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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1359443
審判番号 不服2018-16239  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-05 
確定日 2020-02-06 
事件の表示 特願2015- 74298「光照射モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日出願公開,特開2016-195177〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年3月31日の出願であって,以降の手続は次のとおりである。

平成29年 2月 1日 手続補正・上申書提出
同年11月29日 拒絶理由通知(同年12月6日発送)
平成30年 4月 3日 手続補正・意見書提出
同年 8月31日 拒絶査定(同年9月5日謄本送達)
同年12月 5日 審判請求・手続補正
令和 元年 7月30日 上申書提出
同年11月15日 面接

第2 補正の却下の決定
平成30年12月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,本件補正の前後で特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである(下線は当審で付加。以下同様。)。
〈補正前〉
「【請求項1】
基板と,前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップと,前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材と,を備える光照射モジュールにおいて,
前記基板は,
表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベースと,
前記メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部と,
を有し,
前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板が配置され,
前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmであり,
前記絶縁部の厚みが,100?600μmである
ことを特徴とする光照射モジュール。」

〈補正後〉
「【請求項1】
基板と,前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップと,前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材と,を備える光照射モジュールにおいて,
前記基板は,
表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベースと,
前記メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部と,
を有し,
前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板が配置され,
前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmの範囲内で一様であり,
前記絶縁部の厚みが,100?600μmである
ことを特徴とする光照射モジュール。」

2 補正事項の整理
本件補正の,請求項1についての補正事項は以下のとおりである。
〈補正事項〉
補正前の「メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmであり」について,「前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmの範囲内で一様であり」と補正すること。

3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
(1)新規事項の追加の有無について
前記補正事項に係る,「前記メタルベースの厚み」が「一様であ」るとの事項は,当初明細書等の段落【0021】の「薄板状のメタルベース」等の記載,および図1(b)等に記載されているといえるから,前記補正事項に係る事項は,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって,前記補正事項は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(2)補正の目的について
前記補正事項は,補正前の「前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmであり」について,「前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmの範囲内で一様であり」として,「メタルベースの厚み」について技術的に限定するものである。よって,前記補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)小括
上記のとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,以下においては,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定する独立特許要件を満たすか)どうかについて検討する。

4 独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである(再掲。以下「本願補正発明」という。)。
「【請求項1】
基板と,前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップと,前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材と,を備える光照射モジュールにおいて,
前記基板は,
表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベースと,
前記メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部と,
を有し,
前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板が配置され,
前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmの範囲内で一様であり,
前記絶縁部の厚みが,100?600μmである
ことを特徴とする光照射モジュール。」

(2)刊行物等に記載された発明
ア 引用例1:特開2001-332768号公報
(ア)本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2001-332768号公報(以下「引用例1」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
a
「【請求項1】 放熱性に優れた金属基板(1)上に絶縁膜(2)を介して金属板(3)を貼り付け,この金属板(3)に一方の電極が電気的に接続されるように発光ダイオード(5)をマウントしてなることを特徴とする発光ダイオード照明具。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,発光ダイオードを光源とする照明具に関する。
【0002】
【従来の技術】発光ダイオードは,その低消費電力,長寿命等から,白熱電球に代わるものとして,信号灯や表示灯としての用途が拡大している。特に最近では,交通信号等や表示板としての用途が拡大しており,このような用途では高輝度化,低コスト化の要求がある。
【0003】この要求を満足するためには,発光ダイオードチップ自体の発光効率の向上に加え,高負荷での使用が必要とされる。そして,高負荷で使用する場合には,発生する熱の放散を十分にすることが,寿命等の信頼性の確保の点で重要である。
【0004】この点を考慮して,発光ダイオード照明具の放熱性を向上させるための照明具用基板として,放熱性に優れたアルミニウムからなる基板(以下,アルミ基板と略称する)の上に絶縁層を介して電気配線を施してなるものが提案されている(特許第2593703号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし,上記の構成の照明具用基板では,電気配線をアルミ基板から絶縁するために用いられている絶縁層の熱抵抗が大きいので,アルミ基板の放熱性を十分には引き出すことができないという不都合がある。
【0006】また,照明具用基板の製造を行うに当たっては,絶縁層の上に電気配線パターンをメッキ等の手法により作製する必要があるので,照明具用基板が高価なものになってしまうという不都合もある。
【0007】この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり,高い放熱性を達成することができるとともに,コストダウンを達成することができる発光ダイオード照明具を提供することを目的としている。」

b
「【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発光ダイオード照明具は,放熱性に優れた金属基板上に絶縁膜を介して金属板を貼り付け,この金属板に一方の電極が電気的に接続されるように発光ダイオードをマウントしてなるものである。
【0009】
【作用】請求項1の発光ダイオード照明具であれば,金属板の熱容量によって発光ダイオードの発熱を吸収し,金属板が吸収した熱を絶縁膜を通して放熱性に優れた金属基板に伝導させることができる。そして,金属板の熱容量を従来のメッキ等の手法により作製された電気配線パターンの熱容量よりも大きくすることができるとともに,絶縁膜を介して対向する金属板と放熱性に優れた金属基板との対向面積(放熱面積)を大きくすることができるので,従来の発光ダイオード照明具と比較して著しく高い放熱性を達成することができる。
【0010】また,メッキ等の手法により電気配線パターンを作製する場合と比較して,大量生産が可能であり,コストダウンを達成することができる。」

