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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G07G
管理番号 1359566
異議申立番号 異議2018-700993  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-05 
確定日 2020-01-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6338752号発明「オーダーエントリーシステム、注文入力端末およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6338752号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、3、4について訂正することを認める。 特許第6338752号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6338752号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成29年8月8日に出願され、平成30年5月18日にその特許権の設定登録がされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年12月 5日 :特許異議申立人 鬼頭厘早(以下「申立人」
という。)による請求項1?4に係る特許に
対する特許異議の申立て
平成31年 2月27日付け:取消理由通知書
平成31年 4月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年 5月 8日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120
条の5第5項)
令和 1年 6月 7日 :申立人による意見書の提出
令和 1年 7月24日付け:取消理由通知書(審決の予告)
令和 1年 9月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年10月 7日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120
条の5第5項)
令和 1年11月 7日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和1年9月27日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6338752号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、平成31年4月25日付けの訂正請求書による訂正は、取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「利用客の注文を受け付ける注文入力端末」、
「座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」、
「前記座席選択画面は、席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し」及び
「前記画面制御部は、前記操作手段を介して前記指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける」
と記載されているのを、
「従業員による、利用客の注文内容と席の情報の入力を受け付ける注文入力端末」、
「第1座席選択画面において、前記従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」、
「前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し」及び
「前記画面制御部は、前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける」
にそれぞれ訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」、
「前記座席選択画面は、席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し」及び
「前記画面制御部は、前記操作手段を介して前記指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける」
と記載されているのを、
「第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」、
「前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し」及び
「前記画面制御部は、前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける」
にそれぞれ訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」、
「前記座席選択画面は、席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し」及び
「前記画面制御部は、前記操作手段を介して前記指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける」
と記載されているのを、
「第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」、
「前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し」及び
「前記画面制御部は、前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける」
にそれぞれ訂正する。

訂正前の請求項1-2は一群の請求項に該当するから、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、一群の請求項である請求項〔1-2〕について請求されている。
訂正事項2に係る請求項3についての訂正及び訂正事項3に係る請求項4についての訂正は、それぞれ独立請求項について請求されている。
したがって、本件訂正は、請求項〔1-2〕、3、4について請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1における「注文入力端末」の操作の主体と操作内容を、本件特許の願書に添付された明細書(以下「明細書」という。)の段落【0014】及び【0017】(特に「従業員」に係る記載を参照)並びに段落【0021】、【0023】、【0027】、【0029】及び図4等(特に「ボタンB1」、「ボタンB2」及び「座席番号」に係る記載を参照)に基いて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3における「注文入力端末」の操作の主体と操作内容を、明細書の段落【0014】、【0017】、【0021】、【0023】、【0027】、【0029】及び図4等(参照箇所は上記(1)と同様)に基いて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項4についての訂正は、訂正前の請求項4における「プログラム」による「コンピュータ」の操作の主体と操作内容を、明細書の段落【0014】、【0017】、【0021】、【0023】、【0027】、【0029】及び図4等(参照箇所は上記(1)と同様)に基いて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
上記のとおり、訂正事項1?3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、3、4について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
利用客の注文を管理する、オーダーエントリーシステムであって、
従業員による、利用客の注文内容と席の情報の入力を受け付ける注文入力端末と、
前記注文入力端末を介して受け付けた注文を管理する注文管理サーバと、を備え、
前記注文入力端末は、
第1座席選択画面において、前記従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を前記注文管理サーバに送信する送信部と、を備え、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、オーダーエントリーシステム。」
【請求項2】
前記送信部は、
前記席の選択入力および前記注文内容の入力の順序に関わらず、両方の入力を受けた後、前記注文管理サーバに入力された情報を一括して送信する、請求項1に記載のオーダーエントリーシステム。
【請求項3】
利用客の注文を受け付ける注文入力端末であって、
第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を注文管理サーバに送信する送信部と、を備え、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、注文入力端末。
【請求項4】
利用客の注文を受け付けるコンピュータを、
第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を注文管理サーバに送信する送信部と、して機能させ、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、プログラム。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?4に係る特許に対して、当審が令和1年7月24日付けの取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[取消理由]
本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、上記請求項1?4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
[刊行物]
刊行物1:特開2016-110463号公報
刊行物2:特開2005-165841号公報
刊行物3:特開2016-91225号公報

上記刊行物1(以下「引用文献1」という。)は、申立人が提出した甲第2号証であり、上記刊行物2(以下「引用文献2」という。)は、申立人が提出した甲第1号証であり、上記刊行物3(以下「引用文献3」という。)は、平成31年4月25日付けの訂正で限定された事項に対応して当審が提示した文献である。

