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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1359453
審判番号 不服2019-4929  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-12 
確定日 2020-02-06 
事件の表示 特願2015-48294号「遊技場用システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月23日出願公開、特開2016-168095号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成27年3月11日の出願であって、平成30年9月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年3月13日付けで拒絶査定(謄本の送達日:同年3月19日。以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年4月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年4月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1から5のうち、請求項1を補正するものであり、本件補正により、平成30年11月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技機にて使用する遊技価値のレートが複数設けられた遊技場に対応した遊技場用システムであって、
遊技者が遊技により獲得した遊技価値である獲得価値であって対応するレートを特定可能な獲得価値を受け付け可能な価値受付手段と、
遊技者からの付与操作の受け付けに応じて、前記獲得価値を対価として遊技者へ遊技価値を付与する付与処理を行う価値付与手段と、
前記価値受付手段により受け付けられた前記獲得価値の内、予め前記価値付与手段に対応付けて設定される前記付与処理の対象となる付与レートとは異なる他レートの遊技価値である他獲得価値と、前記付与レートの遊技価値である自獲得価値とを管理する管理手段と、
前記他獲得価値を対価とした前記付与処理である乗入れ付与処理を行うためのレート間の換算処理である乗入れ処理を行う乗入れ手段と、
予め設定される状態切替条件の成立に応じて、前記自獲得価値を対価とした前記付与処理である自価値付与処理を行う状態から前記乗入れ付与処理を行う状態である乗入れ状態へ前記価値付与手段の状態を切り替える状態切替手段と、
前記乗入れ状態において前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられた場合に、前記付与操作の受け付けに応じて、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を、前記乗入れ付与処理に優先して前記価値付与手段に行わせる優先手段と、
を備えたことを特徴とする遊技場用システム。」は、

平成31年4月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技機にて使用する遊技価値のレートが複数設けられた遊技場に対応した遊技場用システムであって、
遊技者が遊技により獲得した遊技価値である獲得価値であって対応するレートを特定可能な獲得価値を受け付け可能な価値受付手段と、
遊技者からの付与操作の受け付けに応じて、前記獲得価値を対価として遊技者へ遊技価値を付与する付与処理を行う価値付与手段と、
前記価値受付手段により受け付けられた前記獲得価値の内、予め前記価値付与手段に対応付けて設定される前記付与処理の対象となる付与レートとは異なる他レートの遊技価値である他獲得価値と、前記付与レートの遊技価値である自獲得価値とを管理する管理手段と、
前記他獲得価値を対価とした前記付与処理である乗入れ付与処理を行うためのレート間の換算処理である乗入れ処理を行う乗入れ手段と、
予め設定される状態切替条件の成立に応じて、前記自獲得価値を対価とした前記付与処理である自価値付与処理を行う状態から前記乗入れ付与処理を行う状態である乗入れ状態へ前記価値付与手段の状態を切り替える状態切替手段と、
前記自獲得価値の大きさを対象として予め設定される条件であって前記自価値付与処理を終了する条件である自価値付与処理終了条件を満たした前記乗入れ状態において、前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられることで前記自価値付与処理終了条件が満たされなくなった場合に、前記付与操作の受け付けに応じて、前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を前記価値付与手段に行わせる優先手段と、
を備えたことを特徴とする遊技場用システム。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した)。

2 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記乗入れ状態において前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられた場合に、前記付与操作の受け付けに応じて、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を、前記乗入れ付与処理に優先して前記価値付与手段に行わせる優先手段」に関して、
(1)「前記乗入れ状態」が、「前記自獲得価値の大きさを対象として予め設定される条件であって前記自価値付与処理を終了する条件である自価値付与処理終了条件を満たした前記乗入れ状態」であることを限定し、
(2)「前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられた場合」が、「前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられることで前記自価値付与処理終了条件が満たされなくなった場合」であることを限定し、
(3)「新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理」が、「前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し」て「行わ」れることを限定するものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0076】?【0080】、【0090】及び図9等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1 補正の内容」において示した次のとおりのものである(記号A?Hは、分説するため当審にて付した)。

「A 遊技機にて使用する遊技価値のレートが複数設けられた遊技場に対応した遊技場用システムであって、
B 遊技者が遊技により獲得した遊技価値である獲得価値であって対応するレートを特定可能な獲得価値を受け付け可能な価値受付手段と、
C 遊技者からの付与操作の受け付けに応じて、前記獲得価値を対価として遊技者へ遊技価値を付与する付与処理を行う価値付与手段と、
D 前記価値受付手段により受け付けられた前記獲得価値の内、予め前記価値付与手段に対応付けて設定される前記付与処理の対象となる付与レートとは異なる他レートの遊技価値である他獲得価値と、前記付与レートの遊技価値である自獲得価値とを管理する管理手段と、
E 前記他獲得価値を対価とした前記付与処理である乗入れ付与処理を行うためのレート間の換算処理である乗入れ処理を行う乗入れ手段と、
F 予め設定される状態切替条件の成立に応じて、前記自獲得価値を対価とした前記付与処理である自価値付与処理を行う状態から前記乗入れ付与処理を行う状態である乗入れ状態へ前記価値付与手段の状態を切り替える状態切替手段と、
G 前記自獲得価値の大きさを対象として予め設定される条件であって前記自価値付与処理を終了する条件である自価値付与処理終了条件を満たした前記乗入れ状態において、前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられることで前記自価値付与処理終了条件が満たされなくなった場合に、前記付与操作の受け付けに応じて、前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を前記価値付与手段に行わせる優先手段と、
H を備えたことを特徴とする遊技場用システム。」

