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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1358661
異議申立番号 異議2019-700687  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-02 
確定日 2020-01-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6476511号発明「包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6476511号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6476511号の請求項1に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年3月28日に特許出願され、平成31年2月15日にその特許権の設定登録がされた(平成31年3月6日に特許掲載公報の発行)。
その後、令和1年9月2日に、請求項1に係る特許について、特許異議申立人木村紀穂(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
特許第6476511号の請求項1の特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
基材とシーラント材が積層された積層フィルムが、前記シーラント材同士が対向するように重ねられ、それらシーラント材同士が融着されて製袋され、前記基材が最外層であり、前記シーラント材が最内層である包装袋であって、
背面側に背張り部を有する、一方を長手とする平面視長方形状であり、
前記シーラント材の抗張力が8?20N/15mmであり、
前記基材の引張弾性率が550MPa以上であり、
前記背張り部と反対側の正面側の前記積層フィルムのみに、前記基材の外表面から内側に向かう、前記シーラント材を貫通しない複数のハ字状の切込が並んで形成された長手方向に伸びる易開封部が設けられ、
前記易開封部は、正面側における、幅方向の中央部と、幅方向の両方の側端寄りとにそれぞれ形成されている、包装袋。

3.申立理由の概要
申立人は、以下の理由により、本件発明に係る特許を取り消すべきである旨を主張している。
(1)理由1(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)
本件発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法113条第2号に該当し、取り消すべきである。


《引用例一覧》
甲1.特開2012-240734号公報
甲2.特開2005-104152号公報
甲3.特開2003-96278号公報
甲4.特開2002-104437号公報
甲5.特開2011-31439号公報
甲6.特開2006-160295号公報
甲7.特開2011-25962号公報

ここで、甲1?7は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証?甲第7号証である。

(2)理由2(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号)
ア.接着層の接着成分について
本件特許明細書の実施例には、どのような接着剤成分を使用したかについて何ら記載がなく、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
イ.シーラント材の材質について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、シーラント材に、甲第8号証(”低密度ポリエチレン”,椙山女学園大学管理栄養学科食品安全学研究室,食品用器具・容器包装に関するわかりやすい講座、プラスチック製品、ポリエチレン,2頁,http://www.food.sugiyama-u.ac.jp/lab/shokuan/youki/p02.htm、以下「甲8」という。)に「耐熱温度は80?90℃で高温の使用に適さない」と記載されている、LDPEを使用することについて、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

(3)理由3(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号)
ア.シーラント材の材質について
本件発明は、シーラント材の材質を発明特定事項としていないところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、LDPEをシーラント材としたものしか記載されていないから、本件発明は、シーラント材にLDPE以外のものを用いた場合まで一般化することができない。
イ.抗張力の範囲について
本件発明の「シーラント材の抗張力が8?20N/15mm」という範囲は、本件特許明細書の発明の詳細な説明にはサポートされていない不当に広い範囲である。
ウ.切込の形状について
切込の形状について、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には、切込が直線状に3列平行して形成した例しか示されていないから、切込が直線状に3列平行して形成した態様以外の態様をも含む本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えるものである。
エ.シーラント材の厚みについて
本件特許明細書の段落【0020】や実施例の記載からみて、「密封性に優れ、予め開封しなくても電子レンジによる加熱時に充分に蒸気が抜け、かつ加熱後の開封が容易である包装袋を提供する」という課題を解決するためには、シーラント材の厚みを規定する必要があるところ、シーラント材の厚みを発明特定事項とはしていない本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えるものである。

