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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施  E04F
審判 全部無効 2項進歩性  E04F
管理番号 1358896
審判番号 無効2018-800026  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-02-26 
確定日 2019-11-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第6200112号発明「接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6200112号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6200112号の請求項12ないし16、20、26ないし28に係る発明についての特許を無効とする。 特許第6200112号の請求項1ないし11、17ないし19、21ないし25に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その28分の19を請求人の負担とし、28分の9を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第6200112号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1?28に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成29年 3月21日 本件出願(特願2017-54399号)
平成29年 9月 1日 設定登録(特許第6200112号)
平成30年 2月26日 本件無効審判請求
平成30年 4月 5日 検証申出書、検証物指示説明書提出、証人尋問申出書、証人尋問事項書
平成30年 6月12日 無効審判事件答弁書提出
平成30年 7月19日 審理事項通知(起案日)
平成30年 8月10日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年 8月29日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年 9月14日 第1回口頭審理、証拠調べ
平成30年10月 5日 請求人より上申書提出
平成30年10月31日 審理事項通知(起案日)
平成30年11月26日 請求人より口頭審理陳述要領書1、口頭審理陳述要領書2提出
平成30年12月 6日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年12月21日 第2回口頭審理
平成30年12月21日 請求人より上申書提出
平成31年 1月16日 被請求人より上申書提出
平成31年 4月26日 審決予告(起案日)
令和 1年 7月 3日 被請求人より訂正請求書提出
令和 1年 8月26日 被請求人より審判事件弁駁書提出
令和 1年 9月26日 補正許否の決定(起案日)
令和 1年10月 2日 審理終結通知(起案日)

※平成30年4月5日提出の証人尋問申出書は平成30年10月5日上申書において、同日提出の証人尋問事項書は第2回口頭審理において、それぞれ取り下げられた。


第2.訂正請求について
1.訂正の内容
令和1年 7月 3日になされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「環状体とを備えるコネクター型接着補助器具。」と記載されているのを、
「環状体とを備えており、当該環状体の前記環状壁部において、
前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、
前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されているコネクター型接着補助器具。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?11も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に
「前記環状壁部において、
前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、
前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されており、」と記載されているのを、
「前記環状壁部において、
前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に縦断面山形状に突出するように形成されており、」
に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8?11も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「前記突起状に突出する突出端部」と記載されているのを、
「前記縦断面山形状に突出する突出端部」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10?11も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0018】に「環状体(120)とを備える。」と記載されているのを、
「環状体(120)とを備えており、
当該環状体の環状壁部にて、
環状非可変壁部は、円柱状頭部に圧入されて環状フランジ部に着座する環状非可変着座部(121)と、当該環状非可変着座部から環状フランジ部とは反対方向へ延出するように円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部(122)と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部(123)とを有してなり、
環状可変部は、環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されている。」に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0025】に「コネクターとは別部品として、環状非可変壁部及び環状可変部でもって一体に構成されている。」と記載されているのを、
「コネクターとは別部品として、上記構成を有する環状非可変壁部及び上記構成を有する環状可変部でもって一体に構成されている。」に訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0042】に
「環状壁部にて、
環状非可変壁部は、円柱状頭部に圧入されて環状フランジ部に着座する環状非可変着座部(121)と、当該環状非可変着座部から環状フランジ部とは反対方向へ延出するように円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部(122)と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部(123)とを有してなり、
環状可変部は、環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されており、」と記載されているのを、
「環状壁部にて、
環状可変部は、環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から環状フランジ部とは反対方向に縦断面山形状に突出するように形成されており、」に訂正する。

(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0046】に「上記突起状に突出する突出端部」と記載されているのを、
「上記縦断面山形状に突出する突出端部」に訂正する。


2.一群の請求項
訂正事項1に関し、本件訂正前の請求項2?11は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用し、訂正事項2に関し、本件訂正前の請求項8?11は、本件訂正前の請求項7を直接又は間接的に引用し、訂正事項3に関し、本件訂正前の請求項10?11は、本件訂正前の請求項9を直接又は間接的に引用しているところ、本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?11は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1?3による訂正は当該一群の請求項1?11に対し請求されたものである。


3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載の「環状体の環状壁部」における「環状非可変壁部」について、「前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してな」ることを限定し、また、同じく「環状体の環状壁部」における「環状可変部」について、「前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されている」ことを限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、上記の「前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してな」る事項と、「前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されている」事項については、訂正前の請求項7の記載に基づくものであり、また、願書に添付した明細書の段落【0143】の「環状体120は、図2及び図4?図7のいずれかにて示すごとく、コネクター110の円柱状頭部110bに同軸的に圧入により嵌装されて環状フランジ部110c上に着座する。」との記載、段落【0144】の「環状壁部120aは、環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123を備えており、これら環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123は、変形不能に形成されているから、環状非可変着座部、環状非可変厚肉部、環状非可変薄肉部ともいう。ここで、環状着座部121は、環状フランジ部110cの環状上面に同軸的に着座するもので、・・・」との記載、段落【0145】の「環状厚肉部122は、環状着座部121の内周上端部から上方へ同軸的に延出するように形成されており、・・・」との記載、段落【0149】の「環状薄肉部123は、環状厚肉部122の外周上端部から同軸的に上方へ延出するように形成されており、・・・」との記載、段落【0152】の「環状突起部126は、環状薄肉部123の延出端面の幅方向中間部位から所定の高さだけ上方へ延出するように、縦断面山形状にて、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、当該環状薄肉部123と一体に形成されている。」との記載及び段落【0162】の「その結果、変形した環状突起部126は、一方の型枠の対向面との間に隙間を形成することなく当該対向面に一様に密着し得る。これが、上述のように環状突起部126をタコ足環状体120の環状壁部120aに備えるようにした根拠である。なお、本実施形態では、環状突起部126は、環状可変部としての役割を果たす。」との記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項7に記載された「前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、」とされた事項を、上記訂正事項1による訂正により、請求項7が直接的又は間接的に引用する請求項1に追加したことにともなって請求項7から削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げられた事項である明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、請求項7に記載された「環状可変部」の形状を、訂正前の「突起状」から、「縦断面山形状」に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、「環状可変部」の形状を、「縦断面山形状」に限定することについては、願書に添付した明細書の 段落【0153】の「当該環状突起部126は、その基部126aにて、図17にて示すごとく、環状薄肉部123の延出端面の幅方向中間部位に一体に形成されており、当該環状突起部126は、基部126aから縦断面山形状に上方へ延出している。」との記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項9に記載された「環状可変部」の形状を、訂正前の「突起状」から、「縦断面山形状」に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、「環状可変部」の形状を、「縦断面山形状」に限定することについては、訂正事項2について上記したように、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の段落【0018】の記載を、特許請求の範囲の請求項1の記載に整合させたものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げられた事項である明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正前の段落【0025】に記載された「環状非可変壁部及び環状可変部でもって一体に構成されている。」における「環状非可変壁部」及び「環状可変部」が、「上記構成を有する環状非可変壁部」及び「上記構成を有する環状可変部」であることを明確にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、「環状非可変壁部」及び「環状可変部」が、「上記構成を有する環状非可変壁部」及び「上記構成を有する環状可変部」であることを明確にすることについては、訂正事項2について上記したように、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、訂正前の段落【0042】の記載を、特許請求の範囲の請求項7の記載に整合させたものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げられた事項である明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、訂正前の段落【0046】の記載を、特許請求の範囲の請求項9の記載に整合させたものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げられた事項である明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。


4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項並びに第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正を認める。


第3 本件発明について
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項1?28に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部と、当該円錐台状胴部の前記大径側端部から前記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部と、前記円錐台状胴部及び前記円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部と、前記円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部とを、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなるコネクターと、
前記複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように前記円柱状頭部に同軸的に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変壁部と、当該環状非可変壁部の前記環状フランジ部とは反対側の環状端部から前記環状フランジ部から離れる方向に突出する環状可変部とを、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる環状体とを備えており、
当該環状体の前記環状壁部において、
前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、
前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されているコネクター型接着補助器具。
【請求項2】
前記コネクターは、前記環状フランジ部に沿い前記円錐台状胴部の外周面の少なくとも一部から外方へ突出するように形成してなる回り止め部を具備することを特徴とする請求項1に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項3】
前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料は、ナイロン6に耐光性黒色顔料を均一に含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項4】
前記複数の面側係合片部は、複数のロッド状湾曲片部からなり、当該複数のロッド状湾曲片部は、それぞれ、前記円柱状頭部の前記延出端面から外方へ凸な湾曲状に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項5】
前記円柱状頭部にはその前記延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように複数条の凹部が互いに並行に形成されており、
前記複数のロッド状湾曲片部は、その両端部にて、前記複数条の凹部の各々ごとに当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて前記円柱状頭部の前記延出端面に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項6】
前記環状体は、前記環状壁部の前記環状非可変壁部からその内方に向けて突出するように前記環状壁部と一体に前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料で形成してなる複数の周側係合片部を備えており、
当該複数の周側係合片部は、前記環状非可変壁部の内周方向に間隔をおいて位置するように形成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項7】
前記環状壁部において、
前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に縦断面山形状に突出するように形成されており、
前記複数の周側係合片部は、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部からその周方向に亘り間隔をおくように当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出する複数の周側長手状係合片部であることを特徴とする請求項6に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項8】
前記複数の周側長手状係合片部は、それぞれ、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部から当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出するロッド部と、当該ロッド部の延出端部に形成してなる球部とでもって構成されていることを特徴とする請求項7に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項9】
前記環状可変部は、前記縦断面山形状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されていることを特徴とする請求項7に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項10】
円筒部と、当該円筒部の軸方向一側端部と一体となるように同軸的に形成してなる環状鍔部とを備えるセパジョイントを具備しており、
前記コネクターは、前記円錐台状胴部の底部に同軸的に形成してなる大径孔部と、前記円錐台状胴部の前記底部を除く部位及び前記円柱状頭部に亘り前記大径孔部よりも小さな内径にて同軸的に形成してなる小径孔部とでもって構成される軸孔部を設けてなり、
前記セパジョイントは、その円筒部にて、前記コネクターの前記軸孔部のうちの前記小径軸孔部に前記大径孔部を介し同軸的に圧入されるとともに、前記環状鍔部にて、前記軸孔部の前記大径孔部に嵌装されており、
前記複数の面側係合片部は、前記円柱状頭部の前記延出端面にその前記小径孔部の外周側にて形成されていることを特徴とする請求項1?9のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項11】
スペーサボルトが前記セパジョイントに同軸的に形成してなる雌ねじ孔部に対し前記環状鍔部側から当該雌ねじ孔部の軸方向中間部位まで螺合され、かつ前記環状体が木材或いは合成樹脂材料からなる型枠に当接された状態にて、当該型枠に形成してなる貫通状孔部を通して前記スペーサボルトに対向するように前記セパジョイントの前記雌ねじ孔部に螺合される型締めボルトを、補助部品として有することを特徴とする請求項10に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項12】
コンクリート体の表面に形成されるモルタル壁の前記コンクリート体との接着を補助するための接着補助システムにおいて、
大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部と、当該円錐台状胴部の前記大径側端部から前記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部と、前記円錐台状胴部及び前記円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部と、前記円錐台状胴部及び前記環状フランジ部の少なくとも一方の一部から外方へ突出する回り止め部と、前記円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部とを、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に成形してなるコネクターと、前記複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように前記円柱状頭部に同軸的に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変壁部と、当該環状非可変壁部の前記環状フランジ部とは反対側の環状端部から前記環状フランジ部から離れる方向に突出する環状可変部とを、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる環状体とを備えるコネクター型接着補助器具と、
中央孔部を形成してなる基板と、当該基板にその両面の一方の面から突出するように前記中央孔部の周囲に分散して形成される複数の面側係合片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成される複数のディスク型接着補助器具とを備えており、
前記複数のコネクター型接着補助器具は、それぞれ、前記円錐台状胴部にて、互いに対向して設置してなる木材或いは合成樹脂材料からなる両型枠の一方の型枠から分散状に他方の型枠に向けて延出する複数のスペーサボルトに、前記環状体の前記環状可変部を前記他方の型枠に対向させるように、連結され、かつ、前記環状壁部の前記環状非可変壁部に向けて前記環状可変部を変形させるように前記他方の型枠を押圧してなり、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記コンクリート体が前記両型枠の間に前記複数のスペーサボルト及び前記複数のコネクター型接着補助器具を介し打ち込まれる生コンクリートの硬化により形成された後、前記両型枠を除去した上で、前記複数のコネクター型接着補助器具とは異なる位置にて、前記コンクリート体の表面に分散状に配設され、かつ、前記基板にて、前記中央孔部を通してネジを前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられており、
前記モルタル壁が、前記各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具を介し前記コンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させることで、形成されていることを特徴とする接着補助システム。
【請求項13】
前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料は、6ナイロンに耐光性黒色顔料を均一に含有してなることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項14】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、前記複数の面側係合片部は、複数のロッド状湾曲片部からなり、当該複数のロッド状湾曲片部は、それぞれ、前記円柱状頭部の前記延出端面から外方へ凸な湾曲状に突出するように形成されていることを特徴とする請求項12または13に記載の接着補助システム。
【請求項15】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、
前記円柱状頭部にはその前記延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように複数条の凹部が互いに並行に形成されており、
前記複数のロッド状湾曲片部は、その両端部にて、前記複数条の凹部の各々ごとに当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて前記円柱状頭部の前記延出端面に形成されていることを特徴とする請求項14に記載の接着補助システム。
【請求項16】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、
前記環状体は、前記環状壁部の前記環状非可変壁部からその内方に向けて突出するように前記環状壁部と一体に前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって形成してなる複数の周側係合片部を備えており、
当該複数の周側係合片部は、前記環状非可変壁部の内周方向に間隔をおいて位置するように形成されていることを特徴とする請求項12?15のいずれか1つに記載の接着補助システム。
【請求項17】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、
前記環状壁部の前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、
前記環状壁部の前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されており、
前記複数の周側係合片部は、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部からその周方向に亘り間隔をおくように当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出する複数の周側長手状係合片部であることを特徴とする請求項16に記載の接着補助システム。
【請求項18】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、前記複数の周側長手状係合片部は、それぞれ、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部から当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出するロッド部と、当該ロッド部の延出端部に形成してなる球部とでもって、構成されていることを特徴とする請求項17に記載の接着補助システム。
【請求項19】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、前記環状可変部は、前記突起状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されていることを特徴とする請求項17に記載の接着補助システム。
【請求項20】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、
前記基板はその中央孔部の外周側にて複数条の開口部を分散状に形成してなり、
前記複数の面側係合片部は、前記複数条の開口部の各々ごとに、当該開口部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項21】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、
前記基板に前記一方の面から前記複数の面側係合片部の内側にて前記中央孔部の周りに間隔をおいて形成される複数のフックを設けてなり、
当該複数のフックは、それぞれ、前記基板の前記一方の面から立ち上がるように延出する立ち上がり部と、当該立ち上がり部から前記基板の中心側へ折れ曲るように延出する折れ曲がり部とでもって、構成されて、環状板を、前記各立ち上がり部により包囲した状態にて前記各折れ曲がり部により前記基板の前記一方の面との間に挟持してなることを特徴とする請求項12または13に記載の接着補助システム。
【請求項22】
環状板部と、当該環状板部の内周縁部から当該内周縁部に沿い間隔をおくように位置して前記環状板部の表面側へ延出する複数の内側糸状片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の上記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられていることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項23】
環状板部と、当該環状板部の外周縁部から当該外周縁部に沿い間隔をおいて前記環状板部の表面側へ延出する複数の外側糸状片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の前記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられていることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項24】
前記複数の環状部材は、それぞれ、前記環状板部の外周縁部から当該外周縁部に沿い間隔をおいて前記環状板部の表面側へ延出する複数の外側糸状片部をも一体的に有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、形成されていることを特徴とする請求項22に記載の接着補助システム。
【請求項25】
前記複数の環状部材は、それぞれ、前記環状板部の内周縁部から同軸的にその裏面側へ延出するように前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料により一体的に形成してなる環状ボス部を備えて、当該環状ボス部を前記基板の対応中央孔部内に同軸的に嵌装するようにして、前記環状板部にて、前記基板の対応中央孔部にその表面側から載置されており、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、ネジをその頭部にて前記複数の環状部材のうちの対応環状部材の前記環状ボス部に着座させるとともに、当該ネジをその首下部にて前記対応環状部材の前記環状ボス部を通してコンクリート体にその表面から締着することで、当該コンクリート体に組み付けられていることを特徴とする請求項23または24に記載の接着補助システム。
【請求項26】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、前記基板は、前記中央孔部の外周側にて複数の長手状開口部を分散して形成してなり、
前記複数の面側係合片部は、それぞれ、前記基板の前記一方の面にて、前記複数の長手状開口部のうちの各対応長手状開口部をその幅方向に跨ぐように湾曲状に形成されるとともに当該各対応長手状開口部の長手方向には間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項12?25のいずれか1つに記載の接着補助システム。
【請求項27】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、前記基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出するように形成してなる複数の周側係合片部を具備することを特徴とする請求項12?25のいずれか1つに記載の接着補助システム。
【請求項28】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、前記複数の周側係合片部は、それぞれ、前記基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部と、当該基部の延出端部から折れ曲がるように延出する折れ曲がり部とにより形成されていることを特徴とする請求項27に記載の接着補助システム。」


第4 請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1?28に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、概ね以下のとおり主張している(審判請求書(以下「請求書」という。)、平成30年8月10日付け口頭審理陳述要領書(以下「請求人陳述書」という。)、平成30年11月26日付け口頭審理陳述要領書1、2(以下、それぞれ「請求人陳述書1」、「請求人陳述書2」という。)、平成30年12月21日付け上申書(以下「請求人上申書」という。)、令和1年8月26日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という)を参照。)。また、証拠方法として甲第1号証ないし甲第60号証を提出している。なお、弁駁書とともに提出された甲第61号証ないし甲第64号証については、令和1年9月26日付けの補正許否の決定に示したように、次の理由により、証拠として許可しないこととする。

1)上記審判事件弁駁書の「6.弁駁の趣旨」の「(2)-2. 相違点4に係る本件発明の構成が周知技術であり、かつ動機付けも存在すること」の欄における、「(一).特開2000-240284号公報(甲25)」と、新たに追加された「(二).特開2014-152460号公報(甲61)」により立証しようとする事実に基づく請求の理由の補正は、請求の理由に当初から記載された「周知技術」を追加的に主張立証したものとはいえず、実質的には、「直接証拠」を追加して当該追加した証拠に基づく別の権利を無効にする根拠となる事実に変更したものであるから、請求の理由の要旨変更にあたる。そして、前記要旨変更については、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかとはいえないし、また、訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたとも、審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があるともいえないから、これを許可しない。

2)上記審判事件弁駁書において、「6.弁駁の趣旨」の「(4).請求項21ないし請求項25が無効理由を有することについて」(第17ページ下から5行?第31ページ5行)で新たに主張された、特開平8-135188号公報(甲62)、特開2012-241860号公報(甲63)及び特許第3882325号公報(甲64)を引用例とする無効理由は、「直接証拠」を追加して当該追加した証拠に基づく別の権利を無効にする根拠となる事実に変更したものであるから、請求の理由の要旨変更にあたる。そして、前記要旨変更については、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかとはいえないし、また、訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたとも、審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があるともいえないから、これを許可しない。

1 無効理由の概要
〔無効理由1〕
本件特許の請求項1?11に係る発明は、検甲第1号証、検甲第3号証、甲第1号証?甲第10号証、甲第16号証?甲第19号証、甲第34号証?甲第60号証において立証される、本件特許の出願前に公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由2〕
本件特許の請求項1?28に係る発明は、検甲第1号証?検甲第3号証、甲第1号証?甲第10号証、甲第16号証?甲第19号証、甲第34号証?甲第60号証において立証される本件特許の出願前に公然実施をされた発明、及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(第2回口頭審理調書)

<証拠方法>
提出された証拠は、以下のとおりである。

検甲第1号証の1 スーパーループボンドL37製品サンプル
検甲第1号証の2 スーパーループボンドL40製品サンプル
検甲第1号証の3 スーパーループボンドL48製品サンプル
検甲第1号証の4 スーパーループボンド構成部品サンプル
検甲第2号証 ウォールキャッチャーディスク製品サンプル
検甲第3号証 ウォールキャッチャー製品サンプル

甲第1号証 建設技術審査証明(建築技術)報告書 タイル張りモルタル層の剥落防止技術「ループボンド・タフバインダー工法」、一般財団法人日本建築センター、第3版、2013年7月14日
甲第2号証 ループボンド・タフバインダー工法実績2001年?2016年、2017年5月30日
甲第3号証 発注依頼書、東レ・アムテックス(株)、2016年5月13日
甲第4号証 製造委託基本契約書、東レ・アムテックス株式会社/近江化工株式会社、2016年6月1日
甲第5号証の1 「スーパーループボンド(本体)」製作図面、近江化工株式会社、2016年7月27日
甲第5号証の2 「スーパーループボンド(ガードリング)」製作図面、近江化工株式会社、2016年7月27日
甲第5号証の3 「スキンキャッチャー」製作図面、近江化工株式会社、2016年7月27日
甲第5号証の4 「スーパーループボンド 完成品」製作図面、近江化工株式会社、2016年7月27日
甲第6号証の1 部品検査法承認願、近江化工株式会社、2016年8月8日
甲第6号証の2 検査手順書、近江化工株式会社、2016年8月10日 甲第6号証の3 検査手順書、近江化工株式会社、2016年8月10日
甲第6号証の4 検査手順書、近江化工株式会社、2016年8月10日
甲第7号証の1 注文書、株式会社ヤブ原大阪支店、2016年9月21日
甲第7号証の2 出荷依頼書(兼注文書)、東レ・アムテックス株式会社
甲第7号証の3 佐川急便送り状、奥田数株式会社、2016年9月21日
甲第7号証の4 注文書、株式会社ヤブ原大阪支店、2016年9月30日
甲第7号証の5 出荷依頼書(兼注文書)、東レ・アムテックス株式会社
甲第7号証の6 佐川急便送り状、奥田数株式会社、2016年9月30日
甲第7号証の7 倉庫出荷指図書、東レ・アムテックス株式会社、2016年9月30日
甲第7号証の8 到着原票、2016年9月30日
甲第8号証の1 納入品材質証明書、近江化工株式会社、2017年2月6日
甲第8号証の2 安全データシート、東レ株式会社、2016年11月29日
甲第9号証 ウォールキャッチャー設計・施工指針、(株)本郷コーポレーション、2015年11月
甲第10号証 ウォールキャッチャー工法実績表、作成者不明、2012年3月31日
甲第11号証 「タイル剥落防止に32ミリディスク」、建設通信新聞、日刊建設通信新聞社、2016年10月7日
甲第12号証 型枠脱型後対応型外壁タイル・モルタル剥落防止工法ウォールキャッチャーディスク工法、(株)本郷コーポレーション、作成年月日不明
甲第13号証 外壁タイル・モルタル層剥落防止システム ウォールキャッチャーディスク、[online]、2016年10月19日、(株)本郷コーポレーション、<URL:http://hongoh-corp.co.jp/products/wcd/>
甲第14号証 本郷コーポレーションのホームページ、[online]、2016年10月19日、(株)本郷コーポレーション、<URL:http://hongoh-corp.co.jp/>
甲第15号証 本郷コーポレーションのfacebook、(株)本郷コーポレーション、2016年4月5日
甲第16号証 山口勝之ほか2名、「アスファルト材料の紫外線劣化とカーボンブラック添加効果」、土木学会舗装工学論文集、第8巻、2003年12月、p.251-260
甲第17号証 浜平英三、「ゴム・プラスチック用顔料」、色材、一般社団法人色材協会、1983年、56〔2〕、p.109-124
甲第18号証 服部宏、「ポリアミドの安定剤」、高分子、公益社団法人高分子学会、Vol.12、1963年、p.614-618
甲第19号証 旭カーボン株式会社ホームページ、[online]、2018年1月15日、旭カーボン株式会社、<URL:http://www.asahicarbon.co.jp/company/profile.html>
甲第20号証 特開2002-206516号公報
甲第21号証 特開平10-14635号公報
甲第22号証 特開平8-336454号公報
甲第23号証 特開2008-102726号公報
甲第24号証 登録実用新案第3160471号公報
甲第25号証 特開2000-240284号公報
甲第26号証 特開2000-160836号公報
甲第27号証 特開2014-84656号公報
甲第28号証 特開2000-45480号公報
甲第29号証 実公平4-205号公報
甲第30号証 登録実用新案第3163534号公報
甲第31号証 登録実用新案第3161096号公報
甲第32号証 特開2000-145157号公報
甲第33号証 特開2010-275769号公報
甲第34号証 売買基本契約書、東レ株式会社/株式会社祥起、平成18年6月23日
甲第35号証 スーパーループボンド(R)(審決注;原文は丸の中にR)品質管理規定、東レ株式会社、平成17年9月1日
甲第36号証 SLB最終検査結果記録、株式会社祥起、2011年8月22日
甲第37号証 注文書兼出荷依頼書、東和織物株式会社、平成23年8月24日
甲第38号証 佐川急便送り状、東和織物株式会社、平成23年8月24日
甲第39号証 株式会社本郷コーポレーション藤澤祐介名刺
甲第40号証 検甲第1号証の1の梱包用段ボールの外観写真
甲第41号証 検甲第1号証の2の梱包用段ボールの外観写真
甲第42号証 検甲第1号証の3の梱包用段ボールの外観写真
甲第43号証 甲第5号証の2に示す製造図面の高精細な図
甲第44号証 甲第43号証の一部を拡大し、詳細な形状及び寸法を記載した図
甲第45号証 ワコーレ伊丹安堂寺レジデンスの不動産アーカイブ、[online]、2018年10月30日印刷、HOME’S、<URL:http://www.homes.co.jp/archive/c-19454/>
甲第46号証の1 建築現場(型枠)写真、田中住建(株)
甲第46号証の2 甲第46号証の1の写真データのプロパティのスクリーンショット
甲第47号証の1 建築現場(コンクリート壁面)の写真、田中住建(株)
甲第47号証の2 甲第47号証の1の写真データのプロパティのスクリーンショット
甲第48号証 建物受領書、大和ハウス工業株式会社/株式会社大京/株式会社コスモスイニシア、平成29年12月1日
甲第49号証 注文書、株式会社大林組、2015年12月18日印刷
甲第50号証 (仮称)豊崎プロジェクト新築工事工程表、株式会社大林組、平成28年9月23日
甲第51号証 注文請書、東レ・アムテックス株式会社、平成27年12月11日
甲第52号証 電子メール、田中まい子、2017年3月9日
甲第53号証 注文書、田中まい子、2017年3月9日
甲第54号証 注文書の返信ファックス、東レ・アムテックス株式会社、2017年3月9日
甲第55号証 出荷依頼書(兼注文書)、東レ・アムテックス株式会社、2017年3月9日
甲第56号証 倉庫出荷指図書、奥田数株式会社、2017年3月9日
甲第57号証 送り状、ヤマト運輸株式会社、2017年3月9日
甲第58号証 納品書、株式会社内外テクノス、2017年3月11日(納品日)
甲第59号証 電子メール、古谷睦幸、2018年9月28日
甲第60号証 (仮称)豊崎プロジェクト新築工事13階立上り14階床工区、2017年3月21日(撮影日)


2 具体的な理由
(1)背景
検甲1の1?4に示す「スーパーループボンド」は、請求人らの取り扱う製品である。
甲1の一般財団法人日本建築センター作成の「建設技術審査証明(建築技術)報告書 タイル張りモルタル層の剥落防止技術 「ループボンド・タフバインダー工法」」の審査証明依頼者が、東レ株式会社(以下「東レ」という。)、有限会社難波建築研究室(以下「難波」という。)、株式会社大林組(以下「大林組」という。)であることから明らかなように、東レ、難波、大林組の共同開発に係る製品である。
この「ループボンド・タフバインダー工法」は、「スーパーループボンド」に先行する製品である2003年7月14日の初版の報告書で公的試験を受けた従来型の「ループボンド」の開発から継続され、2013年7月14日の第3版の報告書で試験された検甲1の1?4の「スーパーループボンド」につながるものである。この工法は、甲2に示す「ループボンド・タフバインダー工法実績2001年?2016年」のように広く普及をし、検甲1の1?4の「スーパーループボンド」も大量に販売・施工された。
このような工法に係る製品の製造に当たっては、平成18年(2006年)6月23日に、東レ株式会社アメニティー事業部門(後に、請求人である「東レ・アムテックス株式会社」に事業移転される。)部門長 小堀健一と、被請求人である株式会社祥起 代表取締役 諌山修(以下「祥起」という。)との間で、甲34に示す平成18年(2006年)6月23日付の「売買基本契約書」が取り交わされ、製品の製造委託が行われ、検甲1の1?4の「スーパーループボンド」も上記「売買基本契約書」に基づいて祥起にその生産が委託された。
東レ株式会社から東和織物株式会社(平成25年(2013年)に東レ・アムテックスに名称変更。以下「東和織物」という。)に業務が委託され、東和織物は、引き続き株式会社祥起(以下「祥起」という。)に「スーパーループボンド」の製造の委託をした。
東和織物は祥起に製造委託をするにあたり、甲36に示す平成23年(2011年)8月22日作成の「SLB最終検査結果記録」のように、東和織物は祥起から出荷前の製品検査の結果の報告を受けるなどして、SLB、すなわち「スーパーループボンド」を甲1の審査証明を満たすように品質の管理に留意した。
そして、SLBの受注があると、例えば甲第37号証に示す「注文書」により、東和織物住環境製品部本多から、祥起専務諌山に注文を出す。祥起は、これを受けて、甲37の指示に従い「発送人」を「東和織物株式会社」の名前で、上記納品場所にスーパーループボンドを納品するようにしていた(甲38)。
なお、検甲1の1?4の「スーパーループボンド」は、厳格な試験を経て認定された建築構造に係わる標準品・規格製品であり、その取引に当たっては、甲35に示す「スーパーループボンドR品質管理規定」などにより厳格に管理されている。そのため、検甲1の1?4の「スーパーループボンド」は、生産開始から現在に至るまでその規格は完全に同一のものとなっている。
その後、東レから祥起への生産委託は終了し、甲4に示す東レ・アムテックス株式会社(以下「東レ・アムテックス」という。)と近江化工株式会社(以下「近江化工」という。)との「製造委託基本契約書」に基づき「スーパーループボンド」の生産委託は近江化工になされた。
(請求書82頁下から8行?84頁6行)

(2)本件発明1について
ア 検甲第1号証の1?検甲第1号証の4について
検甲1の1?4は、いずれも近江化工株式会社が製造した「スーパーループボンド」である。
検甲1の1は、「スーパーループボンドL37」、
検甲1の2は、「スーパーループボンドL40」、
検甲1の3は、「スーパーループボンドL48」
に係るサンプルである。
ここで、「L37,L40,L48」については、軸足の長さの違いによる呼び名で、本体、ガードリング、スキンキャッチャーからなるスーパーループボンド・アセンブリとしては、共通の構成である。
また、検甲1の4は、本件特許出願前の製品であるが、内部構造を明らかにするための検甲1の1?3のように組み付ける前の構成部品の状態である。
本体の刻印について、
検甲1の1は、「TAT SLB N6 3」と、打点が1つである。
検甲1の2は、「TAT SLB N6 3」と、打点が1つである。
検甲1の3は、「TAT SLB N6 2」と、打点が1つである。
検甲1の4は、「TAT SLB N6 4」と、打点が1つである。
これらの刻印の意義は、甲5の1の「スーパーループボンド(本体)」製作図面の「刻印」「ロットマーク」「ロット管理表」に記載されている。
「TAT」は、製造者の「東レ・アムテックス」を示す略号である。
「SLB」は、製品名のスーパーループボンドを示す。
「>N6<」は、素材のナイロン6を表す。
「3,2,4」などの数字は、型番である。スーパーループボンドの金型は一度に4個取りであり、それぞれに番号を刻印しており、「型番」の1?4は、この4つの金型を識別する刻印である。
これらの製造時期は、甲5の1の「ロット管理表」に記載されているように、刻印による打点マークにより、
打点1つが2016年製、
打点2つが2017年製、
打点3つが2018年製、
打点4つが2019年製を示す。
本件特許出願が2017年3月21日であるため、少なくとも検甲1の1?4は、打点1つであるので本件特許出願前の2016年製造であることが証明できる。
さらに、付言すると、検甲1の1?3の詳細な製造時期は、梱包されている段ボールに記載されて管理されており、
検甲1の1は甲40に示すように2016年8月25日、
検甲1の2は甲41に示すように2016年8月29日、
検甲1の3は甲42に示すように2016年8月31日である。
また、検甲1の4は、梱包用の段ボールとの関連が不明であるが、少なくともその刻印から2016年製であることは明らかになっている。
いずれにしても、検甲1の1?4は、2016年製の製品である。
なお、検甲1の1?4を比較すれば自明であるが、製品の規格は完全に同一である。つまり、検甲1の1?4は、同一規格の製品である。
これらの製品は、甲5の1?4の設計図面に従って製造され、甲6の1?4の製品検査を受けた後、甲7の1?6に示すような手順で出荷される。
以下、本件特許との構成の比較においては、検甲1の1?4の構成は同一であるため、これを区別せず単に「検甲1」という場合がある。
(請求書85頁14行?87頁3行)

イ 対比、判断
検甲1は、本件発明1の構成要件すべてにおいて一致する。
検甲1が耐光性を有するカーボンブラック顔料が含有されている樹脂であるか否かについては、目視では確認できないが、甲1「建設技術審査証明(建築技術)報告書」本文1頁、甲5の1の「製作図面」、甲6の1の「部品検査法承認願」2頁に材質が「ナイロン6」であることが明記され、甲8の1「納入品材質証明書」、甲8の2「安全データシート」2頁の記載からカーボンブラックが含有されていることが立証されている。
なお、カーボンブラックが耐光性を有することは、本件特許明細書の段落0122に「当該所定の耐光性顔料含有樹脂材料としては、例えば、合成樹脂材料の一種であるエンジニアリングプラスチックのうちのナイロンの一種、株式会社東レ製射出成形用非強化ナイロン6にカーボンブラック等の黒色顔料を均一に含有させたものが採用されている。」と自認している。
加えて、請求項1のコネクター型接着補助具に限らず、請求項12?28のディスク型接着補助器具、請求項22?25の環状部材のような部材を樹脂製とし、カーボンブラックのような顔料を添加することは甲16?19に示すとおり当業者においては周知である。
(請求書87頁5行?下から9行)

ウ 検甲1に係る「スーパーループボンド」が公然実施された事実について
甲1?10を参照すれば、検甲1に係る発明は、本件特許出願前に公然と販売され、かつ使用されていたことは明らかである。
検甲1に示す「スーパーループボンド」は、甲1の試験対象であり、甲2に示すように長年極めて多数の施工実績があることが明らかになっている。 また、甲3、甲4によれば、東レ・アムテックス(株)が、近江化工(株)にスーパーループボンドの製造委託を本件特許出願前から継続的にしている事実、甲5の1?4の製造図面によれば、近江化工(株)が東レ・アムテックス(株)との規約で、甲8の1?2に示すようにカーボンブラック顔料が添加されたスーパーループボンドの製品を製造しているかが分かる。
さらに、甲6の1?4によれば近江化工(株)で甲5の1?4の製造図面に従って所定の規格に適合して製造した製品を、厳格な検査を行い、検査をパスしたスーパーループボンドの製品のみを東レ・アムテックス(株)に納入していることを示す。甲7の1?6によれば、上記のような厳格な検査を受けたスーパーループボンドが、実際に顧客に販売されていることをそれぞれ立証する。
甲7の1?6の記載によれば、本件特許出願前に検甲1の「スーパーループボンド」と同一の製品が、守秘義務のないユーザに公然と販売された事実が立証されている。
なお、甲9及び甲10及び検甲3によれば、被請求人である株式会社祥起及び本郷コーポレーションも本件特許出願以前に「スーパーループボンド」のコピー製品である「スーパーウォールキャッチャー」を自ら公然と多数販売していることも明らかにしている。
よって、検甲1に係る「スーパーループボンド」及び検甲3に係る「スーパーウォールキャッチャー」のいずれも公然実施されたことは明らかである。
そして、検甲1に係る「スーパーループボンド」及び検甲3に係る「スーパーウォールキャッチャー」のいずれも、本件特許の請求項1?11に係る「コネクター型接着補助器具」と同一の構成である。
(請求書89頁12行?14行、96頁下から8行?97頁17行)

エ 本件発明の「環状可変部」「環状非可変壁部」と検甲1のガードリング(特に、上段部、下段部)との比較
(ア)検甲1のガードリングにおける「上段部」と、本件実施形態の「環状突起部126」とを比較すると、検甲1の「上段部」の最も厚い部分である基端部の厚み(0.4mm)は、本件実施形態の「環状突起部126」の最も厚い部分の厚み(0.5mm)よりも薄く、かつ「上段部」の高さ(0.8mm)は本件実施形態の「環状突起部126」の高さの範囲内(0.1?2.0mm)である。
(イ)また、検甲1のガードリングにおける「下段部」の最も薄い部分である上端部の厚み(0.8mm)は、本件実施形態の「環状薄肉部123」の厚み(1.5mm)よりも薄いが、下段部は、あえて水平面を設けて上段部の基端に対して2倍の厚みに形成されていることからも、上段部と区別された異なる機能を有することは明らかである。
(ウ)そして、検甲1のガードリングは一体成形されており、その材質は、本件実施形態と同じナイロン6である。
(エ)本件実施形態の「環状突起部126」が本件発明の「環状可変部」に相当することからも、検甲1の「上段部」は本件発明にいう「環状可変部」に相当する。
また、本件実施形態の「環状薄肉部123」が本件発明にいう「環状非可変壁部」に相当することからも、検甲1の「下段部」は本件発明にいう「環状非可変壁部」に相当する。
(オ)したがって、検甲1のガードリングにおける「上段部」「下段部」は、それぞれ本件発明の「環状可変部」「環状非可変壁部」に相当する。

