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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1359145
審判番号 不服2019-12021  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-11 
確定日 2020-01-20 
事件の表示 特願2018-230748「三次元座標測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日出願公開、特開2019- 35777〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月30日にされた特許出願(特願2015-16243号)に基づく優先権の主張を伴う、平成28年1月29日にされた特許出願(特願2016-15852号)の一部を、平成30年2月5日に同優先権の主張を伴う新たな特許出願(特願2018-18410号)とし、その一部を平成30年12月10日に同優先権の主張を伴う新たな特許出願(特願2018-230748号)としたものであって、平成30年12月20日付けの拒絶理由通知に対し、平成31年4月17日に意見書が提出されたところ、令和元年6月6日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(送達日:令和元年6月11日)、これに対して、令和元年9月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正である。本件補正前及び本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】
上面に測定対象物を載置する定盤と、前記定盤を跨ぐように2つの支柱で支持された門型のYキャリッジと、前記Yキャリッジから前記定盤側へ延びる測定プローブと、を備えた三次元座標測定装置において、
前記2つの支柱の一方の側にあり前記Yキャリッジを前記定盤に対してY軸方向に沿って移動させる駆動手段を備える第一の支柱部材と、前記第一の支柱部材に追従移動する第二の支柱部材と、を有し、
前記定盤の前記第一の支柱部材側には、前記Y軸方向に平行なガイド部が形成され、
前記第一の支柱部材は、前記ガイド部の両側面であるガイド部側面と、前記ガイド部の上下面であるガイド部上下面とを挟み込む上下両側面支持部を有し、
前記第二の支柱部材は、前記定盤の上面に対してエアベアリングで支持される三次元座標測定装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記定盤の一部として構成される請求項1に記載の三次元座標測定装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記定盤の上面に溝入れして区分けされた前記定盤の前記第一の支柱部材側の一部分である請求項1又は2に記載の三次元座標測定装置。
【請求項4】
前記Yキャリッジに設けられたXガイドであって且つ前記第一の支柱部材及び前記第二の支柱部材の上端部に架け渡されてX軸方向に延在するXガイドと、
前記測定プローブを支持し且つ前記Xガイドに沿って前記X軸方向に移動するX軸方向移動機構と、を有し、
前記X軸方向移動機構は、前記Xガイドの両側面を挟み込んだ状態で前記Xガイドに沿って前記X軸方向に移動する請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元座標測定装置。」

(2)補正後
「【請求項1】
上面に測定対象物を載置する定盤と、前記定盤を跨ぐように2つの支柱で支持された門型のYキャリッジと、前記Yキャリッジから前記定盤側へ延びる測定プローブと、を備えた三次元座標測定装置において、
前記2つの支柱の一方の側にあり前記Yキャリッジを前記定盤に対してY軸方向に沿って移動させる駆動手段を備える第一の支柱部材と、前記第一の支柱部材に追従移動する第二の支柱部材と、を有し、
前記定盤の前記第一の支柱部材側には、前記Y軸方向に平行なガイド部であって且つ前記駆動手段が当接するガイド部が形成され、
前記第一の支柱部材は、前記ガイド部の両側面であるガイド部側面と、前記ガイド部の上下面であるガイド部上下面とを挟み込む上下両側面支持部を有し、
前記第二の支柱部材は、前記定盤の上面に対してエアベアリングで支持され、
前記ガイド部は、前記定盤の上面に溝入れして区分けされた前記定盤の前記第一の支柱部材側の一部分である三次元座標測定装置。
【請求項2】
前記Yキャリッジに設けられたXガイドであって且つ前記第一の支柱部材及び前記第二の支柱部材の上端部に架け渡されてX軸方向に延在するXガイドと、
前記測定プローブを支持し且つ前記Xガイドに沿って前記X軸方向に移動するX軸方向移動機構と、を有し、
前記X軸方向移動機構は、前記Xガイドの両側面を挟み込んだ状態で前記Xガイドに沿って前記X軸方向に移動する請求項1に記載の三次元座標測定装置。」(下線部は、補正箇所を示す。)

