバッグ64の底部がセンターコンソール48の上面より下の位置でセンターコンソール48の上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、インナサイドエアバッグ64の上部がセンターコンソール48の上面より上の位置で展開している」という構成と、本件発明1の「前記袋体は側面衝突時に、前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように、前記座席システム側から展開し」という構成とは、「前記袋体は側面衝突時に、前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で展開するように、前記座席システム側から展開し」という構成の点で共通するものといえる。

以上を総合すると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりといえる。
<一致点>
「上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して、自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、
前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
を前記座席システム内に備えてなる拘束システムにおいて、
前記袋体は側面衝突時に、前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で展開するように、前記座席システム側から展開する、
拘束システム。」

<相違点1>
本件発明1は、「前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構」を備え、袋体は、「前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し」ているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し」ているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3>
「袋体」について、本件発明1は、「前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように」構成されているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点4>
本件発明1は、「前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の一部分が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げることで、前記乗員をさらに拘束できるように」構成されているのに対し、甲1発明は、「インナサイドエアバッグ64は、例えば側面衝突の際に、乗員Pと車幅方向に隣り合う車両用シート11との間で膨張、展開され、該側面衝突に対し乗員Pを保護するように構成され」、「アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64は、それぞれ膨張、展開される左右同じ側のショルダエアベルト30に対し、膨張してシート幅方向外側から接触するように、その展開形状が設定され、インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるように」構成されている点。

(1-2)判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
ア 甲1発明は、「インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるように」構成されるものであるから、インナサイドエアバッグ64の展開時には、インナサイドエアバッグ64がセンタコンソール48に支持される状態で接触することは技術的に明らかであるものの、甲第1号証には、インナサイドエアバッグ64が、センタコンソール48の上面の一部を覆って展開するように構成することは記載されていない。
イ ここで、申立人は、図4(A)を根拠に、「センタコンソール48の上面より上の位置にあるインナサイドエアバッグ64の上部については、センタコンソール48の上面の一部を覆って展開すると認められる。」と主張するので(特許異議申立書32頁「(カ)」の項)、以下検討する。
ウ 甲第1号証の図4(A)には、摘示(1(1d))のとおり、甲1発明に係る車両用乗員拘束装置の作動状態が図示されており、水平に延びる上面とそれに繋がる上下に延びる側面とを有するセンタコンソール48、及び展開状態のインナサイドエアバッグ64が示されている。そして、同図より、インナサイドエアバッグ64が、センタコンソール48における、上下に延びる側面に接触していることは看取できるが、水平に延びる上面をも覆うように接触していることまで看取することはできない。
また、甲1発明は、「インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるように」構成されるものであるから、そのような「支持」を可能とするためには、図4(A)に示されるとおり、インナサイドエアバッグ64を、その展開時においてセンタコンソール48における上下に延びる側面に接触させれば足り、特に、水平に延びる上面をも覆うように接触させるべき合理性もない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
エ また、甲第2?6号証には、摘示(2a)?(6d)のとおり、上記相違点1に係る「位置決め機構」に関する技術について開示され、甲第7号証には、摘示(7a)(7b)のとおり、訂正前の請求項5で特定する「コンソール」と「膨張室」との配設に関する技術について開示されているが、そのいずれにも、袋体の底部がコンソールの上面より下の位置でコンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開することを前提とした袋体について、袋体がコンソールの上面の一部を覆って展開するように構成することは記載も示唆もなされていない。
したがって、甲1発明に、甲第2?6号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点3に係る本件発明1の構成には至らない。

(1-3)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明と上記相違点1?4において相違するものであるところ、少なくとも相違点3に係る本件発明1の構成は上記「(1-2)」のとおり容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点1、2及び4を検討するまでもなく、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明6、7、13?15について
また、本件発明6、7、13?15は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明16について
(3-1)対比
本件発明16と甲1発明とを、上記「(1-1)ア?オ」をも踏まえて対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりといえる。
<一致点>
「上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、上部と、底部と、車両の乗員に対し拘束を提供するために膨張するよう構成された膨張室とを含む袋体と、
前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
を備え、前記袋体と前記インフレータとが前記座席システム内に備えられてなる拘束システムにおいて、
前記袋体の底部は前記膨張室の少なくとも一部を含み、
前記袋体は側面衝突時に、該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記座席システム側から展開する、
拘束システム。」

