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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06Q
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
管理番号 1359595
異議申立番号 異議2019-700875  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-07 
確定日 2020-02-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6510692号発明「支払代行システム、支払代行方法、端末装置、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6510692号の請求項1?10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6510692号の請求項1?10に係る特許についての出願は,平成30年2月27日に出願したものであって,平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ,令和元年5月8日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和元年11月7日に特許異議申立人笹井栄治は,特許異議申立てを行った。


第2 請求項1?10の特許に係る発明
特許第6510692号の請求項1?10の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?10に記載した事項により特定される次のとおりのものである(以下,それぞれ,「本件発明1」?「本件発明10」という。)。
「 【請求項1】
カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段と,
カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報と,前記購入の代金を示す金額情報と,前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記カード会員の端末から受け付け,前記確証情報の検証の結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し,前記カード情報に基づいて,前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済させる支払代行手段と
を有する,支払代行システム。
【請求項2】
前記支払代行手段は,
前記カード会員の名義で前記振込処理を実行する
請求項1に記載の支払代行システム。
【請求項3】
前記確証情報は,前記購入について前記非加盟店が発行した請求書を前記カード会員の端末で撮像した撮像データである
請求項1又は2に記載の支払代行システム。
【請求項4】
前記支払代行手段は,
前記撮像データから請求金額を読み取り,読み取った前記請求金額と前記金額情報が示す前記代金とが異なる場合,前記検証に失敗したと判断して前記振込処理及び前記カード決済を中止又は中断する
請求項3に記載の支払代行システム。
【請求項5】
前記支払代行手段は,
前記撮像データから前記非加盟店の口座情報を読み取り,読み取った前記口座情報と,
前記カード会員の端末から受け付けた前記口座情報とが異なる場合,前記検証に失敗したと判断して前記振込処理及び前記カード決済を中止又は中断する
請求項3又は4に記載の支払代行システム。
【請求項6】
前記支払代行手段は,
前記検証に失敗したと判断したとき,検証者が利用する表示手段に前記確証情報を表示し,前記検証者による実行操作に応じて,前記振込処理の実行及び前記カード決済を開始する
請求項5に記載の支払代行システム。
【請求項7】
前記支払代行手段は,
前記支払要求に応じて,前記購入を特定するための識別情報を発行し,前記識別情報と前記確証情報とを対応付けて記憶手段に格納し,前記振込処理を実行し及び前記カード決済をさせた後で前記識別情報を前記カード会員の端末に送信し,
前記識別情報を特定した前記確証情報の提示要求を受け付けたとき,前記識別情報に対応する前記確証情報を前記記憶手段から取得して,前記提示要求を送信した端末に,取得した前記確証情報を提示する
請求項1に記載の支払代行システム。
【請求項8】
カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行可能な支払代行システムが,
カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報と,前記購入の代金を示す金額情報と,前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記カード会員の端末から受け付け,前記確証情報の検証結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し,前記カード情報に基づいて,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済する処理を実行する
支払代行方法。
【請求項9】
カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行可能な支払代行システムと通信するカード会員の端末装置であって,
前記カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報であって,前記非加盟店が提示した前記確証情報を画像データとして取り込む撮像手段と,
前記確証情報の画像データと,前記購入の代金を示す金額情報と,前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記支払代行システムに送信する送信手段と,
前記確証情報の検証結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行すると共に,前記カード情報に基づいて,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済する前記支払代行システムから,前記振込処理及び前記カード決済の手続完了の通知を受信する受信手段と
を有する,端末装置。
【請求項10】
カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行可能な支払代行システムと通信するカード会員のコンピュータに,
前記カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報であって前記非加盟店が提示した前記確証情報を画像データとして取り込み,
前記確証情報の画像データと,前記購入の代金を示す金額情報と,前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記支払代行システムに送信し,
前記確証情報の検証結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行すると共に,前記カード情報に基づいて,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済する前記支払代行システムから,前記振込処理及び前記カード決済の手続完了の通知を受信する
処理を実行させる,プログラム。」


第3 申立理由の概要

特許異議申立人笹井栄治(以下,単に「申立人」という。)は,(1)請求項1?10に記載の発明は,記載に不備があるため,特許法36条6項2号の要件を満たさず(以下,「理由1」という。),(2)請求項1?10に記載の発明は,発明の詳細な説明に記載されてないものを含むことから,特許法36条6項1号の要件を満たさず(以下,「理由2」という。),(3)発明の詳細な説明の記載が,請求項1?10に記載の発明を当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていないから,特許法36条4項1号の要件を満たさず(以下,「理由3」という。),(4)主たる証拠として(a)特開2017-91302号公報(以下,「文献1」という。)又は(b)特開2002-150201号公報(以下,「文献2」という。)を提出して,それぞれについて,請求項1?10に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり(以下,それぞれ「理由4-1」「理由4-2」という。),請求項1?10に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。