2 本件補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1及び請求項2を削除すると共に、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項3を新たな請求項1とし、さらにその「ガイド部」について「前記駆動手段が当接するガイド部」と限定し、また補正前の請求項4を新たな請求項2として、その引用する請求項を新たな請求項1のみとするものであり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するものを含む補正である。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。

3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)刊行物に記載された事項、引用発明
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62?235514号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

ア 「[実施例]
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図、第2図および第3図を参照するに、3次元測定装置1における箱型形状の内部を空洞にしたベース3が床などに載置されている。ベース3上の第1図において左右両側部に、箱型形状の内部を空洞にした摺動案内部5,7が設けられている。この摺動案内部5,7はそれぞれ第2図において前後方向すなわちX軸方向に延伸してある。摺動案内部5,7上には、門型形状のメインキャレッジ9が設けられ、該メインキャレッジ9の左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けてある。摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けてあり、かつ摺動案内部7上にラック17がX軸方向に延伸して設けてある。
上記構成により、X軸モータ15により摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿って、ラック17に案内されてX軸方向に移動されてメインキャレッジ9がX軸方向に移動されることになる。」(第2頁左上欄第12行-同頁右上欄第13行)

イ 「前記メインキャレッジ9の上部ビーム9U上には、第1図および第2図において左右方向すなわちY軸方向に移動自在なセントラルキャレッジ19が設けてある。(中略)
セントラルキャレッジ19の前方内には、第1図、第2図および第3図に示してあるように、スピンドル25が上下方向すなわちZ軸方向へ移動自在に設けてある。スピンドル25の下方部に向けて、アダプタ27を介して先端部にプローブ29が着脱自在に装着してある。」(第2頁右上欄第14行-同頁左下欄第11行)

ウ 「メインキャレッジ9のX軸方向における移動制御は、摺動案内部7の外側に第2図および第3図に示されているように、X軸方向に延伸して取付けてあるリニアスケール35と、摺動案内部材13の内側の一部に取付けてあるセンサ37とによって行なわれている。」(第2頁左下欄第19行-同頁右下欄第4行)

エ 「ベース3上にあって、摺動案内部5と7との間にX軸方向に向けてワーク支持テーブル39が載置してあって、該ワーク支持テーブル39上に測定しようとする被測定物の図示省略のワークが載置される。X軸、Y軸およびZ軸に移動制御されるプローブ29がワークに当接して各種の測定データが測定されることになる。」(第2頁右下欄第10行-同頁同欄第16行)

オ 「前述したメインキャレッジ9の左右下部に移動自在に取付けられた摺動案内部材11,13の裏側には、各種のエアパッドが設けられている。
より詳細には、第1図および第3図に示すように、摺動案内部材11における上部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド41が設けてある。また、摺動案内部材11における下部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド43が設けてある。さらに、摺動案内部材13における上部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド45が設けてある。摺動案内部材13における下部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド47が設けてある。同様に、摺動案内部材13における左部上側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド49が設けてある。また、摺動案内部材13における右部下側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド51が設けてある。」(第2頁右下欄第17行-第3頁左上欄第16行)

カ 「上記構成により、エアパッド49とエアパッド51に図示省略のエア供給装置から乾燥したエアを供給することによって、エアパッド49と摺動案内部7の左外側との間にエア膜が形成されると共に、エアパッド51と摺動案内部7の右外側との間にエア膜が形成される。その結果、セントラルキャレッジ19がメインキャレッジ9の上部ビーム9Uのほぼ真中にある場合には、摺動案内部5,7に対して、摺動案内部材11,13がX軸方向にスムーズに移動される状態となる。
エアパッド41,43,45および47に図示省略のエア供給装置から乾燥したエアを供給することによって、エアパッド41と摺動案内部5の上面との間にエア膜が形成されると共に、エアパッド43と摺動案内部5の下面との間にエア膜が形成される。また、エアパッド45と摺動案内部7の上面との間にエア膜が形成されると共に、エアパッド47と摺動案内部7の下面との間にエア膜が形成される。その結果、セントラルキャレッジ19が例えばメインキャレッジ9の上部ビーム9Uの左側に移動して、メインキヤレッジ9自体が左下りに傾斜しようとすると、右側のエアパッド47が上記傾斜を阻止し精度を維持する。また、セントラルキャレッジ19が例えばメインキャレッジ9の上部ビーム9Uの右側に移動して、メインキヤレッジ9自体が右下りに傾斜しようとすると、左側のエアパッド43が上記傾斜を阻止し精度を維持する。」(第3頁左上欄第17行-同頁左下欄第4行)

