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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1359070
審判番号 不服2018-12819  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-26 
確定日 2020-01-16 
事件の表示 特願2015- 96426「電子部品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 72603〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成27年5月11日(優先権主張 平成26年9月26日)の出願であって、平成29年10月26日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成30年2月23日付けで意見書が提出されたが、同年6月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
表面に2つの外部電極を有する電子素子と、
電気絶縁性を有する基板本体、および、該基板本体の一方の主面に設けられて前記2つの外部電極とそれぞれ電気的に接続された2つの実装電極を含み、前記電子素子が前記基板本体の一方の主面側に実装された基板型の端子とを備え、
前記一方の主面側から見て、前記2つの外部電極の一部は、前記基板型の端子の外縁より外側に位置し、
前記一方の主面に直交する方向において、前記2つの外部電極における基板型の端子側とは反対側の端から、前記基板型の端子における電子素子側とは反対側の端までの厚さの寸法は、前記2つの外部電極同士を最短で結ぶ方向に直交する方向かつ前記一方の主面に沿う方向における、前記電子素子の幅の寸法および前記基板型の端子の幅の寸法のうちの大きい方の寸法以下である、電子部品。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/090986号(以下、「引用例」という。)には、「電子部品」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「[請求項1] 平板状の絶縁性基板、該絶縁性基板の一方主面に形成された第1上面電極、第2上面電極、前記絶縁性基板の他方主面に形成された第1下面電極、第2下面電極を備える基板と、
本体の長さ方向の両端にそれぞれ対向して第1外部電極と第2外部電極とが形成され、前記第1外部電極が前記第1上面電極に実装され、前記第2外部電極が前記第2上面電極に実装されるチップ部品と、を備える電子部品であって、
前記基板は、前記一方主面と前記他方主面に直交する端面に形成され、前記第1上面電極と前記第1下面電極を接続し、前記第2上面電極と前記第2上面電極とを接続する複数の接続電極を備え、
前記チップ部品の本体の長さ方向と直交する幅方向の略中央において、前記第1上面電極と前記第1下面電極とが離間し、前記第2上面電極と前記第2下面電極とが離間していることを特徴とする電子部品。
・・・・・(中 略)・・・・・
[請求項6] 請求項3または請求項4に記載の電子部品であって、
前記絶縁性基板は、前記チップ部品を搭載した際、前記一方主面および前記他方主面に直交する方向から見た状態で、前記チップ部品の外形よりも小さい外形形状で形成されている、電子部品。」

(2)「[0022] また、この発明の電子部品では、絶縁性基板は、チップ部品を搭載した際、一方主面および他方主面に直交する方向から見た状態で、チップ部品の外形よりも小さい外形形状で形成されていてもよい。
[0023] この構成では、絶縁性基板がチップ部品の外形の内側に入り込むことで、接続電極をぬれ上がったはんだが、チップ部品の第1、第2外部電極の稜線部の底面側によってせき止められるので、さらに第1、第2外部電極の中心付近へのはんだの付着を抑制できる。・・・・(以下、略)」

(3)「[0048] 積層セラミックコンデンサ11は、本発明の「チップ部品」に相当し、部品本体110を備える。部品本体110は、誘電体層と内層電極層とを所定数積層して焼成することで、形成される。積層セラミックコンデンサ11は、部品本体110の長さ方向(図1(A)に示す図面の横方向)の一方端に外部電極111(本発明の「第1外部電極」に相当する。)が形成されており、対向する他方端に外部電極112(本発明の「第2外部電極」に相当する。)が形成されている。当該外部電極111,112は所定の導電性ペーストを焼成することで形成され、表面に錫メッキが施されている。以下、この外部電極111,112の配列する方向を積層セラミックコンデンサ11の長さ方向とし、当該長さ方向に直交し、さらに積層セラミックコンデンサ11が実装される実装面に平行な方向を積層セラミックコンデンサ11の幅方向として、説明する。
・・・・・(中 略)・・・・・
[0051] インターポーザー12は、本発明の「基板」に相当し、図2に示すように、絶縁性基板120を備える。絶縁性基板120は、例えば0.5mm程度?1.0mm程度の厚みを有し、絶縁性樹脂から構成されている。絶縁性基板120は、主面に直交する方向から見て、積層セラミックコンデンサ11と相似な略矩形状に形成されている。・・・・(以下、略)」

