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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01K
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A01K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01K
審判 全部申し立て 発明同一  A01K
審判 全部申し立て 特39条先願  A01K
管理番号 1359524
異議申立番号 異議2018-701075  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-28 
確定日 2019-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6356934号発明「動物用トイレ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6356934号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第6356934号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6356934号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成27年12月25日に出願された特願2015-253029号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成30年5月7日に新たな特許出願としたものであり、平成30年6月22日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月11日に特許掲載公報が発行されたものである。
その特許について、平成30年12月28日に、特許異議申立人 シャープ株式会社(以下、「申立人A」という。)により、請求項1ないし7,9,10及び12に対して特許異議の申立て(以下、「申立1」といい、申立1の異議申立書を「申立書1」という。)がされ、また平成31年1月9日に、特許異議申立人 田中修(以下、「申立人B」という。)により、請求項1ないし12に対して特許異議の申立て(以下、「申立2」といい、申立2の異議申立書を「申立書2」という。)がされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。
平成31年 3月13日(発送日): 取消理由通知
令和 1年 5月13日: 意見書の提出及び訂正の請求
(以下、「1次訂正請求」という。)
令和 1年 7月17日: 申立人Aによる意見書の提出
令和 1年 7月18日: 申立人Bによる意見書の提出
令和 1年 8月29日(発送日): 取消理由通知(決定の予告)
令和 1年10月21日: 意見書の提出及び訂正の請求
(以下、「本件訂正請求」という。)

なお、1次訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置されている
ことを特徴とする動物用トイレ。」
と記載されているのを、
「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、
平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部を有し、
前記上容器は、底部と側壁部を有し、
前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、
前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、
平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。」
との記載に訂正する(請求項1の記載を引用する訂正後請求項3?12も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「請求項1に記載の動物用トイレであって、」
と記載されているのを、独立形式に改め、
「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、」
との記載に訂正する(請求項2の記載を引用する訂正後請求項3?12も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置されている」
と記載されているのを、
「前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置され、
前記受け部は、前記下容器に対して出し入れ可能に構成されている」
との記載に訂正する(請求項2の記載を引用する訂正後請求項3?12も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項6又は7に記載の動物用トイレであって、
前記制御部は、前記排泄物の量を検出する際に、前記液透過性粒状物に対して予め定められた補正値を加算する
ことを特徴とする動物用トイレ。」
と記載されているのを、
「請求項6又は7に記載の動物用トイレであって、
前記制御部は、前記排泄物の量を検出する際に、前記液透過性粒状物に対して予め定められた補正値を加算し、
前記排泄物の量が閾値を超えた場合には異常であることを通知する
ことを特徴とする動物用トイレ。」
との記載に訂正する(請求項8の記載を引用する訂正後請求項9?12も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
明細書の段落【0006】に、
「上記目的を達成するための主たる発明は、上上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有し、前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置されていることを特徴とする動物用トイレである。本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。」
と記載されているのを、
「上記目的を達成するための主たる発明は、上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有し、前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部を有し、前記上容器は、底部と側壁部を有し、前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有することを特徴とする動物用トイレである。本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。」
との記載に訂正する。


2 訂正要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「上容器」について、その構造を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 新規事項の有無
「上容器」に関連して、明細書の段落【0037】-【0039】には、上容器20が底部21と側壁部22とを備えており、底部21の高さ方向における最も下方には略水平方向に伸びる平面部212が配置されており、貫通孔21aは当該平面部212に設けられることが記載されている。また、図4には、平面部212の肉厚が側壁部22の肉厚より大きい様子が図示され、図2には、平面視において、貫通孔21aの外形が上容器20の長手方向の両端部で曲線部を有し、また平面部212の外形が4つの角が曲線部となった長方形形状である様子が図示されている。
これらのことから、上容器、及び上容器に設けられた孔について、「平面視において、孔の外形は、上容器の長手方向の両端に曲線部」を有し、「上容器は、底部と側壁部」を有し、「底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部」を有し、「平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する」という発明は、明細書又は図面に記載されていたものと認められる。
したがって、訂正事項1は、明細書及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものである。

ウ 小括
以上のとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内で、訂正前の請求項1に係る発明を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。

(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、訂正前の請求項2における記載を訂正するものである。
ア 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったところ、請求項1の記載を引用しないものとすることを目的としたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項2は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内でなされたものである。

イ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項2において、下容器の「受け部」が「下容器に対して出し入れ可能に構成されている」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3について、明細書の段落【0082】には、「例えば、下容器に対してトレイ(受け部)を出し入れするタイプの動物用トイレに適用してもよい。」と記載されているから、「受け部」を「下容器に対して出し入れ可能」とする発明は、明細書又は図面に記載されていたということができる。

ウ 小括
したがって、訂正事項2及び3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項8における「制御部」が、「排泄物の量が閾値を超えた場合には異常であることを通知する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項4について、明細書の段落【0066】には、「・・・制御部42が、1回ごとの検出結果(尿量)と、記憶部422に記憶された閾値との比較を行なうようにしてもよい。そして、尿量が閾値を超えた場合、例えば、表示部26を発光させたり、スピーカー(不図示)などから警報音を発生させたりして、異常であることを通知させるようにしてもよい。」と記載されているから、「制御部」が「排泄物の量が閾値を超えた場合には異常であることを通知する」発明は、明細書又は図面に記載されていたということができる。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。

(4)訂正事項5について
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と、明細書の発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そしてこの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。

(5)一群の請求項、及び独立特許要件について
訂正前の請求項1?12について、請求項2?12はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正がされるものである。そのため、請求項1?12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
訂正事項1ないし4は、一群の請求項である訂正前の請求項1?12について限定を行うとともに、請求項2を請求項1の記載を引用しないものとして、訂正後の請求項1?12とするものである。
また、訂正事項5は、訂正事項1ないし4による訂正がなされた請求項1?12について、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものである。
すなわち、訂正事項1ないし5の訂正は、一群の請求項[1?12]に対して請求されたものである。
そして、本件においては、訂正前の請求項1?12について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1ないし5の訂正は、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、訂正事項1及び3ないし4により特許請求の範囲の限定的減縮が行われていても、訂正後の請求項1ないし12に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(6)申立人の意見について
本件訂正における訂正事項のうち、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正事項1、訂正事項3及び訂正事項4における限定内容と同様の構成を追加する訂正が、本件訂正請求により取り下げられたとみなされる1次訂正請求にも含まれていたところ、当該1次訂正請求について、申立人Aは令和1年7月17日に、申立人Bは令和1年7月18日に、それぞれ意見書を提出している。
そして、申立人A及びBは、当該意見書において、上記訂正事項1、上記訂正事項3及び上記訂正事項4における各限定内容と同様の構成について、後記第6の1(1)ウ、同2(3)、及び同8(2)イのとおり、実質的な相違点とはならない旨を主張する一方、これらの発明の構成を限定することが訂正の要件に違反する旨の主張は行っていない。
また、本件訂正における訂正事項のうち、上記訂正事項1,3及び4を除く、訂正事項2及び5は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするか、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そのため、本件訂正の適否については、本件訂正における限定と同様の限定内容を含む1次訂正請求に対する申立人の意見を考慮して検討しても、上記(1)?(5)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。


3 訂正の適否の結論
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?12]について訂正を認める。


第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1ないし12に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。下線部は本件訂正に係る訂正部分である。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

本件訂正発明1
「【請求項1】
上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、
平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部を有し、
前記上容器は、底部と側壁部を有し、
前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、
前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、
平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明2
「【請求項2】
上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、
前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置され、
前記受け部は、前記下容器に対して出し入れ可能に構成されている
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明3
「【請求項3】
請求項1又は2に記載の動物用トイレであって、
前記下容器を支持する支持部材を備え、
前記出力部は、前記支持部材の上に設けられ、且つ、前記下容器の下方に位置する
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明4
「【請求項4】
請求項3に記載の動物用トイレであって、
前記下容器には、前記出力部に係合可能な係合部が設けられている
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明5
「【請求項5】
請求項3又は4に記載の動物用トイレであって、
前記出力部は、防水加工が施されている
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明6
「【請求項6】
請求項3?5の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記支持部材には、前記出力部から出力される前記信号に基づいて前記排泄物の量を検出する制御部が設けられている
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明7
「【請求項7】
請求項6に記載の動物用トイレであって、
前記制御部は、排泄前の前記信号と、排泄後の前記信号との差分を算出することによって、1回ごとの前記排泄物の量を検出する
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明8
「【請求項8】
請求項6又は7に記載の動物用トイレであって、
前記制御部は、前記排泄物の量を検出する際に、前記液透過性粒状物に対して予め定められた補正値を加算し、
前記排泄物の量が閾値を超えた場合には異常であることを通知する
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明9
「【請求項9】
請求項6?8の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記上容器には、前記制御部の検出結果を表示する表示部が設けられており、
前記制御部と前記表示部とが無線により通信可能である
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明10
「【請求項10】
請求項1?9の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記上容器の重量に応じて変化する上容器重量信号を出力する上容器用出力部を、さらに有する
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明11
「【請求項11】
請求項10に記載の動物用トイレであって、
前記上容器重量信号に基づいて、動物の体重、又は、前記複数の孔を通過しない排泄物の量の少なくとも一方を検出する上容器用制御部を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。」

本件訂正発明12
「【請求項12】
請求項1?11の何れかに記載の動物用トイレであって、
電力を供給するための電池を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。」


第4 証拠一覧、先の取消理由の概要、及び異議申立理由の概要
1 証拠一覧
申立書1及び2とともに提出された証拠を含め、証拠は以下のとおりである。
文献1; 国際公開第2017/104216号
(2017年6月22日国際公開)
(申立書1の甲第2号証、申立書2の甲第4号証、
拡大先願に関する証拠)
文献2; 特許第6441532号公報
(平成30年12月19日発行)
(申立書1の甲第1号証、申立書2の甲第5号証、
先願に関する証拠)
文献3; 特許第6353826号公報
(平成30年7月4日発行)
(本件特許の原出願の特許登録公報、
同日出願に関する証拠)
文献4; 特開2012-161296号公報
(平成24年8月30日公開)
(申立書1の甲第3-1号証)
文献5; 特開平10-229768号公報
(平成10年9月2日公開)
(申立書1の甲第3-2号証)
文献6; 特開平7-67489号公報
(平成7年3月14日公開)
(申立書1の甲第3-3号証、申立書2の甲第7号証)
文献7; 特開2013-202038号公報
(平成25年10月7日公開)
(申立書1の甲第3-4号証)
文献8; 特開2006-129723号公報
(平成18年5月25日公開)
(申立書1の甲第3-5号証)
文献9; 特開昭58-76728号公報
(昭和58年5月9日公開)
(申立書1の甲第4-1号証)
文献10; 特開2012-88104号公報
(平成24年5月10日公開)
(申立書1の甲第4-2号証)
文献11; 特開2003-322556号公報
(平成15年11月14日公開)
(申立書1の甲第4-3号証)
文献12; 特開2002-323388号公報
(平成14年11月8日公開)
(申立書1の甲第5-1号証)
文献13; 特開2002-365146号公報
(平成14年12月18日公開)
(申立書1の甲第5-2号証)
文献14; 特開2007-330200号公報
(平成19年12月27日公開)
(申立書1の甲第6-1号証、申立書2の甲第8号証)
文献15; 特開2003-28707号公報
(平成15年1月29日公開)
(申立書1の甲第6-2号証)
文献16; 特開2006-226919号公報
(平成18年8月31日公開)
(申立書2の甲第1号証)
文献17; 特許第4596669号公報
(平成22年12月8日発行)
(申立書2の甲第2号証)
文献18; 国際公開第2011/019068号
(2011年2月17日国際公開)
(申立書2の甲第3号証)
文献19; 特開2014-236683号公報
(平成26年12月18日公開)
(申立書2の甲第6号証、
申立人Aが意見書に添えて提出した甲第8号証)
文献20; 中国特許出願公開第103461159号
(2013年12月25日公開)
(申立書2の甲第9号証)
文献21; 特開2013-17446号公報
(平成25年1月31日公開)
(申立人Aが意見書に添えて提出した甲第7号証)
文献22; 特開2015-12855号公報
(平成27年1月22日公開)
(申立人Aが意見書に添えて提出した甲第9号証)
文献23; 特開2015-159782号公報
(平成27年9月7日公開)
(申立人Aが意見書に添えて提出した甲第10号証)
文献24; 実願平5-71439号(実開平6-75151号)
のCD-ROM
(平成6年10月25日公開)
(申立人Bが意見書に添えて提出した参考文献1)
文献25; 特開2004-121264号公報
(平成16年4月22日公開)
(申立人Bが意見書に添えて提出した参考文献2)
文献26; 特開2002-315463号公報
(平成14年10月29日公開)
(申立人Bが意見書に添えて提出した参考文献3)
文献27; 特開平7-39265号公報
(平成7年2月10日公開)
(申立人Bが意見書に添えて提出した参考文献4)
文献28; 特開平10-117619号公報
(平成10年5月12日公開)
(申立人Bが意見書に添えて提出した参考文献5)
文献29; 特表2012-508576号公報
(平成24年4月12日公表)
(申立人Bが意見書に添えて提出した参考文献6)

2 先の取消理由、及び異議申立理由等の要旨
(1)先の取消理由の要旨
当審が令和1年8月29日(発送日)に特許権者に通知した取消理由(決定の予告;以下、「先の取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
(拡大先願)
本件特許の一次訂正請求後における請求項1及び10ないし12に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた特願2015-248055号の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1及び10ないし12に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

(2)申立1の異議申立理由の要旨
申立人Aによる異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
ア(先願)
本件特許の請求項1ないし7、9、10及び12に係る発明は、本件特許出願より前に出願され、平成30年12月19日に特許権の設定登録がされた、特許第6441532号の請求項1ないし9に係る発明と同一であるから、請求項1ないし7、9、10及び12に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

イ(拡大先願)
本件特許の請求項1ないし7、9、10及び12に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた特願2015-248055号の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1ないし7、9、10及び12に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

(3)申立2の異議申立理由の要旨
申立人Bによる異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
ア(新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16,文献17又は文献18に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、請求項1に係る特許は、同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

イ(進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16,文献17又は文献18に記載された発明、及び文献19又は文献6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16に記載された発明、及び文献19又は文献6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16、文献17又は文献18に記載された発明、及び文献19又は文献6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項8に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16に記載された発明、及び文献19又は文献6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項9に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16に記載された発明及び文献19又は文献6に記載された発明、並びに文献14に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項10に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16,文献17又は文献18に記載された発明、及び文献19又は文献6に記載された発明、並びに文献20に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項11に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された文献16に記載された発明及び文献19又は文献6に記載された発明、並びに文献20に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1、4、5、8ないし11に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

ウ(拡大先願)
本件特許の請求項1ないし4,6ないし7、10ないし12に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた特願2015-248055号の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1ないし4,6ないし7、10ないし12に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

エ(先願)
本件特許の請求項1ないし3、6ないし7、10ないし12に係る発明は、本件特許出願より前に出願され、平成30年12月19日に特許権の設定登録がされた、特許第6441532号の請求項1ないし5及び7ないし9に係る発明と同一であるから、請求項1ないし3、6ないし7、10ないし12に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

(4)その他の取消理由の要旨
当審が平成31年3月13日(発送日)に特許権者に通知した取消理由のうち、上記(2)及び(3)の異議申立理由とは異なる理由であり、かつ先の取消理由においては採用しなかった取消理由の要旨は、次のとおりである。
(同日出願)
本件特許の請求項8、及び請求項8に従属する請求項9ないし12に係る発明は、同日出願された特許第6356934号の請求項8、及び請求項8に従属する請求項9ないし12に係る発明と同一と認められ、かつ、当該同日出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないため、請求項8ないし12に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。


第5 証拠の記載
1 文献1(国際公開第2017/104216号)
文献1は、平成27年12月18日に出願された特願2015-248055号に優先権主張をして、平成28年9月27日に国際出願されたPCT/JP2016/078520号の国際公開である。

(1)文献1の記載
文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下、同様。)。また、特願2015-248055号の願書に添付された明細書及び図面にも、以下に摘記したと同様の事項が記載されている。


「技術分野
【0001】
本発明は体重計測装置および動物用トイレに関する。
背景技術
【0002】
特許文献1には、ペット用の居場所の下に設置されて、その居場所にペットが乗っている状態と乗っていない状態とのその居場所の重量を計測する重量計測手段と、該重量計測手段が出力する居場所重量データの変化の程度に基づき前記ペットについての重量を算出して表示出力する重量算出手段とを具えてなる、ペット用自動体重計測システムが開示されている。
先行技術文献
特許文献
【0003】
特許文献1:日本国公開特許公報「特開2007-330200号公報」(2007年12月27日公開)
発明の概要
発明が解決しようとする歌代
【0004】
特許文献1に記載のペット用自動体重計測システムでは、ペットの体重または排泄物の重量を正確に計測できない場合がある。例えば、ペットが、物を咥えて上記居場所に乗り、上記居場所に物を残して上記居場所から出た場合、ペット用自動体重計測システムは、重量の変化分のうち物の重量と排泄物の重量とを区別することができない。そのため、ペット用自動体重計測システムは、誤計測をする可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ペットの体重を正確に計測する体重計測装置を実現することにある。」


「【0009】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係るペット用トイレの構成を示す図である。図1の(a)は、ペット用トイレ1の平面図であり、図1の(b)(c)は、ペット用トイレ1の側面図であり、図1の(d)は、ペット用トイレ1の正面図である。図2は、ペット用トイレ1の断面図である。図3は、ペット用トイレ1の斜視図である。図4の(a)(b)は、ペット用トイレ1の分解斜視図である。各図はペット用トイレ1の構成を模式的に示す。
【0010】
ペット用トイレ1(動物用トイレ)は、ペットである動物の体重を計測する体重計測装置としての機能を有する。ペット用トイレ1は、本体容器10、カバー11、計測台12、排泄トレイ13(排泄物受け)、吸収シート14(尿パッド)、支持部15、第1重量計21、第2重量計22、および制御装置23を備える。図1の(b)(c)では、第1重量計21を省略している。図2?図4では、カバー11は省略している。また、図3、図4では、制御装置23も省略している。
【0011】
本体容器10は、カバー11と、計測台12とを支持する。本体容器10は、排泄トレイ13の一部を支えてもよい。本体容器10の底部には、中央の領域(第1重量計21に対応する領域)に穴が形成されている。カバー11は、ペット用トイレ1に乗った動物の3つの側面を覆うカバーである。
【0012】
計測台12は、動物がそこに乗り、排泄をする台である。計測台12の底面にはメッシュ12aが形成されている。動物の排泄物(ここでは尿)は、メッシュ12aを通過して、排泄トレイ13の上に落ちる。ここでは、メッシュ12aは、液体は通過させるが、糞および動物が咥えてきた物体(おもちゃ)等は通過させない。なお、計測台12には、メッシュ12aの代わりに、排泄物が通過する穴が形成されていてもよい。計測台12は、本実施形態では凹型の容器のような形状であるが、計測台12の形状は任意であり、体重の計測のために動物を載せることができればよい。
【0013】
排泄トレイ13は、計測台12の下に配置される、排泄物を受ける部材である。排泄トレイ13が受ける範囲は、計測台12のメッシュ12aが形成された領域を含む(該領域より広い)。排泄トレイ13上に、吸収シート14を配置してもよい。吸収シート14は、尿等の液体を吸収するシートである。排泄トレイ13は、本体容器10の側面に形成された穴から挿入および抜き取られることができる。
【0014】
支持部15は、第1重量計21、および第2重量計22を支持する台板である。ここでは、支持部15上に制御装置23が配置されており、制御装置23上に第1重量計21が配置されている。このように、支持部15は、制御装置23を介して第1重量計21を支持してもよい。
【0015】
第1重量計21は、本体容器10の底部の穴を貫通して排泄トレイ13に接触し、排泄トレイ13を支持する。第1重量計21は、例えば、ロードセルを含む。第1重量計21は、吸収シート14および排泄物を含む排泄トレイ13の重量を計測する。排泄トレイ13には、計測台12および動物の重量は掛からない。第1重量計21は、計測値を制御装置23に出力する。なお、排泄トレイ13の一部が本体容器10に支持される場合でも、排泄トレイ13は排泄物によって撓み得る程度に柔らかい。そのため、第1重量計21は、排泄物の有無による排泄トレイ13の重量の変化を計測することができる。
【0016】
なお、本実施形態では1つの第1重量計21が設けられているが、排泄トレイ13の重量を計測する複数の第1重量計21を設けてもよい。第1重量計21が計測する重量は、第2重量計22が計測する重量より小さいので、第1重量計21が計測可能な最大荷重は、第2重量計22の計測可能な最大荷重より小さくてもよい。これにより、第1重量計21の構造を簡略化し、かつ、第1重量計21を小さくすることができる。さらに、第1重量計21の計測精度は、第2重量計22の計測精度より高くてもよい。これにより、ペット用トイレ1を安価にし、かつ、計測精度を高くすることができる。
【0017】
第2重量計22は、少なくとも計測台12を含む構造物を支持する。ここでは、第2重量計22は、計測台12、本体容器10、およびカバー11を含む構造物を支持する。4つの第2重量計22が、本体容器10の底部の4隅に接触するよう、設けられている。第2重量計22は、例えば、ロードセルを含む。第2重量計22は、計測台12、本体容器10、およびカバー11を含む構造物と動物との合計の重量を計測する。第2重量計22には、排泄物の重量は掛からない(またはほとんど掛からない)。第2重量計22は、計測値を制御装置23に出力する。
【0018】
制御装置23は、第1重量計21および第2重量計22の測定値から、動物の体重および排泄物の重量の値を求める。ここでは、制御装置23は、制御基板等を収める筐体を備える。制御装置23は、電源スイッチ24を備える。
【0019】
(制御装置の構成)
図5は、制御装置23の構成を示すブロック図である。制御装置23は、電源部25、センサ駆動部26、制御部27、および記憶部28を備える。第1重量計21が計測した重量の値および第2重量計22が計測した重量の値は、センサ駆動部26に入力される。
【0020】
電源部25は、制御装置23の各部(センサ駆動部26、制御部27、および記憶部28)に電源を供給する。電源スイッチ24によって、電源部25からの電源の供給がON/OFFされる。電源部25は、例えば電池を備えていてもよい。
【0021】
センサ駆動部26は、第1重量計21および第2重量計22に電源を供給し、第1重量計21および第2重量計22を動作させる。また、センサ駆動部26は、第1重量計21および第2重量計22から計測値を受け取る。センサ駆動部26は、所定のタイミング(例えば一定の周期)で、第1重量計21および第2重量計22に計測を行わせる。センサ駆動部26は、受け取った計測値を制御部27に出力する。
【0022】
制御部27は、動物の体重および排泄物の重量を求める。第1重量計21の計測値は、吸収シート14および排泄物を含む排泄トレイ13の重量を表す。制御部27は、第1重量計21の計測値が変化した(計測された重量が大きくなった)時点を、動物が排泄をした時点と判定する。制御部27は、計測値の変化量に基づいて、排泄物の重量を特定する。具体的には、制御部27は、排泄が行われた後の計測値から排泄が行われる前の計測値を減じることにより、排泄物の重量を特定する。
【0023】
第2重量計22の計測値は、計測台12、本体容器10、およびカバー11を含む構造物と動物との合計の重量を表す。動物が計測台12に載っていない場合、動物の分の重量は0である。制御部27は、第2重量計22の計測値が増加した(計測された重量が大きくなった)時点を、動物が計測台12に乗った時点と判定する。動物が計測台12に乗った後に排泄をすれば、第2重量計22の計測値は少し減少し、第1重量計21の計測値は少し増加する。制御部27は、第1重量計21の計測値が変化しない期間のうち第2重量計22の計測値が減少した時点を、動物が計測台12から降りた時点と判定する。なお、上記の「計測値が変化しない期間」とは、データ(計測値)が所定の範囲内で変化しているものは、広義で変化していない期間と考えてもよい。
【0024】
制御部27は、動物が計測台12に乗る前の第2重量計22の計測値と、降りた後の第2重量計22の計測値とが異なる場合、動物が計測台12に物体を置いたまたは計測台12の上にあった物体を持って行ったと判定する。制御部27は、動物が計測台12に乗る前の第2重量計22の計測値と、降りた後の第2重量計22の計測値との差が、物体の重量であると特定する。降りた後の計測値が大きい場合、動物は計測台12に物体を置いて去っていったことを示す。乗る前の計測値が大きい場合、動物が計測台12に載せてあった物体を持って行ったことを示す。動物が計測台12に乗る前の第2重量計22の計測値と、降りた後の第2重量計22の計測値とが同じ場合、制御部27は、物体の重量を0として扱う。
【0025】
制御部27は、動物が排泄した後から計測台12を降りる迄の第2重量計22の計測値から、動物が計測台12から降りた後の第2重量計22の計測値および物体の重量を減じることにより(重量変化より)、動物の体重を特定する。または、制御部27は、動物が計測台12に乗った後から排泄する迄の第2重量計22の計測値から、動物が計測台12に乗る前の第2重量計22の計測値および物体の重量を減じることにより、動物の体重を特定する。これにより、制御部27は、物体および排泄物の重量の影響を受けずに正確な動物の体重を特定することができる。
【0026】
制御部27は、動物の体重および排泄物の重量を記憶部28に記憶させる。なお、制御部27は、動物の体重および排泄物の重量を外部の機器に送信する構成であってもよい。記憶部28は着脱可能な記録媒体であってもよい。また、ペット用トイレ1は表示装置を備えてもよく、制御部27は、計測した動物の体重および/または排泄物の重量を表示装置に表示させてもよい。また、制御部27は、排泄した時刻を記憶部28に記憶させてもよい。ユーザは、記憶部28に記録されたデータを別のコンピュータで読み取る、または、表示装置を介してデータを見ることにより、動物の行動を正確に把握することができる。例えば、ユーザは、動物がペット用トイレ1に乗った後に排泄をする回数(頻度)、および乗った後に排泄をしない回数(頻度)等を知ることができる。」


図1、図2、図3、図4(b)には、次の図示がある。

【図4】

図2、図3及び図4(b)より、凹型の容器のような形状をした計測台12は、底面と、底面の四周側方で斜め上方に立ち上がる壁状部とを有する様子が看て取れる。
図1及び図2より、計測台12の底面のメッシュ12aが形成された部分は、全体が下方に向かって窪んだ湾曲形状をしている様子が看て取れる。
また図2より、排泄トレイ13の下面は、第1重量計21の上面と接触する領域と、第1重量計21の上面とは接触しない領域とを有する様子が、看て取れる。