<相違点I>
本件発明1は、「前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構」を備え、袋体は、「前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し」ているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点II>
本件発明1は、「前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し」ているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点III>
「袋体」について、本件発明1は、「該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように」構成されているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点IV>
本件発明1は、「前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の少なくとも一部が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げ、前記乗員に対してさらなる拘束を提供する」ように構成されているのに対し、甲1発明は、「インナサイドエアバッグ64は、例えば側面衝突の際に、乗員Pと車幅方向に隣り合う車両用シート11との間で膨張、展開され、該側面衝突に対し乗員Pを保護するように構成され」、「アウタサイドエアバッグ62、インナサイドエアバッグ64は、それぞれ膨張、展開される左右同じ側のショルダエアベルト30に対し、膨張してシート幅方向外側から接触するように、その展開形状が設定され、インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるように」構成されている点。

(3-2)判断
事案に鑑み、相違点IIIについて検討する。
上記相違点IIIに係る本件発明16の構成は、上記相違点3に係る本件発明1の構成と同様の構成であるから、上記「(1)(1-2)」と同様の理由により、本件発明16は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2 申立理由2(特許法第29条第2項:甲第8号証を主たる証拠とするもの)について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲8発明とを対比する。

(ア)甲第8号証(摘示(1b))には、背景技術として、「自動車等の車両に搭載されるエアバッグ装置」(【0002】)と記載されているように、甲8発明の「車両の隣り合う2つのシート1A、1B」が、自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを構成することは明らかであるから、上記「シート1A、1B」は、本件発明1の「自動車の乗員が着席できるように構成された座席システム」に相当する。
(イ)甲8発明の「エアバッグ装置」は、その技術的意義において、本件発明1の「自動車のための乗員拘束システム」及び「拘束システム」に相当する。
(ウ)甲8発明の「エアバッグ装置」は、「シート1A、1B」を備えるものであるから、上記(ア)(イ)をも踏まえると、本件発明1の「自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システム」に相当するものといえる。

(ア)甲8発明の「膨張展開する」「中央エアバッグ10A、10B」は、本件発明1の「膨張室を含む袋体」に相当する。
(イ)甲8発明の「中央エアバッグ10A、10B」は、「乗員P1、P2の腹部から頭部に到るまでの側部をカバーできる程度の大きさまで膨張展開」し、「膨張展開の際、車幅方向内側から乗員を拘束する」ものであるから、乗員に隣接して膨張し、乗員に衝撃拘束を提供するよう構成されていることが明らかである。
したがって、甲8発明の「通常時では、シート1A、1Bのシートバック2A、2Bの車両内側の側部に折り畳まれて収容されて」いる「中央エアバッグ10A、10B」は、本件発明1の「折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体」に相当するものといえる。

甲8発明の「インフレータ3A、3B」は、「車両の側面衝突の際、対応する前記中央エアバッグ10A、10Bにガス供給する」ものであるから、上記イをも踏まえると、本件発明1の「前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータ」に相当するものといえる。

甲8発明の「エアバッグ装置」は、「車両の隣り合う2つのシート1A、1Bそれぞれの車両内側部に収容され」ている「中央エアバッグ10A、10B」、及び、「前記両シート1A、1Bそれぞれに収容され」ている「インフレータ3A、3B」を備えるものであるから、かかる「エアバッグ装置」と、本件発明1の「折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構と、を前記座席システム内に備えてなる拘束システム」とは、上記ア?ウをも踏まえると、「折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、を前記座席システム内に備えてなる拘束システム」の点で共通するものといえる。

甲8発明は、「側突検知センサによって側面衝突が検知されると、ガスを噴出し、噴出されたガスは、ガス供給管30A、30Bを介して中央エアバッグ10A、10Bに供給され」るものであるから、甲8発明の「中央エアバッグ10A、10B」は、側面衝突時に展開されることが明らかである。
さらに、甲8発明の「中央エアバッグ10A、10B」は、「シート1A、1Bそれぞれの車両内側部に収容され」るものであるから、シート1A、1B側から展開することも明らかである。
したがって、甲8発明の「車両の側面衝突の際、前記両中央エアバッグ10A、10Bは、それぞれ車両内側方向に傾斜して膨張展開」するという構成と、本件発明1の「前記袋体は側面衝突時に、前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように、前記座席システム側から展開し」という構成とは、「前記袋体は側面衝突時に、前記座席システム側から展開し」という構成の点で共通するものといえる。

