• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1359446
審判番号 不服2019-6  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-04 
確定日 2020-02-06 
事件の表示 特願2016-209637「イメージスキャンシステム、イメージスキャナ、情報取得方法及び情報取得プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 72985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 3月29日:拒絶理由通知書
平成30年 6月 1日:意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月28日:拒絶査定
平成31年 1月 4日:審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成31年1月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項4の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「表示部を備えたイメージスキャナにおいて、
スキャンデータについて文字認識処理により認識した文字データを抽出し、抽出した前記文字データを前記スキャンデータの文書件名として記憶する情報の候補として前記表示部に表示し、前記情報の候補のうちから選択された情報を前記スキャンデータの文書件名として対応付けた前記スキャンデータを情報処理装置に送信する制御を行う制御部を、
備えることを特徴とするイメージスキャナ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4の記載は次のとおりである。

「表示部を備えたイメージスキャナにおいて、
スキャンデータについて文字認識処理により認識した文字データを抽出し、抽出した前記文字データを前記スキャンデータに関連付けて記憶する情報の候補として前記表示部に表示し、前記情報の候補のうちから選択された情報に対応付けた前記スキャンデータを情報処理装置に送信する制御を行う制御部を、
備えることを特徴とするイメージスキャナ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である、「前記スキャンデータに関連付けて記憶する情報の候補」、及び、「前記情報の候補のうちから選択された情報」と「前記スキャンデータ」との対応付けについて、それぞれ上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項4に記載された発明と補正後の請求項4に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項4に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2009-21861号公報(平成21年1月29日公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は、当審で付した。

「【0003】
特許文献1記載の技術は、印刷機能付きスキャナ装置を用いて、スキャンジョブに含まれる情報を含む校正シートを印刷する。ユーザはこの校正シートにより画質とスキャン条件をチェックして画像データを承諾するか否かを選択でき、承諾を選択すると画像データがネットワークを介して送信される。
【特許文献1】特開2005-260934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のスキャン方法では次のような問題がある。
a)まず、スキャナ装置が印刷機能を持っているとは限らないので、印刷機能のないスキャナ装置では校正シートを印刷することができない。また、印刷機能を持っていても、校正シートを印刷すること自体、電力や用紙の無駄を生じさせる。
b)校正シートの紙面生成等にソフトウェアが必要となるので、その実行のための処理能力を備えたコンピュータを有していなければ実現できず、かかるコンピュータを新たに搭載すればコスト高をもたらす。
c)文書配信サーバは、複数のスキャナ装置からのスキャンジョブを処理するため、特許文献1のようなスタンドアロン構成(すべての処理を自分で行なう)では、スキャンジョブのキューイングと優先処理が実現できない。
d)特許文献1では、ユーザが承諾を選択しない場合、スキャン条件等を変更して再度スキャンする必要があるが、再スキャンでは訂正できない問題を解決できない。例えば、画像データから文字を抽出するOCR(光学文字認識)技術などは、原稿やスキャニング・パラメータを変更しても読み取り精度が改善されない場合がある。
【0005】
したがって、特許文献1記載の技術によるメリットは、端末に送信する前に「再スキャンの実行/ジョブのキャンセルが選択できる」ことのみであり、画像データを修正するには再度スキャンする必要があり、さらに言えば、再スキャンで修正可能な箇所しか訂正できない。また、特許文献1記載の技術のように画像データの修正のために再度スキャンするのではユーザにとって面倒である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、再度スキャンすることなく、スキャンされた画像データの加工結果をユーザがチェック可能なスキャナ装置、クライアントサーバシステム、スキャナジョブの校正方法、プログラム、及び、記憶媒体、を提供することを目的とする。」

「【実施例1】
【0021】
図1は、スキャナ装置100がネットワーク103を介して文書管理サーバ200と接続されたスキャナシステム50の概略構成図を示す。
【0022】
本実施例のスキャナ装置100は、原稿をスキャンして得られた画像データからメタデータを生成すると共に表示部に表示して、ユーザがスキャナ装置100にてメタデータを修正できることを特徴とする。メタデータは例えば、画像データにOCR(Optical Character Reader)を施し、中間データとして得られたテキストデータから抽出された文書名である。すなわち、中間データのテキストデータから抽出した一部(又は全部であってもよい)のテキストデータがメタデータである。なお、以下では、画像データとメタデータのように一回のスキャンに伴うデータをまとめてスキャンデータという場合がある。
【0023】
複数のスキャナ装置100は、主にスキャナ機能を提供する装置であってもよいし、複写機能、ファクシミリ機能を備えている装置でもよく、また、デジタル複合機(MFP)であってもよい。スキャナ装置100でスキャンした画像データ及び生成されたメタデータは、文書管理サーバ200に送信される。文書管理サーバ200は、これらを蓄積して管理したりさらにユーザのPC(パーソナルコンピュータ)104に配信する。
【0024】
スキャナ装置100は、単体でもメタデータの生成、修正及び配信の処理を完結できるが、ネットワーク103に接続された外部コンピュータ101と外部コンピュータ102がこれらの処理を支援することができる。ネットワーク103は、LAN、WAN、インターネット等のであり、TCP/IPなど所定のプロトコルで接続されている。」

