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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 全部申し立て 発明同一  E04H
管理番号 1358655
異議申立番号 異議2019-700847  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-24 
確定日 2020-01-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6505425号発明「立体駐車装置の無人確認システムとこれを備える立体駐車装置、及び立体駐車装置の無人確認方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6505425号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6505425号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成26年11月28日に出願され、平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月24日に特許掲載公報が発行された。その後、令和1年10月24日に特許異議申立人 中村 修(以下「申立人」という。)より、請求項1?7に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明
特許第6505425号の請求項1?7の特許に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、本件発明1?7をまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

1 本件発明1
「【請求項1】
複数の可動式パレットと、前面に少なくとも1つの開閉ゲートとを備えた立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認システムであって、
前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサと、前記立体駐車装置内の少なくとも一部についての無人確認済入力操作が行われる、入力を促す表示が可能な表示部を備える複数の入力操作部と、システム制御部とを含み、
前記複数の入力操作部の各々は、前記システム制御部の制御により前記表示部が表示状態にされ、前記無人確認済入力操作が行われると前記表示部が非表示状態になるものであり、
前記少なくとも1つの開閉ゲートの開閉動作に関して、各入力操作部と前記少なくとも1つの開閉ゲートとの設置位置の関係に基づいた第1の紐付け動作が設定され、前記複数のセンサの検知動作に関して、各入力操作部と前記複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた第2の紐付け動作が設定されており、
前記システム制御部は、前記開閉ゲートが開いた後に、該開状態の開閉ゲートに対して前記第1の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部と、物体を検知したセンサに対して前記第2の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部との表示部を表示状態にさせ、該表示状態にさせた入力操作部の表示部の全てが非表示状態になるまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものであることを特徴とする立体駐車装置の無人確認システム。」

2 本件発明2
「【請求項2】
前記複数のセンサは、前記可動式パレットの後部側を検知するための後部センサと、並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するための複数の側部センサとを含み、
前記複数の入力操作部は、車両を入出庫する高さにある可動式パレットの、並列方向に隣接する可動式パレット間と、並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部とに対応した位置毎に、前記立体駐車装置の前面側から操作可能な位置に設置されることを特徴とする請求項1記載の立体駐車装置の無人確認システム。」

3 本件発明3
「【請求項3】
前記第1の紐付け動作は、各入力操作部に対して、該入力操作部に最も近い側部センサによって側部が検知される可動式パレットへの、車両の入出庫を制限する開閉ゲートを関連付けるものであり、
前記第2の紐付け動作は、各入力操作部に対して、該入力操作部に最も近い側部センサと、該側部センサに可動式パレット1基を挟んで隣接する側部センサとを含む、2つ又は3つの側部センサ、及び、該2つ又は3つの側部センサの間にある可動式パレットの後方を検知する後部センサを関連付けるものであることを特徴とする請求項2記載の立体駐車装置の無人確認システム。」

4 本件発明4
「【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の立体駐車装置の無人確認システムを備えた立体駐車装置であって、
前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤と、装置を制御する装置制御部とを含み、
前記システム制御部が前記装置制御部に組み込まれていることを特徴とする立体駐車装置。」

5 本件発明5
「【請求項5】
複数の可動式パレットと、前面に少なくとも1つの開閉ゲートとを備えた立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認方法であって、
前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサと、前記立体駐車装置内の少なくとも一部についての無人確認済入力操作が行われる、入力を促す表示が可能な表示部を備える複数の入力操作部と、システム制御部とを設置し、
前記複数の入力操作部の各々を、前記システム制御部の制御により、前記表示部を表示状態にさせ、前記無人確認済入力操作を行った後に前記表示部を非表示状態にさせ、
前記少なくとも1つの開閉ゲートの開閉動作に関して、各入力操作部と前記少なくとも1つの開閉ゲートとの設置位置の関係に基づいた第1の紐付け動作を設定し、前記複数のセンサの検知動作に関して、各入力操作部と前記複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた第2の紐付け動作を設定し、
前記システム制御部により、前記開閉ゲートが開いた後に、該開状態の開閉ゲートに対して前記第1の紐付け動作に基づいて関連付けた入力操作部と、物体を検知したセンサに対して前記第2の紐付け動作に基づいて関連付けた入力操作部との表示部を表示状態にさせ、該表示状態にさせた入力操作部の表示部の全てを非表示状態にするまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止することを特徴とする立体駐車装置の無人確認方法。」

6 本件発明6
「【請求項6】
前記複数のセンサとして、前記可動式パレットの後部側を検知するための後部センサと、並列方向に隣接する前記可動式パレット間及び並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部を検知するための複数の側部センサとを設置し、
前記複数の入力操作部を、車両を入出庫する高さにある可動式パレットの、並列方向に隣接する可動式パレット間と、並列方向の最も外側にある2つの可動式パレットの外側側部とに対応した位置毎に、前記立体駐車装置の前面側から操作可能な位置に設置することを特徴とする請求項5記載の立体駐車装置の無人確認方法。」

7 本件発明7
「【請求項7】
各入力操作部に対して、該入力操作部に最も近い側部センサによって側部が検知される可動式パレットへの、車両の入出庫を制限する開閉ゲートを関連付けるように、前記第1の紐付け動作を設定し、更に、各入力操作部に対して、該入力操作部に最も近い側部センサと、該側部センサに可動式パレット1基を挟んで隣接する側部センサとを含む、2つ又は3つの側部センサ、及び、該2つ又は3つの側部センサの間にある可動式パレットの後方を検知する後部センサを関連付けるように、前記第2の紐付け動作を設定することを特徴とする請求項6記載の立体駐車装置の無人確認方法。」


第3 申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。

1(拡大先願)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の先願の、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、これらの発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

2(進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。


第4 証拠について
1 証拠一覧
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証: 特開2015-48595号公報
(特願2013-179294号(以下、「先願1」 という。平成25年8月30日出願)の公開公報、 平成27年3月16日公開、申立書に添えて提出)
甲第2号証: 特開2004-257205号公報
(平成16年9月16日公開、申立書に添えて提出)
甲第3号証: 特開平11-324379号公報
(平成11年11月26日公開、申立書に添えて提出)
甲第4号証: 特開2007-170004号公報
(平成19年7月5日公開、申立書に添えて提出)
甲第5号証: 「通達 立駐工発第59号 機械式駐車場技術基準
2013年版の一部変更新旧比較表」、
公益社団法人 立体駐車場工業会、
URL http://www.ritchu.or.jp/common/pdf/info20140 716-03.pdf
(申立人は、立体駐車場工業会のウェブサイト「新着情
報一覧」(URL http://www.ritchu.or.jp/news/)の
記事「機械式駐車場技術基準の一部変更について」に
、平成26年7月15日に掲載されたと主張。
ただし、申立人が申立書に記載する甲第5号証が掲載
されたウェブサイトのアドレスには、甲第5号証とは
異なる日付け及び内容が掲載されており、申立人が申
立書に記載するウェブサイトのアドレスには、誤記が
あると認める。
上に記載した甲第5号証が掲載されたウェブサイトの
アドレスは、立体駐車場工業会のウェブサイト「新着
情報一覧」の記事から、当審が職権で確認した。
甲第5号証自体は、申立人が申立書に添えて提出)


2 各証拠の記載
(1)甲第1号証(先願1)
ア 記載事項
甲第1号証によれば、先願1の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「先願1の当初明細書等」という。)には、次の事項が記載されており、当該事項はその後出願公開されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。

