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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1359403
審判番号 不服2019-1268  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-30 
確定日 2020-01-29 
事件の表示 特願2017-545952号「センサ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月29日国際公開、WO2016/150826号、平成30年 3月29日国内公表、特表2018-508998号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年3月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年3月20日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成29年9月28日に国際出願翻訳文(特許請求の範囲、明細書及び図面)が提出され、平成30年7月2日付け(発送日 同年同月10日)で拒絶理由が通知され、同年9月19日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年9月21日付け(送達日 同年10月2日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成31年1月30日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年1月30日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、補正前(平成30年9月19日になされた手続補正によるもの)の特許請求の範囲の請求項1につき、
「【請求項1】
センサ装置(501,1001)であって、
- キャリア(503)であって、
- 平面状のキャリア表面(507)を有し、
- 前記キャリア表面に多数の光検出器(505,701)が配置されており、
- 前記光検出器それぞれが、前記キャリア表面(507)から離れた側である感光性センサ領域(509)を備えている、
前記キャリア(503)と、
- 前記センサ領域(509)上に電磁放射を光学的に結像させるための、前記センサ領域(509)に向かい合って配置されておりかつ光軸(105)を備えているレンズ系(101)であって、したがって前記レンズ系(101)が前記センサ領域(509)上に電磁放射を結像させることができる、前記レンズ系(101)と、
を備えており、
- 前記レンズ系(101)の光学的な結像収差を低減する目的で、前記多数の光検出器(505,701)が、少なくとも1つの光検出器(505,701)を備えており、前記少なくとも1つの光検出器の前記センサ領域(509)が、前記多数の光検出器(505,701)のうち、前記レンズ系(101)の前記光軸(105)を基準として前記少なくとも1つの光検出器(505,701)よりも前記光軸(105)の近くに前記キャリア表面(507)に配置されている光検出器(505,701)、のセンサ領域(509)の特性(513,515,517,1003,1005)とは異なる少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)、を備え、
前記少なくとも1つの光検出器(505,701)が、前記光軸(105)のより近くに前記キャリア表面(507)に配置されている前記光検出器(505,701)よりも高い位置にあるセンサ領域(509)を備えているように、前記少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)が、前記キャリア表面(507)を基準とする前記センサ領域(509)の高さ(513,515,517)を備えており、
前記少なくとも1つの光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に接合されている、
センサ装置(501,1001)。」
とあったものを、
「【請求項1】
センサ装置(501,1001)であって、
- キャリア(503)であって、
- 平面状のキャリア表面(507)を有し、
- 前記キャリア表面に多数の光検出器(505,701)が配置されており、
- 前記光検出器それぞれが、前記キャリア表面(507)から離れた側である感光性センサ領域(509)を備えている、
前記キャリア(503)と、
- 前記センサ領域(509)上に電磁放射を光学的に結像させるための、前記センサ領域(509)に向かい合って配置されておりかつ光軸(105)を備えているレンズ系(101)であって、したがって前記レンズ系(101)が前記センサ領域(509)上に電磁放射を結像させることができる、前記レンズ系(101)と、
を備えており、
- 前記レンズ系(101)の光学的な結像収差を低減する目的で、前記多数の光検出器(505,701)が、少なくとも1つの光検出器(505,701)を備えており、前記少なくとも1つの光検出器の前記センサ領域(509)が、前記多数の光検出器(505,701)のうち、前記レンズ系(101)の前記光軸(105)を基準として前記少なくとも1つの光検出器(505,701)よりも前記光軸(105)の近くに前記キャリア表面(507)に配置されている光検出器(505,701)、のセンサ領域(509)の特性(513,515,517,1003,1005)とは異なる少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)、を備え、
前記少なくとも1つの光検出器(505,701)が、前記光軸(105)のより近くに前記キャリア表面(507)に配置されている前記光検出器(505,701)よりも高い位置にあるセンサ領域(509)を備えているように、前記少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)が、前記キャリア表面(507)を基準とする前記センサ領域(509)の高さ(513,515,517)を備えており、
全ての前記光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に直接接合されている、
センサ装置(501,1001)。」
に補正する内容を含むものである(下線は請求人が付したものに基づいて当審が付したものであって、補正箇所を示すものである。)。

2 補正の目的
(1)本件補正は、補正前の請求項1において「少なくとも1つの光検出器(505,701)」とあったものを、本願補正発明において「全ての前記光検出器(505,701)」とに限定した上で、さらに、「接合されている」とあったものを、本願補正発明において「直接接合されている」との限定を付加するものである。

