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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H04R
審判 全部無効 2項進歩性  H04R
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04R
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H04R
審判 全部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正  H04R
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  H04R
管理番号 1359206
審判番号 無効2017-800114  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-08-18 
確定日 2020-01-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第4994497号発明「改良された耳ユニットと呼ばれる装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4994497号の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

特許第4994497号に係る出願は、2008年5月30日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2007年6月1日 ノルウェー(NO))を国際出願日とする特許出願であって、平成24年5月18日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
平成29年 8月18日 本件無効審判の請求
平成30年 1月26日 審判事件答弁書の提出
平成30年 3月22日 審理事項の通知
平成30年 5月29日 口頭審理陳述要領書(請求人)の提出
平成30年 5月29日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
平成30年 6月12日 口頭審理
平成30年 7月 3日 上申書(被請求人)の提出
平成30年 7月 9日 手続補正書(被請求人)の提出
平成30年 7月24日 上申書(請求人)の提出
平成30年 9月26日 審決の予告
平成31年 1月 4日 訂正請求
平成31年 3月 6日 手続補正書(方式)(被請求人)の提出
平成31年 4月 8日 上申書(請求人)の提出
令和 元年 5月17日 弁駁書(請求人)の提出
令和 元年 7月17日 審判事件答弁書の提出

第2 訂正請求について

1.訂正の内容

本件審判の手続において被請求人がした平成31年1月4日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第4994497号の明細書、特許請求の範囲、図面を訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲、図面のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所)。

なお、これに対して、請求人は令和元年5月17日付け弁駁書において、本件訂正請求による訂正は訂正要件に違反し、認められない旨主張し、被請求人はさらに同年7月17日付け審判事件答弁書において、本件訂正請求による訂正はいずれも訂正要件を満たす旨主張している。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記略C字状のカーブは、前記対耳輪の内側部分に沿い、前記対耳輪に対応しており、かつ、対珠(3)の下に部分的に位置し、」を追加する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、6も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「当該湾曲部(21)は、・・・接触面を提供する」と記載されているのを、「当該湾曲部(21)は、当該湾曲部(21)が・・・接触面を提供する」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、6も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する」と記載されているのを、「耳甲介(22)の底部に従って接触面を提供する」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、6も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに・・・密着することを可能にする」と記載されているのを、「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記湾曲部が・・・密着することを可能にする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、6も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする」と記載されているのを、「前記耳甲介(22)の底部に対して密着することを可能にする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、6も同様に訂正する)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「前記耳ユニット(10)が、イヤホン及びマイクロホンを含むグループの中からの、少なくとも1つのユニットを備えて、設けられていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1つに記載の装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改める。

(7)訂正事項7
独立形式に改めた請求項4に「前記略C字状のカーブは、前記対耳輪の内側部分に沿い、前記対耳輪に対応しており、かつ、対珠(3)の下に部分的に位置し、」を追加する。

(8)訂正事項8
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「当該湾曲部(21)は、・・・接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項4において「当該湾曲部(21)は、当該湾曲部(21)が・・・接触面を提供する」に訂正する。

(9)訂正事項9
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項4において「耳甲介(22)の底部に従って接触面を提供する」に訂正する。

(10)訂正事項10
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに・・・密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項4において「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記湾曲部が・・・密着することを可能にし、」に訂正する。

(11)訂正事項11
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項4において「前記耳甲介(22)の底部に対して密着することを可能にし、」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項4に「前記耳ユニット(10)が、イヤホン及びマイクロホンを含むグループの中からの、少なくとも1つのユニットを備えて、設けられていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1つに記載の装置。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、新たに請求項7とする。

(13)訂正事項13
独立形式に改めた請求項7に「前記略C字状のカーブは、前記対耳輪の内側部分に沿い、前記対耳輪に対応しており、かつ、対珠(3)の下に部分的に位置し、」を追加する。

(14)訂正事項14
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「当該湾曲部(21)は、・・・接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項7において「当該湾曲部(21)は、当該湾曲部(21)が・・・接触面を提供する」に訂正する。

(15)訂正事項15
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項7において「耳甲介(22)の底部に従って接触面を提供する」に訂正する。

(16)訂正事項16
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに・・・密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項7において「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記湾曲部が・・・密着することを可能にし、」に訂正する。

(17)訂正事項17
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項1に「前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項7において「前記耳甲介(22)の底部に対して密着することを可能にし、」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項3に「前記耳ユニット(10)が、下方に延びている部分(7)を備えており、前記部分(7)と前記耳ユニット(10)との間の移行部分が、珠間切痕(14)と並ぶよう形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。」とあり、特許請求の範囲の請求項4に「前記耳ユニット(10)が、イヤホン及びマイクロホンを含むグループの中からの、少なくとも1つのユニットを備えて、設けられていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1つに記載の装置。」とあるうち、請求項4において、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、新たに請求項8とする。

(19)訂正事項19
独立形式に改めた請求項8に「前記略C字状のカーブは、前記対耳輪の内側部分に沿い、前記対耳輪に対応しており、かつ、対珠(3)の下に部分的に位置し、」を追加する。

(20)訂正事項20
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「当該湾曲部(21)は、・・・接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項8において「当該湾曲部(21)は、当該湾曲部(21)が・・・接触面を提供する」に訂正する。

(21)訂正事項21
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項8において「耳甲介(22)の底部に従って接触面を提供する」に訂正する。

(22)訂正事項22
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに・・・密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項8において「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記湾曲部が・・・密着することを可能にし、」に訂正する。

(23)訂正事項23
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項8において「前記耳甲介(22)の底部に対して密着することを可能にし、」に訂正する。

(24)訂正事項24
特許請求の範囲の請求項3に「前記耳ユニット(10)が、下方に延びている部分(7)を備えており、前記部分(7)と前記耳ユニット(10)との間の移行部分が、珠間切痕(14)と並ぶよう形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。」とあり、特許請求の範囲の請求項4に「前記耳ユニット(10)が、イヤホン及びマイクロホンを含むグループの中からの、少なくとも1つのユニットを備えて、設けられていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1つに記載の装置。」とあるうち、請求項4において、請求項2を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、新たに請求項9とする。

(25)訂正事項25
独立形式に改めた請求項9に「前記略C字状のカーブは、前記対耳輪の内側部分に沿い、前記対耳輪に対応しており、かつ、対珠(3)の下に部分的に位置し、」を追加する。

(26)訂正事項26
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「当該湾曲部(21)は、・・・接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項9において「当該湾曲部(21)は、当該湾曲部(21)が・・・接触面を提供する」に訂正する。

(27)訂正事項27
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項9において「耳甲介(22)の底部に従って接触面を提供する」に訂正する。

(28)訂正事項28
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに・・・密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項9において「前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記湾曲部が・・・密着することを可能にし、」に訂正する。

(29)訂正事項29
独立形式に改める前の特許請求の範囲の請求項4が間接的に引用する請求項1に「前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする」と記載されているのを、独立形式に改めた請求項9において「前記耳甲介(22)の底部に対して密着することを可能にし、」に訂正する。

(30)訂正事項30
明細書の段落【0019】に「耳ユニット10は、耳ユニット10が耳内に配置されたときに、耳甲介22の内部表面に沿って続く、湾曲部21を備えて、形成されている。」と記載されているのを、「耳ユニット10は、耳ユニット10が耳内に配置されたときに、耳甲介22の内面に沿って続く、湾曲部21を備えて、形成されている。」に訂正する。

(31)訂正事項31
図3における符号「5」と、符号「8」とを入れ替える。

(32)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項4、7、8、9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれ、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。

2.訂正の適否についての判断

(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし6において、請求項2ないし6は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1ないし5によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし6に対応する訂正後の請求項1ないし9は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。

ただし、上記「1.(32)」のとおり、被請求人が別の訂正単位とする求めをしていることに鑑み、訂正特許請求の範囲において独立請求項として記載されている請求項1、4、7、8、9についての訂正毎にその適否を検討する。

(2)請求項1についての訂正
請求項1についての訂正は、訂正事項1ないし5を含む。
そこで、まず訂正事項2、4について検討する。
(2-1)訂正の目的について
訂正前の請求項1の「前記耳ユニット(10)は湾曲部(21)を有して、当該湾曲部(21)は、耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする・・」なる記載によれば、その文章上、耳甲介(22)の内面と接触して「接触面を提供」し、耳甲介(22)に対して「密着」するのはそれぞれ耳ユニット(10)のどの部分であるのかが必ずしも明確でなかったのを、訂正事項2は、「湾曲部(21)」が耳甲介(22)の内面と接触して「接触面を提供」することを明確にし、訂正事項4は、同じく「湾曲部(21)」が耳甲介(22)に対して「密着」することを明確にするものであるとみることができる。
したがって、訂正事項2、4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるといえる。

(2-2)新規事項の有無について
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図(以下、「本件特許明細書等」という。)には、以下の記載がある。
ア.「【0012】
・・・・・(中 略)・・・・・
【図5】耳甲介と密着した湾曲部と、珠間切痕内に安定して配置された切り込みと、耳ユニットから下方に延びている部分と、を備えた、本発明の一実施形態の図である。」

イ.「【0019】
耳ユニット10は、耳ユニット10が耳内に配置されたときに、耳甲介22の内部表面に沿って続く、湾曲部21を備えて、形成されている。この接触面は、より広い部分が耳甲介に対して置かれるため、更なる安定性をもたらし、それにより快適さが増加する。」