(ア)
「【0039】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0040】
図1は、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10(立体駐車場)の外観図である。
【0041】
機械式駐車装置10は、車両12を乗入階14から入出庫させる。そして、機械式駐車装置10は、車両12を載置したパレット16を乗入階14と車両12を格納する格納庫18との間で昇降させる。なお、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10の構成は、一例であり、乗入階14を格納庫18よりも上層とする等、他の構成であってもよい。
【0042】
乗入階14には、格納庫18へ搬送されるパレット16に車両12が載置され、車両12の運転者が車両12に乗降可能な乗降室20が設けられている。
【0043】
また、乗降室20(乗入階14)の外側には、機械式駐車装置10の操作盤22が設けられる。
操作盤22は、機械式駐車装置10の利用者が操作可能なように、例えば、スイッチ、タッチパネル、ICカード、リモコン装置等を介して各種操作(入庫又は出庫の指示等)の入力を受け付ける。また、操作盤22は、文字や画像等を表示する液晶ディスプレイ装置、表示ランプ等の表示装置、音声合成装置による音声、警報音を出すスピーカーによって、種々の情報を利用者のために提供する。
【0044】
図2は、乗降室20の構成を示した上面図である。
【0045】
車両12及び運転者等は、入出庫口30から乗降室20へ出入りする。入出庫口30には、入出庫扉32が設けられ、乗降室20の略中央には、車両12が載置されるパレット16が配置される。
【0046】
乗降室20内には、安全確認の実施位置の近辺に配置され、人による安全確認の実施状態が入力される入力手段である確認ボタン34A,34Bが備えられる。確認ボタン34A,34Bは、人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。
本第1実施形態では、確認ボタン34A,34Bは、パレット16(車両12)を挟んだ位置、図2の例では左右の壁面35に備えられる。より具体的には、図2の例では、右奥(車両12右側前方)の壁面35に確認ボタン34Aが備えられ、左手前(車両12左側後方)の壁面35に確認ボタン34Bが備えられる。
なお、以下の説明において、各確認ボタン34を区別する場合は、符号の末尾にA,Bの何れかを付し、各確認ボタン34を区別しない場合は、A,Bを省略する。
【0047】
確認ボタン34は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する。例えば、確認ボタン34は、入力が行われていない状態、すなわち押圧されていない状態で明滅する。具体的には、確認ボタン34の内部にLED(Light Emitting Diode)又は電球等の照明装置が設けられ、この照明装置が明滅する。なお、入力を促す機能は、明滅の他に、単に点灯するだけでもよい。
そして、確認ボタン34は、押圧されると消灯する。これにより、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、確認ボタン34への押圧(入力)忘れや押圧(入力)ミスを防止できる。
【0048】
入出庫口30には、人の乗降室20への入退室を検知する入退室検知センサ36が設けられる。入退室検知センサ36は、一例として、センサ36Aが入出庫口30の内側に設けられ、センサ36Bが入出庫口30の外側に設けられる。
入退室検知センサ36は、センサ36Bからセンサ36Aの順で人を検知した場合、乗降室20へ人が入室したと検知し、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知する。
【0049】
また、乗降室20は、人に音声で情報を報知するためのスピーカー38を備える。
【0050】
乗降室20外の操作盤22には、人に操作されることでパレット16の搬送の許可が入力される最終確認ボタン40が備えられている。
【0051】
図3は、機械式駐車装置10の制御装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【0052】
制御装置50は、CPU(CentralProcessing Unit)52、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(ReadOnly Memory)54、CPU52による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random AccessMemory)56、各種プログラム及び各種情報を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard DiskDrive)58を備えている。
【0053】
なお、HDD58の代わりに、EEPROM(Electrically ErasableProgrammable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、バッテリバックアップ付きのSRAM(Static RandomAccess Memory)等の記憶素子を用いてもよく、プログラム、利用者情報、及び設定値等のデータの種類に応じて記憶素子を使い分けて記憶させてもよい。
【0054】
制御装置50は、パレット16等を駆動させるための各種モータ(不図示)を制御するモータ制御部60、入退室検知センサ36からの信号を受信するセンサ信号受信部62を備える。また、制御装置50は、確認ボタン34,40の押圧状態を判定し、確認ボタン34,40の明滅を制御するボタン制御部64を備えている。
【0055】
これらCPU52、ROM54、RAM56、HDD58、モータ制御部60、センサ信号受信部62、ボタン制御部64、及び操作盤22は、システムバス66を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU52は、ROM54、RAM56、及びHDD58へのアクセス、モータ制御部60を介したモータの駆動、センサ信号受信部62を介した乗降室20内への人の入退室状態の把握、ボタン制御部64を介した安全確認状態の把握、並びに操作盤22に対する操作状態の把握及び画像の表示等、を行える。」

(イ)
「【0056】
次に、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10の作用について説明する。
【0057】
機械式駐車装置10へ車両12を入庫させる場合、運転者以外の同乗者及び荷物等は、乗降室20へ車両12を進入させる前に車両12から降ろされる。そして、車両12を乗降室20へ進入させてパレット16に載置した後、運転者は、パレット16を動作させる前に乗降室20内の安全確認を必要とする。
【0058】
乗降室20内の安全確認は、人の有無やパレット16の搬送の障害になる物の有無等の確認である。すなわち、車両12から降りた運転者が安全確認者として、乗降室20内における安全確認の実施位置へ移動する。そして、安全確認者が安全確認を実施した後に、確認ボタン34を押圧する。これにより、安全確認終了という安全確認の実施状態が確認ボタン34に入力されることとなる。
【0059】
乗降室20内の安全確認は、運転者が乗降室20内に居るものの(時には同乗者が車両内に居残る場合がある)確実な検知方法がない。このため、乗降室20内の安全確認は、人による確認が最も効果的な方法であると考えられる。本第1実施形態によれば、確認ボタン34が安全確認の実施位置の近辺に配置されるため、安全確認者は確認ボタン34の配置位置へ移動しなければならない。安全確認者は、確認ボタン34までの移動を行う過程において必然的に周囲を目視するので、それにより安全確認が行われることとなる。なお、安全確認者は、車両12の運転者に限らず、機械式駐車装置10の管理者等でもよい。
【0060】
そして、確認ボタン34への入力が行われ、かつ乗降室20から人が退室した後に、制御装置50によって、パレット16の搬送が実行される。このため、確認ボタン34への入力が行われ、乗降室20から人が退室することで安全が確保されない限り、パレット16の搬送は行われず、車両12も格納庫18へ搬送されることは無い。
【0061】
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20から人が退出した後に動作を行い、乗降室20内の安全性を確保できる。
【0062】
また、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、乗降室20から人が退室し、最終確認ボタン40への押圧(操作)が行われた後に、制御装置50によってパレット16の搬送が実行される。すなわち、安全確認の実施状態を確認ボタン34に入力した安全確認者が、乗降室20外の操作盤22に備えられる最終確認ボタン40を操作した後に、パレット16の搬送が実行されるので、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0063】
なお、上記説明した本第1実施形態に係る確認ボタン34,40を用いた安全確認を安全確認処理という。
【0064】
図4は、安全確認処理を行う場合に、制御装置50によって実行される安全確認プログラムの流れを示すフローチャートである。安全確認プログラムは、HDD58の所定領域に予め記憶されている。
なお、安全確認プログラムは、車両12がパレット16に載置された後に、開始される。また、安全確認プログラムの開始と共に、確認ボタン34の明滅が開始される。また、最終確認ボタン40に対する操作は、安全確認プログラムの開始時には無効とされている。
【0065】
まず、ステップ100では、一つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Aが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Aへの押圧は、確認ボタン34A近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Aが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ101へ移行する。
確認ボタン34Aは、押圧されるまでは明滅しているが、押圧された後、消灯する。
【0066】
ステップ101では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ102へ移行する。
【0067】
ステップ102では、二つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Bが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Bへの押圧は、確認ボタン34B近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Bが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ103へ移行する。
確認ボタン34Bは、押圧されるまでは明滅しているが、押圧された後、消灯する。
【0068】
上述したように確認ボタン34A,34Bは、パレット16を挟んで配置されている。従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、安全確認者である運転者が車両12の片側だけでなく、反対側の安全確認も行うこととなるので、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0069】
ステップ103では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ104へ移行する。
【0070】
ステップ104では、入退室検知センサ36の検知結果に基づいて、乗降室20から運転者が退室したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行する。
【0071】
ステップ106では、操作盤22に備えられる最終確認ボタン40への操作を有効とする。
乗降室20へ入室した人の退室が検知された後に、最終確認ボタン40への操作が有効とされることで、例えば安全確認者が乗降室20から出る前に他者によって最終確認ボタン40が操作されても、パレット16の搬送が実行されることは無い。
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20内の安全性が確保できる。
【0072】
次のステップ107では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ114へ移行し、否定判定の場合はステップ108へ移行する。
【0073】
ステップ108では、最終確認ボタン40が押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行する。
【0074】
ステップ110では、機械式駐車装置10の動作が開始され、本安全確認処理が終了する。具体的には、入出庫扉32が閉じられ、車両12が載置されたパレット16が格納庫18へ搬送される。
【0075】
なお、ステップ101及びステップ103で肯定判定となり、ステップ112へ移行すると、ステップ112において、確認ボタン34への入力が全て解除され、ステップ100へ戻る。確認ボタン34への入力の解除とは、それまでに行われた確認ボタン34への入力が取り消されることである。
【0076】
また、ステップ107で肯定判定となり、ステップ114へ移行すると、ステップ114において、確認ボタン34への入力が全て解除され、最終確認ボタン40への操作を無効とし、ステップ100へ戻る。
【0077】
ステップ112,114へ移行した場合、安全確認者は、再び確認ボタン34を押圧し、入退室検知センサ36によって退室を検知させ、最終確認ボタン40への操作を有効にしなければならない。このように、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、新たに人が乗降室20内へ入室した場合に、再び乗降室20内の安全確認が必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。」

