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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
令和1行ケ10067 審決取消請求事件 判例 特許
異議2019700557 審決 特許
異議2018701011 審決 特許
異議2019700058 審決 特許
無効2018800122 審決 特許

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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1359519
異議申立番号 異議2017-700311  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-27 
確定日 2019-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5997856号発明「経口用組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5997856号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第5997856号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由
第1 手続の経緯

特許第5997856号の請求項1、2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての特許出願(特願2016-025981号)は、平成25年3月26日(優先権主張 平成24年9月13日(以下「本件優先日という。」))を出願日とする特願2013-064545号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年4月9日に新たな特許出願とした特願2014-080461号の一部を、平成28年2月15日に新たな特許出願としたものであって、同年9月2日にその特許権の設定登録(請求項の数:2)がなされ、同年9月28日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許に対して1件の特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
平成29年 3月27日 :特許異議申立人 株式会社エヌ・エル・
エー(以下「異議申立人」という。)に
よる、請求項1、2(全請求項)に係る
本件特許に対する特許異議の申立て
平成29年 5月25日付け:手続中止通知
(異議申立人あて・特許権者あて)
平成31年 1月24日付け:手続中止解除通知
(異議申立人あて・特許権者あて)
令和 1年 5月28日付け:取消理由通知
(特許権者あて)
令和 1年 7月26日 :意見書及び訂正請求書の提出
(特許権者)
令和 1年 8月 5日付け:訂正請求があった旨の通知
(異議申立人あて)

なお、異議申立人は、令和1年8月5日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。

第2 訂正請求について

1 訂正の内容

令和1年7月26日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(訂正箇所に原文のとおり下線を付した。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記黒ショウガの乾燥粉末を」と記載されているのを、「前記黒ショウガの乾燥粉末の表面の全部を」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を」と記載されているのを、「前記黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の表面の全部を」に訂正する。

なお、訂正前の請求項1と2とは、両者の間に引用関係がなく、「一群の請求項」に該当しないから、本件訂正請求は、訂正事項1と2により、それぞれ訂正前の請求項1と2について「請求項ごと」に訂正を請求するものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の
拡張・変更の有無

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「黒ショウガの乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガの乾燥粉末を前記コート剤で被覆する」とされていたところ、コート剤による被覆の対象を、「黒ショウガの乾燥粉末」から、「黒ショウガの乾燥粉末の表面の全部」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項追加の有無

本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0014】には、「黒ショウガ成分を含有する粒子と、その表面の一部又は全部を被覆した油脂を含むコート層」と記載されており(下線は当審が付した。以下同じ。)、黒ショウガ成分を含有する粒子の表面の「全部」を、油脂を含むコート層で被覆する態様が示されている。そして、「黒ショウガ成分を含有する粒子」については、【0015】に「黒ショウガ成分を含有する粒子とは、黒ショウガに由来する成分を含む粒子のことを言い、黒ショウガに由来する成分を含み、かつ粉末化、粒子化、顆粒化等されていれば、黒ショウガの加工方法について特に制限はない。例えば、黒ショウガの乾燥粉末、黒ショウガ抽出物を粉末化したもの、黒ショウガ中の成分を任意の方法で分画して粉末化したもの等が該当する。」と記載されていることから、本件特許明細書には、黒ショウガの乾燥粉末の表面の「全部」を、油脂を含むコート層で被覆する態様が示されているといえる。
したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無

前記イ及びアで説示したとおり、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的

訂正事項2は、訂正前の請求項2において、「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウ抽出物の乾燥粉末を前記コート剤で被覆する」とされていたところ、コート剤による被覆の対象を、「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」から、「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の表面の全部」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項追加の有無

本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0014】には、「黒ショウガ成分を含有する粒子と、その表面の一部又は全部を被覆した油脂を含むコート層」と記載されており(下線は当審が付した。以下同じ。)、黒ショウガ成分を含有する粒子の表面の「全部」を、油脂を含むコート層で被覆する態様が示されている。そして、「黒ショウガ成分を含有する粒子」については、【0015】に「黒ショウガ成分を含有する粒子とは、黒ショウガに由来する成分を含む粒子のことを言い、黒ショウガに由来する成分を含み、かつ粉末化、粒子化、顆粒化等されていれば、黒ショウガの加工方法について特に制限はない。例えば、黒ショウガの乾燥粉末、黒ショウガ抽出物を粉末化したもの、黒ショウガ中の成分を任意の方法で分画して粉末化したもの等が該当する。」と記載され、【0017】に「上記黒ショウガ抽出物を粉末化したものとしては、例えば、黒ショウガの抽出物をそのままあるいは濃縮して、液状物、濃縮物、ペースト状で、あるいは、さらにこれらを乾燥した乾燥物の形状で用いることができる。乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥等の当業者が通常用いる方法により行われる。」と記載されているから、本件特許明細書には、黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の表面の「全部」を、油脂を含むコート層で被覆する態様が示されているといえる。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無

前記イ及びアで説示したとおり、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 独立特許要件について

訂正前の請求項1、2に係るすべての特許に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1、2に係る訂正事項1、2については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は課されない。

4 訂正請求についての小括

以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1、2は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、令和1年7月26日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。

第3 本件発明

本件訂正後の請求項1、2に係る発明は、令和1年7月26日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に対応して、それぞれ「本件発明1」等といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)。

「【請求項1】
黒ショウガの乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガの乾燥粉末の表面の全部を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。
【請求項2】
黒ショウガ抽出物の乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の表面の全部を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

本件訂正前の請求項1、2に係る本件特許に対して、当審が令和1年5月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

[取消理由1](サポート要件)
請求項1、2に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。



本件発明は、黒ショウガ成分を含有する粒子である「黒ショウガの乾燥粉末」又は「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」の表面の一部を、ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆する態様、すなわち、「黒ショウガの乾燥粉末」又は「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」の表面の僅かな部分を「油脂を含むコート剤」で被覆した態様も包含していると解されるところ、本件特許明細書の記載(ないし示唆)はもとより、本件出願当時の技術常識に照らしても、当業者は、そのような態様が本件発明の課題を解決できるとまでは認識することはできないというべきである。
よって、本件発明1、2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 取消理由(サポート要件)についての当審の判断

(1)検討の前提

特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以上のことを前提として、本件発明1、2に係る請求項1、2の記載が、サポート要件を満たすか否か、以下、検討する。

(2)本件特許明細書に記載された事項

本件特許明細書には、以下の摘記ア?キの事項が記載されている。下線は当審合議体が付した。

摘記ア
「【0001】
本発明は、黒ショウガ成分を含有する組成物に関する。
【0002】
黒ショウガは学名をケンプフェリア・パルビフローラ(Kaempferia parviflora)といい、黒ウコンあるいはクラチャイダムの別名を有する。東南アジアに分布し、ショウガ科(Zingiberaceae)ケンプフェリア(Kaempferia)属の植物の一種である。タイやラオス等の伝承医学においては健康食品として知られており、精力増進、滋養強壮等の効果があると言われている。
【0003】
黒ショウガに含まれる有効成分としては、セレン、アミノ酸のほか、例えば、クルクミンやポリフェノールがあり、これらが抗ガン作用や活性酸素除去作用を有するため、動脈硬化等を抑制する効果があると言われている。さらに、ポリフェノールの一種であるアントシアニンやアントシアニジンが豊富に含まれていることから、疲れ目、視力低下、眼精疲労等の低減にも効果があるとの報告や、同じくポリフェノールの一種のメトキシフラボノイドが、痛風や高尿酸血症の原因となる尿酸産生を抑える等の働きがあるとの報告がある(特許文献1)。
【0004】
ところで、一般に、人体にとって有用な機能成分が含まれる飲食品等の中には、腸管透過吸収が悪く、その本来の機能が十分発揮されないものも多い。そのため、こういった薬剤や機能性食品成分等の腸管透過吸収を安全に促進する物質が求められている。ポリフェノールを含有する素材においても、一般に摂取されたポリフェノールの生体内に取り込まれる量は極めて少ないことが知られている。特に、ポリフェノールの生体内への吸収の機序もポリフェノールの種類により様々で、カテキン、プロアントシアニジン、ケルセチン等の水溶性ポリフェノールは、特に人や動物の腸管から吸収されにくいという欠点があった。
【0005】
これらの吸収を促進するため、従来、例えば、プロアントシアニジン、アントシアニン、カテキン、フラボノイド等について、透過吸収を助ける吸収促進剤との併用が提案されている(特許文献2、3)。また、分子量の大きいプロアントシアニジンについて、生体の腸管から容易に吸収できる程度までに低分子化する方法が示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-236133号公報
【特許文献2】特開2008-174553号公報
【特許文献3】特開2006-151922号公報
【特許文献4】特開国際公開第2006/090830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記方法によっても、ポリフェノールの生体内への吸収性はいまだ十分なものとは言えなかった。また、植物由来のポリフェノールはその植物の種類によって構造や性質が大きく異なるため、他の植物由来のポリフェノールについて知られている吸収性の改善方法を、そのまま黒ショウガに転用することはできない。そして、黒ショウガ成分に含まれるポリフェノールについては、どのようなものが腸管透過吸収性を効果的に助けるのかは知られていなかった。
【0008】
本発明は、黒ショウガ成分を経口で摂取した場合においても、含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物を提供することを目的とする。」

摘記イ
「【0009】
本発明者らは、油脂を含むコート層で、上述の黒ショウガ成分含有コアの表面の一部又は全部を被覆することにより、意外にも、経口で摂取した場合においても、黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1)黒ショウガの乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガの乾燥粉末を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。
(2)黒ショウガ抽出物の乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、黒ショウガ成分を経口で摂取した場合にも、特に黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性を高めると共に、摂取前の黒ショウガ成分の酸化を防止して保存安定性も高め、摂取後の胃液等による変性を防止することができる。」
「【0014】
本発明の組成物は、黒ショウガ成分を含有する粒子と、その表面の一部又は全部を被覆した油脂を含むコート層と、を含む。本発明の組成物は、経口で摂取した場合においても、黒ショウガ成分の体内への吸収性が高い。そのため、黒ショウガ成分の有する作用を利用し、抗酸化作用、冷え症改善作用、体重増加軽減作用、内臓脂肪及び皮下脂肪重量低減作用等の効用を目的に使用することができる。」

摘記ウ
「【0015】
黒ショウガ成分を含有する粒子とは、黒ショウガに由来する成分を含む粒子のことを言い、黒ショウガに由来する成分を含み、かつ粉末化、粒子化、顆粒化等されていれば、黒ショウガの加工方法について特に制限はない。例えば、黒ショウガの乾燥粉末、黒ショウガ抽出物を粉末化したもの、黒ショウガ中の成分を任意の方法で分画して粉末化したもの等が該当する。また、この粒子は固体である必要は無く、リポソームやマイクロカプセル等液体でも良い。
【0016】
上記黒ショウガの乾燥粉末としては、例えば、洗浄後、スライスした黒ショウガを天日、あるいは乾燥機を用いて乾燥後、そのままあるいは適当な形状又は大きさに裁断して得た加工品を、粉砕装置を用いて粉砕することで得ることができる。粉砕装置としては通常使用されるものがひろく使用できるが、例えば、原料ホッパー、粉砕機、分級機及び製品ホルダー等から構成される粉砕機を用いることができる。
【0017】
上記黒ショウガ抽出物を粉末化したものとしては、例えば、黒ショウガの抽出物をそのままあるいは濃縮して、液状物、濃縮物、ペースト状で、あるいは、さらにこれらを乾燥した乾燥物の形状で用いることができる。乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥等の当業者が通常用いる方法により行われる。
【0018】
上記黒ショウガの抽出物は、黒ショウガ又はその加工物を適切な溶媒で抽出することによって得られる。抽出に使用される溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸メチル等の低級エステル、アセトン、及びこれらと水との混合物が挙げられる。中でも、本発明の組成物はヒトが摂取することを想定しているものであることから、エタノール単独又は水との混合物(いわゆる含水エタノール)、あるいは熱水を使用するのが好ましい。
【0019】
溶媒として混合物を使用する場合は、例えば、アセトン/水(2/8?8/2、体積比)混合物、エタノール/水(2/8?8/2、体積比)混合物等を用いることができる。エタノール/水の場合、黒ショウガの根茎に対して、その質量の2?20倍質量の溶媒を加え、室温又は加熱下で10分?48時間程度抽出するのが好ましい。
【0020】
また、黒ショウガを細切りしたものを95?100℃の温度で熱水抽出し、最高濃度に達した抽出液を濾過した後、噴霧乾燥する等の方法で抽出物を得ることも可能である。
【0021】
これら用いる抽出方法に特に制限はないが、安全性及び利便性の観点から、できるだけ緩やかな条件で行うことが好ましい。例えば、原料植物部位又はその乾燥物を粉砕、破砕又は細断し、これに2?20倍質量の溶媒を加え、0℃?溶媒の還流温度の範囲で10分?48時間、静置、振盪、撹拌あるいは還流等の任意の条件下にて抽出を行う。抽出作業後、濾過、遠心分離等の分離操作を行い、不溶物を除去する。これに、必要に応じて希釈、濃縮操作を行うことにより、抽出液を得る。さらに、不溶物についても同じ操作を繰り返して抽出し、その抽出液を先の抽出液と合わせて用いてもよい。これらの抽出物は、当業者が通常用いる精製方法により、さらに精製して使用してもよい。
・・・・
【0024】
黒ショウガ成分を含有する粒子の粒子径としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて粉末、粒子、顆粒等を適宜選択することができる。また、黒ショウガ成分を含有する粒子の粒度としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて粉末、粒子、顆粒等を適宜選択することができる。
【0025】
上記した黒ショウガ成分を含有する粒子を得るための黒ショウガの使用部位は樹皮、根、葉、又は枝等が使用し得る。なかでも、好ましいのは、根茎である。」

