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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1359526 |
異議申立番号 | 異議2018-701065 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-12-28 |
確定日 | 2019-12-12 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6360314号発明「即席麺の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6360314号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6360314号の請求項1、3に係る特許を維持する。 特許第6360314号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6360314号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成26年1月31日の出願であって、平成30年6月29日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月18日に特許掲載公報が発行され、これに対して平成30年12月28日に特許異議申立人である丸林 敬子(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1?3に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。 そして、その後の手続は以下のとおりである。 ・平成31年4月3日付けで取消理由通知 ・令和元年6月5日に特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・令和元年7月10日に申立人による意見書の提出 ・令和元年7月26日付けで取消理由通知(決定の予告) ・令和元年9月26日に特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・令和元年11月1日に申立人による意見書の提出 なお、令和元年9月26日に訂正請求がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、令和元年6月5日の訂正請求は取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和元年9月26日付け訂正請求書による訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものであって、その内容は以下の訂正事項1?5のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「麺用小麦粉100質量%に対し、加工澱粉を35質量%以上48質量%未満添加し、原料粉を調製する工程と、」とあるのを「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加し、原料粉を調製する工程と、」に訂正する。 (なお、請求項1を引用する請求項2?3も同様に訂正される。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「前記麺線を乾燥させる乾燥工程と、」とあるのを「前記麺線を熱風乾燥により乾燥させる乾燥工程と、」に訂正する。 (なお、請求項1を引用する請求項2?3も同様に訂正される。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に、「即席麺の製造方法」とあるのを「非油揚げ即席麺の製造方法」に訂正する。 (なお、請求項1を引用する請求項2?3も同様に訂正される。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3に、「前記即席麺が、うどんである請求項1又は2に記載の即席麺の製造方法。」とあるのを「前記原料粉を調製する工程が、麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上45質量%以下添加する工程であり、 前記非油揚げ即席麺が、うどんである請求項1に記載の非油揚げ即席麺の製造方法。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「加工澱粉」を、「酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、明細書の段落【0010】における「本発明において、加工澱粉とは、澱粉のグルコース残気の水酸基に官能基を付加・導入するなどし、親水性や疎水性を高めたものをいう。本発明においては、麺の弾力性の向上などの食感の改良に用いるために、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉などを用いることができる。」(下線は当審で付したものである。)との記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記ア及びイのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「乾燥工程」の「麺線を乾燥させる」ことを、「熱風乾燥」によるものに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、明細書の段落【0020】における「本発明において、乾燥方法としては、高温熱風乾燥やマイクロ波乾燥、フリーズドライ等の乾燥方法が挙げられる。本発明においては、非油揚げ麺(ノンフライ麺)とすることが好ましく、上記のなかでも、熱風乾燥により乾燥させることが好ましい。」(下線は当審で付したものである。)との記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、上記ア及びイのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載された「即席麺」を、「非油揚げ即席麺」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、明細書の段落【0020】における「本発明において、乾燥方法としては、高温熱風乾燥やマイクロ波乾燥、フリーズドライ等の乾燥方法が挙げられる。本発明においては、非油揚げ麺(ノンフライ麺)とすることが好ましく、上記のなかでも、熱風乾燥により乾燥させることが好ましい。」(下線は当審で付したものである。)との記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、上記ア及びイのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項2を削除するというものである。 したがって、訂正事項4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項2を削除するというものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項3において引用する請求項1に記載された「麺用小麦粉100質量%に対し、加工澱粉を35質量%以上48質量%未満添加し、原料粉を調製する工程」を、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上45質量%以下添加する工程」とすることにより、「加工澱粉」を「酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉」に限定し、さらに、加工澱粉を添加する割合を「35質量%以上48質量%未満」から「35質量%以上45質量%以下」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項5は、訂正前の請求項3に記載された「即席麺」を、「非油揚げ即席麺」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 さらに、訂正事項5は、訂正前の請求項3において請求項1又は2を引用していたものを、請求項1のみを引用するものとすることにより、請求項2の削除に整合させるとともに、引用する請求項の選択肢を削除したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項5は、明細書の段落【0010】における「本発明において、加工澱粉とは、澱粉のグルコース残気の水酸基に官能基を付加・導入するなどし、親水性や疎水性を高めたものをいう。本発明においては、麺の弾力性の向上などの食感の改良に用いるために、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉などを用いることができる。」(下線は当審で付したものである。)との記載、段落【0020】における「本発明において、乾燥方法としては、高温熱風乾燥やマイクロ波乾燥、フリーズドライ等の乾燥方法が挙げられる。本発明においては、非油揚げ麺(ノンフライ麺)とすることが好ましく、上記のなかでも、熱風乾燥により乾燥させることが好ましい。」(下線は当審で付したものである。)との記載及び段落【0034】の表1における参考例4の加工澱粉についての「45」との記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、上記ア及びイのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項1?3は、請求項2及び3が、請求項1を引用する関係にあり、訂正される請求項1に連動して訂正されるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、結論のとおり本件訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりであり、本件訂正後の本件特許の請求項1及び3に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明3」という。)