2 当審の判断
2-1 引用文献に記載された事項及び発明等
(1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
本件特許出願前に日本国内において頒布された引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる券売機(販売機)1の斜視図である。この券売機1は、例えば飲食店において客が商品(メニュー)に対応する食券を購入するために設置されるものである。同図に示すように、券売機1の正面上部には、メニュー等を表示すると共に入力用のキー操作部となる操作表示部(タッチパネル)11が設置されている。操作表示部11には客が商品購入を始めとする所定の操作を行うための画面が表示される。
・・・
【0020】
図2は券売機1の一例を示すブロック図である。券売機1は、CPU35と、RAM(記憶手段)37と、ROM39と、通信部41と、貨幣識別部43と、硬貨投入口17と、紙幣挿入口13と、貨幣払出部45と、硬貨返却口19と、紙幣返却口15と、食券印字発行部47と、食券取出口21と、操作表示部11と、音声合成部49と、スピーカ51と、計時回路53と、を備えて構成されている。
【0021】
CPU35は、券売機1の処理動作全体を制御する制御手段である。RAM37は主記憶装置に該当するものであり、CPU35が演算処理を実行する際の作業領域として用いられる。またRAM37においては1回の入金に応じた入金金額、現在の残高などのデータを記憶する一時記憶エリアが設定される。RAM37には商品ファイルや画面ファイル、下記するメニュー情報ファイルや座席情報ファイルや現在の座席状態等が記憶されている。図4はRAM37に記憶される商品ファイルの一例を示す図である。同図に示すように商品ファイルは、各商品の商品コード(商品識別情報)、商品名、価格等の各種商品情報からなっている。ROM39は、CPU35が実行するプログラムの他、CPU35が演算処理に際して利用する各種の設定データ等が記憶されている。
【0022】
通信部41は、外部との通信を実行する送信手段(送受信手段)であり、外部装置との通信を行う機能を有する。有線、無線を問わない。貨幣識別部43は、紙幣挿入口13及び硬貨投入口17から客(利用者)によって投入された紙幣や硬貨の種類を識別する。貨幣払出部45は、釣銭あるいは払戻金として貨幣を紙幣返却口15や硬貨返却口19に払い出す。
・・・
【0024】
操作表示部11は、タッチパネルを用いて構成されており、下記する商品メニューや座席状態等の画面を表示する。そして客が、表示された商品メニュー中の所望の商品を押下(タッチ)することでその選択された商品が入力され、また表示された座席状態中の所望の座席を押下することでその選択された座席が入力される。即ち操作表示部11は、店舗で提供するメニュー及び前記店舗内の座席状態を表示する表示手段であると共に、メニューの選択や座席の指定を行う操作手段である。
・・・
【0026】
図3は券売機1を含む券売システム100の一例を示すブロック図である。同図に示すように券売システム100は、券売機1とキッチン端末101と店舗用管理装置103とアクセスポイント102とを、LAN105を介して接続し、またアクセスポイント102を介して携帯端末104をLAN105に接続し、またこれら券売機1や店舗用管理装置103をネットワーク107を介して本社管理装置109に接続して構成されている。本社管理装置109や店舗用管理装置103は券売機1と通信を行い、券売機1の動作の管理や券売機1内の情報管理を行う。また、発券機1から売上実績データを収集して、その管理や売上情報に基づく商品の発注指示を行う。キッチン端末101は、この例では、商品の調理指示書を印刷するキッチンプリンターであり、一般に厨房(調理場)又はその近傍に設置される。厨房で調理する店員は、キッチン端末101からプリントアウトされる調理指示書に従って調理を行う。キッチン端末101は、券売機1で食券が発行される際に送信される調理指示命令を受け取り、前記調理指示書を印刷する。なおキッチン端末101はキッチンプリンターの代りに、プリントしないで画像で調理指示を行う装置(キッチンモニター)であっても良い。携帯端末104は例えば店員が所持し、例えば下記するメニューと座席との紐付けを確認したり、座席が使用後に空席になったことを入力したりする等のために用いる。また券売機1やキッチン端末101や携帯端末104が複数台であっても良いことは言うまでもない。
【0027】
図5は、券売機1が実行する発券処理の一例を示すフローチャートである。この図に示される処理は、CPU35がROM39に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。以下、最初に座席を指定する場合、最初に商品を選択する場合、テイクアウトの場合について、それぞれ説明する。
【0028】
〔最初に座席を指定する場合〕
即ちまず、券売機1の操作表示部11に、例えば図6に示すような初期画面G1を表示する(ステップST1)。同図に示すように初期画面G1には、メニュー選択ボタンg11と、座席指定ボタンg12と、テイクアウトボタンg13とが表示されている。そして、初期画面G1において座席指定ボタンg12が押下されると、ステップST2、ST3、ST4を介してステップST5に進み、図7に示す座席指定画面G2(その1)が操作表示部11に表示される。
【0029】
座席指定画面G2(その1)は人数入力画面であり、利用する人数を入力する画面である。即ちこの画面では、表示されている数字g21の何れかをタッチすることで人数欄g22に人数を表示する。この例では4名を選択した場合を示している。人数入力後に次に進むボタンg23を押下することで、図8に示す座席指定画面G2(その2)に進む。なお、座席指定画面G2(その1)には、同じグループの客が同一の座席を選択できるようにするための座席誘導ボタンg24を表示している。
【0030】
座席指定画面G2(その2)は座席種類選択画面であり、この例の場合は4名を選択したので、座席の種類(「4名用」,「6名用」)と共に現在利用が可能な座席の種類が表示される。即ちこの座席指定画面G2(その2)では、「選ぶ」と表示された座席の種類(即ち4名用)が利用可能な座席(空席)の種類であり、「満席」と表示された座席の種類(即ち6名用)が利用不可の座席(使用中)の種類である。利用可能な座席の種類には利用可能なテーブルの数が同時に表示される。さらに、座席指定画面G2(その2)には、全体の座席レイアウトを表示させるための座席レイアウトボタンg27を表示している。
【0031】
そして例えば、この座席指定画面G2(その2)において、4名用の選ぶボタンg25を押下すると、図9に示す座席レイアウト画面(座席指定画面)G3が表示される。この座席レイアウト画面G3には、店内全体の座席レイアウトと、現在選択できる4名用の座席(斜線の座席)が分かるように表示されている。4名用以外の座席には黒塗りが施され、選択できないようになっている。そして斜線を入れた何れかの座席g31を押下して座席を指定すれば(ステップST6)、CPU35は、その座席番号と、新たに生成した食券番号とを用いて、座席情報を生成し、図10に示す座席情報ファイルとしてRAM37に記録する(ステップ7)。即ち、ステップ5,6,7を実行するCPU35等は、店舗内の座席状態から客が使用する座席を指定する座席指定手段である。図10に示す座席情報ファイルには、食券番号「Y005」とこれに対応する座席番号「0123」が紐付けられて記憶される。
【0032】
なお、上記例では、座席指定画面G2(その1)→座席指定画面G2(その2)→座席レイアウト画面G3を順番に表示して座席を指定していく方法を説明したが、座席指定画面G2(その1)→座席レイアウト画面G3や、座席指定画面G2(その1)だけや、座席指定画面G2(その2)だけや、座席レイアウト画面G3だけで座席を指定するように構成しても良い。
・・・
【0035】