「【0025】
〔スキャナ装置100がメタデータを生成する構成〕
図2は、スキャナ装置100の機能ブロック図の一例を示す。スキャナ装置100は、スキャナエンジン11と演算装置16等がバスを介して接続されている。スキャナエンジン11は、主走査方向に光電変換素子が1列に並んだラインセンサが副走査方向に原稿をスキャンして各画素を所定の輝度階調で表すデジタルデータに変換する。操作部12は、ユーザからの操作を入力するキーボード、ポインティングデバイス、表示部14と兼用されたタッチパネル等である。NIC(Network Interface Card)13は、所定のプロトコルでネットワーク103に接続するためのインターフェースであり、例えばLANカードである。表示部14は、液晶ディスプレイ等で構成されたユーザインターフェースであり、スキャン条件、動作状況、操作メニュー、エラーメッセージ等を表示する。そして本実施例では、表示部14にメタデータを表示することを特徴とする。
【0026】
記憶装置15はハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等、不揮発性メモリであり、画像データ、OS、プログラム、ファイル等を記憶している。本実施例では、メタデータ生成プログラム17P、メタデータ表示制御プログラム18P、メタデータ修正プログラム19P、配信プログラム21P及び管理ツールプログラム30Pを記憶していると共に、各種のプラグインプログラム20Pを記憶している。これらのプログラムは記憶媒体9に記憶して配布されたり、また、ネットワーク103を介してダウンロードされる。
【0027】
演算装置16は、OS、種々のプログラム、などを記憶装置15からロードして実行して種々の機能を提供すると共に、スキャナ装置100が行う処理を統括的に制御する。本実施例では、メタデータ生成プログラム17Pを演算装置16が実行することでメタデータ生成部17が実現され、メタデータ表示制御プログラム18Pを演算装置16が実行することでメタデータ表示制御部18が実現され、メタデータ修正プログラム19Pを演算装置16が実行することでメタデータ修正部19が実現され、配信プログラム21Pを演算装置16が実行することで配信部21、が実現される。また、プラグインプログラム20Pを演算装置16が実行することでプラグイン20が実現される。
【0028】
なお、プラグインプログラム20Pを実行することで実現されるプラグイン20は複数ある。これらについては後述するが、プラグイン20は、例えば、OCR処理して文書名を抽出する機能、画像データのフォーマット(tiff、Jpeg、Gif等)からPDF(Portable Document File)に変換する機能、画像データを電子メールに添付して送信する機能、画像データとメタデータを文書管理サーバ200に登録する機能、配信する機能、等である。これらのプラグイン20は、後述する管理ツール部プログラム30Pを用いてユーザがカスタマイズできるようになっている。
【0029】
メタデータ生成部17は、スキャナエンジン11が生成した画像データからメタデータを生成する。メタデータ生成部17は、例えば、OCRにより画像データに含まれる文字を認識し、中間データとしてのテキストデータから所定の文字列を抽出しメタデータとする。例えば、文書名をメタデータとする場合、最初のスキャン頁のうち「文字サイズが他より大きい文字列、中央にセンタリングされている」等の特徴のある文字列をメタデータとする。また、例えば、原稿32の「キーワード」をメタデータとする場合、文書内に何度も登場する名詞をメタデータとする。
【0030】
また、原稿32のうちユーザが指定した箇所、又は、ユーザが読み取り位置を指定したその位置にあるテキストデータをメタデータとすることができる。
【0031】
また、原稿32をOCR処理するのでなく、帳票識別(罫線による枠組みを認識)してメタデータを生成してもよい。原稿32が帳票である場合、帳票に書き込まれた全ての情報がメタデータとなりうるし、帳票のうちユーザが指定した箇所(例えば、記入者名、社員コード)をメタデータに指定することができる。
【0032】
このように、メタデータの内容は適宜設定できるものであり、メタデータ生成部17は設定されたメタデータ及びその特徴に基づきメタデータを生成する。生成したメタデータに付与する名称(例えば文書名)は、商品名や伝票番号などユーザが識別しやすい適切な名称を付けることができる。なお、メタデータを文書名とした場合は、通常、メタデータは1つであるし、キーワードとした場合は、メタデータが複数となることがあるように、メタデータの数は複数ページに及ぶ場合がある1つの原稿32に対し1以上である。
【0033】
メタデータ表示制御部18はメタデータを表示部14に表示し、メタデータ修正部19はユーザが修正したメタデータにより修正前のメタデータを上書き保存する。配信部21は、メタデータ及び画像データを文書管理サーバ200やユーザのPC104に配信する。
【0034】
なお、メタデータ生成部17、メタデータ表示制御部18、メタデータ修正部19及び配信部21をプラグイン20により実現してもよい。例えば、OCRを実行するプラグイン20と所定の文字列を抽出するプラグイン20を、演算装置16が呼び出すことでメタデータ生成部17を実現することができる。
【0035】
また、プラグイン20が生成したメタデータを表示するか否かは、予めプラグイン20に設定されている。したがって、あるプラグイン20により生成されたメタデータは必ず表示部14に表示されユーザが確認することができ、また、あるプラグイン20により生成されたメタデータは表示部14に表示されることなく配信される。
【0036】
また、メタデータを表示部14に表示するか否かをユーザが設定してもよい。例えば、ユーザは操作部12からメタデータを表示及び修正するか否かを設定する設定モードを呼び出し、メタデータを表示しないように設定することで、生成されたメタデータを表示しないように設定することができる。
【0037】
同様にして、プラグイン20が生成するメタデータ(文書名なのか、キーワードなのか)はプラグイン毎に設定されていてもよいし、ユーザがスキャナ装置100に直接的又は関節的に設定してもよい。プラグイン毎に設定されている場合、起動するプラグイン20により生成されるメタデータも自動的に決定され、ユーザが設定する場合は所望のメタデータを生成できる。」

