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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1358668
異議申立番号 異議2019-700764  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-26 
確定日 2020-01-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6490341号発明「酸性調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6490341号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6490341号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成26年3月11日に出願され、平成31年3月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日にその特許公報が発行され、その後令和1年9月26日に角田 朗(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6490341号の請求項1?2に係る発明(以下「本件発明1?2」、また、これらをあわせて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「 【請求項1】酸性を示す原材料として醸造酢とレモン果汁を含有する酸性調味料であって、該酸性調味料の水相部が、下記(a)?(d)の条件を満たすことを特徴とする酸性調味料(但し、ウスターソース類を除く)。(a)pHが3.5?4.5(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下(c)核酸含量が0.1質量%以上(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下
【請求項2】酸性を示す原材料として醸造酢とレモン果汁を含有する酸性調味料であって、該酸性調味料の水相部を、下記(a)?(d)の条件に調整することを特徴とする酸性調味料(但し、ウスターソース類を除く)の酸味抑制方法。(a)pHが3.5?4.5(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下(c)核酸含量が0.1質量%以上(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下」

第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が特許異議申立書において申し立てた取消理由の概要、証拠方法は、次のとおりである。

理由1:本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件発明1に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由2:本件発明1?2は、甲第1?5号証に記載された発明及び周知・慣用技術又は甲第6?14号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1?2に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由3:本件発明1?2に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する経済産業省令で定める要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により、取り消されるべきものである。

理由4:本件発明1?2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合せず、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により、取り消されるべきものである。

理由5:本件発明1?2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合せず、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により、取り消されるべきものである。

甲第1号証:「Amazon|味の素 ドレッシング サウザンドアイランド マイルド 1L|味の素|ドレッシング 通販」の頁(URL:https://www.amazon.co.jp/味の素-ドレッシング-サウザンドアイランド-マイルド-1L/dp/B004WHT35A)
甲第2号証:特開2011-152125号公報
甲第3号証:特開2007-14291号公報
甲第4号証:国際公開第2006/126472号
甲第5号証:特開2007-129961号公報
甲第6号証:日本食品微生物学会雑誌、(2009)、Vol.26、No.2、pp.81-85
甲第7号証:冷凍食品技術研究、No.58、2003年3月発行、pp.11-39
甲第8号証:日本食品工業学会誌、(1988)、Vol.35、No.2、pp.126-132
甲第9号証:「日本食品標準成分表2010」について第3章の17:文部科学省(URL:http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__
icsFiles/afieldfile/2013/12/19/1299012_17.pdf及びhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/attach/1299205.htm)
甲第10号証:宮崎県工業技術センター 宮崎県食品開発センター、平成26年度・第59号 研究報告、平成28年2月末日発行、pp.33?38
甲第11号証:特開昭60-47655号公報
甲第12号証:調理科学、(1968)、Vol.1、No.1、pp.12-19
甲第13号証;特開2002-142715号公報
甲第14号証:特開2011-193761号公報
甲第15号証:どんな食品にどんなアミノ酸が含まれている?アミノ酸の基礎知識|HelC+(ヘルシー)(URL:https://www.health.ne.jp/library/detail?slug=hcl_5000_w5000251&doorSlug=natsubate)

以下甲第1?15号証を「甲1」などということがある。

第4 当審の判断
当審は、上記特許異議申立理由はいずれも理由がないと判断する。
その理由は次のとおりである。

1 甲各号証の記載事項
(1)甲1
1a)「味の素ドレッシングサウザンドアイランドマイルド1L」(商品名)

1b)「・原材料:食用植物油脂、ぶどう糖果糖液糖、醸造酢、トマトケチャップ、トマトペースト、食塩、ピクルス、ドライオニオン、卵黄、香辛料、レモン果汁、しょうゆ、増粘剤(キサンタンガム)、調味料(核酸)、ウスターソース、香辛料抽出物、パプリカ色素、香料、(小麦、りんごを原材料の一部に含む)」(原材料の欄)

1c)「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2011/6/7」(商品の情報、登録情報の欄)

1d)「●具材の彩り豊かなやや甘口のドレッシングです。
●まろやかでコクのある味わいが特長です。」(商品の説明の欄)

(2)甲2
2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネギ属植物及びl-メントールを含有する液体調味料。」

2b)「【0007】
従って、本発明の課題は、ネギ属植物特有のフレッシュ感が増強され、且つそのフレッシュ感が長期保存後も保持されたネギ属植物を含有する液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ネギ属植物を含有する液体調味料におけるフレッシュ感の強化とその持続性について検討したところ、l-メントールを含有させることにより、製造後初期のネギ属植物特有のフレッシュ感が増強され、且つ長期間保存した後もこのフレッシュ感が保持されることを見出した。」

2c)「【0030】
また、本発明の液体調味料に用いることのできる水相は、水が主成分であり、その他の成分として、水溶性乳化剤、食塩、糖類、アミノ酸・核酸・有機酸等の旨み調味料、蛋白質、増粘多糖類、澱粉等を配合できる。・・・
【0032】
本発明の液体調味料においては、pH(液体調味料が油相と水相を含む場合には水相のpH、20℃)が1?6、更に2?6、特に3?5とするのが、保存性の点から好ましい。この範囲に水相のpHを調節するためにD,L-リンゴ酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、レモン果汁等の酸味料を使用できる。」

2d)「【実施例】
【0034】
実施例1?15及び比較例1?6
〔液体調味料の調製〕
表1記載の組成の分離液状タイプドレッシングを製造した。・・・
【0038】
〔酸度の測定〕
「食酢の日本農林規格(平成9年9月3日農林水産省告示第1381号)」に基づき酢酸相当酸度の質量%を導出した。
【0039】
〔pHの測定〕
pHは、試料の品温を20℃にした後、(株)堀場製作所製pHメーター(F-22)を使用し測定した。
【0040】
【表1】



(3)甲3
3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に対し蛋白質が0.5%以下、食用油脂が60%以上含有した酸性水中油型乳化食品の製造方法であって、卵黄及びオクテニルコハク酸化処理澱粉を含有した水相と食用油脂を含有した油相とを製品のpHより0.5以上高い状態で乳化処理を施して水中油型乳化物を製した後に、酸材を添加してpHを調整することを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法。」

3b)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、蛋白質の含有量が少なく食用油脂を高濃度含有した低蛋白、高カロリーの酸性水中油型乳化食品に拘らず、長期間保存しても乳化安定性に優れた酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく卵黄と併用する乳化材、並びに乳化処理工程について鋭意研究を重ねた。その結果、乳化材として卵黄とオクテニルコハク酸化処理澱粉を用い、従来法である食酢等の酸材を全量含有した水相と食用油脂を含有した油相を単に乳化して酸性水中油型乳化食品を製造するのではなく、製品のpHより特定以上高い状態で一旦、水中油型乳化物を製した後に、酸材を添加してpH調整するならば、意外にも、蛋白質の含有量が少なく食用油脂を高濃度含有した低蛋白、高カロリーの酸性水中油型乳化食品に拘らず、簡便な製造方法により乳化状態の保存安定性が改善され長期間にわたり乳化安定性に優れた乳化食品が得られることを見出し本発明を完成するに至った。」

3c)「【実施例】
【0027】
[実施例1]
下記に示す配合割合で仕上がり100kgの酸性水中油型乳化食品を製した。つまり、生卵黄、食塩、オクテニルコハク酸化処理澱粉(ワキシコーンスターチを原料澱粉としたもの)、砂糖、グルタミン酸ソーダ、核酸系旨味調味料、濃縮レモン果汁及び清水をミキサーで均一に混合し食酢を除く水相を調製した。得られた水相部のpHは4.4であった。次に前記水相を攪拌させながら油相であるサラダ油を徐々に注加して水中油型乳化物である粗乳化物を製した。次いで、得られた粗乳化物に酸材である食酢を添加混合した後にコロイドミルで精乳化し酸性水中油型乳化食品を得た。そして、得られた酸性水中油型乳化食品を500mL容量の可撓性容器に充填した。なお、粗乳化物、粗乳化物に酸材である食酢を添加混合したもの及び酸性水中油型乳化食品のそれぞれのpHは4.5、3.6及び3.6であった。また、蛋白質含有量は、約0.35%であった。
【0028】
<配合割合>
油相 サラダ油 75%
水相 生卵黄 1.5%
食塩 1%
砂糖 0.5%
オクテニルコハク酸化処理澱粉 0.4%
グルタミン酸ソーダ 0.1%
濃縮レモン果汁 0.1%
核酸系旨味調味料 0.01%
清水 残余
???????????????????????
小計 95%
食酢(酸度9%) 5%
???????????????????????
合計 100%」

