ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C09K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09K 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C09K |
---|---|
管理番号 | 1359569 |
異議申立番号 | 異議2018-700886 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-11-06 |
確定日 | 2019-11-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6321315号発明「シール材およびその製造方法ならびにシール材用コーティング組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6321315号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?10、21〕、11及び〔12?20〕について訂正することを認める。 特許第6321315号の請求項1、4?14及び18?20に係る特許を維持する。 特許第6321315号の請求項2?3、15?17及び21に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6321315号の請求項1?21に係る特許についての出願は、平成29年9月6日〔優先権主張:平成28年9月12日(JP)日本)〕に特願2018-502282号として特許出願されたものであって、平成30年4月13日に特許権の設定登録がされ、同年5月9日にその特許掲載公報が発行され、その請求項1?21に係る発明の特許に対し、同年11月6日に西村竜平(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。 平成31年 1月21日付け 取消理由通知 同年 3月25日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 3月29日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 4月24日 意見書(特許異議申立人) 令和元年 5月22日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 7月26日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 7月31日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 9月 4日 意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の適否 1.訂正請求の趣旨及び内容 平成31年3月25日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされるところ、 令和元年7月26日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6321315号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?21について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?18のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1に「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および 前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂およびその他の樹脂を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂および/またはシリコーン樹脂を含むことを特徴とするシール材。」とあるのを 訂正後の請求項1で「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および 前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とするシール材。」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2?10、21も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 訂正前の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4に「請求項1?3のいずれかに記載のシール材。」とあるのを、 訂正後の請求項4で「請求項1に記載のシール材。」に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項6に「請求項1?5のいずれかに記載のシール材。」とあるのを、 訂正後の請求項6で「請求項1、4および5のいずれかに記載のシール材。」に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項7に「請求項3?6のいずれかに記載のシール材。」とあるのを、 訂正後の請求項7で「請求項1、4?6のいずれかに記載のシール材。」に訂正する。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項8に「請求項1?7のいずれかに記載のシール材。」とあるのを、 訂正後の請求項8で「請求項1、4?7のいずれかに記載のシール材。」に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項9に「請求項1?8のいずれかに記載のシール材。」とあるのを、 訂正後の請求項9で「請求項1、4?8のいずれかに記載のシール材。」に訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の請求項10に「請求項1?9のいずれかに記載のシール材。」とあるのを、 訂正後の請求項10で「請求項1、4?9のいずれかに記載のシール材。」に訂正する。 (10)訂正事項10 訂正前の請求項21を削除する。 (11)訂正事項11 訂正前の請求項11に「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材の表面の少なくとも一部に、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体をコーティングすることを特徴とするシール材の製造方法。」とあるのを 訂正後の請求項11で「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材の表面の少なくとも一部に、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する水性分散体をコーティングすることを特徴とするシール材の製造方法。」に訂正する。 (12)訂正事項12 訂正前の請求項12に「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール材のためのコーティング組成物であって、 不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有する水性分散体であることを特徴とするシール材用コーティング組成物。」とあるのを 訂正後の請求項12で「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール材のためのコーティング組成物であって、 不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂、架橋剤および水性媒体を含有する水性分散体であり、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とするシール材用コーティング組成物。」に訂正する。(請求項12を引用する請求項13?20も同様に訂正する。) (13)訂正事項13 訂正前の請求項15を削除する。 (14)訂正事項14 訂正前の請求項16を削除する。 (15)訂正事項15 訂正前の請求項17を削除する。 (16)訂正事項16 訂正前の請求項18に「請求項15?17のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。」とあるのを、 訂正後の請求項18で「請求項12?14のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。」に訂正する。 (17)訂正事項17 訂正前の請求項19に「請求項15?18のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。」とあるのを、 訂正後の請求項19で「請求項12?14、18のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。」に訂正する。 (18)訂正事項18 訂正前の請求項20に「請求項12?19のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。」とあるのを、 訂正後の請求項20で「請求項12?14、18?19のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。」に訂正する。 (19)一群の請求項について 訂正前の請求項1?10及び21について、その請求項2?10及び21は何れも請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?10及び21に対応する訂正後の請求項1?10及び21は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 また、訂正前の請求項12?20について、その請求項13?20は何れも請求項12を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項12?20に対応する訂正後の請求項12?20は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 なお、訂正前の請求項11について、その請求項11を引用する他の請求項はなく、一群の請求項はない。 2.訂正事項1?18の適否 (1)訂正事項1 ア.訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「酸変性ポリオレフィン樹脂」との記載部分を「酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」との記載に改めることにより、訂正前の「酸変性ポリオレフィン樹脂」の範囲から「塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含」むものを削除して、その特許請求の範囲を減縮するとともに、 訂正前の請求項1の「酸変性ポリオレフィン樹脂およびその他の樹脂を含有する皮膜」との記載部分を「酸変性ポリオレフィン樹脂…、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜」との記載に改めることにより、訂正前の「皮膜」の範囲をさらに「架橋剤」を含有するものに限定するとともに、訂正前の請求項1に「前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する」との記載を付加することにより、その「架橋剤」を「カルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する」ものに限定して、その特許請求の範囲を減縮し、 訂正前の請求項1の「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂および/またはシリコーン樹脂を含む」との記載部分を「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み」との記載に改めることにより、訂正前の「その他の樹脂」を「ポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含(む)」ものに限定して、その特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項1は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正前の請求項1の「酸変性ポリオレフィン樹脂」を「酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」に改める訂正について、本件特許明細書の段落0028には「酸変性ポリオレフィン樹脂は…塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まないことが好ましい。」との記載があり、 訂正前の請求項1の「酸変性ポリオレフィン樹脂およびその他の樹脂を含有する皮膜」を「酸変性ポリオレフィン樹脂…、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜」に改める訂正について、本件特許明細書の段落0035には「被膜は…その他の樹脂…架橋剤…の両方を含有することがより好ましい。」との記載があり、 訂正前の請求項1に「前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する」との事項を付加する訂正について、本件特許明細書の段落0054には「架橋剤としては…中でも、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)が好ましい。」との記載があり、 訂正前の請求項1の「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂および/またはシリコーン樹脂を含む」を「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み」に改める訂正について、本件特許明細書の段落0046には「ポリウレタン樹脂としては…脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂と脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂の混合物がさら好ましい」との記載があるので、 訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (2)訂正事項2、3及び10 ア.