以上を総合すると、本件発明1と甲8発明との一致点及び相違点は以下のとおりといえる。
<一致点>
「自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、
前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
を前記座席システム内に備えてなる拘束システムにおいて、
前記袋体は側面衝突時に、前記座席システム側から展開する、
拘束システム。」

<相違点A>
本件発明1は、座席システムが、「上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して」設けられ、袋体は側面衝突時に、「前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し」、「該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように」構成されているのに対し、甲8発明は、そのように特定されていない点。
<相違点B>
本件発明1は、「前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構」を備え、袋体は、「前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し」ているのに対し、甲8発明は、そのように特定されていない点。
<相違点C>
本件発明1は、「前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し」ているのに対し、甲8発明は、そのように特定されていない点。
<相違点D>
本件発明1は、「前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の一部分が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げることで、前記乗員をさらに拘束できるように」構成されているのに対し、甲8発明は、「中央エアバッグ10A、10Bは、膨張展開時において、互いに当接した状態で係止し、かかる状態になると、一方のエアバッグに加えられる車両内側方向への力が、他方のエアバッグの膨張力により弱まることになり、車両内側への乗員の移動を効果的に規制することができる」ように構成されている点。

(1-2)判断
相違点Aについて検討する。
ア 甲8発明は、「車両の側面衝突の際、前記両中央エアバッグ10A、10Bは、それぞれ車両内側方向に傾斜して膨張展開」するものであって、「中央エアバッグ10A、10B」が、「膨張展開時において、互いに当接した状態で係止し、かかる状態になると、一方のエアバッグに加えられる車両内側方向への力が、他方のエアバッグの膨張力により弱まることになり、車両内側への乗員の移動を効果的に規制することができる」というものであるが、コンソールを備えることについて特定されるものではない。
イ ここで、申立人は、甲第1号証には、センターコンソール48が開示されており、また、インナサイドエアバック64の底部及び上部の展開挙動、及びセンタコンソール48との関係におけるインナサイドエアバック64の作用も開示されているから、かかる技術を甲8発明組み合わせることで、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者にとって容易想到である旨主張するので(特許異議申立書72?73頁「イ(ア)」の項)、以下検討する。
ウ 甲第1号証には、上記「2(1)」のとおり、「車両用乗員拘束装置」に関する技術について開示されており(【0001】)、確かに、申立人が主張するにように、センタコンソール48とインナサイドエアバック64との関係として、「インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるようになっている」ことが記載され(【0066】)、図4(A)(B)には、インナサイドエアバック64の底部及び上部の展開挙動として、インナサイドエアバッグ64の底部がセンターコンソール48の上面より下の位置でセンターコンソール48の上面より下の位置に横方向に隣接して展開していること、及びインナサイドエアバッグ64の上部がセンターコンソール48の上面より上の位置で展開していること、を看取することができる。
しかし、上記図4(A)に図示される、水平に延びる上面とそれに繋がる上下に延びる側面とを有するセンタコンソール48、及び展開状態のインナサイドエアバッグ64において、インナサイドエアバッグ64が、水平に延びる上面をも覆うように接触していることまで看取することはできない。
したがって、甲8発明に、甲第1号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点Aに係る本件発明1の「該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開する」構成には至らない。
また、甲第1号証に記載される「インナサイドエアバッグ64の反力はセンタコンソール48にて支持されるようになっている」(【0066】)との構成は、甲8発明の「車両の側面衝突の際、前記両中央エアバッグ10A、10Bは、それぞれ車両内側方向に傾斜して膨張展開し、互いに当接した状態で係止する」との作用の妨げになるとも解されるから、そもそも甲8発明に甲第1号証に記載された上記「コンソール」に係る技術事項を適用することには、阻害要因があるというべきである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
エ また、甲第2?6号証には、摘示(2a)?(6d)のとおり、上記相違点Bに係る「位置決め機構」に関する技術について開示され、甲第7号証には、摘示(7a)(7b)のとおり、訂正前の請求項5で特定する「コンソール」と「膨張室」との配設に関する技術について開示されているが、そのいずれにも、袋体の底部がコンソールの上面より下の位置でコンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開することを前提とした袋体について、袋体がコンソールの上面の一部を覆って展開するように構成することは記載も示唆もなされていない。
したがって、甲8発明に、甲第2?7号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点Aに係る本件発明1の構成には至らない。