(4)甲4
4a)「[1] ガティガムを含有する、酸性水中油滴型エマルジョン。
・・・
[22] 水相原料と油相原料とが水中油滴型に乳化されてなる酸性水中油滴型乳化食品について、レンジ耐性または耐熱性を付与または向上させる方法であって、乳化剤としてガティガム、またはガティガムと他の増粘多糖類を用いることを特徴とする方法。
[23] 水相原料と油相原料とが水中油滴型に乳化されてなる酸性水中油滴型乳化食品について、冷凍および解凍耐性を付与または向上させる方法であって、乳化剤としてガティガム、またはガティガム及び他の増粘多糖類を用いることを特徴とする方法。」(26?27頁、請求の範囲)

4b)「[0007] 本発明は、食生活の多様化に対応すベく、レンジ耐性、耐熱性または冷凍・解凍耐性を有する酸性乳化食品、特に酸性乳化調味料として好適に使用できる酸性水中油滴型エマルジヨンを提供することを目的とする。・・・
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記課題のもと日夜研究を進めていたところ、酸性水中油滴型エマルジョンの調製に、乳化剤としてガティガムを用いることによって、当該エマルジョンの乳化安定性を向上させるとともに、当該エマルジョンにレンジ耐性、耐熱性、または冷凍及び解凍耐性を付与することができることを見いだした。さらに、卵黄を配合しないかまたはその使用量を低減したノンコレステロールタイプまたは低コレステロールタイプの酸性乳化食品は、通常は乳化安定性が低下するが、当該乳化食品の製造にガティガムを用いることによって、当該乳化食品の乳化安定性を向上させることができることを見いだした。さらにまた、これらのガティガムの作用は、ガティガムと他の増粘多糖類、特にキサンタンガムを併用することによって増強することを見いだした。」

4c)「[0032] ここで酸性乳化調味料には、日本農林規格(JAS:Japanese Agricultural Standard)でいう「ドレッシング」が含まれる(2004年10月7日 日本国農林水産省告示第1821号)。」

4d)「[0046] 本発明の酸性乳化食品の水相を構成する原料(水相原料)及びその配合割合としては、酸性乳化食品、特に前述する酸性乳化調味料(ドレッシング)の製造に際して通常使用される原料及びその配合割合を挙げることができる。通常使用される水相原料の例としては、水、上記のガティガムまたはガティガム及び他の増粘多糖類のほかに、食酢を挙げることができる。また、その他の任意水相原料として、食酢以外の酸味料;食塩、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリムなどの調味料;糖類や高甘味度甘味料などの甘味料;香辛料;水性の着色料;卵黄や卵白;澱粉;蛋白加水分解物などを挙げることができる。
[0047] ここで食酢としては、醸造酢及び合成酢を挙げることができる。ここで醸造酢には、米酢、黒酢、玄米酢、及びその他の穀物酢;リンゴ酢、葡萄酢、柿酢、バルサミコ酢、及びその他の果実酢;前記穀物酢と果実酢以外の穀物酢が含まれる。酸性乳化食品への食酢の添加量としては、純酢酸の量として通常0.05?1.2重量%、好ましくは0.1?1重量%、より好ましくは0.2?0.8重量%を例示することができる。また食酢以外の酸味料として、クエン酸、またはゆずやレモン等の柑橘系果実の果汁を挙げることができる。
[0048] 酸性乳化食品への食塩の添加量としては、通常0.1?10重量%、好ましくは0. 5?8重量%、より好ましくは1?5重量%を例示することができる。食塩以外の調味料として、5'-イノシン酸二ナトリウム、5'-グアニル酸二ナトリウム、L-グルタミン酸ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、および5'-リボヌクレオチド二ナトリウムなどを挙げることができる。」

4e)「実施例
[0070] 以下、本発明を実施するための最良の形態を、以下の実験例、実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載のない限り「部」は「重量部」を、また「%」は「重量%」意味するものとする
実験例1
(1)酸性乳化調味料 (低コレステロールまたはノンコレステロールタイプ)
下記表1に示す配合組成の酸性乳化調味料(比較例1?10、実施例1?10)を調製した。具体的には、水にガム類(ガティガム、キサンタンガムまたはアラビアガム)(実施例1?10、比較例1?4および7?10)または加工デンプン(比較例5及び6)を添加して溶解し、次いでこれに醸造酢、砂糖、食塩及びL-グルタミン酸ナトリウムを添加して、攪拌混合した。比較例1?3、6及び9?10、並びに実施例9?10については、次いでこれに卵黄を添加して均一に混合した。これを水相とし、この中にサラダ油を加え、5分間攪拌混合して予備乳化した後、コロイドミル(クリアランス10/1000インチ、回転数約3000rpm)より仕上げ乳化を行って、酸性の水中油滴型乳化調味料(pH4)を調製した。
[0071][表1]
・・・

・・・
[0082] (3)上記で調製した各乳化調味料のうち、比較例1、実施例2?4及び6?10について、メジアン径(油滴の平均粒子径)、及び粘度を測定した。また、外観状態を観察するとともに、試食して食感を評価した。結果を表3に示す。なお、メジアン径はレーザー回折式粒度分布測定装置SALD-1100((株)島津製作所製)にて測定した。また 粘度は、B型粘度計((株)東京計器製造所製)を用いて、ローターNo.4、品温約25℃、回転数6rpmで測定した。
[0083][表3]




(5)甲5
5a)「【請求項1】
ヒアルロン酸又はその塩と、オクテニルコハク酸化処理澱粉を配合していることを特徴とする水中油型乳化食品。」

5b)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、水中油型乳化食品にヒアルロン酸又はその塩を配合すると、経時的に離水する場合があり、当該離水現象を防止したヒアルロン酸又はその塩を配合した水中油型乳化食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく配合原料に関し鋭意研究を重ねた結果、オクテニルコハク酸化処理澱粉を併用するならば意外にもヒアルロン酸又はその塩に由来する離水現象を防止することができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。」

5c)「【0027】
なお、本発明は、本発明の効果を損なわない範囲で水中油型乳化食品に一般的に使用されている原料を適宜選択し配合すればよい。このような原料としては、例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油等の動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、あるいはMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的、酵素的処理等を施して得られる油脂、あるいは各種スパイスオイル等調味油等の食用油脂、食酢、食塩、砂糖、醤油、味噌、核酸系旨味調味料、柑橘果汁等の各種調味料、卵黄、ホスフォリパーゼA処理卵黄、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン等の乳化材、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、化工澱粉等の増粘材、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、各種具材等が挙げられる。」

5d)「【実施例】
【0029】
[実施例1]
下記の配合割合に準じ、まず全水相原料を均一に混合した。そして、得られた水相部を攪拌させながら油相であるサラダ油を徐々に注加して粗乳化した後、当該粗乳化物を高速乳化機で仕上げ乳化し水中油型乳化食品を製した。得られた水中油型乳化食品を250mL容量のPET容器に250mL充填して密栓した。なお、原料のヒアルロン酸は、キユーピー(株)製の商品「ヒアルロンサンHA-F」を用い、当該ヒアルロン酸は、平均分子量約80万、純度99%、水分含量約3%である。また、オクテニルコハク酸処理澱粉は、松谷化学工業(株)製の商品「エマルスター30A」を用いた。
【0030】
<水中油型乳化食品の配合割合>
(油相部)
サラダ油 20%
(水相部)
食酢(酸度4%) 20%
ゴーダチーズ 8%
レモン果汁 5%
砂糖 5%
食塩 3%
生卵黄 2%
ヒアルロン酸 0.5%
オクテニルコハク酸化処理澱粉 0.5%
グルタミン酸ソーダ 0.5%
辛子粉 0.2%
香辛料 0.2%
キサンタンガム 0.1%
酢酸ナトリウム(結晶) 0.1%
清水 残余
???????????????????
合計 100%」

(6)甲6
6a)「ドレッシングやマヨネーズは酸性食品にあたり,pHはおよそ3.5から4.5のものが多く,菌を添加した場合には徐々にあるいは急激に死滅する.」(81頁左欄2?5行)

(7)甲7
7a)「サラダドレッシングの美味しさは市販品、各種レシピーによる試作品の中から、官能評価と美味しさ味構成(糖・酸・塩)、野菜・食材との適合性を検討した上で、ドレッシング系統別に美味しさ味基準値とした(図11)。」(32頁下から8?6行)