(4)「[0054] 絶縁性基板120の積層セラミックコンデンサ11が実装される側となる一方主面には、上面電極1211、1221が形成されている。上面電極1211、1221は互いに離間して形成されている。上面電極1211が本発明の「第1上面電極」に相当し、上面電極1221が本発明の「第2上面電極」に相当する。
[0055] 上面電極1211は、一方主面の長さ方向の一方端の領域に形成されている。この際、上面電極1211は、インターポーザー12(絶縁性基板120)の一方主面上に、互いの長さ方向が略一致するように積層セラミックコンデンサ11を実装した際に、積層セラミックコンデンサ11の外部電極111の底面が接する領域を含むように、長さ方向に対する電極の形成寸法が設定されている。また、上面電極1211は、幅方向には全幅に亘り形成されている。
[0056] 上面電極1221は、一方主面の長さ方向の他方端の領域に形成されている。この際、上面電極1221は、インターポーザー12(絶縁性基板120)の一方主面上に、互いの長さ方向が略一致するように積層セラミックコンデンサ11を実装した際に、積層セラミックコンデンサ11の外部電極112の底面が接する領域を含むように、長さ方向に対する電極の形成寸法が設定されている。また、上面電極1221は、幅方向には全幅に亘り形成されている。
[0057] 絶縁性基板120の積層セラミックコンデンサ11が実装される側と反対側になる他方主面には、下面電極1212、1222が形成されている。下面電極1212、1222は互いに離間して形成されている。下面電極1212が本発明の「第1下面電極」に相当し、下面電極1222が本発明の「第2下面電極」に相当する。」

(5)「[0061] このようなインターポーザー12に、積層セラミックコンデンサ11が実装される場合、インターポーザー12のIP電極121の上面電極1211と、積層セラミックコンデンサ11の外部電極111とを、外部電極111の錫メッキの再溶融により、電気的、機械的に接続する。また、インターポーザー12のIP電極122の上面電極1221と、積層セラミックコンデンサ11の外部電極112とを、外部電極112の錫メッキの再溶融により、電気的、機械的に接続する。・・・・(以下、略)」

(6)「[0071] 次に、第2の実施形態に係る電子部品について、図を参照して説明する。図5(A)?図5(C)は本実施形態に係るインターポーザー12Aを含む電子部品10Aの構成を示す三面図である。図5(D)はインターポーザー12Aと積層セラミックコンデンサ11との形状の関係を示す図である。図6は本実施形態の係る電子部品10Aを回路基板20に実装した状態での三面図である。
[0072] 本実施形態のインターポーザー12Aは、基本的構成は第1の実施形態に示したインターポーザー12と同じであるが、長さおよび幅が異なる。
[0073] 図5(D)に示すように、インターポーザー12Aすなわち絶縁性基板120Aの長さLiAは、積層セラミックコンデンサ11の長さLciに対してわずかに短い。すなわち、LiA≒Lci且つLiA<Lciとなる。インターポーザー12Aすなわち絶縁性基板120Aの幅は、積層セラミックコンデンサ11の幅と略同じで且つ短い。すなわち、WiA≒Wci且つWiA<Wciとなる。
[0074] このような構成で、第1の実施形態と同様の回路基板20へのはんだ接合を行うと、供給されるはんだ量が多かった場合、はんだ300が、図6に示すように、切り欠き部Cd11A,Cd12A,Cd13A,Cd14A(接続電極401A,402A,403A,404A)に対応する外部電極111,112の四稜線の各下端から四稜線に沿うように付着する。これにより、外部電極111,112の端面の中央付近にははんだ300が付着せず、上述のような積層セラミックコンデンサ11の歪みによる振動音の発生を効果的に抑制することができる。」

