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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1359181 |
審判番号 | 不服2018-4701 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-06 |
確定日 | 2020-01-22 |
事件の表示 | 特願2014-553831「LEDモジュール,LEDユニット,及びLEDモジュールを備える照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 1日国際公開,WO2013/111037,平成27年 2月16日国内公表,特表2015-505172〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2013年(平成25年)1月17日(パリ条約による優先権主張 国際事務局受理 2012年1月25日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年11月24日付け:拒絶理由通知 平成29年 6月 5日 :意見書,手続補正書の提出 同年11月29日付け:拒絶査定(同年12月11日謄本送達) 平成30年 4月 6日 :審判請求書,手続補正書の提出 同年11月30日付け:拒絶理由通知 令和 元年 6月10日 :意見書,手続補正書の提出 第2 本願発明 令和元年6月10日の手続補正による補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。 「【請求項1】 熱界面材料とヒートシンクと一緒に使用されるためのLEDモジュールであって, 少なくとも1つのLEDと, 該少なくとも1つのLEDが上に実装され,前記熱界面材料を介して前記ヒートシンクへ熱を発散するための熱伝導性平面基板と,を有しており, 該熱伝導性平面基板は,ヒートスプレッダを有し, 該ヒートスプレッダには,前記熱伝導性平面基板を前記ヒートシンクへ取り付ける締結具を受け止めるのに適用される複数の締結具用アイがあり, 前記ヒートスプレッダは,前記複数の締結具用アイの周辺に一体的に形成された変形可能領域を備え, 前記変形可能領域は,前記熱伝導性平面基板を前記ヒートシンクへ取り付けることで,変形した状態とされる, LEDモジュールと, 前記ヒートシンクと, 前記熱界面材料と, を有するLEDユニットであって, 前記締結具を,前記締結具用アイを通って前記ヒートシンクの締結具用穴内に配置することで,前記LEDモジュールが前記ヒートシンクに取り付けられ, 前記熱界面材料は,熱パッドであり,該熱パッドは,前記LEDモジュールの前記ヒートスプレッダと,前記ヒートシンクとの間に,配置されていて,前記複数の締結具を締め付けた場合に前記ヒートスプレッダは平坦のままであり,前記熱パッドの変形は前記締結具用アイの周辺に留まる, LEDユニット。」 第3 拒絶の理由 平成30年11月30日付けの当審が通知した拒絶理由は,次のとおりのものである。 この出願の請求項1?12に係る発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たもの(以下「理由A」という。)であるか,引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たもの(以下「理由B」という。)であって,この出願の優先日(パリ条約による優先権主張国際機関受理2012年1月25日,米国)前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,この出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献 1.特開2010-147000号公報 2.特開昭53-52070号公報 3.特開2011-150815号公報 4.特開2010-177404号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献の記載 (1)引用文献1の記載 引用文献1には,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。以下同じ。)。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は,LEDチップ(発光ダイオードチップ)などの発光素子を用いた発光装置を光源として備えた照明装置に関するものである。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、実装基板2と器具本体6とを固定するにあたり、固定螺子61の締めが不十分だと熱伝導シート7の熱抵抗が大きくなり、使用により発光素子1の温度が上昇して、発光素子1の寿命が低下する場合がある。また、固定螺子61を締めすぎた場合、実装基板2と器具本体6との間に挟まれた熱伝導シート7は、熱伝導シート7の弾性により熱伝導シート7の厚み方向において均一に変形しきれなくなる。