7b)「

図11 ドレッシング類の美味しい味の構成基準値」
(35頁、図11)

(8)甲8
8a)「

」(127頁、表1)

(9)甲9
9a)「1)本食品群の収載食品の大部分は、工業的に生産され、市販されている食品であるため、試料は原則として市販品を用いた。

2)<調味料類>の中で、多くの原材料を用い製造工程が複雑な調味料は、同じ食品でも原材料の種類と配合割合、製造方法等が異なる場合が多く成分変動も大きい。したがって、試料の入手に当たっては、市場流通量等を考慮した。」(主な事項の記載箇所)

9b)「半固体状として・・・を、乳化液状として「サウザンアイランドドレッシング」を、分離液状として・・・を収載した。
・・・
「サウザンアイランドドレッシング」の成分値は、「なたね油」、「大豆油」、「穀物酢」、「トマトケチャップ」、「ピクルス」、「卵黄」、「上白糖」、「食塩」、「レモン果汁」、「たまねぎ」及び「こしょう」の成分値に基づき計算により決定した。」((ドレッシング類)の欄)

9c)「

」(17 調味料及び香辛料類の表)

(10)甲10
10a)「2 実験方法
2-1 ドレッシング類の成分分析
・・・今回は,市販のドレッシング158商品(分離液状ドレッシング90商品,乳化液状ドレッシング23商品,ドレッシング風調味料45商品)を購入し試験に供した.」(33頁右欄1?9行)

10b)「

」(34頁右欄、表1)

10c)「

」(37?38頁、付表1)

(11)甲11
11a)「1. 天然風味原料及び/又は有機酸を含有するスープ、たれ、ソース又は加工酢に、共存するグルタミン酸及び/又はその塩に対する重量比で20%以上の核酸系呈味物質を添加することを特徴とするスープ・調味料類の風味改善法。」(1頁左下欄4?9行)

11b)「また、有機酸の場合、その酸味、酸風味が、刺激臭、刺激風味に感ぜられて嗜好性を損うだけでなく、例えばpHを低下して保存性を高める必要のある食品にあっては、有機酸の濃度が酸味の点で限定される点が非常に大きな制約になっている。」(1頁右下欄下から2行?2頁左上欄4行)

11c)「即ち、核酸系呈味物質の添加が20%よりも少なくなると、オフフレーバー等のマスキング効果に欠け、特に10%以下では、ほとんど効果を期待できなくなるか、逆に20%以上であれば、オフフレーバー、生臭み、エグ味、収斂味、塩味、酸味を緩和し、しかも味のバランスは維持され又は、コク味が増強されることにより向上する。
グルタミン酸及び/又はその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の中から選ばれた1種以上)の重量に対し、20%以上の核酸系呈味物質の添加により、本発明の効果は得られるが、核酸系呈味物質の添加量は、喫食時濃度に換算して0.03g/dl以上(最適には0.3?10%)である。」(2頁左下欄17行?右下欄10行)

11d)「以下、実施例により本発明を更に説明する。
尚、実施例中、%はすべて重量%を示し、「IN」は、5′-イノシン酸ナトリウム7.5水和物、「GN」は5′-グアニル酸ナトリウム7水和物及び「WP」はIN及びGNを1:1の比率で混合したものを示す。

実施例1
・・・グルタミン酸ナトリウム1水和物(MSG)・・・
実施例4.
ウスターソース、トンカツソース、スパゲッティーミートソース、ドミグラスソース、マヨネーズソースやケチャップ類、ドレッシング類などのソース類への核酸添加による風味改善効果についてウスターソースを例にとり、第8表に示す原料配合で常法により対照品と発明品を試作し、鯵のフライに用いて2点比較法にて官能評価を実施した。結果を第10表に示す。
本発明品は酢馳れ、塩馳れ効果を有し、甘味を増強し、野菜臭をマスクし香辛味をエンハンスし、更にコク味を付与する。又味、風味についても嗜好性を著しく向上させている。
第 8 表 ウスターソース配合例

第 9 表 GN/MSG比

」(2頁右下欄下から4行?5頁右上欄、第9表)

(12)甲12
12a)「核酸系調味料は特徴のある旨味のほかに,風味全体を改善する効果があるとされている。外国では核酸系調味料の性質をFlavor modifying properties と呼んでいるが,食塩のカドのある塩味をまる味のある上品なものにするとか,苦味や強い酸味を抑制するとか,熟成度の若い食品の味をこくのある芳醇なものにするなどの効果がある。」(14頁右欄14?20行)

12b)「

」(15頁、第4表)

(13)甲13
13a)「【0016】
【実施例1】市販濃口醤油100gに対して、ヒスチジン塩酸塩を1.6g、乳酸ナトリウム(50%,食品添加物)を5.3g、塩化カリウムを0.86g、イノシン酸ナトリウム(味の素社製)を0.91gおよびグルタミン酸ナトリウム0.05gを添加することにより、本発明の呈味の改善された醤油を得た。」

13b)「【0024】
【実施例5】実施例1にて得られた、本発明の濃口醤油490gに対して、砂糖170g、みりん20g、食塩38gおよび無菌充填鰹節だし調味料(「本造り一番だし」鰹、味の素社製)120gおよび水(水道水)162gを混合してめんつゆ(3倍濃縮タイプ)を得た。このようにして得られためんつゆについて、水にて3倍に希釈して呈味評価を行った。なお、この際に、無添加の醤油を用いて上記の配合にしたがって調製しためんつゆをを対照とした。対照のめんつゆの配合は、濃口醤油450g、砂糖170g、みりん20g、食塩38gおよび無菌充填鰹節だし調味料(「本造り一番だし」かつお、味の素社製)120gおよび水(水道水)202gである。この2種類の溶液について、二点比較法で味覚パネル20名による官能評価を実施した。結果を表5に示す。表に示したように、本発明のめんつゆのほうが、対照めんつゆと比較して、有意に「コク味」、「後味」および「複雑感」が強く、また、好ましい呈味を有することが認められた。」

13c)「【0042】
【発明の効果】* 以上に示したように、醤油または醤油様発酵調味料に対して、その重量を100として、ヒスチジンを0.3?5.0、乳酸を0.5?10.0、カリウムを0.1?2.0、イノシン酸を0.1?2.0、グルタミン酸を0.005?1.0の比率にて配合することにより、醤油または醤油様発酵調味料に、「あつみ」「こく味」を付与し、かつ、本発明を用いて加熱調理を行うことにより、「劣化臭」などの好ましくない匂いの抑制された食品を提供することが可能であった。」

(14)甲14
14a)「【解決手段】卵黄を主要な乳化剤とする酸性水中油型乳化食品用の増粘剤であって、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩及びリン酸ナトリウム塩の群より選ばれる1種以上を有効成分とする酸性水中油型乳化食品用増粘剤を提供する。」(1頁)

14b)「【0027】
【表1】
・・・



(15)甲15
15a)「ちなみに、アミノ酸の中でも、グルタミン酸やアスパラギン酸は酸味とうまみがある。」(「うまみ成分「グルタミン酸」ってアミノ酸?」の欄)

2 甲1?5発明
(1)甲1発明
甲1には、味の素ドレッシングサウザンドアイランドマイルド1Lについての記載があるところ(摘示1a?1d)、当該商品は、2011年6月7日に販売されたということはできるが、甲1は当該年月日に頒布された刊行物であるとはいえない。
また、甲1の証拠だけでは、甲1に記載された内容が、当該年月日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったとはいえないが、仮に当該年月日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとして、以下検討する(なお、当該商品は、2011年6月7日に販売されたということはできるから、当該年月日に公然実施をされた発明であるとはいえる。)。
甲1の原材料の記載(摘示1b)からみて、甲1に係る発明は、
「原材料が、食用植物油脂、ぶどう糖果糖液糖、醸造酢、トマトケチャップ、トマトペースト、食塩、ピクルス、ドライオニオン、卵黄、香辛料、レモン果汁、しょうゆ、増粘剤(キサンタンガム)、調味料(核酸)、ウスターソース、香辛料抽出物、パプリカ色素、香料、(小麦、りんごを原材料の一部に含む)である、サウザンドアイランドドレッシング」(以下「甲1発明」という。)であると認める。