図5に戻って、上記座席情報が生成された後、ステップST8に移行し、このときはまだメニュー情報を生成していないので、ステップST9に移行する。ステップST9では、例えば図11に示すようなメニュー選択画面G4が表示される。メニュー選択画面G4には、この店舗で提供できる各種商品を表示する商品表示部g41や、選択中のメニューを表示する購入予定明細部g42や、発券ボタンg43や、やり直しボタンg45や、領収証ボタンg47や、会計表示部g49等が表示されている。そして商品表示部g41に表示される各種商品を押下することでこれを1又は複数選択する。そして選択した内容を購入予定明細部g42や会計表示部g49で確認した後、発券ボタンg43を押下することで、メニューが選択される(ステップST10)。
【0036】
これによってCPU35は、選択されたメニュー(数量を含む)と前記食券番号からメニュー情報を生成し、図12に示すメニュー情報ファイルとしてRAM37に記録する(ステップST11)。図12に示すメニュー情報ファイルでは、食券番号「Y005」と、これに対応する商品名及び数量と価格(単価)が、商品の種類分、紐付けられて記憶されている。即ちステップ9,10,11を実行するCPU35等は、メニューから客が所望するメニューを選択するメニュー選択手段である。なおこの例では、1回の発券処理が終了するまで(ステップST1?ステップST17までの処理が終了するまで)、食券番号は、複数の商品に対して同一番号としているが、各商品毎に異なる番号となるように構成しても良い。
【0037】
そしてステップST12において、初期画面G1でテイクアウトを選択していないので、ステップST13に移行し、座席情報はすでに生成済みなので、ステップST14に移行する。ステップST14では、前記座席情報とメニュー情報とを組み合わせることで顧客情報を生成し、図13に示すような顧客情報ファイルとしてRAM37に記録させる。図13に示す顧客情報ファイルには、最新の食券番号の顧客情報が最上部に記載されている。即ちステップ14を実行するCPU35等は、メニュー情報と座席情報とを組み合わせて顧客情報を生成する顧客情報生成手段である。この顧客情報ファイルには、食券番号「Y005」と、これに対応する商品名及び数量と価格(単価)と、座席番号とが、紐付けて記憶されている。なお、さらに発券の購入時間や発券を行った券売機1の端末番号等を併せて紐付けて記憶させても良い。
・・・
【0039】
次に、客は、前記紙幣挿入口13や硬貨投入口17から貨幣を投入し(貨幣の投入はもっと前の段階で行っても良い)、メニュー選択画面G4の発券ボタンg43を押下する。これによって、精算処理が行われて選択された商品分の金額が投入金額から差し引かれ、お釣りが紙幣返却口15や硬貨返却口19から払い出され(ステップST15)、同時に食券印字発行部47によって食券が印字され、食券取出口21から排出される(ステップST16)。商品を複数種類選択した場合は、複数枚の食券が排出される。即ちステップ15を実行するCPU35等は、顧客情報に基づく精算処理を行う精算手段であり、またステップ16を実行するCPU35等は、顧客情報と精算処理に基づく券を発券する発券手段である。
【0040】
図14は食券120の一例を示す図である。同図に示すように食券120には、店舗名121と発行日時123と座席番号125と商品名127と数量129とバーコード131とが印字されている。この食券120に表示された座席番号125を確認することで、客は自分が選択した席に間違いなく着席することができる。
【0041】
なお上記ステップST8とステップST13を実行するCPU35等は、顧客情報が生成されていない場合に、前記発券手段による発券を禁止する禁止手段である。
【0042】
〔最初に商品を選択する場合〕
この場合はまず、図5に示すステップST1において、図6に示す初期画面G1を表示し、この初期画面G1中のメニュー選択ボタンg11を押下する。これによって、ステップST2、ST3を介してステップST9に進み、メニュー選択画面G4を表示する。そして、ステップST10、ST11において上記と同様の動作を行ってメニュー情報を生成した後、ステップST12、ST13に至り、この場合は未だ座席選択を行っていないので、ステップST5に移行して座席指定画面G2を表示し、前記と同様にステップST6、ST7に進んで座席情報を生成し、このときは既にメニュー情報が生成済みなので、ステップST8からステップST14に移行し、上記と同様、前記座席情報とメニュー情報とを組み合わせることで顧客情報を生成し、図13に示すような顧客情報ファイルとしてRAM37に記録させる。そして精算処理を行ない(ステップST15)、食券が印字・発行される(ステップST16)。
・・・
【0044】
そして、以上のステップST1?ST16によって生成された顧客情報は、ステップ17において、この券売機1を設置した店舗にあるキッチン端末(外部装置、端末装置)101に送信され、商品の調理指示書として出力され、印刷又は画面表示される。即ち、顧客情報を外部装置へ出力させるCPU35や通信部41等は出力手段である。この調理指示書には、前記顧客情報中の少なくとも商品名と座席番号が表示されており、その商品名によって商品を調理することができると共に、出来上がった商品はその座席番号を確認することで、注文を受けた正しい座席に運ぶことができる。なお、各座席には座席番号が表記されている。表記方法は、テーブルに表記されていても、天井から番号札が吊るされていても良く、また下記するページャー端末とテーブルにNFC(近距離無線通信)が内蔵されていることで座席を特定するような仕組みでも良い。またテイクアウトの場合は、キッチン端末101に顧客情報を出力する際、上記テイクアウト番号も出力しておけば、食券に印刷したテイクアウト番号と突き合わせることで、調理した商品を、注文した客により確実に引き渡すことができる。
・・・
【0048】
また、上記座席指定画面とメニュー選択画面間の切り替えには、例えば以下の3つのパターンが考えられる。
(1)行き来自由のパターン
例えばメニュー選択時には、メニュー選択画面内に座席指定画面へ遷移するためのボタン(座席指定画面遷移ボタン)を表示し、一方、座席指定時には、座席指定画面内にメニュー選択画面へ遷移するためのボタン(メニュー選択画面遷移ボタン)を表示するようにする。両画面間の行き来は自由であり、また、それぞれの遷移ボタンには選択状況が分かるステータスを同時に表示しても良い。
例えば、メニュー選択画面において、座席指定画面遷移ボタンを表示し、そのボタンの近傍に、座席が指定されたか否かが文字や色や形状で分かるようにする。
そして両方の情報が確定したことを条件に精算処理画面へ遷移する精算処理ボタンが押下できるようにする。
(2)シリアル運用のパターン
初期画面でメニュー選択又は座席指定のどちらか一方を選ぶと、順に選択を進め、精算(=発券)までを行うパターンである。
例えば、メニュー選択を先に選ぶとメニュー選択画面で必要なメニューを選択し、メニュー選択の最後にメニュー確定ボタンを押下する。押下と同時に座席指定画面へ自動遷移し、座席を指定し、座席指定の最後に座席確定ボタンを押下する。押下と同時に精算処理画面へ自動遷移する。
(3)画面分割のパターン
操作画面を左右もしくは上下に分割して、メニュー選択と座席指定を並行して進めるパターンである。両画面が確定したことを条件に精算処理ボタンが押下できるようにする。
・・・
【0050】
また上記例では、本発明を券売機に適用した例を示したが、本発明は券売機に限定されず、例えば、食券を発行しないで注文データを厨房のキッチン端末に送信する構成の販売機等であってもよい。即ち例えば販売機は客と店舗とのインターフェースに用い、各種画面の表示と入力を行い、その他の構成は上位機種(例えば管理装置等)やその他の機器に備えても良い。例えば、データの記憶や演算処理などはネットワーク接続された管理装置が行い、発券や精算は別途設けたプリンタ等の発券装置と精算装置によって行うようにしても良い。
・・・
【0054】
また上記販売機では、オーダー受付/座席指定/精算処理の三業務を一括で行うモードを示しているが、店舗の業態や時間帯等によっては、オーダー受付/精算処理のみ、またはオーダー受付/座席指定のみ、または精算処理のみ等のモードを使い分けるように構成しても良い。」

