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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1358962
審判番号 不服2019-208  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-09 
確定日 2020-02-04 
事件の表示 特願2014-245860「偏光板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-109805、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2014-245860号(以下「本件出願」という。)は,平成26年12月4日にされた特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成30年 7月13日付け:拒絶理由通知書
平成30年 9月 7日付け:意見書
平成30年10月 5日付け:拒絶査定
平成31年 1月 9日付け:審判請求書
平成31年 1月 9日付け:手続補正書
(この手続補正書による補正を,以下「本件補正」という。)

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は,概略,本件出願の請求項1?請求項6に係る発明(本件補正前のもの)は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2014-206702号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明に基づいて,本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 本願発明
本件出願の請求項1?請求項5に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項5に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。なお,本件補正により請求項2が削除されたため,請求項3以降が繰り上がっている。
「【請求項1】
偏光子の一方の面上に第1保護フィルムを備え,他方の面上に第2保護フィルムを備える偏光板の製造方法であって,
前記一方の面に,活性エネルギー線硬化性接着剤からなる第1接着剤層を介して前記第1保護フィルムを貼合する第1貼合工程と,
前記第1貼合工程の後,前記他方の面に,活性エネルギー線硬化性接着剤からなる第2接着剤層を介して前記第2保護フィルムを貼合する第2貼合工程と,
を含み,
前記第1保護フィルムは,前記偏光板を表示用セル上に配置する際に,前記第2保護フィルムよりも前記表示用セル側に配置される保護フィルムであり,
前記第1接着剤層の硬化後の厚みが0.75μm以下であり,
前記第1接着剤層の硬化後の厚みが前記第2接着剤層の硬化後の厚みよりも小さい,偏光板の製造方法。

【請求項2】
前記第2接着剤層の硬化後の厚みが0.75μmより大きい,請求項1に記載の製造方法。

【請求項3】
前記第2接着剤層の硬化後の厚みと前記第1接着剤層の硬化後の厚みとの差が0.1μm以上である,請求項1又は2に記載の製造方法。

【請求項4】
前記偏光子の厚みが20μm以下である,請求項1?3のいずれか1項に記載の製造方法。

【請求項5】
偏光子の一方の面に,活性エネルギー線硬化性接着剤からなる第1接着剤層を介して第1保護フィルムを貼合する第1貼合工程と,
第1貼合工程の後,前記偏光子の他方の面に,活性エネルギー線硬化性接着剤からなる第2接着剤層を介して第2保護フィルムを貼合する第2貼合工程と,
前記第1保護フィルムの外面に粘着剤層を配置する粘着剤層形成工程と,
を含み,
前記第1接着剤層の硬化後の厚みが0.75μm以下であり,
前記第1接着剤層の硬化後の厚みが前記第2接着剤層の硬化後の厚みよりも小さい,粘着剤層付偏光板の製造方法。」

