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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1359402
審判番号 不服2018-17494  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-28 
確定日 2020-01-29 
事件の表示 特願2016-521940「アスレチック運動属性からのペースとエネルギー消費量の計算」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日国際公開、WO2015/057679、平成28年12月22日国内公表、特表2016-539673〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)10月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年10月14日、同年11月5日、いずれも米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月12日付けの拒絶理由が通知され、同年9月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、さらに、平成30年2月23日付けの拒絶理由が通知され、同年6月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年8月23日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、その後、令和元年6月4日に上申書が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、本件補正前の平成30年6月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載である、
「【請求項1】
ユーザの外肢に装着されるように構成された単体装置であって、
プロセッサと、
前記ユーザの動きデータを取得するように構成されたセンサと、
コンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実行命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、少なくとも、
前記ユーザの外肢に装着されている間に前記センサから、前記ユーザの動きの結果として前記センサによって生成された1つ以上のデータポイントを含むデータストリームを取得するステップと、
前記1つ以上のデータポイントを1つ以上のしきい値との比較によって検証するステップと、
前記1つ以上のデータポイントを前記ユーザの動きを表すデータセットに変換するステップと、
前記データセットから1つ以上の動き属性を計算するステップと、
前記1つ以上の動き属性に基づいて、複数の運動モデルから1つの運動モデルを選択するステップと、ここで、前記複数の運動モデルの各運動モデルは、1つ以上の活動の実行中に1人以上のユーザから収集されたトレーニングデータを含み、
前記1つ以上の動き属性を、前記選択された運動モデルへの入力値として利用するとともに、前記選択された運動モデルからの出力を受信するステップであって、前記出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである、ステップと、を実行する
非一時的コンピュータ可読媒体と、
を含む、単体装置。」を、
「【請求項1】
ユーザの外肢に装着されるように構成された単体装置であって、
プロセッサと、
前記ユーザの動きデータを取得するように構成されたセンサと、
コンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実行命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、少なくとも、
前記ユーザの外肢に装着されている間に前記センサから、前記ユーザの動きの結果として前記センサによって生成された1つ以上のデータポイントを含むデータストリームを取得するステップと、
前記1つ以上のデータポイントを1つ以上のしきい値との比較によって検証するステップと、
前記1つ以上のデータポイントを前記ユーザの動きを表すデータセットに変換するステップと、
前記データセットから1つ以上の動き属性を計算するステップと、
前記データセットからの前記1つ以上の動き属性を複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較するステップと、ここで、前記複数の運動モデルの各運動モデルは、1つ以上の活動の実行中に1人以上のユーザから収集されたトレーニングデータを含み、
前記データセットからの前記1つ以上の動き属性を前記複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較した結果に基づいて、複数の運動モデルから1つの運動モデルを前記データセットからの前記1つ以上の動き属性とのベストマッチとして選択するステップと、
前記1つ以上の動き属性を、前記運動モデルへの入力値として入力するステップと、
前記運動モデルからの出力を受信するステップであって、前記出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである、ステップと、を実行する
非一時的コンピュータ可読媒体と、
を含む、単体装置。」(下線は補正箇所である。)とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)限定的減縮について
上記請求項1についての補正で、「前記選択された運動モデルへの入力値」及び「前記選択された運動モデルからの出力」を「前記運動モデルへの入力値」及び「前記選択された運動モデルからの出力」とする補正事項は、本件補正前では「前記1つ以上の動き属性を、運動モデルへの入力値として利用するとともに、運動モデルからの出力を受信するステップであって、前記出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである」ことにおいて、「運動モデル」が「前記1つ以上の動き属性に基づいて、複数の運動モデルから1つの運動モデルを選択」したものに限定されていたが、この限定を省くことになり、「1つ以上の動き属性に基づいて」「選択」されたものではない、他の「運動モデル」を用いる態様を含むことになる。
してみれば、当該補正事項は、いわゆる限定的減縮に該当するものといえないことから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、さらに、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正、同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明かである。
したがって、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし4号のいずれに掲げる事項を目的とするものに該当しない。

(2)独立特許要件について
上記(1)で指摘した補正事項以外の請求項1についての本件補正は、発明特定事項の記載箇所を変更する部分があるによせ、請求人の「今般の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものです。」との主張を受け入れて、上記(1)で指摘した補正事項を含めて、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとし、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

ア サポート要件・実施可能要件について
(ア)上記請求項1についての補正で、「前記データセットからの前記1つ以上の動き属性を複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較するステップ」、「前記データセットからの前記1つ以上の動き属性を前記複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較した結果」に基づいて「複数の運動モデルから1つの運動モデルを前記データセットからの前記1つ以上の動き属性とのベストマッチとして」選択することが追加(下線部が追加部分である)されているが、「動き属性」を「運動モデル」と、どのようにして「比較」するのか本願明細書には記載されていない。