訂正の目的 訂正事項2、3及び10は、訂正前の請求項2、3及び21を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項2、3及び10は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項2、3及び10は、上記ア.に示したように請求項を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (3)訂正事項4?5及び7?9 ア.訂正の目的 訂正事項4?5及び7?9は、訂正前の請求項4、6及び8?10が引用する請求項の選択肢から請求項2及び3を引用する場合のものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項4?5及び7?9は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項4?5及び7?9は、上記ア.に示したように引用する請求項の選択肢を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (4)訂正事項6 ア.訂正の目的 訂正事項6は、訂正前の請求項1を引用する請求項3に記載された「皮膜が、さらに架橋剤を含有する」という事項が訂正後の請求項1に盛り込まれると同時に請求項2及び3が削除されたことにともない、訂正前の請求項1又は2を引用する請求項3及び請求項4?6を引用する請求項7の記載形式を、訂正後の請求項1及び請求項4?6を引用するものに整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項6は、訂正前の請求項1を引用する請求項3に記載された「皮膜が、さらに架橋剤を含有する」という事項が訂正後の請求項1に盛り込まれているから、訂正前の請求項3を引用する部分を訂正後の請求項1を引用する記載形式に変更しても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項6は、訂正前の請求項1又は2を引用する請求項3及び請求項4?6を引用する請求項7の記載形式を、訂正後の請求項1及び請求項4?6を引用するものに整理するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (5)訂正事項11 ア.訂正の目的 訂正事項11は、訂正前の請求項11の「酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体」との記載部分を「酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する水性分散体」との記載に改めることにより、訂正前の「水性分散体」の範囲を限定して、その特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項11は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正前の請求項11の「酸変性ポリオレフィン樹脂」を「酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」に改める訂正について、本件特許明細書の段落0028には「酸変性ポリオレフィン樹脂は…塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まないことが好ましい。」との記載があり、 訂正前の請求項11の「水性分散体」を「その他の樹脂および架橋剤を含有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する」ものに改める訂正について、本件特許明細書の段落0035には「被膜は…その他の樹脂…架橋剤…の両方を含有することがより好ましい。」との記載があり、同段落0054には「架橋剤としては…中でも、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)が好ましい。」との記載があり、同段落0046には「ポリウレタン樹脂としては…脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂と脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂の混合物がさら好ましい」との記載があるので、 訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (6)訂正事項12 ア.訂正の目的 訂正事項12は、訂正前の請求項12の「酸変性ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有する水性分散体である」との記載部分を「酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂、架橋剤および水性媒体を含有する水性分散体であり、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する」との記載に改めることにより、訂正前の「水性分散体」の範囲を限定して、その特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項12は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正前の請求項12の「酸変性ポリオレフィン樹脂」を「酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」に改める訂正について、本件特許明細書の段落0028には「酸変性ポリオレフィン樹脂は…塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まないことが好ましい。」との記載があり、 訂正前の請求項12の「水性分散体」を「その他の樹脂」と「架橋剤」をさらに含有するものに限定して「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する」ものに限定する訂正について、本件特許明細書の段落0035には「被膜は…その他の樹脂…架橋剤…の両方を含有することがより好ましい。」との記載があり、同段落0054には「架橋剤としては…中でも、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)が好ましい。」との記載があり、同段落0046には「ポリウレタン樹脂としては…脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂と脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂の混合物がさら好ましい」との記載があるので、 訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (7)訂正事項13?15 ア.訂正の目的 訂正事項13?15は、訂正前の請求項15?17を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項13?15は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項13?15は、上記ア.に示したように請求項を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (8)訂正事項16及び17 ア.訂正の目的 訂正事項16は、訂正前の請求項12?14を引用する請求項15に記載された「前記シール材用コーティング組成物がさらに架橋剤および/またはその他の樹脂を含有する」という事項が訂正後の請求項12に「架橋剤」と「その他の樹脂」の両方を含むように減縮された形で盛り込まれると同時に請求項15?17が削除されたことにともない、訂正前の請求項12?14を引用する請求項15(並びに請求項15を引用する請求項16及び17)を引用する請求項18の記載形式を、訂正後の請求項12?14を引用するものに整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項17は、同様に、訂正前の請求項12?14を引用する請求項15(及び請求項16?17)並びに18を引用する請求項19の記載形式を、訂正後の請求項12?14及び18を引用するものに整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項16及び17は、訂正前の請求項12?14を引用する請求項15に記載された「前記シール材用コーティング組成物がさらに架橋剤および/またはその他の樹脂を含有する」という事項が訂正後の請求項12に「架橋剤」と「その他の樹脂」の両方を含むように限定された形で盛り込まれているから、訂正前の請求項15を引用する部分を訂正後の請求項12及び請求項12を引用する請求項13?14を引用する記載形式に変更しても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項16は、訂正前の請求項12?14を引用する請求項15?17を引用する請求項18の記載形式を、訂正後の請求項12?14を引用するものに整理するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 また、訂正事項17は、訂正前の請求項12?14を引用する請求項15?18を引用する請求項19の記載形式を、訂正後の請求項12?14及び18を引用するものに整理するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (9)訂正事項18 ア.訂正の目的 訂正事項18は、訂正前の請求項20が引用する請求項の選択肢から請求項15?17を引用する場合のものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ.拡張又は変更の存否 訂正事項18は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ.新規事項の有無 訂正事項18は、上記ア.に示したように引用する請求項の選択肢を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 3.訂正の適否のまとめ 以上総括するに、訂正事項1?18による本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?10、21〕、11及び〔12?20〕について訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正により訂正された請求項1?21に係る発明(以下「本1発明」?「本21発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および 前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とするシール材。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】前記酸変性ポリオレフィン樹脂が共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することを特徴とする請求項1に記載のシール材。 【請求項5】前記(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が前記酸変性ポリオレフィン樹脂の1?45質量%であることを特徴とする請求項4に記載のシール材。 【請求項6】前記その他の樹脂の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記その他の樹脂の総和100質量%に対して、1?99質量%であることを特徴とする請求項1、4および5のいずれかに記載のシール材。 【請求項7】前記架橋剤の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記架橋剤と前記その他樹脂の総和100質量%に対して、0.2?30質量%であることを特徴とする請求項1、4?6のいずれかに記載のシール材。 【請求項8】前記皮膜が、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体のコーティング皮膜であることを特徴とする請求項1、4?7のいずれかに記載のシール材。 【請求項9】前記シール材が車両用シール材であることを特徴とする請求項1、4?8のいずれかに記載のシール材。 【請求項10】前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、炭素数2?4のアルケンから選ばれる1種以上のモノマー、およびアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはそれらの混合物から選ばれる1種以上のモノマーを共重合成分として含む、請求項1、4?9のいずれかに記載のシール材。 【請求項11】エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材の表面の少なくとも一部に、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する水性分散体をコーティングすることを特徴とするシール材の製造方法。 【請求項12】エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール材のためのコーティング組成物であって、 不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂、架橋剤および水性媒体を含有する水性分散体であり、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とするシール材用コーティング組成物。 【請求項14】前記(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が前記酸変性ポリオレフィン樹脂の1?45質量%であることを特徴とする請求項13に記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項15】(削除) 【請求項16】(削除) 。 