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2014-206702号公報)は,本件出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,硬化型接着剤で作製した偏光板及び画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
…(省略)…
【0005】
近年偏光板作製時の偏光子への保護フィルム貼合に活性エネルギー線硬化型接着剤などの硬化型接着剤が使われるようになってきている。硬化型接着剤は,接着剤の硬化反応により,偏光子フィルムと保護フィルムとの間で接着力を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2012-137723号公報
【特許文献2】国際公開WO2011/162198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが,本発明者らが検討したところ,ポリエステルフィルムを偏光子の一方の側の保護フィルムとし,もう一方の側の保護フィルムに異なる種類のフィルムを使用して硬化型接着剤により偏光板作製時に,接着層の硬化収縮により偏光板がカールし,その後液晶セルに貼合する際に気泡や異物が入る問題があることがわかった。また,虹状のムラを解消するための特許文献2に記載の面内方向のレターデーションが高いポリエステルフィルムを用いた場合も,同様の問題があることがわかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は,硬化型接着剤を用いて偏光子と2枚の保護フィルムを貼り合わせて偏光板を作製したときに発生するカールを抑えることができ,かつ液晶表示装置に組み込んだときに虹状のムラが視認されにくい偏光板を提供することである。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0013】
…(省略)…
【0015】
<構成>
まず,本発明の偏光板の構成を,図面に基づいて説明する。
図1に示した本発明の偏光板(図中の符号20)は,偏光性能を有する偏光子(図中の符号2)と,前記偏光子の一方の面に接着層1(図中の符号11)を介して貼合された第一の保護フィルム(図中の符号1)と,前記偏光子の他方の面に接着層2(図中の符号12)を介して貼合された第二の保護フィルム(図中の符号3)とを含むものである。
…(省略)…
【0017】
(式(1),(2)の詳細説明)
前記式(1),(2)について説明する。本発明の偏光板は第一の保護フィルム,接着層1,偏光子,接着層2,第二の保護フィルムを少なくとも含む,少なくとも5層の積層体である。偏光板のカールは接着層1,2が硬化時に収縮することが原因で発生しており,そのカールの大きさ,向きは接着層1,2と偏光板の重心位置である中立軸との位置関係で決まる。
…(省略)…
【0022】
<偏光子>
本発明の偏光板は,偏光性能を有する偏光子を有する。
【0023】
前記偏光子としては,従来公知の方法で製造したものを用いることができ,ポリビニルアルコール系偏光子が好ましい。例えば,ポリビニルアルコールあるいはエチレン単位の含有量1?4モル%,重合度2000?4000,けん化度99.0?99.99モル%であるエチレン変性ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを,ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや,塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたものを用いる。
【0024】
また,基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことにより10μm以下の偏光子フィルムを得る方法として,特許第5048120号公報,特許第5143918号公報,特許第5048120号公報,特許第4691205号公報,特許第4751481号公報,特許第4751486号公報を挙げることができ,これらの偏光子に関する公知の技術も本発明の偏光板に好ましく利用することができる。
…(省略)…
【0026】
<第一の保護フィルム>
本発明の偏光板は,偏光子の一方の面に接着層1を介して貼合され,面内方向のレターデーションが3000nm以上である第一の保護フィルムを含む。
【0027】
(樹脂)
前記第一の保護フィルムの主成分としては特に制限はないが,本発明の偏光板は前記第一の保護フィルムがポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂を主成分として含むことが好ましい。
…(省略)…
【0045】
(第一の保護フィルムの特性)
-位相差-
第一の保護フィルムは,面内方向のレターデーションRe(位相差値)は,3000nm以上であり,3000?30000nm以上が好ましく,より好ましくは4000?20000nmであり,さらに好ましくは6000nm以上15000nm以下である。面内位相差値を3000nm以上とすることにより,本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んだときに虹状のムラが視認されにくくなる傾向にある。面内位相差値を30000nm以下とすることにより,薄膜化が可能であり,脆性およびハンドリング性に優れたフィルムとすることができる。
…(省略)…
【0060】
<第二の保護フィルム>
本発明の偏光板は,偏光子の第一の保護フィルムが貼合された側の他方の面に,接着層2を介して貼合された第二の保護フィルムを含む。
【0061】
(樹脂)
前記第二の保護フィルムの主成分としては特に制限はないが,本発明の偏光板は前記第二の保護フィルムがシクロオレフィン樹脂,アクリル樹脂またはセルロースエステル樹脂を主成分として含むことが好ましい。
…(省略)…
【0137】
(第二の保護フィルムの特性)
-膜厚-
第二の保護フィルムの厚みは,10?200μmとすることが好ましく,15?100μmとすることがより好ましく,20?60μmであることが特に好ましい。第二の保護フィルムの厚みが20μm以上であると,ハンドリングしやすい傾向にあり,厚みが100μm以下であると,薄肉化による製造コスト低減のメリットが得られる傾向にある。
また,第二の保護フィルムの厚みが60μm(好ましくは40μm以下,例えば10?40μm)と薄い場合に,特に本発明の効果が顕著に得られる。具体的には,第二の保護フィルムの膜厚が厚いほど,前記第一の保護フィルムとして面内方向のレターデーションが高いフィルム(ポリエステルフィルムなど)を用いた場合でも,硬化型接着剤を用いて偏光子と2枚の保護フィルムを貼り合わせて偏光板を作製したときにカール(第一の保護フィルム方向へのプラスのカール)が発生しにくい傾向にある。逆に,第二の保護フィルムの厚みが40μm以下のときには,硬化型接着剤を用いて偏光子と2枚の保護フィルムを貼り合わせて偏光板を作製したときにカールが非常に発生しやすくなるため,本発明のカール抑制効果を顕著に得ることができる。
…(省略)…
【0139】
<接着層>