(イ)本願明細書の記載
本願明細書には、動き属性と「運動」モデルとを比較した直接的な記載はないものの、動き属性と「モデル」とを比較した記載については、以下のとおりである。なお、下線は当審において付与した。
「本明細書に述べるシステム及び方法は、活動データ(実時間活動データなど)から計算された属性を1つ以上のモデルと比較し、1つ以上のモデルは、スポーツ選手が行った活動タイプに関して取得されたデータを含まなくてもよい(また、エネルギー消費量計算などのために分類されないことがある)。」(【0040】)
「更には、計算された属性が、1つ以上の構成されたモデルと関連付けられた属性と比較され、それにより、計算された属性に対応する動き信号(センサ出力値)を出力しながらユーザによって消費されている酸素量を予測するために使用され得る。・・・次に、1つ以上の計算された属性が、1つ以上のモデルと関連付けられた1つ以上の属性と比較されてもよく、サッカー競技中にユーザによって消費される酸素の量の推定が行われてもよい。」(【0053】)
「本明細書に記載されたシステム及び方法は、活動データから計算された属性(実時間活動データなど)を1つ以上のモデルと比較してもよく、その1つ以上のモデルは、その活動タイプに関して取得されたデータを含まなくてもよい。・・・装置は、受け取ったバスケットボール活動データを処理して(例えば、フローチャート600のブロック606など)、計算された属性を1つ以上のモデルと比較し得る。」(【0061】)
「置から受け取ったセンサデータから計算された属性とモデルを比較するために使用されることがある関連した重量値を計算するために使用されてもよい。」(【0062】)
「計算された属性に最適なモデルを示す。記憶されたモデルに対する計算された属性の比較と、その後の計算された属性の最適モデルの選択は、図14と関連して説明される。」(【0063】)
「図14は、受け取ったセンサデータからの1つ以上の計算属性を1つ以上のエキスパートモデルと比較する1つ以上のプロセスを表すフローチャート1400を示す。」(【0123】)
「1つの例では、20個の属性が、各エキスパートモデルと関連付けられた20個の重みと比較されてもよく、その属性は、図9A?図9Eと図17A?図17Eなどに関して述べられたプロセスによって計算される。」
」(【0124】)
「ブロック1720は、エキスパート選択モジュールに対する1つ以上の属性を伝達する1つ以上のプロセスを表す。したがって、エキスパート選択モジュールは、1つ以上の計算された属性を1つ以上のエキスパートモデルと比較する1つ以上のプロセスを含んでもよく、エキスパートモデルは、ユーザが行っている活動と関連付けられた出力を予測/推定するために使用されてもよい。」(【0155】」と記載されるのみで、どのようにして比較するのかを示した具体的に比較した例は記載されていない。
さらに、「ベストマッチ」については、
「一例では、ブロック610は、ブロック608から計算された属性に対してベストマッチ又は最適のモデルを選択する1つ以上のプロセスを表す。前述したように、前記最適モデルは、ユーザの活動を監視するセンサ装置から受け取ったデータに最も近い記憶されたトレーニングデータを表す。」【0064】と記載されるのみであり、比較した結果、ベストマッチとして選択した「例」も記載されていない。
(なお、上記本願明細書には、モデルについて、ユーザによって消費されている酸素量を予測するために使用されることも記載されているが、下記のイ(ウ)gでも述べるが、本件補正によって補正された特許請求の範囲には、上記請求項1の従属項である請求項3として、動きをランニング又はウォーキングとして分類するためのもの、請求項4として、ユーザのスピードを計算するためのものとしては特定されているが、ユーザによって消費されている酸素量を予測するために使用されることについて特定する請求項はないことに留意されたい。)

(ウ)判断
上記本願明細書の記載を参照しても、動き属性とモデルとを「比較」するとの記載しかないことから、「動き属性」と(運動)「モデル」とをどのように「比較」するのか、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
また、動き属性と運動モデルとを「具体的に」比較し、そして、ベストマッチとして選択した「例」も記載されていないことから、発明の詳細な説明においてサポートされたものともいえない。
よって、補正発明について、発明の詳細な説明が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、補正発明の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことから、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

進歩性について
(ア)引用文献1の記載事項について
本願の最先の優先日前に頒布され、下記第3の2の原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である引用文献1(国際公開2013/109780号)には、次の事項が記載されている。なお、訳に付されている下線は、下記のイで記載する引用発明の認定に関係する部分として、当審が付与したものである。
(1ア)「What is claimed is:
1. A unitary apparatus configured to be worn on an appendage of a user, comprising:
a processor;
a sensor configured to capture motion data of the user;
a non-transitory computer-readable medium comprising computer-executable instructions that when executed by the processor perform at least:
capturing motion data of the user with the sensor while being worn on an appendage of the user;
quantifying steps taken by the user based upon the motion data, comprising:
detecting arm swings peaks and bounce peaks in the motion data;
determining whether to utilize the arm swing peaks or the bounce peaks in the motion data to quantify the steps; and
estimating the quantity of steps taken by the user during a time period based on at least one of the utilized arm swing peaks or bounce peaks in the data;
attempting to classify the data into an activity category based upon the quantification of steps during the time period, and
at the processor of the unitary apparatus, calculating an energy expenditure value. 」
(訳:特許請求の範囲
1.ユーザの外肢に装着されるように構成された単一装置であって、
プロセッサと、
ユーザの動作データを取得するように構成されたセンサと、
前記プロセッサによって実行される少なくとも以下のコンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、を有し、
前記コンピュータ実行命令は、
前記ユーザの外肢に装着されている間に前記センサで前記ユーザの動作データを取得する工程と、
前記動作データに基づいて前記ユーザが踏むステップを定量化する工程であって、
前記動作データの腕振りピークとバウンスピークを検出することと、
前記ステップを定量化するために前記動作データの前記腕振りピーク又は前記バウンスピークを利用するかどうかを決定することと、
前記利用された前記データの腕振りピーク又はバウンスピークの少なくとも一方に基づいて、時間期間中に前記ユーザが踏んだステップの量を推定することとを含む工程と、
前記時間期間中の前記ステップの定量化に基づいて、前記データを活動カテゴリに分類しようとする工程と、
前記単一装置の前記プロセッサでエネルギー消費値を計算する工程と、含む単一装置。)