(4)理由4(特許法第36条第6項第2号、同法第113条第4号)
引張弾性率の上限値を発明特定事項とはしていない本件発明は、発明の範囲が明確ではない。

4.甲1?7の記載
甲1?7の各々に記載された事項を甲1記載事項?甲7記載事項という。
(1)甲1記載事項
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の樹脂シートの片面の互いに平行な一対の端縁同士が熱融着されて形成された背シール部と、該背シール部に直交するように樹脂シートの端縁が熱融着されて形成された端縁シール部とを有し、食品が密封包装された電子レンジ調理用包装袋であって、
前記樹脂シートは、基材と、該基材の内側に設けられた熱融着層とを備え、
背シール部の先端には、開封開始部が設けられ、
背シール部が形成されている面側の樹脂シートには、前記基材が線状に切断されて形成された開封補助部が、背シール部の両側の各々に少なくとも1本設けられており、前記開封補助部は、開封開始部から開封した際の切り裂き進行方向の先に配置されていることを特徴とする電子レンジ調理用包装袋。」
イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、包装した食品を電子レンジによって蒸し調理するのに適した包装袋に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、包装袋に収容したまま電子レンジ加熱して調理する食品の中には、加熱の際に食品から生じる水蒸気によって蒸し調理されるもの(例えばシュウマイや中華まんじゅう等)がある。
しかし、特許文献1に記載の包装袋は、単に加熱によって生じた水蒸気を放出しやすくするものであって、特に調理後の包装袋の開封について配慮されたものではなく、加熱された食品の取り出し性が充分であるとは言い難かった。
本発明は、包装した食品から発生する水蒸気を充分に保持して食品を充分に蒸すことができ、しかも食品を容易に取り出すことができる電子レンジ調理用包装袋を提供することを目的とする。」
ウ.「【発明の効果】
【0006】
本発明の電子レンジ調理用包装袋は、包装した食品から発生する水蒸気を充分に保持して食品を充分に蒸すことができ、しかも食品を容易に取り出すことができる。」
エ.「【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の電子レンジ調理用包装袋(以下、「包装袋」と略す。)の一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の包装袋の平面図を示す。本実施形態の包装袋1は、樹脂シート10から構成されており、背シール部20と端縁シール部(第1端縁シール部30a、第2端縁シール部30b)とを有して、その内部に食品が密封包装された合掌平袋である。
【0009】
(樹脂シート)
包装袋1を構成する樹脂シート10は、矩形状であり、図2に示すように、基材11と、基材11の内側に設けられた熱融着層12と、基材11に熱融着層12を接着するための接着層13とを備える積層フィルムである。
【0010】
[基材]
基材11は、樹脂フィルムから構成されている。
基材11の中でも、電子レンジにより加熱しても伸びにくい耐熱性を有するものが好ましい。具体的には、基材11としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネートおよびポリアセタール等で構成された樹脂フィルムが挙げられる。また、これらを多層共押出して得た積層フィルムであってもよい。また、樹脂フィルムは、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよいが、加熱時の伸びにくさの点から、延伸フィルムが好ましい。
・・・
【0011】
[熱融着層]
熱融着層12は、対向する熱融着層12と熱融着可能な層である。
熱融着層12を構成する樹脂としては、100℃以上の耐熱性を有するものが好ましく、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。
・・・」
オ.「【0014】
(背シール部)
背シール部20は、樹脂シート10の熱融着層12側の面の、互いに平行な一対の端縁同士が熱融着されて形成された部分である。本実施形態では、樹脂シート10の長手方向の端縁にて、熱融着層12,12同士が熱融着されて背シール部20が形成されている。
背シール部20のシール幅(すなわち、背シール部20の短手方向の長さ)は10?30mmであることが好ましい。背シール部20のシール幅が前記下限値以上であれば、電子レンジ調理によって包装袋1が加熱されていたとしても背シール部20を容易に摘んで開封することができる。一方、背シール部20のシール幅が前記上限値を超えると、開封性が向上する反面、電子レンジ調理による包装袋1の膨張を妨げることとなり蒸気抜け性能が損なわれるだけでなく、樹脂シート10を多く使用する分だけコストアップにつながることとなる。
【0015】
背シール部20には、開封開始部21が設けられている。ここで、開封開始部21は、包装袋1を開封しやすくするために、背シール部20を容易に引き裂けるようにした部分である。本実施形態における開封開始部21は、背シール部20の短手方向に形成された直線状の切り込みであるIノッチである。Iノッチは開封性の面で、開封開始部21として好適である。
開封開始部21の近傍には、開封開始部21による開封位置、開封方向を示した表示を印刷してもよい。」
カ.「【0017】
(開封補助部)
背シール部20が形成されている側の面の樹脂シート10には、基材11が線状に切断され、熱融着層12は切断されずに形成された開封補助部40が設けられている。この開封補助部40は、開封開始部21の先端の前方、すなわち、開封開始部21から開封した際の切り裂き方向(図1のA方向)の前方に配置されている。開封開始部21は基材11が切断されているから、基材11が切断されていない部分よりも引き裂き強度が弱くなっている。
本実施形態における開封補助部40は、直線状であり、背シール部20の両側に、背シール部20と平行に1本ずつ設けられ、その長さは背シール部20の長手方向の長さと同一である。また、各開封補助部40は、背シール部20からの距離が同一にされている。
開封補助部40は連続的な線であってもよいし、断続的な線であってもよい。
【0018】
各開封補助部40と背シール部20の基部(付け根)との距離は、開封した際に食品を容易に取り出すことが可能な距離にされることが好ましい。
具体的には、開封補助部40と背シール部20との距離をX、包装袋1の側縁1aと背シール部20との距離をYとした際に、X/Yが0.15?0.65であることが好ましく、0.20?0.40であることがより好ましい。X/Yが前記下限値以上であれば、開封した際に包装袋1が充分な大きさで開口するため、より容易に食品を取り出すことができ、前記上限値以下であれば、電子レンジによる加熱中に包装袋が膨張しやすくなり、充分に蒸し調理できる。」
キ.「【0021】
(作用効果)
上記包装袋1に収容された食品を調理する際には、食品を包装したまま電子レンジの内部の所定の位置に載置し、適宜設定した時間、加熱する。その加熱の際には、食品の内部から水蒸気が発生するため、包装袋1の内部の圧力が上昇し、膨張し、圧力に耐えられなくなった時点で包装袋1の開封補助部40の熱融着層12に針穴程度の蒸気抜けの開通口が形成されて内部の水蒸気を放出する。上記包装袋1は、加熱開始から短時間で瞬間的に開通口が形成されず、徐々にまた最小限の大きさで開通口が広がるため、食品から発生する水蒸気の放出を最小限に留めつつ、水蒸気を包装袋1の内部に充分な時間保持することができる。そのため、包装した食品を充分に蒸すことが可能となる。
また、加熱調理後、開封開始部21から包装袋1を開封した際には、背シール20、背シール部20近傍の樹脂シートの順に包装袋1は引き裂かれ、図3に示すように、引き裂き先端Pは開封補助部40に向かって進行する。引き裂き先端が開封補助部40に到達した後、引き裂き強度が弱められている開封補助部40に沿って引き裂かれる。これによって、包装袋1は大きく開かれるため、加熱調理後の内容物を開口部に引っ掛けて表皮に傷をつけたり、型崩れの不具合を起こすことなく、内容物を容易に取出すことができる。しかも、背シール部20から開封することで、調理後に最も熱くなっている食品に手が触れにくくなっており、熱さを軽減できる。
さらに、上記包装袋1では、蒸気抜けにより形成された開通口が小さいことから、開通の際に生じる音が小さく、調理者が驚くあるいは恐怖感を抱くような破裂音に相当する大きい音は生じにくい。」
ク.「【図1】


