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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1359504
審判番号 不服2018-12128  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-10 
確定日 2020-02-05 
事件の表示 特願2015-535593「偏光板およびそれを含むディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月24日国際公開,WO2014/204165,平成27年11月9日国内公表,特表2015-532459〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2015-535593号(以下「本件出願」という。)は,2014年(平成26年)6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年6月18日 韓国)を国際出願日とする出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成28年 4月20日付け:拒絶理由通知書
平成28年10月26日提出:意見書
平成28年10月26日提出:手続補正書
平成29年 3月30日付け:拒絶理由通知書
平成29年 6月29日提出:意見書
平成29年 6月29日提出:手続補正書
平成29年11月30日付け:拒絶理由通知書
平成30年 3月 2日提出:意見書
平成30年 3月 2日提出:手続補正書
平成30年 5月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年 9月10日提出:審判請求書
平成30年 9月10日提出:手続補正書
平成31年 3月 6日提出:上申書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前,すなわち平成30年3月2日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び4の記載は,以下のとおりである。
ア 請求項1
「 偏光膜,前記偏光膜上の一側に備えられた第1の保護フィルムおよび前記偏光膜上の他側に備えられた第2の保護フィルムを含む偏光板であって,
透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記偏光板の収縮力が幅1mm当たり39kgf以下であり,
透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記第1の保護フィルムの収縮力が幅1mm当たり13kgf以下であり,
透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記第2の保護フィルムの収縮力が幅1mm当たり11kgf以下である,偏光板。」

イ 請求項4
「 透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記偏光膜の収縮力が幅1mm当たり15kgf以下である,請求項1から3のいずれか1項に記載の偏光板。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。
「 偏光膜,前記偏光膜上の一側に備えられた第1の保護フィルムおよび前記偏光膜上の他側に備えられた第2の保護フィルムを含む偏光板であって,
透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記偏光板の収縮力が幅1mm当たり39kgf以下であり,
透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記第1の保護フィルムの収縮力が幅1mm当たり13kgf以下であり,
透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記第2の保護フィルムの収縮力が幅1mm当たり11kgf以下であり,
透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記偏光膜の収縮力が幅1mm当たり15kgf以下であり,
前記偏光膜の厚さは12μm以下であり,
前記第1の保護フィルムの厚さは20μm以上30μm以下であり,
前記第2の保護フィルムの厚さは20μm以上30μm以下である,
偏光板。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の,請求項1の記載を引用して記載された請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である,「偏光膜」,「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」の厚さを,それぞれ,「12μm以下」,「20μm以上30μm以下」及び「20μm以上30μm以下」に限定する補正である。また,本件補正のうち,「偏光膜」の厚さに関する補正は,本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0052】及び【0079】に記載した事項の範囲内でしたものである。加えて,本件補正のうち,「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」の厚さに関する補正は,上記明細書の【0070】に記載した事項の範囲内でしたものである。
そうしてみると,本件補正は,本件出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであるから,特許法17条の2第3項の規定に適合する。