そのため、固定螺子61近傍の熱伝導シート7の厚さは薄く、固定螺子61から離れた熱伝導シート7の厚みは厚くなる傾向にある。通常、器具本体6は実装基板2よりも強度が高いため、発光装置10の実装基板2は、器具本体6に対して上方に盛り上がった弓状に変形する。 【0007】 このような状況で、発光装置10の点灯および消灯を繰り返すと、点灯および消灯に起因する昇温、降温の温度サイクルにより、実装基板2と器具本体6との熱膨張率の差により実装基板2の弓状に変形した部位に高い応力がかかることになる。 【0008】 そのため、照明装置12の器具本体6に発光装置10を固定螺子61で螺子止めした際には、外見上に不具合が見当たらなくとも、温度サイクルにより発光装置10の実装基板2が破損する場合もある。 【0009】 また,実装基板2の端部において固定螺子61で螺子止めした場合,固定螺子61を締めすぎると実装基板2の変形により,固定螺子61取り付け部間に位置する実装基板2の中央と,器具本体6とを密着させる熱伝導シート7の接続が不十分になり,発光素子1からの熱を効率よく放熱することができない場合がある。この場合,使用により発光素子1の温度が上昇して,発光素子1の寿命が低下するという問題がある。 【0010】 さらに,照明装置12に用いられる発光装置10は,パワートランジスタなどと異なり,外部に光を効率よく放出する必要があり,螺子止めに起因する実装基板2の変形等で生じた発光素子1の光軸ずれを抑制する必要もある。 【0011】 本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり,その目的は,発光装置からの熱を器具本体へ効率よく除熱可能であると共に,発光装置を器具本体へ簡便に取り付け可能な照明装置を提供することにある。」 ウ「【0020】 本実施形態の照明装置は,図1の断面図に示すように,照明装置12の器具本体6が有底円筒状に形成されており,発光装置10から放出される光の配光を制御する反射鏡8が器具本体6内に収納されている。反射鏡8は,椀状に形成され,底部に発光装置10が挿入される開口部8aを有している。なお,器具本体6は,金属材料(例えば,Alなど)により形成されている。 【0021】 発光装置10は,LEDチップからなる発光素子1が実装基板2の一表面側に実装されており,発光装置10を照明装置12の器具本体6の内底面に固定具となる複数本の固定螺子61,61により,実装基板2の他表面と器具本体6とを発光素子1からの熱を伝導する熱伝導シート7を介して圧接して固定されている。 【0022】 発光装置10が固定される器具本体6には,例えばシリカなどの熱伝導性フィラーが含有されたシリコーン樹脂からなる熱伝導シート7を収納し発光装置10を固定する固定螺子61,61間に配される凹部6aが設けられている。熱伝導シート7は,電気絶縁性を有すると共に熱伝導率が高く,その弾性により接着面での密着性が高い。そのため,熱伝導シート7と実装基板2および器具本体6の内底面との間に間隙が生じるのを防止することができ,密着不足による熱抵抗の増大を防止することができる。 【0023】 ・・・(中略)・・・ 【0028】 凹部6aは,平面視において前記実装基板に実装された前記発光素子を前記器具本体側へ向けて投影した領域を含み,その平面視形状において熱伝導シート7よりも大きく形成されている。また,凹部6cの深さ寸法が熱伝導シート7の厚み寸法よりも小さく熱伝導シート7が塑性変形する寸法よりも大きく形成されている。そのため,凹部6a内に平面視形状が凹部6aと相似形の熱伝導シート7を収納すると,熱伝導シート7はその厚み方向において器具本体6の内底面から一部が突出する。この熱伝導シート7の突出した一部は,発光装置10を固定螺子61で螺子止することにより,発光装置10における実装基板2の他表面と圧接されることなる。 【0029】 ・・・(略)・・・凹部6aの深さ寸法は,収納される熱伝導シート7の材料,その膜厚等により種々調整できるが,いずれにしろ,実装基板2と器具本体6との間で熱伝導シート7が破損なく圧接できる大きさとしてある。」 エ 図1及び2から,実装基板2には,複数本の固定螺子61がそれぞれ貫通する複数の孔が形成されていることが把握できる。 (2)引用発明1 上記アないしエの記載から,引用文献1には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「引用発明1」という。)。 「発光装置10と器具本体6と熱伝導シート7とを備え,発光装置10からの熱を器具本体6へ効率よく除熱可能である照明装置12であって, 発光装置10には,LEDチップからなる発光素子1が実装基板2の一表面側に実装されており, 実装基板2には,複数本の固定螺子61がそれぞれ貫通する複数の孔が形成されており, 発光装置10の実装基板2の他表面と器具本体6とが,固定具となる複数本の固定螺子61,61により,照明装置12の器具本体6の内底面に,発光装置10の実装基板2の他表面が器具本体6とを発光素子1からの熱を伝導する熱伝導シート7を介して圧接して固定されており, 熱伝導シート7は,電気絶縁性を有すると共に熱伝導率が高く,その弾性により接着面での密着性が高く,熱伝導シート7と実装基板2および器具本体6の内底面との間に間隙が生じるのを防止するものであって, 器具本体6には,熱伝導シート7を収納する凹部6aが設けられ,凹部6aの深さ寸法は,実装基板2と器具本体6との間で熱伝導シート7が破損なく圧接できる大きさとしてある, 照明装置12。」 (3)引用文献2の記載 引用文献2には,図面と共に,以下の事項が記載されている。 ア「本発明は半導体装置に関するもので,主としてパワートランジスタの外装構造を対象とする。」(1ページ左欄8?9行を参照。) イ「大出力用パワートランジスタは,ステムのヒートシンク部に半導体素子を固定し,ステム上面で金属キャップにより封止した構造を有している。 かかるトランジスタを放熱板(ヒートシンク)等に取付けるときは,直接又はマイカー板等のスペーサを介してトランジスタを放熱板にネジ止めしていた。 ところで,このネジ止めする時,片締めすることにより又は第7図(a),(b)に示すようにステム(フランジ)に反りあるいはスペーサの材質,寸法等の不均一性がある場合にステム全体にかかる曲げ応力によりステム中心部のヒートシンク部にも曲げ応力が加わりそれによってキャップ内の半導体素子に破損が生じた。 本発明は上記問題を解決するためになされたもので,その目的は半導体装置の実装のネジ止めのときにステムにかかる曲げ応力による半導体素子の破損を防止することにある。」(1ページ左欄10行?同ページ右欄7行を参照。) ウ「第1図は本発明の一実施例のパワートランジスタである。 同図において,1は菱形のFeステムで,両端にネジ穴2が設けられ,中心部にCuヒートシンク3が埋め込まれている。Cuヒートシンク3上面には,半田4を介装して半導体素子5が固定され,一方,ステム1には絶縁的にリード線6,6が植設され,半導体素子5の各電極と対応するリード線6,6の間がコネクタ線7,7で接続されている。これら半導体素子5及びリード線6,6上部コネクタ線7,7はステム1上面に設けられた金属キャップ8によって封止されている。そして,ステム1のネジ穴2の付近の上面には,曲げ応力に対して変形し易いように,第1図(a)に示すようにステムの横の中心線に対して直角な深さ0.5mm?3mmの溝9が平行に多数形成されている。 この溝9は第2図(a)に示すように,それぞれネジ穴2を中心とする同心円に形成してもよく,また,第2図(b)に示すように溝9をステム中心を中心とする同心円に形成してもよい。 また,溝9を第3図(a)に示すように,ステム1の下面に形成してもよく,第3図(b)に示すように上下両面に形成するようにしてもよい。 第4図はかかるキャップ封止トランジスタを放熱板にネジ止めにより固定した状態を示すものである。 ネジ穴2付近に局部的に曲げ応力に対して変形し易いように溝9を形成しておけば,トランジスタを放熱板10にネジ11によりネジ止めするときに,ステム1に反りがあっても,ネジ穴2の付近が局部的に曲がって歪を吸収,消滅することから,ステム中心部に固定された半導体素子5に何んらの影響を与えることなく,取付けることができる。また,放熱板10とトランジスタとの間に材質又は寸法の不均一なマイカを介装してネジ止めした場合も,ネジ穴2の付近が局部的に曲がって,同様に半導体素子5に何んらの影響なく取付けられる。 したがって,ネジ止めするときの曲げ応力に起因する半導体素子の破損を十分に防止できるものである。 なお,本発明によれば,トランジスタのステムと,放熱板とをよく密着させることができるので,放熱性も極めて良好となる。」(1ページ右欄12行?2ページ右上欄15行を参照。) エ「第5図,第6図は本発明の他の実施例のステム構造を示したものである。 第5図はステム1のネジ穴2付近に深い幅の広い溝12を形成したもので,第6図はネジ穴2付近に図のような切込部13を形成したもので,いずれもネジ穴付近を局部的に曲げ応力に対して変形し易いステムになっている。」 このようなステムを用いたトランジスタであれば,前記実施例同様にネジ止めするときの半導体素子の破損を完全に防止できる。 本発明は上記実施例に限定されるものでなく,ステム材料は銅,アルミニウムその他の金属板が用いられ,キャップ封止トランジスタに限らず,樹脂封止トランジスタ,その他の半導体装置に適用できることは言うまでもない。」(2ページ右上欄15行?2ページ左下欄10行を参照。) (4)引用発明2 上記アないしエの記載を踏まえると,引用文献2には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「引用発明2」という。)。 「両端にネジ穴2が設けられ,中心部にCuヒートシンク3が埋め込まれているステム1と, Cuヒートシンク3上面に,半田4を介装して固定された半導体素子5が金属キャップ8により封止されたキャップ封止トランジスタと, キャップ封止トランジスタがネジ止めにより固定される放熱板10と, を有する半導体装置であって, ステム1は,ネジ穴2付近に深い幅の広い溝12が形成され,ネジ穴2付近が局部的な曲げ応力に対して変形し易くなっており, 放熱板10とトランジスタとの間に,材質又は寸法の不均一なマイカが介装された場合に,半ネジ穴2の付近が局部的に曲がって歪を吸収,消滅するようにした半導体装置。」 