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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1358670
異議申立番号 異議2019-700830  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-18 
確定日 2020-01-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6503627号発明「医薬液体組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6503627号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6503627号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成26年3月25日(優先権主張 平成25年3月28日)の出願であって、平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和1年10月18日に特許異議申立人 岡 ヤエ子(以下、申立人という)により特許異議の申立てがなされた。

2 本件発明
特許第6503627号の請求項1及び2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」といい、これらをまとめて、「本件特許発明」ということがある。)。

「【請求項1】
ルリコナゾール1%、リドカイン2.5%、及び水を含む液剤又はローション剤。
【請求項2】
ルリコナゾール1%、及びリドカイン1.5?2.5%を含むクリーム剤。」

3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1号証?甲第8号証(以下、「甲1」等と略記する)を提出するとともに、特許異議申立書において、以下の取消理由により、請求項1及び2に係る特許は取り消されるべき旨主張している。
(取消理由1(新規性))
本件特許発明1及び2は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(取消理由2(進歩性))
本件特許発明1及び2は、甲1に記載された発明及び甲2?8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(取消理由3(サポート要件))
本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

<証拠>
甲1:特開2012-144449号公報
甲2:国際公開2009/031642号
甲3:国際公開2009/031643号
甲4:国際公開2009/031644号
甲5:国際公開2011/155640号
甲6:特表2012-523409号公報
甲7:特表2012-523410号公報
甲8:特表2013-503108号公報

4 文献の記載
(1)甲1に記載された事項及び甲1記載の発明(下線は、合議体が付した。)

(1a)「【請求項1】
ルリコナゾール、並びに抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗白癬菌剤、殺菌剤、テルペノイド、鎮痒剤、抗炎症剤、ビタミン類、鎮痛剤、収斂保護剤、血管収縮剤、生薬、及び角質溶解剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする、抗真菌医薬組成物。
・・・
【請求項3】
局所麻酔剤が、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、オキシポリエトキシドデカン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の抗真菌医薬組成物。」

(1b)「【0006】
即ち、本発明は、
〔1〕ルリコナゾール、並びに抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗白癬菌剤、殺菌剤、テルペノイド、鎮痒剤、抗炎症剤、ビタミン類、鎮痛剤、収斂保護剤、血管収縮剤、生薬、及び角質溶解剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする、抗真菌医薬組成物、
〔2〕抗ヒスタミン剤が、ジフェニルピラリン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾール及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の抗真菌医薬組成物、
〔3〕局所麻酔剤が、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、オキシポリエトキシドデカン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の抗真菌医薬組成物、
に関する。」

(1c)「【0008】
本発明の抗真菌医薬組成物に使用されるルリコナゾールは、イミダゾール系抗真菌剤として公知の化合物であり、特開平09-100279公報に開示されている方法により、製造することができる。また本発明の抗真菌医薬組成物においてルリコナゾールと共に使用することができる抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗白癬菌剤、殺菌剤、テルペノイド、鎮痒剤、抗炎症剤、ビタミン類、鎮痛剤、収斂保護剤、血管収縮剤、生薬、及び角質溶解剤の各薬剤は、平成10年5月15日医薬発第447号(みずむし・たむし用薬製造(輸入)承認基準等について)、及び第十五改正日本薬局方第二追補(日本薬局方の一部を改正する件、平成21年厚生労働省告示第425号)に記載されている公知の化合物である。
【0009】
本発明の抗真菌医薬組成物中のルリコナゾールの配合割合は、該組成物の用途や製剤形態等に応じて適宜設定される。通常、抗真菌医薬組成物中のルリコナゾールの配合割合として、ルリコナゾールが総量で0.001?10重量%、好ましくは0.01?5重量%、特に好ましくは0.5?1重量%が良い。」

(1d)「【0012】
局所麻酔剤としては、リドカイン、オキシブプロカイン、ジブカイン、塩酸プロカイン、アミノ安息香酸エチル、メプリルカイン、メピバカイン、ブピバカイン、コカイン、ジエチルアミノエチル、オキシポリエトキシドデカン、塩酸ジブカイン、塩酸リドカイン等が挙げられ、抗真菌作用をより一層効果的に増強して発現させるという観点から、好ましくは、リドカイン、ジブカイン、塩酸プロカイン、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエトキシドデカン、塩酸ジブカイン、塩酸リドカインである。これらの局所麻酔剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本発明の抗真菌医薬組成物中の局所麻酔剤の配合割合は、該組成物の用途や製剤形態、配合割合、局所麻酔剤の種類等によって異なるが、通常、抗真菌医薬組成物中に局所麻酔剤が、0.01?20重量%、好ましくは0.01?10重量%、特に好ましくは0.05?6重量%が良い。」