c
「【0012】図1はこの発明の発光ダイオード照明具の要部を概略的に示す斜視図である。
【0013】この発光ダイオード照明具は,所定厚みのアルミ基板1の上に絶縁膜2を介して幅広の第1金属板3および狭幅の第2金属板4を互いに所定間隔を隔てた状態で貼り付け,一方の電極を第1金属板3に接続した状態で発光ダイオードチップ5をマウントし,発光ダイオードチップ5の他方の電極から引き出されたリード6を第2金属板4に接続している。
【0014】前記第1金属板3は,電気伝導度が高く,熱容量が大きく,かつ放熱特性が良好な金属材料からなるものであり,この金属材料としては,銅,アルミニウム,リードフレームに使われる合金などが例示できる。また,第1金属板3の厚みは数百μm以上に設定すればよい。
【0015】もちろん,第1金属板3および第2金属板4は電気配線として機能するものである。
【0016】図2はこの発明の発光ダイオード照明具の製造工程の一例を説明する図である。
【0017】図2(a)に示すようにアルミ基板1の上に接着性の絶縁膜2を設け,図2(b)に示すように,絶縁膜2の上に銅,アルミニウム,リードフレームに使われる合金などからなる所定厚みの金属板を貼り付ける。
【0018】次いで,図2(c)に示すように,前方への指向性を高めるべく発光ダイオードチップマウント予定箇所に絞り加工を施し,図2(d)に示すようにエッチング,機械加工等によって金属板を第1金属板3および第2金属板4に加工してそれぞれを電気回路とする。
【0019】その後,図2(e)に示すように,絞り加工部に発光ダイオードチップ5をマウントして一方の電極を第1金属板3に電気的に接続し,次いでワイヤボンディングを行って発光ダイオードチップ5の他方の電極を第2金属板4に電気的に接続することにより電気回路パターンを完成させる。
【0020】最後に,図2(f)に示すように,マウントされた発光ダイオードチップ5を覆うように光学レンズ7を設ける。
【0021】ただし,絞り加工を省略し,また光学レンズの形成を省略することが可能である。
【0022】上記の構成の発光ダイオード照明具を採用した場合には,第1金属板3の熱容量が従来のメッキなどによる配線パターンの熱容量が大きいとともに,絶縁膜2を介して対向するアルミ基板1と第1金属板3との対向面積が大きいのであるから,絶縁膜2の熱伝導率が低くても,発光ダイオードチップ5の発熱を効果的にアルミ基板1に伝導し,著しく優れた放熱特性を実現することができる。この結果,大電流,高発熱での使用を可能とすることができる。
【0023】また,第1金属板3の厚みを大きくすることによって熱の吸収容量を高めることができ,ひいては使用条件に合わせて熱設計を変更することが可能である。
【0024】さらに,エッチング,機械加工等によって金属板から第1金属板3および第2金属板4を形成するのであるから,絶縁膜の上にメッキなどにより配線パターンを形成する場合と比較して大量生産が可能であり,コスト削減効果がある。また,エッチング,機械加工等によって金属板から第1金属板3および第2金属板4を形成した後に第1金属板3および第2金属板4を絶縁膜2上に貼り付けるようにした場合にも,同様に大量生産が可能であり,コスト削減効果がある。」

d
「0034】
【発明の効果】請求項1の発明は,メッキなどにより作製された電気配線パターンより熱容量が大きい電気配線を任意に作製することができ,しかも放熱性に優れた金属基板との対向部の面積を大きくすることができ,熱放散性を向上できるという効果,金属板を絶縁膜を介して放熱性に優れた金属基板と貼り合わせて作製できるので安価に量産することができるという効果を奏する。」

e ここで,図1は次のものである。


(イ)上記(ア)に摘記したものにおいては,前記(ア)cに摘記した段落【0018】?【0020】に記載されているとおり,「絞り加工部」及び「光学レンズ」を備えることも記載されているが,その一方,同段落【0021】の記載のとおり,「絞り加工部」及び「光学レンズ」を備えないことも記載されている。そして,この際,同段落【0017】?【0018】に記載されているとおり,「所定厚みの金属板」は「機械加工等によって」「第1金属板3および第2金属板4に加工」されるところ,前記「絞り加工部」はないことから,図1から見て取れるとおり,「第1金属板3および第2金属板4」はいずれも一様な厚みを有するものといえる。

(ウ)以上を総合すると,引用例1には,上記(イ)の「絞り加工部」及び「光学レンズ」を備えないものについて,以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明1」という。)。

「発光ダイオードを光源とする照明具であって,所定厚みのアルミ基板1の上に絶縁膜2を介して幅広の第1金属板3および狭幅の第2金属板4を互いに所定間隔を隔てた状態で貼り付け,一方の電極を第1金属板3に接続した状態で発光ダイオードチップ5をマウントし,発光ダイオードチップ5の他方の電極から引き出されたリード6を第2金属板4に接続しているものであり,
前記第1金属板3は,電気伝導度が高く,熱容量が大きく,かつ放熱特性が良好な金属材料からなる一様の厚さのものであり,この金属材料としては,銅,アルミニウム,リードフレームに使われる合金などであり,厚みは数百μm以上に設定されるものであり,
第1金属板3および第2金属板4は電気配線として機能するものであり,
第1金属板3の熱容量が大きいとともに,絶縁膜2を介して対向するアルミ基板1と第1金属板3との対向面積が大きいため,発光ダイオードチップ5の発熱を効果的にアルミ基板1に伝導し,著しく優れた放熱特性を実現することができ,
第1金属板3の厚みを大きくすることによって熱の吸収容量を高めることができ,ひいては使用条件に合わせて熱設計を変更することが可能である,
発光ダイオードを光源とする照明具。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを比較する。