【請求項17】(削除) 【請求項18】前記その他の樹脂成分の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記その他の樹脂の総和100質量%に対して、1?99質量%であることを特徴とする請求項12?14のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項19】前記架橋剤の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記架橋剤と前記その他樹脂の総和100質量%に対して、0.2?30質量%であることを特徴とする請求項12?14、18のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項20】前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、炭素数2?4のアルケンから選ばれる1種以上のモノマー、およびアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはそれらの混合物から選ばれる1種以上のモノマーを共重合成分として含む、請求項12?14、18?19のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項21】(削除) 」 第4 取消理由通知の概要 平成31年1月21日付け及び令和元年5月22日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 〔理由1〕本件特許の請求項1?21に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の甲第1?5号証の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 よって、本件特許の請求項1?21に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。 〔理由2〕本件特許の請求項1?21に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の甲第1?7号証の刊行物に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件特許の請求項1?21に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.引用刊行物及びその記載事項 甲第1号証:特開2005-281468号公報 甲第2号証:特開2001-207106号公報 甲第3号証:特開平5-78680号公報 甲第4号証:特開2011-42698号公報 甲第5号証:特開2009-235289号公報 甲第6号証:特開平8-67726号公報 甲第7号証:国際公開第2015/083721号 周知例A:特開2015-7155号公報 周知例B:特開2016-28133号公報 甲第1号証の刊行物には、次の記載がある。 摘記1a:請求項1 「【請求項1】 (A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分と、 (B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、 (C)メルカプト基含有シラン化合物、および (D)水 をそれぞれ含有することを特徴とする水性コーティング剤組成物。」 摘記1b:段落0009 「【0009】本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、ゴム基材の表面処理剤として、特に発泡あるいは非発泡のEPDMなどのゴム成形体基材へのコーティング剤として、均一塗布性、非粘着性、撥水性および滑り性に優れ、接着性が大幅に改善された被膜を形成し得る水性コーティング剤組成物を提供することを目的とする。」 摘記1c:段落0016 「【0016】実施形態の水性コーティング剤組成物において、(A)成分は被膜形成のベース成分である。主成分である硬化性のポリマーとしては、加熱によりあるいは常温で硬化するものであれば、種類は特に限定されず、硬化型のエマルジョン(水系塗料)に使用されているポリマーを使用することができる。例えば、シリコーン系エラストマーやウレタン系ポリマーなどが挙げられる。」 摘記1d:段落0053?0058及び0065 「【0053】実施例1?3、比較例1?3 表1に示す組成の各成分を同表に示す順に配合して混合し、コーティング剤組成物を調製した。 【0054】なお、表1中、ポリジメチルシロキサンエマルジョン-1は、粘度100,000mPa・sの末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサンを30重量%の割合で含む乳化重合エマルジョンであり、ポリジメチルシロキサンエマルジョン-2は、粘度1,000mPa・sの末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサンを30重量%の割合で含む機械乳化エマルジョンである。 【0055】また、ポリメチルハイドロジェンシロキサンエマルジョン-1は、平均式: (CH_(2))_(3)SiO(CH_(3)HSiO)_(50)Si(CH_(3))_(3)で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30重量%の割合で含有する機械乳化エマルジョンであり、メチルハイドロジェンシロキサンエマルジョン-2は、平均式: (CH_(2))_(3)SiO(CH_(3)HSiO)_(40){(CH_(3))_(2)SiO}_(10)Si(CH_(3))_(3)で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30重量%の割合で含有する機械乳化エマルジョンである。 【0056】また、非水溶性アミノ基含有ポリシロキサンは、平均式; {H_(2)N(CH_(2))_(2)NH(CH_(2))_(3)}SiO[{(CH_(3))_(2)SiO}_(15)OH]_(3) で表されるアミノ基含有ポリシロキサンを30重量%の割合で含有する乳化重合エマルジョンである。 【0057】さらに、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンエマルジョンは、無水マレイン酸含有量7重量%、塩素含有量15重量%、分子量約40,000の無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンを27重量%含有するエマルジョンであり、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィンエマルジョンは、無水マレイン酸含有量8重量%、アクリル含有量18重量%、分子量約50,000の無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンを27重量%含有するエマルジョンである。 【0058】次いで、得られたコーティング剤組成物を、非発泡EPDMゴム(以下、ソリッドゴムと示す。)シートおよび発泡EPDMゴム(以下、発泡ゴムと示す。)シートの表面に、スプレーガンを用いて、硬化被膜の膜厚が10μmになるように塗布した。その後、塗布膜から水を揮散させた後、150℃のオーブンで10分間加熱乾燥させ、硬化被膜を形成した。… 【0065】【表1】 」 摘記1e:段落0066?0067 「【0066】本発明の水性コーティング剤組成物によれば、ゴム、プラスチックから成る基材、特に発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、極めて接着性に優れ、かつ良好な滑り性、非粘着性、撥水性などを有する被膜を形成することができる。また、この被膜は、摩擦係数が低く耐摩耗性に優れている。 【0067】したがって、本発明のコーティング剤組成物は、EPDMゴムが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、プリンターブレード、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。」 摘記1f:段落0005及び0034 「【0005】水系エマルジョンタイプのコーティング剤としては、脱水素縮合タイプのシリコーンを含むエマルジョンに、特定の接着性(密着性)向上成分(アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、カルボン酸など)を配合したコーティング剤が提案されている。(特許文献1参照)また、架橋剤成分としてオルガノトリアルコキシシランを有し、密着性向上成分としてアミド基およびカルボキシル基含有オルガノトリアルコキシシラン、エポキシ基含有トリアルコキシシランをそれぞれ含有する脱アルコール縮合タイプのコーティング剤が提案されている。(特許文献2参照)… 【0034】実施形態に使用される(C)メルカプト基含有シラン化合物は、本発明のコーティング剤組成物から得られる被膜の接着性を向上させる成分である。この(C)メルカプト基含有シラン化合物を前記(B)成分と併用することにより、EPDMのような難接着性のゴム基材に対する接着性を大幅に高めることができ、表面処理剤乃至コーティング剤として使用することが可能なゴム基材の適用範囲を広げることができる。このような(C)メルカプト基含有シラン化合物としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。」 甲第2号証の刊行物には、次の記載がある。 摘記2a:請求項3 「【請求項3】硬化型水性エマルジョン塗料の固形分100重量部に対し、反応基として無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンの水性エマルジョンを固形分で1?30重量部配合した水性塗料組成物の被膜を表面に施したことを特徴とする自動車用ウエザーストリップ。」 摘記2b:段落0011 「【0011】【発明の実施の形態】本発明の一つの特徴は、水性塗料組成物のベースとして硬化型水性エマルジョン塗料を用いる点である。硬化型水性エマルジョン塗料としては、その種類はとくに限定されるものではなく、従来から使用されている通常の硬化型水性エマルジョン塗料を使用することができる。特に、アルコール縮合硬化型シリコーン系水性エマルジョン塗料や、ブロックイソシアネート、メラミン等で硬化させるウレタン系水性エマルジョン塗料を使用することが好ましい。」 摘記2c:段落0013 「【0013】無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンとしては、分子量が10,000?200,000で、塩素含有量が5?35重量%で、無水マレイン酸基含有量が0.5?25重量%である塩素化ポリオレフィンが好ましい。」 摘記2d:段落0017?0018 「【0017】(実施例1)硬化型ウレタン系水性エマルジョン塗料を塗料ベースとし、この塗料ベースの固形分100.0重量部に対し、無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンの水性エマルジョンを固形分で25.0重量部配合して水性塗料組成物を調製した。 【0018】(実施例2)硬化型シリコーン系水性エマルジョン塗料を塗料ベースとし、この塗料ベースの固形分100.0重量部に対し、無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンの水性エマルジョンを固形分で25.0重量部配合して水性塗料組成物を調製した。」 摘記2e:段落0026 「【0026】 【発明の効果】以上説明したように本発明の水性塗料組成物は、コロナ放電処理やプライマー処理などの前処理を行わなくてもEPDMゴムとの密着性が良好でかつ耐摩耗性に優れており、自動車用ウエザーストリップ用塗料として最適である。」 甲第3号証の刊行物には、次の記載がある。 摘記3a:請求項1 「【請求項1】ポリオレフィン系樹脂からなる薄板状の芯材と、該芯材表面に設けられた摺接部材とから構成される自動車用ウェザーストリップであって、該摺接部材の少なくとも窓ガラスに接触し得る部分が、変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層に積層された、超高分子量ポリオレフィン組成物および滑性樹脂からなる滑性樹脂層からなり、 該超高分子量ポリオレフィン組成物が、 (A)極限粘度[η]が6dl/g以上の超高分子量ポリオレフィン90?10重量部と、 (B)極限粘度[η]が0.1?5dl/gのポリオレフィン10?90重量部とを含む組成物からなり、かつ、 該超高分子量ポリオレフィン(A)および/またはポリオレフィン(B)が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の変性用単量体(C)で変性されている超高分子量ポリオレフィン組成物であり、 該滑性樹脂が、 ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる滑性樹脂であることを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。」 摘記3b:段落0091?0095及び0097 「【0091】【実施例1】エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム[エチレン含有量70モル%、ヨウ素価12、ムーニー粘度ML_(1+4)(100℃ )120]75重量部と、ポリプロピレン[MFR13g/10分(ASTM D 1238-65T、230℃)、密度0.91g/cm^(3)]25重量部とを、バンバリーミキサーを用いて窒素雰囲気中、180℃で5分間混練した後、この混練物をロールに通してシート状とし、シートカッターで裁断して角ペレットを製造した。 【0092】この角ペレットに、無水マレイン酸0.5重量部と、ジビニルベンゼン0.5重量部と、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン0.3重量部を添加してヘンシェルミキサーで攪拌混合した。 【0093】次いで、この混合物を、L/D=30、スクリュー径50mmの一軸押出機を用いて窒素雰囲気下に220℃の温度で押出して、変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのペレットを得た。 【0094】得られた変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのゲル含量は、上記した方法により求めたところ、97重量%であった。この変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのペレット、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が21dl/gの超高分子量ポリエチレン25重量%と、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1.5dl/gの低分子量ポリエチレン75重量%とからなる超高分子量ポリエチレン組成物[無水マレイン酸含有率:1重量%、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]:6.4dl/g、密度:0.965g/cm^(3)]20重量部と、6-ナイロン[商品名アミランCM-1007、東レ(株)製]80重量部とをあらかじめヘンシェルミキサーで混合して得た混合物およびフィラー入りポリプロピレン[MFR:2g/10分、密度:1.14g/cm^(3)、タルク30重量%含有]を230℃の温度で三層共押出成形してフィラー入りポリプロピレン芯材、基体層としての変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層および表面材層としての滑性樹脂層を形成し、図1に示すような自動車用ウェザーストリップを得た。 