ケ.「【図2】


コ.「【図3】



(2)甲2記載事項
ア.「【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の包装用フィルムは、結晶性ポリプロピレン系樹脂からなる基材層、中間層及び融点が150℃以下の熱融着層を有する3層以上の積層体からなる延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであって、フィルムの直交する両方向の引張弾性率がそれぞれ1.45GPa以上、ヒートシール強度が10N/15mm以上であって、熱融着層表面の濡れ張力が31mN/m以上であることを特徴とする。」
イ.「【0026】
本発明におけるフィルムのヒートシール強度は、10N/15mm以上、好ましくは11N/mm以上、さらに好ましくは12N/mm以上である。ヒートシール強度を一定以上として、水物などの重量物も包装できるようにするためである。前記ヒートシール強度の上限は、特に限定されないが、35N/15mmであることが好ましく、より好ましくは33N/mm、更に好ましくは30N/mmである。ヒートシール強度が35N/mmを超えると、袋を開封する際にヒートシール強度が強すぎるため、開封が困難となるからである。」

(3)甲3記載事項
ア.「【0078】
【表3】

・・・」
イ.「【0085】
【表4】

・・・」
ウ.「【0093】本発明で得られるフィルムは、柔軟性、易成型性を必要とする工業材料、包装材料などの用途に好ましく用いることができる。」

(4)甲4記載事項
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品、化粧品あるいはトイレタリー品等の液体や粉体を収納し、引裂きにより開口する易開封性包装袋に関するものであり、特に引裂きのためのノッチ(切欠き)やハーフカット溝(半切りの溝)を上部に設けた易開封性包装袋に関する。」
イ.「【0018】また、本発明では、図2に示すように、例えば切り裂き予定線に相当する上下2本のハーフカット溝(15a、15b)やI型ノッチ(18)の先端(18a)の3本のハーフカット溝(16)の刻設は、レーザーによってなされたもので、その深さは図3に示すように、複合フィルム(30)の最内層であるシーラントフィルム(32)を貫通しない程度とするものであり、例えば基材フィルム(34)とバリアフィルムなどの保護層(36)を貫通するように刻設して上下ハーフカット溝(15a、15b)とすると、切り裂きが容易でその切り口が直線性に優れ、内容物の漏れなどのない易開封性包装袋とすることができる。」
ウ.「【図3】



(5)甲5記載事項
ア.「【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する多層構造の包装フィルムに関し、特に開封用のミシン目を有するミシン目付包装用2層フィルム及びそれを利用した包装袋に関するものである。」
イ.「【0029】
(ミシン目6)
上記ミシン目(開封用切れ目)6は上記基材合成樹脂フィルム層1に貫通形成される。ミシン目6の形状としては、色々なものが考えられるが、例えば図2に示すように「ハ」の字として、上記基材合成樹脂フィルム層1の長手方向に直交する方向に、一定間隔毎に予め形成される。」
ウ.「【図2】