ア 引用発明1においては「一方の電極を第1金属板3に接続した状態で発光ダイオードチップ5をマウントし,発光ダイオードチップ5の他方の電極から引き出されたリード6を第2金属板4に接続して」おり,また,「第1金属板3および第2金属板4は電気配線として機能するものであ」るから,当該「第1金属板3」は,本願補正発明の「表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベース」に相当し,また,引用発明1の「第2金属板4」と,本願補正発明の「前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板」とは,「前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線部材」である点で一致する。

イ 引用発明1においては,「所定厚みのアルミ基板1の上に絶縁膜2を介して幅広の第1金属板3および狭幅の第2金属板4を互いに所定間隔を隔てた状態で貼り付け」ているところ,「発光ダイオードチップ5の発熱を効果的にアルミ基板1に伝導し,著しく優れた放熱特性を実現する」ものであり,「アルミ基板1」が放熱部材として作用していることは明らかであるから,引用発明1の「絶縁膜2」は,本願補正発明の「前記メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部」に相当し,引用発明の「アルミ基板1」は,本願補正発明の「前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材」に相当する。

ウ 引用発明1の「第1金属板3」及び「絶縁膜2」を合わせたものは,本願補正発明の「基板」に相当する。

エ 引用発明1においては,「一方の電極を第1金属板3に接続した状態で発光ダイオードチップ5をマウントし」ているところ,発光ダイオードチップ5が発する光が第1金属板3の表面に直交する方向にも出射されることは当然のことであるから,当該「発光ダイオードチップ5」と,本願補正発明の「前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」とは,「前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」である点で一致する。

オ 引用発明1の「第1金属板3は,」「一様の厚さのものであり,」「厚みは数百μm以上に設定されるものであ」ることと,本願補正発明の「前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmの範囲内で一様であ」ることとは,「前記メタルベースの厚みは,一様であ」る点で一致する。

カ 引用発明の「発光ダイオードを光源とする照明具」は,本願補正発明の「光照射モジュール」に相当する。

キ したがって,引用発明と本願補正発明とは,次の点で一致する。
「基板と,前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップと,前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材と,を備える光照射モジュールにおいて,
前記基板は,
表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベースと,
前記メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部と,
を有し,
前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線部材が配置され,
前記メタルベースの厚みは一様である
ことを特徴とする光照射モジュール。」

ク 一方両者は,以下《相違点1》?《相違点4》の点で相違する。
《相違点1》
本願補正発明は「紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」を備えるのに対して,引用発明1は「光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」に対応する構成は備えるものの,「紫外光」を出射するものではない点。

《相違点2》
本願補正発明においては,「前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板が配置され」ているのに対して,引用発明1においては,「前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線部材が配置され」ているものの,当該「配線部材」が「前記メタルベース上に」配置されておらず,また,当該「配線部材」が「配線基板」ではない点。

《相違点3》
本願補正発明においては,「前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmの範囲内で一様であ」るのに対して,引用発明1においては「前記メタルベースの厚みは一様である」ものの,その厚さの範囲が特定されていない点。

《相違点4》
本願補正発明においては「前記絶縁部の厚みが,100?600μmである」のに対して,引用発明1においては「前記絶縁部」の厚さが特定されていない点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。
ア 相違点1について
一般に,紫外線を発光するLED及びこれを用いて発光装置を構成することは,例えば以下の周知例1及び2にも記載されているように周知である。そして,紫外線を発光するLEDにあっても,LEDである以上放熱の必要性があることは明らかであるから,引用発明1における「発光ダイオード」すなわちLEDとして,前記周知の紫外線を発光するLEDを用いることは当業者が適宜になし得たことである。

周知例1:特開2013-89769号公報
原査定の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開昭62-196878号公報(以下「周知例1」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0001】
本発明は,蛍光体を用いた発光モジュールに関し,例えば,紫外線又は短波長可視光で効率よく励起され発光する蛍光体を用いた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子と,当該発光素子が発生する光により励起され当該発光素子とは異なる波長域の光を発生する蛍光体とを組み合わせることにより,所望の色の光を得るように構成された種々の発光装置が知られている。
【0003】
特に近年,長寿命かつ消費電力が少ない白色発光装置として,紫外線又は短波長可視光を発光する発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の半導体発光素子と,これらを励起光源とする蛍光体とを組み合わせることで白色光を得るように構成された発光装置が注目されている。
【0004】
このような白色発光装置の具体例として,紫色光又は紫外線を発光するLEDと,紫色光又は紫外線によって励起され,青や黄等の色の光をそれぞれ発光する蛍光体を複数組み合わせる方式等が知られている(特許文献1参照)。」

周知例2:特開2013-239673号公報
原査定の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2013-239673号公報(以下「周知例2」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0013】
図1Aは,第1の実施例による発光装置を示す断面図である。この発光装置11は,主に,発光素子30,波長変換層50,およびワイヤグリッド偏光板60を含む構成である。なお,便宜的に,図中に示すXYZ直交座標系を定義する。
【0014】
発光素子30は,サブマウント基板20上に,複数のバンプ21を介して,実装される。発光素子30は,たとえば紫外光ないし青色光を放出する窒化物系半導体を含む構成である。サブマウント基板20の表面には,複数のバンプ21を介して発光素子30に電力を供給することができる配線パターンが形成されている。」