(2)拡大先願発明の認定
上記(1)より、本件出願より先に出願され、特許法第184条の15第2項の規定により読み替えた特許法第41条第3項の規定により本件出願後に国際公開されたとみなされる、特願2015-248055号の願書に添付された明細書及び図面には、次の発明(以下、「拡大先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「本体容器10、カバー11、計測台12、排泄トレイ13、吸収シート14、支持部15、第1重量計21、第2重量計22、および制御装置23を備える、ペット用トイレ1(動物用トイレ)であって、
本体容器10は、底部の中央の第1重量計21に対応する領域に穴が形成されており、カバー11と計測台12とを支持し、
カバー11は、ペット用トイレ1(動物用トイレ)に乗った動物の3つの側面を覆うカバーであり、
計測台12は、底面と、底面の四周側方で斜め上方に立ち上がる壁状部とを有する凹型の容器のような形状であり、動物がそこに乗り排泄をする台であって、底面にはメッシュ12aが形成されており、底面のメッシュ12aが形成された部分は、全体が下方に向かって窪んだ湾曲形状をしており、動物の排泄物である尿はメッシュ12aを通過して排泄トレイ13の上に落ちるが、糞および動物が咥えてきた物体等は通過させず、
排泄トレイ13は、計測台12および動物の重量が掛からないように、計測台12の下に配置される、排泄物を受ける部材であり、本体容器10の側面に形成された穴から挿入および抜き取られることができ、排泄トレイ13の下面は、第1重量計21の上面と接触する領域と、第1重量計21の上面とは接触しない領域とを有し、
吸収シート14は、尿等の液体を吸収するシートであり、排泄トレイ13上に配置されており、
支持部15は、制御装置23を介して第1重量計21を支持し、また第2重量計22を支持する台板であり、
第1重量計21は、ロードセルを含み、本体容器10の底部の穴を貫通して排泄トレイ13を支持するものであり、吸収シート14および排泄物を含む排泄トレイ13の重量を計測し、計測値を制御装置23に出力して、排泄物の有無による排泄トレイ13の重量の変化を計測することができ、
第2重量計22は、ロードセルを含み、計測台12、本体容器10、およびカバー11を含む構造物と動物との合計の重量を計測して、計測値を制御装置23に出力し、
制御装置23は、制御基板等を収める筐体、電池を備える電源部25、センサ駆動部26、制御部27、および記憶部28を備え、
センサ駆動部26は、一定の周期で第1重量計21および第2重量計22に計測を行わせ、
制御部27は、第1重量計21の計測値が変化した時点を動物が排泄をした時点と判定し、排泄が行われた後の計測値から排泄が行われる前の計測値を減じることにより、尿である排泄物の重量を特定し、また動物が計測台12に乗る前の第2重量計22の計測値と降りた後の第2重量計22の計測値とが異なる場合、動物が計測台12に物体を置いたまたは計測台12の上にあった物体を持って行ったと判定して、動物が計測台12に乗る前の第2重量計22の計測値と、降りた後の第2重量計22の計測値との差が、計測台12に置いていった物体の重量であると特定し、
制御部27は、計測した動物の体重および/または排泄物の重量を、ペット用トイレ1(動物用トイレ)が備える表示装置に表示させるか、外部の機器に送信してもよい、
ペット用トイレ1(動物用トイレ)。」

2 文献2(特許第6441532号公報)
文献2は、平成27年12月18日に出願された特願2015-248055号に優先権主張をして、平成28年9月27日に国際出願された特願2017-556370号(PCT/JP2016/078520号)の一部を、平成30年10月25日に新たな特許出願とした特願2018-201163号の、特許掲載公報である。
(1)文献2の記載

その特許請求の範囲には、次の記載がある。
「【請求項1】
上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部と、を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有する、動物用トイレ。
【請求項2】
前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置されている、請求項1に記載の動物用トイレ。
【請求項3】
前記下容器を支持する支持部材を、さらに備え、
前記出力部は、前記支持部材の上に設けられ、且つ、前記下容器の下方に位置する、請求項1または2に記載の動物用トイレ。
【請求項4】
前記支持部材には、前記出力部から出力される前記信号に基づいて前記排泄物の量を検出する制御部が設けられている、請求項3に記載の動物用トイレ。
【請求項5】
前記制御部は、排泄前の前記信号と、排泄後の前記信号との差分を算出することによって、1回ごとの前記排泄物の量を検出する、請求項4に記載の動物用トイレ。
【請求項6】
前記制御部の検出結果を表示する表示部を、さらに備え、
前記制御部は、検出結果を前記表示部に表示させる、請求項4または5に記載の動物用トイレ。
【請求項7】
前記上容器を含む構造物と動物との合計重量に応じて変化する上容器重量信号を出力する上容器用出力部を、さらに備えた、請求項1から3のいずれか一項に記載の動物用トイレ。
【請求項8】
前記上容器重量信号に基づいて動物の体重を検出する上容器用制御部を、さらに備えた、請求項7に記載の動物用トイレ。
【請求項9】
電力を供給するための電池を、さらに備えた、請求項1から8のいずれか一項に記載の動物用トイレ。」


その明細書及び図面には、原出願の国際公開である文献1から、前記1(1)に摘記したと同様の事項が記載されており、原出願が優先権を主張する特願2015-248055号の願書に添付された明細書及び図面にも、前記1(1)に摘記したと同様の事項が記載されている。

(2)先願発明の認定
上記(1)より、本件出願より前に出願された特許第6441532号の請求項1ないし9に係る発明(以下「先願発明1」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記(1)ア記載のとおりの発明であると認めることができる。

3 文献3(特許第6353826号公報)
文献3は、本件特許出願の原出願である特願2015-253029号の、特許掲載公報である。
(1)文献3の記載
文献3の特許請求の範囲には、次の記載がある。
「【請求項1】
上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有することを特徴とする動物用トイレ。
【請求項2】
請求項1に記載の動物用トイレであって、
前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置されている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動物用トイレであって、
前記下容器を支持する支持部材を備え、
前記出力部は、前記支持部材の上に設けられ、且つ、前記下容器の下方に位置する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項4】
請求項3に記載の動物用トイレであって、
前記下容器には、前記出力部に係合可能な係合部が設けられている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の動物用トイレであって、
前記出力部は、防水加工が施されている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項6】
請求項3?5の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記支持部材には、前記出力部から出力される前記信号に基づいて前記排泄物の量を検出する制御部が設けられている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項7】
請求項6に記載の動物用トイレであって、
前記制御部は、排泄前の前記信号と、排泄後の前記信号との差分を算出することによって、1回ごとの前記排泄物の量を検出する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の動物用トイレであって、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が載置されており、
前記制御部は、前記排泄物の量を検出する際に、前記液透過性粒状物に対して予め定められた補正値を加算する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項9】
請求項6?8の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記上容器には、前記制御部の検出結果を表示する表示部が設けられており、
前記制御部と前記表示部とが無線により通信可能である
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項10】
請求項1?9の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記上容器の重量に応じて変化する上容器重量信号を出力する上容器用出力部を、さらに有する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項11】
請求項10に記載の動物用トイレであって、
前記上容器重量信号に基づいて、動物の体重、又は、前記複数の孔を通過しない排泄物の量の少なくとも一方を検出する上容器用制御部を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項12】
請求項1?11の何れかに記載の動物用トイレであって、
電力を供給するための電池を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。」

(2)同日出願発明の認定
上記アより、本件出願と同日出願である特許第6353826号の請求項1ないし12に係る発明(以下「同日出願発明1」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、上記ア記載のとおりのものであった。
なお、本決定の時点において、同日出願発明1ないし12については、異議2018-701074号において訂正請求がなされ、同訂正請求による訂正は認められ確定しているが、当該訂正が本件訂正発明1ないし12と同一の発明とする訂正でないことは、当審に顕著な事実である。

4 文献4(特開2012-161296号公報)
(1)文献4の記載
文献4は、本件原出願より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。


「【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用のトイレ、特に猫用の上下二重構造のトイレの上部側に配して使用するペレット状に造粒した、撥水性でありながら表面に残留した尿を吸収する吸水性をも備えたペット用トイレ砂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物となるトイレ砂の使用量を減少させる等の趣旨から尿の吸収をシート材に任せ、該シート材の上方に、簀の子等を介して、猫等のペット類を導く観点でトイレ砂を配することとした二重構造のペット用のトイレが提供されている。このようなペット用のトイレでは、トイレ砂は吸水性は不要であり、かえって十分な撥水性を備え、ペット類の尿を、その周囲に残留させることなく、速やかにかつ確実にシート材上に流下させ得るものとすることが好ましいとされていた。」


「【0047】
従って本発明のペット用トイレ砂によれば、これを、上下を簀の子状部材で区画し、該簀の子状部材の上にペット用トイレ砂を、下に尿吸収用のシート材を、それぞれ配して使用する二重構造のペット用トイレに、その簀の子状部材上に配するペット用トイレ砂として使用すると、猫等のペット類がその上で排尿をした場合に、その尿の多くは該ペット用トイレ砂が基本的には撥水性であるためその間を通過して該簀の子状部材の下方に流下し、下方に配されているシート材で吸収されることになる。」


「【実施例1】
【0064】
ポリプロピレンフィルム及びパルプ繊維を5?8mmに混合状態で同時に解砕し、更にこの解砕混合物に消臭剤を添加して原料とした。この混合物の成分は、ポリプロピレンフィルム解砕物:パルプ繊維解砕物:消臭剤=50重量部:50重量部:2重量部である。
【0065】
この混合物を縦押し型造粒機に供給し、圧力を掛けて該原料をスクリーンの成形口から吐出させた。該成形口の口径は6mmである。押し出される棒状の吐出物の状態を観察し、かつその表面温度を測定した。該棒状の吐出物の表面には、これが棒状の形体を保持できないほどにはならない程度の適度のひび割れを有し、更にその表面温度は60?70℃の範囲となっていた。良い状態であるので、この圧力状態を維持できるように加圧力をそのままに保持した。成形口から押し出される棒状の吐出物は、適当な長さに切断し、ペレットとした。
【0066】
その後は、押し出される棒状の吐出物の表面温度が上記60?70℃を維持できるように該縦押し型造粒機を水冷方式で冷却した。
【0067】
こうして前記表面温度を維持しつつ前記成形口より押し出された棒状の吐出物を、前記のように、切断し、得られたペレットをペット用トイレ砂とした。
【0068】
<外観の観察>
以上の実施例1で得たペット用トイレ砂を構成するペレットは、外観を観察すると、白色系で、表面に多数のひび割れを有しており、触れてみると、紙製の粒体のような弾力性を有していた。
【0069】
<撥水性、吸水性、臭気閉じ込めの性能テスト>
実施例1によって得たペット用トイレ砂を構成するペレットを、二重構造のペット用トイレの上部の簀の子状部材上に配して、その上から一定量の人工尿を流下させ、簀の子状部材の下に流れ落ちた人工尿の量を測定し、前者に対する後者の割合を計測した。前記ペット用トイレの下部の容器部としてはポリプロピレン製の箱形容器を用いた。前記簀の子状部材は上記容器部の上下方向途中に浮かせた状態に配した格子状のそれを用い、格子の目開き寸法を4mmとした。前記ペット用トイレ砂を構成するペレットは簀の子状部材の上に厚さ20mmに敷き詰めた。
【0070】
気温25℃の室内に、前記のように、簀の子状部材の上にペレットを敷き詰めたペット用トイレを置き、敷き詰めたペレットの上に、洗浄びんに入れた人工尿30gを、そのノズルから15秒間で放水し、放水終了時点から60秒後までに該簀の子状部材の下に流下した人工尿の重量を秤量して、放水した人工尿に対する簀の子状部材の下に流下した人工尿の割合を計算した。
【0071】
人工尿による簀の子状部材下への流下量の測定は、ペレットへの放水の位置を変えて3回行った。その測定結果は次の通りである。
第1回目 : 29.4g
第2回目 : 28.5g
第3回目 : 29.0g
平均値 : 約29.0g
流下量/放水量(平均値) : 約96.7重量%
【0072】
実施例1で得たペット用トイレ砂を構成するペレットは、供給した人工尿を効果的にはじいて、簀の子状部材の下まで、供給量の約96.7重量%が流下しており、高い撥水機能を有していることが分かる。」

(2)文献4に記載された技術的事項
上記(1)より、文献4には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる。
上下二重構造のペット用トイレの上部側の簀の子状部材の上に、ペット類を導く観点で、ペレット状に造粒した撥水性のトイレ砂を配置する、という技術的事項。

5 文献5(特開平10-229768号公報)
(1)文献5の記載
文献5は、本件原出願より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。

「【0007】ゴミの量を減らすため、猫砂の代わりに吸液シートを使用することも考えられているが、室内で飼われる代表的なペットである猫は、その習性上砂の上で排泄することを好み、シートの上ではなかなか排泄しない。またシートの上で排泄するとしても、シートの中央に自分の頭がくるような位置に座るため、お尻がシートの端に位置し、シートの外側に排泄してしまい、シートの外側の床が汚れてしまう。このため、床の掃除をしなくてはならず、手間を省くことはできない。」


「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のペット用トイレは、上方が開口し底部が液通過構造とされ且つ多数の粒状体が収納される粒状体収納部と、液通過構造の前記底部の下側に位置する液吸収体の設置部とを有し、液吸収体が前記設置部に取り出し自在に設置されることを特徴とするものである。
【0010】上記において、液吸収体は吸液シートであり、この吸液シートが敷設された支持体が、前記設置部に取り外し自在に設置されるものとすることが可能である。
【0011】この場合に、液吸収体の設置部に支持体が設置されたときに、この支持体に敷設された前記吸液シートが、液通過構造の前記底部にほぼ密着することが好ましい。
【0012】また、粒状体収納部が容器内に形成され、本体部に前記容器が取り外し自在に支持され、この本体部の前記容器の支持部の下側に前記液吸収体の設置部が設けられている構造とすることができる。
【0013】さらに、粒状体は少なくとも表面が溌水性であることが好ましく、また、消臭機能を有するものであることが好ましい。
【0014】本発明のペット用トイレは、底部が液通過構造となっている粒状体収納部に多数の(所定量の)粒状体が収納される。この粒状体としては、従来の猫砂を用いてもよいが、溌水性の粒状体を使用することができる。すなわちこのトイレでは、尿が粒状体内を通過して液通過構造の底部から下方へ滴下しても、その下方に位置する吸液シートなどの液吸収体で吸収されるものとなっているため、前記粒状体として溌水性のものを使用することが可能である。」


「【0020】このペット用トイレは、従来の猫砂と同様に多数の粒状体の処理材が敷かれているため、猫などのペットが自然にトイレに入り、粒状体の上に尿や便を排泄することができる。溌水性の粒状体を用いると、尿は粒状体に吸収されず、溌水性の粒状体の間隙を通って粒状体収納部の底部に到達する。底部はメッシュ状または網状などの液通過構造であるため、尿は底部を通過し、その下の吸液シートなどの液吸収体に吸収される。よって、尿をする度に粒状体を捨てる必要はなく、一日に一回程度液吸収体を取り替えればよい。このため、トイレの清掃の手間を省くことができる。さらに前記液吸収体として吸液シートを使用した場合、一日のゴミの量はシート一枚分であるため、ゴミの量を減らすことができる。」


「【0027】これらの粒状体4は、例えば各図に示す球形状、または円柱形状などである。粒状体4の外径寸法は2mmから4mm程度であり、この程度の大きさであると、猫などのペットの爪の間に粒状体4が入り込まない。溌水性の粒状体4は、容器5に収納されて使用される。容器5はプラスチック製あるいは表面が溌水加工された厚紙などで形成されている。粒状体4がPPなどのプラスチック材である場合には容器5がプラスチック製であってもよいが、粒状体4がセルロースなどを主体とした可燃性である場合には、容器5も紙製とし、使用後に容器5および粒状体4を一緒に焼却処理できるようにすることが好ましい。また、容器5をポリプロピレンやポリエチレン樹脂などから成る柔軟なプラスチックで形成し、不燃性の粒状体4と一緒に容器ごと不燃ゴミとして廃棄できるようにしてもよい。
【0028】図3(B)に示されるように、前記容器5の開口部周囲にはフランジ部(鍔部)5aが形成されており、容器5内に所定数の粒状体4が入れられた状態で、フランジ部5aにシール材6が取付けられ、使用直前にこのシール材6を剥がすようにしてもよい。シール材6は、フィルムなどであり、フランジ部5aにホットメルト型接着剤などで剥離可能に接着される。容器5の粒状体収納部5b内に前記粒状体4が収納されるが、図3(A)に示されるようにこの粒状体収納部5bの底部5cには、メッシュ状または網状の液透過構造のシート7が張られている。この液透過構造のシート7は、溌水性であることが好ましい。ただし、底部5cに多孔質の板が設けられ、この板が容器5と一体に形成されていてもよい。または比較的薄い樹脂シートにより容器5が形成され、この容器5の底部5cに多数の孔が形成されて、底部が液透過構造とされていてもよい。
【0029】図1に示すように前記容器5は、本体部10内に設置される。本体部10はプラスチック製であり、上方が開口している。本体部10の内面には、支持台10aが枠状に形成されており、この支持台10aには、矩形状の設置穴10bが開口している。容器5の収納部5bは前記設置穴10b内に挿入され、フランジ部5aが支持台10aの上面に載せられて、容器5が本体部10内で支持される。
【0030】前記本体部10の下部は、液吸収体の設置部11である。この液吸収体の設置部11の前方には開口部11aが形成されている。液吸収体の設置部11には、底板12が設けられている。底板12は、本体部10と一体に形成されているものであり、前記支持台10aにほぼ平行で且つ設置部11の底部の全面にわたって形成されている。この底板12は、支持台10aに平行な水平部12aと、この水平部12aと連続して設けられて設置穴10bに向かって上向きに傾斜する傾斜部12bと、傾斜部12bの奥側に連続して設けられたストッパ部12cから成る。また、ストッパ部12cの本体部10の内側壁側の端部と本体部10の内側壁との間には隙間12dが形成されている。また、底板12には、本体部10aの両側壁から所定間隔離れた位置にて、設置部11の開口部11aから奥側へ延びる一対の案内溝12eが形成されている。
【0031】前記底板12上には、吸液シートが敷設された支持体13が設置される。支持体13はプラスチック製の平板状であり、前端部の両側には下方に突出する掛止部13aが形成されており、また、幅方向の中間位置に、掛止部13aと同様に下方に突出する摺動凸部13dが形成されている。そして、後端部は高さ方向の寸法の大きい脚部13bとなっている。また、支持体13の上面は、平面状の敷設面13cであり、この敷設面13cに吸液シート8が敷かれる。吸液シート8は、例えば不織布や紙、あるいはシート状にした綿などのシートであり、あるいはシート内に高吸水性樹脂が挟まれたものなどである。吸液シート8は、吸液可能な面が上に向けて敷設される。吸液シート8の裏面には、ポリプロピレンなどの樹脂で形成された不透液性のシートが接着され、または不透液性樹脂がコーティングされる。吸液シート8は、支持体13の敷設面13cの上に単に載せるだけであってもよいし、あるいは吸液シート8の裏面を両面接着テープなどで敷設面13cに固定してもよい。」


「【0041】また、溌水性の粒状体4は尿を吸収しないため、排尿の度に猫砂を取り替える必要はなく、尿が吸収された吸液シート8を一日に一回程度取り替えればよい。このように一日に出るゴミは吸液シート1枚分であるので、ゴミの量を低減できる。また汚れた粒状体4を洗剤で洗うことができる。このとき洗浄液を容器5内に撒くと、粒状体4が洗浄され、洗浄後の洗浄液はその下に位置する吸液シート8に吸収される。よって、洗浄作業も簡単である。また、支持体13の変わりにトレイを使用し、このトレイの凹部内に、粉砕パルプ、綿、シリカゲルなどの液吸収部材を収納して、設置部11内に入れるようにしてもよい。または、前記粉砕パルプなどとともに消臭剤を収納してもよい。
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、粒状体の下に置かれた液吸収体により尿を吸収できるため、頻繁な猫砂の取り替えが不要になり、また清掃も容易である。特に、液吸収体を粒状体設置部の液透過構造の底部にほぼ密着させるように構成すると、粒状体設置部内の尿が吸収体に確実に伝わるようになり、粒状体設置部内に残る尿を少なくでき、悪臭を防止できる。また粒状体を長期間使用できるため、ゴミの量を低減できる。」

(2)文献5に記載された技術的事項
上記(1)より、文献5には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる。
吸液シートを使用するペット用トイレにおいて、ペットが砂の上で排泄することを好み、シートの上ではなかなか排泄しない習性に配慮して、吸収シートの上に配置する、底部が液通過構造となっている粒状体収納部に、所定量の粒状体を収納する、という技術的事項、
及び、
その際に、粒状体を撥水性とすると、尿は粒状体に吸収されず吸収シートに到達し、粒状体も長期間使用できる、という技術的事項。

6 文献6(特開平7-67489号公報)
(1)文献6の記載
文献6は、本件原出願より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、室内において飼育する犬や猫などのペットの糞尿を処理するための糞尿処理用床に関するものである。
・・・・(中略)・・・・
【0004】この発明はかゝる現状に鑑み、二重構造のペットの糞尿処理用床において、上層の砂をいつもさらさらに乾燥状態を保持することができると共に、尿などの付着が一切なく、下層の吸尿材は素早く尿を吸収し、異臭を発することがないペットの糞尿処理用床を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、この発明のペットの糞尿処理用床は、吸水防止剤で処理した撥水機能を有する砂を上層に、吸水・保水性を有する吸尿部材を下層にそれぞれ混ざらないよう配設したことを特徴とするものである。
【0006】より具体的には、上層の撥水機能を有する砂と、下層の吸尿部材との間に多孔質部材を介在させて砂と吸尿部材とが混ざらないよう配設したことを特徴とするものである。
【0007】この発明において、ペットの糞尿処理用床は、撥水機能を有する砂と吸尿部材の二層構造からなるもので、使用に際しては両者が混合しないよう敷設するものである。
・・・・(中略)・・・・
【0013】
【作用】この発明のペットの糞尿処理用床は、上層に吸水防止剤で処理した砂を、下層に吸水・保水性を有する吸尿部材を混合しないよう配設した二重構造を有するので、ペットが排泄した尿は、上層の砂に触れたのち下層の吸尿部材によって吸収されるものであるが、上層の砂は撥水性を有するため、尿が砂の表面に付着しないので、尿の分解・醗酵による異臭の発生がなく、常にさらさらの乾燥状態を保持している。また、砂を通過した尿は、下層に配された吸尿部材によって直ちに吸収されるため、尿から発する悪臭がなく、かつ吸尿部材は多くの尿を吸収することができるため頻繁な取替えをする必要がない。
【0014】
【実施例】以下、この発明のペットの糞尿処理用床の実施例を添付の図面に基づいて具体的に説明する。実施例はいずれも猫の糞尿処理用床であって、図1に示す糞尿処理用床1は、例えば上部を金網もしくはパンチングメタルなどの多孔質部材3によって区画した矩形状のトイレ2であって、多孔質部材3の下方には出し入れ自在な皿状容器4が設けられている。前記多孔質部材3上には、平均粒度が約1.0mm程度の川砂100重量部に対して、シラン系化合物としてヘキシルトリエトキシシラン1重量%を含む水性乳濁液100重量部を混合攪拌し、乾燥して得た含水率が約5%の撥水機能を有する砂5を敷設し、下方の皿状容器4には、アクリル酸ソーダ重合体からなる粒径が約2.0mmの吸尿部材6を敷設したものである。
【0015】図2に示す糞尿処理用床11は、矩形状のトイレ12の床面に図1のトイレに敷設したものと同質の吸水部材13を不織布でサンドイッチして形成したシート部材14を載置すると共に、このシート部材14の上面に透水性のシート15を介在させて図1のトイレ2の多孔質部材3上に敷設したと同質の撥水機能を有する砂16を敷設したものである。」

(2)文献6に記載された技術的事項
上記(1)より、文献6には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる。
二重構造を有するペット用のトイレにおいて、下層の吸尿部材に対して、上層の多孔質部材上に撥水機能を有する砂を敷設する、という技術的事項。

7 文献7(特開2013-202038号公報)
(1)文献7の記載
文献7は、本件原出願より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。

「【0003】
動物用トイレ砂に関し、室内で飼育される動物、とくに猫は、自身の排泄物を砂に埋めて隠す習性を有し、トイレでの排泄の後で、トイレ砂をかき混ぜる習性、すなわち「砂かき行動」を有することが知られている。」


「【0023】
本発明において動物用トイレ砂を構成する「粒状物の集合体」は、とりわけ動物の排泄物に係る液体の通過を許容しつつ、その臭気を抑制する役割を果たすものであり、無機多孔質材料による粒状基材を主体として構成されている。」


「【0043】
本発明における粒状物は、はっ水処理が施されていることが好ましい。粒状物にはっ水処理を施すことにより、粒状物の液透過率が向上する。また、粒状物に尿等の液体が吸収されにくくなり、粒状物の寿命を伸ばすことができる。更に、粒状物への液残りが低減され、臭いの発生を低減させることもできる。
はっ水処理は、例えば粒状物の表面に撥水剤をスプレー塗布することにより行うことができる。はっ水剤としては、パラフィンワックス等のワックス系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。
粒状物の表面にはっ水剤を塗布する場合、その塗布量は、粒状物の質量に対して、好ましくは0.05?1質量%、更に好ましくは0.1?0.5質量%である。」


「【0055】
本発明の動物用トイレ砂は、液通過率が大きいことから、特に、尿等の水分を吸収する吸液シートの上に、直接又はスノコ等を介してトイレ砂を敷く二重構造タイプの動物用トイレに好適に用いられる。」


「【0064】
当該動物用トイレ100は、図1および図2に示すように、多数の粒状物の集合体として構成される動物用トイレ砂140を貯留する箱状の動物用トイレ砂収納容器110と、前記収納容器110の下方に位置し出し入れ自在に組み込まれた吸液シート150を収納する吸液シート収納容器120と、前記動物用トイレ砂収納容器110の上部に側面を覆うようにして設置された側面カバー130を主体に構成されている。トイレ砂収納容器110の底面部112は、複数の空孔114を有している。この空孔114は、多角形状または円形状に形成され、動物用トイレ砂140が下方へと通過することを規制し保持することができる大きさに設定される。そして当該底面部112上に動物用トイレ砂140が敷設されるとともに、吸液シート収納容器120内に、吸液シート150が敷設された状態で動物のトイレとしての利用に供される。」

(2)文献7に記載された技術的事項
上記(1)より、文献7には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる。
室内で飼育される動物について、自身の排泄物を砂に埋めて隠す、またトイレでの排泄の後でトイレ砂をかき混ぜる、という知られた習性を考慮し、吸液シートの上にスノコ等を介してトイレ砂を敷く二重構造タイプの動物用トイレにおいて、動物用トイレ砂を構成する粒状物として、はっ水処理が施されたものを用いることにより、粒状物の液透過率が向上するとともに、粒状物の寿命を伸ばすことができる、という技術的事項。

8 文献8(特開2006-129723号公報)
(1)文献8の記載
文献8は、本件原出願より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用トイレに関し、特に、トイレ本体を簀の子により上下に区画して、上層部分に排泄物処理材を敷設し、下層部分に尿吸収材を敷設してなるペット用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、犬や猫などのペットの糞尿を処理するためのペット用トイレとして、トイレ本体を多孔質部材である簀の子により上下に区画して、上層部分(上方部分)に排泄物処理材を敷設し、下層部分(下方部分)に例えば吸水性樹脂、植物性繊維、パルプ等からからなる尿吸収材を敷設してなるものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
これらのペット用トイレにおいては、上層部分に敷設された排泄物処理材は、ペットが排泄する尿を素早く通過させ、通過した尿を簀の子の透液孔を介して下層部分に落下させ、落下した尿を下層部分に配置された尿吸収マット等の尿吸収材に積極的に吸収させるものである。そして、尿が吸収された尿吸収材は、一定期間毎に交換する必要がある。その交換作業を容易にするものとして、尿吸収材を敷設した下層部分のみを引き出し式とする構造が知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7-67489号公報
【特許文献2】特開2003-180182号公報
【特許文献3】実開昭61-22461号公報」


「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好ましい一実施形態に係るペット用トイレ10は、図1及び図2に示すように、上面が略矩形形状に開口する箱形のトイレ本体13を、多孔質部材である簀の子14によって上下に区画すると共に、簀の子14の上方の砂収容部21に多数のペレット状の排泄物処理材15を投入して敷設する一方で、簀の子14の下方において薄底の平面略矩形形状のトレー16を引き出しとして、トイレ本体13に引き出し式に出し入れ可能に設けたものである。またトレー16には、簀の子14の透液孔12を通過して砂収容部21から落下する尿を吸収する、尿吸収材である尿吸収マット11が、着脱交換可能に収容されている。」