「【0041】
〔スキャナ装置100等の処理フローのカスタマイズ〕
スキャナ装置100又は外部コンピュータ101の処理はメタデータの生成だけであるとは限らず、また、複数の処理が可能であってもそれを固定すると各ユーザの嗜好に対応できず好ましくない。そこで、本実施例では、スキャナ装置100又は外部コンピュータ101の処理フローをカスタマイズできるようになっている。図1では、カスタマイズするため外部コンピュータ102がスキャナ装置100に接続されているが、これはPC104又は外部コンピュータ101と兼用してもよい。
【0042】
図4は、スキャナ装置100とネットワーク103を介して接続された外部コンピュータ102の機能ブロック図の一例を示す。なお、図4において図3と同一構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0043】
カスタマイズの機能は、管理ツールプログラム30PをCPU47が実行して実現される管理ツール部30により提供される。管理ツールプログラム30Pは、スキャナ装置100の記憶装置15又は記憶装置46に記憶されており、スキャナ装置100の記憶装置15に記憶されている場合は、外部コンピュータ102にダウンロードされてから実行される。
【0044】
管理ツール部30は、スキャン装置100の記憶装置46に記憶されているプラグインプログラム20Pの一覧を取得し、どのプラグインプログラム20を使用するか、また、その順番などをユーザが決定することを支援する。
【0045】
管理ツール部30について説明する。図5(a)は、外部コンピュータ102と接続されたディスプレイに表示される管理ツール部30が表示するGUI(Graphical User Interface)の一例を示す。メタデータ生成部17や種々の機能をプラグイン20により実現することで、スキャン装置100の処理手順や機能を固定化することなく、ユーザがカスタマイズしやすくすることができる。
【0046】
ユーザが管理ツールプログラム30Pを記憶装置15からダウンロードしたり、記憶装置46の管理ツールプログラム30Pを起動すると、図5のような現在のスキャナ装置100の処理手順が表示される。「文書名抽出」ボックス33は、画像データから文書名を抽出する機能を意味する。この機能を実現するプラグインプログラム(例えば文書名抽出プログラム)20Pは、画像データの先頭ページにOCRを実行し、文書名に相応しいと思われる文字列を自動抽出する。また、抽出された文字列を、「文書名」という名前の付いたメタデータとして記憶装置15に格納する。
【0047】
上述のように、プラグイン毎に生成するメタデータが予め設定されている場合、「文書名抽出」ボックス33の他に、例えば「商品番号」「発注個数」を生成するプラグイン20を「文書名抽出」ボックス33に続けて配置する処理フローを作成することができる。」

「【0055】
〔メタデータ、メタデータの修正例〕
続いて、本実施例のメタデータ校正方法の手順を説明する。ここでは、スキャナ装置100がメタデータを生成するものとする。図6は、メタデータの校正に伴い表示部14に表示されるメタデータの遷移を示す遷移図である。
【0056】
St10:スキャナ装置100は待機状態で、スキャンするユーザのために「原稿をセットしてください」と表示している。ユーザがスタートキー31を操作すると、演算装置16がスキャナエンジン11を制御して、原稿32の読み取りを開始する。なお、スタートキー31にはLEDが内蔵されていて、動作状態に応じて点灯色が変化する。
【0057】
St20:この結果、演算装置16は表示部14に「原稿を読み取り中です」と表示する。また、原稿の読み取り中はスタートキー31の点灯色が変わり、スタートキー31を操作できなくなる。読み取りが終了すると読み取られた画像データは記憶装置15に記憶される。
【0058】
St30:読み取りが終了すると、演算装置16はメタデータ生成部17を起動するか、起動しているメタデータ生成部17を読み出し、メタデータ生成部17が記憶装置15の画像データからメタデータを生成する。これにより、演算装置16は表示部14に「メタデータを生成中です」と表示する。この間もスタートキー31は操作できないままである。
【0059】
St40:メタデータの生成が終了すると、演算装置16はメタデータ表示制御部18にメタデータの表示を要求する。図では表示部14に「××報店書」と表示されている。図ではメタデータを原稿32の文書名とした。なお、メタデータが生成されるとスタートキー31を操作可能となる。
【0060】
St50:メタデータが表示された状態、又は、例えば修正モードへ切り替える操作をユーザが入力すると、ユーザがメタデータを修正することができる。演算装置16はメタデータ修正部19を起動して、メタデータ修正部19は例えばソフトウェアキーボードを表示部14に表示したり、画数や文字形状の類似した別の候補文字を表示する。ユーザが表示されたメタデータを入力して修正したり候補文字から選択すると、メタデータ修正部19は記憶装置15に記憶しているメタデータを修正する(上書きする)。メタデータの修正が終了すると、ユーザはスタートキー31を操作する。
【0061】
St60:ユーザがスタートキー31を操作すると、演算装置16は配信部21に、NIC13により配信先(例えば、文書管理サーバ200)のアドレスに、画像データと修正されたメタデータを送信する。送信が完了すると、演算装置16は表示部14に「文書を送信しました。」と表示する。タッチパネルに表示された「確認」にユーザが触れたり、一定時間が過ぎたりすると、演算装置16はSt10の状態に戻り、次のスキャン操作の待機状態となる。
【0062】
〔シーケンス〕
図6で説明したように、メタデータを生成する(文書名を抽出してよい)のは、St30?40の間である。また、実際に文書を配信するのは、St50?60の間である。
【0063】
演算装置16は、フロー全体を定義する処理フローを参照して、どのプラグイン20が、どの状態の時に実行すべきかを判断し、一連の処理を制御する。演算装置16は、スキャンが実行されると、ユーザID等で指定される処理すべきフロー図を記憶装置15から読み出し、メタデータ生成部17に、スキャナ装置100が生成した画像データからメタデータを生成するよう要求する。また、処理フローに必要なプラグインプログラム20Pを実行して、処理フローを準備する。
【0064】
図7は、処理フローに従いスキャン装置100が画像データを加工する手順のシーケンス図を示す。概略を説明する。
【0065】
演算装置16は、「メタデータ生成モード」と「配信モード」の2つのモードで処理を実行する。このモード毎に画像データ又はメタデータを記憶しておくキュー(先入れ先出しの記憶手段)を用意している。
【0066】
まず、演算装置16は、「メタデータ生成モード」で処理を実行する。現在どのモードで実行中かは、各プラグイン20にプログラム間通信等で通知される。各プラグイン20は、「メタデータ生成モード」で処理すべき役割があるか否かを把握しているか、処理すべきモードでは演算装置16により活性化されるので、モードに応じて処理の是非を適宜判断する。例えば、「メタデータ生成モード」では、文書管理サーバ200へ登録するプラグイン20、メール送信するプラグイン20は処理をしない(スルーする)。
【0067】
図7に従って説明する。なお、スキャナ装置100及び外部コンピュータ101は、当初「メタデータ生成モード」である。スキャナ装置100はユーザの操作に基づき原稿32をスキャンする(S10)。画像データは演算装置16に転送され(S11)、演算装置16は画像データを記憶装置15に記憶させる(S12)。この間、表示部14は図6のSt10、St20のメッセージが表示される。
【0068】
ついで、演算装置16は、記憶装置15から処理フローを読み出す(S13)。演算装置16はメタデータ生成モードのまま、処理フローの実行を所定のプラグイン20に要求する(S14)。メタデータを生成するプラグイン20(又はメタデータ生成部17)は、画像データからメタデータを生成する(S15)。この間、表示部14は図6のSt30のようになる。そして、メタデータ生成部17はメタデータを記憶装置15に記憶する(S16)。
【0069】
ついで、メタデータ表示制御部18は、メタデータを記憶装置15から読み出し(S18)、表示部14に表示する(S19)。これにより、表示部14は図6のSt40のようにメタデータが表示される。
【0070】
ユーザは表示されたメタデータをチェックして、修正の必要があれば操作部12によりメタデータを修正する(S21)。メタデータ修正部19は、修正後のメタデータを取得し(S22)、記憶装置15のメタデータを上書き保存する(S23)。これにより、記憶装置15のメタデータが修正されたことになる。
【0071】
ついで、演算装置16はモードを「配信モード」に切り替え(S24)、以降の処理を実行する。文書管理サーバ200に登録するプラグイン20は、配信処理を実行するため(S25)、画像データとメタデータを記憶装置15から読み出す(S26)。そして、予め指定された文書管理サーバ200へ画像データとメタデータを送信する。
【0072】
処理が完了すると、演算装置16に通知され(S27)、表示部14の表示を次のスキャンを待機する待機状態に変更する(S28)。」