(2)甲2発明
甲2には、ネギ属植物及びl-メントールを含有する液体調味料についての記載があるところ(摘示2a?2d)、その具体例として、実施例1に分離液状タイプドレッシングが記載されている(摘示2d)。したがって、甲2には、
「配合が、醤油13.20%、砂糖8.24%、食塩0.67%、グルタミン酸Na0.46%、乾燥にんにくパウダー1.28%、乾燥たまねぎチョップ1.10%、高酸度酢4.45%、食用油30.00%、ペパーミントパウダー0.09%、水40.52%、合計100.00%であり、水相の酸度が0.76%、水相のpH(20℃)が4.1である、分離液状タイプドレッシング」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

(3)甲3発明
甲3には、酸性水中油型乳化食品の製造方法についての記載があるところ(摘示3a?3c)、その具体例として、実施例1に当該製造方法で製造した酸性水中油型乳化食品が記載されている(摘示3c)。したがって、甲3には、
「油相が、サラダ油75%であり、水相が、生卵黄1.5%、食塩1%、砂糖0.5%、オクテニルコハク酸化処理澱粉0.4%、グルタミン酸ソーダ0.1%、濃縮レモン果汁0.1%、核酸系旨味調味料0.01%、水相の残余が清水であり、油相と水相が95%であり、食酢(酸度9%)5%であり、pHが3.6である、酸性水中油型乳化食品」の発明「甲3発明」が記載されていると認める。

(4)甲4発明
甲4には、ガティガムを含有する、酸性水中油滴型エマルジョンについての記載があるところ(摘示4a?4e)、その具体例として、実施例2に酸性の水中油滴型乳化調味料が記載されている(摘示4e)。実施例2の配合を示す表1には、各数値の単位が明記されていないが、甲4の明細書全体の記載からみて、各数値の単位は重量%であると認める。したがって、甲4には、
「サラダ油70重量%、醸造酢4.8重量%、砂糖2.5重量%、食塩1.5%、L-グルタミン酸Na0.05%、ガティガム0.5重量%、水20.65重量%、合計100重量%である、酸性の水中油滴型乳化調味料」の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

(5)甲5発明
甲5には、ヒアルロン酸又はその塩と、オクテニルコハク酸化処理澱粉を配合していることを特徴とする水中油型乳化食品についての記載があるところ(摘示5a?5d)、その具体例として、実施例1に水中油型乳化食品が記載されている(摘示5d)。したがって、甲5には、
「油相部が、サラダ油20%であり、水相部が、食酢(酸度4%)20%、ゴーダチーズ8%、レモン果汁5%、砂糖5%、食塩3%、生卵黄2%、ヒアルロン酸0.5%、オクテニルコハク酸化処理澱粉0.5%、グルタミン酸ソーダ0.5%、辛子粉0.2%、香辛料0.2%、キサンタンガム0.1%、酢酸ナトリウム(結晶)0.1%、水相の残余が清水であり、合計が100%である、水中油型乳化食品」の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認める。

3 申立理由1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明は、サウザンドアイランドドレッシングであるところ、甲9の記載からみて(摘示9b)、サウザンドアイランドドレッシングは乳化液状であり、本件明細書には、「乳化液状ドレッシングの様に油脂と水相部が乳化した状態の酸性調味料の場合は、乳化状態を破壊して油脂を分離して残った水相部または製造時の乳化前の油脂以外の部分のことを指す。」(【0012】)との記載があることから、甲1発明における食用植物油脂以外の成分は、全て本件発明1で特定される「水相部」に存在するといえる。
甲1発明の「醸造酢」、「レモン果汁」は原材料であって、醸造酢、レモン果汁が酸性を示すことは明らかである。したがって、本件発明1の「酸性を示す原材料として醸造酢とレモン果汁を含有する」ことに相当する。
甲1発明の「調味料(核酸)」は本件発明1の「核酸」に相当する。
甲1発明の「サウザンドアイランドドレッシング」は本件発明1の「調味料」に相当する。
甲1発明は「ウスターソース類」ではない。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「酸性を示す原材料として醸造酢とレモン果汁を含有する調味料であって、該調味料の水相部が核酸を含有することを特徴とする調味料(但し、ウスターソース類を除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1には「酸性調味料」であり、「酸性調味料の水相部が、下記(a)?(d)の条件を満たす」、「(a)pHが3.5?4.5(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下(c)核酸含量が0.1質量%以上(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下」と特定しているのに対し、甲1発明は、かかる特定がされていない点

相違点1について検討する。
甲1には、本件発明1において特定される(a)?(d)についての記載はない。また、甲1に記載のサウザンドアイランドドレッシングのような液状ドレッシングの水相部は、一般に本件発明1で(a)?(d)として特定される要件を満たすものであるという技術常識もない。
そして、ドレッシングのpHは3.5?4.5のものが多いこと(甲6、摘示6a)、核酸系呈味物質の添加量が喫食時濃度に換算して0.03g/dl以上であること(甲11、摘示11a?11d)、核酸系調味料の標準添加量が液体調味料において5?12g/10kg(10l)であること(甲12、摘示12a、12b)、乳化タイプドレッシング及びフレンチドレッシング(セパレート)の美味しい味の構成基準値について、酸度がいずれも0.8%程度であること(甲7、摘示7a、7b)、乳化型ドレッシングの酸度が、0.7?1.2%であること(甲8、摘示8a)、原則として市販品を用いた試料について、サウザンアイランドドレッシングの酢酸含量が0.6gであること(甲9、摘示9a?9c)、がそれぞれ公知であったとしても、甲1発明のドレッシングの水相部が必ず本件発明1で(a)?(d)として特定される要件を満たすものであるとまではいえない。
なお、甲10には、市販のドレッシング158商品について試験に供したこと、乳化液状ドレッシングの酸度(%)の平均値が0.80であること、いくつかの乳化液状ドレッシング商品についてのpH、酸度等のデータについての記載があるが(摘示10a?10c)、甲10に甲1発明の具体的データが示されている訳でもないから、甲10の記載をみても、甲1発明のドレッシングの水相部が本件発明1で(a)?(d)として特定される要件を満たすものであるとはいえない。
したがって、相違点1は実質的な相違点である。

よって、本件発明1は甲1により公衆に利用可能になった発明であるとはいえない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。

4 申立理由2について
(1)本件発明1について
ア 甲1発明について
本件発明1と甲1発明との一致点・相違点は、上記3で示したとおりである。
相違点1について検討する。
甲6?9、11、12の記載により、上記3において相違点1について述べたとおりの事項が公知であるといえ、甲10には、摘示10a?10cに示した事項が記載されているが、甲1発明のドレッシングについて、甲1には、水相部のpH、グルタミン酸含量、核酸含量、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量に何ら着目するところはないから、これらの全てを本件発明1で(a)?(d)として特定されるものとする動機付けは存在しない。
そして、本件発明1は(a)?(d)の要件を満たすことによって、pHが低いにもかかわらず、酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持するという顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、本件発明1は甲1発明、周知・慣用技術、及び甲6?12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

イ 甲2発明について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「分離液状タイプドレッシング」は本件発明1の「調味料」に相当する。
甲2発明の「高酸度酢」は原材料であって、酸性を示すことは明らかであるから、酢である限りにおいて、本件発明1の「酸性を示す原材料」としての「醸造酢」と一致する。
甲2発明に含まれるグルタミン酸について、甲2発明は、グルタミン酸Na以外にも醤油等の各種成分を含有するところ、甲2発明の水相にどの程度のグルタミン酸が含まれるかは不明である(なお、甲2発明に含まれるグルタミン酸Naについて、甲2発明は分離液状タイプドレッシングであるところ、該ドレッシングは食用油を30.00%含有し、その他の成分が本件発明1の水相部に対応すると認められるところ、グルタミン酸Naは、ドレッシング全体の0.46%含まれるから、水相部には、約0.66%含まれるといえ、グルタミン酸としては、約0.57%含まれるといえる(グルタミン酸Naの分子量約169.1、グルタミン酸の分子量約147.1)。)。
甲2発明は水相のpH(20℃)が4.1であるところ、これは本件発明1の「水相部」が「(a)pHが3.5?4.5」であることに相当し、本件発明1の「酸性」であることに相当する。
甲2発明は水相の酸度が0.76%であるから、甲2発明のドレッシングが酸性であることは明らかである。当該酸度は、酢酸相当酸度の質量%で導出されたものであるが(摘示2d)、甲2発明の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量は不明である。
甲2発明は「ウスターソース類」ではない。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「酸性を示す原材料として酢を含有する酸性調味料であって、該酸性調味料の水相部が、下記(a)の条件を満たすことを特徴とする酸性調味料(但し、ウスターソース類を除く)。(a)pHが3.5?4.5」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
酢について、本件発明1は、「醸造酢」と特定しているのに対し、甲2発明は、「高酸度酢」である点