エ.「【図3】



(6)甲6記載事項
ア.「【0057】
図1に示すように、この包装体100は、軟包装材料からなるフィルム110で構成されたピロー包装体である。包装体100を水平に置いた状態において、フィルム110の上面側には蓋材200が粘着されている。包装体100の他端部131、一端部132は、それぞれ上下の横シール部であり、背面側の中央部には図示しない背張り部がある。」
イ.「【0070】
<引き裂き誘導手段>
この実施形態においては、引き裂き誘導手段160は仮想線として記載されており、実際には、フィルム110を構成する延伸フィルムの延伸方向が、仮想線の方向に一致しており、この延伸フィルムの配向が引き裂き誘導手段160となっている。具体的には、例えば、フィルム110の基材層を延伸フィルムとすればよく、好ましくは配向性の高い一軸又は二軸延伸フィルムが好ましく、なかでも、いわゆる易引き裂き性(直線カット性)の一軸延伸フィルムがより好ましい。これらの延伸フィルムは従来公知の市販品を使用できる。
【0071】
引き裂き誘導手段160は、上記の延伸配向に限定されず、例えば切れ目線をフィルム110上に形成してもよい。この場合、切れ目線はフィルム110を貫通するように形成されていてもよく、いわゆるハーフカットの状態であってもよいが、包装体全体の密封性を維持するためには、ハーフカットの状態であることが好ましい。なお、ハーフカットは、例えばレーザー光の照射や、機械的な抜き刃加工などの公知の方法によって、例えば基材層のみに形成することができる。」
ウ.「【図1】



(7)甲7記載事項
ア.「【0022】
延出部13側の端縁シール部9は、周縁シール部11,12の他の領域及び裂け止めシール部19,20に比して耐剥離力が小さい易剥離性の弱シール部となっている。この弱シール部は、手で引き剥がせる程度の耐剥離力のシール部で、例えば端縁シール部9の形成に際し、他のシール部の形成時に比して、シールバーの押し当て時間を短くする、シールバーの温度を低くする、シールバーの押し付け圧力を低くするなどのシール条件の調整で得ることができる。また、端縁シール部9に対応する位置の表面シート1と背面シート2間に易剥離性テープを間に挟み込ませて端縁シール部9を形成することによっても得ることができる。
・・・
【0024】
延出部13を引き上げるようにすると、ノッチ15,16から表面シート1が裂け、弱シール部となっている端縁シール部9が剥離されると共に、裂け目が表面シート1の一軸延伸フィルム層の延伸方向に伝播し、表面シート1がノッチ15,16の間隔で捲り上げられる。裂け目が裂け止めシール部19,20に達すると、そこで裂け目の伝播が停止され、表面シート1が全開される前に開封が止められる。例えば図5に示される状態から、捲り上げた表面シート1を元の位置に戻せば、これを蓋代わりにして開口部を覆うことができる。」
イ.「【図5】



5.当審の判断
(1)理由1(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)について
ア.甲1発明
甲1記載事項(上記4.(1)ア.?コ.を参照)からみて、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
《甲1発明》
矩形状の樹脂シートの片面の互いに平行な一対の端縁同士が熱融着されて形成された背シール部と、該背シール部に直交するように樹脂シートの端縁が熱融着されて形成された端縁シール部とを有し、食品が密封包装された電子レンジ調理用包装袋であって、
前記樹脂シートは、基材と、該基材の内側に設けられた熱融着層とを備え、
背シール部の先端には、開封開始部が設けられ、
背シール部が形成されている面側の樹脂シートには、前記基材が線状に切断され、前記熱融着層は切断されずに形成された開封補助部が、背シール部の両側の各々に1本設けられており、前記開封補助部は、開封開始部から開封した際の切り裂き進行方向の先に配置されている、
電子レンジ調理用包装袋。

イ.甲1発明との対比、一致点、相違点
甲1発明の「基材」、「熱融着層」、「背シール部」は、本件発明の「基材」、「シーラント材」、「背張り部」に相当する。
甲1発明の「樹脂シート」は、「基材と、該基材の内側に設けられた熱融着層とを備え」るものであり、前記「基材」と前記「熱融着層」とが積層されたものといえるから、本件発明の「積層フィルム」に相当する。
甲1発明の「電子レンジ調理用包装袋」は、「矩形状の樹脂シートの片面の互いに平行な一対の端縁同士が熱融着されて形成された背シール部と、該背シール部に直交するように樹脂シートの端縁が熱融着されて形成された端縁シール部とを有」するものであるところ、前記「電子レンジ調理用包装袋」は、前記「背シール部」と「端縁シール部」となる部分において、前記「樹脂シート」が備える「熱融着層」が、対向するように重ねられ、その重ねられた部分が融着されて製袋されたものであって、前記「樹脂シート」の「基材」が最外層となり、「熱融着層」が最内層となり、「一方を長手とする平面視長方形状」となることが明らかであるから、本件発明の「包装袋」に相当する。
そして、甲1発明の「「前記基材が線状に切断され、前記熱融着層は切断されずに形成され」、「背シール部の両側の各々に1本設けられ」る「開封補助部」」と、本件発明の「「前記基材の外表面から内側に向かう、前記シーラント材を貫通しない複数のハ字状の切込が並んで形成された長手方向に伸びる」ものであって、「正面側における、幅方向の中央部と、幅方向の両方の側端寄りとにそれぞれ形成されている」「易開封部」」とは、「前記基材の外表面から内側に向かう、前記シーラント材を貫通しない、切込により形成された長手方向に伸びる易開封部」という限りにおいて一致する。
してみると、本件発明と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
基材とシーラント材が積層された積層フィルムが、前記シーラント材同士が対向するように重ねられ、それらシーラント材同士が融着されて製袋され、前記基材が最外層であり、前記シーラント材が最内層である包装袋であって、
背張り部を有する、一方を長手とする平面視長方形状であり、
前記基材の外表面から内側に向かう、前記シーラント材を貫通しない、切込により形成された長手方向に伸びる易開封部が設けられ、
ている、包装袋。
《相違点1》
易開封部について、本件発明の「易開封部」は、「前記背張り部と反対側の正面側の前記積層フィルムのみに」、「複数のハ字状の切込が並んで形成された」ものであって、「正面側における、幅方向の中央部と、幅方向の両方の側端寄りとにそれぞれ形成されている」ものであるのに対し、甲1発明の「開封補助部」は、「背シール部が形成されている面側の樹脂シートに」、「背シール部の両側の各々に1本設けられており」、「背シール部の先端に」、「設けられ」た「開封開始部から開封した際の切り裂き進行方向の先に配置されている」ものである点。