(ウ)
「【0080】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0081】
本第2実施形態に係る機械式駐車装置10は、車両12の運転席側に対して反対側に配置された入力手段である確認ボタン34への入力を促す機能を備える。
【0082】
図5は、本第2実施形態に係る乗降室20の上面図である。なお、図5における図2と同一の構成部分については図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0083】
本第2実施形態に係る機械式駐車装置10は、パレット16に対して車幅が広すぎる車両12のパレット16への載置を規制するために、車両12の車幅を検知する車幅規制センサ70を備える。
車幅規制センサ70は、一例として、車両12の両側に、光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70Bとを一対備えている。照射部70Aは、例えばパレット16に載置される車両12の前方に配置され、受光部70Bは照射部70Aに対向するように車両12の後方に配置される。そして、一対の照射部70A及び受光部70Bは、パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置される。
すなわち、照射部70Aから照射された光線が受光部70Bで受光されない場合は、パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えている場合である。このような車両12をパレット16に載置しても、パレット16は搬送されない。
【0084】
図6は、本第2実施形態に係る機械式駐車装置10の制御装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【0085】
車幅規制センサ70の受光部70Bによる光線の受光状態を示すセンサ信号が、センサ信号受信部62を介してCPU52へ入力される。
【0086】
本第2実施形態に係るCPU52は、最大車幅内の車幅の車両12がパレット16に載置された後に、受光部70Bによる光線の受光状態に基づいて、車両12の運転席側を判定する。
具体的には、パレット16に載置された車両12から運転者が降りる場合、開かれるドア、又は降車する運転者によって照射部70Aからの光線が遮られる。従って、運転席は、光線を受光しなくなった受光部70Bが配置されている側であると判定される。
【0087】
そして、CPU52は、車両12の運転席側に対して反対側に配置された確認ボタン34を明滅させることによって、その確認ボタン34への入力を運転者へ促す。すなわち、運転席が車両12の右側であると判定された場合は、確認ボタン34Bが明滅し、運転席が車両12の左側であると判定された場合は、確認ボタン34Aが明滅する。
これにより、車両12の運転者が運転席側から車両12の反対側まで移動することとなり、乗降室20内の安全確認がより広い範囲で行われる。
【0088】
なお、車両12の両側の光線が遮られたと判定された場合は、運転席側を判定できないため、確認ボタン34A,34B共に明滅する。」

(エ)
「【0095】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
【0096】
本第4実施形態に係る機械式駐車装置10は、車両12内に居残りした人が最終確認ボタン40への操作の前に車両12外に出た場合に、確認ボタン34への入力を解除する機能を備える。
【0097】
なお、本第2実施形態に係る乗降室20及び制御装置50の構成は、上述した第2実施形態に係る図5及び図6と同様である。
【0098】
本第4実施形態に係るCPU52は、最大車幅内の車幅の車両12がパレット16に載置され、確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に車幅規制センサ70がセンサ信号を出力したか否かを判定する。
【0099】
車幅規制センサ70がセンサ信号を出力する場合とは、車両12に居残っていた同乗者が車両12から降りた場合である。この場合、乗降室20には、運転者以外に同乗者が居ることとなる。
具体的には、パレット16に載置された車両12から同乗者が降りる場合、開かれるドア、又は降車する同乗者によって照射部70Aからの光線が一旦遮られる。その後、車両12のドアが閉められ、同乗者が車両12から離れると、車幅規制センサ70は受光状態に戻る。
【0100】
本第4実施形態に係るCPU25は、図4のステップ100からステップ108の間、すなわち確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に、車幅規制センサ70の光線が遮られ、車幅規制センサ70がセンサ信号を出力した場合、運転者以外の人が乗降室20内に居残っていると判定する。そして、CPU25は、確認ボタン34への入力を全て解除する。
【0101】
機械式駐車装置10は、その後再び運転者により確認ボタン34への入力が行われ、入退室検知センサ36の検知結果が運転者の退室を検知し、さらに最終確認ボタン40への入力が行われた後に動作する。
このように、本実施形態に係る機械式駐車装置10は、同乗者が車両12に居残っていた場合、同乗者の乗降室20からの退室確認を含む乗降室20内の安全確認が再び必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。」
(当審注;段落【0097】における「本第2実施形態に係る乗降室20及び制御装置50の構成は、」は、「本第4実施形態に係る乗降室20及び制御装置50の構成は、」の誤記と認める。また、段落【0100】における「CPU25」は、「CPU52」の誤記と認める。)

(オ)
「【0102】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0103】
例えば、上記各実施形態では、確認ボタン34が左右の壁面35に計2つ備えられる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、確認ボタン34が1つ又は3つ以上備えられる形態としてもよい。
【0104】
確認ボタン34が一つの場合、例えば、確認ボタン34は図8に示されるように、車両12の左側となる壁面35の車両12前方側に配置される。この理由は、右側に運転席が配置される車両12が日本国内では多く、安全確認者である運転者は、確認ボタン34の配置位置へ移動する過程において、必然的に車両12の右側及び左側を目視して、さらに車両12の前方についても安全確認を行うこととなるためである。
【0105】
また、図9は、確認ボタン34が4つの場合の例を示す。
図9の例では、車両12の前方左右及び後方左右となる壁面35に確認ボタン34が配置される。これにより、安全確認者は、より広い範囲を目視して安全確認を行うこととなる。
【0106】
また、上記各実施形態では、確認ボタン34が壁面35に備えられる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、確認ボタン34は乗降室20内における安全確認の実施位置の近辺に配置されるのであれば、壁面35以外に配置されてよい。」

(カ)
図5には、次の図示がある。




図5には、入出庫口30より左側の乗降室20内の手前側に、左手前の確認ボタン34Bが設けられ、入出庫口30の右外側に最終確認ボタン40を備える操作盤22が設けられた様子が、図示されている。
また図5から、入退室検知センサ36を構成するセンサ36Aとセンサ36Bについて、入出庫口30の内側に設けられたセンサ36Aは、乗降室20内の手前側かつパレット16より外側で検知を行い、入出庫口30の外側に設けられたセンサ36Bは、乗降室20外で検知を行うように配置された様子が、看て取れる。
また図5から、車幅規制センサ70について、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置するように配置される様子が、看て取れる。

イ 先願1の当初明細書等に記載された発明の認定
先願1の当初明細書等には、上記アより、第1実施形態、第2実施形態に付加構成を追加した第4実施形態を基礎として、次の発明(以下、「先願1発明」という。)が記載されていると認められる。

