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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1359142
審判番号 不服2018-15630  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-26 
確定日 2020-01-20 
事件の表示 特願2016-248536「投射光学系およびプロジェクタ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日出願公開、特開2017- 62510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年7月5日(優先権主張2011年7月5日、日本国)を国際出願日とする出願である特願2012-539901号の一部を平成24年10月30日に新たな特許出願とした特願2012-238473号の一部を平成26年3月13日に新たな特許出願とした特願2014-49838号の一部を平成28年9月6日に新たな特許出願とした特願2016-174077号の一部を平成28年12月22日に新たな特許出願としたものであって、平成29年12月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年3月9日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月26日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされたものである


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成30年3月9日に補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系であって、
複数のレンズを含み、縮小側から入射した光により拡大側に第1の中間像を結像する第1の屈折光学系と、
複数のレンズを含み、縮小側の前記第1の中間像を拡大側に第2の中間像として結像する第2の屈折光学系と、
前記第2の中間像よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面を含む第1の反射光学系とを有し、
前記第1の屈折光学系は、前記第1の像面に形成された画像を、前記第1の反射光学系により前記第2の像面に結像するための、像面湾曲、非点収差およびコマ収差を主に補正して前記第1の中間像として結像させ、前記第2の屈折光学系は、前記第1の中間像を、主に前記第1の反射光学系で発生する台形歪みと逆方向の歪みを発生させた前記第2の中間像として結像させる、投射光学系。」(以下「本願発明」という。)


第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「(拡大先願)この出願の請求項1?15に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特願2010-256278号(特開2012-108267号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」
というものである。


第4 先願
1.先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された先願(特願2010-256278号(特開2012-108267号))は、本願優先日より前に出願され、本願優先日より後に出願公開がされた特許出願であって、本願の発明者は先願の発明者と同一ではなく、また、本願の出願時において、本願の出願人が先願の出願人と同一でもない。
しかるに、先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、次の記載がある。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子により形成された画像を変倍して第1中間像を結像する第1光学系と、
前記第1中間像を拡大して第2中間像を結像する第2光学系と、
前記第2中間像を結像した光を反射する反射光学系とを有し、
前記第1光学系の光軸が前記第2光学系の光軸に対して前記第1光学系の光軸と垂直な方向に平行移動していることを特徴とする投射光学系。

【請求項7】
前記第1光学系は、拡大変倍光学系であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の投射光学系。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、投射光学系および画像投射装置に関する。特に、小さな投射距離で大きな画面を投射可能とする投射光学系および画像投射装置に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1?5に開示の技術においては、反射面が投射光束方向に飛び出て配置され投射面を観察する際の妨げになる問題が生じることがある。また、広角端から望遠端に移行した場合に投射画面位置が上下に移動する現象が生じ、利用者にとって使いにくくなるという問題も生じる。」
(4)「【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る投射光学系を用いた画像投射装置の使用状態を示す図である。図1(a)は、使用状態を側面から見た図である。図1(b)は、使用状態を正面から見た図である。図1(c)は使用状態を上面から見た図である。画像投射装置100が、スクリーン101の近傍に配置される。図1(a)では、画像投射装置100は、スクリーンの下方に配置されているが、スクリーンの左方、右方あるいは上方に配置されていてもよい。そして、画像投射装置100は、スクリーン101に向けて斜めに光103を投射する。スクリーン101が反射型のスクリーンであれば、スクリーン101に投射された画像を方向104から見ることができる。また、スクリーン101が透過型のスクリーンであれば、スクリーン101に投射された画像を方向105から見ることができる。
【0014】
図2は、本実施形態に係る投射光学系の構成図である。投射光学系は、第1光学系201と、第2光学系202と、反射光学系203とを有する。
【0015】
第1光学系201は、光軸204を有し、変倍機能を有する複数の屈折レンズを含む屈折光学系である。すなわち、第1光学系201に入射する入射光207が液晶パネルなどの画像表示素子を透過し、画像表示素子が形成する画像206の光208を屈折させる複数の屈折レンズを光軸方向に移動することにより、第1光学系201からの出射光209が結像してできる第1中間像210の大きさを変化させる。なお、画像表示素子としては、液晶パネルに限定されることはなく、DMD(Digital Micromirror Device)など種々の素子を用いることが可能である。
【0016】
第2光学系202は、光軸205を有し、複数の屈折レンズを含む屈折光学系である。第2光学系202は、第1中間像210を結像した光211が入射されると、第1中間像210の表わす画像をスクリーンに投射するための拡大を行なう。このため、第2光学系202が出射する光212は、第2中間像213を結像する。
【0017】
反射光学系203は、第2中間像213をさらに拡大させ、スクリーンに投射する。反射光学系203としては、図2に示すように凹面鏡が用いられることが好ましい。凹面鏡を用いることにより、図2における斜め上方214に光が投射され、スクリーンを観察するときの妨害となることを回避できるからである。
【0018】
反射光学系203で発生する収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲など)と第2光学系202の屈折光学系で発生する収差が相殺されるようになっていることが好ましい。また、反射光学系203は、非球面形状を有することが、収差の補正を行なうために好ましい。」
(5)「【0035】
本実施形態のように、投射光学系を、画像の変倍を行なう光学系(第1光学系)と、スクリーンに向けて第1光学系による中間像を拡大する光学系(第2光学系および反射光学系)とに機能により分離することにより、超短焦点画像投射装置の設計を容易にすることができる。
【0036】
例えば、第1光学系を拡大変倍光学系とすることにより、第2光学系のFナンバーを大きくする設計とすることができる。」
(6)図2より、反射光学系203による反射光は絞られてスクリーン方向に向かっているから、反射光学系203は正の屈折力を有することが看取できる。