(1e)「【0029】
本発明の組成物における2薬剤の配合例としては、ルリコナゾール、クロルフェニラミン;ルリコナゾール、ジフェンヒドラミン;ルリコナゾール、塩酸ジフェニルピラリン;ルリコナゾール、ジフェニルイミダゾール;ルリコナゾール、塩酸ジフェンヒドラミン;ルリコナゾール、サリチル酸ジフェンヒドラミン;ルリコナゾール、マレイン酸クロルフェニラミン;ルリコナゾール、リドカイン;ルリコナゾール、ジブカイン;ルリコナゾール、塩酸プロカイン;ルリコナゾール、アミノ安息香酸エチル;ルリコナゾール、オキシポリエトキシドデカン;ルリコナゾール、塩酸ジブカイン;ルリコナゾール、塩酸リドカイン;ルリコナゾール、アクリノール;ルリコナゾール、アルキルポリアミノエチルグリシン;ルリコナゾール、安息香酸ベルベリン;ルリコナゾール、イソプロピルメチルフェノール;ルリコナゾール、塩酸デカリニウム;ルリコナゾール、塩酸ベンザルコニウム;ルリコナゾール、塩酸クロルヘキシジン;ルリコナゾール、レゾルシン;ルリコナゾール、塩酸ベンゼトニウム;ルリコナゾール、ヒノキチオール;ルリコナゾール、安息香酸;ルリコナゾール、クロロブタノール;ルリコナゾール、酢酸;ルリコナゾール、フェノール;ルリコナゾール、ヨードチンキ;ルリコナゾール、酢酸デカリニウム;ルリコナゾール、グルコン酸クロルヘキシジン; ルリコナゾール、d-メントール;ルリコナゾール、l-メントール;ルリコナゾール、d,l-メントール;ルリコナゾール、d-カンフル;ルリコナゾール、d,l-カンフル;ルリコナゾール、ハッカ油;ルリコナゾール、竜脳;ルリコナゾール、クロタミトン;ルリコナゾール、アラントイン;ルリコナゾール、アルジオキサ;ルリコナゾール、イクタモール;ルリコナゾール、グリチルリチン酸;ルリコナゾール、グリチルレチン酸;ルリコナゾール、サリチル酸;ルリコナゾール、ジメチルイソプロピルアズレン;ルリコナゾール、サリチル酸メチル;ルリコナゾール、グリチルリチン酸2カリウム;ルリコナゾール、酸化亜鉛;ルリコナゾール、クロルヒドロキシアルミニウム;ルリコナゾール、シコン;ルリコナゾール、トウキ;ルリコナゾール、尿素;ルリコナゾール、フタル酸ジエチル;が例示できる。」

(1f)「【0031】
また、本発明の抗真菌医薬組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、基材、担体や添加物を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して配合することができる。それらの基材、担体又は添加物として、例えば、固形剤、半固形剤、液剤等の調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤などの各種添加剤を挙げることができる。以下に本発明の抗真菌医薬組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の抗真菌医薬組成物に使用することができる基材又は担体成分としては、水、エタノール、その他水性溶媒、カルボキシメチルスターチナトリウム、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、乳糖、ハードファット、オクチルドデカノール、グリセリン、軽質流動パラフィン、ゲル化炭化水素、ショ糖脂肪酸エステル、酒石酸、シリコン樹脂、ジエタノールアミン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、ジメチルポリシロキサン、スクワラン、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、メチルエチルケトン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリン、セタノール、セトステアリルアルコール,D-ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トウモロコシデンプン、パラフィン、パルミチン酸、パルミチン酸セチル、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、1,3ブチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル、パルチミン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、モノステアリン酸グリセリン、ワセリン等が挙げられる。
(段落【0033】及び【0034】は省略)
・・・
【0035】
本発明の抗真菌医薬組成物は、外用形態で使用可能である限り、その製剤形態については特に制限されない。本発明の抗真菌医薬組成物の剤型の具体例としては、クリーム剤、液剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、貼付剤、スプレー剤、エアゾール剤、ゼリー剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤、散剤等が挙げられる。これらの中で、好ましくはクリーム剤、液剤、軟膏剤、スプレー剤が挙げられる。特に好ましくは、クリーム剤、液剤、軟膏剤が挙げられる。」

(1g)「【0041】
実施例2
以下の表2に示す処方に従い、常法によって抗真菌医薬組成物(軟膏剤)を調製した。
【0042】
【表2】




上記記載事項(1a)、(1b)及び(1e)によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。

「ルリコナゾール及びリドカインを含む抗真菌医薬組成物。」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲2に記載された事項
(2a)「[0005] 一般に抗真菌剤が白癬(足白癬、体部白癬もしくは股部白癬)、カンジタ症(間擦疹もしくは指間びらん症)、癜風または脂漏性皮膚炎等の治療に用いられていることは知られているが、脂漏性皮膚炎に用いる製剤は、適用する部位が頭髪近辺の頭皮であり、その使用量が体部の真菌症、手足部の真菌症に比して多くなるため、メチルエチルケトンといった溶剤は、刺激発現可能性と引火性などの問題から、使用が限定される状況にある。そのため、刺激などの副作用がなく、容易に投与できる製剤が求められていた。さらに、抗真菌作用についての効果を確保するためには、製剤に薬物が十分に溶解され、一相の溶液形態であることが好ましい。一般式(1)で示される化合物においては、水への溶解性が制限されているため、該化合物の溶解性を損なわず、一相の溶液形態の製剤化をどのように行うかが課題の一つになっている。」