「乗入階14の乗降室20、入出庫扉32が設けられた入出庫口30、乗降室20の略中央で車両12が載置されるパレット16、パレット16が搬送される格納庫18、を有する機械式駐車装置10(立体駐車場)であり、
人の有無等の安全確認の実施位置の近傍に配置され、人による安全確認の実施状況が入力される、乗降室20内の右奥の確認ボタン34A及び入出庫口30左側で乗降室20内の左手前の確認ボタン34Bを含む、明滅して入力を促す機能を有するLEDを備えた確認ボタン34、並びに乗降室20外の入出庫口30右側の操作盤22に備えられる最終確認ボタン40と、
センサ36Bとセンサ36Aとを有する入退室検知センサ36であり、入出庫口30の内側に設けられたセンサ36Aは、乗降室20内の手前側かつパレット16より外側で検知を行い、入出庫口30の外側に設けられたセンサ36Bは、乗降室20外で検知を行い、センサ36Bからセンサ36Aの順で人を検知した場合、乗降室20へ人が入室したと検知し、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知する、入退室検知センサ36と、
パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えることを規制するとともに、開かれたドアまたは降車する運転手を検知する車幅規制センサ70であり、車両12の両側に、一対の光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70Bを、パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置し、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置する、車幅規制センサ70と、
CPU52を備える制御装置50と、を備え、
制御装置50のCPU52は、安全確認のために、確認ボタン34,40を用いた安全確認処理が終了するまではパレット16の搬送は行わず、
車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ、
明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了して、入出庫扉34を閉じパレット16を格納庫18へ搬送し、
有効とした最終確認ボタン40が操作される前に、入退室検知センサ36が入室を検知するか、あるいは車幅規制センサ70がセンサ信号を出力した場合、それまでに行われた確認ボタン34への入力を全て解除する、
機械式駐車装置10。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに以下の記載がある。
「【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図5はピット多段式駐車装置の一例としての駐車装置1を示しており、地上1段・地下2段の上下方向3段式で、横方向に3列の構造とされている。
【0023】
即ち、上段パレット2、中段パレット3、下段パレット4が上下方向に所定間隔を有して連結支柱5で連結されたパレット群6、7、8をピット9内で横方向に3列並んで配置した構造とされている。
・・・・(中略)・・・・
【0031】
そして、各パレット2、3、4における左右両側の立ち上がり部2b、3b、4bには、車止め部17の近くに位置してそれぞれ投光器と受光器とからなる対の光電式検知器からなる実車検知用の実車検知器19がそれぞれ設けられており、パレット2、3、4上に搭載される車両W1、W2の後輪16の検出・非検出によって車両W1、W2が搭載されたかどうかを検知する方式とされている。なお、本実施形態においては、車輪径の大小や停止位置が多少変化しても確実に検出できるように、図3に示される如く、車両W1、W2の侵入方向に対して傾斜する斜め方向に投光する配置構造とされている。
・・・・(中略)・・・・
【0033】
そして、地上乗入部に位置する上段パレット2に対して長尺車両W2を入庫する際、車両W2の侵入方向前側位置および後側位置を検知する前記同様の光電式検知器からなる車両後端規制用検知器22および車両乗入側検知器としての車両前端規制用検知器23がデッキ20上の両側部間にわたってそれぞれ備えられている。
【0034】
また、地上乗入部に位置する中段パレット3や下段パレット4に対して普通車両W1を入庫する際、車両W1の侵入方向前側位置および後側位置を検知する前記同様の光電式検知器からなる車両後端規制用検知器24a、24b、24cおよび車両前端規制用検知器23がデッキ20上と利用者通路21上の相互間やデッキ20上の両側部間にわたってそれぞれ備えられている。
【0035】
そして、本実施形態においては、上段パレット2の車止め部17をより後方位置に配置することにより、中段パレット3や下段パレット4に搭載された普通車両W1と、上段パレット2に搭載された長尺車両W2との乗入側を揃える方式とし、車両前端規制用検知器23を中段パレット3や下段パレット4に搭載される普通車両W1と上段パレット2に搭載される長尺車両W2の検知に兼用する構造とされている。
【0036】
また、各パレット2、3、4に対して車両W1、W2を入庫する際、車両W1、W2の侵入方向左端位置および右端位置を検出する前記同様の光電式検知器からなる左端規制用検知器25および右端規制用検知器26が各列それぞれ備えられている。」

(3)甲第3号証
甲第3号証には、図面とともに以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】機械式駐車設備は入出庫室と格納室とを備えており、両室間で車両の移送が行われる。より具体的に説明すると、まず、入出庫口から入出庫室のパレット上に車両を導く。そして、入出庫室内から人を排除して、入出庫室が無人の状態になってから、パレットを移動させることによってパレットごと車両を格納室まで移送させるようにしている。ところが、入出庫室内に人が残ったまま閉じ込められたような場合には、機械式駐車設備を非常停止させる必要があり、そのために機械式駐車設備には安全装置が設けられている。
【0003】従来のこの種の安全装置としては、例えば図9に示すようなものがある。図9(a)の安全装置は発光装置101と光電センサ102によって、入出庫室103内に人が居るか否かを検出するものである。すなわち、入出庫室103内に人が閉じ込められていると、その人体が発光装置101からの光線を遮る。すると光電センサ102が光線を受光できなくなり、光線センサ102からの信号を監視している制御装置が移送装置を非常停止させるのである。なお106は車両を載置するパレットである。」


図9(a)には、パレット106の周囲を発光装置101からの光線が囲むように、発光装置101と光電センサ102とが配置された様子が、示されている。

(4)甲第4号証
ア 記載事項
甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)
「【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る昇降式立体駐車装置38は、図1に示されるように、各基A1?A3、B1?B3毎に、独立して開閉可能な前面ゲート40が設けられている点に、外観上の特徴がある。なお、図1においても、説明の便宜上、隣基インターロックによる動作制限に係る基を点線aLで囲み、下限インターロックによる動作制限に係る基を一点鎖線bLで括っている。更に、後述するゲートインターロックによる作動制限に係る基を、二点鎖線gLで括っている。
【0014】
各グループA、Bの具体的構造は、図2に例示されるように、上下一列に固定された三段のパレット32が、支柱42(図3(b)参照)によって一体に固定されている。又、この一体に固定された三段のパレット32は、ピット35内に立設された複数の固定柱44に案内されて、モータ、ワイヤ、プーリ等からなる昇降機構により駆動される。そして、最上段のパレットがグランド面GLと一致し、中段及び下段のパレットがピット35内に格納された定位置(待機状態)と、最下段のパレットがグランド面GLと一致する上昇限度位置との間を、自在に昇降するようになっている。操作盤36は、入出庫に係るパレットを具体的に指定して自動呼出し操作を行う形式の操作盤であり、例えば、いわゆるテンキー操作盤が適している。前面ゲート40は、図示の例では、開状態でピット35へと下降する形式となっているが、必要に応じ、グランド面GLよりも上方へと上昇して開状態となるものであっても良い。
更に、図3に示されるように、各ユニットを4基又はそれ以上で構成することも可能である。又、各基A1?A4の間に床板46が設けられ、なおかつ、床板46上の障害物を検出する光電管等の障害物センサ48が設けられている。
【0015】
図4に示されるように、各グループの制御盤34は、一つのグループ毎に一つの主制御盤50と、各基毎に設けられた副制御盤501、502、‥‥、50nとで構成されている。そして、主制御盤50には、一つのグループ内において、任意の一つの基の入出庫動作のみ許容し、その他の基を下限位置に固定する下限インターロックが設けられている。又、隣り合う他のグループの基の入出庫動作時に、他のグループの入出庫動作中の基と隣接する基を、下限位置に固定する隣基インターロックが設けられている。さらに、下限インターロック又は隣基インターロックによる動作制限を受けた基に係る、前面ゲート40の開放を制限するゲートインターロックが設けられている。」

(イ)
「【0021】
(40L)主制御盤50から、左端基に係る副制御盤501(図4参照)に対し、動作指令が送信される。
左端基に係る副制御盤501は、主制御盤50からの動作司令を受けて、左端基の該当パレットをグランド面GLに呼出し、パレットの高さがグランド面GLに一致した後に、左端基の前面ゲート40を開放するよう制御する。呼出しが掛けられたパレットが、最上段のパレットである場合には、直ちに、前面ゲート40が開放される。一方、中間基及び右端基に係る副制御盤は、中間基及び右端基を定位置に固定すると共に、中間基及び右端基の前面ゲート40を閉状態に固定する。
そして、前面ゲート40の解放後は、ユーザーが車両に乗り込み、車両の入出庫を行う。
(50L)入出庫完了の後、ユーザーは、再び操作盤を操作して、復帰のための起動操作を行う。実際にユーザーが行う操作は、復帰ボタンを押すことで足り、ボタンを押し続ける操作は不要である。
そして、主制御盤50から、左端基に係る副制御盤501(図4参照)に対し、動作指令が送信される。副制御盤501は、主制御盤50からの動作司令を受けて、前面ゲート40を閉じ、最上段のパレットがグランド面GLと一致し、中段及び下段のパレットがピット35内に格納された定位置へと下降させる。
(60L)左端基が定位置へと復帰することにより、入出庫動作完了となる。
(62L)主制御盤50は、隣基インターロック信号をOFFとする。その結果、隣接するグループの右端基が受けていた隣基インターロックによる動作制限が解除されることとなる。
(70)装置は待機状態となる。」

(ウ)
「【0029】
又、図11に示されるように、呼出しが掛けられたパレットが、待機状態でグランド面GLと一致するパレット(グループAの中間基A2の上段、グループCの左端基C1の上段)である場合に、開放中の前面ゲート40に係る基と隣接する基(グループAの左端基A、右端基A3、グループBの右端基B3及びグループCの中間基C2)の前面ゲート40は、グループの同異を問わずゲートインターロックによる動作制限を受けるようになっている。
従って、呼出しが掛けられたパレットが、基の昇降作動を伴わない、待機状態でグランド面GLと一致するパレットである場合にも、前記開放中の前面ゲートに係る基と隣接する基は前面ゲートによって閉鎖され、入出庫動作中の基以外の基へと人が誤進入することを、効果的に防ぐことが可能となる。
【0030】
更に、各基の間に床板46(図3)が設けられ、なおかつ、床板46上に障害物センサ48が設けられ、各グループA?Cの制御盤34には、障害物センサ48の検知信号を受けて、全基の入出庫動作を停止する制御回路が設けられていることから、装置の動作中に、各基の間に設けられた床板46に人が誤侵入した場合であっても、全基が直ちに停止することにより、装置の安全性をより確実なものとすることができる。」