(1b)
引用文献1の図1?3、5、6及び9?15は、以下のとおりである。

イ 引用文献1に記載された発明及び技術事項
摘記(1a)及びの図面(摘記(1b)参照)から、以下の事項が認定できる。
(ア)
券売機1は、CPU35と、RAM(記憶手段)37と、ROM39と、通信部41と、操作表示部11と、を備えて構成され(段落【0020】)、
CPU35は、券売機1の処理動作全体を制御する制御手段であり、
ROM39は、CPU35が実行するプログラム等を記憶し(段落【0021】)、
通信部41は、外部との通信を実行する送信手段であり、外部装置との通信を行う機能を有し(段落【0022】)、
操作表示部11は、タッチパネルを用いて構成されており、商品メニューや座席状態等の画面を表示し、客が、表示された商品メニュー中の所望の商品を押下(タッチ)することでその選択された商品が入力され、また表示された座席状態中の所望の座席を押下することでその選択された座席が入力される(段落【0024】)ことが認定できる(図1?2も参照)。
(イ)
座席指定画面を表示(図5のST5)するのに、座席指定画面G2(その1)→座席指定画面G2(その2)→座席レイアウト画面G3を順番に表示するが、座席レイアウト画面G3だけで構成しても良いことから(段落【0032】、図5)、操作表示部11に表示される初期画面G1で座席指定ボタンg12が押下されると座席レイアウト画面G3を表示する(段落【0028】?【0031】、図5?6)ようにしても良く、このことをも踏まえると、
CPU35がROM39に記憶されているプログラムを実行することにより実現される、券売機1が実行する発券処理において(段落【0027】)、
最初に座席を指定する場合、操作表示部11に表示される初期画面G1で座席指定ボタンg12が押下されると座席レイアウト画面G3を表示し(段落【0028】)、
座席レイアウト画面G3で座席が指定されると座席情報を生成し(段落【0031】)、
座席情報を生成した後、まだメニュー情報を生成してないので、メニュー選択画面G4を表示し(段落【0035】)、
メニュー選択画面G4でメニューが選択されるとメニュー情報を生成し(段落【0036】)、
メニュー情報を生成した後、座席情報は生成済みなので、座席情報とメニュー情報とを組み合わせて顧客情報を生成し(段落【0037】)、
最初に商品を選択する場合、初期画面G1でメニュー選択ボタンg11が押下されるとメニュー選択画面G4を表示し、
メニュー選択画面G4でメニューが選択されるとメニュー情報を生成し、
メニュー情報を生成した後、まだ座席情報を生成してないので、座席レイアウト画面G3を表示し、
座席レイアウト画面G3で座席が指定されると座席情報を生成し、
座席情報を生成した後、メニュー情報は生成済みなので、座席情報とメニュー情報とを組み合わせて顧客情報を生成し(段落【0042】)、
いずれの場合も顧客情報を生成した後、精算処理、発券の後に、顧客情報を通信部41でキッチン端末(外部装置、端末装置)101に送信し、商品の調理指示書として出力し、印刷又は画面表示し(段落【0044】)、
売機1内の情報管理を行う本社管理装置109や店舗用管理装置103が通信を行う、券売機1(段落【0027】)が認定できる(段落【0027】?【0044】、図2?3、5?6、9、11、13、特に、図5、9、11も参照)。
(ウ)
上記(ア)、(イ)及び摘記(1a)、(1b)を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「券売機1は、CPU35と、RAM(記憶手段)37と、ROM39と、通信部41と、操作表示部11と、を備えて構成され、
CPU35は、券売機1の処理動作全体を制御する制御手段であり、
ROM39は、CPU35が実行するプログラム等を記憶し、
通信部41は、外部との通信を実行する送信手段であり、外部装置との通信を行う機能を有し、
操作表示部11は、タッチパネルを用いて構成されており、商品メニューや座席状態等の画面を表示し、客が、表示された商品メニュー中の所望の商品を押下(タッチ)することでその選択された商品が入力され、また表示された座席状態中の所望の座席を押下することでその選択された座席が入力され、
CPU35がROM39に記憶されているプログラムを実行することにより実現される、券売機1が実行する発券処理において、
最初に座席を指定する場合、操作表示部11に表示される初期画面G1で座席指定ボタンg12が押下されると座席レイアウト画面G3を表示し、
座席レイアウト画面G3で座席が指定されると座席情報を生成し、
座席情報を生成した後、まだメニュー情報を生成してないので、メニュー選択画面G4を表示し、
メニュー選択画面G4でメニューが選択されるとメニュー情報を生成し、
メニュー情報を生成した後、座席情報は生成済みなので、座席情報とメニュー情報とを組み合わせて顧客情報を生成し、
最初に商品を選択する場合、初期画面G1でメニュー選択ボタンg11が押下されるとメニュー選択画面G4を表示し、
メニュー選択画面G4でメニューが選択されるとメニュー情報を生成し、
メニュー情報を生成した後、まだ座席情報を生成してないので、座席レイアウト画面G3を表示し、
座席レイアウト画面G3で座席が指定されると座席情報を生成し、
座席情報を生成した後、メニュー情報は生成済みなので、座席情報とメニュー情報とを組み合わせて顧客情報を生成し、
いずれの場合も顧客情報を生成した後、精算処理、発券の後に、顧客情報を通信部41でキッチン端末(外部装置、端末装置)101に送信し、商品の調理指示書として出力し、印刷又は画面表示し、
売機1内の情報管理を行う本社管理装置109や店舗用管理装置103が通信を行う、券売機1。」

(エ)
また、摘記(1a)の段落【0048】には、以下の技術事項(以下「引用文献1に記載された技術事項」という。)が記載されている。

[引用文献1に記載された技術事項]
「(1)行き来自由のパターン
例えばメニュー選択時には、メニュー選択画面内に座席指定画面へ遷移するためのボタン(座席指定画面遷移ボタン)を表示し、一方、座席指定時には、座席指定画面内にメニュー選択画面へ遷移するためのボタン(メニュー選択画面遷移ボタン)を表示するようにする。両画面間の行き来は自由であり、また、それぞれの遷移ボタンには選択状況が分かるステータスを同時に表示しても良い。
例えば、メニュー選択画面において、座席指定画面遷移ボタンを表示し、そのボタンの近傍に、座席が指定されたか否かが文字や色や形状で分かるようにする。
そして両方の情報が確定したことを条件に精算処理画面へ遷移する精算処理ボタンが押下できるようにする。」