本発明の偏光板は,前記偏光子と第一の保護フィルムが接着層1を介して貼合され,前記偏光子と第二の保護フィルムが接着層2を介して貼合される。接着層1および接着層2は,硬化性の接着剤を含むことが好ましい。
【0140】
(接着層の特性)
-膜厚-
本発明の偏光板は,接着層1および接着層2の膜厚は,0.5?5μmの範囲で所定値に設定されることが好ましい。その接着層1および接着層2の膜厚が0.5μm以上であると,接着強度にムラを生じにくい。一方,その厚さが5μm以下であると,製造コストが低減できる。この範囲内で比較的厚め,たとえば3.5μm以上,とりわけ4μm以上とすれば,接着層1および接着層2の膜厚が多少変動しても,それに起因する気泡などの欠陥が現れにくくなるが,一方で,このように厚くすることはコストの増加につながりかねないので,可能な範囲で薄くすることが望まれる。これらの理由から,接着層1および接着層2の膜厚の好ましい厚さは,1?4μm,さらには1.5?3.5μmの範囲である。
…(省略)…
【0143】
(活性エネルギー線硬化型接着剤)
接着剤は,硬化性である限りにおいて,従来から偏光板の製造に使用されている各種のものであることができるが,耐候性や重合性などの観点から,接着層1および接着層2が活性エネルギー線により硬化する接着剤を含むことが好ましい。
…(省略)…
【0145】
<粘着剤層>
本発明の偏光板は,他部材と接着するための粘着剤層を有することが好ましい。
…(省略)…
【0162】
[偏光板の製造方法]
本発明の偏光板を製造する方法としては特に制限は無く,公知の方法を用いることができる。その中でも,本発明の偏光板は,以下に記載する本発明の偏光板の製造方法によって,生産性よく,容易に製造することができる。
本発明の偏光板の製造方法は,偏光性能を有する偏光子の一方の面に接着層1を介して面内方向のレターデーションが3000nm以上である第一の保護フィルムを貼合する工程と,偏光子の他方の面に接着層1とは異なる膜厚に制御した接着層2を介して第二の保護フィルムを貼合する工程と,接着層1と接着層2を硬化収縮させる工程とを含むことが好ましい。このように,接着層2の膜厚を,接着層1とは異なる膜厚に制御することによって,接着層1と接着層2の組成を同じとしたときにも前記式(2)を満たすように接着層1および接着層2の硬化収縮力を制御でき,生産性の観点から好ましい。
【0163】
(偏光子と保護フィルムとの貼合工程)
本発明の偏光板の製造方法は,偏光性能を有する偏光子の一方の面に接着層1を介して面内方向のレターデーションが3000nm以上である第一の保護フィルムを貼合する工程と,偏光子の他方の面に接着層1とは異なる膜厚に制御した接着層2を介して第二の保護フィルムを貼合する工程を含む。
【0164】
偏光子の一方の面に接着層1を介して第一の保護フィルムを貼合する工程と,偏光子の他方の面に接着層1とは異なる膜厚に制御した接着層2を介して第二の保護フィルムを貼合する工程は,同時に貼合を行っても,逐次で貼合を行ってもよい。その中でも,偏光子の一方の面に接着層1を介して第一の保護フィルムを貼合する工程と,偏光子の他方の面に接着層1とは異なる膜厚に制御した接着層2を介して第二の保護フィルムを貼合する工程を同時に行うことが好ましく,ロールツーロール方式を用いて両方の貼合する工程を同時に行うことがより好ましい。
…(省略)…
【実施例】
【0178】
…(省略)…
【0179】
[実施例1]
…(省略)…
【0189】
-フィルム成形工程-
原料ポリエステル1(90質量部)と,紫外線吸収剤を含有した原料ポリエステル2(10質量部)を,含水率20ppm以下に乾燥させた後,直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入し,押出機1で300℃に溶融した。下記押出条件により,ギアポンプ,濾過器(孔径20μm)を介し,ダイから押出した。
溶融樹脂の押出条件は,圧力変動を1%,溶融樹脂の温度分布を2%として,溶融樹脂をダイから押出した。具体的には,背圧を,押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し,押出機の配管温度を,押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は,温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し,静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて剥離し,未延伸ポリエステルフィルム1を得た。
【0190】
得られた未延伸ポリエステルフィルム1を,テンター(横延伸機)に導き,フィルムの端部をクリップで把持しながら,下記の方法,条件にてTD方向(フィルム幅方向,横方向)に下記の条件にて横延伸し,厚さ80μm,幅1330mmのPETフィルム1(以降,PET1と略す)を製造した。
《条件》
・横延伸温度:90℃
・横延伸倍率:4.3倍
【0191】
(熱固定部)
次いで,ポリエステルフィルムの膜面温度を下記範囲に制御しながら,熱固定処理を行った。
<条件>
・熱固定温度:180℃
・熱固定時間:15秒
【0192】
(熱緩和部)
熱固定後のポリエステルフィルムを下記の温度に加熱し,フィルムを緩和した。
・熱緩和温度:170℃
・熱緩和率:TD方向(フィルム幅方向,横方向)2%
【0193】
(冷却部)
次に,熱緩和後のポリエステルフィルムを50℃の冷却温度にて冷却した。
…(省略)…
【0195】
<偏光板加工>
(偏光子の作製)
特開2001-141926号公報の実施例1に従い,延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて膜厚24μmの偏光子を作製した。
【0196】
(接着剤の調製1)
2-ヒドロキシエチルアクリレート100質量部,トリレンジイソシアネート10質量部および光重合開始剤(イルガキュア907,BASF製)3質量部,を配合して偏光板用接着剤を調製した。これを接着剤1とした。
【0197】
(偏光板の作製)
前記のPET1及びCOP1の表面にコロナ処理を施した。次いで,マイクログラビアコーター(グラビアロール:#300,回転速度140%/ライン速)を用いて,第一の保護フィルムPET1と偏光子との間の接着層1の膜厚を3.0μmとし,第二の保護フィルムCOP1と偏光子との間の接着層2の膜厚を1.5μmなるように接着剤1を各フィルム上に塗工し接着剤付き保護フィルムとした。次いで,上記偏光子の両面に前記接着剤付き保護フィルムをロール機でロールツーロールで貼り合わせた。貼り合わせたCOP1側から,紫外線を照射して接着剤を硬化させ,各層を貼り合わせた。ライン速度は20m/min,紫外線の積算光量300mJ/cm^(2)とした。 このようにしてフィルム長さ500mの両面が第一および第二の光学フィルムによって保護された偏光板を得た。この偏光板を実施例1の偏光板とした。
…(省略)…
【0213】
[実施例8]
実施例1において,第二の保護フィルムとしてCOP1の代わりに,以下に示すアクリルフィルム1(以降,PMMA1と略す)を用い,かつ,第二の保護フィルムと偏光子との間の接着層2の膜厚を1.5μmから0.6μmに変更した以外は実施例1と同様にして,実施例8の偏光板を得た。この偏光板を用いて以下に示す画像表示装置2を作製した。
【0214】
<アクリルフィルム1の作製>
【化10】



