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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1359510
審判番号 不服2018-15479  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-22 
確定日 2020-02-05 
事件の表示 特願2016-503698「HF及び3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンを含む組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日国際公開、WO2014/147312、平成28年 7月 7日国内公表、特表2016-519703〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年2月24日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月20日(FR)フランス〕を国際出願日とする出願であって、
平成30年1月17日付けの拒絶理由通知に対し、平成30年4月23日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成30年7月11日付けの拒絶査定に対し、平成30年11月22日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、平成31年4月1日付けで上申書の提出がなされたものである。

第2 平成30年11月22日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成30年11月22日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.補正の内容
平成30年11月22日付け手続補正(以下「第2補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2における
「【請求項1】フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、及び1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物を含み、不均一共沸又は不均一共沸様である、共沸又は共沸様組成物。
【請求項2】フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、並びに、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-3,3,3-トリフルオロ-1-クロロプロペン、トリフルオロプロピン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン及び1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンから選択される一又は複数の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。」
との記載を、補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2における
「【請求項1】フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、及び1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物を含み、不均一共沸又は不均一共沸様である、共沸又は共沸様組成物(但し、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HFC-245cbを含む組成物、及び、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HCFC-244bbを含む組成物、を除く)。
【請求項2】フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、並びに、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-3,3,3-トリフルオロ-1-クロロプロペン、トリフルオロプロピン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン及び1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンから選択される一又は複数の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。」
との記載に改める補正を含むものである(なお、当審において一部の用語に「便宜上の下線」を付した。)。

なお、本願明細書の段落0012の次の記載(下線は当審が付した。)のとおり、上記補正後の請求項1に記載された「HFC-245cb」及び「HCFC-244bb」は、同請求項2に記載された「1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン」及び「2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン」と同義である。
「【0012】本発明による組成物は、頭文字が以下を表す、次の化合物に特に関する:
- HF:フッ化水素 …
- HFC-245cb:1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、又はCF_(3)-CF_(2)-CH_(3) …
- HCFO-1233xf:3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、又はCF_(3)-CCl=CH_(2) …
- HCFC-244bb:2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、又はCF_(3)-CFCl-CH_(3)」

2.補正の適否
(1)目的要件について
上記請求項1についての補正は、補正前の「共沸又は共沸様組成物。」との記載部分を、補正後の「共沸又は共沸様組成物(但し、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HFC-245cbを含む組成物、及び、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HCFC-244bbを含む組成物、を除く)。」との記載に改めることによって、実質上、補正前の請求項1の「1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物」の範囲から、HFC-245cb(1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン)とHCFC-244bb(2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン)の2種類の化合物の場合を「除く」ものである
他方、補正後の請求項1を引用する請求項2の記載は、上記「便宜上の下線」を付した記載箇所にあるように、補正後の請求項1で「除く」とされたHFC-245cb(1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン)とHCFC-244bb(2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン)とが、組成物に含まれ得る化合物の選択肢として記載されているので、補正後の請求項1の「HFC-245cb」と「HCFC-244bb」とを「除く」とした記載と、補正後の請求項2の「1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン」と「2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン」から選択される「一又は複数の化合物を含む」との記載との関係において、相互に矛盾した内容となっている。
してみると、第2補正、なかでも請求項2についてする補正は「補正後の特許請求の範囲の内容を不明確にする補正」というほかなく、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。
また、当該「補正後の特許請求の範囲の内容を不明確にする補正」が、平成30年7月11日付けの拒絶査定の備考欄の「(2)特許法第36条第6項第2号(明確性)を満たしていない。…1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンを含むのか否か、不明である。」との指摘を含む「拒絶の理由に示す事項」についてするものともいえないので、同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。
さらに、当該「補正後の特許請求の範囲の内容を不明確にする補正」が、同1号に掲げる「第36条第5項に規定する請求項の削除」ないし同3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当するとも認められない。
以上のとおりであるから、第2補正は、特許法第17条の2第5項の規定(目的要件)に違反していものと認められる。

(2)独立特許要件について
ア.補1発明及び補2発明
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1の記載に「(但し、…を除く)」との記載部分を追加する補正からなるものであるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とする補正に該当するものということができる。また、仮に、上記請求項2についてする補正についても同目的のものと善解した上で、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補1発明」という。)及び補正後の請求項1を引用する請求項2に記載されている事項により特定される発明(以下「補2発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について検討する。