オ 本件発明の「上部環状壁部」の変形について
(ア)検甲1、検甲3は、薄厚で変形しやすい「上部環状壁部」が、厚厚で変形しにくい「下部環状壁部」の外周に沿って一体に延びるものであって、型枠への当接にあたっては上側に位置する「上部環状壁部」が先に変形する。この場合、「上部環状壁部」が「下部環状壁部」とともに「外壁」を構成するか否かといったことは、その「変形する」という機能上の意味において、関係がない。
(イ)型枠の凸部が先端部分の内周側に当たれば、先端部分は外周側に倒れて潰れ易く、型枠の凸部が先端部分の外周側に当たれば、先端部分は内周側に倒れて潰れ易くなるのである。
(ウ)「円環樹脂部品」(ガードリング)はナイロン樹脂で形成されているから柔軟性があり、倒れた場合に破断することはない。
(エ)被請求人は、検甲1、検甲3について『当該外壁先端部分は、すべて外周でつながっているため、不均一に、当接した順に外面側に倒れようとする結果、外周の一部が極度に引っ張られ、破断する』旨主張する。しかし、検甲1、検甲3の「上部環状壁部」について、型枠に当接した場合に外周の一部が破断するかどうかは「上部環状壁部」の形状だけが影響するのではなく材質も影響するところ、非請求人は「形状のみ」に基づいて主張している。検甲1、検甲3はナイロン樹脂で形成されていて(甲5の2)柔軟性があり、たとえ「上部環状壁部」の全周が外周側に倒れて潰れるようなことがあっても、全周が延びることとなって外周の一部が破断するようなことはない。被請求人の主張は材質を考慮しておらず失当である。
(請求人陳述書1の17頁4行?18頁10行)

カ 審決の予告における判断について
(ア)審決の予告では、「検甲1発明において、「上部環状壁部」は「下部環状壁部の上部外周に沿って」延びていることにより、製品として完成していることから、「上部環状壁部」を「下部環状壁部の上部外周」以外の部分に形成する動機付けはない。」と判断する(審決の予告第73頁)。
(イ)しかし、審決の予告における「製品として完成している。」という判断はどのような意味を有するのか不明である。
(ウ)「製品が完成している」ことを理由に、相違点に係る検甲1発明の構成について変更する動機付けが存在しないとした審決予告の判断は誤りである。
(エ)さらに、相違点4は、いわば「環状可変部」の形成位置の相違である。
(オ)実際、相違点4に係る本件発明の構成も、相違点4に係る検甲1発明の構成も、「環状可変部」の形成位置が相違するだけで、「環状可変部」の機能(型枠に当接した際に弾性変形する)には相違がなく、また、発明であるコネクター形接着補助器具の機能にも相違はない。したがって、相違点4は、まさに「環状可変部」の形成位置の相違でしかない。審決の予告では、相違点4に係る本件発明の構成について、技術的意義等を検討することなく、単に相違点であることを理由に、動機付けがないとの判断をしている。
(カ)この点で、審決の予告は、相違点4に係る本件発明の構成について、進歩性の容易想到性の判断を実質的に行っておらず、その判断は誤りである。
(弁駁書第6頁9行?第8頁7行)

(3)本件発明2、4?11について
本件発明2、4?11は、請求項1と同じ理由から、本件特許出願前に公然に実施された発明である。
また、少なくとも、請求項1と同じ理由から当業者が本件特許出願時に、本件発明2、4?11に容易に想到することができたものである。
(請求書98頁6行?9行、98頁末行?101頁下から9行)

(4)本件発明3について
検甲1が耐光性を有するカーボンブラック顔料が含有されている樹脂であるか否かについては、目視では明らかではないものの、甲8の1?2の記載からカーボンブラックが含有されていることが明らかであることが立証されている。
なお、カーボンブラックが耐光性を有することは、本件特許明細書の段落0122で自認しているほか、甲16?19に示すとおり当業者においては周知である。
よって、請求項3に係る特許発明は、請求項1と同じ理由から、本件特許出願前に公然に実施された発明である。
また、少なくとも、請求項1と同じ理由から当業者が本件特許出願時に、請求項3に係る特許発明に容易に想到することができたものである。
(請求書98頁16行?下から2行)

(5)本件発明12について
ア 対比、判断
構成要件12B?12Kは、検甲1に開示されている。
検甲1の1?4は、甲1?10に示されるように公然実施(特許法第29条第1項第2号)されている発明である。
構成要件12L?12Nは、検甲2に開示されている。
検甲2は、甲11?15に示されるように公然実施(特許法第29条第1項第2号)されている発明である。
なお、検甲2に係る発明は、甲11により文献公知(特許法第29条第1項第3号)にも該当する発明である。
なお、構成要件12G、12J、12Nの「前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料」については、目視では確認できないが、検甲1がナイロン6で製造されていることは甲1、甲5の1、甲6の1に記載され、カーボンブラックが含有されていることは、甲8の1?2に記載されているため、一致している。
検甲2についても目視では確認できないが、樹脂にカーボンブラックを含有させることや、カーボンブラックが耐光性を有することは、甲16?19に示すとおり当業者においては周知である。また、「ディスク型接着補助器具」を、「コネクター型接着補助器具」である公知の検甲1の「スーパーループボンド」と同一の材料から製造することは、単なる公知材料の選択であり、当業者において適宜選択される設計事項に過ぎないことは明らかである。
相違点について、構成要件12A、12S、12Tは、検甲1と検甲2との組み合わせによる施工方法のシステムであるので相違する。構成要件12O?12Pは、検甲1の施工方法であるため検甲1とは相違する。構成要件12Q?12Rは、検甲2の施工方法であるため検甲2とは相違する。
そして、構成要件12A、12S、12Tについては、甲11に開示されている相互に補助し合う施工方法が当該システムに相当する。構成要件12O?12Pは、甲1に記載の施工方法が相当する。
構成要件12Q?12Rは、甲12に記載の施工方法が相当する。
検甲1及び甲1と、検甲2は、いずれもモルタル剥落防止の技術分野及び当業者が完全同一であり、モルタルの剥落防止という課題も同一であり、組み合わせる動機づけもある。これらを組み合わせることは阻害要因もなく、甲11の建設通信新聞の記事や、甲12の本件特許権者の販売先である本郷コーポレーションが作成したパワーポイントの3枚目の記載を参照すれば検甲2は、検甲1とシステムとして組み合わせることについて前提とされていることから、組み合わせることに格別の困難性はなく当業者の設計事項といえる。
組わせたことによる作用は、単にそれぞれの作用を奏するのみで、それ以上の複合的な作用はない。
また、組み合わせたことによる効果も、検甲1及び検甲2を組み合わせた総和以上の異質な効果も、顕著な効果もない単なる組み合わせである。
よって、検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、本件特許発明に容易に想到することができる。
(請求書101頁下から2行?102頁下から4行、105頁下から12行?106頁2行)

イ 検甲第2号証が公然実施されたことについて
検甲第2号証に係る「ウォールキャッチャーディスク」は、甲第11号証?甲第15号証に示すように、公然実施されたことが立証されている。
(ア)甲11「建設通信新聞」により、「ウォールキャッチャーディスク」すなわち検甲2において把握される発明が、本件特許の出願日前に業界新聞により公表された事実を立証する。
(イ)甲12「ウォールキャッチャーディスク工法(パワーポイント)」により、「ウォールキャッチャーディスク」すなわち検甲2において把握される発明が、本件特許の出願日前に本郷コーポレーションがプレゼンテーションで公表した事実を立証する。なお、甲第12号証の最終ページには、「ウォールキャッチャーディスク」の設計・製造が被請求人である株式会社祥起であることが明示されている。
(ウ)甲13「ウォールキャッチャーディスク(パンフレット)」により、「ウォールキャッチャーディスク」すなわち検甲2において把握される発明が、本件特許の出願日前に本郷コーポレーションがウェブページで公表した事実を立証する。
(エ)甲14「ウォールキャッチャーディスク(ホームページ)」により、「ウォールキャッチャーディスク」すなわち検甲2において把握される発明が、本件特許の出願日前に本郷コーポレーションがウェブページで公表した事実を立証する。
(オ)甲15「Facebook」により、「ウォールキャッチャーディスク」すなわち検甲2において把握される発明が、本件特許の出願日前に本郷コーポレーションがfacebookで公表した事実を立証する。
(カ)よって、以上の立証により、「ウォールキャッチャーディスク」すなわち検甲2において把握される発明について、被請求人である株式会社祥起において製造され、本郷コーポレーションにより守秘義務のない一般ユーザに対し、業界新聞、研修会、パンフレット、ホームページ、facebookなどで広告され、販売された事実から、公然に譲渡され、譲渡の申し出がなされたものであり、公然実施されたことが立証される。
なお、検甲2に依らずとも甲11?15によって、「ウォールキャッチャーディスク」の特定、及び「ウォールキャッチャーディスク」が守秘義務のない一般ユーザに販売されたことは立証できているが、よりいっそう確実な立証をするため、検甲2により「ウォールキャッチャーディスク」の構成の特定を直接感得するものである。
(請求書102頁下から2行?103頁1行、請求人陳述書7頁下から6行?8頁下から4行)

(6)本件発明13について
甲16?19に基づけば、カーボンブラックに樹脂に耐光性を付与することは周知であり、かつ樹脂に耐光性を付与するためにカーボンブラックを均一に含有させることは、周知慣用技術である。
よって、請求項13に係る特許発明は、請求項12と同じ理由から検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、本件特許発明に容易に想到することができる。
(請求書106頁9行?14行)

(7)本件発明14?20について
請求項14?20に係る特許発明は、請求項12と同じ理由から検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、本件特許発明に容易に想到することができる。
(請求書106頁20行?108頁下から9行)

(8)本件発明21について
本発明の「フック」は甲20により文献公知となった発明であるばかりか、甲21?24、33を参照すれば、フックの構成については、当業者が適宜選択する設計事項であるため、格別の困難性もない。
よって、請求項21に係る特許発明は、請求項12と同じ理由に加え、上記理由から検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、引用文献甲20に加え、周知技術である甲21?24、甲33に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、本件特許発明に容易に想到することができる。
(請求書115頁下から13行?7行)

(9)本件発明22について
検甲2には、22A「環状板部と」、22D「前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の上記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられている」環状部材を備えた基本的構成が開示されている。
甲30には、軸足穴15(「中央孔部」に相当)の周囲に樹脂製の係合フレーム3(「環状部材」に相当する)を配置することで、モルタルの剥落を防止する構成が開示されている。甲31にも同様の構成が開示されている。
甲25には、「環状部材」を備えないが、22B「(基板の)内周縁部から当該内周縁部に沿い間隔をおくように位置して(基板の)穴に向かって表面側へ延出する複数の内側糸状片部とを有するように、」という係止部の構成が記載されている。
また、22C「前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており」は、カーボンブラックのような周知の「耐光性顔料含有樹脂材料」とすることは甲16?19を参照すれば、請求項12で述べたとおり単なる公知材料の選択であり、基板と同様な材質とすることは当業者において設計事項に過ぎない。
検甲2及び甲25、甲30、甲31は、共通する出願人であり、同一技術分野・同一当業者であることは自明であり、これらを組み合わせることには何ら阻害要因がないばかりでなく、技術の転用が容易な設計事項である。
前提となる請求項12に係る説明は前述のとおりである。
よって、本件特許出願時に検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25、甲30、甲31に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、本件特許発明に容易に想到することができる。
また、甲26?29、甲32の各引用文献には、壁面のモルタル剥落防止のための補助具において、穴を覆うように傾けられた形状の係止部をはじめ、各種形状の係止部の構成に関しては様々な態様のものが開示され、当業者の設計事項として適宜選択されていることがわかる。
よって、請求項22に係る特許発明は、検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25、周知文献甲26?32に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、容易に想到することができる。
(請求書122頁下から9行?123頁15行、129頁2行?10行)

(10)本件発明23について
検甲2には、22A「環状板部と」、22D「前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の上記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられている」環状部材を備えた基本的構成が開示されている。
また、22C「前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、」は、甲30、甲31には中央孔部の周囲に配設された樹脂製の係止部材が記載されており、「耐光性顔料含有樹脂材料」を選択することは単なる公知材料の選択であり、基板と同様な材質とすることは当業者において単なる設計事項に過ぎない。
さらに、係止部が外側に延びる「外側糸状片部」の構成は甲27、甲29を参照すれば当業者が適宜採用し得る周知の構成である。
検甲2及び甲27、29、30、31は、同一技術分野・同一当業者であることは自明であり、これらを組み合わせることには何ら阻害要因がないばかりでなく、技術の転用は設計事項に過ぎない。
なお、前提となる請求項12に係る説明は前述のとおりである。
よって、請求項23に係る特許発明は、検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25?32に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、容易に想到することができる。
(請求書134頁2行?20行)

(11)本件発明24について
環状部材を樹脂で構成することは、単なる公知材料の選択であり、また、樹脂により一体的に形成するか別体として形成するかは、当業者が適宜選択する設計事項に過ぎない。
よって、請求項24に係る特許発明は、請求項22、23と同じ理由から検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25?32に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、容易に想到することができる。
(請求書135頁7行?12行)

(12)本件発明25について
構成要件25A「前記複数の環状部材は、それぞれ、前記環状板部の内周縁部から同軸的にその裏面側へ延出するように前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料により一体的に形成してなる環状ボス部を備えて、当該環状ボス部を前記基板の対応中央孔部内に同軸的に嵌装するようにして、前記環状板部にて、前記基板の対応中央孔部にその表面側から載置されており、」に対して、
甲27の「モルタル剥落防止具1」では、それぞれ、「小円環骨部12c」の内周縁部から「柱脚部12a」により同軸的にその裏面側へ延出するように前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料により一体的に形成してなる「円筒部11」の「ストッパ11a」を備えて、「円筒部11」を対応中央孔部内に同軸的に嵌装するようにして、前記環状板部にて、対応中央孔部にその表面側から載置されており、」という構成に相当する。
また、構成要件25B「前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、ネジをその頭部にて前記複数の環状部材のうちの対応環状部材の前記環状ボス部に着座させるとともに、当該ネジをその首下部にて前記対応環状部材の前記環状ボス部を通してコンクリート体にその表面から締着することで、当該コンクリート体に組み付けられている」に対しては、
甲27では、「それぞれ、ネジをその頭部にて前記複数のモルタル剥落防止部の円筒部11に着座させるとともに、当該ネジをその首下部にて円筒部11のストッパ11aを通してコンクリート体にその表面から締着することで、当該コンクリート体に組み付けられている」という構成に相当する。
よって、請求項25に係る特許発明は、請求項22、23と同じ理由から証拠:検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25?32に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、容易に想到することができる。
(請求書136頁下から7行?138頁3行)

(13)本件発明26?28について
請求項26?28に係る特許発明は、請求項12?25(さらに本件発明27について請求項26、本件発明28について請求項26、27)と同じ理由から、検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25?32に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、本件特許発明に容易に想到することができる。
(請求書138頁10行?139頁7行)


第5 被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成30年6月12日付け無効審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、平成30年8月29日付け口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述書」という。)、平成30年12月6日付け口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述書2」という。)、平成31年1月16日付け上申書(以下「被請求人上申書」という。)を参照。)。

<証拠方法>
提出された証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証 陳述書、諫山修一、平成30年8月27日
乙第2号証 成績書、あいち産業科学技術総合センター、平成30年10月30日

1 本件特許発明の本質的部分
(1)本件特許発明の主な課題・目的として、本件特許【0017】記載のとおり、「複数の係合片部をその外周から包囲する環状体の構成に工夫を凝らし、型枠の当該環状体との当接が一様に成立するようにした接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助システムを提供すること」が掲げられている。
(2)そして、本件特許発明は、その主な課題解決ないしは目的達成手段として、概要、「コネクター」(構成要件1E)部分と「環状体」(構成要件1H)部分とから構成される本件請求項1の「コネクター型接着補助器具」(構成要件1I)に係る発明において、上記「環状体」の一部である「環状壁部」(構成要件1H)を敢えて「環状非可変壁部」(構成要件1F)と「環状可変部」(構成要件1G)とに分けて構成し、当該「突出する」「環状可変部」(構成要件1G)の方のみを型枠と当接させる構成を選択したのである。
(3)これによって、本件特許【0238】記載のとおり、「環状突起部126の変形が、環状壁部120aのうちの環状突起部126以外の構成部位の変形及び一方の型枠Fの環状壁部120aに対する対向面の部分的変形を伴うことなく、なされることで、環状壁部120aが、コネクター110及び一方の型枠と共に、密閉空間を構成して、当該密閉空間内に複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部110dを閉じ込める。」のである。
その結果、本件特許【0239】記載のとおり、「生コンクリートを両型枠Fの間に打ち込んでも、複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bが当該生コンクリートから良好に隔離されるので、当該生コンクリートが複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bに達することがない。このことは、複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bが、生コンクリートで汚れることなく、生モルタルと良好に密着し得ることを意味する。」効果を生じるのである。
(4)重要なのは、このとき、本件特許【0240】記載のとおり、「環状壁部120aのうち、環状突起部126を除く部位は、上述のごとく、一方の型枠による押圧によって変形することはないので、複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bは、その原形状を、上述の密閉空間内にて、良好に維持し得る。」ことである。
本件特許【0144】に「環状壁部120aは、環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123を備えており、これら環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123は、変形不能に形成されているから、環状非可変着座部、環状非可変厚肉部、環状非可変薄肉部ともいう。」と記載されているとおり、このとき環状壁部120a=「環状壁部」(構成要件1H)のうち、突端の環状突起部126だけが「環状可変部」(構成要件1G)に位置付けられていることは明らかである。
環状薄肉部123までが変形可能になってしまうと、「複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bは、その原形状を、上述の密閉空間内にて、良好に維持」(本件特許【0240】)できなくなってしまうからである。
(答弁書3頁9行?5頁12行)


2 本件発明1について
(1)本件発明1と検甲1(ないしは3)の対比について
本件請求項1の「前記複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように…着座する環状非可変壁部」(構成要件1F)に対して、検甲1(ないしは3)において「前記複数の面側係合片部(=「前記ループ」)をその外周側から包囲」しているのは、「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」(本件審判請求書5頁)、あるいは、「ガードリングに設けてある」「変形部分(薄い部分)」(甲1の44頁)であるから、明らかに「環状可変壁部」というべきものであり、本件請求項1の「環状非可変壁部」(構成要件1F)とは相容れない構成である。
また、仮に上記検甲1(ないしは3)の「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」を本件請求項1の「環状可変部」(構成要件1G)に当て嵌めてみた場合でも、本件発明においては、当該「環状可変部」は、あくまで「環状端部から…突出する」(構成要件1G)ものであるのに対して、検甲1(ないしは3)においては、単に壁本体が連続して薄くなっているにすぎず、何ら「突出」の構造を有していない。
すなわち、「突出」とは、「突き破って出ること。また、だしぬけに飛び出すこと。」(広辞苑第二版補訂版)の意であり、まさに前記本件特許明細書における「環状突起部126」のように、端面の一部が他より目立って突然に飛び出している様をいうべきところ、検甲1(ないしは3)の「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」は外壁そのものであり、「突き破って出る」存在ではなく、「だしぬけに飛び出」してもいない。
そして、上記の相違点は、何れも本件発明の本質的部分に関わる構成(要件1F,1G)に関わるものである。
そればかりか、検甲1(ないしは3)は上記相違点に関して本件発明とは真逆の構成を敢えてとっているのであり、これといかなる発明とを組み合わせても本件発明に到らないことは自明である。
すなわち、「可変」な「環状壁部」は、何と組み合わせても、「非可変」な「環状壁部」には変わりようはなく、「環状壁部」自体が変形してしまえば、「コネクター110及び一方の型枠と共に、密閉空間を構成して、当該密閉空間内に複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部110d(=検甲1では、上記「ループ」に該当する)を閉じ込める。」(本件特許【0238】)ことができなくなり、もはや何と組み合わせても、「複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bが、生コンクリートで汚れることなく、生モルタルと良好に密着し得る」(本件特許【0239】)効果を得ることはできないのである。
したがって、請求人提出の証拠によって、本件請求項1に係る発明が公然実施無効にはならないことは勿論、いわゆる組み合わせ阻害要因があることにより、容易想到無効にもなり得ないことは明らかである。

(2)「環状可変部」と「環状非可変壁部」について
ア 本件特許において、「環状可変部」とは、「環状非可変壁部」の「端部から…突出する」(構成要件1G)ものである。すなわち、「環状非可変壁部」の端面を「突き破って出る」(広辞苑)ように、当該面の中途から「だしぬけに飛び出す」(同)構成が必要とされている。
そして、その最大の技術的意義は、上記「環状可変部」が「木製或いは合成樹脂材料製」の型枠と当接した場合でも、上記「環状非可変壁部」の端面の範囲内で「押しつぶされるように変形していく」ことから、対向する上記型枠の内面の方には変形をもたらさず、結果、「型枠の再利用の繰り返しが可能」(本件特許【0211】)になるところにある。
これに対し、請求人が口頭審理陳述要領書15頁の模式図で示す、上記「上段部」、「下段部」の構成は、請求人自身が「両者は外周側では面一である」(同20頁)と認めざるを得ないように、何れもガードリングの側壁そのものを連続的・一体的に構成するもので、その区別は単に場所の違いにすぎない。
したがって、単に「内周側では水平面による段差を境にはっきり区分されて」(同20頁)いるからといって、到底、当該水平面から「突き破って出る、或いはだしぬけに飛び出」していると評価することなどできない。
常識的に見て、上記「上段部」は、水平面から突き破って出ているのではなく、むしろ、ガードリングの側壁の上部を内側から削って、その内面の中途に、水平面の方を新たに生じさせているのである。
したがって、検甲1(ないし検甲3)のガードリング「上段部」が「環状可変部」に、同「下段部」が「環状非可変壁部」に相当する旨の請求人主張は、クレーム文言上も無理があると言わざるを得ない。

イ 上記のとおり、本件特許発明においては、型枠との当接によって変形するのは、あくまで「環状可変部」という突起物であって、環状体(検甲1のガードリング)の側壁自体は変形させない。
したがって、クレーム文言上も、「環状非可変壁部」と「環状可変部」というように、明確に言葉の使い分けを行って、「壁」自体には決して変形の起こらないことを強調している。
これに対して、検甲1(ないし検甲3)発明においては、建設技術審査証明(建築技術)報告書(甲1)の44頁に、「型枠へのスーパーループボンドの取付け」として、「スーパーループボンドには、セメントペーストが侵入しないように型枠の凹凸になじむ変形部分(薄い部分)がガードリングに設けてあるので必要以上に強く締め込む必要は無い、逆に強く締め込み過ぎるとループが潰れるおそれがある。」と記載されているように、ガードリング(環状体)の「壁」自体を一部薄くして変形させる構成を敢えて採用しているのであるから、本件特許発明とは、真逆の構成で相容れない発明と言わざるを得ない。
この結果、検甲1(ないし検甲3)発明の実施品においては、ガードリング壁部が締結時に歪んで大きく変形し、これによって型枠の方に凹凸の跡が生じてしまい再利用できなくなるとともに、生コンクリートの浸潤も許すという事態が指摘されるようになったのに対し、本件特許発明実施品ではそのような課題も解決するに至ったものである(乙1:被請求人代表者の陳述書)。
具体的には、検甲1(スーパーループボンド)の方は、外壁の先端を、対抗する型枠面と外周すべてで当接するよう変形できるように薄くしている構成を採用しているところ、当然のことながら、この部分は外壁そのものであるから、外面はそのままで、内面だけをテーパ状に上にいくに従って薄くなるよう削っている構造になっている。
そうすると、当該外壁先端部分が型枠に当たって押されると、物理的に、テーパー状に膨らんだ内面側に倒れて潰れることなはく、必ず外面側に倒れて潰れることなる。
このとき、当該外壁先端部分は、すべて外周でつながっているため、不均一に、当接した順に外面側に倒れようとする結果、外周の一部が極度に引っ張られ、破断し、そこから生コンクリートの浸潤を許すことになるのである。
そして、このような事態は、凹凸面の多い木製型枠の場合に一層顕著となり、生コンクリートの浸潤を防ごうとするあまり、さらに強い力で締め込むことになり、型枠表面を一層傷つけることになるのである。
これに対して、本件特許発明の方は、型枠との当接部分は、もはや外壁ではないので、外壁として果たすべき構成の制限を受けない。すなわち、検甲1のように、当接した順に必ず外面側に倒れようとする結果、外周の一部が極度に引っ張られ、破断するような事態は解消されるのである。
具体的には、本件特許発明では、型枠との当接部分は、非可変で変形を許さない外壁の端面上に、「突出する」かたちで設けているだけなので、当該部分が型枠に当たって押されても、物理的に、外壁の端面上に容易に潰れて拡がるだけで、何ら外周に破断を生じさせることもなく、結果、強く締め込み過ぎて型枠面に食い込み溝を生じさせることもないのである。

(3)前記のとおり、請求人引用発明は、そもそも「環状壁部」の構成を、課題解決のために敢えて「環状非可変壁部」と「環状可変部」とに分けるという発想が示されていないので、「環状非可変壁部」についてさらに細かく区分している本件請求項7発明については、すべての構成要件不充足というべきである。

(4)特に、構成要件7Cの「環状非可変薄肉部」については、前記のとおり、請求人引用発明は、敢えて「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」(本件審判請求書5頁)、あるいは、「ガードリングに設けてある」「変形部分(薄い部分)」(甲1の44頁)というように、明らかに「環状可変薄肉部」の構成を採用しているのであるから、本件請求項7発明とは相容れない構成である。
(答弁書7頁13行?8頁下から4行、答弁書12頁23行?13頁3行、被請求人陳述書3頁下から7行?6頁12行)


3 本件発明2?6について
請求項1と同様の理由により、請求人引用発明は、「請求項1に記載のコネクター型接着補助器具」とは相容れない構成をとっているため、公然実施無効の主張も容易想到無効の主張も失当である。
(答弁書11頁13行?12頁15行)


4 本件発明7について
(1)さらに、本件請求項7発明においては、「前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成され」と、「突出」の態様も限定されている(構成要件7D)ところ、上記請求人引用発明の「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」等がこれに該当しないことは明白である。
(答弁書13頁4行?13頁9行)


5 本件発明8について
請求項7と同様の理由により、請求人引用発明は、「請求項7に記載のコネクター型接着補助器具」(構成要件8C)とは相容れない構成をとっているため、公然実施無効の主張も容易想到無効の主張も失当である。
(答弁書13頁10行?14行)


6 本件発明9について
(1)前記請求項7と同様の理由により、請求人引用発明は、「請求項7に記載のコネクター型接着補助器具」(構成要件9B)とは相容れない構成をとっているため、公然実施無効の主張も容易想到無効の主張も失当である。
(2)さらに、本件請求項9発明においては、「前記環状可変部は、前記突起状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されている」(構成要件9A)と、その形状も限定されているところ、上記請求人引用発明の「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」等がこれに該当しないことは明白である。
(答弁書13頁16行?末行)


7 本件発明10、11について
請求項7(本件発明11については請求項10)と同様の理由により、請求人引用発明は、「コネクター型接着補助器具」とは相容れない構成をとっているため、公然実施無効の主張も容易想到無効の主張も失当である。
(答弁書14頁1行?11行)


8 本件発明12について
(1)前請求項11までは、すべて「コネクター型接着補助器具」についての特許発明であったが、本請求項以下は、すべて当該「コネクター型接着補助器具」に加え、これとは別異の「ディスク型接着補助器具」をも組み合わせた「接着補助システム」についての特許発明である。
したがって、請求人引用発明は、そもそも上記「コネクター型接着補助器具」部分において、前記請求項1同様に、「環状非可変壁部」(構成要件12H)および「環状可変部」(構成要件12I)という本質的構成要件と相容れない構成を採っているため、これだけで容易想到無効の主張は失当である。
(2)さらに、構成要件12Pは、上記「コネクター型接着補助器具」部分の施工方法について、「前記環状非可変壁部に向けて前記環状可変部を変形させるように前記他方の型枠を押圧」と規定しているところ、請求人引用発明の側の「コネクター型接着補助器具」部分の施工方法はと言えば、前記のとおり、「スーパーループボンドには、セメントペーストが侵入しないように型枠の凹凸になじむ変形部分(薄い部分)がガードリングに設けてあるので必要以上に強く締め込む必要は無い、逆に強く締め込み過ぎるとループが潰れるおそれがある。」(甲1の44頁)と明記されている。
このとき、上記「ガードリング」の「変形部分(薄い部分)」を敢えて「前記環状可変部」に相当すると捉えてみると、構成要件12Pの施工方法に従えば、「前記環状非可変壁部」すなわち上記「ガードリング」の根元の分厚い部分に向けて潰れるまで型枠を押圧するということになってしまうが、このような施工方法は、「強く締め込み過ぎるとループが潰れるおそれがある。」として、甲1自身が禁じているので採り得ない。
そうすると、上記「ガードリング」の「変形部分(薄い部分)」は、「前記環状非可変壁部」の方に相当すると捉えざるを得ないが、この場合、今度は当該「前記環状非可変壁部」に向けて変形させるべき「前記環状可変部」に相当する部分が、上記「ガードリング」には存在しないことになってしまう。
したがって、どのように解釈しても請求人引用発明から当該構成要件12Pに到ることも不可能であり、前記(1)の「コネクター型接着補助器具」の形状に係る構成要件(12H、12I)だけでなく、その施工方法に係る構成の観点からも、請求人の容易想到無効の主張は失当というべきである。
(答弁書14頁13行?15頁下から6行)


9 本件発明13?16、20について
前記請求項12(本件発明15については請求項14)と同様の理由により、請求人引用発明は「請求項12(本件発明15については請求項14)に記載の接着補助システム」ないしは「前記複数のコネクター型接着補助器具」とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
(答弁書15頁下から2行?16頁下から4行、18頁6行?10行)


10 本件発明17について
(1)前記請求項7発明と同様に、請求人引用発明は、そもそも前記「コネクター型接着補助器具」部分において、「環状壁部」の構成を、課題解決のために敢えて「環状非可変壁部」と「環状可変部」とに分けるという発想が示されていないので、「環状非可変壁部」についてさらに細かく区分している本件請求項17発明についても、すべての構成要件不充足というべきである。
(2)特に、構成要件17Dの「環状非可変薄肉部」については、前記のとおり、請求人引用発明は、敢えて「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」(本件審判請求書5頁)、あるいは、「ガードリングに設けてある」「変形部分(薄い部分)」(甲1の44頁)というように、明らかに「環状可変薄肉部」の構成を採用しているのであるから、本件請求項17発明とは相容れない構成である。
(3)さらに、本件請求項17発明においては、「前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成され」と、「突出」の態様も限定されているところ、上記請求人引用発明の「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」等がこれに該当しないことは明白である。
(答弁書16頁下から3行?17頁15行)


11 本件発明18、19について
前記請求項17と同様の理由により、請求人引用発明は「前記複数のコネクター型接着補助器具」ないしは「請求項17に記載の接着補助システム」とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
さらに、本件請求項19発明においては、「前記環状可変部は、前記突起状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されている」と、その形状も限定されているところ、上記請求人引用発明の「肉薄で変形する」「ガードリングの端部」等がこれに該当しないことは明白である。
(答弁書17頁16行?18頁5行)


12 本件発明21について
(1)前記請求項12と同様の理由により、請求人引用発明は「請求項12…に記載の接着補助システム」(構成要件21F)とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
(2)なお、請求人は、その他の構成要件21B?21Eについて、甲20の「インテークマニホールド」に関する発明に開示されている旨主張している(本件審判請求書110頁以下)が、仮に当該構成に相当する記載があったとしても、甲20は自動車のエンジン部品に関する公開特許公報であり、本件の建築分野とはあまりにかけ離れた分野の技術である。
そして、当然のことながら、双方の資料に相方との組み合わせを示唆するような記載は一切ない。
甲21の「コインホルダ」に関する発明、甲22の「コイン状装飾体ホルダー」に関する発明、甲23の「RFIDタグ取付具」に関する発明、甲24の貴金属宝飾品に関する「ワッシャーセッティング」に関する発明もすべて同様である。
なお、甲33は、請求人は「本件特許と同様な壁面補修に関する技術である」(本件審判請求書115頁)として挙げているが、請求人の言及する「後部フック」は、当該発明においては、紐状の「繊維束」を長さ方向に掛止するものであるから、そもそも「環状板を…包囲した状態にて…挟時」(構成要件21E)の構成すら有していない。
したがって、請求人の組合せ容易想到無効の主張は、この観点からもすべて失当である。
(答弁書18頁11行?19頁6行)


13 本件発明22について
(1)前記請求項12と同様の理由により、請求人引用発明は「請求項12に記載の接着補助システム」(構成要件22E)とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
(2)請求人は、甲30および甲31に、「耐候性顔料含有樹脂材料で…形成してなる環状部材」(構成要件22C)が開示されていると主張する。
しかしながら、請求人の言及する「係合フレーム」(甲30,31)は、「支柱」や「支持棒」、「筐体」から成るもので、「基板の…面との間に挟時」(構成要件21E)できるような代物ではないのであるから、そもそも、およそ「環状板」(構成要件21E、22A)からなる「環状部材」(構成要件22C)たり得ない。
(3)また、請求人は、「当該環状板部…に位置…する複数の内側糸状片部」(構成要件22B)についても、甲25?甲32に開示されていると主張する。
しかしながら、これらに記載されたモルタル剥落防止の係止部の形状が仮に「内側糸状片部」に相当したとしても、これらは全て「接着補助器具」本体に位置しているものであって、何ら「当該環状板部…に位置…する」ものではない。
したがって、これらをいくら組み合わせても、「当該環状板部…に位置…する複数の内側糸状片部」(構成要件22B)の構成には到らないのである。
かえって、請求人は、「市場での実施品である甲検2のような場合は、コスト等の問題から「環状部材(ワッシャ)」を介してねじ止めする場合は、一般的に市販されている金属ワッシャが用いられているが、この場合、ワッシャ表面には、コストの問題から面側係合片部を形成していない。」(本件審判請求書119頁)と明記しているものであり、甲検2から構成要件22B,22Cへの想到自体を自ら否定していると言わざるを得ない。(言うまでもなく、「コストを度外視すれば、…したいという強い動機づけが存在する」などという理屈は、むしろ経済面での組合せ阻害要因を自認しているとしか解せない。)
請求人の当該主張も失当である。
(答弁書19頁7行?20頁11行)


14 本件発明23について
(1)前記請求項12と同様の理由により、請求人引用発明は「請求項12に記載の接着補助システム」(構成要件23E)とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
(2)また、甲30および甲31に「耐候性顔料含有樹脂材料で…形成してなる環状部材」(構成要件22C)が開示されているとする請求人主張についても、前記請求項22と同様、甲30および甲31には何ら「環状板」(構成要件21E、23A)に相当するものが示されていない以上、失当である。
(3)さらに、甲25?甲32に「当該環状板部の…複数の外側糸状片部」(構成要件23B)が開示されているとする請求人主張についても、前記請求項22と同様、これらは全て「接着補助器具」本体に関する構成に過ぎないから、失当である。
(答弁書20頁12行?下から3行)


15 本件発明24について
前記請求項22と同様の理由により、請求人引用発明は「請求項22に記載の接着補助システム」(構成要件23E)とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
(答弁書20頁下から2行?21頁2行)


16 本件発明25について
(1)前記請求項23,24と同様の理由により、請求人引用発明は「請求項23または24に記載の接着補助システム」(構成要件25C)とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
(2)加えて、請求人は、構成要件25A,25Bの「環状ボス部」に関する構成が甲27に開示されていると主張する。
しかしながら、当該「環状ボス部」はあくまで「前記複数の環状部材」を構成する一部分である(構成要件25A)ところ、前記のとおり、甲27に記載された請求人言及の「円筒部」やその「ストッパ」は、「接着補助器具」本体を構成するものであって、到底、「基板の…面との間に挟時」される「環状板」(構成要件21E)からなる「環状部材」を構成する部分とは言えない。
したがって、請求人の組合せ容易想到無効の主張は、この観点からも失当である。
(答弁書21頁7行?下から6行)


17 本件発明26?28について
前記請求項12(本件発明28については請求項27)と同様の理由により、請求人引用発明は「請求項12(本件発明28については請求項27)…に記載の接着補助システム」とは相容れない構成をとっているため、容易想到無効の主張は失当である。
(答弁書21頁下から5行?22頁10行)


第6 証拠
1 検甲第1号証の1?4
(1)平成30年9月14日に行われた証拠調べ(検証)の結果、検甲第1号証の1?4の各号証は以下の構成を有する。(第1回口頭審理及び証拠調べ調書)
ア 検甲第1号証の1
a 分解することにより、黒色の樹脂製の円柱状の円柱樹脂部品、黒色の樹脂製の円環状の円環樹脂部品、銀色の金属製の円筒状の円筒金属部品、銀色の金属製の金属ボルトからなる。
b 円柱樹脂部品
(a)円柱樹脂部品は、底面から上面に向けて拡大する円錐台状部分、円錐台状部分から環状に外方へ径方向に沿い延出する円柱状の円柱フランジ部分、円柱フランジ部分に連なる円柱フランジ部分より半径が小さい円柱状頭部分が同軸的に一体に形成されてなる。
(b)円柱状頭部分の上面には、分散状に突出する複数の分散係合片部がある。分散係合片部は円柱状頭部分の上面から上方へ凸な湾曲状(半ループ形状)に突出し、分散係合片部の両端部にて、円柱状頭部分の上面に並行に形成してなる複数条の凹部の各々ごとに、当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて円柱状頭部分の上面に一体に形成されている。
(c)円錐台状部分の外周面の一部から外方へ突出し、上部が円柱フランジ部分に連続する片部が一体に形成されている。
(d)円柱フランジ部分の下面には、「TAT SLB >N6< 3」及び1つのドットマークが刻印されている。
(e)円柱樹脂部品の中央には上下に貫通する貫通孔があり、貫通孔は底部から上部にかけて同軸的に、大径孔部、及び大径孔部より小さな内径の小径孔部が一体的に設けられている。分散係合片部は、円柱状頭部分の上面の小径孔部の外周側にて形成されている。
c 円環樹脂部品
(a)円環樹脂部品は、底部において外方に一体に延出する外環状部分を有する環状体からなっており、環状体の上部外周に沿って一体に環状体よりも薄肉の環状壁部を有し、環状壁部は下部環状壁部と下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる上部環状壁部からなっており、上部環状壁部は下部環状壁部より薄肉である。
(b)環状体の上面と下部環状壁部との境界部からその周方向に亘り間隔をおくように下部環状壁部の中央に向けて、内側に向かって傾斜状に延出する16個の係合片部が概ね等間隔に一体に突出している。係合片部は内側に湾曲した湾曲部と湾曲部の先端に一体に形成された球状部からなる。
d 円筒金属部品は、内部に雌ねじ孔を有する円筒部材であり、底部において外方に同軸的に一体に延出する円筒鍔部分を有する。
e 金属ボルトは、上下両端に雄ネジが切られており、中央に非ネジ部が形成され、一方の雄ネジと非ネジ部の境界には鍔部がある。
f 円柱樹脂部品、円環樹脂部品、円筒金属部品、金属ボルトは以下のように結合される。
(a)円環樹脂部品は、円柱樹脂部品の分散係合片部をその外周側から包囲するように円柱状頭部分に同軸的に圧入されて、円環樹脂部品の外環状部分は円柱樹脂部品の円柱フランジ部分に着座するように結合する。
(b)円筒金属部品の円筒部材は、円柱樹脂部品の小径孔部に大径孔部を介して同軸的に圧入されるとともに、円筒鍔部分は大径孔部に嵌装されている。
(c)金属ボルトの鍔部が形成された側の雄ネジは、円柱樹脂部品の上部(小径孔部側)から円筒金属部品の円筒部材の雌ねじ孔に螺合される。
g 円柱樹脂部品の円錐台状部分の底面直径は25.10mm、上部直径は29.34mm、円柱フランジ部分の直径は38.56mm、円柱状頭部分の直径は29.74mm、大径孔部の直径は18.27mm、小径孔部の直径は12.02mmである。円錐台状部分の高さは9.50mm、円柱フランジ部分の高さは4.14mm、円柱状頭部分の高さは8.91mmである。分散係合片部の突出高さは3.01mm、太さは0.60mm、間隔は2.36mmである。
h 円環樹脂部品の全体高さは11.89mmである。円環樹脂部品の外環状部分の高さは2.28mm、外側直径は38.71mm、環状体の外側直径は36.15mm、内側直径は30.02mmである。上部環状壁部の板厚は根元部分、先端部分でそれぞれ3回測定し、1回目(根元0.4mm、先端0.34mm)、2回目(根元0.38mm、先端0.32mm)、3回目(根元0.34mm、0.27mm)である。上部環状壁部の高さ2回測定し、1回目0.84mm、2回目0.82mmである。下部環状壁部の板厚は根元部分、先端部分でそれぞれ3回測定し、1回目(根元1.23mm、先端1.10mm)、2回目(根元1.29mm、先端1.06mm)、3回目(根元1.22mm、1.10mm)である。上部環状壁部及び下部環状壁部の高さは2.76mmである。
i 円筒金属部品の円筒部材の高さは21.95mm、外側直径は11.80mm、孔の直径は6.63mmである。円筒鍔部分の直径は18.49mm、高さ(厚さ)は2.93mmである。
j 金属ボルトの軸長さは37.07mm、鍔部が形成された側の雄ネジの径は7.76mmである。
k 金属ボルトの鍔部が形成された側の雄ネジの鍔部からの突出長さは25.33mmである。