(2)上記補正について検討する。
上記(1)の補正は、いずれも限定を付加する補正であるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記「1」において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

(2)引用文献の記載
ア 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献である特開2005-72041号公報(以下「引用文献」という。)には、下記の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平板状の固体撮像素子単位(チップ)を階段状に積層形成してなる固体撮像装置およびこれを用いた撮像系に関し、詳しくは、各チップの受像面部分を撮像レンズの焦点深度内とするように改良された固体撮像装置および撮像系に関するものである。」
(イ)「【0009】
すなわち、本発明の固体撮像素子は、撮像レンズを介して入射された入射線束を受像する固体撮像装置において、
平板状の固体撮像素子単位を、受像面が配される上面の少なくとも一部が露出するように階段状に積層してなるとともに、該階段状に積層した該固体撮像素子単位の段差が前記撮像レンズの焦点深度の範囲内となるように該固体撮像素子単位の厚みを調整し、
該固体撮像素子単位各々の階段側上面縁部が、この階段側上面縁部に直交する断面内において、前記撮像レンズの主点を中心とし、該撮像レンズの略焦点距離を半径とする円弧の近傍に配置されるように設定されてなる積層型固体撮像素子を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、上記『入射線束』は、通常は可視光線であるが、その他赤外線、紫外線、X線、電子線、イオン線、中性子線、さらには超音波であってもよい。すなわち固体撮像素子単位の変換部は、可視光線像の他、赤外線像、紫外線像、X線像、電子線像、イオン線像、中性子線像、超音波像等を電気信号に変換するものであってもよい。
また、上記『略焦点距離』とは、焦点距離に焦点深度を加算した範囲内であることを意味する。
【0011】
また、1対の前記積層型固体撮像素子を、それぞれの階段部が互いに対向するように、かつ該1対の積層型固体撮像素子における前記円弧が互いに共通となるように配置してなる棚田型固体撮像素子を備えるように構成することが可能である。
【0012】
さらに、前記棚田型固体撮像素子を複数組備えるように構成することが可能である。
【0013】
また、前記固体撮像素子単位は、その厚みが約50μm以下とされ、かつ可撓性を有するように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記積層型固体撮像素子または前記棚田型固体撮像素子をパッケージの内側底面に接合し、該パッケージの内側底面を平面状に形成したり、該パッケージの内側底面が該積層型固体撮像素子または該棚田型固体撮像素子の階段部傾斜方向と同一方向に傾斜するように形成したり、該パッケージの内側底面が該積層型固体撮像素子または該棚田型固体撮像素子の階段部の傾斜に沿うように湾曲する円筒状または球状の曲面となるように形成することが可能である。
【0015】
また、本発明の撮像系は、上述したいずれかの固体撮像装置、および該固体撮像装置の受像面上への入射線束収束機能を有する撮像レンズとを備えたことを特徴とするものである。」
(ウ)「【0017】
(第1実施形態)
図1、図2および図3は本発明の第1実施形態の固体撮像装置を示す正面断面図(図3のA-A線断面図)、側方断面図(図3のB-B線断面図)および平面図である。
【0018】
図1?3に示すように、本実施形態の固体撮像素子は、パッケージ10の凹部内に平板状の固体撮像素子単位であるチップ11が階段状に積層して配設されてなる。複数枚のチップ11は、その受光面13が配される上面の少なくとも一部が露出するように、階段状に積層されて積層型固体撮像素子11aを構成し、また、1対の積層型固体撮像素子11aは、それぞれの階段部が互いに対向するようにして棚田型固体撮像素子12を構成する。
【0019】
また、最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合されている。
さらに、階段状に積層したチップ11の段差、すなわちチップ11の厚みtは、後述する撮像レンズ(図4において14)の焦点深度の範囲内、例えば50μm、望ましくは30μmとなるように形成されている。
【0020】
また、図4に示すように、チップ11各々の階段側上面縁部が、この階段側上面縁部に直交する断面内において、撮像レンズ14の主点17を中心とし、撮像レンズ14の略焦点距離15を半径とする円弧(実際には第1実施形態では円筒面)16の近傍に配置されるように設定されている。なお、上述した固体撮像装置および撮像レンズ14により本発明の実施形態に係る撮像系が構成される。
【0021】
また、上述したチップ11は複数の受光部がマトリクス状に配列されてなる受光エリアを有しており、その基本的構造は、周知の固体撮像素子と同様の構造を有している。このような固体撮像素子の構造は、例えば本願発明者による特開2000-286404号公報等に詳しく記載されている。すなわち、各チップ11の1辺(図2において左右方向に伸びる辺)に沿って、変換部であるフォトダイオードが1列に配列されている。各フォトダイオードには、電気信号蓄積部である直線状の垂直CCD転送路が接続されており、各垂直CCD転送路は、複数のCCD単位素子を備えている。これらフォトダイオードおよび垂直CCD転送路により並列処理部が構成される。