「【0074】
本実施例によれば、メタデータをスキャナ装置100から直接修正できるので、再スキャンすることなく正確なメタデータを画像データに添付して文書管理サーバ200に送信することができる。」


(イ)上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「スキャナ装置100は、
スキャナエンジン11と、
操作部12と、
NIC(Network Interface Card)13と、
表示部14と、
記憶装置15と、
演算装置16を備え、(【0025】、【0026】、【図2】)
演算装置16は、OS、種々のプログラム、などを記憶装置15からロードして実行して種々の機能を提供すると共に、スキャナ装置100が行う処理を統括的に制御し、メタデータ生成プログラム17Pを演算装置16が実行することでメタデータ生成部17が実現され、メタデータ表示制御プログラム18Pを演算装置16が実行することでメタデータ表示制御部18が実現され、メタデータ修正プログラム19Pを演算装置16が実行することでメタデータ修正部19が実現され、配信プログラム21Pを演算装置16が実行することで配信部21が実現され、プラグインプログラム20Pを演算装置16が実行することでプラグイン20が実現され、(【0027】)
スキャナ装置100でスキャンした画像データ及び生成されたメタデータは、文書管理サーバ200に送信され、文書管理サーバ200は、これらを蓄積して管理し、(【0023】)
メタデータは、原稿32をスキャンして得られた画像データにOCR(Optical Character Reader)を施し、中間データとして得られたテキストデータから抽出された文書名であり、中間データのテキストデータから抽出した一部(又は全部であってもよい)のテキストデータがメタデータであり、(【0022】)
メタデータ生成部17は、OCRにより、原稿32をスキャンして得られた画像データに含まれる文字を認識し、中間データとしてのテキストデータから所定の文字列を抽出しメタデータとし、文書名をメタデータとする場合、最初のスキャン頁のうち「文字サイズが他より大きい文字列、中央にセンタリングされている」等の特徴のある文字列をメタデータとし、また、原稿32の「キーワード」をメタデータとする場合、文書内に何度も登場する名詞をメタデータとし、原稿32のうちユーザが指定した箇所、又は、ユーザが読み取り位置を指定したその位置にあるテキストデータをメタデータとすることができ、(【0029】、【0030】)
メタデータの内容は適宜設定できるものであり、メタデータ生成部17は設定されたメタデータ及びその特徴に基づきメタデータを生成し、生成したメタデータに付与する名称(例えば文書名)は、商品名や伝票番号などユーザが識別しやすい適切な名称を付けることができ、なお、メタデータを文書名とした場合は、通常、メタデータは1つであるし、キーワードとした場合は、メタデータが複数となることがあるように、メタデータの数は複数ページに及ぶ場合がある1つの原稿32に対し1以上であり、(【0032】)
メタデータ生成部17が、原稿32をスキャンして得られた画像データからメタデータを生成し、
メタデータの生成が終了すると、演算装置16はメタデータ表示制御部18にメタデータの表示を要求し、表示部14に「××報店書」と表示され、メタデータを原稿32の文書名とし、
メタデータが表示された状態、又は、例えば修正モードへ切り替える操作をユーザが入力すると、ユーザがメタデータを修正することができ、演算装置16はメタデータ修正部19を起動して、メタデータ修正部19はソフトウェアキーボードを表示部14に表示したり、画数や文字形状の類似した別の候補文字を表示し、ユーザが表示されたメタデータを入力して修正したり候補文字から選択すると、メタデータ修正部19は記憶装置15に記憶しているメタデータを修正し(上書きし)、メタデータの修正が終了すると、ユーザはスタートキー31を操作し、
ユーザがスタートキー31を操作すると、演算装置16は配信部21に、NIC13により配信先(例えば、文書管理サーバ200)のアドレスに、原稿32をスキャンして得られた画像データと修正されたメタデータを送信する、(【0055】-【0061】)
スキャナ装置100。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平9-160907号公報(平成9年6月20日公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は、当審で付した。

「0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、文書データをデータベースに格納する文書処理装置に関する。」