(2)引用文献2について
ア 引用文献2に記載された事項
本件特許出願前に日本国内において頒布された引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0009】
従来は、着席場所が決まった段階で注文を受け付けるしかないが、本発明では、携帯端末に注文と着席場所を順序問わず独立して入力した後、最終的に注文が決定されるので、顧客の着席前後に拘わらず注文を受けることができる。これによって、待ち時間の間においても、注文を受けることができ、顧客の苛立ちを解消することができるとともに、着席後に直ちに注文を受け付けて調理を開始することができる。
・・・
【0025】
飲食店では、注文から調理までを迅速に行うための注文システムが配備されている。この注文システムは、飲食物を表示したメニューと、顧客に貸与する携帯端末と、前記携帯端末との間で送受信可能な注文管理サーバより構成される。
・・・
【0027】
本実施例の携帯端末18は、飲食店の店内使用に供され、顧客自身が、注文できるように入店時に貸与される。携帯端末は、専用の端末装置として構成されていても、既存の携帯電話にバーコードリーダー機能を付与した構成でもよい。
携帯端末18は、識別コードであるバーコード20,22や、その他に数量や決定に対応するバーコードを読み取り可能に構成されており、例えば、携帯端末18はバーコードリーダー機能付き携帯端末(以下、「BR端末」である。読み取り方式に、入力部としてペン式又はスキャン式があるが、いずれの方式を採用してもよい。本実施例では、ペン式を採用しており、メニュー表示の飲食物注文用バーコード20を読み取ることにより、BR端末18に注文しようとする飲食物の注文データが蓄積される。
・・・
【0029】
BR端末18は、さらに、決定ボタン24と呼出ボタン26を供えている。決定ボタ24ンは、BR端末内に蓄積した注文データを管理サーバに送信するための入力部である。なお、後述するが、決定ボタン24を利用せずとも、テーブル席のバーコードの利用して蓄積した注文データを送信することもできる。また、注文決定のためのバーコードを記したメニューを利用した場合には、BR端末から決定ボタンを略することができる。
呼出ボタン26は、顧客の細かな要望に応えるために、フロア係を呼び出すための入力部である。呼出ボタン26を操作すると、例えば、店内の表示板にテーブル番号が表示される。
さらに、BR端末18は、テンキーを備えていてもよい。このテンキーは、数量の入力、フロア係による着席場所の入力に利用できるように構成されている。
・・・
【0032】
図4は、管理サーバの構成図である。管理サーバ30は、BR端末18から受信した飲食物注文用バーコード及び着席場所バーコードに対応する情報を厨房及びフロントの出力装置に表示する。管理サーバは、CPU(中央演算ユニット)32と、このCPUにバス34で接続された送受信装置36、商品データベース38、着席場所データベース40、記憶装置42、出力装置44を備えている。
送受信装置36は、BR端末18との間で送受信を行うインターフェースとして機能する。商品データベース38は、飲食物注文用バーコード20に対応するデータと飲食物の名称を翻訳するためのテーブル(表)を格納している。着席場所データベース40は、着席場所バーコード28に対応するデータと着席場所を翻訳するためのテーブル(表)を格納している。
記憶装置42は、例えば、RAMであり、飲食物注文用バーコード20及び着席場所バーコード28の一方のデータのみ受信したときに、固有のBR端末18に関連付けて、前記一方のデータを一時的に保存する。
出力装置44は、調理人に対する厨房出力装置46と、フロア係に対するフロント出力装置48より構成されている。注文には、厨房で調理する飲食物と、厨房での調理は不要な飲料やバイキングがあるためである。出力装置44は、CRT等の画面表示装置でも、プリンター等の印刷装置のいずれでもいが、本実施例では、CRT等の画面表示装置を用いている。
・・・
【0034】
図5及び図6は、BR端末18の液晶表示画面50を示している。図5は、注文前のBR端末の液晶表示画面を示している。フロア係は、BR端末に人数を入力する。BR端末には、人数を入力することにより、入店時間52と人数54が表示される。フロア係は、空席に顧客を案内し、図3に示されるように、テーブル席のバーコード28をBR端末で読み取る。BR端末18にテンキーがある場合には、テンキーによって着席場所のデータを入力してもよい。このとき、フロア係は、顧客に対してテーブル席のバーコード28をBR端末で読み取ることができる旨を説明し、顧客バーコード28を読み取らせてもよい。バーコード28を読み取ると、BR端末には、着席時間とテーブル番号が表示される。フロア係は、顧客に注文方法を説明してテーブル席を離れる。フロア係は、注文を受けることはなく、その間に他の業務を行う。
また、フロア係は、必要であればBR端末の操作を説明し、顧客が自由に着席場所を選んでもよい旨を伝える。この場合、着席場所バーコード28は顧客によってBR端末に入力される。
・・・
【0036】
注文の入力のために、液晶表示画面50には、決定前の状態では、注文の入力を促す表示が表示される。図5では、「メニューのバーコードをペンで読み取って注文を入力下さい。テーブルバーコードをペンで読み取りますと、決定となります。」のように、注文の入力を促す表示が行われる。液晶表示画面50ではなく、メニュー16の各頁毎に注文の入力を促す表示が行われてもよく、テーブルや卓上メニューに注文の入力を促す表示が行われてもよい。
顧客は、メニュー16のバーコードをBR端末で読み取ることで、BR端末18に注文データを蓄積する。希望する飲食物の入力が完了すると、顧客が決定ボタン26を操作するか、着席場所バーコード28を読み取る。着席時に着席場所バーコードを入力せず、注文データ入力後に、着席場所バーコードを読み取ると、決定の代わりになる。いずれの場合においても、着席場所バーコードの入力がないかぎり、注文決定とはならない。
【0037】
図6は、注文決定後のBR端末の液晶表示画面を示している。液晶表示画面50には、注文の状態「決定」、発注時刻「18:40」、商品名「****」、数量「1」、価格「¥840」のように、個々の注文毎に状態等が表示されるとともに、合計価格が表示される。さらに、液晶表示画面には、「注文を受付ました。」のように顧客に安心感を与える表示と、「追加注文があるときは、メニューのバーコードを読みとって決定ボタン。」のように追加注文を促す表示とが表示される。
【0038】
管理サーバ30は、BR端末18から送信された注文データを受信し、商品データベース38及び着席場所データベース40を参照して、厨房表示装置46及びフロア出力装置48に注文内容を表示する。調理人は、CRT等に画面表示された注文のうち、厨房で調理が必要な注文についての調理を行う。フロア係は、CRT等に画面表示された注文のうち、厨房で調理を行わない注文についての対応、すなわち、飲料の提供準備、バイキング用容器の準備を行う。いずれの出力装置46,48にも、テーブル番号が表示され、調理完了した飲食物や、飲料は所定のテーブル席に運搬される。
・・・
【0052】
さらに、待ち時間の間に注文を好まない顧客については、着席後に注文を受けることもできる。図9において、フロア係の案内又は顧客自身の希望により、テーブル席又はカウンター席に着席し、フロア係又は顧客により着席場所バーコードが読み取られると(S1)、着席場所バーコードのデータは、管理サーバの記憶装置に一時的に保存される(S21)。顧客によりBR端末に注文が入力されて、決定ボタンの操作又は再度の着席場所バーコードの入力が行われると(S23)、管理サーバは出力装置に注文データ及び着席場所データを出力し(S24)、出力装置はこれを表示する(S2)。
本発明のシステムは、混雑の有無、顧客の希望に合わせていずれにも利用可能に構成されている。」