上記一般式中,R^(1)は水素原子,R^(2)およびR^(3)はメチル基であるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂{共重合モノマー質量比=メタクリル酸メチル/2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル=8/2,ラクトン環化率約100%,ラクトン環構造の含有割合19.4%,質量平均分子量133000,メルトフローレート6.5g/10分(240℃,10kgf),Tg131℃}90質量部と,アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂{トーヨーAS AS20,東洋スチレン社製}10質量部との混合物;Tg127℃のペレットを二軸押し出し機に供給し,約280℃でシート状に溶融押し出しして,ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂シートを得た。この未延伸シートを,160℃の温度条件下,縦,横に延伸してPMMA1(厚さ:41μm,面内位相差Re:0.8nm,厚み方向位相差Rth:1.5nm)を得た。
【0215】
[画像表示装置の作製2]
IPSモード液晶セル(LGD製 42LS5600)の2枚の偏光板をはがし,フロント側(視認側),リア側(非視認側)に前記実施例1(当合議体注:「実施例1」は「実施例8」の誤記である。)の偏光板を,第二の保護フィルムがそれぞれ液晶セル側となるように,粘着剤を介して,フロント側およびリア側に一枚ずつ貼り付けた。フロント側の偏光板の吸収軸が長手方向(左右方向)に,そして,リア側の偏光板の透過軸が長手方向(左右方向)になるように,クロスニコル配置とした。液晶セルに使用されているガラスの厚さは0.5mmであった。 この表示特性は良好であった。
このようにして得られた液晶表示装置を実施例8の画像表示装置2とした。
…(省略)…
【0233】
【表1】