「【0015】
ここで、本実施形態によれば、トイレ本体13の上層部分を構成する砂収容部21には、ペレット状の排泄物処理材15が敷設される。排泄物処理材15は、撥水機能を有することが好ましく、例えば植物由来の素材の粉砕物及び合成樹脂を含む成形物からなるものが用いられる。これらの成形物は、吸水率が好ましくは1?10%、より好ましくは1?5%の低吸水性を備えることから、ペットが排泄する尿を素早く通過させて、簀の子14の透液孔12を介して下層部分に落下させ、当該下層部分に配置されたトレー16内の尿吸収マット11に尿を積極的に吸収させるものである。
【0016】
なお、ここでいう「吸水率」とは、25℃の水中に3秒間浸漬した被測定物の重量増加率をいい、次の式で表される。
(浸漬後の被測定物重量-浸漬前の被測定物重量)/(浸漬前の被測定物重量)×100(%)」

(2)文献8に記載された技術的事項
上記(1)より、文献8には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる。
トイレ本体を簀の子により上下に区画して、上層部分に排泄物処理材を敷設し、下層部分に尿吸収材を敷設してなるペット用トイレにおいて、上層部分に敷設する排泄物処理材は、ペットが排泄する尿を素早く通過させ、通過した尿を簀の子の透液孔を介して下層部分に落下させ、落下した尿を下層部分に配置された尿吸収マット等の尿吸収材に積極的に吸収させるものであるから、撥水機能を有することが好ましい、という技術的事項。

9 文献9(特開昭58-76728号公報)
文献9は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「(1)発明の技術分野
この発明はロードセル式台秤に関する。
・・・・(中略)・・・・
前記各ロードセル4?7には第3図に示すように端部が下方に折れ曲った載せ皿23を載置している。前記載せ皿23における前記各ロードセル4?7の凸部材16?19と対向する部位には第4図に示すように台座の残りの一部を形成する導電性弾性材からなる凹部材24,25,26,27を固着させている。前記各凹部材24?27は凹所内面が外方に向かって広がる形状を為し、その広がりが前記各凸部材16?19のテーパより充分大きくなるように設定されている。」(第2頁左上欄第5?6行、第3頁左上欄第1?11行)

10 文献10(特開2012-88104号公報)
文献10は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の重量を数値化して電気的に表示するデジタル秤に関するものであって、特に、該デジタル秤の筐体内を乾燥させるための乾燥剤を有するデジタル秤に関する。
・・・・(中略)・・・・
【0043】
ロードセル40は、起歪体29と、この起歪体29の所定の部位に貼付された歪ゲージ30とを備えている。また、皿受31は、水平に延在する受け部31aと、この受け部31aの中央部に下方に突設された取り付け部31bとを備えている。そして、起歪体29がその一端を支持されるようにして片持ち状に底板5の上面に取り付けられている。そして、起歪体29の他端部が皿受31の取り付け部31bを支持している。
【0044】
皿受31の取り付け部31bの上端部は、カバー部材6の開口8から上方に突出しており、その上端に受け部31aが位置し、この受け部31aに計量皿2が取り付けられている。これにより、計量皿2に物品が載置されると、当該物品の荷重が皿受31を介してロードセル40の起歪体29に加わり、それによる起歪体21の歪が歪ゲージ30によって検出される。このようにして、計量皿2に載置された物品の重量が検出される。」

11 文献11(特開2003-322556号公報)
文献11は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子秤に係り、特に計量皿の下部に連結一体化されている荷重検出機構を収容する収容室に対し防水がとられた電子秤(以下、防水秤という)に関する。
・・・・(中略)・・・・
【0026】下ケース10上には、矩形筒型の立壁12に取り囲まれたロードセル収容室14が設けられて、ここにロードセル20が収容されている。ロードセル20は、起歪体21に歪みゲージ(図示せず)を貼り付けて構成され、起歪体21の荷重作用側端部には金属製上プレート枠22aが、起歪体21の固定側端部には金属製下プレート枠22bがそれぞれ固定されたユニットとして構成されている。そして、収容室14の底面に下プレート枠22bがねじ固定されている。ロードセル20(金属製上プレート枠22a)の上方には、連結部材42を介して計量皿40が連結一体化されている。計量皿40は、プラットホーム40aとこれを覆うカバー40bで構成されている。」

12 文献12(特開2002-323388号公報)
文献12は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】負荷荷重の大きさによって歪みを生ずる起歪部に装着され歪み量を感じる歪み量センサーを備え、該歪み量センサの出力信号をデジタル荷重信号に変換し出力するデジタル荷重信号変換手段を外界環境から保護するためのロードセル構造に関する。
・・・・(中略)・・・・
【0009】
【課題を解決するための手段】従ってこのような問題を解決するために、請求項1および2に記載の発明は可動部と固定部が2本の可撓アームによって接続されたロバーバル機構を有するロードセルであって、上記可動部と固定部との間に設けられた起歪部に設けられた荷重変換手段が防水性を有する密閉保護手段によって密閉保護するように設けて密閉保護室を形成し、上記の荷重変換手段に接続された導線は上記の密閉保護室から上記固定部内部を通って固定部外壁に至る貫通穴を通して固定部外壁まで配線され、上記の固定部外壁に設けられた防水コネクタ等の防水シール手段を介してロードセル外部へ導かれる構成の防水型のロバーバル構造のロードセルであって、上記の固定部に空洞部を設けて該空洞部内にデジタル荷重信号変換手段を収納すると共に上記の空洞部に防水対策を施したことを特徴としている。つまり上記の起歪部に設けられる荷重変換手段及び前記荷重変換手段から出力され、ロードセル金属体に付属する防水コネクタに至るまでの導線が前記防水性を有する密閉保護手段及び前記ロードセル金属体によって密閉保護されており、前記ロードセル金属体の固定部に空洞部と称するデジタル荷重信号変換手段を収納する収納室を固定部外壁面から穴加工にて形成し、防水性能を持たせたものである。」

13 文献13(特開2002-365146号公報)
文献13は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロードセル、特に、起歪体と、起歪体に設けられた歪ゲージからなるブリッジ回路とを備えたロードセルを提供することにある。
・・・・(中略)・・・・
【0006】そこで、ゴム、ポリウレタン等のコーティング材料で起歪体を被覆して起歪体表面に被膜を形成し、これにより、起歪体の防水性、防錆性を向上させる技術が既に提案されている。
・・・・(中略)・・・・
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のロードセルは、起歪体と、ブリッジ回路と、被膜とを備えている。ブリッジ回路は、起歪体に設けられた歪ゲージからなる。被膜は、起歪体とは異なる金属材料からなる部材が取り付けられる起歪体の部位を少なくとも覆うよう起歪体に形成されるとともにガラス転移温度が40℃以上の樹脂からなる塗膜層を含み、電気絶縁性を有する。」

14 文献14(特開2007-330200号公報)
文献14は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
この発明は、犬や猫等のペット用の自動体重計測システムに関するものである。
・・・・(中略)・・・・
【0012】
この実施例のペット用自動体重計測システムは、図1に示すように、重量計測手段としての体重計1と、重量算出手段としての管理装置2とを具え、ここにおける体重計1は、体重計本体3と制御部4とを有しており、ここで、体重計本体3は、図2に示すように、ペットの居場所としての図示しないトイレ用砂場を上に設けられた天板5と、その天板5を支持するように角パイプ6で構成された天板支持フレーム7と、その天板支持フレーム7の長辺をなす両側部の角パイプ6内に遊挿されてそれらの角パイプ6の中央部をそれぞれ中央部で支持する二本の角棒状の計測梁8と、それらの計測梁8の長手方向両端部に設けられて上記角パイプ6の下面の穴から下方に突出する支持脚9と、二本の計測梁8の各々の中央部と長手方向両端部との間の中間部にそれぞれ配置されて計測梁8の上下面に貼着され、両端支持梁としての計測梁8の中央部の下方への撓み量に応じて伸縮して抵抗値を変化させる重量センサーとしての合計8枚の歪ゲージ10とを有している。
【0013】
また、制御部4は、図3に示すように、二本の計測梁8の各中間部の上下面に貼着された二枚の歪ゲージ10と組み合わせて四組のブリッジ11を構成するための抵抗12と、それらのブリッジ11に基準電圧を供給するブリッジドライバー13と、それらのブリッジ11の出力信号をそれぞれ増幅する四台のアンプ14と、それらのアンプ14の出力信号をアナログデータからデジタルデータに変換するアナログ・デジタル(A/D)コンバーター15と、そのA/Dコンバータ15が出力する四組のブリッジ11の出力信号を所定時間(例えば1分)毎に入力し、四組のブリッジ11の出力値を合計して、その合計値と事前に所定重量の錘を用いたキャリブレーションで求めた基準値とを比較することにより、天板5に加わっている重量を求める中央処理ユニット(CPU)16と、天板5上に乗ったペットPの例えば首輪等に付けられた通常のRFタグTに対しアンテナ17aにより無線で交信してそのRFタグTに記録された当該ペットPの名前等に対応する識別情報(番号等)を読み出すRFタグリーダー17と、CPU16が例えば所定時間毎に求めた重量データをその重量データの計測時にRFタグリーダー17が読み取ったペットPの識別情報とともに記録するメモリー18と、メモリー18が記録した重量データとその重量データの計測時にRFタグリーダー17が読み取ったペットPの識別情報とを画面上に表示するディスプレイ19(図1では図示せず)と、メモリー18が記録した重量データとその重量データの計測時にRFタグリーダー17が読み取ったペットPの識別情報とを無線で送信する送信機(TX)20と、商用電源からの交流電圧を適当な電圧の直流に変換してCPU16等に供給する電源21とを有している。
【0014】
一方、管理装置2は、TX18が送信するデータを受信する受信機(RX)22と、そのRX22が受信した重量データおよびその重量データの計測時のペットPの識別情報を逐次記録するメモリー23と、そのメモリー23が逐次記録した重量データおよびペットPの識別情報からペットPの識別情報毎に重量データの変化状態を監視して、前回の重量データより重量が最低体重以上増加した場合はペットPが天板5上のトイレ用砂場に乗り、前回の重量データより重量が最低体重以上減少した場合はペットPが天板5上のトイレ用砂場から降りたと判断し、後述の如くしてペットPの体重等を計算して求めるCPU24と、CPU24にペットPの名前や乗り降り判断のための上記最低体重等の設定条件を入力あるいは指定するためのキーボードやマウス等のインターフェース25と、CPU24がペットPの識別情報毎に求めたペットPの体重等のデータを画面上に表示するディスプレイ26と、商用電源からの交流電圧を適当な電圧の直流に変換してCPU24等に供給する電源27とを有しており、具体的には、RX22を除けば通常のパーソナルコンピュータ(PC)28で構成されている。
【0015】
しかしてCPU24は、ペットPの識別情報毎に、上記の如くして天板5上のトイレ用砂場に対するペットPの乗り降りを検出し、天板5上のトイレ用砂場にペットPが乗っている時の計測重量から、天板5上のトイレ用砂場にペットPが乗っていない時の計測重量を引き算することでペットPの体重を求めるとともに、例えば天板5上のトイレ用砂場にペットPが乗ってから降りた直後の計測重量(排泄物がトイレに残っていると推測される)から、天板5上のトイレ用砂場にペットPが乗る直前の計測重量(排泄物は掃除されていてトイレにないと推測される)を引き算することでペットPの排泄物の重量を求め、それらの計測データを、例えばそのデータの計測時である、天板5上のトイレ用砂場にペットPが乗っている時の時刻とともにメモリー23に出力してそこに記録させ、さらに、ペットPの識別情報毎に、その排泄物の重量データの、所定期間、例えば一日の間での数を所定期間の排泄回数として求め、その排泄回数データをメモリー23に出力してそこに記録させ、さらにディスプレイ26に、それら体重および排泄物重量のデータを、ペットPの識別情報に対応するペットPの名前とともに表示させる。」

15 文献15(特開2003-28707号公報)
文献15は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数のロードセルによって荷重を測定する重量測定システムに関する。
・・・・(中略)・・・・
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による重量測定システムは、複数のデジタルロードセルを備えている。これらデジタルロードセルでは、起歪体に荷重検出素子を設けられている。荷重検出素子としては、印加された荷重に応答してアナログ荷重信号を生成するものであれば、種々のものを使用することができる。この荷重検出素子からのアナログ荷重信号をデジタル変換手段がデジタル荷重信号に変換する。さらに、通信手段が設けられている。この通信手段は、有線通信または無線通信を行うものである。各起歪体が、荷重を受けるように配置されている。例えば1つの載台の複数の箇所に配置される。前記各デジタルロードセルの通信手段が互いに通信可能であり、前記各デジタルロードセルの前記各デジタル荷重信号が前記通信手段を介して前記各デジタルロードセルのうち少なくとも1台に伝送される。デジタル荷重信号が伝送された前記デジタルロードセルは、前記伝送されたデジタル荷重信号及び自己のデジタル荷重信号を処理して、各ロードセルが受けた荷重を表すデジタル重量信号を生成する秤機能演算手段を有している。秤機能演算手段は、少なくとも初期荷重調整手段、スパン調整手段及び零点調整手段を、備えている。
【0007】本発明による重量測定システムでは、各デジタルロードセルのうち、少なくとも1台が、秤機能演算手段を備えているので、特別にデジタル指示計を設ける必要がない。
【0008】前記各デジタルロードセルが、前記秤機能演算手段を有するものとできる。さらに、各デジタルロードセルは、前記通信手段を介して汎用情報機器と通信可能で、前記汎用情報機器から指定されたデジタルロードセルの前記秤機能演算手段が動作する。
・・・・(中略)・・・・
【0055】しかも、汎用情報機器16の表示装置のどの画面においてどの命令コードをどのような構成したソフトキーを操作することによって発生させるかの決定、親ロードセルからの各種データを汎用情報機器16の表示装置のどの画面においてどのような形態で表示させるかは、全て汎用情報機器16の使用者の自由意思で決定することができるので、使用者は、極めてフレキシビリティの高い重量測定システムを構成することができる。」

16 文献16(特開2006-226919号公報)
(1)記載事項
文献16は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。


「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の飲水量・排尿量を経時的に自動測定する装置、及びそれを用いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
犬などの動物を用いて排尿量や排尿回数を測定し、それを動物の健康状態や薬剤の影響を調べるための指標とすることが、泌尿器領域の薬理学的研究等において行われている。そして、排尿量や排尿回数が飲水量の影響を受けることは周知であり、薬理試験においては、動物の飲水量も同時に測定し、排尿量と飲水量との時間的及び量的な関連性を明らかにすることが重要視されている。」


「【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施例を図1?図3に基づいて説明する。本実施例は、本発明に係る動物用飲水量・排尿量自動測定装置及びそれを用いたシステムについて示すものである。
【0021】
図1に示すように、本実施例に係る動物用飲水量・排尿量自動測定装置(1)は、給水重量、零水重量、排尿重量のそれぞれの変化量を別個に測定する給水重量測定部(2)、零水重量測定部(3)、排尿重量測定部(4)、さらに制御盤(5)を備えて構成されるものである。
給水重量測定部(2)は、外部から手動にて補給可能な給水タンク(9)と、給水タンク(9)を懸吊してその重量変化を給水重量の変化として測定するロードセル(10)とを備えており、タイヤ(7)によって床面上を移動自在とされたフレーム(6)の所要の位置に、高さ調節可能に固定されている。
【0022】
一方、零水重量測定部(3)、及び排尿重量測定部(4)は、動物が摂水する際に零す水を採取するための採水カップ(50)、及び動物が排出する尿を採取するための採尿カップ(51)(図3参照)を載置し、それらの重量変化をそれぞれ零水重量、排尿重量の変化として測定するロードセル(11)(12)をそれぞれ備えており、アーム(15)(16)を介してフレーム(6)の所要の位置に、高さ調節可能に、かつ水平面内における位置調節自在に固定されている。
【0023】
制御盤(5)は、給水重量測定部(2)、零水重量測定部(3)、排尿重量測定部(4)のロードセル(10)(11)(12)とそれぞれ配線接続されて、ロードセル(10)(11)(12)から受けた電気信号をデジタルデータに変換して出力する機能を有するものであり、フレーム(6)と一体に固設されている。
制御盤は、例えば図2に示すように、正面に、ロードセル(10)(11)(12)による測定値を表示する給水重量表示部(20)、零水重量表示部(21)、排尿重量表示部(22)、背面に、ロードセル配線口(23)、電源コード接続口(24)、社内LAN接続口(25)、さらに左側面に、電源スイッチ(26)、サービスコンセント(27)、LAN接続口(28)等を設けて構成する。
【0024】
次に、上記の装置(1)を用いて構成した動物用飲水量・排尿量自動測定システム(30)について、図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、本実施例に係る動物用飲水量・排尿量自動測定システム(30)は、上記した装置(1)と、装置(1)近傍の所要の位置にセットされるケージ(31)と、回線(55)を介して装置(1)と接続されるコンピュータ(32)とから構成されるものである。
【0025】
ケージ(31)は、試験対象の動物(57)を格納するためのもので、図3に示すように、タイヤ(46)によって床面上を移動自在とされた支持枠(45)を下方に備えて構成される。
図3に示すように、ケージ(31)の側壁面、及び底面には、格納された動物(57)が飲水を摂取可能とする給水部(32)、及び格納された動物の排尿を処理可能とする排尿部(33)がそれぞれ外設されている。
【0026】
ケージ(31)側壁面の給水部(32)が外設される部分には、格納された動物(57)がケージ(31)の外に顔を出せる程度の大きさの開口(図示せず)が設けられ、給水部(32)には、格納された動物(57)が給水重量測定部(2)から給水される水を摂取できるように飲み口(35)が配設されている。
飲み口(35)は、図3に示すように、給水重量測定部(2)の給水タンク(9)と給水ホース(36)を介して接続されるとともに、給水タンク(9)よりも下方に配置されており、動物が摂水を望むときに舌等で飲み口(35)を押圧すると、給水ホース(36)内を自然流下する水が放出され、押圧を解除すると、水の放出が停止される構造を有している。
給水部(32)下部の飲み口(35)下方には、採水口(37)が設けられ、採水口(37)に向う傾斜面によって動物が摂水時に零す水を収集し、下方に載置される採水カップ(50)に零水を漏れなく流下させるようになされている。
【0027】
一方で、排尿部(33)下部には採尿口(40)が設けられるとともに、排尿部(33)上方には格納される動物(57)を載置する底板兼糞尿分離網(41)が設けられており、底板兼糞尿分離網(41)を通じて糞と分離された排尿を、採尿口(40)に向う傾斜面によって収集し、下方に載置される採尿カップ(51)に排尿を漏れなく流下させるようになされている。
【0028】
コンピュータ(32)は回線(55)を介して制御盤(5)と接続されるが、給水重量測定部(2)、零水重量測定部(3)、排尿重量測定部(4)から送られる電気信号を、制御盤(5)がデジタルデータに変換したものを、それぞれ給水重量測定値、零水重量測定値、排尿重量測定値として、コンピュータ(32)が所与の時間間隔(例えば2秒間隔)で取得している。
なお、本実施例では、給水重量測定値、零水重量測定値、排尿重量測定値は、それぞれ給水タンク(9)、採水カップ(50)、採尿カップ(51)自体の重量を含んだ値として測定され取得されるものであるが、給水タンク(9)、採水カップ(50)、採尿カップ(51)自体の重量を除いた実質の給水重量、零水重量、排尿重量が直接に測定値として取得される設定としてもよい。
・・・・(中略)・・・・
【0037】
次いで、S7によって排尿重量測定値(Z)が取得される。この排尿重量測定値(Z)は、採尿カップ(51)重量を測定した排尿重量測定部(4)のロードセル(12)からの電気信号を、制御盤(5)がデジタルデータに変換処理し、コンピュータ(32)に送信しているものである。」

(2)記載された発明
上記(1)より、文献16には、次の発明(以下、「文献16発明」という。)が記載されていると認められる。

「犬などの動物を用いて排尿量と飲水量を同時に測定する薬理学的研究のための装置であり、
試験対象の動物(57)を格納する、タイヤ(46)によって床面上を移動自在とされた支持枠(45)を下方に備えて構成されるケージ(31)と、
ケージ(31)の側壁面、及び底面にそれぞれ外設された、格納された動物(57)が飲水を摂取可能とする給水部(32)、及び格納された動物の排尿を処理可能とする排尿部(33)とを有し、
給水部(32)には、給水タンク(9)の給水重量の変化を測定するロードセル(10)を備えた給水重量測定部(2)と、格納された動物(57)が給水タンク(9)から給水される水を摂取できる飲み口(35)とが配設され、
給水部(32)下部には、動物が摂水時に零す水を漏れなく流下させる採水カップ(50)と、採水カップ(50)を載置し零水重量の変化を測定するロードセル(11)とを備えた零水重量測定部(3)が設けられ、
排尿部(33)には、下部に採尿口(40)が、上方には格納される動物(57)を載置する底板兼糞尿分離網(41)が設けられるとともに、底板兼糞尿分離網(41)を通じて糞と分離された排尿を、採尿口(40)に向う傾斜面によって収集し、下方のロードセル(12)上に載置される採尿カップ(51)に漏れなく流下させて、排尿重量を測定する排尿重量測定部(4)が設けられ、
制御盤(5)が、給水重量測定部(2)、零水重量測定部(3)、排尿重量測定部(4)のロードセル(10)(11)(12)から受けた電気信号をデジタルデータに変換してコンピュータ(32)に送信する、
動物用飲水量・排尿量自動測定装置(1)。」

17 文献17(特許第4596669号公報)
(1)記載事項
文献17は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。


「【0002】
【従来の技術】
医療実験用又はペット用等の小動物は、金網等によって形成されたケージに格納して飼育される場合が多いが、小動物の排泄物の処理は、一般に、ケージの床に排泄物処理用のマットを敷設しておき、汚れた度にマットを取り替えるという方法で行われている。
【0003】
特に、医療実験用の施設等、小動物を多数飼育する施設では、伝染病の蔓延を防止する為にもケージの衛生管理が重要であり、排泄物の処理及びケージ床部の清掃を頻繁に行う必要がある。
又、小動物は格納状態で飼育されるので、ストレスがたまり易く、運動不足にもなるので、運動(即ち、遊び)の機会を適度に与える必要がある。その為、連続歩行の可能な回転式玩具等をケージ内に配設した飼育装置も提案されている。
【0004】
【発明の解決しようとする課題】
しかし、排泄物の処理及びケージ内の清掃には労力を要し、多数の小動物を飼育する施設では、その為の人員及び作業時間が多大になる。又、玩具を装備したケージを導入するにはコストがかかる。
そこで、本発明は、ケージの清掃や排泄物の処理の省力化が図れ、ケージ内の動物に適度な運動の機会を与えることができ、排泄物の実験材料又は飼料としての活用を効率化できる飼育装置の提供を目的とする。」


「【0012】
【発明の実施の形態】
図1及び図2に示す動物のサニタリー飼育装置1は、ネズミ等の医療実験用の動物を、1つの動物格納室で格納状態にて飼育するものであり、ケージ部材10、床用コンベヤ装置30、洗浄装置50、排泄物処理用コンベヤ装置70、排泄物回収箱90、を含んで構成され、支持台2に固定支持される。
【0013】
ケージ部材10は、動物格納室(即ち、ケージ)の天井と周側壁とを構成するものであり、天面部11と側壁部12、13、14、15とを含んで構成される底面開放型の箱体である。
ケージ部材10は、金属製又は樹脂製の網、或いは多透孔板等、通気可能な材料で構成されており、対向する2つの側壁部(図中の左側側壁部15、と右側側壁部13)に取り付けられたL字型の支持脚16、16を介して、支持台2に固定支持されている。
【0014】
ケージ部材10には、飼育動物の出入用の扉17と、給水装置18と、給餌装置19と、が設けられている。
給水装置18は、この飼育装置1の外部から延設される給水管の先端に形成されたノズルであり、適宜、ケージ内に水分を供給する。
給餌装置19は、ケージ天面部11のくり抜き部位に配設された餌皿である。かかる餌皿は、長方形の1つの角部を凹状に切り欠いた形状の底面部を有し、該底面部の周縁を起立させた形状である。
・・・・(中略)・・・・
【0016】
かかるケージ部材10の下方には、自動搬送床部を構成するための床用コンベヤ装置30が配設されている。
床用コンベヤ装置30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に対して平行且つ水平に並列配置された従動ローラ32と、これらのローラ31、32の間に巻掛けられた無端環状のコンベヤベルト33と、を含んで構成され、ケージ部材10の開放底部を下方から覆うようにして近接させ、駆動ローラ31及び従動ローラ32の支持脚35、39を介して支持台2に固定される。
・・・・(中略)・・・・
【0018】
従動ローラ32は、回転軸38を軸受する支持脚39、39を介して、支持台2に取り付けられている。
駆動ローラ31と従動ローラ32とには、コンベヤベルト33が巻き掛けられており、駆動ローラ31の回転に伴って、図中B方向に移動する。
かかるコンベヤベルト33は、ローラ径に追従し得る程度の可撓性と、ケージの床面として機能し得る程度の緊張性及び強度を有する帯状部材によって構成され、該帯状部材には、飼育動物の排泄物が通過できる程度の透孔が多数設けられている。この場合、コンベヤベルトの材質としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル製のものが好ましい。又、多透孔部材としては、網状の部材、或いは多透孔板が好ましい。
・・・・(中略)・・・・
【0023】
回転ブラシ51の下方には、複数の洗浄ノズル52が設けられている。
洗浄ノズル52は、この飼育装置1の外部から延設される給水管に配設されており、回転ブラシ51とコンベヤベルト33との間を目掛けて、洗浄水を吐出する構成である。
床用コンベヤ装置30のコンベヤベルト33の環の内側には、排泄物受け部としての排泄物処理用コンベヤ装置70が配設されている。
【0024】
排泄物処理用コンベヤ装置70は、駆動ローラ71と、駆動ローラ71に対して平行且つ水平に配置された従動ローラ72と、コンベヤベルト73と、を含んで構成される。
駆動ローラ71は、水平方向に延びる回転軸74を有し、該回転軸74を軸受する支持脚75、75を介し、支持台2に取り付けられている。駆動ローラ71の回転軸74の一端には、駆動ローラ71を回転させる為のモータ装置76が連結されている。
【0025】
従動ローラ72も回転軸77を有し、該回転軸77を軸受する支持脚78、78を介して、支持台2に取り付けられている。
排泄物処理用コンベヤ装置70のローラ71、72は、床用コンベヤ装置30のローラ31、32に対して直角に配置されており、これら4つのローラ71、72、31、32は、ケージ部材10を取り囲むように配置される。
【0026】
排泄物処理用コンベヤ装置70のコンベヤベルト73は、ゴム、樹脂、布、或いは紙等、可撓性を有する帯状部材からなり、駆動ローラ71と従動ローラ72とに巻掛けられ、床用コンベヤ装置30のコンベヤベルト33の移動方向(図中B方向)に対して平面上直交する方向(図中D方向)に移動する。
コンベヤベルト73の上側ベルトは、ケージの床部(即ち、床用コンベヤ装置33の上側ベルト)の透孔を通過した排泄物をこぼさず受け止めることができるよう、ケージ部材10の開放底部を包含し得る面積を有する。
【0027】
コンベヤベルト73の上側ベルトの移動先側の端部には、排泄物回収箱90が配置されている。
排泄物回収箱90は、排泄物処理用コンベヤ装置70のコンベヤベルト73のベルト幅に対応する長さの側壁部91,92を有する直方体状の天面開放型の容器であり、排泄物処理用コンベヤ装置70の側の側壁部91の上端縁には、排泄物離脱手段としての掻取板93が、排泄物処理用コンベヤ装置70の側に突出させて取り付けられている。かかる排泄物回収箱90は、掻取板93が排泄物処理用コンベヤ装置70のコンベヤベルト73に摺接するように、支持台2上に配置される。
・・・・(中略)・・・・
【0030】
かかるサニタリー飼育装置1の使用状態を説明する。
飼育動物は、ケージ部材10と床用コンベヤ装置30の上側ベルトとによって規制された空間内で飼育されている。
飼育動物の排泄物は、床用コンベヤ装置30のコンベヤベルト33の透孔を通過して、排泄物処理用コンベヤ装置70のコンベヤベルト73上に落下する。
【0031】
コンベヤベルト73上に落下した排泄物は、排泄物処理用コンベヤ装置70の作動によって搬送され、上側ベルトの移動先側の端部において、掻取板93で掻き落とされて排泄物回収箱90内に回収される。
一方、飼育動物の排泄物が、床用コンベヤ装置30のコンベヤベルト33の透孔を通過せず、ベルト面に残留或いは付着してしまった場合は、床用コンベヤ装置30を作動させて排泄物を搬送し、ケージ側壁部12の間隙21を通過させて、ケージ外へと排出する。
・・・・(中略)・・・・
【0034】
かかる構成は、例えば、図4に示すような飼育装置作動システム100によって可能となる。
かかる飼育装置作動システム100は、排泄物回収装置110、排泄物検査装置120と、制御装置130と、スイッチ装置140と、を本実施形態のサニタリー飼育装置1に追加することによって可能となる。
【0035】
排泄物回収装置110は、排泄物受け部90から排泄物回収管111を介して回収器113、115に排泄物を回収する構成である。排泄物回収管111には、スイッチ装置140が介装されており、スイッチ装置140により電磁バルブ114、116が作動されることによって、排泄物の性状(即ち、乾燥糞と汚水・汚物等)が分類され、夫々の回収排泄物がバキューム機構によって各回収器113、115内に収容される。
【0036】
排泄物検査装置120は、回収された排泄物の量、性状、成分及び排泄の回数等を、目視や成分分析等によって監視し、その結果を制御装置130へと出力する構成である。排泄物の監視は、人間が行ってもよいし、測定機器によって自動的に行ってもよい。又、制御装置130への出力は、測定機器から自動的に入力されるものであってもよいし、オペレータが手入力するものであってもよい。
【0037】
制御装置130は、検査結果入力部131と動作情報記憶部133と制御信号出力部135とを含んで構成され、排泄物の状態に応じてサニタリー飼育装置各部の作動を制御する。
検査結果入力部131には、排泄物検査装置120からの検査結果Kが入力される。」