<相違点3>
酸性調味料について、本件発明1は、「原材料としてレモン果汁」を含有すると特定しているのに対して、甲2発明は、レモン果汁を含有しない点

<相違点4>
水相部について、(a)の条件に加えて、本件発明1は、「(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下(c)核酸含量が0.1質量%以上(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下」を満たすと特定しているのに対し、甲2発明は、かかる特定がされていない点

相違点4について検討する。
甲2発明における水相のグルタミン酸Naによるグルタミン酸含量は約0.57%であるところ、相違点4に係る0.5質量%以下ではなく、甲2には、実施例以外に水相のグルタミン酸含量についての記載・示唆はない。
甲2には、核酸を配合できることが記載されているところ(摘示2c)、他の多数の成分と共に配合できる成分として例示されたものに過ぎず、その配合量について何ら記載も示唆もされていない。
甲2には、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量についての記載はない。
そして、甲2に記載された発明は、ネギ属植物特有のフレッシュ感が増強され、且つそのフレッシュ感が長期保存後も保持されたネギ属植物を含有する液体調味料を提供することを課題とし、l-メントールを含有させることにより当該課題を解決したものであるといえる(摘示2b)。
一方、本件発明1は、pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持した酸性調味料を提供することを課題とするものである。
してみると、たとえ甲9、甲11?14に液体調味料等にレモン果汁を配合すること、核酸を配合すること、配合量として相違点4に係る本件発明1の範囲と重複する範囲が記載されていたとしても、甲2発明において、水相のグルタミン酸含量、核酸含量、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量について、相違点4に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得たものであるということはできない。
そして、本件発明1は(a)?(d)の要件を満たすことによって、pHが低いにもかかわらず、酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持するという顕著な効果を奏するものと認められる。
よって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明、周知・慣用技術、及び甲9、甲11?14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ 甲3発明について
甲3発明と本件発明1とを対比する。
甲3発明の「酸性水中油型乳化食品」は、酸性食品である限りにおいて、本件発明1の「酸性調味料」と一致する。
甲3発明の「食酢(酸度9%)」は原材料であって、酸性を示すことは明らかであるから、酢である限りにおいて、本件発明1の「酸性を示す原材料」としての「醸造酢」と一致する。
甲3発明の「濃縮レモン果汁」は原材料であって、酸性を示すことは明らかであるから、本件発明1の「酸性を示す原材料」としての「レモン果汁」に相当する。
甲3発明の水相のpHは、得られた食品のpHが3.6であることからみて、3.6であると認められ、本件発明1の「水相部」が「pHが3.5?4.5」であることに相当する。
甲3発明に含まれるグルタミン酸について、甲3発明は、グルタミン酸ソーダ以外にも生卵黄等の各種成分を含有するところ、甲3発明の水相にどの程度のグルタミン酸が含まれるかは不明である。
甲3発明の「核酸系旨味調味料」は、本件発明1の「核酸」に相当するところ、その配合量は、0.01%であり、本件発明1の「0.1質量%以上」ではない。

甲3発明の食酢の酸度は9%であるところ、甲3発明の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量は不明である。
甲3発明は「ウスターソース類」ではない。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、
「酸性を示す原材料として酢とレモン果汁を含有する酸性食品であって、該酸性食品の水相部が、核酸を含有し、下記(a)の条件を満たすことを特徴とする酸性食品(但し、ウスターソース類を除く)。(a)pHが3.5?4.5」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点5>
酢について、本件発明1は、「醸造酢」と特定しているのに対し、甲3発明は、「食酢(酸度9%)」である点

<相違点6>
本件発明1は、「酸性調味料」と特定しているのに対し、甲3発明は、「酸性水中油型乳化食品」である点

<相違点7>
酸性食品の水相部について、(a)の条件に加えて、本件発明1は、「酸性調味料の水相部が」、「(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下(c)核酸含量が0.1質量%以上(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下」を満たすと特定しているのに対し、甲3発明は、かかる特定がされていない点

相違点7について検討する。
甲3発明は、グルタミン酸ソーダを含有するものであるところ、グルタミン酸の水相における配合量は不明であり、甲3には、実施例以外に水相のグルタミン酸の配合量についての記載・示唆はない。
甲3発明は、核酸系旨味調味料を含有するものであるところ、その水相における配合量は本件発明1の範囲にあるとはいえず、甲3にはその他に当該旨味調味料をどの程度配合するかについての記載・示唆はない。
甲3には、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量についての記載・示唆はない。
そして、甲3に記載された発明は、蛋白質の含有量が少なく食用油脂を高濃度含有した低蛋白、高カロリーの酸性水中油型乳化食品に拘らず、長期間保存しても乳化安定性に優れた酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供することを課題とし、乳化材として卵黄とオクテニルコハク酸化処理澱粉を用い、製品のpHより特定以上高い状態で一旦、水中油型乳化物を製した後に、酸材を添加してpH調整することにより当該課題を解決したものであるといえる(摘示3b)。
一方、本件発明1は、pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持した酸性調味料を提供することを課題とするものである。
してみると、たとえ甲4?14に、pH、グルタミン酸、核酸及びそれらの配合量、醸造酢、レモン果汁、酸度等に関する記載があったとしても、甲3発明において、水相のグルタミン酸含量、核酸含量、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量について、相違点7に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得たものであるということはできない。
そして、本件発明1は(a)?(d)の要件を満たすことによって、pHが低いにもかかわらず、酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持するという顕著な効果を奏するものと認められる。
よって、相違点5及び6について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明、周知・慣用技術、及び甲4?14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

エ 甲4発明について
甲4発明と本件発明1とを対比する。
甲4発明の「酸性の水中油滴型乳化調味料」は、本件発明1の「酸性調味料」に相当する。
甲4発明の「醸造酢」は原材料であって、酸性を示すことは明らかであるから、本件発明1の「酸性を示す原材料」としての「醸造酢」に相当する。
甲4発明に含まれるグルタミン酸について、甲4発明は、L-グルタミン酸Naを全成分中0.05%含有するところ、サラダ油を除く成分、すなわち水相には、グルタミン酸として約0.14%含有し、その他の水相の成分を考慮しても、水相には0.5質量%より多く含まれているとは認められないから、本件発明1の「酸性調味料の水相部が」、「(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下」の条件を満たすといえる。
甲4発明は「ウスターソース類」ではない。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、
「酸性を示す原材料として醸造酢を含有する酸性調味料であって、該酸性調味料の水相部が、下記(b)の条件を満たすことを特徴とする酸性食品(但し、ウスターソース類を除く)。(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点8>
本件発明1は、「酸性を示す原材料として」、「レモン果汁を含有する」と特定しているのに対し、甲4発明は、レモン果汁を含有しない点

<相違点9>
水相部について、(b)の条件に加えて、本件発明1は、「(a)pHが3.5?4.5」及び「(c)核酸含量が0.1質量%以上(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下」と特定しているのに対し、甲4発明は、かかる特定がされていない点

相違点9について検討する。
甲4には、イノシン酸ナトリムなどの調味料、食塩以外の調味料として、5'-イノシン酸二ナトリウム、5'-グアニル酸二ナトリウム等を添加することができることが記載されているが(摘示4d)、他の多数の配合できる成分と共に例示されているに過ぎず、また、それらをどの程度配合するかについての記載・示唆はない。
また、甲4には、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量についての記載・示唆はない。
そして、甲4に記載された発明は、食生活の多様化に対応すベく、レンジ耐性、耐熱性または冷凍・解凍耐性を有する酸性乳化食品、特に酸性乳化調味料として好適に使用できる酸性水中油滴型エマルジョンを提供することを課題とし、乳化剤としてガティガムを用いることによって当該課題を達成したものということができる(摘示4b)。
一方、本件発明1は、pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持した酸性調味料を提供することを課題とするものである。
してみると、たとえ甲3、甲5?14に、pH、グルタミン酸、核酸及びそれらの配合量、醸造酢、レモン果汁、酸度等に関する記載があったとしても、甲4発明において、水相の核酸含量、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量について、相違点9に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得たものであるということはできない。
そして、本件発明1は(a)?(d)の要件を満たすことによって、pHが低いにもかかわらず、酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持するという顕著な効果を奏するものと認められる。
よって、相違点8について検討するまでもなく、本件発明1は甲4発明、周知・慣用技術、及び甲3、甲5?14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