(1イ)「[09]Certain implementations may quantify steps taken by the user based upon the motion data, such as by detecting arm swings peaks and bounce peaks in the motion data. The quantification may be done based entirely upon data collected from a single device worn on the user's arm, such as for example, proximate to the wrist. In one embodiment, motion data is obtained from an accelerometer. Accelerometer magnitude vectors may be obtained for a time frame and values, such as an average value from magnitude vectors for the time frame may be calculated. The average value (or any other value) may be utilized to determine whether magnitude vectors for the time frame meet an acceleration threshold to qualify for use in calculating step counts for the respective time frame. Acceleration data meeting a threshold may be placed in an analysis buffer.」
(訳:[09]特定の実施態様は、動作データの腕振りピークとバウンスピークを検出することなどによって、ユーザが踏んだステップを動作データに基づいて定量化することができる。定量化は、例えば手首の近くなど、ユーザの腕に装着された単一装置から収集されたデータに完全に基づいて行われうる。一実施形態では、動作データは、加速度計から得られる。加速度計のマグニチュードベクトルは、時間フレームに関して得られ、その時間フレームのマグニチュードベクトルから平均値などの値が計算されうる。平均値(又は、他の値)を利用して、時間フレームのマグニチュードベクトルが、それぞれの時間フレームのステップ数を計算する際に使用できる加速度しきい値を満たすかどうかを判定することができる。しきい値を満たす加速度データは、解析バッファに入れられうる。)

(1ウ)「[11] In one embodiment, the sensor signals (such as accelerometer frequencies) and the calculations based upon sensor signals (e.g., a quantity of steps) may be utilized in the classification of an activity category, such as either walking or running, for example. 」
(訳:[11]一実施形態において、センサ信号(加速度計周波数など)と、センサ信号に基づく計算(例えば、ステップの量)が、例えばウォーキングやランニングなどの活動カテゴリの分類に利用されうる。)

(1エ)「[65]In this regard, certain data may not be used to determine actual steps but nonetheless may be used to determine classification of an athletic activity (e.g., walking, running, playing basketball, etc.) or calculating energy expenditure, among other determinations (see, e.g., block 407). In one embodiment, the first buffer may have data indicative of motion or other physical activity, for example, accelerometer data (alone or in combination with data from one or more other sensors) may comprise frequencies indicative of detected activity. The activity, however, may not be activity comprising steps. Example embodiments of classifying activity and calculating energy expenditure are discussed below, including data not utilized to quantify steps, may be found below in relation to discussions of at least FIGS. 9-12.
[66] Aspects of this disclosure may utilize the sensor data to quantify activity, such as a user stepping. In yet other embodiments, steps may be detected, however, the detected steps may not signify an activity as to which the device or process is configured to detect. For example, a device (or plurality of devices) may be configured to detect walking and/or running, but not a shuffling motion commonly performed in a sporting environment, such as a basketball game. In this regard, activity within several sports may cause the user to swing their arms and/or bounce, however, are not indicative of walking or running. For example, a defensive basketball player often has to shuffle in several directions, however, is not walking or running. Aspects of this disclosure relate to increasing the accuracy of step counting, and therefore, may implement processes to remove such movements from step counting determinations.」
(訳:[65]この点で、特定のデータは、実際のステップの決定に使用されないこともありうるが、それにも関わらず、他を決定する中でも特に、アスレチック活動の分類の決定(例えば、ウォーキング、ランニング、バスケットボールなど)、又はエネルギー消費を計算するために使用されうる(例えばブロック407を参照)。一実施形態では、第1のバッファは、運動や他の身体活動を示すデータを有することができ、例えば、加速度計データ(単独又は1つ若しくは複数の他のセンサからのデータとの組み合わせで)は、検出された活動を示す周波数を含むことができる。但し、活動は、ステップを含む活動でなくてもよい。活動を分類しエネルギー消費を計算する例示的実施形態は、後述され、ステップを定量化するために利用されないデータを含み、少なくとも図9?図12の考察と関連して後述されうる。
[66]この開示の態様は、センサデータを利用してユーザステップなどの活動を定量化することができる。更に他の実施形態では、ステップが検出されうるが、検出されたステップは、検出するように構成された装置又はプロセスに関する活動を示さなくてもよい。例えば、装置(又は、複数の装置)は、バスケットボールゲームなどのスポーツ環境で一般に行なわれる動き回る運動ではなく、ウォーキング及び/又はランニングを検出するように構成されうる。しかしながら、幾つかのスポーツ内の活動は、ユーザに腕を振らせかつ/又は飛び跳ねさせるが、ウォーキング又はランニングのことを示すわけではない。例えば、ディフェンスのバスケットボール選手は、多くの場合、幾つかの方向に動き回るはずであるが、ウォーキングもランニングもしない。この開示の態様は、ステップ計数の精度を高めることに関し、これにより、そのような動きをステップ計数決定から除去するプロセスを実施することができる。」

(1オ)「[95]Further aspects of this disclosure relate to classifying the user's athletic or physical movements based upon the sensor data. Embodiments disclosed herein relate to systems and methods that may be used on a portable device configured to be worn on an appendage (such as an arm or leg) to collect activity data and use the collected activity data to determine what activity the user is engaging in. FIG. 9 is flowchart 900 showing an illustrative example of classifying activity and optionally determining speed in accordance with one embodiment. For simplicity, the activity classifications provided in flowchart 900 are "running", "walking, and "other," however, those skilled in the art will appreciate that other classifications may be implemented in view of this disclosure.」
(訳:[95]この開示の更に他の態様は、センサデータに基づくユーザのアスレチック又は身体運動の分類に関する。本明細書に開示された実施形態は、活動データを収集するために外肢(腕や脚など)に装着され、収集した活動データを使用してユーザがどの活動に関わっているかを決定するように構成された携帯機器で使用されうるシステム及び方法に関する。図9は、一実施形態により活動を分類し必要に応じて速度を決定する説明的な例を示すフローチャート900である。単純化するため、フローチャート900で提供された活動分類は、「ランニング」、「ウォーキング」及び「その他」であるが、当業者は、この開示を考慮して他の分類が実施されうることを理解するであろう。)