第4 当審の判断

1 理由1(特許法36条6項2号)について
(1)申立人は,「上記段落[0053]に例示された「非加盟店が発行する請求書など」,段落[0054]に記載された「カード決済システム101側で提供するフォーマットに従って非加盟店が情報を記入した書類など」の情報は,いずれも契約の一方の当事者である「非加盟店」に関し,(請求する旨の)意思を表示する情報とはいえるものの,「カード会員」と「非加盟店」の両当事者の契約意思を表示する情報とはいえないから,請求項1の「確証情報」とは,契約の両当事者の意思を表示する情報と,契約の一方の当事者の意思を表示する情報(「非加盟店が生成する請求書など」の情報)のいずれを意味するかが不明確である。」と主張する(以下,「主張1」という。)。
また,申立人は,「請求項1には「前記確証情報の検証の結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し」と記載されているが,一般に「特定の情報」について「検証」を行う場合,「特定の情報」に含まれる冗長な情報を用いて,当該「特定の情報」のみに基づいて検証を行う場合と,「特定の情報」とは異なる情報と対比することにより検証を行う場合などが考えられるが,請求項1には,確証情報の検証にどのような情報を用いるかや,その情報をどのように得るかも特定されていないから,「前記確証情報」について,どのように検証を行い,その結果を得るかが明確でない。また,このような明確でない「前記確証情報の検証の結果」に応じて,「前記代金を振り込むための振込処理を実行」することも,明確でない。」と主張する(以下,「主張2」という。)。

(2)特許法36条6項2号の要件であるところの特許を受けようとする発明が明確か否かは,特許請求の範囲だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そのため,本願発明に係る特許請求の範囲が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かについて,検討する。

(3)発明の詳細な説明の記載事項(下線は,当審で付与した。)
ア 「【0044】
確証チェック機能111cは,売買契約/役務提供契約61の確証を与える情報(例えば,後述する確証情報113b)をチェックする。確証チェック機能111cによりチェックOKと判定されたとき,上記の振込処理及びカード決済処理が実行される。」

イ 「【0049】
記憶手段113には,会員情報113a,確証情報113b,支払先情報113c,及び請求先情報113dが格納される。」

ウ 「【0053】
再び図4を参照する。確証情報113bは,売買契約/役務提供契約61の確証を与える情報である。確証情報113bとしては,例えば,カード会員が非加盟店で買い物をした際に非加盟店が発行する請求書などがある。後述するように,確証情報113bは,非加盟店が生成する情報であるが,カード会員の利用者端末102からカード決済システム101に提供される情報である。
【0054】
なお,カード決済システム101側で提供するフォーマットに従って非加盟店が情報を記入した書類なども確証情報113bになりうる。例えば,カード決済システム101が書類のフォーマットをインターネット上に公開し,非加盟店が非加盟店端末103で書類のフォーマットをダウンロードして必要事項を記入する仕組みを適用できる。」

エ 「【0057】
確証情報113b,請求先情報113d,及び支払先情報113cは,図6に示すように,互いに関連付けて記憶手段113に格納される。図6は,第1実施形態に係る確証情報,請求先情報,及び支払先情報の一例を示した図である。
【0058】
図6には,確証情報113bが請求書のイメージデータ(以下,請求書画像)である場合が例示されている。図6(A)に示すように,確証情報113b,請求先情報113d,及び支払先情報113cは,例えば,支払代行IDで紐付けられる。支払代行IDは,支払代行サービスの利用毎に付与される識別情報である。
【0059】
図6の例において,支払先情報113cは,代金の振込先となる非加盟店の口座名義人及び銀行口座についての情報を含んでいる。請求先情報113dは,代金の請求先となるカード会員のクレジットカード名義人及びカード番号についての情報を含んでいる。後述するように,これら支払先情報113c及び請求先情報113dは,カード会員の利用者端末102からカード決済システム101に提供される。
【0060】
図6(B)に示した請求書画像は,確証情報113bの一例であり,非加盟店についての情報(例えば,会社名,屋号,代表者名など),請求金額,支払期限,支払内容(品目別の明細など),振込先の口座情報などを含む。後述するように,請求書画像は,例えば,非加盟店が発行した請求書をカード会員が利用者端末102で撮像して生成され,カード決済システム101に送信される。」