は、それぞれ本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加し、原料粉を調製する工程と、 前記原料粉に加水し、混練して混練物を調製する混練工程と、 前記混練物を5?10分間熟成させる熟成工程と、 熟成した前記混練物を麺線化する麺線化工程と、 前記麺線化工程後、乾燥工程の前に、前記麺線を50?120秒間蒸煮する蒸煮工程と、 前記麺線を熱風乾燥により乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする非油揚げ即席麺の製造方法。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記原料粉を調製する工程が、麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上45質量%以下添加する工程であり、 前記非油揚げ即席麺が、うどんである請求項1に記載の非油揚げ即席麺の製造方法。」 第4 特許異議申立理由の概要及び証拠方法等 1 特許異議申立理由の概要 (1)理由1(特許法第29条第2項;同法第113条第2号)について なお、甲第1?7号証については、下記2の証拠方法等を参照。 ア 請求項1について 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、甲第5号証に記載されているような従来周知の技術事項を甲第1号証に記載の発明に適用し、麺線の蒸煮時間を50?120秒間とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 イ 請求項2について 本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載の技術事項と、甲第6号証又は甲第7号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 請求項3について 本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載の技術事項(必要であれば甲第5号証に記載の従来周知の技術事項)と、甲第6号証又は甲第7号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)理由2(特許法第36条第6項第1号;同法第113条第4号)について 本件特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)理由3(特許法第36条第4項第1号;同法第113条第4号)について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 証拠方法等 申立人は、特許異議申立書とともに次の甲第1?7号証を提出し、また、令和元年11月1日に意見書とともに次の参考資料1を提出している。 ・甲第1号証:特開2006-129790号公報(以下、「甲1」という。) ・甲第2号証:特開昭58-216656号公報(以下、「甲2」という。) ・甲第3号証:特開2003-339331号公報(以下、「甲3」という。) ・甲第4号証:小田聞多,「めんの本」,株式会社食品産業新聞社,2013年7月31日,p.69?71(以下、「甲4」という。) ・甲第5号証:特開2012-100588号公報(以下、「甲5」という。) ・甲第6号証:特開2011-30501号公報(以下、「甲6」という。) ・甲第7号証:特開2012-60998号公報(以下、「甲7」という。) ・参考資料1:特開平5-211851号公報 第5 取消理由(決定の予告)の概要 当審において、令和元年7月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 理由1(進歩性) 本件特許の請求項1?3に係る発明は、以下のとおり、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1?7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (1)本件特許の請求項1に係る発明について 本件特許の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2?5記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件特許の請求項2に係る発明について 本件特許の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2?5記載の技術事項並びに甲6及び7を例証とした周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件特許の請求項3に係る発明について 本件特許の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2?5記載の技術事項並びに甲6及び7を例証とした周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 当審の検討 1 令和元年7月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)について 1-1 甲1?7及び参考資料1について (1)甲1について ア 甲1の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1には、次の記載がある。 (ア)「【請求項4】 澱粉を強度に架橋した難消化性架橋澱粉を麺原料粉に対し10?30質量%添加し、難消化性成分を含有することを特徴とする麺類の製造方法。 【請求項5】 難消化性架橋澱粉の膨潤度が0.4?0.8ml、好ましくは0.4?0.6mlである請求項4記載の麺類の製造方法。 【請求項6】 置換度が0.03?0.2である、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を麺原料粉に対し5?20質量%添加し、さらに小麦蛋白を1?3質量%添加し、難消化性架橋澱粉と併用する請求項4、5記載の麺類の製造方法。」 (イ)「【0001】 本発明は、難消化性成分を含有する麺類の製造方法に関する。澱粉を強度に架橋する事により、難消化性架橋澱粉が得られ、それを麺に添加することにより、または難消化性架橋澱粉とヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を併用し、難消化性成分を含有する麺を提供する麺類の製造方法に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 発明が解決しようとする課題は、麺に食物繊維を含有させても食感にボソツキ感などの違和感がなく、難消化性成分を含有した麺を提供する麺類を開発することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、澱粉を強度に架橋した難消化性架橋澱粉、および難消化性架橋澱粉とヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を併用し麺に特定量含有させることにより、上記課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。 【発明の効果】 【0007】 以上説明してきたように、本発明によれば、澱粉を強度に架橋した難消化性架橋澱粉、および難消化性架橋澱粉とヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を併用し麺に特定量含有させることにより、麺として食感が好ましく違和感のないもので、より効果的に肥満や糖尿病などの予防効果が期待できる素材、即ち難消化性成分の高い食感の良い麺類を提供することができる。」 (ウ)「【0008】 本発明における難消化性架橋澱粉は、主に麺の食物繊維分の増加およびカロリーの低減を目的とするものであり、具体的にはうどんやそば、ラーメン、焼きそば、冷麺、ちゃんぽん麺、ビーフンなどが挙げられる。また麺の形態の種類としては、生麺や生冷凍麺、乾麺、茹で麺(冷蔵麺)、茹で冷凍麺、茹で包装麺(LL麺)、蒸し麺、油揚げ即席麺(フライ麺)、ノンフライ麺などが挙げられるが、本発明はこれらのいずれにも使用できる。 【0009】 麺類に使用される原料としては、小麦粉,澱粉などの澱粉質、塩化ナトリウム,塩化カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウム,リン酸2ナトリウム,リン酸2カリウム,リン酸3ナトリウム,リン酸3カリウムなどの塩類、そば粉,米粉などの穀粉類、卵白,大豆蛋白,小麦蛋白,グルテンなどの蛋白質類、グアガム,ローカストビーンガム,キサンタンガム,アルギン酸,寒天などの増粘多糖類、グリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステル,植物レシチンなどの乳化剤、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル,ミックストコフェロール,ローズマリー抽出物などの酸化防止剤、クエン酸,DL-リンゴ酸などのpH調整材、油脂類、着色量などが挙げられるが、これらを麺類の食品の種類に応じて選択使用される。 【0010】 本発明における難消化性架橋澱粉とは、澱粉を強度に架橋させ膨潤度を0.4?0.8mlに、好ましくは膨潤度を0.4?0.6mlに加工した加工澱粉である。