(1カ)「[100]In one embodiment, speed may be determined based upon based upon the step frequency, standard deviation and/or a feature of the user. For example, in one embodiment, the speed may be calculated based on the linear combination of the user's height and the step frequency. Those skilled in the art will appreciate that other features, including but not limited to, sex, weight, and/or other features may be utilized. 」
(訳:[100]速度は、ユーザのステップ周波数及び/又は特徴に基づいて計算されうる。例えば、一実施形態では、速度は、ユーザの身長とステップ周波数の一次結合に基づいて計算されうる。当業者は、性別、体重及び/又は他の特徴を含むがこれらに限定されない他の特徴が利用されうることを理解するであろう。)

(1キ)「[106] As discussed above, flowchart 900 provides one of many embodiments that may be executed in accordance with this disclosure. For example, system 100 may process data received from one or more of the sensors described above to attempt to classify a user's activity. For example, system 100 may compare a sensor signal to one or more signal or activity "templates" or "signatures" corresponding to selected activities. In certain embodiments, templates may be created by attaching sensors to a user and monitoring signals generated when the user performs various activities. In accordance with certain embodiments, an activity may be associated with an activity template specific to user 124. In one such embodiment, user 124 may be assigned a default template for a specific activity unless a specific template has been assigned to that activity. Thus, user 124 may create or receive (but is not required to create or receive) an activity template that may be more accurate than a default template because the template is more specific to the user and/or the activity. User 124 may have the option to create templates for one or more predefined or undefined activities. A specific or otherwise new template might be shared among the community of users. Shared templates may be based on a variety of different sensors. In some embodiments templates may be refined or adjusted for use with different sensors. For example, a template that was created for use with a shoe based sensor may be refined for use with a wrist-worn sensor.
[107] An activity template may be created from data obtained from one or more of a plurality of different sensors. For example, a first group of sensors (e.g. sensors 126 and 138) may be utilized in the formation or refinement of a first activity template; however, a second group of sensors (e.g., sensors 128 and 140) may be utilized in the formation or refinement of a second activity template. In yet further embodiments, a third group of sensors, such as sensors 128 and 140 (and/or other sensors), may be utilized in the creation of the first activity template for a second user (e.g., not user 124) than utilized for the formation of the same activity template as user 124. Thus, in accordance with certain embodiments, there is no requirement that data from a specific sensor be received for either: 1) the same activity template for different users; and/or 2) different activity templates for the same user.
[108] In one embodiment, a wrist mounted accelerometer, which may be a multi-axis accelerometer, may be attached to a user and signal templates based on the accelerometer output when the user runs, walks, etc. may be created. The templates may be functions of the sensor(s) used and/or the locations of the sensor(s). In some embodiments, a single signal (or value) is created by combining multiple signals (or values). For example, three outputs of a three axis accelerometer may be summed or otherwise combined to create one or more signals. Example step 902 may include comparing a signal, multiple signals or a combination of signals to one or more templates. In some embodiments, a best match approach may be implemented in which every activity is attempted to be classified. In other embodiments, if a signal, multiple signals or combination of signals does not sufficiently match a template, the activity may remain unclassified. 」
(訳:[106] 前述のように、フローチャート900は、この開示により実行されうる多くの実施形態のうちの1つを提供する。例えば、システム100は、ユーザの活動を分類するために前述のセンサのうちの1つ以上から受け取ったデータを処理することができる。例えば、システム100は、センサ信号を、選択された活動に対応する1つ以上の信号又は活動「テンプレート」又は「識別特性」と比較することができる。特定の実施形態において、テンプレートは、センサをユーザに取り付け、ユーザが様々な活動を行なうときに生成された信号を監視することによって作成されうる。特定の実施形態によれば、活動は、ユーザ124に固有の活動テンプレートと関連付けられてもよい。1つのそのような実施形態において、ユーザ124は、特定のテンプレートが特定の活動に割り当てられない限り、その特定の活動のためのデフォルトテンプレートが割り当てられうる。したがって、ユーザ124は、テンプレートが、ユーザ及び/又は活動に固有なので、デフォルトテンプレートより正確でありうる活動テンプレートを作成するか又は受け取ることができる(但し、作成も受け取りも必須ではない)。ユーザ124は、1つ以上事前定義されるか又は未定義の活動のテンプレートを作成する選択肢を有することができる。特定のテンプレートあるいは新しいテンプレートが、ユーザのコミュニティ間で共有されうる。共有されたテンプレートは、様々な異なるセンサに基づいてもよい。幾つかの実施形態において、テンプレートは、様々なセンサと共に使用するように改良又は調整されうる。例えば、靴を利用するセンサと共に使用するように作成されたテンプレートは、手首装着型センサと共に使用するように改良されうる。
[107]活動テンプレートは、複数の異なるセンサのうちの1つ以上から得たデータから作成されうる。例えば、第1群のセンサ(例えば、センサ126及び138)が、第1の活動テンプレートの形成又は改良に利用されうるが、第2群のセンサ(例えば、センサ128及び140)が、第2の活動テンプレートの形成又は改良に利用されうる。更に他の実施形態において、センサ128及び140(及び/又は他のセンサ)などの第3群のセンサが、ユーザ124と同じ活動テンプレートの形成に利用されずに、第2のユーザ(例えば、ユーザ124ではない)の第1の活動テンプレートの作成に利用されうる。したがって、特定の実施形態によれば、1)異なるユーザに同じ活動テンプレート、及び/又は2)同じユーザに異なる活動テンプレートのために、特定のセンサからデータを受け取る必要はない。
[108]一実施形態において、手首取付型加速度計は、多軸加速度計でもよく、ユーザに取り付けられ、ユーザが走ったり歩いたりするときの加速度計出力に基づいて信号テンプレートが作成されうる。テンプレートは、センサ及び/又はセンサの場所の関数でありうる。幾つかの実施形態において、複数の信号(又は、値)を組み合わせることによって単一信号(又は、値)が作成される。例えば、3軸加速度計の3つの出力が加算されるか他の方法で組み合わされて1つ以上の信号が作成されうる。例示的なステップ902は、信号、複数の信号、又は信号の組み合わせを、1つ以上のテンプレートと比較することを含むことができる。幾つかの実施形態において、分類しようとする活動ごとにベストマッチなアプローチが実施されうる。他の実施形態において、信号、複数の信号、又は信号の組み合わせが、テンプレートに十分に一致しない場合、活動は、分類されないままでありうる。)