【0234】
<評価結果>
上記表1の実施例1,2より本発明の偏光板は,硬化型接着剤を用いて偏光子と2枚の保護フィルムを貼り合わせて偏光板を作製したときに発生する(MD方向,すなわち偏光子の吸収軸方向の)カールを抑えることができ,かつ液晶表示装置に組み込んだときに虹状のムラが視認されにくいことがわかった。」

ウ 図1




(2) 引用発明
引用文献1の【0213】及び【0214】には,「実施例8の偏光板」の製造方法が記載されているところ,この「実施例8の偏光板」は,「実施例1において,第二の保護フィルムとしてCOP1の代わりに,以下に示すアクリルフィルム1(以降,PMMA1と略す)を用い,かつ,第二の保護フィルムと偏光子との間の接着層2の膜厚を1.5μmから0.6μmに変更した以外は実施例1と同様にして」得られたものである。また,実施例1の偏光板は,引用文献1の【0179】?【0197】に記載されたとおりの方法によって作成されたものである。加えて,引用文献1の【0233】に記載の【表1】からは,「実施例8の偏光板」の「第一の保護フィルム」が,「面内位相差Re:8100nm,厚み方向位相差Rth:9300nm」のものであることが理解できる。
そうしてみると,引用文献1には,実施例8の「偏光板の製造方法」として,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,用語を統一して記載した。
「 未延伸ポリエステルフィルム1を,横延伸温度:90℃,横延伸倍率:4.3倍で横延伸し,厚さ80μm,面内位相差Re:8100nm,厚み方向位相差Rth:9300nmのPETフィルム1を製造し,次いで,熱固定処理を行い,熱固定後のPETフィルム1を緩和,冷却し,
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂シートを延伸して厚さ:41μm,面内位相差Re:0.8nm,厚み方向位相差Rth:1.5nmのアクリルフィルム1を得,
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて膜厚24μmの偏光子を作製し,
2-ヒドロキシエチルアクリレート100質量部,トリレンジイソシアネート10質量部及び光重合開始剤(イルガキュア907)3質量部,を配合して偏光板用接着剤を調製し,
PETフィルム1及びアクリルフィルム1の表面にコロナ処理を施し,次いで,マイクログラビアコーターを用いて,PETフィルム1と偏光子との間の偏光板用接着剤層1の膜厚が3.0μm,アクリルフィルム1と偏光子との間の偏光板用接着剤層2の膜厚が0.6μmとなるように偏光板用接着剤を各フィルム上に塗工し接着剤付き保護フィルムとし,
次いで,偏光子の両面に接着剤付き保護フィルムをロールツーロールで貼り合わせ,貼り合わせたアクリルフィルム1側から,紫外線を照射して接着剤を硬化させ,各層を貼り合わせる,
偏光板の製造方法。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 偏光板の製造方法
引用発明は,「PETフィルム1と偏光子との間の偏光板用接着剤層1の膜厚が3.0μm,アクリルフィルム1と偏光子との間の偏光板用接着剤層2の膜厚が0.6μmとなるように偏光板用接着剤を各フィルム上に塗工し接着剤付き保護フィルムとし」,「偏光子の両面に接着剤付き保護フィルムをロールツーロールで貼り合わせ,貼り合わせたアクリルフィルム1側から,紫外線を照射して接着剤を硬化させ,各層を貼り合わせる」「偏光板の製造方法」である。
上記の製造方法からみて,引用発明は,「偏光子」の一方の面上に「アクリルフィルム1」を備え,他方の面上に「PETフィルム1」を備える「偏光板の製造方法」といえる。また,上記のとおり,引用発明の「アクリルフィルム1」及び「PETフィルム1」は,いずれも「保護フィルム」である。加えて,引用発明の「偏光子」等は,その用語が通常意味するとおりの機能,形状を果たす部材であり,この点は,本願発明においても同じである。
そうしてみると,引用発明の「偏光子」,「アクリルフィルム1」,「PETフィルム1」,「偏光板」及び「偏光子の製造方法」は,それぞれ,本願発明1の「偏光子」,「第1保護フィルム」,「第2保護フィルム」,「偏光板」及び「偏光板の製造方法」に相当する。また,引用発明の「偏光板」は,本願発明1の「偏光板」における,「偏光子の一方の面上に第1保護フィルムを備え,他方の面上に第2保護フィルムを備える」という要件を満たすものである。