そして、被請求人は訂正請求書において、
訂正事項2については、段落【0019】の記載によれば、湾曲部が耳甲介の内面に沿って続くことが記載されていることから、「この接触面」とは、湾曲部と耳甲介の内面との接触面であることは明らかであり、「湾曲部」が接触面を提供する点については明細書に記載されている旨主張している。
また、訂正事項4については、段落【0012】に「【図5】耳甲介と密着した湾曲部と・・」 と記載されており、さらに、図1?5によれば、湾曲部(凹んだ部分)は、耳ユニットが耳の中に配置されたときに、耳輪脚の末端の隆起部分(耳甲介リッジ)に相当する位置に設けられていることがわかる。また、一般的に耳輪脚の末端の隆起部分は、対耳輪に向かって高さが減少しつつ、幅が広がっていることが多い。したがって、対耳輪の近傍端部においては、隆起部分の断面形状はゆるやかな幅広な凸状となっているのに対し、図3に示された湾曲部の凹状の形状は非常に幅広な窪みとして形成されており、隆起部分の形状と相補的な関係になっている。これらのことから、当業者であれば、耳ユニットが耳の中に配置されたときに、湾曲部は耳甲介の底部の隆起部分に対して密着すると認識する旨主張している。

しかしながら、多くの人の耳において、耳輪脚の末端の隆起部分は高さが減少しつつも対耳輪の近傍まで延びているとしても、耳輪脚の末端部分の形状、サイズ(高さや幅)には個人差がある(甲第18号証を参照)にもかかわらず、本件特許明細書等には、「湾曲部(21)」の形状やサイズをどのように設計したのかの具体的な記載は一切なされていない。そして、上記段落【0019】の記載からは、耳ユニットの略C字状カーブにおける、耳甲介の内面のうち特に略平坦な面と対向する面のより広い部分が耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供して密着できるように、「湾曲部(21)」は耳輪脚などの耳内の隆起部分によって、耳ユニットの耳甲介の壁への密着を阻害することのないように形成されればよく、耳内の隆起部分に接しても接しなくてもよいものと解され、当該「湾曲部(21)」が、耳甲介(22)の内面(具体的には耳輪脚などの隆起部分)と接触して「接触面を提供」し、当該耳甲介(22)に対して「密着」することまで特定するものであるとは解し得ない。
さらに、被請求人が指摘するように、本件特許明細書の段落【0012】には、図面の簡単な説明として「【図5】耳甲介と密着した湾曲部と、・・」なる記載があるが、耳輪脚などの耳内の隆起部分に密着するとまでは記載されておらず、そもそも図5をみても、耳輪脚などの耳内の隆起部分との関係でもって「湾曲部(21)」が図示されているわけでもない。図5等の図面を見るかぎり、湾曲部(21)は、略C字状カーブにおける耳甲介の内面に対向する面に、幅広な窪みとして形成されており、上述したように耳輪脚の形状、サイズ(高さや幅)には個人差があることも踏まえると、耳ユニットを装着する人によっては「湾曲部(21)」に対して耳輪脚などの耳内の隆起部分の先端や裾野部分と接触することはあるかもしれないが、湾曲部(21)の内壁と隆起部分との間にはスペースも形成される得るものと解される。したがって、本件特許明細書の段落【0012】の記載をもって、「湾曲部(21)」が耳輪脚などの耳内の隆起部分に「密着」するとまでは解し得ない。
したがって、「湾曲部(21)」が、耳甲介(22)の内面と接触して「接触面を提供」し、当該耳甲介(22)に対して「密着」する旨を特定しようとする訂正事項2、4は、本件特許明細書等に記載された事項であるとはいえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲を超えた内容を含むものであって、新たな技術的事項を導入するものである。

よって、訂正事項2、4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

(2-3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記「(2)」でも述べたように、本件特許明細書等の記載からは、耳ユニットの略C字状カーブにおける、耳甲介の内面のうち特に略平坦な面と対向する面のより広い部分が耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供して密着できるように、「湾曲部(21)」は、耳輪脚などの耳内の隆起部分によって耳ユニットの耳甲介の壁への密着が阻害されることのないように形成されればよく、耳内の隆起部分に接しても接しなくてもよいと解されるべきものである。
したがって、訂正事項2、4は、耳甲介(22)の内面と接触して「接触面を提供」し、当該耳甲介(22)に対して「密着」する部分を、「耳ユニットの略C字状カーブにおける、耳甲介の内面のうち特に略平坦な面と対向する面」から「湾曲部(21)」に変更するものであるといえ、訂正事項2、4は、実質上特許請求の範囲を変更するものである。

よって、訂正事項2、4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。

(2-4)まとめ
以上のとおり、訂正事項2、4については、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないので、訂正事項1、3、5について検討するまでもなく、当該訂正事項2、4を含む請求項1についての訂正は認められない。

(3)請求項4についての訂正
請求項4についての訂正は、訂正事項6ないし11を含む。
そして、このうちの訂正事項8、10は、実質的にそれぞれ訂正事項2、4と同じ訂正内容のものであるから、訂正事項2、4についての判断と同様の理由により、訂正事項8、10については、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

したがって、訂正事項6、7、9、11について検討するまでもなく、訂正事項8、10を含む請求項4についての訂正は認められない。

(4)請求項7についての訂正
請求項7についての訂正は、訂正事項12ないし17を含む。
そして、このうちの訂正事項14、16は、実質的にそれぞれ訂正事項2、4と同じ訂正内容のものであるから、訂正事項2、4についての判断と同様の理由により、訂正事項14、16については、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

したがって、訂正事項12、13、15、17について検討するまでもなく、訂正事項14、16を含む請求項7についての訂正は認められない。

(5)請求項8についての訂正
請求項8についての訂正は、訂正事項18ないし23を含む。
そして、このうちの訂正事項20、22は、実質的にそれぞれ訂正事項2、4と同じ訂正内容のものであるから、訂正事項2、4についての判断と同様の理由により、訂正事項20、22については、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

したがって、訂正事項18、19、21、23について検討するまでもなく、訂正事項20、22を含む請求項8についての訂正は認められない。

(6)請求項9についての訂正
請求項9についての訂正は、訂正事項24ないし29を含む。
そして、このうちの訂正事項26、28は、実質的にそれぞれ訂正事項2、4と同じ訂正内容のものであるから、訂正事項2、4についての判断と同様の理由により、訂正事項26、28については、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。

したがって、訂正事項24、25、27、29について検討するまでもなく、訂正事項26、28を含む請求項9についての訂正は認められない。

3.本件訂正請求についてのむすび

以上のとおり、独立請求項として記載された請求項1、4、7、8、9についての訂正(訂正事項1ないし29)は、いずれも特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから、当該訂正は認められない。また、明細書及び図面についての訂正(訂正事項30、31)もこれら請求項に対応する訂正であるから同様に認められない。
よって、本件訂正請求による訂正は、いずれも認めることはできない。

第3 本件特許発明

本件訂正請求による訂正は上記のとおりいずれも認められないから、本件の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
耳に安定して装着するための耳ユニットと呼ばれる装置であって、
前記耳ユニット(10)は、大きな略C字状のカーブを有しており、
前記略C字状のカーブの端部(5、8)の間の距離は、耳の耳珠(4)の下に形成された第1空洞部と、耳の対耳輪の下方の節(15)によって覆われている第2空洞部と、の間の距離と、おおよそ等しくなっており、
前記略C字状のカーブの上方部分は、第2空洞部の下方部分を覆っている皮片(2)の下側に突出しており、
前記耳ユニット(10)は湾曲部(21)を有して、当該湾曲部(21)は、耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にすることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記湾曲部(21)は、耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記耳ユニット(10)が、下方に延びている部分(7)を備えており、
前記部分(7)と前記耳ユニット(10)との間の移行部分が、珠間切痕(14)と並ぶよう形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記耳ユニット(10)が、イヤホン及びマイクロホンを含むグループの中からの、少なくとも1つのユニットを備えて、設けられていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記耳ユニット(10)が、移動式ユニット及び同様のものと共に使用するための無線通信ユニット、及び、音楽システム及び同様のものと共に使用するための有線通信ユニット、を含むグループの中からの、1つのユニットを備えて、設けられていることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記耳ユニット(10)が、ステレオ効果を形成するための、少なくとも第2の耳ユニットと共に、作動することを特徴とする、請求項1?5のいずれか1つに記載の装置。」

第4 当事者の主張

1.請求人の主張

請求人は、審判請求書、口頭審理陳述要領書、平成30年7月24日付け上申書において、「特許第4994497号の請求項1ないし6に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし、本件特許発明1ないし6について、次の無効理由を主張している。

[無効理由の概要]
(1)無効理由1(新規性欠如)
本件特許発明1及び本件特許発明3?5は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

(2)無効理由2(進歩性欠如)
主位的主張
本件特許発明2及び6は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証に記載の技術事項又は周知技術1(甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

予備的主張
仮に本件特許発明1及び本件特許発明3?5が甲第1号証に記載された発明ではないとしても、
本件特許発明1?5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて、また、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知技術1(甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

(3)無効理由3(進歩性欠如)
主位的主張
本件特許発明2及び6は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証に記載の技術事項又は周知技術1(甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

予備的主張
仮に本件特許発明1及び本件特許発明3?5が甲第1号証に記載された発明ではないとしても、
本件特許発明1?5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載の技術事項に基づいて、また、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載の技術事項及び周知技術1(甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

(4)無効理由4(進歩性欠如)
主位的主張
本件特許発明2及び6は、甲第1号証に記載された発明並びに周知技術3(甲第2号証、甲第3号証)又は周知技術1(甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