オ 甲5発明について
甲5発明と本件発明1とを対比する。
甲5発明の「水中油型乳化食品」は、食品である限りにおいて、本件発明1の「酸性調味料」と一致する。
甲5発明の「食酢(酸度4%)」は原材料であって、酸性を示すことは明らかであるから、酢である限りにおいて、本件発明1の「酸性を示す原材料」としての「醸造酢」と一致する。
甲5発明の「レモン果汁」は原材料であって、酸性を示すことは明らかであるから、本件発明1の「酸性を示す原材料」としての「レモン果汁」に相当する。
甲5発明に含まれるグルタミン酸ソーダについて、甲5発明は、グルタミン酸ソーダ以外にも生卵黄等の各種成分を含有するところ、甲5発明の水相部にどの程度のグルタミン酸が含まれるかは不明である(なお、甲5発明は、グルタミン酸ソーダを全成分中0.5%含有するところ、サラダ油20%を除く成分、すなわち水相部には、約0.625%含有し、グルタミン酸としては、約0.54%含まれるといえる。)。
甲5発明は「ウスターソース類」ではない。
したがって、本件発明1と甲5発明とは、
「酸性を示す原材料として酢とレモン果汁を含有する食品(但し、ウスターソース類を除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点10>
本件発明1は、「酸性調味料」と特定しているのに対し、甲5発明は、「水中油型乳化食品」である点

<相違点11>
酢について、本件発明1は、「醸造酢」と特定しているのに対し、甲5発明は、「食酢(酸度4%)」である点

<相違点12>
本件発明1は、「酸性調味料の水相部が、下記(a)?(d)の条件を満たす」、「(a)pHが3.5?4.5(b)グルタミン酸含量が0.5質量%以下(c)核酸含量が0.1質量%以上(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下」と特定しているのに対し、甲5発明は、かかる特定がされていない点

相違点12について検討する。
甲5には、水相部のpHに関する記載・示唆はない。
甲5発明における水相部のグルタミン酸ソーダによるグルタミン酸含量は約0.54%であるところ、相違点12に係る0.5質量%以下ではなく、甲2には、実施例以外に水相部のグルタミン酸含量についての記載・示唆はない。
甲5には、核酸系旨味調味料を配合できることが記載されているが(摘示5c)、他の多数の配合できる成分と共に例示されているに過ぎず、また、どの程度配合するかについての記載・示唆はない。
甲5には、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量についての記載・示唆はない。
そして、甲5に記載された発明は、離水現象を防止したヒアルロン酸又はその塩を配合した水中油型乳化食品を提供することを課題とし、オクテニルコハク酸化処理澱粉を併用することで当該課題を達成したものということができる(摘示5b)。
一方、本件発明1は、pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持した酸性調味料を提供することを課題とするものである。
してみると、たとえ甲3?4、甲6?14に、pH、グルタミン酸、核酸及びそれらの配合量、醸造酢、レモン果汁、酸度等に関する記載があったとしても、甲5発明において、水相部のグルタミン酸含量、核酸含量、酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量について、相違点12に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得たものであるということはできない。
そして、本件発明1は(a)?(d)の要件を満たすことによって、pHが低いにもかかわらず、酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持するという顕著な効果を奏するものと認められる。
よって、相違点10及び11について検討するまでもなく、本件発明1は甲5発明、周知・慣用技術、及び甲3?4、甲6?14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、「酸性調味料」の「酸味抑制方法」の発明であるところ、当該酸味抑制方法によって、調整される酸性調味料は、本件発明1の「酸性調味料」と同じものである。
一方、上記(1)に示したとおり、本件発明1の「酸性調味料」について、甲1発明、周知・慣用技術、及び甲6?12に記載された事項に基いて、甲2発明、周知・慣用技術、及び甲9、甲11?14に記載された事項に基いて、甲3発明、周知・慣用技術、及び甲4?14に記載された事項に基いて、甲4発明、周知・慣用技術、及び甲3、甲5?14に記載された事項に基いて、甲5発明、周知・慣用技術、及び甲3?4、甲6?14に記載された事項に基いて、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
甲15には、グルタミン酸に酸味があることが記載されているが(摘示15a)、当該記載によっても、上記(1)で検討した相違点1、相違点4、相違点7、相違点9、相違点12に係る本件発明1で特定される事項が容易想到であるということはできない。
したがって、本件発明2も、甲1発明、周知・慣用技術、及び甲6?12に記載された事項に基いて、甲2発明、周知・慣用技術、及び甲9、甲11?14に記載された事項に基いて、甲3発明、周知・慣用技術、及び甲4?14に記載された事項に基いて、甲4発明、周知・慣用技術、及び甲3、甲5?14に記載された事項に基いて、甲5発明、周知・慣用技術、及び甲3?4、甲6?14に記載された事項に基いて、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?2は、甲第1?5号証に記載された発明及び周知・慣用技術又は甲第6?14号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 申立理由3について
特許異議申立人は、発明の課題と中和滴定量が所定の範囲内であるという発明特定事項との関係を理解することができず、発明の課題の解決手段を理解できないことから、本件発明は技術上の意義が不明である旨主張する。
以下検討する。
(1)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性調味料に関し、詳しくは低pHであるにもかかわらず酸味を抑制した酸性調味料に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持した酸性調味料を提供することである。
【0008】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、酸性調味料中のグルタミン酸含量、核酸含量、中和する際に要する中和滴定量を調整することにより酸性調味料の酸味を抑制することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。」

本b)「【0018】
本発明の酸性調味料の水相部は、(d)酸性調味料の水相部100gを1N水酸化ナトリム水溶液でpH7まで中和する際に要する中和滴定量が15mL以下、であり、好ましくは10mL以下である。上記中和滴定量が15mLを超えると、酸性調味料の酸味を抑制することができない。
【0019】
ここで、上記中和滴定する方法としては、酸性調味料の水相部100g(約20℃)をマグネチックスターラーなどの撹拌機を用いて撹拌およびpH測定器でpHを測定しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を酸性調味料に滴下し、pH7.0になるまでに要した1N水酸化ナトリウム水溶液の容量を測定する方法を例示することができる。尚、酸性調味料が半固体状であり撹拌が困難な場合、撹拌できる程度まで蒸留水またはイオン交換水を加えて均一な状態とし中和滴定を行うことができる。
【0020】
酸性調味料の水相部をpH3.5?4.5に調整する方法としては、酸性調味料に用いる原材料の添加量を調整する方法、あるいは酸性調味料の水相部に酸剤またはアルカリ剤を添加する方法などが挙げられる。上記酸剤としては塩酸などの強酸、乳酸、クエン酸、酢酸、リン酸などの弱酸を用いることができる。上記アルカリ剤としては水酸化ナトリウムなどの強アルカリ、乳酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどの弱アルカリを用いることができる。
酸剤またはアルカリ剤を酸性調味料の水相部に添加してpHを調整する場合、pHメーターでpHを計測しながら目的のpHになるまで調整する方法が挙げられる。」

本c)「【実施例】
【0025】
<ノンオイルドレッシング(和風)の作製>
(1)原材料
・・・
【0026】
(2)ノンオイルドレッシング(和風)の配合量
上記原材料を用いて作製したノンオイルドレッシング(和風)の配合を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
(3)ノンオイルドレッシング(和風)の作製
・・・得られたノンオイルドレッシング(和風)のpH、グルタミン酸含量、核酸含量、ノンオイルドレッシング(和風)100gを中和する際に要する中和滴定量を測定した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
<ノンオイルドレッシング(和風)の酸味、味の厚みおよびコク味の評価> 得られたノンオイルドレッシング(和風)(実施例品1、比較例品1、2、3)の酸味、味の厚みおよびコク味についての官能評価を下記表3の評価基準に従い評価した。官能評価は10名で行い、10名の評価点の平均値を求め、下記基準によって記号化した。結果を表4に示す。
[記号化]
[記号化]
◎ : 平均値3.5以上
〇 : 平均値2.5以上3.5未満
△ : 平均値1.5以上2.5未満
× : 平均値1.5未満
【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

結果より、実施例品は、酸味が抑制され、味の厚みおよびコク味も有していた。一方、比較例品1、2は、味の厚みおよびコク味を有するものの、酸味が抑制されなかった。また、比較例品3は、酸味が抑制されるものの、味の厚みおよびコク味がほとんど感じられなかった。
【0033】
<ぽん酢の作製>
(1)原材料
・・・
【0034】
(2)ぽん酢の配合量 上記原材料を用いて作製したぽん酢の配合を表5に示す。
【0035】
【表5】