イ 相違点2について
引用発明1は,前記(2)ア(ア)aに摘記した引用例1の請求項1に記載されているとおり,「放熱性に優れた金属基板(1)上に絶縁膜(2)を介して金属板(3)を貼り付け,この金属板(3)に一方の電極が電気的に接続されるように発光ダイオード(5)をマウント」するとの構成により,高い放熱性を達成するものである。
引用発明1においては,発光ダイオードの他方の電極に接続される「第2金属板4」も「第1金属板3」と同じく,「アルミ基板1の上に絶縁膜2を介して」貼り付けられているが,当該「第2金属板4」に係る構成は,前記「高い放熱性を達成する」のに必須の構成でないことは,前記請求項1において「第2金属板4」に係る構成が特定されていないことからも明らかである。
ところで,一般に,発光ダイオードチップ(LEDチップ)の実装に際し,LEDチップを,その一方の電極が電気的に接続されるように金属板の上にマウントするとともに,他方の電極を,前記金属板上に設けられた,絶縁性の基板上の配線に接続することは,以下の周知例3及び4にも記載されているように周知のものであり,当該周知技術にあっては,引用例1の実施例とは異なり,前記金属板自体を分割することなくそのまま使用できることが明らかである。
それゆえ,引用発明1において,「第2金属板4」を「アルミ基板1の上に絶縁膜2を介して」貼り付ける構成に代えて,前記周知技術の構成を採用して,相違点2に係る構成を備えることは,当業者が適宜になし得たことである。

周知例3:特開平11-298048号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平11-298048号公報(以下「周知例3」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0014】
【発明の実施の形態】図1は,本発明の第1実施形態に係るLED実装基板の一部断面図で,以下この図を用いて第1実施形態について説明する。
【0015】本LED実装基板10は,図6と同様に,2次元配列されて並列接続される複数のLED11(図1では1個のみ示されている)及びこれら各LED11を封止する透光性の封止部材12を備えている他,図6とは構造が異なる実装基板13を備えており,図略の外部電源から各LED11に電力が供給されると各LED11が発光して面光源としての照明を行うものである。
【0016】実装基板13は,Alによりなる金属板131を有し,この金属板131の上面(一の面)側には複数の凹部130が設けられ(図1では1つのみ示されている),これら凹部130の各底面は金属板131の上面によって形成されている。そして,これら凹部130内にはそれぞれ複数のLED11が収納されており,各LED11の一端(下面)は凹部130の底面である金属板131の上面に電気的に接続されている。これにより,複数のLED11の一端は金属板131を介して互いに電気的に接続されることになる他,面光源としての照明時,複数のLED11には大電流が流れ,この大電流により熱が発生することになるが,この発生する熱が金属板131から外部に好適に放熱されて,一方の電流経路である金属板131及び各LED11の双方が冷却される。
【0017】また,実装基板13は,複数の凹部130の側壁にそれぞれ対応する複数の貫通孔THが形成された絶縁性の樹脂基板132を有し,この樹脂基板132は,金属板131の上面に取付けられ,LED11の高さに応じた厚みに設定されている。この厚みは,各LED11の高さが例えば0.3mm程度であれば,0.3?0.5mm程度に設定される。
・・・(中略)・・・
【0019】また,実装基板13は,樹脂基板132の上面に形成された銅箔によりなる配線としての接続部材133を有し,この接続部材133は,ワイヤボンディングによる銅等のワイヤWによって複数のLED11の各他端(上面)と電気的に接続されている。このように,複数のLED11に対して両電極がそれぞれ上記金属板131及び接続部材133によって一括接続される。これにより,金属板131及び接続部材133に外部電源から電力が供給されると各LED11が発光することになる。」

周知例4:特開昭62-196878号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開昭62-196878号公報(以下「周知例4」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「第1図は本発明に係る照明装置の基本的構成を示す断面図,第2図は同装置の要部斜視図である。なお,図中第9図および第10図と同一構成部材のものに対しては同一符号を以って示し,その説明を省略する。これらの図において,Al等の良導体からなる金属基板1の表面には複数個の素子収納凹部3がその長手方向に適宜な間隔をおいて形成され,また凹部3を除く表面全体が絶縁層4によって被覆されている。共通導電層5は金属基板1の長手方向に延在する如く前記絶縁層4上に形成され,さらにこの絶縁層4上には複数個のチップ状の導電層10が前記各素子収納凹部3に対応して形成されている。
発光素子2は半導体チップからなり,各素子収納凹部3の底面中央にそれぞれ直接配設固定されることにより金属基板1と導通し,またリード線としての金線7によって当該素子に対応する前記導電層10にそれぞれ電気的に接続されている。各導電層10は前記共通導電層5に点灯用抵抗体Rを介してそれぞれ接続されている。そして,金属基板1と共通導電層5とはリード線12,13を介して電源(図示せず)に接続されている。したがって,発光素子2は電源に対して並列接続される。なお,前記点灯用抵抗体Rは印刷抵抗の方が小さく形成できる点で有効であり,またチップ抵抗でもよい。」(2ページ右上欄?同ページ左下欄18行)
「第8図は本発明の更に他の実施例を示す要部断面図である。本実施例は各金属基板1A,1Bの表裏面に絶縁層としてのフレキシブルプリント基板4を接着し,両基板1A,1Bを導電層10′によって電気的に接続したものである。導電層10′は右側の金属基板1Bの表面および一側面にかけてフレキシブルプリント基板4上に形成されている。一方,金属基板1Aの金属基板1Bと対向する側面はフレキシブルプリント基板4が接着されておらずむき出しで,前記導電層10′に接触している。各基板1A,1Bの導電層10′と発光素子2とはリード線7によって電気的に接続されている。したがって,金属基板1A,1Bと発光素子2A,2Bは,導電層10′およびリード線7を介して直列接続されている。
なお,金属基板1A,1Bの接続において本実施は導電層10′を使用したが,適宜なソケットで接続してもよいことは勿論である。」(3ページ左下欄9行?同ページ右下欄6行)