イ 検甲第1号証の2
下記以外は、上記アと同じ。
a 金属ボルトの鍔部が形成された側の雄ネジの鍔部からの突出長さは27.64mmである。

ウ 検甲第1号証の3
下記以外は、上記アと同じ。
a 円柱部分の下面には、「TAT SLB >N6< 2」及び1つのドットマークが刻印されている。
b 金属ボルトの鍔部が形成された側の雄ネジの鍔部からの突出長さは36.39mmである。

エ 検甲第1号証の4
下記以外は、上記アb?d、g?iと同じ。
a 円柱部分の下面には、「TAT SLB >N6< 4」及び1つのドットマークが刻印されている。

(2)検甲第1号証の1?4から把握できる発明の認定
上記(1)で記載した事項を踏まえると、検甲第1号証の1?4から、次の発明(以下「検甲1発明」という。)が把握できると認められる。

「以下の構成を有する部材。
a 分解することにより、黒色の樹脂製の円柱状の円柱樹脂部品、黒色の樹脂製の円環状の円環樹脂部品、銀色の金属製の円筒状の円筒金属部品、銀色の金属製の金属ボルトからなる。
b 円柱樹脂部品
(a)円柱樹脂部品は、底面から上面に向けて拡大する円錐台状部分、円錐台状部分から環状に外方へ径方向に沿い延出する円柱状の円柱フランジ部分、円柱フランジ部分に連なる円柱フランジ部分より半径が小さい円柱状頭部分が同軸的に一体に形成されてなる。
(b)円柱状頭部分の上面には、分散状に突出する複数の分散係合片部がある。分散係合片部は円柱状頭部分の上面から上方へ凸な湾曲状(半ループ形状)に突出し、分散係合片部の両端部にて、円柱状頭部分の上面に並行に形成してなる複数条の凹部の各々ごとに、当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて円柱状頭部分の上面に一体に形成されている。
(c)円錐台状部分の外周面の一部から外方へ突出し、上部が円柱フランジ部分に連続する片部が一体に形成されている。
(d)円柱樹脂部品の中央には上下に貫通する貫通孔があり、貫通孔は底部から上部にかけて同軸的に、大径孔部、及び大径孔部より小さな内径の小径孔部が一体的に設けられている。分散係合片部は、円柱状頭部分の上面の小径孔部の外周側にて形成されている。
c 円環樹脂部品
(a)円環樹脂部品は、底部において外方に一体に延出する外環状部分を有する環状体からなっており、環状体の上部外周に沿って一体に環状体よりも薄肉の環状壁部を有し、環状壁部は下部環状壁部と下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる上部環状壁部からなっており、上部環状壁部は下部環状壁部より薄肉である。
(b)環状体の上面と下部環状壁部との境界部からその周方向に亘り間隔をおくように下部環状壁部の中央に向けて、内側に向かって傾斜状に延出する16個の係合片部が概ね等間隔に一体に突出している。係合片部は内側に湾曲した湾曲部と湾曲部の先端に一体に形成された球状部からなる。
d 円筒金属部品は、内部に雌ねじ孔を有する円筒部材であり、底部において外方に同軸的に一体に延出する円筒鍔部分を有する。
e 金属ボルトは、上下両端に雄ネジが切られており、中央に非ネジ部が形成され、一方の雄ネジと非ネジ部の境界には鍔部がある。
f 円柱樹脂部品、円環樹脂部品、円筒金属部品、金属ボルトは以下のように結合される。
(a)円環樹脂部品は、円柱樹脂部品の分散係合片部をその外周側から包囲するように円柱状頭部分に同軸的に圧入されて、円環樹脂部品の外環状部分は円柱樹脂部品の円柱フランジ部分に着座するように結合する。
(b)円筒金属部品の円筒部材は、円柱樹脂部品の小径孔部に大径孔部を介して同軸的に圧入されるとともに、円筒鍔部分は大径孔部に嵌装されている。
(c)金属ボルトの鍔部が形成された側の雄ネジは、円柱樹脂部品の上部(小径孔部側)から円筒金属部品の円筒部材の雌ねじ孔に螺合される。」


2 検甲第2号証
(1)平成30年9月14日に行われた証拠調べ(検証)の結果、検甲第2号証は以下の構成を有する。(第1回口頭審理及び証拠調べ調書)
a 黒色の樹脂製の略円盤状のディスク部材、金属製のねじ部材、金属製の円環板部材からなる。
b ディスク部材
(a)中央に中央孔部を有する円型基板であり、円型基板の両面の一方の面から突出するように中央孔部の周囲に分散して複数の面側係合片部が一体的に形成されている。
(b)円型基板の中央孔部の外周側にて複数条の(長手状)開口部を並行して分散状に有し、複数の面側係合片部は、複数条の開口部の各々に、当該開口部を湾曲状(半ループ形状)に跨ぐように、開口部の長手方向に間隔をおいて設けられている。
(c)円型基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する複数の周側係合片部を有し、周側係合片部は、それぞれ、円型基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部と、当該基部の延出端部から面側係合片部が設けられてない側に折れ曲がるように延出する折れ曲がり部を有する。
c ディスク部材の円型基板の直径は35.39mm、厚さは0.99mm、中央孔部の直径は4.44mmである。
d ねじ部材の頭部直径は6.60mm、長さは25.56mmである。
e 円環板部材の内径は6.62mm、外径は12.75mm、厚さは1.04mmである。

(2)検甲第2号証から把握できる発明の認定
上記(1)で記載した事項を踏まえると、検甲第2号証から、次の発明(以下「検甲2発明」という。)が把握できると認められる。

「以下の構成を有する部材。
a 黒色の樹脂製の略円盤状のディスク部材、金属製のねじ部材、金属製の円環板部材からなる。
b ディスク部材
(a)中央に中央孔部を有する円型基板であり、円型基板の両面の一方の面から突出するように中央孔部の周囲に分散して複数の面側係合片部が一体的に形成されている。
(b)円型基板の中央孔部の外周側にて複数条の(長手状)開口部を並行して分散状に有し、複数の面側係合片部は、複数条の開口部の各々に、当該開口部を湾曲状(半ループ形状)に跨ぐように、開口部の長手方向に間隔をおいて設けられている。
(c)円型基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する複数の周側係合片部を有し、周側係合片部は、それぞれ、円型基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部と、当該基部の延出端部から面側係合片部が設けられてない側に折れ曲がるように延出する折れ曲がり部を有する。」


3 検甲第3号証
(1)平成30年9月14日に行われた証拠調べ(検証)の結果、検甲第3号証は以下の構成を有する。(第1回口頭審理及び証拠調べ調書)
下記以外は、上記1(1)アと同じ。
a 灰色の樹脂製の円柱状の円柱樹脂部品、灰色の樹脂製の円環状の円環樹脂部品からなる。
b 上部環状壁部の板厚は根元部分、先端部分でそれぞれ3回測定し、1回目(根元0.31mm、先端0.23mm)、2回目(根元0.31mm、先端0.26mm)、3回目(根元0.31mm、0.27mm)である。下部環状壁部の板厚は根元部分、先端部分でそれぞれ3回測定し、1回目(根元1.50mm、先端1.44mm)、2回目(根元1.47mm、先端1.41mm)、3回目(根元1.50mm、1.40mm)である。
c 円柱部分の下面には刻印はない。
d 各部品結合後の金属ボルトの突出長さは25.24mmである。

(2)検甲第3号証から把握できる発明の認定
上記(1)で記載した事項を踏まえると、検甲第3号証から把握できる発明(以下「検甲3発明」という。)は、検甲1発明と同じであると認められる。


4 甲第5号証の1?4
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、甲第5号証の1?4には、次の事項が記載されている。
ア 甲第5号証の1




イ 甲第5号証の2




ウ 甲第5号証の3




エ 甲第5号証の4





5 甲第7号証の1?8
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、甲第7号証の1?8には、次の事項が記載されている。
ア 甲第7号証の1?3
受注日を2016年9月21日として、株式会社ヤブ原大阪支店から、東レ・アムテックス株式会社へ、納入先を西武建設とする、スーパールーフボンドSLB(L37)500個の注文書、出荷依頼書及び送り状。

イ 甲第7号証の4?8
受注日を2016年9月30日として、株式会社ヤブ原大阪支店から、東レ・アムテックス株式会社へ、納入先を田中住建とする、スーパールーフボンドSLB(L37)500個の注文書、出荷依頼書、送り状、倉庫出荷指図書及び到着原票。


6 甲第11号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第11号証には、次の事項が記載されている。(下線は本審決で付した。以下同様。)
ア 「タイル剥落防止に32ミリディスク」「本郷コーポレーション」(見出し)

イ 「既に2000棟超への建物に採用実績がある外壁タイル剥落防止対策『ウォールキャッチャー』の販売を担う本郷コーポレーション・・・が、・・・進化版『ウォールキャッチャー・ディスク』を考案した。」(右欄1行?4行)

ウ 「コンクリート躯体と外壁タイルを張り合わせるモルタル層の劣化が、剥離の原因とされている。・・・躯体とモルタル層の追随性が強く求められる。十数年前に販売したウォールキャッチャーはセパレータ先端に取り付けられた径30ミリ、高さ25ミリほどの筒型パーツ。・・・従来のウォールキャッチャーはセパレーター位置に限定されるが、ディスクを使えば、集中的に対策を施せる利点も生まれる。・・・新築マンションに両製品を併用した形で初適用され・・・売り込みを開始した。」(本文1段1行?3段17行)

エ 「ディスク、ワッシャ、アンカーの3点セット」、「新築向け製品のウォールキャッチャー」、「コンクリート躯体を35ミリほど削孔し電動ドライバーで取り付ける」について、それぞれの以下の写真が記載されている。






7 甲第13号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった情報である甲第13号証には、次の事項が記載されている。








8 甲第16号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第16号証には、次の事項が記載されている。

「カーボンブラックは、ゴムや樹脂等の高分子工業分野では広く用いられる耐候性改善用の添加材で、数十から数百m^(2)/gのBET吸着比表面積を有する微粉末炭素材料である。」(252頁左欄下から3行?右欄1行)


9 甲第17号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第17号証には、次の事項が記載されている。

ア 114頁の表5において、「カーボンブラック」欄と「ポリアミド」欄の交点は「○」(一般によく使用されている)であることが看て取れる。

イ 「5.3 耐候性・・・カーボンブラックなどの無機顔料などが良好な性質を示す。・・・図-3にはポリプロピレンフィルムによる顔料およびその添加量の影響を示す。これからみると,カーボンブラック,・・・は,紫外線遮断効果がよく,さらに添加量が増えるに従い,その効果が増加している。とくにカーボンブラックはその効果が著しいので通信ケーブル,自動車部品などに多く使用されている。」(120頁右欄3行?122頁左欄5行)


10 甲第18号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第18号証には、次の事項が記載されている。

「紫外線を遮断するものにカーボンブラック添加の方法があり,ナイロンの劣化防止のために被覆するネオプレン膜の厚みならびにカーボンブラック添加の有無についての検討も報告されている。」(615頁右欄下から6行?3行)


11 甲第20号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第20号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0007】そこで、本発明の目的は、簡単な構造でボルトの脱落を防止し、かつボルトの交換が容易なフランジ部材およびそれを用いたインテークマニホールドを提供することにある。」

イ 「【0014】フランジ部材20は、フランジ本体21および爪部22を備えている。フランジ本体21には、吸気パイプ11、12、13と接続される図示しない開口部が吸気パイプ11、12、13に対応して3カ所形成されている。フランジ本体21および爪部22は、樹脂により一体に成形されている。
【0015】フランジ本体21には、ワッシャ付きボルト30が挿入されるボルト孔23が貫通して形成されている。ボルト孔23は、フランジ本体21に複数形成されている。なお、図2では、説明の簡単のため、フランジ本体21の両端部にワッシャ付きボルト30を組み付ける場合について示している。
【0016】図1に示すように、ボルト孔23の内周側にはボルトの締め付け力を保持するための金属製のカラー部材24が配設されている。爪部22は、ボルト孔23の端部側からボルト孔23が形成されている方向とは反対方向へ突出して形成されている。爪部22の内部には、ワッシャ付きボルト30が収容される。
【0017】ワッシャ付きボルト30は、インテークマニホールド1とシリンダブロック2とを接続して固定する。ワッシャ付きボルト30は、ボルト本体31とワッシャ32とから構成されている。ボルト本体31は、頭部311および軸部312を有している。頭部311の外径は、爪部22の内径よりも小さく形成されている。軸部312には、雄ねじ部312aが形成されている。軸部312はワッシャ32を貫通している。図3に示すように、ワッシャ32に形成されている内孔32aは、その内径が雄ねじ部312aのねじ山の外径および頭部311の外径より小さいため、ワッシャ32はボルト本体31から脱落しない。ボルト本体31の雄ねじ部312aは、シリンダブロック2に形成されている雌ねじ部2aにねじ込まれる。ボルト本体31がシリンダブロック2にねじ込まれると、爪部22の内部にワッシャ32および頭部311が収容される。
【0018】図1および図3に示すように、爪部22の内周側には、爪部22の内周方向へ突出する突出部25が形成されている。突出部25は、ワッシャ32の外周部32bよりも爪部22の内周側へ突出している。爪部25は、図3に示すようにワッシャ付きボルト30の周方向へ等間隔に4カ所配設されている。
【0019】突出部25は、図1に示すように爪部22の軸方向の断面の形状がカギ形状である。突出部25の反フランジ本体側は傾斜面になっているため、ワッシャ32の挿入が容易である。また、突出部25のフランジ本体側はワッシャ32の形状に対応しているため、ワッシャ32は突出部25のフランジ本体側と当接し、移動が制限される。」


12 甲第21号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第21号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】 樹脂製の平板部と、
この平板部に複数で一組として一体的に設けられ、一枚のコインを係脱可能に保持する複数組の弾性を有した保持爪と、
この一組の保持爪で保持したコインの外縁が一部を横切る状態で前記平板部に設けられた複数の開口または凹部を備え、
前記複数組の保持爪を、保持するコインの大きさ毎に区画して配設した、
ことを特徴とするコインホルダ。」

イ 「【0023】図10は保持爪の他の形状を示す説明図である。この図10に示すように、保持爪11?16の保持面を段部を有するものとしても、同様にコインを保持することができる。」


13 甲第22号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第22号証には、次の事項が記載されている。

「【0008】
【実施例】以下、本発明を図面をもって更に詳細に説明する。図1は本発明のコイン状装飾体ホルダ-の第1例を示す斜視図、図2はその側面図、図3は図1のA-A線での断面図である。又、図4はその主要部の拡大断面図である。図において、1はコイン状装飾体ホルダ-の基体となるリング部であり、このリング部1の一方側にはその全周にフランジ部2が形成されており、他方側には4つの爪状フランジ部3が設けられ、コイン状装飾体Aをリング部1内に嵌め込んでから爪状フランジ部3を折り曲げてコイン状装飾体Aを保持する構造となっている。」


14 甲第23号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第23号証には、次の事項が記載されている。

「【0015】
本実施形態のRFIDタグ取付具1は、図1から図4に示すように、コイン型タグのRFIDタグTがはめ込まれる凹部である円形嵌合部2と、該円形嵌合部2の縁に設けられはめ込まれたRFIDタグTの上部に当接して支持する2つの爪部3と、円形嵌合部2内の中央に形成され該円形嵌合部2よりも小さい直径の貫通孔4とを備えている。
また、このRFIDタグ取付具1は、円形嵌合部2を中央に配して全体が横長の菱形板状にゴム材で形成されている。」


15 甲第24号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第24号証には、次の事項が記載されている。

「【考案を実施するための最良の形態】
【0006】
本体に石よりも少しだけ小さい道を作り、表から落ちないようにし、溝にワッシャーをセットしワッシャーのバネを利用して石を留めている。」


16 甲第25号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第25号証には、次の事項が記載されている。

「【0036】本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具において、係止部の形状としては、未硬化のモルタル内に深く侵入できる程度の剛性を有し、かつ硬化後のモルタルを支持するだけの破断強度を有するものであれば特に限定されない。図1,2や図5の実施形態では、係止部2の形状をループ状にしたが、例えば図7(A)?(D)に示すようなフック(鉤)状であってもよく、図7(E)のようなフィラメント状であってもよい。
【0037】図7(A)の係止部2は円弧状フック、同(B)の係止部2はL形フック、同(C)の係止部2はT形フック、同(D)の係止部2はキノコ形または球状フックである。また、図7(E)の係止部2はフィラメント状であるが、その形状はストレート状であっても、ウェーブ状であってもよい。いずれの場合も、列状に並べた状態の内面側をピン中子によって成形され、または延伸を加えるように成形される。
【0038】また、係止部2の配列としては、図1や図5の実施形態では、多数の係止部2の列を平行に配列したが、例えば図6の実施形態のように、放射状に配置したものであってもよい。」


17 甲第26号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第26号証には、次の事項が記載されている。

「【0039】係止部の形状としては、未硬化のモルタル内に深く侵入できる剛性を有し、かつ硬化後のモルタルを支持するだけの破断強度を有するものであれば特に限定されない。図1の実施形態の係止部2はループ形状であるが、例えば図5(A)?(D)に示すようなフック(鉤)状であってもよく、図5(E)に示すようなロッド状であってもよい。フック状については、図5(A)の係止部2は円弧状フック、同(B)の係止部2はL形フック、同(C)の係止部2はT形フック、同(D)の係止部2はキノコ形または球状フックである。
【0040】また、係止部2の配列は、図1、図3、図4の実施形態では、多数の係止部2が並列的に配置されたものであるが、例えば図6の実施形態のように、放射状に配置したものでもよい。また、図7(A),(B)に示す実施形態のように、さらに支持突起4の内壁面に係止部2を配置してもよい。」


18 甲第27号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第27号証には、次の事項が記載されている。

「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るモルタル剥落防止具1の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明に係るモルタル剥落防止具1は、コンクリート壁Aに埋設されたナット管2に固定ボルト3を介して固定した後、その上からモルタルB等が塗付けられるもので、図2(a),(b)に示すように、エンジニアリングプラスチック等の合成樹脂から一体的に構成された円筒部11および第1モルタル剥落防止部12と、後述するようにポリエチレン等の熱可塑性樹脂等から構成された第2モルタル剥落防止部としての線状部材13とから構成される。なお、図1において、5は、後述する型枠4の保持のために使用するセパレータであり、図1に示すように、本発明に係るモルタル剥落防止具1は、セパレータ5に固定されたナット管2に固定しても良いし、セパレータ5なしにコンクリート壁Aの壁面に埋設されたナット管2に固定するようにしても良い。また、このモルタル剥落防止具1は、後述する図6以降に示すように型枠4を支持していたスペーサー7を、硬化したコンクリ-ト壁面Aから脱型した後に、そのコンクリ-ト壁面Aに形成される大径円形状凹部A1に挿入される。
【0014】・・・
【0015】
第1モルタル剥落防止部12は、図2?図4に示すように、円筒部11の上面から所定間隔、例えば、90度間隔で立設され上方へ所定長さ、すなわち第1モルタル剥落防止部12の下面がコンクリ-ト壁面Aの高さ以上になるように、円筒部11から上方へ延びて形成されて延びた4本の柱脚部12aと、その各柱脚部12aからコンクリ-ト壁面Aに沿って折曲がり、円筒部11の中心から離れる半径方向に延びる4本の半径方向骨部12
bと、円筒部11の中心をその中心として所定の第1半径で各半径方向骨部12bの中間に連設する小円環骨部12cと、円筒部11の中心をその中心として小円環骨部12cの第1半径より大きい所定の第2半径で各半径方向骨部12bの外周端部に連設する大円環骨部12dとから構成される。
【0016】
第1モルタル剥落防止部12の大円環骨部12dと半径方向骨部12bとの連結(交点)部分の裏面側には、凸部12d1が設けられている。そのため、後述するように、第1モルタル剥落防止部12の大円環骨部12dと半径方向骨部12bとの各連結(交点)部分に、第2モルタル剥落防止部である線状部材13を結び付ける等して掛止する際、各連結部分の突出した凸部12d1に線状部材13を結び目が掛止して、線状部材13等の第2モルタル剥落防止部を半径方向骨部12bや、小円環骨部12cおよび大円環骨部12dの上面と平行に延ばすことが容易となる。なお、第1モルタル剥落防止部12の大円環骨部12dと半径方向骨部12bとの連結(交点)部分の裏面側に凸部12d1を設けることは、任意であり、省略しても良い。
【0017】
なお、この例では、柱脚部12aは、円筒部11の上面から90度の所定間隔で立設して説明したが、本発明では、これに限らず、45度や、60度の所定間隔で8本や6本等の複数本、立設させても良い。半径方向骨部12bも、柱脚部12aと同様に、4本に限らず、8本や6本等、何本設けても良い。さらに、小円環骨部12cと大円環骨部12d以外に、円環骨部を設けても良い。また、第1モルタル剥落防止部12の円筒部11から柱脚部12aを介し延びてコンクリ-ト壁面Aと平行に外側へ広がる半径方向骨部12bや小円環骨部12cおよび大円環骨部12dは、例えば、図1等に示すように、その下面がコンクリ-ト壁面Aの高さ以上になるように構成しているが、本発明では、そこまで突出してなく、半径方向骨部12bや、小円環骨部12cおよび大円環骨部12dの上面がコンクリ-ト壁面Aの壁面より低く、第1モルタル剥落防止部12全体が、コンクリ-ト壁面Aの後述する大径円形状凹部A1(図6や図7等参照。)に埋まるように構成しても勿論良い。
【0018】
第2モルタル剥落防止部である線状部材13は、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を溶解して押し出し後、高延伸した合成樹脂製の線材であって、塑性変形により形状保持する素材で、例えば、テクノロート(三井化学株式会社の登録商標)等を使用する。そして、線状部材13は、例えば、図2(a),(b)に示すように、本ほぼ半分に折り返して使用されており、半分に折り返したその先端を折返し部分に通すことにより、掛止孔11dに掛止している。なお、線状部材13を半分に折り返したときの長さは、隣接するモルタル剥落防止具1間の距離のほぼ1/2または1/2以上にすることが望ましい。このようにすると、コンクリート壁面Aに第2モルタル剥落防止部である線状部材13が満遍なく広がって、その上から塗り付けられるモルタル中に広く埋設されるため、従来よりもモルタルやタイル等の外装材の剥落防止性能を向上させることができる。
【0019】
そして、この線状部材13は、第1モルタル剥落防止部12の柱脚部12aではなく、例えば、第1モルタル剥落防止部12の大円環骨部12dと半径方向骨部12bとの連結(交点)部分に結び付けるように掛止している。そのため、この線状部材13は、その掛止部分(結び目)が大円環骨部12に沿って水平方向に回転するように移動したり、柱脚部12aに沿って上下方向に移動することがなくなり、この点で均等かつ確実にコンクリ-ト壁面Aに沿って延びる。その結果、その上から塗付けられるモルタルBに埋設された場合、硬化したモルタルBの剥落を効果的に防止できる。ただし、線状部材13を第1モルタル剥落防止部12の大円環骨部12dと半径方向骨部12bとの連結(交点)部分に掛止することは任意であり、これに限らず、連結(交点)部分以外の大円環骨部12dに掛止したり、半径方向骨部12bや、小円環骨部12c、さらには柱脚部12aに掛止するようにしても良い。」


19 甲第28号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第28号証には、次の事項が記載されている。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンクリート表面に形成されたコーン跡に埋設させて、該コンクリート表面に塗布されるモルタルの接着補助を行う補助具であって、前記コーン跡に埋設される埋栓部と前記モルタルに係合する係止部とを同一の樹脂で一体成形したモルタル接着補助具。
・・・
【請求項3】 前記係止部をループ状またはフック状に形成した請求項1または2に記載のモルタル接着補助具。」


20 甲第29号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第29号証には、次の事項が記載されている。

ア 「実用新案登録請求の範囲
コンクリート壁面に形成された木コーン穴から突出したセパレータの端部に螺着されるキヤツプ本体と、このキヤツプ本体に一端を取り付けた複数の線材とで構成したことを特徴とする剥落防止用キヤツプ。」

イ 「(ヘ) 考案の効果
以上のように、本考案にあつては、コンクリート壁面に形成された木コーン穴から突出したセパレータの端部に螺着されるキヤツプ本体と、このキヤツプ本体に一端を取り付けた複数の線材とで構成したものであるから、型枠解体後コンクリート壁面に残る木コーン穴から突出するセパレータの端部にキヤツプ本体を螺着することができ、その後に木コーン穴からコンクリート壁面に亘つて塗り込まれるモルタルによつて、キヤツプ本体に取り付けた複数の線材がそのモルタル中に埋設し、コンクリート壁面からのモルタル壁の浮き、剥離を防止すると共に、剥落を防止することができる。」(5欄3行?6欄3行)


21 甲第30号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第30号証には、次の事項が記載されている。

「【考案を実施するための最良の形態】
【0015】
本考案によるタイル剥落防止埋コンの実施形態を、図1に示す斜視図と図2に示す係合フレーム、図3に示す剥落防止埋コンの組み合わせ状態を示す断面図及び図4に示す施工例図と図5の建物が災害を受けた状態を示す参考図で説明する。
【0016】
本考案における剥落防止埋コン1を形成する埋コン2はモルタル素材とし、その大きさは高さ約20mmで径は約35mm程度の略コーン状を成す小径側の中央に係合フレーム3を半埋設し、かつ大径側には金属製のネジ管4を埋設して成るタイル剥落防止埋コン1とする。尚、前記する埋コン2は略コーン状であるが、円柱状でもよい。
【0017】
以下、さらに詳述する。前記する埋コン2はモルタル素材による略コーン状を成す埋コン2の小径側の中央に半埋設する係合フレーム3は、細くても丈夫でかつ適度な柔軟性を有するエンジニアプラスチック素材により、図2のように高さ約21mmで径が約27mmほどのリング5の4か所下部に、端部に突部6を設けた一定長の支柱7を4本取り付けるとともに、そのリング5の支柱7部位から内側中央に4本の支持棒8,8に連結して成る係合縁9付き筒体10を取り付けて成る円形状の係合フレーム3を形成し、その係合フレーム3の下部には、金属製でかつ中ほどに防水壁11を設けたネジ管4を組み合わせた状態で、前記係合フレーム3の筒体10より上部が前記埋コン2の外部面に突設するように埋設形成して成る埋コン本体12を形成する。
【0018】
さらに、以上のように形成した埋コン本体12には、前記係合フレー3側に、別体形成される係止ツバ13付き軸足14と、前記係合フレーム3を覆う大きさの軸足穴15付きキャップ16を組み合わせて一組とするタイル剥落防止埋コン1を構成する。
【0019】
本考案によるタイル剥落防止埋コン1は以上のような構成とするので、埋コン2はコンクリートに馴染むモルタル製とするとともに、その片面に半埋設する係合フレーム3は、細くても丈夫でかつ柔軟性を有するナイロン樹脂等のエンジニアプラスチック素材による円形状の係合フレーム3を埋コン2外部に突設させるとともに、その係合フレーム3の支柱7,7は突部6付き支柱7が埋コン2に半埋設する埋コン本体12を形成するので、係合フレーム3が強く引っ張られると伸びるが埋コン2から分離することはない埋コン本体12を形成する。
【0020】
加えて、その埋コン本体12には、従来から型枠形成時に用いられる軸足13と、かつ前記埋コン本体12の係合フレーム3の突設部を覆うキャップ16が組み合わされるタイル剥落防止埋コン1となるので、型枠Bと前記軸足14を取り外した際は、埋コン2の外部に係合フレーム3上部が突設するので、構築物外壁の下地材となるモルタルEを塗り付け易いタイル剥落防止埋コン1を形成する。
【0021】
次に、以上のようなタイル剥落防止埋コン1を用いて構築物の外壁の施工手順を、以下、図4の(イ)から(ヘ)図に示す施工例図で説明する。
【0022】
まずコンクリート構築物を施工する際に用いる丸セパレータAに、図4の(イ)に示すようにして、本考案のタイル剥落防止埋コン1を前記丸セパレータAの端部に取り付けて後に、締め付け具Cを持って型枠Bを形成した上でコンクリートDを打設する。さらにコンクリートDが硬化した後に締め付け具Cと型枠Bを取り外すと、(ハ)図のように軸足14とキャップ16は埋コン本体12に組み合わされた状態で構築物壁面と面一で残る。
【0023】
さらに、その状態から(ニ)図のように軸足14を取り外すと、係止ツバ13に係合しているキャップ16も取り外されるので、その外壁面に下地材とするモルタルEを塗り付けると(ハ)図のように突設している係合フレーム3や壁面にも容易に均一に塗り込められるとともに、その上に外装材となるタイルFを張り付けると、(ヘ)図のように美しいタイル張りの外装構築物を完成できる。
【0024】
以上のような施工において、本考案品のタイル剥落防止埋コン1を取り付けると、万一、地震などによって外壁面に亀裂が起きても、モルタルが喰い込んでいるエンジニアプラスチック製の係合フレーム3の支柱7は引き伸ばされるため、図5に示すようにモルタルEやタイルFの剥落を最小限に抑えることができる。さらに施工時においては、埋コン本体12に軸足14とキャップ16を組み合わせてコンクリートDを打設した後に、型枠Cを取り外してから軸足14を引き抜くに連動してキャップ16も取り外されるため、係合フレーム3の周囲が空いた状態に形成できるので、埋コン本体12に縁を設けなくても現場のコンクリートDによって、従来品のように係合フレーム12の周囲に隙間を作れる機能的な埋コンとなる。
【0025】
本考案のタイル剥落防止埋コン1における埋コン2の素材はモルタル素材が好ましいが、合成樹脂製でもよい。また係合フレーム4の形状は円形状であるが角状でも差し支えないし、柔軟性があればナイロン素材以外いずれのエンジニアプラスチックでも構わないなど、いずれも特に限定するものではない。」


22 甲第31号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第31号証には、次の事項が記載されている。

「【考案を実施するための最良の形態】
【0014】
本考案によるタイル剥落防止埋コンの実施形態を、図1に示す斜視図と図2に示す係合フレーム、図3に示す剥落防止埋コンのA-A線拡大断面図及び図4?図7に示す使用状態参考図で説明する。
【0015】
本考案におけるタイル剥落防止埋コン1を形成する埋コン本体2はモルタル素材とし、その大きさは高さ約30mmで径45mm程度の円柱状を成す片面の中ほどに、深さ約8mmで径35mmほどの凹部3を形成した内側及び内部に、ナイロン樹脂等のエンジニアプラスチック素材(以下、エンジニアプラスチックと称す)による係合フレーム4を半埋設し、かつ対向側に金属製のネジ管5を埋設したタイル剥落防止埋コン1とする。
【0016】
以下、さらに詳述する。前記する埋コン本体2に埋設する係合フレーム4は、細くても丈夫でかつ適度な柔軟性を有するエンジニアプラスチック素材により、図2に示すように高さ約8mmで径12mmほどの筒体6下部に、一回り大きい嵌合縁7を有する前記筒体6の上端部から四方に延長する支持棒8,8を設けた端部に、径が約30mm程度のリング9を設けるとともに、そのリング9の四か所の連結部から下部に延長する支柱10,10端部に突部11を設けて成る係合フレーム4を一体形成して成るものである。
【0017】
以上のような係合フレーム4を、前記モルタル素材による埋コン本体2の凹部3内に半埋設するとともに、その反対側には、型枠形成時の丸セパレータAに取り付けるための金属製のネジ管12を、前記係合フレーム4の筒体6下部の嵌合縁7に組み合わせた状態で埋コン本体2内に一体に埋設して、本考案によるタイル剥落防止埋コン1を構成する。尚、前記するネジ管は金属素材であるが強度があれば合成樹脂製でも差し支えないし、また埋コン本体2の外形は円柱状であるが、台形でも逆台形状でも構わないものとする。
【0018】
本考案によるタイル剥落防止埋コン1は以上のような構成とするので、埋コン本体2はコンクリートに馴染むモルタル製とするとともに、その片面に設けた凹部3には、細くても丈夫でかつ柔軟性を有するナイロン樹脂等のエンジニアプラスチック素材による丸枠状の係合フレーム4であるとともに、そのリング9下部には、突部11付き支柱10を半埋設して、前記凹部3内に係合フレーム4の上部を位置させているので、例えば、強く引っ張られて伸びても埋コン本体2から分離することはない。
【0019】
また係合フレーム4の筒体6下部の嵌合縁7には、丸セパレータAに螺合するネジ管12を組み合わせて一体に埋設しているので、型枠形成時の丸セパレータAに取り付けるのも容易な構成であり、例えば、極めて強い地震を受けてコンクリート外壁面やモルタルに亀裂が起った場合でも、図7に示すようにタイルBやモルタルF壁が万一剥がれても、係合フレーム4が引き伸ばされながらもタイルBを保持するので、剥離して落下するのを最小限にとどめられるタイル剥落防止埋コン1を形成する。」


23 甲第32号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第32号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0009】
【発明の実施の形態】図1(A),(B)は、本発明のモルタル接着補助具の一例を示す。図において、モルタル接着補助具5は、繊維で強化された強化樹脂からなる円板状の基盤部1と、その片側表面に列状に突設する多数のループ状の係止部2とから構成されている。基盤部1が強化樹脂からなるのに対して、係止部2は補強繊維やフィラーで補強されない非強化樹脂からなり、この基盤部1と係止部2とが射出成形により一体成形されている。
【0010】さらに基盤部1の係止部2側の表面には、ループの内径と同一径からなる多数の凹溝3が多数の係止部2の列方向と交差するように形成されている。また、基盤部1の中央部には、アンカーピン等の固定金具を挿入するための挿入孔4が貫通している。
【0011】上記モルタル接着補助具5は、既設のコンクリート建造物の外壁或いはコンクリート床面を表面層を撤去することなくモルタルを塗布して補修するとき、その剥落防止用前処理のための手段として、図2?5に示すように使用される。」

イ 「【0024】係止部の形状としては、図1、図6、図7(A),(B)に例示するようなループ状が好ましい形状であるが、未硬化のモルタルの塗布圧に抗するだけの剛性を有してモルタル内部に深く侵入し、また硬化後のモルタルを支持するだけの破断強度を有する構成のものであれば特に限定されない。例えば、図7の(C),(D),(E),(F)に示す実施形態のようにフック状や、図7(G)に示す実施形態のようにロッド状であってもよい。フック状については、図7(C)の係止部2は円弧状フック、同(D)の係止部2はL形フック、同(E)の係止部2はT形フック、同(F)の係止部2はキノコ形または球状フックである。」


24 甲第33号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第33号証には、次の事項が記載されている。

「【実施例3】
【0088】
図9は他の実施例を説明するものである。実施例1で説明した部分に関しては説明を省略し、図9において実施例1で説明した要素については共通する符号を用いてその説明を省略する。
【0089】
図9(a)図示の状態でタイル20a?20fが浮きタイルであった場合、これらの浮きタイルの目地部21に、ディスクカッター等を用いて、タイル20a?20fの端部側面が露出するように溝条22を形成する。
【0090】
また、ドリルを用いて、溝条22の所定箇所に少なくともコンクリート躯体面より所用の深さに到達する深さの挿入穴25a、25bを形成する。
【0091】
次に、接着・固定材を溝条22と挿入穴25a、25bに充填、注入するとともに、溝条22の長手方向長さを有する複数本の繊維状素材28を一方向性に揃えて束ねた繊維束23で溝条22を埋め込み、接着・固定材を繊維束23に浸潤させて一体化する。
【0092】
また、先端挿入部27bと後端フック部27aとを有する金属製のアンカーピン27を、後端フック部27aで繊維束23を掛止するように先端挿入部27bから挿入穴25a、25bに挿入する。
【0093】
これによって、複数本の繊維状素材28と、接着・固定材とで浮きタイルであるタイル20a?20fとコンクリート躯体30を接着・固定するものである。
【0094】
この実施例でも、実施例1、2と同じく複数本の繊維状素材28が一方向性に揃えて束ねられている繊維束23に接着・固定材が浸潤し一体化した構法による本発明の繊維状浮きタイル繋止材によって、浮きタイルであるタイル20a?20fの端部側面と、コンクリート躯体30との間が接着・固定され、優れた耐久性と強度及び高い靭性が発揮される。」