(エ)
図3には、障害物センサ48が、グランド面に一致した高さのパレット32の周囲の障害物を検出するように配置されている様子が示されている。

イ 甲第4号証に記載された発明の認定
甲第4号証には、上記アより、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「各グループA、Bの各基A1?A3、B1?B3毎に、独立して開閉可能な前面ゲート40が設けられ、三段のパレット32が昇降機構により駆動され、
呼出しが掛けられたパレットをグランド面に呼出し、当該パレットの高さがグランド面に一致した後に、前面ゲート40を開放する、昇降式立体駐車装置38であって、
各基の間に、床板46上の障害物を検出する光電管の障害物センサ48が、グランド面に一致した高さのパレット32の周囲の障害物を検出するように配置され、
各グループの制御盤34には、障害物センサ48の検知信号を受けて、全基の入出庫動作を停止する制御回路が設けられており、装置の動作中に、各基の間に設けられた床板46に人が誤侵入した場合であっても、全基が直ちに停止することにより、装置の安全性を確実なものとする、
昇降式立体駐車装置38。」

(5)甲第5号証
ア 記載事項
甲第5号証には、次の記載がある。
(ア)第1頁見出し
「通達 立駐工発第59号 機械式駐車場技術基準2013年版の一部変更新旧比較表 2014.07.15」

(イ)第1頁左欄第1行-第7行
「2014.07.10 国交省ガイドライン反映技術基準変更(赤字:変更箇所)
2.3.2 駐車装置の操作位置等
駐車装置および出入口扉の操作盤は、乗降室内の状況、並びに人および自動車の出入りの状況が目視によって確認できる位置に設けること。なお、部分的に目視できない領域については原則として反射鏡、ITVモニターを設け、これらが設けられない場合は、無人確認入力機、センサー等の安全装置を補助的に設け目視確認の補助を行うこと。
また、出入口扉が閉まった直後でも操作位置から乗降室内の状況が確認できること。」

(ウ)第11頁左欄第13行-第19行
「3.6.22 安全確認ボタンの設置
出入口扉を有する駐車装置においては、入出庫操作後、全ての人が退出したことの確認をより確実に行うため、入出庫作業後、安全確認ボタンの入力がない限り、出入口扉の閉鎖が出来ない機能を有すること。安全確認ボタンは操作盤に設けること。
(解説)
安全確認ボタン入力においては、乗降室内の無人確認をモニター表示や自動音声で促すなど、複数の注意喚起方法を併用することが望ましい。」

イ 甲第5号証の公知性、及び甲第5号証に記載された発明
上記アに摘記した甲第5号証の内容は、申立人が申立書において主張する、立体駐車場工業会のウェブサイト「新着情報一覧」(URLは上記第4の1「証拠一覧」中のアドレスを参照)の、平成26年7月15日と題された記事「機械式駐車場技術基準の一部変更について」中のリンクから、参照できることから、甲第5号証は、本件出願日前の平成26年7月15日にはインターネットに掲載され、電気通信回線を通じて公知となっていたと、推認することができる。
また、上記アの記載事項から、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていたと認められる。

「駐車装置および出入口扉の操作盤は、乗降室内の状況、並びに人および自動車の出入りの状況が目視によって確認できる位置に設け、部分的に目視できない領域については、無人確認入力機、センサー等の安全装置を補助的に設け目視確認の補助を行う、駐車装置。」


第5 判断
1 本件発明1について
ア 拡大先願
(ア)対比
本件発明1と先願1発明とを対比する。
先願1発明における「パレット16」は、「乗入階14の乗降室20」から「格納室18」へと「搬送される」ものであるから、可動ということができ、本件発明1における「可動式パレット」に相当する。
先願1発明における「機械式駐車装置10(立体駐車場)」は、本件発明1における「立体駐車装置」に相当する。
先願1発明の「機械式駐車装置10」において、「パレット16」に載置された「車両12」の運転手は、「車両12」及び「パレット16」が「格納室18」へと搬送される前に降車しているから、「車両12」を載置した「パレット16」は、「車両12」が「格納室18」内に格納されている期間中、載置した車両12とともに「格納室18」内で格納されており、そのため「機械式駐車装置10」は「パレット16」を複数備えていると解される。このように、先願1発明における「機械式駐車装置10」が「パレット16」を複数備えると解されることは、本件発明1における「立体駐車装置」が「可動式パレット」を「複数」備えることに相当する。
先願1発明において、「機械式駐車装置10」が、「入出庫口30」に備える「入出庫扉32」は、「パレット16を格納庫18へ搬送」する前に閉じられるものであり、かつ閉じられる前には開いた状態で入出庫口30からの車両12の入出庫を可能としていることが明らかであるから、本件発明1における「開閉ゲート」に相当する。また、先願1発明において、「入出庫扉32」がある箇所は、入出庫しようとする車両からみて、機械式駐車装置10の手前側であり、乗降室20内で入出庫扉32に近い側の確認ボタン34Bの位置も「左手前」であることから、「入出庫扉32」は「機械式駐車装置10」の手前側に備えられているということができ、このことは本件発明1において、「開閉ゲート」が「立体駐車装置」の「前面」に備えられた構成に相当する。
先願1発明において行われる「安全確認」は、「機械式駐車装置10」における「人の有無等」を確認するものであるから、本件発明1における「立体駐車装置を対象」として行われる「無人確認」に相当する。
先願1発明における、「乗入階14の乗降室20」の「略中央」に位置する「パレット16」と、本件発明1における、「車両を入出庫する高さにある各可動式パレット」とは、「乗入階14」が車両を入出庫する高さにあることは明らかであるから、「車両を入出庫する高さにある可動式パレット」という点で共通する。
先願1発明における、「パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えることを規制するとともに、開かれたドアまたは降車する運転手を検知する車幅規制センサ70であり、車両12の両側に、一対の光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70Bを、パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置し、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置する、車幅規制センサ70」は、本件発明1における、「可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサ」に相当する。
先願1発明における、「安全確認の実施位置の近傍に配置され、人による安全確認の実施状況が入力される、乗降室20内の右奥の確認ボタン34A及び入出庫口30左側で乗降室20内の左手前の確認ボタン34Bを含む、明滅して入力を促す機能を有するLEDを備えた確認ボタン34」は、本件発明1における、「前記立体駐車装置内の少なくとも一部についての無人確認済入力操作が行われる、入力を促す表示が可能な表示部を備える複数の入力操作部」に相当する。
先願1発明において、「制御装置50」の「CPU52」は、「車幅規制センサ70」の出力に基づき「確認ボタン34」の明滅を制御し、「確認ボタン34」を用いた「安全確認処理」が「終了」した後に、「入出庫扉34を閉じパレット16を格納庫18へ搬送」するという制御を行うから、先願1発明における「車幅規制センサ70」、「確認ボタン34」、及び「CPU52」は、「機械式駐車装置10」の安全確認処理を行うシステムを構成しているということができ、先願1発明における当該システムは、本件発明1における「立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認システム」に相当する。また、先願1発明における「CPU52」は、本件発明1における「システム制御部」に相当し、先願1発明における安全確認処理を行うシステムが、「CPU52」、「車幅規制センサ70」及び「確認ボタン34」を含むことは、本件発明1における「無人確認システム」が、「複数のセンサ」、「複数の入力操作部」、及び「システム制御部」を含む構成に相当する。
先願1発明において、「CPU52」が、「車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ」るからには、「両側の確認ボタン34A及び34B」と「右側あるいは左側」の「車幅規制センサ70」とは、「車幅規制センサ70」の「検知」の動作に関して、「確認ボタン34」との間に、設置された位置の関係に基いて対応する「確認ボタン34」を明滅させる動作の設定が行われていると解され、先願1発明においてこのような対応する「確認ボタン34」を明滅させる動作の設定がなされていることと、本件発明1において「前記少なくとも1つの開閉ゲートの開閉動作に関して、各入力操作部と前記少なくとも1つの開閉ゲートとの設置位置の関係に基づいた第1の紐付け動作が設定され、前記複数のセンサの検知動作に関して、各入力操作部と前記複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた第2の紐付け動作が設定されて」いる構成とは、「前記複数のセンサの検知動作に関して、各入力操作部と前記複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた紐付け動作が設定」されている、という点で共通する。
そのうえで、先願1発明において、「CPU52」が、「車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ」る構成と、本件発明1において、「前記システム制御部」が「前記開閉ゲートが開いた後に、該開状態の開閉ゲートに対して前記第1の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部と、物体を検知したセンサに対して前記第2の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部との表示部を表示状態にさせ」る構成とは、先願1発明において「車両12がパレット16に載置された後」の時点では「入出庫扉32」が開いていると解されることを勘案すると、「前記システム制御部は、前記開閉ゲートが開いた後に、物体を検知したセンサに対して前記紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部の表示部を表示状態にさせ」る、という点で共通している。
そして、先願1発明において、「CPU52」が、「明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了して、入出庫扉34を閉じパレット16を格納庫18へ搬送」することで、「確認ボタン34,40を用いた安全確認処理が終了するまではパレット16の搬送は行わ」ない構成は、「入出庫扉34を閉じ」る動作も「明滅する確認ボタン34が全て消灯」するまでは行わないこととなることを勘案すると、本件発明1における「該表示状態にさせた入力操作部の表示部の全てが非表示状態になるまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止する」構成に相当する。