(3)甲3に記載された事項
(3a)「[0003] 抗真菌効果に優れる抗真菌剤としては、例えば、一般式(1)で示される化合物の一種であるルリコナゾールが、治療期間の短縮を可能にする薬剤として注目を集めている(例えば、特開平09-100279号公報、特開平02-275877号公報を参照)。かかる化合物は、爪真菌症にも有用であり、ハイドロゲル様製剤である、爪真菌症用の製剤も既に知られている。(例えば、国際公開第03/105841号パンフレットを参照)これより、抗菌特性としても一般式(1)で示される化合物は優れたものであると言える。唯一、一般式(1)で示される化合物は、溶解性の面で水性媒体に難溶であり、溶解補助剤を製剤化には用いざるを得ず、かかる溶解補助剤によって生じる生物学的薬剤利用性の変動のコントロールの点が製剤化検討の大きな課題となっている。特に、粘度調整のためにセルロース系増粘剤などを共存させた場合に於いては、かかるセルロース系増粘剤の添加が角層貯留(以下、角層における薬剤の貯留乃至は保持ともいう)を高める作用も有しており、粘度調整の為にかかる増粘剤の配合量を変動させると、製剤の薬動力学的特性も変化し、生体利用性も変化してしまう場合があった。医薬には常に生物学的同等性を保持する必要があり、この様な薬動力学的特性の変化を補完し、生物学的同等性が維持できるシステムの開発が一般式(1)で示される化合物の製剤設計には求められていたと言える。」

(4)甲4に記載された事項
(4a)「[0007] また、皮膚外用剤として使用するのに適した真菌症の1つに脂漏性皮膚炎が挙げられるが、脂漏性皮膚炎に用いる製剤は、適用する部位が頭髪近辺の頭皮であるため、その使用量が体部の真菌症、手足部の真菌症に比して多くなるため、メチルエチルケトンといった溶剤は、刺激発現可能性と引火性などの問題から、使用が限定される状況にあり、刺激などの副作用がなく、容易に投与できる製剤が求められていた。さらに、効果を確保するためには、製剤に薬物が十分に溶解され、皮膚へ薬物が移行しやすい状態である一相の溶液形態であることが好ましい。一般式(1)で示される化合物においては、水への溶解性が制限されているため、どのように溶解性を損なわず、一相の溶液形態の製剤化を行うかが課題の一つになっている。」

(5)甲5に記載された事項(英語で記載されているため、合議体による日本語訳で示す。)
(5a)「[0002] ルリコナゾールは、一般式(1)に表される構造を有する化合物(R_(1)=R_(2)=塩素原子)であり、優れた抗真菌活性を有している。ルリコナゾールは、これまで外用投与では治療不可能とされてきた爪真菌症の治療にも応用可能性が指摘されている(例えば、特許文献1を参照)。この様な爪真菌症の治療のための製剤(医薬製剤)としては、一般式(1)に表される化合物の含有量を更に高めることが望まれている。しかしながら、その結晶性の良さから、かかる化合物を高濃度に含有する製剤を作るために用いることの出来る溶剤はごく限られたものにならざるを得ない状況が存した。即ち、溶剤の種類によっては、5℃等の低温条件で結晶を析出したり、塗布時に結晶を析出するなどの不都合を生じる場合が存した。加えて、ルリコナゾールの溶液においては、SE体等の立体異性体を生じやすい状況が存した。この様な立体異性体が生じるのを防ぐ溶媒としては、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN-メチル-2-ピロリドンが知られるのみであった(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、かかる溶剤においても、元来持っている抗炎症作用などの薬効によって、配合の制限が存する場合が存し、これらに代わる新たなルリコナゾール等の製剤用の溶媒の開発が望まれていた。特に、溶液製剤においては、結晶析出などによりその薬理効果は著しく減じられるため、この様な可溶化技術は重要な製剤化の要素となっていた。加えて、Z体のような立体異性体も考慮しなければならない状況も存する。」