(イ)引用発明について
a 記載事項の整理
(a)摘記(1ア)の「前記ステップを定量化するために前記動作データの前記腕振りピーク又は前記バウンスピークを利用するかどうかを決定すること」は、具体的には、摘記(1イ)に記載されている「動作データは、加速度計から得られる。」「使用できる加速度しきい値を満たすかどうかを判定」することである。

(b)摘記(1イ)の「それぞれの時間フレームのステップ数」及び摘記(1カ)の「ステップ周波数」は、摘記(1ア)の「時間期間中に前記ユーザが踏んだステップの量」と物理的に同じものであるから、以下の引用発明においては「ステップの量」と記載することとする。

(c)摘記(1ア)の「活動カテゴリに分類」することは、具体的には、摘記(1ウ)の「ウォーキングやランニングなどの活動カテゴリの分類」、摘記(1オ)の「「ランニング」、「ウォーキング」及び「その他」である」「活動分類」に分類することである。

(d)摘記(1キ)は、「活動テンプレート」に関する記載部分であるが、その摘記(1キ)に「ユーザの活動を分類するために前述のセンサのうちの1つ以上から受け取ったデータを処理することができる。例えば、システム100は、センサ信号を、選択された活動に対応する1つ以上の信号又は活動「テンプレート」又は「識別特性」と比較することができる。」と記載されているとおり、上記摘記(1ア)に記載されている活動カテゴリの分類に利用されるものであるから、下記bの引用発明の技術的事項として、それを記載する。
そして、摘記(1キ)には、「活動テンプレート」と「テンプレート」との記載が混在しているが、後者も活動についての「テンプレート」であるから、「活動テンプレート」と記載することとする。

b 引用発明
上記摘記(1ア)?(1キ)及び上記aの記載事項の整理を踏まえると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、図面番号は省略して記載した。
「ユーザの外肢に装着されるように構成された単一装置であって、プロセッサと、ユーザの動作データを取得するように構成されたセンサと、前記プロセッサによって実行される少なくとも以下のコンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、を有し、
前記コンピュータ実行命令は、前記ユーザの外肢に装着されている間に前記センサで前記ユーザの動作データを取得する工程と、前記動作データに基づいて前記ユーザが踏むステップを定量化する工程であって、前記動作データの腕振りピークとバウンスピークを検出することと、前記ステップを定量化するために前記動作データの前記腕振りピーク又は前記バウンスピークを利用するかどうかを決定することと、前記利用された前記データの腕振りピーク又はバウンスピークの少なくとも一方に基づいて、時間期間中に前記ユーザが踏んだステップの量を推定することとを含む工程と、前記時間期間中の前記ステップの定量化に基づいて、前記データを活動カテゴリに分類しようとする工程と、前記単一装置の前記プロセッサでエネルギー消費値を計算する工程と、含む単一装置において、
前記動作データは、加速度計から得られるもので、使用できる加速度しきい値を満たすかどうかを判定し、しきい値を満たす加速度データは解析バッファに入れられ、加速度計のマグニチュードベクトルは、時間フレームに関して得られ、時間フレームのマグニチュードベクトルが、上記ステップの量を計算し、そのステップの量が、ウォーキングやランニングなどの活動カテゴリの分類に利用され、さらに、活動を分類し必要に応じて速度を決定するもので、速度は、ユーザのステップの量及び/又は特徴に基づいて計算されうるものであり、
上記活動カテゴリの分類をする際に、信号、複数の信号、又は信号の組み合わせを、1つ以上の活動テンプレートと比較し、分類しようとする活動ごとにベストマッチなアプローチが実施され、信号、複数の信号、又は信号の組み合わせが、活動テンプレートに十分に一致しない場合、活動は、分類されないままでありうるものであり、
ここで、テンプレートは、関数であり、ユーザが走ったり歩いたりするときの加速度計出力に基づいて作成され、ユーザのコミュニティ間で共有されうるものである、
単一装置。」(以下「引用発明」という。)