《相違点2》
本件発明は、「シーラント材の抗張力が8?20N/15mmであり」、「基材の引張弾性率が550MPa以上であ」るのに対し、甲1発明は、熱融着層の抗張力及び基材の引張弾性率についての規定がない点。

ウ.相違点の判断
まず、相違点1について検討する。
甲1発明の「開封補助部」は、「背シール部が形成されている面側の樹脂シートに」、「背シール部の両側の各々に1本設けられており」、「背シール部の先端に」、「設けられ」た「開封開始部から開封した際の切り裂き進行方向の先に配置されている」ことにより、上記4.(1)キ.に摘記した「加熱調理後、開封開始部21から包装袋1を開封した際には、背シール20、背シール部20近傍の樹脂シートの順に包装袋1は引き裂かれ、図3に示すように、引き裂き先端Pは開封補助部40に向かって進行する。引き裂き先端が開封補助部40に到達した後、引き裂き強度が弱められている開封補助部40に沿って引き裂かれる。これによって、包装袋1は大きく開かれるため、加熱調理後の内容物を開口部に引っ掛けて表皮に傷をつけたり、型崩れの不具合を起こすことなく、内容物を容易に取出すことができる。しかも、背シール部20から開封することで、調理後に最も熱くなっている食品に手が触れにくくなっており、熱さを軽減できる。」という作用効果が奏されるものである。つまり、甲1発明においては、「開封補助部」が、「背シール部が形成されている面側の樹脂シートに」形成されていることが、重要な要件となっていると解されるから、この「開封補助部」を「背シール部が形成されている面側」とは反対側の面側の樹脂シートに形成するように、その構成を変更することには、その動機付けがなく、むしろ、阻害要因があるというべきである。
したがって、たとえ、甲6には、軟包装材料からなるフィルム110で構成され、背面側の中央部に背張り部がある包装体100の上面側に、基材層のみに形成することができるハーフカットである切れ目線をフィルム110の上面側に設けること、すなわち、包装体における易開封部(切れ目線)を、背張り部と反対側の面側のフィルムに設けることが記載されているとしても、甲1発明における「開封補助部」を「背シール部が形成されている面側」とは反対側の面側の樹脂シートに形成するように、その構成を変更することは、当業者が容易になし得たことといえない。
また、甲1発明において、上記のように、その構成を変更することの動機付けとなる記載やこれを示唆する記載は、甲2?5及び7にもない。
したがって、本件発明は、上記相違点2について検討するまでもなく、甲1発明及び甲1?甲7記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ.小括
以上のとおり、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

(2)理由2(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号)について
ア.接着層の接着成分について
本件発明は、「基材」と「シーラント材」とが接着層を介して貼り合わされて形成されることを発明特定事項とはしていない。
そして、本件特許明細書の段落【0044】には「また、本発明の包装袋は、接着層を有さない積層フィルムを用いたものであってもよい。具体的には、例えば、基材とシーラント材を共押出しした後に、基材の表面から内側に向かう切込を形成して得た積層フィルムを用いた包装袋であってもよい。」と記載されていることからも明らかなように、本件発明の構成に接着層は、必要不可欠のものとはいえない。
したがって、本件特許明細書の実施例に、どのような接着剤成分を使用したかについて何ら記載がないことを理由として、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。