また,本件補正は,その補正の内容からみて,同法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。そして,本件補正前の請求項1の記載を引用して記載された請求項4に記載された発明と,本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は,同一である(明細書の【0002】及び【0005】を参照。)。
そうしてみると,本件補正は,同法17条の2第5項2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正後発明」という。)が,同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1) 本件補正後発明
本件補正後発明は,前記1(2)に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された特開2004-20830号公報(以下「引用文献1」という。)は,本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に,日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア フロントページの中段の左欄
「(21)【出願番号】特願2002-174477(P2002-174477)
(22)【出願日】平成14年6月14日(2002.6.14)」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,液晶表示装置,自発光型表示装置,PDP等に用いられる偏光子,偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の偏光板は,親水性高分子フィルムであるポリビニルアルコール(以下,「PVA」と略称することがある)フィルムを材料とした偏光子と呼ばれるフィルムと,光弾性が低いことを特徴とする高分子フィルム,主にトリアセチルセルロース系,ポリオレフィン系からなる保護フィルムと呼ばれるフィルムを,接着剤を介して貼り合せて製膜されている。
【0003】
偏光子の製膜方法としては,PVAフィルムにヨウ素を染色させた後,一軸延伸を行う。フィルム延伸後の状態の保持は,ホウ酸エステルによりPVA架橋を行うことによってなされる。偏光子の製膜には延伸という操作を用いているが,フィルムを延伸することにより,延伸前の形に戻ろうとする内部エネルギーが発生する。ホウ酸エステルによる架橋は,PVAの分子間の結合を強固なものにすると同時に,フィルム内部にエネルギーを溜め込んでいるともいうことができる。
…(省略)…
【0005】
一方,偏光板は液晶表示素子に用いられる際に,光学特性は勿論のこと非常に高い耐久性(すなわち,寸法変化や外観変化の少ない事)が要求される。近年のストレス負荷耐久性試験のスペックは,液晶表示装置(以下,「LCD」と略称することがある)使用用途の拡大,画面のサイズアップ,LCDパネルの薄型化,バックライトの輝度向上等のため,非常に要求レベルが高くなっており,上記製膜方法に記した要領で作製した偏光板の耐久性としては,今まで問題とされていなかった点(加熱や加湿の条件下での光学特性,及び寸法や外観の変化)が,耐久性試験条件のレベルが上がったことで欠点として指摘されてきている。
…(省略)…
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,LCD等の用途拡大や,特に大画面化,薄型化,バックライトの輝度向上により新たに発生した問題点に鑑みてなされたものであり,加熱や加湿条件下での光学特性に優れるとともに,寸法変化や外観変化が少ない耐久性に優れた偏光子,偏光板を提供することを目的とする。また,本発明は,それらを用いた液晶表示装置,自発光型表示装置を提供することを目的とする。さらには,前記の偏光子,偏光板による液晶もしくはエレクトロルミネッセンス表示装置のインハウス製造方法を提供することを目的とする。」

ウ 「【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため,本発明者らは鋭意検討を行った。図1に示すように,偏光板の構成おいて,保護フィルムとなる高分子フィルムや粘着層の粘着剤の物性に関しては,それぞれの特徴となる特性を満たすために,物性の自由度は非常に少ない。しかし,偏光子に関しては容易に光学特性を得るための方法も確立されてきており,光学特性にあまり支配されることなく,偏光子の物性には検討できる自由度が大きい。また,偏光子は非常に異方性が大きく外力の負荷によって劣化するが,保護フィルムは等方性であり外力の影響を受けにくい。そこで,偏光子の弾性率と破断強度を規定することで,耐久性試験時に発生する歪に対して耐えうる偏光子となりうることを見出し,本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち,本発明は,光を吸収する軸方向の弾性率が2,000?6,000N/mm^(2)であり,かつ,光を吸収する軸方向の破断強度が30?100Nであることを特徴とする偏光子を提供するものである。
【0011】
偏光子の弾性率が小さいことにより,加熱・加湿耐久性試験時に偏光子,保護フィルムの伸縮が行われても,偏光子にかかる負荷は少なくなり耐久性の向上に繋がる。ただし,耐久性の向上に関しては,偏光子の弾性率が小さいだけでは不十分であり,偏光子の破断強度が高いことも同時に満たすことが重要である。
【0012】
本発明の偏光子は,透過率が43.0%以上,かつ偏光度が99.0%以上の特性を有している。したがって,実用に供しうる十分な明るさと偏光度を兼ね備えているものである。
…(省略)…
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の偏光子は,光を吸収する軸方向の弾性率が2,000?6,000N/mm^(2)であり,かつ,光を吸収する軸方向の破断強度が30?100Nのものである。偏光子の光を吸収する軸方向,すなわちMD方向の弾性率が6000N/mm^(2)より大きくなると,従来型の偏光子となり十分な耐久性は得られない。また2000N/mm^(2)より小さくなると,近年のTV用途などに用いられる液晶表示素子の要求性能を満たす光学特性が得られ難くなる傾向がある。好ましくは,弾性率は3,000?5,500N/mm^(2),破断強度は40?90Nであるのが良い。さらに好ましくは,弾性率は3,500?5,000N/mm^(2),破断強度は45?70Nであるのが良い。
【0017】
本発明における偏光板の基本的な構成は,二色性物質含有のポリビニルアルコール系偏光フィルム等からなる偏光子の片側又は両側に,適宜の接着層を介して保護層となる透明保護フィルムを接着したものからなる。図1にその断面構成図を示した。1が偏光子,2が保護フィルム,3が粘着層である。偏光子と保護フィルムは接着層(図示せず)を介して貼り合わされている。粘着層3は,液晶セル等の他の光学部材と貼り合せるためのものである。
【0018】
偏光子(偏光フィルム)としては,例えば,ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム,エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムに,ヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸したものや,ポリビニルアルコールの脱水処理物や,ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等からなる偏光フィルムがあげられるが,これに限定されない。中でも,ヨウ素又は二色性染料を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムが好ましい。偏光子の厚さは,特に限定されるものではないが,1?80μmが一般的であり,特に2?40μmが好ましい。なお,偏光子の吸収軸は,フィルムの延伸方向(MD方向)に相当する。」
(当合議体注:図1は次の図である。)