イ.引用文献1及びその記載事項
本願の優先日(2013年3月20日)前の2012年9月13日に頒布された刊行物であって、原査定で「引用文献1」として引用された「国際公開第2012/121876号」には、和訳にして、次の記載がある。

摘記1a:請求項1
「1.フッ化水素、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、並びに1,1,2,3-テトラクロロプロペン及び1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンからなる群から選択される第3の成分から実質的に構成される3元の共沸混合物又は共沸混合物様の組成物。」

摘記1b:第2頁第7?11行
「本発明は、3元又は2元の共沸混合物及び共沸混合物様の組成物に関する。幾つかの態様においては、3元の共沸混合物及び共沸混合物様の組成物は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)、フッ化水素(HF)、及び1,1,2,3-テトラクロロプロペン(TCP)又は1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)のいずれかを含む。」

摘記1c:第17頁第1?5行
「実施例2 - HCFO-1233xf、TCP、及びHFの3元の共沸混合物又は共沸混合物様の組成物
3.0重量%のTCP、72.0重量%のHCFO-1233xf、及び25.0重量%のHFの混合物を21℃に保持した。この混合物は不均一共沸混合物を形成するので、蒸気相をサンプリングすることによって共沸組成を求めることができる。蒸気相中のHFをサンプリングして分析した。共沸組成は、21℃において14.0重量%のHFであると求められた。]

摘記1d:第18頁第1?7行
「実施例4 - HCFO-1233xf、HFC-245cb、及びHFの3元の共沸混合物又は共沸混合物様の組成物
67.5重量%のHCFO-1233xf、12.0重量%のHFC-245cb、及び20.5重量%のHFの混合物を21℃に保持した。この混合物は不均一共沸混合物を形成するので、蒸気相をサンプリングすることによって共沸組成を求めることができる。蒸気相中のHFをサンプリングして分析した。共沸組成は、24℃及び43psiaにおいて11.8重量%のHFであると求められた。」

ウ.引用文献1に記載された発明
(ア)実2発明
摘記1cの「実施例2…HCFO-1233xf、TCP、及びHFの3元の共沸混合物又は共沸混合物様の組成物…この混合物は不均一共沸混合物を形成する」との記載からみて、引用文献1には、
『不均一共沸混合物を形成する、HCFO-1233xf、TCP、及びHFの3元の共沸混合物又は共沸混合物様の組成物。』についての発明(以下「実2発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)実4発明
摘記1dの「実施例4…HCFO-1233xf、HFC-245cb、及びHFの3元の共沸混合物又は共沸混合物様の組成物…この混合物は不均一共沸混合物を形成する」との記載からみて、引用文献1には、
『不均一共沸混合物を形成する、HCFO-1233xf、HFC-245cb、及びHFの3元の共沸混合物又は共沸混合物様の組成物。』についての発明(以下「実4発明」という。)が記載されているといえる。

エ.補1発明の新規性について
補1発明と実2発明とを対比する。
実2発明の「HCFO-1233xf」は、引用文献1の第2頁(摘記1b)の「2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)」との記載、及び本願明細書の段落0012(摘示a)の「HCFO-1233xf:3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン」との記載からみて、補1発明の「3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン」に相当する。
実2発明の「TCP」は、引用文献1の第2頁(摘記1b)の「1,1,2,3-テトラクロロプロペン(TCP)」との記載〔及び、例えば、特表2012-509323号公報の段落0009の「1,1,2,3-テトラクロロプロペン(1230xa、CCl_(2)=CCl-CH_(2)Cl)」との記載〕からみて、補1発明の「1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物」に相当する。
実2発明の「HF」は、引用文献1の第2頁(摘記1b)の「フッ化水素(HF)」との記載、及び本願明細書の段落0012(摘示a)の「HF:フッ化水素」との記載からみて、補1発明の「フッ化水素」に相当する。
実2発明の「不均一共沸混合物を形成する…共沸混合物又は共沸混合物様の組成物」は、補1発明の「不均一共沸又は不均一共沸様である、共沸又は共沸様組成物」に相当する。
そして、実2発明の組成物は、補1発明において「但し、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HFC-245cbを含む組成物、及び、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HCFC-244bbを含む組成物、を除く」として除外されている組成物に該当するものではない。