(6)甲6に記載された事項
(6a)「【0002】
一般式(1)に表される化合物は、例えば、ルリコナゾールに代表されるように、優れた抗真菌活性を有しており、これまで外用投与では治療不可能とされてきた爪真菌症の治療にも応用可能性が指摘されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、この様な爪真菌症の治療用製剤とする場合、一般式(1)に表される化合物の製剤中での可溶化状態の含有量を更に高めることが望まれている。特に爪白癬症の治療用製剤においては、通常の皮膚真菌症の治療に用いる製剤の2倍以上の、具体的には5質量%以上のルリコナゾールに代表される一般式(1)に表される化合物を可溶化することが望まれ、高濃度の一般式(1)に表される化合物を可溶化し製剤化する為の溶媒の開発が望まれている。しかしながら、その結晶性の良さから、かかる化合物を高濃度に含有する製剤を作るために用いることの出来る溶媒はごく限られたものにならざるを得ない状況が存した。即ち、溶媒の種類によっては、5℃等の低温条件で結晶を析出したり、塗布時に結晶を析出するなどの不都合を生じる場合が存した。」

(7)甲7に記載された事項
(7a)「【0002】
下記一般式(1)に表される構造を有する化合物は、優れた抗真菌活性を有している。ルリコナゾールは、一般式(1)に表される構造を有する化合物の一つであり、式中のR1、R2がともに塩素原子のものである。ルリコナゾール等の一般式(1)に表される化合物は、優れた抗真菌活性を有していることから、これまで外用投与では治療不可能とされてきた爪真菌症の治療にも応用可能性が指摘されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、この様な爪真菌症の治療用製剤とする場合、一般式(1)に表される化合物の含有量を更に高めることが望まれている。特に爪白癬症の治療用製剤においては、通常の皮膚真菌症の治療に用いる製剤の2倍以上の、具体的には5質量%以上の一般式(1)に表される化合物を可溶化することが望まれ、高濃度の一般式(1)に表される化合物を可溶化し製剤化する為の溶媒の開発が望まれている。
【0003】
しかしながら、その結晶性の良さから、かかる化合物を高濃度に含有する製剤を作るために用いることの出来る溶媒はごく限られたものにならざるを得ない状況が存した。即ち、溶媒の種類によっては、5℃等の低温条件で結晶を析出したり、塗布時に結晶を析出するなどの不都合を生じる場合が存した。」

(8)甲8に記載された事項
(8a)「【0002】
ルリコナゾール(一般式(1)においてR_(1)=R_(2)=塩素原子)に代表される、一般式(1)に表される構造を有する化合物は、優れた抗真菌活性を有しており、これまで外用投与では治療不可能とされてきた爪真菌症の治療にも応用可能性が指摘されている(例えば、特許文献1を参照)。この様な爪真菌症の治療のための製剤としては、一般式(1)に表される化合物の含有量を更に高めることが望まれているが、その結晶性の良さから、かかる化合物を高濃度に含有する製剤を作るために用いることの出来る溶媒はごく限られたものにならざるを得ない状況が存した。即ち、溶媒の種類によっては、5℃等の低温条件で結晶を析出したり、塗布時に結晶を析出するなどの不都合を生じる場合が存した。加えて、ルリコナゾール等の立体異性体を有する一般式(1)に表される構造を有する化合物の溶液においては、SE体等の立体異性体を生じやすい状況が存し、この様な立体異性体が生じるのを防ぐ溶媒としては、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN-メチル-2-ピロリドンが知られるのみであった(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、かかる溶媒においても、溶媒が元来持っている抗炎症作用などの薬効によって、配合が制限される場合が存し、これらに代わる新たなルリコナゾール等の製剤用の溶媒の開発が望まれていた。特に、溶液製剤においては、結晶析出などによりその薬理効果は著しく減じられるため、この様な可溶化技術は重要な製剤化の要素となっていた。加えて、Z体のような立体異性体も考慮しなければならない状況も存する。」

5 当審の判断
(1)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1-1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、
「ルリコナゾール及びリドカインを含む医薬組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本件特許発明1では、さらに水を含むとともに、その剤型が液剤又はローション剤であることが特定されているのに対し、甲1発明では、かかる特定がなされていない点
(相違点2)本件特許発明1では、ルリコナゾール及びリドカインの配合量がそれぞれ1%及び2.5%と特定されているのに対し、甲1発明では、かかる特定がなされていない点