【0095】得られた自動車用ウェザーストリップは、厚み2mm、幅25mm、長さ700mmの芯材と、厚み2.5mm、幅20mm、長さ700mmの変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層と、厚み50μm、幅20mm、長さ700mmの滑性樹脂層とからなっていた。… 【0097】【実施例2】実施例1において、6-ナイロンの代わりに、ポリウレタン樹脂[日本ポリウレタン工業(株)製、ポリウレタンP26SRNAT]を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。得られた自動車用ウェザーストリップは、窓ガラス上下繰返し試験50,000回に耐えた。」 甲第4号証の刊行物には、次の記載がある。 摘記4a:請求項1 「【請求項1】 (A)(a)自己架橋性を有するアミノ基含有ポリオルガノシロキサンと、(b)塩素化ポリオレフィンと、(c)水分散性ポリウレタン樹脂をそれぞれ含有する水系エマルジョンと、 (B)前記(A)水系エマルジョンに混合・分散されたゴム状弾性体からなる球状微粒子 を含むことを特徴とするコーティング剤組成物。」 摘記4b:段落0011 「【0011】本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、基材表面の処理剤として、特にEPDMやTPOなどのモールド成形体への水系コーティング剤として、保存安定性、均一塗布性、非粘着性、撥水性、可使時間、滑り性に優れ、特に基材に対する密着性(接着性)および耐摩耗性が改善されたコーティング剤を提供することを目的とする。また、近年重要視されている金属塗装面への摩擦傷が防止され、さらに水濡れ状態でもガラスとの擦れにより鳴き音を生じないコーティング剤を提供することを目的とする。」 摘記4c:段落0028?0031 「【0028】本発明の実施形態に使用される(c)成分である水分散性ポリウレタン樹脂は、…アイオノマー型ポリウレタン樹脂の水分散体が好ましい。 【0029】アイオノマー型ポリウレタン樹脂の水分散体は、公知の方法で得ることができる。例えば、(1)親水性基含有化合物と、その他の活性水素含有化合物、およびポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基含有ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液または有機溶剤分散液を、水中に乳化してアイオノマー樹脂を得る方法…などが挙げられる。 【0030】ここで、親水性基含有化合物としては、…ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素を有するポリオキシエチレングリコールまたはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体グリコール等が挙げられる。その他の活性水素含有化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等の高分子量化合物、グリセリン、トリメチロールプロパンに代表されるポリオキシ化合物…等の低分子量化合物等が挙げられる。 【0031】ポリイソシアネートとしては、例えば、…フェニレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート…等が挙げられる。」 摘記4d:段落0038 「【0038】…本発明の実施形態のコーティング剤組成物には、…耐摩耗性を向上させる目的でエポキシ系、メラミン系、イミド系、アミン系、イソシアネート系架橋剤を、それぞれ本発明の趣旨を変えない範囲で添加することができる。」 摘記4e:段落0042 「【0042】したがって、本発明の実施形態のコーティング剤組成物は、EPDMゴムなどが使用される用途、例えば、自動車用ウェザーストリップ、プリンターブレード、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。」 摘記4f:段落0043?0047及び0061 「【0043】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中で「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表す。また、粘度などの物性値は、全て25℃、相対湿度(RH)50%での測定値を示す。 【0044】実施例1?5,比較例1?6 表1に示す各成分を同表に示す組成で配合し、以下に示すようにして均一に撹拌・混合し、コーティング剤組成物を得た。すなわち、まず微粒子状成分(弾性球状微粒子-1、弾性球状微粒子-2、あるいは非弾性球状微粒子)を水と混合して均一に分散させた後、この水分散液を、アミノ基含有シリコーンエマルジョンと塩素化ポリオレフィンエマルジョンおよびポリウレタン樹脂水分散体を混合して得られたエマルジョンに加え、均一に撹拌・混合した。実施例5においては、これにさらにエポキシ系架橋剤を加えて混合した。また比較例6においては、ポリジメチルシロキサンエマルジョンとメチルハイドロジェンシロキサンエマルジョンおよびジブチルスズジラウレートをさらに加えて混合した。 【0045】表1中、アミノ基含有シリコーンエマルジョン-1は、式: {H_(2)N(CH_(2))_(2)NH(CH_(2))_(3)}Si(OH)_(2)O{(CH_(3))_(2)SiO}_(15)H で表されるゲル状被膜形成性を有するアミノ基含有ポリジメチルシロキサンを、30%の割合で含有する乳化重合エマルジョンであり、アミノ基含有シリコーンエマルジョン-2は、式: (CH_(3))_(3)SiO{(CH_(3))_(2)SiO}_(200)Si(CH_(3)){NH(CH_(2))_(2)NH_(2)}OSi(CH_(3))_(3) で表されるアミノ基含有ポリジメチルシロキサンを、30%の割合で含有する機械乳化エマルジョンである。 【0046】塩素化ポリオレフィンエマルジョン-1は、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(無水マレイン酸含有量1.7%、塩素含有量17%、分子量約60,000)を30%含有するエマルジョンであり、塩素化ポリオレフィンエマルジョン-2は、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(無水マレイン酸含有量1.4%、塩素含有量15重量%、分子量約100,000)を30%含有するエマルジョンである。 【0047】ポリウレタン樹脂水分散体-1は、ポリエステル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂を20%含有する水分散体であり、ポリウレタン樹脂水分散体-2は、ポリエーテル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂を30%含有する水分散体である。… 【0061】【表1】 」 甲第5号証の刊行物には、次の記載がある。 摘記5a:請求項1 「【請求項1】水性媒体中に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部と、ポリウレタン樹脂(B)5?40質量部と、脂肪酸アミド(C)5?40質量部と、テルペン系粘着付与剤(D)5?50質量部とを含有するものであることを特徴とする水性分散体。」 摘記5b:段落0002 「【0002】電子部品や自動車部品などの分野において、熱可塑性樹脂エラストマーが使用されている。熱可塑性樹脂エラストマーの中でも特にエチレンプロピレンエラストマーは、耐熱性が良好であり、加工性も容易であるため、自動車の窓枠や電子機器の配線などに多用されている。」 摘記5c:段落0016及び0024 「【0016】酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するポリオレフィン樹脂は、塗膜と基材との密着性、接着性の点から、不飽和カルボン酸成分を0.1?25質量%含有していることが好ましい。この含有割合は、0.5?15質量%であることがより好ましく、1?8質量%であることがさらに好ましく、1?5質量%であることが特に好ましい。… 【0024】本発明に使用可能なポリオレフィン樹脂の具体例としては、アルケマ社製のボンダインシリーズ(品番:HX-8290、TX-8030、HX-8210など)が挙げられる。」 摘記5d:段落0026?0027 「【0026】ポリウレタン樹脂は、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。… 【0027】また、ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族および脂環族の公知のジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。」 摘記5e:段落0035及び0038 「【0035】本発明の水性分散体における水性媒体中には、水以外に、親水性の有機溶剤が含まれていても差し支えない。… 【0038】本発明の水性分散体は、水性接着剤あるいはコーティング材として用いることができる。 本発明の水性分散体は、熱可塑性樹脂基材に塗布後、水性媒体を除去することで、熱可塑性樹脂基材上に良好な接着剤層あるいは塗膜を形成させることができる。」 摘記5f:段落0059 「【0059】【表1】 」 甲第6号証の刊行物には、次の記載がある。 摘記6a:請求項2 「【請求項2】…カルボン酸…を共重合させることによって変性された…変性ポリオレフィン80?10重量部と、…ウレタン樹脂…の20?90重量部を混合…してなることを特徴とする水性樹脂組成物。」 摘記6b:段落0001 「【0001】…本発明は水性樹脂組成物に関するものであるが、主に塗料、プライマー、インキ、接着剤、シーリング剤及び表面処理剤として用いることができる。また本発明の樹脂組成物は用途に応じて水性のアクリル、ポリエステル等の他の水性樹脂、水溶性樹脂と配合して用いることも可能である為、被膜形成材料の改質剤としても利用することができる。中でも特に非極性表面を持つポリオレフィン基材等に対する密着性、可撓性、耐水性に優れた被膜、接着層を形成することができるため、自動車等の部品材料、ポリオレフィンフィルム、ポリオレフィン系成形物等に対する塗料、プライマー、インキ、シーリング剤、接着剤用の樹脂として有用である。」 摘記6c:段落0060、0062及び0065 「【0060】ここに用いられるウレタン樹脂を製造する際に使用される活性水素含有過合物としては高分子ポリオール…が挙げられる。… 【0062】高分子量ポリオールとしてはポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等)や…ポリカーボネートジオール…等が例示される。… 【0065】ここに用いられるウレタン樹脂を製造する際に使用されるポリイソシアネートとしてはエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート及びその三量化物、…キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート…が使用される。」 摘記6d:段落0085 「【0085】本発明の組成物は各種基材に使用することができる。基材としては、鉄、ブリキ、トタン、アルミニウム、亜鉛鋼板、ガラス、瓦、スレート、セラミック等の無機物、木材、紙、天然繊維、合成繊維、布、ゴム(天然ゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム等)、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、変性PPOなど)等に使用されるが、中でもポリオレフィン系基材に対して特に有効である。」 甲第7号証の刊行物には、次の記載がある。 摘記7a:段落0013 「[0013]本発明の水性分散体が含有するポリオレフィン樹脂は…酸変性成分として、不飽和カルボン酸成分を特定量以上含有し、…ポリオレフィン基材との密着性に優れる塗膜が得られ、…基材との密着性、耐水性、耐薬品性、耐湿熱性に優れたものとなる。さらに、…ポリウレタン樹脂を含有する水性分散体から得られる塗膜は、耐薬品性および耐湿熱性が顕著に優れたものとなる。…本発明の水性分散体は、…各種コーティング剤…のバインダー用途として好適である。」 摘記7b:段落0056 「[0056]ポリウレタン樹脂としては、…ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られる高分子を使用することができる。…ポリオール成分としては、…エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類…等が挙げられる。また、…ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族…に属する公知のジイソシアネート類…を用いることができる。」 摘記7c:段落0059 「本発明の水性分散体に添加する架橋剤として…中でも、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物を添加することが好ましい。」 周知例Aには、次の記載がある。 摘記A1:請求項4 「【請求項4】前記成分(C)が、(c1-1)ポリカーボネートポリオールと(c2-1)ジイソシアネートを反応させてなる、ポリカーボネート系ウレタン樹脂である、請求項1?3のいずれかに記載の潤滑被膜用塗料組成物。」 摘記A2:段落0044?0045、0055、0076及び0084 「【0044】ウレタン樹脂の種類は特に限定されるものではないが、(c1)少なくとも1種のポリオールと(c2)少なくとも1種のイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂が好ましい。 【0045】(c1)ポリオールは…ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール…等が挙げられる。ポリオールは…2種以上を併用してもよい。… 【0055】ポリイソシアネートとしては、…ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、…等が挙げられる。