(2)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2014-144186号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した)。

ア 「【0001】
本発明は、遊技機にて使用する遊技価値の種類を貸出単価が異なるように複数設けた遊技場に対応した遊技場用システムに関する。」

イ 「【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、遊技場用システムの全体構成を示す概略図である。遊技場内には多数の遊技機1が設置されており、各遊技機1に対応して各台計数機2(獲得遊技価値特定手段、発行手段、受付遊技価値特定手段、換算手段、付与手段に相当)が設置されている。これら遊技機1及び各台計数機2は、中継端末3及びLAN4を介して管理装置5(識別情報記憶手段、口座記憶手段に相当)と接続されている。管理装置5は、遊技機側(遊技機1、各台計数機2等)から送信される遊技信号を受信することにより遊技機1毎の遊技データを管理する共に、会員登録された会員毎の個人データも管理する。
【0014】
図1では遊技機1としてパチンコ玉を遊技媒体とするパチンコ機を図示したが、遊技場には玉を遊技媒体とするパチンコ機が設置されたパチンココーナーと、メダルを遊技媒体とするパチスロ機が設置されたスロットコーナーとが設けられている。パチンココーナーには、貸出単価が1個4円のパチンコ機が設置されたコーナーと、貸出単価が1個1円のパチンコ機が設置されたコーナーとが設けられている。スロットコーナーには、貸出単価が1枚20円のパチスロ機が設置されたコーナーと、貸出単価が1枚5円のパチスロ機が設置されたコーナーが設けられている。つまり、遊技場には、遊技機1にて使用する遊技価値の種類が、単価が異なるように複数設けられている。」

ウ 「【0016】
管理装置5は、遊技場内の例えば事務室等に設置されており、遊技場の管理者が操作するキーボード8、モニタ9、図示しないプリンタ等が接続されている。管理装置5は、遊技場内に設置された遊技機1、各台計数機2、POS6等の稼動状況を管理すると共に、遊技機側からの信号に基づいて遊技者毎の遊技価値の大きさ(持玉数・貯玉数(会員の場合))を記憶管理する。尚、持玉とは、当日貯玉であり、前日以前に預入れた玉やメダルではなく、当日獲得した玉やメダルを意味する。・・・」

エ 「【0019】
各台計数機2は、遊技機1の遊技状態を示す状態表示部17、紙幣が投入される紙幣投入口18、遊技者からの操作入力を受付けると共に遊技の進行に伴って図柄変動回数(スタート回数)や大当たり確率等の遊技データを表示するタッチパネル式の液晶表示部19(表示手段に相当)、玉を払出すための払出ボタン20、払出された玉が通過する払出ノズル21、IC持玉券或いは会員カードが挿入されるカード挿入口22、カードを発行するための発行ボタン23、遊技機1の下部受皿13の下方に位置する着脱可能な計数受皿24等を備えている。
【0020】
各台計数機2は、以下に示す機能を備えている。
(1)紙幣投入口18に投入された紙幣の金額(1000円単位)を記憶すると共に、投入金額(入金残高)を液晶表示部19に表示する。
(2)遊技機1に設けられた図示しない貸出ボタンの操作に応じて入金残高の範囲内で1度数に相当する数の玉を遊技機1内部の払出機構から払出すCR機能を備えている。このとき、遊技機1から各台計数機2に1度数分(コーナー毎に設定されている)の玉を払出したことを示す信号が出力されるので、液晶表示部19に表示されている入金残高から1度数に相当する金額を減額すると共に売上信号を出力する。この売上信号は1度数の玉の払出し毎に1パルスが出力されるので、1パルスに相当する単位金額を売上額として特定する。
(3)遊技機1の下部受皿13から落下して計数受皿24で受けられた玉数を計数して液晶表示部19に表示する。
(4)払出ボタン20の操作に応じて計数玉数(持玉数)又は貯玉数(会員の場合)の範囲内で1度数ずつ払出す。
(5)遊技機1に設けられた図示しない返却ボタンの操作に応じて入金残高、持玉数、及び玉単価等の情報をカード挿入口22に挿入されているIC持玉券に記憶して発行する。会員カードが挿入されている場合は、入金残高を会員カードに記憶すると共に暗証番号の入力を条件として持玉数を管理装置5に送信してから会員カードを発行する。IC持玉券を発行する場合は、カードIDを含む発行情報を管理装置5へ送信し、管理装置5側にも記憶する。・・・
【0021】
(6)IC持玉券がカード挿入口22に挿入された場合は、IC持玉券に記憶されている入金残高、持玉数、及び玉単価を読出して液晶表示部19に表示する。会員カードが挿入された場合は、会員カードに記憶されている入金残高を読出して液晶表示部19に表示すると共に暗証番号の入力を条件として管理装置5の会員口座に会員IDに対応して記憶されている貯玉数(当日貯玉数・前日貯玉数)も表示する。当日貯玉数とは当日貯玉された貯玉数(持玉)であり、前日貯玉数とは前日までの貯玉数である。営業終了後は、当日貯玉数は前日貯玉数に合算して記憶される。遊技者による払出操作に応じて貯玉数或いは当日貯玉数の範囲内で玉を払出ノズル21から払出す。つまり、各台計数機2は、会員カードを受け付け、遊技者の識別情報を特定することで当該遊技者が所持する貯玉数や当日貯玉数(貯蓄遊技価値)の大きさを特定する機能(受付遊技価値特定手段)を備えている。・・・」