(ウ)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
a 単体装置の全体構成について
引用発明の「ユーザの外肢に装着されるように構成された単一装置であって、プロセッサと、ユーザの動作データを取得するように構成されたセンサと、前記プロセッサによって実行される少なくとも以下のコンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、を有」する「単一装置」は、補正発明の「ユーザの外肢に装着されるように構成された単体装置であって、プロセッサと、前記ユーザの動きデータを取得するように構成されたセンサと、コンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実行命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、少なくとも、」「ステップと、を実行する非一時的コンピュータ可読媒体と、を含む、単体装置」に相当する。

b データの取得について
補正発明における「データポイント」、「データストリーム」は、本願明細書に「別個のセンサから1つ以上の受信データポイントを受け取った場合、データストリームが解析され得る」(【0069】)と記載されているように、データポイントは一つのデータ、そのデータが複数あるものをストリームという意味である。
してみれば、引用発明の「前記ユーザの外肢に装着されている間に前記センサで前記ユーザの動作データを取得する工程」は、補正発明の「前記ユーザの外肢に装着されている間に前記センサから、前記ユーザの動きの結果として前記センサによって生成された1つ以上のデータポイントを含むデータストリームを取得するステップ」に相当する。

c しきい値との比較について
引用発明の「前記動作データは、加速度計から得られるもので、使用できる加速度しきい値を満たすかどうかを判定し、しきい値を満たす加速度データは解析バッファに入れられ」ことは、補正発明の「前記1つ以上のデータポイントを1つ以上のしきい値との比較によって検証するステップ」に相当する。

d 動き属性について
補正発明の「データセットに変換する」こと及び「動き属性を計算する」ことについて、本願明細書には「1つの例では、センサから受け取った1つ以上のデータポイントは、ユーザの1つ以上の動きを表すデータセットに集約され得る。したがって、1つ以上のデータポイントは、1つ以上の傾向及び/又はメトリックをデータから抽出可能な方法でデータを表すように処理され得る。1つの例では、加速度計から出力された加速度データは、法線ベクトルを計算するために処理(変換)され得る。」(【0047】)、「1つの例では、受け取ったデータから1つ以上の属性が計算されてもよく、属性は、ユーザの1つ以上の動きを表すデータセットに対して行われる1つ以上の変換処理の後で計算されてもよい。」(【0048】)と記載されいる。
そうすると、引用発明の「前記動作データは、加速度計から得られ」、「加速度計のマグニチュードベクトルは、時間フレームに関して得られ、時間フレームのマグニチュードベクトルが、上記ステップの量を計算」することは、補正発明の「前記1つ以上のデータポイントを前記ユーザの動きを表すデータセットに変換するステップと、前記データセットから1つ以上の動き属性を計算するステップ」に相当する。

e 運動モデルについて
テンプレートとは、一般にデータ処理の各種の雛形パターンのことで、引用発明の「活動テンプレート」は「ユーザが走ったり歩いたりするときの加速度計出力に基づいて」「作成される」ものであり、(1エ)に鑑みれば、「ユーザが走ったり歩いたりする」ことはトレーニングともいえることから、引用発明の「活動テンプレート」は、補正発明の「1つ以上の活動の実行中にユーザから収集されたトレーニングデータを含」むものに相当するといえる。そして、引用発明の「活動テンプレート」は「ユーザのコミュニティ間で共有されうる」ものであるから、ユーザは「1人以上」であるといえる。
してみれば、引用発明の「活動テンプレート」は、補正発明の「運動モデルは、1つ以上の活動の実行中に1人以上のユーザから収集されたトレーニングデータを含」む「運動モデル」に相当するものである。

f 運動モデルとの比較・選択について
上記eを踏まえると、引用発明の「信号、複数の信号、又は信号の組み合わせを、1つ以上の活動テンプレートと比較」することと、補正発明の「前記データセットからの前記1つ以上の動き属性を複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較するステップ」とは、引用発明の「信号、複数の信号、又は信号の組み合わせ」と補正発明の「前記データセットからの前記1つ以上の動き属性」とが具体的には加速度計から得られた事象であるから、「加速度計から得られた事象と複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較するステップ」の点で共通する。
そして、引用発明の「信号、複数の信号、又は信号の組み合わせが、活動テンプレートに十分に一致しない場合、活動は、分類されないままであ」り、「分類しようとする活動ごとにベストマッチなアプローチが実施され」ることは、複数ある活動テンプレートから分類しようとする活動ごとにベストマッチな活動テンプレートを実施することといえるから、引用発明の「信号、複数の信号、又は信号の組み合わせを、1つ以上の活動テンプレートと比較し、分類しようとする活動ごとにベストマッチなアプローチが実施され、信号、複数の信号、又は信号の組み合わせが、活動テンプレートに十分に一致しない場合、活動は、分類されないままでありうるものであ」るということと、補正発明の「複数の運動モデルから1つの運動モデルを前記データセットからの前記1つ以上の動き属性とのベストマッチとして選択するステップ」とは、「複数の運動モデルから1つの運動モデルを加速度計から得られた事象とのベストマッチとして選択するステップ」の点で共通する。