してみると、補1発明と実2発明は『フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、及び1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物を含み、不均一共沸又は不均一共沸様である、共沸又は共沸様組成物。』という点において一致し、両者に相違する点はない。

したがって、補1発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

オ.補1発明の進歩性について
(ア)対比
補1発明と実4発明とを対比する。
実4発明の「HCFO-1233xf」は、引用文献1の第2頁(摘記1b)の「2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)」との記載、及び本願明細書の段落0012(摘示a)の「HCFO-1233xf:3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン」との記載からみて、補1発明の「3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン」に相当する。
実4発明の「HFC-245cb」は、引用文献1の第2頁(摘記1b)の「1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)」との記載、及び本願明細書の段落0012(摘示a)の「HFC-245cb:1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、又はCF_(3)-CF_(2)-CH_(3)」との記載からみて、補1発明の「1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物」に相当する。
実4発明の「HF」は、引用文献1の第2頁(摘記1b)の「フッ化水素(HF)」との記載、及び本願明細書の段落0012(摘示a)の「HF:フッ化水素」との記載からみて、補1発明の「フッ化水素」に相当する。
実4発明の「不均一共沸混合物を形成する…共沸混合物又は共沸混合物様の組成物」は、補1発明の「不均一共沸又は不均一共沸様である、共沸又は共沸様組成物」に相当する。

してみると、補1発明と実4発明は『フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、及び1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物を含み、不均一共沸又は不均一共沸様である、共沸又は共沸様組成物。』という点において一致し、次の(α)の点において相違する。

(α)補1発明は「但し、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HFC-245cbを含む組成物、及び、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HCFC-244bbを含む組成物、を除く」として、組成物の範囲から「HFC-245cbを含む組成物」を除外しているのに対して、実4発明は「HFC-245cbを含む組成物」である点。

(イ)判断
上記(α)の相違点について、引用文献1の請求項1(摘記1a)の「1,1,2,3-テトラクロロプロペン及び1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンからなる群から選択される第3の成分」との記載からみて、引用文献1には、その「第3の成分」として「1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)」の代わりに「1,1,2,3-テトラクロロプロペン(TCP)」を用いる場合も記載されているので、実4発明の「HFC-245cb」に代えて引用文献1の請求項1(摘記1a)及び第2頁(摘記1b)に記載された「1,1,2,3-テトラクロロプロペン(TCP)」という補1発明で「除く」とされていない「1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物」を用いる構成にしてみることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。
そして、引用文献1の第17頁(摘記1c)には、当該「1,1,2,3-テトラクロロプロペン(TCP)」を用いて「不均一共沸混合物を形成」する「共沸混合物又は共沸混合物様の組成物」が得られることが記載されているので、補1発明に格別予想外の効果があるとは認められない。
したがって、補1発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

カ.補2発明の明確性について
補正後の請求項1を引用する請求項2の記載は、補正後の請求項1の「HFC-245cb」と「HCFC-244bb」とを「除く」とした記載と、補正後の請求項2の「1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン」と「2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン」から選択される「一又は複数の化合物を含む」との記載との関係において、相互に矛盾した内容のものとなっているので、その特許を受けようとする発明が明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に適合しない。
したがって、補1発明は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものではないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

キ.補2発明の新規性について
補正後の請求項1を引用する請求項2の記載は、上記『カ.』に示したように不明確であり、補2発明と実4発明との対比を厳密には為し得ない。
しかして、補2発明は「フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、並びに、…1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン…から選択される一又は複数の化合物を含む…組成物。」に関するものであるから、その範囲に「フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HFC-245cbを含む組成物」が除かれずに含まれるものと解される。してみると、補2発明と実4発明とに相違する点はない。
したがって、補2発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