・上記引用例に記載の「電子部品」は、上記(1)の[請求項1]、(3)、(4)、(6)の記載事項、及び図5によれば、本体の長さ方向の両端にそれぞれ対向して第1外部電極111と第2外部電極112とが形成されたチップ部品(積層セラミックコンデンサ11)と、主面に直交する方向から見て、チップ部品(積層セラミックコンデンサ11)と相似な略矩形状に形成されている平板状の絶縁性基板120A、該絶縁性基板120Aの一方主面に形成された第1上面電極1211A、第2上面電極1221A、及び絶縁性基板120Aの他方主面に形成された第1下面電極1212、第2下面電極1222を備える基板(インターポーザー12A)と、を備え、第1外部電極111が第1上面電極1211Aに実装され、第2外部電極112が第2上面電極1221Aに実装されてなる電子部品10Aである。
・上記(1)の[請求項6]、(2)、(6)の記載事項、及び図5によれば、基板(インターポーザー12A)は、前記チップ部品(積層セラミックコンデンサ11)を搭載した際、主面に直交する方向から見た状態で、その外形(長さ及び幅)がチップ部品(積層セラミックコンデンサ11)の外形(長さ及び幅)よりもわずかに小さい(短い)形状で形成されてなり、この構成により、当該電子部品を回路基板にはんだ接合した際に、ぬれ上がったはんだがチップ部品(積層セラミックコンデンサ11)の第1、第2外部電極の稜線部の底面側によってせき止められ、第1、第2外部電極の中心付近にははんだが付着せず、チップ部品(積層セラミックコンデンサ11)の歪みによる振動音の発生を抑制してなるものである。
・上記(4)の[0055]、[0056]の記載事項によれば、基板(インターポーザー12A)の第1、第2上面電極は、当該基板(インターポーザー12A)の一方主面上にチップ部品(積層セラミックコンデンサ11)を実装した際、チップ部品(積層セラミックコンデンサ11)の第1、第2外部電極の底面がそれぞれ接する領域を含んでなるものである。
・上記(3)の[0048]、(5)の記載事項によれば、チップ部品(積層セラミックコンデンサ11)の第1、第2外部電極の表面には錫メッキが施され、基板(インターポーザー12A)にチップ部品(積層セラミックコンデンサ11)が実装される場合、基板(インターポーザー12A)の第1、第2上面電極と、チップ部品(積層セラミックコンデンサ11)の第1、第2外部電極とを、当該第1、第2外部電極の錫メッキの再溶融によりそれぞれ電気的、機械的に接続してなるものである。

したがって、特に図5,6に示される第2の実施形態に係る電子部品10Aに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「本体の長さ方向の両端にそれぞれ対向して表面に錫メッキが施された第1外部電極と第2外部電極とが形成された積層セラミックコンデンサと、
主面に直交する方向から見て、積層セラミックコンデンサと相似な略矩形状に形成されている平板状の絶縁性基板、該絶縁性基板の一方主面に形成された第1上面電極、第2上面電極、及び該絶縁性基板の他方主面に形成された第1下面電極、第2下面電極を備えるインターポーザーと、を備える電子部品であって、
前記インターポーザーの第1、第2上面電極は、当該インターポーザーの一方主面上に前記積層セラミックコンデンサを実装した際、前記積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の底面がそれぞれ接する領域を含み、
前記インターポーザーの第1、第2上面電極と、前記積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極とを、当該第1、第2外部電極の錫メッキの再溶融によりそれぞれ電気的、機械的に接続してなり、
当該電子部品を回路基板にはんだ接合した際に、ぬれ上がったはんだが積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の稜線部の底面側によってせき止められるように、前記インターポーザーは、前記積層セラミックコンデンサを搭載した際、主面に直交する方向から見た状態で、その外形(長さ及び幅)が前記積層セラミックコンデンサの外形(長さ及び幅)よりもわずかに小さい(短い)形状で形成された電子部品。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「本体の長さ方向の両端にそれぞれ対向して表面に錫メッキが施された第1外部電極と第2外部電極とが形成された積層セラミックコンデンサと」によれば、
引用発明における「積層セラミックコンデンサ」は、本願発明でいう「電子素子」に相当し、そして、引用発明の積層セラミックコンデンサの両端にそれぞれ形成された「第1外部電極と第2外部電極」が、本願発明の電子素子がその表面に有している「2つの外部電極」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「表面に2つの外部電極を有する電子素子と」を備えるものである点で一致する。