g 動きを識別するためのものについて
補正発明を具体化した請求項2には「前記運動モデルは、直線運動モデルである請求項1に記載の単体装置」、請求項3には「前記直線運動モデルの出力は、前記ユーザの前記動きをランニング又はウォーキングとして分類するためのものである、請求項2に記載の単体装置」、そして、請求項4には「前記直線運動モデルの出力は、前記ユーザのスピードを計算するためのものである、請求項2に記載の単体装置」と記載されていることから、「前記1つ以上の動き属性を、前記運動モデルへの入力値として入力するステップと、前記運動モデルからの出力を受信するステップであって、前記出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである、ステップ」において、「直線移動又は別の動き形態として識別する」とは、具体的にはランニング又はウォーキングとして分類することであり、そして、「運動モデルからの出力」である「識別するためのもの」とはスピード(速度)という態様を含むものであるといえる。
一方、引用発明は「そのステップの量が、ウォーキングやランニングなどの活動カテゴリ」「を分類し必要に応じて速度を決定するもので、速度は、ユーザのステップの量及び/又は特徴に基づいて計算されうるものであ」ることは、ユーザのステップの量を入力値として入力し、そのステップの量に基づいて速度を計算して出力することであるといえる。
そして、上記dを踏まえると、引用発明の「ステップの量」は補正発明の「1つ以上の動き属性」であるから、引用発明の「そのステップの量が、ウォーキングやランニングなどの活動カテゴリ」「を分類し必要に応じて速度を決定するもので、速度は、ユーザのステップの量及び/又は特徴に基づいて計算されうるものであ」ることと、補正発明の「前記1つ以上の動き属性を、前記運動モデルへの入力値として入力するステップと、前記運動モデルからの出力を受信するステップであって、前記出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである、ステップ」とは、「前記1つ以上の動き属性を、入力値として入力するステップと、出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである、ステップ」の点で共通する。

h 一致点及び相違点について
上記a?gを踏まえると、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「ユーザの外肢に装着されるように構成された単体装置であって、
プロセッサと、
前記ユーザの動きデータを取得するように構成されたセンサと、
コンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実行命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、少なくとも、
前記ユーザの外肢に装着されている間に前記センサから、前記ユーザの動きの結果として前記センサによって生成された1つ以上のデータポイントを含むデータストリームを取得するステップと、
前記1つ以上のデータポイントを1つ以上のしきい値との比較によって検証するステップと、
前記1つ以上のデータポイントを前記ユーザの動きを表すデータセットに変換するステップと、
前記データセットから1つ以上の動き属性を計算するステップと、
加速度計から得られた事象を複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較するステップと、ここで、前記複数の運動モデルの各運動モデルは、1つ以上の活動の実行中に1人以上のユーザから収集されたトレーニングデータを含み、
前記加速度計から得られた事象を前記複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較した結果に基づいて、複数の運動モデルから1つの運動モデルを前記加速度計から得られた事象属性とのベストマッチとして選択するステップと、
前記1つ以上の動き属性を、入力値として入力するステップと、
出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである、ステップと、を実行する
非一時的コンピュータ可読媒体と、
を含む、単体装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
運動モデルをベストマッチとして選択する際に、運動モデルと比較する加速度計から得られた事象が、補正発明では、「1つ以上の動き属性」であるのに対し、引用発明では「信号、複数の信号、又は信号の組み合わせ」と記載されており、「ステップの量」(補正発明の「1つ以上の動き属性」)とは記載されていない点。

(相違点2)
1つ以上の動き属性を入力値として入力するもの、ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものを出力するものが、本願発明では、「運動モデル」であるのに対し、引用発明では、「活動テンプレート」(補正発明の「運動モデル」)とは記載されていない点。

(相違点3)
出力が、補正発明では「受信」されているのに対し、引用発明では「受信」されているかどうか不明である点。

(エ)判断
a 相違点についての判断
(a)相違点1について
引用発明は、「時間期間中の前記ステップの定量化に基づいて」すなわち「ステップ容量」に基づいて「活動カテゴリに分類しようとする」ものであるから、「加速度計から得られる」「信号、複数の信号、又は信号の組み合わせを、1つ以上の活動テンプレートと比較し」て「活動カテゴリの分類をする際に」、「加速度計から得られる」「信号、複数の信号、又は信号の組み合わせ」として「ステップの量」を用いることは、当業者が容易になし得たことである。

(b)相違点2について
引用発明は「ステップの量が、ウォーキングやランニングなどの活動カテゴリの分類に利用され、さらに、活動を分類し必要に応じて速度を決定するもので」あり、「上記活動カテゴリの分類をする際に」使用されるのが「活動テンプレート」であり、そして、「活動テンプレート」は「関数」であることを考慮すると、ステップの量を「活動テンプレート」に入力値として入力し、速度すなわちユーザの動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものを「活動テンプレート」の出力とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(c)相違点3について
引用発明は「プロセッサと、 ユーザの動作データを取得するように構成されたセンサと、前記プロセッサによって実行される少なくとも以下のコンピュータ実行命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、を有」する「装置」であるから、出力を「受信」することは自明のことであるから、相違点3は実質的な相違点ではない。