イ 配置
引用発明の「アクリルフィルム1」は,「面内位相差Re:0.8nm,厚み方向位相差Rth:1.5nm」のものである。また,引用発明の「PETフィルム1」は,「面内位相差Re:8100nm,厚み方向位相差Rth:9300nm」のものである。
これら光学特性からみて,引用発明の「アクリルフィルム1」は,透過する光(液晶セルを通過した光)の偏光方向をほとんど乱さないものである一方,引用発明の「PETフィルム1」は,透過する光の偏光方向を大きく乱してしまうものといえる。
そうしてみると,引用発明の「偏光板」の「アクリルフィルム1」は,本願発明1の「第1保護フィルム」における,「前記偏光板を表示用セル上に配置する際に,前記第2保護フィルムよりも前記表示用セル側に配置される保護フィルムであり」という要件を満たすことに適した物である。
(当合議体注:引用文献1の【0215】においても,「アクリルフィルム1」が液晶セル側となるように貼り付けられている。)

ウ 第1接着剤層の硬化後の厚み
引用発明の「接着剤付き保護フィルム」は,「マイクログラビアコーターを用いて,PETフィルム1と偏光子との間の偏光板用接着剤層1の膜厚が3.0μm,アクリルフィルム1と偏光子との間の偏光板用接着剤層2の膜厚が0.6μmとなるように偏光板用接着剤を各フィルム上に塗工し」たものである。
そうしてみると,引用発明の「偏光板の製造方法」は,本願発明1の「偏光板の製造方法」における,「前記第1接着剤層の硬化後の厚みが0.75μm以下であり」,「前記第1接着剤層の硬化後の厚みが前記第2接着剤層の硬化後の厚みよりも小さい」という要件を満たすものである。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は,次の構成で一致する。
「 偏光子の一方の面上に第1保護フィルムを備え,他方の面上に第2保護フィルムを備える偏光板の製造方法であって,
前記第1保護フィルムは,前記偏光板を表示用セル上に配置する際に,前記第2保護フィルムよりも前記表示用セル側に配置される保護フィルムであり,
前記第1接着剤層の硬化後の厚みが0.75μm以下であり,
前記第1接着剤層の硬化後の厚みが前記第2接着剤層の硬化後の厚みよりも小さい,偏光板の製造方法。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は,次の点で相違する。
(相違点)
「偏光板の製造方法」が,本願発明1は,[A]「前記一方の面に,活性エネルギー線硬化性接着剤からなる第1接着剤層を介して前記第1保護フィルムを貼合する第1貼合工程と」,「前記第1貼合工程の後,前記他方の面に,活性エネルギー線硬化性接着剤からなる第2接着剤層を介して前記第2保護フィルムを貼合する第2貼合工程と」,「を含み」,かつ,[B]「前記第1接着剤層の硬化後の厚みが0.75μm以下であり」,「前記第1接着剤層の硬化後の厚みが前記第2接着剤層の硬化後の厚みよりも小さい」というものであるのに対して,引用発明は,上記[B]の要件は満たしつつも,「偏光子の両面に接着剤付き保護フィルムをロールツーロールで貼り合わせ,貼り合わせたアクリルフィルム1側から,紫外線を照射して接着剤を硬化させ,各層を貼り合わせ」ている(両方の貼合工程を同時に行っている)点。
(当合議体注:上記[B]の構成は,一致点とした構成である。しかしながら,本願発明1は,第1保護フィルム及び第2の保護フィルムの貼合工程の順序,並びに,第1接着剤層の硬化後の厚み及び第2接着剤層の硬化後の厚みの組み合わせを特定する発明である。そして,本件出願の明細書の【0113】の表1に記載のとおり,この組み合わせの違いにより,実施例と比較例に分かれることに鑑みて,一致点とした上記[B]の構成についても,相違点において言及した。なお,表1は,次のものである。