エ 「【0019】
前記のヨウ素又は二色性染料を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムは,該フィルムを二色性を有するヨウ素又は二色性染料で染色,ホウ酸やホウ砂等の架橋剤で架橋,延伸(総延伸倍率:約4?6倍),乾燥することにより形成されうる。なお,染色,架橋,延伸の各工程は,別々に行う必要はなく同時に行ってもよく,また,各工程の順番も任意でよい。
【0020】
ここで,ポリビニルアルコール系ポリマーの重合度は,特に制限されず任意のものを使用することができるが,フィルムの水への溶解度の点から,平均重合度500?1万が好ましく,より好ましくは1000?6000であるのが良い。ケン化度は75モル%以上が好ましく,より好ましくは98?100モル%であるのが良い。また,ポリビニルアルコール系フィルムの膜厚は,特に限定されないが,一般に200μm以下であり,好ましくは10?120μmのものが用いられる。膜厚が大きすぎる場合は,延伸倍率との関係で液晶表示装置等に実装した場合に表示パネルの色変化が大きくなり,一方,膜厚が薄すぎる場合は延伸が困難となるからである。
【0021】
偏光子の片側又は両側に設ける透明保護層となる保護フィルム素材としては,適宜な透明フィルムを用いることができる。中でも,透明性や機械的強度,熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーからなるフィルム等が好ましく用いられる。そのポリマーの例としては,トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂やポリエステル系樹脂,ポリノルボルネン系樹脂,ポリエーテルスルホン系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリイミド系樹脂,ポリオレフィン系樹脂,アクリル系樹脂等が挙げられるが,これに限定されるものではない。偏光特性や耐久性などの点より,特に好ましく用いることができる透明保護フィルムは,表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。
【0022】
透明保護フィルムの厚さは,任意であるが一般には偏光板の薄型化などを目的に500μm以下,好ましくは5?300μm,特に好ましくは5?150μmとされる。なお,偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを設ける場合,その表裏で異なるポリマー等からなる透明保護フィルムとすることもできる。
…(省略)…
【0043】
前述した偏光フィルムと保護フィルムからなる偏光板に,輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は,通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。
…(省略)…
【0046】
従って,前記した所定偏光軸の直線偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは,その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより,偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。
…(省略)…
【0060】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに,有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において,透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに,これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
…(省略)…
【0064】
【実施例】
以下,実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが,本発明は本実施例のみに限定されるものではない。尚,偏光子の特性試験に関しては下記の方法に準じて行った。
【0065】
(弾性率,破断強度の測定)
以下の条件にて引張試験により評価した。
測定機:島津製作所製 AG-I
測定サンプルサイズ:5mm×50mm(長手方向がMD方向)
測定条件:ロードセル 500N
引張速度 5mm/1min
【0066】
(実施例1)
重合度2400,ケン化度99.9%,厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを用いて,ヨウ素/ヨウ化カリウム混合液にて染色を行い,その後フィルムを6倍に一軸延伸して偏光子を得た。偏光子製膜時のフィルムの架橋はホウ酸をベースにしてグリオキサールを混合した水溶液中で延伸と同時に行った。水溶液中のホウ酸/グリオキサールの混合比は重量比7:3で行い,且つ水溶液中のPH=4(酸性)を保つようにした。作製した偏光子のMD方向の弾性率,破断強度を測定すると,4100[N/mm^(2)]と47[N]であった。
【0067】
この作製した偏光子とトリアセチルセルロース(以下TACと記す)をPVÅ系(合議体注:「PVÅ系」は「PVA系」の誤記である。)の接着剤を介して貼り合せ,80℃雰囲気下で乾燥を行い偏光板を作製した。
【0068】
(実施例2)
重合度2400,ケン化度99.9%,厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを用いて,ヨウ素/ヨウ化カリウム混合液にて染色を行い,フィルムを6.15培に一軸延伸した後,戻り率10%(5.8倍に戻す)で緩和させて偏光子を得た。偏光子製膜時のフィルムの架橋は4%ホウ酸水溶液中で延伸と同時に行った。作製した偏光子のMD方向の弾性率,破断強度を測定すると,5020[N/mm^(2)]と40[N]であった。
【0069】
この作製した偏光子とTACをPVA系の接着剤を介して貼り合せ,80℃雰囲気下で乾燥を行い偏光板を作製した。
【0070】
(実施例3)
重合度2400,ケン化度99.9%,厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを用いて,ヨウ素/ヨウ化カリウム混合液にて染色を行い,フィルムを水溶液中で5.2倍に一軸延伸し,その後4%ホウ酸溶液中で架橋/延伸を行いトータル延伸倍率が6培となるようにし偏光子を得た。作製した偏光子のMD方向の弾性率,破断強度を測定すると,3700[N/mm^(2)]と38[N]であつた。
【0071】
この作製した偏光子とTACをPVA系の接着剤を介して貼り合せ,80℃雰囲気下で乾燥を行い偏光板を作製した。
【0072】
(比較例1)
重合度2400,ケン化度99.9%,厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを用いて,ヨウ素/ヨウ化カリウム混合液にて染色を行い,ホウ酸溶液中でフィルムを6倍に一軸延伸し,偏光子を得た。作製した偏光子のMD方向の弾性率,破断強度を測定すると,8670[N/mm^(2)]と75[N]であった。
…(省略)…
【0077】
評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1から明らかなように,本発明例の偏光板は過酷なサイクル試験においてもクラックが発生することなく耐久性が良好であった。しかも,透過率が43.0%以上,かつ偏光度が99.0%以上のものが得られており,実用に供しうる十分な明るさと偏光度を兼ね備えていた。
【発明の効果】
以上説明したとおり,本発明によれば,加熱や加湿条件下での寸法変化や外観変化がなく,耐久性に優れた偏光子,偏光板が得られる。したがって,大画面の液晶表示装置や自発光型表示装置等に用いた際にも,クラックに起因する表示ムラや色ムラ,色ヌケ等を防止することができる。また,本発明の製造方法によれば,耐久性試験による寸法や外観の変化を検査する検査工程を不要とすることができ,液晶表示装置や有機EL表示装置等を一のラインで製造することができるため,生産効率が飛躍的に向上する。よって,その工業的価値は大である。」