ウ 相違点3について
引用発明1においては,本願補正発明のメタルベースに相当する「第1金属板3」について,「第1金属板3は, ・・・(中略)・・・,厚みは数百μm以上に設定されるものであり」,また,「第1金属板3の厚みを大きくすることによって熱の吸収容量を高めることができ,ひいては使用条件に合わせて熱設計を変更することが可能である」とされている。
そして,以下の周知例5及び6にも記載されているように,一般に,発光ダイオード素子に実装に用いられる金属板の厚さとして,1?2mmは通常採用される程度の値である。
それゆえ,引用発明1において,使用条件に合わせて,第1金属板3の厚みを1?2mm程度に大きくすることは,当業者が適宜になし得たことである。

周知例5:特開2002-94122号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2002-94122号公報(以下「周知例5」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0044】(実施形態1)本発明の実施形態1を図1(a)(b)を参照して説明する。この光源装置1は,例えばアルミニウムのような熱伝導性の高い材料から形成された厚さが約2mmの基板3と,例えば液晶ポリマーのような絶縁材料からなる厚さが約2mmの絶縁部材4とを貼り合わせて構成される。
【0045】絶縁部材4における基板3と反対側の面には,直径が約3mmで深さが約1.5mmの丸穴5が2箇所形成され,各丸穴5の略中央には絶縁部材4を貫通して基板3に達する断面略円形で直径が約1mmの貫通孔6がそれぞれ穿設されている。ここに,丸穴5と貫通孔6とで,基板3と対向する絶縁部材4の部位に絶縁部材4を貫通して設けられた孔が構成され,丸穴5の底部には内側に突出する張出部4aが基板3と一体に形成されている。そして,貫通孔6から露出する基板3の部位にそれぞれLEDチップ2が,銀ペーストのようなダイボンディングペースト7を用いてダイボンドされている。
・・・(中略)・・・
【0048】上述のように,本実施形態の光源装置1では,LEDチップ2が熱伝導性の良好な基板3上に直接ダイボンドされているから,LEDチップ2の発熱はダイボンディングペースト7を介して基板3へ伝わり,基板3に到達したLEDチップ2の発熱は速やかに基板3全体に広がる。ここで,LEDチップ2の発熱の放熱経路には,熱伝導係数の低いダイボンディングペースト7が存在するが,ダイボンディングペースト7の厚さは数μm程度と薄いため,放熱性に与える影響は小さく,十分な放熱性能が得られる。例えば熱抵抗で比較すると,従来例で説明した砲弾型LEDの場合は,LEDチップからリードフレームの先端までの熱抵抗が約350℃/Wであったのに対して,本実施形態の光源装置1では,LEDチップ2から基板3の裏面までの熱抵抗が約90℃/Wであり,熱抵抗を約4分の1に低減することができる。」

周知例6:特開2010-251441号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2010-251441号公報(以下「周知例6」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0015】
<モジュール基板の構造>
本発明に係る照明用LEDモジュールは,図1及び図2に示すように,基板1と,基板1上に積層された1W/mK以上の熱伝導性を有する絶縁層2と,絶縁層2上に導電パターンを有しつつ積層された導電層3を有するモジュール基板4と,モジュール基板4の導電層3上に取り付けられた複数の発光ダイオード素子5と,発光ダイオード素子5の光照射側に配置された蛍光体(図示省略,以下同じ。)を有する照明用LEDモジュールである。
・・・(中略)・・・
0040】
<基板>
本発明の基板としては,アルミニウム,鉄,銅,又は前記金属の合金,アルミニウム-黒鉛複合体,アルミニウム合金-黒鉛-炭化珪素質複合体からなる群から選ばれればいずれでも構わないが,アルミニウム,銅,又はそれらの合金,アルミニウム合金-黒鉛複合体,アルミニウム合金-黒鉛-炭化珪素質複合体のいずれかが好ましい。また,必要に応じて,絶縁層との密着性を改良するために,絶縁層との接着面側に,サンドブラスト,エッチング,各種メッキ処理,カップリング剤処理等の表面処理も適宜選択可能である。
・・・(中略)・・・
【0047】
<基板の厚み>
基板の厚さは0.10mm?4mmが好ましい,あまりに薄いとハンドリング性が低下し,あまりに厚いと,技術的な制限はないが,照明用LEDモジュールとしての用途が見いだせず,実用的でない。」

エ 相違点4について
引用発明1に係る「絶縁膜2」について,引用例1には,前記(2)ア(ア)cに摘記したとおり「絶縁膜2を介して対向するアルミ基板1と第1金属板3との対向面積が大きいのであるから,絶縁膜2の熱伝導率が低くても,発光ダイオードチップ5の発熱を効果的にアルミ基板1に伝導し」(段落【0022】)とされている。
ここで,絶縁膜2は電気的絶縁をするとともに,上記のとおり,熱伝導をも担うものであるところ,以下の周知例7及び8にも記載されているように,そのような絶縁膜の厚さとして,100?600μm程度は通常採用される程度の値であるから,引用発明1においても,絶縁膜2の厚さを100?600μm程度とすることは当業者が適宜になし得たことである。