オ 「【0022】
管理装置5は、記憶しているコンピュータプログラムにしたがって作動し、遊技機1の稼動状況を示す遊技データを表示する遊技情報表示サービス、並びに遊技者が遊技により獲得した遊技媒体を一旦貯蓄し、当日或いは後日遊技に再利用できるようにする貯玉サービスを実行可能となっている。これらのサービスを実行するために、遊技機1や各台計数機2等から入出力部に入力される遊技信号に基づいて、遊技機1の稼動状態を特定して遊技機1毎に遊技情報を管理するようになっている。
【0023】
管理装置5には、一の会員ID或いはカードID(識別情報に相当)に対して上述したコーナーに対応する複数の口座が設定されており、玉やメダルを計数した場合に会員カード或いはIC持玉券と対応付けて貯玉(預入れ)することができる。つまり、会員カードに記憶されている会員IDに対応付けて20円貯メダル口座、5円貯メダル口座、4円貯玉口座、1円貯玉口座、20円持メダル口座、5円持メダル口座、4円持玉口座、1円持玉口座がそれぞれ設定されている。本実施形態では、コーナーで使用可能なメイン口座(コーナーで優先的に使用する遊技媒体の貯玉のこと)、例えば、4円パチンココーナーであれば4円貯玉口座以外のサブ口座(20円貯メダル口座、5円貯メダル口座、1円貯玉口座)を使用可能な乗入れが可能となっている。例えば、4円コーナーにおいて1円玉で1000個貯玉或いは当日貯玉があれば、4円玉250個として貯玉の再プレイ、或いは持玉の払出に使用できる。また、後述するようにメイン口座にサブ口座を合算可能となっているが、内部的に合算することはなく、合算した値を表示するのみである。」

カ 「【0032】
遊技者が貯玉払出ボタン19gをタッチ操作すると、各台計数機2は、メイン口座である4円貯玉口座を優先して使用する。図4(d)に示す状態で貯玉払出ボタン19gがタッチ操作されると、4円貯玉が125玉優先して払出されるので、使用可能貯玉が2375個で、その内訳として、4円貯玉が875個、5円貯メダルが1500個であることが表示される。」

キ 「【0035】
遊技者が例えば4円貯メダル口座と5円貯メダル口座を選択した状態で選択終了ボタン19hをタッチ操作すると、図5(d)に示すようにメッセージ表示部19cには「1円貯玉に、4円貯玉と5円貯メダルを合算した値を合算した値を表示しています。」というメッセージが表示され、使用可能玉表示部19eには使用可能貯玉として10800個、その内訳として、1円貯玉が600個、5円貯メダルが6000個、4円貯玉が4200個であることが表示される。このようにメイン口座以外に複数のサブ口座が選択されている場合に貯玉払出ボタン19gがタッチ操作されたときは、メイン口座を使用し、メイン口座を使用し切ったときは、単価の高いサブ口座の順に使用していく。図5(d)に示す例では、4円貯玉と5円貯メダルでは、5円貯メダルの方の単価が高いので、1円貯玉を使用し切った後、つまり残りが最低払出数である200個未満となる199個となったときには、5円貯メダルを使用し、5円貯メダルのうち乗入れ運用が許容された分を使用し切った後、4円貯玉を使用する。」

ク 「【0036】
図6は非会員の一般遊技者が1円持玉を払出す場合を示している。図6(a)に示すように貸出情報表示部19aには貸出単価が1円、発行可能数(発行個数)が100個であることが表示され、入金残高表示部19dには500円が表示され、使用可能玉表示部19eには1円持玉が4321個であることが表示され、さらに、合算口座選択ボタン19f、持玉払出ボタン19iが表示されている。
【0037】
図6(a)に示す状態から入金残高500円を使い切った状態で遊技者が各台計数機2の発行ボタン23を押下げ操作すると、1円持玉が4321個記憶されたIC持玉券が発行される。遊技者がIC持玉券を4円コーナーの各台計数機2に挿入すると、図6(b)に示すように貸出情報表示部19aには4円貸で、発行可能数が50個以上又は0個を表示する。・・・
【0038】
4円コーナーでの遊技の結果、4円持玉が16個となった状態で遊技者が持玉を合算するために合算口座選択ボタン19fをタッチ操作すると、各台計数機2は、IC持玉券に記憶されている持玉を読込んで表示する。図6(c)に示す例では、1円持玉口座が4321個で、4円換算値が1000個であることが表示されている。・・・
【0039】
・・・尚、図6では、1円玉コーナーから4円玉コーナーに移動した例を示しているが、パチンコ玉コーナーとメダルコーナーとの間の移動についても同様である。仮に20円メダル101枚を所持していた場合、20円メダルコーナーの発行可能数である10枚を除いた91枚が換算対象となり、これを4円玉に換算すると455個となることから、最低払出数である125個の倍数である375個となる場合の半端となる80個を切捨て、375個の4円玉を貸出せるものと表示する。
【0040】
遊技者が図6(c)に示す状態において1円持玉を選択して選択終了ボタン19hをタッチ操作すると、合算結果を表示する。図6(d)に示す例では、メッセージ表示部19cには「4円持玉に、1円持玉を合算した値を表示しています。」というメッセージが表示され、使用可能玉表示部19eには4円持玉が1016個で、その内訳として、4円持玉が16個、1円持玉が1000個であることが表示されている。
遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用し、4円持玉のうち乗入れ運用が許容された分を使い切った場合は、1円持玉を使用する。」