予備的主張
仮に本件特許発明1及び本件特許発明3?5が甲第1号証に記載された発明ではないとしても、
本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術2(甲第2号証、甲第3号証)に記載される発明に基づいて、また、本件特許発明2?5は、甲第1号証に記載された発明、周知技術2(甲第2号証、甲第3号証)及び周知技術3(甲第2号証、甲第3号証)に基づいて、さらに、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、周知技術2(甲第2号証、甲第3号証)、周知技術3(甲第2号証、甲第3号証)及び周知技術1(甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

(5)無効理由5(サポート要件)
本件特許発明2の「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」との特定事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に一切記載がないから、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
よって、本件特許発明2及び請求項2を引用する本件特許発明3?6は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効である。

(6)無効理由6(明確性要件)
本件特許発明2の「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」との特定事項における、「平坦面」が何を意味するのか明確でないから、本件特許発明2は、明確なものでない。
よって、本件特許発明2及び請求項2を引用する本件特許発明3?6は、特許法第36条第6項第第2号に規定する要件を満たしておらず、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効である。

(7)無効理由7(新規事項の追加禁止)
本件特許発明1の「大きな略C字状のカーブ」は、特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件を満たしておらず、本件特許発明1及び請求項1を引用する本件特許発明2?6についての特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効である。

(8)無効理由8(新規事項の追加禁止)
本件特許発明2の「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」との特定事項は、特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件を満たしておらず、本件特許発明2及び請求項2を引用する本件特許発明3?6についての特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効である。

[証拠方法]
甲第1号証:特表2004-527931号公報
甲第2号証:国際公開第01/50813号
甲第3号証:米国特許第5659156号明細書
甲第4号証:特開2004-274540号公報
甲第5号証:ステッドマン医学大辞典編集委員会「ステッドマン医学大辞典 第3版[縮刷版]」,メジカルビュー社,平成6年5月20日,149頁
甲第6号証:平成24年1月31日付け意見書
甲第7号証:平成23年10月28日付け拒絶理由通知書
甲第8号証:慶應義塾大学医学部解剖学教室ホームページ(http://www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatoka/anatomy/spalteholz/J1027.html)
甲第9号証:一般社団法人日本補聴器工業会ホームページ(http://www.hochoki.com/select/type.html)
甲第10号証:リオネットセンターホームページ 補聴器広報サイト「きこえる」(http://www.e-mimi.jp/choice/type.html)
甲第11号証:Nuheara Limitedホームページ(https://www.nuheara.com/)
甲第12号証:ノルウェー特許出願176725号(PCT/NO2008/000190号)公報
甲第13号証:Learnlearnホームページ(http://www.learnlearn.net/Naturen/rea.htm)
甲第14号証:ウィキペディア ノルウェー版ホームページ(https://no.wikipedia.org/wiki/%C3%98re)
甲第15号証:ウィキペディア 英語版ホームページAuricle(anatomy)の項(https://en.wikipedia.org/wiki/Auricle_(anatomy))
甲第16号証:ウィキペディアホームページ 耳介の項(https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title耳介&oldid=67474532)
甲第17号証:Wolfgang Dauber(山田英智監訳、石川春律ほか2名訳)「図解解剖学事典第3版」,医学書院,2017年4月1日,450-453頁
甲第18号証:森好浩行ほか6名「耳介各部の形態分類と各部における形態特徴間の関連性に関する研究」,法科学技術,2009年,14巻2号,61-70頁

2.被請求人の主張

被請求人は、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、平成30年7月3日付け上申書、及び同年7月9日付け手続補正書において、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを答弁の趣旨とし、無効理由1ないし8に対して次のように主張している。

(1)無効理由1について
甲第1号証には、少なくとも本件特許発明1の「前記耳ユニット(10)は湾曲部(21)を有して、当該湾曲部(21)は、耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする」との構成要件(以下、「構成要件E」という。)を開示していない。
したがって、本件特許発明1及び本件特許発明3?5は、甲第1号証に記載された発明ではない。
よって、無効理由1は理由がない。

(2)無効理由2について
無効理由2はいずれも、甲第2号証に本件特許発明1の構成要件Eが開示されていることを前提とするものであるが、甲第2号証には、少なくとも本件特許発明1の構成要件Eは開示されておらず、さらに、甲第1号証の発明と甲第2号証の発明とは、保持に関する構成・機構が全く異なり、さらに、基本形状も全く異なっているから、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証の発明を組み合わせることの動機付けがなく、また阻害要因がある。
よって、無効理由2も理由がない。

(3)無効理由3について
無効理由3はいずれも、甲第3号証に本件特許発明1の構成要件Eが開示されていることを前提とするものであるが、甲第3号証には、少なくとも本件特許発明1の構成要件Eは開示されておらず、さらに、甲第1号証の発明と甲第3号証の発明とは、保持機構が異なり、さらに、基本形状も異なっているから、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証の発明を組み合わせることの動機付けがなく、また阻害要因がある。
よって、無効理由3も理由がない。

(4)無効理由4について
無効理由4はいずれも、本件特許発明1の構成要件Eが、甲第2号証および甲第3号証に記載されている周知技術に相当することを前提とするものであるが、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明は、本件特許発明1の構成要件Eに相当する構成を備えていない。
したがって、仮に、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明(周知技術)を甲第1号証に記載された発明に組み合わせたとしても、本件特許発明1を構成することはできない。
よって、無効理由4も理由がない。

(5)無効理由5について
本件特許発明2の「平坦面」は、「大きな略C字状のカーブ上面を通る仮想の平坦面」を意味しており、また、耳甲介22の内面に凸部である耳輪根が存在しているという技術常識に照らせば、本件特許明細書の段落【0019】の記載を含む発明の詳細な説明及び図面に記載された内容を、「耳甲介22の内部表面に沿って続く」湾曲部が「大きな略C字状のカーブ上面を通る仮想の平坦面」である平坦面から引っ込んでいる、すなわち「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」構成まで拡張ないし一般化することができる。
よって、無効理由5も理由がない。

(6)無効理由6について
上記(5)で述べたように、本件特許発明2の「平坦面」は、「大きな略C字状のカーブ上面を通る仮想の平坦面」を意味しており、耳ユニットが「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」構成を備えていることは、当業者が理解できることである。
よって、本件特許発明2は明確であり、無効理由6は理由がない。

(7)無効理由7について
本件特許発明1の「大きな略C字状のカーブ」は、本件特許明細書の「減衰カーブ9」に相当していることは段落【0017】等から明らかであり、さらに、この減衰カーブ9が、対耳輪13に沿って「C字状」の軌跡を描いていることも図1から明らかであるから、本件特許発明1の「大きな略C字状のカーブ」は、当初明細書及び図面の記載から自明な事項である。
よって、特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件は満たされており、無効理由7も理由がない。

(8)無効理由8について
耳甲介22の内面に凸部である耳輪根が存在しているという技術常識を勘案して、本件特許明細書の段落【0019】の記載を含む発明の詳細な説明及び図面に記載された内容を参酌すれば、本件特許発明2における、湾曲部21が「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」構成は、当初明細書等の記載から自明である。
よって、特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件は満たされており、無効理由8も理由がない。

[証拠方法]
乙第1号証:Terry Oleson「Auriculotherapy Manual : Chinese and Western Systems of Ear Acupuncture」,抜粋(104?129頁)
乙第2号証:ホームページ「THE EAR AND EAR POINTS AND AREAS」(https://www.template.net/business/charts/reflexology.chart.templates/)
乙第3号証:ホームページ「Auricular & Scalp Acupuncture Review ACR class 13」(https://www.template.net/business/charts/reflexology.chart.templates/)抜粋
乙第4号証:新英和大辞典 第5版,研究社,1980年
乙第5号証:ランダムハウス英和大辞典 第2版,小学館,1994年
乙第6号証:ホームページE-LEARNING UNITE Anatomy of reproductive system-Prof. Valentina Russo「BASIC ANATOMICAL TERMINOLOGY」(https://elearning.unite.it/pluginfile.php/47193/mod_resource/content/0/Anatomy%20term.pdf)
乙第7号証:DVD及び書面「本件発明、及び、甲第2号証の発明に関する説明」
乙第8号証:ホームページ「CONCEPTS OF AURICULOPTHERAPY」(https://www.opcionsalud.com/Articulos/96.htm/)
乙第9号証:ホームページ「Ear anatomy」(https://www.myvmc.com/anatomy/ear/)
乙第10号証:ホームページ「ぼうずコンニャクの市場魚介類図巻」musselについてのページ一覧(https://www.zukan-bouz.com/gsearch.php?q=mussel)

第5 甲第1ないし第3号証の記載事項

1.甲第1号証(特表2004-527931号公報)

甲第1号証には、「自動車電話、電話、スイッチボード又はこれに類するもののためのマイクロホン/イヤホン」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】
マイクロホン/イヤホンと、自動車電話、電話、スイッチボード又はこれに類するものとの間の無線通信による装置であって、
イヤホン(10)が大きなC字形に形成され、
C字部の両端部(5、8)間の距離が、耳の耳珠(4)の下に形成された第1の空洞部と、耳の対耳輪の低い方のこぶ(15)によって覆われた第2の空洞部との間の距離にほぼ等しく、
C字部の上部が、第2の空洞部の下部を覆っているフラップ(2)の下に突出していることを特徴とする装置。」

(2)「【0006】
本発明の目的は、マイクロホンを備えたイヤホンの安定かつ快適な支持を確保しつつ、前記の欠点を回避することである。これは請求項1の特徴部分を備えた、最初の部分で述べたタイプの装置により実現される。本発明のさらなる特徴は、その他の従属請求項に記載されている。
【0007】
このイヤホンの形状は、耳道がある程度は周囲に開放された状態となるのを可能にする。これは、耳道を塞ぎ又は閉じるユニットに比べて、より快適なものとなる。」