周知例7:特開2007-214249号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2007-214249号公報(以下「周知例7」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0013】
図1は実施の形態1における発光モジュールを示す上面図及び断面図であり,図1(A)はその上面図,図1(B)は図1(A)の矢印104aにおける断面図である。図1において,100はリードフレーム,102は放熱樹脂,102aは放熱樹脂よりなる絶縁層,104aは図1(B)の断面部を示す矢印,104bはLED108の側面から放射された光を示す矢印,106はリードフレーム100の屈曲位置を示す点線である。108は半導体層(108a,108b)を積層して形成したLEDであり,108aはn型半導体層,108bはp型半導体層,109aはn型半導体層108aの電極表面全体に形成された導電層,109bはp型半導体層108bの(電極)表面全体に形成された導電層である。
・・・(中略)・・・
【0030】
図2は,実施の形態1における放熱メカニズムについて説明する上面図及び断面図である。図2において,LED108はリードフレーム100や金属基板114で形成された凹部118の底部分に実装されており,主要な部分の構成は図1とほぼ同じである。図2における矢印104c,104dはそれぞれLED108に発生した熱の拡散方向を示すものである。図2(A)に示すように,LED108から発生した熱は,矢印104cが示すようにリードフレーム100を伝わって高速で放熱する。これは実施の形態1において,リードフレーム100に銅を主体とした熱伝導率の高いものを使うためである。一方リードフレーム100に伝わった熱は,後述する図2(B)の矢印104dに示すように放熱樹脂102を介して,金属基板114に伝わる。そして金属基板114の熱は,ヒートシンク116等に伝わる。こうしてLED108に発生した熱を高速で拡散できるため,LED108の効率的な冷却が可能となる。
・・・(中略)・・・
【0041】
なお,凹部118が形成された金属基板114とリードフレーム100の間に形成された放熱樹脂102の厚みは50ミクロン以上500ミクロン以下が望ましい。また更には100ミクロン以上300ミクロン以下が望ましい。絶縁層の厚みが50ミクロン以下の場合,金属基板114とリードフレーム100の間の絶縁性が低下し,信頼性に影響を与える場合がある。またその厚みが500ミクロンを超えると,リードフレーム100から金属基板114への熱伝導性(放熱性)を低下させ品質(発光特性)に影響を与える場合がある。」

周知例8:特表2008-518384号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特表2008-518384号公報(以下「周知例8」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0018】
LEDモジュール60は,図1?図3,特に図2(a)及び図3(a)に示すように,主に,発光部62と給電部61が表側に形成された絶縁板632と,放熱効果を高める目的で,前記絶縁板632の裏側に設けられた金属板631とを備える。なお,絶縁板632及び金属板631とを積層構成にし,絶縁板632の表面に発光部62へ給電するための配線パターンが形成されたものを金属ベース基板(本発明の「基板」に相当する。)63という。
【0019】
発光部62は,図3(a)の断面図及び図3(b)の拡大図に示すように,絶縁板632における発光部62に相当する部分に形成された配線パターン(不図示)に実装されたLED素子6010と,当該LED素子6010を被覆する樹脂体6020と,各LED素子6010に対応する部分に反射孔603を有する反射板602と,当該反射板602の反射孔603に対応した部分がレンズ部604となっているレンズ部材601とを備える。
・・・(中略)・・・
【0037】
以上の工程を経て,LEDモジュール60のソケット10によるヒートシンク70への装着が完了する。
3.実施例
LEDモジュール60の寸法は,図2(a)に示すように,短手方向の寸法L1が23.5(mm)で,長手方向の寸法L2は28.5(mm)である。金属ベース基板63を構成する金属板631には,厚さ1(mm)のアルミニウム板が用いられ,一方の絶縁板632は,フィラー入りの熱硬化性樹脂により構成され,その厚みが0.1(mm)である。絶縁板632には,10(μm)の厚みの銅箔を用いてエッチング等により配線パターンが形成されている。樹脂には,エポキシ樹脂が用いられている。」

(5)小括
よって,本願補正発明は,引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年7月23日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成30年4月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1により特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
基板と,前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップと,前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材と,を備える光照射モジュールにおいて,
前記基板は,
表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベースと,
前記メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部と,
を有し,
前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板が配置され,
前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmであり,
前記絶縁部の厚みが,100?600μmである
ことを特徴とする光照射モジュール。」