イ 判断
上記相違点1及び2は、実質的な相違点といえるから、本件特許発明1は、甲1発明ではない。

以下、上記相違点1及び2について、当業者が容易に想到し得たといえるかどうか検討する。
・相違点1について
上記(1f)によれば、甲1発明の抗真菌性医薬組成物は、外用形態で使用されることが想定されており、また、基材又は担体成分として水を用い、液剤やローション剤とすることも記載されているから、甲1発明において、基材又は担体として水を用い、剤型を液剤又はローション剤とすることは、甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点2について
上記(1c)によれば、ルリコナゾールの配合割合としては、ルリコナゾールが総量で0.001?10重量%、好ましくは0.01?5重量%、特に好ましくは0.5?1重量%が良いとされ、上記(1d)によれば、リドカイン等の局所麻酔剤の配合割合としては、0.01?20重量%、好ましくは0.01?10重量%、特に好ましくは0.05?6重量%が良いとされている。
また、甲1には、ルリコナゾール 1g、リドカイン 2.5g、白色ワセリン 96.5g(総量 100g)のように処方された抗真菌医薬組成物(軟膏剤)も記載されている(上記(1g))。
しかしながら、甲1には、特に水を含む剤型において、ルリコナゾール及びリドカインの配合量をそれぞれ1%及び2.5%とすることについて示唆されていない。
これに対して、本件特許の発明の詳細な説明において、ルリコナゾール及びリドカインの配合量をそれぞれ1%及び2.5%とした実施例1、2及び4では、ルリコナゾールの水溶解性の向上と光安定性の向上が確認されている。そして、かかる水溶解性及び光安定性の向上は、甲1に記載された技術的事項からは、予測できない顕著なものである。

ウ 申立人の主張
申立人は、本件特許発明1が進歩性を有しないことについて、以下のように主張する。
本件特許発明1の課題は、ルリコナゾールの溶解性を向上させ、かつ光による着色を抑制する医薬液体組成物を提供することである。しかしながら、甲2?甲8の上記記載事項(2a)?(8a)からも分かるように、ルリコナゾールの難溶解性に起因して、ルリコナゾールの溶解性を向上させることは、本件特許の優先日前に周知の課題であったから、甲1発明において、溶解性の向上を確認することに困難性はない。
また、本件特許発明1におけるルリコナゾール及びリドカインの含有量は、甲1には記載されていないが、甲1に記載の数値範囲に含まれるものであり、ルリコナゾールの溶解性向上という周知の課題を解決する観点から、当業者が容易に到達し得たものである。

しかしながら、ルリコナゾールの溶解性の向上が周知の課題であるとしても、当該課題を解決するための具体的な手段については、甲1にも、甲2?8にも開示ないし示唆されておらず、また、優先日当時の技術常識として当業者に知られていたと認めるに足る事情もない。
よって、上記申立人の主張は、採用できない。
そして、上記イにおいて述べたとおり、本件特許発明1は、ルリコナゾール及びリドカインの配合量をそれぞれ1%及び2.5%としたことで、ルリコナゾールの溶解性の向上と光安定性の向上が図られており、かかる溶解性及び光安定性の向上は、甲1及び甲2?8の記載からは、当業者が予測することができない顕著なものである。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲2?8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(1-2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、
「ルリコナゾール及びリドカインを含む医薬組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)本件特許発明2では、その剤型がクリーム剤であることが特定されているのに対し、甲1発明では、かかる特定がなされていない点
(相違点4)本件特許発明2では、ルリコナゾール及びリドカインの配合量がそれぞれ1%及び1.5?2.5%と特定されているのに対し、甲1発明では、かかる特定がなされていない点

イ 判断
上記相違点3及び4は、実質的な相違点といえるから、本件特許発明2は、甲1発明ではない。

以下、上記相違点3及び4について、当業者が容易に想到し得たといえるかどうか検討する。
・相違点3について
上記(1f)によれば、甲1発明の抗真菌性医薬組成物は、外用形態で使用されることが想定されており、また、クリーム剤とすることも記載されているから、甲1発明において、剤型をクリーム剤とすることは、甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、本件特許発明1と異なり、本件特許発明2では、「水」を含むことを発明特定事項としていないが、「クリーム剤」が基剤としての「水」を含むことは周知の技術的事項であり、実際、本件特許の発明の詳細な説明の表9におけるクリーム剤の製剤例においても、精製水が80%近くの配合割合で用いられている。このため、以下の検討においては、本件特許発明2のクリーム剤は、当然に水を含んでいることを前提に、以下の相違点4の検討を行う。

・相違点4について
上記(1c)によれば、ルリコナゾールの配合割合としては、ルリコナゾールが総量で0.001?10重量%、好ましくは0.01?5重量%、特に好ましくは0.5?1重量%が良いとされ、上記(1d)によれば、リドカイン等の局所麻酔剤の配合割合としては、0.01?20重量%、好ましくは0.01?10重量%、特に好ましくは0.05?6重量%が良いとされている。
また、甲1には、ルリコナゾール 1g、リドカイン 2.5g、白色ワセリン 96.5g(総量 100g)のように処方された抗真菌医薬組成物(軟膏剤)も記載されている(上記(1g))。
しかしながら、甲1には、特に水を含む剤型において、ルリコナゾール及びリドカインの配合量をそれぞれ1%及び1.5?2.5%とすることについて示唆されていない。
これに対して、本件特許の発明の詳細な説明において、ルリコナゾール及びリドカインの配合量をそれぞれ1%及び2.5%とした実施例1、2及び4では、ルリコナゾールの溶解性の向上と光安定性の向上が確認されている。また、ルリコナゾール及びリドカインの配合量をそれぞれ1%及び1.5%とした実施例5では、ルリコナゾールの溶解性の向上が確認されている。そして、かかる溶解性及び光安定性の向上は、甲1に記載された技術的事項からは、予測できない顕著なものである。