本発明で使用する原料種としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、糯米澱粉等が挙げられる。膨潤抑制処理の種類としては、化学的架橋処理が挙げられ、架橋剤としてトリメタリン酸ソーダ、アジピン酸、エピクロルヒドリン、オキシ塩化リン等が挙げられる。 【0011】 本発明で使用するヒドロキシプロピル化澱粉およびアセチル化澱粉の原料種としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、うるち米澱粉、もち米澱粉等が挙げられる。本発明におけるヒドロキシプロピル化澱粉とは、プロピレンオキサイドを薬剤として反応させた加工澱粉であり、アセチル化澱粉とは、無水酢酸または酢酸ビニルを薬剤として反応させた加工澱粉である。これらの薬剤を適量使用して、本発明における好適なエーテル化またはエステル化置換度0.03?0.2を満足するように調整する。 【0012】 本発明における置換度とは、澱粉のグルコース残基当たりに対する置換基の個数である。本発明に於ける膨潤度とは、澱粉の膨潤抑制の度合を測定する方法で、その測定法を以下に述べる。 ・・・ 【0013】 本発明における難消化性架橋澱粉は、膨潤度が0.4?0.8mlが好ましく、膨潤度0.4?0.6mlがより好ましい。膨潤度が0.8mlより高いとプロスキー法による食物繊維含量(TDF値)の値が小さすぎて、満足のいく食物繊維含有の麺が得られない。膨潤度0.4ml以下では、食感のボソボソ感が強くなり好ましくない。 【0014】 本発明に使用するヒドロキシプロピル化澱粉およびアセチル化澱粉は、置換度0.03?0.2が好ましい。置換度0.03未満ではなめらかな食感が付与できず効果が少ない。また、0.2より高いと製麺性が悪くなり、食感も糊状感やべたつきが出て、口溶けの悪い重たい食感となる。 【0015】 本発明の難消化性架橋澱粉の使用割合は、原料粉中(小麦蛋白を除く)に10?30質量%使用するのが好ましい、10質量%以下では、麺当たりの食物繊維含量が少なくなり難消化性の特徴が少なく好ましくない。30質量%以上では製麺性が悪く、麺自体の食感のボソボソ感が強くなり好ましくない。 【0016】 本発明のヒドロキシプロピル化澱粉およびアセチル化澱粉は、麺の食感のボソボソ感を少なくするために添加するものであり、その置換度および添加量は、麺の種類および難消化性架橋澱粉の添加量により決定されるが、その添加量はおおむね原料粉中(小麦蛋白を除く)当たり5?20質量%使用するのが好ましい、5質量%以下ではなめらかな食感が付与できず効果が少ない。また、20質量%より高いと製麺性が悪くなり、食感も糊状感やべたつきが出て、口溶けの悪い重たい食感となる。 【0017】 本発明における麺は常法により製造する事ができる。すなわち、ミキシング工程の後、ロールにより複合、圧延を行ない、必要であれば熟成工程を取り、それぞれの麺に適した切り歯を用いて切り出し生麺を得る。得られた生麺は、沸騰水あるいは蒸気などによりα化され、冷水で冷却され、熱風や油揚げなどにより乾燥され、LL麺の場合は酸処理や殺菌工程を行ない、各種の麺類が製造される。」 (エ)「【実施例1】 【0019】 水1300質量部(以下「部」という)に、硫酸ソーダ100部を加え溶解し、トリメタリン酸ソーダを10部、50部、200部の範囲で、添加量を変えて加え溶解させ、さらに攪拌下、それぞれ原料馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉1000部を添加して調製したスラリーを3点用意し、3%の苛性ソーダ水溶液を加えpHを12.3まで上昇させ、その後40℃にて4?8時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉して架橋澱粉(試料No.1?15)を得た。その架橋度合(膨潤度)、結合リン%及び食物繊維含量(TDF値)を表1に示す。 【0020】 【表1】 【実施例2】 【0021】 水1300部に原料タピオカ澱粉1000部を添加したスラリーを2点調製し、撹拌下3%苛性ソーダ水溶液を加えてpHを8.0?9.0に保持しながら、無水酢酸15部および50部を徐々に加え、pH8?9を維持しながら無水酢酸の添加終了まで30℃で反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉してアセチル化タピオカ澱粉(試料No.16、17)を得た。その置換度を表2に示す。 【実施例3】 【0022】 水1300部に、硫酸ソーダ300部、苛性ソーダ10部を加え溶解し、攪拌下、原料タピオカ澱粉1000部を添加して調製したスラリーを2点用意し、プロピレンオキシド15部および50部を加え、40℃にて15時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉してヒドロキシプロピル化澱粉(試料No.18、19)を得た。その置換度を表2に示す。 【0023】 【表2】 」 (オ)「【0026】 食感および製麺性評価 ◎:食感が違和感がなく良好であり製麺性も問題なく良好 ○:食感がわずかにボソツキ感があるがおおむね良好、あるいは製麺性がわずかに劣るがおおむね良好 △:食感がボソツキ感があり少し不良、あるいは製麺性が少し劣り不良 ×:食感がボソツキ感が強く不良、あるいは製麺性が劣り不良 ・・・ 【0031】 <試験例3>中華麺での試験 実施例1で得られた試料No.5、6、8、9、11、12の難消化性架橋澱粉と、実施例2および3で得られた試料No.16、18の加工澱粉と、準強力小麦粉と小麦蛋白を下記の比率で混合し、420部の食塩かん水(うち食塩10部、かん水10部)で10分間真空ミキサーで混練した。その後製麺機を用いて整形・複合・圧延を行ない麺帯とし、切歯18番を用いて裁断し生中華麺を得た。この生中華麺を沸騰水中で4分間茹でた後、熱いスープに入れ食感を評価した。その結果を表5に示す。 【0032】 【表5】 【0033】 表5の結果より、膨潤度の低いサンプル(試料No.6、9、12)は食物繊維含量が高くなり、また比較的食感にボソボソ感のある場合も、ヒドロキシプロピル化澱粉およびアセチル化澱粉を併用することにより食感が改良できる。」 (カ)「【0034】 <試験例4>中華麺での試験 実施例1で得られた試料No.12の難消化性架橋澱粉を用いて添加量を50?400部とし、実施例2および3で得られた試料No.16、18の加工澱粉を使用し、準強力小麦粉、小麦蛋白の添加量を表6のように変更した以外は試験例3と同様に試験を行った。その結果を表6に示す。 【0035】 【表6】 【0036】 表6の結果より、難消化性架橋澱粉を100部?300部とし、加工澱粉を併用することで、食感および製麺性もおおむね良好であり、食物繊維含量も高く良好であった。 【0037】 <試験例5>中華麺での試験 実施例1で得られた試料No.12の難消化性架橋澱粉と、実施例2および3で得られた試料No.16、18の加工澱粉の添加量を変え、準強力小麦粉、小麦蛋白の添加量を表7のように変更した以外は試験例3と同様に試験を行った。その結果を表7に示す。 【0038】 【表7】 【0039】 表7の結果より、加工澱粉の添加量が50?200部の試料が食感もおおむね良好であり、製麺性もさほど問題はなく良好であった。 【0040】 <試験例6>油揚げ中華麺での試験 試験例3で得られた生中華麺のうち、試料No.12、12+16、12+18の生中華麺を、99?100℃の蒸気で2分間蒸熱処理した後、温度140?150℃のパーム油中で90秒間油揚げし、放冷して油揚げ麺とした。得られた油揚げ麺を容器に入れ、粉末スープを入れて熱湯を注ぎ、5分後の食感を見た。その結果を表8に示す。 【0041】 【表8】 【0042】 表8の結果より、難消化性架橋澱粉を200部とし、加工澱粉を併用することで、食感および製麺性もおおむね良好であり、食物繊維含量も高く良好であった。」 イ 上記アの記載から分かること (ア)上記ア(ア)?(カ)(特に、段落【0008】及び【0040】)によれば、甲1には、即席麺の製造方法が開示されていることが分かる。 (イ)上記ア(ア)?(ウ)、(オ)及び(カ)(特に、請求項4及び6並びに段落【0015】、【0016】及び【0041】の表8)によれば、即席麺の製造方法において、麺原料粉に対し、難消化性架橋澱粉を10?30質量%、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を5?20質量%添加する工程を有することが記載されているといえるところ、上記ア(ウ)の段落【0009】には、麺原料粉として小麦粉が挙げられ、上記ア(オ)の段落【0032】、【0035】、【0038】及び【0041】に記載された試験例3?6についての表5?8における、難消化性架橋澱粉と加工澱粉として表記されたヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉試料を添加した試料No.6+16、6+18、9+16、9+18、12+16及び12+18のうち、◎又は○の良好な評価結果のものによると、小麦粉100質量%に対して、加工澱粉として表記されたヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉試料加工澱粉は6.7?33.3質量%となっている(ここで、下限値の6.7質量%については、表7の2番目及び7番目に示された、小麦粉750部、加工澱粉50部の例から求まり、中間値の14.3質量%については、表5の3番目、4番目、7番目、8番目、11番目及び12番目、表6の3番目と下から3番目、表7の3番目と下から3番目並びに表8の2番目と3番目に示された、小麦粉700部、加工澱粉100部の例から求まり、上限値の33.3質量%については、表7の4番目と下から2番目に示された、小麦粉600部、加工澱粉200部の例から求まる。)。 