(3) 引用発明
引用文献1には,「液晶表示装置,自発光型表示装置,PDP等に用いられる」「偏光板」(【0001】)の具体例として,実施例1の製造方法により作製されてなる「偏光板」が開示されている(【0066】及び【0067】)。
そうしてみると,引用文献1には,次の「偏光板」の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,技術常識に鑑みて,「トリアセチルセルロース」を「トリアセチルセルロースフィルム」に書き改めた。
「 液晶表示装置,自発光型表示装置,PDP等に用いられる偏光板であって,
厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを用いて染色を行い,6倍に一軸延伸して偏光子を得,
作製した偏光子とトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せ,乾燥を行い作製した,
偏光板。」

(4) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比する。
ア 偏光板
引用発明は,「偏光子とトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せ,乾燥を行い作製した」,「液晶表示装置,自発光型表示装置,PDP等に用いられる偏光板であ」る。
上記の構成からみて,引用発明の「偏光板」は,本件補正後発明の「偏光板」に相当する。

イ 偏光膜
引用発明の「偏光子」は,「厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを用いて染色を行い,6倍に一軸延伸して」得たものである。
上記の構成からみて,引用発明の「偏光子」は,膜状のものであり,偏光膜ということができる。
したがって,引用発明の「偏光子」は,本件補正後発明の「偏光膜」に相当する。

ウ 保護フィルム
引用発明の「偏光板」は,「作製した偏光子とトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せ,乾燥を行い作製した」,「偏光板」である。
ここで,引用発明の「トリアセチルセルロースフィルム」が,引用発明の「偏光子」を保護するために,「偏光子」の両面に貼り合わせられたものであることは明らかである(この点は,【図1】及び【0017】の下線部の記載からも確認される事項である。あるいは,引用文献1に接した当業者ならば,実施例1の偏光板を,【図1】の態様に対応するものとして理解することができる。)。
したがって,引用発明の「トリアセチルセルロースフィルム」の一方及び他方は,それぞれ,本件補正後発明の「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」に相当する。また,引用発明の「偏光板」は,本件補正後発明の「偏光板」における,「偏光膜,前記偏光膜上の一側に備えられた第1の保護フィルムおよび前記偏光膜上の他側に備えられた第2の保護フィルムを含む」という構成を具備する。