摘記エ
「【0028】
油脂の具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。例えば、大豆、米、ナタネ、カカオ、椰子、ごま、べにばな、パーム、棉、落花生、アボガド、カポック、ケシ、ごぼう、小麦、月見草、つばき、とうもろこし、ひまわり等から得られる一般的な植物性油脂及びこれらの硬化物及び牛、乳、豚、いわし、さば、さめ、さんま、たら等から得られる動物性油脂及びこれらの硬化物等が挙げられ、これらの油脂は1種又は2種以上の混合物が使用できる。
【0029】
コート剤には、リン脂質、ステロール類、ワックス類等が共存しても一向に差し支えない。コート剤の被膜性能向上のために、その他の可塑剤を用いることも望ましい。可塑剤として、中鎖トリグリセリド、グリセリン、遊離脂肪酸、蒸留酢酸モノグリセリド等が例示される。
【0030】
コート剤を構成する可塑剤として使用される物質は、特に限定されることなく、ツェイン、グルテン等の蛋白質、寒天、ジェランガム、カラギーナン等のゲル化剤等が例示される。これらを、1種単独で使用してもよいし、あるいは、2種以上を併用して使用してもよい。可塑剤の使用量に特に制限はなく、使用する油脂や芯材となる黒ショウガ成分を含有する粒子に応じて、適宜調整することができる。
【0031】
また、コート剤には、賦形剤が共存しても一向に差し支えない。賦形剤の使用量に特に制限はなく、使用する油脂や芯材となる黒ショウガ成分を含有する粒子に応じて、適宜調整することができる。
【0032】
コート剤による被覆は、特に限定されることなく公知の方法を適用することが可能である。例えば、油脂単独で、あるいは、上記の水難溶性を示す物質と油脂を混合後に、常温もしくは加温しながら、適切な溶媒に撹拌して溶解させてコーティング液を作成し、このコーティング液を黒ショウガ成分含有コアにノズル又はアトマイザー等の公知の噴霧器により吹き付けて行うことができる。このときの溶媒として、アルコール溶液、酢酸等の酸性溶液等が例示される。使用量は、油脂あるいは水難溶性を示す物質が溶解すればよく、特に限定されないが、通常、これらの物質が5?50重量%となるように調製したコーティング液を用いることができる。
【0033】
コート剤の被覆量は、油脂の含有量に応じて適宜調整することができ、特に制限されることはないが、黒ショウガ成分を含有する粒子100重量部に対し、1?50重量部とすることが好ましい。」

摘記オ
「【0034】
本発明の組成物の摂取方法、摂取量、摂取回数、摂取時期、及び摂取対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能である。前記摂取量としては、摂取対象個体の年齢、体重、体質等、様々な要因を考慮して適宜選択できる。・・・・。
【0035】
本発明の組成物は、主に経口用として用いるが、その形態としては、飲食品、製剤等を適宜選択することができる。前記飲食品としては、前記組成物をそのまま使用してもよく、単に水(精製水等)で溶解乃至分散して用いてもよい。
【0036】
また、前記組成物の効果を損なわない範囲内で、種々の栄養成分を加えて、食用に適した形態、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、液状、ペースト状、クリーム状、タブレット状、カプセル状、カプレット状、ソフトカプセル状、棒状、板状、ブロック状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、飴状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等に成形して食品素材として提供することもできる。
【0037】
これらの適用飲食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品、栄養補助食品等が挙げられる。
【0038】
本発明の飲食品に含まれる前記組成物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
さらに、製剤としては、薬理学的に許容される担体を含んでいてよく、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル等がある。カプセル化して、内臓にそのまま到達させる量を増やすことが好ましい。さらに、本発明の一剤は、錠剤、散剤、カプセル等の剤形状を有するもののほか、ドリンク剤、シロップ剤、ゼリーの形で供給され得る。
【0040】
カプセル剤の製造方法としては、内容物として本発明の組成物を用いること以外は、従来公知のソフトカプセルの製造方法に従えばよい。そのような製造法としては、カプセル皮膜シートを用いて、ロータリー式充填機で内容物を封入し、カプセル製剤を成型する方法、又は滴下法によりシームレスカプセルを製造する方法等が挙げられる。
【0041】
また、錠剤については、本発明の組成物に、適切な結合剤、賦形剤、崩壊剤及び必要に応じて滑沢剤を添加し、公知の打錠法により調製することができる。顆粒剤については、公知の各種湿式、乾式等の造粒法が適用でき、適切な結合剤及び賦形剤と共に成形する。さらに、ドリンク剤、シロップ剤、ゼリー等については、適切な糖、酸、香料等を添加して香味を調製し、公知の製法により調製することができる。
【0042】
本発明の組成物は、黒ショウガに含有される有効成分の奏する効果を利用した用途であれば、特に限定無く適用することができる。例えば、本発明の組成物を、主に経口で使用される食品、薬剤等であって、抗酸化作用、冷え症改善作用、体重増加軽減作用、内臓脂肪及び皮下脂肪重量低減作用等の効用を目的に使用することが可能である。」

摘記カ
「【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
(ポリフェノール吸収性増進効果)
被験物質の調製は以下のようにして行った。
【0045】
<実施例1>
パーム油でコートした黒ショウガの根茎の乾燥粉末(黒ショウガ原末)をコーン油と混合して150mg/mLに調製し、ボルテックスを用いて懸濁した。
【0046】
<実施例2>
黒ショウガ原末をナタネ油でコートした以外は、実施例1と同様にして被験物質を得た。
【0047】
<比較例1>
黒ショウガ原末をコーン油と混合して150mg/mLに調製し、ボルテックスを用いて懸濁した。
【0048】
上記被験物質を用いて、下記の要領にて経口で黒ショウガを摂取した際の投与1、4、8時間後(コントロールはブランクとして投与1時間後のみ)に採血して、血中の総ポリフェノール量を測定した。その結果を図1に示す。
【0049】
(1)実験動物及び飼育方法
6週齢のSD雄性ラットを用意し、5日以上の馴化期間をおいた後、実験に使用した。群分けは、試験直前にランダムに行った。馴化期間の飼料は、市販のMF固形飼料を自由摂取させた。また、試験当日は試験終了まで絶食のままとした。
【0050】
(2)被験物質の投与方法
16時間以上絶食した後、被験物質溶液を10mL/kgとなるように、ゾンデで強制経口投与した。表1に、採血時間、被験物質及びこれを投与した各群の個体数を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
(血清前処理方法)
Waters社製の固相抽出カートリッジHLB(60mg)にメタノール(5mL)、水(5mL)、0.1moL/L塩酸(1mL)を順次通液し、プレコンディショニングとした。つづいて、マウス血清1mLに水(1mL)、0.1moL/L塩酸(1mL)を加え混合し、前述のカートリッジへ通液し非吸着画分を廃棄した。さらに1.5moL/Lのギ酸水溶液(2mL)、メタノール水溶液(5体積%)(2mL)を通液し洗浄した。その後0.1%ギ酸メタノール(3mL)を通液し、溶出した画分を15mLの遠沈管に回収した。得られた画分を、遠心エバポレーター(加熱無し)で一晩減圧濃縮して完全に乾固し、そこに水(200μL)を加え超音波で溶解した。遠心分離後(15,000rpm、5分)、上澄を1.5mLエッペンに回収し、総ポリフェノール量測定の検体とした。
【0053】
(総ポリフェノール測定方法)
各検体100μLを1.5mLエッペンチューブに測り取り、10%(w/w)炭酸ナトリウム(100μL)を加えて10分放置した。さらにFolin-Ciocalteu試薬(100μL)を加え、1時間室温で発色させた。発色したサンプルを遠心分離(15,000rpm、5分)後、上清(200μL)を96-weLLマイクロプレートに移し、730nmの吸光度を測定した。定量用標準には、カテキン一水和物を用いた。250μg/mLの水溶液を調製し、それを適宜希釈して125、100、75、50、25、12.5μg/mLの標準溶液を調製した。これらを各検体と同様に処理し、測定結果から検量線を作成した。その結果を血清サンプルのデータに適用し、定量結果とした。
【0054】
図1から明らかなように、実施例1、2の油脂コートを行った黒ショウガ原末を摂取した群の血中ポリフェノール量は、いずれも黒ショウガ原末を摂取させたものに比べて高い値を示している。特に、ナタネ油でコートを行った実施例2は、血中にとりこまれるポリフェノール量が多く、また、それが長時間にわたり持続することが分かった。」
「【図1】


「【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る組成物摂取後の血中のポリフェノール量の経時変化を示す図である。」

摘記キ
「【0065】
(黒ショウガエキス粉末コート品の製造)
黒ショウガ500gを洗浄後、乾燥・粉砕し、エタノール中1000mLにて25℃で24時間撹拌抽出した。抽出液をろ過してろ液を得た後、エタノールを減圧留去し、濃縮物を得た。得られた濃縮物を凍結乾燥により乾固させ、黒ショウガエキス粉末を得た。得えられた黒ショウガエキス粉末をナタネ油にてコートし、黒ショウガエキス粉末コート品を得た。」

(3)本件発明の課題について

本件特許明細書の【0002】?【0007】には、黒ショウガには有効成分としてポリフェノールが含まれているが、ポリフェノールは腸管から吸収されにくく、その吸収促進のため、従来、吸収促進剤との併用や、腸管から容易に吸収できる程度まで低分子化する方法が提案されているものの、いまだ十分といえないことが記載されている。このことを踏まえ、特に【0008】の記載と本件請求項1、2の記載を併せみると、本件発明1、2の課題は、それぞれ、
「黒ショウガの乾燥粉末を経口で摂取した場合においても、含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物の製造方法を提供すること」
、及び、
「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を経口で摂取した場合においても、含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物の製造方法を提供すること」
であると認められる。
そこで、本件発明1、2の上記の課題を解決できると当業者が認識できるか否かという観点から、本件請求項1、2の記載と、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載との対応関係について、以下、検討する。

(4)本件発明1について

本件特許明細書の【0010】には、「(1)黒ショウガの乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガの乾燥粉末を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。」が記載されているところ、本件発明1は、前記本件訂正により、当該組成物の製造方法において、コート剤で被覆する黒ショウガの乾燥粉末について、その表面の「全部」を対象とする限定をしたものに該当する。
そして、【0045】及び【0046】には、黒ショウガ根茎の乾燥粉末をパーム油でコートしたもの(実施例1)、及び、同乾燥粉末をナタネ油でコートしたもの(実施例2)が記載され、これらとともに、【0047】に記載された、コートしていない黒ショウガ原末(比較例1)を、それぞれコーン油と混合して150mg/mLに調製し、ボルテックスを用いて懸濁したものを被験物質溶液とし、ポリフェノール吸収性増進効果について、ラットを用いて試験した方法及び結果が、【0048】?【0054】に記載されている。
当該試験は、上記実施例1、2と比較例1で調製した被検物質溶液を、16時間以上絶食したラットに、10mL/kgとなるようにゾンデで強制経口投与し、1、4、8時間後の血中ポリフェノール濃度を測定したものであって、その結果が【図1】に示されており、【0054】には、図1を参照して、実施例1、2の油脂コートを行った黒ショウガ原末を摂取した群の血中ポリフェノール量は、いずれも比較例1のコートしていない黒ショウガ原末を摂取させたものに比べて高い値を示したこと、特に、ナタネ油でコートを行った実施例2は、血中にとりこまれるポリフェノール量が多く、また、それが長時間にわたり持続したこと、が記載されている。
上記実施例1及び2の記載からは、黒ショウガ原末をパーム油又はナタネ油でコートした具体的な方法や被覆の程度が明らかでないが、【0032】には、コート剤を噴霧することにより、黒ショウガ成分含有コアをコート剤で被覆することが示されており、当該方法によれば、黒ショウガ原末の表面の全部をコート剤で被覆し得ると認められる。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、黒ショウガの乾燥粉末について、これを芯材とし、その表面の全部をパーム油あるいはナタネ油を含むコート剤により被覆した状態としたものは、被覆しない場合と比べて、経口摂取によりポリフェノール類をより効果的に体内に吸収することができる、ということを理解できるといえる。
そして、上記のとおり、本件訂正により、本件発明1は、コート剤で被覆する黒ショウガの乾燥粉末の表面の範囲が「全部」に限定され、その表面の僅かな部分を被覆する態様をも包含する「一部」を被覆する態様は除外されている。
したがって、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである。