(2)記載された発明
上記(1)より、文献17には、次の発明(以下、「文献17発明」という。)が記載されていると認められる。
「ネズミ等の医療実験用の動物を、1つの動物格納室で格納状態にて飼育する動物のサニタリー飼育装置1であり、ケージ部材10、床用コンベヤ装置30、洗浄装置50、排泄物処理用コンベヤ装置70、排泄物回収箱90、を含んで構成され、
ケージ部材10は、動物格納室(即ち、ケージ)の天井と周側壁とを構成するものであり、天面部11と側壁部12、13、14、15とを含んで構成される底面開放型の箱体であり、給水装置18と、給餌装置19とが設けられており、
ケージ部材10の下方には、自動搬送床部を構成するための床用コンベヤ装置30が配設され、床用コンベヤ装置30は、無端環状のコンベヤベルト33を含んで構成され、コンベヤベルト33は、ケージの床面として機能し得る程度の緊張性及び強度を有する帯状部材によって構成され、該帯状部材には、飼育動物の排泄物が通過できる程度の透孔が多数設けられており、
床用コンベヤ装置30のコンベヤベルト33の環の内側には、排泄物受け部としての排泄物処理用コンベヤ装置70が配設されており、排泄物処理用コンベヤ装置70のコンベヤベルト73は、ゴム、樹脂、布、或いは紙等、可撓性を有する帯状部材からなり、床用コンベヤ装置30のコンベヤベルト33の移動方向に対して平面上直交する方向に移動し、コンベヤベルト73の上側ベルトは、床用コンベヤ装置33の上側ベルトの透孔を通過した排泄物をこぼさず受け止めることができるよう、ケージ部材10の開放底部を包含し得る面積を有し、コンベヤベルト73の上側ベルトの移動先側の端部には、排泄物回収箱90が配置されており、
飼育動物は、ケージ部材10と床用コンベヤ装置30の上側ベルトとによって規制された空間内で飼育され、飼育動物の排泄物は、床用コンベヤ装置30のコンベヤベルト33の透孔を通過して、排泄物処理用コンベヤ装置70のコンベヤベルト73上に落下し、コンベヤベルト73上に落下した排泄物は、排泄物処理用コンベヤ装置70の作動によって搬送され、上側ベルトの移動先側の端部において、掻取板93で掻き落とされて排泄物回収箱90内に回収され、
排泄物検査装置120は、回収された排泄物の量、性状、成分及び排泄の回数等を、測定機器によって自動的に監視してもよい、
医療実験用の動物のサニタリー飼育装置1。」

18 文献18(国際公開第2011/019068号)
(1)記載事項
文献18は、本件原出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであり、図面とともに以下の記載がある。


「背景技術
[0002]
動物の排尿量や排尿回数を測定し、測定したデータを動物の健康状態や薬剤の影響を調べるための指標として用いることが、泌尿器領域の薬理学的研究等において行われている。更に、詳細に動物の健康状態や薬剤の影響を調べるために、排尿速度を測定し指標とすることが求められている。従来の動物の排尿量の測定は、例えばメスシリンダーに採取された排尿量の変化を、一定時間ごとに目視チェックをすることにより行われていたが、多大な労力を必要とするという問題があった。
[0003]
上記問題を解消するために、ノイズを自動的に除去し、更に、排尿量を自動的に確定することを目的とした電子天秤を利用する小動物排尿自動測定装置が開発されている(特許文献1を参照)。また、飲水量および排尿量を同時に連続自動測定し、飲水量と排尿量とを一元的に示す経時的データを取得するとともに、動物が飲水・排尿を行うときにのみ詳細なデータを自動的に出力することを可能とした動物用飲水量・排尿量自動測定装置、およびそれを用いたシステムが開発されている(特許文献2を参照)。
先行技術文献
特許文献
[0004]
特許文献1:特開2002-365283号公報
特許文献2:特開2006-226919号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005]
しかしながら、従来の動物の排尿量の測定は、動物の尿が壁や網などに付着してしまい、排尿のサンプリングにおいて精度が低く、正確に経時的に排尿量を計測することができなかった。また、尿量や尿の粘性の違いによりロートを伝わり天秤まで到達する時間が異なる。その結果、排尿速度が計測できず、正確さが求められる動物の健康状態や薬剤の影響を評価する上で問題があった。
[0006]
そこで、本発明では、上記した問題に鑑み、動物の排尿量のサンプリング精度が高い動物用排尿機能測定装置および動物用排尿機能測定方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007]
本発明は、上述した課題を解決するために、収容部と採取部の間に細かい網である網状部を備える点を工夫した。これにより、動物の排尿量のサンプリング精度が高い動物用排尿機能自動測定装置および動物用排尿機能自動測定方法を提供することが可能である。」


「[0021]
本発明の実施例に係る動物用排尿機能測定装置1の各構造について説明する。本発明の実施例に係る動物用排尿機能測定装置1は、図1、図2A、及び図2Bに示すように、収容部2(ケージ)、第二の収容部3、網状部取付取外部4、網状部5、注込部6、採取部7、測定部8、データ記録部9、及び排尿速度算出部10を主な構成とする。以下、各構成について具体的に説明する。尚、本発明の実施例に係る動物用排尿機能測定装置1を複数設ける際は、図1及び図2Aに示すように、可動式のパイプの棚に設置されることがあるが、設置される場所は特に限定されない。
[0022]
先ず、収容部2について説明する。収容部2は、人以外の動物を収容する。人以外の動物とは、収容部2で飼育や観察が可能な動物であれば限定されないが、例えば、サル、イヌ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、マウスが挙げられる。また、収容部2は、図4Aに示すように、略立方体の箱形であり、底面21がフッ素加工された金網、上面25が塩化ビニルで作成された透明板、側面22、前面23、及び後面24がステンレス板によって形成されている。上面25が透明板であることにより、測定者が収容部2内の様子を容易に確認することが可能である。また、底面21の金網がフッ素加工されていることにより、収容部2に収容された動物が行った排尿が金網に付着し難く、排尿が網状部5へ通される。また、底面21の網目は、動物の排泄物等が素通りする大きさであることが望ましい。本発明の実施例に係る動物用排尿機能測定装置1は、収容部2の底面21の金網の線径が1.5mmであり、網目の大きさが15mm^(2)であるが、このサイズに限定されず、更に、収容部2は上述した素材に限定されない。収容する動物の種類に合わせて適宜選択すれば良く、例えばサルやイヌなどの比較的大きな動物の場合は、金属性の檻が好適である。
[0023]
更に、収容部2の後面24には、図4Aから図4Cに示すように、収容部2に収容された動物が水を補給することができるように、給水口26が設けられ、収容部2の外部から手動にて給水口26に給水瓶27が取り付けられる。また、給水口26の上方には、給水瓶27を引っ掛けることが可能な給水瓶ホルダー28が取り付けられる。更に、収容部2の側面22の下方端部には、図4Aに示すように、網状部取付取外部4を収容部2に取り付けるために、側面22に対して垂直外側方向に、側面22の下辺に沿って舌片部29が取り付けられる。また、本発明の実施例に係る動物用排尿機能測定装置1は、水注入に伴う膀胱尿道内圧測定であるシストメトリー測定を同時に実施する場合において、動物の膀胱圧を測定するため、圧トランスデューサー(不図示)及び圧力アンプ(不図示)が収容部2に設けられる。
・・・・(中略)・・・・
[0025]
網状部取付取外部4と網状部5について説明する。網状部取付取外部4は、図4Aに示すように、収容部2の底面21の辺と略同じ長さである枠部41と、収容部2の側面側に対応する枠部41の辺に沿って設けられ、上方に向かって逆L字状に形成される引掛部42と、収容部2の前面側に対応する枠部41の辺に沿って設けられ、上方に向かって形成されるストッパー部43とを有し、中央が空洞に設けられる。網状部取付取外部4は、引掛部42を収容部2の舌片部29に引っ掛けて、収容部2の後方から(図4Aの矢印Aから)収容部2の底面21に沿ってスライドすることによって、枠部41と収容部2の底面21が対向するように、収容部2に取り付けられる。尚、網状部取付取外部4は、収容部2の前方から(図4Aの矢印Aと逆方向)収容部2の底面21に沿ってスライドし、収容部2に取り付けられても良い。
[0026]
網状部5は、図4A、及び図5Aから図5Cに示すように、網状部取付取外部4の枠部41と略同じ形状である細網枠部51と、細網枠部51が形成する中央の空洞を覆うように形成される、細かい網である細網部52とを有する。網状部5は、網状部取付取外部4のストッパー部43が設けられた側の枠部41と対向する側の枠部41から(図4Aの矢印Bから)、引掛部42、42の間に通され、枠部41の上をスライドする。網状部5が、網上部取付取外部4のストッパー部43に当たることによって、スライドが停止し、網上部取付取外部4に取り付けられる。そして、図4B及び図4Cに示すように、網状部5が取り付けられた網上部取付取外部4が収容部2に取り付けられることにより、網状部5も収容部2に取り付けられる。また、網状部5は、収容部2の底面21として設けられても良いし(不図示)、網上部取付取外部4が収容部2の底面21の上方に設けられ、網状部5が収容部2の底面21の上方に取り付けられても良い(不図示)。尚、網状部5は、可動式とすることで、細網部52に汚れが詰まってしまった際等に効率良く新しい網状部5に交換することが可能であり、利便性が高まる。また、図4Aから図4Cに示すように、収容部2の底面21の下方に取り付けられた方が、収容部2の底面21が、金網の大きさよりも大きい物を捕集し、網状部5が、排尿を通し且つ排尿以外の物を捕集するため、網状部5が収容部2の底面21として組み込まれた際と比較して、排尿と排尿以外の物の分離が効率的であり、網状部5の交換の頻度が少なくなる。
[0027]
網状部5の細網部52について説明する。細網部52は、動物の排尿を注込部6へ通し、排尿以外の物を採取する細かい網である。細網部52の網目構造はどのような形状でも構わないが、網状部5の網目の大きさは、少なくとも、収容部2に収容される動物の排泄物と、動物を収容部2の中に収容するために供した所定物との何れかによって決定される最大網目大きさ以下である。尚、動物を収容部2の中に収容するために供した所定物とは、餌等である。例えば、マウスでは約2mm^(2)以下、ラット、モルモット、及びハムスターでは約5mm^(2)以下、ウサギでは約10mm^(2)以下が好ましい。網状部5の網目の大きさは、対象動物に合わせて、適宜変更可能であり、対象動物よりも小さい動物のものは使用可能である。また、網状部5の網目が細かすぎると、表面張力等の影響で水分が通過できないことから、約1mm^(2)以上が好ましい。
[0028]
更に、細網部52を構成する線径は、従来の金網よりも極細であり、0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下、さらに好ましくは0.06mm以下、さらにより好ましくは0.03mm以下である。網状部5の細網部52を構成する素材は、動物の行動や定期的な洗浄にも耐えられる強度があり、撥水加工等が施され水分を吸収しないものであれば良い。具体的には金属、ナイロン、ポリエチレン、フロロカーボンが挙げられ、特に撥水加工された金属が好ましい。
・・・・(中略)・・・・
[0030]
注込部6について説明する。注込部6は、図1、図2A及び図2Bに示すように、網状部5と採取部7の間に設けられ、網状部5側の口(本発明の注入部の上部に相当する)が開き、採取部7側の口(本発明の注入部の下部に相当する)が細い形状の、漏斗状となっており、動物が収容部2の中で行った排尿を、網状部5を介して採取部7に注ぎ込む。その結果、収容部2と採取部7の間で排尿が飛び散ることが無く、採取部7が確実に尿を採取することが可能である。従って、本発明の実施例に係る動物用排尿機能測定装置1は、測定部8が、採取部7が採取した排尿の重量を正確に測定することが可能である。また、注込部6の採取部7側の口は、採取部7と接して設けられる。その結果、注込部6に排尿が付着した時点で、測定部8が排尿の重量を測定することが可能である。従って、本発明の実施例に係る動物用排尿機能測定装置1は、測定部8がリアルタイムで正確な排尿を測定することが可能である。また、注込部6は、図2A及び図2Bにおいて点線で示す注込部保持部61によって、測定部8上に保持される。注込部保持部61は、測定部8上に設けられ、注込部6を下方から支え、針金で形成される。
[0031]
採取部7について説明する。採取部7は、図1、図2A及び図2Bに示すように、コップ状の容器であり、該採取部7の開口部は注込部6の採取部7側の口よりも径が大きい。また、採取部7の上方は、注込部6の歳出部7側の口と接して設けられ、採取部7の底面は、測定部8と接して設けられる。そして、採取部7は、動物が収容部2の中で行った排尿を、網状部5及び注込部6を介して採取する。また、採取部7で集めた尿は、臨床検査や生化学検査の分析などに使用することが可能である。
[0032]
測定部8について説明する。測定部8は、排尿の重量が測れる限り何でも良いが、0.01g以上の精度をもつ精密天秤が好ましい。また、測定部8は、測定したデータを外部に出力できる機能が備わっていることが好ましい。また、測定部8には、採取部7、注込部6、及び注込部保持部61が上に載っている。従って、測定部8は、採取部7が採取した排尿の重量と、注込部6に付着した排尿の重量を測定することが可能である。その結果、網状部5を通過した排尿を、注込部6と採取部7の何れかで受けた時点で測定部8が重量を計測することができるため、タイムラグがない。
[0033]
データ記録部9について説明する。データ記録部9は、PowerLAb(AD INSTRUMENTS社製)を用い、図1、図2A、及び図2Bに示すように、少なくとも、測定部8と、収容部2に設けられる圧トランスデューサー(不図示)及び圧力アンプ(不図示)と配線接続されている。そして、データ記録部9は、測定部8、圧トランスデューサー(不図示)、及び圧力アンプ(不図示)において測定されたデータを記録する。また、データ記録部9は、測定部8、圧トランスデューサー(不図示)、及び圧力アンプ(不図示)から得られる電子信号をアナログ変換し、コンピュータ11に送信する。尚、データは、アナログ変換されたものでもデジタル変換されたものでもよい。また、データ記録部9は、測定部8、圧トランスデューサー(不図示)、及び圧力アンプ(不図示)において測定されたデータを記録することができればよく、PowerLAbに限定されない。」

(2)記載された発明
上記(1)より、文献18には、次の発明(以下、「文献18発明」という。)が記載されていると認められる。
「薬理学的研究のために動物の排尿速度を正確に計測する動物用排尿機能測定装置1であり、
収容部2(ケージ)、網状部取付取外部4、網状部5、注込部6、採取部7、測定部8、データ記録部9、及び排尿速度算出部10を備え、
収容部2は、略立方体の箱形であり、底面21がフッ素加工された金網、上面25が塩化ビニルで作成された透明板、側面22、前面23、及び後面24がステンレス板によって形成され、底面21の金網がフッ素加工されていることにより、収容部2に収容された動物が行った排尿が金網に付着し難く、
収容部2の後面24には、収容部2に収容された動物が水を補給することができるように、給水口26が設けられ、
網状部5の細網部52は、動物の排尿を注込部6へ通し、排尿以外の物を採取する、撥水加工等が施された細かい網であり、細網部52を構成する線径は、従来の金網よりも極細であり、網状部5は、収容部2の底面21として設けられても良く、
注込部6は、網状部5と採取部7の間に設けられ、漏斗状となっており、動物が収容部2の中で行った排尿を、網状部5を介して採取部7に注ぎ込み、
採取部7は、コップ状の容器であり、
測定部8には、採取部7、注込部6、及び注込部保持部61が上に載っており、測定部8は、採取部7が採取した排尿の重量と、注込部6に付着した排尿の重量を測定することが可能であり、その結果、網状部5を通過した排尿を、注込部6と採取部7の何れかで受けた時点で測定部8が重量を計測することができ、
データ記録部9は、測定部8から得られる電子信号をコンピュータ11に送信する、
動物用排尿機能測定装置1。」

19 文献19(特開2014-236683号公報)
(1)文献19の記載
文献19は、本件原出願より前に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。
ア 明細書
「【背景技術】
【0002】
従来より、猫等の飼育される動物の排泄物を処理する動物用のトイレとして、下部容器と、下部容器の上側に配置される上部容器とにより構成され、上部容器の底面部に液透過孔を有する動物用トイレが知られている。このような動物用トイレは、下部容器に液体を吸収する吸液部材を載置し、上部容器にトイレ砂と呼ばれる粒状物を収容して用いられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の動物用トイレによれば、動物は粒状物の上で排泄し、尿等の液体が粒状物の間を透過し、上部容器の液透過孔を通過して、下部容器の吸液部材に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-45067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の動物用トイレには、容器に排泄物処理材の量を示す手がかりが設けられていない。このような容器を有する動物用トイレでは、排泄物処理材の適切な量がわからないため、多く補充すぎると、排泄物処理材が容器の外へ飛び散りやすくなる。また、逆に、排泄物処理材が不足していることにも気づきにくく、動物が快適に排泄できない場合があった。更に、排泄物処理材が不足している場合には、糞が容器に付着して、不衛生で掃除に手間がかかるという問題があった。
・・・・(中略)・・・・
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の動物用トイレの好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、動物用トイレ1を示す斜視図である。図2は、動物用トイレ1の分解斜視図である。図3は、動物用トイレ1における上部容器2の正面図である。図4は、図3に示す動物用トイレ1のA-A断面において、吸液部材4及び粒状物としての排泄物処理材5をそれぞれ収容させた状態を示す図である。図5は、図3に示す動物用トイレ1をB方向に切断した状態の断面図である。
【0016】
動物用トイレ1は、図1及び図2に示すように、粒状物収容容器としての上部容器2と、下部容器3と、を備える。動物用トイレ1は、例えば住居の床等に設置される。
【0017】
下部容器3は、図2に示すように、下部底面部31と、下部側壁部32と、取手部33と、を有する。図2に示すように、下部容器30は、上部が開放された容器である。
【0018】
下部底面部31は、図4に示すように、平面視で長方形の4つの角を、各長辺及び短辺に対して斜めに切り落としたような略八角形をしている。
下部側壁部32は、下部底面部31の周縁から起立する壁である。
【0019】
取手部33は、下部側壁部32の外面に配置されている。取手部33は、下部容器30の短手方向の辺に1箇所ずつ、向かい合って計2箇所設けられている。取手部33は、下部容器30の外側に突出するように設けられている。
【0020】
上部容器2は、図2に示すように、容器本体20と、容器本体20から突出する突起部40と、を有する。上部容器2は、上部が開放された容器である。
【0021】
容器本体20は、底面部21と、側壁部22と、を備える。容器本体20は、上部容器2の主要部分を構成する。
【0022】
底面部21は、図4に示すように、周縁部23と、平面部24と、テーパ面部25と、を有する。
周縁部23は、平面視で底面部21の外周近傍の部分である。
平面部24は、平面視で底面部21の略中央に配置され、底面部21の高さ方向における最も下方に配置されている。平面部24は、容器本体20の略水平方向に延びる面である。平面部24には、複数の貫通孔211が形成されている。平面部24は、上部容器2の外形と略同形の形状を有しており、本実施形態では、猫の顔の形をしている。
テーパ面部25は、平面部24の周縁から、底面部21の周縁部23に向かって上り傾斜となる面である。すなわち、テーパ面部25は、周縁部23から略中央に向かって下り傾斜となる面である。テーパ面部25のテーパ角度は、底面部21に対して5度?60度であることが好ましい。テーパ面部25のテーパ角度が5度を下回る程に浅すぎると、動物の尿等を平面部24側へ移動させて、下部容器3に誘導することが難しくなる。また、テーパ面部25のテーパ角度が60度を超える程に深すぎると、動物が上部容器2に乗った際に、足を安定して乗せる場所が狭くなる。このため、テーパ角度は上記の範囲が好ましい。テーパ面部25は、図4に示すように、底面部21から垂直方向に1cm?7cmの範囲の高さH1の範囲に形成されている。
【0023】
側壁部22は、底面部21の周縁部23から起立すると共に、容器本体20の外壁を構成する壁面である。側壁部22は、上部壁部221と、延出壁部222と、を有する。
【0024】
上部壁部221は、その下端がテーパ面部25の上端から連続している。すなわち、図4に示すように、上部壁部221は、底面部21から高さH1離れた位置から形成されている。上部壁部221は、上部容器2の上端部まで延び、上端部で外側に向かって反っている。
【0025】
延出壁部222は、図5に示すように、上部壁部221の外面側において、上部壁部221から下方へ延びている。また、図1及び図5に示すように、延出壁部222は、下部容器3よりも外側に位置している。延出壁部222の一部は、上部容器2の四隅において動物用トイレ1の設置面まで延び、足部223を構成している。図1に示すように、延出壁部222は、足部223と足部223との間に、上方へ向かって弧を描くように切り欠かれる切り欠き部224とを有する。
【0026】
突起部40は、容器本体20の側壁部22から外方に向かって膨出した部分である。突起部40は、容器本体20の一の辺に沿って複数設けられている。本実施形態では、突起部40は、容器本体20の一の長辺の両端部にそれぞれ一箇所設けられている。
【0027】
突起部40は、突起部底面41と、突起部側壁42と、を備える。突起部40は、本実施形態では、猫の耳のような略三角形又は略扇状の形状をしている。
突起部底面41は、上部容器2の側壁部22に対して所定角度屈曲し、外方に向かって上り傾斜の傾斜面により構成されている。図3に示すように、突起部底面41の幅Wは、上に向かうに従って徐々に狭くなるように形成されている。図4に示すように、突起部底面41は、その下端部が底面部21の上端部よりも上方に位置するように形成されている。
突起部側壁42は、突起部底面41の周囲から側壁部22の上端に向かって延びる壁面である。具体的には、突起部側壁42は、突起部底面41の略三角形における底面部21に接さない二辺から上方に延びている。
【0028】
突起部40は、図4及び図5に示すように、底面部21から垂直方向に2cm?8cmの範囲の高さH2から形成される。すなわち、突起部40は、上部壁部221における底面部から垂直方向に2cm?8cm上の位置において、外方へ膨出している。
【0029】
以上の動物用トイレ1は、下部容器3に吸液部材4を載置し、上部容器2に粒状の排泄物処理材5を収容して用いられる。
【0030】
吸液部材4は、図4に示すように、尿等の動物の排泄物を吸収可能な部材である。吸液部材4は、液透過性の表面シートと、液保持性の中間シートと、液不透過性の裏面シートを積層して接合した四角形のシートである。
【0031】
排泄物処理材5は、尿等の液体の動物の排泄物を吸収したり、透過させたりする粒状の処理材であり、いわゆるトイレ砂である。トイレ砂としては、撥水性で多くの液体を吸液部材へ透過させるタイプや、尿等の液体を吸収すると固化するタイプ等、様々な素材の粒状物が適宜用いられる。
【0032】
次に、動物用トイレ1の使用の状態ついて説明する。図6A?図6Cは、動物用トイレ1の使用の状態を示す図である。図7は、動物用トイレ1を傾けた状態を示す図である。
図4に示すように、動物用トイレ1に猫等の動物が入り、上部容器2に収容された排泄物処理材5の上で排泄をする。尿等の液体の排泄物は、排泄物処理材5を透過し、底面部21の複数の貫通孔211を通って、下部容器3に載置された吸液シートに吸収される。
【0033】
図6Aは、排泄物処理材5が、突起部底面41にまで充填された状態を示している。使用者は、排泄物処理材5が突起部底面41を埋めるように上部容器2に収容されている状態を、動物用トイレ1の上から視認することができる。動物は排泄後に排泄物処理材5を掘ったり掻いたりする習性があるため、突起部底面41にまで排泄物処理材5が補充されると、排泄物処理材5が動物用トイレ1の外へ飛び散る場合がある。このため、排泄物処理材5が突起部底面41にまで収容されているときは、排泄物処理材5が多すぎると理解できる。
【0034】
図6Bは、排泄物処理材5が、突起部40の下端部近傍まで(すなわち、図4に示す高さH2まで)充填された状態を示している。使用者は、排泄物処理材5が突起部底面41の下端部近傍まで充填された状態を、動物用トイレ1の上から視認することができる。排泄物処理材5が突起部40の下端部近傍まで充填された状態では、本実施形態では、排泄物処理材5は、例えば4リットル程度収容されている。この状態では、動物の動きにより排泄物処理材5が飛び散りにくい。また、底面部21からの厚さも丁度良く、動物に快適に排泄させることができる。突起部40の下端部を目安にすることで排泄物処理材5の適量を理解することができる。
【0035】
図6Cは、排泄物処理材5が、テーパ面部25が表れる程度(すなわち、図4に示す高さH1の範囲内まで)充填された状態を示している。使用者は、排泄物処理材5がテーパ面部25の表れるまで充填された状態を、動物用トイレ1の上から視認することができる。排泄物処理材5がテーパ面部25の表れるまで充填された状態では、本実施形態では、排泄物処理材5は、例えば1リットル程度収容されている。この状態では、排泄物処理材が十分でないため、動物が排泄後に排泄物処理剤を掘ったり掻いたりしづらく、動物に快適に排泄させることが難しくなる。また、糞が底面部21に付着しやすくなる。そこで、動物用トイレ1における排泄物処理材5の高さがテーパ面部25の上端よりも低く、側壁部22における高さH1の近傍になったときに、排泄物処理材5を補充する必要があると気づくことができる。」