… 【0076】基材の材質は…ゴム…等が挙げられる。… 【0084】本発明の潤滑被膜は摺動部材の表面に好適に使用することができる。…ゴム製摺動部材としては、例えば、…ウェザーストリップ、オイルシール、パッキン、ワイパーブレード…等が挙げられる。」 摘記A3:段落0086、0095、0102及び0104 「【0086】[合成例1]撹拌機及び加熱器を備えた反応装置に、ポリカーボネートポリオール(数平均分子量:1,000)0.1molと、ジメチロールプロピオン酸0.2molと、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート0.3molと、ジブチル錫ジラウリレート0.1gと、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)50gとを導入し、撹拌して反応させた。ウレタン化反応終了後、トリエチルアミン0.2molと、メチルアクリレート(アクリル当量=86)30g(0.300mol)と、ヒドロキシブチルアクリレート(アクリル当量=144)30g(0.208mol)とを添加して撹拌した。これを水300gと1,6-ヘキサンジアミン0.1molとの混合溶液に加え、ラジカル重合性樹脂組成物(紫外線硬化性ポリウレタン樹脂分散物)を得た。… 【0095】[潤滑被膜形成]潤滑被膜用塗料組成物を表2及び表3に示す各種基材に膜厚5?100μmとなるようにスプレー塗装した。… 【0102】【表2】 … 【0104】表中の用語の意味は以下のとおりである。 ポリオレフィン樹脂:無水マレイン酸変性1-プロペン-1-ブテン共重合体(固形分30重量%)東洋紡(株)製… エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム:入間川ゴム(株)製EP-5065」 周知例Bには、次の記載がある。 摘記B1:段落0026 「【0026】本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、接着性や水分散性を向上させるなどの目的で塩素化する必要は特になく、環境保全や製造工程簡略化の観点から塩素を含まないことが好ましい。しかしその使用目的において必要とした場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は塩素化されてもかまわない。」 摘記B2:段落0047 「【0047】ポリウレタン樹脂(C)は、接着性や耐内容物性の観点から、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂、ポリエステル型ポリウレタン樹脂が好ましく、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂がより好ましく、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂が特に好ましい。」 摘記B3:段落0059 「【0059】架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤、多価の配位座を有する金属錯体などを用いることができる。具体的には、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、アミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、有機過酸化物などが挙げられる。」 摘記B4:段落0076及び0103 「【0076】本発明の…基材層としては…ゴム…などが挙げられ、本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を塗布できるものであればよい。… 【0103】本発明の…態様としては…シール…など種々挙げられる。」 2.刊行物に記載された発明 (1)甲1発明 摘記1aの「(A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分と、(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、(C)メルカプト基含有シラン化合物、および(D)水をそれぞれ含有することを特徴とする水性コーティング剤組成物。」との記載、 摘記1bの「EPDMなどのゴム成形体基材へのコーティング剤」との記載、 摘記1cの「実施形態の水性コーティング剤組成物において、(A)成分は被膜形成のベース成分である。主成分である硬化性のポリマーとしては、…ウレタン系ポリマーなどが挙げられる。」との記載、 摘記1dの「無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィンエマルジョンは、無水マレイン酸含有量8重量%、アクリル含有量18重量%、分子量約50,000の無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンを27重量%含有するエマルジョンである。」との記載、及び 摘記1eの「本発明のコーティング剤組成物は、EPDMゴムが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、プリンターブレード、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。」との記載からみて、甲第1号証の刊行物には、 『EPDMゴムが使用される自動車用ウェザーストリップ等のゴム部品に、表面処理剤として(A)ウレタン系ポリマーなどの硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分と、(B)無水マレイン酸含有量が8重量%の無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、(C)メルカプト基含有シラン化合物、および(D)水をそれぞれ含有する水性コーティング剤組成物を適用した、自動車用ウェザーストリップ等のゴム部品。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2)甲2発明 摘記2aの「硬化型水性エマルジョン塗料の固形分100重量部に対し、反応基として無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンの水性エマルジョンを固形分で1?30重量部配合した水性塗料組成物の被膜を表面に施したことを特徴とする自動車用ウエザーストリップ。」との記載、 摘記2bの「硬化型水性エマルジョン塗料としては、…アルコール縮合硬化型シリコーン系水性エマルジョン塗料や、ブロックイソシアネート…等で硬化させるウレタン系水性エマルジョン塗料を使用することが好ましい。」との記載、 摘記2cの「無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンとしては、…無水マレイン酸基含有量が0.5?25重量%である塩素化ポリオレフィンが好ましい。」との記載、及び 摘記2eの「本発明の水性塗料組成物は、…EPDMゴムとの密着性が良好でかつ耐摩耗性に優れており、自動車用ウエザーストリップ用塗料として最適である。」との記載からみて、甲第2号証の刊行物には、 『硬化型水性エマルジョン塗料(アルコール縮合硬化型シリコーン系水性エマルジョン塗料や、ブロックイソシアネート等で硬化させるウレタン系水性エマルジョン塗料)の固形分100重量部に対し、反応基として無水マレイン酸基を有する無水マレイン酸基含有量が0.5?25重量%である塩素化ポリオレフィンの水性エマルジョンを固形分で1?30重量部配合した、EPDMゴムとの密着性が良好な自動車用ウエザーストリップ用の水性塗料組成物の被膜を表面に施した、自動車用ウエザーストリップ。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 (3)甲3発明 摘記3aの「芯材表面に設けられた摺接部材とから構成される自動車用ウェザーストリップであって、該摺接部材の少なくとも窓ガラスに接触し得る部分が、変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層に積層された、超高分子量ポリオレフィン組成物および滑性樹脂からなる滑性樹脂層からなり、該超高分子量ポリオレフィン組成物が…不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の変性用単量体(C)で変性されている超高分子量ポリオレフィン組成物であり、該滑性樹脂が…熱可塑性ポリウレタン樹脂…群から選ばれる滑性樹脂であることを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。」との記載、及び 摘記3bの「実施例1…エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム…75重量部と、ポリプロピレン…25重量部とを…混練し…角ペレットを製造し…変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのペレットを得た。…超高分子量ポリエチレン25重量%と…低分子量ポリエチレン75重量%とからなる超高分子量ポリエチレン組成物[無水マレイン酸含有率:1重量%…]20重量部と、6-ナイロン…80重量部とをあらかじめヘンシェルミキサーで混合して得た混合物およびフィラー入りポリプロピレン…を230℃の温度で三層共押出成形してフィラー入りポリプロピレン芯材、基体層としての変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層および表面材層としての滑性樹脂層を形成し、図1に示すような自動車用ウェザーストリップを得た。…得られた自動車用ウェザーストリップは、…厚み2.5mm…の変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層と、厚み50μm…の滑性樹脂層とからなっていた。…実施例2…実施例1において、6-ナイロンの代わりに、ポリウレタン樹脂[…ポリウレタンP26SRNAT]を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。得られた自動車用ウェザーストリップは、窓ガラス上下繰返し試験50,000回に耐えた。」との記載からみて、甲第3号証の刊行物には、実施例2の具体例として、 『エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴムを含む変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層(厚み2.5mm)に積層された、超高分子量ポリオレフィン組成物および滑性樹脂からなる滑性樹脂層(厚み50μm)からなり、該超高分子量ポリオレフィン組成物が不飽和カルボン酸で変性されている超高分子量ポリオレフィン組成物(無水マレイン酸含有率:1重量%)であり、該滑性樹脂が熱可塑性ポリウレタン樹脂(ポリウレタンP26SRNAT)である自動車用ウェザーストリップ。』についての発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 (4)甲4発明 摘記4fの「まず微粒子状成分(弾性球状微粒子-1…)を水と混合して均一に分散させた後、この水分散液を、アミノ基含有シリコーンエマルジョンと塩素化ポリオレフィンエマルジョンおよびポリウレタン樹脂水分散体を混合して得られたエマルジョンに加え、均一に撹拌・混合した。実施例5においては、これにさらにエポキシ系架橋剤を加えて混合した。」との記載及び「表1」の「実施例5」の記載からみて、甲第4号証の刊行物には、 『微粒子状成分(弾性球状微粒子-1)5重量部を水20重量部と混合して均一に分散させた後、この水分散液を、アミノ基含有シリコーンエマルジョン-1(アミノ基含有ポリジメチルシロキサンを30%の割合で含有する乳化重合エマルジョン)15重量部と塩素化ポリオレフィンエマルジョン-1〔無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン(無水マレイン酸含有量1.7%、塩素含有量17%、分子量約60,000)を30%含有するエマルジョン〕40重量部およびポリウレタン樹脂水分散体-1(ポリエステル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂を20%含有する水分散体)20重量部を混合して得られたエマルジョンに加え、さらにエポキシ系架橋剤1重量部を加えて混合したコーティング剤組成物。』についての発明が記載されている。 そして、摘記4eの「本発明の実施形態のコーティング剤組成物は、EPDMゴムなどが使用される…自動車用ウェザーストリップ…等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。」との記載を参酌するとともに、上記「実施例5」のコーティング剤組成物に占める各成分の重量百分率を計算するに、甲第4号証の刊行物には、 『アミノ基含有ポリジメチルシロキサン4.9重量%、無水マレイン酸含有量1.7%の無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン13.2重量%、ポリエステル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂4.4重量%、エポキシ系架橋剤1.1重量%、及び水を含むエマルジョンからなるEPDMゴムなどが使用される自動車用ウェザーストリップ等のゴム部品用のコーティング剤組成物。』についての発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 (5)甲5発明 摘記5aの「水性媒体中に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部と、ポリウレタン樹脂(B)5?40質量部と、脂肪酸アミド(C)5?40質量部と、テルペン系粘着付与剤(D)5?50質量部とを含有するものであることを特徴とする水性分散体。」との記載、 摘記5bの「自動車部品などの分野において…エチレンプロピレンエラストマーは…自動車の窓枠…などに多用されている。」との記載、 摘記5cの「酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するポリオレフィン樹脂は…不飽和カルボン酸成分を0.1?25質量%含有していることが好ましい。この含有割合は…1?5質量%であることが特に好ましい。」との記載、及び 摘記5eの「本発明の水性分散体は、水性接着剤あるいはコーティング材として用いることができる。本発明の水性分散体は、…熱可塑性樹脂基材上に良好な…塗膜を形成させることができる。」