)

(3) 判断
引用文献1の【0164】には,「偏光子の一方の面に接着層1を介して第一の保護フィルムを貼合する工程と,偏光子の他方の面に接着層1とは異なる膜厚に制御した接着層2を介して第二の保護フィルムを貼合する工程は,同時に貼合を行っても,逐次で貼合を行ってもよい。」と記載されている。
そうしてみると,引用発明において,両方の貼合工程を同時に行うのではなく,貼合工程を片面ずつ行うことは,引用文献1の記載が示唆する範囲内の事項のように理解される。
しかしながら,引用文献1の【0164】には,上記の記載に続いて,「その中でも,偏光子の一方の面に接着層1を介して第一の保護フィルムを貼合する工程と,偏光子の他方の面に接着層1とは異なる膜厚に制御した接着層2を介して第二の保護フィルムを貼合する工程を同時に行うことが好ましく,ロールツーロール方式を用いて両方の貼合する工程を同時に行うことがより好ましい。」と記載されている。また,引用発明においては,貼合工程を片面ずつ行うよりも,両方の貼合工程を同時に行った方が,製造上有利であることは,技術的にみて明らかである。すなわち,引用発明において,仮に,貼合工程を片面ずつ行うとした場合には,「紫外線を照射して接着剤を硬化させ」る工程を複数回行うこととなる。また,引用文献1の【0017】に記載された,「偏光板のカールは接着層1,2が硬化時に収縮することが原因で発生し」という知見に基づくならば,片面の貼合工程を行った段階でカールが発生するため,ハンドリング上の対処が必要になると理解される。
そうしてみると,引用発明の構成を前提とした場合において,両方の貼合工程を同時に行うことに替えて,貼合工程を片面ずつ行う工程を採用することについては,特段の動機づけが必要と認められるところ,そのような動機づけは,引用文献1に記載も示唆もされていない。

さらにすすんで検討すると,引用文献1に記載された,発明が解決しようとする課題は,「硬化型接着剤を用いて偏光子と2枚の保護フィルムを貼り合わせて偏光板を作製したときに発生するカールを抑えることができ,かつ液晶表示装置に組み込んだときに虹状のムラが視認されにくい偏光板を提供することである。」というものであるところ,この課題は,貼合工程を片面ずつ行うことを動機付けるものではない。また,引用文献1には,上記のとおり,両方の貼合工程を同時に行うことが好ましいことが記載されており,また,この知見は,技術的にみても首肯できるものである。これら観点を尊重すると,引用発明の構成を前提とした場合において,両方の貼合工程を同時に行うことに替えて,貼合工程を片面ずつ行う工程を採用することには,阻害要因があるともいえる。

ところで,引用文献1の【0024】には,「基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことにより10μm以下の偏光子フィルムを得る方法として,特許第5048120号公報,特許第5143918号公報,特許第5048120号公報,特許第4691205号公報,特許第4751481号公報,特許第4751486号公報を挙げることができ,これらの偏光子に関する公知の技術も本発明の偏光板に好ましく利用することができる。」と記載されている。
そして,引用発明の「偏光子」に替えて,上記の「10μm以下の偏光子フィルム」を採用して偏光板を製造する場合においては,基材があるため,両方の貼合工程を同時に行うことは不可能となる(当合議体注:基材上に形成された偏光子フィルムに対して一方の保護フィルムを貼り合わせた後,基材を剥離し,その後,基材を剥離した面に他方の保護フィルムを貼り合わせることとなる。)。
したがって,引用発明の「偏光子」に替えて,上記の「10μm以下の偏光子フィルム」を採用し,かつ,偏光子の両面に保護フィルムを貼り合わせる場合を想定すると,貼合工程を片面ずつ行うことについて,動機づけがあると認められる。また,この場合の貼り合わせの順序は,二者択一にすぎないといえる。
しかしながら,引用文献1の【0024】に記載された各文献には,相違点に係る本願発明1の構成までは,開示されていない(例えば,上記特許第5048120号公報には,基材上に形成された偏光子フィルムに対して保護フィルムを貼り合わせて,基材を剥離してなる偏光板(片面に保護フィルムを貼り合わせてなる偏光板)が開示されるにとどまる。)。
したがって,たとえ引用文献1の【0024】の記載を考慮した当業者であっても,本願発明1の構成に到るとまではいえない。