(3)「【0010】
本発明によれば、外耳の大部分が利用され、このため以前から知られているものに比べて、ユーザにより良好な快適さを与えつつ、より高い安定性を実現することができる。本発明はまた、対耳輪の低い方のこぶ15及びフラップ2によって覆われた空隙部と、対耳輪13の上部とを利用する。これらは、頭に隣接する耳の外部により上記空洞部を覆っている。」

(4)「【0012】
イヤホン10はC字形であり、この外側のC字部の曲線9は、耳の対耳輪13に対応し、傾斜した表面を有している。このため、C字部は、対耳輪13の内部に入り、C字部の下部は耳の対珠3の下に部分的に位置している。バッテリ部7は、配置され、耳の珠間切痕14により多く又はより少なく配置することにより、イヤホン10の正確な位置決めのためのガイド及び重量を与えつつ、C字部から下向きに突出している。そして、C字部の下部8は、耳の耳珠4の下に形成された空洞部内に突出している。C字部の上部は、対耳輪の低い方のこぶ15によって覆われた空洞部内に突出し、フラップ2の下で上記空洞部の下部を覆っている。」

・上記甲第1号証に記載の「自動車電話、電話、スイッチボード又はこれに類するもののためのマイクロホン/イヤホン」のうちの「イヤホン」は、上記(2)、(3)の記載事項によれば、耳道がある程度は周囲に開放された状態となるのを可能にし、より良好な快適さを与えつつより高い安定性を実現するようにした形状のものである。
・上記(1)、(3)、(4)の記載事項、及び図2によれば、イヤホン10は、
(a)大きなC字形であり、その外側のC字部の曲線9は耳の対耳輪13に対応して傾斜した表面を有し、そのためC字部は対耳輪13の内部に入り、
(b)さらに、C字部の両端部5,8間の距離が、耳の耳珠4の下に形成された第1の空洞部と、耳の対耳輪13の低い方のこぶ15によって覆われた第2の空洞部との間の距離にほぼ等しく、
(c)C字部の上部(一端部)5は、第2の空洞部の下部を覆っているフラップ2の下に突出し、C字部の下部(他端部)8は、耳の耳珠4の下に形成された第1の空洞部内に突出してなるものである。

したがって、「イヤホン」部分に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「耳道がある程度は周囲に開放された状態となるのを可能にし、より良好な快適さを与えつつより高い安定性を実現するようにした形状のイヤホンであって、
当該イヤホンは、大きなC字形であり、そのC字部は対耳輪の内部に入り、
前記C字部の両端部の間の距離が、耳の耳珠の下に形成された第1の空洞部と、耳の対耳輪の低い方のこぶによって覆われた第2の空洞部との間の距離にほぼ等しく、
前記C字部の上部(一端部)は、前記第2の空洞部の下部を覆っているフラップの下に突出し、前記C字部の下部(他端部)は、耳の耳珠の下に形成された前記第1の空洞部内に突出している、イヤホン。」

さらに、C字部の曲線9が耳の対耳輪13に対応して傾斜した表面を有することに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明’」という。)が記載されている。
「耳道がある程度は周囲に開放された状態となるのを可能にし、より良好な快適さを与えつつより高い安定性を実現するようにした形状のイヤホンであって、
当該イヤホンは、大きなC字形であり、その外側のC字部の曲線は、耳の対耳輪に対応して傾斜した表面を有し、そのため前記C字部は対耳輪の内部に入り、
前記C字部の両端部の間の距離が、耳の耳珠の下に形成された第1の空洞部と、耳の対耳輪の低い方のこぶによって覆われた第2の空洞部との間の距離にほぼ等しく、
前記C字部の上部(一端部)は、前記第2の空洞部の下部を覆っているフラップの下に突出し、前記C字部の下部(他端部)は、耳の耳珠の下に形成された前記第1の空洞部内に突出している、イヤホン。」

2.甲第2号証(国際公開第01/50813号)

甲第2号証には、「UNIVERSAL HEARING-AID VOLUTE HOLDER WITH CONICAL EXTENSION BUT WITHOUT AUDITORY DUCT, AND GEOMETRICAL METHOD OF MAKING THE SAME」について、図面とともに以下の記載がある(なお、当審による翻訳文を付記する。下線は当審で付与した。)。
(1)「There are also holders with standard shape. They are provided with an extension fitted to the auditory duct in order to provide a better stability. However, such extension is almost ever a hindrance in the acoustic applications because of the known, troublesome, occlusive effect.
On the other hand, if such extension is lacking, the stability unavoidably fails.
For such reasons, the holders mentioned above did not have further applications.
The present industrial invention seeks to provide a standard anatomic device that does not engage with the auditory duct but is only placed into the concha auricolae in a steady, comfortable, safe, functional manner .」(1頁21行?2頁9行)
(標準型ホルダーもある。それらには安定を良くするために外耳道にはめ込む延長部がある。しかしながら、そのような延長部は、よく知られた煩わしい閉塞作用のために音響応用においてほとんど障害にさえなる。
その一方で、そのような延長部がなければ、安定性がなくなるのは避けられない。
そういうわけで、上述のホルダーはそれ以上応用できなかった。
本発明は、外耳道と係合することなく、安定して、快適且つ安全な機能的方法で耳甲介に載置されるだけの標準的な解剖学的デバイスを提供しようとするものである。)

(2)「Fig. 2 shows the inside face having a wide groove (7) which extends between two relieves (8) and (9) with different heights, the higher relief (8) having an elongated hole (10) at its top.」(3頁18?21行)
(図2は、異なる高さを有する2つのレリーフ(8)と(9)の間を延びる幅広の溝(7)を有する内側の面を示す図であり、より高いレリーフ(8)はその上面に長方の穴(10)を有する。)

(3)「In order that the remaining inside part of the device adheres to the profile of the concha auricolae, relief (9) and groove (7) are formed.」(7頁10?12行)
(デバイスの残りの内側部分が耳甲介の輪郭に付着するように、レリーフ(9)および溝(7)が形成される。)

(4)「In order that the device can better adhere to the wall of the concha auricolae, groove (7) receiving the radix of the helix is formed. It is formed by a wide depression connecting relieves (8) and (9) at both sides. Its slightly curved profile is formed by connecting point N ’to O' and the latter to middle point Q of arc H'P' (Fig. 9).」(7頁26行?8頁2行)
(本デバイスが耳甲介の壁により良好に付着できるように、耳輪の耳輪根を受け入れる溝(7)が形成される。それは両側でレリーフ(8)と(9)とつながっている幅広の窪みによって形成される。その僅かに湾曲した輪郭は、N’からO’と円弧H’P’の中点Qの接続線上に形成される(図9)。)

(5)「4. The volute holder of the preceding claims, characterized in that the face directed to the inside of the ear has lower and upper relieves divided by a groove allowing the volute holder to better adhere to the wall of the concha auricolae engaging the radix of the helix.」(10頁19?24行)
(耳の内側に向いた面は、前記渦巻型ホルダが耳輪の根部が付いている耳甲介の壁により良好に付着することを可能にする溝によって分割された下側のレリーフおよび上側のレリーフを備えることを特徴とする、前記請求項に記載の渦巻型ホルダ。)

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第2号証には、次の技術事項が記載されている。
「外耳道と係合することなく、耳甲介に載置するだけのデバイスであって、当該デバイスが耳甲介の壁により良好に付着できるように、当該デバイスにおける耳甲介の壁に対向する面に、耳輪根を受け入れるための幅広の溝(窪み)を、僅かに湾曲した輪郭でもって形成したこと。」

3.甲第3号証(米国特許第5659156号明細書)

甲第3号証には、「EARMOLDS FOR TWO-WAY COMMUNICATIONS DEVAICES」について、図面とともに以下の記載がある(なお、当審による翻訳文を付記する。下線は当審で付与した。)。
(1)「The invented earmold gains a stable mounting at the ear opening by using an extended helix of the earmold to cause the earmold to fit under the crus of the helix of the ear. This newly invented configuration, therefore, requires a much shallower insertion into the ear canal, thereby not sealing the ear canal.
・・・・・・・・
Another feature of the invented earmold that is not found in the prior art is that the invented earmold's profile follows the curvature of the ear canal. By following the curvature of the ear canal, the user's comfort is greatly improved.」(2欄1?16行)
(本発明による耳成形品は、耳成形品を耳輪の脚の下で適合させることにより、耳成形品の延在したらせん体を用いて耳の穴に安定的に取り付けられる。従って、この新しく発明された形状によると、耳道の中へかなり浅く挿入することが必要なだけで、耳道を密封しない。
・・・・・(中 略)・・・・・
従来技術による耳成形品には見られない本発明による耳成形品の他の特徴は、本発明による耳成形品の輪郭が耳道の曲線に合致しているという点にある。耳道の曲線に合致させることにより、使用者の快適性は大きく改善される。)

(2)「In the preferred embodiment, the audio communications device includes both a microphone and a speaker. The mold also includes two protrusions on the inside (second) side. The first protrusion is for the purpose of holding the earmold in place. This is done by inserting the mold into the ear and then rotating the mold so that this first protrusion rests under the crus of the helix of the ear. The second protrusion is for the purpose of providing a means for sound to be conveyed from the speaker into the user's ear canal. This second protrusion is designed to require only a very shallow insertion (approximately 4 mm) into the user's ear canal. This second protrusion also has incorporated into it an ear canal insert vent to prevent a pneumatic seal from being formed in the ear.」(3欄14?27行)
(好適な実施例においては、音響伝達装置はマイクロホンとスピーカーを含む。前記耳成形品もまた内側(第2)面において2つの突起を有している。第1の突起は、耳成形品を所定位置に保持するためのものである。これは、耳成形品を耳の中に挿入し、この第1の突起が耳の耳輪の脚の下に位置するように耳成形品を回転させることによって行われる。第2の突起は、スピーカーからの音声を使用者の耳道の中へ送るための手段を提供するためのものである。この第2の突起は使用者の耳道の中へ非常に浅く(約4mm)挿入するだけでよいように設計されている。この第2の突起はまた空気シールが耳の中で形成されるのを防ぐために耳道挿入通気孔を組み込んでいる。)