オ「【0072】
図7(A)の入力画面には,振込先の情報を入力する欄が表示されている。この例では,振込先についての入力欄として,銀行名,支店名,口座の種類(当座,普通),口座番号,名義人の欄が表示されている。また,支払代行サービスによる振込の実行日(振込日)を指定する入力欄が表示されている。
【0073】
なお,振込先の入力については,非加盟店が発行した請求書画像から自動的に読み込まれるようにしてもよいし,QRコードなどを利用して少なくとも一部の情報(例えば,名義人や口座番号など)が自動的に読み込まれるようにしてもよい。例えば,図6(B)に例示した請求書のように,振込先の情報を含むQRコードが請求書に印字されていれば,カード会員は楽に振込先の情報を入力できるようになる。なお,QRコードをカード会員に提示する方法としては,例えば,非加盟店の店頭に掲示する方法を適用しうる。
【0074】
図7(A)の入力画面には,さらに,カード決済金額が表示されている。このカード決済金額は,支払代行サービスにより非加盟店に支払われる代金に所定の手数料を加えた金額であり,カード決済によりカード会員から徴収される金額である。制御手段123は,代金に応じた手数料(例えば,代金の2?5%)を計算し,計算した手数料と代金との合計額をカード決済金額として表示する。」

カ 「【0080】
記憶手段131には,定型情報131a及び店舗情報131bが格納される。定型情報131aは,請求書などの書類のフォーマットについての情報である。例えば,上述した確証情報113bの元となる書類のフォーマットがカード決済システム101により公開されている場合,非加盟店は,非加盟店端末103を利用してフォーマットをダウンロードし,定型情報131aとして記憶手段131に格納しておいてもよい。」

キ 「【0083】
上記のように,非加盟店端末103は,上述した確証情報113bの元となる請求書などの書類を発行するために非加盟店が利用する端末である。但し,請求書などの書類は手作業で作成することもできる。そのため,上記の非加盟店端末103を利用せずとも非加盟店は第1実施形態の支払代行サービスを利用できる。」

ク 「【0087】
なお,図9の例では,利用者端末102でアプリ121aが既に起動し,カード決済システム101でカード会員の会員認証が成功していることを前提に説明を進める。
【0088】
(S101)カード会員と非加盟店との間で売買契約/役務提供契約61が結ばれると,非加盟店は,非加盟店端末103を利用して請求書を発行する。
【0089】
例えば,非加盟店端末103は,定型情報131aが示す請求書のフォーマットに,店舗情報131bが示す非加盟店についての情報(会社名など)やQRコードなどを記入した請求書をプリンタPRTで印刷する。ここでは,非加盟店の銀行口座についての口座情報を含むQRコードが請求書に印刷されることを前提に説明を進める。なお,QRコードは,例えば,非加盟店の店頭に掲示されていてもよい。
【0090】
(S102)カード会員がアプリ121aのポータル画面から支払代行サービスの項目を選択したとき,利用者端末102は,アプリ121aを介して,サービス利用契約62の有無を確認するための確認要求をカード決済システム101に送信する。
【0091】
(S103)カード決済システム101は,確認要求に応じて,ログイン時に特定したカード会員の情報(カード番号など)から,そのカード会員に対応する会員情報113aのレコードを特定する。そして,カード決済システム101は,特定したレコードの内容を基にサービス利用契約62の有無を確認する。この例では,サービス利用契約62があるため,カード決済システム101は,利用者端末102に対して「契約あり」と応答する。
【0092】
(S104)利用者端末102は,「契約あり」の応答に応じて,アプリ121aの表示画面を支払代行サービス用の入力画面(図7(A)を参照)に遷移する。そして,利用者端末102は,その入力画面に対する入力を受け付ける。ここで,カード会員により代金やカード決済の方法についての情報が入力される。
【0093】
(S105)「撮影」ボタンオブジェクトが押下されたとき,利用者端末102は,撮像機能(撮像手段122)を起動させ,売買契約/役務提供契約61の確証となる請求書の撮影を促すメッセージを表示する。カード会員による撮影操作の後,利用者端末102は,請求書画像を生成し,請求書画像のファイル名を入力画面に表示する。
【0094】
(S106)「読取」ボタンオブジェクトが押下されたとき,利用者端末102は,撮像機能(撮像手段122)を起動させ,QRコードの撮影を促すメッセージを表示する。カード会員による撮影操作の後,利用者端末102は,QRコードから非加盟店の口座情報などを読み取り,読み取った口座情報などを入力画面の入力欄に表示する。
【0095】
なお,口座情報などの振込先についての情報をカード会員が手入力する場合にはS106の処理を省略することができる。
【0096】
(S107)「送信」ボタンオブジェクトが押下されたとき,利用者端末102は,入力画面の入力欄に入力された情報及び請求書画像を含む支払要求をカード決済システム101に送信する。なお,クレジットカードの利用限度額を超える金額が入力されている場合や入力漏れがある場合,利用者端末102は,再入力を促すメッセージを表示してもよい。
【0097】
(S108)カード決済システム101は,利用者端末102から送信された支払要求を受け付け,支払要求から,支払代行サービスを利用してカード会員が支払う代金(以下,支払金額),カード決済の方法,振込先についての情報,及び請求書画像などを抽出する。
【0098】
(S109)カード決済システム101は,支払金額がクレジットカードの利用限度額を超えていないかをチェックする。このとき,カード決済システム101は,振込先となる銀行口座の存在などを確認してもよい。カード決済システム101は,チェックOKの場合にS110以降の処理の開始を許可する。一方,チェックNGの場合,カード決済システム101は,エラーが生じた旨を利用者端末102に通知する。
【0099】
(S110)カード決済システム101は,支払要求に含まれる請求書画像に基づいて,売買契約/役務提供契約61の確証となる請求書のチェックを実行する。請求書のチェックは,例えば,カード決済システム101側の検証者が目視により行うか,カード決済システム101により自動的に行うか,或いは,両者を組み合わせて行う。
【0100】
例えば,カード決済システム101は,請求書画像から請求書に記載された支払金額及び振込先についての情報(口座番号など)を読み取り,支払要求に含まれる支払金額及び振込先についての情報と一致するかを判定する。
【0101】
両者が一致するとき,カード決済システム101は,チェックOKと判定する。両者が不一致の場合,カード決済システム101は,検証者が利用する端末の表示装置に請求書画像を表示し,目視によるチェックを促す。この場合,検証者からチェックOKである旨の入力があったとき,カード決済システム101は,チェックOKと判定する
【0102】
カード決済システム101は,チェックOKの場合にS111以降の処理の開始を許可する。一方,チェックNGの場合,カード決済システム101は,エラーが生じた旨を利用者端末102に通知する。
【0103】
(S111)カード決済システム101は,支払金額に応じた手数料を計算し,計算した手数料と支払金額との合計額を計算する。手数料は,例えば,支払金額の所定割合(例えば,2?5%)に相当する金額に設定される。カード決済システム101は,カード会員のクレジットカードによるカード決済により合計額を徴収するための処理(カード決済処理)を実施する。なお,支払金額の引落は,指定の引落日に実行される。」