b 効果について
本願明細書に記載されている補正発明の効果は、引用文献1に記載されているものか、引用文献1の記載から当業者が予期し得る範囲のものである。

c 請求人の主張について
請求人は、令和元年6月4日に上申書を提出し、
「審判合議体におかれましては、審判請求書に記載の請求の理由に加えて、上記の補正案もご考慮の上、ご審理くださいますようお願い申し上げます。」と記載されていることから、まず、補正案について検討する。
(a)補正案について
補正案は、上記第2の1で記載した本件補正により補正された請求項1において、「ここで、前記複数の運動モデルの各運動モデルは、1つ以上の活動の実行中に1人以上のユーザから収集されたトレーニングデータを含み、」の部分の「1人以上のユーザ」を「複数のユーザ」に補正しようとするもので、その根拠として「上記の補正案の根拠は、本願明細書の段落0048等です。」と述べている。
請求人が指摘した
「【0048】
1つの例では、受け取ったデータから1つ以上の属性が計算されてもよく、属性は、ユーザの1つ以上の動きを表すデータセットに対して行われる1つ以上の変換処理の後で計算されてもよい。この点に関して、複数のユーザからのデータセットは、データセット内にない活動をしているユーザに対する比較として使用され得る。これは、ユーザの活動を活動タイプ(例えば、ウォーキング、ランニング、特定のスポーツ競技)に分類することなく行われてもよく、特定の実施形態では、ユーザは、モデルの属性値を得るために使用されたデータ内のトレーニングデータを収集する一部分として行われなかった活動を実行してもよい。属性計算の例は、図9A?図9Eに関して更に詳細に説明される。」と記載されている。ここで、「複数のユーザ」との記載はあるものの、「運動」モデルとの記載はなく、どのような解釈のもと、「複数の運動モデルの各運動モデルは、1つ以上の活動の実行中に複数ののユーザから収集されたトレーニングデータを含み、」との技術的事項を導いたのか不明であるものの、上記(ウ)eで述べたように、引用発明の「活動テンプレート」は「ユーザのコミュニティ間で共有されうる」ものであるから、「活動テンプレート」は「複数のユーザから収集されたトレーニングデータを含み」得るものである。
よって、上記補正案を考慮しても、下記の(オ)で述べるとおり、引用発明及び引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであることに変わりはない。

(b)文献1に対する主張について
(請求人の主張)
請求人は、平成29年9月19日に提出の意見書で「引用文献1の「テンプレート」は、本願請求項1に記載の「複数の運動モデル」に対応するものと解されますが、テンプレートへの入力値として1つ以上の動き属性を用いたり、ユーザの動きを分類するための出力を生成したりするようなことについての教示や示唆は引用文献1には一切ありません。」と、また、審判請求書で「仮に、本願請求項1の「データセットからの1つまたは複数の動き属性を1つまたは複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較する」という要件が、引用文献1の「例えば、システム100は、センサ信号を、選択された活動に対応する1つまたは複数の信号または活動「テンプレート」または「シグネチャ(注:当審では「識別特性」と訳した)」と比較することができる。」という記載に対応したと理解できたとしても、引用文献1からは、(1)データセットからの1つ以上の動き属性を複数の運動モデルのうちの1つの運動モデルと比較した結果に基づいて、複数の運動モデルから1つの運動モデルをデータセットからの1つ以上の動き属性とのベストマッチとして選択し、(2)1つ以上の動き属性を、運動モデルへの入力値として入力し、(3)運動モデルからの出力(出力は前記ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものである)を受信することまで示唆されるものではありません。」と記載している。
これを踏まえると、請求人は、引用文献1の「活動テンプレート」は補正発明の「複数の運動モデル」に対応するものであるが、引用文献1では、動き属性と活動テンプレートとの比較をしていない、動き属性を活動テンプレートに入力して、その出力としてユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものを受信していないということを主張しているといえる。

(主張に対する当審の判断)
上記aの「相違点についての判断」で述べたとおり、引用発明は、「時間期間中の前記ステップの定量化に基づいて」すなわち「ステップ容量」に基づいて「活動カテゴリに分類しようとする」ものであるから、活動カテゴリの分類をする際に、「ステップの量」(ステップの量が補正発明における「動き属性」に相当することは請求人においても異論はない)を活動テンプレートと比較すること、そして、「ステップの量」を活動テンプレートに入力して、ユーザの前記動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものを、その出力として受信することは当業者が容易になし得たことであり、「ステップの量」に基づいて「活動カテゴリに分類しようとする」引用発明においていかなる技術的根拠のものとで容易でないと主張しているのか不明であるから、上記請求人の主張をもってして、補正発明が、引用発明及び引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないとの判断には至らない。

(オ)小括
よって、補正発明は、引用発明及び引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし4号のいずれに掲げる事項を目的とするものに該当しない事項を含むものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
加えて、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとしても、補正発明について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、その発明の詳細な説明が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、そして、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そうすると、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものでもある。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成30年6月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1の前者に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
この出願の請求項1?20に係る発明は、その出願前(本願の最先優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開2013/109780号

3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)イ(ア)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2(1)で述べたとおり、補正発明において「前記1つ以上の動き属性を、前記運動モデルへの入力値として入力するステップと、前記運動モデルからの出力を受信するステップ」の部分の「前記運動モデル」が「前記選択された運動モデル」に限定されるものであり、その余の部分については、補正発明から発明特定事項を削除して上位概念化したものといえる。
本願発明の「前記運動モデル」を、「前記選択された運動モデル」に限定することは、「1つ以上の動き属性に基づいて、複数の運動モデルから1つの運動モデルを選択」「された運動モデル」に限定することであるが、引用発明は「上記活動カテゴリの分類をする際に」「1つ以上の活動テンプレートと比較し、分類しようとする活動ごとにベストマッチなアプローチが実施され」るものであるから、上記第2の2(2)イ(エ)a(b)の「相違点2について」で述べた「ステップの量を「活動テンプレート」に入力値として入力し、速度すなわちユーザの動きを直線移動又は別の動き形態として識別するためのものを「活動テンプレート」の出力とする」ところの「活動プレート」を、「前記選択された」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
その余の部分については、上記第2の2(2)イで述べたとおりであるから、本願発明も、補正発明と同様に、引用発明及び引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-30 
結審通知日 2019-09-03 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2016-521940(P2016-521940)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 572- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 536- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 隆一清水 裕勝  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
三崎 仁
発明の名称 アスレチック運動属性からのペースとエネルギー消費量の計算  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  

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