(3)「FIG. 4a show a side of one preferred earmold. The second protrusion 401 is extending upward from the base of the second side 420 of the earmold at an angle of approximately 115 degrees from the horizontal to most closely match the curvature of the user's ear canal. The insertion depth of the second protrusion 401 is kept to 6.0 mm or less, in the preferred embodiment, for the purpose of minimizing physical contact with the inner ear canal.」(4欄64行?5欄4行)
(図4aは、1つの好ましい耳成形品の一側面を示す。第2の突起401が、使用者の耳道の曲線に対して最も密接に合致するように、水平方向から約115度の角度をなして耳成形品の第2側面420の基部から上方に延在している。第2の突起401の挿入深さは、内耳道との物理的な接触を最小にするために、好ましい実施例においては6.0mmあるいはそれ以下に維持される。)

(4)「Referring to FIG. 4b, a side view of the preferred earmold is shown. The first protrusion (helix) 404 is shown in the top view of FIG. 4. The first protrusion 404 is designed to fit comfortably under the crux of helix of the outer ear. A valley 406 exists between the first protrusion 404 and the second protrusion 401. The purpose of this valley 406 is to more naturally fit the contours of the outer ear and achieve user comfort. Also, a concha dehump 407 is also included in the lower center of the second side to permit a close fit with the outer ear.」(5欄15?24行)
(図4bを参照すると、好ましい耳成形品の側面図が示されている。第1の突起(らせん体)404が図4の上面図に示されている。この第1の突起404は、外耳の耳輪の脚の下で快適に適合するように設計されている。第1の突起404と第2の突起401との間には谷間406が存在している。この谷間406の目的は、外耳の輪郭とより自然に適合させ、使用者に快適感を得させることにある。また、外耳と密接に適合することができるように、第2側面の下部中心に耳甲介デハンプ407が設けられている。)

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第3号証には、次の技術事項が記載されている。
「内側面(第2側面)に、外耳の耳輪の脚の下で快適に適合するように設計され、耳成形品を所定位置に保持するための第1の突起404と、耳道の中へ浅く挿入され、耳道の曲線に密接に合致する第2の突起401と、を有する耳成形品であって、
第1の突起404と第2の突起401との間に、外耳の輪郭とより自然に適合させるための谷間406を設け、また、外耳と密接に適合することができるように内側面(第2側面)の下部中心に耳甲介デハンプ407を設けたこと。」

第6 無効理由に対する当審の判断

まず、補正要件(新規事項の追加禁止)に関する無効理由7及び8について検討し、次いで記載不備(サポート要件、明確性要件)に関する無効理由5及び6について検討し、最後に新規性進歩性に関する無効理由1ないし4について検討する。

1.無効理由7(新規事項の追加禁止)

請求人は、本件特許発明1の「大きな略C字状のカーブ」は、平成24年1月31日付け手続補正書において補正された発明特定事項であるが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のいずれにも記載された事項ではなく、出願当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当該補正は、新規事項を追加する補正である旨主張している。

しかしながら、願書に最初に添付した明細書等とみなされた平成22年1月29日付け翻訳文の【請求項1】には「・・前記耳ユニット(10)は、減衰カーブの形状を有しており、減衰カーブの端部(5、8)の間の距離は、・・」と記載され、また、段落【0017】には「耳ユニット10は、ある形状の表面を備えた対耳輪13に対応する、耳ユニットの外側部分の減衰カーブ9を、備えており、その表面の形状は、カーブが、対耳輪13の内部分に沿って下がり、且つ、耳の対珠3の下に部分的に位置するような、形状である。」と記載され、また、図1?5からしても、耳ユニット(10)は、減衰カーブ9に対応する形状の部分を有し、当該減衰カーブ9は対耳輪13に沿って「略C字状」の軌跡を描くものであると理解することができる。
したがって、耳ユニット(10)が「大きな略C字状のカーブ」を有することは、当初明細書等の記載から自明な事項であるといえ、当初明細書等のすべての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件を満たしていないということはできない。

よって、請求人の主張する無効理由7には理由がない。

2.無効理由8(新規事項の追加禁止)

請求人は、本件特許発明2の「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」との特定事項は、平成24年1月31日付け手続補正書において補正された発明特定事項であるが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のいずれにも記載された事項ではなく、出願当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当該補正は、新規事項を追加する補正である旨主張している。

しかしながら、願書に最初に添付した明細書等とみなされた平成22年1月29日付け翻訳文の段落【0019】には「耳ユニット10は、耳ユニット10が耳内に配置されたときに、耳甲介22の内部表面に沿って続く、湾曲部21を備えて、形成されている。この接触面は、より広い部分が耳甲介に対して置かれるため、更なる安定性をもたらし、それにより快適さが増加する。」と記載されている。かかる記載によれば、「湾曲部(21)」は、耳甲介(22)の内部表面(内面)に沿って続き、大きな略C字状のカーブを有する耳ユニット(10)における耳甲介の内部表面(内面)のうち特に略平坦な面と対向する面のより広い部分が耳甲介(22)の内部表面(内面)に従って接触面を提供するようにするためのものであるといえる。そして一般的に、耳甲介(22)の内部表面(内面)には凸状の耳輪脚(耳輪根)が存在していることと、図2、図4及び図5において符号21で示される「湾曲部」の位置とを踏まえると、結局、「湾曲部(21)」は、耳甲介(22)の内面に存在する隆起部分、すなわち耳輪脚(耳輪根)によって、耳ユニット(10)の耳甲介(22)の内部表面(内面)への密着が阻害されることのないように、耳ユニット(10)における耳甲介(22)の内面と対向する略平坦な面に対して、凸状の耳輪脚(耳輪根)を受け入れてスペースを提供することができるように凹んだ形状のものであると理解することができる。
したがって、湾曲部(21)が「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」ものであることは、当初明細書等の記載から自明ということのできる事項であり、当初明細書等のすべての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件を満たしていないとまではいえない。

なお、請求人は、審判請求書や口頭審理陳述要領書において、「図1からすると、『湾曲部21』は、『耳輪脚』に対向していないから、本特許発明2のように、『耳輪脚に対するスペースを提供するため』の、『平坦面から引っ込んでいる』構成は、全く開示されていないというべきである。」と主張している。
しかしながら、図1においては、対耳輪13に対応する減衰カーブ9のところまで耳輪脚の末端が延びていないものの、そもそも減衰カーブ9は耳ユニットの外側部分を示しており、耳ユニット自体は減衰カーブ9に沿って所定の幅を有するものであることや、耳輪脚の末端の隆起部分は高さが減少しつつも対耳輪13のすぐ近傍まで延びている場合もあることを踏まえると、概略図にすぎない図1を根拠に、「湾曲部21」は「耳輪脚」に対向していないとまではいえない。

よって、請求人の主張する無効理由8には理由がない。

3.無効理由5(サポート要件)

請求人は、本件特許発明2の「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」との特定事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に一切記載がないから、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張してる。

しかしながら、上記「2.」で述べたのと同様、本件特許明細書の段落【0019】には「耳ユニット10は、耳ユニット10が耳内に配置されたときに、耳甲介22の内部表面に沿って続く、湾曲部21を備えて、形成されている。この接触面は、より広い部分が耳甲介に対して置かれるため、更なる安定性をもたらし、それにより快適さが増加する。」と記載されている。かかる記載によれば、「湾曲部(21)」は、耳甲介(22)の内部表面(内面)に沿って続き、大きな略C字状のカーブを有する耳ユニット(10)における耳甲介の内部表面(内面)のうち特に略平坦な面との対向面のより広い部分が耳甲介(22)の内部表面(内面)に従って接触面を提供するようにするためのものであるといえる。そして一般的に、耳甲介(22)の内部表面(内面)には凸状の耳輪脚(耳輪根)が存在していることと、図2、図4及び図5において符号21で示される「湾曲部」の位置とを踏まえると、結局、「湾曲部(21)」は、耳甲介(22)の内面に存在する隆起部分、すなわち耳輪脚(耳輪根)によって、耳ユニット(10)の耳甲介(22)の内部表面(内面)への密着が阻害されることのないように、耳ユニット(10)における耳甲介(22)の内面と対向する略平坦な面に対して、凸状の耳輪脚(耳輪根)を受け入れてスペースを提供することができるように凹んだ形状のものであると理解することができる。
したがって、湾曲部(21)が「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」ものであることは、本件特許明細書の記載から自明ということのできる事項であり、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない事項であるとまではいえない。

なお、請求人は、審判請求書において、本件特許発明2における「湾曲部(21)」は、曲面で構成され、何ら平坦面を備えない旨主張しているが、ここでいう「平坦面」は、耳ユニット(10)における耳甲介(22)の内面と対向する面のうち、湾曲部(21)が設けられた部分を除く部分(面)を意味するものであり、請求人の主張は当を得ないものである。

よって、請求人の主張する無効理由5には理由がない。

4.無効理由6(明確性要件)

請求人は、本件特許発明2の「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」との特定事項における、「平坦面」が何を意味するのか明確でないから、本件特許発明2は明確なものでない旨主張している。