キ 「上記構成により、X軸モータ15を駆動させると、出力軸55よりカップリング59を介してシャフト61に回転が伝達されてピニオン69が回転されることになる。」(第4頁左上欄第3行-同第6行)

ク 「フレーム上に設けたラックに沿って移動自在な移動フレームを設け、前記ラックに噛合したピニオンを移動フレームに支承して設けると共に、ピニオンをラックへ付勢圧接してなることを特徴とする3次元測定装置の駆動装置」(特許請求の範囲)





コ 上記ア-クの記載事項及び上記ケの図示内容から、以下の認定事項が導かれる。

(ア)上記アには、「3次元測定装置1」が記載されている。

(イ)上記エには、「被測定物」「が載置される」「ワーク支持テーブル39」が「載置」される「ベース3」が記載されている。

(ウ)上記アには、「ベース3上」の「左右両側部」の「摺動案内部5,7上に」「設けられ」、「X軸方向に移動される」「門型形状のメインキャレッジ9」が記載されている。また、上記キの図示内容から、「門型形状のメインキャレッジ9」は、「ベース3」を跨ぐように2つの支柱で支持されていることが読み取れる。
上記イには、「前記メインキャレッジ9の上部ビーム9U上」に「設け」られた「セントラルキャレッジ19」の「前方内」に「設け」られた「スピンドル25」の「先端部にプローブ29が着脱自在に装着してある」ことが記載されている。また、上記キの図示内容から、「プローブ29」が、「メインキャレッジ9」から「ベース3」へ延びていることが読み取れる。

(エ)上記アには、「メインキャレッジ9の左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けて」あり、「摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けてあり」、「X軸モータ15により摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿って」、「X軸方向に移動されてメインキャレッジ9がX軸方向に移動される」ことが記載されている。
また、上記ア、キ、クには、駆動手段である「X軸モータ15」により「回転される」「ピニオン69」は、「摺動案内部7上に」設けられた「ラック17」に「噛合」していることが記載されている。

(オ)上記アには、「摺動案内部5,7」は「それぞれ」「X軸方向に延伸して」あることが記載されている。

(カ)上記オ及び上記カにより、「摺動案内部材13における上部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド45が設けて」あり、「エアパッド45と摺動案内部7の上面との間にエア膜が形成される」ことが記載されており、
「摺動案内部材13における下部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド47が設けて」あり、「エアパッド47と摺動案内部7の下面との間にエア膜が形成される」ことが記載されており、
「摺動案内部材13における左部上側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド49が設けて」あり、「エアパッド49と摺動案内部7の左外側との間にエア膜が形成される」ことが記載されており、
「摺動案内部材13における右部下側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド51が設けて」あり、「エアパッド51と摺動案内部7の右外側との間にエア膜が形成される」ことが記載されている。

(キ)上記オ及び上記カにより、「摺動案内部材11における上部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド41が設けて」あり、「エアパッド41と摺動案内部5の上面との間にエア膜が形成される」ことが記載されており、
「摺動案内部材11における下部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド43が設けて」あり、「エアパッド43と摺動案内部5の下面との間にエア膜が形成される」ことが記載されている。