イ 図面
図2ないし4には、以下の図示がある。

【図4】

(2)文献19に記載された技術的事項
上記(1)より、文献19には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる。
従来より、猫等の飼育される動物の排泄物を処理する動物用のトイレとして、下部容器と、下部容器の上側に配置される上部容器とにより構成され、上部容器の底面部に液透過孔を有する動物用トイレが知られており、このような動物用トイレは、下部容器に液体を吸収する吸液部材を載置し、上部容器にトイレ砂と呼ばれる粒状物を収容して用いられるところ、粒状物である排泄物処理材の量が十分でないと動物に快適に排泄させることが難しくなる、という技術的事項、
及び、
粒状物である排泄物処理剤は、いわゆるトイレ砂であり、トイレ砂としては、撥水性で多くの液体を吸液部材へ透過させるタイプや、尿等の液体を吸収すると固化するタイプ等、様々な素材の粒状物が適宜用いられる、という技術的事項。

20 文献20(中国特許出願公開第103461159号)
文献20は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。(括弧書きで付記した仮訳は、申立人Bによる仮訳を基礎とした。)




(【発明を実施するための形態】
【0018】動物消化代謝生体実験装置の実施例は、図1-2に示した通り、飼育舎、餌やり器11、水飲み装置12、総重量計測装置13、動物重量計14、尿液重量計と動物活動行動記録分析装置15を含む。)

21 文献21(特開2013-17446号公報)
文献21は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
(1)明細書
「【0001】
この発明は、例えば猫等の動物に使用する動物用便器に関する。
・・・・(中略)・・・・
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照して、この発明に係る動物用便器の実施形態を説明すると、以下のとおりである。
【0031】
図1は、動物用便器1の全体斜視図である。図1中、Xは横方向を示し、Yは横方向Xと直交する縦方向を示し、Zは横方向X及び縦方向Yにそれぞれ直交する上下方向を示している。Pは、便器1の横方向Xの長さ寸法を二等分する仮想縦中心線であり、Qは、便器1の縦方向Yの長さ寸法を二等分する仮想横中心線である。
【0032】
便器1は、上端に後述する第1開口31を有し、下方に配置する下部容器30と、下部容器30の上方に配置する上部容器10と、上部容器10と下部容器30の間に配置し、下部容器30とともに、外部との通液性を確保する態様で上記開口31を閉塞して後述する収容空間2を画定する通液部材20とを備えている。
【0033】
上部容器10は、第1枠部11と、第1枠部11の上端から上方に向けて延びる壁部12とを有し、筒状に形成してある。第1枠部11および壁部12は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって一体的に形成してある。
【0034】
壁部12は、横方向Xにおいて互いに対向する第1壁部12aおよび第2壁部12bと、第1壁部12aおよび第2壁部12bの縦方向Yにおける後端部を連結する第3壁部12cとで構成され、第1壁部12aおよび第2壁部12bの縦方向Yの前端部12eには壁部12を形成せず、壁部12a,12b,12cの上端部12d、第1,第2壁部12a,12bの前端部12eおよび第1枠部11の前方側の上端部11aにわたる部位に、出入口14が形成してある。
【0035】
通液部材20は、図2?図4に示すように、収容空間2と外部とを連通する穴21を複数有し、平面視が矩形状の通液領域22と、通液領域22の周縁に位置する非通液領域23と、非通液領域23の上端に設けた第2枠部27とを有するように板状に形成してある。穴21は、縦方向Yの長さよりも横方向Xの長さが短く、且つ横方向Xの長さが、通液部材20の上部に撒く粒状物(不図示)の平均粒径よりも小さい。このような穴21のため、通液部材20の上部に撒いた粒状物(いわゆる猫砂等)が収容空間2に落下することを防止することができる。また、この穴21を通じて、通液部材20の上部の排泄物が、収容空間2に落下する。
【0036】
非通液領域23には、上述した穴21を形成していない。この非通液領域23は、水平面3と成す角が緩やかであり、通液領域22に隣接するように配置してある第1傾斜部24と、水平面3と成す角が急であり、第2枠部27に隣接するように配置してある第2傾斜部25と、第1傾斜部24と第2傾斜部25とを連結する連結部26とを有している。
【0037】
第2傾斜部25は、通液領域22の横方向Xの両側において、通液領域22に近接する部分から離間する方向へ向けて、接線の傾きが徐々に増加する放物線を含む曲面状を成すように形成してある。
【0038】
連結部26は、図2に示すように、通液領域22の横方向Xの両側に存在する一方、図3に示すように、通液領域22の縦方向Yの両側には存在しない。
【0039】
通液部材20および上部容器10によって、通液部材20の上方かつ上部容器10の壁部12の内側には、例えばシリカゲルを主成分として形成した粒状物(不図示)を載置する載置空間4が画定される。この載置空間4には、出入口14を通じて猫等の動物が出入りする。
【0040】
通液部材20は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって通液領域22、非通液領域23および第2枠部27を一体的に形成してある。
【0041】
下部容器30は、図5に示すように、上端に第1開口31(開口)を有し、底に第2開口32を有しているとともに、縦方向Yの前方側には、トレイ40を収容空間2に進退させるための透孔33を有している。第1開口31の面積は、第2開口32の面積よりも大きい。下部容器30は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって一体的に形成してある。
【0042】
下部容器30は、図2および図3に示すように、収容空間2の内部において、通液部材20の下方に配置される収容位置と、図5に示すように、収容空間2の外部に配置される取り出し位置とに縦方向Yへ進退可能に設けられ、例えば図10に示すように、横方向Xよりも縦方向Yの方が長くて平面視が矩形状の吸収体50を載置するトレイ40を有している。
【0043】
トレイ40は、図5に示すように、平面視が矩形状の底壁部41と、底壁部41の四辺の周縁にそれぞれ設け、上方に向けて立ち上がる側壁部42と、縦方向Yの両端に設けた指挿入部43とを備えている。トレイ40は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって底壁部41、側壁部42および指挿入部43を一体的に形成してある。
【0044】
底壁部41の面積S1は、図2および図3に示すように、下部容器30の第2開口32の面積よりも大きく、トレイ40を収容空間2に配置した状態では、第2開口32は底壁部41によって閉塞される。これら下部容器30、トレイ40および通液部材20によって収容空間2が画定される。また、底壁部41の面積S1は、通液領域22の面積S3よりも大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、底壁部41の上方領域に通液領域22が含まれている。
【0045】
側壁部42は、図3に示すように、縦方向Yにおいて互いに対向する一対の縦側壁部42aと、図2に示すように、横方向Xにおいて互いに対向する一対の横側壁部42bとによって構成してある。
【0046】
互いに対向する一対の側壁部42a,42bは、図2,3,5,6に示すように、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてある。
【0047】
底壁部41および側壁部42の平面視の面積S2は、図2および図3に示すように、通液領域22の面積S3よりも大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、底壁部41および側壁部42の上方領域に通液領域22が含まれる。
【0048】
指挿入部43は、図6に示すように、トレイ40を収容位置と取り出し位置とに進退させる際に操作者が指を挿入するための部分であって、縦方向Yにおいて、縦側壁部42aに隣接する態様で設けてある。
【0049】
指挿入部43は、縦側壁部42aの上端部42zから水平方向へ向けて延びる水平部43aと、水平部43aの端部42yから側壁部42に対向するように下方へ向けて突出する突出部43bとを有している。
【0050】
突出部43bの上下方向Zの長さA1は、縦側壁部42aの上下方向Zの長さA2よりも短く、上下方向Zにおいて、突出部43bと下部容器30の底壁34との間には間隙43dが形成されている。この間隙43dは、突出部43bと底壁34とに沿って縦方向Yに延びている。また、指挿入部43には、縦方向Yにおける突出部43bと縦側壁部42aとの間であって、水平部43aの下方には凹部43cを形成してある。よって、上記間隙43dは、縦方向Yに延びた後、後方側の端部から上方に向かって延びている。このような指挿入部43によって、トレイ40を操作する際には、トレイ40と下部容器30との間の間隙43dに沿って指を挿入し、且つ指先を凹部43cに入れて突出部43bに引っ掛ければ、容易にトレイ40を操作することができる。しかも、図7に示すように、突出部43bは、仮想縦中心線Pにおいて、下部容器30の底壁34の上端34aと、トレイ40の突出部43bの下端43eとの間隙43dが最も大きく、仮想縦中心線Pから横方向Xに離間するに従って、底壁34の上端34aと、突出部43bの下端43eとの間隙43dが徐々に小さくなるように形成してある。このように、指挿入部43の突出部43bを形成してあるため、トレイ40の横方向Xの中央において指が挿入しやすい。よって、指挿入部43は、このような突出部43bにより横方向Xにおいて、最も操作しやすい位置に指を挿入する位置決め機能を有している。
【0051】
トレイ40の突出部43bの外周面は、図8に示すように、下部容器30の外周面から突出する部分がないように、下部容器30の外周面に沿う態様で形成してある。具体的には、トレイ40の突出部43bの外周面は、上下方向Zにおいて、その上端部43xが仮想横中心線Qに対して最も離間し、下方に行くに従って仮想横中心線Qに対する離間距離が徐々に小さくなり、透孔33を形成する周壁の上端33aと、底壁34の上端34aであって透孔33を形成する周壁の下端とを連続し、且つ上端部43xから仮想横中心線Qへ向けて、接線の傾きが徐々に減少する放物線を含む曲面状を成すように形成してある。
【0052】
トレイ40において、突出部43bと縦側壁部42aとの間には、図6に示すように、突出部43bと縦側壁部42aとを連結するように板状のリブ44を設けてある。リブ44は、図9に示すように、トレイ40における横方向Xの端部近傍に設けてある。より、具体的には、仮想縦中心線Pおよび仮想横中心線Qにそれぞれ対称となるようにトレイ40の四隅にリブ44を配置してある。このリブ44は、水平部43aの剛性を向上させる機能を有している。なお、図示例のトレイ40は、仮想横中心線Qに対称となるように、縦方向Yの両端部に指挿入部43を設けてあるが、縦方向Yのいずれか一方にのみ指挿入部43を設けてもよい。
【0053】
吸収体50は、図10に示すように、透液性の表面シート51と、不透液性の裏面シート52と、これらのシート51,52の間に介在させた吸収性コア53とで構成してあり、平面視が矩形を成すように形成してある。吸収性コア53は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子とを混合して平面視が矩形を成すように形成してある。吸収体50の周縁には、吸収性コア53が存在せず、表面シート51および裏面シート52のみで構成されるフラップ54を配置してある。フラップ54は、縦方向Yの両端に配置される前フラップ54aおよび後フラップ54bと、横方向Xの両端に配置される左フラップ54cおよび右フラップ54dとで構成してある。吸収性コア53は、穴21を通じて収容空間2に落下した排泄物を吸収・保持する機能を有している。
【0054】
吸収体50をトレイ40に載置した状態では、図6に示すように、吸収性コア53が底壁部41の上方に配置され、前後フラップ54a,54bが、縦側壁部42aに当接し、左右フラップ54c,54dが、横側壁部42bに当接する。
【0055】
この便器1によれば、互いに対向する一対の側壁部42a,42bが、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてあるため、側壁部42a,42bの長さおよび吸収体50のフラップ54a?54dの長さを維持しても、側壁部42の上下方向Zの見掛け上の長さ寸法A2を短くすることができる。よって排泄物の落下距離をできるだけ短くすることができる便器1を提供することができる。しかも、互いに離間するように傾斜する態様で一対の側壁部42a,42bを設けてあるため、側壁部42a,42bの上端部42zによって形成される開口の面積を大きくすることができる。よって、排泄物がトレイ40から漏れることを防止することができる。
【0056】
この便器1によれば、通液領域22の面積S3よりも、底壁部41および側壁部42の平面視の面積S2が大きく、トレイ40を収納位置に配置した状態では、底壁部41および側壁部42の上方領域に通液領域22が含まれるため、通液部材20の穴21を通じて落下した排泄物がトレイ40の外部に漏れることを防止することができる。しかも、トレイ40の底壁部41の面積S1は、通液領域22の面積S3よりも大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、底壁部41の上方領域に通液領域22が含まれるため、排泄物がトレイ40から漏れることを確実に防止することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態において、動物として愛玩用動物の猫を例示したが、この発明に係る便器1に適用する動物は、これに限られることなく、愛玩用の犬、ウサギ、ハムスター等の哺乳類や、トラ、ライオンの赤ちゃん等の哺乳類の赤ちゃんが含まれる。もちろん、これらの哺乳類に限られず、ヘビ等の爬虫類や鶏等の鳥類に使用してもよい。」

(2)図面
図1ないし4には、次の図示がある。
【図1】

【図2】

【図3】

22 文献22(特開2015-12855号公報)
文献22は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
(1)明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、猫等の飼育される動物の排泄物を処理する動物用のトイレとして、下部容器と、下部容器の上方に配置される上部容器とにより構成され、上部容器の底面部に液透過孔を有する動物用トイレが知られている。このような動物用トイレは、下部容器に液体を吸収する吸液部材を載置し、上部容器にトイレ砂と呼ばれる粒状物を収容して用いられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の動物用トイレによれば、動物は粒状物の上で排泄し、尿等の液体が粒状物の間を透過し、上部容器の液透過孔を通過して、下部容器の吸液部材に吸収される。
・・・・(中略)・・・・
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の動物用トイレの好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、第1実施形態に係る動物用トイレについて、図1?6を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、動物用トイレ1を示す斜視図である。図2は、動物用トイレ1の分解斜視図である。図3は、動物用トイレ1における上部容器20の正面図である。図4は、動物用トイレ1における下部容器30の正面図である。図5は、図3に示す動物用トイレ1のA-A断面において、吸液部材4及び排泄物処理材5をそれぞれ収容させた状態を示す図である。図6は、図3に示す動物用トイレ1のB方向に切断した状態の断面図である。
【0020】
動物用トイレ1は、図1に示すように、下部容器30と、上部容器20と、を備える。動物用トイレ1は、例えば住居の床等の設置面10に設置される。
【0021】
下部容器30は、図2に示すように、下部底面部31と、下部側壁部32と、取手部33と、隅部34と、を有する。図2に示すように、下部容器30は、上部が開放された容器である。
【0022】
下部底面部31は、図4に示すように、平面視で長方形の4つの角を、各長辺及び短辺に対して斜めに切り落としたような略八角形をしている。
下部側壁部32は、下部底面部31の周縁から起立する壁である。
【0023】
取手部33は、下部側壁部32の外面に配置されている。取手部33は、下部容器30の短手方向の辺に1箇所ずつ、向かい合って計2箇所設けられている。取手部33は、下部容器30の外側に突出するように設けられている。
【0024】
隅部34は、下部容器30における略八角形の八辺のうち、長辺と短辺とを繋ぐように斜めに配置される辺により構成される。隅部34は、本実施形態では、下部容器30の内側に凸となるようにやや湾曲している。
【0025】
上部容器20は、図2に示すように、上部底面部21と、貫通孔211と、上部壁部22と、延出壁部23と、を有する。上部容器20は、下部容器30の上方に配置される。上部容器20は、上部が開放された容器である。図3に示すように、上部容器20は、平面視で長方形の4つの角を丸く曲面として、一の長辺の端部を外側に突出させた形状をしている。
【0026】
上部底面部21は、上部容器20の底面を構成する。上部底面部21は、図1及び図3に示すように、平面部24と、テーパ面部25と、を有する。
平面部24は、平面視で上部底面部21の略中央に形成され、上部底面部21の高さ方向における最も下方に配置されている。平面部24は、上部容器20の略水平方向に延びる面である。平面部24には、複数の貫通孔211が形成されている。
テーパ面部25は、平面部24の周縁から、上部底面部21の周縁に向かって上り傾斜となる面である。テーパ面部25のテーパ角度は、上部底面部21に対して5度?60度であることが好ましい。テーパ面部25のテーパ角度が5度を下回る程に浅すぎると、動物の尿等を平面部24側へ移動させて、下部容器3に誘導することが難しくなる。また、テーパ面部25のテーパ角度が60度を超える程に深すぎると、動物が上部容器20に乗った際に、足を安定して乗せる場所が狭くなる。このため、テーパ角度は上記の範囲が好ましい。
【0027】
上部壁部22は、図2に示すように、上部底面部21の周縁から起立して上方へ延びている。上部壁部22は、上部容器20の上端部まで延び、上端部で外側に向かって反っている。
【0028】
延出壁部23は、上部壁部22の外面から下方に延びて形成されている。延出壁部23は、その下端部が上部底面部21よりも下方に位置するように配置される。また、図5に示すように、延出壁部23は、上部容器20を下部容器30の上に配置した状態で、下部側壁部32よりも外側に位置している。
【0029】
延出壁部23は、足部231と、切り欠き部232と、を有する。
足部231は、図6に示すように、上部容器20が下部容器30の上方に配置された状態では、動物用トイレ1の設置面10に当接している。足部231は、本実施形態では4本形成されている。足部231は、設置面10に下端部が当接して上方に延び、上部容器20を支えるように形成されている。足部231は、下部容器30における隅部34の内側に凸の形状と異なり、上部容器20の長辺と短辺とを繋ぐ曲面に沿って形成されている。足部231は、隅部34に対応する位置に、隅部34の外側に配置されている。
切り欠き部232は、延出壁部23の下端部側の縁が、上方に向かって弧を描くように切り欠かれて形成される。切り欠き部232からは、下部側壁部32の外面が露出する。切り欠き部232は、延出壁部23における向かい合って配置される面に対称に設けられる。
【0030】
ここで、下部容器30における上述の取手部33は、上部容器20の切り欠き部232が形成される位置と対応する位置に設けられている。このため、図1に示すように、取手部33は、下部容器30が上部容器20の下方に配置された状態で、上部容器20の長手方向の端部から外側に突出している。
【0031】
以上の動物用トイレ1は、下部容器30に吸液部材4を載置し、上部容器20に粒状の排泄物処理材5を収容して用いられる。
【0032】
吸液部材4は、図5に示すように、尿等の動物の排泄物を吸収可能な部材である。吸液部材4は、液透過性の表面シートと、液保持性の中間シートと、液不透過性の裏面シートを積層して接合した四角形のシートである。
【0033】
排泄物処理材5は、尿等液体の動物の排泄物を吸収したり、透過させたりする粒状の処理材であり、いわゆるトイレ砂である。トイレ砂としては、撥水性で多くの液体を吸液部材へ透過させるタイプや、尿等の液体を吸収すると固化するタイプ等、様々な素材の粒状物が適宜用いられる。
【0034】
次に、動物用トイレ1の使用の状態ついて説明する。
図7は、動物用トイレ1の使用の状態を示す模式図である。
図5に示すように、動物用トイレ1に猫等の動物が入り、上部容器20に収容された排泄物処理材5の上で排泄をする。尿等の液体の排泄物は、排泄物処理材5を透過し、上部底面部21の複数の貫通孔211を通って、下部容器30に載置された吸液シートに吸収される。上部容器20には、図6に示すように、上部壁部22から下部側壁部32の外側の下方に延出し、下部容器30の設置面10に当接する足部231が設けられている。足部231は、排泄物を吸収した吸液部材4が載置されている下部底面部31に接触していない。このため、足部231の裏面は汚れていない。したがって、図7に示すように、上部容器20を下部容器30から外して床等に直接置いて掃除をすることができる。」

(2)図面
図2,図3及び図5には、次の図示がある。

【図5】

23 文献23(特開2015-159782号公報)
文献23は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
(1)明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物用トイレおよび小動物の排泄物処理用チップ体に関し、特に、一般家庭等の主として家屋内で、ペットとして飼育される猫等の小動物に適した小動物用トイレおよび小動物の排泄物処理用チップ体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭等の家屋内では、ペットとして猫や小犬等の小動物が飼育されている。一般家庭等の家屋内でペットとして、このような猫や小犬等の小動物を飼育する場合、家屋内または家屋外には、必然的に、ペット専用のトイレを配置する必要が有る。このような小動物用のトイレとして、従前から、小型のボックス型のものが使用されている。さらに、このようなボックス内部の床部分には、底面に排泄物処理用顆粒体が敷き詰められている。
上記排泄物処理用顆粒体としては、多くの場合、砂(いわゆる猫砂)が用いられているが、専用の顆粒体も開発されており、且つ市販されている。これらの顆粒体は、上記ボックス内ではシート等の上に平らに広げられて載置される。該シートとして、液体(より具体的には小動物が排泄した尿)を濾す作用を有しているものも多く開発されており、また、小動物用トイレの構造としては、該シートで濾された上記液体だけが下層の受け皿で受け留められる構造になっているものが多い。
このような背景に関連する小動物用トイレとしては、以下に述べるような様々なものが知られている。
・・・・(中略)・・・・
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は、特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る小動物用トイレの正面斜め上方から見た外観構成を示す斜視図である。また、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る小動物用トイレの正面横断面図である。さらに、図3は、本発明の第1の実施の形態に係る小動物用トイレの正面横断面部分図である。本発明に係る小動物用トイレ1では、ペットの小動物が排泄した尿を、受け皿部13の底部に、水平方向に対し勾配を設けて形成した排尿の貯留部13bに集積する。これにより、ペットの小動物が排泄した尿の表面積を、受け皿部全体でそのまま集積する場合に比べてより小さくして貯留部13bに集積することを可能にし、周囲への臭気発散を抑制することができるようにしている。
図1?3において、本実施の形態の小動物用トイレ1は、上部トイレ部11と、メッシュ部12と、受け皿部13と、を備える。受け皿部13は、小動物用トイレ1の最下層の構造体であり、着脱自在に構成されているが、実使用時には、メッシュ部12を、小動物用トイレ1の中間層をなす構造体として、受け皿部13の上部に接合される。
【0015】
この接合は、例えば上部トイレ部11の下端周縁に設けた係合凹部11aと受け皿部13の上端周縁部に設けた係合凸部13aとを係合する方式である。尚、上部トイレ部11側に、係合凸部を設け、受け皿部13側に、係合凹部を設けることも可能である。
上部トイレ部11は、小動物用トイレ1の最上層をなす構造体としてメッシュ部12の上部と一体構造に構成しているが、一般には、上部トイレ部11も、メッシュ部12に対し上述したと同様な着脱自在な構成とし、例えば、小動物用トイレ1に嵌め込むことができるような構成とすることも可能である。なお、メッシュ部12は、底部の平面がメッシュ12aで構成されているものとする。このメッシュ部12aは、例えば、スノコ形、長方形、正方形、円形、小判型、楕円形、網目形の形態を呈するものであってよく、例えば開口形状が長方形である場合、長手方向が10?14mm、短手方向が2.8?3.2mm、隣接する開口同士の間隔が2.8?3.2mmの寸法とすることが望ましい。
小動物用トイレ1を構成する素材としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン-テフレタート(PET)などの、主としてポリオレフィン系の合成樹脂を用いることが可能である。さらに、ステンレス等の耐腐食性を有する金属を用いることも可能である。
【0016】
上述のとおり、この第1の実施の形態においては、上部トイレ部11とメッシュ部12とは、一体構造として形成され、両者は設計段階から分離不可能に接合されているものとする。しかしながら、上述のとおり、一般には、上部トイレ部11とメッシュ部12とは、互いに分離できる構造にしておくことも可能であり、清掃時の利便性等からは、その方が好ましいであろう。
上部トイレ部11は、上述のとおり、小動物用トイレ1の最上層をなす構造体である。第1の実施の形態の小動物用トイレ1には、メッシュ部12の上面に小動物の排泄物処理用チップ体が敷き詰められる(載置される)が、上部トイレ部11は、この小動物の排泄物処理用チップ体が小動物用トイレ1の外部に飛散することを防止するカバーとして機能する。また、上部トイレ部11は、ペットの小動物に対しては、小動物用トイレ1の形状を認識させることに役立つ。また、ペットの小動物が小動物用トイレ1を使用する時には、該小動物に安心感を与えることにも役立つ。
上部トイレ部11の構造は、正面に小動物が出入りできる出入口11bを備え、正面を除く3側面は、上述のとおり、排泄物処理用チップ体が小動物用トイレ1の外部に飛散することを防止するためのカバーとして機能する側壁で構成される。該側壁の形状は任意である。
【0017】
ただ、図3に示すように、飛散した砂が側壁に付着しにくいように上方に行くに従って、内方に傾斜する構成が望ましい。また、上部トイレ部11の構造は、小動物が楽に用を足せる空間を確保できさえすれば良いのであるから、上部トイレ部11の平面形状は任意である(例えば、四辺形、円、楕円などが可能である)。また、第1の実施の形態では、図1,2に示すとおり、上部トイレ部11には、天井を設けていないが、一般には、小動物が楽に用を足せる空間さえ確保できさえすれば良いので、上部トイレ部11に天井を設けることも可能である。むしろ、警戒感を無くすためには、天井を設けることが望ましい。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る小動物用トイレのメッシュ部12の平面図である。メッシュ部12の底面は、排泄物処理用チップ体の受け皿となるが、メッシュ12aの底面をなす開口形状は、例えば、スノコ型、長方形、丸目形小判形、網目などの形状に形成されている。このような形状により、排泄物処理用チップ体を受け止めながらも、小動物の排尿を下方に通過させて、受け皿部13に落とすことができるようにしているのである。
【0018】
メッシュ12a上部平面上には、通常、小動物の排泄物処理用チップ体を、適当な厚み(層)を有するように敷き詰める(載置する)ものとする。この小動物の排泄物処理用チップ体は、ペットの小動物の足触りを良くすると共に、ペットの小動物が排泄した糞尿の一部を吸着できるようにしている。また、メッシュ12aおよびその上に敷き詰められた排泄物処理用チップ体は、ペットの小動物が排泄した尿を、メッシュ12aの下方に落として、受け皿部13に到達させることができる機能を有する。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る小動物用トイレ1の受け皿部13の側断面図である。また、図6は、本発明の第1の実施の形態に係る小動物用トイレ1の受け皿部13の平面図である。
第1の実施の形態に係る小動物用トイレ1は、小動物の排尿を受け留めて貯蔵できる機能を有するものであるが、その底部に、水平方向に対する下向きの勾配を所定方向に設けていることを特徴としている。これにより、受け皿部13に落下した小動物の排尿を、受け皿部13内の局所的な部分空間、即ち貯留部13bに流し込み、そこで集積させることにより、排尿の表面積を減じて周囲への臭気発散を抑制できるようにしている。即ち、この局所的な貯留部13b(尿溜まり)は、上記小動物の排尿を、受け皿部13全体に集積する場合に比べて、同体積でも尿の表面積をより小さくして集積することができる空間である。」