【0036】
(3)ぽん酢の作製
・・・得られたぽん酢のpH、グルタミン酸含量、核酸含量、ぽん酢100gを中和する際に要する中和滴定量を測定した。結果を表6に示す。
【0037】
【表6】

【0038】
<ぽん酢の酸味、味の厚みおよびコク味の評価>
得られたぽん酢(実施例品2、比較例品4、5)の酸味、味の厚みおよびコク味についての官能評価をおこなった。官能評価は前述の「ノンオイルドレッシング(和風)の酸味、味の厚みおよびコク味の評価」と同じ方法で実施した。結果を表7に示す。
【0039】
【表7】

結果より、実施例品2は酸味が抑制され、味の厚みおよびコク味も有していた。一方、比較例品4は、味の厚みおよびコク味を有するものの、酸味が抑制されなかった。また、比較例品5は、酸味は抑制されるものの味の厚みおよびコク味があまり感じられなかった。
【0040】
<分離液状ドレッシングの作製>
(1)原材料
・・・
【0041】
(2)分離液状ドレッシングの配合量
上記原材料を用いて作製した分離液状ドレシングの配合を表8に示す。
【0042】
【表8】

【0043】
(3)分離液状ドレッシングの作製
・・・得られた分離液状ドレッシング水相部のpH、グルタミン酸含量、核酸含量、分離液状ドレッシング水相部100gを中和する際に要する中和滴定量を測定した。結果を表9に示す。
【0044】
【表9】

【0045】
<分離液状ドレッシングの酸味、味の厚みおよびコク味の評価>
得られた分離液状ドレッシング(実施例品3、比較例品6、7)の酸味、味の厚みおよびコク味についての官能評価をおこなった。評価の際、油相が水相に完全に分散するまで良く撹拌し、分散している間に官能評価を行った。官能評価は前述の「ノンオイルドレッシング(和風)の酸味、味の厚みおよびコク味の評価」と同じ方法で実施した。結果を表10に示す。
【0046】
【表10】

結果より、実施例品3は、酸味が抑制され、味の厚みおよびコク味も有していた。一方、比較例品6は、味の厚みおよびコク味を有するものの、酸味が抑制されなかった。また、比較例品7は、酸味が抑制されるものの、味の厚みおよびコク味がほとんど感じられなかった。
【0047】
<乳化液状ドレッシングの作製>
(1)原材料
・・・
【0048】
(2)乳化液状ドレッシングの配合量
上記原材料を用いて作製した乳化液状ドレッシングの配合を表11に示す。
【0049】
【表11】

【0050】
(3)乳化液状ドレッシングの作製
・・・乳化前の乳化液状ドレッシング水相部のpH、グルタミン酸含量、核酸含量、乳化前の乳化液状ドレッシング水相部100gを中和する際に要する中和滴定量を測定した。結果を表12に示す。
【0051】
【表12】

【0052】
<乳化液状型酸性調味料の酸味、味の厚みおよびコク味の評価>
得られた乳化液状酸性調味料(実施例品4、比較例品8、9)の酸味、味の厚みおよびコク味についての官能評価をおこなった。官能評価は「ノンオイルドレッシング(和風)の酸味、味の厚みおよびコク味の評価」と同じ方法で実施した。結果を表13に示す。
【0053】
【表13】

結果より、実施例品4は酸味が抑制され、味の厚みおよびコク味も有していた。一方、比較例品8は、味の厚みおよびコク味を有するものの、酸味が抑制されなかった。また、比較例品9は、酸味は抑制されるものの味の厚みおよびコク味があまり感じられなかった。
【0054】
<ノンオイルドレッシング(梅)、ノンオイルドレッシング(玉葱)の作製>
(1)原材料
・・・
【0055】
(2)ノンオイルドレッシング(梅)、ノンオイルドレッシング(玉葱)の配合量
上記原材料を用いて作製したノンオイルドレッシング(梅)(実施例5)、ノンオイルドレッシング(玉葱)(実施例6)の配合を表14に示す。
【0056】
【表14】

【0057】
(3)ノンオイルドレッシング(梅)、ノンオイルドレッシング(玉葱)の作製
・・・得られたノンオイルドレッシング(梅)、ノンオイルドレッシング(玉葱)のそれぞれのpH、グルタミン酸含量、核酸含量、およびノンオイルドレッシング(梅)、ノンオイルドレッシング(玉葱)100gを中和する際に要する中和滴定量をそれぞれ測定した。結果を表15に示す。
【0058】
【表15】

【0059】
<ノンオイルドレシング(梅)、ノンオイルドレッシング(玉葱)の酸味、味の厚みおよびコク味の評価>
得られたノンオイルドレッシング(梅)(実施例品5)、ノンオイルドレドレッシング(玉葱)(実施例品6)の酸味、味の厚みおよびコク味についての官能評価をおこなった。官能評価は前述の「ノンオイルドレッシング(和風)の酸味、味の厚みおよびコク味の評価」と同じ方法で実施した。結果を表16に示す。
【0060】
【表16】

結果より、実施例品5、6共に酸味が抑制され、味の厚みおよびコク味も有していた。」

(2)判断
発明の詳細な説明には、本件発明の技術分野が、「酸性調味料」に関すること、本件発明の目的が、「pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクを保持した酸性調味料を提供すること」であることが記載され、その解決手段が、「酸性調味料中のグルタミン酸含量、核酸含量、中和する際に要する中和滴定量を調整すること」であることが記載されている(摘示本a)、【0007】、【0008】)。
また、明細書の全ての記載事項及び技術常識からみて、本件発明1の課題は、「pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクが保持された酸性調味料を提供すること」にあり、本件発明2の課題は、「pHが低いにもかかわらず、味の厚みやコクを保持した酸性調味料の酸味を抑制する方法を提供すること」であるといえる。
そして、発明の詳細な説明には、中和滴定量が15mLを超えると、酸性調味料の酸味を抑制することができないこと、中和滴定する方法及びpHを調整する方法についての一般的な記載がある(摘示本b)。
また、実施例として、ノンオイルドレッシング(和風)等の酸性調味料について、中和滴定量が4.9?14.1mlの範囲にあるものが記載されており、その配合、作製、酸味、味の厚み及びコク味の評価についての記載があるところ(摘示本c)、中和滴定量が本件発明で特定される範囲にある実施例品1?6は、酸味が抑制され、味の厚み及びコク味を有していることが確認されている一方で、中和滴定量が本件発明で特定される範囲にない比較例品2、4、6、8は、いずれも酸味の評価が×であることが示されていることから、中和滴定量が本件発明で特定される範囲にない場合には、酸味が抑制されていないことが理解できる。
してみると、発明の詳細な説明の記載から、発明の課題と中和滴定量が所定の範囲内であるという発明特定事項との関係を理解することができ、発明の課題の解決手段を理解できるといえる。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?2について、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する経済産業省令で定める要件を満たしていないとはいえない。

6 申立理由4について
特許異議申立人は、a)核酸という文言には、イノシン酸とグアニル酸以外のリボヌクレオチドも包含され、イノシン酸とグアニル酸では呈味効果等が異なることが技術常識であり、それ以外の核酸では呈味効果に顕著な差があることも技術常識であり、イノシン酸とグアニル酸以外の核酸を0.1重量%以上含有している場合に、本件発明の課題が解決可能であるか、認識できる実施例ないし記載はないこと、b)本件明細書には、「高核酸酵母エキスによる酸味マスキング効果」が記載され、「上記従来技術では酸味をマスキングすることは出来るが、その際に他の風味が付与されてしまったり、酸味を抑制しながら味の厚みやコク味のバランスを崩すことなく保持することは難しく、さらに良い方法が求められていた。」とも記載されているところ(【0004】)、本件発明は高核酸酵母エキスを使用することを包含していること、を指摘して、これらのことから、本件発明は課題が解決できると認識できない部分を包含し、本件発明は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えること、c)酸味の評価系について、本件明細書に記載された実施例において、酸味の評価基準は「非常に強く」、「強く」、「程よく」といった極めて主観的な評価基準が用いられており、また、評価系が絶対評価であるとも、相対評価であるとも考えられ、官能評価が体系的に行われていなかったと考えられ、第三者が客観的かつ具体的に理解することができないことから、本件発明により課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されていないこと、を主張する。
以下検討する。
(1)発明の詳細な説明の記載
上記5(1)で摘示したほか、発明の詳細な説明には以下の記載がある。
本d)「【0016】
本発明の酸性調味料の水相部は、(c)核酸含量が0.1質量%以上、である。核酸含量が0.1質量%を下回ると酸性調味料の味の厚みやコクを保持することができない。上記核酸としては、5’-イノシン酸、5’-グアニル酸を指す。これら核酸は、核酸系調味料として用いられる5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウムや、旨みを賦与するために用いられる酵母エキス、各種動植物エキスなどの各種原材料に由来するものである。
【0017】
核酸の測定方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフ法で核酸、具体的には5’-イノシン酸、5’-グアニル酸の含有量を測定する方法を例示することができる。具体的には、酸性調味料水相部を4g採取し、脱イオン水で100mLに定容した後、No.2のろ紙で濾過してから目開き0.45μmのメンブランフィルターを通して試料液とし、高速液体クロマトグラフィー(型式:Agilent1200シリーズ;アジレント・テクノロジー)を用いて下記条件で測定することができる。
検出器:ダイオードアレイ検出器
カラム:HITACHI GEL#3013-N
温度:70℃
流速:1ml/min
移動相:リン酸バッファー
測定波長:260nm」