上記ア?クの記載事項、及び、図面の図示内容を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?hは、本件補正発明のA?Hに対応させて付与した)。

「a 遊技機にて使用する遊技価値の種類を貸出単価が異なるように複数設けた遊技場に対応した遊技場用システムであって(【0001】)、
遊技場内には多数の遊技機1が設置され(【0013】)、貸出単価が1個4円のパチンコ機が設置されたコーナーと、貸出単価が1個1円のパチンコ機が設置されたコーナーと、貸出単価が1枚20円のパチスロ機が設置されたコーナーと、貸出単価が1枚5円のパチスロ機が設置されたコーナーが設けられており(【0014】)、
b、d 各遊技機1に対応して各台計数機2が設置され(【0013】)、
各台計数機2は、遊技者からの操作入力を受付けるタッチパネル式の液晶表示部19、IC持玉券或いは会員カードが挿入されるカード挿入口22、遊技機1の下部受皿13の下方に位置する計数受皿24を備え(【0019】)、
遊技機1の下部受皿13から落下して計数受皿24で受けられた玉数を計数し(【0020】)、
遊技機1及び各台計数機2は、管理装置5と接続されており(【0013】)、
管理装置5は、遊技者毎の遊技価値の大きさ(持玉数・貯玉数)を記憶管理し、持玉とは、当日貯玉であり(【0016】)、遊技者が遊技により獲得した遊技媒体を一旦貯蓄し、当日或いは後日遊技に再利用できるようにする貯玉サービスを実行可能であり(【0022】)、
管理装置5には、一の会員ID或いはカードIDに対してコーナーに対応する複数の口座として、20円貯メダル口座、5円貯メダル口座、4円貯玉口座、1円貯玉口座、20円持メダル口座、5円持メダル口座、4円持玉口座、1円持玉口座がそれぞれ設定されており、玉やメダルを計数した場合に会員カード或いはIC持玉券と対応付けて貯玉することができ(【0023】)、
c 各台計数機2は、払出ノズル21を備え(【0019】)、遊技者による払出操作に応じて貯玉数或いは当日貯玉数の範囲内で玉を払出ノズル21から払出し(【0021】)、
e、f、g コーナーで優先的に使用する遊技媒体の貯玉であるメイン口座(例えば、4円パチンココーナーであれば4円貯玉口座)以外のサブ口座を使用可能な乗入れが可能となっており、例えば、4円コーナーにおいて1円玉で貯玉或いは当日貯玉があれば、4円玉として貯玉の再プレイ、或いは持玉の払出に使用でき(【0023】)、
1円持玉が4321個記憶されたIC持玉券を4円コーナーの各台計数機2に挿入し、4円コーナーでの遊技の結果、4円持玉が16個となった状態で遊技者が合算口座選択ボタン19fをタッチ操作すると、各台計数機2は、IC持玉券に記憶されている持玉を読込んで、1円持玉口座が4321個で、4円換算値が1000個であることが表示され(【0037】?【0038】)、1円持玉を選択すると、使用可能玉表示部19eには4円持玉が1016個で、その内訳として、4円持玉が16個、1円持玉が1000個であることが表示され、遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用し、4円持玉を使い切った場合は、1円持玉を使用する(【0040】)、
h 遊技場用システム(【0001】)。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。

(a)引用発明の「貸出単価」は、本件補正発明の構成Aの「レート」に相当し、引用発明の「遊技機にて使用する遊技価値の種類を貸出単価が異なるように複数設けた遊技場に対応した遊技場用システム」は、本件補正発明の構成Aの「遊技機にて使用する遊技価値のレートが複数設けられた遊技場に対応した遊技場用システム」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本件補正発明の構成Aに相当するものである。

(b)引用発明の「持玉数」及び「貯玉数」は、「遊技者が遊技により獲得した遊技媒体を一旦貯蓄し、当日或いは後日遊技に再利用できるようにする」ものであるから、本件補正発明の構成Bの「遊技者が遊技により獲得した遊技価値である獲得価値」に相当する。
また、引用発明では、「一の会員ID或いはカードIDに対して」、「20円貯メダル口座、5円貯メダル口座、4円貯玉口座、1円貯玉口座、20円持メダル口座、5円持メダル口座、4円持玉口座、1円持玉口座がそれぞれ設定されており」、「持玉数」及び「貯玉数」は、貸出単価毎に区別して管理されていると認められるから、引用発明の「持玉数」及び「貯玉数」は、本件補正発明の構成Bの「対応するレートを特定可能な獲得価値」に相当する。
そして、引用発明の「持玉数」及び「貯玉数」は、「各台計数機2」が、「遊技機1の下部受皿13から落下して計数受皿24で受けられた玉数を計数し」「た場合に」、「管理装置5」が、「会員カード或いはIC持玉券と対応付けて貯玉する」ものであるから、引用発明において、「各台計数機2」が「計数受皿24で受けられた玉数を計数」することは、本件補正発明の構成Bの「獲得価値を受け付け」ることに相当し、引用発明の「各台計数機2」は、本件補正発明の構成Bの「獲得価値を受け付け可能な価値受付手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成b、dは、本件補正発明の構成Bに相当する構成を具備している。