ケ 上記ア?クから,発明の詳細な説明には,次の事項が記載されているものである。
確証情報113bは,売買契約/役務提供契約61の確証を与える情報であって,カード会員が非加盟店で買い物をした際に非加盟店が発行する請求書や(【0053】),カード決済システム101側で提供するフォーマットに従って非加盟店が情報を記入した書類などが,確証情報になり得(【0054】),
カード会員と非加盟店との間で売買契約/役務提供契約61が結ばれると,非加盟店は,非加盟店端末103を利用して請求書を発行し(【0088】),非加盟店端末103は,定型情報131aが示す請求書のフォーマットに,店舗情報131bが示す非加盟店についての情報(会社名など)やQRコードなどを記入した請求書をプリンタPRTで印刷し(【0089】),
利用者端末102は,アプリ121aの表示画面を支払代行サービス用の入力画面に遷移し,カード会員により代金やカード決済の方法についての情報が入力され(【0092】),
入力画面には,振込先についての入力欄として,銀行名,支店名,口座の種類(当座,普通),口座番号,名義人の欄が表示され(【0072】),
振込先の入力については,非加盟店が発行した請求書画像から自動的に読み込まれるようにしてもよいし,QRコードなどを利用して少なくとも一部の情報(例えば,名義人や口座番号など)が自動的に読み込まれるようにしてもよく(【0073】),
入力画面には,カード決済金額であって,支払代行サービスにより非加盟店に支払われる代金に所定の手数料を加えた,カード決済によりカード会員から徴収される金額が表示され(【0074】)
利用者端末102の「撮影」ボタンオブジェクトが押下されたとき,利用者端末102は,撮像機能(撮像手段122)を起動させ,売買契約/役務提供契約61の確証となる請求書の撮影を促すメッセージを表示し,カード会員による撮影操作の後,利用者端末102は,請求書画像を生成し,請求書画像のファイル名を入力画面に表示し(【0093】),
請求書画像には,非加盟店についての情報(例えば,会社名,屋号,代表者名など),請求金額,支払期限,支払内容(品目別の明細など),振込先の口座情報などが含まれ(【0060】),
利用者端末102の「送信」ボタンオブジェクトが押下されたとき,利用者端末102は,入力画面の入力欄に入力された情報及び請求書画像を含む支払要求をカード決済システム101に送信し(【0096】),
カード決済システム101は,支払要求に含まれる請求書画像に基づいて,売買契約/役務提供契約61の確証となる請求書のチェックを実行し(【0099】),
カード決済システム101は,請求書画像から請求書に記載された支払金額及び振込先についての情報(口座番号など)を読み取り,支払要求に含まれる支払金額及び振込先についての情報と一致するかを判定し(【0100】),
両者が一致するとき,カード決済システム101は,チェックOKと判定し,不一致の場合,検証者により目視によるチェックを促し(【0101】),チェックNGの場合,カード決済システム101は,エラーが生じた旨を利用者端末102に通知し(【0102】),カード決済システム101は,カード会員のクレジットカードによるカード決済により合計額を徴収するための処理(カード決済処理)を実施する(【0103】)こと。