【0022】
また、パッケージ10は、例えばプラスチックにより形成され(セラミック等の他の材料によっても形成可能である)、上述したように、凹部の内側底面である接合面10aにチップ11を接合して収納するようになっている。また、パッケージ10の開放端面には透明のカバーガラスが取り付けられ、これによりパッケージ10の内部気密が確保されるようになっている。なお、図示されてはいないが、パッケージ10の下端には複数本の金属製リードが突出するように配設されており、パッケージ10の内側にはこれら金属製リードと電気的に接続された電極が設けられている。この電極は、ボンディングワイヤによりチップ11と電気的に接続されている。
【0023】
また、各チップ11の厚みは、積層したときに、その段差が撮像レンズ14の焦点深度の範囲内に入るような厚み、例えば30μmとなるように、チップ11の裏面側を化学的機械研磨し、チップ11に可撓性を付与する。チップ11の研磨手法としては特に限られるものではないが、例えば、特開2001-156278号公報に記載されている『ケミカルメカニカルグラインダー』を使用する。また、この研磨は、一般には、チップを切り出す前の半導体ウエハにおいて行う。
【0024】
また、最下層のチップ11とパッケージ10を接合する際には、チップ11の裏面側またはパッケージ10の接合面10aに接着剤を塗布し、パッケージ10の底部に設けた孔を吸引装置に接続して、チップ11を接合面10aに吸引し、チップ11をパッケージ10に接合する。上記孔は、固体撮像素子の製作が終了した後に樹脂等を用いて塞ぐようにするのが好ましい。
【0025】
また、各チップ11の積層は、接着剤を用いて行われ、その際には、チップ11の上面端部に設けられた受光面13が露出するように、上下のチップ11を互いに図1中左右方向にずらして接合する。この接着操作は、通常、上記チップ11と接合面10aの接着前に行われる。
【0026】
なお、この後、各チップ11の電極とパッケージ10内の電極とをワイヤで電気的に接続することになるが、これは、例えばワイヤボンディング装置を使用して行う。最後に、パッケージ10の開放端面にカバーガラスを取り付け、固体撮像装置内を密封する。
【0027】
このように、本実施形態装置においては、積層される各チップ11を化学的機械研磨により撮像レンズ14の焦点深度の範囲内の厚みとなるように極めて薄く研磨するとともに、階段状に積層された積層型固体撮像素子11aの段差を利用し、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の主点17の位置を中心とし、該撮像レンズの略焦点距離を半径とする同一円弧16の近傍に配置されるように構成しているので、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の焦点深度内に略収まることとなり、取得された各画像では、撮像レンズ14の球面収差やシェーディングの影響を極めて小さいものとすることができる。
【0028】
また、これにより、光学系の設計負担を軽くでき、かつ、チップ11上の並列処理部の機能を向上させることも可能である。
すなわち、球面収差の他、シェーディング等を減少させて取得画像の画質向上を図ることができるとともに、撮像レンズ等の光学系を小型化でき、さらに素子周辺回路をチップ11上の並列処理部に集約させることが可能となる。
【0029】
また、本実施形態においては、1対の積層型固体撮像素子11aを、互いに受光面13側が向き合うようにして構成した棚田型固体撮像素子12において、図4に示すように、1つの円弧16の近傍に、各チップ11の上縁部が位置するように配置しているので、球面収差やシェーディングの極めて小さい画像を数多く取得することができ、さらなる高速撮影が可能となる。
【0030】
なお、上記撮像レンズ14の焦点距離(円弧16の曲率半径)、焦点深度、積層するチップ11の枚数、厚み、受光面13の長さは、上述した本発明の条件を満足する範囲で適宜設定することが可能であるが、例えば、チップ11の厚みを30μm程度としたとき、撮像レンズ14の開放F値を例えば2.0、焦点深度を例えば30μm、積層するチップ11の枚数を例えば3枚、受光面13の長さを例えば1mmとする。」
(エ)「【0034】
(第3実施形態)
図7および図8は、本発明の第3実施形態に係る固体撮像装置を示す側方断面図(図8のD-D線断面図)および平面図である。なお、図7および図8における各部材のうち、図1?図3における各部材と対応するものにおいては、図1?図3における各部材に付した符号の十の位を3に替えた符号を付している。
【0035】
この第3実施形態に係る固体撮像装置は、基本的な構成は上述した第1実施形態と同様であるが、図7に示すように、棚田型固体撮像素子32を接合するパッケージ30の接合面30aが前後方向中心線部分を最低位置とし、前後(図7中では左右方向;以下同じ)両端部を最高位置とするような円筒状の曲面とされている点において相違している。各チップ31は可撓性を有するように薄く形成されているので、この接合面30aの形状に倣って図7に示すように湾曲した形状とされる。この円筒状の曲面の曲率半径は、図4に示す撮像レンズ14の焦点距離15と一致させることが望ましいが、全受光面33が撮像レンズ14の略焦点深度の範囲内とされていればよい。」
(オ)図1、4及び7は次のものである。