上記(ア)-(キ)の認定事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「被測定物が載置されるワーク支持テーブル39が載置されるベース3と、
前記ベース3上の左右両側部の摺動案内部5,7上に設けられ、X軸方向に移動される門型形状のメインキャレッジ9と、を備え、
前記門型形状のメインキャレッジ9は、ベース3を跨ぐように2つの支柱で支持され、
前記メインキャレッジ9の上部ビーム9U上に設けられたセントラルキャレッジ19の前方内に設けられたスピンドル25の先端部にプローブ29が着脱自在に装着してあり、プローブ29が、メインキャレッジ9からベース3へ延びている3次元測定装置1において、
前記メインキャレッジ9の左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けてあり、前記摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けてあり、前記X軸モータ15により回転されるピニオン69が摺動案内部7上に設けられたラック17に噛合して、摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿って、X軸方向に移動されて前記メインキャレッジ9がX軸方向に移動され、
前記摺動案内部材5,7はそれぞれX軸方向に延伸してあり、
前記摺動案内部材13における上部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド45が設けてあり、前記エアパッド45と前記摺動案内部7の上面との間にエア膜が形成され、
前記摺動案内部材13における下部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド47が設けてあり、前記エアパッド47と前記摺動案内部7の下面との間にエア膜が形成され、
前記摺動案内部材13における左部上側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド49が設けてあり、前記エアパッド49と前記摺動案内部7の左外側との間にエア膜が形成され、
前記摺動案内部材13における右部下側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド51が設けてあり、前記エアパッド51と前記摺動案内部7の右外側との間にエア膜が形成され、
前記摺動案内部材11における上部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド41が設けてあり、前記エアパッド41と前記摺動案内部5の上面との間にエア膜が形成され、
前記摺動案内部材11における下部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド43が設けてあり、前記エアパッド43と前記摺動案内部5の下面との間にエア膜が形成される、
3次元測定装置1。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の「被測定物」は、本件補正発明の「測定対象物」に相当し、引用発明の「ベース3」は、本件補正発明の「定盤」に相当する。
よって、引用発明の「被測定物が載置されるワーク支持テーブル39が載置されるベース3」と、本件補正発明の「上面に測定対象物を載置する定盤」とは、「測定対象物をその上位に配置する定盤」である点で共通する。

(b)引用発明の「ベース3を跨ぐように2つの支柱で支持され」て「ベース3上の左右両側部の摺動案内部5,7上に設けられ」る「門型形状のメインキャレッジ9」は、本件補正発明の「定盤を跨ぐように2つの支柱で支持された門型のYキャリッジ」に相当する。また、引用発明の「メインキャレッジ9」は「X軸方向に移動される」ものであり、本件補正発明の「Yキャリッジ」は「Y軸方向に沿って移動」されるものであるから、引用発明の「X軸方向」は、本件補正発明の「Y軸方向」に相当する。

(c)引用発明の「メインキャレッジ9からベース3へ延びている」「プローブ29」は、本件補正発明の「前記Yキャリッジから前記定盤側へ延びる測定プローブ」に相当する。