(4)主張1?2について検討をする。
ア 主張1について
(ア)請求項1には「確証情報」について次のように記載されている。
「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報と,前記購入の代金を示す金額情報と,前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記カード会員の端末から受け付け,前記確証情報の検証の結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し,前記カード情報に基づいて,前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済させる支払代行手段」
請求項1の上記記載から,確証情報は,支払代行手段によって,カード会員の端末から支払要求に含まれる情報として受け付けられるものであると解釈することができる。

(イ)さらに,明細書等の記載を考慮すれば,発明の詳細な説明における,カード会員が,カードの非加盟店より発行された請求書を撮影し,請求書画像をカード決済システム101に送信することは,上記(3)ケのとおり,カード会員が,非加盟店での商品等の購入に対するカード決済のために行うものである。クレジットカードを利用した商取引では,請求書の発行者は,請求内容を確認した上で請求書を発行し,カード会員は,決済前に請求書の請求内容を確認した上で,決済を依頼することが一般的であり,発明の詳細な説明においても,カード会員による請求書の撮影及び撮影した請求書画像のカード決済システム101への送信の前に,カード会員により,発行された請求書の請求内容が確認されることを前提としていることは明らかであるから,請求項1のカードの非加盟店により発行される「確証情報」は,両当事者の意思を表示する情報であることは明らかである。
そうすると,明細書等の記載を考慮すれば,請求項1の「確証情報」の意味は明らかであって,第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。
よって,申立人の主張1は,採用できない。

イ 主張2について
(ア)請求項1の「前記確証情報の検証の結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し」について,これが明確であるか否かについて,明細書等の記載を参照する。

(イ)発明の詳細な説明には,上記(3)ケのとおり,利用者端末102からカード決済システム101に送られた,利用者端末102の入力画面から入力されたカード決済金額及び非加盟店の口座番号等の振込先に関する情報と,請求書画像に含まれる請求金額及び非加盟店の口座情報等の振込先に関する情報との一致を判定する処理の結果,両者が一致するときには,支払金額に応じた手数料を計算するものであり,両者が不一致のときには,カード決済システム101は,エラーが生じた旨利用者端末102に通知することが記載されており,請求書画像についての判定の処理の結果に応じて,カード決済システム101は,カード会員のクレジットカードによるカード決済により合計額を徴収するための処理(カード決済処理)を実施するものである。そして,この請求書画像についての判定の処理の結果に応じて,カード決済システム101が,カード会員のクレジットカードによるカード決済により合計額を徴収するための処理(カード決済処理)を実施する点を,請求項1で「前記確証情報の検証の結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し」とするものであって,このように,請求項1は,「前記確証情報の検証の結果に応じて」とすることで,「確証情報の検証の結果」に「応じて」口座情報が示す口座に代金を振り込むための振込処理を実行することを特定するものであり,明確である。
そうすると,明細書等の記載を考慮すれば,請求項1において,確証情報の検証にどのような情報を用いるかや,その情報をどのようにして得るかを特定する必要はなく,請求項1の当該記載は明確であり,第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。
よって,申立人の主張2は,採用できない。

(5)以上のとおりであるから,本件発明1に係る特許は,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって,本件発明1に係る特許は,明確である。また,本件発明1と同様の記載を含む本件発明8?10係る特許についても,同様の理由で明確であり,本件発明1に従属する本件発明2?7に係る特許も明確である。

2 理由2(特許法36条6項1号),理由3(特許法36条4項1号)について
(1)申立人は,「確証情報」が,契約の両当事者の意思を表示する情報としての「売買契約/役務提供契約の契約書などの情報」を意味するとした場合には,サポート要件を満たさない旨主張し,「確証情報」が,契約の一方の当事者の意思を表示する情報としての「非加盟店が生成する請求書などの情報」を意味するとした場合,実施可能要件を満たさない旨主張する。

(2)ア サポート要件について,特許請求の範囲が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを比較し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により,当業者が当該発明の課題を解決することができると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
そのため,サポート要件について,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを比較し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明であるか否か,また,発明の詳細な説明の記載により,当業者が当該発明の課題を解決することができると認識できる範囲のものであるか否かについて検討をする。

実施可能要件について,特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間にわたり発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,特許請求の範囲に記載された当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。特許法36条4項1号が「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」という実施可能要件を定める趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者がその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,実質において発明が公開されていないことになり,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。
そのため,発明の詳細な説明が,実施可能要件に適合するか否かについて,発明の詳細な説明に,当業者がその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されているか否かとの観点で検討をする。