さらにすすんで検討すると,本件出願前に頒布された刊行物である特開2014-215560号公報(以下「参考例1」という。)の【0158】には,実施例1として,「非晶性PET基材に…厚さ10μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を生成…更に,ノルボルネン系樹脂フィルム…に前記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を…厚み0.5μmになるように塗工し…活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を硬化させ…薄型偏光膜Xから非晶性PET基材を剥離し…非晶性PET基材を剥離した側の面に,活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を塗工し…未処理TACフィルム…を貼り合わせ…活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を硬化させ…偏光フィルムを製造した。」と記載されている(以下「参考例1記載技術」という。)。
しかしながら,この実施例1では,「未処理TACフィルム」側の「活性エネルギー線硬化型接着剤組成物」の厚さが不明である。したがって,引用発明と,参考例1記載技術1を組み合わせたとしても,やはり,本願発明1の構成に到るとまではいえない。

本願発明1は,「偏光板を構成する偏光子や保護フィルムを薄くしていくと,偏光子と接着剤層との界面又は保護フィルムと接着剤層との界面の少なくともいずれか一方に微細な歪みが生じるためか,偏光板に映り込んだ反射像が1mm以下のピッチで細かく乱れたり,反射像が歪んだりして,あたかも表面に微細な凹凸を生じているかの如く見えることがある。このような現象は,偏光板の光学特性に直接悪影響を与えるものではないが,このような現象を示す偏光板を表示用セルに貼合する際にその保護フィルムが外側(例えば最表面)に配置されるような場合には,貼合後にもこの現象が残存し,保護フィルム表面の光沢感が得られないために,高級感に欠けるなどといった外観上の不具合を生じる。」(【0005】)という,発明が解決しようとする課題を解決することを目的とし,また,本願発明1の偏光板の製造方法によれば,「第2保護フィルム表面に現れる上述の凹凸感の発生,及びこれに伴う反射像の乱れや歪みが抑制された偏光板及び粘着剤層付偏光板を提供することができる。」(【0014】)という発明の効果を奏するものとされている。
これに対して,引用文献1には,上記の発明が解決しようとする課題,及び発明の効果は,記載されておらず,また,示唆もされていない。むしろ,引用文献1の【0024】には,両方の貼合工程を同時に行うことが好ましいことが記載されている。そうしてみると,本願発明1は,引用発明とは異質な課題に基づく異質な効果を奏する発明と理解される。
(当合議体注:この点は,参考例1についてみても,同様である。すなわち,参考例1には,上記の発明が解決しようとする課題,及び発明の効果は,記載されておらず,また,示唆もされていない。むしろ,参考例1の【0159】に「第1透明保護フィルムとして未処理TACフィルムを使用し,第2透明保護フィルムとしてノルボルネン系樹脂フィルムを使用したこと以外は,実施例1と同様の方法により偏光フィルムを製造した。」とされる実施例2も開示されていることを考慮すると,参考例1に記載された技術における貼合工程の順序は,どちらでも良いと理解される。)

(4) 小括
以上のとおりであるから,本願発明は,たとえ当業者といえども,引用発明(及び参考例1に記載された技術)に基づいて,容易に発明をすることができたものであるということができない。

(5) 請求項2?請求項5について
本件出願の請求項2?請求項5に係る発明は,いずれも,前記相違点1に係る本願発明1の構成を具備するものである。
そうしてみると,これら発明についても,たとえ当業者といえども,引用発明(及び参考例1に記載された技術)に基づいて,容易に発明をすることができたものであるということができない。

第3 原査定について
前記「第2」で述べたとおりであるから,原査定の理由を維持することはできない。

第4 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-20 
出願番号 特願2014-245860(P2014-245860)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 井口 猶二
樋口 信宏
発明の名称 偏光板の製造方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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