【図4】


【図7】


(カ)上記(ア)ないし(ウ)の記載(特に、「パッケージ10の内側底面を平面状に形成」(【0014】)、を踏まえて、上記(オ)の図1を見ると、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状であること、及び、最下層のチップ11とパッケージ10の接合面の(図面視)左右には、「チップ11と接合面10aの接着前に、接着剤を用いて各チップ11の積層を行」ったチップ11全体の「裏面側」と、「パッケージ10の接合面10a」の間に隙間があること、が見てとれる。
また、上記(ア)ないし(ウ)の記載を踏まえて上記(オ)の図4を見ると、光軸(図4中では略焦点距離15として表される直線上)の近くに配置されている「最下部のチップ11」の「受光面13が配される上面」の「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」からの高さよりも、「最下部のチップ11」よりも前記光軸から離れて配置されている「階段状に積層したチップ11」の「受光面13が配される上面」の「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」からの高さの方が大きいことが見てとれる。

イ 引用発明
上記アによれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「固体撮像素子は、撮像レンズを介して入射された入射線束を受像する固体撮像装置において(【0009】)、前記入射線束は、可視光線であって(【0010】)、
前記固体撮像素子は、パッケージ10の凹部内に平板状の固体撮像素子単位であるチップ11が階段状に積層して配設されてなり、前記複数枚のチップ11は、その受光面13が配される上面の少なくとも一部が露出するように、階段状に積層されて積層型固体撮像素子11aを構成し、また、1対の積層型固体撮像素子11aは、それぞれの階段部が互いに対向するようにして棚田型固体撮像素子12を構成し(【0018】)、
最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され、階段状に積層したチップ11の段差、すなわちチップ11の厚みtは、撮像レンズの焦点深度の範囲内の50μm望ましくは30μmとなるように形成され(【0019】)、
チップ11各々の階段側上面縁部が、この階段側上面縁部に直交する断面内において、撮像レンズ14の主点17を中心とし、撮像レンズ14の略焦点距離15を半径とする円弧16の近傍に配置されるように設定される固体撮像装置および撮像レンズ14により撮像系が構成され(【0020】)、
前記チップ11は複数の受光部がマトリクス状に配列されてなる受光エリアを有しており、各チップ11の1辺に沿って、変換部であるフォトダイオードが1列に配列され(【0021】)、
前記パッケージ10は、凹部の内側底面である接合面10aにチップ11を接合して収納するようになっていて(【0022】)、
各チップ11の厚みは、積層したときに、その段差が撮像レンズ14の焦点深度の範囲内に入るような厚みである50μm望ましくは30μmとなるように、チップ11の裏面側を化学的機械研磨してチップ11に可撓性を付与し(【0023】)、
積層される各チップ11を化学的機械研磨により撮像レンズ14の焦点深度の範囲内の厚みとなるように極めて薄く研磨するとともに、階段状に積層された積層型固体撮像素子11aの段差を利用し、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の主点17の位置を中心とし、該撮像レンズの略焦点距離を半径とする同一円弧16の近傍に配置されるように構成しているので、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の焦点深度内に略収まることとなり、取得された各画像では、撮像レンズ14の球面収差やシェーディングの影響を極めて小さいものとすることができ(【0027】)、
パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状であり、光軸の近くに配置されている最下部のチップ11の、受光面13が配される上面のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さよりも、最下部のチップ11よりも前記光軸から離れて配置されている階段状に積層したチップ11の、受光面13が配される上面のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さの方が大きく(上記「ア」「(カ)」)、
チップ11と接合面10aの接着前に、接着剤を用いて各チップ11の積層を行い(【0025】)、
最下層のチップ11とパッケージ10を接合する際には、チップ11の裏面側またはパッケージ10の接合面10aに接着剤を塗布し、パッケージ10の底部に設けた孔を吸引装置に接続して、チップ11を接合面10aに吸引し、チップ11をパッケージ10に接合する(【0024】)、
固体撮像装置および撮像系(【0001】)。」