(5) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「 偏光膜,前記偏光膜上の一側に備えられた第1の保護フィルムおよび前記偏光膜上の他側に備えられた第2の保護フィルムを含む偏光板。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
「第1の保護フィルム」が,本件補正後発明は,「透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で」「収縮力が幅1mm当たり13kgf以下であり」,「厚さは20μm以上30μm以下であ」るのに対して,引用発明は,この構成を具備するか,明らかではない点。

(相違点2)
「第2の保護フィルム」が,本件補正後発明は,「透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で」「収縮力が幅1mm当たり11kgf以下であり」,「厚さは20μm以上30μm以下である」のに対して,引用発明は,この構成を具備するか,明らかではない点。

(相違点3)
「偏光膜」が,本件補正後発明は,「透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で」「収縮力が幅1mm当たり15kgf以下であり」,「厚さは12μm以下であ」るのに対して,引用発明は,この構成を具備するか,明らかではない点。

(相違点4)
「偏光板」が,本件補正後発明は,「透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で」「収縮力が幅1mm当たり39kgf以下であ」るのに対して,引用発明は,この構成を具備するか,明らかではない点。

(6) 判断
引用文献1の【0008】には,「本発明は,LCD等の用途拡大や,特に大画面化,薄型化,バックライトの輝度向上により新たに発生した問題点に鑑みてなされたものであり,加熱や加湿条件下での光学特性に優れるとともに,寸法変化や外観変化が少ない耐久性に優れた偏光子,偏光板を提供することを目的とする。」と記載されている。ここで,引用発明が発明された時期は,出願日からみて2002年頃と考えられる。しかしながら,2007年にiPhoneが発売されて以降,LCD等の薄型化に対する要求は,とりわけ強くなったと認められる。
そうしてみると,本件優先日前の当業者ならば,LCD等の薄型化に対応するべく,引用発明の「偏光板」の薄型化を重視して設計すると認められるところ,このようにしてなる「偏光板」は,上記相違点1?相違点4に係る構成を全て具備したものとなる。その詳細は,以下のとおりである。
ア 相違点1(第1の保護フィルム)について
引用発明においては,保護フィルムとして「トリアセチルセルロースフィルム」が用いられている。しかしながら,本件優先日前の当業者ならば,より薄型化できる,シクロオレフィン系の保護フィルムを心得ている。すなわち,特開2013-57706号公報(以下「周知例1」という。)の【0152】には,厚さ23μmのゼオノアフィルムが記載され,当業者ならば,このフィルムを入手することができたと認められる。また,このフィルムの温度25℃,相対湿度50%の条件での収縮力は,幅1mm当たり5kgf程度と考えられる。
(当合議体注:ゼオノアの引張弾性率の代表値は,カタログ(「ZEONOR^((R))」,日本ゼオン株式会社,2012年6月発行,6頁。なお,登録商標を表す丸囲いの「R」を^((R))で代用表記した。)によると,常温常湿下で2200MPa程度と認められるところ,2200MPa×0.102(kgf/mm^(2)への換算係数)×23×10^(-3)mm(フィルムの厚さ)≒5kgf/mmと計算される。仮に,本件明細書の【0080】に記載のシクロオレフィンフィルムの6kgf/mm^(2)を採用するとしても,結論は同じである。)

なお,光学異方性を持たせること等を目的としてゼオノアフィルムを延伸した場合には,その収縮率が大きくなると認められる。しかしながら,保護フィルムに光学異方性は必要ではない。少なくとも,引用発明は,偏光子にかかる負荷を少なくすることを念頭に置いたものであり(【0011】),また,加熱や加湿条件下での寸法変化がないものである(【0079】)から,当業者ならば,収縮率が大きくなるような処理は控えると認められる。

以上勘案すると,引用発明の「偏光板」を薄型化して設計する当業者が,「厚さ23μmのゼオノアフィルム」を採用することにより,相違点1に係る本件補正後発明の構成を具備したものとすることは,容易に発明をすることができたものである。