(2)引用発明における「主面に直交する方向から見て、積層セラミックコンデンサと相似な略矩形状に形成されている平板状の絶縁性基板、該絶縁性基板の一方主面に形成された第1上面電極、第2上面電極、及び該絶縁性基板の他方主面に形成された第1下面電極、第2下面電極を備えるインターポーザーと、を備える電子部品であって、前記インターポーザーの第1、第2上面電極は、当該インターポーザーの一方主面上に前記積層セラミックコンデンサを実装した際、前記積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の底面がそれぞれ接する領域を含み、前記インターポーザーの第1、第2上面電極と、前記積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極とを、当該第1、第2外部電極の錫メッキの再溶融によりそれぞれ電気的、機械的に接続してなり」によれば、
引用発明における「平板状の絶縁性基板」は、本願発明でいう「電気絶縁性を有する基板本体」に相当し、また、引用発明における、絶縁性基板の一方主面に形成された「第1上面電極、第2上面電極」は、積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極とそれぞれ電気的、機械的に接続されるものであることから、本願発明でいう「2つの実装電極」に相当し、そして、引用発明における、その一方主面上に積層セラミックコンデンサが実装されてなる「インターポーザー」は、本願発明でいう「基板型の端子」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「電気絶縁性を有する基板本体、および、該基板本体の一方の主面に設けられて前記2つの外部電極とそれぞれ電気的に接続された2つの実装電極を含み、前記電子素子が前記基板本体の一方の主面側に実装された基板型の端子と」を備えるものである点で一致する。

(3)引用発明における「当該電子部品を回路基板にはんだ接合した際に、ぬれ上がったはんだが積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の稜線部の底面側によってせき止められるように、前記インターポーザーは、前記積層セラミックコンデンサを搭載した際、主面に直交する方向から見た状態で、その外形(長さ及び幅)が前記積層セラミックコンデンサの外形(長さ及び幅)よりもわずかに小さい(短い)形状で形成され」によれば、
引用発明におけるインターポーザーの外形は、積層セラミックコンデンサの外形よりもわずかに小さい、逆に言えば、積層セラミックコンデンサの外形は、インターポーザーの外形よりもわずかに大きく、特に、当該電子部品を回路基板にはんだ接合した際に、ぬれ上がったはんだが積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の稜線部の底面側によってせき止められる点(引用例の図6も参照)からして、引用発明においても、積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の一部が、インターポーザーの外縁より外側に位置してなるといえるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記一方の主面側から見て、前記2つの外部電極の一部は、前記基板型の端子の外縁より外側に位置」するものである点で一致する。

(4)そして、引用発明における「電子部品」は、本願発明でいう「電子部品」に相当するものである。

よって、本願発明と引用発明とは、
「表面に2つの外部電極を有する電子素子と、
電気絶縁性を有する基板本体、および、該基板本体の一方の主面に設けられて前記2つの外部電極とそれぞれ電気的に接続された2つの実装電極を含み、前記電子素子が前記基板本体の一方の主面側に実装された基板型の端子とを備え、
前記一方の主面側から見て、前記2つの外部電極の一部は、前記基板型の端子の外縁より外側に位置する、電子部品。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、「前記一方の主面に直交する方向において、前記2つの外部電極における基板型の端子側とは反対側の端から、前記基板型の端子における電子素子側とは反対側の端までの厚さの寸法は、前記2つの外部電極同士を最短で結ぶ方向に直交する方向かつ前記一方の主面に沿う方向における、前記電子素子の幅の寸法および前記基板型の端子の幅の寸法のうちの大きい方の寸法以下」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