ウ 引用文献に記載された事項
上記アによれば、引用文献には、引用発明とは別の実施形態として、次の事項(以下「引用文献に記載された事項」という。)が記載されているものと認められる。
「パッケージ30の接合面30aが前後方向中心線部分を最低位置とし、前後両端部を最高位置とするような円筒状の曲面に、棚田型固体撮像素子32をこの接合面30aの形状に倣って湾曲した形状で接合するために、各チップ31を可撓性を有するように薄く形成している点。」

(3)対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「パッケージ10」、「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」、「チップ11」、「受光面13」、「撮像レンズ14」及び「固体撮像装置および撮像系」は、本願補正発明の「キャリア(503)」、「キャリア表面(507)」、「光検出器(505,701)」、「感光性センサ領域(509)」、「レンズ系(101)」及び「センサ装置(501,1001)」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「パッケージ10」は、「固体撮像素子は、パッケージ10の凹部内に平板状の固体撮像素子単位であるチップ11が階段状に積層して配設されてなり、前記複数枚のチップ11は、その受光面13が配される上面の少なくとも一部が露出するように、階段状に積層されて積層型固体撮像素子11aを構成し、また、1対の積層型固体撮像素子11aは、それぞれの階段部が互いに対向するようにして棚田型固体撮像素子12を構成し、最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され」、「前記パッケージ10は、凹部の内側底面である接合面10aにチップ11を接合して収納するようになっていて」、「パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状である」から、
平面状である「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」を有し、前記「接合面10a」には「複数枚のチップ11」が配設されてなり、「前記複数枚のチップ11は、その受光面13が配される上面の少なくとも一部が露出するように、階段状に積層されて」なる「パッケージ10」であるといえる。
したがって、引用発明の、「固体撮像素子は、パッケージ10の凹部内に平板状の固体撮像素子単位であるチップ11が階段状に積層して配設されてなり、前記複数枚のチップ11は、その受光面13が配される上面の少なくとも一部が露出するように、階段状に積層されて積層型固体撮像素子11aを構成し、また、1対の積層型固体撮像素子11aは、それぞれの階段部が互いに対向するようにして棚田型固体撮像素子12を構成し、最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され」、「前記パッケージ10は、凹部の内側底面である接合面10aにチップ11を接合して収納するようになっていて」、「パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状である」「パッケージ10」は、
本件補正発明の「キャリア(503)であって、
- 平面状のキャリア表面(507)を有し、
- 前記キャリア表面に多数の光検出器(505,701)が配置されており、
- 前記光検出器それぞれが、前記キャリア表面(507)から離れた側である感光性センサ領域(509)を備えている、
前記キャリア(503)」に相当する。

(ウ)引用発明の「撮像レンズ14」は、「最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され、階段状に積層したチップ11の段差、すなわちチップ11の厚みtは、撮像レンズの焦点深度の範囲内の50μm望ましくは30μmとなるように形成され、チップ11各々の階段側上面縁部が、この階段側上面縁部に直交する断面内において、撮像レンズ14の主点17を中心とし、撮像レンズ14の略焦点距離15を半径とする円弧16の近傍に配置されるように設定される固体撮像装置および撮像レンズ14により撮像系が構成され」、「前記複数枚のチップ11は、その受光面13が配される上面の少なくとも一部が露出するように、階段状に積層されて積層型固体撮像素子11aを構成」し、「固体撮像素子は、撮像レンズを介して入射された入射線束を受像する固体撮像装置において、前記入射線束は、可視光線であ」るから、
「受光面13」に「可視光線」を受像するための「受光面13」に向かって配置される「主点17を中心と」する「撮像レンズ14」であって、前記「撮像レンズ14」が「受光面13」「可視光線」を焦点深度の範囲で受像(結像)する「撮像レンズ14」であるといえる。
したがって、引用発明の、「最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され、階段状に積層したチップ11の段差、すなわちチップ11の厚みtは、撮像レンズの焦点深度の範囲内の50μm望ましくは30μmとなるように形成され、チップ11各々の階段側上面縁部が、この階段側上面縁部に直交する断面内において、撮像レンズ14の主点17を中心とし、撮像レンズ14の略焦点距離15を半径とする円弧16の近傍に配置されるように設定される固体撮像装置および撮像レンズ14により撮像系が構成され」、「前記複数枚のチップ11は、その受光面13が配される上面の少なくとも一部が露出するように、階段状に積層されて積層型固体撮像素子11aを構成」し、「固体撮像素子は、撮像レンズを介して入射された入射線束を受像する固体撮像装置において、前記入射線束は、可視光線であ」る「撮像レンズ14」は、
本件補正発明の「前記センサ領域(509)上に電磁放射を光学的に結像させるための、前記センサ領域(509)に向かい合って配置されておりかつ光軸(105)を備えているレンズ系(101)であって、したがって前記レンズ系(101)が前記センサ領域(509)上に電磁放射を結像させることができる、前記レンズ系(101)」に相当する。