イ 相違点2(第2の保護フィルム)について
相違点2についての判断は,相違点1についての判断と同じである。

ウ 相違点3(偏光膜)について
本件優先日前において,厚さが12μm以下の偏光子は周知であって,例えば,特開2011-227450号公報(以下「周知例2」という。)の【0111】には厚さ5.3?6.1μmの偏光子が,特開2012-198449号公報(以下「周知例3」という。)の【0057】には厚さ3μmの偏光子が開示されている。
また,収縮力について検討すると,厚さ6μmの偏光子は弾性率が常温常湿で約24500N/mm^(2)を超えない限り,厚さ3μmの偏光子は弾性率が常温常湿で約49000N/mm^(2)を超えない限り,「透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記偏光膜の収縮力が幅1mm当たり15kgf以下」となる。
(当合議体注:15kgf/mm÷6μm(厚さ)×10^(3)(mmに換算)÷0.102(N/mm^(2)に換算)≒24500N/mm^(2)と計算される。3μmの場合も同様に,49000N/mm^(2)と計算される。)
ここで,引用文献1の【0016】には,「偏光子の光を吸収する軸方向,すなわちMD方向の弾性率が6000N/mm^(2)より大きくなると,従来型の偏光子となり十分な耐久性は得られない。」と記載されている。そうしてみると,引用発明の「偏光子」を薄型化して設計する当業者においても,MD方向の弾性率が大きくならないように配慮する(引用文献1に記載された架橋条件(【0066】),緩和処理(【0068】),延伸工程(【0070】)を参考にして,工夫する)と考えられる。
したがって,当業者が,たとえ薄型化を優先させるとしても,24500N/mm^(2)(厚さ6μmの場合)や49000N/mm^(2)(厚さ3μmの場合)超えるような偏光子を作製するとは考えられない。
また,技術常識を考慮すると,TD方向の弾性率はMD方向の弾性率よりも小さい。

以上勘案すると,引用発明の「偏光板」を薄型化して設計する当業者が,「厚さ6μmの偏光子」や「厚さ3μmの偏光子」を採用することにより,相違点3に係る本件補正後発明の構成を具備したものとすることは,容易に発明をすることができたものである。

エ 相違点4(偏光板)について
以上ア?ウのとおり薄型化してなる「偏光板」は,「透過軸方向および吸収軸方向のうち,温度25℃超過,相対湿度50%超過の条件で偏光板がより多く収縮する方向に,温度25℃,相対湿度50%の条件で前記偏光板の収縮力が幅1mm当たり39kgf以下」となる。
(当合議体注:5kgf(第1の保護フィルムの収縮力)+5kgf(第2の保護フィルムの収縮力)+15kgf(偏光子の収縮力)=25kgfと計算される。)

(7) 発明の効果について
発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0009】には,「本発明の一実施状態は,収縮力の低い偏光板を用いることにより,偏光板に残留する力が少ないという長所がある。」と記載されている。
しかしながら,このような効果は,引用発明が具備する効果であるか,少なくとも,前記(6)で述べたとおり発明してなるものが奏する効果にすぎない。

(8) 請求人の主張について
ア 作製プロセス
請求人は,審判請求書12頁において,周知例2に記載された偏光子の作製プロセスは引用文献1に記載の作製プロセスとは明らかに異なることを理由にした,動機付けの欠如を主張する。
確かに,引用発明の製造方法は,ポリビニルアルコールフィルムの原反を延伸する方法によるものであるのに対し,周知例1(又は周知例2)のものは,基材フィルム上にポリビニルアルコール溶液を塗布・乾燥したものを延伸する方法によるものであり,製造方法が異なる。
しかしながら,本件優先日前の当業者は,偏光板を薄型化することに関心を寄せていたと認められるから,周知例1等を参考にすることができる。
あるいは,本件補正後発明の「偏光膜」の厚さは,「12μm以下」で良い(本件補正前の特許請求の範囲の【請求項10】に記載された要件(10μm以下)よりも,緩和されている。)。
ここで,偏光子の厚さが10μmを超えて良いのならば,例えば,特開2003-279748号公報の【0124】には厚さ11μmの偏光子が記載され,特開2013-97113号公報の【0049】には厚さ12μmの偏光子が記載され,周知である。そして,これら偏光子の厚さは,ポリビニルアルコールフィルムの原反を薄いもの(30μm)とすることにより得られたものである。また,引用発明においてポリビニルアルコールフィルムの原反の厚さを30μm程度まで薄くすることは,引用文献1の【0020】の下線部の記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。
(なお,厚さ12μmであっても,弾性率が22000N/mm^(2)を超えない限り,相違点3に係る本件補正後発明の収縮力の要件を満たす。)
請求人の主張は採用できない。