(2)図面
図1,図2及び図4には、次の図示がある。

24 文献24(実願平5-71439号(実開平6-75151号)のCD-ROM)
文献24は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、例えば猫や犬のペット(以下、単に「ペット」という。)用のトイレとして使用されるペット用トイレに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の住宅環境の変化や、高級な小型のペットの人気上昇に伴い、ペットを室内で飼育することが増加している。ペットを室内で飼育する場合には、ペット用トイレを室内に備えておく必要がある。このために、ペットが排出した便の臭気を効果的に抑制することができるペット用トイレの要請が高まっている。従来のペット用トイレは、以下の構成のものが広く使用されている。
【0003】
従来のペット用トイレは、上部に開口部を有し、底部に排便口を有する排便室と、その下方に設けられ、外部から閉塞された溜め室とから構成されている。排便室には、便を吸水することができる吸水性のある沸石や、粒子間の空隙により便を吸水する砂等により構成されている吸水部材が充填されている。
・・・・(中略)・・・・
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、従来のペット用トイレでは、排出された便は、ほとんどが吸水部材に吸収され、または吸水部材に付着する。従って、排便室の吸水部材に吸収または付着した便が気化することにより、便の臭気が外気に放出されるという問題があった。
【0006】
本考案は、上述のような課題を解消するためになされたものであって、ペット用トイレの排便室,さらには溜め室から、便の臭気が外気に放出されることを抑制することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本考案によるペット用トイレの第1の解決手段は、上部に開口部を有し、底部に排便口を有する排便室と、排便室の下方に設けられ、外部から閉塞された溜め室とから構成されているペット用トイレにおいて、前記排便室の内部には、少なくとも表面が撥水性を有する撥水部材が充填されていることを特徴とする。
・・・・(中略)・・・・
【0053】
支持部材51は、網状に形成された部材であり、上カバー42の下り勾配面の上方にトイレ40の設置面と略平行にかけわたされている。ここで、支持部材51の網目の大きさは、便の表面張力等によって網目に便が残存しないように網目を粗く形成することが好ましい。また、支持部材51は、ペットが乗っても撓まないように、セラミック加工等により硬化されており、さらにその表面には、撥水処理が施されている。
【0054】
撥水部材44は、その表面が撥水性を有する撥水片の集合体であり、支持部材51からの高さが数cm程度になるように支持部材51上に敷かれている。図10は、1つの撥水部材44(撥水片)の具体的形状を詳細に示す斜視図である。図10に示すように、撥水部材44は、基体44aと、基体44aの表面上の任意の位置から、不規則な高さで突出した複数の突起部44bとから構成されている。
【0055】
このように突起部44bを有する撥水部材44は、以下の効果を有する。
第1に、撥水部材44同士が隣接したときに、突起部44b同士が当接するので、撥水部材44間に適宜の空隙が形成される。これにより、便を迅速に流下させることができる。
第2に、各撥水部材44の突起部44bは、隣接する撥水部材44の突起部44bの間に入り込むように当接するので、撥水部材44間の相対的な滑りが発生しにくくなる。これにより、ペットが撥水部材44上に乗ったときに、ペットの四肢が撥水部材44内に埋没することが防止される。
・・・・(中略)・・・・
【0060】
次に、トイレ40の作用について説明する。
ペットが排便室45に便を排出すると、排出された便は、撥水部材44の撥水作用により、撥水部材44の前記空隙の間を流下する。流下した便は、支持部材51の網目を通り抜け、撥水シート31上に滴下する。この便は、撥水シート31の撥水作用、および上カバー42の下り勾配により、撥水シート31上を滑降し、開口部31aから排便口48を通過して溜め室47に流下する。溜め室47に流下した便は、消臭部材35上に滴下し、この消臭部材35によりろ過され、溜め箱56内に溜められる。なお、便が消臭部材35によりろ過されることにより、便の臭気が抑制される。
【0061】
なお、撥水部材44の前記空隙に、便の表面張力等によって便が残存する場合がある。しかし、犬,猫等の動物は、排便後に便の部分に砂等をかける習性を有しているので、このかける動作によって撥水部材44がかき回され、残存した便の表面張力が失われて便が流下される。」

25 文献25(特開2004-121264号公報)
文献25は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、汚液、特に、猫、犬等のペットの排尿等の汚液処理システム、すのこ及び汚液処理方法に関する。
・・・・(中略)・・・・
【0011】
図1は、本発明のすのこを用いた本発明の汚液処理システムの一実施形態を示したものである。図において、符号Sは、汚液処理システムを示している。
本実施形態の汚液処理システムSは、すのこ1と、すのこ1の下方に敷設される板状の汚液処理吸収体2とを備えている。すのこ1の下面と汚液処理吸収体2の上面とは密接されている。同図に示すように、汚液処理システムSは、トレー3内にすのこ1及び汚液吸収体2を敷設し、すのこ1上に敷砂4を敷設して構成することが好ましい。」

26 文献26(特開2002-315463号公報)
文献26は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、猫や犬のような家庭で飼育される動物のためのトイレに関するものである。
【0002】
【従来の技術】家庭で飼育される動物、特に家屋内でペットとして飼育される猫や犬は、家屋内の特定の場所にトイレを置き、トイレで糞尿の排泄をさせるようにする必要がある。そして猫や犬は砂場の上に糞尿を排泄する習性があるので、猫や犬用のトイレとしては、皿状の容器にトイレ用砂を敷いたものが一般的に使用されている。
・・・・(中略)・・・・
【0017】本発明に係る飼育動物用トイレは上記の各部材を具備して構成されるものである。そして、このトイレを用いて猫や犬のような飼育動物6に糞尿を排泄させるにあたっては、まずこのトイレに排泄をするように習慣付ける訓練を行なう。」

27 文献27(特開平7-39265号公報)
文献27は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば猫や犬等のペットのトイレに使用されるペット用トイレ材料に関する。
【0002】
【従来の技術】一般家庭内で猫や犬等をペットとして飼う場合、ペットの糞尿の処理が問題となるため、通常はペット用トイレが使用されている。例えば猫用のペット用トイレは、従来は、上部が開放された箱状のトイレ容器内に砂や砂利等からなるペット用トイレ材料を入れて構成され、砂や砂利等からなるペット用トイレ材料に排尿や排便をさせるようにしていた。このようなペット用トイレにおいては、ペットの排尿や排便の回数がある程度を超えると、ペットの糞尿が混じった使用済の砂や砂利等を廃棄して、新しいものに交換することが必要とされる。
・・・・(中略)・・・・
【0013】本発明においては、上記の生分解性樹脂を用いてペット用トイレ材料を構成するが、この材料の形態はペットの種類に応じて適宜選択することができる。例えば猫用のトイレ材料としては、猫が糞尿をした後猫自身がその前足や後ろ足によりトイレ材料を掻き分けてこれによって糞尿を覆うという猫の習性を考慮して生分解性樹脂の粒状体を用いることが好ましい。かかる粒状体を用いる場合は、稠密または中空のソリッド体でもよいし、発泡体であってもよい。また、軽石や木等からなる母材を生分解性樹脂によりコーティングしてなるものであってもよい。かかる粒状体の大きさは、通常は砂状から砂利状が好ましい。
【0014】また、例えば犬用のトイレ材料としては、生分解性樹脂の粒状体を用いてもよいし、あるいは生分解性樹脂のシート体を用いてもよい。シート体を用いる場合には、ペットの排尿がよく染み込むように例えばメッシュ状のシート体とすることが好ましい。さらに生分解性樹脂のシート体の上に生分解性樹脂の粒状体を散布してもよい。また、メッシュ状のほか、フィルム状、不織布様、発泡シート等のシート体を用いてもよい。
・・・・(中略)・・・・
【0028】図1は、本発明に係るペット用トイレ材料を用いて構成した例えば猫用として用いられるペット用トイレの一例を示し、このペット用トイレは、例えば上部が開放された箱状のトイレ容器1内に本発明に係るペット用トイレ材料2が収納されて構成されている。このペット用トイレ材料2は例えば砂状の粒状体からなり、猫が糞尿をした後、猫自身がその前足や後ろ足によりペット用トイレ材料2を掻き分けてこれによって糞尿を覆うことができるようになっている。
【0029】図2は、例えば犬用として用いられるペット用トイレの他の例を示し、この例では、ペット用トイレ材料2は複数枚のシート体からなる。犬の場合はその習性が猫と異なりペット用トイレ材料を掻き分けて糞尿を覆うということがほとんどないためペット用トイレ材料2が粒状体であることは必要ではない。なお、場合によってはシート体の上にさらに粒状体を散布してペット用トイレ材料2を構成してもよい。」

28 文献28(特開平10-117619号公報)
文献28は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は犬猫他小動物の排泄に供するためのトイレタリー用品のペット用トイレ砂であって、排泄物の脱臭と固化廃棄に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、動物トイレ砂は天然砂が犬猫等の習性より好まれていたが、近年屋内飼育のペット用犬猫の増加に伴い、屋内での排泄に供するトイレタリー用品が開発されてきた。これらの多くは、屋内使用を前提としたもので天然砂にかわって、産業用に整粒、造粒された鉱物砂で、粒径を揃えることで外観を良くすると共に、トイレトレーから犬猫等が砂を持ち出し、室内を汚すのを防ぐ粒径に工夫がなされたり、排泄物の悪臭を和らげたり、排泄物で汚れたトイレ砂を取り除くために、汚れた部分のみ固まる性質をトイレ砂に付与するものであった。」

29 文献29(特表2012-508576号公報)
文献29は、本件原出願前に頒布された刊行物であり、図面とともに以下の記載がある。
「【0002】
[発明の背景]
[発明の分野]
[0002]本発明は、一般に、動物用トイレ砂に関し、詳細には、機能性及びその他の特性が改良された動物用トイレ砂に関する。
【0003】
[関連技術の説明]
[0003]粘土系の動物用トイレ砂は、動物用トイレ砂、例えば、猫、犬、ウサギ及び他の小動物用のトイレ砂の市場の大きな部分を占める。一形態では、トイレ砂は、凝集性トイレ砂である。凝集性トイレ砂は、一般に、膨張性粒子でコーティングされた非膨張性粒子、例えば、ベントナイトでコーティングされた、粘土または塊になった粘土粒子(粘土微粉)を含む。米国特許第688750号には、かかるトイレ砂が開示されている。当技術分野においてかかる加工トイレ砂が数種公知である。米国特許第7527019号には、動物用凝集性トイレ砂の組成物を生成するための方法及びその組成物が開示されている。米国特許第7331309号には、動物用凝集性トイレ砂の組成物、及びその組成物を生成する方法が開示されている。米国特許第7124710号には、動物用凝集性トイレ砂、及びそのトイレ砂を作製するための方法が開示されている。米国特許第6962129号には、圧縮された凝集性重炭酸塩トイレ砂が開示されている。米国特許第6887570号には、コーティングされた凝集性トイレ砂が開示されている。米国特許第5826543号には、ダスト低減剤を含む凝集性の動物用トイレ砂が開示されている。米国特許第7478610号には、多糖類、ゼオライト、ユッカシディジェラ(Yucca schidegira)、醸造用(distillers)乾燥穀粒、塩化合物及び抗生物質を含む猫用凝集性トイレ砂が開示されている。米国特許出願公開第2009/0007852号(A1)には、トイレ砂に有用な複合吸収剤粒子が開示されている。米国特許第7429421号には、非膨張性粒子を含むコーティングされた凝集性トイレ砂が開示されている。一般に、こうしたトイレ砂は、その本来の目的、例えば、液体を吸収し、糞便を凝集させることによって動物の尿及び糞便を処理する目的のために十分機能する。しかし、こうしたトイレ砂は、高密度粘土から作製されており、取扱い及び輸送のコストが比較的高い。さらには、こうしたトイレ砂は、いくつかの機能、例えば、臭気及び微生物の増殖を有効に制御する機能において不適切である場合が多い。したがって、機能及び関連の特性が改良されたトイレ砂が求められている。」


第6 判断
1 本件訂正発明1
(1)先の取消理由通知に記載した取消理由(拡大先願)について
ア 対比
本件訂正発明1と、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明とを対比する。
拡大先願発明における「ペット用トイレ1(動物用トイレ)」は、本件訂正発明1における「動物用トイレ」に相当する。
拡大先願発明における「凹型の容器のような形状」である「計測台12」は、本件訂正発明1における「上容器」に相当する。また、拡大先願発明における計測台12の「底面」及び「底面の四周側方で斜め上方に立ち上がる壁状部」は、本件訂正発明1における上容器の「底部」及び「側壁部」に相当する。
拡大先願発明における計測台12の底部に、「メッシュ12a」が形成されており、「動物の排泄物である尿」は「メッシュ12aを通過して排泄トレイ13の上に落ちる」が「糞および動物が咥えてきた物体等は通過させ」ないことは、本件訂正発明1における上容器の底部に「上下方向に貫通する複数の孔」が形成されていることに相当する。
拡大先願発明において、「計測台12の下に配置」されており、「メッシュ12aを通過」した「排泄物」である尿を受ける「排泄トレイ13」は、本件訂正発明1における「複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え」た「下容器」に相当する。また、拡大先願発明において、「排泄トレイ13」に「計測台12および動物の重量が掛からない」ことは、本件訂正発明1において、「下容器」に「上容器の重力が作用しない」点に相当する。
拡大先願発明において、「第1重量計21」が、「本体容器10の底部の穴を貫通して排泄トレイ13を支持」し、「排泄物を含む排泄トレイ13の重量を計測」して「排泄物の有無による排泄トレイ13の重量の変化を計測することができ」、かつ「計測値を制御装置23に出力」することは、本件訂正発明1において、「出力部」が「受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する」ことに相当し、拡大先願発明における「第1重量計21」は、本件訂正発明1における「出力部」に相当する。

以上を整理すると、本件訂正発明1と拡大先願発明とは、次の点で一致する。
「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器は、底部と側壁部を有する、
動物用トイレ。」

そして、両者の相違点は、以下のとおりである。

<相違点1>
上容器、及び上容器の底部に形成される孔に関して、
本件訂正発明1では、上容器が「前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する」とともに、上容器の孔が「平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部を有」すると特定されているのに対し、
拡大先願発明においては、計測台12の底面が「平面部」を有さず、また計測台12の底面に形成されるメッシュ12aも、「孔の外形」が「平面視」において「上容器の長手方向の両端に曲線部を」有さない点。

<相違点2>
本件訂正発明1では、上容器には「撥水性を有する液透過性粒状物が設置されている」と特定されているのに対し、
拡大先願発明では、吸収シート14を配置する排泄トレイ13より上側のメッシュ12aを有する計測台12に、液透過性の粒状物を配置すること、及び該粒状物として撥水性を有するものを配置することが、特定されていない点。

イ 判断
上記相違点1について判断する。
拡大先願発明においては、計測台12の底面は、全体が下方に向かって窪んだ湾曲形状をしており、「平面部」を有しておらず、該「平面部」が「最も下方に配置され」、「水平であって」、「当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく」、かつ「平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する」ものではなく、また該「平面部」に形成された「孔の外形」が「平面視」において「上容器の長手方向の両端に曲線部を」有するものではない。
ここで、文献1の段落【0012】には、「なお、計測台12には、メッシュ12aの代わりに、排泄物が通過する穴が形成されていてもよい。計測台12は、本実施形態では凹型の容器のような形状であるが、計測台12の形状は任意であり、体重の計測のために動物を載せることができればよい」との記載はあるが、計測台12の形状やメッシュ12aの改変を許容する当該記載が存在することをもって、相違点1に係る本件訂正発明1の「平面部」及び「孔」に関する上述の具体的構成が、先願の当初明細書等に記載されていたに等しいということはできない。
また、ペット用トイレの上容器に平面部を設けること、上容器の孔の両端に曲線部を設けることが、仮にそれぞれ周知技術であったとしても、計測台12底面の全体が下方に向かって窪んだ湾曲形状をしている拡大先願発明において、底面の形状を全面的に変更して「平面部」を設けるとともに、該「平面部」の厚み、平面視の外形等、及び該「平面部」に設けられる「孔」の平面視外形についても、相違点1に係る本件訂正発明1の構成において具体的に特定された選択を重ねることは、拡大先願発明を実施するうえでの微差ということはできない。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点であり、上記相違点2について検討することを要さず、本件訂正発明1は拡大先願発明と同一ではない。

ウ 申立人の意見について
申立人Aは、令和1年7月17日付け意見書において、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成と同様の構成について、当該構成の各構成要素は、文献19、文献21、文献22、文献23にも示されるように周知技術であるから、拡大先願発明との実質的な相違点ではない旨を主張している(同意見書第33頁第6行-第48頁下から6行)。
申立人Bは、令和1年7月18日付け意見書において、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成と同様の構成について、当該構成の各構成要素は、いずれも周知事項であるか実質的な差違ではないから、本件訂正発明1と拡大先願発明とは同一である旨を主張している(同意見書第8頁第23行-第10頁第16行)。
しかしながら、上記イで判断したとおり、拡大先願発明においては、計測台12の底面は、全体が下方に向かって窪んだ湾曲形状をしており、「平面部」を有していないため、当該底面に「平面部」を設けるとともに、さらに「平面部」及び該平面部に形成する「孔」の具体的構成について特定の選択を重ね、もって上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、たとえ相違点1に係る本件訂正発明1の構成が有する複数の構成要素のそれぞれが周知技術であったとしても、拡大先願発明の実施に際して適宜に決定される事項ということができず、相違点1は実質的な相違点である。
そのため、これら申立人A及びBの主張について検討しても、拡大先願に関して上記イの判断を覆すべき事情は見いだせない。

エ 小括
以上より、本件訂正発明1に係る特許は、先の取消理由通知に記載した取消理由によって、取り消されるべきものではない。

(2)先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 先願
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明1は、先願発明1と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第38頁第10行-第42頁下から2行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明1は、先願発明1と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第39頁第12行-第40頁第8行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明1が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。

(ア)対比
先願発明1における、「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器」、「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部と、を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器」、「前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部」、及び「動物用トイレ」は、それぞれ本件訂正発明1における「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器」、「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器」、「前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部」、及び「動物用トイレ」に相当する。
以上を整理すると、本件訂正発明1と先願発明1とは、次の点で一致する。
「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有する、
動物用トイレ。」

本件訂正発明1と、先願発明1との相違点は、次の点である。
<相違点3>
上容器、及び上容器に形成された孔について、
本件訂正発明1では、「平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部」を有し、また「前記上容器は、底部と側壁部を有し、前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する」と特定されているのに対し、
先願発明1では、当該特定事項を有さない点。

<相違点4>
本件訂正発明1では、上容器には「撥水性を有する液透過性粒状物が設置されている」と特定されているのに対し、
先願発明1では、当該特定事項を有さない点。

(イ)判断
上記相違点3について検討する。
上記相違点3は、上容器及び上容器に形成される孔について、具体的構造又は形状を特定するものであるから、形式的な相違点ではない。
したがって、本件訂正発明1は、先願発明1と同一ではない。

また、上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成は、先願発明1をさらに限定した先願発明2ないし9においても特定されていない。
そして、上記相違点3は、上記(1)に判断した拡大先願発明との相違点1に係る本件訂正発明1の構成を全て含む相違点であり、当該相違点1は、先願発明の明細書と同様の事項を記載する前記第5の1(1)に摘記した拡大先願の明細書及び図面にも、記載されていたということができないから、当該相違点3に係る構成を含む本件訂正発明1は、先願の明細書及び図面の記載を考慮しても、先願発明1ないし9と同一ではない。

よって、本件訂正発明1は、上記相違点4について検討するまでもなく、先願発明1ないし9と同一ということはできない。

新規性
(ア)文献16発明との対比
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明1は、文献16に記載された発明と同一である旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第13頁第17行、及び第29頁第13行-第33頁第1行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明1が、文献16に記載された発明と同一であるかについて検討する。
文献16には、上記第5の16(2)に認定した文献16発明が記載されている。
文献16発明において、「底板兼糞尿分離網(41)」は当然に網目を有しており、当該網目は本件訂正発明1における「複数の孔」に相当するから、文献16発明における「底板兼糞尿分離網(41)」と、本件訂正発明1における「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器」とは、「複数の孔を有する部材」という点で共通する。
文献16発明において、「底板兼糞尿分離網(41)を通じて糞と分離された排尿」は、本件訂正発明1において、「複数の孔を通過した排泄物」に相当する。
文献16発明において、「排尿」を収集する「採尿カップ(51)」は、「流下」する「排尿」を「収集」するから、「排尿」を受けているということができ、本件訂正発明1における「排泄物を受ける受け部」に相当する構成を有するということができる。また、文献16発明における「採尿カップ(51)」と、本件訂正発明1における「下容器」とは、「容器」という点で共通する。
文献16発明において、「排尿重量測定部(4)」の「ロードセル(12)」が出力する「電気信号」は、該ロードセル(12)上に載置された「採尿カップ(51)」に流下して収集された排尿の重量に応じて変化すると解されるから、当該「ロードセル(12)」は、本件訂正発明1における「受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部」に相当する。
文献16発明における「動物用飲水量・排尿量自動測定装置(1)」と、本件訂正発明1における「動物用トイレ」とは、「動物用の設備」という点で共通する。
整理すると、文献16発明と本件訂正発明1とは、次の点で一致する。
「複数の孔が形成された部材と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備えた容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有する、
動物用の設備。」

そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点5>
本件訂正発明1が、「上容器」と「下容器」とを備え、「上容器」には「撥水性を有する液透過性粒状物が設置」されている「動物用トイレ」であるのに対し、
文献16発明は、「ケージ(31)」と「採尿カップ(51)」とを備えた「動物用飲水量・排尿量自動測定装置(1)」であり、「粒状物」を設置するものでもない点。

<相違点6>
本件訂正発明1が、「動物用トイレ」の「上容器」の「底部」に「上下方向に貫通する複数の孔」を形成したうえで、「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え」た「下容器」に対して、「前記上容器の重力が作用しない」ように上容器と下容器とを構成しているのに対して、
文献16発明は、「底板兼糞尿分離網(41)」を動物用の「トイレ」の「上容器」の「底部」に設けたものではなく、「採尿用カップ(51)」に対して動物用の「トイレ」の「上容器」の「重力が作用しない」ように構成したものではない点。

<相違点7>
本件訂正発明1が、「上容器」、及び「上容器に形成された孔」について「平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部」を有し、また「前記上容器は、底部と側壁部を有し、前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する」と特定されているのに対し、
文献16発明では、当該特定事項を有さない点。

上記相違点5ないし7は、いずれも形式的な相違点ということができず、本件訂正発明1は文献16発明と同一ではない。

(イ)文献17発明との対比
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明1は、文献17に記載された発明と同一である旨を主張している(申立書2第13頁第18行-第15頁第2行、及び第33頁第2行-第35頁第8行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明1が、文献17に記載された発明と同一であるかについて検討する。
文献17には、上記第5の17(2)に認定した文献17発明が記載されている。
文献17発明において、「飼育動物の排泄物が通過できる程度の透孔が多数設けられて」いる「床用コンベヤ装置30」の「コンベヤベルト33」の「帯状部材」と、本件訂正発明1における「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器」とは、「複数の孔を有する部材」という点で共通する。
文献17発明において、「床用コンベヤ装置30」の「コンベヤベルト33」の「帯状部材」に形成された「透孔」を「通過した排泄物」は、本件訂正発明1において、「複数の孔を通過した排泄物」に相当する。
文献17発明において、「排泄物受け部としての排泄物処理用コンベヤ装置70」の「コンベヤベルト73」は、「上側ベルト」の部分で、「床用コンベヤ装置33の上側ベルトの透孔を通過した排泄物をこぼさず受け止めることができるよう」構成されているから、文献17発明における「排泄物処理用コンベヤ装置70」の「コンベヤベルト73」の「上側ベルト」の部分は、本件訂正発明1における「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部」に相当する。また、文献17発明における「排泄物処理用コンベヤ装置70」と、本件訂正発明1における「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器」とは、「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備えた部材」という点で共通する。
文献17発明における「回収された排泄物の量」を「測定機器によって自動的に監視してもよい」「排泄物検査装置120」は、「測定機器」が「排泄物の量」の多さに応じて変化する信号を出力すると解されるから、本件訂正発明1における「前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部」とは、「排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部」という点で共通する。
文献17発明における「医療実験用の動物のサニタリー飼育装置1」と、本件訂正発明1における「動物用トイレ」とは、「動物用の設備」という点で共通する。
整理すると、文献17発明と本件訂正発明1とは、次の点で一致する。
「複数の孔が形成された部材と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備えた部材と、
排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有する、
動物用の設備。」

そして、両者は、次の点で相違する。

<相違点8>
本件訂正発明1が、「上容器」と「下容器」とを備え、「上容器」には「撥水性を有する液透過性粒状物が設置」されている「動物用トイレ」であるのに対し、
文献17発明は、「底面開放型の箱体」である「ケージ部材10」と「床用コンベヤ装置30」、及び「排泄物処理用コンベヤ装置70」と「排泄物回収箱」とを備えた「医療実験用の動物のサニタリー飼育装置1」であり、「粒状物」を設置するものでもない点。

<相違点9>
本件訂正発明1が、「動物用トイレ」の「上容器」の「底部」に「上下方向に貫通する複数の孔」を形成したうえで、「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え」た「下容器」に対して「前記上容器の重力が作用しない」ようにし、「出力部」は「前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する」のに対して、
文献17発明では、「透孔」を設けているのは「床用コンベヤ装置30」の「コンベヤベルト33」であって、動物用の「トイレ」の「上容器」ではなく、「透孔を通過した排泄物」を「受け止める」のは「排泄物処理用コンベヤ装置70」の「コンベヤベルト73」であって、動物用の「トイレ」の「下容器」ではなく、「測定機器」が「監視」するのは「回収された排泄物の量」であって、該「測定機器」が「下容器」の「受け部が受けた排泄物の量」の多さに応じて変化する信号を出力してはいない点。

<相違点10>
本件訂正発明1が、「上容器」、及び「上容器に形成された孔」について「平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部」を有し、また「前記上容器は、底部と側壁部を有し、前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する」と特定されているのに対し、
文献17発明では、当該特定事項を有さない点。

上記相違点8ないし10は、いずれも形式的な相違点ということができず、本件訂正発明1は文献17発明と同一ではない。

(ウ)文献18発明との対比
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明1は、文献18に記載された発明と同一である旨を主張している(申立書2第15頁第3行-第16頁第11行、及び第35頁第9行-第37頁第8行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明1が、文献18に記載された発明と同一であるかについて検討する。
文献18には、上記第5の18(2)に認定した文献18発明が記載されている。
文献18発明において、「網状部5」の「細網部52」は当然に網目を有しており、当該網目は本件訂正発明1における「複数の孔」に相当するから、文献18発明における「網状部5」と、本件訂正発明1における「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器」とは、「複数の孔を有する部材」という点で共通する。
文献18発明において、「網状部5」により「排尿以外の物」が「採取」されたうえで「注込部6へ通」された「動物の排尿」は、本件訂正発明1において、「複数の孔を通過した排泄物」に相当する。
文献18発明において、「排尿を、網状部5を介して採取部7に注ぎ込」む「注込部6」及び「コップ状の容器」である「採取部7」は、「網状部5」を通過した「排尿」をを受けているということができ、本件訂正発明1における「排泄物を受ける受け部」に相当する構成を有するということができる。
文献18発明における「コップ状の容器」である「採取部7」と、本件訂正発明1における「下容器」とは、「容器」という点で共通する。
文献18発明における「測定部8」は、「採取部7、注込部6」が「上に載って」おり、「網状部5を通過した排尿を、注込部6と採取部7の何れかで受けた時点」で「重量を計測」することができるから、「測定部8」から得られる「電気信号」は、本件訂正発明1における「前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号」に相当する。また、文献18発明における「測定部8」は、前述の信号を出力しているということができるから、本件訂正発明1における「信号を出力する出力部」に相当する。
文献18発明における「動物用排尿機能測定装置1」と、本件訂正発明1における「動物用トイレ」とは、「動物用の設備」という点で共通する。
整理すると、文献18発明と本件訂正発明1とは、次の点で一致する。
「複数の孔が形成された部材と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部と、容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有する、
動物用の設備。」

そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点11>
本件訂正発明1が、「上容器」と「下容器」とを備え、「上容器」には「撥水性を有する液透過性粒状物が設置」されている「動物用トイレ」であるのに対し、
文献18発明は、「収容部2(ケージ)」と「コップ状の容器」である「採取部7」及び「測定部8」とを備えた「動物用排尿機能測定装置1」であり、「粒状物」を設置するものでもない点。

<相違点12>
本件訂正発明1が、「動物用トイレ」の「上容器」の「底部」に「上下方向に貫通する複数の孔」を形成したうえで、「前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え」た「下容器」に対して、「前記上容器の重力が作用しない」ように上容器と下容器とを構成しているのに対して、
文献18発明は、「網状部5」を動物用の「トイレ」の「上容器」の「底部」に設けたものではなく、「コップ状の容器」である「採取部7」に対して、動物用の「トイレ」の「上容器」の「重力が作用しない」ように構成したものではない点。

<相違点13>
本件訂正発明1が、「上容器」、及び「上容器に形成された孔」について「平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部」を有し、また「前記上容器は、底部と側壁部を有し、前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する」と特定されているのに対し、
文献18発明では、当該特定事項を有さない点。

上記相違点11ないし13は、いずれも形式的な相違点ということができず、本件訂正発明1は文献18発明と同一ではない。

(エ)新規性小括
上記(ア)?(ウ)のとおり、本件訂正発明1は、文献16発明、文献17発明及び文献18発明と同一ではない。
したがって、本件訂正発明1に係る特許は、申立人Bが申し立てる、文献16発明、文献17発明又は文献18発明と同一という、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。