(3)サポート要件について,請求項1に記載されている「確証情報」は,上記1(4)アのとおり,支払代行手段によって,カード会員の端末から支払要求に含まれる情報として受け付けられるものであり,両当事者の意思を表示する情報であることは明らかであり,発明の詳細な説明に記載されている事項の範囲内のものである。
また,本件発明1は,「上記の事情に鑑みると,カード会員の利便性を高めるためには,非加盟店でもカード決済を利用できる仕組みを実現することに加え,その仕組みの実現にかかるコストを低減する工夫が求められる。また,どのような販売形態を採用する非加盟店でも,その仕組みを容易に導入できるようにする工夫が求められる。」(【0006】)との課題を解決するために,「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与える確証情報と,前記購入の代金を示す金額情報と,前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記カード会員の端末から受け付け,前記確証情報の検証の結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し,前記カード情報に基づいて,前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済させる支払代行手段」を備える構成を採用するものである。
そうすると,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載されており,上記課題を解決できると当業者が認識できる程度に記載されているといえる。

(4)実施可能要件について,上記1(4)アのとおり,発明の詳細な説明の記載を参照すると,請求項1に記載されている「確証情報」は,両当事者の意思を表示する情報であることは明らかであり,その商取引上の意義も理解でき,具体的な使用方法も記載されていることから,発明の詳細な説明に,当業者がその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されている。

(5)以上から,理由2,3についての申立人の主張は採用できない。

(6)よって,本件発明1に係る特許は,発明の詳細な説明に記載された事項であり,本件発明1と同様の記載を含む本件発明8?10係る特許についても,同様の理由で,発明の詳細な説明に記載された事項であり,本件発明1に従属する本件発明2?7に係る特許も発明の詳細な説明に記載された事項である。
また,発明の詳細な説明には,当業者が本件発明1に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており,本件発明1と同様の記載を含む本件発明8?10係る特許,本件発明1に従属する本件発明2?7に係る特許も発明についても,同様の理由で,発明の詳細な説明には,当業者が本件発明2?10に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。

3 理由4-1(特許法29条2項,文献1)について
(1)文献1の記載事項(下線は,当審で付与した。)
ア 「【0001】
本発明は,クレジットカード会社と加盟店契約を締結していない店舗においてクレジットカードでの決済を行うためのクレジットカード決済システム及びクレジットカード決済方法に関する。」

イ「【0022】
[クレジットカード決済システムの構成]
図1は,本発明の実施の形態1に係るクレジットカード決済システム及びその通信先の構成を示すブロック図である。本実施の形態のクレジットカード決済システム1は,図1に示すとおり,カード会社サーバ11,及びそのカード会社サーバ11と専用線101を介して通信可能に接続された銀行サーバ12を備えている。これらのカード会社サーバ11及び銀行サーバ12は,インターネット102とも接続されており,インターネット102を介して外部の装置と通信を行うことができる。
【0023】
利用者端末2,2,…は,クレジットカード会員である利用者によって携行される携帯端末であって,例えば携帯電話機及びタブレット端末等の通信機能を有する装置で構成される。各利用者端末2は,インターネット102を介して,カード会社サーバ11と通信を行う。また,各利用者端末2は,液晶ディスプレイ等で構成された表示部21を備えている。
【0024】
店舗端末3,3,…は,各店舗側に設けられている情報処理端末であって,例えば,パーソナルコンピュータ,携帯電話機及びタブレット端末等の通信機能を有する装置で構成される。各店舗端末3は,インターネット102を介して,銀行サーバ12と通信を行う。また,各店舗端末3は,液晶ディスプレイ等で構成された表示部31を備えている。」