第7 無効理由1、2についての判断
1 検甲1発明?検甲3発明が本件特許の出願前に公然実施された発明であるか否かについて
(1)検甲1発明、検甲3発明について
上記第6の1(1)に記載された検甲第1号証の1?4の各構成と甲第5号証の1?4の製作図面を比較すると、検甲第1号証の1?4の構成は、甲第5号証の1?4の製作図面に記載されたスーパーループボンドと称する部材と同じ構成を有しているから、甲第5号証の1?4は検甲1発明(検甲第1号証の1?4)の製作図面と認められる。
そして、当該スーパーループボンドは、甲第7号証の1?8によれば、2016年9月頃には西武建設、田中住建に出荷されたことが推認できるから、本件特許の出願日である2017年3月23日以前に、製造販売されていたと認められる。
したがって、検甲1発明は、本件特許の出願前に公然実施された発明であると認められる。
また、検甲3発明は、検甲1発明と同じ構成を有しているので、検甲3発明についての判断等は、検甲1発明についての判断等に代える。

(2)検甲2発明について
上記第6の2(1)に記載された検甲第2号証の構成と甲第11号証の「ディスク、ワッシャ、アンカーの3点セット」の写真を比較すると、検甲第2号証の構成は、当該写真に記載されたウォールキャッチャーディスクと称する部材と概ね同じ構成を有していると認められる。
また、同様に甲第13号証におけるウォールキャッチャーディスクと称する部材も、検甲第2号証の構成と概ね同じであると認められる。
したがって、検甲第2号証は、甲第11号証、甲第13号証の記載に基づいて本郷コーポレーションが製造販売していた製品であると推認できる。
そして、甲第11号証は本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、甲第13号証は本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった情報であるので、検甲2発明は、本件特許の出願前に公然実施された発明であると認められる。


2 本件発明1について
(1)本件発明1と検甲1発明の対比
ア 検甲1発明の「円柱樹脂部品」は、「底面から上面に向けて拡大する円錐台状部分、円錐台状部分から環状に外方へ径方向に沿い延出する円柱状の円柱フランジ部分、円柱フランジ部分に連なる円柱フランジ部分より半径が小さい円柱状頭部分が同軸的に一体に形成されてなる」から、本件発明1の「コネクター」の「大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部と、当該円錐台状胴部の前記大径側端部から前記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部と、前記円錐台状胴部及び前記円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部」と同じ構成を備えているといえる。
したがって、検甲1発明の「円柱樹脂部品」、「円錐台状部分」、「円柱フランジ部分」、「円柱状頭部分」は、それぞれ検甲1発明の「コネクター」、「円錐台状胴部」、「環状フランジ部」、「円柱状頭部」に相当する。

イ 検甲1発明の 「円柱樹脂部品」は、樹脂材料で一体に形成してなるから、本件発明1の「所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる」コネクターと、「樹脂材料でもって、一体に形成してなる」点で共通する。

ウ 検甲1発明の「円柱樹脂部品」の「円柱状頭部分の上面に一体に形成されている」「分散状に突出する複数の分散係合片部」は、本件発明1の「円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部」に相当する。

エ 検甲1発明の「円環樹脂部品」は、「円柱樹脂部品の分散係合片部をその外周側から包囲するように円柱状頭部分に同軸的に圧入されて、円環樹脂部品の外環状部分は円柱樹脂部品の円柱フランジ部分に着座するように結合する」から、本件発明1の「環状体」の「複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように前記円柱状頭部に同軸的に圧入されて前記環状フランジ部に着座する」と同じ構成を備えているといえる。
したがって、検甲1発明の「円環樹脂部品」は、本件発明1の「環状体」に相当する。

オ 検甲1発明の「円環樹脂部品」は「底部において外方に一体に延出する外環状部分を有する環状体からなっており、環状体の上部外周に沿って一体に環状体よりも薄肉の環状壁部を有し、環状壁部は下部環状壁部と下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる上部環状壁部からなっており、上部環状壁部は下部環状壁部より薄肉である」ことから、検甲1発明の「下部環状壁部」、「上部環状壁部」は、それぞれ本件発明1の「環状体」の「環状非可変壁部」、「環状可変部」と同じ位置関係にあるから、両者はそれぞれ「下環状壁部」、「上環状部」である点で共通する。
また、検甲1発明の「上部環状壁部」は、「下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる」ので、「下部環状壁部」から突出しているということができるから、検甲1発明の「下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる」は、本件発明1の「環状非可変壁部の前記環状フランジ部とは反対側の環状端部から前記環状フランジ部から離れる方向に突出する」に相当する。

カ 検甲1発明の「環状壁部」は、「下部環状壁部と」「上部環状壁部からなって」いるので、本件発明1の「環状壁部」に相当する。

キ 検甲1発明の「円環樹脂部品」の「環状壁部」は樹脂材料で一体に形成してなるから、本件発明1の「所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる」環状体と、「樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる」点で共通する。

ク 上記ア?キから見て、検甲1発明の「円柱樹脂部品」、「円環樹脂部品」は、本件発明1の「コネクター」、「環状体」に相当し、構成部材も実質的に対応していることから、検甲1発明の「円柱樹脂部品」、「円環樹脂部品」からなる部材は、本件発明1の「コネクター型接着補助器具」と同様な機能を有しているといえる。
したがって、検甲1発明の「円柱樹脂部品」、「円環樹脂部品」からなる部材は、本件発明1の「コネクター型接着補助器具」に相当する。

ケ 検甲1発明において、「円環樹脂部品は、底部において外方に一体に延出する外環状部分を有する環状体からなっており、環状体の上部外周に沿って一体に環状体よりも薄肉の環状壁部を有し、環状壁部は下部環状壁部と下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる上部環状壁部からなっており、上部環状壁部は下部環状壁部より薄肉である」ものであり、検甲1発明の「外環状部分」、「環状体」、「下部環状壁部」、「上部環状壁部」は、それぞれ本件発明1の「環状非可変着座部」、「環状非可変厚肉部」、「環状非可変薄肉部」、「環状可変部」に相当するから、検甲1発明の、「環状体の環状壁部」の「環状非可変壁部」は、「環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から環状フランジ部とは反対方向へ延出する環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してな」る点を備えている。

コ 検甲1発明の「環状壁部は下部環状壁部と下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる上部環状壁部からなっており」は、本件発明1の「環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されており」と、「環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されており」の点で共通する。

サ したがって、両者は、次の一致点1で一致し、相違点1、2及び3で相違する。
(一致点1)
「大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部と、当該円錐台状胴部の前記大径側端部から前記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部と、前記円錐台状胴部及び前記円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部と、前記円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部とを、樹脂材料でもって、一体に形成してなるコネクターと、
前記複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように前記円柱状頭部に同軸的に圧入されて前記環状フランジ部に着座する下環状壁部と、当該下環状壁部の前記環状フランジ部とは反対側の環状端部から前記環状フランジ部から離れる方向に突出する上環状部とを、樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる環状体とを備えており、
当該環状体の前記環状壁部において、
前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、
環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されているコネクター型接着補助器具。」

(相違点1)
コネクター、環状体の樹脂材料に関して、本件発明1は「所定の耐光性顔料」を「含有」しているのに対し、検甲1発明は「黒色の樹脂製」である点。
(相違点2)
環状壁部に関して、本件発明1は「環状非可変壁部」、「環状可変部」からなるのに対し、検甲1発明は「下部環状壁部」、「下部環状壁部より薄肉である」「上部環状壁部」からなる点。
(相違点3)
「環状可変部」について、本件発明1が「環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から」「突起状に突出するように形成されて」いるのに対し、検甲1発明が「下部環状壁部の上部外周に沿って一体に延びる」点。

(2)各相違点に対する判断
ア 当審の判断
(ア)相違点1について
本件明細書には、耐光性顔料に関して、「【0122】本第1実施形態において、当該所定の耐光性顔料含有樹脂材料としては、例えば、合成樹脂材料の一種であるエンジニアリングプラスチックのうちのナイロンの一種、株式会社東レ製射出成形用非強化ナイロン6にカーボンブラック等の黒色顔料を均一に含有させたものが採用されている。」と記載されている。
一方、検甲1発明の製作図面である甲第5号証の1の「注)」の欄には「1.材料はナイロン6(東レ CM1016K) UL94 V2とする」と記載され、甲第8号証の1から「スーパーループボンド」が「アミラン」を含有すること、甲第8号証の2から「アミラン」が「カーボンブラック」を含有することが読み取れるから、検甲1発明の「円柱樹脂部品」、「円環樹脂部品」には、ナイロン6にカーボンブラック等の黒色顔料が含有されていると解される。
したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点1が実質的な相違点であるとしても、カーボンブラックは黒色の顔料としては文献を示すまでもなく一般に広く用いられている顔料であり、検甲1発明の「円柱樹脂部品」、「円環樹脂部品」は「黒色の樹脂製」であるから、黒色の顔料として、カーボンブラックを用いることは、当業者が適宜選択しうる程度の事項にすぎない。

(イ)相違点2について
本件発明1の「環状非可変壁部」、「環状可変部」は、それぞれ「非可変」、「可変」という表現から見て、「環状非可変壁部」は変形不可能な「壁部」、「環状可変部」は変形可能な「部」を意図していると解される。このような解釈は、本件明細書の「【0162】これにより、一方の型枠は、環状突起部126を環状薄肉部123の延出端部に向けて変形しながら、環状薄肉部123の延出端部に押圧されることとなる。その結果、変形した環状突起部126は、一方の型枠の対向面との間に隙間を形成することなく当該対向面に一様に密着し得る。これが、上述のように環状突起部126をタコ足環状体120の環状壁部120aに備えるようにした根拠である。なお、本実施形態では、環状突起部126は、環状可変部としての役割を果たす。これに対し、環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123は、環状突起部126とは異なり、変形不能であることから、それぞれ、環状非可変着座部、環状非可変厚肉部及び環状非可変薄肉部としての役割を果たす。なお、当該環状非可変着座部、環状非可変厚肉部及び環状非可変薄肉部は、まとめて、環状非可変壁部ともいう。」の記載とも合致する。
しかしながら、実際の部材において、力が作用する以上全く変形しないものはないことから、本件発明1の「非可変」は、厳密な意味で全く変形しないということではなく、「可変」、「非可変」という用語により、変形のしやすさの程度を表していると解することが相当である。
そして、検甲1発明の「下部環状壁部」、「上部環状壁部」については、可変、非可変についての特定はされていないが、「上部環状壁部」は、「下部環状壁部より薄肉である」ことから、「下部環状壁部」より変形しやすいことは明らかである。
したがって、検甲1発明の「下部環状壁部」、「上部環状壁部」は、本件発明1の「環状非可変壁部」、「環状可変部」と同様の構成及び機能を有しているといえる。
よって、相違点2は実質的な相違点ではない。

(ウ)相違点3について
検甲1発明において、「上部環状壁部」は「下部環状壁部の上部外周に沿って」延びていることにより、製品として完成していることから、「上部環状壁部」を「下部環状壁部の上部外周」以外の部分に形成する動機付けはない。
また、甲第1号証?甲第60号証には、相違点3に係る本件発明1の構成は何ら記載されておらず、相違点3に係る構成を示唆する記載もなく、さらに検甲1発明に対して、上記動機付けを示唆するような記載もない。

イ 請求人の主張に対して
(ア)請求人は、「検甲1、検甲3は、薄厚で変形しやすい「上部環状壁部」が、厚厚で変形しにくい「下部環状壁部」の外周に沿って一体に延びるものであって、型枠への当接にあたっては上側に位置する「上部環状壁部」が先に変形する。この場合、「上部環状壁部」が「下部環状壁部」とともに「外壁」を構成するか否かといったことは、その「変形する」という機能上の意味において、関係がない。」、「型枠の凸部が先端部分の内周側に当たれば、先端部分は外周側に倒れて潰れ易く、型枠の凸部が先端部分の外周側に当たれば、先端部分は内周側に倒れて潰れ易くなる」、「「円環樹脂部品」(ガードリング)はナイロン樹脂で形成されているから柔軟性があり、倒れた場合に破断することはない。」、「被請求人は、検甲1、検甲3について『当該外壁先端部分は、すべて外周でつながっているため、不均一に、当接した順に外面側に倒れようとする結果、外周の一部が極度に引っ張られ、破断する』旨主張する。しかし、検甲1、検甲3の「上部環状壁部」について、型枠に当接した場合に外周の一部が破断するかどうかは「上部環状壁部」の形状だけが影響するのではなく材質も影響するところ、非請求人は「形状のみ」に基づいて主張している。検甲1、検甲3はナイロン樹脂で形成されていて(甲5の2)柔軟性があり、たとえ「上部環状壁部」の全周が外周側に倒れて潰れるようなことがあっても、全周が延びることとなって外周の一部が破断するようなことはない。被請求人の主張は材質を考慮しておらず失当である。」旨主張する(上記第4の2(2)オ)。
しかしながら、検甲1発明の、「上部環状壁部」が「下部環状壁部」の「外周」に沿って延びる形状であることから、前記「下部環状壁部」は、前記「上部環状壁部」から見て断面で左右非対称形状であることになり、そうである以上は、上方から力が加わった際に、前記「上部環状壁部」が倒れやすい方向に偏りがないということはできない。また、前記「上部環状壁部」が、ある程度柔軟な材料で形成されていたとしても、上方から力が加わった際に、常に「破断」を免れるともいい切れない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(イ)請求人は、「審決の予告では、「検甲1発明において、「上部環状壁部」は「下部環状壁部の上部外周に沿って」延びていることにより、製品として完成していることから、「上部環状壁部」を「下部環状壁部の上部外周」以外の部分に形成する動機付けはない。」と判断する」が、「審決の予告における「製品として完成している。」という判断はどのような意味を有するのか不明である。」、「「製品が完成している」ことを理由に、相違点に係る検甲1発明の構成について変更する動機付けが存在しないとした審決予告の判断は誤りである。」、「さらに、相違点4は、いわば「環状可変部」の形成位置の相違である。」、「実際、相違点4に係る本件発明の構成も、相違点4に係る検甲1発明の構成も、「環状可変部」の形成位置が相違するだけで、「環状可変部」の機能(型枠に当接した際に弾性変形する)には相違がなく、また、発明であるコネクター形接着補助器具の機能にも相違はない。したがって、相違点4は、まさに「環状可変部」の形成位置の相違でしかない。審決の予告では、相違点4に係る本件発明の構成について、技術的意義等を検討することなく、単に相違点であることを理由に、動機付けがないとの判断をしている。」、「この点で、審決の予告は、相違点4に係る本件発明の構成について、進歩性の容易想到性の判断を実質的に行っておらず、その判断は誤りである。」旨主張する(上記第4の2(2)カ。なお、審決の予告における「相違点4」は、本審決における「相違点3」である。)。
しかしながら、相違点3に係る本件発明の構成についての進歩性の容易想到性の判断は、上記ア(ウ)及び上記(ア)で説示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明1は、検甲1発明と同一ではなく、また、検甲1発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


3 本件発明2?11について
本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項としている本件発明2?11は、上記2.(2)及び(3)で示した判断を踏まえると、検甲1発明と同一ではなく、また、検甲1発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


4 本件発明12について
(1)本件発明12と検甲1発明の対比
ア 本件発明12における「大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部と、当該円錐台状胴部の前記大径側端部から前記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部と、前記円錐台状胴部及び前記円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部と、前記円錐台状胴部及び前記環状フランジ部の少なくとも一方の一部から外方へ突出する回り止め部と、前記円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部とを、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に成形してなるコネクターと、前記複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように前記円柱状頭部に同軸的に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変壁部と、当該環状非可変壁部の前記環状フランジ部とは反対側の環状端部から前記環状フランジ部から離れる方向に突出する環状可変部とを、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる環状体とを備えるコネクター型接着補助器具」は、本件発明1、2の構成と同一である。

イ 検甲1発明は「コネクター型接着補助器具」であり、コンクリート体の表面に形成されるモルタル壁の前記コンクリート体との接着を補助するためのものであるから、検甲1発明は、本件発明12の「コンクリート体の表面に形成されるモルタル壁の前記コンクリート体との接着を補助するための接着補助システム」であるといえる。

ウ 検甲1発明は「コネクター型接着補助器具」であるから、本件発明12の「モルタル壁が、前記各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具を介し前記コンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させることで、形成されていること」と、「モルタル壁が、前記各複数のコネクター型接着補助器具を介し前記コンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させることで、形成されている」点で共通する。

エ したがって、両者は、上記2(1)の相違点1、2に加えて、以下の相違点4、5で相違する。

(相違点4)
「コネクター型接着補助器具」について、本件発明12が、「複数のコネクター型接着補助器具は、それぞれ、前記円錐台状胴部にて、互いに対向して設置してなる木材或いは合成樹脂材料からなる両型枠の一方の型枠から分散状に他方の型枠に向けて延出する複数のスペーサボルトに、前記環状体の前記環状可変部を前記他方の型枠に対向させるように、連結され、かつ、前記環状壁部の前記環状非可変壁部に向けて前記環状可変部を変形させるように前記他方の型枠を押圧してな」るのに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(相違点5)
本件発明12が、「中央孔部を形成してなる基板と、当該基板にその両面の一方の面から突出するように前記中央孔部の周囲に分散して形成される複数の面側係合片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成される複数のディスク型接着補助器具とを備えており」、「複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記コンクリート体が前記両型枠の間に前記複数のスペーサボルト及び前記複数のコネクター型接着補助器具を介し打ち込まれる生コンクリートの硬化により形成された後、前記両型枠を除去した上で、前記複数のコネクター型接着補助器具とは異なる位置にて、前記コンクリート体の表面に分散状に配設され、かつ、前記基板にて、前記中央孔部を通してネジを前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられており、前記モルタル壁が、前記各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具を介し前記コンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させる」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。

イ 相違点4について
検甲1発明において、相違点4に係る構成について明示的に特定されていないものの、検甲1発明の「円環樹脂部品」、「下部環状壁部」、「上部環状壁部」は、それぞれ本件発明12の「環状体」、「環状非可変壁部」、「環状可変部」と同様の構成であると共に、検甲1発明と本件発明12は共に「コネクター型接着補助器具」を用いるものであるから、検甲1発明においても相違点4に係る構成のような状態で用いられるものであると解される。
したがって、相違点4は、実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点4が実質的な相違点であるとしても、「コネクター型接着補助器具」として用いられるものにおいて、相違点4に係る構成のような状態で用いられることは技術常識であるから(例えば、甲第26号証)、検甲1発明において、相違点4に係るような構成とすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

ウ 相違点5について
(ア)検甲2発明の「ディスク部材」は、「黒色の樹脂製」であり「中央に中央孔部を有する円型基板であり、円型基板の両面の一方の面から突出するように中央孔部の周囲に分散して複数の面側係合片部が一体的に形成されている」から、本件発明12の「中央孔部を形成してなる基板と、当該基板にその両面の一方の面から突出するように前記中央孔部の周囲に分散して形成される複数の面側係合片部とを有するように」、「樹脂材料でもって、一体的に形成される」「ディスク型接着補助器具」に相当する。

(イ)本件明細書には、耐光性顔料に関して、「【0122】本第1実施形態において、当該所定の耐光性顔料含有樹脂材料としては、例えば、合成樹脂材料の一種であるエンジニアリングプラスチックのうちのナイロンの一種、株式会社東レ製射出成形用非強化ナイロン6にカーボンブラック等の黒色顔料を均一に含有させたものが採用されている。」と記載されている。
カーボンブラックは黒色の顔料としては文献を示すまでもなく一般に広く用いられている顔料であり、検甲2発明の「ディスク部材」は、「黒色の樹脂製」であるから、黒色の顔料として、カーボンブラックを用いることは、当業者が適宜選択しうる程度の事項にすぎない。

(ウ)相違点5の「複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記コンクリート体が前記両型枠の間に前記複数のスペーサボルト及び前記複数のコネクター型接着補助器具を介し打ち込まれる生コンクリートの硬化により形成された後、前記両型枠を除去した上で、前記複数のコネクター型接着補助器具とは異なる位置にて、前記コンクリート体の表面に分散状に配設され、かつ、前記基板にて、前記中央孔部を通してネジを前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられ」る点(以下「相違点5A」という。)について、甲第11号証には、「ディスク、ワッシャ、アンカーの3点セット」及び「コンクリート躯体を35ミリほど削孔し電動ドライバーで取り付ける」ことについて、写真が記載されており(上記第6の6エ)、これらの写真を参酌すれば、検甲2発明の「ディスク部材」を、相違点5Aのようにコンクリート体の表面に組み付けて使用することは当業者にとって自明であるし、仮にそうでないとしても、そのように使用することは当業者が適宜選択しうる事項にすぎない。

(エ)相違点5の「モルタル壁が、前記各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具を介し前記コンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させる」点(以下「相違点5B」という。)について、甲第11号証には、「ディスク、ワッシャ、アンカーの3点セット」、「新築向け製品のウォールキャッチャー」及び「コンクリート躯体を35ミリほど削孔し電動ドライバーで取り付ける」ことについて、写真が記載されており(上記第6の6エ)、当該記載の「新築向け製品のウォールキャッチャー」は、検甲1発明の部材と類似の部材であるから、これらの記載から、検甲1発明及び検甲2発明の各部材を、相違点5Bのようにすることは当業者にとって自明であるし、仮にそうでないとしても、そのように使用することは当業者が適宜選択しうる事項にすぎない。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明12は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 本件発明13について
(1)本件発明13と検甲1発明の対比
本件発明13と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5に加えて、以下の相違点6で相違する。

(相違点6)
樹脂材料に関して、本件発明13は「所定の耐光性顔料」として「6ナイロンに耐光性黒色顔料を均一に含有して」いるのに対し、検甲1発明は「黒色の樹脂製」である点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

イ 相違点6について
相違点6について、上記2(2)ア(ア)で説示したとおり、検甲1発明の「円柱樹脂部品」、「円環樹脂部品」には、ナイロン6にカーボンブラック等の黒色顔料が含有されていると解される。
そして、「ディスク型接着補助器具」に関しては、「コネクター型接着補助器具」と一緒に使用される樹脂製品であるから、同じ材料とすることは製造の効率性等を考慮し当業者が適宜採用しうる常套手段にすぎない。
したがって、検甲1発明において、相違点6に係る構成とすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明13は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 本件発明14について
(1)本件発明14と検甲1発明の対比
検甲1発明において、「分散係合片部」に関して「円柱状頭部分の上面には、分散状に突出する複数の分散係合片部がある。分散係合片部は円柱状頭部分の上面から上方へ凸な湾曲状(半ループ形状)に突出し」ていると特定されているから、検甲1発明の「分散係合片部」、「円柱状頭部分の上面から上方へ凸な湾曲状(半ループ形状)に突出し」は、それぞれ本件発明14の「ロッド状湾曲片部」、「複数のロッド状湾曲片部からなり、当該複数のロッド状湾曲片部は、それぞれ、前記円柱状頭部の前記延出端面から外方へ凸な湾曲状に突出するように形成されている」に相当する。

本件発明14と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5で相違する。

(2)各相違点に対する判断
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明14は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7 本件発明15について
(1)本件発明15と検甲1発明の対比
検甲1発明において、(分散係合片部は)「分散係合片部の両端部にて、円柱状頭部分の上面に並行に形成してなる複数条の凹部の各々ごとに、当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて円柱状頭部分の上面に一体に形成されている」ことから、検甲1発明の「複数条の凹部」は、本件発明15の「複数条の凹部」に相当し、同様に、検甲1発明の(分散係合片部は)「分散係合片部の両端部にて、円柱状頭部分の上面に並行に形成してなる複数条の凹部の各々ごとに、当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて円柱状頭部分の上面に一体に形成されている」は、本件発明15の「円柱状頭部にはその前記延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように複数条の凹部が互いに並行に形成されており、前記複数のロッド状湾曲片部は、その両端部にて、前記複数条の凹部の各々ごとに当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて前記円柱状頭部の前記延出端面に形成されている」に相当する。

本件発明15と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5で相違する。

(2)各相違点に対する判断
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明15は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


8 本件発明16について
(1)本件発明16と検甲1発明の対比
検甲1発明において、「環状体の上面と下部環状壁部との境界部からその周方向に亘り間隔をおくように下部環状壁部の中央に向けて、内側に向かって傾斜状に延出する16個の係合片部が概ね等間隔に一体に突出している。係合片部は内側に湾曲した湾曲部と湾曲部の先端に一体に形成された球状部からなる」ことから、検甲1発明の「係合片部」は、本件発明16の「周側係合片部」に相当する。また、検甲1発明の「環状体の上面と下部環状壁部との境界部からその周方向に亘り間隔をおくように下部環状壁部の中央に向けて、内側に向かって傾斜状に延出する16個の係合片部が概ね等間隔に一体に突出している。係合片部は内側に湾曲した湾曲部と湾曲部の先端に一体に形成された球状部からなる」は、本件発明16の「環状壁部の前記環状非可変壁部からその内方に向けて突出するように前記環状壁部と一体に」「複数の周側係合片部を備えており、当該複数の周側係合片部は、前記環状非可変壁部の内周方向に間隔をおいて位置するように形成されている」に相当する。

本件発明16と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5で相違する。

(2)各相違点に対する判断
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明16は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


9 本件発明17について
(1)本件発明17と検甲1発明の対比
検甲1発明は、上記2(1)ケないしサで検討したように、「環状壁部の環状非可変壁部は、円柱状頭部に圧入されて環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、前記環状壁部の環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成され」る構成を備えている。

本件発明17と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2及び相違点3、上記4(1)の相違点4、5で相違する。

(2)各相違点に対する判断
相違点1、2及び相違点3に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明17は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


10 本件発明18?19について
本件発明17の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項としている本件発明18?19は、上記9.(2)及び(3)で示した判断を踏まえると、検甲1発明、検甲2発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

11 本件発明20について
(1)本件発明20と検甲1発明の対比
本件発明20と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5に加えて、以下の相違点7で相違する。

(相違点7)
「ディスク型接着補助器具」について、本件発明20は、「基板はその中央孔部の外周側にて複数条の開口部を分散状に形成してなり、前記複数の面側係合片部は、前記複数条の開口部の各々ごとに、当該開口部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて形成されている」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

イ 相違点7について
検甲2発明の「ディスク部材」は、「円型基板の中央孔部の外周側にて複数条の(長手状)開口部を並行して分散状に有し、複数の面側係合片部は、複数条の開口部の各々に、当該開口部を湾曲状(半ループ形状)に跨ぐように、開口部の長手方向に間隔をおいて設けられている」から、当該構成は、相違点7に係る構成である「基板はその中央孔部の外周側にて複数条の開口部を分散状に形成してなり、前記複数の面側係合片部は、前記複数条の開口部の各々ごとに、当該開口部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて形成されている」に相当する。

ウ 相違点1、2、4、5、7についての判断(まとめ)
そうすると、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基づいて、相違点1、2、4、5、7に係る本件発明20の構成の如くすることは、当業者であれば容易に想到しうる事項であるといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明20は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


12 本件発明21について
(1)本件発明21と検甲1発明の対比
本件発明21と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5に加えて、以下の相違点8で相違する。

(相違点8)
「ディスク型接着補助器具」について、本件発明21は、「基板に前記一方の面から前記複数の面側係合片部の内側にて前記中央孔部の周りに間隔をおいて形成される複数のフックを設けてなり、当該複数のフックは、それぞれ、前記基板の前記一方の面から立ち上がるように延出する立ち上がり部と、当該立ち上がり部から前記基板の中心側へ折れ曲るように延出する折れ曲がり部とでもって、構成されて、環状板を、前記各立ち上がり部により包囲した状態にて前記各折れ曲がり部により前記基板の前記一方の面との間に挟持してなる」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

イ 相違点8について
検甲2発明の「ディスク部材」は、本件発明21の「ディスク型接着補助器具」に相当するものであるが、相違点8に係る構成について何ら特定されておらず、検甲2発明の「ディスク部材」において、相違点8のような「フック」を設けることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
また、甲第1号証?甲第60号証には、相違点8に係る本件発明21の構成は何ら記載されておらず、相違点8に係る構成を示唆する記載もなく、さらに検甲1発明あるいは検甲2発明に対して、相違点8に係る構成を設ける動機付けを示唆するような記載もない。

ウ 請求人の主張に対して
請求人は、「本発明の「フック」は甲20により文献公知となった発明であるばかりか、甲21?24、33を参照すれば、フックの構成については、当業者が適宜選択する設計事項であるため、格別の困難性もない」旨(上記第4の2(8))主張する。
しかしながら、甲第20号証?甲第24号証、甲第33号証に記載されているフック状の構成は、コンクリート構造体に対するモルタルの接着を補助するような技術分野とは大きく異なる技術分野に関するものであり、上記各文献のフック状の構成を、検甲2発明の「ディスク部材」に適用する動機付けはないというべきである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明21は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


13 本件発明22について
(1)本件発明22と検甲1発明の対比
本件発明22と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5に加えて、以下の相違点9で相違する。

(相違点9)
「ディスク型接着補助器具」について、本件発明22は「環状板部と、当該環状板部の内周縁部から当該内周縁部に沿い間隔をおくように位置して前記環状板部の表面側へ延出する複数の内側糸状片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の上記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられている」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

イ 相違点9について
検甲2発明の「ディスク部材」は、本件発明21の「ディスク型接着補助器具」に相当するものであるが、相違点9に係る構成について何ら特定されておらず、検甲2発明の「ディスク部材」において、相違点9のような「環状板部」を設けることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
また、甲第1号証?甲第60号証には、相違点9に係る本件発明22の構成は何ら記載されておらず、相違点9に係る構成を示唆する記載もなく、さらに検甲1発明あるいは検甲2発明に対して、相違点9に係る構成を設ける動機付けを示唆するような記載もない。

ウ 請求人の主張に対して
請求人は、「検甲2には、22A「環状板部と」、22D「前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の上記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられている」環状部材を備えた基本的構成が開示されている。甲30には、軸足穴15(「中央孔部」に相当)の周囲に樹脂製の係合フレーム3(「環状部材」に相当する)を配置することで、モルタルの剥落を防止する構成が開示されている。甲31にも同様の構成が開示されている。甲25には、「環状部材」を備えないが、22B「(基板の)内周縁部から当該内周縁部に沿い間隔をおくように位置して(基板の)穴に向かって表面側へ延出する複数の内側糸状片部とを有するように、」という係止部の構成が記載されている。・・・検甲2及び甲25、甲30、甲31は、共通する出願人であり、同一技術分野・同一当業者であることは自明であり、これらを組み合わせることには何ら阻害要因がないばかりでなく、技術の転用が容易な設計事項である。・・・また、甲26?29、甲32の各引用文献には、壁面のモルタル剥落防止のための補助具において、穴を覆うように傾けられた形状の係止部をはじめ、各種形状の係止部の構成に関しては様々な態様のものが開示され、当業者の設計事項として適宜選択されていることがわかる。よって、請求項22に係る特許発明は、検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25、周知文献甲26?32に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、容易に想到することができる。」旨(上記第4の2(9))主張する。
しかしながら、甲第25号証、甲第30号証、甲第31号証に記載されている構成は、甲第25号証、甲第30号証、甲第31号証に記載されている構成のどの部分を選択的に採用し、検甲2発明の「ディスク部材」にどのように適用するのか想定できないほど、検甲2発明の「ディスク部材」とは基礎となる構造が異なっているため、検甲2発明の「ディスク部材」において、相違点9のような「環状板部」を設けることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明22は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


14 本件発明23について
(1)本件発明23と検甲1発明の対比
本件発明23と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5に加えて、以下の相違点10で相違する。

(相違点10)
「ディスク型接着補助器具」について、本件発明23は「環状板部と、当該環状板部の外周縁部から当該外周縁部に沿い間隔をおいて前記環状板部の表面側へ延出する複数の外側糸状片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の前記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられている」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。
(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

イ 相違点10について
検甲2発明の「ディスク部材」は、本件発明23の「ディスク型接着補助器具」に相当するものであるが、相違点10に係る構成について何ら特定されておらず、検甲2発明の「ディスク部材」において、相違点10のような「環状板部」を設けることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
また、甲第1号証?甲第60号証には、相違点10に係る本件発明23の構成は何ら記載されておらず、相違点10に係る構成を示唆する記載もなく、さらに検甲1発明あるいは検甲2発明に対して、相違点10に係る構成を設ける動機付けを示唆するような記載もない。

ウ 請求人の主張に対して
請求人は、「検甲2には、22A「環状板部と」、22D「前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の上記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられている」環状部材を備えた基本的構成が開示されている。また、22C「前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、」は、甲30、甲31には中央孔部の周囲に配設された樹脂製の係止部材が記載されており、「耐光性顔料含有樹脂材料」を選択することは単なる公知材料の選択であり、基板と同様な材質とすることは当業者において単なる設計事項に過ぎない。さらに、係止部が外側に延びる「外側糸状片部」の構成は甲27、甲29を参照すれば当業者が適宜採用し得る周知の構成である。検甲2及び甲27、29、30、31は、同一技術分野・同一当業者であることは自明であり、これらを組み合わせることには何ら阻害要因がないばかりでなく、技術の転用は設計事項に過ぎない。・・・よって、請求項23に係る特許発明は、検甲1及び甲1?10、検甲2及び甲11?15、甲16?19、甲25?32に基づけば、本件特許出願時に当業者であれば、容易に想到することができる。」旨(上記第4の2(10))主張する。
しかしながら、甲第27号証、甲第29号証、甲第30号証、甲第31号証に記載されている構成は、甲第27号証、甲第29号証、甲第30号証、甲第31号証に記載されている構成のどの部分を選択的に採用し、検甲2発明の「ディスク部材」にどのように適用するのか想定できないほど、検甲2発明の「ディスク部材」とは基礎となる構造が異なっているため、検甲2発明の「ディスク部材」において、相違点10のような「環状板部」を設けることは当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明23は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


15 本件発明24について
本件発明22の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項としている本件発明24は、上記13.(2)及び(3)で示した判断を踏まえると、検甲1発明、検甲2発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


16 本件発明25について
本件発明23の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項としている本件発明25は、上記14.(2)及び(3)で示した判断を踏まえると、検甲1発明、検甲2発明及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


17 本件発明26について
(1)本件発明26と検甲1発明の対比
本件発明26と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5に加えて、以下の相違点11で相違する。

(相違点11)
「ディスク型接着補助器具」について、本件発明26は、「基板は、前記中央孔部の外周側にて複数の長手状開口部を分散して形成してなり、前記複数の面側係合片部は、それぞれ、前記基板の前記一方の面にて、前記複数の長手状開口部のうちの各対応長手状開口部をその幅方向に跨ぐように湾曲状に形成されるとともに当該各対応長手状開口部の長手方向には間隔をおいて形成されている」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

イ 相違点11について
検甲2発明の「ディスク部材」は、「円型基板の中央孔部の外周側にて複数条の(長手状)開口部を並行して分散状に有し、複数の面側係合片部は、複数条の開口部の各々に、当該開口部を湾曲状(半ループ形状)に跨ぐように、開口部の長手方向に間隔をおいて設けられている」から、当該構成は、相違点11に係る構成である「基板は、前記中央孔部の外周側にて複数の長手状開口部を分散して形成してなり、前記複数の面側係合片部は、それぞれ、前記基板の前記一方の面にて、前記複数の長手状開口部のうちの各対応長手状開口部をその幅方向に跨ぐように湾曲状に形成されるとともに当該各対応長手状開口部の長手方向には間隔をおいて形成されている」に相当する。
ウ 相違点1、2、4、5、11についての判断(まとめ)
そうすると、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基づいて、相違点1、2、4、5、11に係る本件発明26の構成の如くすることは、当業者であれば容易に想到しうる事項であるといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明26は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


18 本件発明27について
(1)本件発明27と検甲1発明の対比
本件発明27と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5に加えて、以下の相違点12で相違する。

(相違点12)
「ディスク型接着補助器具」について、本件発明27は、「基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出するように形成してなる複数の周側係合片部を具備する」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。

イ 相違点12について
検甲2発明の「ディスク部材」は、「円型基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する複数の周側係合片部を有し」ているから、当該構成は、相違点12に係る構成である「基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出するように形成してなる複数の周側係合片部を具備する」に相当する。

ウ 相違点1、2、4、5、12についての判断(まとめ)
そうすると、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基づいて、相違点1、2、4、5、12に係る本件発明27の構成の如くすることは、当業者であれば容易に想到しうる事項であるといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明27は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


19 本件発明28について
(1)本件発明28と検甲1発明の対比
本件発明28と検甲1発明を比較すると、上記2(1)の相違点1、2、上記4(1)の相違点4、5、上記18(1)の相違点12に加えて、以下の相違点13で相違する。

(相違点13)
「ディスク型接着補助器具」について、本件発明28は、「複数の周側係合片部は、それぞれ、前記基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部と、当該基部の延出端部から折れ曲がるように延出する折れ曲がり部とにより形成されている」のに対し、検甲1発明はそのような特定がなされていない点。

(2)各相違点に対する判断
ア 相違点1、2、4、5、12について
相違点1、2に対する判断は、上記2(2)ア(ア)ないし(イ)と同様である。相違点4、5に対する判断は、上記4(2)イないしウと同様である。相違点12に対する判断は、上記18(2)イと同様である。

イ 相違点13について
検甲2発明の「ディスク部材」は、「周側係合片部は、それぞれ、円型基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部と、当該基部の延出端部から面側係合片部が設けられてない側に折れ曲がるように延出する折れ曲がり部を有」しているから、当該構成は、相違点13に係る構成である「複数の周側係合片部は、それぞれ、前記基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部と、当該基部の延出端部から折れ曲がるように延出する折れ曲がり部とにより形成されている」に相当する。

ウ 相違点1、2、4、5、12、13についての判断(まとめ)
そうすると、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基づいて、相違点1、2、4、5、12、13に係る本件発明28の構成の如くすることは、当業者であれば容易に想到しうる事項であるといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明28は、検甲1発明、検甲2発明及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