との記載からみて、甲第5号証の刊行物には、 『水性媒体中に、不飽和カルボン酸成分を1?5質量%含有している酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部と、ポリウレタン樹脂(B)5?40質量部と、脂肪酸アミド(C)5?40質量部と、テルペン系粘着付与剤(D)5?50質量部とを含有する、自動車の窓枠に用いられるエチレンプロピレンエラストマー製部品上に良好な塗膜を形成させるコーティング材として用いることができる水性分散体。』についての発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているといえる。 3.本件特許の請求項1に係る発明について (1)本1発明と甲1発明との対比・判断 ア.対比 本1発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「自動車用ウェザーストリップ等のゴム部品」は、摘記A3の「エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム」との記載からみて、甲1発明の「EPDMゴム」が本1発明の「エチレン・プロピレン系ゴム」に該当し、本件特許明細書の段落0004の「ウェザーストリップなどの車両用シール材」との記載にある「シール材」についての説明からみて、甲1発明の「自動車用ウェザーストリップ等のゴム部品」が本1発明の「シール材」に該当するので、本1発明の「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材」に相当する。 甲1発明の「ゴム部品に、表面処理剤として…被膜形成成分…を…含有する水性コーティング剤組成物を適用した」は、甲1発明の「水性コーティング剤組成物」は「ゴム部品」の「表面」に「被膜」を「形成」するために「適用」されるものであって、これにより甲1発明のゴム部品(本1発明の「シール材」に相当する)の表面に被膜(本1発明の「皮膜」に相当する)が形成されることから、本1発明の「前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された…皮膜を有し」に相当する。 甲1発明の「(A)ウレタン系ポリマーなどの硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分」は、本1発明の「ポリウレタン樹脂」を含む「その他の樹脂」に相当する。 甲1発明の「(B)無水マレイン酸含有量が8重量%の無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィン」は、本件特許明細書の段落0017の「不飽和カルボン酸成分としては…無水マレイン酸…が好ましく」との記載を参酌するに、本1発明の「不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」に相当する。 甲1発明の「(C)メルカプト基含有シラン化合物」は、摘記1fの「架橋剤成分としてオルガノトリアルコキシシラン…(C)メルカプト基含有シラン化合物は、本発明のコーティング剤組成物から得られる被膜の接着性を向上させる成分である。…γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。」との記載にある「被膜の接着性を向上させる成分」であって、一般にトリアルコキシシラン系のシラン化合物は「架橋剤成分」としての機能を奏するものとして普通に認識されていることから、本1発明の「架橋剤」に相当する。 してみると、本1発明と甲1発明は、両者とも『エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含む、シール材。』という点において一致し、次の相違点(α1)及び(β1)の点において相違する。 (α1)ポリウレタン樹脂が、本1発明は「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むのに対して、甲1発明は「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定されていない点。 (β1)架橋剤が、本1発明は「カルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有」するのに対して、甲1発明は「メルカプト基含有シラン化合物」である点。 イ.判断 (ア)上記(α1)の相違点について 甲第1号証の段落0016(摘記1c)には「主成分である硬化性のポリマーとしては、…例えば、シリコーン系エラストマーやウレタン系ポリマーなどが挙げられる。」との記載があるものの、甲第1号証には「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」という具体的な構成について示唆を含めて記載がない。 甲第2号証の段落0011(摘記2b)には「硬化型水性エマルジョン塗料としては、…特に、アルコール縮合硬化型シリコーン系水性エマルジョン塗料や、ウレタン系水性エマルジョン塗料を使用することが好ましい。」との記載があるものの、甲第2号証には「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」という具体的な構成について示唆を含めて記載がない。 甲第3号証の請求項1(摘記3a)には「滑性樹脂が、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる滑性樹脂である」との記載があり、同段落0097(摘記3b)の「実施例2」では「ポリウレタン樹脂[日本ポリウレタン工業(株)製、ポリウレタンP26SRNAT]を用いた」ことが記載されているものの、甲第3号証には「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」という具体的な構成について示唆を含めて記載がない。 甲第4号証の段落0028?0030(摘記4c)には「(c)成分である水分散性ポリウレタン樹脂」として「ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等の高分子量化合物」等の「親水性基含有化合物」と「ポリイソシアネート」を反応させて得られた「親水性基含有ポリウレタン樹脂」から得られる「アイオノマー型ポリウレタン樹脂の水分散体」を使用できることが記載され、同段落0047及び0061(摘記4f)には「ポリウレタン樹脂水分散体-1(ポリエステル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂を20%含有する水分散体)を用いた実施例1?2及び4?5の具体例と、ポリウレタン樹脂水分散体-2(ポリエーテル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂を30%含有する水分散体)を用いた実施例3の具体例が記載されているものの、甲第4号証には「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の両方を用いることについて示唆を含めて記載がない。 甲第5号証の段落0026(摘記5d)には「ポリウレタン樹脂は、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。」との記載があり、同段落0068及び0080?0081には「商品名:アデカボンタイターHUX-380」という「ポリウレタン樹脂水性分散体:U-1」を用いた実施例1?16の具体例が記載されているものの、甲第5号証には「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の両方を用いることについて示唆を含めて記載がない。 甲第6号証の段落0060及び0062(摘記6c)には「ウレタン樹脂を製造する際に使用」される「高分子ポリオール」として「ポリエーテルポリオール」や「ポリカーボネートジオール」等が例示されているものの、甲第6号証には「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の両方を用いることについて示唆を含めて記載がない。 甲第7号証の段落0056には「ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分」として「ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類などの高分子量ジオール」等が記載されているものの、甲第7号証には「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の両方を用いることについて示唆を含めて記載がない。 周知例Aの段落0044?0045(摘記A2)には「ウレタン樹脂の種類は…(c1)少なくとも1種のポリオールと(c2)少なくとも1種のイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂が好ましい。…(c1)ポリオールは…ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール…等が挙げられる。ポリオールは…2種以上を併用してもよい。」との記載があるものの、同段落0086及び0102(摘記A3)の実施例1?5の具体例は「ポリカーボネートポリオール」を用いた合成例1の「紫外線硬化性ポリウレタン樹脂分散物」が用いられており、周知例Aには「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の両方を用いた実施例の記載がない。 周知例Bの段落0047(摘記B2)には「ポリウレタン樹脂(C)は、…ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂がより好ましく、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂が特に好ましい。」との記載があるものの、周知例Bには「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の両方を用いることについて示唆を含めて記載がない。 してみると、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用した具体例の記載がないので、上記(α1)の相違点に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 (イ)本1発明の効果について 本件特許明細書の段落0121の表3「 」には、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体の組成における「その他の樹脂」として「(8)PC55:脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「(7)2260NE:脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類のポリウレタン樹脂を用い、架橋剤として「(4)BI200:ブロックイソシアネート系架橋剤」を用いたもの(実施例20)と「(5)E-02::カルボジイミド系架橋剤」を用いたもの(実施例21)が記載され、 同段落0129には「特に、実施例18?21では、皮膜が架橋剤およびその他の樹脂の両者を含有することで、撥水性およびその凍結での性能保持性がさらに向上することが確認できた。」との記載がなされ、 同段落0123の表5「 」には、ポリウレタン樹脂を2種類併用した実施例20及び21の方が、ポリウレタン樹脂を1種類しか用いていない実施例18?19に比して、その「凍結処理後(凍結での性能保持性)」の「撥水性」の項目で顕著に優れた効果を発揮し得たことが示されている。 してみると、本1発明は、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することで「撥水性およびその凍結での性能保持性がさらに向上する」という格別の効果が得られているといえるので、上記(α1)の相違点が実質的な差異ではないとはいえない。 そして、この2種類を併用することの効果については、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物に、示唆を含めて記載がなく、当該効果を当業者が容易に予測し得るといえる根拠は見当たらない。 (ウ)まとめ 以上のとおり、上記(α1)の相違点が実質的な差異ではないとはいえないので、本1発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとはいえない。 そして、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用した具体例の記載がなく、その併用による効果について示唆を含めて記載がないので、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、上記(α1)の相違点に係る構成及び効果を当業者が容易に想到できるとはいえない。 したがって、上記(β1)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 ウ.特許異議申立人の主張について 令和元年9月4日付けの意見書の第4頁において、特許異議申立人は、令和元年5月22日付けの取消理由通知書の第33頁第30?35行での指摘に対し、特許権者は何ら対応を行っておらず、本1発明の全てに顕著な効果があるとはいえないという旨の主張をしている。 しかしながら、訂正後の本1発明は、その「架橋剤」の種類が「カルボジイミド系架橋剤」又は「ブロックイソシアネート系架橋剤」に特定され、その「ポリウレタン樹脂」の種類が「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定される対応がなされており、このように特定された本1発明のものが顕著な効果を奏することは、本件特許明細書の実施例20及び21の実験データにより裏付けられているので、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 また、同意見書の第3頁において、特許異議申立人は、訂正後の本1発明の効果を裏付ける実施例は僅か2例しかなく、実施例20及び21の「PC55」等の特定の製品において得られた効果が、本1発明の「カルボジイミド系架橋剤」等の全般において同様に達成できるとはいえない旨の主張している。 しかしながら、例えば「カルボジイミド系架橋剤」は「カルボジイミド系」の架橋剤として共通の化学構造と物性を有しているものであり、当該「PC55」という製品名の「カルボジイミド系架橋剤」で達成されている効果が、他の製品名の「カルボジイミド系架橋剤」でも達成できると類推し得ない特段の事情は見当たらないので、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 (2)本1発明と甲2発明との対比・判断 ア.