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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G06K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G06K 審判 全部申し立て 2項進歩性 G06K |
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管理番号 | 1359514 |
異議申立番号 | 異議2019-700024 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-01-17 |
確定日 | 2019-10-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6357919号発明「通信媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6357919号の請求項〔1-5〕を,訂正請求書に添付された訂正後の請求項〔1-5〕のとおり訂正することを認める。 特許第6357919号の請求項〔1-5〕に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6357919号の請求項1ないし請求項5に係る特許についての出願は,平成26年6月30日に出願され,平成30年6月29日にその特許権の設定登録がされ,平成30年7月18日に特許掲載公報が発行された。 その後,その特許について,平成31年1月17日に特許異議申立人 藤江桂子により特許異議の申立てがされ,当審は,平成31年4月4日に取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である令和元年6月5日に意見書の提出及び訂正の請求を行い,その訂正の請求に対して,特許異議申立人 藤江桂子は,令和元年7月22日に意見書を提出した。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は,以下のア,イ,ウのとおりである。 ア 請求項1に係る「虚部の値の範囲」を「虚部の値が前記ICチップに 供給される電力の変更によって変動する範囲内」に訂正する。 イ 請求項2に係る「実部の値の範囲」を「実部の値における目標値が有 する範囲」に訂正する。 ウ 請求項4に係る「実部の値の範囲」を「実部の値における目標値が有 する範囲内」に訂正する。 本件訂正請求は,一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 請求項1に係る訂正について 請求項1に係る訂正は,訂正前の請求項1における「虚部の値の範囲」が具体的にどのような範囲のことを特定するのかを明確にしようとするものである。また,当該訂正は,訂正前の請求項1における「第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値」と,「非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値」とが,どのような関係となっているのかを明確にしようとするものである。 よって,請求項1に係る「虚部の値の範囲」を「虚部の値が前記ICチップに供給される電力の変更によって変動する範囲内」に変更する訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。 なお,請求項1に係る訂正は,請求項1の「虚部の値の範囲」における「範囲」について,具体的な範囲を特定したものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。また,請求項1に係る訂正は,明細書の発明の詳細な説明の段落【0039】に基づき導き出される事項であるから,願書に添付した明細書,又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。 イ 請求項2に係る訂正について 請求項2に係る訂正は,訂正前の請求項2における「実部の値の範囲」が具体的にどのような範囲のことを特定するのかを明確にしようとするものである。 よって,請求項2に係る「実部の値の範囲」を「実部の値における目標値が有する範囲」に変更する訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 なお,請求項2に係る訂正は,請求項2の「実部の値の範囲」における「範囲」について,具体的な範囲を特定したものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。また,請求項2に係る訂正は,明細書の発明の詳細な説明の段落【0050】に基づき導き出される事項であるから,願書に添付した明細書,又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。 ウ 請求項4に係る訂正について 請求項4に係る訂正は,訂正前の請求項3における「実部の値の範囲」が具体的にどのような範囲のことを特定するのかを明確にしようとするものである。 よって,請求項4に係る「実部の値の範囲」を「実部の値における目標値が有する範囲内」に変更する訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 なお,請求項4に係る訂正は,請求項4の「実部の値の範囲」における「範囲」について,具体的な範囲を特定したものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。また,請求項4に係る訂正は,明細書の発明の詳細な説明の段落【0050】に基づき導き出される事項であるから,願書に添付した明細書,又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。 (3)小括 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1,2,及び4に係る発明(以下「本件発明1,2及び4」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1,2,及び4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 ア 本件発明1 「通信端子を有した非接触通信部、および、接触通信部を備えるICチップと、前記通信端子に接続された第1結合コイルとを備えるICモジュールであって、前記第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値が、前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値が前記ICチップに供給される電力の変更によって変動する範囲内に含まれる前記ICモジュールと、 前記第1結合コイルとの電磁結合が可能に前記第1結合コイルの外側に配置されて前記第1結合コイルよりも小さいインダクタンスを有する第2結合コイルと、前記第2結合コイルと直列に接続されたアンテナとを備えて前記ICモジュールが搭載された基体と、 を備える通信媒体。」 イ 本件発明2 「前記第1結合コイルのインピーダンスの実部の値は、前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの実部の値における目標値が有する範囲外である 請求項1記載の通信媒体。」 ウ 本件発明4 「前記通信端子から見て前記ICチップとは反対側であって、前記第1結合コイル、前記第2結合コイル、および、前記アンテナを含むインピーダンスの実部の値は、 前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの実部の値における目標値が有する範囲内に含まれ、かつ、前記非接触通信部の動作状態における通信周波数においてピークを有する周波数特性を有する 請求項1から3のいずれか1つに記載の通信媒体。」 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし請求項5に係る特許に対して,当審が平成31年4月4日に特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。 ア 訂正前の請求項1について 訂正前の請求項1には,「前記第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値が,前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値の範囲に含まれる」と記載されているが,当該記載における「虚部の値の範囲」とは,虚部の値のどのような「範囲」のことであるのかが特定されていないため,「虚部の値の範囲」とは,具体的にどのような「範囲」のことを特定しようとしているのかが不明確である。 すなわち,上記訂正前の請求項1における「虚部の値の範囲」とは,本件特許明細書の段落【0039】に記載されている「ICチップに供給される電力の変更によって変動する虚部の値の変動範囲」を特定しようとしているのか,あるいは他の事項を特定しようとしているのかが不明確である。 また,「第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値」及び「非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値」とは,それぞれ,例えばどのような値のことであり,「前記第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値が,前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値の範囲に含まれる」とは,どのような「第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値」と,どのような「非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値」とが,どのような関係となっていることを特定しようとしているのかも不明確である。 上記の点は,訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2?5についても同様である。 イ 訂正前の請求項2について 訂正前の請求項2には,「前記第1結合コイルのインピーダンスの実部の値は,前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの実部の値の範囲外である」と記載されているが,当該記載における「実部の値の範囲」とは,実部の値のどのような「範囲」のことであるのかが特定されていないため,「実部の値の範囲」とは,具体的にどのような「範囲」のことを特定しようとしているのかが不明確である。 すなわち,上記訂正前の請求項2の「実部の値の範囲」とは,本件特許明細書の段落【0050】に記載されている「実部の値の目標値の範囲」を特定しようとしているのか,あるいは他の事項を特定しようとしているのかが不明確である。 上記の点は,訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3?5についても同様である。 ウ 訂正前の請求項4について 訂正前の請求項4には,「前記通信端子から見て前記ICチップとは反対側であって,前記第1結合コイル,前記第2結合コイル,および,前記アンテナを含むインピーダンスの実部の値は,前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの実部の値の範囲に含まれ」と記載されているが,当該記載における「実部の値の範囲」とは,実部の値のどのような「範囲」のことであるのかが特定されていないため,「実部の値の範囲」とは,具体的にどのような「範囲」のことを特定しようとしているのかが不明確である。 すなわち,上記訂正前の請求項4の「実部の値の範囲」とは,本件特許明細書の段落【0050】に記載されている「実部の値の目標値の範囲」を特定しようとしているのか,あるいは他の事項を特定しようとしているのかが不明確である。 上記の点は,訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項5についても同様である。 