20 まとめ
以上のとおり、本件発明12?16、20、26?28は、検甲1発明、検甲2発明、及び甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明1?11は検甲1発明と同一ではなく、本件発明1?11、17?19、21?25は、検甲1発明、検甲2発明、及び甲第1号証?甲第60号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第8 むすび
本件発明12?16、17?19及び20?21についての特許は、請求人が主張する無効理由により無効とすべきものである。
本件発明1?11、17?19及び21?25についての特許は、請求人が主張する無効理由によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人が19/28、被請求人が9/28を負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体に対する例えばモルタルの接着を補助するに適した接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造体を建造するにあたっては、互いに対向する両型枠を複数本のスペーサボルトでもって所定間隔に維持する。このような状態において、生コンクリートを当該両型枠の間に打ち込んだ後硬化させ、その後、当該両型枠を除去することで、コンクリート構造体を建造する。
【0003】
また、このように建造したコンクリート建造体は、型枠を除去しただけの状態にあるため、コンクリート構造体の表面の見栄えは良くない。このため、この見栄えを改善するために、例えば、モルタル壁が、コンクリート建造体の表面にモルタルの塗布及びその硬化でもって形成される。
【0004】
ここで、上述のように形成されるモルタル壁は経年変化する。これに伴い、当該モルタル壁のコンクリート建造体の表面に対する接着状態が、経年的に劣化すると、当該モルタル壁が、コンクリート建造体の表面から剥がれ落ち易くなる。
【0005】
これに対しては、下記特許文献1に記載のモルタル接着補助具が提案されている。当該モルタル接着補助具は、円錐台状のコネクター部と、当該コネクター部の小径側端面上に形成してなる多数のループ状係止部と、コネクター部の大径側端面側の外周部に突設してなる凸部と、多数のループ状係止部を包囲するようにコネクター部の小径側端面から延出する環状支持突起とにより構成されている。
【0006】
このように構成してなるモルタル接着補助具は、次のようにして埋設される。上述のように互いに対向する両型枠の間にてスペーサボルトと型締めボルトによりモルタル接着補助具を一方の型枠に当接した状態で保持する。このとき、モルタル接着補助具においては、環状支持突起が一方の型枠の内面(モルタル接着補助具側の面)に当接する。
【0007】
このような状態において、接着補助器具を両型枠の間に型締めするように、一方の型枠をモルタル接着補助具に向けて押圧する。これにより、一方の型枠がその内面にてモルタル接着補助器具の環状支持突起に押し付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3976427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のモルタル接着補助具において、一方の型枠が例えば木製である場合、当該一方の型枠の両面は、通常、一様な平面ではなく凹凸面となっていることが多い。従って、モルタル接着補助器具の環状支持突起が、その環状先端部にて、平面形状となっている場合や、楔状等の尖った形状となっている場合には、次のような問題が発生する。
【0010】
例えば、モルタル接着補助具の一方の型枠の対向面と当接する環状支持突起の環状先端部の形状が平面状となっている場合に、一方の型枠の対向面が凹凸面状になっていると、環状支持突起の平面状の環状先端部と一方の型枠の凹凸面状の対向面とが一様には当接し得ず、両者の間に隙間が形成されてしまう。
【0011】
これでは、生コンクリートを両型枠間に打ち込んだとき、当該生コンクリートが環状支持突起の環状先端部と一方の型枠の凹凸面状の対向面との間の隙間から環状支持突起内に漏えいしてしまい、モルタル接着補助具の環状支持突起の内部が生コンクリートから遮断できない。
【0012】
また、環状支持突起の環状先端部が横断面楔状等の尖った横断面形状となっている場合には、一方の型枠の対向面が凹凸面状ではなく平面状であるとすると、環状支持突起の尖った形状の環状先端部が、一方の型枠の平面状の対向面に食い込むように押し込まれて、一方の型枠の対向面に環状の食い込み溝を形成してしまう。
【0013】
このような環状の食い込み溝が一方の型枠の対向面に形成されると、その後の一方の型枠の再利用の際に、上述の一方の型枠の環状溝に起因して、モルタル接着補助具と一方の型枠とが一様には当接し得ず、モルタル接着補助器具の環状支持突起と一方の型枠との当接面の間に環状の食い込み溝による隙間が形成される。
【0014】
これでは、生コンクリートを両型枠間に打ち込んだとき、当該生コンクリートがモルタル接着補助具と一方の型枠との間の隙間から環状支持突起内に漏えいしてしまい、環状支持突起の内部が生コンクリートから遮断できない。
【0015】
ここで、一方の型枠の対向面が平面状ではなく凹凸面状である場合には、環状支持突起の平面状の環状先端部と一方の型枠の凹凸面状の対向面とは一様には当接し得ず、モルタル接着補助器具の環状支持突起と一方の型枠との当接面の間には、隙間と食い込み溝とが共に間欠的に形成されてしまう。
【0016】
要するに、モルタル接着補助器具の一方の型枠の対向面と当接する環状支持突起の環状先端部及び一方の型枠の対向面のうちの少なくとも一方の形状が、環状支持突起の環状先端部と一方の型枠の対向面とを一様に当接し得ない形状となっている場合には、生コンクリートが環状支持突起の環状先端部と一方の型枠の対向面との間を通り環状支持突起内に漏えいしてしまい、環状支持突起の内部が生コンクリートから遮断できない。
【0017】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、複数の係合片部をその外周から包囲する環状体の構成に工夫を凝らし、型枠の当該環状体との当接が一様に成立するようにした接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題の解決にあたり、本発明に係るコネクター型接着補助器具は、請求項1の記載によれば、
大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部(110a)と、当該円錐台状胴部の上記大径側端部から上記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部(110b)と、円錐台状胴部及び円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部(110c)と、円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部(110d)とを、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって一体に成形してなるコネクター(110)と、
複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように円柱状頭部に同軸的に圧入されて環状フランジ部に着座する環状非可変壁部(121、122、123)と、当該環状非可変壁部の環状フランジ部とは反対側の環状端部から環状フランジ部から離れる方向に突出する環状可変部(126)とを、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部(120a)を設けてなる環状体(120)とを備えており、
当該環状体の環状壁部にて、
環状非可変壁部は、円柱状頭部に圧入されて環状フランジ部に着座する環状非可変着座部(121)と、当該環状非可変着座部から環状フランジ部とは反対方向へ延出するように円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部(122)と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部(123)とを有してなり、
環状可変部は、環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されている。
【0019】
これによれば、コネクター型接着補助器具は、コネクターと、当該コネクターの円柱状頭部に環状壁部にて圧入してなる環状体との2つの別部品でもって一体的に構成されている。
【0020】
当該コネクター型接着補助器具において、コネクターは、円錐台状胴部、円柱状頭部、環状フランジ部及び複数の面側係合片部でもって所定の耐光性顔料含有樹脂材料により一体に形成されている。
【0021】
ここで、円柱状頭部が、円錐台状胴部の大径側端部から小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出するとともに、環状フランジ部は、円錐台状胴部及び円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出している。
【0022】
従って、このように環状フランジ部の外径が円錐台状胴部及び円柱状頭部の境界部の外径よりも大きくても、円錐台状胴部が、環状フランジ部側の大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成されている。
【0023】
よって、コネクターの成形用金型が簡単な構成にて形成され得る。なお、コネクター型接着補助器具がコンクリート体に埋設されても、環状フランジ部が、コネクター型接着補助器具のコンクリート体からの抜け止めの役割を果たすので、上述のように円錐台状胴部が、環状フランジ部側の大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成されていても、コネクター型接着補助器具がコンクリート体から抜け出すことはない。
【0024】
また、モルタル壁がコンクリート体の表面に形成されても、複数の面側係合片部が、その形状でもって、円柱状頭部の表面側にてモルタル壁との係合を良好に維持し得るので、モルタル壁のコンクリート体の表面からの剥がれが長期に亘り良好に防止され得る。
【0025】
また、環状体が、コネクターとは別部品として、上記構成を有する環状非可変壁部及び上記構成を有する環状可変部でもって一体に構成されている。従って、環状体の成形用金型が、上述したコネクターの成形用金型とともに簡単な構成にて形成され得る。このことは、コネクター型接着補助器具全体としての成形用金型の構成が簡単になることを意味し、コネクター型接着補助器具の生産性の向上につながる。
【0026】
ここで、環状壁の環状非可変壁部が、コネクターの複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように円柱状頭部に同軸的に圧入されて環状フランジ部に着座しており、環状可変部が当該環状非可変壁部の環状フランジ部とは反対側の環状端部から環状フランジ部から離れる方向に突出するように形成されている。
【0027】
従って、コンクリート体の形成に先立ち、コネクター型接着補助器具が、環状体の環状可変部が、木材或いは合成樹脂からなる両型枠の一方の型枠により押圧されても、当該環状可変部は、型枠からの押圧により潰れるように変形する。従って、型枠は、環状可変部との対向面の対向部位にて当該環状可変部に一様に当接し得る。換言すれば、型枠の上記対向面が凹凸状に湾曲していても、型枠が、環状可変部との対向面の対向部位にて当該環状可変部に一様に密着して環状可変部との間に隙間を形成しない。
【0028】
これにより、その後の生コンクリートが両型枠の間にコネクター型接着補助器具を介し打ち込まれても、生コンクリートが、コネクター型接着補助器具の環状体の環状可変部と一方の型枠との間から環状体の内側に浸入することがない。従って、環状体の内側に位置するコネクターの複数の面側係合片部が、生コンクリートから良好に遮断され得る。
【0029】
また、コネクター及び環状体が所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって形成されているから、当該コネクター及び環状体は、紫外線等の外光を受けても、長期に亘り劣化することがない。
【0030】
以上によれば、コネクター型接着補助器具は、コンクリート体に対するモルタル壁の接着力(アンカー効果)を長期に亘り良好に維持し得る。
【0031】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のコネクター型接着補助器具において、
コネクターは、環状フランジ部に沿い円錐台状胴部の外周面の少なくとも一部から外方へ突出するように形成してなる回り止め部(116)を具備することを特徴とする。
【0032】
このように、回り止め部が、円錐台状胴部及び環状フランジ部の少なくとも一方の一部から外方へ突出するように形成されているから、コネクター型接着補助器具のコンクリート体内での軸回りが良好に阻止され得る。また、回り止め部が環状フランジ部に沿い円錐台状胴部の外周面の少なくとも一部から外方へ突出するように形成されているから、コネクターの成形用金型の構成がより一層簡単になる。
【0033】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1また2に記載のコネクター型接着補助器具において、
上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料は、ナイロン6に耐光性黒色顔料を均一に含有してなることを特徴とする。
【0034】
これによれば、請求項1または2に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。特に、ナイロン6が、引っ張り力に対し良好な伸長特性を有するから、仮にモルタル壁がコンクリート体の表面が剥がれ落ちようとする事態が発生しても、コネクターの複数の面側係合片がモルタル壁の各対応内部との間の係合により伸長してモルタル壁の剥がれによる落下を未然に防止し得る。
【0035】
従って、耐光性黒色顔料によるコネクター及び環状体の耐光性と相まって、コンクリート体に対するモルタル壁の接着力を長期に亘り良好に維持し得る。
【0036】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1?3のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具において、
複数の面側係合片部は、複数のロッド状湾曲片部からなり、当該複数のロッド状湾曲片部は、それぞれ、円柱状頭部の上記延出端面から外方へ凸な湾曲状に突出するように形成されていることを特徴とする。
【0037】
これにより、モルタル壁が複数の面側係合片部と円柱状頭部の延出端面との間にまで係合することとなり、コネクター型接着補助器具における複数の面側係合片部のモルタル壁との係合がより一層強固になり、請求項1?3のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0038】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載のコネクター型接着補助器具において、
円柱状頭部にはその上記延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように複数条の凹部(113)が互いに並行に形成されており、
上記複数のロッド状湾曲片部は、その両端部にて、上記複数条の凹部の各々ごとに当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて円柱状頭部の上記延出端面に形成されていることを特徴とする。
【0039】
このように複数のロッド状湾曲片部が、円柱状頭部にその延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように互いに並行に形成した複数条の凹部に当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて円柱状頭部の延出端面に形成されている。従って、モルタル壁が複数のロッド状湾曲片部と円柱状頭部の延出端面との間にも係合し得ることとなり、当該モルタル壁をコンクリート体の表面から長期に亘りより一層離脱不能に維持し得る。その結果、請求項4に記載の発明の作用効果より一層向上され得る。
【0040】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1?5のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具において、
環状体は、環状壁部の環状非可変壁部からその内方に向けて突出するように環状壁部と一体に上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料で形成してなる複数の周側係合片部(120b)を備えており、
当該複数の周側係合片部は、環状非可変壁部の内周方向に間隔をおいて位置するように形成されてことを特徴とする。
【0041】
これによれば、環状体が上述の構成にて複数の周側係合片部を備えることから、当該周側係合片部は、コネクターの複数の面側係合片部と相まって、モルタル壁との係合を行い、モルタル壁のコンクリート体の表面との接着力をより一層強化し得る。これにより、請求項1?5のいずれか1つに記載の発明の作用効果をより一層向上させ得る。
【0042】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項6に記載のコネクター型接着補助器具において、
環状壁部にて、
環状可変部は、環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から環状フランジ部とは反対方向に縦断面山形状に突出するように形成されており、
複数の周側係合片部は、環状非可変厚肉部の環状非可変薄肉部との環状境界部からその周方向に亘り間隔をおくように当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出する複数の周側長手状係合片部であることを特徴とする。
【0043】
このように環状壁部の環状非可変壁部を構成することで、請求項6に記載の発明の作用効果がより一層具体的に達成され得る。
【0044】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項7に記載のコネクター型接着補助器具において、
上記複数の周側長手状係合片部は、それぞれ、環状非可変厚肉部の環状非可変薄肉部との環状境界部から当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出するロッド部(124)と、当該ロッド部の延出端部に形成してなる球部(125)とでもって構成されていることを特徴とする。
【0045】
これによれば、複数の周側長手状係合片部が、ロッド部と球部とでもって一体に形成されている。従って、所定の耐光性顔料含有樹脂材料が、ナイロン6に耐光性黒色顔料を均一に含有してなる場合には、ナイロン6が、引っ張り力に対し良好な伸長特性を有することから、仮にモルタル壁がコンクリート体の表面が剥がれ落ちようとする事態が発生しても、環状体の複数の周側長手状係合片部がそのロッド部及び球部でもって、モルタル壁の各対応内部との間の係合により伸長してモルタル壁の剥がれによる落下を未然に防止し得る。特に、周側長手状係合片部が、球部にて、ロッド部よりもモルタル壁との係合を強固に維持するので、モルタル壁の剥がれによる落下がより一層良好に防止され得る。
【0046】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項7に記載のコネクター型接着補助器具において、環状可変部は、上記縦断面山形状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されていることを特徴とする。
【0047】
これにより、環状壁部が、環状可変部にて、上述のように型枠により押圧されても、環状可変部が、その突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されているから、型枠の環状可変部の突出端部との当接部位の変形等がより一層良好に防止され得る。その結果、請求項7に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0048】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項1?9のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具において、
円筒部(131)と、当該円筒部の軸方向一側端部と一体となるように同軸的に形成してなる環状鍔部(132)とを備えるセパジョイント(130)を具備しており、
コネクターは、円錐台状胴部の底部に同軸的に形成してなる大径孔部(115b)と、円錐台状胴部の上記底部を除く部位及び円柱状頭部に亘り上記大径孔部よりも小さな内径にて同軸的に形成してなる小径孔部(115a)とでもって構成される軸孔部(115)を設けてなり、
セパジョイントは、その円筒部にて、コネクターの上記軸孔部のうちの上記小径孔部に上記大径孔部を介し同軸的に圧入されるとともに、上記環状鍔部にて、上記軸孔部の上記大径軸孔部に嵌装されており、
複数の面側係合片部は、円柱状頭部の上記延出端面にその上記小径孔部の外周側にて形成されていることを特徴とする。
【0049】
これによれば、セパジョイントが、上記構成を有することで、その円筒部にて、コネクターの軸孔部のうちの小径孔部に大径孔部を介し同軸的に圧入されるとともに、環状鍔部にて、軸孔部の大径軸孔部に嵌装される。
このようにセパジョイントがコネクターの小径孔部に圧入された状態で、コンクリート体内にてスペーサボルトに螺合されることで、コネクターがセパジョイントを介しスペーサボルトに接続されると、コネクター型接着補助器具のスペーサボルトとの接続がしっかりとなされ、コネクター型接着補助器具のコンクリート体内での維持を強固にし得る。その結果、請求項1?請求項9のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0050】
また、本発明は、請求項11の記載によれば、請求項10に記載のコネクター型接着補助器具において、
スペーサボルト(150)がセパジョイントに同軸的に形成してなる雌ねじ孔部(130a)に対し上記環状鍔部側から当該雌ねじ孔部の軸方向中間部位まで螺合され、かつ環状体が木材或いは合成樹脂材料からなる型枠に当接された状態にて、当該型枠に形成してなる貫通状孔部(F1)を通してスペーサボルトに対向するようにセパジョイントの上記雌ねじ孔部に螺合される型締めボルト(140)を、補助部品として有することを特徴とする。
【0051】
これによれば、型締めボルトを別途わざわざ準備しなくて済むので、便利である。
【0052】
また、本発明に係る接着補助システムは、請求項12の記載によれば、
コンクリート体(10)の表面に形成されるモルタル壁(M)のコンクリート体との接着を補助するためのものである。
【0053】
当該接着補助システムにおいて、
大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部(110a)と、当該円錐台状胴部の上記大径側端部から上記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部(110b)と、円錐台状胴部及び円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部(110c)と、円錐台状胴部及び環状フランジ部の少なくとも一方の一部から外方へ突出する回り止め部(116)と、円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部(110d)とを、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に成形してなるコネクター(110)と、複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように円柱状頭部に同軸的に圧入されて環状フランジ部に着座する環状非可変壁部(121、122、123)と、当該環状非可変壁部の環状フランジ部とは反対側の環状端部から環状フランジ部から離れる方向に突出する環状可変部(126)とを、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部(120a)を設けてなる環状体(120)とを備えるコネクター型接着補助器具(200、300、300A)と、
中央孔部を形成してなる基板(210、310)と、当該基板にその両面の一方の面から突出するように上記中央孔部の周囲に分散して形成される複数の面側係合片部(220a、220b)とを有するように、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成される複数のディスク型接着補助器具(200、300、300A)とを備えており、
複数のコネクター型接着補助器具は、それぞれ、円錐台状胴部にて、互いに対向して設置してなる木材或いは合成樹脂材料からなる両型枠の一方の型枠から分散状に他方の型枠に向けて延出する複数のスペーサボルト(150)に、環状体の環状可変部を他方の型枠に対向させるように、連結され、かつ、環状壁部の環状非可変壁部に向けて環状可変部を変形させるように他方の型枠を押圧してなり、
複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、コンクリート体が両型枠の間に複数のスペーサボルト及び複数のコネクター型接着補助器具を介し打ち込まれる生コンクリートの硬化により形成された後、両型枠を除去した上で、複数のコネクター型接着補助器具とは異なる位置にて、コンクリート体の表面に分散状に配設され、かつ、基板にて、上記中央孔部を通してネジをコンクリート体にその表面から締着することで、コンクリート体の表面に組み付けられており、
モルタル壁が、各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具を介しコンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させることで、形成されていることを特徴とする。
【0054】
このように、上述のように構成した複数のコネクター型接着補助器具及び複数のディスク型接着補助器具を備えて、複数のコネクター型接着補助器具は、それぞれ、円錐台状胴部にて、互いに対向して設置してなる木材或いは合成樹脂材料からなる両型枠の一方の型枠から分散状に他方の型枠に向けて延出する複数のスペーサボルトに、環状体の環状可変部を他方の型枠に対向させるように、連結され、かつ、環状壁部の環状非可変壁部に向けて環状可変部を変形させるように他方の型枠を押圧してなり、
複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、コンクリート体が両型枠の間に複数のスペーサボルト及び複数のコネクター型接着補助器具を介し打ち込まれる生コンクリートの硬化により形成された後、両型枠を除去した上で、複数のコネクター型接着補助器具とは異なる位置にて、コンクリート体の表面に分散状に配設され、かつ、基板にて、中央孔部を通してネジをコンクリート体にその表面に締着することで、コンクリート体の表面に組み付けられており、
モルタル壁が、各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具を介しコンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させることで、形成されている。
【0055】
これにより、複数のコネクター型接着補助器具の各々においては、環状体の環状可変部が他方の型枠からの押圧により環状非可変壁部に向けて変形しながら当該他方の型枠の環状体に対する対向面に当接する。従って、他方の型枠が例えば凹凸状に湾曲していても、環状体は、環状可変部にて、一様に、隙間を形成することなく、他方の型枠の環状体に対する対向面に当接し得る。
【0056】
よって、生コンクリートが、コネクター型接着補助器具の環状体の環状可変部と他方の型枠との間から環状体の内側に浸入することがない。その結果、環状体の内側に位置するコネクターの複数の面側係合片部が、生コンクリートから良好に遮断され得る。本請求項12に係る発明は、その他の請求項1に記載の発明の作用効果を達成し得るのは勿論である。
【0057】
以上のように、複数のコネクター型接着補助器具及び複数のディスク型接着補助器具が、コンクリート体とモルタル壁との間に分散して埋設されることで、各コネクター型及びディスク型の接着補助器具が、ともに、各複数の面側係合片部でもって、モルタル壁のコンクリート体に対するアンカー効果を相乗的に高め得る。このことは、各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具による相乗的な接着補助のもと、モルタル壁が、コンクリート体から剥がれ落ちたりすることなく、長期に亘り、コンクリート体の表面に対する接着を良好に維持し得ることを意味する。
【0058】
また、本発明は、請求項13の記載によれば、請求項12に記載の接着補助システムにおいて、
上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料は、6ナイロンに耐光性黒色顔料を均一に含有してなることを特徴とする。
【0059】
これによれば、請求項12に記載の発明の作用効果を達成しつつ請求項3に記載の発明の作用効果を達成し得る接着システムの提供が可能となる。
【0060】
また、本発明は、請求項14の記載によれば、請求項12または13に記載の接着補助システムにおいて、
複数のコネクター型接着補助器具の各々において、複数の面側係合片部は、複数のロッド状湾曲片部からなり、当該複数のロッド状湾曲片部は、それぞれ、円柱状頭部の上記延出端面から外方へ凸な湾曲状に突出するように形成されていることを特徴とする。
【0061】
これによれば、請求項12または13に記載の発明の作用効果を達成しつつ請求項4に記載の発明の作用効果を達成し得る接着補助システムの提供が可能となる。
【0062】
また、本発明は、請求項15の記載によれば、請求項14に記載の接着補助システムでは、
複数のコネクター型接着補助器具の各々において、
円柱状頭部にはその上記延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように複数条の凹部が互いに並行に形成されており、
複数のロッド状湾曲片部は、その両端部にて、上記複数状の凹部の各々ごとに当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて円柱状頭部の上記延出端面に形成されていることを特徴とする。
【0063】
これによれば、請求項14に記載の発明の作用効果を達成しつつ請求項5に記載の発明の作用効果を達成し得る接着補助システムの提供が可能となる。
【0064】
また、本発明は、請求項16の記載によれば、請求項12?15のいずれか1つに記載の接着補助システムにおいて、
複数のコネクター型接着補助器具の各々にて、
環状体は、環状壁部の環状非可変壁部からその内方に向けて突出するように環状壁部と一体に上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって形成してなる複数の周側係合片部(120b)を備えており、
当該複数の周側係合片部は、環状非可変壁部の内周方向に間隔をおいて位置するように形成されていることを特徴とする。
【0065】
これによれば、請求項12?15のいずれか1つに記載の発明を達成しつつ請求項6に記載の発明の作用効果を達成し得る接着補助システムの提供が可能となる。
【0066】
また、本発明は、請求項17の記載によれば、請求項16に記載の接着補助システムにおいて、
複数のコネクター型接着補助器具の各々にて、
環状壁部の環状非可変壁部は、円柱状頭部に圧入されて環状フランジ部に着座する環状非可変着座部(121)と、環状非可変着座部から環状フランジ部とは反対方向へ延出するように円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部(122)と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部(123)とを有してなり、
環状壁部の環状可変部は、環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部部位から環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されれており、
複数の周側係合片部は、環状非可変厚肉部の環状非可変薄肉部との環状境界部からその周方向に亘り間隔をおくように当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出する複数の周側長手状係合片部であることを特徴とする。
【0067】
これによれば、請求項16に記載の発明の作用効果を達成しつつ請求項7に記載の発明の作用効果を達成し得る接着補助システムの提供が可能となる。
【0068】
また、本発明は、請求項18の記載によれば、請求項17に記載の型接着補助システムにおいて、
複数のコネクター型接着補助器具の各々において、複数の周側長手状係合片部は、それぞれ、環状非可変厚肉部の環状非可変薄肉部との環状境界部から当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出するロッド部(124)と、当該ロッド部の延出端部に形成してなる球部(125)とでもって、構成されていることを特徴とする。
【0069】
これによれば、請求項17に記載の発明の作用効果を達成しつつ請求項8に記載の発明の作用効果を達成し得る接着補助システムの提供が可能となる。
【0070】
また、本発明は、請求項19の記載によれば、請求項17に記載の接着補助システムにおいて、複数のコネクター型接着補助器具の各々にて、環状可変部は、上記突起状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されていることを特徴とする。
【0071】
これによれば、請求項17に記載の発明の作用効果を達成しつつ請求項9に記載の発明の作用効果を達成し得る接着補助システムの提供が可能となる。
【0076】
また、本発明は、請求項20の記載によれば、請求項12に記載の接着補助システムにおいて、
複数のディスク型接着補助器具の各々にて、基板はその中央孔部の外周側にて複数条の開口部を分散状に形成してなり、
複数の面側係合片部は、複数条の開口部の各々ごとに、当該開口部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする。
【0077】
これによれば、生モルタルが複数の面側係合片部と基板との間に加えて、基板の複数条の開口部内にも浸入するから、生モルタルのコンクリート体の表面に対する複数のディスク型接着補助器具の接着力がより一層強固になる。その結果、請求項12に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0078】
また、本発明は、請求項21の記載によれば、請求項12または13に記載の接着補助システムにおいて、
複数のディスク型接着補助器具の各々にて、基板に上記一方の面から複数の面側係合片の内側にて上記中央孔部の周りに間隔をおいて形成される複数のフック(220a?220d、330a?330d)を設けてなり、
当該複数のフックは、それぞれ、基板の上記一方の面から立ち上がるように延出する立ち上がり部(221、331)と、当該立ち上がり部から基板の中心側へ折れ曲るように延出する折れ曲がり部(222、332)とでもって、構成されて、環状板を、上記各立ち上がり部により包囲した状態にて上記各折れ曲がり部により基板の上記一方の面との間に挟持してなることを特徴とする。
【0079】
このように、各ディスク型接着補助器具において、上述のように構成してなる複数のフックが、各立ち上がり部により環状板を包囲した状態にて各折れ曲がり部により基板の一方の面との間に挟持するので、ネジを環状板及び基板の中央孔部を通してコンクリート体に締着すれば、各ディスク型接着補助器具がコンクリート体にしっかりと組み付けられ得る。その結果、請求項12または13に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0080】
本発明は、請求項22の記載によれば、請求項12に記載の接着補助システムにおいて、
環状板部(260a)と、当該環状板部の内周縁部から当該内周縁部に沿い間隔をおくように位置して環状板部の表面側へ延出する複数の内側糸状片部(260c)とを有するように、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材(WS1)を、複数、備えており、
複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、基板の上記中央孔部にて、ネジを環状板部にその表面側から通してコンクリート体にその表面から締着することで、コンクリート体の表面に組み付けられていることを特徴とする。
【0081】
これによれば、環状部材が、上述のように構成した環状板部及び複数の内側糸状片部の一体的構成にて所定の耐光性顔料含有樹脂材料により形成されている。
【0082】
これに伴い、複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、基板の上記中央孔部にて、ネジを環状板部にその表面側から通してコンクリート体にその表面から締着することで、組み付けられている。これにより、複数のディスク型接着補助器具は、コンクリート体の表面に良好に組み付けられ得る。その結果、環状板部及び複数の内側糸状片部の一体的構成からなる上記耐光性顔料含有樹脂材料製環状部材を用いても、請求項12に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0083】
また、本発明は、請求項23の記載によれば、請求項12に記載の接着補助システムにおいて、
環状板部(260a)と、当該環状板部の外周縁部から当該外周縁部に沿い間隔をおいて環状板部の表面側へ延出する複数の外側糸状片部(260d)とを有するように、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材(WS1)を、複数、備えており、
複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、基板の上記中央孔部にて、ネジを環状板部にその表面側から通してコンクリート体にその表面から締着することで、コンクリート体の表面に組み付けられていることを特徴とする。
【0084】
これによれば、環状部材が、上述のように構成した環状板部及び複数の外側糸状片部の一体的構成にて上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料により形成されている。
【0085】
これに伴い、複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、基板の上記中央孔部にて、ネジを環状板部にその表面側から通してコンクリート体にその表面から締着することにより、組み付けられていることで、複数のディスク型接着補助器具は、コンクリート体の表面に良好に組み付けられ得る。その結果、環状板部及び複数の外側糸状片部の一体的構成からなる上記耐光性顔料含有樹脂材料製環状部材を用いても、請求項12に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0086】
また、本発明は、請求項24の記載によれば、請求項22に記載の接着補助システムにおいて、
複数の環状部材は、それぞれ、環状板部の外周縁部から当該外周縁部に沿い間隔をおいて環状板部の表面側へ延出する複数の外側糸状片部(260d)をも一体的に有するように、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、形成されていることを特徴とする。
【0087】
これによれば、環状部材が、上述のように構成した環状板部、複数の内側糸状片部及び複数の外側糸状片部の一体的構成にて上記耐光性顔料含有樹脂材料により形成されていることによっても、請求項22に記載の発明の作用効果を達成し得る。
【0088】
また、本発明は、請求項25の記載によれば、請求項23または24に記載の接着補助システムにおいて、
複数の環状部材は、それぞれ、環状板部の内周縁部から同軸的にその裏面側へ延出するように上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料により一体的に形成してなる環状ボス部(260b)を備えて、当該環状ボス部を基板の対応中央孔部内に同軸的に嵌装するようにして、環状板部にて、基板の対応中央孔部にその表面側から載置されており、
複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、ネジをその頭部にて複数の環状部材のうちの対応環状部材の環状ボス部に着座させるとともに、当該ネジをその首下部にて上記対応環状部材の環状ボス部を通してコンクリート体にその表面から締着することで、当該コンクリート体に組み付けられていることを特徴とする。
【0089】
このように、複数の環状部材が、それぞれ、環状ボス部をも一体的に備える。これにより、当該環状ボス部が、基板の対応中央孔部に嵌装されることで、環状板部の基板に対する支持が確実になされ得る。その結果、複数のディスク型接着補助器具の各々が基板に対ししっかりと組み付けられて、請求項23または24に記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0090】
また、本発明は、請求項26の記載によれば、請求項12?25のいずれか1つに記載のモルタル用接着補助システムにおいて、
複数のディスク型接着補助器具の各々にて、基板は、上記中央孔部の外周側にて複数の長手状開口部(213a?213j、313a?313k、313n)を分散して形成してなり、
複数の面側係合片部は、それぞれ、基板の上記一方の面にて、上記複数の長手状開口部のうちの各対応長手状開口部をその幅方向に跨ぐように湾曲状に形成されるとともに当該対応長手状開口部の長手方向には間隔をおいて形成されていることを特徴とする。
【0091】
このように、複数の面側係合片部が、複数の湾曲状係合片部として、上述のように、各対応長手状開口部に形成されることで、生モルタルが各ディスク型接着補助器具を介しコンクリート体の表面に塗布されたとき、当該生モルタルは、各ディスク型接着補助器具の複数の面側係合片部に係合するのは勿論のこと、当該複数の面側係合片部を介し対応の長手状開口部内にも入り込む。従って、各ディスク型接着補助器具によるモルタル壁に対する補助接着力がより一層強化されることで、請求項12?25のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0092】
また、本発明は、請求項27の記載によれば、請求項12?25のいずれか1つに記載の接着補助システムにおいて、
複数のディスク型接着補助器具の各々において、基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出するように形成してなる複数の周側係合片部(320)を具備することを特徴とする。
【0093】
このように、複数の周側係合片部が基板の外周部から周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出することで、生モルタルが上述のごとく当該モルタル用接着補助器具を介しコンクリート体の表面に塗布されたとき、当該モルタル用接着補助器具は、複数の外周側係合片によっても、生モルタルと係合する。
【0094】
このため、生モルタルが硬化してモルタル壁となったとき、当該モルタル用接着補助器具は、複数の周側係合片部によっても、モルタル壁にその内部にてしっかりと係合する。従って、当該モルタル用接着補助器具は、基板から突出する複数の係合片部でもって、モルタル壁をコンクリート体の表面に支持し得る。その結果、請求項12?25のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層良好に達成され得る。
【0095】
また、本発明は、請求項28の記載によれば、請求項27に記載の接着補助システムにおいて、
複数のディスク型接着補助器具の各々において、複数の周側係合片部は、それぞれ、基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部(321、323)と、当該基部の延出端部から折れ曲がるように延出する折れ曲がり部(322)とにより形成されていることを特徴とする。
【0096】
このように、複数の周側係合片部を構成することで、当該複数の周側係合片部は、それぞれ、基部及び折れ曲がり部でもって、モルタル壁とより一層良好に係合し得る。その結果、当該ディスク型接着補助器具がコンクリート体に対するモルタル壁の接着力をより一層強化し得る。
【0097】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る接着補助システムの第1実施形態がコンクリート壁に適用される例を示す模式的正面図である。
【図2】図1のコネクター型接着補助器具がコンクリート壁とモルタル壁との間に埋設される状態を示す部分破断断面図である。
【図3】図1のディスク型接着補助器具がコンクリート壁とモルタル壁との間に埋設される状態を示す部分破断断面図である。
【図4】上記第1実施形態において埋設前のコネクター型接着補助器具を示す側面図である。
【図5】図4のコネクター型接着補助器具の分解側面図である。
【図6】図7の6-6線に沿うコネクター型接着補助器具の縦断面図である。
【図7】図4のコネクター型接着補助器具を示す平面図である。
【図8】図4のコネクター型接着補助器具を示す裏面図である。
【図9】図5のコネクターを示す側面図である。
【図10】図9のコネクターを示す平面図である。
【図11】図10の11-11線に沿うコネクターの縦断面図である。
【図12】図5の環状体を示す側面図である。
【図13】図12の環状体を示す平面図である。
【図14】図13の14-14線に沿う環状体の縦断面図である。
【図15】図14の円Aにより示す環状体の部分拡大断面図である。
【図16】図14の円Bにより示す環状体の部分拡大断面図である。
【図17】図16の円Cにより示す環状体の部分拡大断面図である。
【図18】図19の18-18線に沿うセパジョイントの縦断面図である。
【図19】図5のセパジョイントを示す下面図である。
【図20】図5の型締めボルトを示す側面図である。
【図21】図20の型締めボルトを示す平面図である。
【図22】本第1実施形態のディスク型接着補助器具をその表面側から見た斜視図である。
【図23】図22のディスク型接着補助器具をその表面側から見た平面図である。
【図24】図23にて24-24線に沿うディスク型接着補助器具の断面図である。
【図25】図23にて25-25線に沿うディスク型接着補助器具の断面図である。
【図26】図3の座金を示す縦断面図である。
【図27】上記第1実施形態においてモルタル壁を形成する工程を示す工程図である。
【図28】図27の型枠締め付けボルト締着工程において型枠締め付けボルトを締着するとともにコンクリートを打ち組む過程を説明するための縦断面図である。
【図29】図27の型枠取り外し工程において図28にて打ち込んだコンクリートの硬化後型枠締め付けボルト及び型枠を取り外した状態を示すコネクター型接着補助器具及びコンクリート壁の縦断面図である。
【図30】図27のディスク型接着補助器具組み付け工程においてディスク型接着補助器具をコンクリート壁に組み付ける過程を説明するための縦断面図である。
【図31】本発明に係るモルタル用接着補助システムの第2実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図32】上記第2実施形態のディスク型接着補助器具をその表面側から見た斜視図である。
【図33】上記第2実施形態のディスク型接着補助器具をその表面側から見た平面図である。
【図34】図33にて33-33線に沿う断面図である。