第5 対比・判断 1 引用発明1との対比・判断 まず,理由Aについて検討する。 (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア (ア)引用発明1は「熱伝導シート7」は本願発明1の「熱界面材料」に相当する。 (イ)引用発明1の「LEDチップからなる発光素子1」は,本願発明1の「LED」に相当する。 (ウ)引用発明1は,発光装置10からの熱を実装基板2から器具本体6へ効率よく除熱可能とするものであるから,器具本体6は除熱を行う部材であることは明らかである。したがって,引用発明1の「実装基板2」及び「器具本体6」は,本願発明1の「熱伝導性平面基板」及び「ヒートシンク」に相当する。 (エ)引用発明1の「発光装置10には,LEDチップからなる発光素子1が実装基板2の一表面側に実装されて」いるから,引用発明1の「発光装置10」は本願発明1の「LEDモジュール」に相当する。 (オ)さらに,引用発明1の実装基板2に形成された,「複数本の固定螺子61がそれぞれ貫通する複数の孔」は,本願発明1の「締結具用アイ」に相当する。 (カ)引用発明1の「熱伝導シート7」は,電気絶縁性を有すると共に熱伝導率が高く,その弾性により接着面での密着性が高く,熱伝導シート7と実装基板2および器具本体6の内底面との間に間隙が生じるのを防止するものであるので,本願発明1の「熱パッド」に相当する。 (キ)引用発明1の「発光装置10の実装基板2の他表面と器具本体6とが,固定具となる複数本の固定螺子61,61により,照明装置12の器具本体6の内底面に,発光装置10の実装基板2の他表面と器具本体6とを発光素子1からの熱を伝導する熱伝導シート7を介して圧接して固定されて」いることは,上記(オ)も考慮すると,本願発明1の「前記締結具を,前記締結具用アイを通って前記ヒートシンクの締結具用穴内に配置することで,前記LEDモジュールが前記ヒートシンクに取り付けられ」ていることに相当する。また,上記(カ)を考慮すると,引用発明1の「発光装置10の実装基板2の他表面と器具本体6とが,固定具となる複数本の固定螺子61,61により,照明装置12の器具本体6の内底面に,発光装置10の実装基板2の他表面と器具本体6とを発光素子1からの熱を伝導する熱伝導シート7を介して圧接して固定されて」いることは本願発明1の「該熱パッドは,前記LEDモジュールの前記ヒートスプレッダと,前記ヒートシンクとの間に,配置されてい」ることに相当する。 (ク)引用発明1の「照明装置12」は,本願発明1の「LEDユニット」に相当する。 イ したがって,本願発明1と引用発明1との間には,以下の一致点及び相違点がある。 ・一致点 「熱界面材料とヒートシンクと一緒に使用されるためのLEDモジュールであって, 少なくとも1つのLEDと, 該少なくとも1つのLEDが上に実装され,前記熱界面材料を介して前記ヒートシンクへ熱を発散するための熱伝導性平面基板と,を有しており, 該熱伝導性平面基板は,ヒートスプレッダを有し, 該ヒートスプレッダには,前記熱伝導性平面基板を前記ヒートシンクへ取り付ける締結具を受け止めるのに適用される複数の締結具用アイがあり, LEDモジュールと, 前記ヒートシンクと, 前記熱界面材料と, を有するLEDユニットであって, 前記締結具を,前記締結具用アイを通って前記ヒートシンクの締結具用穴内に配置することで,前記LEDモジュールが前記ヒートシンクに取り付けられ, 前記熱界面材料は,熱パッドであり,該熱パッドは,前記LEDモジュールの前記ヒートスプレッダと,前記ヒートシンクとの間に,配置されていて,前記複数の締結具を締め付けた場合に前記ヒートスプレッダは平坦のままである, LEDユニット。」 ・相違点1 本願発明1では,「前記熱伝導性平面基板は,前記複数の締結具用アイの周辺に一体的に形成された変形可能領域を備え,前記変形可能領域は,前記熱伝導性平面基板を前記ヒートシンクへ取り付けることで,変形した状態とされ」,「前記複数の締結具を締め付けた場合に」「前記熱パッドの変形は前記締結具用アイの周辺に留まる」のに対し,引用発明1では,そのようなものでない点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 ア 引用発明1の課題は,上記第4の1(1)イのとおり,「実装基板2の端部において固定螺子61で螺子止めした場合,固定螺子61を締めすぎると実装基板2の変形により,固定螺子61取り付け部間に位置する実装基板2の中央と,器具本体6とを密着させる熱伝導シート7の接続が不十分になり,発光素子1からの熱を効率よく放熱することができない」こと,及び「実装基板2」が「器具本体6に対して上方に盛り上がった弓状に変形する」ことに起因する実装基板の破損などを防止することを課題とするものであって,当該課題を解決するために,熱伝導シート7を収納する凹部6aを設け,凹部6aの深さ寸法が,実装基板2と器具本体6との間で熱伝導シート7が破損なく圧接できる大きさとしたものである。 