2 引用発明
(1)引用例2:特開昭62-196878号公報
ア 原査定の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開昭62-196878号公報(以下「引用例2」という。注:前記周知例4と同文献。)には,図とともに,以下の記載がある。
(ア)
「2. 特許請求の範囲
多数の発光素子を光源とする照明装置において,良導体からなる金属基板の表面に多数の素子収納凹部を形成し,それ以外の表面を絶縁層にて被覆し,前記各素子収納凹部に前記発光素子をそれぞれ配設して前記金属基板と電気的に導通させ,前記絶縁層の表面に前記発光素子に対応して帯状の共通導電層を形成し,各発光ダイオードと共通導電層をリード線によつて電気的に接続し,かつ前記金属基板と前記共通導電層とを電源に接続したことを特徴とする照明装置。
3. 発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本発明は多数の発光ダイオードを光源として使用する車輌用灯具等に適用して好適な照明装置に関する。
〔従来の技術〕
・・・(中略)・・・
〔問題点を解決するための手段〕
本発明に係る照明装置は上述したような問題を解決すべくなされたもので,多数の発光素子を光源とする照明装置において,良導体からなる金属基板の表面に多数の素子収納凹部を形成し,それ以外の表面を絶縁層にて被覆し,各素子収納凹部に前記発光ダイオードをそれぞれ収納配置して前記金属基板と電気的に導通させ,前記絶縁層の表面に帯状の共通導電層を形成し,この共通導電層と前記各発光素子をリード線によって電気的に接続し,かつ前記金属基板と前記共通導電層とを電源に接続するようにしたものである。
〔作用〕
本発明においては素子収納凹部内に発光素子を直接配設し,金属基板との導通を計っているので,凹部内に絶縁層と導電層を積層形成する必要がなく,製作が容易である。」(1ページ左欄4行?2ページ右上欄9行)
(イ)
「〔実施例〕
以下,本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
第1図は本発明に係る照明装置の基本的構成を示す断面図,第2図は同装置の要部斜視図である。なお,図中第9図および第10図と同一構成部材のものに対しては同一符号を以って示し,その説明を省略する。これらの図において,Al等の良導体からなる金属基板1の表面には複数個の素子収納凹部3がその長手方向に適宜な間隔をおいて形成され,また凹部3を除く表面全体が絶縁層4によって被覆されている。共通導電層5は金属基板1の長手方向に延在する如く前記絶縁層4上に形成され,さらにこの絶縁層4上には複数個のチップ状の導電層10が前記各素子収納凹部3に対応して形成されている。
発光素子2は半導体チップからなり,各素子収納凹部3の底面中央にそれぞれ直接配設固定されることにより金属基板1と導通し,またリード線としての金線7によって当該素子に対応する前記導電層10にそれぞれ電気的に接続されている。各導電層10は前記共通導電層5に点灯用抵抗体Rを介してそれぞれ接続されている。そして,金属基板1と共通導電層5とはリード線12,13を介して電源(図示せず)に接続されている。したがって,発光素子2は電源に対して並列接続される。なお,前記点灯用抵抗体Rは印刷抵抗の方が小さく形成できる点で有効であり,またチップ抵抗でもよい。
前記素子収納凹部3は略逆梯形に形成されることにより,その内壁面3aがアルミニウムの蒸着,反射特性に優れた塗料の塗布等によって反射面を形成している。この反射面は金属基板1の全体をメッキすることによっても形成し得る。前記素子収納凹部3には透明な樹脂14が充填されて前記発光素子2をモールドしている。樹脂14としてはエポキシ樹脂等が使用され,その表面は略半球状に膨出形成されることにより凸レンズを形成している。なお,第2図においては樹脂14を省略している。
・・・(中略)・・・
第5図は本発明の他の実施例を示す要部斜視図,第6図はその電気回路を示す図である。この実施例は第1図および第2図に示した金属基板1を放熱器30の表面に絶縁層31を介して複数個並列配置し,これらの金属基板1をリード線32によって直列に,また一部を並列に接続したものである。この場合,各金属基板1はあらかじめ発光素子2が実装されることによりユニット化されている。放熱器30はアルミニウム等からなり,その裏面には放熱効果を増大させるため複数の溝34が形成されている。
・・・(中略)・・・
第8図は本発明の更に他の実施例を示す要部断面図である。本実施例は各金属基板1A,1Bの表裏面に絶縁層としてのフレキシブルプリント基板4を接着し,両基板1A,1Bを導電層10′によって電気的に接続したものである。導電層10′は右側の金属基板1Bの表面および一側面にかけてフレキシブルプリント基板4上に形成されている。一方,金属基板1Aの金属基板1Bと対向する側面はフレキシブルプリント基板4が接着されておらずむき出しで,前記導電層10′に接触している。各基板1A,1Bの導電層10′と発光素子2とはリード線7によって電気的に接続されている。したがって,金属基板1A,1Bと発光素子2A,2Bは,導電層10′およびリード線7を介して直列接続されている。
なお,金属基板1A,1Bの接続において本実施は導電層10′を使用したが,適宜なソケットで接続してもよいことは勿論である。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明に係る照明装置によれば,金属基板と発光素子との電気的接続が確実にして,素子収納凹部に絶縁層と導電箔を積層形成する必要がなく,製作が容易で安価に提供することができる。」(2ページ右上欄10行?3ページ右下欄12行)

(ウ)ここで,第5図は以下のものである。


イ 以上を総合すると,引用例2には,第5図に示されたものについて,以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明2」という。)。
「照明装置であって,
金属基板1を放熱器30の表面に絶縁層31を介して複数個並列配置し,これらの金属基板1をリード線32によって直列に,また一部を並列に接続したものであり,各金属基板1はあらかじめ発光素子2が実装されることによりユニット化され,放熱器30はアルミニウム等からなり,その裏面には放熱効果を増大させるため複数の溝34が形成されているものであり,
Al等の良導体からなる金属基板1の表面には複数個の素子収納凹部3がその長手方向に適宜な間隔をおいて形成され,また凹部3を除く表面全体が絶縁層4によって被覆され,共通導電層5は金属基板1の長手方向に延在する如く前記絶縁層4上に形成され,さらにこの絶縁層4上には複数個のチップ状の導電層10が前記各素子収納凹部3に対応して形成され,
発光素子2は半導体チップからなり,各素子収納凹部3の底面中央にそれぞれ直接配設固定されることにより金属基板1と導通し,またリード線としての金線7によって当該素子に対応する前記導電層10にそれぞれ電気的に接続され,
各導電層10は前記共通導電層5に点灯用抵抗体Rを介してそれぞれ接続されて,金属基板1と共通導電層5とはリード線12,13を介して電源に接続されているものである,
照明装置。」

3 対比
(1)本願発明と引用発明2とを比較する。
ア 引用発明2においては,「各金属基板1はあらかじめ発光素子2が実装され」,「金属基板1の表面には複数個の素子収納凹部3がその長手方向に適宜な間隔をおいて形成され」,「発光素子2は半導体チップからなり,各素子収納凹部3の底面中央にそれぞれ直接配設固定されることにより金属基板1と導通し」ているから,当該「金属基板1」は本願発明の「表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベース」に相当する。