(2b)
引用文献2の図1?6及び9は、以下のとおりである。


イ 引用文献2に記載された技術事項
摘記事項(2a)及び摘記事項(2b)の図面(特に、段落【0025】、【0027】、【0032】及び図2?5、9)から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2に記載された技術事項]
「注文システムは、飲食物を表示したメニューと、顧客に貸与する携帯端末と、前記携帯端末との間で送受信可能な注文管理サーバより構成され、
管理サーバ30は、CPU32と、このCPUにバス34で接続された送受信装置36、商品データベース38、着席場所データベース40、記憶装置42、出力装置44を備え、
出力装置44は、調理人に対する厨房出力装置46と、フロア係に対するフロント出力装置48より構成され、CRT等の画面表示装置か、プリンター等の印刷装置のいずれかを用い、
管理サーバ30は、携帯端末18から受信した飲食物注文用バーコード及び着席場所バーコードに対応する情報を厨房及びフロントの出力装置に出力する。」

(3)引用文献3について
ア 引用文献3に記載された事項
本件特許出願前に日本国内において頒布された引用文献3には、図面ととともに、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0069】
また、本実施形態では、顧客が券売機20を操作して食券を発行させる例としたが、顧客が口頭で希望する商品を店員へ伝え、店員が券売機20を操作して食券を発行させるようにしてもよい。」

イ 引用文献3に記載された技術事項
摘記(3a)から、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献3に記載された技術事項]
「顧客が口頭で希望する商品を店員へ伝え、店員が券売機20を操作して食券を発行させるようにする。」

2-2 対比・判断
2-2-1 本件発明3について
事案に鑑み、まず、本件発明3から検討する。
(1)対比

引用発明の「客」、「メニュー選択画面G4」、「座席情報」及び「メニュー情報」は、それぞれ、本件発明3の「利用客」、「注文入力画面」、「入力された席の情報」及び「注文内容の情報」に相当する。
また、引用発明の「座席レイアウト画面G3」は、「座席が指定される」から、本件発明3における「第1座席選択画面」と、「座席選択画面」の限度で共通している。

引用発明の「券売機1」は、「操作表示部11」「を備えて構成され」、「操作表示部11は、タッチパネルを用いて構成されており、商品メニューや座席状態等の画面を表示し、客が、表示された商品メニュー中の所望の商品を押下(タッチ)することでその選択された商品が入力され」るから、入力により、「客」の注文を受け付ける端末であるといえる。
このことと、上記アを踏まえると、引用発明の「券売機1」は、本件発明3の「利用客の注文を受け付ける注文入力端末」に相当する。

(ア)
引用発明の「券売機1」が「備え」る「CPU35」は、「券売機1の処理動作全体を制御する制御手段であ」ると共に、「発券処理において」、「メニュー選択画面G4を表示」するなど、画面も制御するから、画面制御部ともいえる。
そして、「CPU35がROM39に記憶されているプログラムを実行することにより実現される、券売機1が実行する発券処理において」、
A:「最初に座席を指定する場合、操作表示部11に表示される初期画面G1で座席指定ボタンg12が押下されると座席レイアウト画面G3を表示し」、
B:「座席レイアウト画面G3で座席が指定されると座席情報を生成し、座席情報を生成した後」、
C:「まだメニュー情報を生成してないので、メニュー選択画面G4を表示し」、
D:「メニュー選択画面G4でメニューが選択されるとメニュー情報を生成」する(符号A?D及び符号a?dは、対比のために便宜上、当審が付した。)。
これらのことと、上記アを踏まえると、引用発明の「CPU35」は、
a:座席選択画面(Aの「座席レイアウト画面G3」)において、
b:利用客の席の選択入力を受け付けた後(Bの「座席が指定されると座席情報を生成し、座席情報を生成した後」)、
c:注文入力画面(Cの「メニュー選択画面G4」)において、
d:利用客の注文内容の入力を受け付ける(Dの「メニューが選択されるとメニュー情報を生成」)、
画面制御部といえる。
(イ)
したがって、引用発明の「CPU35は、券売機1の処理動作全体を制御する制御手段であり」、「CPU35がROM39に記憶されているプログラムを実行することにより実現される、券売機1が実行する発券処理において、最初に座席を指定する場合、操作表示部11に表示される初期画面G1で座席指定ボタンg12が押下されると座席レイアウト画面G3を表示し、座席レイアウト画面G3で座席が指定されると座席情報を生成し、座席情報を生成した後、まだメニュー情報を生成してないので、メニュー選択画面G4を表示」する構成と、本件発明3の「第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」の構成とは、「座席選択画面において、利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部」の構成の限度で共通している。

(ア)
引用発明の「座席情報を生成した後、メニュー情報は生成済みなので、座席情報とメニュー情報とを組み合わせて顧客情報を生成」する構成の「座席情報」及び「メニュー情報」は、本件発明3の」「入力された席の情報」及び「注文内容の情報」に相当するから(上記ア)、当該構成の「顧客情報」
は、本件発明3の」「入力された席の情報」及び「注文内容の情報」を含んでいる。
(イ)
引用発明の「いずれの場合も顧客情報を生成した後、精算処理、発券の後に」、「顧客情報」(上記(ア))を「通信部41でキッチン端末(外部装置、端末装置)101に送信」する構成と、本件発明3の「入力された席の情報および注文内容の情報を注文管理サーバに送信する送信部」の構成とは、「入力された席の情報および注文内容の情報を送信する送信部」の構成の限度で共通している。