イ.シーラント材の材質について
本件発明は、「シーラント材」としてLDPEを使用することを発明特定事項とはしていない。
そして、本件特許明細書の段落【0021】には「シーラント材24の材質としては、ヒートシールが可能で、かつ人手で容易に剥離できる機能(イージーピール性)を有するものが使用できる。具体的には、例えば、ポリオレフィン(低密度ポリエチレン(LDPE)、線状LDPE(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、PP等)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、アイオノマー、及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。なかでも、抗張力およびヒートシール性の点から、LDPEが好ましい。」と記載されていることからも明らかなように、本件発明の構成に、「シーラント材」としてLDPEを使用することは、必要不可欠のものではない。
そして、当業者は、本件発明の実施にあたり、「LDPE」の他に、「線状LDPE(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、PP等)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、アイオノマー、及びこれらの2種以上の混合物等」から、適宜のものを、「シーラント材」として選択し得ると解するのが相当である。
したがって、たとえ、LDPEは、「耐熱温度は80?90℃で高温の使用に適さない」ものであるとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。

ウ.小括
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものではないから、本件特許は、同法第113条第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

(3)理由3(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号)について
ア.シーラント材の材質について
本件特許明細書の段落【0021】の上記記載からみて、本件発明は、「シーラント材」としてLDPEを使用しなければ、段落【0006】に記載された「密封性に優れ、予め開封しなくても電子レンジによる加熱時に充分に蒸気が抜け、かつ加熱後の開封が容易である包装袋を提供する」という課題を解決できないというものではないし、また、シーラント材の材質を規定しなければ、上記段落【0006】に記載された課題を解決できないことを推認させるようなことは、本件特許明細書及び甲1?甲8には記載されておらず、さらに、シーラント材の材質を規定しなければ、上記課題を解決できないという技術常識が存在するわけでもない。
したがって、たとえ、本件特許明細書には、シーラント材にLDPEを使用したものしか記載されていないとしても、このことを理由として、本件発明は、シーラント材にLDPE以外のものを用いた場合まで一般化することができないとはいえない。

イ.抗張力の範囲について
本件発明1における「シーラント材の抗張力が8?20N/15mmであ」ることに関し、本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0019】
シーラント材24の抗張力は、8N/15mm?20N/15mmであり、10N/15mm?18N/15mmが好ましく、12N/15mm?15N/15mmがより好ましい。シーラント材24の抗張力が前記下限値以上であれば、優れた密封性が得られる。シーラント材24の抗張力が前記上限値以下であれば、シーラント材24の凝集力が充分に小さいために、電子レンジでの加熱時に生じる蒸気による内圧によって易開封部おいて貫通口が形成され、蒸気抜きが可能となる。」
「【0042】
[作用効果]
・・・特に、本発明では、基材の剛性が高いために蒸気による内圧が易開封部に集中してかかりやすい。さらに、シーラント材24の抗張力が特定の範囲に制御されていることで、シーラント材24の凝集力が充分に小さいため、内圧によって易開封部おいてシーラント材24が基材22から剥離しやすい。これらのことから、加熱時に易開封部に貫通口が形成されやすく、蒸気抜きが良好に行える。そのため、本発明の包装袋では、電子レンジでの加熱時に袋が破裂して中身が飛び散る等の不具合を抑制できる。
また、本発明では、基材の剛性が高いことで、加熱後においても基材の剛性が充分に高く保たれる。その結果、加熱後の開封時に力が分散しにくくなることで、易開封部を利用して包装袋を容易に開封することができる。
また、本発明の包装袋においては、易開封部を形成する各々の切込がシーラント材を貫通しないように形成され、さらにシーラント材24の抗張力が特定の範囲に制御されているため、優れた密封性も確保される。
以上のように、本発明の包装袋では、優れた密封性を確保しつつ、開封せずに電子レンジでの加熱を可能とし、さらに優れた易開封性を得るという相反する要求、所謂二律背反的特性を両立することができる。・・・」
「【表1】


「【表2】


「【0056】
表1及び表2に示すように、引張弾性率が550MPa以上の基材と抗張力が8?20N/15mmのシーラント材を積層した積層フィルムを用い、基材の外表面から内側に向かう、シーラント材を貫通しない複数の切込からなる易開封部を形成した実施例1?16では、密封性に優れ、また電子レンジでの加熱時の蒸気抜けが良く、加熱後の易開封性にも優れていた。
一方、引張弾性率が550MPa未満の基材を用いた比較例1、及び抗張力が20N/15mm超のシーラント材を用いた比較例2では、密封性は優れていたもの、電子レンジでの加熱時に充分に蒸気が抜けず、加熱後の易開封性も劣っていた。
また、抗張力が8N/15mm未満のシーラント材を用いた比較例3では、電子レンジでの加熱時の蒸気抜けが良く、加熱後の易開封性にも優れていたものの、充分な密封性が得られなかった。」
上記段落【0019】及び【0042】の記載から、本件発明の「シーラント材の抗張力が8?20N/15mm」という範囲は、包装袋の密封性と加熱時における易開封部の貫通口の形成されやすさの両立を図った範囲を示すものであるという技術的な意味を持つことが、理解できる。
そして、上記【表1】、【表2】及び段落【0056】の記載から、シーラント材の抗張力が8?20N/15mmという範囲にある、実施例1?16では、蒸気抜け、密封性、易開封性の両立ができるていることが確認でき、上記範囲内にない比較例2及び3では前記両立ができなかったことが確認できる。
一方、上記【表1】、【表2】には、シーラント材の高張力が8N/15mm以上で12N/15mm未満の例及び15N/15mm超えで20N/15mm以下の例(以下、「特定例」という。)の結果が示されていないが、前記特定例では、蒸気抜け、密封性、易開封性の両立ができないことを推認させるような事実は、本件特許明細書及び甲1?甲8には記載されておらず、また、前記特定例では、蒸気抜け、密封性、易開封性の両立ができないという技術常識が存在するわけでもない。
したがって、本件発明の「シーラント材の抗張力が8?20N/15mm」という範囲は、本件特許明細書の発明の詳細な説明にはサポートされていない不当に広い範囲であるとまではいえない。