(5)本件発明2について

本件特許明細書の【0010】には、「(2)黒ショウガ抽出物の乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。」が記載されているところ、本件発明2は、前記本件訂正により、当該組成物の製造方法において、コート剤で被覆する黒ショウガ抽出物の乾燥粉末について、その表面の「全部」を対象とする限定をしたものに該当する。
また、【0065】には、黒ショウガのエタノール抽出物の乾燥粉末の表面をナタネ油でコートした製造例が記載されており、具体的な試験データ等は示されていないが、黒ショウガのエタノール抽出物はポリフェノールを含むと推定されるから、その乾燥粉末をナタネ油でコートしたものは、前記(4)で確認した実施例2の黒ショウガ原末をナタネ油でコートしたものと同様に、当該乾燥粉末をコートしていないものと比べて、経口摂取によりポリフェノール類をより効果的に体内に吸収することができると推定され、このことは、前記(4)で確認した実施例1についての試験の結果を参照すると、コート剤に含まれる油脂をパーム油とした場合も、同様であるといえる。
そして、上記のとおり、本件訂正により、本件発明2は、コート剤で被覆する黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の表面の範囲が「全部」に限定され、その表面の僅かな部分を被覆する態様をも包含する「一部」を被覆する態様は除外されている。
したがって、本件発明2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである。

3 取消理由(サポート要件)についての小括

以上のとおり、本件発明1、2は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるから、本件請求項1、2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

第5 特許異議申立理由の概要及び証拠

異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1、2に係る本件特許を取り消すべき理由として、以下の1に示す(1)?(3)の申立ての理由を主張するとともに、証拠方法として以下の2に示す甲第1?46号証(以下、それぞれ番号順に「甲1」等ということがある。)を提出している。

1 異議申立人が主張する申立ての理由

異議申立人が主張する申立ての理由の概要は、以下のとおりのものと認められる。

(1)申立ての理由1(実施可能要件)
請求項1、2に係る本件特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立ての理由2(サポート要件)
請求項1、2に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立ての理由3(進歩性)
請求項1、2に係る本件発明は、甲1?3に記載された発明及び周知技術に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 異議申立人が提出した証拠(証拠方法)

甲第1号証 特開2009-67731号公報
甲第2号証 特開2011-236133号公報
甲第3号証 特開2001-316259号公報
甲第4号証 特開2009-46438号公報
甲第5号証 特開2009-1513号公報(審決注:甲第26号証と
同じ文献)
甲第6号証 食品素材の「ナノサイズ」カプセル化技術の開発、
オレオサイエンス、第8巻、第4号、2008年、
151?157頁
甲第7号証 食品の機能性を評価するために、JFRLニュース、
Vol.3、No.9、Nov.2009、1?4頁
甲第21号証 証明書-特許第5569848号における実施例の再現
実験(原出願審決取消訴訟の甲第21号証)
甲第22号証 試験計画書(原出願審決取消訴訟の甲第22号証)
甲第23号証 報告書-ラットを用いた血中ポリフェノール濃度測定試験
(原出願審決取消訴訟の甲第23号証)
甲第24号証 特開2008-174553号公報
(原出願審決取消訴訟の甲第24号証)
甲第25号証 特開2006-151922号公報
(原出願審決取消訴訟の甲第25号証)
甲第26号証 特開2009-1513号公報
(原出願審決取消訴訟の甲第26号証、審決注:甲第5号
証と同じ文献)
甲第27号証 ウェッブサイト・フリー百科事典「ウィキペディア」の
「ペイストリー」の項の画面
(原出願審決取消訴訟の甲第27号証)
甲第28号証 ウェッブサイト「クラチャイダムの魅力」の画面
(原出願審決取消訴訟の甲第28号証)
甲第29号証 ウェッブサイト「黒生姜ちゃんねる|黒生姜の口コミと
効能」の画面
(原出願審決取消訴訟の甲第29号証)
甲第30号証 ウェッブサイト「まるごと黒生生姜粒-伝承美容を化学
する*美的生活研究所」の画面
(原出願審決取消訴訟の甲第30号証)
甲第31号証 ウェッブサイト「がちゃ通信|中央クリエイト健康食品
事業部」の画面
(原出願審決取消訴訟の甲第31号証)
甲第32号証 特開2001-309763号公報
(原出願審決取消訴訟の甲第32号証)
甲第33号証 特開2005-58133号公報
(原出願審決取消訴訟の甲第33号証)
甲第34号証 特開2013-192513号公報
(原出願審決取消訴訟の甲第34号証)
甲第35号証 特開2015-29499号公報
(原出願審決取消訴訟の甲第35号証)
甲第36号証 原出願の審決取消訴訟における被告実験に対する意見書
(原出願審決取消訴訟の甲第36号証)
甲第37号証 原出願審決取消訴訟の乙第5号証
(原告試験に対する意見書)
甲第38号証 原出願審決取消訴訟の乙第6号証
(報告書 被験物質の調製)
甲第39号証 原出願審決取消訴訟の乙第7号証
(報告書 試験課題:被験物質強制経口投与後の経時的
血中ポリフェノール濃度測定)
甲第40号証 原出願審決取消訴訟の乙第10号証
(実施例説明書)
甲第41号証 原出願審決取消訴訟の乙第11号証
(再現実験に関する報告書)
甲第42号証 原出願審決取消訴訟の乙第22号証
(「甲23再現試験」に対する意見書)
甲第43号証 原出願の特許の無効審判(無効2015-800007)
の平成27年9月25日付け審決書
甲第44号証 原出願審決取消訴訟(平成27年(行ケ)第10231号
)の原告準備書面(1)
甲第45号証 原出願審決取消訴訟(平成27年(行ケ)第10231号
)の原告準備書面(4)
甲第46号証 原出願審決取消訴訟(平成27年(行ケ)第10231号
)の判決書

なお、異議申立人は、本件特許の原出願に係る特許(特許第5569848号)に対する無効審判事件(無効2015-800007号)の平成27年9月25日付け審決(1次審決)に対する取消訴訟(平成27年(行ケ)第10231号)(以下「原出願審決取消訴訟」という。)の証拠方法と、番号を整合させるため、甲第8?20号証を欠番とした。

第6 取消理由通知で採用しなかった申立ての理由について

前記第5の1に示した、異議申立人が申し立てている本件特許を取り消すべき理由のうち、取消理由通知では採用しなかった、申立ての理由1(実施可能要件)、申立ての理由3(進歩性)、及び、申立ての理由2(サポート要件)のうち前記第4で当審の判断を示したもの以外の理由について、以下、検討する。なお、事案に鑑み、申立ての理由2(サポート要件)から先に検討行う。

1 申立ての理由2(サポート要件)について

(1)異議申立人の主張の概要

特許異議申立書の記載からみて、異議申立人は、概要、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例1及び2並びに比較例1のいずれについても、黒ショウガ原末の量及びパーム油あるいはナタネ油の量が記載されておらず、「実現手段に係る技術事項」が記載されていないため、また、懸濁に用いたコーン油の影響が不明であることも含めて、本件発明の技術的課題である「黒ショウガに含まれるポリフェノール類の体内吸収性の向上」が解決されたことを裏付ける「黒ショウガに含まれるポリフェノール類の吸収量の有意差」という作用効果を認識できる記載もないため、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により実質的に裏付けられていない、と主張しているものと認められる。

(2)当審の判断

ア 本件発明1について

(ア)
前記第4の2(3)で認定したとおり、本件発明1の課題は、
「黒ショウガの乾燥粉末を経口で摂取した場合においても、含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物の製造方法を提供すること」
であると認められる。

(イ)
異議申立人は、本件特許明細書に記載された実施例1及び2並びに比較例1では、パーム油又はナタネ油でコートした或いはコートしない黒ショウガの根茎の乾燥粉末(黒ショウガ原末)を被験物質の調製に用いられているところ、有効成分の黒ショウガ原末の量及びコート剤に含まれるパーム油又はナタネ油の量が不明である旨を主張するので、以下、検討する。
本件特許明細書の【0045】及び【0047】の「・・・・をコーン油と混合して150mg/mLに調製し、ボルテックスを用いて懸濁した。」との記載、【0050】の「被験物質溶液を10mL/kgとなるように、ゾンデで強制経口投与した。」との記載、並びに、【0051】【表1】の「黒ショウガ(mg/kg)」の各欄の「1,500」との記載からみて、実施例1及び2並びに比較例1で調製された被験物質溶液においては、黒ショウガ原末の濃度が「150mg/mL」であったと理解することができ、ラットに経口投与された黒ショウガ原末の量は「1,500 mg/kg」であったと認められる。
そして、上記実施例1及び2の被験物質におけるパーム油及びナタネ油の量は不明であるものの、【0033】に「コート剤の被覆量は、油脂の含有量に応じて適宜調整することができ、特に制限されることはないが、黒ショウガ成分を含有する粒子100重量部に対し、1?50重量部とすることが好ましい。」と記載されているから、その範囲内の量であったと推定され、芯材の表面の全部がコート剤で被覆される場合には、相当程度の被覆量でコート剤が用いられることは、当業者が理解するところであるから、実施例において、コート剤の量の値が特定されていなくても、当業者は本件発明1の課題が解決できることを認識し得るといえる。

(ウ)
異議申立人は、実施例1及び2並びに比較例1では、パーム油又はナタネ油でコートした或いはコートしない黒ショウガ原末を、コーン油と混合して懸濁し、被験物質を調製しているところ、コーン油は「とうもろこし」から得られる油脂であリ、黒ショウガの成分であるポリフェノールの体内吸収性を高める可能性があるにも関わらず(【0028】を参照)、その影響について、本件特許明細書には何ら記載されていない旨も主張している。
しかしながら、仮に、コーン油がポリフェノールの体内吸収性を高める可能性があったとしても、実施例1及び2並びに比較例1のいずれの被験物質溶液においても、同様に黒ショウガ原末150mgに対して1mLの割合でコーン油が懸濁に用いられたものと認められ、その点の条件は揃っているから、仮にコーン油がポリフェノール吸収促進作用を有していたとしても、黒ショウガ原末をコートしていない比較例1と比較した、実施例1及び2の黒ショウガ原末をパーム油又はナタネ油でコートしたことに基づく効果について、当業者は確認することができるといえる。

(エ)
異議申立人は、ポリフェノール吸収性増進効果の試験結果を示したとされる【図1】の記載からは、パーム油又はナタネ油でコートした黒ショウガ原末を用いた被験物質(実施例1又は2)が、コートしない黒ショウガ原末を用いた被験物質(比較例1)と比較して、ポリフェノールの体内吸収量が有意的に多い、という事実を読み取ることはできない旨も主張している。
しかしながら、【図1】の記載から、実施例1又は実施例2では、比較例1よりも、明らかに血中ポリフェノール量が多い(ピーク値では、実施例1は比較例1の2倍超、実施例2は比較例1の6倍超である)ことが読み取れるから、それぞれのポリフェノールの体内吸収量の総量及び有意差の具体的な数値が示されていなくても、当業者は本件発明の効果を明確に把握できるといえる。

(オ)
なお、異議申立人は、原出願審決取消訴訟で提出された、原出願に係る特許の明細書に記載された実施例1及び2の再現実験の結果を、本件特許異議申立てにおいても提出し(甲23)、黒ショウガ原末をナタネ油やパーム油を含むコート剤で被覆してもポリフェノールの体内吸収量は高まらない旨も主張している。
しかしながら、甲38及び甲39(原出願審決取消訴訟で被告(本件特許権者)が提出した乙第6号証及び乙第7号証)によれば、甲23再現実験における被覆方法では、コート液の噴霧によって、黒ショウガが飛び散ったり容器外にコート液が漏れたりする可能性があり、パーム油やナタネ油による被覆が、黒ショウガ原末の一部にとどまっていた可能性があると認められるから、異議申立人による上記再現実験の結果は、本件特許明細書に記載された実験の結果を否定するものとはいえない。

イ 本件発明2について

前記第4の2(3)で認定したとおり、本件発明2の課題は、
「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を経口で摂取した場合においても、含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物の製造方法を提供すること」
であると認められる。
そして、前記第4の2(5)で説示したとおり、実施例1及び2並びに比較例1についての試験結果からみて、本件発明2の態様に係る黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の表面の全部をナタネ油あるいはパーム油でコートしたものも、当該乾燥粉末をコートしないものと比べて、経口摂取によりポリフェノール類をより効果的に体内に吸収することができると推定されるところ、当該試験の記載の不備等を指摘する異議申立人の主張が採用できないことは、前記ア(イ)?(オ)で説示したとおりであるから、当業者は本件発明2の課題が解決できることを認識し得るといえる。

(3)申立ての理由1(サポート要件)についての小括

以上のとおり、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるから、本件請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

2 申立ての理由1(実施可能要件)について

(1)異議申立人の主張の概要

異議申立人は、申立ての理由1(実施可能要件)について、申立ての理由2(サポート要件)と併せて一体的に主張しており、その概要は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例1及び実施例2並びに比較例1のいずれについても、黒ショウガ原末の量とパーム油あるいはナタネ油の量が記載されておらず、「実現手段に係る技術事項」が記載されていないため、また、懸濁に用いたコーン油の影響が不明であることも含めて、本件発明の技術的課題である「黒ショウガに含まれるポリフェノール類の体内吸収性の向上」が解決されたことを裏付ける「黒ショウガに含まれるポリフェノール類の吸収量の有意差」という作用効果を認識できる記載もないため、本件発明を実施するのに過度の試行錯誤を当業者に強いるものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない、というものであると認められる。