「【0002】
【従来の技術】現在、学術論文等の文書をデータ化し、自在に検索できるように保存することが要望されている。このようなことを実現する電子ファイルシステム等の文書処理装置は、複数の文書データを検索キーと共にデータベースに格納する。文書データを要望するユーザが、キーボード等により文書データの検索条件を入力操作すると、この検索条件に従ってデータベースから文書データが読み出される。
【0003】このように所望の文書データを良好に読み出すためには、その検索キーが適正に設定されている必要がある。例えば、特開平6-342483号公報に開示されている文書ファイルシステムでは、読取原稿の画面をドットマトリクスのイメージデータとして読取走査し、このイメージデータからキャラクタのパターンマッチングによりテキストデータを認識し、このテキストデータから所定の文字列として検索キーを抽出する。このようにテキストデータから検索キーを生成すれば、文書データを内容的に直接に検索することができるが、これは複雑なデータ処理を必要として実用的でない。
【0004】このため、一般的には文書データの書誌事項を検索キーとすることが一般的であり、特開平6-342483号公報の文書ファイルシステムでも、これを上記方式に併用している。つまり、読取原稿から読取走査したイメージデータが表示されるので、これを読み取ったユーザが所望の書誌事項を検索キーとして設定する。このような書誌事項は検索キーとして適正なので、これにより文書データを良好に検索することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のような文書処理装置では、書誌事項を検索キーとして文書データを検索することができる。
【0006】しかし、上述のように文書データの本文をユーザが読み取って書誌事項を手作業で設定することは、作業が煩雑で処理が遅滞する。このような課題を解決するため、文書データから書誌事項を自動的に抽出することが提案されている。一般的に書誌事項は出現位置や前後関係が予測できるので、文書データのテキストデータから所定のパラメータにより抽出することができる。
【0007】しかし、このように自動的に抽出した書誌事項は精度が低い。まず、その前提として文書データのイメージデータからテキストデータを認識するが、この認識が完全ではなく、現在の技術では文字の誤認識を排除できない。そして、書誌事項の抽出も完全ではなく、現在の技術では書誌事項でない文字列の誤抽出を排除できない。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の文書処理装置は、読取原稿からイメージデータを読取走査する画像読取手段と、読取走査されたイメージデータからテキストデータを認識する文字認識手段と、イメージデータとテキストデータとの少なくとも一方を文書データとしてデータベースに格納する文書登録手段と、認識されたテキストデータから書誌事項を抽出する事項抽出手段と、抽出された書誌事項を表示する事項表示手段と、表示された書誌事項の修正の入力を受け付ける修正入力手段と、入力に対応して書誌事項を修正する事項修正手段と、修正された書誌事項を文書データに対応させて前記データベースに登録する事項登録手段とを有する。画像読取手段が読取原稿からイメージデータを読取走査すると、このイメージデータから文字認識手段がテキストデータを認識し、イメージデータとテキストデータとの少なくとも一方を文書データとして文書登録手段がデータベースに格納する。事項抽出手段がテキストデータから書誌事項を抽出し、この書誌事項を事項表示手段が表示した状態で、この表示された書誌事項の修正の入力を修正入力手段が受け付ける。この入力に対応して事項修正手段が書誌事項を修正すると、この修正された書誌事項を事項登録手段が文書データに対応させてデータベースに登録する。従って、検索キーとなる書誌事項が文書データから自動的に抽出され、この自動的に抽出された書誌事項はユーザに表示されて修正される。
【0009】請求項2記載の文書処理装置では、請求項1記載の文書処理装置において、文字認識手段は、イメージデータからテキストデータの複数の候補を出力し、事項表示手段は、書誌事項の複数の候補のテキストデータを表示し、修正入力手段は、複数のテキストデータの選択の入力を受け付け、事項修正手段は、入力に対応してテキストデータを選択する。文字認識手段がイメージデータから認識するテキストデータは確実ではないので、このテキストデータとして複数の候補を出力する。この複数のテキストデータの各々で事項抽出手段が書誌事項を生成するので、この書誌事項の複数のテキストデータを事項表示手段が表示する。この表示された書誌事項の修正の入力として修正入力手段が複数のテキストデータの選択の入力を受け付けるので、この入力に対応した書誌事項の修正として事項修正手段がテキストデータを選択する。従って、表示された複数のテキストデータをユーザが選択すれば、書誌事項が適正に修正される。
【0010】請求項3記載の文書処理装置では、請求項1記載の文書処理装置において、事項抽出手段は、テキストデータから書誌事項の複数の候補を抽出し、事項表示手段は、書誌事項の複数の候補を表示し、修正入力手段は、複数の候補の選択の入力を受け付け、事項修正手段は、入力に対応して書誌事項を選択する。事項抽出手段がテキストデータから抽出する書誌事項は確実ではないので、この書誌事項として複数の候補を出力する。この複数の書誌事項を事項表示手段が表示した状態で、その修正の入力として修正入力手段が複数の書誌事項の選択の入力を受け付けるので、この入力に対応した修正として事項修正手段が書誌事項を選択する。従って、表示された複数の書誌事項をユーザが選択すれば、書誌事項が適正に修正される。
【0011】請求項4記載の文書処理装置では、請求項1記載の文書処理装置において、修正された書誌事項を表示する修正表示手段を設けた。ユーザが修正した書誌事項を修正表示手段が表示するので、修正中の書誌事項が修正後の状態でユーザに提示される。
【0012】請求項5記載の文書処理方法は、読取原稿からイメージデータを読取走査し、この読取走査されたイメージデータからテキストデータを認識し、イメージデータとテキストデータとの少なくとも一方を文書データとしてデータベースに格納し、認識されたテキストデータから書誌事項を抽出し、この抽出された書誌事項を表示し、この表示された書誌事項の修正の入力を受け付け、この入力に対応して書誌事項を修正し、この修正された書誌事項を文書データに対応させてデータベースに登録するようにした。従って、検索キーとなる書誌事項を文書データから自動的に抽出することができ、この自動的に抽出された書誌事項は表示され、文字の誤認識や文字列の誤抽出を修正することができる。」