イ 他方,引用発明2は,上記第4の2(2)イのとおり,トランジスタを放熱板等に,マイカー板等のスペーサーを介してネジ止めする時,ステム(実装基板)に反りあるいはスペーサの材質,寸法等の不均一性がある場合に,ステム全体にかかる曲げ応力により半導体素子に破損が生じることを防止することを課題とし,当該課題を解決するために,ステム1のネジ穴2付近に深い幅の広い溝12を形成し,ネジ穴2付近を局部的な曲げ応力に対して変形し易くしたものである。 ここで,「マイカ板」が,絶縁の機能に加え熱伝導の機能を有することは技術常識であるから,引用発明1及び引用発明2は,実装基板と放熱板との間に,熱伝導のための部材を備え,実装基板と放熱板とを締結した場合に,実装基板に生じる曲げ応力が中央部に伝達しないようすることを課題とするものである点で共通する。 ウ そうすると,引用発明1と引用発明2とは課題が共通するものであるから,引用発明1において,当該課題解決のための「熱伝導シート7を収納する凹部6aが設け,凹部6aの深さ寸法は,実装基板2と器具本体6との間で熱伝導シート7が破損なく圧接できる大きさとしてある」との事項に代えて,引用発明2における当該課題を解決する手段である「ステム1のネジ穴2付近に深い幅の広い溝12を形成し,ネジ穴2付近を局部的な曲げ応力に対して変形し易く」するとの事項を用い,本願発明1の発明特定事項となすことは,当業者であれば容易になし得たことである。 エ そして,上記ウのようにすることにより,相違点1に係る「前記熱伝導性平面基板は,前記複数の締結具用アイの周辺に一体的に形成された変形可能領域を備え,前記変形可能領域は,前記熱伝導性平面基板を前記ヒートシンクへ取り付けることで,変形した状態とされ」,また「前記複数の締結具を締め付けた場合に」「前記熱パッドの変形は前記締結具用アイの周辺に留まる」ことは明らかである。 オ したがって,本願発明1は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易になし得たものである。 また,本願発明1の作用効果についても,引用発明1及び引用発明2から,当業者が予測し得るものである。 (3)請求人の主張について ア 請求人は,令和元年6月10日の意見書において,概ね以下の(ア)?(ウ)を主張する。 (ア)引用文献1?4には,「「ヒートスプレッダは,複数の締結具用アイの周辺に一体的に形成された変形可能領域を備え」,「熱界面材料は,熱パッドであり,熱パッドは,LEDモジュールのヒートスプレッダと,ヒートシンクとの間に,配置されていて,複数の締結具を締め付けた場合にヒートスプレッダは平坦のままであり,熱パッドの変形は締結具用アイの周辺に留まる」という本願発明1の技術的特徴が開示されていない。 (イ)引用文献2の上記構成におけるマイカは,剛性があるものであり,本願発明の熱パッドのように柔軟性がなく,そもそも変形するという概念がない。 (ウ)仮に,引用文献1に,引用文献2?4に記載された技術を適用したとしても,本願発明でいう,「ヒートスプレッダは,複数の締結具用アイの周辺に一体的に形成された変形可能領域を備え」,「熱界面材料は,熱パッドであり,熱パッドは,LEDモジュールのヒートスプレッダと,ヒートシンクとの間に,配置されていて,複数の締結具を締め付けた場合にヒートスプレッダは平坦のままであり,熱パッドの変形は締結具用アイの周辺に留まる」という点には到達することはできない。 イ しかし,前記(2)ウのとおり,引用発明1において,引用発明1の課題解決手段を,引用発明2の課題解決手段に置換したものにあっては,「実装基板2」が「器具本体6に対して上方に盛り上がった弓状に変形する」ことが防止されることに伴い,弾性を有する熱伝導シート7の変形はネジ穴付近(すなわち「締結具用アイの周辺」)にとどまることになるものといえるから,上記請求人の主張は採用できない。 (4)小括 よって,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明1は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,理由Bについて検討するまでもなく,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-08-21 |
結審通知日 | 2019-08-30 |
審決日 | 2019-09-11 |
出願番号 | 特願2014-553831(P2014-553831) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 祥恵、百瀬 正之 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
井上 博之 近藤 幸浩 |
発明の名称 | LEDモジュール、LEDユニット、及びLEDモジュールを備える照明器具 |
代理人 | 特許業務法人M&Sパートナーズ |