(2)当審の判断

ア 検討の前提

特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載が適合するものでなければならない要件として、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」(いわゆる「実施可能要件」。)を規定している。
そして、この規定にいう「実施」とは、物を生産する方法の発明においては、その方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうものであるから(特許法第2条第3項第3号)、物を生産する方法の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る方法により物を生産することができ、かつ、生産された物の使用をすることができる程度のものでなければならない。
以上のことを前提として、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件発明1及び2について実施可能要件を満たすか否か、以下、検討する。

イ 本件発明1について

本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の経口用組成物の製造方法において被覆の対象とされる黒ショウガの乾燥粉末について、その製造方法(【0016】)、粒子の加工方法(【0022】)、粒子径(【0024】)、粒子を得るための黒ショウガの使用部位(【0025】)等の説明が記載されているから、当業者は、これらの記載に基いて、原料である黒ショウガの乾燥粉末を製造することができるといえる。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、コート剤に含まれる成分(【0028】?【0031】)、噴霧器での吹き付けを含むコート剤による被覆方法及び被覆量(【0032】)も記載されており、被覆の対象に十分な量のコート剤を十分に接触させることにより、当該被覆の対象の表面の全部がコート剤で被覆されることは当然であるところ、表面の全部がコート剤で被覆されるようなコート剤の量や接触形態は、単純にコート剤の量を増やし、まんべんなく接触するようにすれば実現可能なものであるから、本件特許明細書の上記記載に接した当業者は、過度の試行錯誤を経ることなく、芯材である黒ショウガの乾燥粉末の表面の全部を被覆することができるといえる。
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の製造方法によって得られる経口用組成物を飲食品や製剤等として使用する態様が詳細に記載されている(【0034】?【0042】)。
そして、実施例1及び2並びに比較例1についての試験の記載の不備等を指摘する異議申立人の主張が採用できないことは、前記1(2)ア(イ)?(オ)で説示したとおりであるから、本件発明1を実施するのに過度の試行錯誤を当業者に強いるものとはいえない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者は、本件発明1の製造方法により、経口用組成物を製造し、それを使用することができるといえる。

ウ 本件発明2について

本件発明2は、コート剤による被覆の対象を、「黒ショウガの乾燥粉末」に代えて「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」とした点でのみ、本件発明1とは異なっているところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、前記イ(ア)で指摘した事項に加えて、黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の製造方法も詳細に記載されているから(【0017】?【0022】)、当業者は、これらの記載に基づいて、原料の黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を製造できるといえる。
そうすると、上記イにおいて本件発明1について説示したのと同様の理由により、本件発明2についても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者は、本件発明2の製造方法により、経口用組成物を製造し、それを使用することができるといえる。

(3)申立ての理由1(実施可能要件)についての小括

以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、その記載及び本件特許の出願当時の技術常識に基づき、当業者が、本件発明1、2に係る方法により物を製造することができ、かつ、製造された物を使用することができる程度に、明確かつ十分に記載したものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。

3 申立ての理由3(進歩性)について

(1)異議申立人の主張の要点

特許異議申立書の記載からみて、異議申立人は、概略、本件発明1、2は、主引例とする甲3に記載された発明(茶ポリフェノール顆粒子を芯材として、その表面の一部又は全部を、ナタネ油やパーム油を含むコート剤にて被覆した組成物)に、副引例とする甲1又は2に記載された事項(黒ショウガ(又はその抽出物)の乾燥粉末)を適用することによって、同一の発明を構成することができ、その組み合わせの動機付けが、甲4?7、28?35に記載された周知技術(ポリフェノールの経口摂取時の吸収性を改善する技術が多数知られていたこと、黒ショウガがポリフェノールを含有すること、ポリフェノールは特異な苦みや渋みを有しており、黒ショウガが有する根茎特有の渋みや苦みは含有するポリフェノールに起因すること、等)を参照すれば存在しており、顕著な効果も認められないから、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張しているものと認められる。

(2)甲号証の記載事項

前記第5の2に列記した異議申立人が証拠方法として提出した各甲号証のうち、異議申立人が主引例及び副引例とする甲1?3について、記載事項を摘記し、異議申立人が周知例とする他の甲号証については、申立ての理由3の判断に必要な事項の概要を示す。下線は当審合議体が付した。

なお、甲28?31は、いずれもウェブサイトに掲載された記事の写しであるが、作成日や掲載日(公開日)等が明記されておらず、その内容が本件優先日前にウェブ上で公開されていたこと又は当業者に知られていたことを示す的確な証拠もない。また、甲34?35は、いずれも本件優先日よりも後に公開された公開特許公報であって、その内容が本件優先日前に知られていたことを示す的確な証拠もない。そのため、甲28?31、34?35については、本件優先日当時の技術常識を示すものとして採用できない。

ア 甲1の記載事項

本件優先日前(平成21年4月2日)に頒布された刊行物である甲1(特開2009-67731号公報)には、以下の事項が記載されている。

摘記甲1-1
「【請求項1】
黒生姜根茎加工物を含むことを特徴とする冷え性改善用組成物。
【請求項2】
黒生姜根茎の抽出物、黒生姜搾汁液及び黒生姜搾汁液の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有することを特徴とする冷え性改善用組成物。
・・・・
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷え性改善用組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の冷え性改善用組成物を含有することを特徴とする医薬部外品。
【請求項7】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の冷え性改善用組成物を含有することを特徴とする医薬品。」
「【0001】
本発明は、黒生姜(Kaempferia parviflora)の生の根茎及びこの絞り汁、これらの乾燥物、乾燥物の粉砕物及びこれらの抽出物からなる群から少なくとも1つを、有効成分として含有することを特徴とする冷え性改善用組成物に関する。」

摘記甲1-2
「【0013】
黒生姜(K.Parviflora)は東南アジアに自生するショウガ科、バンウコン属の植物で、精力増進、滋養強壮、血糖値の低下、体力回復、消化器系の改善、膣帯下、痔核、痔疾、むかつき、口内炎、関節痛、胃痛の改善などの報告がある。黒生姜は、長期にわたり人間に摂取されてきた実績のある天然植物あって、仮に大量に摂取したとしても強い副作用を誘発するおそれがなく、安全性が高い。また、黒生姜は風味に関して難点が少なく、同様に性状についても難点が少ない。そのため、当該組成物は、実用性が高く、飲食品、医薬部外品、医薬品等に幅広く使用することができる。・・・・。」

摘記甲1-3
「【0034】
抽出物及びその画分はこのままで使用することも可能であるが、必要に応じて噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用することも可能である。」

摘記甲1-4
「【0041】
本発明における医薬部外品及び医薬品とは、経口投与に適した性状を有し、通法に従って経口製剤として調製されたものをいい、経口固形製剤や経口液状製剤いう。」

摘記甲1-5
「【実施例】
【0045】
・・・・
【0047】
試験は、乾燥黒生姜を滅菌し80メッシュ以下に粉砕したもの330mgをゼラチンカプセルに充填し、これを3カプセル、黒生姜乾燥粉末として約1g相当を、25℃に調整した温水100mlで服用した。・・・・。」

イ 甲2の記載事項

本件優先日前(平成23年11月24日)に頒布された刊行物である甲2(特開2011-236133号公報)には、以下の事項が記載されている。

摘記甲2-1
「【請求項1】
黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物及び/又は乾燥粉末を含有することを特徴とするキサンチンオキシダーゼ阻害剤。」

摘記甲2-2
「【0002】
ショウガ科(Zingiberaceae)ケンプフェリア(Kaempferia)属の植物の一種である黒ウコン(Kaempferia parviflora)は別名黒ショウガ又はクラチャイダムとも呼ばれており、東南アジアに分布している。
黒ウコンにはクルクミンやポリフェノールが含まれており、これらが抗ガン作用や活性酸素除去作用を有するため、動脈硬化等を抑制する効果があると言われている。
また、アントシアニジンも豊富に含まれており、疲れ目、視力低下、眼精疲労等の低減に効果があることが報告されている。加えて、黒ウコンの抽出物が冷え性を改善することも報告されている。
・・・・。」

摘記甲2-3
「【0031】
黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物や乾燥粉末は、直接、飲食品類に調製することができる。また、抽出物や乾燥粉末を化粧料組成物あるいは医薬組成物として化粧品類、医薬品類に調製することができる。更に、飲食品類、化粧品類、医薬品類の添加剤もしくは配合剤として使用してもよく、通常用いられる添加剤又は配合剤に混合して用いてもよい。」

摘記甲2-4
「【0038】
黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物あるいは乾燥粉末を医薬組成物とし、その医薬組成物を配合させる医薬品としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、エキス剤等の経口医薬品、軟膏、眼軟膏、ローション、クリーム、貼付剤、坐剤、点眼薬、点鼻薬、注射剤等の非経口医薬品が挙げられ、これらの医薬品類に該抽出物及び/又は乾燥粉末を適量含有させて提供することができる。
・・・・。」

摘記甲2-5
「【実施例】
【0040】
・・・・
【0041】
ショウガ科(Zingiberaceae)の植物から得られる抽出物について、キサンチンオキシダーゼ阻害活性、5α-レダクターゼ阻害活性の有無を試験した。
黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物を実施例とし、抽出部位として根茎を用いた。・・・・。
【0042】
先ず、キサンチンオキシダーゼ阻害試験について以下に示す。・・・・。
【0043】
<抽出及び被検体液の調製>
(実施例1)
黒ウコン(Kaempferia parviflora)の根茎を粉砕した粉砕物1000gを70%メタノール(7000mL)により2時間加熱抽出を行った。この抽出操作は2回行った。
得られた全ろ液を減圧濃縮して抽出物89gを得た。
抽出物を、1%ジメチルスルホキシド(DMSO)含有の0.1Mリン酸緩衝液に溶解した。尚、被検体液として抽出物濃度20μg/mL、50μg/mL、200μg/mL、500μg/mLの4種を調製した。
・・・・
【0046】
<キサンチンオキシダーゼ阻害試験方法>
・・・・
この245μMキサンチン/0.1%Tw-PBS液、800μLに、上記した実施例1又は比較例1,2の被検体液100μLを添加し、25℃にて10分間プレインキュベーションを行った。2units/mLのキサンチンオキシダーゼ/Tw-PBSを10μL加え、25℃で3分間反応させた。更に、1NのHCl(100μL)を加えて反応を停止させた。得られた反応液をろ過し(0.45μmクロマトディスク,ジーエルサイエンス(株)社製)、ろ液を得た。
・・・・
【0052】
実施例1、比較例1、2のキサンチンオキシダーゼ阻害試験結果を表2に示す。・・・・。
・・・・
【0054】
表2より、実施例1において20μg/mLや50μg/mLの低濃度でもキサンチンオキシダーゼ阻害活性が認められ、200μg/mLにおいて有意な差が確認された。また、濃度依存的に阻害率が向上することがわかった。
・・・・。」

摘記甲2-6
「【0063】
黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物が、キサンチンオキシダーゼ阻害活性及び5α-レダクターゼ阻害活性を有することが上記試験より明らかとなった。
更に、キサンチンオキシダーゼと5α-レダクターゼの両酵素を阻害する有効成分を特定するために、黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物に対して以下の試験を行った。
【0064】
図1に示すクロマトグラムにおいて、有効成分と考えられる化合物に由来する10本のピークが確認された。保持時間の短いもの(時間軸左側)からAとし、最も長いもの(時間軸右側)をJとする。」

摘記甲2-7
「【0065】
<溶出画分のキサンチンオキシダーゼ阻害活性>
実施例1で得られた抽出物をカラム(合成吸着樹脂、ダイアイオン(登録商標)HP-20、三菱化学社製)に通し、水溶出画分(画分1)、50%メタノール溶出画分(画分2)、80%メタノール溶出画分(画分3)の夫々の画分を得た。
・・・・
【0067】
表4より、画分1の50μg/mLにおいてのみキサンチンオキシダーゼ阻害活性が認められなかったが、画分1の200μg/mLと画分2,3のいずれにおいてもキサンチンオキシダーゼ阻害活性が認められた。その中で、画分3のキサンチンオキシダーゼ阻害率が高いことがわかった。」

摘記甲2-8
「【0068】
上記画分3について、図1のピークA?Jの夫々の成分を単離した。
【0069】
<ピークC,G,H成分の単離>
図1のピークC,G,H、つまり、5,7-ジメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンをカラムクロマトグラフィーにより単離した。
・・・・。
【0070】
<ピークA、B、D?F、I、J成分の単離>
図1のピークA、B、D?F、I、Jに相当する夫々の成分を逆相系HPLCにより単離した。溶出はステップグラジエントにより行なった。・・・・。
・・・・
【0075】
図1のピークA?C、G、Hの化合物の構造式を下記(化4)?(化8)に示す。ピークAは、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、ピークBは、3,5,7,6,4-ペンタメトキシフラボン、ピークCは、5,7-ジヒドロキシフラボン、ピークGは、5-ヒドロキシ-3,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、ピークHは、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンである。
・・・・」