しかしながら、上記「3.」でも述べたように、ここでいう「平坦面」は、耳ユニット(10)における耳甲介(22)の内面と対向する面のうち、湾曲部(21)が設けられた部分を除く部分(面)を意味するものであることは明らかである。

よって、請求人の主張する無効理由6には理由がない。

5.無効理由1(新規性欠如)

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明’(上記「第4 1.」を参照)とを対比する。
ア.甲1発明’における「耳道がある程度は周囲に開放された状態となるのを可能にし、より良好な快適さを与えつつより高い安定性を実現するようにした形状のイヤホンであって」によれば、
甲1発明’における「イヤホン」は、本件特許発明1でいう「耳ユニット(10)」あるいは耳ユニット(10)と呼ばれる「装置」に相当し、
甲1発明’の「イヤホン」においても、より高い安定性を実現するようにしたものであって、耳に安定して装着するためのものであるといえるから、
本件特許発明1と甲1発明’とは、「耳に安定して装着するための耳ユニットと呼ばれる装置」である点で一致する。

イ.甲1発明’における「当該イヤホンは、大きなC字形であり、その外側のC字部の曲線は、耳の対耳輪に対応して傾斜した表面を有し、そのため前記C字部は対耳輪の内部に入り」によれば、
甲1発明’の「イヤホン」は、耳の対耳輪に対応した大きな略C字形の曲線を有するものであることから、
本件特許発明1と甲1発明’とは、「前記耳ユニットは、大きな略C字状のカーブを有して」いる点で一致するといえる。

ウ.甲1発明’における「前記C字部の両端部の間の距離が、耳の耳珠の下に形成された第1の空洞部と、耳の対耳輪の低い方のこぶによって覆われた第2の空洞部との間の距離にほぼ等しく」によれば、
甲1発明’における「耳の耳珠」、「耳の対耳輪」、「対耳輪の低い方のこぶ」は、それぞれ本件特許発明1における「耳の耳珠(4)」、「耳の対耳輪」、「対耳輪の下方の節(15)」に相当し、
また、甲1発明’における「第1の空洞部」、「第2の空洞部」は、それぞれ本件特許発明1における「第1空洞部」、「第2空洞部」に相当し、
さらに、甲1発明’における、C字部の「両端部」は、本件特許発明1における、略C字状のカーブの「端部(5、8)」に相当する。
そして、甲1発明’においても、C字部の両端部の間の距離が、第1の空洞部と第2の空洞部との間の距離にほぼ等しいものであることから、
本件特許発明1と甲1発明’とは、「前記略C字状のカーブの端部の間の距離は、耳の耳珠の下に形成された第1空洞部と、耳の対耳輪の下方の節によって覆われている第2空洞部と、の間の距離と、おおよそ等しくなって」いる点で一致する。

エ.甲1発明’における「前記C字部の上部(一端部)は、前記第2の空洞部の下部を覆っているフラップの下に突出し、前記C字部の下部(他端部)は、耳の耳珠の下に形成された前記第1の空洞部内に突出している・・」によれば、
甲1発明’における、第2の空洞部の下部を覆っている「フラップ」は、本件特許発明1における、第2空洞部の下方部分を覆っている「皮片(2)」に相当し、
甲1発明’においても、C字部の上部(一端部)は、フラップの下に突出してなるものであることから、
本件特許発明1と甲1発明’とは、「前記略C字状のカーブの上方部分は、第2空洞部の下方部分を覆っている皮片(2)の下側に突出して」いる点で一致する。

オ.甲1発明’における「当該イヤホンは、大きなC字形であり、その外側のC字部の曲線は、耳の対耳輪に対応して傾斜した表面を有し、そのため前記C字部は対耳輪の内部に入り」によれば、
甲1発明’におけるC字部の外側の曲線が有する、耳の対耳輪に対応した「傾斜した表面」も、「湾曲部」と表現することができるものであり、
そして、甲1発明’は、当該「傾斜した表面」を有していることによって、C字部は対耳輪の内部に入り、対耳輪の内壁面に対して接触して接触面を提供し、イヤホンが耳の中に配置されたときに当該対耳輪の内壁面に密着することを可能とし、改良された装着をもたらすものと解することができる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明’とは、「前記耳ユニット(10)は湾曲部(21)を有して、当該湾曲部(21)は、耳の所定部位の面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記耳の所定部位に対して密着することを可能にする」ものである点で共通するということができる。
ただし、耳の所定部位及びその所定部位の面について、本件特許発明1では、「耳甲介(22)」及び「耳甲介(22)の内面」である旨特定するのに対し、甲1発明’では、対耳輪及び対耳輪の内壁面である点で相違している。

よって、本件特許発明1と甲1発明’とは、
「耳に安定して装着するための耳ユニットと呼ばれる装置であって、
前記耳ユニット(10)は、大きな略C字状のカーブを有しており、
前記略C字状のカーブの端部(5、8)の間の距離は、耳の耳珠(4)の下に形成された第1空洞部と、耳の対耳輪の下方の節(15)によって覆われている第2空洞部と、の間の距離と、おおよそ等しくなっており、
前記略C字状のカーブの上方部分は、第2空洞部の下方部分を覆っている皮片(2)の下側に突出しており、
前記耳ユニット(10)は湾曲部(21)を有して、当該湾曲部(21)は、耳の所定部位の面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記耳の所定部位に対して密着することを可能にすることを特徴とする、装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
耳の所定部位及びその所定部位の面について、本件特許発明1では、「耳甲介(22)」及び「耳甲介(22)の内面」である旨特定するのに対し、甲1発明’では、対耳輪及び対耳輪の内壁面である点。

よって、本件特許発明1と甲1発明’には相違するところがあるから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

この点について、請求人は、審判請求書、口頭審理陳述要領書、平成30年7月24日付け上申書において、本件特許発明1の構成要件Eにおける「耳甲介(22)の内面」には、「対耳輪の内壁面」も含まれるから、甲1発明’は、本件特許発明1の構成要件Eに相当する構成を備えており、上記[相違点]は存在しない旨主張している。

しかしながら、そもそも「耳甲介」とは、対耳輪(対輪)、対珠及び耳珠に囲まれた峡部(例えば甲第17号証を参照)であり、本件特許発明1の構成要件Eにおける「耳甲介(22)の内面」としては、少なくとも対耳輪、対珠及び耳珠に囲まれた峡部の比較的平坦な面を含み、「対耳輪の内壁面」のみを意味するものではないと解するのが自然である。したがって、たとえ請求人が主張するように、本件特許発明1の構成要件Eにおける「耳甲介(22)の内面」には、その一部として「対耳輪の内壁面」も含まれ得るとしても、当該「対耳輪の内壁面」が、本件特許発明1でいう「耳甲介(22)の内面」に相当するとまではいえない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明3ないし5について
請求項3ないし5は、請求項1を直接または間接的に引用する請求項であり、本件特許発明3ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明3ないし5は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(5)まとめ
本件特許発明1、3?5は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由1には理由がない。

6.無効理由2(進歩性欠如)

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明(上記「第4 1.」を参照)とを対比する。
ア.甲1発明における「耳道がある程度は周囲に開放された状態となるのを可能にし、より良好な快適さを与えつつより高い安定性を実現するようにした形状のイヤホンであって」によれば、
甲1発明における「イヤホン」は、本件特許発明1でいう「耳ユニット(10)」あるいは耳ユニット(10)と呼ばれる「装置」に相当し、
甲1発明の「イヤホン」においても、より高い安定性を実現するようにしたものであって、耳に安定して装着するためのものであるといえるから、
本件特許発明1と甲1発明とは、「耳に安定して装着するための耳ユニットと呼ばれる装置」である点で一致する。

イ.甲1発明における「当該イヤホンは、大きなC字形であり、そのC字部は対耳輪の内部に入り」によれば、
甲1発明の「イヤホン」は、耳の対耳輪に対応した大きな略C字形であることから、
本件特許発明1と甲1発明とは、「前記耳ユニットは、大きな略C字状のカーブを有して」いる点で一致するといえる。

ウ.甲1発明における「前記C字部の両端部の間の距離が、耳の耳珠の下に形成された第1の空洞部と、耳の対耳輪の低い方のこぶによって覆われた第2の空洞部との間の距離にほぼ等しく」によれば、
甲1発明における「耳の耳珠」、「耳の対耳輪」、「対耳輪の低い方のこぶ」は、それぞれ本件特許発明1における「耳の耳珠(4)」、「耳の対耳輪」、「対耳輪の下方の節(15)」に相当し、
また、甲1発明における「第1の空洞部」、「第2の空洞部」は、それぞれ本件特許発明1における「第1空洞部」、「第2空洞部」に相当し、
さらに、甲1発明における、C字部の「両端部」は、本件特許発明1における、略C字状のカーブの「端部(5、8)」に相当する。
そして、甲1発明においても、C字部の両端部の間の距離が、第1の空洞部と第2の空洞部との間の距離にほぼ等しいものであることから、
本件特許発明1と甲1発明とは、「前記略C字状のカーブの端部の間の距離は、耳の耳珠の下に形成された第1空洞部と、耳の対耳輪の下方の節によって覆われている第2空洞部と、の間の距離と、おおよそ等しくなって」いる点で一致する。

エ.甲1発明における「前記C字部の上部(一端部)は、前記第2の空洞部の下部を覆っているフラップの下に突出し、前記C字部の下部(他端部)は、耳の耳珠の下に形成された前記第1の空洞部内に突出している・・」によれば、
甲1発明における、第2の空洞部の下部を覆っている「フラップ」は、本件特許発明1における、第2空洞部の下方部分を覆っている「皮片(2)」に相当し、
甲1発明においても、C字部の上部(一端部)は、フラップの下に突出してなるものであることから、
本件特許発明1と甲1発明とは、「前記略C字状のカーブの上方部分は、第2空洞部の下方部分を覆っている皮片(2)の下側に突出して」いる点で一致する。