(d)引用発明の「3次元測定装置1」は、本件補正発明の「三次元座標測定装置」に相当する。

(e)引用発明の「X軸モータ15」は、「メインキャレッジ9」を「X軸方向に移動」するものであるから、本件補正発明の「前記Yキャリッジを前記Y軸方向に駆動する駆動機構」に相当する。
そして、引用発明では、「前記メインキャレッジ9の左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けてあり、前記摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けて」あるから、引用発明の「メインキャレッジ9」を支持する「2つの支柱」のうち、「摺動案内部材13」が取付けてあるもの(以下、「支柱1」という。)は、本件補正発明の「第1の支柱部材」に相当し、「摺動案内部材11」が取付けてあるもの(以下、「支柱2」という。)は、本件補正発明の「第2の支柱部材」に相当する。
ここで、引用発明の「X軸モータ15」は、「摺動案内部材13の後方部」に設けられており、それにより、「メインキャレッジ9」を「X軸方向に移動」するものであるから、この「X軸モータ15」は、支柱1を駆動するものであり、支柱2は、支柱1に追従して移動するものであると認められる。
そうすると、引用発明の「前記メインキャレッジ9の左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けてあり、前記摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けてあり、前記X軸モータ15により摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿って、X軸方向に移動されて前記メインキャレッジ9がX軸方向に移動され」るように構成された「2つの支柱」と、本件補正発明の「前記2つの支柱の一方の側にあり前記Yキャリッジを前記定盤に対してY軸方向に沿って移動させる駆動手段を備える第一の支柱部材と、前記第一の支柱部材に追従移動する第二の支柱部材」とは、「前記2つの支柱の一方の側にあり前記Yキャリッジを前記定盤に対してY軸方向に沿って移動させる駆動手段が配置される第一の支柱部材と、前記第一の支柱部材に追従移動する第二の支柱部材」である点で共通する。

(f)引用発明の「X軸方向に延伸」する「摺動案内部5,7」のうち「摺動案内部7」は、本件補正発明の「前記定盤の前記第1の支柱部材側」の「前記Y軸方向に平行なガイド部」に相当する。
そうすると、引用発明の「摺動案内部7」と、本件補正発明の「前記定盤の前記第一の支柱部材側」に形成される、「前記Y軸方向に平行なガイド部であって且つ前記駆動手段が当接するガイド部」とは、「前記定盤の前記第一の支柱部材側」に形成される、「前記Y軸方向に平行なガイド部」である点で共通する。

(g)引用発明の「前記摺動案内部7の左外側」及び「前記摺動案内部7の右外側」は、本件補正発明の「ガイド部の両側面であるガイド部側面」に相当し、また引用発明の「前記摺動案内部7の上面」及び「前記摺動案内部7の下面」は、本件補正発明の「ガイド部上下面」に相当する。
そして、引用発明においては、「前記摺動案内部材13における左部上側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド49が設けてあり、前記エアパッド49と前記摺動案内部7の上面との間にエア膜が形成され」、「前記摺動案内部材13における右部下側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド51が設けてあり、前記エアパッド51と前記摺動案内部7の右外側との間にエア膜が形成され」、「前記摺動案内部材13における上部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド45が設けてあり、前記エアパッド45と前記摺動案内部7の上面との間にエア膜が形成され」、「前記摺動案内部材13における下部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド47が設けてあり、前記エアパッド47と前記摺動案内部7の下面との間にエア膜が形成され」るから、引用発明の右ビームに取付けてある「前記摺動案内部材13」は、本件補正発明の「第1の支柱部材」が有する「ガイド部の両側面であるガイド部側面と、前記ガイド部の上下面であるガイド部上下面とを挟み込む上下両側面支持部」に相当する。

(h)引用発明においては、「前記摺動案内部材11における上部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド41が設けてあり、前記エアパッド41と前記摺動案内部5の上面との間にエア膜が形成され」ているから、引用発明の「摺動案内部材11」が取付けてある左ビームは、「摺動案内部5」の上面に対して「エアパッド41」で支持されているといえ、この点は本件補正発明において「前記第二の支柱部材は、前記定盤の上面に対してエアベアリングで支持され」る点と、「前記第二の支柱部材は、エアベアリングで支持され」る点で共通する。

上記の対比により、本件補正発明と引用発明とは、

「測定対象物をその上位に配置する定盤と、前記定盤を跨ぐように2つの支柱で支持された門型のYキャリッジと、前記Yキャリッジから前記定盤側へ延びる測定プローブと、を備えた三次元座標測定装置において、
前記2つの支柱の一方の側にあり前記Yキャリッジを前記定盤に対してY軸方向に沿って移動させる駆動手段が配置される第一の支柱部材と、前記第一の支柱部材に追従移動する第二の支柱部材と、を有し、
前記定盤の前記第一の支柱部材側には、前記Y軸方向に平行なガイド部が形成され、
前記第一の支柱部材は、前記ガイド部の両側面であるガイド部側面と、前記ガイド部の上下面であるガイド部上下面とを挟み込む上下両側面支持部を有し、
前記第二の支柱部材は、エアベアリングで支持される、
三次元座標測定装置。」