そうすると、即席麺の製造方法において、小麦粉100質量%に対し、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を6.7?33.3質量%添加し、麺原料粉を調整する工程を有することが分かる。 (ウ)上記ア(ウ)?(オ)(特に、段落【0017】及び【0031】)によれば、即席麺の製造方法において、麺原料粉に加水し、混練して混練物を調製する混練工程を有することが分かる。 (エ)上記ア(ウ)(特に、段落【0017】)によれば、即席麺の製造方法において、混練物を熟成させる熟成工程を有することが分かる。 (オ)上記ア(ウ)及び(オ)(特に、段落【0017】及び【0031】)によれば、即席麺の製造方法において、熟成した混練物を切り歯を用いて裁断し、麺を得る裁断工程を有することが分かる。 (カ)上記ア(ウ)及び(カ)(特に、段落【0017】及び【0040】)によれば、即席麺の製造方法において、裁断工程後、乾燥工程の前に、前記麺を蒸気で120秒間蒸熱処理する蒸熱処理工程を有することが分かる。 (キ)上記ア(カ)(特に、段落【0040】)によれば、即席麺の製造方法において、麺を油揚げ乾燥させる乾燥工程を有することが分かる。 ウ 甲1発明 上記ア及びイを総合して整理すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「小麦粉100質量%に対し、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を6.7?33.3質量%と、難消化性架橋澱粉とを添加し、麺原料粉を調整する工程と、 前記麺原料粉に加水し、混練して混練物を調製する混練工程と、 前記混練物を熟成させる熟成工程と、 熟成した前記混練物を切り歯を用いて裁断し、麺を得る裁断工程と、 前記裁断工程後、乾燥工程の前に、前記麺を蒸気で120秒間蒸熱処理する蒸熱処理工程と、 前記麺を油揚げ乾燥させる乾燥工程と、を有する即席麺の製造方法。」 (2)甲2について ア 甲2の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2には、次の記載がある。 ・「さらに本発明では乾燥処理に付す生麺の製造工程中の任意の時期に熟成処理を施すことを特徴とする。 任意の時期とは小麦粉、食塩等の原料素材に加水し混捏して得たドウ、それから形成した粗麺帯、それを圧延して得た麺帯、麺帯を切り刃ロールにより切断した生麺のいずれかの状態にある時期をいう。 熟成処理の採択によって従来均一な乾燥が困難とされているうどん等の麺線の径の太いものにあつても、乾燥時に生ずる麺線内部のヒビ割れをほぼ完全に解消すると共に、膨化状態が均一でしかも一層膨化度が高く、従つて復元性の極めて良好な麺を得るに至つた。さらにこの熟成処理を施すことにより食感的にもコシのある良好な麺を得ることに成功した。 本発明に於ける熟成処理とは生麺の製造工程の任意の時期に被処理物中の水分含量を可及的増減することなく、所定の時間ねかすことを意味するもので、その処理態様の一例としては温度約5?40℃に設定され、被処理物の水分含量が平衡水分値となるように調湿された熟成室内に5?90分間程度被処理物を保持する方法が挙げられる。 熟成時の温度が5℃を下廻る時は被処理物が硬化し熟成処理の効果が期待できず、一方熟成時の温度が40℃を超える場合は逆に被処理物が軟化し、従つて乾燥時に膨化を起こすに充分な強度の麺組織が得られず、膨化度が低下する。 又熟成処理時間が5分に満たない時は熟成処理の効果が期待できず、90分を超える場合は熟成時の温度が40℃を超えた場合と同様な理由で膨化度が低下する。 熟成処理を施すに当たり本発明の効果上最も好ましい条件は20?35℃で10?30分である。」(2頁左下欄19行?3頁左上欄12行) イ 甲2記載の技術事項 上記アによれば、甲2には、「麺の製造工程において、小麦粉、食塩等の原料素材に加水し混捏して得たドウを5?90分間熟成させること。」(以下、「甲2記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。 (3)甲3について ア 甲3の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲3には、次の記載がある。 (ア)「【0063】実施例3 茹で戻しタイプ油揚げ即席中華麺 製剤の食感改良剤 ・・・ 【0064】95.0重量部の準強力粉(日清製粉(株)製、特ナンバーワン)に5.0重量部のタピオカでん粉(松谷化学工業(株)製、パインベークCC)を加えてよく混合し、100.0重量部の粉体とした。この100.0重量部に対し、1.5重量部の食塩(鳴門塩業(株)製、うず塩)、0.4重量部のかん粉(オルガノ(株)製、かんすいKF)、0.8重量部の炭酸カルシウム(三共精粉(株)製、カルシーF)をよく混ぜ、これに上記食感改良剤製剤Dの0.30重量部、同Eの0.35重量部、同Fの0.50重量部、同Gの1.0重量部のいずれか1種を加えてよく混ぜ、これを29.0重量部の水に溶かすか懸濁させ練り水とした。これを上記の準強力粉とタピオカでん粉の混合粉体に加えて10分間混合し、10分の熟成時間を取った後、常法により生地を圧延ロールに通して粗麺帯を作り(3.0mm)、これを2枚重ねにしてロールに通す作業を2回繰り返した。これを同じロールで2.0mm→1.0mm→0.5mm→0.3mmまで順次圧延したあと、角20番の切刃を装着した切り出し機に通して、麺線状に切り出して生麺を得た。この生麺をセイロで2分間蒸し、冷水に5秒さらして水を切った後、140℃のパーム油(吉原製油(株)製、オパレスコSO)で105秒間油揚げし、室温で放冷して茹で戻しタイプ油揚げ即席中華麺を得た。」 (イ)「【0066】実施例4 湯戻しタイプ油揚げ即席中華麺 製剤の食感改良剤 ・・・ 【0067】95.0重量部の準強力粉(日清製粉(株)製、特ナンバーワン)に5.0重量部のタピオカでん粉(松谷化学工業(株)製、パインベークCC)を加えてよく混合し、100.0重量部の粉体とした。この100.0重量部に対し、1.5重量部の食塩(鳴門塩業(株)製、うず塩)、0.4重量部のかん粉(オルガノ(株)製、かんすいKF)、0.8重量部の炭酸カルシウム(三共精粉(株)製、カルシーF)をよく混ぜ、これに上記食感改良剤製剤Dの0.30重量部、同Eの0.35重量部、同Fの0.50重量部、同Gの1.0重量部のいずれか1種を加えてよく混ぜ、これを29.0重量部の水に溶かすか懸濁させ練り水とした。これを上記の準強力粉とタピオカでん粉の混合粉体に加えて10分間混合し、10分の熟成時間を取った後、常法により生地を圧延ロールに通して粗麺帯を作り(3.0mm)、これを2枚重ねにしてロールに通す作業を2回繰り返した。これを同じロールで2.0mm→1.0mm→0.5mm→0.3mmまで順次圧延したあと、角20番の切刃を装着した切り出し機に通して、麺線状に切り出して生麺を得た。」 イ 甲3記載の技術事項 上記アによれば、甲3には、「油揚げ即席中華麺の製造工程において、準強力粉とタピオカでん粉の混合粉体に練り水を加えて混合した混練物を10分間熟成させること。」(以下、「甲3記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。 (4)甲4について ア 甲4の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲4には、次の記載がある。 「第2節 緩和 ・・・ 従って、複合後の麺帯、あるいは捏練した直後の生地の熟成は、応力の緩和によって生地が軟らかくなり、次の圧延工程に無理なく入れる状態になるのを待つものであり、製麺工程における熟成の主たるものである。 ・・・ 従って、熟成の時間はこの麺帯の圧延伸長が一定に落ち着くに要する時間ということになり、常温では1時間、低温では3時間以上かかるものである。 しかしながら、熟成1時間で起きる緩和の半分は初めの5分間に起きるので、最も経済的な熟成時間は10?15分ということができるが、通常20分以上(25℃)はねかせたい。」(70頁右欄3行?71頁右欄7行) イ 甲4記載の技術事項 上記アによれば、甲4には、「製麺工程における複合後の麺帯、あるいは捏練した直後の生地の熟成について、熟成1時間で起きる緩和の半分は初めの5分間に起きるので、最も経済的な熟成時間は10?15分ということができること。」(以下、「甲4記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。 (5)甲5について ア 甲5の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲5には、次の記載がある。 (ア)「【請求項2】 主原料を含む麺生地から形成した生麺線を、温度95℃?100℃以下で、30秒?3分間、の条件化で前記生麺線を蒸し、且つ高温乾燥することにより、当該生麺線に含まれる澱粉の糊化を達成されることを具備する方法により製造された、多孔質構造を有した麺であり、麺表面において膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒が、面積1.0mm^(2)当たりに100?390粒数の間で存在し、且つ表面積に対する膨潤したおよび小孔が開いた澱粉粒の占める面積率が45?80%の間である即席麺。」 (イ)「【0031】 本即席麺の製造方法は、例えば、次のように行ってよい。まず、主原料を含む麺生地を用意する。この麺生地から、それ自身公知の何れかの手段により所望の形状の生麺線を作製する。得られた生麺線を、蒸し工程と、熱風または油揚げによる乾燥工程との両方の工程を経ることにより最終的な澱粉の糊化を達成する。蒸し工程における澱粉の糊化は最小限に、即ち、蒸し工程の熱により澱粉粒が崩壊されずに膨潤された限界の状態とする。その後、乾燥する。乾燥工程は、例えば、高温乾燥、例えば、熱風乾燥または油揚げ乾燥であってよい。このような状況で2段階に亘り澱粉を糊化することにより、蒸し工程により膨潤された澱粉粒が、乾燥工程で澱粉粒内部に出来た水蒸気の膨張圧により噴出孔が開いて乾燥した領域と、水蒸気の噴出孔が出来ずに膨潤しただけで乾燥して出来た領域を形成し、それにより細かな多数の孔と、粒状の白い円として観察される部分が発生すると考えられる。