よって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「耳に安定して装着するための耳ユニットと呼ばれる装置であって、
前記耳ユニットは、大きな略C字状のカーブを有しており、
前記略C字状のカーブの端部の間の距離は、耳の耳珠の下に形成された第1空洞部と、耳の対耳輪の下方の節によって覆われている第2空洞部と、の間の距離と、おおよそ等しくなっており、
前記略C字状のカーブの上方部分は、第2空洞部の下方部分を覆っている皮片(2)の下側に突出していることを特徴とする、装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本件特許発明1では、「前記耳ユニットは湾曲部を有して、当該湾曲部は、耳甲介の内面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニットが耳の中に配置されたときに前記耳甲介に対して密着することを可能にする」旨特定するのに対し、甲1発明では、そのような特定を有していない点。

そこで、上記[相違点]について検討すると、
甲第2号証には、外耳道と係合することなく、耳甲介に載置するだけのデバイスであって、当該デバイスが耳甲介の壁により良好に付着できるように、当該デバイスにおける耳甲介の壁に対向する面に、耳輪根を受け入れるための幅広の溝(窪み)を、僅かに湾曲した輪郭でもって形成してなる技術事項が記載(上記「第5 2.」を参照)されている。
そして、甲1発明のイヤホンにおいても、耳道がある程度は周囲に開放された状態となる、つまり外耳道にはめ込むことなく耳甲介に保持されるものである点で甲第2号証のデバイスと共通するものであるところ、快適さに加えて安定性がより望まれることは当然であり、さらなる高い安定性を確保すべく上記甲第2号証に記載の技術事項を採用し、イヤホンのC字部における耳甲介の内面(壁)に対向する面に、耳輪根を受け入れるための幅広の溝(窪み)、すなわち本件特許発明1でいう「湾曲部」を設けることにより、イヤホンが耳の中に配置されたときに、イヤホンの耳甲介の内面(壁)に対向する面のより広い部分が耳甲介の内面に従った接触面を提供して密着できるようにして上記相違点に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本件特許発明1が奏する効果についてみても、甲1発明及び甲第2号証に記載の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

よって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、被請求人は無効理由2に関して、審判事件答弁書、及び平成30年7月3日付け上申書において以下のような主張をしている。
ア.本件特許発明1の構成要件Eの不開示
本件特許発明1の構成要件E〔前記耳ユニット(10)は湾曲部(21)を有して、当該湾曲部(21)は、耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする〕における「湾曲部(21)」は、本件特許明細書の段落【0012】の「【図5】耳甲介と密着した湾曲部と、・・」なる記載からも明らかなように、耳輪脚を含む耳甲介に密着する、すなわち、耳輪脚(あるいは耳輪根)の末端に延びる隆起部分(耳甲介リッジ)に密着するものであり、これにより、使用者が動いた際にも回転を抑止できるという作用効果を奏する。しかしこれに対して、甲第2号証における「溝(7)」は、幅広の窪みであって、耳輪根を「受け入れる」とされており、溝(7)の内壁と耳輪根との間にスペースを形成した状態で、溝(7)の内部に耳輪根が収容されるものと解され、「溝(7)」は耳輪根に密着するものではない。したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の構成要件Eは開示されていない。

しかしながら、本件の請求項1には、耳輪脚(あるいは耳輪根)の末端に延びる隆起部分(耳甲介リッジ)に対する密着との関係で「湾曲部(21)」の形状やサイズを特定する記載はなく、また、多くの人の耳において、耳輪脚の末端の隆起部分は高さが減少しつつも対耳輪の近傍まで延びているとしても、耳輪脚の末端部分の形状、サイズ(高さや幅)には個人差がある(甲第18号証を参照)にもかかわらず、本件特許明細書には、「湾曲部(21)」の形状やサイズをどのように設計したのかの具体的な記載は一切なく、さらに、本件特許明細書には、使用者が動いた際にも回転を抑止できるという作用効果についての記載も示唆もない。そして、上記構成要件Eの「前記耳ユニット(10)は湾曲部(21)を有して、当該湾曲部(21)は、耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供する、改良された装着をもたらして、前記耳ユニット(10)が耳の中に配置されたときに前記耳甲介(22)に対して密着することを可能にする」との記載からは、耳ユニットの略C字状カーブにおける、耳甲介の内面のうち特に略平坦な面と対向する面のより広い部分が耳甲介(22)の内面に従って接触面を提供して密着できるように、「湾曲部(21)」は耳輪脚などの耳内の隆起部分によって、耳ユニットの耳甲介の壁への密着を阻害することのないように形成されればよく、耳内の隆起部分に接しても接しなくてもよいものと解され、当該湾曲部(21)についても耳輪脚などの耳内の隆起部分に「密着」することまで特定するものであるとはいえない。このことは、本件特許明細書の段落【0019】の記載についても同様である。
さらに、被請求人が指摘するように、本件特許明細書の段落【0012】には、図面の簡単な説明として「【図5】耳甲介と密着した湾曲部と、・・」なる記載があるが、既に上記「第2 (2-2)」でも述べたとおりであって、耳輪脚などの耳内の隆起部分に密着するとまでは記載されておらず、そもそも図5をみても、耳輪脚などの耳内の隆起部分との関係でもって「湾曲部(21)」が図示されているわけでもない。図5等の図面を見るかぎり、湾曲部(21)は、略C字状カーブにおける耳甲介の内面に対向する面に、幅広な窪みとして形成されており、上述したように耳輪脚の形状、サイズ(高さや幅)には個人差があることも踏まえると、耳ユニットを装着する人によっては「湾曲部(21)」に対して耳輪脚などの耳内の隆起部分の先端や裾野部分と接触することはあるかもしれないが(逆に言えば、甲1発明に甲第2号証に記載の技術事項を組み合わせたものにあっても、イヤホンを装着する人によっては、溝に対して耳輪脚などの耳内の隆起部分の先端や裾野部分が密着することがあるといえる)、湾曲部(21)の内壁と隆起部分との間にはスペースも形成される得るものと解される。したがって、本件特許明細書の段落【0012】の記載をもって、「湾曲部(21)」が耳輪脚などの耳内の隆起部分に「密着」するとまでは解し得ない。
以上のことからすると、甲第2号証における「溝(7)」は、本件特許発明1でいう「湾曲部(21)」に相当するといえるものであり、甲第2号証には、構成要件Eに対応する構成が開示されているということができる。
よって、被請求人の上記主張は採用できない。

イ.甲第1号証と甲第2号証との組み合わせの困難性
甲第1号証のC字形の耳ユニットは、C字形部分の外側を対耳輪の壁に係合させて耳に保持される構成であり、使用者が動いた際に回転する恐れがあるのに対し、甲第2号証の渦巻型ホルダは、上側の半円形タブ3と下側の円錐形の突出部4との2箇所のみで耳に保持される構成であり、使用者が動いたとしても回転する恐れがないものであって、甲第1号証の発明と甲第2号証の発明とは、保持に関する構成・機構が全く異なり、両発明を組み合わせることの動機付けがない。さらに、甲第1号証の耳ユニットはC字形であるのに対し、甲第2号証のホルダは渦巻型であり、基本形状についても全く異なっており、このような形状の相違は、両発明を組み合わせることの阻害要因となる。

しかしながら、甲第1号証の耳ユニットにあっても、C字部の上部(一端部)は、第2の空洞部の下部を覆っているフラップの下に突出し、C字部の下部(他端部)は、耳の耳珠の下に形成された第1の空洞部内に突出してなるものであり、C字部の上部と下部の両端においても耳に固定(保持)されているといえる。よって、使用者が動いた際に回転する恐れがあるとまではいえないし、そもそも甲第1号証には、回転する恐れがあることの記載も示唆もない(このことは本件特許明細書にも記載も示唆もない)。一方、甲第2号証の渦巻型ホルダについても、上側の半円形タブ3と下側の円錐形の突出部4との2箇所「のみ」で耳に保持されるわけではなく、ホルダの耳甲介の壁に対向する面の少なくとも一部は耳甲介の壁に付着してその部分でも保持されているといえるものである。そして、両者は、上記[相違点]についての検討のところでも述べたように、外耳道にはめ込むことなく耳甲介に保持される構成・機構である点で共通するものであることから、両発明を組み合わせることの動機付けを妨げるほどの保持に関する構成・機構の違いがあるとは認められない。
また、基本形状についても、甲第1号証の耳ユニットはC字形であるのに対して、甲第2号証のホルダは渦巻型であって異なってはいるものの、両者は、耳甲介舟(耳甲介のうち、耳輪脚より上側の部分)から耳甲介腔(耳甲介のうち、耳輪脚より下側の部分)にいたる耳甲介の部分に保持される、すなわち耳輪脚や被請求人のいう耳甲介リッジといった隆起部分を跨ぐように耳甲介に保持される形状である点で共通するものであるから、C字形か渦巻型かの違いは両発明を組み合わせることを阻害するほどの要因ではない。

したがって、被請求人のいずれの主張も採用することはできない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、さらに「前記湾曲部(21)は、耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」旨特定している。