イ 引用発明2においては,「金属基板1を放熱器30の表面に絶縁層31を介して複数個並列配置」しているところ,「金属基板1の表面には複数個の素子収納凹部3がその長手方向に適宜な間隔をおいて形成され」ているから,当該「絶縁層31」は,「金属基板1」の裏面に位置することになる。よって,引用発明2の「絶縁層31」は,本願発明の「メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部」に相当し,引用発明2の「金属基板1」及び「絶縁層31」を合わせたものは,本願発明の「基板」に相当する。

ウ 引用発明2においては,「金属基板1を放熱器30の表面に絶縁層31を介して複数個並列配置」しているところ,放熱を行うために,金属基板1が絶縁膜31を介して放熱器30に密着していることは明らかであるから,当該構成に係る「放熱器30」は,本願発明の「前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材」に相当する。

エ 引用発明2においては,複数の発光素子2が「金属基板1」の表面と直交する方向にも光を出射することは明らかである。よって,引用発明2の「発光素子2」と,本願発明の「前記基板の表面に直交する方向に紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」とは,「前記基板の表面に直交する方向に光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」である点で一致する。

オ 引用発明2においては「金属基板1の表面には・・・,また凹部3を除く表面全体が絶縁層4によって被覆され,共通導電層5は金属基板1の長手方向に延在する如く前記絶縁層4上に形成され,さらにこの絶縁層4上には複数個のチップ状の導電層10が前記各素子収納凹部3に対応して形成され,」「発光素子2は半導体チップからなり,・・・,またリード線としての金線7によって当該素子に対応する前記導電層10にそれぞれ電気的に接続され, 各導電層10は前記共通導電層5に点灯用抵抗体Rを介してそれぞれ接続されて,金属基板1と共通導電層5とはリード線12,13を介して電源に接続されているものである」から,当該「絶縁層4」,「共通導電層5」,「複数個のチップ状の導電層10」及び「点灯用抵抗体R」からなる構成と,本願発明の「前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板が配置され」ている構成とは,「前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線部材が配置され」ている構成の点で一致する。

カ 引用発明2の「照明装置」は,本願発明の「光照射モジュール」に相当する。

(2)よって,両者は次の点で一致する。
「基板と,前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップと,前記基板の裏面に密着するように配置され,前記LEDチップにおいて発生する熱を外部に放熱する放熱部材と,を備える光照射モジュールにおいて,
前記基板は,
表面に前記複数のLEDチップが載置されて,該LEDチップの裏面に形成された第1の電極と電気的に接続され,該第1の電極に電力を供給する板状のメタルベースと,
前記メタルベースの裏面側に密着して設けられた絶縁部と,
を有し,
前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線部材が配置されている
ことを特徴とする光照射モジュール。」

(3)一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点5》
本願発明においては,「前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に紫外光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」を備えるのに対して,引用発明2は「前記基板の表面に載置され,前記基板の表面に直交する方向に光を出射する複数のLED(Light Emitting Diode)チップ」に対応する構成は備えるものの,当該「LED(Light Emitting Diode)チップ」が「紫外光」を出射するものであることまでは特定されていない点。

《相違点6》
本願発明は,「前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線基板が配置され」ている構成を備えるのに対し,引用発明2は,「前記メタルベース上には,前記各LEDチップの表面に形成された第2の電極と電気的に接続され,該第2の電極に電力を供給する配線部材が配置され」ていることに対応する構成は備えるものの,当該「配線部材」が「配線基板」であるとまではいえない点。

《相違点7》
本願発明は,「前記メタルベースの厚みは,1.0?2.0mmであ」るとの構成を備えるのに対して,引用発明2においては,「金属基板1」の厚さの特定がされていない点。

《相違点8》
本願発明は,「前記絶縁部の厚みが,100?600μmである」との構成を備えるのに対して,引用発明2においては,「絶縁層31」の厚さの特定がされていない点。

4 判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点5について
引用発明2において,相違点5に係る構成を備えることは,前記相違点1についての前記第2 4(4)アでの検討と同様の理由により,当業者が適宜になし得たことである。

(2)相違点6について
前記相違点2について前記第2 4(4)イで検討したとおり,一般に,発光ダイオードチップ(LEDチップ)の実装に際し,LEDチップを,その一方の電極が電気的に接続されるように金属板の上にマウントするとともに,他方の電極を,前記金属板上に設けられた,絶縁性の基板上の配線に接続することは,前記周知例3及び4にも記載されているように周知のものであるから,引用発明2に係る,「絶縁層4」,「共通導電層5」,「複数個のチップ状の導電層10」及び「点灯用抵抗体R」からなる構成に代えて,絶縁性の基板上に設けた各導電層及び抵抗体として,「配線基板」を構成することは,当業者が適宜になし得たことである。

(3)相違点7について
前記相違点3について前記第2 4(4)ウで検討したとおり,前記周知例5及び6にも記載されているように,一般に,発光ダイオード素子の実装に用いられる金属板の厚さとして,1?2mmは通常採用される程度の値であるから,引用発明2においても,「第1金属板3」の厚みを1?2mm程度とすることは,当業者が適宜になし得たことである。

(4)相違点8について
引用発明2において,「絶縁層31」は電気的絶縁をするとともに,熱伝導をも担うものであることが明らかであるところ,前記第2 4(4)エで示した周知例7及び8にも記載されているように,そのような絶縁膜の厚さとして,100?600μm程度は通常採用される程度の値であるから,引用発明2において,「絶縁層31」の厚みを100?600μm程度の範囲内とすることは,当業者が適宜になし得たことである。

5 小括
よって,本願発明は,引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-29 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2015-74298(P2015-74298)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大西 孝宣  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 光照射モジュール  
代理人 荒木 佳幸  

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