(c)引用発明の「遊技者による払出操作」、「玉を払出ノズル21から払出」すことは、それぞれ、本件補正発明の構成Cの「遊技者からの付与操作」、「遊技者へ遊技価値を付与する付与処理」に相当し、引用発明の「遊技者による払出操作に応じて」「玉を払出ノズル21から払出」す「各台計数機2」は、本件補正発明の構成Cの「遊技者からの付与操作の受け付けに応じて、」「遊技者へ遊技価値を付与する付与処理を行う価値付与手段」に相当する。
そして、(b)にて説示したとおり、引用発明の「持玉数」及び「貯玉数」は、本件補正発明の構成Cの「前記獲得価値」に相当するものであり、持玉とは当日貯玉のことであるから(構成b、d)、引用発明の構成cの「貯玉数或いは当日貯玉数の範囲内で玉を払出ノズル21から払出」すことは、本件補正発明の構成Cの「前記獲得価値を対価として遊技者へ遊技価値を付与する付与処理」に相当する
してみると、引用発明の構成cは、本件補正発明の構成Cに相当するものである。

(d)(b)にて説示したとおり、引用発明の「持玉数」及び「貯玉数」は、本件補正発明の構成Dの「前記価値受付手段により受け付けられた前記獲得価値」に相当するものであり、引用発明の「持玉数」及び「貯玉数」を「記憶管理」する「管理装置5」は、本件補正発明の構成Dの「前記価値受付手段により受け付けられた前記獲得価値」「を管理する管理手段」に相当する。
また、引用発明において、「管理装置5には、一の会員ID或いはカードIDに対して」、「20円貯メダル口座、5円貯メダル口座、4円貯玉口座、1円貯玉口座、20円持メダル口座、5円持メダル口座、4円持玉口座、1円持玉口座がそれぞれ設定されて」いることから、「管理装置5」は、遊技者毎の「持玉数」及び「貯玉数」を、それぞれ貸出単価毎に区別して管理していると認められる。
そして、引用発明の「管理装置5に」「設定されて」いる「複数の口座」のうち、遊技者が遊技を行う遊技機に設定された貸出単価と同じ貸出単価の口座(例えば、遊技者が4円パチンココーナーで遊技する場合、4円貯玉口座及び4円持玉口座)で管理される「持玉数」及び「貯玉数」が、本件補正発明の構成Dの「予め前記価値付与手段に対応付けて設定される前記付与処理の対象となる付与レート」「の遊技価値である自獲得価値」に相当し、遊技者が遊技を行う遊技機に設定された貸出単価とは異なる貸出単価の口座(上記の例では、20円貯メダル口座、5円貯メダル口座、1円貯玉口座、20円持メダル口座、5円持メダル口座及び1円持玉口座)で管理される「持玉数」及び「貯玉数」が、本件補正発明の構成Dの「予め前記価値付与手段に対応付けて設定される前記付与処理の対象となる付与レートとは異なる他レートの遊技価値である他獲得価値」に相当する。
してみると、引用発明の構成b、dは、本件補正発明の構成Dに相当する構成を具備している。

(e)(d)にて説示したとおり、引用発明において、遊技者が4円パチンココーナーで遊技する場合、1円貯玉口座及び1円持玉口座で管理される「持玉数」及び「貯玉数」は、本件補正発明の構成Eの「前記他獲得価値」に相当する。
そうすると、引用発明において、「コーナーで優先的に使用する遊技媒体の貯玉であるメイン口座(例えば、4円パチンココーナーであれば4円貯玉口座)以外のサブ口座を使用可能な乗入れ」として、「4円コーナーにおいて1円玉で貯玉或いは当日貯玉があれば、4円玉として貯玉の再プレイ、或いは持玉の払出に使用」することは、本件補正発明の構成Eの「前記他獲得価値を対価とした前記付与処理である乗入れ付与処理」に相当する。
また、引用発明において、「1円持玉が4321個記憶されたIC持玉券を4円コーナーの各台計数機2に挿入し、」「遊技者が合算口座選択ボタン19fをタッチ操作すると、各台計数機2は、IC持玉券に記憶されている持玉を読込んで、1円持玉口座が4321個で、4円換算値が1000個であることが表示され」ることは、「4円コーナー」で「1円持玉」を使用する「乗入れ」を行うために、「各台計数機2」が、「1円持玉口座」の「持玉数」である「4321個」を「4円換算値」である「1000個」に換算することを意味するから、本件補正発明の構成Eの「乗入れ付与処理を行うためのレート間の換算処理である乗入れ処理」に相当し、引用発明の「各台計数機2」は、本件補正発明の構成Eの「乗入れ手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成e、f、gは、本件補正発明の構成Eに相当する構成を具備している。