【図35】図33にて35-35線に沿う断面図である。
【図36】上記第2実施形態において図27のディスク型接着補助器具組み付け工程におけるディスク型接着補助器具をコンクリート壁に組み付ける過程を説明するための縦断面図である。
【図37】本発明に係るモルタル用接着補助システムの第3実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図38】上記第3実施形態のディスク型接着補助器具をその表面側から見た斜視図である。
【図39】上記第3実施形態のディスク型接着補助器具をその表面側から見た平面図である。
【図40】図39にて40-40線に沿う断面図である。
【図41】図39にて41-41線に沿う断面図である。
【図42】図37の環状部材を示す拡大斜視図である。
【図43】図37の環状部材を示す拡大平面図である。
【図44】図37の環状部材を示す拡大裏面図である。
【図45】図43にて45-45線に沿う断面図である。
【図46】上記第3実施形態において図27のディスク型接着補助器具組み付け工程におけるディスク型接着補助器具をコンクリート壁に組み付ける過程を説明するための縦断面図である。
【図47】本発明に係るモルタル用接着補助システムの第4実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図48】上記第4実施形態のディスク型接着補助器具をその表面側から見た平面図である。
【図49】図48にて49-49線に沿う断面図である。
【図50】図48にて50-50線に沿う断面図である。
【図51】上記第4実施形態において図27のディスク型接着補助器具組み付け工程におけるディスク型接着補助器具をコンクリート壁に組み付ける過程を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明が、接着補助システムとして、コンクリート構造体10に適用される実施形態を示す。コンクリート構造体10は、例えば、鉄筋コンクリート建造物において、複数のコンクリート壁でもって構成されている。
【0100】
当該接着補助システム(以下、接着補助システムMSともいう)は、コンクリート構造体10の複数のコンクリート壁の各表面に形成してなる各モルタル壁の対応コンクリート壁に対する接着補助の役割を果たすものである。
【0101】
以下、本第1実施形態では、当該接着補助システムMSが、上述の複数のコンクリート壁のうちの図1にて示すコンクリート壁10aの表面11に形成してなるモルタル壁Mに適用される例について説明する。
【0102】
本第1実施形態においては、モルタル壁Mは、生モルタルをコンクリート壁10aの表面11に接着補助システムMSを介し所定の厚さでもって塗布した後硬化させることにより形成されている。なお、コンクリート壁10aは、例えば、コンクリート構造体10の縦壁の一例をいう。
【0103】
当該接着補助システムMSは、複数のコネクター型接着補助器具100(図1では4個のコネクター型接着補助器具100のみを示す)及び複数のディスク型接着補助器具200(図1では、単一のディスク型接着補助器具200のみを示す。)を備えている。
【0104】
複数のコネクター型接着補助器具100は、それぞれ、図2にて例示するごとく、コンクリート壁10aを形成する前の生コンクリートの状態で後述のように形成される複数の収容穴部12内に収容されて、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間に埋設されている。なお、複数の収容穴部12は、それぞれ、図2にて例示するごとく、コンクリート壁10aにその表面11側からコネクター型接着補助器具100を収容するように凹状に形成されている。
【0105】
複数のディスク型接着補助器具200は、それぞれ、図3にて例示するごとく、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間に埋設されている。
【0106】
本第1実施形態において、図2は、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間に埋設した後のコネクター型接着補助器具100を示す。また、上述のように埋設した後のコネクター型接着補助器具100を、埋設前のコネクター型接着補助器具100に対して、特に、埋設後コネクター型接着補助器具100ともいう。これに伴い、埋設前のコネクター型接着補助器具100は、単に、コネクター型接着補助器具100ともいう。
【0107】
なお、埋設後コネクター型接着補助器具100は、後述のごとく環状突起部126が環状壁部120aに向けて押圧により変形された状態にある点で、埋設前のコネクター型接着補助器具100とは相違するものの、その他の構成においては、埋設前のコネクター型接着補助器具100と同様である。一方、接着補助器具200は、埋設前後において同様の構成を有する。
【0108】
複数の埋設後コネクター型接着補助器具100は、それぞれ、4個の埋設後コネクター型接着補助器具100ごとに、コンクリート壁10aの表面11にて、図1にて例示するごとく、矩形状輪郭RL(後述する)の各隅角部に位置するように配設されている。このことは、複数の埋設後コネクター型接着補助器具100が、4個の埋設後コネクター型接着補助器具100ごとに、コンクリート壁10a(図1参照)の表面11において、矩形状に配設されていることを意味する。
【0109】
本第1実施形態では、図1にて例示するように配列してなる4個の埋設後コネクター型接着補助器具100を例に挙げると、当該4個の埋設後コネクター型接着補助器具100の各中心を矩形状に結ぶことで、矩形状輪郭RLが構成される。換言すれば、矩形状輪郭RLが、コンクリート壁10aの表面11にて、矩形状に配列してなる4個の埋設後コネクター型接着補助器具100ごとに構成される。
【0110】
一方、複数のディスク型接着補助器具200は、コンクリート壁10aの表面11にて、複数の埋設後コネクター型接着補助器具100に対し次のような位置に配設されている。
【0111】
即ち、複数のディスク型接着補助器具200は、そのディスク型接着補助器具200ごとに、図1にて例示するごとく、各対応の矩形状輪郭RLの中心(矩形状輪郭RLの対角線上の中心)において、コンクリート壁10aの表面11に配設されている。
【0112】
このことは、複数のディスク型接着補助器具200は、一隅角部を共有する4個の矩形状輪郭RL(以下、第1矩形状輪郭RLともいう)の各々の中心に位置する4個のディスク型接着補助器具200毎に、コンクリート壁10aの表面11にて矩形状に配設されて、矩形状輪郭(以下、第2矩形状輪郭ともいう)を構成することを意味する。なお、当該第2矩形状輪郭は、第1矩形状輪郭RLと合同の形状を有する。
【0113】
本第1実施形態では、4個の埋設後コネクター型接着補助器具100でもって構成される各第1矩形状輪郭RLの各辺の長さは、例えば、D=60(cm)と設定されている(図1参照)。従って、第1矩形状輪郭RL及び第2矩形状輪郭は、共に、正方形状である。
【0114】
これにより、複数の埋設後コネクター型接着補助器具100は、第1矩形状輪郭RLを構成する4個の埋設後コネクター型接着補助器具100毎に、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する埋設後コネクター型接着補助器具100による接着補助力を良好に発揮する役割を果たす。また、複数のディスク型接着補助器具200は、上記第2矩形状輪郭を構成する4個のディスク型接着補助器具200ごとに、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対するディスク型接着補助器具200による接着補助力を良好に発揮する役割を果たす。
【0115】
さらに、第1矩形状輪郭RLの4つの隅角部に位置する4個の埋設後コネクター型接着補助器具100と、第1矩形状輪郭RLの中心に位置するディスク型接着補助器具200とでもって、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着補助力を、埋設後コネクター型接着補助器具100による接着補助力のみの場合に比べて、さらに強化する役割を果たす。
【0116】
次に、当該複数のコネクター型接着補助器具100の構成について詳細に説明する。当該複数のコネクター型接着補助器具100は、共に、同一の構成を有するように形成されている。
【0117】
そこで、複数のコネクター型接着補助器具100のうち、図1にて図示左上側に位置する埋設後コネクター型接着補助器具100に対応する埋設前のコネクター型接着補助器具100(以下、左上側コネクター型接着補助器具100ともいう)を例に挙げその構成について説明する。
【0118】
当該左上側コネクター型接着補助器具100は、図2及び図4?図8のいずれかにて示すごとく、コネクター110、タコ足環状体120(以下、環状体120ともいう)、セパジョイント130(セパボルト130ともいう)及び型締めボルト140を備えている。
【0119】
ここで、左上側コネクター型接着補助器具100は、コネクター110、タコ足環状体120及びセパボルト130に加えて、型締めボルト140をも備える構成となっているが、型締めボルト140は、後述のごとく、型枠Fを型締めする際に要するのみで、型枠Fを取り外す際には当該型枠Fと共に除去されるものである。従って、埋設後のコネクター型接着補助器具100は、コネクター110、タコ足環状体120及びセパボルト130のみにより構成される。
【0120】
このようなことから、左上側コネクター型接着補助器具100は、コネクター110、タコ足環状体120及びセパボルト130からなる構成として把握してもよく、コネクター110、タコ足環状体120及びセパボルト130に型締めボルト140を補助部品として加えた構成として把握してもよい。なお、このようなことは、左上側コネクター型接着補助器具100以外のコネクター型接着補助器具100であっても同様に成立する。
【0121】
左上側コネクター型接着補助器具100において、コネクター110は、図2、図4?図11のいずれかに示すごとく、円錐台状胴部110a、円柱状頭部110b、環状フランジ部110c及び複数の係合片部110dを備えており、これら円錐台状胴部110a、環状フランジ部110b、円柱状頭部110c及び複数の係合片部110dは、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、図5或いは図9にて例示するごとく、一体的に射出成形により形成されている。
【0122】
本第1実施形態において、当該所定の耐光性顔料含有樹脂材料としては、例えば、合成樹脂材料の一種であるエンジニアリングプラスチックのうちのナイロンの一種、株式会社東レ製射出成形用非強化ナイロン6にカーボンブラック等の黒色顔料を均一に含有させたものが採用されている。当該射出成形用非強化ナイロン6を採用したのは、コンクリートがアルカリ性であることを考慮すれば、ナイロン6は、耐アルカリ性に優れ、かつ、例えば、引っ張り力に対する伸長性等に優れるためにある。
【0123】
当該射出成形用非強化ナイロン6は、例えば、次のような特性を有する。
【0124】
せん断強さ:23(℃)及び絶乾状態で76(MPa)
引張り強さ:23(℃)及び絶乾状態で87(MPa)
曲げ強さ:23(℃)及び絶乾状態で120(MPa)
曲げ弾性率:23(℃)及び絶乾状態で3.1(GPa)
また、上述のように黒色顔料を非強化ナイロン6に含有させた理由は、コネクター110及びタコ足環状体120の紫外線等による劣化を未然に防止するためである。このことは、コネクター110及びタコ足環状体120が紫外線等の光に対する良好な耐光性を有することを意味する。
【0125】
なお、上述の所定の耐光性顔料含有樹脂材料として選定したナイロン6は、東芝製射出成形用非強化ナイロン6に限ることなく、当該非強化ナイロン6と同様の特性を有するナイロンであってもよい。
【0126】
円錐台状胴部110aは、図9?図11のいずれかにて示すごとく、円柱状頭部110bと同軸的にかつ一体的に形成されており、当該円錐台状胴部110aは、その下端面111から上端面112にかけて、縦断面台形状にて末広がり状に形成されている。
【0127】
ここで、円錐台状胴部110aの下端面111の外径は、25(mm)であって、当該円錐台状胴部110aの上端面112の外径30(mm)(円柱状頭部110bの外径に相当)よりも小さくなっている。また、円錐台状胴部110aの下端面111から上端面112(環状フランジ部110cの下面に相当)までの軸長は、10(mm)となっている。
【0128】
円柱状頭部110bは、円錐台状胴部110aの上端面112の外径と同一の外径を有するように円柱状に形成されており、当該円柱状頭部110bの上端面(表面)には、複数条の凹部113が、円柱状頭部110bの表面にて、図11にて図示上下方向に長手状に左右方向には列状となるように、横断面半長楕円状にて凹状に形成されている。
【0129】
本第1実施形態において、当該複数条の凹部113の各両隣接凹部113の幅方向中心間隔は、例えば、3.5(mm)となっている。また、複数条の凹部113の各幅は、3(mm)となっている。なお、左右外側凹部113の幅方向中心間隔は、21(mm)である。
【0130】
また、円柱状頭部110bは、図2、図6及び10のいずれにて示すごとく、中空状受け板部114を有しており、当該中空状受け板部114は、コネクター110の軸孔部115に対し同軸的に対応するように円柱状頭部110の円錐台状胴部110aからの延出端面の中央部にて、円柱状頭部110bの左内側凹部113、中央側凹部113及び右内側凹部113の各中央部に亘るように形成されている(図6、図9或いは図11参照)。なお、中空状受け板部114の中空部の内径は、8(mm)となっている。
【0131】
ここで、軸孔部115は、円柱状頭部110bから円錐台状胴部110aに亘る中心孔部、即ち、コネクター110の中心孔部として貫通状に形成されている。当該軸孔部115は、小径孔部115a及び大径孔部115bでもって構成されており、小径孔部115aは、図11にて示すごとく、コネクター110にその中空状受け板部114の裏面から円錐台状胴部110aの軸方向底部側中間部位にかけて同軸的に形成されている。大径孔部115bは、図6或いは図11にて示すごとく、小径孔部115aよりも大きな内径を有しており、当該大径孔部115bは、当該小径孔部115aの中空状受け板部114とは反対側端部から延出するように円錐台状胴部110aの底部にて小径孔部115aと同軸的に形成されている。
【0132】
環状フランジ部110cは、後述するごとく、コンクリート壁10aからのコネクター110の抜け止めの役割を果たすもので、当該環状フランジ部110cは、円柱状頭部110bの下端部から径方向に沿い外方へ環状に突出するように形成されている。従って、当該環状フランジ部110cの外径は、円柱状頭部110bの外径よりも大きく、例えば、39(mm)となっている。また、環状フランジ部110cの厚さは、4(mm)となっている。
【0133】
また、円錐台状胴部110aと環状フランジ部110cとの境界部には、回り止め部116が設けられている(図9参照)。当該回り止め部116は、円錐台状胴部110aの上端部から直方体形状にて環状フランジ部110cの下面に沿い径方向へ外方に向け突出するように円錐台状胴部110a及び環状フランジ部1110cと一体に上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料により形成されており、当該回り止め部116は、後述するごとくコンクリート壁10aにおけるコネクター110の回り止めの役割を果たす。
【0134】
複数の係合片部110dは、図9或いは図11にて示すごとく、円柱状頭部110bの表面に列状に形成されている。当該複数の係合片部110dは、それぞれ、ロッド状係合片部として、円柱状頭部110bの表面から上方に向け凸な半ループ形状にて湾曲するとともに、円柱状頭部110bの表面に形成してなる複数条の凹部113に対向するように、円柱状頭部110bと一体的に形成されている。なお、複数の係合片部110dの各の太さ(外径)及び曲率半径は、それぞれ、0.6(mm)及び1.5(mm)である。
【0135】
本第1実施形態において、複数の係合片部110dの各々は、生モルタル内に深く浸入可能な剛性を有し、かつ、生モルタルの硬化後のモルタル壁Mを支持し得るような破断強度を有するように形成されている。なお、本第1実施形態において、係合片部110dは、以下、面側係合片部110dともいう。
【0136】
ここで、複数の面側係合片部110dと複数条の凹部113との対応構成について図10を参照して説明すると、複数の面側係合片部110d及び複数条の凹部113は、円柱状頭部110bの表面の図10にて図示上下方向中心線を基準に左右対称的に形成されている。
【0137】
複数の面側係合片部110dのうちの6つの左外側面側係合片部110dは、それぞれ、複数条の凹部113のうちの左外側凹部113の上下方向に間隔をおいて当該左外側凹部113を跨ぐようにして円柱状頭部110bの表面から上方に向け凸な半ループ形状にて湾曲状に形成されている。
【0138】
6つの左外側面側係合片部110dの右側に位置する7つの左中側面側係合片部110dは、それぞれ、左外側凹部113の右側に位置する左中側凹部113の上下方向に間隔をおいて当該左中側凹部113を跨ぐようにして円柱状頭部110bの表面から上方に向け凸な半ループ形状にて湾曲状に形成されている。なお、7つの左中側面側係合片部110dは、6つの左外側面側係合片部110dとは左中側凹部113の上下方向に位置ずれするように形成されている。
【0139】
また、7つの左中側面側係合片部110dの右側に位置する上下4つずつの左内側面側係合片部110dは、それぞれ、左中側凹部113の右側に位置する上下2つの左内側凹部113を跨ぐようにして円柱状頭部110bの表面から上方に向け凸な半ループ形状にて湾曲状に形成されている。なお、上下4つずつの左内側面側係合片部110dは、7つの左中側面側係合片部110dとは上下2つの左内側凹部113の上下方向に位置ずれするように形成されている。
【0140】
円柱状頭部110bの表面の左右方向中央部に位置する上下3つずつの中央面側係合片部110dは、それぞれ、円柱状頭部110bの表面の左右方向中央部に位置する上下2つの凹部113を跨ぐようにして円柱状頭部110bの表面から上方に向け凸な半ループ形状にて湾曲状に形成されている。なお、上下3つずつの中央面側係合片部110dは、上下4つずつの左内側面側係合片部110dとは上下2つの凹部113の上下方向に位置ずれするように形成されている。
【0141】
また、右外側凹部113、右中側凹部113及び右内側凹部113は、図10にて図示上下方向中心線を基準に、左外側凹部113、左中側凹部113及び左内側凹部113とは左右対称的な位置にて、円柱状頭部110bの表面に形成されている。また、6つの右外側面側係合片部110d、7つの右中側面側係合片部110d及び上下4つずつの右内側面側係合片部110dは、それぞれ、図10にて図示上下方向中心線を基準に、6つの左外側面側係合片部110d、7つの左中側面側係合片部110d及び上下4つずつの左内側面側係合片部110dとは対称的な位置にて、右外側凹部113、右中側凹部113及び右内側凹部113を跨ぐようにして円柱状頭部110bの表面から上方に向け凸な半ループ形状にて湾曲状に形成されている。
【0142】
なお、左内側、中央側及び右内側の各上下2つの凹部113は、上下4つずつの左内側面側係合片部110d、上下3つずつの中央側面側係合片部110d及び右内側面側係合片部110dと共に、図10にて示すごとく、コネクター110の軸孔部113の円柱部110bの表面側開口部を介し上下に分かれて位置する。本第1実施形態において、複数の面側係合片部110d及び複数条の凹部113は、円柱状頭部110bの表面においてその全体に亘りモルタルとの係合力をバランスよく均一にするように形成されている。
【0143】
環状体120は、図2及び図4?図7のいずれかにて示すごとく、コネクター110の円柱状頭部110bに同軸的に圧入により嵌装されて環状フランジ部110c上に着座する。当該環状体120は、図2、図4?図7及び図12?図15のいずれかにて示すごとく、環状壁部120aと、複数の係合片部120bとを備えており、これら環状壁部120a及び複数の係合片部120bは、上述した所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、射出成形でもって一体に形成されている。
【0144】
環状壁部120aは、環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123を備えており、これら環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123は、変形不能に形成されているから、環状非可変着座部、環状非可変厚肉部、環状非可変薄肉部ともいう。ここで、環状着座部121は、環状フランジ部110cの環状上面に同軸的に着座するもので、当該環状着座部121の環状着座面部の外径は、環状フランジ部110cの外径と等しく、38.5(mm)となっている。なお、当該環状着座部121の軸長は、2.5(mm)である。
【0145】
環状厚肉部122は、環状着座部121の内周上端部から上方へ同軸的に延出するように形成されており、当該環状厚肉部122の肉厚、外径及び軸長は、それぞれ、3.2(mm)、36.1(mm)及び6.5(mm)である一方、当該環状厚肉部122の内径は、環状着座部121の内径に等しい。
【0146】
ここで、環状着座部121及び環状厚肉部122は、その各内径にて、円柱状頭部110bの外径に対し、後述する圧入可能な構成のもと、当該円柱状頭部110bに同軸的に圧入可能なように、29.7(mm)に設定されている。
【0147】
当該圧入可能な構成は、図14及び図15にて示すように、2条の環状凸部122a及び複数の浅い矩形くぼみ部122bからなるもので、2条の環状凸部122aは、環状着座部121及び環状厚肉部122の双方の内周面の軸方向中間部位から内方へ突出するように形成されている。当該2条の環状凸部122aの各突出幅は、0.2(mm)となっており、当該2条の環状凸部122aの各軸方向長さは、0.4(mm)となっている。また、当該2条の環状凸部122aの軸方向間隔は、3(mm)となっている。
【0148】
また、複数の矩形くぼみ部122bは、環状着座部121及び環状厚肉部122の双方の内周面に亘り、浅く形成されている。なお、環状着座部121及び環状厚肉部122は、円柱状頭部110bに圧入可能であればよく、必要に応じて複数の矩形くぼみ部122bを廃止してもよい。また、環状着座部121及び環状厚肉部122の内径及び円柱状頭部110bの外径を上述のように圧入可能に設定することで、2条の環状凸部122a及び複数の浅い矩形くぼみ部122bの双方を廃止するようにしてもよい。
【0149】
環状薄肉部123は、環状厚肉部122の外周上端部から同軸的に上方へ延出するように形成されており、当該環状薄肉部123の肉厚及び外径は、それぞれ、1.5(mm)及び36.1(mm)となっている。
【0150】
複数の係合片部120bは、図12?図17のいずれかにて示すごとく、それぞれ、ロッド部124及び球部125でもって一体に形成されており、各ロッド部124は、厚肉部122の上端内周部から所定の角度の間隔にて当該厚肉部122の軸心に向け所定の角度でもって斜め上方へ一体にロッド状に延出されている。また、各球部125は、所定の球径を有して、各対応のロッド部124の延出端部に同軸的に支持されている。これにより、複数の係合片部120bの各々において、球部125は、ロッド部124の外径よりも大きな外径のもとに、ロッド部124のモルタルからの抜け防止の役割を果たすべく、モルタルと強固に係合する機能を果たす。
【0151】
ここで、複数の係合片部120bの数は16であり、これに伴い、上述の所定の角度は、22.5度となっている。また、上述の所定の角度は、薄肉部123の軸心に対し約45度であり、複数の係合片部120bの各ロッド部124の太さ(外径)は、0.6(mm)となっている。また、上述の所定の球径は、1.5(mm)となっている。なお、本実施形態において、以下、複数の係合片部120bは、それぞれ、周側係合片部120bともいう。
【0152】
また、環状壁120は、図12?図15、図17及び図18のいずれかにて示すように、環状突起部126を備えている。環状突起部126は、環状薄肉部123の延出端面の幅方向中間部位から所定の高さだけ上方へ延出するように、縦断面山形状にて、上記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、当該環状薄肉部123と一体に形成されている。
【0153】
当該環状突起部126は、その基部126aにて、図17にて示すごとく、環状薄肉部123の延出端面の幅方向中間部位に一体に形成されており、当該環状突起部126は、基部126aから縦断面山形状に上方へ延出している。
【0154】
また、当該環状突起部126の頂部126bは、その縦断面内にて、丸みをおびるように、0.1(mm)の曲率半径を有する。本第1実施形態において、環状突起部126の基部126aの幅(薄肉部123の幅方向に沿う幅)は、0.5(mm)となっている。また、上記所定の高さは、0.1(mm)?2.0(mm)の範囲以内の値となっている。これにより、環状壁部120aにおいて、環状突起部126は、後述のごとく環状薄肉部123に向けて押圧されても、当該環状突起部126以外の環状壁部120aの構成部位の変形を招くことなく、容易に変形し得る形状となっている。なお、環状壁部120aをその半径方向にみたとき、環状突起部126は、その頂部126bにて、各周側係合片部120bの球部125の中心に対向する。
【0155】
ここで、本第1実施形態において、環状突起部126を環状壁部120aに形成した根拠について説明する。
【0156】
従来、接着補助器具をコンクリート壁に埋設するにあたっては、本明細書の冒頭にて述べたように、複数の接着補助器具を両型枠の間にて一方の型枠に当接した状態にて挟持し、当該一方の型枠を各接着補助器具に向けて押圧することで、両型枠の間に各接着補助器具を型締めする。これに伴い、一方の型枠が各接着補助器具に押し付けられる。
【0157】
このとき、当該一方の型枠が例えば木製である場合、当該一方の型枠の両面は、通常、一様な平面ではなく、凹凸面となっていることが多い。従って、例えば、接着補助器具の一方の型枠の対向面と当接する環状端部の端面形状が、平面状となっている場合には、接着補助器具の環状端部の端面とこれに対する一方の型枠の対向面とが一様には当接せず、両者の間に隙間が形成されてしまう。
【0158】
また、例えば、各接着補助器具の環状端部が、上述とは異なり、横断面楔状等の尖った断面形状となっている場合には、各接着補助器具の尖った形状の環状端部が一方の型枠にその対向面から食い込むように押し込まれて、一方の型枠の対向面に環状溝を形成すると、その後の一方の型枠の再利用の際に、上述の一方の型枠の環状溝に起因して、接着補助器具と一方の型枠とが一様には当接し得ず、接着補助器具と一方の型枠との当接面の間に環状溝による隙間が形成されてしまう。
【0159】
要するに、接着補助器具の一方の型枠の対向面と当接する環状端部及び一方の型枠の対向面のうちの少なくとも一方の形状が、接着補助器具の環状端部と一方の型枠の対向面との当接を一様に密着し得ない形状となっている場合には、生コンクリートが、接着補助器具の環状端部と一方の型枠の対向面との間を通り接着補助器具の環状壁部120a内に漏えいしてしまい、接着補助器具の環状壁部120aの内部を生コンクリートから遮断することができない。
【0160】
そこで、本第1実施形態においては、タコ足環状体120が、その環状壁部120aの環状薄肉部123の延出上端部に一体に形成してなる環状突起部126を備えるようにして、一方の型枠が、押圧されて、左上側コネクター型接着補助器具100のタコ足環状体120に押し付けられたとき、当該一方の型枠が、その対向面にて、環状壁部120aの環状薄肉部123の延出端部に向けて押し付けられる。
【0161】
ここで、タコ足環状体120の環状突起部126は、上述のような変形し易い形状に構成されていることで、当該環状突起部126は、一方の型枠の対向面の変形をも招くことなく、環状壁部120aの環状薄肉部123の延出端部に向けて容易に変形し得るようになっている。
【0162】
これにより、一方の型枠は、環状突起部126を環状薄肉部123の延出端部に向けて変形しながら、環状薄肉部123の延出端部に押圧されることとなる。その結果、変形した環状突起部126は、一方の型枠の対向面との間に隙間を形成することなく当該対向面に一様に密着し得る。これが、上述のように環状突起部126をタコ足環状体120の環状壁部120aに備えるようにした根拠である。なお、本実施形態では、環状突起部126は、環状可変部としての役割を果たす。これに対し、環状着座部121、環状厚肉部122及び環状薄肉部123は、環状突起部126とは異なり、変形不能であることから、それぞれ、環状非可変着座部、環状非可変厚肉部及び環状非可変薄肉部としての役割を果たす。なお、当該環状非可変着座部、環状非可変厚肉部及び環状非可変薄肉部は、まとめて、環状非可変壁部ともいう。
【0163】
セパジョイント130は、ステンレス鋼等の金属からなるもので、当該セパジョイント130は、図5及び図6のいずれかにて示すごとく、コネクター110の軸孔部115内に嵌装されている。セパジョイント130は円筒状のもので、当該セパジョイント130の中空部は、雌ねじ孔部130aとして形成されており、当該雌ねじ孔部130aには、スペーサボルト150(後述する)が螺合するようになっている。
【0164】
当該セパジョイント130は、図18及び図19のいずれかにて示すごとく、円筒部131及び鍔部132でもって構成されており、円筒部131は、図6にて例示するごとく、コネクター110の軸孔部115の小径孔部115a内にコネクター110の胴部110a側にかけて同軸的に圧入により嵌装されている。鍔部132は、円筒部131と同軸的に一体に形成されて、コネクター110の軸孔部115の大径孔部115b内に嵌装されている。
【0165】
型締めボルト140は、ステンレス鋼等の金属からなるもので、当該型締めボルト140は、図4?図6のいずれかにて示すごとく、円柱台状頭部110bの外方から中空状受け板部114の中空部を通してセパジョイント130の雌ねじ孔部130aに螺合されるものである。当該型締めボルト140は、図20及び図21のいずれかにて示すごとく、雄ねじ部141、鍔部142、工具把持部143及び雄ねじ部144を備えており、これら雄ねじ部141、鍔部142、工具把持部143及び雄ねじ部144は、その順序にて、雄ねじ部141から雄ねじ部144にかけて同軸的に一体に形成されている。
【0166】
ここで、雄ねじ部141は、中空状受け板部114を介しセパジョイント130の雌ねじ孔部130aに螺合されるものである。鍔部142は、雄ねじ部142をセパジョイント130の雌ねじ孔部130aに螺合させた状態で中空状受け板部114に着座するようになっている。工具把持部143は、雄ねじ部142をセパジョイント130の雌ねじ孔部130aに螺合させるにあたり、工具(図示しない)により把持されるものである。雄ねじ部144は、型締め用ナット(後述する)により螺合されるものである。
【0167】
次に、複数のディスク型接着補助器具200の構成について説明する。当該複数のディスク型接着補助器具200は、共に、同一の構成を有するように形成されている。そこで、図1にて示すように、4個のコネクター型接着補助器具100の中央に位置するディスク型接着補助器具200(以下、中央側接着補助器具200ともいう)を例にとり、その構成について説明する。
【0168】
当該中央側接着補助器具200は、上述した左上側コネクター型接着補助器具100の形成材料と同様の形成材料でもって、図3及び図22?図25のいずれかにて示すごとく、基板210、4個のフック220a?220d及び複数の係合片部230を一体的に有するように、樹脂射出成形により形成されている。なお、係合片部230は、以下、面側係合片部230ともいう。
【0169】
基板210は、円板状のもので、当該基板210は、図3及び図22?図25のいずれかにて示すごとく、中央孔部211、4個の内側開孔部212a?212d及び10個の外側開孔部213a?213jを備えている。本第1実施形態において、基板210の厚さT及び外径Vは、それぞれ、T=1.0(mm)及びV=35(mm)に設定されている(図24及び図25参照)。
【0170】
中央孔部211は、基板210の中央部に円形貫通孔状に形成されている。4個の内側開孔部212a?212dは、基板210において中央孔部211の外周部に沿い等角度間隔にて略矩形貫通孔状に形成されている。本第1実施形態において、中央孔部211の内径Uは、U=6(mm)に設定されている(図25参照)。
【0171】
また、10個の外側開孔部213a?213jは、それぞれ、基板210において、4個の内側開孔部212a?212dの外周側に長手矩形貫通孔状に形成されており、当該10個の外側開孔部213a?213jは、図23にて示すごとく、上下方向に沿い互いに平行となるように基板210に配設されている。
【0172】
当該10個の外側開孔部213a?213jのうち、図23にて左右両端側に位置する両外側開孔部213a、213jは、基板210の左右方向中心線X(図23参照)に対し左右対称的な位置にて基板210に形成され、かつ、基板210の上下方向中心線Y(左右方向中心線Xに直交する中心線)に対し上下対称的に形成されている。
【0173】
両外側開孔部213b、213iは、両外側開孔部213a、213jの内側(中央孔部211側)にて、左右方向中心線Xに対し左右対称的な位置にて基板210に形成され、かつ、上下方向中心線Yに対し上下対称的に基板210に形成されている。
【0174】
また、各両外側開孔部213c、213d及び213g、231hは、図23にて示すごとく、両外側開孔部213b、213iの内側(中央孔部111側)にて、左右方向中心線Xに対し左右対称的な位置にて基板210に形成され、かつ、上下方向中心線Yに対し上下に対称的な位置にて基板210に形成されている。
【0175】
また、両外側開孔部213e、213fは、基板210において、左右方向中心線X上における両内側開孔部212a、212bの上下両側にて、図23にて示すごとく、上下方向中心線Yに対し上下対称的な位置にて形成されている。
【0176】
4個のフック220a?220dは、後述する各座金WS(図3及び図26参照)を支持する役割を果たすもので、当該4個のフック220a?220dは、それぞれ、図22或いは図23にて示すごとく、4個の内側開孔部212a?212dから基板210の表面側へ延出するように形成されている。本第1実施形態において、4個のフック220a?220dのうち各両対向フックの基板210からの延出基端部間の基板210の表面に沿う間隔Wは、W=13(mm)に設定されている(図25参照)。
【0177】
ここで、4個のフック220a?220dのうち、フック220aは、その基端部にて、図22或いは図23にて示すごとく、内側開孔部212aの上側縁部に一体的に形成されている。当該フック220aは、図3にて示すごとく、立ち上がり部221と、折れ曲がり部222とを備えており、立ち上がり部221は、その基端部から基板210の表面の上方へ立ち上がるように延出している。また、折れ曲がり部222は、立ち上がり部221の延出端部から基板210の表面に平行に中央孔部211側へL字状に折れ曲るように延出されている。
【0178】
残りのフック220b、220c及び220dは、フック220aと同様に、立ち上がり部221及び折れ曲がり部222でもって構成されている。フック220bは、その基端部にて、図22或いは図23にて示すごとく、内側開孔部212bの下側縁部に一体的に形成されている。当該フック220bにおいて、立ち上がり部221は、その基端部から基板210の表面の上方へ立ち上がるように延出している(図22参照)。また、折れ曲がり部222は、フック220bの立ち上がり部221の延出端部から基板210の表面に平行となるようにフック220a側へL字状に折れ曲がって延出している。
【0179】
フック220cは、その基端部にて、図22或いは図23にて示すごとく、内側開孔部212cの左側縁部に形成されている。当該フック220cにおいて、立ち上がり部221は、その基端部から基板210の表面の上方へ立ち上がるように延出している(図22参照)。また、折れ曲がり部222は、フック220cの立ち上がり部221の延出端部から基板210の表面に平行なるように中央孔部211側へL字状に折れ曲がって延出している。
【0180】
また、フック220dは、その基端部にて、図22或いは図23にて示すごとく、内側開孔部212dの右側縁部に形成されている。当該フック220dにおいては、立ち上がり部221が、その基端部から基板210の表面の上方へ立ち上がるように延出している(図22参照)。また、折れ曲がり部222は、フック220dの立ち上がり部221の延出端部から基板210の表面に平行となるようにフック220c側へL字状に折れ曲がって延出している。
【0181】
以上のように構成した4個のフック220a?220dは、その各折れ曲がり部222と中央孔部211との間にて座金WS(図3参照)を挟持して支持するようになっている。
【0182】
複数の面側係合片部230は、図22、図23のいずれかにて示すごとく、左右両側係合片部群230a及び上下両側係合片部群230bを構成する。左右両側係合片部群230aは、図23において、左右方向中心線Xに対し互いに左右対称的な構成にて基板210に形成されている。
【0183】
当該左右両側係合片部群230aにおいて、左側係合片部群230aは、図23にて示すごとく、左側に位置する5個の面側係合片部230(左側係合片部230)を有する。当該5個の左側係合片部230は、図23にて示すごとく、外側開孔部213aの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213aを左右方向に跨ぐようにして、図22にて示すごとく、当該外側開孔部213aから基板210の表面の上方へ半ループ状に突出するように形成されている。本第1実施形態においては、各面側係合片部230は、生モルタル内に浸入可能な剛性を有し、かつ、生モルタルの硬化後のモルタル壁Mを支持し得るような破断強度を有するように形成されている。
【0184】
また、左側係合片部群230aは、5個の左側係合片部230の内側(中心孔部211側)に位置する11個の左内側係合片部230を有しており、当該11個の左内側係合片部230は、図23にて示すごとく、外側開孔部213aの右側に位置する外側開孔部213bの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、当該外側開孔部213bを左右方向に跨ぐようにして、図8にて示すごとく、当該外側開孔部213bから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0185】
一方、右側係合片部群230aは、左側係合片部群230aの5個の左側係合片部230及び11個の左内側係合片部230にそれぞれ対応する5個の右側係合片部230及び11個の右内側係合片部230でもって構成されている。
【0186】
ここで、右側係合片部群230aの5個の右側係合片部230は、図23にて示すごとく、基板210の左右方向中心線Xを基準として、左側係合片部群230aの5個の左側係合片部230とは対称的な位置にて、外側開孔部213jの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213jを左右方向に跨ぐようにして、図22にて示すごとく、当該外側開孔部213jから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0187】
また、右側係合片部群230aの11個の右内側係合片部230は、図23にて示すごとく、左右方向中心線Xに対し、左側係合片部群230aの11個の左内側係合片部230とは左右対称的な位置にて、外側開孔部213iの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213jを左右方向に跨ぐようにして、図8にて示すごとく、当該外側開孔部213iから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0188】
上下両側係合片部群230bは、図23にて示すごとく、上下方向中心線Yに対し互いに上下対称的な構成にて基板210に形成されている。
【0189】
当該上下両側係合片部群230bにおいて、上側係合片部群230bは、図23にて示すごとく、基板210の左右方向中央(左右方向中心線Xに対応)にて、3個の中央側係合片部230を有しており、当該3個の中央側係合片部230は、図10にて示すごとく、外側開孔部213eの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213eを左右方向に跨ぐようにして、図22にて示すごとく、当該外側開孔部213eから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0190】
また、上側係合片部群230bは、図23にて示すごとく、3個の中央側係合片部230の左側に位置する4個の中央左側係合片部230を有しており、当該4個の中央左側係合片部230は、外側開孔部213cの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、図23にて示すごとく、外側開孔部213cを左右方向に跨ぐようにして、図22にて示すごとく、当該外側開孔部213cから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0191】
また、上側係合片部群230bは、図23にて示すごとく、左右方向中心線Xに対し4個の中央左側係合片部230とは対称的な位置にある4つの中央右側係合片部230を有しており、当該4個の中央右側係合片部230は、図23にて示すごとく、外側開孔部213gの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213gを左右方向に跨ぐようにして、図22にて示すごとく、当該外側開孔部213gから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0192】
また、下側係合片部群230bは、図23にて示すごとく、基板210の左右方向中央にて、3個の中央側係合片部230を有しており、当該3個の中央側係合片部230は、図10にて示すごとく、外側開孔部213fの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213fを左右方向に跨ぐようにして、図22にて示すごとく、当該外側開孔部213fから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0193】
また、下側係合片部群230bは、図23にて示すごとく、3個の中央側係合片部230の左側に位置する4個の中央左側係合片部230を有しており、当該4個の中央左側係合片部230は、図23にて示すごとく、外側開孔部213dの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213dを左右方向に跨ぐようにして、図22にて示すごとく、当該外側開孔部213dから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0194】
また、下側係合片部群230bは、図23にて示すごとく、左右方向中心線Xに対し4個の中央左側係合片部230とは対称的な位置にある4つの中央右側係合片部230を有しており、当該4個の中央右側係合片部230は、図23にて示すごとく、外側開孔部213hの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部213hを左右方向に跨ぐようにして、図8にて示すごとく、当該外側開孔部213hから基板210の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。なお、本実施形態において、各係合片部230の頂部の基板210の裏面からの高さHは、H=3(mm)に設定されている(図24参照)。
【0195】
本実施形態では、複数の係合片部230は、以上のような構成により、基板210の表面の全体に亘りモルタルとの係合力がバランスよく均一になるように配置形成されている。
【0196】
上述のように構成された中央側接着補助器具200は、図3にて示すごとく、基板210を、その裏面にて、コンクリート壁10aの表面に当接するとともに、コンクリートネジSCを、その首下部にて、4個のフック220a?220dの各折れ曲がり部222と基板210の中央孔部211との間に挟持してなる座金WSの中空部及び基板210の中央孔部211を通して、コンクリート壁10aに締着することで、コンクリート壁10aとモルタル壁Mとの間に埋設されている。
【0197】
以上のように構成した本第1実施形態において、モルタル壁Mを、接着補助システムMSによる接着補助のもとに、コンクリート構造体10の複数のコンクリート壁に接着する例について、図27にて示す工程図に基づき説明する。
【0198】
ここでは、モルタル壁Mを、図1に示す構成において、接着補助システムMSによる接着補助のもとに、上記複数のコンクリート壁のうちのコンクリート壁10aに接着する例について説明する。
【0199】
まず、図27の型枠設置工程S1において、図28にて示す両コンクリート型枠F(図28では、一方のコンクリート型枠Fのみを示す)を互いに対向するように組み立てて設置する。なお、以下、コンクリート型枠Fは、型枠Fともいう。
【0200】
ついで、スペーサボルト及びコネクター型接着補助器具組み付け工程S2において、予め準備した複数のスペーサボルト150及び複数のコネクター型接着補助器具100(埋設前のコネクター型接着補助器具100)のうちの4本のスペーサボルト150及び4個のコネクター型接着補助器具100が、両型枠Fの間に組み付けられる。
【0201】
ここでは、4本のスペーサボルト150及び4個のコネクター型接着補助器具100が、次のようにして、互いに対向する両型枠Fに対しその間隔を一定間隔にするように組み付けられる。
【0202】
4個のコネクター型接着補助器具100のうち、上述した左上側コネクター型接着補助器具100を例に挙げると、上述した4本のスペーサボルト150のうち左上側コネクター型接着補助器具100に対する対応スペーサボルト150が、その一側軸方向雄ネジ部にて、左上側コネクター型接着補助器具100のセパボルト130に締着される。
【0203】
然る後、このように螺着された対応スペーサボルト150及び左上側コネクター型接着補助器具100が、図28にて例示するごとく、両型枠Fの間にて、その一方の型枠Fに形成してなる貫通孔部F1(図28参照)に同軸的に対応するように、保持される。
【0204】
次の型枠締め付けボルト締着工程S3にて、上述のような保持状態において、左上側コネクター型接着補助器具100の補助部品としての型枠締め付けボルト140が、一方の型枠Fの貫通孔部F1に挿通されて、一対の端太材160a及びいわゆるフォームタイ(登録商標)である型枠緊張結金具160bを介し型締め用ナット160cに係脱可能に螺着される。
【0205】
ここで、当該ナット160cは、型枠緊張結金具160b及び一対の端太材160aを介し、一方の型枠Fを、左上側コネクター型接着補助器具100に向けて押圧するように、対応型枠締め付けボルト140との間で螺合調整される。なお、対応スペーサボルト150は、その他側軸方向雄ネジ部にて、他方の型枠Fに締着される。
【0206】
これにより、左上側コネクター型接着補助器具100及び対応スペーサボルト150は、一方の型枠Fの貫通孔部F1に対応する位置にて、両型枠Fに保持され得る。なお、一方の型枠Fの貫通孔部F1の形成部位は、コンクリート壁10aのうちの第1矩形状輪郭RL(図1参照)の左上側隅角部に対応する。
【0207】
上述のように一方の型枠Fが左上側コネクター型接着補助器具100に向けて押圧されると、当該一方の型枠Fがその内面のうち左上側コネクター型接着補助器具100の環状壁部120aの環状突起部126に対応する部位にて当該環状突起部126に押し付けられる。
【0208】
なお、一方の型枠Fを介するナット160cのコネクター型接続補助器具100に対する押圧力は、約200(kgf/cm_(2))、即ち、19.6(MPa)に達するものの、この押圧力は、環状壁部120aにより受け止められるため、各面側係合片部120が押圧力でもって潰されることはない。