(エ)引用発明の「チップ11の受光面13が配される上面のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さ」は、「最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され、階段状に積層したチップ11の段差、すなわちチップ11の厚みtは、撮像レンズの焦点深度の範囲内の50μm望ましくは30μmとなるように形成され、チップ11各々の階段側上面縁部が、この階段側上面縁部に直交する断面内において、撮像レンズ14の主点17を中心とし、撮像レンズ14の略焦点距離15を半径とする円弧16の近傍に配置されるように設定される固体撮像装置および撮像レンズ14により撮像系が構成され」、「各チップ11の厚みは、積層したときに、その段差が撮像レンズ14の焦点深度の範囲内に入るような厚みである50μm望ましくは30μmとなるように、チップ11の裏面側を化学的機械研磨してチップ11に可撓性を付与し、積層される各チップ11を化学的機械研磨により撮像レンズ14の焦点深度の範囲内の厚みとなるように極めて薄く研磨するとともに、階段状に積層された積層型固体撮像素子11aの段差を利用し、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の主点17の位置を中心とし、該撮像レンズの略焦点距離を半径とする同一円弧16の近傍に配置されるように構成しているので、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の焦点深度内に略収まることとなり、取得された各画像では、撮像レンズ14の球面収差やシェーディングの影響を極めて小さいものとすることができ」るものであり、「パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状であり、光軸の近くに配置されている最下部のチップ11のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さよりも、最下部のチップ11よりも前記光軸から離れて配置されている階段状に積層したチップ11のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さが大きい」ものであるから、
「撮像レンズ14の球面収差やシェーディングの影響を極めて小さいものとする」目的で、「各チップ11」が少なくとも1つの「最下部のチップ11」と「階段状に積層したチップ11」を備え、「パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状であり、光軸の近くに配置されている最下部のチップ11の受光面13が配される上面のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さよりも、最下部のチップ11よりも前記光軸から離れて配置されている階段状に積層したチップ11の受光面13が配される上面のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さが大きい」「チップ11の受光面13が配される上面のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さ」であるといえる。
ここで、引用発明の「撮像レンズ14の球面収差やシェーディングの影響」は、本願補正発明の「光学的な結像収差」に相当する。
したがって、引用発明の、「最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され、階段状に積層したチップ11の段差、すなわちチップ11の厚みtは、撮像レンズの焦点深度の範囲内の50μm望ましくは30μmとなるように形成され、チップ11各々の階段側上面縁部が、この階段側上面縁部に直交する断面内において、撮像レンズ14の主点17を中心とし、撮像レンズ14の略焦点距離15を半径とする円弧16の近傍に配置されるように設定される固体撮像装置および撮像レンズ14により撮像系が構成され」、「各チップ11の厚みは、積層したときに、その段差が撮像レンズ14の焦点深度の範囲内に入るような厚みである50μm望ましくは30μmとなるように、チップ11の裏面側を化学的機械研磨してチップ11に可撓性を付与し、積層される各チップ11を化学的機械研磨により撮像レンズ14の焦点深度の範囲内の厚みとなるように極めて薄く研磨するとともに、階段状に積層された積層型固体撮像素子11aの段差を利用し、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の主点17の位置を中心とし、該撮像レンズの略焦点距離を半径とする同一円弧16の近傍に配置されるように構成しているので、各チップ11の受光面13が、撮像レンズ14の焦点深度内に略収まることとなり、取得された各画像では、撮像レンズ14の球面収差やシェーディングの影響を極めて小さいものとすることができ」るものであり、「パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状であり、光軸の近くに配置されている最下部のチップ11のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さよりも、最下部のチップ11よりも前記光軸から離れて配置されている階段状に積層したチップ11のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さが大きい」「チップ11の受光面13が配される上面のパッケージ10の内側底面からなる接合面10aからの高さ」は、
本件補正発明の「前記レンズ系(101)の光学的な結像収差を低減する目的で、前記多数の光検出器(505,701)が、少なくとも1つの光検出器(505,701)を備えており、前記少なくとも1つの光検出器の前記センサ領域(509)が、前記多数の光検出器(505,701)のうち、前記レンズ系(101)の前記光軸(105)を基準として前記少なくとも1つの光検出器(505,701)よりも前記光軸(105)の近くに前記キャリア表面(507)に配置されている光検出器(505,701)、のセンサ領域(509)の特性(513,515,517,1003,1005)とは異なる少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)」、及び「前記少なくとも1つの光検出器(505,701)が、前記光軸(105)のより近くに前記キャリア表面(507)に配置されている前記光検出器(505,701)よりも高い位置にあるセンサ領域(509)を備えているように、前記少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)が、前記キャリア表面(507)を基準とする前記センサ領域(509)の高さ(513,515,517)」に相当する。