(f)(d)にて説示したとおり、引用発明において、遊技者が4円パチンココーナーで遊技する場合、4円持玉口座で管理される「持玉数」は、本件補正発明の構成Fの「前記自獲得価値」に相当するから、引用発明において、「4円コーナーでの遊技」にて「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用」される状態は、本件補正発明の構成Fの「前記自獲得価値を対価とした前記付与処理である自価値付与処理を行う状態」に相当する。
また、(e)にて説示したとおり、引用発明において、「4円コーナーにおいて1円玉で」「当日貯玉があれば、4円玉として」「持玉の払出に使用」することは、本件補正発明の構成Fの「前記乗入れ付与処理」に相当するから、引用発明において、「4円コーナーでの遊技」にて「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、」「1円持玉を使用する」状態は、本件補正発明の構成Fの「前記乗入れ付与処理を行う状態である乗入れ状態」に相当する。
そして、引用発明は、「1円持玉が」「記憶されたIC持玉券を4円コーナーの各台計数機2に挿入し、4円コーナーでの遊技」にて「遊技者が合算口座選択ボタン19fをタッチ操作」し、「1円持玉を選択」した状態で、「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用し、4円持玉を使い切った場合は、1円持玉を使用する」ものであり、「4円持玉を使い切った」という条件の成立によって、「4円持玉から優先して使用」される状態から、「1円持玉を使用する」状態へと、「各台計数機2」による払出の状態を切り替えているものと認められるから、引用発明における「4円持玉を使い切った」ことが、本件補正発明の構成Fの「予め設定される状態切替条件の成立」に相当する。
そうすると、引用発明の「各台計数機2」は、本件補正発明の構成Fの「予め設定される状態切替条件の成立に応じて、前記自獲得価値を対価とした前記付与処理である自価値付与処理を行う状態から前記乗入れ付与処理を行う状態である乗入れ状態へ前記価値付与手段の状態を切り替える状態切替手段」に相当する機能を有している。
よって、引用発明の構成e、f、gは、本件補正発明の構成Fに相当する構成を具備している。

(g)
ア (f)にて説示したとおり、引用発明において、遊技者が4円パチンココーナーで遊技する場合、4円持玉口座で管理される「持玉数」は、本件補正発明の構成Gの「前記自獲得価値」に相当し、「4円コーナーでの遊技」にて「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用」することは、本件補正発明の構成Gの「前記自価値付与処理」に相当する。
そして、引用発明は、「4円持玉を使い切った」という条件の成立によって、「4円持玉から優先して使用」される状態から、「1円持玉を使用する」状態へと切り替えるものであり、これは「4円持玉から優先して使用」することを終了することを意味するから、引用発明における「4円持玉を使い切った」ことは、本件補正発明の構成Gの「前記自獲得価値の大きさを対象として予め設定される条件であって前記自価値付与処理を終了する条件である自価値付与処理終了条件」に相当する。
また、引用発明において、「4円持玉を使い切った場合」に、「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、」「1円持玉を使用する」状態は、本件補正発明の構成Gの「自価値付与処理終了条件を満たした前記乗入れ状態」に相当する。
してみると、引用発明の構成e、f、gと、本件補正発明の構成Gとは、「前記自獲得価値の大きさを対象として予め設定される条件であって前記自価値付与処理を終了する条件である自価値付与処理終了条件を満たした前記乗入れ状態」を有する点で共通する。

イ 上述のとおり、引用発明は、「4円持玉を使い切った」という条件の成立によって、「4円持玉から優先して使用」される状態から、「1円持玉を使用する」状態へと切り替えるものであり、「4円持玉を使い切」るまでは、「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作」したときに、「1円持玉」よりも「優先して」「4円持玉」を「使用」するものであるから、かかる払出し処理を実行する「各台計数機2」は、本件補正発明の構成Gの「前記付与操作の受け付けに応じて、前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、」「自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を前記価値付与手段に行わせる優先手段」に相当する機能を有している。
してみると、引用発明の構成e、f、gと、本件補正発明の構成Gとは、「前記付与操作の受け付けに応じて、前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、」「自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を前記価値付与手段に行わせる優先手段」を備える点でも共通する。

(h)引用発明の「遊技場用システム」は、本件補正発明の構成Hの「遊技場用システム」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本件補正発明の構成Hに相当するものである。

上記(a)?(h)によれば、本件補正発明と引用発明とは、
「A 遊技機にて使用する遊技価値のレートが複数設けられた遊技場に対応した遊技場用システムであって、
B 遊技者が遊技により獲得した遊技価値である獲得価値であって対応するレートを特定可能な獲得価値を受け付け可能な価値受付手段と、
C 遊技者からの付与操作の受け付けに応じて、前記獲得価値を対価として遊技者へ遊技価値を付与する付与処理を行う価値付与手段と、
D 前記価値受付手段により受け付けられた前記獲得価値の内、予め前記価値付与手段に対応付けて設定される前記付与処理の対象となる付与レートとは異なる他レートの遊技価値である他獲得価値と、前記付与レートの遊技価値である自獲得価値とを管理する管理手段と、
E 前記他獲得価値を対価とした前記付与処理である乗入れ付与処理を行うためのレート間の換算処理である乗入れ処理を行う乗入れ手段と、
F 予め設定される状態切替条件の成立に応じて、前記自獲得価値を対価とした前記付与処理である自価値付与処理を行う状態から前記乗入れ付与処理を行う状態である乗入れ状態へ前記価値付与手段の状態を切り替える状態切替手段と、
G’ 前記自獲得価値の大きさを対象として予め設定される条件であって前記自価値付与処理を終了する条件である自価値付与処理終了条件を満たした前記乗入れ状態を有し、
前記付与操作の受け付けに応じて、前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を前記価値付与手段に行わせる優先手段と、
H を備えたことを特徴とする遊技場用システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点](構成Gに関して)
「前記付与操作の受け付けに応じて、前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、」「自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を前記価値付与手段に行わせる優先手段」に関して、
本件補正発明が、「自価値付与処理終了条件を満たした前記乗入れ状態において、前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられることで前記自価値付与処理終了条件が満たされなくなった場合に」、「前記乗入れ付与処理を行うための対価となる前記他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を前記価値付与手段に行わせる」のに対して、引用発明は、上記のような場合に、「4円コーナーにおいて1円玉で」「当日貯玉があれば、4円玉として」「持玉の払出に使用」すること(乗入れ付与処理)と、「4円コーナーでの遊技」にて「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用」すること(自価値付与処理)とのいずれを優先して「各台計数機2」(価値付与手段)に行わせるのか、明らかではない点。