ウ.切込の形状について
本件発明における「複数のハ字状の切込が並んで形成された長手方向に伸びる易開封部」に関し、本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0024】
[易開封部]
第1易開封部28、第2易開封部30及び第3易開封部32は、電子レンジによる加熱時に生じる蒸気によって発生する内圧によって、積層フィルム10に蒸気が抜ける貫通口が形成されるきっかけとなる。また、電子レンジで加熱後の包装袋1の開封時に、積層フィルム10の開裂を誘導する役割を果たす。
本発明では、この例の包装袋1のように、易開封部が包装袋の長手方向に伸びるように形成されていることが好ましい。これにより、電子レンジによる加熱時に蒸気によって易開封部に貫通口がより形成されやすくなり、蒸気抜けがより容易になる。
【0025】
第1易開封部28は、図1?3に示すように、包装袋1の正面1aの積層フィルム10において、基材22の外表面から内側に向かう、シーラント材24を貫通しない複数の切込34が、包装袋1の上端から下端まで長手方向に直線状に並ぶことで形成されている。各々の切込34がシーラント材24を貫通しないように形成されていることにより、充分な密封性が得られる。
【0026】
第1易開封部28では、平面視ハ字状の複数の切込34が直線状に3列並行して形成されている。同様に、第2易開封部30及び第3易開封部32においても、平面視ハ字状の複数の切込34が直線状に3列並行して形成されている。第1易開封部28においては、複数の切込34が線状に1列又は2列形成された態様であってもよく、複数の切込34が線状に4列以上形成された態様であってもよい。また、第1易開封部28は、直線状に伸びる態様には限定されず、例えば、波線状に伸びる態様であってもよい。
第2易開封部30及び第3易開封部32についても同様である」
「【0042】
[作用効果]
以上説明した本発明の包装袋においては、基材の外表面から内側に向かう切込が任意の方向に並んで形成された易開封部が設けられていることで、電子レンジでの加熱時に生じる蒸気によって発生する内圧により、易開封部が部分的に開裂して貫通口が形成され、該貫通口を通じて蒸気が抜ける。・・・」
「【0050】
[実施例1]
・・・基材には、積層フィルムとする前に、外周面に針状突起が多数形成されたロールを用いて、平面視ハ字状の複数の切込が直線状に3列並行してなる第1易開封部、第2易開封部及び第3易開封部をそれぞれ基材のMD方向(包装袋1の縦方向)に形成した。また、基材のMD方向(積層フィルムのMD方向)が包装袋1の縦方向となるようにした。・・・
【0051】
[実施例2?16]
積層フィルムの構成、易開封部の条件を表1及び表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして包装袋を作製した。
【0052】
[比較例1?3]
積層フィルムの構成、易開封部の条件を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして包装袋を作製した。」
上記段落【0024】?【0026】及び【0042】の記載から、本件発明の「複数のハ字状の切込が並んで形成された長手方向に伸びる易開封部」は、蒸気が抜ける貫通口が形成されるきっかけとなるものであり、また、電子レンジで加熱後の包装袋1の開封時に、積層フィルム10の開裂を誘導する役割を果たすものであって、包装袋の長手方向に伸びるように形成されていることで、電子レンジによる加熱時に蒸気によって易開封部に貫通口がより形成されやすくなり、蒸気抜けがより容易になるという機能を持つものであって、複数の切込は、線状に1列又は2列、あるいは、4列以上形成された態様であってもよく、また、直線状に伸びる態様には限定されず、例えば、波線状に伸びる態様であってもよいものであることが、理解できる。
そして、上記段落【0050】?【0052】及び上記【表1】、【表2】には、平面視ハ字状の複数の切込が直線状に3列並行してなるものである、実施例1?16及び比較例1?3が記載されているところ、複数の切込が、1列又は2列、あるいは、4列以上形成されたものや、波線状に伸びるものでは、上記段落【0006】に記載された「密封性に優れ、予め開封しなくても電子レンジによる加熱時に充分に蒸気が抜け、かつ加熱後の開封が容易である包装袋を提供する」という課題を解決できないことを推認させるような事実は、本件特許明細書及び甲1?甲8には記載されておらず、また、このようなものでは、上記課題を解決できないという技術常識が存在するわけでもない。
したがって、切込の形状について、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には、切込が直線状に3列平行して形成した例しか示されていないことのみを理由として、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えるものであるとまではいえない。