このような状態の観察される多孔質構造を有することにより、本製造方法は、上述のような短時間で且つ食感の優れた即席麺を提供することが可能である。 【0032】 本即席麺の製造時における麺生地の蒸し工程は、従来の即席麺の製造における蒸し工程と比べて、低温且つ短時間で行われるこのような蒸し条件による工程を特徴として含む製造方法によって製造されることにより、本即席麺では澱粉粒の崩壊が少ない。これにより、従来よりも短時間で湯戻しが可能であり、また、同じ戻し時間であればより太い麺を湯戻しが可能であり、且つ良好な食感を有する即席麺を製造することが可能となる。 【0033】 例えば、生麺線の蒸しの条件は次の通りである。蒸し時間は、約30秒?約3分、好ましくは約1分?約2分30秒である。蒸し温度は、95℃?100℃以下、好ましくは97℃?99℃である。」 (ウ)「【0043】 [例] 実施例1 本即席麺の製造 主原料としての小麦粉1000gと、加工澱粉を330g(主原料に対して約25%)とをミキサーに投入した。470g(主原料に対して約35%)の水を別に用意し、これに食塩20g、かんすい5gを加えて撹拌溶解した後に、前記ミキサー内に投入し、混練して麺生地とした。次いで、前記麺生地を常法に従ってロール圧延して1.10mmの厚さとし、10番角刃で切り出して幅3.0mmの生麺線とした。この生麺線を定量カットし、澱粉粒を崩壊させない様蒸機庫内の蒸気噴出用配管からの噴出温度をコントロールした蒸気を使用し、(例えば蒸気に向けて水を噴き込み、(蒸気流量100Kg/hに0.05から1.0L/minの量で吹き込む)調湿し温度を下げた蒸気を使用し蒸気噴出用配管内の温度を100?105℃で安定させる等)庫内温度98℃の蒸し条件で1分間蒸した。これを、リテーナーに収納して150℃で油揚げして乾燥して、実施例1の即席麺を得た。」 イ 甲5記載の技術事項 上記アによれば、甲5には、「生麺線を形成後、乾燥工程の前に、生線麺を約30?180秒間(好ましくは、約60?150秒間)蒸す蒸し工程を行うこと。その実施例として、1分間蒸すこと。」(以下、「甲5記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。 (6)甲6について ア 甲6の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6には、次の記載がある。 (ア)「【請求項1】 麺線表面がさらされる過熱蒸気温度が125℃?220℃となるよう、5?50秒間生の麺線に対し過熱蒸気流を直接吹き付けて蒸煮する第一蒸し工程と、 第一蒸し工程の後、水又はお湯を用いて麺線に水分を補給する第一水分補給工程と、 第一水分補給工程の後の麺線に対し、5?50秒間過熱蒸気流を直接吹き付けて蒸煮するか、及び/又は非過熱蒸気で蒸煮する第二蒸し工程と、 蒸し処理が終了した麺線を乾燥させて即席麺とする乾燥工程と、を含む、即席麺の製造方法。」 (イ)「【0007】 ところが、過熱蒸気を用いて麺線のα化処理を行うと、過熱蒸気の高い熱量のために、α化の速度よりも乾燥の速度が速く、麺線の中心部まで十分にα化が進行せず、なめらかさに乏しい麺質となる問題があることが知られている。またさらに、この点を解決するために蒸し機内で蒸煮中の麺線に水分を補給した場合には、よく蒸すことはできるものの、麺線が必要以上に水分を吸収し、その後の乾燥工程で水分が麺線から急激に除去されるため、過度に発泡して組織が粗になり、ゆでのびの早い麺となってしまう問題があることが知られていた(特許文献3の段落0007及び0008を参照)。」 (ウ)「【0015】 本発明者らは、生麺様の食感及び風味を持つ即席麺の製造方法について検討したところ、麺線のα化処理で過熱蒸気を使用し、しかも過熱蒸気として極めて高温のものを選択し、さらには単に蒸し庫内を過熱蒸気で充満させるのではなく、麺線表面に過熱蒸気流を短時間直接吹きつけるようにし、その後、麺線に水分を補給して、再度蒸し工程を行うことにより、生麺様の食感及び風味を持ち、しかも復元性も良好な即席麺を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0016】 すなわち本発明は、麺線表面がさらされる過熱蒸気温度が125℃?220℃となるよう、5?50秒間生の麺線に対し過熱蒸気流を直接吹き付けて蒸煮する第一蒸し工程と、 第一蒸し工程の後、水又はお湯を用いて麺線に水分を補給する第一水分補給工程と、 第一水分補給工程の後の麺線に対し5?50秒間過熱蒸気流を直接吹き付けて蒸煮するか、及び/又は非過熱蒸気で蒸煮する第二蒸し工程と、 蒸し処理が終了した麺線を乾燥させて即席麺とする乾燥工程と、を含む、即席麺の製造方法である。」 (エ)「【0028】 このように麺線に対し過熱蒸気流を直接吹き付けることにより、麺線表面が柔らかく、中心部が硬めという生麺様の食感、生麺様の風味を持ちながら、しかも復元性が良好で、麺線が太めであっても従来の復元条件下で復元できる即席麺を製造することができる。」 (オ)「【0031】 本発明の第一蒸し工程は、このような高温の過熱蒸気流を、5?50秒間という短時間、麺線表面に直接吹き付けることで実施する。高温の過熱蒸気流を50秒を超えて、例えば1分以上麺線に直接吹き付けると、麺線が乾燥しすぎるため、たとえ後工程で水分を補給したとしても、厚みのある太い麺を従来の復元条件下で復元でき、生麺様の食感や風味を有する即席麺を製造することはできない。また、時間が短すぎると、麺線表面の十分な変化が達成できない。好ましい吹き付け時間は温度によっても異なるが、15?45秒間である。なお、上述した特許文献1及び2のいずれでも、1分以上の蒸煮しか開示されていない。 【0032】 この第一蒸し工程では、過熱蒸気流とともに、非過熱蒸気を同時に使用してもよい。これにより過熱蒸気流が与える急激な変化を緩和し、独特の食感を付与することができる。非過熱蒸気は通常の飽和蒸気のことをいう。この場合、非過熱蒸気流を吹き出す噴出口を、過熱蒸気流を吹き出す噴出口とは別途設ければよく、飽和蒸気の噴出口は直接麺線に向って蒸気を吹き付けるような構造である必要はなく、蒸気庫内に蒸気を充満させるようなものでもよい。 【0033】 (第一水分補給工程) 次の第一水分補給工程では、第一蒸し工程を終了した麺線に対し、次いで、水又はお湯を用いることで、麺線に水分を補給する。この工程は、例えば、水又はお湯を麺線にシャワーするか、又は、水又はお湯に麺線を浸漬することにより行うことができる。 【0034】 製造される即席麺の食感及び風味が向上するので、シャワー又は浸漬する水又はお湯の温度はより高いものであることが好ましく、具体的には40℃以上が好ましく、特に、50℃以上が最も好ましい。これにより、過熱蒸気によって水分が失われて行くのを補うだけでなく、食感や風味を生麺により近づけることができる。この水分補給工程により、第一蒸し工程で過熱蒸気流の吹き付けにより減少した麺線の水分を補うことができる。得られる食感や風味に応じて加水量は調整することができる。好ましい加水量としては、蒸煮前の麺線重量に対して5?30%となるように加水するのが良い。 【0035】 (第二蒸し工程) 第一水分補給工程で水分が補給された麺線に対し、続く第二蒸し工程として、再度、過熱蒸気流を吹き付けるか、及び/又は非過熱蒸気で蒸煮する。この工程で過熱蒸気流を使用する場合は、第一蒸し工程と同様に、もしくは第一蒸し工程と温度条件を変えて過熱蒸気流を使用してもよいし、通常の飽和蒸気を使用してもよいし、両者を併用してもよい。 【0036】 しかしながら、第二蒸し工程でも過熱蒸気流を用いる場合は麺線に対し直接吹き付けるものが好ましく、また、その吹き付ける時間も5?50秒間と短時間とする。 【0037】 第二蒸し工程で過熱蒸気流を使用する場合には、第一蒸し工程における効果をさらに増強することができ、第一蒸し工程同様の麺線表面の変化をさらに促進することができる。一方、第二蒸し工程で通常蒸気を使用する場合には、第一蒸し工程で不足していた麺線のα化を、麺線を喫食可能なレベルにまで促進することができる。」 イ 甲6記載の技術事項 上記アによれば、甲6には、「即席麺の製造方法における麺線を蒸煮する工程が、麺線に対し過熱蒸気を吹き付けた後、水分を液体で補給し、さらに、過熱蒸気及び/又は非過熱蒸気(飽和蒸気)を用いて加熱するようにされたこと。」(以下、「甲6記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。 (7)甲7について ア 甲7の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲7には、次の記載がある。 (ア)「【請求項1】 ノンフライ即席麺の製造方法であって、 原料粉に対して1.2?2.5重量%のかんすいを添加して製麺し、 蒸煮工程中において、麺線に水分を付与する水分供給処理を少なくとも1回以上行なうことを特徴とするノンフライ即席麺の製造方法。」 (イ)「【0002】 中華麺は、麺原料にアルカリ性のかんすいを添加することで、麺に独特の風味や色調、コシを与えている。しかし、かんすいは多量に添加すると、その製造工程中に負荷される熱によって、「かんすい焼け」あるいは「アルカリ焼け」と呼ばれる褐変現象が生じる。この「かんすい焼け」は、小麦粉内の物質と、添加されたかんすいが、負荷される熱によって反応して起るものであるため、かんすいの添加量が多く麺pHが高いほど起り易く、また、負荷される熱量が高いほど起り易い。かんすい焼けを起こすと、麺線が褐変して見た目が悪いだけでなく、焦げ臭のような臭いがして中華麺らしい風味が失われ、ひどい場合にはえぐみが発生する。 ・・・ 【0009】 本発明は、即席麺とりわけノンフライ即席麺において、その蒸煮工程において起る「かんすい焼け」を抑制し、従来の即席麺にはなかった量のかんすいを原料に添加しても、かんすい焼けしておらず、かんすいの添加量が多いために、本格的な中華麺の風味を有するノンフライ即席麺を得ることを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、即席麺の蒸煮方法について、種々検討を重ねた結果、かんすいを原料粉に多量に加えても、蒸煮工程中に麺線に水分を多く付与することで(シャワーや浸漬で麺線に液体で水分を供給することで)蒸煮工程におけるかんすい焼けを抑えられることに気付き、本発明の完成に至った。特に、蒸煮工程に過熱蒸気を用いる場合、熱量が多いためにかんすい焼けし易いが、水分供給量や供給回数を多くすることで、過熱蒸気を用いて蒸煮してもかんすい焼けが防止できた。 【0011】 すなわち、本発明は、ノンフライ即席麺の製造方法であって、原料粉に対して1.2?2.5重量%のかんすいを添加して製麺し、蒸煮工程中において、麺線に水分を付与する水分供給処理を少なくとも1回以上行なうノンフライ即席麺の製造方法。である。」 (ウ)「【0025】 蒸煮の条件としては、飽和蒸気での蒸煮と、過熱蒸気での蒸煮が考えられるが、過熱蒸気の場合には熱量が多く、水分供給を長い時間行なわないと麺線の水分含量が低下し、蒸煮というよりは乾燥状態になってしまう。そのため、かんすい焼け防止の目的だけではなく、蒸煮による麺線のα化の目的のためにも、水分供給の処理を行なう。なお、過熱蒸気を用いる場合、高温過ぎると麺の乾燥スピードが速くなりすぎてしまうので、使用できる過熱蒸気の温度としては、220℃以下が好ましく、特に復元性がよく品質も良い麺を得るための最良の温度としては、麺線が触れる温度が125?220℃の過熱蒸気を、麺線に吹き付けて用いることが好ましい。 【0026】 水分供給の方法としては、できるだけしっかりと麺線に水分を付与するため、蒸煮を中断して水槽に麺を浸漬するのが最も良く、1回の浸漬時間を5秒?30秒程度、好ましくは10?30秒程度充分に行なうのが良い。しかし、蒸煮を中断してシャワーを掛ける、あるいは蒸気庫内に水シャワーのノズルを設置し、蒸煮中の麺にシャワーして水分を供給する等の方法も可能である。供給する水は冷水でも可能だが、温度が低いと麺線の温度が低下し、α化が不充分となるので、好ましくは60℃以上の湯又は熱湯とするのが良い。また、吸収させる水としては、水に食塩や乳化剤等を溶解したものを用いることもできる。 具体的に本発明の蒸煮工程は、工程の途中に水分供給工程を1回以上含むもので、例えば、「蒸し(飽和蒸気及び又は過熱蒸気)→水分供給(浸漬及び又はシャワー)→蒸し」あるいは、「蒸し→水分供給→蒸し→水分供給→蒸し」のように行うのが良い。 【0027】 以上のようにして、水分を付与しつつ蒸煮した本発明の麺は、蒸煮終了後の麺線の水分含量としては約40?55重量%、好ましくは45?55%となるように蒸煮工程を終了させるのが良い。続いて、蒸煮した麺線は1食分にカットし(カットは切り出し後以降、他の工程でも可能である)、ノンフライ麺の各種方法によって乾燥させる。なお、乾燥前に、ほぐれ剤や着味液の付与、あるいは、蒸煮後に茹で工程を加える、もしくは機械的なほぐし工程を付加してもよい。」 (エ)「【0031】 実施例1(かんすい1.2%) 小麦粉900gに澱粉100gを混合して原料粉とした。これに12gのかんすい(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)と、食塩20g、リン酸塩2.5g、乳化油脂20gをメスアップして400mlの練り水としたものを加え、ミキサーで15分間よく混練し麺生地とした。この生地を複合圧延して麺帯とし、連続圧延して麺厚を1.7mmとし、切刃16番で切り出して、生麺線を得た。この生麺線500gを切断し、麺線の水分含量を測定した。 【0032】 この生麺線を、連続蒸し機で蒸気流量210kg/hで170℃(麺線が触れる温度)の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けた。蒸気庫から出して直ぐに麺重量を測り、1l中に食塩10gとほぐれ剤4gを溶解した85℃の水溶液に20秒浸漬して水分供給処理を行ない、よく水切りして麺重量を測定した。続いて再び蒸気流量210kg/hで170℃の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けた。蒸気庫から出して直ぐに麺重量を測り、20秒間前記水溶液に再浸漬して2回目水分供給処理を行ない、よく液切りして、麺重量を測定した。さらに再び、蒸気流量210kg/hで170℃の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けて蒸煮工程を完了し、麺重量を測定すると共に、実際の麺の水分含量を測定した。」 イ 甲7記載の技術事項 上記アによれば、甲7には、「ノンフライ即席麺の製造方法における蒸煮工程において、麺線に過熱蒸気を吹き付けた後、水分を液体で供給し、さらに、過熱蒸気及び/又は飽和蒸気を麺線を加熱すること。」(以下、「甲7記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。 (8)参考資料1について ア 参考資料1の記載 (ア)「【請求項2】加工澱粉を、原料穀粉と澱粉類の合計量に対して2?10重量%、及びその他の澱粉たるβ澱粉を5?30重量%添加する請求項1に記載のノンフライ即席麺の製造方法。」 (イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はノンフライ即席麺の製造方法に関し、更に詳しくは、湯戻りが速く、且つ、可食時間が長く、しかも優れた食感を有するノンフライ即席麺の製造方法に関する。」 (ウ)「【0006】ノンフライ麺は熱風乾燥によって製造され、油分が少なくて製品の変敗の心配も少なく、また、麺本来の食味を具現化する可能性を有し、好ましい製法であるが、湯戻りが遅く、熱湯を注ぐだけで簡単に可食状態に戻すことが困難であった。この湯戻りは麺線を細くし、且つ、減圧下で乾燥して膨化させた麺線にすることによって、改善されることが知られているが、この場合、湯伸びが早く、好ましい可食状態が極く短時間しかない問題があった。」 (エ)「【0014】 【発明の作用並びに構成】本発明に於いて、ノンフライ即席麺とは、α化即席麺のなかにあって、蒸煮してα化したのちの乾燥工程が、ノンフライ、即ち、油揚げ以外の方法、例えば、熱風乾燥、高温気流乾燥、冷凍乾燥、減圧乾燥、マイクロ波乾燥などの乾燥手段によって行われた即席麺を言う。」 (オ)「【0024】本発明に於いては上述の本発明加工澱粉と共にβ澱粉が使用される。このβ澱粉は冷水では殆ど変化せず、加熱によって膨潤又は糊化する澱粉を意味し、これらの澱粉としては、未処理澱粉の他、漂白した澱粉、酸処理澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、架橋エステル化澱粉、架橋エーテル化澱粉などの変性澱粉が挙げられる。」 (カ)「【0028】ノンフライ即席麺は一般に以下の工程に従って製造されている。即ち、小麦粉、ソバ粉を主原料とし、これに食塩、澱粉、かん水等の副材料及び水を加えて混捏し、これを圧延して麺帯としたものを、切断して麺線とする。この麺線を蒸煮してα化し、必要に応じて味付けした後、乾燥する。乾燥は熱風乾燥、高温気流乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥等による。」 (キ)「【0036】 【参考例1】(加工澱粉の製造例) 水120部に、硫酸ナトリウム20部を溶解し、市販の馬鈴薯澱粉100部を加えてスラリーとし、撹拌下4%の苛性ソーダ水溶液30部、プロピレンオキサイド4部に、エピクロルヒドリン0.1部(試料No.1)、0.14部(試料No.2)、0.2部(試料No.3)、0.4部(試料No.4)、0.8部(試料No.5)を其々加え、41℃で21時間反応せしめた後、硫酸で中和し、水洗いした。これらの約500cpsを示す濃度は其々約8.5%、10%、12%、15%、16.5%であり、膨潤開始温度は約53℃であった。次いで其々約25%の水性スラリーとし、表面温度約150℃のダブルドラムドライヤーで加熱処理し、乾燥した。この時の加熱処理温度は102℃であった。次いでこの乾燥物を粉砕して試料No.1-5の加工澱粉を得た。その物性を表1に示す。尚、これらのエーテル化度(DS)は0.08-0.085の範囲にあった。また表1の膨潤度比は冷水膨潤度/加熱膨潤度である。」 (ク)「【0039】 【参考例3】(β澱粉としてのエーテル化澱粉の製造例) 水120部に硫酸ナトリウム20部を溶解し、タピオカ澱粉100部を加えてスラリーとし、撹拌下4%の苛性ソーダ水溶液25部、プロピレンオキサイド5部を添加して、40℃で20時間反応した後、硫酸で中和し、水洗、乾燥してエーテル化(ヒドロキシプロピル化)澱粉(試料No.7)を得た。この試料の置換度(DS)は0.092であった。」 (ケ)「【0052】 【実験例3】グルテン含量11.8%の準強力小麦粉に、試料No.7のエーテル化澱粉25部と参考例1で得た試料No.4を、表4に示す割合で全体が100部になるように混合して用いた他は、実験例2と同様にノンフライ麺を製造し、評価した。その結果を表4に示す。」 (コ)「【表4】 」 イ 参考資料1記載の技術事項 上記アによれば、参考資料1には、「ノンフライ即席麺の製造方法において、準強力小麦粉100質量%に対してヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上47質量%以下添加し、原料粉を調整する工程と、麺線を熱風乾燥により乾燥させる工程を有すること。」(以下、「参考資料1記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。 