摘記甲2-9
「【0081】
図1のピークA?C,G,H(上記(化4)?(化8))、及び図1のピークD?F、I、Jの化合物について、単離した夫々の化合物を含む各画分に対してキサンチンオキシダーゼ阻害試験を行った。
試験方法は前述の実施例と同様とし、また、陰性対照及び陽性対照も前述のキサンチンオキシダーゼ阻害試験と同様とした。・・・・。
ピークC、G、Hの化合物についての結果を表7、ピークA、B、E、F、I、Jの化合物についての結果を表8に示す。・・・・。
・・・・
【0084】
表7より、図1のピークC、つまり5,7-ジメトキシフラボンに高いキサンチンオキシダーゼ阻害活性が確認された。
表8より、図1のピークA、B、つまり5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,6,4-ペンタメトキシフラボンに高いキサンチンオキシダーゼ阻害活性が確認された。
以上の結果より、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,6,4-ペンタメトキシフラボンがキサンチンオキシダーゼ阻害作用の有効成分であることが示唆された。従って、黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物において、キサンチンオキシダーゼ阻害活性を有する化合物、即ち、有効成分はメトキシフラボンであることが示唆された。」

ウ 甲3の記載事項

本件優先日前(平成13年11月13日)に頒布された刊行物である甲3(特開2001-316259号公報)には、以下の事項が記載されている。

摘記甲3-1
「【請求項1】
ポリフェノール類を、多価アルコール脂肪酸エステルを含有する油脂中で微細化する第1工程と、第1工程で得られた該微細化されたポリフェノール類を含有する油脂を、多価アルコール脂肪酸エステルの存在下で水中油滴型に乳化する第2工程により得られるポリフェノール類製剤。」

摘記甲3-2
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェノール類を、生理活性成分として含有する製剤、及び当該製剤を含有することを特徴とする食品に関するものである。」

摘記甲3-3
「【0002】
【従来の技術】
ポリフェノール類は特異な生理作用により食品の生理機能付加・増強又は酸化防止剤等に利用される他、医薬品、化粧品、飼料等広範な分野での応用が期待されている。特に近年のポリフェノール類の研究成果は目覚しく、ポリフェノール類の抗酸化作用に由来する発ガン予防、老化防止作用の他、血中LDL低下作用、血圧上昇抑制作用、整腸作用、殺菌・抗菌作用、脱臭作用等が報告されている。しかしながら、ポリフェノール類は特異な苦味・渋味を有するため食品用途での利用に制限を受けること及び酸化、熱、光に対して変色しやすく不安定であるという欠点を有する。
【0003】
ポリフェノール類の安定化法としては、アルコール性水酸基を2つ以上持つ化合物を配合することによってポリフェノール類の変色を抑制する方法(・・・・)、植物ポリフェノール類を塩化セバコイル、塩化スクシニル、塩化アジポイル等の架橋剤によって架橋し、それをベースとしたマイクロカプセルを調製する方法(・・・・)等が提案されている。しかし、前者の方法によって調製される組成物は、ポリフェノール類が遊離で溶存した状態にあり、ポリフェノール類に由来する強烈な渋味・苦味を有し、食品用途での利用に制限を受ける。また、後者の方法では、組成物の安定性は向上するもののマイクロカプセル自体がポリフェノール架橋物によって構成されているため、ポリフェノール類に由来する渋味・苦味の低減がされておらず、加えて架橋剤として用いる化合物については食品衛生法上制限を受ける等の欠点を有する。」

摘記甲3-4
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリフェノール類を長期間安定に保ち、且つ呈味性、生体吸収性の優れた水系分散可能なポリフェノール類製剤を提供する事にある。」

摘記甲3-5
「【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、ポリフェノール類の固体粒子を多価アルコール脂肪酸エステルを含有する油脂中で微細化する第1工程と、第1工程で得られた該微細化されたポリフェノール類を含有する油脂を多価アルコール脂肪酸エステルの存在下で水中油滴型に乳化する第2工程の処理より、ポリフェノール類特有の渋味・苦味がマスキングされ、且つ優れた安定性が付与されると同時に、従来にない優れた生体吸収性及び生体利用性を有すること、更には本発明ポリフェノール類製剤を含有する食品についても改善がされることを発見し、本発明を完成するに至った。」

摘記甲3-6
「【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリフェノール類は人体に摂取可能なものであれば特に限定するものではく、フラボン、フラボノール、フラバノン、イソフラボン、アントシアニン、フラバノール等のフラボノイド類、その他の非フラボノイド類、及びこれらの誘導体、重合体等、更に前記化合物を含有する植物体及び該植物体抽出物等何れを使用しても差し支えないが、好ましくは油脂に不溶の固体で且つ物理的破砕によってレーザー回折型粒度分布測定機による平均粒径が3μm以下の微粒子とすることができる性質のものが良い。ポリフェノール類の具体例を以下に示すがこれらに限定するものではない。
【0008】
ポリフェノール類の具体例として、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、タンニン酸、ガロタンニン、エラジタンニン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ゲンチシン酸、ホモゲンチシン酸、没食子酸、エラグ酸、ロズマリン酸、ルチン、クエルセチン、クエルセタギン、クエルセタゲチン、ゴシペチン、アントシアニン、ロイコアントシアニン、プロアントシアニジン、エノシアニン、及びこれらの誘導体、重合体、立体異性体から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合物が挙げられる。」

摘記甲3-7
「【0009】
本発明におけるポリフェノール類を含有する植物体は、特に限定するものではない。即ち、光合成を行う植物はおよそポリフェノール類を含有するものであり、ポリフェノール類を抽出し得るもの、且つ該抽出物が人体に摂取可能なものであれば良い。植物の具体例を以下に示すがこれらに限定するものではない。
【0010】
植物の具体例として、茶等のツバキ科植物、ブドウ等のブドウ科植物、コーヒー等のアカネ科植物、カカオ等のアオギリ科植物、ソバ等のタデ科植物、グーズベリー、クロフサスグリ、アカスグリ等のユキノシタ科植物、ブルーベリー、ホワートルベリー、ブラックハクルベリー、クランベリー、コケモモ等のツツジ科植物、赤米、ムラサキトウモロコシ等のイネ科植物、マルベリー等のクワ科植物、エルダーベリー、クロミノウグイスカグラ等のスイカズラ科植物、プラム、ヨーロッパブラックベリー、ローガンベリー、サーモンベリー、エゾイチゴ、セイヨウキイチゴ、オオナワシロイチゴ、オランダイチゴ、クロミキイチゴ、モレロチェリー、ソメイヨシノ、セイヨウミザクラ、甜茶、リンゴ等のバラ科植物、エンジュ、小豆、大豆、タマリンド、ミモザ、ペグアセンヤク等のマメ科植物、紫ヤマイモ等のヤマイモ科植物、カキ等のカキ科植物、ヨモギ、春菊等のキク科植物、バナナ等のバショウ科植物、ヤマカワラムラサキイモ等のヒルガオ科植物、ローゼル等のアオイ科植物、赤シソ等のシソ科植物、赤キャベツ等のアブラナ科植物等が挙げられ、これらの植物に応じて果実、果皮、花、葉、茎、樹皮、根、塊根、種子、種皮、等の部位が任意に選ばれる。また、該植物体から得られる抽出物の形態としては、固体であり、好ましくは油脂に不溶で且つ物理的破砕によってレーザー回折型粒度分布測定機による平均粒径が3μm以下の微粒子とすることができる性質を有するものが良い。」

摘記3-8
「【0012】
本発明のポリフェノール類の含有量は特に限定するものではないが、該微細化物中1?70重量%である事が好ましく、より好ましくは5?50重量%であり、更に好ましくは10?40重量%である。ポリフェノール類の含有量が1重量%より少ない場合は、主剤であるポリフェノール類が微量となりポリフェノール類製剤としての用をなさない。また、ポリフェノール類の含有量が70重量%より多い場合には、該微細化物の構造粘度が極度に高まり流動性を失ってしまうために後の加工特性を著しく狭める事となる。」

摘記3-9
「【0015】
本発明第1工程に用いる油脂は特に限定するものではないが、常温で液体状態である油脂を用いると、本発明ポリフェノール類製剤の水系分散状態において、固/液分散を維持できず液/液乳化状態となり安定性が低下するため、好ましくは常温で固体を形成するものが良く、通常融点が30℃以上のものを用いる。ポリフェノール類の渋味・苦味のマスキング効果及び本発明ポリフェノール類製剤の水系分散時における物理的応力に対する安定性の面から、より好ましくは融点が35℃以上、更に好ましくは融点が40℃以上、最も好ましくは融点が50℃以上が良い。油脂の具体例を以下に示すがこれらに限定するものではない。油脂の具体例として、大豆、米、菜種、カカオ、椰子、ごま、べにばな、パーム、棉、落花生、アボガド、カポック、ケシ、ごぼう、小麦、月見草、つばき、とうもろこし、ひまわり等から得られる一般的な植物性油脂及びこれらの硬化物及び牛、乳、豚、いわし、さば、さめ、さんま、たら等から得られる動物性油脂及びこれらの硬化物等が挙げられ、これらの油脂は1種または2種以上の混合物が使用できる。また、これらに本来含まれているリン脂質、ステロール類、ワックス類等が共存しても一向に差し支えない。
【0016】
本発明第1工程では、微細化されたポリフェノール類固体粒子が多価アルコール脂肪酸エステルを含有する油脂中に均一に分散している状態のもの(以下、微細化物と称す)が得られ、本発明第2工程は、更に多価アルコール脂肪酸エステルを用いて該微細化物を安定に水系分散できる系を構築するものとなる。具体的には、本発明第2工程は該微細化物を該微細化物に含まれる油脂の融点以上の温度で加温することにより液状化し、多価アルコール脂肪酸エステルを用いて水系で乳化後、室温に冷却する。」

摘記甲3-10
「【0021】
<第1工程>
実施例1<ポリフェノール微細化物>
菜種極度硬化油(融点65℃)52.5重量部及びポリグリセリン脂肪酸エステル(サンファットPS-66、エステル化度75%、HLB=4、太陽化学株式会社製)12.5重量部を混合して加熱融解し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル5.0重量部(サンソフト818H、太陽化学株式会社製)を混合し、湯煎にて温度を65℃?70℃に保ちながら、茶ポリフェノール30重量部(サンフェノンDCF-1、太陽化学株式会社製)を加えた油性懸濁液を調製し、これをコボールミル(神鋼パンテック株式会社製)に掛け、レーザー回折型粒度分布測定により茶ポリフェノールの平均粒子径が1.0μmとなったポリフェノール微細化物を得た。」

摘記甲3-11
「【0024】
<第2工程>
実施例4<ポリフェノール類製剤>
水200重量部を予め65?70℃に加温しておき、ホモミキサーで撹拌しながら、デキストリン52.7重量部(BLDNo.8、参松工業株式会社製)、酸カゼイン15重量部(ACID CASEIN EDIBLE 30/60MESH、メグレ社製)、炭酸ナトリウム1重量部、グリセリン脂肪酸有機酸エステル0.6重量部(サンソフト641C、太陽化学株式会社製)、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.7重量部(サンソフトQ-18S、太陽化学株式会社製)を順次加え、完全に溶解し、引き続きホモミキサーで撹拌、65?70℃を保持したまま、予め加熱融解しておいた実施例1のポリフェノール微細化物30重量部を除々に投入し乳化させ、その後噴霧乾燥にて乾燥粉末化し、水中油滴分散型油脂被覆ポリフェノール類製剤の粉末品を得た。」

摘記甲3-12
「【0029】
試験例1<ポリフェノール類製剤の水系分散性>
実施例4記載の本発明ポリフェノール類製剤0.5gを20℃の水100mLに添加後軽く撹拌し、撹拌直後及び室温にて1日経過後の水中での分散状態を確認した。対照として以下に示す比較品1及び実施例1で用いた茶ポリフェノールをそれぞれ茶ポリフェノール含量が同量となる様に用いた。その結果を表1に示す。
<比較品1>
菜種極度硬化油(融点65℃)50重量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル10重量部(サンソフト818H、太陽化学株式会社製)を加熱溶解する。実施例1で用いた茶ポリフェノールを40重量部添加し混合後、ノズル式噴霧装置にて20℃に保った室内へ噴霧し、粒子径200μm?500μmの油脂被覆ポリフェノール粒子を得た。
【0030】
【表1】

【0031】
表1より、比較品1では、水の着色も全くないことから、水中でのポリフェノール溶出は見られず安定であることが確認できたが、全く水に分散しなかった。しかし、実施例4のポリフェノール類製剤は、比較品1と同様に茶ポリフェノールが椰子硬化油脂に被覆されているにもかかわらず、極めて良好な水分散性を示し、かつ良好な安定性を示した。」

摘記甲3-13
「【0034】
試験例3<ポリフェノール類製剤を用いた渋味の低減効果>
実施例4及び実施例5で得られたポリフェノール類製剤の渋味の強さを20人のパネラーを使って、渋味官能評価を行なった。官能評価試験は、実施例4及び実施例5のポリフェノール類製剤の水分散液5mLを口腔内に10秒間含んだ後、嚥下して渋味の評価を行なった。尚、実施例4の比較対照として実施例1で用いた茶ポリフェノール(比較品2)を、実施例5の比較対照として実施例2で用いたブドウ種子ポリフェノール(比較品3)をそれぞれ用いて官能評価した。その結果を表2、図2、表3及び図3に示す。数値は評価点の平均を示す。尚、渋味の評価点は次のように定めた。{0点;渋味を全く感じない、1点;殆ど渋味を感じない、2点;やや渋味を感じる、3点;強く渋味を感じる、4点;非常に強く渋味を感じる。}
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
表2、図2、表3及び図3より、比較品2及び3では、0.2%の濃度で既に官能評価平均点が2点(やや渋味を感じる点数)以上であるのに対し、実施例4及び実施例5のポリフェノール類製剤をその10倍濃度(茶ポリフェノール含有量及びブドウ種子ポリフェノール含有量として2%)で試験した場合であっても、95%のパネラーが官能評価点を0点(渋味を全く感じない)とした。尚、実施例4及び実施例5のポリフェノール類製剤をそれぞれ水に分散せずそのまま服用した場合であっても、官能評価平均点はそれぞれ1.35点、1.20点であった。したがって、本発明ポリフェノール類製剤が完全に水に分散出来るにもかかわらず、渋味を感じさせない製剤であることは明らかである。」
「【図2】