ウ 「【0037】
[クレジットカード決済システムの動作]
次に,上述したように構成された本実施の形態のクレジットカード決済システムの動作について,フローチャート等を参照しながら説明する。
クレジットカード会員である利用者は,利用者端末2を携行した上で所望の店舗に入店し,当該店舗にて商品の購入を行う。利用者はクレジットカードでの決済を希望するが,当該店舗はそのクレジットカードを発行するクレジットカード会社と加盟店契約を結んでいない。この場合,以下のクレジットカード決済処理によってクレジットカードでの決済が行われる。
【0038】
図6A及び図6Bは,本実施の形態のクレジットカード決済システムが備えるカード会社サーバ11及び銀行サーバ12と,利用者端末2と,店舗端末3とによって実行されるクレジットカード決済処理の手順を示すフローチャートである。利用者は,利用者端末2に予めインストールされているクレジットカード決済用のプログラムを利用者端末2に実行させる。その結果,利用者端末2は,店舗情報及び購入情報を含む取引情報の登録を行うための入力画面を表示部21に表示する(S101)。
【0039】
図7は,店舗情報の登録を行うために利用者端末2の表示部21上に表示される入力画面の一例を示す図である。図7に示すように,入力画面1001には,店舗情報を入力するための入力欄と,購入情報の登録を行うための入力画面に移行するための次頁ボタン1002とが設けられている。ここで,店舗情報は,利用者が入店している店舗の店舗名,その店舗が利用している銀行口座の銀行名及び支店名,並びにその銀行口座の口座番号で構成されている。利用者は,店舗側から各情報を取得した上で入力欄に対して入力を行い,その後,次頁ボタン1002をクリックする。なお,利用者が以前同一の店舗を利用したことがある等の理由によって既に当該店舗の店舗情報の登録が行われているときは,その店舗情報が利用者端末2のメモリから読み出されて各入力欄に自動的に入力されるようにしてもよい。また,各情報が店舗端末3から送信され,これを受信した利用者端末2が当該各情報を各入力欄に自動的に入力するようにしてもよい。
【0040】
上記の次頁ボタン1002がクリックされた場合,表示部21には,購入情報の登録を行うための入力画面が表示される。図8は,その入力画面の一例を示す図である。図8に示すように,入力画面2001には,購入情報を入力するための入力欄と,これまでに入力された店舗情報及び購入情報をカード会社サーバ11に対して送信するための送信ボタン2002とが設けられている。ここで,購入情報は,利用者が使用するクレジットカードのカード番号及び暗証番号,商品の内容を示す情報,並びに当該商品の購入代金の金額で構成されている。利用者は,入力欄に対して各情報の入力を行い,その後,送信ボタン2002をクリックする。これにより,店舗情報及び購入情報の登録が完了する。なお,商品の内容を示す情報及び商品の金額については,店舗端末3から利用者端末2に対して送信されたものを当該利用者端末2が各入力欄に自動的に入力するようにしてもよい。
【0041】
上述したようにして行われた店舗情報及び購入情報の入力を受け付けた場合(S102),利用者端末2は,これらの店舗情報及び購入情報を含む取引情報をカード会社サーバ11に対して送信する(S103)。
【0042】
カード会社サーバ11は,利用者端末2から送信された取引情報を受信した場合(S201),その取引情報を取引DB114Aに登録し(S202),さらに,当該取引情報に含まれる店舗の銀行口座が決済口座として利用可能であるか否かを確認するための口座確認要求を銀行サーバ12に対して送信する(S203)。なお,この口座確認要求には,当該銀行口座の支店名及び口座番号が含まれている。」

エ 「【0045】
他方,ステップS302において,店舗の銀行口座が決済口座として利用可能であると判別された場合(S302でYES),銀行サーバ12は,そのことを示す口座利用可情報をカード会社サーバ11に対して送信する(S304)。カード会社サーバ11は,この口座利用可情報を受信した場合(S206),取引情報に含まれる商品の購入代金(クレジットカードによる支払い代金)の金額から所定のクレジットカード手数料が差し引かれた金額(以下,「カード手数料差引金額」という)を店舗の銀行口座に振り込む振込処理の準備を指示するための振込準備情報を銀行サーバ12に対して送信する(S207)。なお,クレジットカードの手数料率は,一定の値でもよく,また,店舗の属性(業種・規模等)・本システムの利用履歴等によって異なる値に設定されてもよい。この店舗の属性については,利用者端末2によって取得され,カード会社サーバ11に通知される。」

オ 「【0051】
他方,ステップS308において,振込の承諾がなされたと判別された場合(S308でYES),銀行サーバ12は,店舗の銀行口座に対してカード手数料差引金額を振り込むための所定の振込処理を実行する(S310)。その後,銀行サーバ12は,振込処理が完了したことを示す振込完了情報をカード会社サーバ11に対して送信し(S311),さらに同様の振込完了情報を店舗端末3に対して送信する(S312)。なお,店舗端末3に対する振込承諾要求の送信は,口座管理DB124Aに格納されている口座管理情報に格納されている当該店舗の電子メールアドレス宛に,所定のウェブページのURLを示す電子メールを送信することによって行われる。
【0052】
カード会社サーバ11は,銀行サーバ12から送信された振込完了情報を受信した場合(S210),今回のクレジットカード利用による売上情報を生成し(S211),その生成した売上情報を売上DB114Bに登録する(S212)。なお,カード手数料差引金額の振込処理が既に実行されているため,この売上情報には振込済み情報が含まれている。このように,売上情報にはカード手数料差引金額が振込済みであることが反映されているため,店舗側に対して後に二重に振込が行われるような事態を回避することができる。
【0053】
また,店舗端末3は,電子メールを介して,銀行サーバ12から送信された振込完了情報を受信した場合(S405),その電子メールに示されているURLにアクセスすることによってカード手数料差引金額の振込処理が完了した旨のメッセージを含む振込完了画面を取得し,これを表示部31に表示する(S406)。図10は,その振込完了画面の一例を示す図である。図10に示すように,振込完了画面4001には,カード手数料差引金額の値,並びに,そのカード手数料差引金額がクレジットカード会社から店舗の銀行口座に振り込まれたことを示すメッセージ及び商品をクレジットカードの利用者に渡すことを促すメッセージ等が示されている。店舗は,取引の実績がある銀行の銀行サーバ12からこれらのメッセージを受け取っているため,安心して商品を利用者に渡すことができる。なお,本実施の形態では購入対象として有形の商品を例示しているが,サービスであっても構わない。振込完了画面4001に示されるメッセージは,購入対象によって適宜変更されることになる。
【0054】
上述したように,本実施の形態の場合,店舗がクレジットカード会社と加盟店契約を結んでいなくても,カード手数料差引金額での取引を承諾することができれば,クレジットカードでの決済が可能になる。これにより,クレジットカードの利便性を高めることができる。
【0055】
また,本実施の形態の場合,クレジットカードの利用者との取引時にカード手数料差引金額が店舗の銀行口座に振り込まれることになるため,店舗は安心して取引を行うことができる。」