ここで、「準強力小麦粉100質量%に対してヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上47質量%以下添加」することについては、表4の実験No.12?14において加工澱粉を意味する澱粉総量(部)が、「26」、「28」、「32」となっており、全体の100部から澱粉総量(部)を差し引いた準強力小麦粉の量(部)は、「74」、「72」、「68」となるから、準強力小麦粉100質量%に対するヒドロキシプロピル澱粉の添加量の割合(質量%)は、「35」、「39」、「47」が得られるので、参考資料1に記載されているといえる。 1-2 本件訂正発明の検討 (1)本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 ・後者の「ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉」は、前者の「酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉」に相当し、以下同様に、「麺原料粉」は「原料粉」に、「混練物」は「混練物」に、「混練工程」は「混練工程」に、「熟成工程」は「熟成工程」に、「麺」は「麺線」に、「麺を得る裁断工程」は「麺線化工程」に、「乾燥工程」は「乾燥工程」に、「蒸熱処理」は「蒸煮」に、「蒸熱処理工程」は「蒸煮工程」に、それぞれ相当する。 ・後者の「小麦粉」は、麺原料粉に用いられるものであるから、前者の「麺用小麦粉」に相当する。 ・後者の「小麦粉100質量%に対し、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を6.7?33.3質量%と、難消化性架橋澱粉とを添加し、麺原料粉を調整する工程」は、前者の「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加し、原料粉を調製する工程」と、「麺用小麦粉に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を添加し、原料粉を調製する工程」という限りにおいて一致する。 ・後者の「前記混練物を熟成させる熟成工程」は、前者の「前記混練物を5?10分間熟成させる熟成工程」と、「前記混練物を熟成させる熟成工程」という限りにおいて一致する。 ・後者の「熟成した前記混練物を切り歯を用いて裁断し、麺を得る裁断工程」は、前者の「熟成した前記混練物を麺線化する麺線化工程」に相当する。 ・後者の「前記裁断工程後、乾燥工程の前に、前記麺を蒸気で120秒間蒸熱処理する蒸熱処理工程」は、前者の「前記麺線化工程後、乾燥工程の前に、前記麺線を50?120秒間蒸煮する蒸煮工程」に相当する。 ・後者の「前記麺を油揚げ乾燥させる乾燥工程」は、前者の「前記麺線を熱風乾燥により乾燥させる乾燥工程」に、「前記麺線を乾燥させる乾燥工程」という限りにおいて一致する。 ・後者の「即席麺の製造方法」は、前者の「非油揚げ即席麺の製造方法」に、「即席麺の製造方法」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は「麺用小麦粉に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を添加し、原料粉を調製する工程と、 前記原料粉に加水し、混練して混練物を調製する混練工程と、 前記混練物を熟成させる熟成工程と、 熟成した前記混練物を麺線化する麺線化工程と、 前記麺線化工程後、乾燥工程の前に、前記麺線を50?120秒間蒸煮する蒸煮工程と、 前記麺線を乾燥させる乾燥工程と、を有する即席麺の製造方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1-1] 原料粉を調整する工程に関し、本件訂正発明1は、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加」するのに対して、甲1発明は、「小麦粉100質量%に対し、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を6.7?33.3質量%と、難消化性架橋澱粉とを添加」する点(以下、「相違点1-1」という。)。 [相違点1-2] 混練物を熟成させる熟成工程に関し、本件訂正発明1は、「混練物を5?10分間熟成させる」のに対して、甲1発明は、混練物を熟成させる時間については特定されていない点(以下、「相違点1-2」という。)。 [相違点1-3] 麺線を乾燥させる乾燥工程に関し、本件訂正発明1は、「熱風乾燥により乾燥させ」ているのに対して、甲1発明は、「油揚げ乾燥させ」ている点(以下、「相違点1-3」という。)。 [相違点1-4] 「即席麺の製造法」が、本件訂正発明1では、「非油揚げ即席麺の製造方法」であるのに対して、甲1発明では、製造法の対象が「非油揚げ即席麺」であることは特定されていない点(以下、「相違点1-4」という。)。 イ 判断 上記相違点について検討する。 まず、相違点1-1について検討する。 本件訂正発明1の「酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉」は、本件訂正により限定されたものであり、麺用小麦粉に対する「酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉」以外の加工澱粉の添加については特定されないものとなった。 そして、甲2?7には、甲2?7記載の技術事項が記載されているものの、本件訂正発明1のように、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加」することは記載も示唆もされていない。 また、甲1発明は、「澱粉を強度に架橋した難消化性架橋澱粉、および難消化性架橋澱粉とヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を併用し麺に特定量含有させることにより、麺として食感が好ましく違和感のないもので、より効果的に肥満や糖尿病などの予防効果が期待できる素材、即ち難消化性成分の高い食感の良い麺類を提供することができる。」(甲1の段落【0007】)という効果を奏すべく、難消化性架橋澱粉を麺原料粉に添加することを前提として、「小麦粉100質量%に対し、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉を6.7?33.3質量%」を添加するものであるから、麺としての食感を考慮すると、甲1発明において、小麦粉(麺用小麦粉)100質量%に対してヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉(酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉)に着目して、その添加量をさらに増加させて35質量%以上48質量%未満添加することは通常想定されるものではない。 さらに、小麦粉(麺用小麦粉)、ヒドロキシプロピル化澱粉および/またはアセチル化澱粉(酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉)並びに難消化性架橋澱粉を麺原料粉(原料粉)とするものにおいて、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加」の添加割合が技術常識といえるものでもない。 なお、参考資料1記載の技術事項は、原料粉に難消化性架橋澱粉を添加することを前提とするものではないから、甲1発明に参考文献1記載の技術事項を適用する動機付けはない。 そうすると、甲1?7に記載された事項及び参考資料1記載の技術事項に基づいて、上記相違点1-1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 そして、本件訂正発明1は、上記相違点1-1に係る本件訂正発明1の構成を備えることにより、「食感的に適度な硬さを要求される麺であって、コシや歯ごたえを有し、モチモチとした弾力のある麺の製造方法を提供することができる。」という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件訂正発明1は、上記相違点1-2?1-4について検討するまでもなく、甲1発明、甲2?7に記載された事項及び参考資料1記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件訂正発明3について 本件訂正後の請求項3は、請求項1を引用し、請求項1に記載された原料粉を調製する工程について、麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を添加する割合を、さらに限定した事項が記載されている。 そうすると、本件訂正発明3は、上記(1)の本件訂正発明1の検討を踏まえると、甲1発明、甲2?7に記載された事項及び参考資料1記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)まとめ したがって、本件訂正発明1及び3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について (1)理由2(特許法第36条第6項第1号;同法第113条第4号)について ア 理由2の概要 理由2の概要は、具体的には次のとおりである。 ・請求項1では「麺用小麦粉100質量%に対し、加工澱粉を35質量%以上48質量%未満添加」することが特定されているが、発明の詳細な説明には「麺用小麦粉100質量%に対し、加工澱粉を30質量%以上40質量%未満添加」することしか記載されていない。 そして、出願時の技術常識に照らしても、「加工澱粉の添加量を35質量%以上48質量%未満添加すること」まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。また、請求項1を引用する請求項2,3に係る発明も同様である。 