すなわち、先願1発明と本件発明1とは、
「複数の可動式パレットと、前面に開閉ゲートとを備えた立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認システムであって、
前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサと、前記立体駐車装置内の少なくとも一部についての無人確認済入力操作が行われる、入力を促す表示が可能な表示部を備える複数の入力操作部と、システム制御部とを含み、
前記複数の入力操作部の各々は、前記システム制御部の制御により前記表示部が表示状態にされ、前記無人確認済入力操作が行われると前記表示部が非表示状態になるものであり、
前記複数のセンサの検知動作に関して、各入力操作部と前記複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた紐付け動作が設定されており、
前記システム制御部は、前記開閉ゲートが開いた後に、物体を検知したセンサに対して前記紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部の表示部を表示状態にさせ、該表示状態にさせた入力操作部の表示部の全てが非表示状態になるまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものである、立体駐車装置の無人確認システム。」
の点で一致し、両者は次の点で相違する。

<相違点1>
開閉ゲート、及び、車両を入出庫する高さにある可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサに関して、
本件発明1においては、「開閉ゲート」が「少なくとも1つの開閉ゲート」と特定され、また「複数のセンサ」についても、「車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する」と特定されているのに対し、
先願1発明では、「入出庫扉32」が複数存在し得るうちの「少なくとも一つ」であること、及び、「車幅規制センサ70」が、乗降室20内に1又は複数存在し得る「パレット16」について、「各」パレット16の周辺で物体を検知することが、特定されていない点。

<相違点2>
各入力操作部に設定される紐付け動作、及び、入力操作部を表示状態とする処理について、
本件発明1では、「前記少なくとも1つの開閉ゲートの開閉動作に関して、各入力操作部と前記少なくとも1つの開閉ゲートとの設置位置の関係に基づいた第1の紐付け動作が設定され、前記複数のセンサの検知動作に関して、各入力操作部と前記複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた第2の紐付け動作が設定されており、前記システム制御部は、前記開閉ゲートが開いた後に、該開状態の開閉ゲートに対して前記第1の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部と、物体を検知したセンサに対して前記第2の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部との表示部を表示状態にさせ」ると特定されており、
当該特定によれば、「入力操作部」に対して、「開閉ゲートとの設置位置の関係に基づいた」紐付け、及び「複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた」紐付けという、2種類の対応関係が設定されたうえで、「開状態の開閉ゲート」に対して「第1の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部」、「物体を検知したセンサ」に対して「第2の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部」の表示部を「表示状態」とさせるから、、「システム制御部」が入力操作部を「表示状態にさせ」る処理についても2種類の対応関係に基づいた処理が両方行われるのに対し、
先願1発明では、「車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ」、また「それまでに行われた確認ボタン34への入力を全て解除する」という付加処理が行われるものの、確認ボタン34に対して、入出庫扉32の設置位置との関係に基づく対応付け、及び車幅規制センサ70の設置位置との関係に基づく対応付けという、2種類の対応付けを設定したうえで、確認ボタン34を明滅させる処理についても、開状態の入出庫扉に対して扉との設置位置の関係で対応付けられた確認ボタン34を明滅させ、物体を検知したセンサに対してセンサの設置位置との関係で対応付けられた確認ボタン34を明滅させるという、2種類の対応付けに基づいた明滅処理を両方実施してはいない点。

(イ)判断
事案に鑑み、上記相違点2から判断する。
本件発明1は、上記相違点2に係る構成を有することで、「開閉ゲート34が開かれたときに、この開かれた開閉ゲート34から人が立ち入ることが想定される可動式パレット32の、近傍に設置されている入力操作部16の表示部14が表示状態にされる。」(明細書段落【0062】参照)、及び、「開閉ゲート34が開かれた後に、物体を検知した又は検知しているセンサ12の検知範囲にある可動式パレット32の、近傍に設置された入力操作部16の表示部14が表示状態にされる。」(明細書段落【0063】参照)という制御の両方が行われ、もって「このように、上述した第1の紐付け動作及び第2の紐付け動作を介して、無人確認済入力操作を行う必要のある入力操作部16の表示部14を表示状態にさせることで、立体駐車装置30の使用者H(図6及び図7参照)に対して、表示部14を表示状態にさせた入力操作部16の設置位置から把握できる、無人確認を特に慎重に行う必要のある駐車装置30内の位置情報を提供することができるため、無人確認の負担を軽減することができる。」(明細書段落【0063】参照)という効果を奏するものと理解できる。
また、本件発明1は、立体駐車装置を対象とした「無人確認システム」として、上記相違点2に係る構成を有することで、「立体駐車装置の無人確認システム10と無人確認方法とは、図2に示したような構造の立体駐車装置30への適用に限定されるものではない。すなわち、立体駐車装置30は、高さ方向(図2の上下方向)や並列方向(図2の左右方向)により多くの(又はより少ない)可動式パレット32を備えた構成であってもよく、地上だけではなく地下に可動式パレット32を備えた構成であってもよい。」(明細書段落【0059】参照)、及び、「ここで、立体駐車装置30の少なくとも1つの開閉ゲート34は、車両を入出庫する高さにある可動式パレット32毎に設置された各連ゲート(図6及び図7参照)であってもよく、車両を入出庫する高さにある2基や3基の可動式パレット32毎に設置された2連ゲートや3連ゲート(図2参照)であってもよい。」(明細書段落【0062】参照)、並びに、「立体駐車装置の無人確認システム10は、設備の一部を追加又は交換して設置することで、既存の立体駐車装置に適用可能なものである。」(明細書段落【0073】参照)との記載に示されるように、適用可能な立体駐車装置の構造が限定されず、また既存の立体駐車装置への適用が容易である、という効果も奏するものと理解できる。
これに対して、先願1発明は、確認ボタン34に対して、入出庫扉32の設置位置との関係に基づく対応付け、及び車幅規制センサ70の設置位置との関係に基づく対応付けという、2種類の対応付けを設定したうえで、確認ボタン34を明滅させる処理についても、開状態の入出庫扉に対して扉との設置位置の関係で対応付けられた確認ボタン34を明滅させ、物体を検知したセンサに対してセンサの設置位置との関係で対応付けられた確認ボタン34を明滅させるという、2種類の対応付けに基づいた明滅処理を両方実施してはいない。また、先願1発明において、確認ボタン34Aと確認ボタン34Bとの両方を明滅させる場合があり、上記第4の2(1)ア(カ)に摘記した図5の図示より、明滅する確認ボタン34A及び34Bの位置が入出庫扉32により入出庫が行われるパレット16の周囲にあるという点で、確認ボタン34A及び34Bと入出庫扉32との間に所定の位置関係があるということができるとしても、そのことをもって、先願1発明における安全確認のためのシステム、及びその制御を行うCPU52が、確認ボタン34に対して、入出庫扉32の設置位置との関係に基づく対応付け、及び車幅規制センサ70の設置位置との関係に基づく対応付けという、2種類の対応付けを設定したうえで、確認ボタン34を明滅させる処理についても、開状態の入出庫扉に対して扉との設置位置の関係で対応付けられた確認ボタン34を明滅させ、物体を検知したセンサに対してセンサの設置位置との関係で対応付けられた確認ボタン34を明滅させるという、2種類の対応付けに基づいた明滅処理を両方実施しているということはできない。そして、かような先願1発明は、本件発明1の「無人確認システム」が上記相違点2に係る構成によって奏する、適用可能な立体駐車装置の構造が限定されることなく、第1の紐付け動作及び第2の紐付け動作を介して、無人確認済入力操作を行う必要のある入力操作部の表示部を表示状態にさせることで、立体駐車装置の使用者に対して、無人確認を特に慎重に行う必要のある駐車装置内の位置情報を提供することができる、という効果を奏するものでもない。そしてこの事情は、先願1発明において、「それまでに行われた確認ボタン34への入力を全て解除する」という付加処理が行われることを含めて考慮しても、変わるものではない。
したがって、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、立体駐車装置を対象とした「無人確認システム」として、技術的な意味を有し、かつ所定の効果を奏する構成であるから、単なる形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
なお、甲第2号証及び甲第3号証には、それぞれ上記第4の2(3)及び(4)に摘記した事項が記載されており、駐車場のパレットの周囲に光電検知装置を設けることが示されているが、駐車場のパレットの周囲に光電検知装置を設ける公知技術が複数存在することは、上記相違点2に係る本件発明1の構成が実質的な相違点であるとの判断を、変更すべき事情とはならない。