「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態を図面に基づいて以下に説明する。まず、本実施の形態の文書処理装置1は、図2に示すように、イメージスキャナ2とマイクロコンピュータ3と電子ファイルシステム4とを有している。
【0014】前記マイクロコンピュータ3は、CPU(Central Processing Unit)5を有している。このCPU5には、ROM(Read Only Memory)6、RAM(Random Access Memory)7、マウス8が装備されたキーボード9、ディスプレイ10、通信I/F(Interface)11,12が接続されている。第一の前記通信I/F11には、前記イメージスキャナ2が接続されており、第二の前記通信I/F12には、前記電子ファイルシステム4が接続されている。
【0015】前記マイクロコンピュータ2は、前記キーボード8から適宜入力されるコマンドや前記ROM5に予め設定されたプログラム等に従って、前記CPU4が各種のデータ処理を実行する。このため、前記イメージスキャナ2は、前記マイクロコンピュータ2の動作制御に対応して読取原稿からイメージデータを読取走査し、前記電子ファイルシステム4は、前記マイクロコンピュータ2の動作制御に対応して文書データを格納する。
【0016】より詳細には、前記電子ファイルシステム4は、データベース13を有しており、図1に示すように、このデータベース13は、イメージファイル14とテキストファイル15と書誌事項ファイル16とを有している。前記イメージファイル14は、読取原稿のイメージデータを文書データとして格納し、前記テキストファイル15は、イメージデータから認識されたテキストデータを文書データとして格納する。前記書誌事項ファイル16は、文書データの書誌事項をキャラクタコードにより格納し、これは文書データの検索キーとしてイメージデータとテキストデータとにリンクされている。
【0017】本実施の形態の文書処理装置1は、前記データベース13に各種データを入出力する処理実行手段17を有しており、この処理実行手段17は、画像読取手段18、文書登録手段であるイメージ登録手段19、文字認識手段20、文書表示手段21、テキストデータの修正入力手段22、文字修正手段23、文書登録手段であるテキスト登録手段24、事項抽出手段25、事項表示手段26、書誌事項の修正入力手段27、事項修正手段28、修正表示手段29、書誌事項登録手段30、条件入力手段31、検索実行手段32、を有している。
【0018】前記画像読取手段18は、前記イメージスキャナ14により読取原稿からイメージデータを読取走査し、前記イメージ登録手段19は、読取走査されたイメージデータを文書データとして、前記データベース13のイメージファイル14に格納する。前記文字認識手段20は、読取走査されたイメージデータをパターンマッチングによりテキストデータに認識し、このテキストデータを文字データであるキャラクタコードとして出力するので、前記文書表示手段21は、テキストデータをキャラクタコードに従って前記ディスプレイ10により表示する。前記修正入力手段22は、表示されたテキストデータの修正の入力を前記キーボード9により受け付け、前記文字修正手段23は、入力に対応してキャラクタコードを置換することによりテキストデータを修正する。
【0019】このようなテキストデータの修正は、完全な誤認識に対するキャラクタの手入力でも実行されるが、ここではイメージデータからテキストデータを認識する場合に確度により複数の候補を検出し、この複数の候補のテキストデータを表示して選択の入力を受け付ける。例えば、イメージデータの“5月”がテキストデータとして“5月”“6月”に同等な確度で認識される場合、これらは両方とも候補として表示され、ユーザの入力に対応して“5月”に選択される。
【0020】前記テキスト登録手段24は、修正されたテキストデータを文書データとして、前記イメージファイル14のイメージデータとリンクさせ、前記データベース13のテキストファイル15に格納する。
【0021】前記事項抽出手段25は、修正されたテキストデータから書誌事項を抽出する。この書誌事項の自動的な抽出は、例えば、冒頭に出現する数文字の文字列はタイトルであり、“××月××日”なる文字列は作成年月日であり、年月日の後段の文字列は作成者である等、従来の既存の方法と同様に実行され、このような作業を実現するアルゴリズムやパラメータが前記事項抽出手段25に設定されている。前記事項表示手段26は、抽出された書誌事項を前記ディスプレイ10に表示し、前記書誌事項の修正入力手段27は、表示された書誌事項の修正の入力を受け付け、前記事項修正手段28は、入力に対応して書誌事項を修正する。
【0022】このような書誌事項の修正は、文字の誤認識と文字列の誤抽出との両方に対応して実行される。書誌事項を抽出するテキストデータは、その前段で上述のように修正が実行されるが、これは完全ではないので書誌事項に文字の誤認識が残存することがある。また、テキストデータの文字が完全でも、これから書誌事項として不適な文字列が誤抽出されることもある。前述のように認識の確度が低い文字に対しては複数の候補が検出され、これが表示されて選択の入力を受け付ける。一方、文字列の誤抽出の場合も、その確度に対応して複数の候補が検出され、これが表示されて選択の入力を受け付ける。
【0023】前記修正表示手段29は、修正された書誌事項を前記ディスプレイ10に表示するので、この状態でも前記手段27,28による書誌事項の修正は機能する。前記書誌事項登録手段30は、修正が完了した書誌事項を文書データの検索キーとして、前記ファイル14,15の文書データに対応させて前記データベース13の書誌事項ファイル16に登録する。
【0024】前記条件入力手段31は、文字列と演算子とを組み合わせた検索条件の入力を前記キーボード9により受け付け、前記検索実行手段32は、入力された検索条件に前記書誌事項ファイル16の書誌事項が整合する文書データを前記ファイル14,15から検索する。
【0025】このような構成において、本実施の形態の文書処理装置1は、ユーザが所望する読取原稿から文書データを読み取り、これを書誌事項に対応させてデータベース13に格納することができる。ユーザが所望により検索条件を入力すれば、この検索条件に書誌事項が整合する文書データをデータベース13から検索することができる。このため、ユーザが所望する文書データを的確に提供することができ、文書データを有効に活用することができる。
【0026】このように文書データを良好に検索するためには、その書誌事項が適正に設定されている必要がある。本実施の形態の文書処理装置1は、文書データから書誌事項を自動的に抽出し、この書誌事項をユーザにより修正させるので、簡易な操作で適正な書誌事項が登録される。」