ウ 異議申立人の主張
異議申立人は、本件特許発明2が進歩性を有しないことについて、本件特許発明1の場合と同様の主張している。
しかしながら、かかる主張が採用できないことは、上記(1-1)ウで述べたとおりである。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲2?8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)取消理由3(サポート要件)について
(2-1)サポート要件について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるかを検討して判断すべきものである。

(2-2)本件特許の発明の詳細な説明の記載
(本1)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はルリコナゾールの溶解性を向上させ、かつ光による着色を抑制する医薬液体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため種々検討した結果、ルリコナゾールとリドカインを組み合わせることにより、ルリコナゾールの溶解性が向上でき、かつ光による着色を抑制することを見出し、本発明を完成した。」

(本2)
「【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ルリコナゾールを含有する医薬液体組成物である。本発明に使用するルリコナゾールの含有量は、治療に必要な量を角質へ供給できれば特に限定されないが、本医薬液体組成物全体に対して、0.1?10質量%が好ましい。
【0010】
本発明のリドカインの含有量は特に限定されないが、ルリコナゾール1質量%に対して0.25?2.5質量%が好ましい。0.25質量%未満であるとルリコナゾールの溶解性及び光安定性が充分でないと考えられるからである。また、本発明の医薬液体組成物中に含まれるリドカインの含有量は、皮膚への刺激性の観点から上限値は2.5質量%となる。
【0011】
本発明の水の含有量は、本発明の医薬組成物全体に対して20質量%?60質量%が好ましく、30質量%?40質量%が特に好ましい。また、本発明の医薬液体組成物中に、さらにエタノールが含有されていることが望ましい。エタノールの含有量は、好ましくは本発明の医薬液体組成物全体に対して40質量%?80質量%、特に好ましくは60質量%?80質量%である。
【0012】
本発明の医薬液体組成物の剤型としては、液剤、ローション剤、エアゾール剤、水性ゲル剤、乳剤、クリーム剤などの各種外用製剤として提供される。これら製剤は常法により調製可能である。
【0013】
液剤またはローション剤は、ルリコナゾールとリドカインを、水、エタノール、多価アルコール又はこれらの混液に溶解・分散させて調製することができる。また、このような液剤と適当な液化ガス(液化石油ガス、ジメチルエーテルなど)をアルミ製耐圧容器に入れてエアゾール剤を調製することもできる。さらに、このような液剤に適当なゲル化剤を配合して水性ゲル剤を調製することも可能である。
【0014】
クリーム剤、乳剤は、油分を溶解させた油相にルリコナゾールとリドカイン及び界面活性剤を添加して、ホモミキサー用容器に入れて脱気・加温する。ホッパーから加温した水相を添加し、高速攪拌(ホモジナイズ)した後、室温まで冷却することによってクリーム剤、乳剤を調製することができる。ここで、HLBの高い界面活性剤を用いればO/Wクリーム剤、乳剤が調製できるし、HLBの低い界面活性剤を用いればW/Oクリーム剤、乳剤が調製できる。本発明の医薬液体組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて水溶性成分、油性成分、pH調整剤、抗酸化剤、界面活性剤、あるいは安定化剤などの公知の添加剤を配合することができる。
【0015】
水溶性成分としては、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エタノール、マクロゴール類などが挙げられる。油性成分としては、アジピン酸ジイソプロピル、ステアリルアルコール、セタノール、スクワラン、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが挙げられる。高分子としては、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロースなどが挙げられる。pH調整剤としてはクエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基、ジイソプロパノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。抗酸化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、α-トコフェロール、エリソルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリド、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。安定化剤としてはEDTA-2Naなどが挙げられる。これらは単独でも2種類以上組み合わせても用いることができる。」

(本3)
「【0016】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は、下記の例に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
表1、2に示す処方に従い、各成分を混合し、本発明の医薬液体組成物を調製した。なお、表1、2において、数値は質量%を意味するものとする。【0018】
【表1】


【0019】
【表2】


【0020】
<試験例1:溶解性試験>
実施例1及び比較例1の製剤を室温で撹拌し、ルリコナゾールの性状を目視により評価した。結果を表3に示す。
【0021】
【表3】


【0022】
<試験例2:光安定性試験>
実施例2及び比較例2の製剤を室温で撹拌して溶解後、3000luxの光を7日間照射し、外観性状及び波長400nmにて吸光度を測定した。結果を表4に示す。
【0023】 【表4】