しかしながら、甲第2号証に記載された上記技術事項において、「幅広の溝(窪み)」は、耳輪根を受け入れるためのものであるから、本件特許発明2でいう「耳輪脚に対するスペースを提供するため」のものであり、また、デバイスにおける耳甲介の壁に付着する面(本件特許発明1でいう「接触面」)から引っ込んでいるということができるものである。
そして、甲1発明のイヤホンのC字部における耳甲介の内面に対向する面は、本件特許発明2でいう「平坦面」といえるものであることから、上記(1)で述べたとおり、甲1発明に対して、甲第2号証に記載の技術事項を採用した場合、本件特許発明2でいう「前記湾曲部(21)は、耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」という構成も得られるものである。

よって、本件特許発明2は、甲1発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、上記「(1)本件特許発明1について」において検討した被請求人の主張のうち、本件特許発明1の「湾曲部(21)」は、耳輪脚(あるいは耳輪根)の末端に延びる隆起部分(耳甲介リッジ)に密着するものであるという主張について、本件特許発明2でも検討しておくと、
本件特許発明2には、「湾曲部(21)」についてさらに、「耳輪脚に対するスペースを提供するために平坦面から引っ込んでいる」と特定されているものの、あくまでも耳輪脚に対する「スペースを提供」するものであって、耳輪脚に「密着」するとまでは特定されていない。
したがって、被請求人の主張は特許請求の範囲(請求項2)の記載に基づかない主張であり、採用できない。

(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、さらに「前記耳ユニット(10)が、下方に延びている部分(7)を備えており、前記部分(7)と前記耳ユニット(10)との間の移行部分が、珠間切痕(14)と並ぶよう形成されている」旨特定している。

しかしながら、甲第1号証の段落【0012】には「バッテリ部7は、配置され、耳の珠間切痕14により多く又はより少なく配置することにより、イヤホン10の正確な位置決めのためのガイド及び重量を与えつつ、C字部から下向きに突出している。」と記載され、図2も参照すると、甲第1号証には、イヤホンのC字部から下向きに突出したバッテリ部を備え、当該バッテリ部は耳の珠間切痕に配置されることが記載されている。そして、イヤホンが耳に保持された際、C字部の下部が耳の対珠の下に部分的に位置する(段落【0012】を参照)とともに、C字部の下部(他端部)が耳の耳珠の下に形成された第1の空洞部内に突出してなるものであることに加えて、バッテリ部は重量のあるものであることを踏まえると、耳の珠間切痕に並ぶように配置されることになるのは、バッテリ部の根元すなわちC字部とバッテリ部との間の移行部分であるといえる。したがって、甲第1号証には、本件特許発明3における「前記耳ユニット(10)が、下方に延びている部分(7)を備えており、前記部分(7)と前記耳ユニット(10)との間の移行部分が、珠間切痕(14)と並ぶよう形成されている」という特定事項が記載されているということができる。

よって、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、さらに「前記耳ユニット(10)が、イヤホン及びマイクロホンを含むグループの中からの、少なくとも1つのユニットを備えて、設けられている」旨特定している。

しかしながら、甲1発明は、「イヤホン」に係るものであり、イヤホンを備えることは自明である。また、甲第1号証の段落【0011】には「図2には、本発明にかかるイヤホン10が模式的に示され、このイヤホンは、結合部11でイヤホン10に接続されたマイクロホンロッド12とマイクロホン6とを備えている。」と記載されており、「マイクロホン」を備えることも記載されている。

よって、本件特許発明4は、甲1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、さらに「前記耳ユニット(10)が、移動式ユニット及び同様のものと共に使用するための無線通信ユニット、及び、音楽システム及び同様のものと共に使用するための有線通信ユニット、を含むグループの中からの、1つのユニットを備えて、設けられている」旨特定している。

しかしながら、甲第1号証の【請求項1】には「マイクロホン/イヤホンと、自動車電話、電話、スイッチボード又はこれに類するものとの間の無線通信による装置であって・・」と記載され、段落【0011】には「・・このイヤホンは、結合部11でイヤホン10に接続されたマイクロホンロッド12とマイクロホン6とを備えている。マイクロホンロッド12は、イヤホン10内に配置された送信機/受信機とマイクロフォン6との間に接続部を備えている。・・・・無線通信部分のアンテナは、例えばマイクロオンンロッド内に配置される。」と記載されている。これら記載によれば、甲第1号証には、イヤホンが、自動車電話等との間の無線通信のための無線通信部分(送信機/受信機やアンテナ)を備えることが記載されており、この「無線通信部分(送信機/受信機やアンテナ)」は、本件特許発明5でいう「無線通信ユニット」に相当する。したがって、甲第1号証には、少なくとも本件特許発明5における「前記耳ユニット(10)が、移動式ユニット及び同様のものと共に使用するための無線通信ユニットを備えて、設けられている」という特定事項が記載されているといえる。
なお、イヤホンが、音楽システム及び同様のものと共に使用するための有線通信ユニットを備えるものとすることも、例えば甲第4号証の段落【0002】に記載のように周知の技術事項にすぎない。

よって、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、さらに「前記耳ユニット(10)が、ステレオ効果を形成するための、少なくとも第2の耳ユニットと共に、作動する」旨特定している。

しかしながら、例えば甲第4号証の段落【0002】に従来の技術として「・・この図4に示すイヤホンシステムは、使用者の耳へ装着できる形状に形成した左右一対のイヤホン1、2と、このイヤホン1、2へMDプレーヤ等の携帯用音声機器(図示しない)からのステレオ再生信号を供給するコード3とによって構成している。」と記載されているように、ステレオ再生する(本件特許発明6でいう「ステレオ効果を形成する」)ために、イヤホンを、左右一対のイヤホンとして構成することは周知の技術事項であり、甲1発明においても、かかる周知の技術事項を採用し、イヤホンが、ステレオ効果を形成するための、少なくとも第2のイヤホンと共に作動するものとすることは当業者であれば容易になし得ることである。

よって、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)まとめ
本件特許発明1ないし5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて、また、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求人の主張する無効理由2には理由があり、本件特許発明1ないし6についての特許は、無効とすべきものである。

7.無効理由3(進歩性欠如)

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明との相違点は、上記「6.(1)」に記載したとおりである。
そこで、上記[相違点]について検討すると、
甲第3号証には、内側面(第2側面)に、外耳の耳輪の脚の下で快適に適合するように設計され、耳成形品を所定位置に保持するための第1の突起404と、耳道の中へ浅く挿入され、耳道の曲線に密接に合致する第2の突起401と、を有する耳成形品であって、第1の突起404と第2の突起401との間に、外耳の輪郭とより自然に適合させるための谷間406を設け、また、外耳と密接に適合することができるように内側面(第2側面)の下部中心に耳甲介デハンプ407を設けてなる技術事項が記載(上記「第5 3.」を参照)されている。
ここで、第1の突起404と第2の突起401との間に設けられてなる「谷間406」について、「外耳の輪郭とより自然に適合させる」ためのものとされ、例えば甲第3号証の図1aによれば、この「谷間406」が設けられている部分に、耳甲介の内面に存在する耳輪脚(耳輪根)の隆起部分が入り込むようにもみえるが、甲第3号証には耳輪脚(耳輪根)などの隆起部分との関係についての明確な記載はない。また、そもそも当該耳成形品は、耳道の曲線に密接に合致する第2の突起401が浅くではあるものの耳道の中に挿入されるタイプのものであり、第1の突起404は、耳成形品を所定位置に保持するために耳輪脚の下に位置づけられるものである。そのため、外耳と密接に適合する耳甲介デハンプ407が設けられていることを踏まえても、第1の突起404と第2の突起401との間に設けられてなる「谷間406」が、耳成形品が耳の中に配置されたときに、耳成形品の耳甲介の内面に対向する面のより広い部分が耳甲介の内面に従った接触面を提供して密着できるようにするためのものであるとまでは特定することができない。
したがって、甲第3号証における「谷間406」が、本件特許発明1でいう「湾曲部(21)」に相当するとはいえず、甲第3号証には、相違点に係る構成が開示されているということはできない。

よって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲第3号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件の請求項2ないし6は、請求項1を直接または間接的に引用する請求項であり、本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)と同様な理由により、本件特許発明2ないし5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載の技術事項に基づいて、また、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載の技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)まとめ
本件特許発明1ないし5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載の技術事項に基づいて、また、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由3には理由がない。

8.無効理由4(進歩性欠如)

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明との相違点は、上記「6.(1)」に記載したとおりである。
そこで、上記[相違点]について検討すると、
上記「7.(1)」で述べたとおり、甲第3号証には、相違点に係る構成が開示されているということはできず、当該相違点に係る構成が周知の技術事項であるとはいえない。

よって、本件特許発明1は、甲1発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件の請求項2ないし6は、請求項1を直接または間接的に引用する請求項であり、本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)と同様な理由により、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)まとめ
本件特許発明1ないし6は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由4には理由がない。

第7 むすび

以上のとおり、平成31年1月4日付けの訂正請求による訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから、当該訂正を認めない。

そして、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当する。
したがって、本件特許発明1ないし6についての特許は、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-28 
結審通知日 2019-09-02 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2010-510247(P2010-510247)
審決分類 P 1 113・ 561- ZB (H04R)
P 1 113・ 855- ZB (H04R)
P 1 113・ 113- ZB (H04R)
P 1 113・ 121- ZB (H04R)
P 1 113・ 537- ZB (H04R)
P 1 113・ 841- ZB (H04R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 冨澤 直樹  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
山澤 宏
登録日 2012-05-18 
登録番号 特許第4994497号(P4994497)
発明の名称 改良された耳ユニットと呼ばれる装置  
代理人 飯田 圭  
代理人 源田 正宏  
代理人 山本 飛翔  
代理人 田部 元史  
代理人 三縄 隆  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 丹澤 一成  
代理人 山本 航介  
代理人 黒田 晋平  
代理人 森本 晃生  
代理人 村山 靖彦  

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