進歩性について
(ア)文献16発明を主引用発明として
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明1は、文献16に記載された発明及び文献6又は文献19に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第13頁第17行、第22頁第5行-第24頁第2行、及び第29頁第13行-第33頁第1行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明1が、文献16に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
文献16には、上記第5の16(2)に認定した文献16発明が記載されており、本件訂正発明1と文献16発明との対比は、上記イ(ア)に示したとおりである。

上記イ(ア)に示した相違点5について判断する。
文献16発明の「動物用飲水量・排尿量自動測定装置(1)」は、動物の排尿を扱う機能を有しているものの、犬などの動物を用いて排尿量と飲水量を同時に測定する薬理学的研究のための装置であり、測定期間中は排泄時に限らず「ケージ(31)」に「試験対象の動物(57)を格納」し、当該「ケージ(31)」内の動物に給水も行う前提である。そのため、文献16発明の「動物用飲水量・排尿量自動測定装置(1)」から、排尿を処理する部材のみを取り出して装置を再構成し、動物用の「トイレ」とする動機付けはなく、また文献16発明の「ケージ(31)」を、「撥水性を有する液透過性粒状物」を設置する「トイレ」の「上容器」とする動機付けもない。
そして、文献16を含め、本願出願前に公知となった文献4ないし29には、それぞれ上記第5の4ないし29に示した事項が記載されており、たとえば文献6及び19には動物用の糞尿処理床又はトイレにおいて粒状物を配置することも記載されているが、これら文献4ないし29のいずれにも、文献16発明の「動物用飲水量・排尿量自動測定装置(1)」を、「上容器」と「下容器」とを有し、「上容器」に「撥水性を有する液透過性粒状物」を設置する「トイレ」へと改変することを示唆する記載はない。
したがって、文献16発明を主引用発明として、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、本件異議申立で証拠となったいずれの文献を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。
よって、上記相違点6及び7について検討することを要さず、本件訂正発明1は、文献16発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)文献17発明を主引用発明として
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明1は、文献17に記載された発明及び文献6又は文献19に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第13頁第18行-第15頁第2行、第22頁第5行-第24頁第2行、及び第33頁第2行-第35頁第8行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明1が、文献17に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
文献17には、上記第5の17(2)に認定した文献17発明が記載されており、本件訂正発明1と文献17発明との対比は、上記イ(イ)に示したとおりである。

上記イ(イ)に示した相違点8について判断する。
文献17発明の「医療実験用の動物のサニタリー飼育装置1」は、動物の排泄物を扱う機能を有しているものの、ネズミ等の医療実験用の動物を「床用コンベヤ装置30」の上で飼育するための装置であり、「ケージ部材10」は「床用コンベヤ装置30」の上で天井と周側壁とを構成するものであり、また飼育期間中は排泄時に限らず「ケージ部材10」と「床用コンベヤ装置30」とで区画される「動物格納室」内に「医療実験用の動物」を格納し、当該「動物格納室」内で動物に給餌・給水も行う前提である。そのため、文献12発明の「医療実験用の動物のサニタリー飼育装置1」から、排泄物を処理する部材のみを取り出して装置を再構成して、動物用の「トイレ」とする動機付けはなく、また文献17発明の「床用コンベヤ装置30」と含んで構成される「動物格納室」を、「粒状物」を設置する「トイレ」の「上容器」とする動機付けもない。
そして、文献17を含め、本願出願前に公知となった文献4ないし29には、それぞれ上記第5の4ないし29に示した事項が記載されており、たとえば文献6及び19には動物用の糞尿処理床又はトイレにおいて粒状物を配置することも記載されているが、これら文献4ないし29のいずれにも、文献17発明の「医療実験用の動物のサニタリー飼育装置1」を、「上容器」と「下容器」とを有し、「上容器」に「粒状物」を設置する「トイレ」へと改変することを示唆する記載はない。
したがって、文献17発明を主引用発明として、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、本件異議申立で証拠となったいずれの文献を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。
よって、上記相違点9及び10について検討することを要さず、本件訂正発明1は、文献17発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)文献18発明を主引用発明として
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明1は、文献18に記載された発明及び文献6又は文献19に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第15頁第3行-第16頁第11行、第22頁第5行-第24頁第2行、及び第35頁第9行-第37頁第8行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明1が、文献18に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
文献18には、上記第5の18(2)に認定した文献18発明が記載されており、本件訂正発明1と文献18発明との対比は、上記イ(ウ)に示したとおりである。

上記イ(ウ)に示した相違点11について判断する。
文献18発明の「動物用排尿機能測定装置1」は、動物の排尿を扱う機能を有しているものの、薬理学的研究のために動物の排尿速度を正確に計測するための装置であり、測定期間中は排泄時に限らず「収容部2(ケージ)」に動物を収容し、当該「収容部2(ケージ)」内の動物に給水も行う前提である。そのため、文献18発明の「動物用排尿機能測定装置1」から、排尿を処理する部材のみを取り出して装置を再構成し、動物用の「トイレ」とする動機付けはなく、また文献18発明の「収容部2(ケージ)」を、「粒状物」を設置する「トイレ」の「上容器」とする動機付けもない。
そして、文献18を含め、本願出願前に公知となった文献4ないし29には、それぞれ上記第5の4ないし29に示した事項が記載されており、たとえば文献6及び19には動物用の糞尿処理床又はトイレにおいて粒状物を配置することも記載されているが、これら文献4ないし29のいずれにも、文献18発明の「動物用排尿機能測定装置1」を、「上容器」と「下容器」とを有し、「上容器」に「粒状物」を設置する「トイレ」へと改変することを示唆する記載はない。
したがって、文献18発明を主引用発明として、上記相違点11に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、本件異議申立で証拠となったいずれの文献を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。
よって、上記相違点12及び13について検討することを要さず、本件訂正発明1は、文献18発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)進歩性小括
上記(ア)?(ウ)のとおり、本件訂正発明1は、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、本件異議申立で証拠となったいずれの文献を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明1に係る特許は、申立人Bが申し立てる、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項も考慮すれば進歩性を有しないという、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1に係る特許は、先の取消理由において通知した取消理由、及び、先の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。

2 本件訂正発明2
先の取消理由において、一次訂正後の請求項2に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について、判断する。

(1)拡大先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明2は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書1第14頁下から1行-第20頁の図7まで、及び第64頁第1行-同頁下から3行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明2は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第41頁第4行-同頁第19行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明2が、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明と同一であるかについて検討する。

ア 対比
本件訂正発明2と、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明とを対比する。
拡大先願発明における「ペット用トイレ1(動物用トイレ)」は、本件訂正発明2における「動物用トイレ」に相当する。
拡大先願発明における「凹型の容器のような形状」である「計測台12」は、本件訂正発明2における「上容器」に相当する。また、拡大先願発明における計測台12の「底面」は、本件訂正発明2における上容器の「底部」に相当する。
拡大先願発明における計測台12の底部に、「メッシュ12a」が形成されており、「動物の排泄物である尿」は「メッシュ12aを通過して排泄トレイ13の上に落ちる」が「糞および動物が咥えてきた物体等は通過させ」ないことは、本件訂正発明2における上容器の底部に「上下方向に貫通する複数の孔」が形成されていることに相当する。
拡大先願発明において、「計測台12の下に配置」されており、「メッシュ12aを通過」した「排泄物」である尿を受ける「排泄トレイ13」は、本件訂正発明2における「複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え」た「下容器」に相当する。また、拡大先願発明において、「排泄トレイ13」に「計測台12および動物の重量が掛からない」ことは、本件訂正発明2において、「下容器」に「上容器の重力が作用しない」点に相当する。
拡大先願発明において、「第1重量計21」が、「本体容器10の底部の穴を貫通して排泄トレイ13を支持」し、「排泄物を含む排泄トレイ13の重量を計測」して「排泄物の有無による排泄トレイ13の重量の変化を計測することができ」、かつ「計測値を制御装置23に出力」することは、本件訂正発明2において、「出力部」が「受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する」ことに相当し、拡大先願発明における「第1重量計21」は、本件訂正発明2における「出力部」に相当する。
拡大先願発明において、「排泄トレイ13」上に「尿等の液体を吸収するシート」である「吸収シート14」が配置されている構成は、本件訂正発明2において、「前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置され」ている構成に相当する。

整理すると、本件訂正発明2と拡大先願発明とは、
「上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置されている、
動物用トイレ。」
の点で一致する。

そして、両者の相違点は、以下のとおりである。

<相違点14>
本件訂正発明2では、上容器には「撥水性を有する液透過性粒状物が設置されている」と特定されているのに対し、
拡大先願発明では、吸収シート14を配置する排泄トレイ13より上側のメッシュ12aを有する計測台12に、液透過性の粒状物を配置すること、及び該粒状物として撥水性を有するものを配置することが、特定されていない点。

<相違点15>
本件訂正発明2では、「前記受け部は、前記下容器に対して出し入れ可能に構成されている」のに対し、
拡大先願発明では、当該構成を有さない点。

イ 判断
上記相違点15について判断する。
拡大先願発明では、「排泄物である尿」がその上に落ちる「排泄トレイ13」に、「計測台12および動物の重量が掛からない」ようになっており、当該「排泄トレイ13」自体が、「本体容器10の側面に形成された穴から挿入および抜き取られることができ」るよう構成されている。このような拡大先願発明において、「排泄トレイ13」の上の尿を受ける部分を、さらに「排泄トレイ13」に対して「出し入れ可能」にするには、「排泄トレイ13」について「本体容器10の側面に形成された穴から挿入および抜き取られる」ための構造を含めて実質的な改変を加える必要があるから、相違点15は形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明2は、上記相違点14について検討することを要さず、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明2は、先願発明2と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第42頁下から1行-第43頁最終行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明2は、先願発明2と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第41頁第4行-同頁第19行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明2が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。

本件訂正発明2と、上記第5の2(2)に認定した先願発明1ないし9とを対比すると、先願発明1ないし9は上記(1)アに示した相違点14及び15に係る本件訂正発明2の構成を有さない。
そして、上記(1)イで判断したとおり、相違点15に係る本件訂正発明2の構成は、先願の明細書及び図面と同様の拡大先願発明の明細書及び図面を考慮しても、形式的な相違点ではなく実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明2は、先願発明1ないし9のいずれとも同一ではない。

(3)申立人の意見について
申立人Bは、令和1年7月18日付け意見書において、拡大先願発明で排泄トレイ13を本体容器10に対して出し入れ可能としているように、「受け部」を「下容器に対して出し入れ可能」とすることも常套手段であり、相違点14は実質的な相違点ではない旨を主張している。そして、本件訂正発明2は、拡大先願発明と同一であり、先願発明とも同一である旨を主張している(同意見書第6頁14行-第7頁下から3行)。
しかしながら、本体容器10に対して出し入れ可能な排泄トレイ13に、さらに当該排泄トレイ13に対して「受け部」が出し入れ可能な構成を追加することは、出し入れ可能な構成を二重に設けることとなるから、常套手段ということはできない。また、排泄トレイ13が本体容器10に対して出し入れ可能な構造を維持するにせよ、当該構造を維持しないにせよ、排泄トレイ13に対して「受け部」を「出し入れ可能」とするには、実際に構造上の改変が必要であるから、相違点15に係る構成は上記(1)及び(2)に判断したとおり、実質的な相違点である。これに反する申立人Bの主張は、採用することができない。
したがって、申立人Bの主張を考慮しても、本件訂正発明2に係る特許は、特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明2に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。


3 本件訂正発明3
先の取消理由において、一次訂正後の請求項3に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について、判断する。

(1)拡大先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明3は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書1第14頁下から1行-第20頁の図7まで、及び第64頁下から2行-第66頁第7行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明3は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第41頁第20行-第42頁第21行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明3が、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は本件訂正発明2の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記1(1)及び上記2(1)に示したとおり、本件訂正発明1及び2は、いずれも拡大先願発明と同一ではない。
したがって、本件訂正発明1又は2をさらに限定した本件訂正発明3も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明3は、先願発明3と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第44頁第1行-第45頁第2行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明3は、先願発明3と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第42頁第22行-第43頁第10行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明3が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は本件訂正発明2の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記1(2)ア及び上記2(2)に示したとおり、本件訂正発明1及び2は、いずれも先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明1又は2をさらに限定した本件訂正発明3も、先願発明1ないし9と同一ではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明3に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。


4 本件訂正発明4
先の取消理由において、一次訂正後の請求項4に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について、判断する。

(1)拡大先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明4は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書1第14頁下から1行-第20頁の図7まで、及び第66頁第8行-第68頁下から3行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明4は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第43頁第12行-第44頁下から3行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明4が、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明4は、本件訂正発明3の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記3(1)に示したとおり、本件訂正発明3は、拡大先願発明と同一ではない。
したがって、本件訂正発明3をさらに限定した本件訂正発明4も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明4は、先願発明3と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第45頁第3行-第47頁下から5行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明4が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明4は、本件訂正発明3の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記3(2)に示したとおり、本件訂正発明3は、先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明3をさらに限定した本件訂正発明4も、先願発明1ないし9と同一ではない。

(3)進歩性について
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明4は、文献16に記載された発明、及び文献6又は文献19に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第13頁第17行、第22頁第5行-第24頁第2行、第29頁第13行-第33頁第1行、及び第43頁第12行-第45頁下から4行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明4が、文献16に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
本件訂正発明4は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有したうえで、さらに本件訂正発明3及び4における限定を付加したものであるところ、上記1(2)ウ(ア)で判断したとおり、文献16発明を主引用発明として、本件訂正発明1が有する相違点5に係る構成に至ることは、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。また、本件訂正発明1が有する相違点5に係る構成は、本件訂正発明2も有しているから、文献16発明を主引用発明として、相違点5に係る構成を有する本件訂正発明2に至ることも、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、本件訂正発明3及び4における付加的限定事項について検討することを要さず、本件訂正発明4は、文献16発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明4に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。


5 本件訂正発明5
先の取消理由において、一次訂正後の請求項5に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について、判断する。

(1)拡大先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明5は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書1第14頁下から1行-第20頁の図7まで、及び第68頁下から2行-第71頁第4行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明5が、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明5は、本件訂正発明3又は本件訂正発明4の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記3(1)及び上記4(1)に示したとおり、本件訂正発明3及び4は、いずれも拡大先願発明と同一ではない。
したがって、本件訂正発明3又は4をさらに限定した本件訂正発明5も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明5は、先願発明3と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第47頁下から4行-第50頁第8行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明5が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明5は、本件訂正発明3又は本件訂正発明4の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記3(2)及び上記4(2)に示したとおり、本件訂正発明3及び4は、いずれも先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明3又は4をさらに限定した本件訂正発明5も、先願発明1ないし9と同一ではない。

(3)進歩性について
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明5は、文献16に記載された発明、文献17に記載された発明又は文献18に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第16頁第11行、第22頁第5行-第24頁第2行、第29頁第13行-第37頁第8行、及び第45頁下から3行-第47頁下から8行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明5が、文献16、文献17又は文献18に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
本件訂正発明5は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有したうえで、さらに本件訂正発明3及び5又は本件訂正発明3ないし5における限定を付加したものであるところ、上記1(2)ウ(ア)?(ウ)で判断したとおり、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、本件訂正発明1が有する相違点5、相違点8あるいは相違点11に係る構成に至ることは、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。また、本件訂正発明1が有する相違点5、相違点8あるいは相違点11に係る構成は、本件訂正発明2も有しているから、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、相違点5、相違点8あるいは相違点11に係る構成を有する本件訂正発明2に至ることも、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、本件訂正発明3ないし5における付加的限定事項について検討することを要さず、本件訂正発明5は、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明5に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。


6 本件訂正発明6
先の取消理由において、一次訂正後の請求項6に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について、判断する。

(1)拡大先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明6は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書1第14頁下から1行-第20頁の図7まで、及び第71頁第5行-第72頁第4行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明6は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第47頁下から7行-第48頁下から7行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明6が、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明6は、本件訂正発明3ないし5のいずれかの構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記3(1)、上記4(1)及び上記5(1)に示したとおり、本件訂正発明3ないし5は、いずれも拡大先願発明と同一ではない。
したがって、本件訂正発明3ないし5をさらに限定した本件訂正発明6も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明6は、先願発明4と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第50頁第9行-第51頁第10行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明6は、先願発明4と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第48頁下から6行-第49頁第10行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明6が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明6は、本件訂正発明3ないし5のいずれかの構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記3(2)、上記4(2)及び上記5(2)に示したとおり、本件訂正発明3ないし5は、いずれも先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明3ないし5をさらに限定した本件訂正発明6も、先願発明1ないし9と同一ではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。


7 本件訂正発明7
先の取消理由において、一次訂正後の請求項7に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について、判断する。

(1)拡大先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明7は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書1第14頁下から1行-第20頁の図7まで、及び第72頁第5行-同頁最終行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明7は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第49頁第11行-第50頁第10行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明7が、上記第5の1(2)に認定した拡大先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明7は、本件訂正発明6の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記6(1)に示したとおり、本件訂正発明6は、拡大先願発明と同一ではない。
したがって、本件訂正発明6をさらに限定した本件訂正発明7も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明7は、先願発明5と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第51頁第11行-第52頁第11行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明7は、先願発明5と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第50頁第11行-同頁最終行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明7が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明7は、本件訂正発明6の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記6(2)に示したとおり、本件訂正発明6は、先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明6をさらに限定した本件訂正発明7も、先願発明1ないし9と同一ではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。


8 本件訂正発明8
(1)先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
先の取消理由において、一次訂正後の請求項8に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について、判断する。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明8は、文献16に記載された発明、及び文献6又は文献19に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第13頁第17行、第22頁第5行-第24頁第2行、第29頁第13行-第33頁第1行、及び第51頁第1行-第52頁第20行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明8が、文献16に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
本件訂正発明8は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有したうえで、さらに本件訂正発明3ないし8における付加的限定を加えたものであるところ、上記1(2)ウ(ア)で判断したとおり、文献16発明を主引用発明として、本件訂正発明1が有する相違点5に係る構成に至ることは、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。また、本件訂正発明1が有する相違点5に係る構成は、本件訂正発明2も有しているから、文献16発明を主引用発明として、相違点5に係る構成を有する本件訂正発明2に至ることも、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、本件訂正発明3ないし8における付加的限定事項について検討することを要さず、本件訂正発明8は、文献16発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)先の取消理由通知において採用しなかった同日出願の取消理由について
ア 同日出願の取消理由
先の取消理由通知においては採用していないが、平成31年3月13日発送の取消理由においては、訂正前の本件発明8について、上記第5の3(2)に認定した同日出願発明8と同一である、との取消理由を通知していた。
事案に鑑み、本件訂正発明8については、当該同日出願の取消理由についても、判断を示すこととする。
訂正前の本件発明8は、同日出願発明8と同一であったところ、同日出願発明8は、本件訂正発明8が有する、「前記排泄物の量が閾値を超えた場合には異常であることを通知する」構成を有していない。
そして、動物用トイレの制御部が、本件訂正発明8の如く「補正値を加算」して検出した「前記排泄物の量」について、「閾値を超えた場合には異常であることを通知する」という構成は、動物用トイレの制御部が行う具体的な技術的処理であるから、当該構成の有無によらず本件訂正発明8と同日出願発明8とが同一ということはできない。
なお、同日出願発明8を含めて、同日出願発明1ないし12については、本決定の時点において、本件訂正発明8が有する「前記排泄物の量が閾値を超えた場合には異常であることを通知する」という構成を有さない形で訂正がなされ、当該訂正が確定している(異議2018-701074号)ことが、当審に顕著な事実である。
したがって、本件訂正発明8は、同日出願発明8と同一であるとの理由によって、取り消されるべきものではない。

イ 申立人の意見について
申立人Bは、令和1年7月18日付けの意見書において、本件訂正における訂正事項15により限定された本件訂正発明8の構成と同様の構成について、所定の計測値を所定の閾値と比較し、該計測値が該閾値を超えた場合に異常を通知することは、計測値に基づいた制御手段として周知事項に過ぎないから、当該構成の追加によって同日出願発明8との実質的な相違点が生じるものではない旨を主張している(同意見書第10頁下から5行-第11頁第17行)。
しかしながら、この点については上記アのとおりであるから、申立人の当該主張を考慮しても、本件訂正発明8は、同日出願発明8と同一であるとの理由によって、取り消されるべきものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明8に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。
また、本件訂正発明8に係る特許は、同日出願発明8と同一であるとの理由によって、取り消されるべきものではない。


9 本件訂正発明9
先の取消理由において、一次訂正後の請求項9に係る発明については、取消理由を通知していない。
先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由、及び同日出願について、判断する。

(1)拡大先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明9は、拡大先願発明と同一である旨を主張している(申立書1第14頁最終行-第20頁の図7まで、第73頁第1行-第76頁下から4行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明9が、拡大先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明9は、本件訂正発明6ないし8のいずれかの構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、上記6(1)、上記7(1)及び上記8(1)に示したとおり、本件訂正発明6ないし8は、いずれも拡大先願発明と同一ではない。
したがって、本件訂正発明6ないし8をさらに限定した本件訂正発明9も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先願について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明9は、先願発明6と同一である旨を主張している(申立書1第14頁最終行-第20頁の図7まで、第52頁第12行-第56頁第7行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明9が、先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明9は、本件訂正発明6又は7の構成を全て有したうえで、さらに本件訂正発明8ないし9における付加的限定を加えたものであるところ、上記6(2)及び7(2)に示したとおり、本件訂正発明6及び7は、いずれも先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明8ないし9における限定事項について検討することを要さず、本件訂正発明9は、先願発明1ないし9と同一ではない。

(3)進歩性について
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明9は、文献16に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された発明、及び文献14に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第13頁第17行、第22頁第5行-第26頁第20行、及び第52頁第21行-第54頁下から4行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明9が、文献16に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
本件訂正発明9は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、上記1(2)ウ(ア)で判断したとおり、文献16発明を主引用発明として、本件訂正発明1が有する相違点5に係る構成に至ることは、文献6又は文献19及び文献14に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。また、本件訂正発明1が有する相違点5に係る構成は、本件訂正発明2も有しているから、文献16発明を主引用発明として、相違点5に係る構成を有する本件訂正発明2に至ることも、文献6又は文献19及び文献14に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、本件訂正発明3以降における付加的限定事項について検討することを要さず、本件訂正発明9は、文献16発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)同日出願について
平成31年3月13日発送の取消理由においては、訂正前の本件発明8に従属する訂正前の本件発明9について、上記第5の3(2)に認定した同日出願発明9と同一である、との取消理由を通知していた。
しかしながら、上記8(2)に示したとおり、本件訂正発明8について同日出願の取消理由が解消しているから、本件訂正発明9についても、同日出願発明9と同一であるとの取消理由は解消している。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明9に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。
また、本件訂正発明9に係る特許は、同日出願発明9と同一であるとの理由によって、取り消されるべきものではない。


10 本件訂正発明10
(1)先の取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正発明10は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有し、これをさらに限定したものであるところ、本件訂正発明1及び2がいずれも拡大先願発明と同一でないことは、上記1(1)及び上記2(1)に示したとおりである。
そのため、本件訂正発明1又は2をさらに限定した本件訂正発明10も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 先願
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明10は、先願発明7と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第56頁第8行-第57頁第10行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明10は、先願発明7と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第55頁下から2行-第56頁下から4行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明10が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明10は、本件訂正発明1又は本件訂正発明2の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記1(2)ア及び上記2(2)に示したとおり、本件訂正発明1及び2は、いずれも先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明1又は2をさらに限定した本件訂正発明10も、先願発明1ないし9と同一ではない。

進歩性
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明10は、文献16に記載された発明、文献17に記載された発明又は文献18に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献20に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第16頁第11行、第22頁第5行-第24頁第2行、第26頁第21行-第29頁第10行、第29頁第13行-第37頁第8行、及び第56頁下から3行-第58頁第7行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明10が、文献16、文献17又は文献18に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献20に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
本件訂正発明10は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有したうえで、さらに限定を付加したものであるところ、上記1(2)ウ(ア)?(ウ)で判断したとおり、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、本件訂正発明1が有する相違点5、相違点8あるいは相違点11に係る構成に至ることは、文献6又は文献19及び文献20に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。また、本件訂正発明1が有する相違点5、相違点8あるいは相違点11に係る構成は、本件訂正発明2も有しているから、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、相違点5、相違点8あるいは相違点11に係る構成を有する本件訂正発明2に至ることも、文献6又は文献19及び文献20に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、さらなる付加的限定事項について検討することを要さず、本件訂正発明10は、文献16発明、文献17発明又は文献18発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献20に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)同日出願について
平成31年3月13日発送の取消理由においては、訂正前の本件発明8に従属する訂正前の本件発明10について、上記第5の3(2)に認定した同日出願発明10と同一である、との取消理由を通知していた。
しかしながら、上記8(2)に示したとおり、本件訂正発明8について同日出願の取消理由が解消しているから、本件訂正発明10についても、同日出願発明10と同一であるとの取消理由は解消している。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明10に係る特許は、先の取消理由において通知した取消理由、及び、先の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、本件訂正発明10に係る特許は、同日出願発明10と同一であるとの理由によって、取り消されるべきものではない。


11 本件訂正発明11
(1)先の取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正発明11は、本件訂正発明10の構成を全て有し、これをさらに限定したものであるところ、本件訂正発明10が拡大先願発明と同一でないことは、上記10(1)に示したとおりである。
そのため、本件訂正発明10をさらに限定した本件訂正発明11も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 先願
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明11は、先願発明8と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第59頁第8行-同頁下から2行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明11が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明11は、本件訂正発明10の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記10(2)アに示したとおり、本件訂正発明10は、先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明10をさらに限定した本件訂正発明11も、先願発明1ないし9と同一ではない。

進歩性
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明11は、文献16に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19に記載された発明、及び文献20に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書2第11頁第15行-第13頁第17行、第22頁第5行-第24頁第2行、第26頁第21行-第29頁第10行、及び第59頁最終行-第60頁最終行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明11が、文献16に記載された発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献20に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかについて検討する。
本件訂正発明11は、本件訂正発明10の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、上記10(2)イで判断したとおり、本件訂正発明10は、文献16発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献20に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、本件訂正発明11における付加的限定事項について検討することを要さず、本件訂正発明11は、文献16発明を主引用発明として、文献6又は文献19及び文献20に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)同日出願について
平成31年3月13日発送の取消理由においては、訂正前の本件発明8に従属する訂正前の本件発明11について、上記第5の3(2)に認定した同日出願発明11と同一である、との取消理由を通知していた。
しかしながら、上記8(2)に示したとおり、本件訂正発明8について同日出願の取消理由が解消しているから、本件訂正発明11についても、同日出願発明11と同一であるとの取消理由は解消している。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明11に係る特許は、先の取消理由において通知した取消理由、及び、先の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、本件訂正発明11に係る特許は、同日出願発明11と同一であるとの理由によって、取り消されるべきものではない。


12 本件訂正発明12
(1)先の取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正発明12は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有し、これをさらに限定したものであるところ、本件訂正発明1及び2がいずれも拡大先願発明と同一でないことは、上記1(1)及び上記2(1)に示したとおりである。
そのため、本件訂正発明1又は2をさらに限定した本件訂正発明12も、拡大先願発明と同一ではない。

(2)先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人Aは、申立書1において、訂正前の本件発明12は、先願発明9と同一である旨を主張している(申立書1第11頁第8行-第14頁図3まで、及び第57頁第11行-第58頁第11行)。
申立人Bは、申立書2において、訂正前の本件発明12は、先願発明9と同一である旨を主張している(申立書2第20頁第6行-第22頁第4行、及び第61頁下から5行-第62頁第15行)。
上記第2に示したとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正発明12が、上記第5の2(2)に認定した先願発明と同一であるかについて検討する。
本件訂正発明12は、本件訂正発明1又は本件訂正発明2の構成を全て有し、さらなる限定を付加したものであるところ、上記1(2)ア及び上記2(2)に示したとおり、本件訂正発明1及び2は、いずれも先願発明1ないし9と同一ではない。
したがって、本件訂正発明1又は2をさらに限定した本件訂正発明12も、先願発明1ないし9と同一ではない。