である点で一致し(以下、「一致点」という。)、以下の相違点1-5で相違する。

[相違点1]
「測定対象物」が、本件補正発明では、「定盤」の「上面」に「載置」されるのに対して、引用発明では、「ベース3」に「載置される」「ワーク支持テーブル39」に「載置」される点。

[相違点2]
「駆動機構」について、本件補正発明では、「第1の支柱部材」が「備える」のに対して、引用発明では、「X軸モータ15」は、「摺動案内部材13の後方部」に「設けて」あり、引用発明の「メインキャレッジ9」を支持する「2つの支柱」のうち、「摺動案内部材13」が取付けてあるもの(支柱1)が「備える」とはいえない点。

[相違点3]
「前記定盤の前記第1の支柱部材側」の「前記Y軸方向に平行なガイド部」について、本件補正発明では、「駆動手段が当接するガイド部」とされているのに対して、引用発明では、駆動手段である「X軸モータ15」により回転される「ピニオン69」は、「摺動案内部7」上に設けられた「ラック17」に噛合しており、「摺動案内部7」に当接する構成ではない点。

[相違点4]
本件補正発明では、「前記第二の支柱部材は、前記定盤の上面に対してエアベアリングで支持され」るのに対して、引用発明では、「前記摺動案内部材11における上部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド41が設けてあり、前記エアパッド41と前記摺動案内部5の上面との間にエア膜が形成され、前記摺動案内部材11における下部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド43が設けてあり、前記エアパッド43と前記摺動案内部5の下面との間にエア膜が形成される」として、ベース3の上面ではなく、摺動案内部5の上面に対してエアパッドによる支持がされており、また摺動案内部5の下面に対してもエアパッドによる支持が行われている点。

[相違点5]
本件補正発明では、「前記ガイド部は、前記定盤の上面に溝入れして区分けされた前記定盤の前記第一の支柱部材側の一部分である」のに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(4)判断
上記相違点1-5について検討する。
(4-1)相違点1について
三次元座標測定装置において、測定対象物が定盤の上面に載置されることは、例えば、原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭64-35310号公報(以下、「引用文献3」という。)や、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7?139936号公報(以下、「引用文献6」という。)に記載されているように周知の技術である(以下、「周知技術1」という。)。
(引用文献3については、第2頁右上欄第3-4行の「被測定物を載置するための上面を有するテーブル」、第5頁右下欄第2-3行の「テーブル60は、石材から形成された石定盤であり」との記載を参照。
引用文献6については、段落【0014】の「基台14上に載置されたワーク」との記載を参照。)
したがって、上記周知技術1を引用発明に適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得たものである。

(4-2)相違点2について
三次元座標測定装置において、Yキャリッジを支持する支柱部材の一方が、駆動機構を備えることは、例えば、上記引用文献6や、原査定において周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2014-130091号公報(以下、「引用文献4」という。)に記載されているように周知の技術である(以下、「周知技術2」という。)。
(引用文献6については、段落【0016】の「脚部26Aの下端部内には駆動機構30の駆動モータ32が配設されている。」との記載を参照。
引用文献4については、段落【0013】の「Yキャリッジ3における一方の脚部3aには、Yキャリッジ3をY方向に沿って駆動するY駆動部8が備えられている。」との記載を参照。)
したがって、上記周知技術2を引用発明に適用して、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得たものである。