「【図3】



摘記甲3-14
「【0038】
試験例4<ポリフェノール類製剤の人工消化試験>
実施例4のポリフェノール類製剤を用いて第10改正日本薬局方、溶出試験法の試験液第1液の人工胃液及び第2液の人工腸液を用いて人工消化試験を行なった。人工消化液中に遊離したエピガロカテキンガレート含量を測定し、人工消化液中でのポリフェノール遊離率を算出した。その結果、人工胃液中では2.3%の遊離率であったのに対し、人口胃液中では89.8%の遊離率を示した。これはポリフェノール微細粒子の全周囲表面上に均一に被覆された油脂被覆剤層によるマイクロカプセルが、腸管に達するまで極めて安定に存在することを示すものであり、腸管に達した後ポリフェノール類を放出する性質を有することを裏付けるものである。」

摘記甲3-15
「【0039】
試験例5<ポリフェノール類製剤の生体吸収性及び生体利用性>
本発明ポリフェノール類製剤は、ポリフェノール類微細粒子の全周囲表面上に均質な油脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造を有するため、安定性及び渋味マスキング効果に優れた製剤となっている。それ故、実際に生体に経口投与した場合の生体吸収性及び生体利用性について改めて確認する必要がある。生体吸収性及び生体利用性の試験は、Nakagawaらの方法(J.Agric.Food Chemi.,1999,47,3967-3973)に準じて行った。即ち、健常な男性(23?48歳の非喫煙者)30人を対象とし、ポリフェノール類製剤投与前12時間は茶及び茶由来成分を含有する飲食を断ち、半数の15人に対し実施例4の茶ポリフェノールを含有するポリフェノール類製剤を、残り半数の15人に対しては対照品として実施例1で用いた茶ポリフェノールを、それぞれ総カテキン含量254mg(エピガロカテキンガレート含量82mg)となるように経口摂取した。経口摂取直前及び摂取後1時間経過時の血液を採取し、血清を分離後血清中のエピガロカテキンガレート含量及び過酸化リン脂質含量を測定した。血清中のエピガロカテキンガレート含量を表4及び図4に、血清中の過酸化リン脂質含量を表5及び図5に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
表4及び図4より、実施例4の本発明ポリフェノール類製剤は、対照品と比較して同等の生体吸収性があることを確認した。更に表5及び図5より、血清中の過酸化リン脂質の減少が確認された。これは、本発明ポリフェノール類製剤が、ポリフェノール類微細粒子の全周囲表面上に均質な油脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造を有するにもかかわらず、ポリフェノールの生体吸収性及び生体利用性に対し、本発明にかかるマイクロカプセルが何らの障害にもなっていないことを裏付けるものである。
「【図4】


「【図5】



摘記甲3-16
「【0043】
【発明の効果】
本発明ポリフェノール類製剤は、ポリフェノール類微細粒子の全周囲表面上に均質な油脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造を有すると同時に優れた水系分散性を発揮するもので、従来にはない極めて安定でかつ渋味・苦味のない水系分散製剤を提供することを可能とするものである。更に、本発明ポリフェノール類製剤は、ポリフェノール類を食品加工から経口摂取、生体吸収及び生体に利用されるまで安定にデリバリーするシステムを構築するものであり、産業上の意義は非常に大きい。」

エ 甲4の記載事項の概要

本件優先日前(平成21年3月5日)に頒布された刊行物である甲4(特開2009-46438号公報)には、以下の事項が記載されている。

記載事項甲4
ベリー類等の植物中に多く含まれる抗酸化物質であるアントシアニンは、ポリフェノールの一種であるが、これを含有する素材を単に経口摂取しても消化管からの吸収率が非常に低い問題があり、従来、フィチン酸を含有するアントシアニン吸収促進剤が知られていたところ(【0002】?【0003】)、その強いキレート作用に起因するミネラル分吸収阻害の問題があるフィチン酸を含まず、微細化されたアントシアニン含有素材及びレシチン等のなどの分散剤を含有する、摂取後のアントシアニンの吸収率が向上した、アントシアニン含有経口組成物が記載されており(【0004】、【請求項1】、【0021】、【0045】?【0048】)、さらにサフラワー油又は亜麻仁油を添加した場合には、アントシアニン吸収率が高まる一方で、ヤシ油又はシソ油を含有した場合には、同吸収率が低下することが記載されている(【0023】、【0038】?【0041】、【0051】?【0053】)。

オ 甲5(甲26)の記載事項

本件優先日前(平成21年1月8日)に頒布された刊行物である甲5(特開2009-1513号公報)(甲26と同じ)には、以下の事項が記載されている。

記載事項甲5
抗酸化作用を有するポリフェノールは、経口摂取しても腸管吸収性が悪いという問題があったため、その吸収促進剤が従来より開発されてきたところ(【0002】?【0006】)、種々の植物由来の油溶性ポリフェノールをクマササ由来リグニンに内包させることにより腸管吸収性を高めた油溶性ポリフェノール製剤が記載されており(【請求項1】、【請求項2】、【0024】)、植物原材料からの油溶性ポリフェノールの抽出には、ヤシ油、パーム油、ナタネ油、大豆油、コーン油等の植物油が用いられることも記載されている(【0026】、【0041】、【実施例1】?【実施例7】、(試験例1)?(試験例7))。

カ 甲6の記載事項

本件優先日前(平成20年)に頒布された刊行物である甲6(食品素材の「ナノサイズ」カプセル化技術の開発、オレオサイエンス、第8巻、第4号、2008年、151?157頁)には、以下の事項が記載されている。

記載事項甲6
食品用リン脂質(レシチン)を用いて秋ウコン抽出エキスを含有するナノカプセル(NUE)を調製したところ、秋ウコンに含まれる有効成分のクルクミンについて、消化液に対する耐性が向上し、腸管吸収が促進されたことが記載されている(3頁「論文要旨」、8頁「3・3 クルクミンに対する腸管吸収促進作用」)。

キ 甲7の記載事項

本件優先日前(平成21年11月)に頒布された刊行物である甲7(食品の機能性を評価するために、JFRLニュース、Vol.3、No.9、Nov.2009、1?4頁)には、以下の事項が記載されている。

記載事項甲7
黒ウコン(Kaempferia parviflora)の根茎には、アントシアニン等のフラボノイド類が豊富に含まれており、黒ウコンは、クルクミン含量の高い秋ウコン(Curcuma longa)とともに、他のウコン類やショウガより総ポリフェノールが多く、抗酸化力等の活性が高いことが記載されている(4頁「機能性評価の実例」)。

ク 甲32の記載事項

本件優先日前(平成13年11月6日)に頒布された刊行物である甲32(特開2001-309763号公報)、以下の事項が記載されている。

記載事項甲32
ポリフェノール類は、特異で強烈な苦味・渋味を有するため食品用途での利用に制限を受けること、酸化、熱、光に対して変色しやすく不安定であることが記載されている(【0002】、【0003】)。

ケ 甲33の記載事項

本件優先日前(平成17年3月10日)に頒布された刊行物である甲33(特開2005-58133号公報)には、以下の事項が記載されている。

記載事項甲33
ショウガ科のウコン等の植物体の根茎は、有効成分に富むため、食品材料として広く使用されており、近年、このような根茎の有効成分を高める抽出方法や、根茎特有の渋みや苦味等を低減する加工技術が提案されているが、有効成分の抽出を目的とした場合には渋みや苦味等が残存し、嗜好性を欠いているか、特定の有効成分しか抽出されない問題がある一方、苦味や渋み等の嗜好性を高めようとすると、有効成分が十分に抽出できない問題があったことが記載されている(【0002】?【0005】)。

(3)申立ての理由3(進歩性)についての当審の判断

ア 本件発明の技術的意義について

本件特許明細書及び本件訂正後の請求項1、2の記載によれば、本件発明の技術的意義について、以下のことが認められる。

本件発明は、黒ショウガ成分を含有する組成物の製造方法に関するものである(【0001】)。
黒ショウガは有効成分としてポリフェノールを含有するが、一般に、ポリフェノールは腸管透過吸収が悪いため、経口摂取されたポリフェノールの生体内に取り込まれる量は極めて少なく、従来、その吸収促進のために、吸収促進剤との併用や、腸管から容易に吸収できる程度まで低分子化する方法が示されていたものの、これらの方法によっても、ポリフェノールの生体内への吸収性は十分でなく、また、植物由来のポリフェノールの構造や性質は植物の種類によって大きく異なるため、他の植物由来のポリフェノールの吸収性の改善方法を、そのまま黒ショウガに転用することもできなかった(【0002】?【0007】)。
本件発明は、黒ショウガ成分を経口で摂取した場合においても、含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物の製造方法を提供することを課題とするものである(【0008】)。
そして、本件発明は、当該課題を解決するために、黒ショウガ(又はその抽出物)の乾燥粉末を芯材として、その表面の全部をナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆する、という手段を採用したものであり(【0009】?【0010】)、その結果として、経口で摂取した場合にも、黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性を高めることができる、という効果を奏するものである(【0011】、【0014】、【0054】)。

イ 甲3に記載された発明について

(ア)甲3に記載された発明

異議申立人が主引例とする甲3の請求項1には、「ポリフェノール類を、多価アルコール脂肪酸エステルを含有する油脂中で微細化する第1工程と、第1工程で得られた該微細化されたポリフェノール類を含有する油脂を、多価アルコール脂肪酸エステルの存在下で水中油滴型に乳化する第2工程により得られるポリフェノール類製剤。」が記載されている(摘記甲3-1)。
甲3には、上記請求項1に記載された製剤の製造例として、実施例4に、水200重量部を予め65?70℃に加温しておき、ホモミキサーで撹拌しながら、デキストリン52.7重量部、酸カゼイン15重量部、炭酸ナトリウム1重量部、グリセリン脂肪酸有機酸エステル0.6重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.7重量部を順次加え、完全に溶解し、引き続きホモミキサーで撹拌、65?70℃を保持したまま、予め加熱融解しておいた実施例1のポリフェノール微細化物30重量部を徐々に投入し乳化させ、その後噴霧乾燥にて乾燥粉末化して得た、水中油滴分散型油脂被覆ポリフェノール類製剤の粉末品、が記載されており(摘記甲3-11【0024】)、実施例4に記載された製造工程は、上記請求項1に記載された「第2工程」に対応するものである。
そして、上記実施例4の製造工程で用いられた「実施例1のポリフェノール微細化物」とは、菜種極度硬化油及びポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して加熱融解し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを混合し、茶ポリフェノールを加えた油性懸濁液を調製し、これをコボールミルに掛けることによって得られた、茶ポリフェノールの平均粒子径が1.0μmのポリフェノール微細化物であり(摘記甲3-10【0021】)、実施例1に記載された製造工程は、上記請求項1に記載された「第1工程」に対応するものである。
また、甲3の上記請求項1に記載された製剤は、食品に含有させるものとされており(摘記3-2【0001】)、甲3には、上記実施例4で得られた製剤の水分散液をヒトに経口投与した官能試験も記載されているから(摘記3-13【0034】)、同製剤は「経口用」であるといえる。

そうすると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「菜種極度硬化油及びポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して加熱融解し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを混合し、茶ポリフェノールを加えた油性懸濁液を調製し、これをコボールミルに掛けることによって得られた平均粒子径1.0μmのポリフェノール微細化物を準備する工程、及び、水を予め65?70℃に加温しておき、ホモミキサーで撹拌しながら、デキストリン、酸カゼイン、炭酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを順次加え、完全に溶解し、引き続きホモミキサーで撹拌し、65?70℃を保持したまま、予め加熱融解しておいた上記ポリフェノール微細化物を徐々に投入し乳化させ、その後噴霧乾燥にて乾燥粉末化する工程からなる、水中油滴分散型油脂被覆ポリフェノール類の経口用製剤の製造方法。」