(4)当審合議体の判断
ア 相違点について
上記(2)にて摘記したとおり、引用文献1の【0023】には「・・・コーナーで使用可能なメイン口座(コーナーで優先的に使用する遊技媒体の貯玉のこと)、例えば、4円パチンココーナーであれば4円貯玉口座・・・」と記載され、【0032】には「遊技者が貯玉払出ボタン19gをタッチ操作すると、各台計数機2は、メイン口座である4円貯玉口座を優先して使用する。」と記載され、【0035】には「メイン口座以外に複数のサブ口座が選択されている場合に貯玉払出ボタン19gがタッチ操作されたときは、メイン口座を使用し、メイン口座を使用し切ったときは、単価の高いサブ口座の順に使用していく。」と記載され、【0039】?【0040】には「1円玉コーナーから4円玉コーナーに移動した例」として「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用し、4円持玉・・・を使い切った場合は、1円持玉を使用する。」と記載されている。
上記記載から、引用文献1には、メイン口座、すなわち、遊技中の遊技機に設定された貸出単価と同じ貸出単価の口座に、貯玉または持玉が残存しており、メイン口座からの払出しが可能な状況であれば、サブ口座、すなわち、遊技中の遊技機に設定された貸出単価とは異なる貸出単価の口座に、貯玉または持玉が残存していても、メイン口座からの払出しを優先して行わせることが示唆されているといえる。
そして、引用発明において、4円パチンココーナーで4円持玉を使い切った後、1円持玉を払出しに使用している状態(本件補正発明の構成Gの「自価値付与処理終了条件を満たした乗入れ状態」に相当)において、例えば大当りに当選して多量の玉が払出され、払出された玉を各台計数機2により計数して、4円持玉が増加した場合(同じく「価値受付手段により新たに自獲得価値が受け付けられることで自価値付与処理終了条件が満たされなくなった場合」に相当)についても、メイン口座(4円持玉口座)からの払出しが可能な状況であることに変わりはないから、そのような場合に、メイン口座からの払出しをサブ口座からの払出しに優先して行わせるように、すなわち、付与操作の受け付けに応じて、乗入れ付与処理を行うための対価となる他獲得価値が残存していても当該乗入付与処理に優先し、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした自価値付与処理を価値付与手段に行わせるようにして、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 効果について
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明から予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、平成31年4月12日付け審判請求書において、次のとおり主張する。

「確かに引用文献1にはメイン口座を優先して使用することが段落0032に記載されてはいますが、どのように優先するか、或いはどのような場合であっても優先するかまでは言及していません。引用文献1では乗入れ付与処理を行う場合にサブ口座の貯玉をメイン口座に換算した上でメイン口座の貯玉と合算し、その合算した貯玉を使用可能な貯玉として示しており、このような合算を少なくともサブ口座を選択した場合に行うことは記載されていますが、それ以外の条件で合算すること、即ち、メイン口座の貯玉(自獲得価値)が計数により増えた場合に再計算することまでは想定していません。
従いまして、引用文献1におけるメイン口座を優先してとの記載は、一旦合算した使用可能な貯玉を使い切るまでの過程において当該使用可能な貯玉を付与対象とする場合にメイン口座を優先して使用することを示しているとも言えます。・・・
このように優先して使用するといっても様々な優先方法があり、自獲得価値がない乗入れ状態で自獲得価値を受付けた状況が全く想定されていない引用文献1の構成にて、当該状況となった場合でも優先して使用するとの認定は余りにも飛躍していると言わざるを得えません。飽くまでも引用文献1には上記の通り貯玉を合算した場合にその合算した使用可能な貯玉を対象としてメイン口座を優先して使用することしか記載されておらず、その状態にて新たに計数したメイン口座の貯玉を優先して使用するか否かまでは記載も示唆もされていません。
また、引用文献1では乗入れ処理後に合算した貯玉を対象としてメイン口座を優先して使用することは想定されているものの、新たに自獲得価値が受付けられた場合に当該自獲得価値を使用するために貯玉を合算するか否かすら想定されていません。・・・
これに対して本願発明は、・・・自獲得付与処理を行うための対価分となる自獲得価値が残存しない乗入れ状態において、大当り等により遊技者が新たに獲得価値を得て自獲得価値を受付けた場合にその自獲得価値が付与処理の対価にならないといった遊技者が感じるもどかしい思いを低減させられるといった引用文献1-3では得られない格別な効果を期待でき、本願発明の目的を達成することができます。」((4)本願が特許されるべき理由の(b)本願発明と引用文献との対比)