【0209】
しかして、環状突起部126が上述のごとく変形し易いように形成されていることから、当該環状突起部126は、一方の型枠Fによる押圧力に伴い、押しつぶされるように環状薄肉部123の延出端部に向けて変形していく。
【0210】
これに伴い、一方の型枠Fの内面のうち環状突起部126との当接部位にて変形することなく、当該一方の型枠Fがその内面にて環状壁部120aの環状薄肉壁部の環状延出端部に、変形環状突起部126を介し、一様に密着当接し得る。
【0211】
このとき、一方の型枠Fが木製或いは合成樹脂材料製であるために、当該一方の型枠Fの内面が一様な平面状にはならず、例えば、凹凸状に湾曲していても、上述のように環状突起部126が押しつぶされるように変形していくことから、一方の型枠Fの内面のうち環状突起部126との当接部位が変形することはない。このようなことは、環状突起部126の先端部が、丸みを帯びた横断面形状となっていることから、より一層、一方の型枠Fの内面のうち環状突起部126との当接部位の変形が抑制され得る。このことは、一方の型枠Fの再利用の繰り返しが可能であることを意味する。
【0212】
然る後、上述のように一方の型枠Fがその内面にて環状壁部120aの環状薄肉壁部の環状延出端部に、環状突起部126を介し、一様に当接し得ることで、一方の型枠Fと環状突起部126との間に隙間ができることがない。
【0213】
なお、一方の型枠Fを介するナット160cのコネクター型接続補助器具100に対する押圧力は、約200(kgf/cm_(2))、即ち、19.6(MPa) に達するものの、この押圧力は、環状壁部120aの環状突起部126以外の部位により受け止められるため、各面側係合片部110dや各周側係合片部120bが押圧力でもって潰されることはない。
【0214】
型枠締め付けボルト締着工程S3の処理後、生コンクリート打ち込み工程S4において、生コンクリートが両型枠Fの間に打ち込まれる。これに伴い、生コンクリートが、両型枠Fの間に流入する。なお、生コンクリートとは、いまだ硬化していないコンクリートをいう。
【0215】
このとき、左上側コネクター型接着補助器具100の複数の面側係合片部110d及び複数の周側係合片部120bは、コネクター110の円柱状頭部110b、環状壁部120a及び一方の型枠Fにより囲われる領域内に密封されているため、生コンクリートが環状壁部120aの環状突起部126と一方の型枠Fの内面との間から上記領域内に漏れて入り込むことはない。これにより、複数の面側係合片部110d及び複数の周側係合片部120bは、生コンクリートから確実に隔離され得る。
【0216】
上述のごとく、生コンクリートが両型枠F間に打ち込まれることにより、当該生コンクリートが,両型枠の間の空間領域のうち左上側コネクター型接着補助器具100を除く領域に充満することとなる。
【0217】
然る後、次の生コンクリート硬化待ち工程S5において、両型枠F間に充満している生コンクリートが硬化するまで所定の待ち時間の間待つ。このようにして生コンクリートが硬化すると、コンクリート壁10aが形成される。このとき、コンクリート壁10aには、左上側コネクター型接着補助器具100を収容してなる収容穴部12が形成されている。
【0218】
次の型枠締め付けボルト取り外し工程S6において、ナット160cが型枠締め付けボルト140から離脱される。然る後、一対の端太材160a及び型枠緊張結金具160bが型枠締め付けボルト140から離脱されるとともに、型枠締め付けボルト140がセパジョイント130から離脱される。
【0219】
このとき、型枠締め付けボルト140を回動して離脱させることになるが、コネクター110の回り止め部116が、コンクリート壁10a内にその収容穴部12の周壁部から係合することにより、回動不能に維持されている。このため、コネクター型接着補助器具100が、型枠締め付けボルト140の回動に付随して共回りすることはない。また、コネクター110の環状フランジ部110cが、図28にて示すごとく、コンクリート壁10aのうちの収容穴部12の周壁部位内に保持されているため、コネクター型接着補助器具100の収容穴部12からの脱出が確実に防止され得る。
【0220】
なお、以上のような工程の処理は、図1の4つのコネクター型接着補助器具100のうちの各残りのコネクター型接着補助器具100についても、同様になされる。
【0221】
ついで、型枠取り外し工程S7において、両型枠Fが、コンクリート壁10aから取り外される。これに伴い、コンクリート壁10aが、図29にて示すごとく、その収容穴部12内に左上側コネクター型接着補助器具100を収容した状態で、両型枠Fから解放される。このとき、左上側コネクター型接着補助器具100は、セパボルト130により、収容穴部12内にて、スペーサネジ150の一方の軸方向雄ネジ部により支持されている。
【0222】
ついで、ディスク型接着補助器具組み付け工程S8において、複数のディスク型接着補助器具200のうちの上記中央側接着補助器具200が、次のようにして、一方の型枠Fに組み付けられる。
【0223】
即ち、中央側接着補助器具200が、基板210にて、コンクリート壁10aの表面11のうち第1矩形状輪郭RLの中央に対する対応部位に設置される(図1及び図30参照)。このとき、基板210は、その裏面にて、図30にて示すごとく、複数の面側係合片部230及び4個のフック220a?220dを外方に向け突出させるように、コンクリート壁10aの表面11に設置される。
【0224】
このような設置状態において、図26に示す座金WSが、図30にて示すごとく、基板210のうち中央孔部211を中心とする環状部位(以下、中央環状部位Pともいう)上に4個のフック220a?220dを介し設置される。
【0225】
ここでは、座金WSが、各フック220a?220dをその弾力に抗して折れ曲がり部222にて押し広げるようにして、中央環状部位P上に設置される。このため、座金WSが、各フック220a?220dの内側にて当該各フック220a?220dの折れ曲がり部222と基板210の環状中央部位Pとの間に挟持される。
【0226】
本第1実施形態において、座金WSは、平座金として、例えば、ステンレススチールでもって環状に形成されており、当該座金WSの厚さZ、内径Ri及び外径Roは、それぞれ、Z=0.7(mm)、Ri=6(mm)及びRo=13(mm)に設定されている(図26参照)。なお、中央環状部位Pは、各フック220a?220dの立ち上がり部221の基板210からの延出基端部の内側(中央孔部211側)において基板210に形成される環状領域をいう。
【0227】
上述のように座金WSを挟持した後、コンクリートネジSCが、図30にて示すごとく、その首下部にて、座金WSの中空部及び基板210の中央孔部211を通してコンクリート壁10aに締着される。
【0228】
この締着は、電気工具(図示しない)によりコンクリート壁10aに座金WSの中空部及び基板210の中央孔部211を通して下孔部を形成した後に、コンクリートネジSCをその首下部にて座金WSの中空部及び基板210の中央孔部211を通して上記下孔部に締着することで行われる。
【0229】
このような締着状態においては、座金WSの内径Riが基板210の中央孔部211の内径Vと同一であることから、コンクリートネジSCは、その頭部にて、座金WSを基板210の中央孔部211の外周部上にしっかりと保持し得る。従って、基板210は、座金WS及びコンクリートネジSCによってコンクリート壁10aに安定状態にてしっかりと組み付けられ得る。
【0230】
以上のようにして4個のコネクター型接着補助器具100及びディスク型接着補助器具200(中央側接着補助器具200)のコンクリート壁10aに対する組み付けが終了すると、次の生モルタル塗布工程S9において、生モルタルが、図2及び図3にて示すごとく、所定の厚さにて、コンクリート壁10aの表面11の全体に亘り塗布される。なお、生モルタルとは、未だ硬化していないモルタルをいう。
【0231】
このとき、当該塗布は、4個のコネクター型接着補助器具100及びディスク型接着補助器具200をコンクリート壁10aの表面上にて覆うようになされる。従って、各コネクター型接着補助器具100は、コンクリート壁10aの収容穴部12内に収容された状態にて生モルタルにより当該コンクリート壁10aに埋設されるとともに、ディスク型接着補助器具200が、コンクリート壁10aの表面11上にて生モルタルにより埋設されることとなる。
【0232】
これに伴い、生モルタルは、各コネクター型接着補助器具100の環状壁部120aの内部に浸入する。ついで、このように浸入した生モルタルは、さらに、複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部110dを介しコネクター110の円柱状頭部110bの表面(延出端面)に向けて浸入する。
【0233】
ここで、上述のように複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部110dを介しコネクター110の円柱状頭部110bの延出端面に向けて浸入する生モルタルは、複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120の各々の間を通り円柱状頭部110bの延出端面に達する。
【0234】
また、このように円柱状頭部110bの延出端面に達する生コンクリートは、円柱状頭部110bの延出端面に形成した各凹部113内にも達する。このことは、生コンクリートが,互いに対向する面側係合片部110dと凹部113の内面との間にも行き亘ることを意味する。従って、複数の面側係合片部110dと円柱状頭部110bの延出端面との間に浸入する生モルタルの量は、円柱状頭部110bの延出端面に複数の凹部113る生モルタルの量は、円柱状頭部110bの延出端面に複数の凹部113を形成したことで、増大する。
【0235】
また、ディスク型接着補助器具200においては、上述のように生モルタルが塗布されると、当該生モルタルは、複数の面側係合片部230を介し基板210の表面に達する。ここで、このように複数の面側係合片部230を介し基板210の表面に達する生モルタルは、互いに隣り合う各両面側係合片部230の間を通り基板210の複数の外側開孔部213a?213jの各内部に行き亘る。このことは、ディスク型接着補助器具200による生モルタルのコンクリート壁10aとの接着がより一層強化されることを意味する。
【0236】
上述のような生モルタル塗布工程S9の後、次の生モルタル硬化待ち工程S10において、上述のようにコンクリート壁10aの表面11に塗布した生モルタルが硬化するまで所定の待ち時間の間待つ。これに伴い、当該生モルタルが硬化すると、モルタル壁Mがコンクリート壁10aの表面11上に形成される。
【0237】
以上説明したように、本第1実施形態では、接着補助システムが、上述のように構成した複数のコネクター型接着補助器具100及び複数のディスク型接着補助器具200を備える。ここで、複数のコネクター型接着補助器具100が、それぞれ、上述のように環状体120の環状壁部120aをコネクター110の円柱状頭部110bに圧入した状態において、各環状壁部120aの環状突起部126にて両型枠Fの一方の型枠に対向するように、各セパジョイント130でもって、当該一方の型枠側から他方の型枠側に向けて延出する複数のスペーサボルト150に連結される。また、複数のコネクター型接着補助器具100が、各環状壁部120aにて、各対応の環状突起部126を押しつぶすように変形させながら当該一方の型枠を介し各対応のコネクター110側へ押圧される。なお、このような押圧力は、環状壁部120aを介し環状フランジ部110bにより受承される。
【0238】
これにより、複数のコネクター型接着補助器具100の各々においては、上述した環状突起部126の変形が、環状壁部120aのうちの環状突起部126以外の構成部位の変形及び一方の型枠Fの環状壁部120aに対する対向面の部分的変形を伴うことなく、なされることで、環状壁部120aが、コネクター110及び一方の型枠と共に、密閉空間を構成して、当該密閉空間内に複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部110dを閉じ込める。
【0239】
従って、上述のように生コンクリートを両型枠Fの間に打ち込んでも、複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bが当該生コンクリートから良好に隔離されるので、当該生コンクリートが複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bに達することがない。bが、生コンクリートで汚れることなく、生モルタルと良好に密着し得ることを意味する。
【0240】
また、環状壁部120aのうち、環状突起部126を除く部位は、上述のごとく、一方の型枠による押圧によって変形することはないので、複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bは、その原形状を、上述の密閉空間内にて、良好に維持し得る。
【0241】
従って、上述のように、生モルタルがコンクリート壁10aの表面11に複数のコネクター型接着補助器具100を介し塗布されることで、当該生モルタルは、各コネクター型接着補助器具100の複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bに良好に係合し得る。このことは、各コネクター型接着補助器具100の複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部120bは、生モルタルの硬化後に形成されるモルタル壁Mにその内部にてしっかりと係合し得ることを意味する。
【0242】
その結果、複数のコネクター型接着補助器具100は、その複数の周側係合片部120b及び複数の面側係合片部110dでもって、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着を良好に補助し、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着力(アンカー効果)を良好に高め得る。
【0243】
また、複数のコネクター型接着補助器具100は、上述のように両型枠Fを取り外すことで除去した後も、各セパボルト130にて、対応の各スペーサボルト150に連結したまま、取り外すことなく、そのまま、継続的に維持される。従って、当該複数のコネクター型接着補助器具100の取外し作業や新たな取付け作業を繰り返す必要がないため、作業性を向上し得るのは勿論のこと、複数のコネクター型接着補助器具100の廃棄に起因するような環境汚染問題の発生をも未然に防止し得る。
【0244】
また、上述のように、コンクリート壁10aが、両型枠Fの間に打ち込まれる生コンクリートの硬化により形成された上で、両型枠Fが、除去された後において、複数のディスク型接着補助器具200が、コンクリート壁10aの表面11に複数のコネクター型接着補助器具100とは異なる位置(矩形状輪郭RLの中央部)にて分散して配設されるとともに、それぞれ、中央孔部211にて、各ネジSCによりコンクリート壁10aの表面11に締着される。
【0245】
従って、当該複数のディスク型接着補助器具200は、各ネジSCによりコンクリート壁10aの表面にしっかりと組み付けられる。このような状態で、生モルタルが上述のようにコンクリート壁10aの表面11に塗布されることで、当該生モルタルが、複数のディスク型接着補助器具200の各々の複数の面側係合片部230に、複数のコネクター型接着補助器具100の複数の面側係合片部と同様に、しっかりと係合し得る。
【0246】
これに伴い、生モルタルが硬化してモルタル壁として形成されることで、複数のディスク型接着補助器具200の各々の複数の面側係合片部230は、モルタル壁に、その内部にて、複数のコネクター型接着補助器具100の各々の複数の面側係合片部120と同様に、しっかりと係合し得る。
【0247】
その結果、複数のディスク型接着補助器具200は、その各複数の面側係合片部230でもって、複数のコネクター型接着補助器具100と同様に、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着を良好に補助し、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着力、即ちアンカー効果を良好に高め得る。
【0248】
ここで、複数のコネクター型接着補助器具100は、それぞれ、複数の面側係合片部120bにて、コンクリート壁10aの表面11から突出するのみであり、複数のディスク型接着補助器具200の各々の基板210は、板状であるから、生モルタルの塗布厚さは、ほぼ、コンクリート壁10aの表面に亘り、一様に維持し得るのは勿論のこと、可能な限り薄くすることができることから、生モルタルの塗布量の軽減に役立つ。
【0249】
また、ディスク型接着補助器具200は、コネクター型接着補助器具100の構成とは異なり、単なる板状の基板210に複数の面側係合片部230及び4つのフック220a?20dを形成した構成であることから、当該ディスク型接着補助器具200は、コネクター型接着補助器具100に比べてより一層簡単な構成にて形成することができる。
【0250】
以上のように、複数のコネクター型接着補助器具100及び複数のディスク型接着補助器具200が、コンクリート壁10aとモルタル壁Mとの間に格子状に分散して埋設されることで、各コネクター型接着補助器具100が複数の面側係合片110d及び複数の周側係合片120bでもって、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対するアンカー効果を高めるとともに、各ディスク型接着補助器具200が、複数の面側係合片部でもって、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対するアンカー効果を高め得る。
【0251】
このことは、複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具100、200による接着補助による相乗的なアンカー効果のもと、モルタル壁Mが、コンクリート壁10aから剥がれ落ちたりすることなく、長期に亘り、コンクリート壁10aの表面11に対する接着を良好に維持し得ることを意味する。
【0252】
また、本第1実施形態において、コネクター型接着補助器具100は、コネクター110と環状体120との別体による2部品で構成されている。ここで、コネクター110においては、円錐台状胴部110aが環状フランジ部110cから軸方向に離れるほど末すぼまり状に構成されているから、コネクター110の成型用金型が、円錐台状胴部110aが環状フランジ部110cから軸方向に離れるほど末広がり状に構成される場合に比べて、より簡単な構成で済む。従って、コネクター110の量産性の向上につながる。なお、このようなことは、回り止め部116が、環状フランジ部110cの下面に沿うように円錐台状胴部110aの大径側外周面部に突設されているから、より一層改善され得る。
【0253】
また、コネクター型接着補助器具100は、スペーサボルト150との接続のために、コネクター110に同軸的に圧入したセパジョイント130を有するので、コネクター型接着補助器具100とスペーサボルト150との接続が強固になされ得る。また、コネクター型接着補助器具100は、型締めボルト140を補助部品としているため、別途、型締めボルトをわざわざ準備する必要もなく、便利である。なお、型締めボルト140としては、全長の異なるものを複数準備すると便利である。
【0254】
また、コネクター型接着補助器具100において、コネクター110及び環状体120が、ナイロン6に耐光性黒色顔料を均一に含有してなる所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって形成されているから、当該コネクター110及び環状体120は、紫外線等の外光を受けても、長期に亘り劣化することなく、良好な品質に維持され得る。
【0255】
さらに、ナイロン6が、引っ張り力に対し良好な伸長特性を有するから、仮にモルタル壁がコンクリート体の表面が剥がれ落ちようとする事態が発生しても、コネクター110の複数の面側係合片部110dや環状体120の周側係合片部120bがモルタル壁の各対応内部との間の良好な係合により伸長することで、モルタル壁の剥がれによる落下を未然に防止し得る。
【0256】
従って、耐光性黒色顔料によるコネクター及び環状体の耐光性と相まって、コンクリート体に対するモルタル壁の接着力を長期に亘り良好に維持し得る。
(第2実施形態)
図31は、本発明に係る接着補助システムMSの第2実施形態の要部を示している。当該第2実施形態では、接着補助システムMSが上記第1実施形態にて述べた複数の接着補助器具100を備えるとともに、上記第1実施形態にて述べた複数の接着補助器具200に代えて、複数の接着補助器具300(図31では単一の接着補助器具300のみを示す。)を備えている。
【0257】
本第2実施形態では、複数の接着補助器具100は、上記第1実施形態と同様に、それぞれ、コンクリート壁10aの複数の収容穴部12内に収容されて、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間に埋設されている。
【0258】
また、複数の接着補助器具300は、上記第1実施形態にて述べた複数の接着補助器具200と同様に、図31にて例示するごとく、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間に埋設されている。本第2実施形態において、接着補助器具300は、上記第1実施形態にて述べた接着補助器具200と同様に、ディスク型接着補助器具300ともいう。なお、ディスク型接着補助器具300は、ディスク型接着補助器具200と同様に、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間への埋設前後において同様の構成を有する。
【0259】
複数のディスク型接着補助器具300は、そのディスク型接着補助器具300毎に、上記第1実施形態にて述べたディスク型接着補助器具200と同様に、各対応の矩形状輪郭RL(図1参照)の中心において、コンクリート壁10aの表面11に配設されている。
【0260】
このことは、複数のディスク型接着補助器具300は、一隅角部を共有する4個の第1矩形状輪郭RLの各々の中心に位置する4個の接着補助器具300でもって、コンクリート壁10aの表面11にて矩形状に配設されて、矩形状輪郭(以下、上記第1実施形態と同様に、第2矩形状輪郭ともいう)を構成することを意味する。
【0261】
これにより、複数のディスク型接着補助器具300は、上記第2矩形状輪郭を構成する4個のディスク型接着補助器具300ごとに、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対するディスク型接着補助器具300による接着補助力を良好に発揮する役割を果たす。
【0262】
さらに、上記第1実施形態と同様に、第1矩形状輪郭RLの4つの隅角部に位置する4個のコネクター型接着補助器具100と、第1矩形状輪郭RLの中心に位置するディスク型接着補助器具300とでもって、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着補助力を、コネクター型接着補助器具100による接着補助力のみの場合に比べてさらに強化する役割を果たす。
【0263】
次に、複数のディスク型接着補助器具300の構成について説明する。当該複数のディスク型接着補助器具300は、共に、同一の構成を有するように形成されている。そこで、4個のコネクター型接着補助器具100の中央に位置するディスク型接着補助器具300(以下、中央側接着補助器具300ともいう)を例にとり、その構成について説明する。
【0264】
当該中央側接着補助器具300は、上記第1実施形態にて述べた中央側接着補助器具200の形成材料と同様の形成材料でもって、図31?図35のいずれかにて示すごとく、基板310、複数の係合片部320、4個のフック330a?330d及び複数の係合片部340を一体的に有するように、射出成形により形成されている。なお、本第2実施形態において、複数の係合片部320は、以下、周側係合片部320ともいい、また、複数の係合片部340は、以下、複数の面側係合片部340ともいう。
【0265】
基板310は、円板状のもので、当該基板310は、図31?図34のいずれかにて示すごとく、中央孔部311、4個の内側開孔部312a?313d及び12個の外側開孔部313a?313k及び313nを備えている。本第2実施形態において、基板310の厚さT1及び外径V1は、それぞれ、T1=0.7(mm)及びV1=32(mm)に設定されている(図34及び図35参照)。
【0266】
中央孔部311は、基板310の中央部に円形貫通孔状に形成されている。4個の内側開孔部312a?312dは、基板310において中央孔部311の外周部に沿い等角度間隔にて略矩形貫通孔状に形成されている。本第2実施形態において、中央孔部311の内径U1は、U1=6(mm)に設定されている(図34参照)。
【0267】
また、12個の外側開孔部313a?313k及び313nは、それぞれ、基板310において、4個の内側開孔部312a?312dの外周側に長手矩形貫通孔状に形成されており、当該12個の外側開孔部313a?313k及び313nは、図33にて示すごとく、上下方向に沿い互いに平行となるように基板310に配列されている。
【0268】
当該12個の外側開孔部313a?313k及び313nのうち、図33にて左右両端側に位置する両外側開孔部313a、313nは、基板310の左右方向中心線X1(図33参照)に対し左右対称的な位置にて基板310に形成され、かつ、基板310の上下方向中心線Y1(図33参照)に対し上下対称的な位置にて基板310に形成されている。なお、当該左右方向中心線X1及び上下方向中心線Y1は、基板310の表面において互いに直交している。
【0269】
各両外側開孔部313b、313c及び313j、313kは、両外側開孔部313a、313nの内側(中央孔部311側)にて、左右方向中心線X1に対し左右対称的な位置にて基板310に形成され、かつ、上下方向中心線Y1に対し上下対称的な位置にて基板310に形成されている。
【0270】
各両外側開孔部313d、313e及び313h、313iは、各両外側開孔部313b、313c及び313j、313kの内側(中央孔部311側)にて、左右方向中心線X1に対し左右対称的な位置にて基板310に形成され、かつ、上下方向中心線Y1に対し上下対称的な位置にて基板310に形成されている。
【0271】
また、両外側開孔部313f、313gは、基板310において、左右方向中心線X1上における両内側開孔部312a、312bの上下両側にて、図33にて示すごとく、上下方向中心線Y1に対し上下対称的な位置にて形成されている。
【0272】
複数の周側係合片部320は、図31?図34のいずれかにて示すごとく、基板310の外周部から半径方向に向け放射状に延出するように形成されている。
【0273】
当該複数の周側係合片部320は、共に、同一の構成を有することから、当該複数の周側係合片部320のうちの一周側係合片部320を例にとり説明する。当該一周側係合片部320は、図31或いは図34にて示すごとく、両脚部321、322及び腕部323でもって、U字状となるように形成されている。
【0274】
即ち、当該一周側係合片部320において、脚部321は、基板320の外周部からその表面側へL字状に折れ曲がるように延出している。腕部323は、脚部321の延出端部から基板310の半径方向に沿い外方へL字状に折れ曲がるように延出している。また、脚部322は、腕部323の延出端部から基板310の裏面側へL字状に折れ曲がるように延出している。
【0275】
本第2実施形態においては、各周側係合片部320は、生モルタル内に浸入可能な剛性を有し、かつ、生モルタルの硬化後のモルタル壁Mを支持し得るような破断強度を有するように形成されている。
【0276】
4個のフック330a?330dは、上記第1実施形態にて述べた各座金WS(図3参照)を支持する役割を果たすもので、当該4個のフック330a?330dは、それぞれ、図32にて示すごとく、4個の内側開孔部312a?312dから基板310の表面側へ延出するように形成されている。本第2実施形態において、4個のフック330a?330dのうち各4両対向フックの基板310からの延出基端部間の基板310の表面に沿う間隔W1は、W1=13(mm)に設定されている(図34参照)。
【0277】
ここで、4個のフック330a?330dのうち、フック330aは、その基端部にて、図32にて示すごとく、内側開孔部312aの上側縁部に一体的に形成されている。当該フック330aは、図32、図34及び図35のいずれかにて示すごとく、立ち上がり部331と、折れ曲がり部332とを備えており、立ち上がり部331は、その基端部から基板310の表面の上方へ立ち上がるように延出している。また、折れ曲がり部332は、立ち上がり部331の延出端部から基板210の表面に平行に中央孔部311側へL字状に折れ曲るように延出されている。
【0278】
残りのフック330b、330c及び330dは、フック330aと同様に、立ち上がり部331及び折れ曲がり部332でもって構成されている。フック330bは、その基端部にて、図32にて示すごとく、内側開孔部312bの下側縁部に一体的に形成されている。当該フック330bにおいて、立ち上がり部331は、図32にて示すごとく、その基端部から基板310の表面の上方へ立ち上がるように延出している。また、折れ曲がり部332は、フック330bの立ち上がり部331の延出端部から基板310の表面に平行となるようにフック330a側へL字状に折れ曲がって延出している。
【0279】
フック330cは、その基端部にて、図32にて示すごとく、内側開孔部312cの左側縁部に形成されている。当該フック330cにおいて、立ち上がり部331は、その基端部から基板310の表面の上方へ立ち上がるように延出している。また、折れ曲がり部332は、フック330cの立ち上がり部331の延出端部から基板310の表面に平行なるように中央孔部311側へL字状に折れ曲がって延出している。
【0280】
また、フック330dは、その基端部にて、図32にて示すごとく、内側開孔部312dの右側縁部に形成されている。当該フック330dにおいては、立ち上がり部331が、その基端部から基板310の表面の上方へ立ち上がるように延出している。また、折れ曲がり部332は、フック330dの立ち上がり部331の延出端部から基板310の表面に平行となるようにフック330c側へL字状に折れ曲がって延出している。
【0281】
以上のように構成した4個のフック330a?330dは、その各折れ曲がり部332と中央孔部311との間にて座金WS(図3参照)を挟持して支持するようになっている。ここで、4個のフック330a?330dは、等角度間隔にて、基板310の表面に形成されているから、座金WSは、その全体に亘り、当該4個のフック330a?330dにより基板310に対し安定的に支持され得る。
【0282】
複数の面側係合片部340は、図33にて示すごとく、左右両側係合片部群340a及び上下両側係合片部群340bを構成する。
【0283】
左右両側係合片部群340aは、図33において、左右方向中心線X1に対し互いに左右対称的な構成にて基板310に形成されている。
【0284】
当該左右両側係合片部群340aにおいて、左側係合片部群340aは、図33にて示すごとく、左側に位置する7個の面側係合片部340(左側係合片部340)を有する。当該7個の面側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313aの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313aを左右方向に跨ぐようにして、図32にて示すごとく、当該外側開孔部313aから基板310の表面の上方へ半ループ状に突出するように形成されている。本第2実施形態においては、各面側係合片部340は、上記第1実施形態にて述べた各面側係合片部230と同様に、生モルタル内に浸入可能な剛性を有し、かつ、生モルタルの硬化後のモルタル壁Mを支持し得るような破断強度を有するように形成されている。
【0285】
また、左側係合片部群340aは、7個の左側係合片部340の内側(中心孔部311側)に位置する3個の左上内側係合片部340及び3個の左下内側係合片部340を有している。
【0286】
3個の左上内側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313aの右上側に位置する外側開孔部313bの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313bを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図33から分かるように、当該外側開孔部313bから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。一方、3個の左下内側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313aの右下側に位置する外側開孔部313cの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313cを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図33から分かるように、当該外側開孔部313cから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0287】
また、右側係合片部群340aは、左側係合片部群340aの11個の左側係合片部340及び各3個の左上下内側係合片部330にそれぞれ対応する11個の右側係合片部340及び各3個の右上下内側係合片部340でもって構成されている。
【0288】
ここで、11個の右側係合片部340は、図33にて示すごとく、基板310の左右方向中心線X1を基準として、左側係合片部群340aの11個の左側係合片部340とは対称的な位置にて、外側開孔部313nの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313nを左右方向に跨ぐようにして、図32及び図33から分かるように、当該外側開孔部313nから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0289】
また、3個の右上内側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313nの左上側に位置する外側開孔部313jの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313jを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図32から分かるように、当該外側開孔部313jから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0290】
一方、3個の右下内側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313nの左下側に位置する外側開孔部313kの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313kを左右方向に跨ぐようにして、図32及び図33から分かるように、当該外側開孔部313kから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0291】
上下両側係合片部群340bは、図33にて示すごとく、上下方向中心線Y1に対し互いに上下対称的な構成にて基板310に形成されている。
【0292】
当該上下両側係合片部群340bにおいて、上側係合片部群340bは、図33にて示すごとく、基板310の左右方向中央(左右方向中心線X1に対応)にて、2個の中央側係合片部340を有しており、当該2個の中央側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313fの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313fを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図33から分かるように、当該外側開孔部313fから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0293】
また、上側係合片部群340bは、図33にて示すごとく、2個の中央側係合片部340の左側に位置する3個の中央左側係合片部340を有しており、当該3個の中央左側係合片部340は、外側開孔部313dの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、図33にて示すごとく、外側開孔部313dを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図33から分かるように、当該外側開孔部313dから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0294】
また、上側係合片部群340bは、図33にて示すごとく、左右方向中心線X1に対し3個の中央左側係合片部340とは対称的な位置にある3個の中央右側係合片部340を有しており、当該3個の中央右側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313hの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313hを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図33から分かるように、当該外側開孔部313hから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0295】
また、下側係合片部群340bは、図33にて示すごとく、基板310の左右方向中央にて、2個の中央側係合片部340を有しており、当該2個の中央側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313iの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313iを左右方向に跨ぐようにして、図32及び図33のいずれかから分かるように、当該外側開孔部313iから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0296】
また、下側係合片部群340bは、図33にて示すごとく、2個の中央側係合片部340の左側に位置する3個の中央左側係合片部340を有しており、当該3個の中央左側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313eの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313eを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図33から分かるように、当該外側開孔部313eから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。
【0297】
また、下側係合片部群340bは、図33にて示すごとく、左右方向中心線X1に対し3個の中央左側係合片部340とは対称的な位置にある3個の中央右側係合片部340を有しており、当該3個の中央右側係合片部340は、図33にて示すごとく、外側開孔部313kの長手方向に所定間隔をおいて互いに平行に配列されるとともに、外側開孔部313kを左右方向に跨ぐようにして、図31及び図33から分かるように、当該外側開孔部313kから基板310の表面側へ半ループ状に突出するように形成されている。なお、本第2実施形態において、各面側係合片部340の頂部の基板310の裏面からの高さH1は、H1=2.1(mm)に設定されている(図35参照)。
【0298】
上述のように構成された中央側接着補助器具300は、図31にて示すごとく、基板310を、その裏面にて、コンクリート壁10aの表面に当接するとともに、コンクリートネジSCを、その首下部にて、4個のフック330a?330dの各折れ曲がり部と基板310の中央孔部311との間に保持してなる座金WSの中空部及び基板310の中央孔部311を通して、コンクリート壁10aに締着することで、座金WSをコンクリートネジSCの頭部とコンクリート壁10aとの間に挟持し、コンクリート壁10aとモルタル壁Mとの間に埋設されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0299】
以上のように構成した本第2実施形態において、上記第1実施形態と同様に図14の型枠取り外し工程S7の処理を終了すると、次のディスク型接着補助器具組み付け工程S8において、上記第1実施形態にて述べた中央側接着補助器具200に代えて、複数の接着補助器具300のうちの上記中央側接着補助器具300が、一方の型枠Fに組み付けられる。
【0300】
即ち、中央側接着補助器具300が、基板310にて、コンクリート壁10aの表面11のうち第1矩形状輪郭RLの中央に対する対応部位に設置される(図1及び図36参照)。このとき、基板310は、その裏面にて、図36にて示すごとく、複数の係合片部340及び4個のフック330a?330dを上方に向け突出させるように、コンクリート壁10aの表面11に設置される。
【0301】
このような設置状態において、上記第1実施形態にて述べた座金WSが、図36にて示すごとく、基板310のうち中央孔部311を中心とする環状部位(以下、本第2実施形態でも、中央環状部位Pという)上に4個のフック330a?330dを介し設置される。
【0302】
ここでは、座金WSが、各フック330a?330dの延出端部をその弾力に抗して押し広げるようにして、中央環状部位P上に設置される。このため、座金WSが、各フック330a?330dの内側にて当該各フック330a?330dの延出端部と基板310の環状中央部位Pとの間に挟持される。なお、本第2実施形態における中央環状部位Pは、各フック330a?330dの基板310からの延出基端部の内側(中央孔部311側)において基板310に形成される環状領域をいう。
【0303】
このように座金WSを挟持した後、コンクリートネジSCが、図36にて示すごとく、その首下部にて、座金WSの中空部及び基板310の中央孔部311を通して上記第1実施形態と同様にコンクリート壁10aに締着される。
【0304】
以上のようにしてディスク型接着補助器具300(中央側接着補助器具300)及び上記第1実施形態にて述べた4個のコネクター型接着補助器具100のコンクリート壁10aに対する組み付けが終了すると、次の生モルタル塗布工程S9において、生モルタルが、図2及び図31にて示すごとく、上記第1実施形態と同様に、コンクリート壁10aの表面11の全体に亘り塗布される。
【0305】
従って、上記第1実施形態にて述べたコネクター型接着補助器具100は、コンクリート壁10aの収容穴部12内に収容された状態にて生モルタルにより当該コンクリート壁10aに埋設されるとともに、ディスク型接着補助器具300が、コンクリート壁10aの表面11上にて生モルタルにより埋設される。
【0306】
これに伴い、生モルタルが、上記第1実施形態にて述べたと同様に、コネクター型接着補助器具100内に浸入するとともに、ディスク型接着補助器具300において、複数の面側係合片部340を介し基板310の表面に達する。ここで、このように複数の面側係合片部340を介し基板310の表面に達する生モルタルは、互いに隣り合う各両面側係合片部340の間を通り基板310の複数の外側開孔部313a?313k、313nの各内部に行き亘る。
【0307】
上述のような生モルタル塗布工程S9の後、次の生モルタル硬化待ち工程S10において、上述のようにコンクリート壁10aの表面11に塗布した生モルタルが硬化するまで所定時間の間待つ。これに伴い、当該生モルタルが硬化すると、モルタル壁Mがコンクリート壁10aの表面11上に形成される。
【0308】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、各ディスク型接着補助器具300は、複数の面側係合片部340に加えて、上記第1実施形態にて説明した各ディスク型接着補助器具200とは異なり、複数の周側係合片部320を上述した構成でもって備えている。
【0309】
従って、複数の周側係合片部320が基板310の外周部から放射状に延出することで、生モルタルが上述のごとく当該モルタル用接着補助器具300を介しコンクリート壁10aの表面11に塗布されたとき、当該モルタル用接着補助器具300は、複数の面側係合片部340だけでなく、複数の周側係合片部320によっても、生モルタルと係合する。ここで、複数の周側係合片部320及び複数の面側係合片部340は、上述のような配置構成を有することで、ディスク型接着補助器具300の基板310の生モルタルとの係合を基板310の全体に亘りバランスよく確保し得る。
【0310】
このため、生モルタルが硬化してモルタル壁Mとなったとき、当該モルタル用接着補助器具300は、複数の面側係合片部340及び複数の周側係合片部320によって、バランスよく、モルタル壁Mにその内部にてしっかりと係合する。その結果、当該モルタル用接着補助器具300は、基板310から突出する複数の面側係合片部340及び複数の周側係合片部320の双方によって、モルタル壁Mをコンクリート壁10aの表面11に支持し得る。これにより、モルタル用接着補助器具300によるモルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着補助力が、より一層強化され得る。
【0311】
ここで、ディスク型接着補助器具300毎に、複数の面側係合片部340或いは左右上下の各側係合片部群340a、340bは、それぞれ、基板310の表面において左右方向中心線X1及び上下方向中心線Y1の双方に対し対称的に設けられているため、各面側係合片部340或いは各側係合片部群340a、340bによるモルタル壁Mに対する接着補助力は、基板310の表面の全体に亘り均一に発揮され得る。その結果、上述したモルタル用接着補助器具300による接着補助力が安定的に強化され得る。
【0312】
その結果、本第2実施形態では、接着補助システムによる接着補助のもと、複数のコネクター型接着補助器具100及び複数のディスク型接着補助器具300の双方のモルタル壁Mとの係合力に基づき、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着力(アンカー効果)が、より一層安定的に強化され得る。このことは、モルタル壁Mのコンクリート壁10aからの脱落が、上記第1実施形態にて述べた所定の耐光性顔料含有樹脂材料による複数のコネクター型接着補助器具100及び複数のディスク型接着補助器具300の劣化防止作用のもと、長期に亘り、より一層良好に防止され得ることを意味する。本第2実施形態のその他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図37は、本発明に係る接着補助システムMSの第3実施形態の要部を示している。当該第3実施形態では、接着補助システムMSが上記第1実施形態にて述べた複数の接着補助器具100を備えるとともに、上記第1実施形態にて述べた複数の接着補助器具200に代えて、複数の接着補助器具200A(図37では単一の接着補助器具200Aのみを示す。)を備えている。
【0313】
本第3実施形態では、複数の接着補助器具100は、上記第1実施形態と同様に、それぞれ、コンクリート壁10aの複数の収容穴部12内に収容されて、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間に埋設されている。
【0314】
また、複数の接着補助器具200Aは、上記第1実施形態にて述べた複数の接着補助器具200と同様に、図37にて例示するごとく、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間に埋設されている。本第3実施形態において、接着補助器具200Aは、上記第1実施形態にて述べた接着補助器具200と同様に、ディスク型接着補助器具200Aともいう。なお、ディスク型接着補助器具200Aは、ディスク型接着補助器具200と同様に、モルタル壁Mとコンクリート壁10aとの間への埋設前後において同様の構成を有する。