(3)同日出願について
平成31年3月13日発送の取消理由においては、訂正前の本件発明8に従属する訂正前の本件発明12について、上記第5の3(2)に認定した同日出願発明12と同一である、との取消理由を通知していた。
しかしながら、上記8(2)に示したとおり、本件訂正発明8について同日出願の取消理由が解消しているから、本件訂正発明12についても、同日出願発明12と同一であるとの取消理由は解消している。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明12に係る特許は、先の取消理由において通知した取消理由、及び、先の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、本件訂正発明12に係る特許は、同日出願発明12と同一であるとの理由によって、取り消されるべきものではない。


第7 むすび
以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件訂正発明1ないし12に係る特許は、先の取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正発明1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
動物用トイレ
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物用トイレとして、室内で飼育される猫等の動物が使用するものが知られている。また、このような動物用トイレとして、動物の排泄の回数を計測するようにしたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-153409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものでは、排泄の回数は計測できるが、排泄物の量(例えば、尿量)を計測することができない。このため、尿量に症状が現れる病気(例えば慢性腎不全)を早期発見したり、尿を吸収する吸収性シートの取り換え時期を判断したりすることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、排泄物の量を計測することが可能な動物用トイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有し、前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部を有し、前記上容器は、底部と側壁部を有し、前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有することを特徴とする動物用トイレである。本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排泄物の量を計測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動物用トイレ1を示す斜視図である。
【図2】動物用トイレ1の分解説明図である。
【図3】動物用トイレ1を上から見た図である。
【図4】図3のA-A断面図である。
【図5】図3のB-B断面図である。
【図6】制御部42の構成を示すブロック図である。
【図7】ロードセル41の出力信号の時間変化を示す図である。
【図8】第2実施形態の床プレート40´の斜視図である。
【図9】第2実施形態の動物用トイレ1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、を有することを特徴とする動物用トイレが明らかとなる。
【0010】
このような動物用トイレによれば、下容器の受け部には複数の孔を通過した排泄物(尿)のみが落下する。よって、出力部から出力される信号に基づいて、この排泄物の量(尿量)を計測することができる。
【0011】
かかる動物用トイレであって、前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置されていることが望ましい。
【0012】
このような動物用トイレによれば、吸収性シートの取り換え時期を判断しやすい。
【0013】
かかる動物用トイレであって、前記下容器を支持する支持部材を備え、前記出力部は、前記支持部材の上に設けられ、且つ、前記下容器の下方に位置することが望ましい。
【0014】
このような動物用トイレによれば、出力部が下容器から受ける力に基づいて排泄物の量を計測することができる。
【0015】
かかる動物用トイレであって、前記下容器には、前記出力部に係合可能な係合部が設けられていることが望ましい。
【0016】
このような動物用トイレによれば、下容器と支持部材との位置ずれや偏りを抑制することができる。
【0017】
かかる動物用トイレであって、前記出力部は、防水加工が施されていることが望ましい。
【0018】
このような動物用トイレによれば、支持部材を水洗いすることができる。
【0019】
かかる動物用トイレであって、前記支持部材には、前記出力部から出力される前記信号に基づいて前記排泄物の量を検出する制御部が設けられていることが望ましい。
【0020】
このような動物用トイレによれば、他の部材(外部端末など)を用いることなく、動物用トイレのみで排泄物の量を計測することができる。
【0021】
かかる動物用トイレであって、前記制御部は、排泄前の前記信号と、排泄後の前記信号との差分を算出することによって、1回ごとの前記排泄物の量を検出することが望ましい。
【0022】
このような動物用トイレによれば、排泄物の量の計測精度を高めることができる。
【0023】
かかる動物用トイレであって、前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置されており、前記制御部は、前記排泄物の量を検出する際に、前記液透過性粒状物に対して予め定められた補正値を加算することが望ましい。
【0024】
このような動物用トイレによれば、排泄物の量の計測精度をさらに高めることができる。
【0025】
かかる動物用トイレであって、前記上容器には、前記制御部の検出結果を表示する表示部が設けられており、前記制御部と前記表示部とが無線により通信可能であることが望ましい。
【0026】
このような動物用トイレによれば、検出結果を視認しやすくすることができる。
【0027】
かかる動物用トイレであって、前記上容器の重量に応じて変化する上容器重量信号を出力する上容器用出力部を、さらに有することが望ましい。
【0028】
このような動物用トイレによれば、計測対象を増やすことができる。
【0029】
かかる動物用トイレであって、前記上容器重量信号に基づいて、動物の体重、又は、前記複数の孔を通過しない排泄物の量の少なくとも一方を検出する上容器用制御部を有することが望ましい。
【0030】
このような動物用トイレによれば、動物の体重や固体の排泄物(糞便)の量を計測することができる。
【0031】
かかる動物用トイレであって、電力を供給するための電池を有することが望ましい。
【0032】
このような動物用トイレによれば、安全性の向上を図ることができる。
【0033】
===第1実施形態===
本発明の実施形態に係る動物用トイレは、例えば室内で飼われる猫等の動物が使用するものである。本明細書中における「動物」とは、猫、犬、ウサギ、ハムスター等のいわゆるペットのみならず、トラやライオンの赤ちゃん等も含む。
【0034】
<動物用トイレ1の全体構成>
図1?図5を参照しつつ、動物用トイレ1の構成について説明する。なお、以下の説明において、床プレート40の面の法線方向を上下方向とし、床プレート40に対して上容器20及び下容器30の位置する側を「上」とし、その逆側(床側)を「下」とする。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る動物用トイレ1を示す斜視図である。図2は、動物用トイレ1の分解説明図である。図3は、動物用トイレ1を上から見た図である。図4は、図3のA-A断面図である。図5は、図3のB-B断面図である。なお、図4以外の図では、上容器20に排泄物処理材24を収容していない状態を示している(排泄物処理材24の図示を省略している)。
【0036】
動物用トイレ1は、上容器20と、下容器30と、床プレート40(支持部材に相当)とを備えている。この動物用トイレ1は、例えば室内の床等の上に設置されて使用されるものである。
【0037】
(上容器20の構成)
上容器20は、上部が開放された容器であり、底部21と、側壁部22とを備えている。
【0038】
底部21は、図4に示すように、周縁部211と、平面部212と、テーパ面部213とを有している。
【0039】
周縁部211は、平面視で底部21の外周近傍の部分である。
平面部212は、平面視で底部21の略中央に配置され、底部21の高さ方向(上下方向)における最も下方に配置されている。平面部212は、上容器20の略水平方向に延びる面である。平面部212には、複数の貫通孔21aが形成されている。なお、貫通孔21aは、動物の排泄物のうち、尿(液体)は通すが糞便(個体)は通さない大きさに形成されている。
テーパ面部213は、平面部212の周縁から、底部21の周縁部211に向かって上り傾斜となる面である。すなわち、テーパ面部213は、周縁部211から略中央に向かって下り傾斜となる面である。テーパ面部213のテーパ角度は、底部21に対して5度?60であることが好ましい。テーパ面部213のテーパ角度が5度を下回る程に浅すぎると、動物の尿等を平面部212側へ移動させて、下容器30に誘導することが難しくなる。また、テーパ面部213のテーパ角度が60度を超える程に深すぎると、動物が上容器20に乗った際に、足を安定して乗せる場所が狭くなる。
【0040】
側壁部22は、底部21の周縁部211から起立すると共に、上容器20の外壁を構成する壁面である。側壁部22は、上部壁部221と、延出壁部222とを有する。
上部壁部221は、その下端がテーパ面部213の上端から連続している。そして、上部壁部221は、上容器20の上端部まで延び、上端部で外側に向かって反っている。
延出壁部222は、図5に示すように、上部壁部221の外面側において、上部壁部221から下方へ延びる部位である。また、図1及び図5に示すように、延出壁部222は、下容器30よりも外側に位置している。上容器20の四隅において、延出壁部222は、床プレート40の上面まで延び、足部223を構成している。また、図1に示すように、延出壁部222は、足部223と足部223との間に、上方へ向かって弧を描くように切り欠かれる切り欠き部224を有している。
【0041】
また、図4に示すように、上容器20には、粒状の排泄物処理材24(液透過性粒状物に相当)が収容されている。排泄物処理材24は、尿などの液体の動物の排泄物を吸収したり、透過させたりする粒状の処理材であり、いわゆる猫砂である。本実施形態では、排泄物処理材24として、撥水性で多くの液体を吸液部材へ透過させるタイプのものを用いている。これは、液体を吸収するタイプのものでは、尿が吸収されてしまい、尿量を正確に計測するのが困難になるからである。ただし、撥水性のものでも、若干量の尿が吸収され、その量は、排泄物処理材24の種類によって異なる。そこで、本実施形態では、後述するように、尿の量を検出する際に、使用する排泄物処理材24に応じて補正を行うようにしている。
【0042】
また、上容器20の上部壁部221の外面には表示部26が設けられている。表示部26は、床プレート40の制御部42の出力を表示する部位であり、例えば液晶ディスプレイを有している。また、表示部26は、制御部42と無線通信を行う通信部(不図示)、表示内容の切り替えや各種の設定などを行うための入力部(不図示)、電力を供給するための電池(不図示)などを備えている。このように、上容器20に表示部26を設けているので、表示内容を視認しやすい。但し、表示部26の配置はこれに限られない。例えば、表示部26を、下容器30、あるいは、床プレート40に設けてもよい。なお、表示部26を床プレート40に設ける場合、無線ではなく有線にて制御部42と通信するようにしてもよい。
【0043】
(下容器30の構成)
下容器30は、図2に示すように、上部が開放された容器であり、受け部31と、下部側壁部32と、取手部33とを備えている。
【0044】
受け部31は、上容器20の平面部212の複数の貫通孔21aを通過した排泄物(具体的には尿)を受ける部位である。この受け部31の上には、吸収性シート34が配置されている。吸収性シート34は、動物の液体の排泄物(尿)を吸収可能な部材である。本実施形態の吸収性シート34は、液透過性の表面シートと、液保持性の中間シートと、液不透過性の裏面シートを積層して接合した四角形のシートである。
【0045】
また、受け部31には、係合部35が設けられている。係合部35は、床プレート40上のロードセル41(後述)に係合可能な部位であり、上方に突出するように(底面が窪むように)形成されている。この係合部35は、床プレート40のロードセル41と対応する位置に設けられている。
【0046】
下部側壁部32は、受け部31の周縁から起立する壁である。なお、図4及び図5に示すように、本実施形態の動物用トイレ1では、下部側壁部32の上端と上容器20(周縁部211)との間に隙間があり、下部側壁部32は上容器20と接触していない。よって、下容器30には上容器20の重力が作用しないことになる。
【0047】
取手部33は、下部側壁部32の外面に配置されている。取手部33は、下容器30の短手方向の辺に1箇所ずつ、向かい合って計2箇所設けられている。取手部33は、下容器30の外側に突出するように設けられている。
【0048】
(床プレート40の構成)
床プレート40は、床上に設置されて、上容器20及び下容器30を支持する板状の部材である。このため、床プレート40は、図1に示すように、上容器20の四隅の足部223よりも外側に出るような大きさに設けられている。但し、床プレート40は、少なくとも、下容器30を支持していればよい。つまり、床プレート40が上容器20の四隅の足部223よりも内側に形成されていてもよい。この場合、上容器20の足部223は床上に配置され、上容器20は床に支持されることになる。
【0049】
図2に示すように、床プレート40には、ロードセル41と制御部42が設けられている。
【0050】
ロードセル41は、加えられた力を電気信号に変換して出力するセンサーである。ロードセル41は、床プレート40の上に設けられており、且つ、下容器30の下方に位置している。このため、ロードセル40は、下容器30から受ける力に応じた信号を出力する。換言すると、ロードセル41は、下容器30の受け部31が受けた排泄物(貫通孔21aを通過した尿)の量の多さに応じて変化する信号を出力する。本実施形態のロードセル41は、円柱(コラム)形状の圧縮型のものであり、床プレート40上に間隔をあけて4個配置されている。そして、これら4個のロードセル41には下容器30から均等に力が加えられる。
【0051】
また、図4及び図5に示すように、各ロードセル41は、下容器30の係合部35と係合している。これにより、下容器30と床プレート40との位置ずれや偏りを抑制することができる。また、図5に示すように、下容器30の受け部31の下面と、床プレート40の上面との間には隙間がある。これにより、下容器30の重力がロードセル41のみに作用することになる。また、床プレート40上のロードセル41及び制御部42は、防水加工が施されている。これにより、下容器30と床プレート40とを分離して、床プレート40を水洗いすることができる。
【0052】
制御部42は、不図示の信号線によりロードセル41と接続されており、ロードセル41から出力される信号に基づいて尿量を検出する。前述したように、制御部42は、上容器20の表示部26と無線にて通信可能であり、尿量の検出結果を表示部26に表示させる。
【0053】
図6は、制御部42の構成の一例を示すブロック図である。
制御部42は、通信部421と、記憶部422と、処理部423と、電池424とを有している。
【0054】
通信部421は、表示部26の通信部との間で無線による通信を行う部位である。
【0055】
記憶部422は、RAM、ROMなどから構成されており、各種のデータやプログラムを記憶する部位である。本実施形態の記憶部422には、尿量検出プログラム、排泄物処理材24と関連付けられた補正値、尿量検出結果データ、1回あたりの尿量の閾値などが記憶されている。
【0056】
処理部423は、CPUなどで構成されており各種の演算を行う部位である。例えば、処理部423は、記憶部422に記憶された尿量検出プログラムを実行して尿量の検出の演算処理を行う。
【0057】
電池424は、床プレート40の各部(制御部42及びロードセル41)に電力を供給するための電池である。本実施形態では電池424として小型のボタン電池を用いている。電池424は、使い切りタイプの電池(一次電池)でもよいし、充電することで繰り返し使用できるタイプの電池(二次電池)でもよい。なお、電池424を用いずに、家庭用コンセントなどの外部電源からコードを介して電力を供給するようにしてもよいが、その場合、動物がコードに引っ掛かったり感電したりするおそれがある。これに対し、本実施形態の動物用トイレ1では、電池424を用いているので、安全性の向上を図ることができる。
【0058】
本実施形態では、制御部42を床プレート40の上面に設けているが、制御部42の配置はこれに限られない。例えば、床プレート40の内部に制御部42を設けてもよい。その場合、電池424は、制御部42とは別に(交換可能な位置に)設けることが望ましい。
【0059】
<動物用トイレ1による尿量測定の動作>
次に、動物用トイレ1による尿量測定の動作について説明する。
【0060】
まず、予め、上容器20に収容した排泄物処理材24の種類を設定しておく。この設定は、表示部26の入力部(ボタンなど)で実行できるようになっている。排泄物処理材24を示すデータは、表示部26から無線にて制御部42に送信され、制御部42の通信部421で受信される。制御部42の処理部423は、そのデータに基づき、記憶部422を参照し、上容器20の排泄物処理材24に関連づけられた補正値を設定する。
【0061】
猫等の動物が、上容器20の底部21上に排尿すると、その尿は、粒状の排泄物処理材24間の隙間及び貫通孔21aを通って、下方の下容器30の受け部31へ落下する。なお、動物の糞便は貫通孔21aを通らないので、底部21上に留まる。すなわち、尿のみが下容器30に落下することになる。そして、落下した尿は受け部31の吸収性シート34に吸収される。これにより、吸収性シート34の重量が増加する(すなわち、ロードセル41が下容器30から受ける力が増加する)。そして、ロードセル41は、下容器30から受けた力に応じた信号を出力する。
【0062】
図7は、ロードセル41の出力信号の時間変化の一例を示す図である。図7の横軸は時間であり、縦軸は重量(ロードセル41の出力信号に対応した量)である。
【0063】
時間taまでは重量がWaでほぼ一定である。この重量Waは、下容器30の重量と吸収性シート34(吸収された尿も含む)の重量との加算値である。このように重量に変化がないとき、制御部42は待機モード(スリープモード)になっている。時間taの直前で動物が動物用トイレ1に来て排尿する。これにより時間taで尿が下容器30の受け部31(吸収性シート34)に落下し、重量が増え始める(ロードセル41の出力信号が変化する)。制御部42は、その変化を検出すると、待機モードから通常モードに切り替わり、重量(尿量)測定を開始する。時間ta?tbでは、ほぼ一定の割合で重量が増えている。そして、時間tbで重量がWbとなり、その後、重量が変化しなくなる(ロードセル41の出力信号が変化しなくなる)。所定期間重量の変化が無いと判断すると、制御部42は、重量測定を終了する。
【0064】
そして、制御部42の処理部423は、重量が増え始めたときの重量Wa(排尿前のロードセル41の出力信号)と、重量の増加が止まった時の重量Wb(排尿後のロードセル41の出力信号)との差分(Wb-Wa)を算出する。この差分が、1回あたりの排尿により排出された尿量に相当する。
【0065】
また、処理部423は上記差分に、排泄物処理材24に対して予め設定された補正値を加算する。これにより、尿量をさらに正確に算出できる。そして、制御部42は、検出結果を上容器20の表示部26に表示させる。
【0066】
しばらく動物が排尿しなければ、水分の蒸発などにより、重量は次第に減るが、動物が排尿すると重量は再度増加する。この場合も、重量が増加する前のロードセル41の出力信号と、増加が止まった時のロードセル41の出力信号の差分を算出する。これにより、1回ごとの尿量の計測精度を高めることができる。また、その差分に補正値を加算することで、尿量の計測精度をさらに高めることができる。この繰り返しにより、制御部42は、1回ごとの尿量を検出し、表示部26に表示させる。こうすることで、尿量に症状が現れる病気の早期発見が可能になる。例えば、尿量が多くなる慢性腎不全の早期発見が可能になる。なお、制御部42が、1回ごとの検出結果(尿量)と、記憶部422に記憶された閾値との比較を行なうようにしてもよい。そして、尿量が閾値を超えた場合、例えば、表示部26を発光させたり、スピーカー(不図示)などから警報音を発生させたりして、異常であることを通知させるようにしてもよい。こうすることで、異常の発見が容易になる。
【0067】
また、1回ごとの尿量の検出結果は、記憶部422に記憶されており、処理部423は、記憶部422を参照して、1回ごとの尿量を加算した累積尿量も算出できる。本実施形態の表示部26は、設定(入力部による表示内容の切り替え)に応じて、累積尿量も表示できる。これにより、吸収性シート34の取り換え時期を容易に判断することができる。また、尿量の変化履歴を表示することで、動物の体調管理を行うこともできる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の動物用トイレ1は、上下方向に貫通する複数の貫通孔21aが底部21に形成された上容器20と、複数の貫通孔21aを通過した尿を受ける受け部31を備え、上容器20の重力が作用しない下容器30と、受け部31が受けた尿の量の多さに応じて変化する信号を出力するロードセル41と、を有している。これにより、糞便の重量と尿の重量を混同せずに、尿量のみを計測することができる。また、尿量を計測することにより、尿量に症状の現れる病気(慢性腎不全など)を早期に発見したり、尿を吸収する吸収性シート34の交換時期を判断しやすくしたりすることができる。
【0069】
===第2実施形態===
第2実施形態では、上容器の重量も測定する。この測定により、動物の体重や糞便の重量を検出することができる。以下図面を参照しつつ、第2実施形態の動物用トイレ1について説明する。なお、第1実施形態と同一構成の部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0070】
図8は、第2実施形態の床プレート40´の斜視図である。図9は、第2実施形態の動物用トイレ1の断面図である。なお、図9は、第1実施形態の図5と同じ箇所の断面を示している。
【0071】
第2実施形態の動物用トイレ1は、上容器20´と、下容器30と、床プレート40´とを備えている。
【0072】
上容器20´は第1実施形態の上容器20とほぼ同様の構成である。但し、図9に示すように、上容器20´の4隅の足部223には、後述するロードセル43と係合する係合部226が設けられている。
【0073】
床プレート40´には、図8に示すように、ロードセル41と制御部42に加え、ロードセル43(上容器用出力部に相当)と上容器用制御部44が設けられている。ロードセル43及び上容器用制御部44は、ロードセル41及び制御部42と同様に、防水加工が施されている。
【0074】
ロードセル43は、床プレート40´の上面において、ロードセル41よりも外側(具体的には、上容器20の足部223の係合部226と対向する位置)に設けられている。そして、上容器20´を床プレート40´上に配置するときは、上容器20´の4つの足部223の係合部226を、それぞれ、ロードセル43に係合させる。これにより、上容器20´の重力がロードセル43のみに作用する。そして、ロードセル43は、上容器20´の重量に応じて変化する信号(上容器重量信号に相当)を出力する。このように、第2実施形態では、床プレート40´にロードセル41とロードセル43が設けられているので、第1実施形態よりも検出対象を増やすことができる。
【0075】
上容器用制御部44は、制御部42とほぼ同様の構成であり、不図示の信号線を介してロードセル43と電気的に接続されている。そして、上容器用制御部44は、ロードセル43の出力信号に基づいて、動物の体重、又は、糞便の量の少なくとも一方を検出する。
【0076】
例えば、動物が排泄するために動物用トイレ1(上容器20´)に乗ると、ロードセル43の出力信号が変化する。この変化後の値と変化前の値との差分により動物の体重を検出することができる。なお、このとき、下容器30には、上容器20´の重力が作用しないので、ロードセル41の出力信号には変化が生じない。
【0077】
また、動物の糞便は上容器20´の貫通孔21aを通らないため、上容器20´の底部21に留まる。よって、動物が動物用トイレ1(上容器20´)から離れた後のロードセル43の出力信号と、動物が動物用トイレ1(上容器20´)に乗る前のロードセル43の出力信号との差分から糞便の量を検出することができる。
【0078】
上容器用制御部44は、上記の検出結果を表示部26に送信し、表示部26に表示させる。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、制御部42は、ロードセル41の出力信号に基づいて尿量の検出を行ない、その検出結果を表示部26に表示させる。このように第2実施形態では、尿量以外に、動物の体重や糞便の量も計測することができる。すなわち、第1実施形態よりも計測対象を増やすことができる。
【0079】
なお、本実施形態では、制御部42と上容器用制御部44を別体に設けていたが、これらを一体に構成してもよい。そして、一つの制御部で、全ての処理を行うようにしてもよい。その場合、例えば、動物が動物用トイレ1に乗ったが排尿しなかったということがわかる。これにより、下部尿路疾患特有の現象を発見することができる。
【0080】
また、上記のように、動物が動物用トイレ1に乗ったが排尿しなかったということを検出する場合、ロードセル43ではなく他のセンサーを設けてもよい。例えば、上容器20´の側壁部22の内面上部の対向する位置に赤外線センサーの発光部と受光部を設けてもよい。この場合も動物が動物用トイレ1(上容器20´)に乗ると赤外線を遮るので、排泄に来たことがわかる。この結果と、尿量の検出結果と組み合わせることにより、動物が動物用トイレ1に乗ったが排尿しなかったということを検出できる。
【0081】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0082】
上記の実施形態では、動物用トイレ1は、受け部31が下容器30に設けられているタイプ(上容器を下容器にかぶせるタイプ)のものであったが、これには限られない。例えば、下容器に対してトレイ(受け部)を出し入れするタイプの動物用トイレに適用してもよい。
【0083】
また、上記の実施形態では、動物用トイレ1には制御部(制御部42、上容器用制御部44)や表示部26が設けられていたが、これには限られない。例えば、外部端末(パソコン、携帯端末など)に制御部や表示部が設けられていてもよい。そして、各ロードセルの出力信号を外部端末に送信して、外部端末にて計測や表示を行なうようにしてもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、ロードセル41、及び、ロードセル43は円柱形状であったが、これには限られない。例えば、シート状のものや円環状のものなど、他の形状のロードセルであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 動物用トイレ
20 上容器
21 底部
22 側壁部
24 排泄物処理材(液透過性粒状物)
26 表示部
30 下容器
31 受け部
32 下部側壁部
33 取手部
34 吸収性シート
35 係合部
40 床プレート(支持部材)
41 ロードセル(出力部)
42 制御部
43 ロードセル(上容器用出力部)
44 上容器用制御部
211 周縁部
212 平面部
213 テーパ面部
21a 貫通孔(孔)
221 上部壁部
222 延出壁部
223 足部
224 切り欠き部
421 通信部
422 記憶部
423 処理部
424 電池
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、
平面視において、前記孔の外形は、前記上容器の長手方向の両端に曲線部を有し、
前記上容器は、底部と側壁部を有し、
前記底部は、前記上下方向における最も下方に配置されている平面部を有し、
前記平面部は水平であって、当該平面部の肉厚は前記側壁部の肉厚よりも大きく、当該平面部に前記複数の孔が設けられており、
平面視において、前記平面部の外形は、前記上容器の長手方向に沿った二本の第1直線部と、前記上容器の短手方向に沿った二本の第2直線部と、当該二本の第1直線部の両端と当該二本の第2直線部の両端をそれぞれ連結する四つの曲線部を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項2】
上下方向に貫通する複数の孔が底部に形成された上容器と、
前記複数の孔を通過した排泄物を受ける受け部を備え、前記上容器の重力が作用しない下容器と、
前記受け部が受けた前記排泄物の量の多さに応じて変化する信号を出力する出力部と、
を有し、
前記上容器には撥水性を有する液透過性粒状物が設置され、
前記受け部には、前記排泄物を吸収する吸収性シートが載置され、
前記受け部は、前記下容器に対して出し入れ可能に構成されている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動物用トイレであって、
前記下容器を支持する支持部材を備え、
前記出力部は、前記支持部材の上に設けられ、且つ、前記下容器の下方に位置する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項4】
請求項3に記載の動物用トイレであって、
前記下容器には、前記出力部に係合可能な係合部が設けられている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の動物用トイレであって、
前記出力部は、防水加工が施されている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項6】
請求項3?5の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記支持部材には、前記出力部から出力される前記信号に基づいて前記排泄物の量を検出する制御部が設けられている
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項7】
請求項6に記載の動物用トイレであって、
前記制御部は、排泄前の前記信号と、排泄後の前記信号との差分を算出することによって、1回ごとの前記排泄物の量を検出する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の動物用トイレであって、
前記制御部は、前記排泄物の量を検出する際に、前記液透過性粒状物に対して予め定められた補正値を加算し、
前記排泄物の量が閾値を超えた場合には異常であることを通知する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項9】
請求項6?8の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記上容器には、前記制御部の検出結果を表示する表示部が設けられており、
前記制御部と前記表示部とが無線により通信可能である
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項10】
請求項1?9の何れかに記載の動物用トイレであって、
前記上容器の重量に応じて変化する上容器重量信号を出力する上容器用出力部を、さらに有する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項11】
請求項10に記載の動物用トイレであって、
前記上容器重量信号に基づいて、動物の体重、又は、前記複数の孔を通過しない排泄物の量の少なくとも一方を検出する上容器用制御部を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。
【請求項12】
請求項1?11の何れかに記載の動物用トイレであって、
電力を供給するための電池を有する
ことを特徴とする動物用トイレ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-29 
出願番号 特願2018-89082(P2018-89082)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A01K)
P 1 651・ 113- YAA (A01K)
P 1 651・ 4- YAA (A01K)
P 1 651・ 161- YAA (A01K)
P 1 651・ 841- YAA (A01K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 西田 秀彦
有家 秀郎
登録日 2018-06-22 
登録番号 特許第6356934号(P6356934)
権利者 ユニ・チャーム株式会社
発明の名称 動物用トイレ  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 特許業務法人SBPJ国際特許事務所  
代理人 一色国際特許業務法人  

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