(イ)甲3発明の技術的意義について

甲3の記載によれば、上記甲3発明の技術的意義について、以下のことが認められる。

甲3発明は、ポリフェノール類を、生理活性成分として含有する製剤、及び、当該製剤を含有する食品、に関するものである(摘記甲3-2【0001】)。
ポリフェノール類は、特異な苦味・渋味を有するため食品用途での利用に制限を受けること、及び、酸化、熱、光に対して変色しやすく不安定であること、という欠点を有するところ、従来の安定化法では、ポリフェノール類に由来する強烈な渋味・苦味を低減できなった(摘記甲3-3【0002】?【0003】)。
甲3発明は、ポリフェノール類を長期間安定に保ち、且つ呈味性、生体吸収性の優れた水系分散可能なポリフェノール類製剤を提供すること、を課題とするものである(摘記甲3-4【0004】)。
そして、甲3発明は、ポリフェノール類の固体粒子を多価アルコール脂肪酸エステルを含有する油脂中で微細化する第1工程、及び、第1工程で得られた該微細化されたポリフェノール類を含有する油脂を、多価アルコール脂肪酸エステルの存在下で水中油滴型に乳化する第2工程、という手段を採用することにより、上記課題を解決したものであって(摘記甲3-5【0005】)、その結果として、ポリフェノール類特有の渋味・苦味がマスキングされ、優れた安定性が付与されると同時に、従来にない優れた生体吸収性と生体利用性を有する、という効果を奏するものである(摘記甲3-5【0005】)。
ただし、甲3には、健常な男性を対象とし、茶ポリフェノールをそのまま経口投与した場合と、当該茶ポリフェノールの全周囲の表面上に均質な油脂被覆剤層を形成したものを経口投与した場合との間で(両者に投与された総ポリフェノール量は同じである)、血清中エピガロカテキンガレート含量には差がなかった旨が記載されており(摘記甲3-15【0039】?【0042】(試験例5))、特に、「実施例4の本発明ポリフェノール類製剤は、対照品と比較して同等の生体吸収性があることを確認した。」及び「これは、本発明ポリフェノール類製剤が、ポリフェノール類微細粒子の全周囲表面上に均質な油脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造を有するにもかかわらず、ポリフェノールの生体吸収性及び生体利用性に対し、本発明にかかるマイクロカプセルが何らの障害にもなっていないことを裏付けるものである。」(摘記甲3-15【0042】)との記載からすれば、上記「従来にない優れた生体吸収性及び生体利用性を有する」とは、「被覆を行わない場合と同等の生体吸収性を有する」という程度のことを示しているものと認められる。

ウ 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲3発明との対比

本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3には、「本発明ポリフェノール類製剤は、ポリフェノール類微細粒子の全周囲表面上に均質な油脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造を有するため、安定性及び渋味マスキング効果に優れた製剤となっている。」と記載されていることから(摘記甲3-15【0039】)、甲3発明の「水中油滴分散型油脂被覆ポリフェノール類の経口用製剤」における「油脂被覆」は、「表面の全部」を被覆しているものと認められ、甲3発明の「茶ポリフェノール」は、油脂被覆剤層の中に存在していると認められるから、本件発明1における「黒ショウガの乾燥粉末」とは、被覆される「芯材」である点においてに共通する。
甲3発明の「菜種極度硬化油」は、本件発明1の「ナタネ油」に相当し、甲3発明の「水中油滴分散型油脂被覆ポリフェノール類製剤」における「油脂被覆」は、当該「油脂」が上記「菜種極度硬化油」を含んでなるものと認められるから、本件発明1の「ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤」で「被覆」に相当する。
そして、甲3発明の「経口用製剤」は、複数の成分からなる組成を有するものであるから、本件発明1の「経口用組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「芯材の表面の全部を、ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。」

<相違点1>
芯材として、本件発明1は「黒ショウガの乾燥粉末」を用いるのに対し、甲3発明は「茶ポリフェノール」を用いている点。

<相違点2>
コート剤で被覆する手段が、本件発明1では「噴霧すること」によるものであるのに対し、甲3発明では「菜種極度硬化油及びポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して加熱融解し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを混合し、茶ポリフェノールを加えた油性懸濁液を調製し、これをコボールミルに掛けることによって得られた平均粒子径1.0μmのポリフェノール微細化物を準備する工程、及び、水を予め65?70℃に加温しておき、ホモミキサーで撹拌しながら、デキストリン、酸カゼイン、炭酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを順次加え、完全に溶解し、引き続きホモミキサーで撹拌し、65?70℃を保持したまま、予め加熱融解しておいた上記ポリフェノール微細化物を徐々に投入し乳化させ、その後噴霧乾燥にて乾燥粉末化する工程」によるものである点。

(イ)相違点についての検討

A 相違点1について

a 甲3における相違点1に係る構成の示唆について

前記イ(イ)で既述のとおり、甲3発明は、ポリフェノール類特有の渋味や苦味がマスキングされ、優れた安定性が付与され、生体吸収性と生体利用に優れる、という技術的意義を有するものであるところ、甲3には、ポリフェノール類は、人体に摂取可能なものであれば特に限定するものではなく、フラボン等のフラボノイド類、非フラボノイド類、それら化合物を含有する植物体及び植物体抽出物等の何れを使用しても差し支えないことが記載されており(摘記甲3-6【0007】)、ポリフェノール類を含有する植物体は特に限定されないことも記載されているから(摘記甲3-7【0009】?【0010】)、甲3には、甲3発明における「茶ポリフェノール」を、フラボノイド等を含有する他の植物体や植物体抽出物から得た微粒子に置換することが一応示唆されているとはいえるが、甲3には、「黒ショウガ」についての記載はない。

b 甲1における相違点1に係る構成の記載について

甲1には、「黒生姜根茎加工物を含むことを特徴とする冷え性改善用組成物」が記載され(摘記甲1-1【請求項1】)、黒生姜根茎の抽出物、黒生姜搾汁液及び黒生姜搾汁液の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有すること(摘記甲1-1【請求項2】)、冷え性改善用組成物を含有する飲食品、医薬部外品及び医薬品とすること(摘記甲1-1【請求項5】?【請求項7】)も記載されている。
そして、甲1には、医薬部外品及び医薬品とは、経口投与に適した性状を有し、通法に従って経口製剤として調製されたものをいい、経口固形製剤や経口液状製剤をいうとも記載され(摘記甲1-4【0041】)、抽出物及びその画分は、このままで使用することも可能であるが、必要に応じて噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用することも可能であると記載されている(摘記甲1-3【0034】)。
さらに、甲1には、乾燥黒生姜を滅菌し、80メッシュ以下に粉砕した、黒生姜乾燥粉末が記載されている(摘記甲1-5【0047】)。
そうすると、甲1には「冷え性改善用の、黒生姜の根茎加工物、抽出物、黒生姜搾汁液、及び/又は、黒生姜搾汁液の抽出物の乾燥粉末。」が記載されているといえる。
そして、甲1には、「黒生姜(Kaempferia parviflora)」(摘記甲1-2【0013】)と記載されており、本件特許明細書にも、「黒ショウガは学名をケンプフェリア・パルビフローラ(Kaempferia parviflora)といい、」と記載されているから(【0002】)、甲1でいう「黒生姜」は、本件発明1の「黒ショウガ」であるといえる。
そうすると、甲1には、
「冷え性改善用の、黒ショウガの根茎加工物、抽出物、黒生姜搾汁液、及び/又は、黒生姜搾汁液の抽出物の乾燥粉末。」
が記載されているといえる。

c 甲2における相違点1に係る構成の記載について

甲2には、「黒ウコン(Kaempferia parviflora)の抽出物及び/または乾燥粉末を含有することを特徴とするキサンチンオキシダーゼ阻害剤」が記載されている(摘記甲2-1【請求項1】)。
そして、甲2には、「ショウガ科(Zingiberaceae)ケンプフェリア(Kaempferia)属の植物の一種である黒ウコン(Kaempferia parviflora)は別名黒ショウガ又はクラチャイダムとも呼ばれており、」と記載され(摘記甲2-2【0031】)、本件特許明細書にも、「黒ショウガは学名をケンプフェリア・パルビフローラ(Kaempferia parviflora)といい、黒ウコンあるいはクラチャイダムの別名を有する。」と記載されているから(【0002】)、甲2に記載の「黒ウコン(Kaempferia parviflora)」は、本件発明1の「黒ショウガ」に相当する。
また、甲2には、黒ウコンの根茎の粉砕物を70%メタノールにより加熱抽出して得られた抽出物が、キサンチンオキシダーゼ阻害活性を有すること(摘記甲2-5【0040】?【0054】)、当該抽出物のクロマトグラムでは有効成分に由来すると考えられるA?Jの10本のピークが確認されたこと(摘記甲2-6【0063】?【0064】)、当該抽出物をカラムに通し、80%メタノールで溶出させた画分(画分3)のキサンチンオキシダーゼ阻害活性が高いこと(摘記甲2-7【0065】?【0067】)、さらに画分3のピークA?Kに相当する成分を単離して分析したところ、ピークAに相当する成分は5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボンであり、ピークBに相当する成分は3,5,7,6,4-ペンタメトキシフラボンであり、ピークCに相当する成分は5,7-ジヒドロキシフラボンであることが分かったこと(摘記甲2-8【0068】?【0075】)、ピークA?Jに相当する成分についてキサンチンオキシダーゼ阻害活性を確認したところ、ピークA(5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン)、ピークB(3,5,7,6,4-ペンタメトキシフラボン)、ピークC(5,7-ジヒドロキシフラボン)にそれぞれ相当する成分で高いキサンチンオキシダーゼ阻害活性があることが分かり、有効成分がメトキシフラボンであることが示唆されることが(摘記甲2-9【0081】?【0084】)、それぞれ記載されている。
ここで、フラボンの骨格にメトキシル基の置換した化合物であるメトキシフラボンは、フラボノイドの一種であることや(必要ならば、化学大辞典第1版、株式会社東京化学同人、平成元年、2033頁を参照)、甲2には、食品や経口医薬品としてキサンチンオキシダーゼ阻害剤を経口摂取することも記載されていること(摘記甲2-3【0031】、2-4【0038】)を踏まえると、甲2には、
「黒ショウガの抽出物又は乾燥粉末を含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であって、フラボノイドを有効成分とし、当該有効成分を経口摂取するもの。」
が記載されているといえる。なお、フラボノイドがポリフェノールの一種であることは、当業者にとって自明である。

d 呈味に関する技術的課題からの検討

上記b及びcのとおり、甲1及び甲2には、それぞれ、本件発明1と甲3発明との相違点1に係る構成である「黒ショウガの乾燥粉末」に相当するものが記載されていると認められるから、これを甲3発明に適用することの容易想到性について検討すべきところ、まず、呈味に関する技術的課題からの検討を行う。
前記イ(イ)で説示したとおり、甲3発明は、ポリフェノール類に特有の渋味・苦味がマスキングされたことを技術的意義の一つとするものである。
これに対して、甲1には、黒生姜(即ち、黒ショウガ)は、長期にわたり人間に摂取されてきた実績があるところ、風味に関して難点が少ないことが記載されており(摘記甲1-2【0013】)、黒ショウガにポリフェノール類が含まれることについては、特に記載されていない。
また、甲2には、黒ウコン(即ち、黒ショウガ)には、ポリフェノールが含まれていることが記載されているが(前記c)、黒ウコン(即ち、黒ショウガ)が渋みや苦みを有するとの記載はない。
甲7には、黒ウコン(Kaempferia parviflora)の根茎には、アントシアニン等のフラボノイド類が豊富に含まれていることが記載されているが(記載事項甲7)、呈味についての問題は特に記載されていない。
甲4、甲5及び甲6には、そもそも黒ショウガに関する記載自体が存在しないし、甲6には、黒ショウガとは別異の植物である「ウコン」及び「秋ウコン」に関する記述はあるが(記載事項甲6)、呈味についての問題は特に指摘されていない。
また、甲32には、ポリフェノール類は特異な苦味・渋味を有するため、食品用途での利用に制限を受けることが記載され(記載事項甲32【0002】、【0003】)、甲33には、ショウガ科のウコン等の植物体の根茎は、食品原料として広く使用されており、特有の渋みや苦味等があることが記載されているが(記載事項甲33【0002】?【0005】)、いずれにも黒ショウガについての記載はない。
そうすると、本件優先日当時に、黒ショウガにポリフェノールが含まれることや(甲2)、ポリフェノールそれ自体が特異な苦みや渋みを有する物質であることについては(甲32)、当業者に知られており、また、植物体の根茎が根茎特有の渋みや苦みを有することも(甲33)、既に知られていたものの、前記のとおり、黒ショウガは、長期にわたって人間に摂取され、風味に関して難点が少ないと評価されていたことからすると(甲1)、本件優先日当時に、当業者において、黒ショウガに関し、ポリフェノール類特有の(ポリフェノール類に由来する)特異な苦みや渋みを有するものとまで認識されていたとは認められない。
以上によれば、本件優先日当時、黒ショウガが、甲3発明の技術的課題にあるような、ポリフェノール類特有の(ポリフェノール類に由来する)渋みや苦みを有する植物体に該当すると、当業者に認識されていたものとは認められないから、この点をもって、技術的課題が共通であるとも、引用発明中の示唆があるともいえない。