よって、本件発明1は、その余の上記相違点1について検討するまでもなく、先願1発明と同一ではない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は申立書において、「甲第1号証には、入出庫扉(32)が開扉した状態で、確認ボタン(34A,34B)が明滅状態とされ、確認ボタン(34A,34B)が押下された状態でなければ、入出庫扉(32)は閉じられないことが記載されているから、入出庫扉(32)と確認ボタン(34A,34B)とが紐付けられていることは明白である。したがって、甲第1号証において、本件特許発明1の「1F 前記少なくとも1つの開閉ゲートの開閉動作に関して、各入力操作部と前記少なくとも1つの開閉ゲートとの設置位置の関係に基づいた第1の紐付け動作が設定され、」は、記載されているに等しい事項である。」と主張している(申立書第19頁下から2行-第20頁第6行)。
しかしながら、明滅させられた全ての確認ボタン34が押下された後でなければ、入出庫扉32が閉じられないことと、確認ボタン34を明滅させるための紐付けをどのように設定し、当該設定された紐付けに基づいて確認ボタン34の明滅をどのようにして行われるかということとは、互いに異なるから、当該申立人の主張は採用することができない。
また申立人は申立書において、甲第1号証に記載される発明として、
「1g 複数のセンサ(36A,36B,70)の検知動作に関して、各確認ボタン(34A,34B)と複数のセンサ(36A,36B,70)との設置位置の関係に基づいて第2の紐付け動作が設定されている。(段落0072,0076-0077,0081,0086-0087)
1h 制御装置(50)は、入出庫扉(32)が開いた後に、第1の紐付け動作に基づいて確認ボタン(34A,34B)を明滅させ、
1i 物体を検知したセンサ(36A,36B,70)に対して第2の紐付け動作に基づいて確認ボタン(34A,34B)を明滅させ、」
という構成を全て有する発明が記載されている旨を主張している(申立書第13頁第18行-第21行)。
しかしながら、申立人が言及する甲第1号証の段落0072及び0076-0077の記載は、安全確認が終了するまでにセンサによる検知があった場合に、それまでに行われた確認ボタン34への入力を取り消す処理に関する記載であり、同様に申立人が言及する段落0081及び0086-0087の記載、すなわち車幅規制センサ70の出力に基づいて検知が行われた側と反対側の確認ボタン34を明滅させる記載と併せて考慮しても、上記(ア)に対比し上記(イ)に判断したとおり、「第1の紐付け動作」に基づく設定と「第2の紐付け動作」による設定との両方を有し、かつ「第1の紐付け動作」に基づく確認ボタン34の明滅と「第2の紐付け動作」による確認ボタン34の明滅とを両方行わせる、という構成が、甲第1号証に記載されているということはできない。
なお、申立人の上記主張のうち、「1h 制御装置(50)は、入出庫扉(32)が開いた後に、第1の紐付け動作に基づいて確認ボタン(34A,34B)を明滅させ、」という構成が甲第1号証に記載されている旨の主張については、甲第1号証中のいずれの箇所の記載を根拠とした主張であるのか明確でないが、仮に甲第1号証の段落【0083】-【0088】に記載され、上記第4の2(1)ア(ウ)に摘記し、先願1発明の認定に用いた第2実施形態の明滅開始処理に代えて、甲第1号証の段落【0064】に記載される、「なお、安全確認プログラムは、車両12がパレット16に載置された後に、開始される。また、安全確認プログラムの開始と共に、確認ボタン34の明滅が開始される。」という、第1実施形態の明滅開始処理に基づく主張と解して検討しても、当該「安全確認プログラムは、車両12がパレット16に載置された後に、開始される。また、安全確認プログラムの開始と共に、確認ボタン34の明滅が開始される。」という明滅の開始処理に、甲第1号証の段落【0072】及び【0076】-【0077】に記載される、安全確認が終了するまでにセンサによる検知があった場合に、それまでに行われた確認ボタン34への入力を取り消す、という付加的処理を加えたところで、「第1の紐付け動作」に基づく設定と「第2の紐付け動作」による設定との両方を有し、かつ「第1の紐付け動作」による確認ボタン34の明滅と「第2の紐付け動作」による確認ボタン34の明滅とを両方行わせていることとはならないから、上記(ア)に対比し上記(イ)に判断した、上記相違点2に係る本件発明1の構成に相当する構成が、甲第1号証に記載されているものではない。

したがって、拡大先願に関する申立人の主張を検討しても、上記(ア)及び(イ)と異なる認定及び判断をすべき事情を見いだすことはできない。

進歩性
申立人は、本件発明1は、甲4発明に甲5発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張しているので、以下に検討する。

(ア)甲4発明との対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明において、「昇降式立体駐車装置38」の「各グループ」の「各基」が備え、「昇降機構により駆動」される「三段のパレット32」の各段の「パレット32」は、本件発明1における「可動式パレット」に相当する。
甲4発明における「昇降式立体駐車装置38」は、本件発明1における「立体駐車装置」に相当する。
甲4発明において、「昇降式立体駐車装置38」が「パレット32」を複数備えていることは明らかであり、当該構成は、本件発明1における「立体駐車装置」が「可動式パレット」を「複数」備える構成に相当する。
甲4発明において、「昇降式立体駐車装置38」が、各基毎に「独立して開閉可能な前面ゲート40」を備える構成は、本件発明1において、「立体駐車装置」が「前面に少なくとも1つの開閉ゲート」を備える構成に相当する。
甲4発明において、「呼出しが掛けられたパレット」の「高さ」が「グランド面と一致した」後に、前面ゲート40が開放されることから、「グランド面に一致した高さ」の「パレット32」は、車両を入出庫する高さにあるということができ、甲4発明における「パレット32」のうち「グランド面に一致した高さ」の「パレット32」は、本件発明1における「前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレット」に相当する。
甲4発明において、「各基の間」に設けられ、「床板46上の障害物を検出する光電管の障害物センサ48」は、「グランド面に一致した高さのパレット32の周囲の障害物を検出するように配置され」ていることを勘案すると、本件発明1における、「車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサ」に相当する。
甲4発明において、「各グループの制御盤34」は、「障害物センサ48の検知信号を受けて、全基の入出庫動作を停止する」ことで、「装置の安全性を確実なもの」としているから、「各グループの制御盤34」と「障害物センサ48」とで「昇降式立体駐車装置38」のための安全性を確実なものとするシステムを構成しているということができ、甲4発明における当該構成と、本件発明1における「立体駐車装置を対象として、無人確認を行うための無人確認システム」とは、「立体駐車装置を対象とした、システム」という点で共通する。
甲4発明における「各グループの制御盤34」は、本件発明1における「システム制御部」に相当し、甲4発明において、「各グループの制御盤34」と「障害物センサ48」とが、装置の安全性を確実なものとするシステムをなす構成と、本件発明1において、「無人確認システム」が、「複数のセンサ」と、「前記立体駐車装置内の少なくとも一部についての無人確認済入力操作が行われる、入力を促す表示が可能な表示部を備える複数の入力操作部」と、「システム制御部」とを含む構成とは、「システム」が、「複数のセンサ」と、「システム制御部」とを含む、という点で共通する。

すなわち、甲4発明と本件発明1とは、
「複数の可動式パレットと、前面に少なくとも1つの開閉ゲートとを備えた立体駐車装置を対象とした、システムであって、
前記複数の可動式パレットのうち、車両を入出庫する高さにある各可動式パレットの周辺の物体を検知する複数のセンサと、システム制御部とを含む、
システム。」
の点で一致し、両者は次の点で相違する。

<相違点3>
本件発明1では、「前記立体駐車装置内の少なくとも一部についての無人確認済入力操作が行われる、入力を促す表示が可能な表示部を備える複数の入力操作部」を備え、「前記複数の入力操作部の各々は、前記システム制御部の制御により前記表示部が表示状態にされ、前記無人確認済入力操作が行われると前記表示部が非表示状態になる」ものであるとともに、該「入力操作部」が、「前記少なくとも1つの開閉ゲートの開閉動作に関して、各入力操作部と前記少なくとも1つの開閉ゲートとの設置位置の関係に基づいた第1の紐付け動作が設定され、前記複数のセンサの検知動作に関して、各入力操作部と前記複数のセンサとの設置位置の関係に基づいた第2の紐付け動作が設定され」たうえで、「システム制御部」により、「前記開閉ゲートが開いた後に、該開状態の開閉ゲートに対して前記第1の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部と、物体を検知したセンサに対して前記第2の紐付け動作に基づいて関連付けられている入力操作部との表示部を表示状態にさせ」る処理が行われるのに対し、
甲4発明では、「無人確認済入力操作」を行う「複数の入力操作部」が存在せず、「物体を検知したセンサ」に対して「関連付けられている入力操作部」の「表示部を表示状態」とする処理を含め、「入力操作部」に関する制御及び処理が行われない点。