エ したがって,訂正前の請求項1?5は明確でないから,請求項1?5に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)当審の判断 ア 本件発明1について 本件訂正によって,「虚部の値の範囲」が「虚部の値が前記ICチップに供給される電力の変更によって変動する範囲内」であることが特定され,また,当該訂正によって,「第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値の範囲」とは,「入力インピーダンスの虚部の値がICチップに供給される電力の変更によって変動する範囲」を下回るものでもなく,また,上回るものでもないことが明らかであるから,本件発明1は明確になったものと認められる。 イ 本件発明2について 本件訂正によって,「実部の値の範囲」が「実部の値における目標値が有する範囲」であることが特定されたことから,本件発明2は明確になったものと認められる。 ウ 本件発明4について 本件訂正によって,「実部の値の範囲」が「実部の値における目標値が有する範囲内」であることが特定されたことから,本件発明4は明確になったものと認められる。 エ 異議申立人の意見について (ア)「虚部の値」について a.特許異議申立人 藤江桂子は,意見書において,「「第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値」が正の値、「非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値」が負の値になることは技術常識であるから(本件特許明細書の段落83からも明白)、それらの一方が他方の範囲内に含まれることはありえず」と主張するが,虚部の値が絶対値で比較されることも当業者にとって技術常識であり,当該技術常識を参酌すれば,本件発明1の記載は明確であると認められることから,特許異議申立人の主張は認められない。 b.特許異議申立人 藤江桂子は,意見書において,「「電力の変更」の意味が不明確である」と主張するが,明細書の発明の詳細な説明の段落【0044】に, 「【0044】 なお、上述したように、通信端子4aにおける入力インピーダンスの虚部の値は、ICチップ3に供給される電力の変化などによって若干変動する。そこで、第1結合コイル4の有するインダクタンスは、ICチップ3の動作することの可能な最低限の電力がICチップ3に供給される際の入力インピーダンスの虚部の値であることが好ましい。こうしたインピーダンスの整合であれば、ICチップ3の動作することの可能な最低限の電力がICチップ3に供給される際に、その非接触通信に要する電力の消費が抑えられるため、ICカード1を用いた通信における省電力化がさらに図られる。」(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) と記載されるように,「電力の変更」とは,ICチップ3に供給される「電力の変化」を意味するものであると解され,明細書の発明の詳細な説明を参酌すれば,当業者にとって不明確なものであるとまではいえない。 (イ)「実部の値の範囲」について a.特許異議申立人 藤江桂子は,意見書において,「「目標値」の意味が不明確である」,及び「「目標値」が誰(何)によって、どの程度に設定されるのか、何らの説明もない」と主張するが,明細書の発明の詳細な説明の段落【0073】に, 「【0073】 通信端子4a以降におけるインピーダンスの実部の値の設定は、例えば、第2結合コイル8の巻線のターン数、線幅、線間ギャップ、開口面積、第1結合コイル4と第2結合コイル8との間の距離、第1結合コイル4と第2結合コイル8との間における磁気特性の設定によって実現される。また、こうした通信端子4a以降におけるインピーダンスの実部の設定は、例えば、アンテナ9における開口面積、外形、線幅、厚み、ターン数などの設定によっても実現される。」(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) と記載されるように,インピーダンスの実部の値の設定は,設計者によって適宜定めうるものであり,「実部の値における目標値」についても,実部の値の設定に応じて,設計者が適宜定めるものであると認められるから,特許異議申立人の主張は認められない。 オ 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合する。 したがって,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人 藤江桂子は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲に関し, ア 請求項1?5は,甲1及び周知技術に基づき容易想到 イ 請求項1?3は,甲1に記載されており,又は記載されているに等しい ウ 請求項1?5及び発明の詳細な説明は実施可能要件を満足しない 旨を主張する。しかしながら, (1)上記アについて 特許異議申立人 藤江桂子が,特許異議申立書において, 「[5]相違点(ii)について ア.本件第1発明は、第2結合コイルが第1結合コイルよりも小さいインダクタンスを有することを特定している。 イ.上述したように、本件第1発明は、発明の課題及び効果は、従来アンテナの回路定数となる多数の候補を少なくとも含む数多くの組み合わせの中から一つの組み合わせを見出すという作業が必要であったことから、第1結合コイルの設計に要する負荷を軽減することであって(段落6、20)、設計された回路定数自体が新しいわけではなく、第2結合コイルが第1結合コイルよりも小さいことも、第2結合コイルが第1結合コイルよりと同じである場合も、第2結合コイルが第1結合コイルよりも大きいことも、従来普通に用いられているものである。 例えば、甲5(特開2000-137779号公報)には、非接触で通信を行うICカードに関し、1次側のコイル34および2次側のブースター部20のコイル22によってアンテナが形成され、1次側のコイル34は2次側のコイル22の諸条件に応じて所望のインダクタンスに設計することが記載されている(段落51及び図1)。 ウ.よって、上記相違点(ii)は、当業者が適宜設計しうる程度の事項にすぎない。」 