e 呈味以外の技術的課題からの検討

甲3には、呈味以外の技術的課題(安定性、生体吸収性)に関する記載もあることから、これらの点について検討する。
まず、安定性に関する技術的課題に関して、甲3には、従来技術が有する課題として、ポリフェノール類は、酸化、熱、光に対して、変色しやすく、不安定である、との欠点を有することが記載されている(摘記3-3【0002】)。
しかしながら、黒ショウガに関する本件優先日前の刊行物である、甲1、甲2及び甲7を参照しても、黒ショウガに含まれるポリフェノールが、酸化や熱、光に対し、変色しやすく不安定であることや、腸管に達するまで安定にデリバリーできない等の技術課題を有していることは記載されていない。
そうすると、黒ショウガに含まれるポリフェノールについて、甲3に記載されているような安定性に係る技術的課題が、当業者に認識されていたとは認められない。
次に、生体吸収性に関する技術的課題に関して、甲3には、発明が解決しようとする課題の一つとして、生体吸収性の優れた水系分散可能なポリフェノール類製剤を提供することが記載され(摘記甲3-4【0004】)、同製剤が、従来にない優れた生体吸収性及び生体利用性を有すること、更には同製剤を含有する食品についても改善がされることが記載されている(摘記甲3-5【0005】)。
しかしながら、前記イ(イ)でも指摘したように、甲3に記載された試験例5(ポリフェノール類製剤の生体吸収性及び生体利用性)が示す実験結果は、経口摂取直前及び摂取後1時間経過時の血清中のエピガロカテキンガレート含量を比較した結果から、ポリフェノール類製剤が、対照品(茶ポリフェノール)と比較して、同等の生体吸収性を有することが確認されたというものであるから(摘記甲3-15【0039】?【0042】、【図4】、【図5】)、甲3における「従来にない優れた生体吸収性及び生体利用性」等の上記各記載は、甲3発明の技術的手段、即ち、ナタネ油を含むコート剤の被覆により、当該コート剤の被覆がない場合と比べて、ポリフェノール類の生体吸収性を向上させることを意図したものではなく、単に、当該被覆をしてもポリフェノール類の生体吸収性及び生体利用性に対して障害にはならないことを示しているに過ぎない。
そうすると、そもそも黒ショウガに含まれるポリフェノールの生体吸収性及び生体利用性の改善という課題は、黒ショウガにポリフェノールが含まれていることすら記載のない甲1はもとより、甲2にも何ら記載がなく、本件優先日前に周知の課題であったとも認められないから、甲3発明の技術的手段(ナタネ油を含むコート剤の被覆)の対象として、甲1又は甲2に記載された「黒ショウガの乾燥粉末」を採用する動機付けは見いだせない。

f 相違点1についての検討のまとめ

以上のとおり、甲3発明において、「茶ポリフェノール」に代えて、甲1又は甲2に記載の「黒ショウガの乾燥粉末」を適用することは、本件優先日当時の技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

B 相違点2について

甲3には、芯材のコート剤による被覆について、コート剤を「噴霧すること」により行うことは全く記載されていないし、甲1?2、4?7、28?35にも、黒ショウガの乾燥粉末をコート剤で被覆する手段として「噴霧」を採用することを示唆するような記載もない。
そして、前記イ(イ)で述べたとおり、甲3発明は、ポリフェノール類を長期間安定に保ち、且つ呈味性、生体吸収性の優れた水系分散可能なポリフェノール類製剤を提供するという特定の課題を解決するために、相違点2に係る上記の特定の2段階からなる工程を採用したのであるから、これと全く異なる構成であって、甲1?7、28?35に記載も示唆もない「噴霧」という手段を、コート剤による被覆に適用する動機付けは見いだせない。

(ウ)本件発明1の効果について

前記(イ)のとおり、本件発明1は、甲3発明との相違点に係る構成の適用自体が推考容易といえないものであるが、本件発明1の効果の予測性についても、以下、検討する。

A 本件特許明細書に記載された効果

前記アのとおり、本件発明1は、経口で摂取した場合にも、黒ショウガに含まれるポリフェノール類の体内への吸収性を高めることができる、という効果を奏するものである。
この点について、前記第4の2(4)でも既述のとおり、本件特許明細書には、ポリフェノール吸収増進効果についての試験の方法及び結果が記載されており(【0048】?【0054】、【図1】)、実施例1として、パーム油でコートした黒ショウガの根茎の乾燥粉末(黒ショウガ原末)をコーン油と混合して150mg/mLとし、懸濁することにより調製した被験物質(以下「実施例1被験物質」という。)、実施例2として、黒ショウガ原末をナタネ油でコートした以外は、実施例1と同様にして調製した被験物質(以下「実施例2被験物質」という。)、及び、比較例1として、黒ショウガ原末をコーン油と混合して150mg/mLとし、懸濁することにより調製した被験物質(以下「比較例1被験物質」という。)が記載され、これらの被験物質それぞれを、6週齢のSD雄性ラットに、10mL/kgとなるように、ゾンデで強制経口投与し、投与の1、4、8時間後(コントロールはブランクとして投与1時間後のみ)に採血して、血中の総ポリフェノール量を測定する実験を行ったところ、油脂コートをした「実施例1被験物質」及び「実施例2被験物質」を摂取した群の血中ポリフェノール量は、いずれも、コートしていない「比較例1被験物質」を摂取させたものと比較して高い値を示し、特に、ナタネ油でコートした「実施例2被験物質」は、血中にとりこまれるポリフェノール量が多く、また、それが長時間にわたり持続したこと、が記載されている。
なお、上記実施例1、2では、コート剤の使用量や黒ショウガ原末の表面の被覆割合が示されていないため、黒ショウガ成分を含有する粒子の表面の全部が被覆されたものであるかは明らかでないが、仮に実施例1、2の被験物質が表面の全体を被覆したものでなかったとしても、上記のとおりの効果が得られているのであるから、全部を被覆したものにおいても同様の結果が得られる蓋然性が高いといえる。
したがって、本件特許明細書には、本件発明1が、黒ショウガ成分を経口で摂取した場合にも、特に黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性を高めるという効果を奏することが、具体的な裏付けとともに記載されていると認められる。

B 本件発明1の効果の予測性

前記イ(イ)及びウ(イ)eで説示したとおり、甲3には、生体吸収性の優れた水系分散可能なポリフェノール類製剤を提供すること(摘記甲3-4【0004】)や、同製剤が従来にない優れた生体吸収性及び生体利用性を有すること(摘記甲3-5【0005】)について記載されているものの、これらの記載は、単に被覆をしても生体吸収性及び生体利用性に対して障害にならないことを示しているに過ぎないから、そのままでは吸収されにくい黒ショウガ中のポリフェノールの体内への吸収性を、未被覆の状態と比べて高めるという、本件発明1の効果を想起させるものとはいえない。そして、甲3には、黒ショウガの乾燥粉末をナタネ油又はパーム油でコートすることにより、黒ショウガ成分に含まれるポリフェノールの生体吸収性が向上することを、当業者が予測可能とするような他の記載も見いだせない。
また、甲1及び甲2を含むその他の甲号証にも、上記の黒ショウガ成分に含まれるポリフェノールの生体吸収性の向上を予測可能とするような記載は見あたらない。
したがって、黒ショウガ成分を経口で摂取した場合にも、特に黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性を高めるという、本件発明1の効果は、当業者が予測し得ないものである。

(エ)異議申立人の主張について

A 黒ショウガの呈味の問題とポリフェノールの関係について

異議申立人は、特許異議申立書において、甲1の「また、黒生姜は風味に関して難点が少なく、同様に性状についても難点が少ない。」(摘記甲1-2【0013】)という記載は、不正確であり、黒ショウガを摂取できない程度の難点、即ち、適用阻害となる程度風味ではないという意味に留まり、甲28?35に開示されているように、黒ショウガがポリフェノールを含むこと、及び、黒ショウガやこれに含まれるポリフェノールには特異な苦味や渋味があることは、当業者にとって周知の事実であって、黒ショウガの経口摂取において、その特異な苦味や渋味を感じないようにすることは、周知の技術的課題であった旨を主張している。
しかしながら、前記(イ)dで説示したとおり、本件優先日当時、当業者において、黒ショウガに関し、ポリフェノール類特有の(ポリフェノール類に由来する)特異な苦みや渋みを有するものとまで認識されていたとは認められない。
また、前記2(2)でも述べたとおり、ウェブサイトに掲載された記事の写しである甲28?31は、作成日や掲載日(公開日)等が明記されておらず、その内容が本件優先日前にウェブ上で公開されていたこと又は当業者に知られていたことを示す的確な証拠もなく、甲34?35は、いずれも本件優先日よりも後に公開された公開特許公報であって、その内容が本件優先日前に知られていたことを示す的確な証拠もないため、甲28?31、34?35については、本件優先日当時の技術常識を示すものであるとは認められない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

B 再現実験について

異議申立人は、原出願審決取消訴訟で提出した甲23再現実験報告書を、本件異議申立においても提示し、その結果に基づいて、少なくとも本件特許明細書に記載の実施例1(パーム油被覆)については、同明細書に記載の比較例1(被覆なし)に対して、ポリフェノール類の体内吸収性が格段に高められたものであるとはいえず、本件発明1が予測し得ない顕著な効果を奏したものとはいえない旨を主張している。
しかしながら、前記1(2)ア(オ)でも指摘したとおり、甲38及び甲39(原出願審決取消訴訟において被告(本件特許権者)が提出した乙第6号証及び乙第7号証)によれば、甲23再現実験における被覆方法では、コート液の噴霧によって黒ショウガが飛び散ったり容器外にコート液が漏れたりする可能性があり、パーム油やナタネ油による被覆が、黒ショウガ原末の一部にとどまっていた可能性があると認められるから、同再現実験は本件特許明細書に記載された実験の結果を否定するものとまではいえない。
したがって、異議申立人の上記主張は妥当性を欠き、採用できない。

エ 本件発明2について

本件発明2は、コート剤で被覆する対象を、「黒ショウガの乾燥粉末」に代えて、「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」とした点でのみ、本件発明1と異なっているから、前記ウ(ア)の対比の結果と併せて、甲3発明と対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「芯材の表面の全部を、ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆したことを特徴とする経口用組成物の製造方法。」

<相違点1’>
芯材として、本件発明2は「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」を用いるのに対し、甲3発明は「茶ポリフェノール」を用いている点。

<相違点2’>
コート剤で被覆する手段が、本件発明2では「噴霧すること」によるものであるのに対し、甲3発明では「菜種極度硬化油及びポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して加熱融解し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを混合し、茶ポリフェノールを加えた油性懸濁液を調製し、これをコボールミルに掛けることによって得られた平均粒子径1.0μmのポリフェノール微細化物を準備する工程、及び、水を予め65?70℃に加温しておき、ホモミキサーで撹拌しながら、デキストリン、酸カゼイン、炭酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを順次加え、完全に溶解し、引き続きホモミキサーで撹拌し、65?70℃を保持したまま、予め加熱融解しておいた上記ポリフェノール微細化物を徐々に投入し乳化させ、その後噴霧乾燥にて乾燥粉末化する工程」によるものである点。

そして、前記ウ(イ)Ab及びcで認定したとおり、甲1には、
「冷え性改善用の、黒ショウガの根茎加工物、抽出物、黒生姜搾汁液、及び/又は、黒生姜搾汁液の抽出物の乾燥粉末。」
が記載されていると認められ、甲2には、
「黒ショウガの抽出物又は乾燥粉末を含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であって、フラボノイドを有効成分とし、当該有効成分を経口摂取するもの。」
が記載されていると認められるから、甲1及び甲2には、本件発明2と甲3発明との相違点1’に係る構成である「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」に相当するものが記載されていると認められる。

前記ウ(イ)Ad?fで説示したとおり、呈味及びそれ以外の技術的課題からの検討の結果、本件発明1と甲3発明との相違点1に係る構成については、甲3発明において、「茶ポリフェノール」に代えて、甲1及び甲2に記載の「黒ショウガの乾燥粉末」を適用することが、本件優先日当時の技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たとはいえないところ、同様の理由により、本件発明2と甲3発明との相違点1’に係る構成の「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」についても、甲3発明において、「茶ポリフェノール」に代えて適用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

さらに、前記ウ(イ)Bで説示したのと同様に、甲3発明において、相違点2’に係る上記の特定の2段階からなる工程を、これとは全く異なる構成であって、甲1?7、28?35に記載も示唆もない「噴霧」という手段に代えて、コート剤による被覆に適用する動機付けは見いだせない。

また、本件発明2の効果については、本件特許明細書に直接その裏付けとなる実施例(試験例)は記載されていないものの、前記ウ(ウ)で検討したとおり、黒ショウガ成分を経口で摂取した場合にも、特に黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性を高めるという、本件発明1の効果は、当業者が予測し得ないものであるところ、コート剤で被覆する芯材を、「黒ショウガの乾燥粉末」に代えて、「黒ショウガ抽出物の乾燥粉末」とした点でのみ、本件発明1と異なる本件発明2も、黒ショウガ抽出物にはポリフェノール類が含まれていることから、同様の効果を奏するものと推定され、当該効果は当業者が予測し得ないものである。

(4)申立ての理由3(進歩性)についての小括

以上のとおり、本件発明1、2は、甲1?3に記載された発明及び周知技術に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、その他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1、2に係る特許について、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒ショウガの乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガの乾燥粉末の表面の全部を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。
【請求項2】
黒ショウガ抽出物の乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガ抽出物の乾燥粉末の表面の全部を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-29 
出願番号 特願2016-25981(P2016-25981)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 光本 美奈子
特許庁審判官 前田 佳与子
井上 典之
登録日 2016-09-02 
登録番号 特許第5997856号(P5997856)
権利者 株式会社東洋新薬
発明の名称 経口用組成物の製造方法  
代理人 ▲高▼津 一也  
代理人 森 博  
代理人 ▲高▼津 一也  
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