そこで、請求人の上記主張について検討する。
まず、請求人は、「引用文献1には上記の通り貯玉を合算した場合にその合算した使用可能な貯玉を対象としてメイン口座を優先して使用することしか記載されておらず、その状態にて新たに計数したメイン口座の貯玉を優先して使用するか否かまでは記載も示唆もされていません。」と主張している。
しかし、引用文献1の【0023】に「メイン口座にサブ口座を合算可能となっているが、内部的に合算することはなく、合算した値を表示するのみである。」と記載されているように、引用発明における「合算」は、あくまでも液晶表示部19で合算した値を表示するためのものであって、「メイン口座にサブ口座を合算」した後も、メイン口座とサブ口座の各々で管理される持玉数及び貯玉数は、合算されることなく別々に管理されるものであると認められる。
してみると、引用発明において、「メイン口座にサブ口座を合算」した場合に「メイン口座を優先して使用する」ことを、請求人が主張するように、「一旦合算した使用可能な貯玉を使い切るまでの過程において当該使用可能な貯玉を付与対象とする場合にメイン口座を優先して使用する」という限定的な意味に解釈する理由はない。
そして、上記「ア 相違点について」において説示したとおり、引用文献1には、メイン口座からの払出しが可能な状況であれば、サブ口座に貯玉または持玉が残存していても、メイン口座からの払出しを優先して行わせることが示唆されているのであるから、引用発明において、メイン口座の持玉を使い切って、サブ口座の持玉を払出しに使用している状態において、例えば大当りに当選してメイン口座の持玉が増加し、メイン口座からの払出しが再び可能となった場合に、メイン口座からの払出しをサブ口座からの払出しに優先して行わせるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、上記「イ 効果について」において説示したとおり、本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明から予測し得る範囲内のものにすぎない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5)小括
よって、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
上記1?3より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年11月16日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める(記号A?Hは、分説するため当審にて付した)。

「A 遊技機にて使用する遊技価値のレートが複数設けられた遊技場に対応した遊技場用システムであって、
B 遊技者が遊技により獲得した遊技価値である獲得価値であって対応するレートを特定可能な獲得価値を受け付け可能な価値受付手段と、
C 遊技者からの付与操作の受け付けに応じて、前記獲得価値を対価として遊技者へ遊技価値を付与する付与処理を行う価値付与手段と、
D 前記価値受付手段により受け付けられた前記獲得価値の内、予め前記価値付与手段に対応付けて設定される前記付与処理の対象となる付与レートとは異なる他レートの遊技価値である他獲得価値と、前記付与レートの遊技価値である自獲得価値とを管理する管理手段と、
E 前記他獲得価値を対価とした前記付与処理である乗入れ付与処理を行うためのレート間の換算処理である乗入れ処理を行う乗入れ手段と、
F 予め設定される状態切替条件の成立に応じて、前記自獲得価値を対価とした前記付与処理である自価値付与処理を行う状態から前記乗入れ付与処理を行う状態である乗入れ状態へ前記価値付与手段の状態を切り替える状態切替手段と、
G1 前記乗入れ状態において前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられた場合に、前記付与操作の受け付けに応じて、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を、前記乗入れ付与処理に優先して前記価値付与手段に行わせる優先手段と、
H を備えたことを特徴とする遊技場用システム。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。

1.特開2014-144186号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、上記「第2 3(2)引用文献1に記載された事項及び引用発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明の構成A?F、Hは、本件補正発明の構成A?F、Hと同じであり、上記「第2 3(3)対比」で説示したとおり、引用発明は、本願発明の構成A?F、Hに相当する構成を具備している。
また、上記「第2 3(3)対比(g)」で説示したとおり、引用発明と本願発明の構成G1とは、「前記付与操作の受け付けに応じて、」「自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を、前記乗入れ付与処理に優先して前記価値付与手段に行わせる優先手段」を備える点で共通する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、 次の点で相違し、その余の点で一致する。

[相違点](構成G1に関して)
「前記付与操作の受け付けに応じて、」「自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を、前記乗入れ付与処理に優先して前記価値付与手段に行わせる優先手段」に関して、
本願発明が、「前記乗入れ状態において前記価値受付手段により新たに前記自獲得価値が受け付けられた場合に、」「新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした前記自価値付与処理を、前記乗入れ付与処理に優先して前記価値付与手段に行わせる」のに対して、引用発明は、上記のような場合に、「4円コーナーにおいて1円玉で」「当日貯玉があれば、4円玉として」「持玉の払出に使用」すること(乗入れ付与処理)と、「4円コーナーでの遊技」にて「遊技者が持玉払出ボタン19iをタッチ操作すると、4円持玉から優先して使用」すること(自価値付与処理)とのいずれを優先して「各台計数機2」(価値付与手段)に行わせるのか、明らかではない点。

上記相違点について検討する。
上記「第2 3(4)当審合議体の判断」にて説示したとおり、引用文献1には、メイン口座からの払出しが可能な状況であれば、サブ口座に貯玉または持玉が残存していても、メイン口座からの払出しをサブ口座からの払出し(乗入れ)に優先して行わせることが示唆されており、引用発明において、4円パチンココーナーで4円持玉を使い切った後、1円持玉を払出しに使用している状態(本願発明の構成G1の「乗入れ状態」に相当)において、例えば大当りに当選して多量の玉が払出され、払出された玉を各台計数機2により計数して、4円持玉が増加した場合(同じく「価値受付手段により新たに自獲得価値が受け付けられた場合」に相当)に、メイン口座からの払出しをサブ口座からの払出しに優先して行わせるように、すなわち、付与操作の受け付けに応じて、新たに受け付けられた自獲得価値を対価とした自価値付与処理を、乗入れ付与処理に優先して価値付与手段に行わせるようにして、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-29 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-16 
出願番号 特願2015-48294(P2015-48294)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小泉 早苗  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
木村 隆一
発明の名称 遊技場用システム  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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