イ 選択発明
請求人は,上申書6頁において,本件補正後発明は,透明保護フィルムの厚さに関して引用文献1から予測することができない作用効果をもたらすものであり,引用発明に対する選択発明であると主張する。
しかしながら,本件出願の明細書において,発明の効果が確認された「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」は,23μmのCOPのみである。また,本件出願の明細書の【0069】には,「前記保護フィルムの厚さは薄ければ薄いほど基板が曲がる曲がり現象をより減らすことができる」と記載されており,本件補正後発明の「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」の厚さに関する数値範囲と整合しない。また,偏光板が吸収軸方向に曲がる場合においては,本件補正後発明の「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」の厚さであっても,発明の効果を達することができない。
本件補正後発明の「第1の保護フィルムの厚さ」及び「第2の保護フィルムの厚さ」は,本件優先日時点において入手可能であった,薄型の偏光板用保護フィルム製品の厚さを含むものであり,当業者が選択しうる厚さと異なるところがないから,これを選択発明ということはできない。
なお,偏光板に,温度,湿度変化に対する寸法安定性が求められることは,偏光板が表示装置の一部材であることからみて明らかである(引用文献1の【0079】の下線部の記載からも理解される事項である。)。
請求人の主張は採用できない。

(9) 小括
以上のとおりであるから,本件補正後発明は,本件優先日前に,周知技術を心得た当業者が,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,前記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり,決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項1?請求項12に係る発明は,本件補正前の(平成30年3月2日付け手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の請求項1?請求項12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は,前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本件優先日前に頒布された刊行物である特開2004-20830号公報(引用文献1)に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,あるいは,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,本件優先日前の当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は,前記「第2」[理由]2(2)及び(3)に記載したとおりである。

4 対比,判断
本願発明は,前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から,「偏光膜」,「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」の厚さに係る限定事項を削除したものである。
そうしてみると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「第2」[理由]2(4)?(9)に記載したとおり,当業者が,引用文献1に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,当業者が,引用文献1に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものである。

あるいは,本願発明は,「偏光膜」の厚さに関する限定事項を具備しないことを勘案すると,以下のとおり考えることもできる。
すなわち,引用発明の「偏光子」の厚さは,原反の厚さが75μmであること,及び延伸倍率が6倍であること,また,自由端一軸延伸においてはTD方向及び厚さ方向の寸法が同じ割合で減少すると考えられることを勘案すると,75μm÷√6≒30.6μm程度と認められる。また,引用発明の「偏光子」の弾性率は,引用文献1の【0061】に4100N/mm^(2)であると記載されているから,常温常湿における収縮力は,4100N/mm^(2)×0.102(kgf/mm^(2)への換算係数)×30.6×10^(-3)mm(フィルムの厚さ)≒13kgf/mmと計算される。
そうしてみると,本願発明との関係においては,前記「第2」[理由]2(6)ウの検討を要することなく,本願発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものといえる。

さらに進んで,本願発明が,「第1の保護フィルム」及び「第2の保護フィルム」の厚さに関する限定事項も具備しないことを勘案すると,以下のとおり考えることができる。
すなわち,引用発明の「トリアセチルセルロースフィルム」の厚さは不明であり,また,「トリアセチルセルロースフィルム」の引張弾性率は,千差万別である。
しかしながら,引用発明の「偏光板」は,加熱や加湿条件下での寸法変化がないものである(【0079】)から,「トリアセチルセルロースフィルム」の常温常圧での収縮力も,引用発明の「偏光膜」と同様に,極力小さいものが選択されているといえる(本願発明の収縮力の要件を満たす蓋然性が極めて高いといえる。)。
そうしてみると,引用発明の「偏光板」と本願発明は同一であるから,本願発明は,引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条1項3号に該当する発明であるから特許を受けることができない,あるいは,本願発明は,29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-03 
結審通知日 2019-09-10 
審決日 2019-09-24 
出願番号 特願2015-535593(P2015-535593)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 樋口 信宏
宮澤 浩
発明の名称 偏光板およびそれを含むディスプレイ装置  
代理人 龍華国際特許業務法人  
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