(1-3)小括
以上のとおり、本件発明1は甲8発明と上記相違点A?Dにおいて相違するものであるところ、少なくとも相違点Aに係る本件発明1の構成は上記「(1-2)」のとおり容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点B?Dを検討するまでもなく、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明6、7、13?15について
また、本件発明6、7、13?15は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明16について
(3-1)対比
本件発明16と甲1発明とを、上記「(1)(1-1)ア?オ」をも踏まえて対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりといえる。
<一致点>
「自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、上部と、底部と、車両の乗員に対し拘束を提供するために膨張するよう構成された膨張室とを含む袋体と、
前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
前記袋体と前記インフレータとが前記座席システム内に備えられてなる拘束システムにおいて、
前記袋体は側面衝突時に、前記座席システム側から展開する、
拘束システム。」
<相違点ア>
本件発明16は、座席システムが、「上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して」設けられ、「前記袋体の底部は前記膨張室の少なくとも一部を含み」、前記袋体は側面衝突時に、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し」、「該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように」構成されているのに対し、甲8発明は、そのように特定されていない点。
<相違点イ>
本件発明16は、「前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構とを備え」、袋体は、「前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し」ているのに対し、甲8発明は、そのように特定されていない点。
<相違点ウ>
本件発明16は、「前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し」ているのに対し、甲8発明は、そのように特定されていない点。
<相違点エ>
本件発明16は、「前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の少なくとも一部が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げ、前記乗員に対してさらなる拘束を提供する」ように構成されているのに対し、甲8発明は、「中央エアバッグ10A、10Bは、膨張展開時において、互いに当接した状態で係止し、かかる状態になると、一方のエアバッグに加えられる車両内側方向への力が、他方のエアバッグの膨張力により弱まることになり、車両内側への乗員の移動を効果的に規制することができる」ように構成されている点。

(3-2)判断
相違点アについて検討する。
上記相違点アに係る本件発明16の構成は、上記相違点Aに係る本件発明1の構成と同様の構成であるから、上記「(1)(1-2)」と同様の理由により、本件発明16は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-3 申立理由4(特許法第36条第4項第1号)について
申立人は、上記「1(3)」のとおり、請求項1及び16において、「袋体の底部」がコンソールの上面より「上の位置」で展開する部位をも含む、との解釈をとることができるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、「袋体の底部」はコンソールの上面より「下の位置」で展開する構成しか記載されていないから、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないる旨主張する。
しかし、上記「第2」で述べたとおり、訂正事項2及び9により、請求項1及び16の「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し」との記載は、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し」に訂正された。
したがって、上記申立理由4は解消した。