ク.審判請求人の主張について
平成30年11月22日付けの審判請求書の第3頁第8?20行、及び平成31年4月1日付けの上申書の第3頁第4?17行において、審判請求人は『本願明細書段落[0015]には、好ましくは、HF-HFCO-1233xf-HFC-245cb、HF-HFCO-1233xf-HCFC-244bbから本質的になる三元組成物は本発明から除外される旨の記載があります。…そして、上記の通り、旧請求項1の範囲から「フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HFC-245cbを含む組成物、及び、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HCFC-244bbを含む組成物」を除きました。この補正により、本願発明と引用文献1及び2との差異がより明確化されております。以上の通り、補正後の本願発明が引用文献1及び2に対して新規性及び進歩性を有することは明らかです。』との主張をしている。
しかしながら、補1発明は「HF-HCFO-1233xf-HFO-1230xa(1,1,2,3-テトラクロロプロペン)から本質的になる三元組成物」を除くものとして特定されていないので、補1発明が引用文献1に対して新規性を有するとはいえない。
また、補2発明は「フッ化水素、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン、並びに、…1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン…から選択される一又は複数の化合物を含む…組成物。」に関するものであるから、補2発明の範囲から「フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HFC-245cbを含む組成物、及び、フッ化水素と、3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンと、HCFC-244bbを含む組成物」が除かれているとはいえず、補2発明が引用文献1に対して新規性を有するとはいえない。
したがって、上記審判請求人の主張は採用できない。

3.まとめ
以上総括するに、第2補正は、目的要件違反があるという点において特許法第17条の2第5項の規定に違反してなされたものである。
また、第2補正は、独立特許要件違反があるという点において特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
このため、その余のことを検討するまでもなく、第2補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
第2補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に記載された発明(以下「本1発明」ともいう。)は、平成30年4月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は「この出願については、平成30年1月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。」というものである。
そして、平成29年9月4日付け拒絶理由通知書には、理由1として「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由が示されるとともに、その「記」には「●理由1、2について・請求項1-13・引用文献等1-3」との指摘がなされている。
また、原査定の備考欄には『(2)…先の拒絶理由通知書において示した…国際公開第2012/121876号…(以下…「引用文献1」…という。)には、…次の発明が記載されている。…18頁第3?5行には…「67.5重量%のHCFO-1233xf、12.0重量%のHFC-245cb、及び20.5重量%のHFの混合物を21℃に保持した。この混合物は不均一共沸混合物を形成する。」ことが記載されている…(3)ここで、本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比する。(ア)引用文献1の「HF」は、本願発明1の「フッ化水素」に相当する。(イ)引用文献1の「HCFO-1233xf」は、本願発明1の「3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペン」に相当する。(ウ)引用文献1の「HFC-245cb」は、本願発明1の「1から3個の炭素原子を含む一又は複数の(ヒドロ)ハロカーボン化合物」に相当する。(エ)引用文献1の「不均一共沸混合物」は、本願発明1の「不均一共沸又は不均一共沸様である、共沸又は共沸様組成物」に相当する。…(5)上記(3)の検討から、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明の発明特定事項の全てを有しており、両者に差異はない。』との指摘がなされている。

3.引用文献1及びその記載事項並びに引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記『第2 2.(2)イ.』の項に示したとおりであり、引用文献1には、前記『第2 2.(2)ウ.』の項に示したとおりの「実2発明」及び「実4発明」が記載されている。

4.対比・判断
(1)本1発明と実4発明との対比・判断
前記『第2 2(2)オ.』の項に示した理由において、その(α)の相違点は、本1発明と実4発明との対比において相違点を構成しないこととなる。
してみると、本1発明と実4発明とに相違する点はなく、本1発明は引用文献1に記載された発明である。

(2)本1発明と実2発明との対比・判断
前記『第2 2.(2)ア.』の項に示したように、補1発明は、本1発明の発明特定事項を限定的に減縮したものと解することができ、本1発明は、補1発明を包含するものと認められる。
してみると、前記『第2 2(2)エ.』の項に示したのと同様の理由により、本1発明と実2発明とに相違する点はなく、この点からみても、本1発明は引用文献1に記載された発明である。

5.むすび
以上のとおり、本1発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、原査定に誤りはなく、その余の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-30 
結審通知日 2019-09-10 
審決日 2019-09-24 
出願番号 特願2016-503698(P2016-503698)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09K)
P 1 8・ 121- Z (C09K)
P 1 8・ 537- Z (C09K)
P 1 8・ 113- Z (C09K)
P 1 8・ 572- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 邦久五十棲 毅  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 木村 敏康
蔵野 雅昭
発明の名称 HF及び3,3,3-トリフルオロ-2-クロロプロペンを含む組成物  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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