【0024】
以下表5に示す処方に従い、各成分を混合し、本発明の医薬液体組成物を調製した。表5において、数値は質量%を意味するものとする。
【0025】
【表5】


【0026】
<試験例3:溶解性試験>
実施例3?4及び比較例3?6の製剤を25℃で24時間以上撹拌した後、ろ過液中のルリコナゾールをHPLC法で定量し飽和溶解度を求めた。また、下記の式に従い溶解度向上倍率を算出した。
溶解度向上倍率(%)=各有効成分添加時のルリコナゾール飽和溶解度/ルリコナゾール単独の飽和溶解度
結果を表6に示した。
【0027】
【表6】


【0028】
表6に示したように、ルリコン液1%インタビューフォームに溶解剤として記載されている中鎖脂肪酸トリグリセリドを配合した場合、組成物全体に対して1質量%の配合で溶解度を向上することが確認された(比較例6)。一方、本発明の組成物は、中鎖脂肪酸トリグリセリドよりも十分少ない量で、ルリコナゾールの溶解度を向上することが確認された(実施例3)
本発明の組成物は、ルリコナゾールの溶解度を向上することが分かった(実施例3?4)。
【0029】
以下表7に示す処方に従い、各成分を混合し、本発明の医薬液体組成物を調製した。表7において、数値は質量%を意味するものとする。
【0030】
【表7】


【0031】
<試験例4:溶解性試験>
実施例5及び比較例7の製剤を25℃で24時間以上撹拌した後、ろ過液中のルリコナゾールをHPLC法で定量し飽和溶解度を求めた。また、下記の式に従い溶解度向上倍率を算出した。
溶解度向上倍率(%)=各有効成分添加時のルリコナゾール飽和溶解度/ルリコナゾール単独の飽和溶解度
結果を表8に示した。
【0032】
【表8】


【0033】
表8に示したように、本発明の組成物はクリーム剤の基剤として汎用されている中鎖脂肪酸トリグリセリド中でルリコナゾールの溶解度を向上することが確認された(実施例5)。本結果より、本発明の組成物はクリーム剤においてルリコナゾールの溶解度を向上すると考えられる。
【0034】
<製剤例>クリーム剤
以下表9に示すクリーム剤を、常法に従い、調製した。なお、表9において、数値はすべて質量%を意味するものとする。
【0035】
【表9】



(2-3)判断
ア 上記記載事項(本1)によれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、ルリコナゾールの溶解性を向上させ、かつ光による着色を抑制する医薬液体組成物を提供することである。

イ 上記記載事項(本2)によれば、本発明に使用するルリコナゾールの含有量は、本医薬液体組成物全体に対して、0.1?10質量%が好ましいこと、リドカインの含有量は、ルリコナゾール1質量%に対して0.25?2.5質量%が好ましく、0.25質量%未満であるとルリコナゾールの溶解性及び光安定性が充分でないと考えられること、リドカインの含有量の上限値は、皮膚への刺激性の観点から2.5質量%であることが記載されている。

さらに、上記記載事項(本3)における実施例・比較例の結果からは、以下のことも示されているといえる。
ウ 基材又は担体として、水及びエタノールを用いた系におけるルリコナゾ ールの溶解性について
ルリコナゾール1%を含む系において、リドカインを0.25%又は2.5%添加したものは、リドカインを添加しないものに比して、溶解度の向上がみられたこと(実施例1、比較例1、実施例3、4、比較例3)

エ 基材又は担体として、中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いた系におけるル リコナゾールの溶解性について
ルリコナゾール1%を含む系において、リドカインを1.5%添加したものは、リドカインを添加しないものに比して、溶解度の向上がみられたこと(実施例5、比較例7)

オ ルリコナゾールの光安定性について
基材又は担体としてエタノールを用いルリコナゾールを1%含む系において、リドカインを2.5%添加したものは、リドカインを添加しないものに比して、光安定性の向上がみられたこと(実施例2、比較例2)