3-4 申立理由5((特許法第17条の2第3項))について
申立人は、上記「1(4)」のとおり、平成30年2月22日付け手続補正書において、請求項1及び16について、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し、」と補正されたが、特許権者が補正の根拠とする明細書の段落【0035】、【0037】、【0039】?【0041】、図12?20には、袋体の部位として、コンソールの上面より「下の位置」で展開するものは記載されてないから、上記補正事項は新規事項に該当し、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである旨主張する。
しかし、上記「第2」で述べたとおり、訂正事項2及び9により、請求項1及び16の「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面に隣接して展開し、前記位置決め機構の一部に少なくとも連結し」との記載は、「該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し」に訂正されるとともに、訂正事項1に係る本件訂正により、請求項1に記載された「袋体」について、「該袋体の底部」が「前記膨張室の少なくとも一部を含む」ものとして限定された。
したがって、上記申立理由5は解消した。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1、3、6、7、9、11、13?16に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1、3、6、7、9、11、13?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項2、5及び8に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、5及び8に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して、自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、前記乗員に隣接して膨張し、前記乗員に衝撃拘束を提供するよう構成された膨張室を含む袋体と、
前記袋体の前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構と、
を前記座席システム内に備えてなる拘束システムにおいて、
前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し、
前記袋体は側面衝突時に、前記膨張室の少なくとも一部を含む該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように、前記座席システム側から展開し、
前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の一部分が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、
この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げることで、前記乗員をさらに拘束できるようにしたことを特徴とする拘束システム。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記袋体の第1膨張室の膨張可能容積よりも小さな膨張可能容積を有して構成された第2膨張室をさらに備え、該第2膨張室は前記袋体の展開の際に、前記第1膨張室と前記コンソールとの間で力に対抗することを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項4】
前記第1膨張室、第2膨張室は、別々のインフレータからそれぞれ供給された流体が2個の膨張室の間で直接移動しないように織物からなる分割層によって分けられたことを特徴とする請求項3に記載の拘束システム。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記乗員が前記袋体に負荷をかけた際に、前記位置決め機構の少なくとも一部は、前記コンソールに接触し、横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によって前記袋体にかけられた力に対抗することを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項7】
前記位置決め機構の形状は、セイルパネル形状、ストラップ形状、および先細りからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記位置決め機構の前記第2の端部は、前記袋体の展開の際に該第2の端部の移動を許容するように摺動可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項10】
前記位置決め機構は、互いに連結された複数層の布帛を有することにより強化された耳部を含むことを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項11】
前記位置決め機構は、前記袋体の展開の際に機構の有効長さを減らすように、前記袋体の一方の側から、前記袋体の別の側に経路をとることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項12】
前記位置決め機構は、前記袋体の非膨張部のスロットを通る経路をとることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項13】
前記位置決め機構の前記第1の端部は、前記袋体の少なくとも一部と連結し、その一部は耳部、膨張部、および非膨張部からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項14】
前記位置決め機構は、前記位置決め機構が格納形状から展開形状に移行するように、前記座席システムの外面を通って展開されることを特徴とする請求項1に記載の拘束システム。
【請求項15】
前記座席システムの外面は、テアシーム、ベルクロ開閉およびスナップ開閉からなる群より選択される機能材を含み、前記位置決め機構はその機能材を介して展開することを特徴とする請求項14に記載の拘束システム。
【請求項16】
上面を有してユーティリティを提供するよう構成されたコンソールに隣接して自動車の乗員が着席できるように構成された座席システムを備えた前記自動車のための乗員拘束システムであって、
折りたたまれた状態で格納され、上部と、底部と、車両の乗員に対し拘束を提供するために膨張するよう構成された膨張室とを含む袋体と、
前記膨張室を膨張させるためにガスを提供するよう構成されたインフレータと、
前記袋体に連結された第1の端部と、前記座席システムに定着された第2の端部とを有する位置決め機構とを備え、前記袋体と前記インフレータとが前記座席システム内に備えられてなる拘束システムにおいて、
前記袋体の底部は前記膨張室の少なくとも一部を含み、
前記膨張室は、展開の際の車両幅方向の幅が下方に向かって徐々に狭くなる下方部位を有し、
前記袋体は側面衝突時に、該袋体の底部が前記コンソールの上面より下の位置で前記コンソールの上面より下の位置に横方向に隣接して展開し、前記位置決め機構の前記第1の端部に少なくとも連結し、該袋体の上部が前記コンソールの上面より上の位置で前記コンソールの上面の一部を覆って展開するように、前記座席システム側から展開し、
前記乗員が前記袋体に負荷をかけているとき、前記袋体の少なくとも一部が前記位置決め機構の一部に規制されながら前記コンソールと接触して横方向の支持を受け、前記袋体に衝突する乗員によってもたらされた前記袋体にかかる力に対抗し、
この横方向の支持が前記袋体の横方向の移動を妨げ、前記乗員に対してさらなる拘束を提供することを特徴とする拘束システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-21 
出願番号 特願2011-225352(P2011-225352)
審決分類 P 1 652・ 55- YAA (B60R)
P 1 652・ 121- YAA (B60R)
P 1 652・ 537- YAA (B60R)
P 1 652・ 536- YAA (B60R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永冨 宏之飯島 尚郎  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 藤井 昇
氏原 康宏
登録日 2018-07-27 
登録番号 特許第6373547号(P6373547)
権利者 ティ.ケイ.ホールディングス、インコーポレイテッド ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・インコーポレーテッド
発明の名称 乗員拘束システム  
代理人 森川 泰司  
代理人 美恵 英樹  
代理人 森川 泰司  
代理人 木村 満  
代理人 木村 満  
代理人 美恵 英樹  
代理人 桜田 圭  
代理人 森川 泰司  
代理人 美恵 英樹  
代理人 木村 満  
代理人 桜田 圭  
代理人 桜田 圭  
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