以上から、本件発明3と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「利用客の注文を受け付ける注文入力端末であって、
座席選択画面において、利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を送信する送信部と、を備える、
注文入力端末。」
<相違点1>
「利用客の席の選択入力」、「利用客の注文内容の入力」及び「席の選択入力」が、本件発明3では「従業員による」入力であるのに対し、引用発明では「客」が入力する点。
<相違点2>
「送信する送信部」が、本件発明3では、「注文管理サーバ」に送信する送信部であるのに対し、引用発明では「キッチン端末101」に送信する送信部である点。
<相違点3>
「座席選択画面」及び「画面制御部」に関して、本件発明3は、
「第1」座席選択画面であり、「前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し」(以下「構成A」ともいう。)、
「前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける」(以下「構成B」ともいう。)構成を有するのに対して、引用発明はそのような構成を有さない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。

引用発明は、構成Aを有していないから、上記相違点3に係る本件発明3の構成を想到するためには、まず、引用発明に引用文献1に記載された技術事項(特に「座席指定画面内にメニュー選択画面へ遷移するためのボタン(メニュー選択画面遷移ボタン)を表示するようにする。」を参照。)を適用して、引用発明において、本件発明3の「座席選択画面」に対応する画面である「座席指定画面G3」に、「メニュー選択画面へ遷移するためのメニュー選択画面遷移ボタンを表示する」ことで、構成Aの「席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段」を有するようにして、「第1座席選択画面」を得ることが必要になる。

しかし、引用文献1に記載された技術事項の技術的意義は、「画面間の行き来」を「自由」にすることであるから、引用発明に引用文献1に記載された技術事項(特に「メニュー選択画面内に座席指定画面へ遷移するためのボタン(座席指定画面遷移ボタン)を表示し、」を参照)を適用すれば、同様に、引用発明の「メニュー選択画面G4」にも、「座席指定画面へ遷移するための座席指定画面遷移ボタンを表示」することになる。
そして、さらに、構成Bが有している「前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面」を得るためには、「メニュー選択画面G4」でメニューを入力した後に、上記アのような「メニュー選択画面遷移ボタンを表示」した「座席指定画面G3」ではなく、当該「メニュー選択画面遷移ボタン」が表示されていない「座席指定画面G3」(本件発明3の「第2座席選択画面」に対応。)を得ることが必要になるが、これには、以下に述べるように阻害要因が存在する上に、そのようにする動機付けも無い。

引用文献1に記載された技術事項は、「行き来自由のパターン」であり、「両画面間の行き来」を「自由」にするために、「メニュー選択画面内に座席指定画面へ遷移するための座席指定画面遷移ボタンを表示し」、「座席指定画面内には、メニュー選択画面へ遷移するためのメニュー選択画面遷移ボタンを表示するようにする」ものであり、いずれの画面においても「画面遷移ボタン」は必須の構成である。
このことに鑑みると、引用発明に引用文献1に記載された技術事項を適用して、「座席指定画面G3」に「メニュー選択画面へ遷移するためのメニュー選択画面遷移ボタンを表示」した場合(上記ア)、そのボタンを、メニューが選択された後に限って表示しないようにすると、上記の「両画面間の行き来」を「自由」にするという目的を達成することができなくなるから、引用発明において、上記イのように、本件発明3の「先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない」「第2座席選択画面」を得ることには、阻害要因がある。
さらに、引用文献1に記載された技術事項の「遷移ボタン」は、「それぞれの遷移ボタンには選択状況が分かるステータスを同時に表示しても良い」もので、具体的には、「例えば、メニュー選択画面において、座席指定画面遷移ボタンを表示し、そのボタンの近傍に、座席が指定されたか否かが文字や色や形状で分かるようにする」ものであり、これらの表示機能は、「座席指定画面G3」に表示された「メニュー選択画面遷移ボタン」も該当することが明らかであり、当該ボタンの表示機能は、メニュー入力後の状況を確認することにも充分に対応できるものであるから、そのような表示機構を備えるボタンを、あえて表示しないようにする動機付けは無いといえる。

そして、引用文献1、2ないし3(引用文献1、2ないし3に記載された技術事項等参照)にも、上記の動機付けとなるような事項や上記相違点3に係る本件発明3の構成は、記載も示唆もされていないから、引用発明において、上記相違点3に係る本件発明3の構成を想到することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明及び引用文献1、2ないし3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)申立人の主張について
ア 主張
令和1年11月7日差出の意見書(5ページ10行?6ページ5行)において、申立人は、
「また、座席情報が生成された場合には、その時点で既にメニュー情報が生成済みであるため(ステップST8:Y)、そのまま座席情報とメニュー情報とが組み合わされて顧客情報が生成される(ステップST14)ことが前記引用文献1の段落0042及び図5等には開示されている。即ち、座席情報が生成されたときにメニュー情報が既に生成済みである場合には、メニュー選択画面G4が選択されないことになる。このように、前記引用文献1の段落0042及び図5等には、座席指定画面G2が表示される際に、既にメニュー情報が生成済みである場合には、メニューを選択する必要がなく、メニュー選択画面G4を表示させる必要がないという技術思想が開示又は示唆されている。」(以下「主張A」という。)、及び、
「なお、前記引用文献1の段落0048には、『初期画面でメニュー選択又は座席指定のどちらか一方を選ぶと、順に選択を進め、精算(=発券)までを行うパターンである。例えば、メニュー選択を先に選ぶとメニュー選択画面で必要なメニューを選択し、メニュー選択の最後にメニュー確定ボタンを押下する。押下と同時に座席指定画面へ自動遷移し、座席を指定し、座席指定の最後に座席確定ボタンを押下する。押下と同時に精算処理画面へ自動遷移する。』との開示がある。即ち、前記引用文献1の段落0048にも、座席指定画面G2が表示される際に、既にメニュー情報が生成済みである場合には、メニューを選択する必要がなく、メニュー選択画面G4を表示させる必要がないという技術思想が開示又は示唆されている。」(以下「主張B」という。)と主張した上で、さらに、
「したがって、訂正発明1のように、第1座席選択画面にのみ、『先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段』が設けられ、第2座席選択画面には、このような操作手段が設けられないことは、前記引用文献1乃至3に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。」(以下「主張C」という。)
と主張している。
イ 検討
(ア)
引用文献1に記載された技術事項の技術的意義は、「画面間の行き来」を「自由」にすることであるから、引用発明に引用文献1に記載された技術事項を適用し、引用発明の「座席指定画面G3」に、「メニュー選択画面へ遷移するためのメニュー選択画面遷移ボタンを表示する」ことで、構成Aの「席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段」を有するようにして、「第1座席選択画面」を得るようにすれば、同様に、「メニュー選択画面G4」にも、「座席指定画面へ遷移するための座席指定画面遷移ボタンを表示」することになる(上記(2)ア、イ)。
そして、上記(2)ウ、エで述べたとおり、上記適用において、上記技術的意義を考慮すると、阻害要因も有り(上記(2)ウ)、上記相違点3に係る本件発明3の構成を想到することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない(上記(2)エ)。
(イ)
主張A及び主張Bは、いずれも、「両画面間の行き来」を「自由」にすることを前提とした主張ではない。
また、引用発明において、「両画面間の行き来」を「自由」にするために、「座席指定画面G3」に「メニュー選択画面へ遷移するためのメニュー選択画面遷移ボタンを表示」した状態では、「座席指定画面G3」において、メニュー情報が既に入力済みで、座席情報を入力しようとしている、あるいは、入力した状態であっても、さらに別のメニューを追加したり入力したメニューの修正をしたりするために、「座席指定画面G3」の「メニュー選択画面へ遷移するためのメニュー選択画面遷移ボタン」を使用することもあり得るから、上記の状態においては、「メニュー選択画面G4」を表示させる必要がないとはいえない。
(ウ)
そして、引用発明に引用文献1に記載された技術事項(「両画面間の行き来」を「自由」にすること)を採用しないと、上記主張A及び主張Bのとおり、メニュー選択後に座席指定画面G2が表示された場合には、そもそも、その画面で座席指定をした後にメニュー選択画面G4は表示されないのであって(図5等参照)、当該技術事項の「両画面間の行き来」を「自由」にするという技術的意義を考慮せずに(上記(イ)も参照)、主張A及び主張Bを根拠にして、主張Cのように、座席指定画面G3においてメニュー選択画面G4を表示できるようにしているものに対しても、メニューを選択する必要がなく、メニュー選択画面G4を表示させる必要がない(すなわち、第2座席選択画面には、このような操作手段が設けられない)旨主張することは、当を得た主張とはいえない。
したがって、主張A及び主張Bを根拠とする主張Cは採用できない。