対比 本1発明と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「反応基として無水マレイン酸基を有する無水マレイン酸基含有量が0.5?25重量%である塩素化ポリオレフィンの水性エマルジョン」は、不飽和カルボン酸としての「無水マレイン酸」を0.5?25重量%の範囲で含む酸変性ポリフィン樹脂に相当することから、本1発明の「不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」に対して、両者は「不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂」という点において共通する。 甲2発明の「硬化型水性エマルジョン塗料(アルコール縮合硬化型シリコーン系水性エマルジョン塗料や、ブロックイソシアネート等で硬化させるウレタン系水性エマルジョン塗料)」は、その硬化させる「ブロックイソシアネート等」が本1発明の「ブロックイソシアネート系架橋剤」に該当し、その「ウレタン系水性エマルジョン」が本1発明の「その他の樹脂がポリウレタン樹脂」に該当することから、本1発明の「その他の樹脂および架橋剤」及び「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、…前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する」に相当する。 甲2発明の「…配合した、EPDMゴムとの密着性が良好な自動車用ウエザーストリップ用の水性塗料組成物の被膜を表面に施した、自動車用ウエザーストリップ」は、その「自動車用ウエザーストリップ」が本1発明の「シール材」に該当し、EPDMゴムを素材とした自動車用ウェザーストリップというシール部材の表面に各種成分を配合した水性塗料組成物の被膜を施したものであることから、本1発明の「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された…を含有する皮膜を有し」に相当する。 してみると、本1発明と甲2発明は『エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有するシール材。』という点において一致し、次の相違点(α2)及び(β2)の点において相違する。 (α2)ポリウレタン樹脂が、本1発明においては「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定されているのに対して、甲2発明においては「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定されていない点。 (β2)酸変性ポリオレフィン樹脂が、本1発明においては「(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」とされているのに対して、甲2発明においては「(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」とされていない点。 イ.判断 上記(α2)の相違点について検討する。 上記(1)イ.(ア)において検討したように、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することについて具体的な記載がない。 そして、上記(1)イ.(イ)において検討したように、本1発明は、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することで「撥水性およびその凍結での性能保持性がさらに向上する」という格別の効果が得られているといえる。 してみると、上記(α2)の相違点が実質的な差異ではないとはいえないので、本1発明は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとはいえない。 また、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用した具体例の記載がなく、その併用による効果について示唆を含めて記載がないので、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、上記(α2)の相違点に係る構成及び効果を当業者が容易に想到できるとはいえない。 したがって、上記(β2)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 (3)本1発明と甲3発明との対比・判断 ア.対比 本1発明と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴムを含む変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層(厚み2.5mm)」を含む「自動車用ウェザーストリップ」は、本1発明の「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材」及び「シール材材」に相当する。 甲3発明の「変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層(厚み2.5mm)に積層された…滑性樹脂層(厚み50μm)」は、本1発明の「前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された…皮膜」に相当する。 甲3発明の「該超高分子量ポリオレフィン組成物が不飽和カルボン酸で変性されている超高分子量ポリオレフィン組成物(無水マレイン酸含有率:1重量%)であり」は、本1発明の「不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」に相当する。 甲3発明の「該滑性樹脂が熱可塑性ポリウレタン樹脂(ポリウレタンP26SRNAT)である」は、本1発明の「その他の樹脂」及び「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み」に相当する。 してみると、本1発明と甲3発明は『エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)およびその他の樹脂を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含む、シール材。』という点において一致し、次の相違点(α3)及び(β3)の点において相違する。 (α3)ポリウレタン樹脂が、本1発明においては「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定されているのに対して、甲3発明においては「熱可塑性ポリウレタン樹脂(ポリウレタンP26SRNAT)」である点。 (β3)被膜が、本1発明においては「カルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤」を含む「架橋剤」を含むのに対して、甲3発明においては「架橋剤」を含むとされていない点。 イ.判断 上記(α3)の相違点について検討する。 上記(1)イ.(ア)において検討したように、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することについて具体的な記載がない。 そして、上記(1)イ.(イ)において検討したように、本1発明は、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することで「撥水性およびその凍結での性能保持性がさらに向上する」という格別の効果が得られているといえる。 してみると、上記(α3)の相違点が実質的な差異ではないとはいえないので、本1発明は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとはいえない。 また、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用した具体例の記載がなく、その併用による効果について示唆を含めて記載がないので、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、上記(α3)の相違点に係る構成及び効果を当業者が容易に想到できるとはいえない。 したがって、上記(β3)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 (4)本1発明と甲4発明との対比・判断 ア.対比 本1発明と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「EPDMゴムなどが使用される自動車用ウェザーストリップ等のゴム部品」は、本1発明の「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材」及び「シール材」に相当し、 甲4発明の「ポリエステル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂4.4重量%」は、本1発明の「その他の樹脂」及び「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み」に相当し、 甲4発明の「エポキシ系架橋剤1.1重量%」は、本1発明の「架橋剤」に相当し、 甲4発明の「無水マレイン酸含有量1.7%の無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン13.2重量%」と本1発明の「不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」とは「不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂」という点で共通するので、 本1発明と甲4発明は『エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含む、シール材。』という点において一致し、次の相違点(α4)、(β4)及び(β4’)の点において相違する。 (α4)ポリウレタン樹脂が、本1発明においては「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定されているのに対して、甲4発明においては「ポリエステル骨格を有するアイオノマー型ポリウレタン樹脂」である点。 (β4)架橋剤が、本1発明においては「カルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤」を含むのに対して、甲4発明においては「エポキシ系架橋剤」を含む点。 (β4’)酸変性ポリオレフィン樹脂が、本1発明においては「塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない」とされているのに対して、甲4発明においては「塩素化」された「無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン」である点。 イ.判断 上記(α4)の相違点について検討する。 上記(1)イ.(ア)において検討したように、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することについて具体的な記載がない。 そして、上記(1)イ.(イ)において検討したように、本1発明は、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することで「撥水性およびその凍結での性能保持性がさらに向上する」という格別の効果が得られているといえる。 してみると、上記(α4)の相違点が実質的な差異ではないとはいえないので、本1発明は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとはいえない。 また、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用した具体例の記載がなく、その併用による効果について示唆を含めて記載がないので、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、上記(α4)の相違点に係る構成及び効果を当業者が容易に想到できるとはいえない。 したがって、上記(β4)及び(β4’)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 (5)本1発明と甲5発明との対比・判断 ア.対比 本1発明と甲5発明とを対比する。 甲5発明の「自動車の窓枠に用いられるエチレンプロピレンエラストマー製部品」は、本1発明の「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材」及び「シール材」に相当し、 甲5発明の「不飽和カルボン酸成分を1?5質量%含有している酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部」は、本1発明の「不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)」に相当し、 甲5発明の「ポリウレタン樹脂(B)5?40質量部」は、本1発明の「その他の樹脂」及び「前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み」に相当するので、 本1発明と甲5発明は『エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)およびその他の樹脂を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含む、シール材。』という点において一致し、次の相違点(α5)及び(β5)の点において相違する。 (α5)ポリウレタン樹脂が、本1発明においては「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定されているのに対して、甲5発明においては「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むものに特定されていない点。 (β5)被膜が、本1発明においては「カルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤」を含む「架橋剤」を含むのに対して、甲5発明においては「架橋剤」を含むとされていない点。 イ.判断 上記(α5)の相違点について検討する。 上記(1)イ.(ア)において検討したように、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することについて具体的な記載がない。 そして、上記(1)イ.(イ)において検討したように、本1発明は、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することで「撥水性およびその凍結での性能保持性がさらに向上する」という格別の効果が得られているといえる。 