(オ)引用発明の「固体撮像素子」は、「パッケージ10の凹部内に平板状の固体撮像素子単位であるチップ11が階段状に積層して配設されてなり」、「最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され」、「前記パッケージ10は、凹部の内側底面である接合面10aにチップ11を接合して収納するようになってい」て、「最下部のチップ11」と「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」とは、「最下層のチップ11とパッケージ10を接合する際には、チップ11の裏面側またはパッケージ10の接合面10aに接着剤を塗布し、パッケージ10の底部に設けた孔を吸引装置に接続して、チップ11を接合面10aに吸引し、チップ11をパッケージ10に接合する」ものであるから、直接接合されているといえる。
したがって、引用発明の「パッケージ10の凹部内に平板状の固体撮像素子単位であるチップ11が階段状に積層して配設されてなり」、「最下部のチップ11は、パッケージ10の内側底面からなる接合面10aと接合され」、「前記パッケージ10は、凹部の内側底面である接合面10aにチップ11を接合して収納するようになってい」て、「最下部のチップ11」と「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」とは、「最下層のチップ11とパッケージ10を接合する際には、チップ11の裏面側またはパッケージ10の接合面10aに接着剤を塗布し、パッケージ10の底部に設けた孔を吸引装置に接続して、チップ11を接合面10aに吸引し、チップ11をパッケージ10に接合する」「固体撮像素子」は、本願補正発明の「全ての前記光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に直接接合されている」「光検出器(505,701)」と、「前記光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に直接接合されている」点で一致する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、本願補正発明と引用発明は、
「センサ装置(501,1001)であって、
- キャリア(503)であって、
- 平面状のキャリア表面(507)を有し、
- 前記キャリア表面に多数の光検出器(505,701)が配置されており、
- 前記光検出器それぞれが、前記キャリア表面(507)から離れた側である感光性センサ領域(509)を備えている、
前記キャリア(503)と、
- 前記センサ領域(509)上に電磁放射を光学的に結像させるための、前記センサ領域(509)に向かい合って配置されておりかつ光軸(105)を備えているレンズ系(101)であって、したがって前記レンズ系(101)が前記センサ領域(509)上に電磁放射を結像させることができる、前記レンズ系(101)と、
を備えており、
- 前記レンズ系(101)の光学的な結像収差を低減する目的で、前記多数の光検出器(505,701)が、少なくとも1つの光検出器(505,701)を備えており、前記少なくとも1つの光検出器の前記センサ領域(509)が、前記多数の光検出器(505,701)のうち、前記レンズ系(101)の前記光軸(105)を基準として前記少なくとも1つの光検出器(505,701)よりも前記光軸(105)の近くに前記キャリア表面(507)に配置されている光検出器(505,701)、のセンサ領域(509)の特性(513,515,517,1003,1005)とは異なる少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)、を備え、
前記少なくとも1つの光検出器(505,701)が、前記光軸(105)のより近くに前記キャリア表面(507)に配置されている前記光検出器(505,701)よりも高い位置にあるセンサ領域(509)を備えているように、前記少なくとも1つの特性(513,515,517,1003,1005)が、前記キャリア表面(507)を基準とする前記センサ領域(509)の高さ(513,515,517)を備えており、
前記光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に直接接合されている、
センサ装置(501,1001)」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点>
「光検出器(505,701)」が、本願補正発明では、「全て」がキャリア表面(507)に直接接合されているのに対し、引用発明では、「全て」とは特定されない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)引用発明の「チップ11」は、「チップ11と接合面10aの接着前に、接着剤を用いて各チップ11の積層を行い」、「最下層のチップ11とパッケージ10を接合する際には、チップ11の裏面側またはパッケージ10の接合面10aに接着剤を塗布し、パッケージ10の底部に設けた孔を吸引装置に接続して、チップ11を接合面10aに吸引し、チップ11をパッケージ10に接合する」とされる。
そうすると、「最下層のチップ11」以外の「チップ11」は、他の「チップ11」と接合している面のみで固定され、確実な固定がなされないから、当該「最下層のチップ11」以外の「チップ11」が振動の影響を受けやすいものであることは、本願の優先日当時の技術常識であって、当該振動の影響を受けないように、確実に固定したほうがよいことは当業者に明らかである。