「【0027】このような文書処理装置1の文書処理方法を、図3ないし図7に基づいて以下に説明する。まず、ユーザが所望の読取原稿をイメージスキャナ2に装填してからキーボード9により所定のコマンドを入力すると、読取原稿からイメージデータが読取走査され、このイメージデータは文書データとしてデータベース13のイメージファイル14に格納される。
【0028】さらに、イメージデータはパターンマッチングによりテキストデータに認識され、このテキストデータはディスプレイ10に表示される。この状態で、表示されたテキストデータの修正や承認をキーボード9により入力することができるので、ユーザが所望により修正を入力すれば、テキストデータは入力に対応して修正され、承認を入力すればテキストデータは確定されてデータベース13のテキストファイル15に格納される。
【0029】このようにしてイメージデータとテキストデータとの文書データがデータベース13に格納されると、図3に示すように、その文書データの書誌事項がテキストデータから抽出される(ステップS1)。これは前述のように従来の既存の方法と同様に実行され、その確度により複数の候補として検出される。例えば、図4に示すように、各種の書誌事項が紙面に散在した読取原稿を読取走査した場合、タイトル、作成者、作成年月日、等の書誌事項が確度により複数検出され、図5に示すように、このように検出された複数の候補の書誌事項はディスプレイ10に表示されるので(ステップS2)、所望する候補をキーボード9やマウス8の手動操作により指定すれば、図6に示すように、それが書誌事項として選択される(ステップS3)。
【0030】ここでは、図5に示すように、テキストデータから抽出された書誌事項の各々の先頭にポインタが表示されるので、図6に示すように、このポインタをオンオフすれば書誌事項が選択される。さらに、ポインタをオンした書誌事項は、編集処理を受け付ける状態となるので、誤認識された文字の修正、不要な文字の削除、必要な文字の挿入、等を実行することもできる(ステップS3)。
【0031】例えば、図5に示すように、“マルチメディア研究所創立記念”“マルチメデイアセミナー開催のお知らせ”の二つがタイトルの候補として表示された場合、“マルチメディア研究所創立記念”のポインタをオフにして書誌事項から排除し、“マルチメデイアセミナー開催のお知らせ”の“イ”を“ィ”に修正すれば、書誌事項であるタイトルとして“マルチメディアセミナー開催のお知らせ”が確定される。
【0032】また、ディスプレイ10には、前画面、再表示、書誌事項登録、なるスイッチも表示されるので、これらも書誌事項の修正に利用することができる。“再表示”が指定された場合(ステップS7)、現状の書誌事項が一時記憶され(ステップS8)、この書誌事項が修正の入力に対応した状態で表示される(ステップS2)。例えば、図6に示すように、書誌事項に所望の修正を入力した状態で“再表示”を指定すれば、図7に示すように、修正された状態の書誌事項がディスプレイ10に表示される。
【0033】このような状態で修正が不適ならば、“前画面”を指定すれば(ステップS4)、一時記憶された書誌事項の有無が判定され(ステップS5)、これが存在するとディスプレイ10に表示される(ステップS6)。このような作業を繰り返すことにより書誌事項が適正に修正されるので、これを確認したユーザが“書誌事項登録”を指定すると(ステップS9)、現状の書誌事項が確定されてデータベース13の書誌事項ファイル16に登録される。
【0034】このように登録される書誌事項は、文書データのテキストデータから抽出された文字列からなり、ユーザによる検閲と修正も実行されているので、文書データの検索キーとして最適である。書誌事項はテキストデータから自動的に抽出されるので、この作業をユーザが実行する必要がなく、ユーザの負担を軽減することができる。書誌事項の修正はユーザに一任するが、複数の候補を表示してユーザに選択させるので、書誌事項の修正作業は極めて容易である。しかも、修正された書誌事項を表示するので、ユーザは書誌事項の修正の適否も容易に確認することができる。」


(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。

「文書処理装置において、
読取原稿からイメージデータが読取走査され、このイメージデータは文書データとして格納され、イメージデータはテキストデータに認識され、このテキストデータはディスプレイ10に表示され、ユーザが所望により修正を入力すれば、テキストデータは入力に対応して修正され、承認を入力すればテキストデータは確定され、(【0027】、【0028】)
各種の書誌事項が紙面に散在した読取原稿を読取走査した場合、タイトル等の書誌事項が確度により複数検出され、このように検出された複数の候補の書誌事項はディスプレイ10に表示されるので、所望する候補をキーボード9やマウス8の手動操作により指定すれば、書誌事項として選択され、テキストデータから抽出された書誌事項の各々の先頭にポインタが表示されるので、このポインタをオンオフすれば書誌事項が選択され、(【0029】、【0030】)
“マルチメディア研究所創立記念”“マルチメデイアセミナー開催のお知らせ”の二つがタイトルの候補として表示された場合、“マルチメディア研究所創立記念”のポインタをオフにして書誌事項から排除し、書誌事項であるタイトルとして“マルチメディアセミナー開催のお知らせ”が確定される、技術。(【0031】)」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明における「表示部14」、及び、「原稿32をスキャンして得られた画像データ」は、それぞれ、本件補正発明における「表示部」、及び、「スキャンデータ」に相当する。

(イ)引用発明における「スキャナ装置100」は、表示部14を備えており、原稿32をスキャンして画像データを得るものであることから、本件補正発明における「イメージスキャナ」に相当する。

(ウ)引用発明における「文書管理サーバ200」は、スキャナ装置100でスキャンした画像データ及び生成されたメタデータが送信され、これらを蓄積して管理するものであることから、本件補正発明における「情報処理装置」に相当する。

(エ)引用発明において、メタデータ生成部17が、「OCRにより、原稿32をスキャンして得られた画像データに含まれる文字を認識し、中間データとしてのテキストデータから所定の文字列を抽出し」という構成は、本件補正発明における「スキャンデータについて文字認識処理により認識した文字データを抽出し」に相当し、引用発明において、テキストデータから所定の文字列として抽出されたものである「メタデータ」は、本件補正発明における「抽出した前記文字データ」に相当する。

(オ)引用発明においてメタデータたる「文書名」は、例えば「××報店書」として表示部14に表示されるものであって、原稿32の文書名とされるものであり、画像データのメタデータとして画像データとともに記憶装置15に記憶されるものであるため、引用発明におけるメタデータたる「文書名」は、「スキャンデータの文書名」という点で、本件補正発明の「前記スキャンデータの文書件名」と概念を共通にする。そして、引用発明において、メタデータ表示制御部18によって表示部14に表示されたメタデータたる文書名としての「××報店書」は、ユーザの入力によって修正可能なものであって、文書管理サーバ200で蓄積されるメタデータたる文書名となり得る情報であり、原稿32をスキャンして得られた画像データとともに文書管理サーバ200に送信されて文書管理サーバ200で蓄積されるものであるから、引用発明において、メタデータ表示制御部18が、メタデータたる文書名を表示部14に表示することは、「抽出した前記文字データを前記スキャンデータの文書名として記憶する情報の候補として前記表示部に表示し」との点において、本件補正発明の「抽出した前記文字データを前記スキャンデータの文書件名として記憶する情報の候補として前記表示部に表示し」に対応する。