してみると、上記(α5)の相違点が実質的な差異ではないとはいえないので、本1発明は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとはいえない。 また、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用した具体例の記載がなく、その併用による効果について示唆を含めて記載がないので、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、上記(α5)の相違点に係る構成及び効果を当業者が容易に想到できるとはいえない。 したがって、上記(β5)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 4.本件特許の請求項4?10に係る発明について 本4?本10発明は、本1発明を引用し、さらに限定したものであるから、本1発明の新規性及び進歩性が甲第1?7号証及び周知例A?Bによって否定できない以上、本4?本10発明が、甲第1?5号証に記載された発明であるとはいえず、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本4?本10発明は、甲第1?5号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。 5.本件特許の請求項11及び12に係る発明について 訂正後の本11発明は、次のとおりのものである。 「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材の表面の少なくとも一部に、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する水性分散体をコーティングすることを特徴とするシール材の製造方法。」 また、訂正後の本12発明は、次のとおりのものである。 「エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール材のためのコーティング組成物であって、 不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂、架橋剤および水性媒体を含有する水性分散体であり、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とするシール材用コーティング組成物。」 すなわち、本11及び本12発明は「その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むという事項を発明特定事項として含むものである。 そして、上記3.(1)イ.(ア)?(イ)に示した理由と同様に、本11及び本12発明は、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用することで「撥水性およびその凍結での性能保持性がさらに向上する」という格別の効果が得られているといえるものであるのに対して、甲第1?7号証及び周知例A?Bの刊行物には、ポリウレタン樹脂として「脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂」と「脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂」の2種類を併用した具体例の記載がなく、その併用による効果について示唆を含めて記載がない。 してみると、本11及び本12発明が、甲第1?5号証に記載された発明であるとはいえず、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、本11及び本12発明の「その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含」むという構成を当業者が容易に想到できるとはいえず、その効果を当業者が容易に予測できるともいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本11及び本12発明は、甲第1?5号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとはいえない。 また、本11及び本12発明は、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 6.本件特許の請求項13?14及び18?20に係る発明について 本13?14及び本18?本20発明は、本12発明を引用し、さらに限定したものであるから、本12発明の新規性及び進歩性が甲第1?7号証及び周知例A?Bによって否定できない以上、本13?本14及び本18?本20発明が、甲第1?5号証に記載された発明であるとはいえず、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本13?本14及び本18?本20発明は、甲第1?5号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲第1?7号証及び周知例A?Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。 7.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由1(新規性) 特許異議申立人が主張する申立理由1は、本1、本6、本9及び本19発明は、甲1発明?甲4発明であり、本2及び本21発明は、甲4発明であり、本3、本8、本11、本12、本15、本16、本18及び本20発明は、甲1、甲2又は甲4発明であり、本4及び本5発明は、甲1又は甲3発明であり、本7及び本19発明は、甲1又は甲4発明であり、本13及び本14発明は、甲1発明であり、本17発明は、甲4発明であるから、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に違反するというものである。 そして、申立理由1(新規性)は、上記第4〔理由1〕に示したとおり取消理由通知において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。 (2)申立理由2(新規性) 特許異議申立人が主張する申立理由2は、本2及び本21発明は、甲1発明?甲3発明に対して甲第5?7号証の記載を組合せて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本7及び本19発明は、甲2発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、本17発明は、甲1発明?甲2発明に対して甲第5?7号証の記載を組合せて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に違反するというものである。 そして、申立理由2(進歩性)は、上記第4〔理由2〕に示したとおり取消理由通知において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。 第6 まとめ 以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の請求項1、4?14及び18?20に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、4?14及び18?20に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正前の請求項2?3、15?17及び21は削除されているので、請求項2?3、15?17及び21に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材、および 前記シール部材の表面の少なくとも一部に形成された、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有する皮膜を有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とするシール材。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記酸変性ポリオレフィン樹脂が共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することを特徴とする請求項1に記載のシール材。 【請求項5】 前記(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が前記酸変性ポリオレフィン樹脂の1?45質量%であることを特徴とする請求項4に記載のシール材。 【請求項6】 前記その他の樹脂の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記その他の樹脂の総和100質量%に対して、1?99質量%であることを特徴とする請求項1、4および5のいずれかに記載のシール材。 【請求項7】 前記架橋剤の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記架橋剤と前記その他樹脂の総和100質量%に対して、0.2?30質量%であることを特徴とする請求項1、4?6のいずれかに記載のシール材。 【請求項8】 前記皮膜が、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体のコーティング皮膜であることを特徴とする請求項1、4?7のいずれかに記載のシール材。 【請求項9】 前記シール材が車両用シール材であることを特徴とする請求項1、4?8のいずれかに記載のシール材。 【請求項10】 前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、炭素数2?4のアルケンから選ばれる1種以上のモノマー、およびアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはそれらの混合物から選ばれる1種以上のモノマーを共重合成分として含む、請求項1、4?9のいずれかに記載のシール材。 【請求項11】 エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール部材の表面の少なくとも一部に、不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂および架橋剤を含有し、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有する水性分散体をコーティングすることを特徴とするシール材の製造方法。 【請求項12】 エチレン・プロピレン系ゴムを含有するシール材のためのコーティング組成物であって、 不飽和カルボン酸含有量が0.1?10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない)、その他の樹脂、架橋剤および水性媒体を含有する水性分散体であり、前記その他の樹脂がポリウレタン樹脂を含み、該ポリウレタン樹脂が脂肪族ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂および脂肪族ポリエーテル型ポリウレタン樹脂を含み、前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤またはブロックイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とするシール材用コーティング組成物。 【請求項13】 前記酸変性ポリオレフィン樹脂が共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することを特徴とする請求項12に記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項14】 前記(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が前記酸変性ポリオレフィン樹脂の1?45質量%であることを特徴とする請求項13に記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項15】 (削除) 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 前記その他の樹脂成分の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記その他の樹脂の総和100質量%に対して、1?99質量%であることを特徴とする請求項12?14のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項19】 前記架橋剤の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂と前記架橋剤と前記その他樹脂の総和100質量%に対して、0.2?30質量%であることを特徴とする請求項12?14、18のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項20】 前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、炭素数2?4のアルケンから選ばれる1種以上のモノマー、およびアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはそれらの混合物から選ばれる1種以上のモノマーを共重合成分として含む、請求項12?14、18?19のいずれかに記載のシール材用コーティング組成物。 【請求項21】 (削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-11-08 |
出願番号 | 特願2018-502282(P2018-502282) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C09K)
P 1 651・ 113- YAA (C09K) P 1 651・ 851- YAA (C09K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
天野 宏樹 木村 敏康 |
登録日 | 2018-04-13 |
登録番号 | 特許第6321315号(P6321315) |
権利者 | ユニチカ株式会社 |
発明の名称 | シール材およびその製造方法ならびにシール材用コーティング組成物 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 北原 康廣 |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 北原 康廣 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 鮫島 睦 |