2-2-2 本件発明1、2及び4について

以下に示すとおり、請求項1の下線を付した構成以外の構成は、請求項3の構成と実質的に同じであるから、本件発明1は、本件発明3を実質的に含んでいるといえる。
「【請求項1】
利用客の注文を管理する、オーダーエントリーシステムであって、
従業員による、利用客の注文内容と席の情報の入力を受け付ける注文入力端末と、
前記注文入力端末を介して受け付けた注文を管理する注文管理サーバと、を備え、
前記注文入力端末は、
第1座席選択画面において、前記従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を前記注文管理サーバに送信する送信部と、を備え、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、オーダーエントリーシステム。」
参考のために、請求項3の記載も示す。
「【請求項3】
利用客の注文を受け付ける注文入力端末であって、
第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を注文管理サーバに送信する送信部と、を備え、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有さない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、注文入力端末。」

本件発明1は、「利用客の注文内容」「を受け付ける注文入力端末」「を備え」るものであって、「前記注文入力端末」は、本件発明3の注文入力端末に係る構成と同一の構成を備えるから、本件発明1は、実質的に本件発明3の発明特定事項を全て含むものである(上記ア)。
また、本件発明4は、本件発明3の注文入力端末に対応するプログラムの発明であり、実質的に本件発明3の発明特定事項を全て備えるものである。
したがって、本件発明1及び2は、実質的に本件発明3の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであり、本件発明4は、実質的に本件発明3の発明特定事項を全て備えるものであるから、いずれも、本件発明3と同様に、引用発明及び引用文献1、2ないし3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、本件発明1?4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証(引用文献2)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、また、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証(引用文献2)に記載された発明及び甲第1号証(引用文献2)ないし甲第2号証(引用文献1)に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである旨主張する。
しかしながら、本件発明1は、本件訂正により、上記相違点3に係る本件発明3の構成を備えるものとなっており、また、実質的に本件発明3の発明特定事項を全て含む本件発明2?4(上記「第4」の「2-2-2」を参照)も、同様に、上記相違点3に係る本件発明3の構成を備えるものとなっているところ、引用文献2(甲第1号証)に記載された発明を主たる発明としても、当該主たる発明は、上記相違点3に係る本件発明3の構成を備えていないこと(特に、引用文献2の図9において、座席選択手段を備える別々の画面を切り換えることが記載されていないことを参照。)が明らかであることから、上記相違点3が存在することになり、本件発明1?4は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
また、上記第4で述べたとおり、引用文献1(甲第2号証)にも、上記相違点3に係る本件発明3の構成は記載されていないから、上記の引用文献2(甲第1号証)に記載された発明に引用文献1(甲第2号証)に記載された技術事項を適用してみても、上記相違点3に係る本件発明3の構成に至ることはない。
そうすると、本件発明1?4は、引用文献2(甲第1号証)に記載された発明及び引用文献1(甲第2号証)に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論の通り決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用客の注文を管理する、オーダーエントリーシステムであって、
従業員による、利用客の注文内容と席の情報の入力を受け付ける注文入力端末と、
前記注文入力端末を介して受け付けた注文を管理する注文管理サーバと、を備え、
前記注文入力端末は、
第1座席選択画面において、前記従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を前記注文管理サーバに送信する送信部と、を備え、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有しない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、オーダーエントリーシステム。
【請求項2】
前記送信部は、
前記席の選択入力および前記注文内容の入力の順序に関わらず、両方の入力を受けた後、前記注文管理サーバに入力された情報を一括して送信する、請求項1に記載のオーダーエントリーシステム。
【請求項3】
利用客の注文を受け付ける注文入力端末であって、
第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を注文管理サーバに送信する送信部と、を備え、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有しない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、注文入力端末。
【請求項4】
利用客の注文を受け付けるコンピュータを、
第1座席選択画面において、従業員による利用客の席の選択入力を受け付けた後、注文入力画面において、前記従業員による利用客の注文内容の入力を受け付ける画面制御部と、
入力された席の情報および注文内容の情報を注文管理サーバに送信する送信部と、して機能させ、
前記第1座席選択画面は、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段と、前記従業員による席の選択入力を後回しにして先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有し、
前記画面制御部は、
前記操作手段を介して前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付けた場合には、前記注文入力画面において利用客の注文内容の入力を受け付けた後、前記利用客の席の情報を入力するための座席選択手段を有する第2座席選択画面であって、前記先に注文入力を行う旨の指示を受け付ける操作手段を有しない前記第2座席選択画面において利用客の席の選択入力を受け付ける、プログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-12-17 
出願番号 特願2017-153150(P2017-153150)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G07G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
出口 昌哉
登録日 2018-05-18 
登録番号 特許第6338752号(P6338752)
権利者 株式会社リクルート
発明の名称 オーダーエントリーシステム、注文入力端末およびプログラム  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 稲葉 良幸  

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