(カ)引用発明において、配信部21が、文書管理サーバ200に、原稿32をスキャンして得られた画像データと修正されたメタデータたる文書名を送信することは、メタデータたる文書名となり得る情報を修正した情報、すなわち、ユーザ操作により決定されたメタデータたる文書名を、画像データの文書名として画像データとともに文書管理サーバ200に送信する制御を行うものであるから、「前記情報の候補からユーザ操作に基づき決定された情報を前記スキャンデータの文書名として対応付けた前記スキャンデータを情報処理装置に送信する制御を行う」との点において、本件補正発明の「前記情報の候補のうちから選択された情報を前記スキャンデータの文書件名として対応付けた前記スキャンデータを情報処理装置に送信する制御を行う」に対応する。

(キ)引用発明の「演算装置16」は、後述する相違点1及び2は別にして、本件補正発明における「制御部」に対応する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「表示部を備えたイメージスキャナにおいて、
スキャンデータについて文字認識処理により認識した文字データを抽出し、抽出した前記文字データを前記スキャンデータの文書名として記憶する情報の候補として前記表示部に表示し、前記情報の候補からユーザ操作に基づき決定された情報を前記スキャンデータの文書名として対応付けた前記スキャンデータを情報処理装置に送信する制御を行う制御部を、
備えることを特徴とするイメージスキャナ。」

(相違点1)
「スキャンデータの文書名」が、本件補正発明は「文書件名」であるのに対し、引用発明では「文書件名」であるか否か不明である点。

(相違点2)
「前記情報の候補からユーザ操作に基づき決定された情報」が、本件補正発明は「前記情報の候補のうちから選択された情報」であるのに対し、引用発明は「前記情報の候補からユーザ操作に基づき決定された情報」である点。

(4)判断
以下、相違点1及び2についてそれぞれ検討する。
ア 相違点1について
引用発明は、「例えば、文書名をメタデータとする場合、最初のスキャン頁のうち「文字サイズが他より大きい文字列、中央にセンタリングされている」等の特徴のある文字列をメタデータとする。」(【0029】)、及び、「××報店書」(【0059】)との記載にあるように、原稿32をスキャンして得られた画像データからメタデータを文書名として抽出する際、「文字サイズが他より大きい文字列」や「中央にセンタリングされている」といった、一見して、文書の内容を把握することに資するような、「特徴のある文字列」を抽出しており、また、文書名を特定する際、その文書の内容を表すテキストデータを文書件名として用いることは、例えば引用文献2(「マルチメディアセミナー開催のお知らせ」といったテキストデータをその文書データのタイトルとして確定する技術が記載されている。)にもあるように、常套手段であることに鑑みれば、引用発明において、原稿32をスキャンして得られた画像データからメタデータを文書名として抽出する際、抽出する文書名として、文書データの内容を表す文書件名を用いる構成とし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

イ 相違点2について
引用発明は、「例えば、文書名をメタデータとする場合、最初のスキャン頁のうち「文字サイズが他より大きい文字列、中央にセンタリングされている」等の特徴のある文字列をメタデータとする。」(【0029】)、「××報店書」(【0059】)との記載にあるように、原稿32をスキャンして得られた画像データからメタデータたる文書名を抽出する際、特定の条件(最初のスキャン頁のうち「文字サイズが他より大きい文字列、中央にセンタリングされている」等)に合致する文字列を当該画像データから抽出する構成が含まれ、また、抽出されるテキストデータの範囲についても、「メタデータは例えば、画像データにOCR(Optical Character Reader)を施し、中間データとして得られたテキストデータから抽出された文書名である。すなわち、中間データのテキストデータから抽出した一部(又は全部であってもよい)のテキストデータがメタデータである。」(【0022】)との記載にあるように、適宜設定可能であると認められるところ、メタデータたる文書名を抽出する際、抽出条件に合致する文字列として、必ずしも1つの文字列しか抽出されないわけではなく、結果として複数の文字列が候補として抽出される場合も、当業者であれば想定し得ることである。
他方、引用文献2には、文書処理装置において、読取原稿からイメージデータが読取走査され、このイメージデータは文書データとして格納され、イメージデータはテキストデータに認識され、このテキストデータはディスプレイ10に表示され、ユーザが所望により修正を入力すれば、テキストデータは入力に対応して修正され、承認を入力すればテキストデータは確定される構成を前提として、タイトル等の書誌事項が確度により複数検出され、このように検出された複数の候補の書誌事項はディスプレイ10に表示され、所望する候補をキーボード9やマウス8の手動操作により指定すれば、書誌事項として選択される技術が記載されている。
引用発明と、引用文献2に記載された技術とは、いずれも、原稿の画像データから文書名等のメタデータを生成して管理する技術である点で共通するものであり、また、引用発明と、引用文献2に記載された技術とは、いずれも、画像データから文字を抽出するOCR技術における読み取り精度の問題に対して修正入力を通じて対応するという、解決しようとする課題も共通するものであるから、引用発明において、上記想定される複数の文字列が候補として抽出された際、引用文献2に記載された技術を採用し、原稿32をスキャンして得られた画像データにOCRを施し、中間データとして得られたテキストデータからメタデータたる文書名を抽出した結果として、抽出された複数のメタデータたる文書名の候補から、ユーザによる選択入力により、メタデータたる文書名を決定可能とするよう、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ そして、上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年1月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項4に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項4に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2009-21861号公報
引用文献2:特開平9-160907号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記スキャンデータの文書件名」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-28 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-16 
出願番号 特願2016-209637(P2016-209637)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 信行松尾 真人  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 松田 直也
田内 幸治
発明の名称 イメージスキャンシステム、イメージスキャナ、情報取得方法及び情報取得プログラム  
代理人 ▲徳▼永 民雄  
代理人 大菅 義之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