(4-3)相違点3について
三次元座標測定装置の駆動手段として、ガイド部に当接する駆動手段の構成は、上記引用文献6に記載されている(以下、「公知技術」という。)。
(引用文献6の段落【0016】の「駆動機構30は駆動モータを含む駆動ユニット32、駆動ローラ34及びガイドレール36から構成されていて、・・・駆動ローラ34の外周はガイドレール36の側面に当接していて」や、段落【0028】の「Yキャリッジが門型に構成されている座標測定機であれば、本実施例に示したYキャリッジのY軸方向の水平方向のガイドは、基台の両側を用いる方式や、基台の上又は下に基台と別にガイドを設ける方式もしくは基台の上又は下に角溝を設ける方式等、いずれの方式でもよく」との記載及び【図1】の記載を参照。)
したがって、上記公知技術を引用発明に適用して、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得たものである。

(4-4)相違点4について
三次元座標測定装置において、Yキャリッジの一方の支柱部材を定盤の上面に対してエアベアリングで支持した構成は、例えば、原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-312556号公報(以下、「引用文献2」という。)や、上記引用文献6に記載されているように周知の技術である(以下、「周知技術3」という。)。
(引用文献2については、段落【0003】の「Yキャリッジ10の他方の脚部10Bにはエアパッド20が設けられていて、他方の脚部10Bはエアパッド20を介して定盤14の表面に沿って移動する。」との記載及び【図5】ないし【図8】の記載を参照。
引用文献6については、段落【0012】の「3次元座標測定機10はYキャリッジ12を有していて、Yキャリッジ12は一対の脚部12A、12Bと、・・・とで門型構造に構成されている。脚部12A、12Bは基台14の両側に配置されていて、案内面14A、14B、14C、14Dに沿って、対向するエアパッド31A、31B、31C、31DによりY軸方向に移動自在に支持されている」との記載及び【図3】の記載を参照。 )
したがって、上記周知技術3を引用発明の摺動案内部材に換えて、上記相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得たものである。

(4-5)相違点5について
三次元座標測定装置において、ガイド部が定盤の上面に溝入れして区分けされた、定盤の一部分である構成は、例えば、上記引用文献2に記載されているように周知の技術である(以下、「周知技術4」という。)。
(引用文献2の段落【0003】の「定盤14の溝に沿ってYキャリッジ10を移動する」との記載及び【図7】の記載を参照。)
したがって、上記周知技術4を引用発明の摺動案内部材に換えて、上記相違点5に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得たものである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明と上記公知技術及び周知技術1-4の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

よって、本件補正発明は、引用発明と上記公知技術及び上記周知技術1-4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、理由3は、
本願発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1-5に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献1.特開昭62-235514号公報
引用文献2.特開平5-312556号公報
引用文献3.特開昭64-35310号公報
引用文献4.特開2014-130091号公報
引用文献5.特開2014-56352号公報

3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1は、上記「第2 本件補正についての補正の却下の決定」の「3 独立特許要件についての判断」の「(2)刊行物に記載された事項、引用発明」において引用した引用文献1であり、上記引用文献1には、上記「(2)刊行物に記載された事項、引用発明」において認定したとおりの「引用発明」が記載されていると認められる。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「前記定盤の前記第1の支柱部材側」の「前記Y軸方向に平行なガイド部」について、「前記駆動手段が当接する」との特定を省き、また「ガイド部」について、「前記ガイド部は、前記定盤の上面に溝入れして区分けされた前記定盤の前記第一の支柱部材側の一部分である」との特定を省いたものであるから、本願発明と引用発明とは、上記「第2 本件補正についての補正の却下の決定」の[理由]「3 独立特許要件についての判断」の「(3)対比」で挙げた相違点1,2,4で相違し、その他の点で一致するものである。
そうすると、上記「第2 本件補正についての補正の却下の決定」の[理由]「3 独立特許要件についての判断」の「(4)判断」において示したとおり、引用発明に上記周知技術1,2,3を適用して上記相違点1,2,4に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるから、本願発明も、引用発明及び上記周知技術1,2,4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-26 
結審通知日 2019-11-27 
審決日 2019-12-10 
出願番号 特願2018-230748(P2018-230748)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
P 1 8・ 537- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 梶田 真也
中塚 直樹
発明の名称 三次元座標測定装置  
代理人 松浦 憲三  

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