(2)判断
明細書の全ての記載事項及び出願時の技術常識からみて、本件発明1の課題は、「pHが低いにもかかわらず酸味が抑制され、味の厚みやコクが保持された酸性調味料を提供すること」にあり、本件発明2の課題は、「pHが低いにもかかわらず、味の厚みやコクを保持した酸性調味料の酸味を抑制する方法を提供すること」であると認める。

a)核酸について
本件の発明の詳細な説明には、
「【0016】
本発明の酸性調味料の水相部は、(c)核酸含量が0.1質量%以上、である。核酸含量が0.1質量%を下回ると酸性調味料の味の厚みやコクを保持することができない。上記核酸としては、5’-イノシン酸、5’-グアニル酸を指す。これら核酸は、核酸系調味料として用いられる5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウムや、旨みを賦与するために用いられる酵母エキス、各種動植物エキスなどの各種原材料に由来するものである。」(摘示本d)
と記載されており、本件発明にいう「核酸」とは、食品分野で一般に核酸系調味料として用いられる5’-イノシン酸、5’-グアニル酸のような5’-リボヌクレオチドを指していると認められる。
そして、特許異議申立人が甲12として示した文献には、
「5'-イノシン酸(5'-IMP),5'-グァニル酸(5'-GMP)などが,食品の旨味成分として優れた性質をもっていることに着目され,核酸系調味料として工業的に大量生産される」(12頁左欄2?5行、はしがき)、
「(3) 核酸系調味料
前述の5'-IMP,5'-GMPに併せて5'-ウリジル酸(5'-UMP),5'-シチジル酸(5'-CMP)のそれぞれの2-ナトリウム塩,及びこれらの混合物の5'-リボヌクレオタイドナトリウム(5'-IMP・Na_(2)と5'-GMP・Na_(2)の占める比率を多くしてある)は食品添加物として,食品衛生法上許可されている。」(13頁左欄、第1表の下10?16行)
と記載されており、食品分野において5'-イノシン酸、5'-グァニル酸などが核酸系調味料に含まれる旨味成分であることは技術常識であると認められ、上記のような認定はこのような技術常識に沿うものである。
また、甲12には、核酸系調味料が強い酸味を抑制する効果を有することも記載されている(14頁右欄15?20行)から、甲12のこれらの記載を踏まえれば、本件の発明の詳細な説明の記載から、食品分野において核酸系調味料とされている核酸を用いれば、上記課題が解決できることを理解できるといえる。

b)高核酸酵母エキスについて
特許異議申立人は、本件発明が高核酸酵母エキスを使用することも包含すると主張しているが、このように主張する根拠は明らかでない。
本件の発明の詳細な説明には、
「【0003】
酸性調味料の酸味を抑制する従来技術としては、鰹節から抽出して得られる鰹節抽出物を有効成分として含有することを特徴とする酸味抑制剤(特許文献1)、酸性調味料に昆布のだし汁あるいはエキスを添加することを特徴とする酸性調味料の不快臭と酸味を抑制し、香味をマイルド化する方法(特許文献2)、特定量の高甘味度甘味料及び食塩を含有することを特徴とする低pH食品(特許文献3)、特定量の糖アルコール、グルタミン酸、カリウム、イノシン酸、含硫アミノ酸及び/又は含硫ペプチドが配合されていることを特徴とする調味料組成物(特許文献4)、酸味を有する飲食品を調整する際に、所定量のホエイなどを配合することを特徴とする、酸味を有する飲食品の風味改善方法(特許文献5)などが開示されている。
【0004】
また、ビール酵母を酵素分解して得た酵母エキスによる酸味抑制効果(非特許文献1)、高核酸酵母エキスによる酸味マスキング効果(非特許文献2)などが開示されている。 しかし、上記従来技術では酸味をマスキングすることは出来るが、その際に他の風味が付与されてしまったり、酸味を抑制しながら味の厚みやコク味のバランスを崩すことなく保持することは難しく、さらに良い方法が求められていた。」
と記載されているが(下線は当審が付与。以下同様。)、当該記載は従来技術における問題点等を指摘したものに過ぎず、本件発明は、酸味マスキング効果を得るために高核酸酵母エキスを使用するものではない。
発明の詳細な説明には、
「【0016】
本発明の酸性調味料の水相部は、(c)核酸含量が0.1質量%以上、である。核酸含量が0.1質量%を下回ると酸性調味料の味の厚みやコクを保持することができない。上記核酸としては、5’-イノシン酸、5’-グアニル酸を指す。これら核酸は、核酸系調味料として用いられる5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウムや、旨みを賦与するために用いられる酵母エキス、各種動植物エキスなどの各種原材料に由来するものである。」
と核酸の原材料として酵母エキスが記載されているに過ぎない。
本件発明は、高核酸酵母エキスを使用するのではなく、請求項1および2に記載された(a)?(d)の特定を満たすことによって、酸味を抑制する等の効果が得られるものである。仮に、本件発明が高核酸酵母エキスを使用することを包含するものであったとしても、それにより、本件発明の課題を解決することができないということはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、本件発明の特定や、本件の発明の詳細な説明の記載に基づくものとはいえず、採用できない。

c)酸味の評価系について
発明の詳細な説明には、官能評価は10名で行い、10名の評価点の平均値を求め、発明の詳細な説明に記載の基準によって記号化したことが記載されているところ(摘示本c)、酸味の評価については4段階で評価し、それを記号化したこと、各種の酸性調味料の評価は、同じ方法で実施したことが理解できる。
そして、味の評価については、ある程度の個人差が存在することはあったとしても、当該技術分野において、官能評価は訓練された評価者によって行うことが技術常識であり、発明の詳細な説明に記載された実施例品と比較例品との評価の比較によって、両者間の酸味についての有意な差を確認することができる。
してみると、酸味の評価について、第三者が客観的かつ具体的に理解することができないとはいえない。

以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明の記載から、当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?2について、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合せず、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていないとはいえない。

7 申立理由5について
特許異議申立人は、本件発明において、滴定量に関して特定される「水酸化ナトリム水溶液」という文言は一般的でなく、当該文言の意味する内容を明確に把握することはできないことから、本件発明は明確でない旨主張する。
以下検討する。
たしかに、「水酸化ナトリム水溶液」という語は正確な語であるとはいえないが、発明の詳細な説明に「上記中和滴定する方法としては、・・・1N水酸化ナトリウム水溶液を酸性調味料に滴下し、pH7.0になるまでに要した1N水酸化ナトリウム水溶液の容量を測定する方法を例示することができる。」と記載されていること(【0019】)、及び出願時の技術常識からみて、上記「水酸化ナトリム水溶液」が「水酸化ナトリウム水溶液」の誤記であることは明らかである(なお、上記のとおりの誤記であることは特許異議申立人も認めている。)。
したがって、請求項1及び2における「水酸化ナトリム水溶液」との記載は、本件発明1及び2に係る特許を取り消すほど不明確な記載であるとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明1?2について、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合せず、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?2に係る特許は、特許異議申立人が申立てた理由及び証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-10 
出願番号 特願2014-47925(P2014-47925)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 113- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柴原 直司  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 天野 宏樹
冨永 保
登録日 2019-03-08 
登録番号 特許第6490341号(P6490341)
権利者 理研ビタミン株式会社
発明の名称 酸性調味料  
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