エ.シーラント材の厚みについて
本件発明における「シーラント材」の厚みに関し、本件特許明細書の段落【0020】には、「シーラント材24の厚みは、10μm?30μmが好ましく、15μm?20μmがより好ましい。シーラント材24の厚みが前記下限値以上であれば、優れた密封性が得られやすい。シーラント材24の厚みが前記上限値以下であれば、電子レンジでの加熱時における蒸気抜きが容易となる。」との記載がある一方で、上記段落【0042】の本件発明が奏する作用効果の説明には、シーラント材の厚みを規定しなければ、上記段落【0006】に記載された課題を解決できない旨は記載されておらず、また、シーラント材の厚みを規定しなければ、上記課題を解決できないことを推認させるようなことは、本件特許明細書及び甲1?甲8には記載されておらず、さらに、シーラント材の材質を規定しなければ、上記課題を解決できないという技術常識が存在するわけでもない。
したがって、本件発明がシーラント材の厚みを発明特定事項としていないからといって、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えるものであるとはいえない。

オ.小括
以上のとおり、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではないから、本件特許は、同法第113条第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

(4)理由4について
本件発明では、「基材の引張弾性率」について、「550MPa以上」であると特定されており、その上限値については特定されていないことは、文言上明確である。
また、上記「基材の引張弾性率」について、以下に示す《本件特許明細書の段落【0015】及び【0016】の記載》からみて、本件発明は、上記段落【0006】に記載された課題を解決するために、「基材の引張弾性率が550MPa以上」であることを発明特定事項としていることが明らかである一方で、基材の引張弾性率の上限を設けることについては、「包装袋1の取り扱い時に屈曲ピンホールを引き起こしにくい」という、課題の解決とは別の作用効果を奏する上で意味があることが理解されるから、本件発明において、基材の引張弾性率の上限値が発明特定事項とされていないことは、本件発明の技術的な意味を不明確にするようなものではないといえる。
ゆえに、「引張弾性率は、引張比例限度内における引張応力と、これに対応するひずみとの比であって、その上限が存在することが明らか」であったとしても、本件発明は、発明の範囲が不明確になることはない。

以上のとおり、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではないから、本件特許は、同法第113条第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

《本件特許明細書の段落【0015】及び【0016】の記載》
「【0015】
基材22の引張弾性率は、550MPa以上である。基材22が引張弾性率550MPa以上という高い剛性を有することで、電子レンジでの加熱時に生じる蒸気による内圧が易開封部(この例では特に第2易開封部30)に集中してかかりやすくなる。これにより、該易開封部において内圧によって基材22及びシーラント材24が部分的に裂けて貫通口が形成され、該貫通口を通じて蒸気抜きが可能となる。また、基材22の引張弾性率が550MPa以上であることで、電子レンジで加熱された後においても積層フィルム10が充分な剛性を維持できる。その結果、加熱後に包装袋1を開封する際に力が分散しにくくなるため、易開封部を利用した包装袋1の開封が容易となる。
【0016】
基材22のMD方向の引張弾性率は、550MPa以上であり、550MPa?1,500MPaが好ましく、600MPa?1,000MPaがより好ましい。基材22のMD方向の引張弾性率が前記下限値以上であれば、包装袋1の開封が容易になる。基材22のMD方向の引張弾性率が前記上限値以下であれば、包装袋1の取り扱い時に屈曲ピンホールを引き起こしにくい。
基材22のTD方向の引張弾性率は、MD方向の引張弾性率と同様の理由から、550MPa以上であり、600MPa?2,500MPaが好ましく、750MPa?1,500MPaがより好ましい。
なお、基材22のMD方向の引張弾性率とは、包装袋1の製造時における基材22のMD方向(流れ方向)の引張弾性率を意味する。また、基材22のTD方向の引張弾性率とは、包装袋1の製造時における基材22のTD方向(流れ方向と垂直な方向)の引張弾性率を意味する。」(下線は当審にて付与。)

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-12-19 
出願番号 特願2014-68934(P2014-68934)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B65D)
P 1 651・ 536- Y (B65D)
P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新田 亮二  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 武内 大志
渡邊 豊英
登録日 2019-02-15 
登録番号 特許第6476511号(P6476511)
権利者 スタープラスチック工業株式会社
発明の名称 包装袋  
代理人 大浪 一徳  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 鈴木 三義  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
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