5.判断
上記[相違点]について検討する。
一般に、直方体状のチップ部品(電子素子)を基板上に実装する際、実装時の姿勢の安定性を考慮して、実装したときの高さ(厚さ)寸法が幅寸法以下となるように実装面が定められるのが普通であるところ、同様に、引用発明のようにチップ部品(積層セラミックコンデンサ)だけでなく平板状のインターポーザーを接合した電子部品にあっても実装時の姿勢の安定性を考慮し、例えば引用例の[0068]には、「・・本実施形態のように極力板厚の薄い絶縁性基板120からなるインターポーザー12を用いることで、電子部品10の高さが大きくなることを抑制でき、低背化が可能になる。」と記載されているように、極力板厚の薄いインターポーザーを用い、以下に具体例として示すように電子部品全体の高さ(厚さ)寸法が幅寸法以下の関係を保つようにして、相違点に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
例えば、引用例の[0050]に記載のように、積層セラミックコンデンサの長さ×幅が3.2mm×1.6mmの一般に普及している寸法のものに着目すると、原査定において提示した引用文献である、チップ積層セラミックコンデンサ Cat.No.C02-7,日本,株式会社村田製作所,2000年 7月,第3頁に記載されたGRM42-6シリーズでは高さが例えば0.85mmである。一方、引用例の[0051]には、インターポーザーの厚みは0.5mm程度?1.0mm程度であることが記載され、上述のようにインターポーザーの板厚を極力薄く、例えば0.5mmとした場合には、電子部品全体の高さ(厚さ)寸法は1.35mm程度であり、幅寸法(1.6mm)以下という上記[相違点]に係る構成における関係を満たす。
なお、請求人は審判請求書において、原査定における相違点の判断についての認定には、インターポーザーの電極厚さおよびはんだの厚さが考慮されていない旨主張しているが、インターポーザー等の基板上に形成される電極厚については通常、金属箔のエッチングなどにより形成され、数十μm程度である(例えば特開2004-134430号公報の段落【0063】を参照)こと、また、引用発明にあっては、「インターポーザーの第1、第2上面電極は、当該インターポーザーの一方主面上に前記積層セラミックコンデンサを実装した際、前記積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の底面がそれぞれ接する領域を含み、前記インターポーザーの第1、第2上面電極と、前記積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極とを、当該第1、第2外部電極の錫メッキの再溶融によりそれぞれ電気的、機械的に接続」してなるものであることからして、インターポーザーの第1、第2上面電極の表面と、積層セラミックコンデンサの第1、第2外部電極の底面とは接しているか、仮に錫メッキが毛細管現象などによりその間に入り込んだとしてもその錫メッキ厚は、インターポーザーや積層セラミックコンデンサ自体の厚さに比べると無視できる程度のごく僅かであると解されることから、インターポーザーの電極厚さや錫メッキの厚さを考慮しても、電子部品全体の高さ(厚さ)寸法は、幅寸法(1.6mm)以下の関係を満たすといえる。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用例から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.その他
請求人は審判請求書において、「引用文献1には、板厚の薄いインターポーザーを用いることで電子部品の低背化をはかることが記載されていますが、本願発明のように積層セラミックコンデンサを薄くすることについては記載も示唆もありません。・・・・よって、積層セラミックコンデンサを薄くした場合は、引用文献1の目的である電子部品の電気特性を維持することができなくなります。・・・・通常、電子部品を薄くした場合、実装時の電子部品の歪みが大きくなり、振動音が大きくなると考えられます。そのため、振動音の発生を抑制するために、板厚の薄いインターポーザーに薄い積層セラミックコンデンサを実装することを当業者が容易に想到できるとはいえないと思料致します。」などと主張している。
しかしながら、そもそも本願請求項1には、電子部品全体の厚さ寸法を幅寸法以下とすることが特定されているだけであって、「電子素子(積層セラミックコンデンサ)」を薄くすることの特定は必ずしもなされておらず、かかる主張は特許請求の範囲(請求項)の記載に基づかない主張であるといえ、採用できない。

7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-21 
結審通知日 2019-10-23 
審決日 2019-12-02 
出願番号 特願2015-96426(P2015-96426)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 秀介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 山田 正文
井上 信一
発明の名称 電子部品  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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