【0315】
当該接着補助器具200Aは、共に、同一の構成を有するように形成されている。そこで、上記第1実施形態にて述べた4個の接着補助器具100(図1参照)の中央に接着補助器具200に代えて位置する接着補助器具200A(以下、中央側接着補助器具200Aともいう)を例にとり、その構成について説明する。
【0316】
当該中央側接着補助器具200Aは、上記第1実施形態にて述べた中央側接着補助器具200において、4個の内側開孔部212a?212d及び4個のフック220a?220dを廃止するとともに、複数の係合片部250(以下、周側係合片部250ともいう)を付加的に設けた構成を有する。
【0317】
複数の周側係合片部250は、図37?図41のいずれかにて示すごとく、基板210の外周部から半径方向に向け放射状に延出するように、基板210と同様の形成材料でもって、当該基板210と一体的に形成されている。ここで、当該複数の周側係合片部250は、生モルタル内に浸入可能な剛性を有し、かつ、生モルタルの硬化後のモルタル壁Mを支持し得るような破断強度を有するように形成されている。
【0318】
複数の周側係合片部250は、共に、同一の構成を有することから、当該複数の周側係合片部250のうちの一周側係合片部250を例にとり説明する。当該一周側係合片部250は、図37?図41のいずれかにて示すごとく、腕部251及び脚部252でもって、L字状となるように形成されている。
【0319】
即ち、当該一周側係合片部250において、腕部251は、その基端部にて、基板210の外周部にその表面側から一体的に形成されており、当該腕部251は、その基端部から外方に向け基板210の半径方向に延出されている。また、脚部252は、腕部251の延出端部から基板210の裏面側へL字状に折れ曲がるように延出している。
【0320】
本第3実施形態において、基板210は、上記第1実施形態にて述べた中央孔部211に代えて、中央孔部211aを有しており、当該中央孔部211aの内径U1は、中央孔部211の内径Uよりも小さく、U2=6.4(mm)となっている(図41参照)。また、本第3実施形態にいう基板210の厚さは、T2=0.7(mm)であって、上記第1実施形態にいう基板210の厚さTよりも薄い(図40参照)。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0321】
以上のように構成した本第3実施形態において、上記第1実施形態と同様に図27の型枠取り外し工程S7の処理を終了すると、次のディスク型接着補助器具組み付け工程S8において、上記第1実施形態にて述べた中央側接着補助器具200に代えて、複数の接着補助器具200Aのうちの上記中央側接着補助器具200Aが、一方の型枠Fに組み付けられる。
【0322】
即ち、中央側接着補助器具200Aが、基板210にて、コンクリート壁10aの表面11のうち第1矩形状輪郭RLの中央に対する対応部位に設置される(図1及び図46参照)。このとき、基板210は、その裏面にて、図46にて示すごとく、複数の面側係合片部230を上方に向け突出させるように、コンクリート壁10aの表面11に設置される。
【0323】
このような設置状態において、環状部材WS1が、上記第1実施形態にて述べた座金WSに代えて、環状座金部材として、図37及び図46のいずれかにて示すごとく、基板210の中央孔部211aに次のようにして組み付けられる。
【0324】
ここで、環状部材WS1は、図42?図45にて示す構成を有するように、基板210と同一の形成材料でもって、樹脂成形でもって一体的に形成されている。当該環状部材WS1は、環状平板部260a、環状ボス部260b、複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dを備えている。
【0325】
環状平板部260aは、基板210の中央孔部211aを中心とする環状部位(以下、本第3実施形態では、中央環状部位P1ともいう)上に着座する(図37及び図46参照)。なお、環状平板部260aの中空部の内周面は、縦断面末すぼまり状に形成されている。
【0326】
環状ボス部260bは、環状平板部260aの中空部の周縁部から下方へ同軸的に延出するように形成されており、当該環状ボス部260bは、図46にて示すごとく、基板210の中央孔部211a内にその表面側から同軸的にかつ液密的に嵌装される。
【0327】
複数の内側糸状片部260cは、その各基端部にて、環状平板部260aの中空部の周縁部にその周方向に沿い間隔をおいて環状平板部260aの表面側から一体的に形成されており、当該複数の内側糸状片部260cは、その各基端部から環状平板部260aの表面から離れる方向へ緩やかに凸な湾曲形状にて環状平板部260aの中心に向けて傾斜状に延出している(図42及び図45参照)。なお、各内側糸状片部260cは、その延出端部にて、環状平板部260aの中空部に向けL字状に屈曲している。
【0328】
また、複数の外側糸状片部260dは、その各基端部にて、環状平板部260aの外周面にその周方向に沿い間隔をおいて一体的に形成されており、当該複数の外側糸状片部260dは、その各基端部から環状平板部260aの表面から離れる方向へ緩やかに凸な湾曲形状にて環状平板部260aの外方に向けて半径方向へ傾斜状に延出している(図42及び図45参照)。なお、各外側糸状片部260dは、その延出端部にて、環状平板部260aの中空部側へL字状に屈曲している。
【0329】
ここで、環状部材WS1において、環状平板部260aの外径G及び厚さF1は、それぞれ、G=13(mm)及びF1=1(mm)であり、環状ボス部260bの外径D1、内径D2及び軸長F2は、それぞれ、D1=6.3(mm)、D2=4.3(mm)及びF2=1(mm)である(図43及び図45のいずれか参照)。また、複数の外側糸状片部260dの各延出端部を結ぶ円周の径Zは、Z=18.3(mm)であり、当該複数の外側糸状片部260dの各延出端部から環状ボス部260bの延出端部からの高さEは、E=4.35(mm)である(図43及び図45のいずれか参照)。また、複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dの各々の太さは、0.7(mm)である。なお、環状部材WS1における各上記寸法は、複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dが、生モルタル内に深く浸入可能な剛性を有し、かつ、生モルタルの硬化後のモルタル壁Mを支持し得るような破断強度を有するように選定されている。
【0330】
しかして、上述のように構成した環状部材WS1は、環状ボス部260bを基板210の中央孔部211a内に液密的に嵌装させるようにして、環状平板部260aにて、基板210の中央環状部位P1にその表面側から着座することで、基板210に組み付けられる。
【0331】
これに伴い、複数の内側糸状片部260cは、それぞれ、環状平板部260aの中空部の周縁部からその中央に向け傾斜状に、かつ環状平板部260aの表面の外方へ緩やかに凸な湾曲状に延出するとともに、複数の外側糸状片部260dは、それぞれ、環状平板部260aの表面から離れる方向へ緩やかに凸な湾曲形状にて、当該環状平板部260aの外周面から当該環状平板部260aの半径方向に沿いその表面側斜め外方に向けて傾斜状に延出する。
【0332】
このように環状部材WS1の基板210に対する組み付けが完了すると、コンクリートネジSC1が、図46にて示すごとく、その首下部にて、環状部材WS1の環状平板部260aの中空部及び基板210の中央孔部211aを通して上記第1実施形態と実質的に同様にコンクリート壁10aに締着される。ここで、コンクリートネジSC1は、その頭部にて皿状に形成されており、当該コンクリートネジSC1は、その皿状頭部にて、環状平板部260aの中空部内にその縦断面末すぼまり状の内周面に沿い着座する。
【0333】
以上のようにしてディスク型接着補助器具200A(中央側接着補助器具200A)及び上記第1実施形態にて述べた4個のコネクター型接着補助器具100のコンクリート壁10aに対する組み付けが終了すると、次の生モルタル塗布工程S9において、生モルタルが、図37にて示すごとく、上記第1実施形態と同様に、コンクリート壁10aの表面11の全体に亘り塗布される。
【0334】
従って、上記第1実施形態にて述べた1接着補助器具100は、コンクリート壁10aの収容穴部12内に収容された状態にて生モルタルにより当該コンクリート壁10aに埋設されるとともに、ディスク型接着補助器具200Aが、コンクリート壁10aの表面11上にて生モルタルにより埋設される。
【0335】
これに伴い、生モルタルが、上記第1実施形態にて述べたと同様に、コネクター型接着補助器具100内に浸入するとともに、ディスク型接着補助器具200Aにおいて、複数の内側糸状片部260c、複数の外側糸状片部260d、複数の周側係合片部250及び複数の面側係合片部230を介し基板210の表面に達する。
【0336】
ここで、このように複数の面側係合片部230を介し基板210の表面に達する生モルタルは、上記第1実施形態にて述べたと同様に、基板210の複数の外側開孔部313a?313k、313nの各内部にも行き亘る。これにより、生モルタルのコンクリート壁10aの表面との接着がより一層強化され得る。
【0337】
また、上述のように生モルタルが複数の周側係合片部250を介し基板210の表面に達する過程において、当該生モルタルは、各周側係合片部250の外周面にしっかりと係合する。このとき、各周側係合片部250において、腕部251が脚部252の延出端部からL字状に屈曲するように形成されているため、当該生モルタルは、各周側係合片部250の屈曲部にもしっかりと係合する。
【0338】
また、上述のように生モルタルが複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dを介し基板210の表面に達する過程において、当該生モルタルは、複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dの各外周面にしっかりと係合する。しかも、各内側糸状片部260cの延出端部及び各外側糸状片部260dの延出端部は、上述のごとく、L字状に屈曲しているから、生モルタルは、各内側糸状片部260c及び各外側糸状片部260dの延出端部に対ししっかりと係合する。
【0339】
上述のような生モルタル塗布工程S9の後、次の生モルタル硬化待ち工程S10において、上述のようにコンクリート壁10aの表面11に塗布した生モルタルが硬化すると、モルタル壁Mがコンクリート壁10aの表面11上に形成される。
【0340】
以上説明したように、本第3実施形態によれば、各ディスク型接着補助器具200Aは、上記第1実施形態にて説明した各ディスク型接着補助器具200とは異なり、複数の面側係合片部230に加えて、複数の周側係合片部250を上述した構成でもって備えている。
【0341】
しかも、環状部材WS1が、複数の内側糸状片部260c及び複数の糸状片部260dを有することで、当該複数の内側糸状片部260c及び複数の糸状片部260dでもって、生モルタルとしっかりと係合し得る。
【0342】
このため、生モルタルが硬化してモルタル壁Mとなったとき、当該モルタル用接着補助器具200Aは、複数の面側係合片部230だけでなく、複数の周側係合片部250並びに環状部材WS1の複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dによっても、モルタル壁Mにその内部にてしっかりと係合する。
【0343】
従って、当該モルタル用接着補助器具200Aは、基板210から突出する複数の面側係合片部230だけでなく、複数の周側係合片部250並びに環状部材WS1の複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dによっても、モルタル壁Mをコンクリート壁10aの表面11に支持し得る。これにより、モルタル用接着補助器具200Aによるモルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着補助力が、より一層強化され得る。
【0344】
ここで、ディスク型接着補助器具200A毎に、複数の面側係合片部230は、複数の周側係合片部250とともに、それぞれ、基板210の表面において左右方向中心線及び上下方向中心線の双方に対し対称的に設けられているため、各面側係合片部230によるモルタル壁Mに対する接着補助力は、基板210の表面の全体に亘り均一に発揮され得る。また、このようなことは、環状部材WS1の複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dも、同様に基板210の表面において左右方向中心線及び上下方向中心線の双方に対し対称的に位置するように設けられていることで同様に達成され得る。
【0345】
その結果、本第3実施形態では、接着補助システムによる接着補助のもと、複数のコネクター型接着補助器具100及び複数のディスク型接着補助器具200Aの双方のモルタル壁Mとの係合力に基づきモルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着力(アンカー効果)が、安定的により一層強化され得る。換言すれば、モルタル壁Mのコンクリート壁10aからの脱落が、上記第1実施形態にて述べた所定の耐光性顔料含有樹脂材料による劣化防止のもと、長期に亘り、より一層良好に防止され得ることを意味する。
【0346】
また、本第3実施形態では、環状部材WS1が、上記第1実施形態にて述べた環状部材WS1とは異なり、基板210と同様の形成材料(上記第1実施形態にて述べた所定の耐光性顔料含有樹脂材料)でもって、上記構成を有するように一体成形により形成されている。このため、環状部材WS1が、生モルタルと良好に係合するに要する形状に自由に設計され得る。
(第4実施形態)
図47は、本発明に係る接着補助システムMSの第4実施形態の要部を示している。当該第4実施形態では、接着補助システムMSが上記第1実施形態にて述べた複数の接着補助器具100を備えるとともに、上記第2実施形態にて述べた複数の接着補助器具300に代えて、複数の接着補助器具300A(図47では単一の接着補助器具300Aのみを示す。)を備えている。
【0347】
複数の接着補助器具300Aは、上記第2実施形態にて述べた複数の接着補助器具300(図33参照)において4個の内側開孔部312a?312d及び4個のフック330a?330dを廃止した構成となっている。なお、本第4実施形態において、接着補助器具300Aは、ディスク型接着補助器具300Aともいう。複数の接着補助器具300Aの各々のその他の構成は、複数の接着補助器具300の各々と同様である。
【0348】
また、本第4実施形態においては、上記第2実施形態にて述べた中央側接着補助器具300をコンクリート10の表面11に基板310を介し組み付けるに当たり採用される座金WS(図26参照)に代えて、上記第3実施形態にて述べた環状部材WS1(図42参照)が、中央側接着補助器具300に対応する中央側接着補助器具300Aをコンクリート10の表面11に基板310を介し組み付けるに当たり採用される。その他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
【0349】
以上のように構成した本第4実施形態において、上記第2実施形態と同様に図27の型枠取り外し工程S7の処理を終了すると、次のディスク型接着補助器具組み付け工程S8において、上記第2実施形態にて述べた中央側接着補助器具300に代えて、複数の接着補助器具300Aのうちの上記中央側接着補助器具300Aが、中央側接着補助器具300と同様に、一方の型枠Fに組み付けられる。
【0350】
このような組み付け状態において、環状部材WS1が、上記第2実施形態にて述べた座金WSに代えて、図47?図51のいずれかにて示すごとく、基板310の中央孔部311aに次のようにして組み付けられる。なお、本第7実施形態では、基板310の中央孔部311aは、上記第2実施形態にて述べた基板310の中央孔部311よりも、小さく、上記第6実施形態にて述べた基板210の中央孔部211aと同一の値に形成されている。
【0351】
しかして、環状部材WS1は、環状ボス部260bを基板310の中央孔部311a内に液密的に嵌装させるようにして、環状平板部260aにて、基板310の中央環状部位(上記第3実施形態にて述べた中央環状部位P1に対応)にその表面側から着座することで、基板310に組み付けられる。
【0352】
これに伴い、複数の内側糸状片部260cは、それぞれ、環状平板部260aの中空部の周縁部からその中央に向け傾斜状に環状平板部260aの表面の外方へ緩やかに凸な湾曲状にて延出するとともに、複数の外側糸状片部260dは、それぞれ、環状平板部260aの外周面から当該環状平板部260aの外方に向けて半径方向へ傾斜状に延出する。
【0353】
このように環状部材WS1の基板310に対する組み付けが完了すると、コンクリートネジSC1が、図47にて示すごとく、その首下部にて、環状部材WS1の環状平板部260aの中空部及び基板310の中央孔部311aを通して上記第1実施形態と実質的に同様にコンクリート壁10aに締着される。なお、コンクリートネジSC1は、その皿状頭部にて、環状平板部260aの中空部内にその縦断面末すぼまり状内周面に沿い着座する。
【0354】
以上のようにしてディスク型接着補助器具300A(中央側接着補助器具300A)及び上記第1実施形態にて述べた4個のコネクター型接着補助器具100のコンクリート壁10aに対する組み付けが終了すると、次の生モルタル塗布工程S9において、生モルタルが、図47にて示すごとく、上記第2実施形態と同様に、コンクリート壁10aの表面11の全体に亘り塗布される。
【0355】
従って、上記第1実施形態にて述べた1接着補助器具100は、コンクリート壁10aの収容穴部12内に収容された状態にて生モルタルにより当該コンクリート壁10aに埋設されるとともに、ディスク型接着補助器具300Aが、コンクリート壁10aの表面11上にて生モルタルにより埋設される。
【0356】
これに伴い、生モルタルが、上記第2実施形態にて述べたと同様に、コネクター型接着補助器具100内に浸入するとともに、環状部材WS1の複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260d並びにディスク型接着補助器具300Aの複数の周側係合片部320及び複数の面側係合片部340を介し基板310の表面に達する。
【0357】
ここで、このように複数の係合片部340を介し基板310の表面に達する生モルタルは、上記第2実施形態にて述べたと同様に、基板310の複数の外側開孔部313a?313k、313nの各内部に行き亘る。
【0358】
また、上述のように生モルタルが複数の周側係合片部320を介し基板310の表面に達する過程において、当該生モルタルは、各周側係合片部320の外周面にしっかりと係合する。このとき、当該生モルタルは、各周側係合片部320の屈曲部にもしっかりと係合する。
【0359】
また、上述のように生モルタルが複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dを介し基板310の表面に達する過程において、当該生モルタルは、複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dの各外周面にしっかりと係合する。しかも、各内側糸状片部260cの延出端部及び各外側糸状片部260dの延出端部は、上述のごとく、L字状に屈曲しているから、生モルタルは、各内側糸状片部260c及び各外側糸状片部260dの延出端部に対ししっかりと係合する。
【0360】
上述のような生モルタル塗布工程S9の後、次の生モルタル硬化待ち工程S10において、上述のようにコンクリート壁10aの表面11に塗布した生モルタルが硬化すると、モルタル壁Mがコンクリート壁10aの表面11上に形成される。
【0361】
以上説明したように、本第4実施形態によれば、環状部材WS1が、複数の内側糸状片部260c及び複数の糸状片部260dを有することで、当該複数の内側糸状片部260c及び複数の糸状片部260dでもって、生モルタルとしっかりと係合し得る。
【0362】
このため、生モルタルが硬化してモルタル壁Mとなったとき、当該モルタル用接着補助器具300Aは、複数の面側係合片部340及び複数の周側係合片部320だけでなく、環状部材WS1の複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dによっても、モルタル壁Mにその内部にてしっかりと係合する。
【0363】
これにより、当該モルタル用接着補助器具300Aは、基板310から突出する複数の面側係合片部340及び複数の周側係合片部320だけでなく、環状部材WS1の複数の内側糸状片部260c及び複数の外側糸状片部260dによっても、モルタル壁Mをコンクリート壁10aの表面11に支持し得る。これにより、モルタル用接着補助器具300Aによるモルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着補助力が、より一層強化され得る。
【0364】
その結果、本第4実施形態では、接着補助システムによる接着補助のもと、複数のコネクター型接着補助器具100及び複数のディスク型接着補助器具300Aの双方のモルタル壁Mとの係合力に基づき、モルタル壁Mのコンクリート壁10aに対する接着力(アンカー効果)が、より一層強化され得る。このことは、モルタル壁Mのコンクリート壁10aからの脱落が、長期に亘り、より一層良好に防止され得ることを意味する。その他の作用効果は、上記第1及び第2の実施形態と同様である。
【0365】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態や変形例に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、接着補助器具100の接着力は、スペーサボルトの単位面積当たりの使用個数にもよるが、一般には50kgf/個(490Pa/個)以上になるように設計することが好ましい。
【0366】
このような特性を満足させるため、係合片部110dの寸法としては、係合片部110dの太さを0.05(mm)?5.0(mm)の範囲以内の値とし、係合片部1110dの径を1.0(mm)?10.0(mm)の範囲以内の値にすることが好ましい。
(2)本発明の実施にあたり、接着補助器具100毎の係合片部110dの数は、特に限定されるものではないが、20?100個にすることが好ましい。
(3)本発明の実施にあたり、接着補助器具100のコネクター110は、上記実施形態とは異なり、例えば、多角形状に形成してもよい。
(4)本発明の実施にあたり、接着補助器具200或いは300を基板210或いは310に組み付けるにあたり採用される座金WSは、上記第1或いは第2の実施形態とは異なり、必要に応じて、廃止するようにしてもよい。
【0367】
この場合には、基板210の各内側開孔部212a?212d及び各フック220a?220d或いは基板310の各内側開孔部312a?312d及び各フック330a?330dは廃止すればよい。
(5)本発明の実施にあたり、複数の係合片部220は、上記第1実施形態にて述べた配列に限ることなく、基板210の表面に亘り分散して形成されていてもよく、また、係合片部220の数は、上記第1実施形態にて述べた数に限ることなく適宜変更して実施してもよい。
(6)本発明の実施にあたり、基板210の複数の外側開孔部213a?213j及び基板310の複数の外側開孔部313a?313k、313nは、廃止してもよい。
(7)本発明の実施にあたり、係合片部110d或いは220の形状は、半円状或いは円弧状であってもよい。また、係合片部120或いは220の形状は、一般的には、湾曲状であってもよい。
(8)本発明の実施にあたり、上記第2実施形態における各係合片部320は、基板310の外周部の端面部或いは表面部から放射状に延出する基部及び当該各基部の延出端部からL字状に折れ曲がる折れ曲がり部でもって構成するようにしてもよい。
(9)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた座金WSは、ネジSCをコンクリート壁10aに締着する際における基板210の中央穴部111の強度を補助することができればよい。従って、座金WSは、ステンレス鋼に限らず、鉄等の環状板であってもよく、また、環状樹脂板や環状バネ座金であってもよい。
(10)本発明の実施にあたり、上記第1或いは第2の実施形態にて述べた各接着補助器具200或いは300は、各接着補助器具100と入れ替えて配設するようにしてもよい。
(11)本発明の実施にあたり、上記第1或いは第2の実施形態にて述べた複数の接着補助器具200或いは300及び複数の接着補助器具100は、格子状に配設することに限らず、双方ともに、互いに異なる位置にて、分散してコンクリート壁10aの表面に配設されていてもよい。
(12)本発明の実施にあたり、上記第1或いは第2の実施形態にて述べたディスク型接着補助器具200或いは300において、複数の面側係合片部240或いは340は、上記第1或いは第2の実施形態にて述べた例に限定することなく、基板210或いは310の表面に亘り分散して配設するようにしてもよい。
【0368】
この場合、複数の面側係合片部240或いは340は、基板210或いは310の表面に沿う左右方向中心線及び上下方向中心線の双方に対称的に分散配設することが好ましい。これにより、接着補助器具200或いは300における複数の面側係合片部240或いは340のモルタル壁に対する接着補助力が、基板210或いは310の全面に亘りバランスよく均一化され得る。
(13)本発明の実施にあたり、接着補助器具200或いは300のフック230或いは240は、4個に限ることなく、複数個或いは複数対であってもよい。例えば、フック230或いは240は、2個、3個或いは5個を、基板210或いは310の表面にて中央孔部の外周に沿い等角度間隔にて設けるようにしてもよく、また、一対或いは三対を、基板210或いは310の表面にて中央孔部の外周に沿い等角度間隔にて設けるようにしてもよい。要するに、座金WSをその全面に亘り均一に基板210或いは310の表面上に挟持し得ればよい。
(14)本発明の実施にあたり、環状体120の周側係合片部120bは、ロッド状に限ることなく、半ループ状等の湾曲状、糸状、フック状にて、環状壁部120aの一部、例えば、環状薄肉部123の内周部に沿い形成されていてもよい。
(15)また、本発明の実施にあたり、接着補助システムは、複数の接着穂補助器具200に依存することなく、複数の接着補助器具100のみをコンクリート壁10aに分散して埋設するようにしてもよい。例えば、図1において、接着補助器具100を、中央接着補助器具200に代えて、矩形状輪郭RLの中央部に配設するようにしてもよい。
(16)また、本発明の実施にあたり、図1において、4つの接着補助器具200を、4つの接着補助器具100に代えて、矩形状輪郭RLの各隅角部に配置し、接着補助器具100を、中央接着補助器具200に代えて、矩形状輪郭RLの中央部に配設するようにしてもよい。
(17)本発明の実施にあたり、接着補助器具200或いは300の基板は、上記実施形態とは異なり、例えば、三角形状や四角形状等の多角形状に形成してもよい。
(18)本発明の実施にあたり、回り止め部116は、上記第1実施形態とは異なり、複数、コネクター110の環状フランジ部の下面及び円錐台状胴部110aの外周に沿い間隔をおいて形成するようにしてもよい。なお、回り止め部116の形状は、上記第1実施形態にて述べた形状に限ることなく、適宜変更してもよい。また、回り止め部116が突出形状では凹形状に形成してもよい。例えば、環状フランジ部110cの下面から円錐台状胴部110aの外周面に沿い軸方向に凹形状に当該円錐台状胴部110aの小径側端部まで形成するようにしてもよく、或いは、円錐台状胴部110aの外周面の軸方向中間部位から当該円錐台状胴部110aの小径側端部まで形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0369】
F…型枠、M…モルタル壁、WS…座金、WS1…環状部材、
10a…コンクリート壁、100…コネクター型接着補助器具、
200、300…ディスク型接着補助器具、110…コネクター、
110a…円錐台状胴部、110b…円柱状頭部、
110c…環状フランジ部、116…回り止め部、
110d、120b、230、320、340…係合片部、
130…セパジョイント、140…型締めボルト、
150…スペーサボルト、210、310…基板、
211、311…中央孔部、260a…環状平板部、
260b…環状ボス部、260c…内側糸状片部、
260d…外側糸状片部、
213a?213j、313a?313k、313n…開口部、
220、340…係合片部、
220a?220d、330a?330d…フック、
221、331…立ち上がり部、222、332…折れ曲がり部、
321…脚部、322…腕部、323…脚部。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部と、当該円錐台状胴部の前記大径側端部から前記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部と、前記円錐台状胴部及び前記円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部と、前記円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部とを、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなるコネクターと、
前記複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように前記円柱状頭部に同軸的に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変壁部と、当該環状非可変壁部の前記環状フランジ部とは反対側の環状端部から前記環状フランジ部から離れる方向に突出する環状可変部とを、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる環状体とを備えており、
当該環状体の前記環状壁部において、
前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、
前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されているコネクター型接着補助器具。
【請求項2】
前記コネクターは、前記環状フランジ部に沿い前記円錐台状胴部の外周面の少なくとも一部から外方へ突出するように形成してなる回り止め部を具備することを特徴とする請求項1に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項3】
前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料は、ナイロン6に耐光性黒色顔料を均一に含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項4】
前記複数の面側係合片部は、複数のロッド状湾曲片部からなり、当該複数のロッド状湾曲片部は、それぞれ、前記円柱状頭部の前記延出端面から外方へ凸な湾曲状に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項5】
前記円柱状頭部にはその前記延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように複数条の凹部が互いに並行に形成されており、
前記複数のロッド状湾曲片部は、その両端部にて、前記複数条の凹部の各々ごとに当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて前記円柱状頭部の前記延出端面に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項6】
前記環状体は、前記環状壁部の前記環状非可変壁部からその内方に向けて突出するように前記環状壁部と一体に前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料で形成してなる複数の周側係合片部を備えており、
当該複数の周側係合片部は、前記環状非可変壁部の内周方向に間隔をおいて位置するように形成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項7】
前記環状壁部において、
前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に縦断面山形状に突出するように形成されており、
前記複数の周側係合片部は、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部からその周方向に亘り間隔をおくように当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出する複数の周側長手状係合片部であることを特徴とする請求項6に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項8】
前記複数の周側長手状係合片部は、それぞれ、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部から当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出するロッド部と、当該ロッド部の延出端部に形成してなる球部とでもって構成されていることを特徴とする請求項7に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項9】
前記環状可変部は、前記縦断面山形状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されていることを特徴とする請求項7に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項10】
円筒部と、当該円筒部の軸方向一側端部と一体となるように同軸的に形成してなる環状鍔部とを備えるセパジョイントを具備しており、
前記コネクターは、前記円錐台状胴部の底部に同軸的に形成してなる大径孔部と、前記円錐台状胴部の前記底部を除く部位及び前記円柱状頭部に亘り前記大径孔部よりも小さな内径にて同軸的に形成してなる小径孔部とでもって構成される軸孔部を設けてなり、
前記セパジョイントは、その円筒部にて、前記コネクターの前記軸孔部のうちの前記小径軸孔部に前記大径孔部を介し同軸的に圧入されるとともに、前記環状鍔部にて、前記軸孔部の前記大径孔部に嵌装されており、
前記複数の面側係合片部は、前記円柱状頭部の前記延出端面にその前記小径孔部の外周側にて形成されていることを特徴とする請求項1?9のいずれか1つに記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項11】
スペーサボルトが前記セパジョイントに同軸的に形成してなる雌ねじ孔部に対し前記環状鍔部側から当該雌ねじ孔部の軸方向中間部位まで螺合され、かつ前記環状体が木材或いは合成樹脂材料からなる型枠に当接された状態にて、当該型枠に形成してなる貫通状孔部を通して前記スペーサボルトに対向するように前記セパジョイントの前記雌ねじ孔部に螺合される型締めボルトを、補助部品として有することを特徴とする請求項10に記載のコネクター型接着補助器具。
【請求項12】
コンクリート体の表面に形成されるモルタル壁の前記コンクリート体との接着を補助するための接着補助システムにおいて、
大径側端部から小径側端部にかけて末すぼまり状に形成してなる円錐台状胴部と、当該円錐台状胴部の前記大径側端部から前記小径側端部とは反対方向へ同軸的に延出する円柱状頭部と、前記円錐台状胴部及び前記円柱状頭部の境界部から環状に外方へ径方向に沿い延出する環状フランジ部と、前記円錐台状胴部及び前記環状フランジ部の少なくとも一方の一部から外方へ突出する回り止め部と、前記円柱状頭部の延出端面から分散状に突出する複数の面側係合片部とを、所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に成形してなるコネクターと、前記複数の面側係合片部をその外周側から包囲するように前記円柱状頭部に同軸的に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変壁部と、当該環状非可変壁部の前記環状フランジ部とは反対側の環状端部から前記環状フランジ部から離れる方向に突出する環状可変部とを、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体に形成してなる環状壁部を設けてなる環状体とを備えるコネクター型接着補助器具と、
中央孔部を形成してなる基板と、当該基板にその両面の一方の面から突出するように前記中央孔部の周囲に分散して形成される複数の面側係合片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成される複数のディスク型接着補助器具とを備えており、
前記複数のコネクター型接着補助器具は、それぞれ、前記円錐台状胴部にて、互いに対向して設置してなる木材或いは合成樹脂材料からなる両型枠の一方の型枠から分散状に他方の型枠に向けて延出する複数のスペーサボルトに、前記環状体の前記環状可変部を前記他方の型枠に対向させるように、連結され、かつ、前記環状壁部の前記環状非可変壁部に向けて前記環状可変部を変形させるように前記他方の型枠を押圧してなり、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記コンクリート体が前記両型枠の間に前記複数のスペーサボルト及び前記複数のコネクター型接着補助器具を介し打ち込まれる生コンクリートの硬化により形成された後、前記両型枠を除去した上で、前記複数のコネクター型接着補助器具とは異なる位置にて、前記コンクリート体の表面に分散状に配設され、かつ、前記基板にて、前記中央孔部を通してネジを前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられており、
前記モルタル壁が、前記各複数のコネクター型及びディスク型の接着補助器具を介し前記コンクリート体の表面に所定の厚さにて生モルタルを塗布し硬化させることで、形成されていることを特徴とする接着補助システム。
【請求項13】
前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料は、6ナイロンに耐光性黒色顔料を均一に含有してなることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項14】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、前記複数の面側係合片部は、複数のロッド状湾曲片部からなり、当該複数のロッド状湾曲片部は、それぞれ、前記円柱状頭部の前記延出端面から外方へ凸な湾曲状に突出するように形成されていることを特徴とする請求項12または13に記載の接着補助システム。
【請求項15】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、
前記円柱状頭部にはその前記延出端面から当該円柱状頭部の延出基端部に向け凹状となるように複数条の凹部が互いに並行に形成されており、
前記複数のロッド状湾曲片部は、その両端部にて、前記複数条の凹部の各々ごとに当該凹部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて前記円柱状頭部の前記延出端面に形成されていることを特徴とする請求項14に記載の接着補助システム。
【請求項16】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、
前記環状体は、前記環状壁部の前記環状非可変壁部からその内方に向けて突出するように前記環状壁部と一体に前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって形成してなる複数の周側係合片部を備えており、
当該複数の周側係合片部は、前記環状非可変壁部の内周方向に間隔をおいて位置するように形成されていることを特徴とする請求項12?15のいずれか1つに記載の接着補助システム。
【請求項17】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、
前記環状壁部の前記環状非可変壁部は、前記円柱状頭部に圧入されて前記環状フランジ部に着座する環状非可変着座部と、当該環状非可変着座部から前記環状フランジ部とは反対方向へ延出するように前記円柱状頭部に圧入される環状非可変厚肉部と、当該環状非可変厚肉部の延出端部の外周部位から前記環状フランジ部とは反対方向に一体に延出する環状非可変薄肉部とを有してなり、
前記環状壁部の前記環状可変部は、前記環状非可変薄肉部の延出端部の幅方向中間部位から前記環状フランジ部とは反対方向に突起状に突出するように形成されており、
前記複数の周側係合片部は、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部からその周方向に亘り間隔をおくように当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出する複数の周側長手状係合片部であることを特徴とする請求項16に記載の接着補助システム。
【請求項18】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、前記複数の周側長手状係合片部は、それぞれ、前記環状非可変厚肉部の前記環状非可変薄肉部との環状境界部から当該環状非可変薄肉部の中央に向けて傾斜状に延出するロッド部と、当該ロッド部の延出端部に形成してなる球部とでもって、構成されていることを特徴とする請求項17に記載の接着補助システム。
【請求項19】
前記複数のコネクター型接着補助器具の各々において、前記環状可変部は、前記突起状に突出する突出端部にて、横断面丸みを帯びるように形成されていることを特徴とする請求項17に記載の接着補助システム。
【請求項20】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、
前記基板はその中央孔部の外周側にて複数条の開口部を分散状に形成してなり、
前記複数の面側係合片部は、前記複数条の開口部の各々ごとに、当該開口部を跨ぐようにその長手方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項21】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、
前記基板に前記一方の面から前記複数の面側係合片部の内側にて前記中央孔部の周りに間隔をおいて形成される複数のフックを設けてなり、
当該複数のフックは、それぞれ、前記基板の前記一方の面から立ち上がるように延出する立ち上がり部と、当該立ち上がり部から前記基板の中心側へ折れ曲るように延出する折れ曲がり部とでもって、構成されて、環状板を、前記各立ち上がり部により包囲した状態にて前記各折れ曲がり部により前記基板の前記一方の面との間に挟持してなることを特徴とする請求項12または13に記載の接着補助システム。
【請求項22】
環状板部と、当該環状板部の内周縁部から当該内周縁部に沿い間隔をおくように位置して前記環状板部の表面側へ延出する複数の内側糸状片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の上記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられていることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項23】
環状板部と、当該環状板部の外周縁部から当該外周縁部に沿い間隔をおいて前記環状板部の表面側へ延出する複数の外側糸状片部とを有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、一体的に形成してなる環状部材を、複数、備えており、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、前記基板の前記中央孔部にて、ネジを前記環状板部にその表面側から通して前記コンクリート体にその表面から締着することで、前記コンクリート体の表面に組み付けられていることを特徴とする請求項12に記載の接着補助システム。
【請求項24】
前記複数の環状部材は、それぞれ、前記環状板部の外周縁部から当該外周縁部に沿い間隔をおいて前記環状板部の表面側へ延出する複数の外側糸状片部をも一体的に有するように、前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料でもって、形成されていることを特徴とする請求項22に記載の接着補助システム。
【請求項25】
前記複数の環状部材は、それぞれ、前記環状板部の内周縁部から同軸的にその裏面側へ延出するように前記所定の耐光性顔料含有樹脂材料により一体的に形成してなる環状ボス部を備えて、当該環状ボス部を前記基板の対応中央孔部内に同軸的に嵌装するようにして、前記環状板部にて、前記基板の対応中央孔部にその表面側から載置されており、
前記複数のディスク型接着補助器具は、それぞれ、ネジをその頭部にて前記複数の環状部材のうちの対応環状部材の前記環状ボス部に着座させるとともに、当該ネジをその首下部にて前記対応環状部材の前記環状ボス部を通してコンクリート体にその表面から締着することで、当該コンクリート体に組み付けられていることを特徴とする請求項23または24に記載の接着補助システム。
【請求項26】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、前記基板は、前記中央孔部の外周側にて複数の長手状開口部を分散して形成してなり、
前記複数の面側係合片部は、それぞれ、前記基板の前記一方の面にて、前記複数の長手状開口部のうちの各対応長手状開口部をその幅方向に跨ぐように湾曲状に形成されるとともに当該各対応長手状開口部の長手方向には間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項12?25のいずれか1つに記載の接着補助システム。
【請求項27】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、前記基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出するように形成してなる複数の周側係合片部を具備することを特徴とする請求項12?25のいずれか1つに記載の接着補助システム。
【請求項28】
前記複数のディスク型接着補助器具の各々において、前記複数の周側係合片部は、それぞれ、前記基板の外周部からその周方向に亘り間隔をおいて放射状に延出する基部と、当該基部の延出端部から折れ曲がるように延出する折れ曲がり部とにより形成されていることを特徴とする請求項27に記載の接着補助システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-10-02 
結審通知日 2019-10-07 
審決日 2019-10-24 
出願番号 特願2017-54399(P2017-54399)
審決分類 P 1 113・ 121- ZDA (E04F)
P 1 113・ 112- ZDA (E04F)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 津熊 哲朗  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
小林 俊久
登録日 2017-09-01 
登録番号 特許第6200112号(P6200112)
発明の名称 接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助システム  
代理人 間瀬 ▲けい▼一郎  
代理人 間瀬 ▲けい▼一郎  
代理人 後藤 昌弘  
代理人 後藤 昌弘  
代理人 桑垣 衛  
代理人 恩田 誠  
代理人 桑垣 衛  
代理人 恩田 誠  
代理人 大橋 厚志  
代理人 小林 徳夫  
代理人 恩田 博宣  
代理人 大橋 厚志  
代理人 小林 徳夫  
代理人 恩田 博宣  

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