<相違点4>
本件発明1におけるシステムは、上記相違点3に係る「複数の入力操作部」を備えたうえで、「システム制御部」が「該表示状態にさせた入力操作部の表示部の全てが非表示状態になるまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止する」という、「無人確認を行うための無人確認システム」であるのに対し、
甲4発明では、「各グループの制御盤34」が、「障害物センサ48の検知信号」を受けると、「全基の入出庫動作を停止」して「全基」を「直ちに停止する」ことで、装置の安全性を確実なものとするものである点。

(イ)判断
上記相違点3について判断する。
上記第4の2(5)イに認定した甲5発明は、駐車装置において、操作盤を乗降室内の状況、並びに人および自動車の出入りの状況が目視によって確認できる位置に設けたうえで、「部分的に目視できない領域については、無人確認入力機、センサー等の安全装置を補助的に設け目視確認の補助を行う」構成を有しており、当該構成が有する「無人確認入力機」は、「無人」である「確認」を「入力」するものであるから、相違点3に係る本件発明1の構成のうち、「無人確認済入力操作」を行う「入力操作部」に相当すると解される。
しかしながら、甲5発明の上記構成は、「目視確認」の「補助」として「無人確認入力機」や「センサー等」の使用を示すに止まり、「無人確認入力機」に「表示部」を設ける構成、「センサー」の検出結果に応じて「無人確認入力機」及びその「表示部」を制御する構成、あるいは「センサー」の検出結果に応じて「無人確認入力器」及びその「表示部」を制御するために「センサー」と「無人確認入力機」との間に紐付け動作を設定する構成は有していない。
そして、甲4発明はセンサとして「障害物センサ48」を有するものの、当該「障害物センサ48」は「パレット32」の「全基」を「直ちに停止」するためのものであるから、当該甲4発明において、甲5発明が有する「無人確認入力機」を追加して採用するとともに「無人確認入力機」に「表示部」を設け、かつ甲4発明が有する「障害物センサ48」と連動させて、上記相違点3に係る本件発明1の処理のうち、「複数のセンサ」と「複数の入力操作部」とによる連携処理を行わせることは、甲第4号証及び甲第5号証に記載も示唆もされていないとともに、そのような改変を行う動機付けがあるということはできない。さらに、甲4発明に甲5発明の「無人確認入力機」を追加したうえで「無人確認入力機」に「表示部」を設け、当該「無人確認入力機」に対して「障害物センサ48」との紐付け動作設定、及び「前面ゲート」との紐付け動作設定という、2種類の紐付け動作設定を行い、かつ「無人確認入力機」の「表示部」を該2種類の紐付け動作設定の両方に基づいて制御する、という複数の改変を重ねることは、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、たとえ当業者であっても容易に想到できたということができない。
また、本件発明1は、上記相違点3に係る構成を有することで、先願1発明に対する相違点2に係る構成について上記ア(イ)の判断で言及したと同様の効果を、無人確認システムとして奏すると理解できるから、上記相違点3に係る本件発明1の構成が有する、2種類の紐付け動作の設定及び当該紐付け動作設定に基づいた処理を、単なる設計事項ということはできない。
したがって、甲4発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成に至ることは、甲5発明に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。
なお、甲第2号証及び甲第3号証には、それぞれ上記第4の2(3)及び(4)に摘記した事項が記載されており、駐車場のパレットの周囲に光電検知装置を設けることが示されているが、駐車場のパレットの周囲に光電検知装置を設ける公知技術が複数存在することは、上記相違点3に係る本件発明1の構成が想到容易でないとの判断を、変更すべき事情とはならない。

よって、本件発明1は、上記相違点4について検討するまでもなく、甲4発明及び甲5発明に基いて、本願出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は申立書において、甲第5号証における「無人確認入力機」及び「モニター」から、甲第5号証には上記相違点3に係る本件発明1の構成のうち「入力を促す表示が可能な表示部を備える複数の入力操作部」に相当する構成が記載されており、「入力操作部」の「表示部」の設定及び制御は全て設計事項であるから、本件発明1と甲4発明との相違点は全て甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書第23頁第11行-第26頁第7行)。
しかしながら、甲第5号証に記載される「モニター」は、上記第4の2(5)ア(イ)の摘記に示されるように、「反射鏡」のように目視しづらい領域の目視を補助するものであるか、あるいは上記第4の2(5)ア(ウ)の摘記に示されるように、操作盤に設けることが必須の「安全確認ボタン」への入力を促すものであるから、補助的に設けられる「無人確認入力機」に備えられるものではない。また、甲第4号証及び甲第5号証のいずれの記載を考慮しても、上記相違点3に係る本件発明1の構成が記載も示唆もされていないこと、及び、上記相違点3に係る本件発明1の構成が有する2種類の紐付け動作設定及びこれに基づいた処理を、単なる設計事項ということはできないことは、上記(イ)に示したとおりである。
したがって、これに反する申立人の主張は採用することができず、当該申立人の主張を検討しても、上記(イ)と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。

2 本件発明2ないし4について
ア 拡大先願
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を追加したものであるところ、上記1アに示したとおり、本件発明1は先願1発明と同一ではないから、本件発明2ないし4も、先願1発明と同一ということができない。

進歩性
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を追加したものであるところ、上記1イに示したとおり、本件発明1は甲4発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2ないし4も、甲4発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明5について
ア 拡大先願
本件発明5は、本件発明1の「無人確認システム」が実施する処理を「無人確認方法」の発明としたものであり、対象とする「立体駐車装置」、該「立体駐車装置」が有する「可動式パレット」及び「開閉ゲート」、並びに無人確認のために使用される「複数のセンサ」、「複数の入力操作部」及び「システム制御部」といった各部材の存在、及び各部材相互の関係を含めて、本件発明1と同様の特定がなされたものである。
そのため、先願1発明の「機械式駐車装置」において実施される処理に着目して、本件発明5と先願1発明とを対比しても、上記1ア(ア)に対比した本件発明1と先願1発明との間の相違点1及び2と、同様の相違点が残る。
そして、上記1ア(イ)に判断したとおり、本件発明1と先願1発明との間の相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明5と先願1発明との間にも、実質的な相違点があり、本件発明5は先願1発明と同一ということができない。
したがって、本件発明5は、先願1発明と同一ではない。

進歩性
本件発明5は、本件発明1の「無人確認システム」が実施する処理を「無人確認方法」の発明としたものであり、対象とする「立体駐車装置」、該「立体駐車装置」が有する「可動式パレット」及び「開閉ゲート」、並びに無人確認のために使用される「複数のセンサ」、「複数の入力操作部」及び「システム制御部」といった各部材の存在、及び各部材相互の関係を含めて、本件発明1と同様の特定がなされたものである。
そのため、甲4発明の「昇降式立体駐車装置38」において実施される処理に着目して、本件発明5と甲4発明とを対比しても、上記1イ(ア)に対比した本件発明1と甲4発明との間の相違点3及び4と、同様の相違点が残る。
そして、上記1イ(イ)に判断したとおり、本件発明1と甲4発明との間の相違点3は、たとえ当業者であっても、甲5発明に基いて容易に想到できたものではないから、当該相違点3と同様の相違点を有する本件発明5は、甲4発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明5は、甲4発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明6ないし7について
ア 拡大先願
本件発明6ないし7は、本件発明5の構成を全て含み、さらに限定を追加したものであるところ、上記3アに示したとおり、本件発明5は先願1発明と同一ではないから、本件発明6ないし7も、先願1発明と同一ということができない。

進歩性
本件発明6ないし7は、本件発明5の構成を全て含み、さらに限定を追加したものであるところ、上記3イに示したとおり、本件発明5は甲4発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明6ないし7も、甲4発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。



 
異議決定日 2019-12-25 
出願番号 特願2014-241475(P2014-241475)
審決分類 P 1 651・ 161- Y (E04H)
P 1 651・ 121- Y (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 美紗子  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 小林 俊久
有家 秀郎
登録日 2019-04-05 
登録番号 特許第6505425号(P6505425)
権利者 新明和パークテック株式会社
発明の名称 立体駐車装置の無人確認システムとこれを備える立体駐車装置、及び立体駐車装置の無人確認方法  

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