(2-3-1)本件特許発明1について
水を含む、液剤又はローション剤において、ルリコナゾール1%及びリドカイン2.5%を含むものが上記アの課題が解決することは、上記イ、ウ及びオを踏まえると明らかである。
よって、本件特許発明1については、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(2-3-2)本件特許発明2について
本件特許発明2では、基剤又は担体について発明特定事項としていないが、「クリーム剤」が「水」及び中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油性成分を含むものであることは、周知の技術的事項であるし、実際、上記記載事項(本2)(特に【0015】、【0016】)や(本3)(特に表9)からもそのことが窺える。
そうしみると、上記イに加え、
・基材又は担体として水及びエタノールを用い、ルリコナゾール1%を含む系において、リドカインを0.25%又は2.5%添加した場合に、リドカインを添加しないものに比して、溶解度の向上がみられたこと(上記ウ)、
・基材又は担体として中鎖脂肪酸トリグリセリドを用い、ルリコナゾール1%を含む系において、リドカインを1.5%添加した場合に、リドカインを添加しないものに比して、溶解度の向上がみられたこと(上記エ)
から、ルリコナゾール1%を含むクリーム剤において、リドカインを1.5?2.5%含有するものについて、ルリコナゾールの溶解性の向上が図られることは、当業者が認識できるものである。
また、ルリコナゾール1%を含むクリーム剤において、リドカインを1.5?2.5%含有するものについて、光による着色の抑制が期待できることは、上記オより、明らかである。
よって、本件特許発明2については、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(2-4)申立人の主張について
申立人は、本件特許発明1及び2がサポート要件を満たさないことについて、以下のように主張する。
(2-4-1)本件特許発明1について
a)実施例においてルリコナゾールの溶解性の向上が確認されているのは、水以外にエタノールを50.0質量%(実施例3,4)又は67.55質量%(実施例1)を含む場合であり、エタノールの含有量が50質量%未満の場合の医薬液体組成物について、ルリコナゾールの溶解性を向上できることは示されていない。
b)光による着色の抑制が確認されているのは、本件特許発明1とは異なり、溶媒としてエタノールを用い、水を含有しない医薬液体組成物だけである。

しかしながら、上記主張a)及びb)については、以下のとおり採用できない。
・上記主張a)について
本件特許の発明の詳細な説明には、ルリコナゾールの水に対する溶解性の向上とは、どの程度の向上を意味するのかは明確には記載されていないが、上記記載事項(本3)における実施例・比較例の対比から、ルリコナゾールを1%含み、所定の基材・担体を含む系において、何も添加しない場合に比べて溶解度が向上したかどうか、すなわち、溶解度の向上は、絶対的な値の達成を意味するのではなく、相対的な向上を意図していると考えられる。
そして、異議申立人も認めているとおり、水以外にエタノールを50.0質量%(実施例3,4)又は67.55質量%(実施例1)を含む液体医薬組成物において、リドカインを所定量添加することで、溶解性の向上が確認されており、エタノールの含有量が50質量%未満の液体医薬組成物であっても、何も添加しない場合に比べてリドカインを所定量添加することで溶解度の向上が図られることは、当業者であれば当然認識しうるものである。
・上記主張b)について
ルリコナゾールの光による着色が、エタノールのみの系とそれ以外の系(例えば、エタノールと水を含む系)で大きく異なるとの技術常識があるとはいえず、エタノールの系で確認された、リドカインの添加による光による着色抑制の効果は、エタノールと水を含む系においても、当業者であれば当然が認識しうるものである。

(2-4-2)本件特許発明2について
c)本件特許の発明の詳細な説明には、「表8に示したように、本発明の組成物はクリーム剤の基剤として汎用されている中鎖脂肪酸トリグリセリド中でルリコナゾールの溶解度を向上することが確認された(実施例5)。本結果より、本発明の組成物はクリーム剤においてルリコナゾールの溶解度を向上すると考えられる。」(【0035】)と記載されるが、<製剤例>クリーム剤(【表9】)に記載のクリーム剤のように、精製水77?78.5質量%程度含有するクリーム剤が、ルリコナゾールの溶解性を向上できることは示されていない。
d)クリーム剤について、「光による着色を抑制する」という課題を解決できることは示されていない。

しかしながら、上記主張c)及びd)については、以下のとおり採用できない。
・上記主張c)について
上記(2-3-2)において述べたとおり、溶解性向上に資するリドカインの添加については、上記イの一般的説示に加え、
・基材又は担体として水及びエタノールを用いた場合
・基材又は担体として中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いた場合
のいずれの場合も、リドカインを所定量添加することで、リドカインを添加しないものに比して、溶解性の向上がみられたことが確認されている。
そうしてみると、水及び中鎖脂肪酸トリグリセリドのような油性成分を含むクリーム剤においても、リドカインを所定量添加することで、リドカインを添加しないものに比して、ルリコナゾールの溶解性の向上が図られることは、当業者であれば認識できることである。
・上記主張d)について
ルリコナゾールの光による着色が、エタノールのみの系とそれ以外の系で大きく異なるとの技術常識があるとはいえず、エタノールの系で確認された、リドカインの添加による光による着色抑制の効果は、水や油性成分を含むクリーム剤においても、当業者であれば当然が認識しうるものである。

(2-5)小括
以上のとおり、本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-06 
出願番号 特願2014-61253(P2014-61253)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深谷 良範岩下 直人  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 滝口 尚良
渕野 留香
登録日 2019-04-05 
登録番号 特許第6503627号(P6503627)
権利者 大正製薬株式会社
発明の名称 医薬液体組成物  
代理人 特許業務法人 津国  
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