2.先願の当初明細書等に記載された発明
上記1.(1)?(6)の記載事項から、先願の当初明細書等には、次の発明が記載されているものと認められる。
「複数の屈折レンズを含み、画像表示素子により形成された画像を変倍して第1中間像を結像する拡大変倍光学系である第1光学系と、
複数の屈折レンズを含み、前記第1中間像を拡大して第2中間像を結像する第2光学系と、
前記第2中間像を結像した光を反射し、前記第2中間像をさらに拡大させ、スクリーンに投射し,正の屈折力を有する反射光学系とを有し、
反射光学系で発生する収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲など)と第2光学系の屈折光学系で発生する収差が相殺されるようになっており、
前記第1光学系の光軸が前記第2光学系の光軸に対して前記第1光学系の光軸と垂直な方向に平行移動している投射光学系。」(以下「先願発明」という。)

第4 対比
本願発明と先願発明とを対比すると、
後者の「投射光学系」は、「画像表示素子により形成された画像」を「スクリーンに投射」して画像を形成するものであって、「画像表示素子により形成された画像」及び「スクリーンに投射」される画像は、それぞれ、画像表示素子上の面及びスクリーン面に形成されるものであるから、後者の「投射光学系」は、「第1の像面から第2の像面へ投射する投射光学系」といえる。
そして、後者の「投射光学系」を構成する「第1光学系」、「第2光学系」及び「反射光学系」のいずれも、像を拡大するものであるから、前者の「投射光学系」と後者の「投射光学系」とは、「縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系」である点で共通する。
後者の「第1光学系」は、複数の屈折レンズを含み、画像表示素子により形成された画像を変倍して第1中間像を結像する拡大変倍光学系であるから、前者の「第1の屈折光学系」と後者の「第1光学系」とは、「複数のレンズを含み、縮小側から入射した光により拡大側に第1の中間像を結像する」ものである点で共通する。
後者の「第2光学系」は、複数の屈折レンズを含み、前記第1中間像を拡大して第2中間像を結像するものであるから、前者の「第2の屈折光学系」と後者の「第2光学系」とは、「複数のレンズを含み、縮小側の前記第1の中間像を拡大側に第2の中間像として結像する」ものである点で共通する。
後者の「反射光学系」は、第2中間像を結像した光を反射し、前記第2中間像をさらに拡大させ、スクリーンに投射し、正の屈折力を有するものであるから、前者の「第1の反射光学系」と後者の「反射光学系」とは、「第2の中間像よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面を含む」ものである点で共通する。
以上のことから、後者の「投射光学系」は、「第1の屈折光学系は、第1の像面に形成された画像を、第1の反射光学系により第2の像面に結像するための、第1の中間像として結像させ、第2の屈折光学系は、第1の中間像を、第2の中間像として結像させる」ものといえる。

したがって、両者は、
「縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系であって、
複数のレンズを含み、縮小側から入射した光により拡大側に第1の中間像を結像する第1の屈折光学系と、
複数のレンズを含み、縮小側の前記第1の中間像を拡大側に第2の中間像として結像する第2の屈折光学系と、
前記第2の中間像よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面を含む第1の反射光学系とを有し、
前記第1の屈折光学系は、前記第1の像面に形成された画像を、前記第1の反射光学系により前記第2の像面に結像するための、前記第1の中間像として結像させ、前記第2の屈折光学系は、前記第1の中間像を、前記第2の中間像として結像させる、投射光学系。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点]
第1の像面に形成された画像を、第1の中間像として結像させる第1の屈折光学系が、本願発明では、「像面湾曲、非点収差およびコマ収差を主に補正」するものであるのに対し、先願発明は、そのような特定がなされておらず、
第1の中間像を、第2の中間像として結像させる第2の屈折光学系が、本願発明では、「主に前記第1の反射光学系で発生する台形歪みと逆方向の歪みを発生させた」ものであるのに対し、先願発明は、反射光学系で発生する収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲など)と第2光学系の屈折光学系で発生する収差が相殺されるようになっている点。

第5 判断
上記相違点について検討する。
複数の光学系(レンズ群)により構成される光学系において、光学系で発生する複数の収差(像面湾曲、非点収差、コマ収差、球面収差、歪曲等)を複数の光学系(レンズ群)で補正するにあたり、各収差の補正を複数の光学系(レンズ群)のそれぞれに分担させることは、従来よりよく用いられていた手段(例えば、特開昭63-243908号公報(2頁右上欄10?15行)、特開平4-254814号公報(3頁左欄15?20行)及び特開2009-163222号公報(【0033】)参照。)であることからすると、複数の収差を複数の光学系(レンズ群)のいずれに分担させて補正するかは、当該光学系の技術分野における周知の技術手段(以下「周知技術」という。)といえる。
そうすると、先願発明において、第1の像面に形成された画像を、第1の中間像として結像させる第1の屈折光学系が、「像面湾曲、非点収差およびコマ収差を主に補正」するものとし、第1の中間像を、第2の中間像として結像させる第2の屈折光学系が、「主に前記第1の反射光学系で発生する台形歪みと逆方向の歪みを発生させた」ものとすることは、課題解決のための具体化手段における微差といえる。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点ではないから、本願発明と先願発明とは実質的に同一の発明である。

よって、本願発明は、先願発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、先願発明と実質的に同一であって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-21 
結審通知日 2019-11-25 
審決日 2019-12-10 
出願番号 特願2016-248536(P2016-248536)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 弘瀬戸 息吹  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
清水 康司
発明の名称 投射光学系およびプロジェクタ装置  
代理人 今井 彰  

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