と主張しているが,甲第5号証(特開2000-137779号公報)(以下,「甲5」という。)の段落【0051】には, 「【0051】コイル34はICチップ32に接続されると共にコイル22と非接触に電磁結合されている。コイル34とコイル22は互いに密着又は微小ギャップにより近接して配置される。コイル34は非接触ICモジュール30における通信部として機能する。コイル34はコイル22に密接又は近接して配置されるので、その通信距離はブースター部20の(コイル22の)通信距離に比べて非常に小さい。両コイルの配置の例については後述する。コイル34は、コイル22との配置、実装面積、その他の条件に応じて所望の寸法、形状、自己インダクタンス、相互インダクタンスを有する。例えば、上から見た場合にコイルの形状は円形に限定されず、四角形、楕円形などとしてもよい。」(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) と記載されているに過ぎず,本件発明1の「第2結合コイルが第1結合コイルよりも小さいインダクタンスを有する」ことについて,甲5に記載も示唆もなされておらず,周知技術であるともいえない。 したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本件発明1は,当業者であっても,甲第1号証(国際公開第2013/073702号)に記載されている発明(以下,「甲1発明」という。)及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 (2)上記イについて 上記「(1)上記アについて」で検討したとおり,本件発明1は,甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえないから,本件発明1は,“甲1発明に記載されており,又は記載されているに等しい”とはいえない。 (3)上記ウについて 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0071】に, 「【0071】 第1結合コイル4の有するインピーダンスの虚部の値の設定は、例えば、第1結合コイル4における巻線のターン数、線幅、線間ギャップ、開口面積などの設定によって実現される。そして、こうした第1結合コイル4の有するインピーダンスの虚部の値の設定は、第2結合コイル8やアンテナ9の設計にかかわらず、ICモジュール5を最小単位として実現される。」(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) と記載されるように,「虚部の値の設定」は,第1結合コイル4における巻線のターン数,線幅,線間ギャップ,開口面積などの設定によって設計者が適宜設定しうるものであり,「虚部の値の範囲」についても,当該「虚部の値の設定」に応じて設計者が適宜定めうるものと認められるから,“本件の発明の詳細な説明には、本件発明1が、当業者が実施できる程度に記載されていない”とまではいえない。 6 むすび 以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 通信端子を有した非接触通信部、および、接触通信部を備えるICチップと、前記通信端子に接続された第1結合コイルとを備えるICモジュールであって、前記第1結合コイルのインピーダンスの虚部の値が、前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの虚部の値が前記ICチップに供給される電力の変更によって変動する範囲内に含まれる前記ICモジュールと、 前記第1結合コイルとの電磁結合が可能に前記第1結合コイルの外側に配置されて前記第1結合コイルよりも小さいインダクタンスを有する第2結合コイルと、前記第2結合コイルと直列に接続されたアンテナとを備えて前記ICモジュールが搭載された基体と、 を備える通信媒体。 【請求項2】 前記第1結合コイルのインピーダンスの実部の値は、前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの実部の値における目標値が有する範囲外である 請求項1記載の通信媒体。 【請求項3】 前記基体は、前記アンテナと前記第2結合コイルとに直列に接続された平行平板コンデンサをさらに備え、前記アンテナ、前記平行平板コンデンサ、および、前記第2結合コイルが閉回路を構成し、 前記閉回路における自己共振周波数は、前記非接触通信部の動作状態における通信周波数と等しい 請求項1または請求項2に記載の通信媒体。 【請求項4】 前記通信端子から見て前記ICチップとは反対側であって、前記第1結合コイル、前記第2結合コイル、および、前記アンテナを含むインピーダンスの実部の値は、 前記非接触通信部の動作状態における前記通信端子の入力インピーダンスの実部の値における目標値が有する範囲内に含まれ、かつ、前記非接触通信部の動作状態における通信周波数においてピークを有する周波数特性を有する 請求項1から3のいずれか1つに記載の通信媒体。 【請求項5】 前記第1結合コイルと前記第2結合コイルとの間に磁性体をさらに備える 請求項4記載の通信媒体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-10-15 |
出願番号 | 特願2014-133735(P2014-133735) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(G06K)
P 1 651・ 537- YAA (G06K) P 1 651・ 536- YAA (G06K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 梅沢 俊 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
松平 英 田中 秀人 |
登録日 | 2018-06-29 |
登録番号 | 特許第6357919号(P6357919) |
権利者 | 凸版印刷株式会社 |
発明の名称 | 通信媒体 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 恩田 誠 |