(イ)さらに、「各チップ11の厚みは」、「50μm望ましくは30μm」であって「チップ11に可撓性を付与し」ているところ、当該「チップ11」の「可撓性」は、「パッケージ30の接合面30aが前後方向中心線部分を最低位置とし、前後両端部を最高位置とするような円筒状の曲面に、棚田型固体撮像素子32をこの接合面30aの形状に倣って湾曲した形状で接合するため」(引用文献に記載された事項)とされるから、「パッケージ10の内側底面からなる接合面10aは平面状であ」る引用発明では当該「チップ11」が「可撓性」を維持すべき理由は認められない。

(ウ)そうすると、「チップ11と接合面10aの接着前に、接着剤を用いて各チップ11の積層を行」ったものを「平面状であ」る「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」に確実に固定するために、引用発明の「チップ11」を「パッケージ10の接合面10a」と接着するに際して、各チップ11の積層を行ったチップ11全体の裏面側と、パッケージ10の接合面10aの間に」ある「隙間」(上記「(2)」「ア」「(カ)」)にも接着剤を充填して「チップ11をパッケージ10に接合する」構成となすことは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、この様な構成とすれば、それは、「光検出器」が「全て」キャリア表面に直接接合されているといえる。

(エ)よって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 請求人の主張
(ア)審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由」「(3.3)意見」「3.3.1)項目(2.1)の理由1及び理由2について」において、再度「引用文献2には、平板状の固体撮像素子単位であるチップ11が、受光面13の配される上面の少なくとも一部が露出するように階段状に積層されることが記載されているものの、個々のチップ11の厚み(つまりはパッケージ10の接合面10aに垂直な方向の長さ)が同じであるため、パッケージ10の凹部中心から離れた(上位階に位置する)チップ11は、パッケージ10凹部内の表面との間に空間(隙間)が生じており接合されておりません。」(平成30年9月19日付け意見書における第1の主張内容に同じ。)と主張する。

(イ)しかしながら、上記「イ」で検討したとおりであって、引用発明の全ての「チップ11」を「パッケージ10の内側底面からなる接合面10a」に直接接合されている構成となすことは当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記3の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成30年9月19日になされた手続補正によるよる特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
前記「第2」[理由]「3」「(2)」のとおりである。

3 対比・判断
(1)前記「第2」[理由]「1 補正の内容」のとおり、本件補正は、補正前の請求項1において、「少なくとも1つの光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に接合されている」とあったものを、本願補正発明において「全ての前記光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に直接接合されている」と補正して、「全ての」及び「直接」との限定を付加するものである。
したがって、本願発明は、前記「第2」[理由]「3」「(3)」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、「全ての前記光検出器(505,701)が、前記キャリア表面(507)に直接接合されている」ことに係り、「全ての」及び「直接」との限定を省いたものである。
そして、上記限定事項は、前記「第2」[理由]「3」「(3)」「ア」「(カ)」に示した「相違点」であるところ、前記「第2」[理由]「3」「(3)」「ア」で検討したとおり、引用発明は、前記相違点を除いた本願補正発明の構成を全て備える。
したがって、本願発明は、引用発明である。

(2)以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、同様の理由により、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-29 
結審通知日 2019-09-03 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2017-545952(P2017-545952)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 嵯峨根 多美  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
近藤 幸浩
発明の名称 センサ装置  
代理人 特許業務法人鷲田国際特許事務所  

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