イ 理由2の検討 発明の詳細な説明の記載を参酌すると、本件訂正発明1及び3の解決しようとする課題は、「食感的に適度な硬さを要求される麺であって、コシや歯ごたえを有する即席麺の製造方法を提供すること」であると認められる(段落【0006】)。 そして、本件訂正発明1では、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加」することが特定され、また、本件訂正発明3では、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上45質量%以下添加」することが特定されている。 ここで、発明の詳細な説明における段落【0010】の記載によれば、「酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉」は、加工澱粉である。 一方、発明の詳細な説明における段落【0034】の表1において、試食評価が「◎:とてもよい」又は「○:良い」の良好といえるものは参考例2?4であり、それらの加工澱粉の添加割合は小麦粉100質量%に対してそれぞれ「35」、「42」、「45」質量%である。 また、同じく表1において、試食評価が「×:好ましくない」ものは参考例5であり、その加工澱粉の添加割合は小麦粉100質量%に対して「48」質量%である。 さらに、発明の詳細な説明における段落【0035】には、「上記結果に示すとおり、加工澱粉を35質量%以上48質量%未満添加した参考例2?4の麺は通常の即席麺と同様若しくは通常の即席麺より食感が優れており、特に参考例3の麺は、歯ごたえやコシが共に優れていた。」と記載されている。 これら発明の詳細な説明の記載によれば、参考例2?4の試食評価から、麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上45質量%以下添加したものは、通常の即席麺より食感がよいことが明示されており、本件訂正発明3のように、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上45質量%以下添加」することにより、歯ごたえやコシが優れたものとなると理解できる。 また、小麦粉100質量%に対して加工澱粉を「48」質量%添加した参考例5では、試食評価が×で好ましくないところ、小麦粉100質量%に対して加工澱粉を「45」質量%添加した参考例4の試食評価は○でよいこと、発明の詳細な説明における上記段落【0035】の記載を参酌すると、特許明細書には「加工澱粉を35質量%以上48質量%未満添加した参考例2?4の麺は通常の即席麺と同様若しくは通常の即席麺より食感が優れており」と記載されていること、及び小麦粉100質量%に対して加工澱粉を「45」質量%より多く「48」質量%未満の範囲において添加したものの試食評価がよいことを否定する証拠はないことから、本件訂正発明1のように、「麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加」することにより、歯ごたえやコシが優れたものとなると理解できる。 ところで、発明の詳細な説明における段落【0035】に記載された、本件訂正発明1及び3の熟成工程に関する表2の試食評価の結果は、小麦粉100質量%に対し、加工澱粉を35質量%添加した表1の参考例2の麺生地を用いた場合の結果であるところ、酢酸澱粉やヒドロキシプロピル澱粉は、麺の弾力性の向上などの食感の改良に用いること(段落【0010】)を考慮すると、表2の結果は、熟成時間に対する麺線への水分のなじみの度合によるべたつきや麺の硬さの評価が示されており、この評価に加工澱粉の添加量が影響を及ぼすことが明らかではない以上、加工澱粉の添加量にかかわらず、同様の結果が得られるものであって、表1の参考例3や4においても混練物を5?10分間熟成させるとべたつきや麺の硬さについて良好な結果が得られるものと理解できる。 なお、申立人は、令和元年11月1日に提出した意見書において、「令和元年9月26日付け意見書において、熟成時間を変更した場合の評価結果を示しているが、その参考例2?4における熟成時間0分の評価結果は、本件明細書の表1に示されている熟成時間0分の評価結果と矛盾している。」(5ページ2?5行)と主張するが、表1は加工澱粉の添加量を変えた場合の相対評価であり、また、表2は熟成時間を変えた場合の相対評価であるから、評価結果が異なるのは当然であり、参考例2?4における熟成時間0分の評価結果が、本件明細書の表1に示されている熟成時間0分の評価結果と矛盾しているとはいえず、申立人の上記主張は採用することができない。 また、申立人は、同意見書において、「酢酸澱粉に変えて同量のヒドロキシプロピル澱粉を用いた場合でも同じ効果が得られるかは不明である。」(5ページ19?20行)と主張するが、特許明細書には、「加工澱粉とは、澱粉のグルコース残気(当審注:「残基」の誤記と認められる。)の水酸基に官能基を付加・導入するなどし、親水性や疎水性を高めたものをいう。本発明においては、麺の弾力性の向上などの食感の改良に用いるために、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉などを用いることができる。」(段落【0010】)と記載されていることから、グルコース残基の水酸基に官能基を付加・導入された酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉は、親水性、疎水性が高められることにより麺の食感を改良できるという機序からして、同量の酢酸澱粉とヒドロキシプロピル澱粉とで、同様の効果を奏すると理解でき、一方、麺の歯ごたえやコシに与える影響の度合が異なることを示す根拠は示されていない。したがって、申立人の上記主張は採用することができない。 そうすると、本件訂正発明1および3は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 ウ まとめ したがって、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 (2)理由3(特許法第36条第4項第1号;同法第113条第4号)について ア 理由3の概要 理由3の概要は、具体的には次のとおりである。 ・本件特許の発明の詳細な説明には、加工澱粉の添加量について、「30質量%以上40質量%未満」、「30質量%以上42質量%未満」及び「30質量%以上40質量%以下」と3種類の記載があるが、表1に記載されている参考例4(加工澱粉45質量%)は、いずれの上限値も超えているにもかかわらず、良好な評価結果が得られている。 発明の詳細な説明における記載と実施例の記載は矛盾しているため、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許の請求項1?3に係る発明の実施ができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 イ 理由3の検討 本件特許の発明の詳細な説明の段落【0010】には、酢酸澱粉やヒドロキシプロピル澱粉などの加工澱粉の添加量の上限について、「40質量%未満」、「42質量%未満」及び「40質量%以下」との記載があるが、当該記載は例示されたものであって、加工澱粉の添加量の上限は、これらに限られるものではなく、表1に記載されている参考例4(加工澱粉45質量%)のように、食感としてコシや歯ごたえが良好である評価が得られる範囲で設定されるものと理解できる。 そうすると、発明の詳細な説明における記載と実施例の記載は矛盾しているとはいえない。 また、仮に矛盾があったからといって、それをもって本件訂正発明1及び3を当業者が実施することができないとも認められない。 ウ まとめ したがって、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てについては、本件特許の請求項2が本件訂正により削除されたことにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上48質量%未満添加し、原料粉を調製する工程と、 前記原料粉に加水し、混練して混練物を調製する混練工程と、 前記混練物を5?10分間熟成させる熟成工程と、 熟成した前記混練物を麺線化する麺線化工程と、 前記麺線化工程後、乾燥工程の前に、前記麺線を50?120秒間蒸煮する蒸煮工程と、 前記麺線を熱風乾燥により乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする非油揚げ即席麺の製造方法。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記原料粉を調製する工程が、麺用小麦粉100質量%に対し、酢酸澱粉又はヒドロキシプロピル澱粉を35質量%以上45質量%以下添加する工程であり、 前記非油揚げ即席麺が、うどんである請求項1に記載の非油揚げ即席麺の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-12-03 |
出願番号 | 特願2014-17381(P2014-17381) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L) P 1 651・ 536- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 福澤 洋光 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
井上 哲男 槙原 進 |
登録日 | 2018-06-29 |
登録番号 | 特許第6360314号(P6360314) |
権利者 | テーブルマーク株式会社 |
発明の名称 | 即席麺の製造方法 |
代理人 | 萩原 綾夏 |
代理人 | 柳井 則子 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 柳井 則子 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 萩原 綾夏 |