カ カード会社サーバ11は,店舗がクレジットカード会社と加盟店契約を結んでいるか否かにかかわらず,カード手数料差引金額での取引を承諾することができれば,クレジットカードでの決済が可能にするものであるから,カード会社サーバ11は,カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行する手段を備えることは明らかである。

キ そうすると,文献1には次の発明(以下,「引用発明1-1」という。)が記載されているといえる。

「カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行する手段を備え,
クレジットカード会員である利用者が,利用者端末2を携行した上で所望のクレジットカードを発行するクレジットカード会社と加盟店契約を結んでいない店舗に入店し,当該店舗にて商品の購入を行い,利用者はクレジットカードでの決済を行うために(【0037】),
利用者は,利用者端末2に予めインストールされているクレジットカード決済用のプログラムを利用者端末2に実行させ,利用者端末2は,店舗情報及び購入情報を含む取引情報の登録を行うための入力画面を表示部21に表示し(【0038】),
利用者端末2の表示部21上に表示される入力画面である入力画面1001には,利用者が入店している店舗の店舗名,その店舗が利用している銀行口座の銀行名及び支店名,並びにその銀行口座の口座番号で構成される店舗情報を入力するための入力欄が設けられており,利用者は,店舗側から各情報を取得した上で入力欄に対して入力を行い(【0039】),
利用者端末2の表示部21上に表示される入力画面である入力画面2001には,利用者が使用するクレジットカードのカード番号及び暗証番号,商品の内容を示す情報,並びに当該商品の購入代金の金額で構成される購入情報を入力するための入力欄が備えられ,利用者端末2は,これらの店舗情報及び購入情報を含む取引情報をカード会社サーバ11に対して送信し(【0040】【0041】),
カード会社サーバ11は,利用者端末2から送信された取引情報を受信し(【0042】),
店舗の銀行口座が決済口座として利用可能であると判別されると,カード会社サーバ11は,取引情報に含まれる商品の購入代金(クレジットカードによる支払い代金)の金額から所定のクレジットカード手数料が差し引かれた金額(以下,「カード手数料差引金額」という)を店舗の銀行口座に振り込む振込処理の準備を指示するための振込準備情報を銀行サーバ12に対して送信し(【0045】),
銀行サーバ12は,店舗の銀行口座に対してカード手数料差引金額を振り込むための所定の振込処理を実行する(【0051】)ことで,
カード決済を行う(【0053】),
カード会社サーバ11。」

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明1-1との対比
(ア)引用発明1-1の「カード会社サーバ11」は,後述する相違点は別にして,本件発明1の「支払代行システム」に対応する。

(イ)引用発明1-1の「カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行する手段」は,本件発明1の「カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段」に相当する。

(ウ)引用発明1-1の「クレジットカード会社と加盟店契約を結んでいない店舗」は,本件発明1の「カードの非加盟店」に相当する。

(エ)引用発明1-1の「利用者端末2」は,本件発明1の「カード会員の端末」に相当する。

(オ)引用発明1-1の「商品の購入代金の金額」,利用者が入店している店舗が利用している「銀行口座の口座番号」,「利用者が使用するクレジットカードのカード番号」は,それぞれ,本件発明1の「購入の代金を示す金額情報」,「非加盟店の口座情報」,「カード会員のカード情報」に相当する。

(カ)引用発明1-1の,カード会社サーバ11が,利用者端末2から送信された店舗情報及び購入情報を含む取引情報を受信することは,受信される取引情報には,「商品の購入代金の金額」,利用者が入店している店舗が利用している「銀行口座の口座番号」,「利用者が使用するクレジットカードのカード番号」が含まれており,購入者が決済を依頼するために,取引情報を利用者端末2からクレジット会社サーバ11に送信するものであるという点で,本件発明1の「前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記カード会員の端末から受け付け」に対応する。

(キ)引用発明1-1は,店舗の銀行口座が決済口座として利用可能であると判別されると,カード会社サーバ11が,取引情報に含まれる商品の購入代金(クレジットカードによる支払い代金)の金額から所定のクレジットカード手数料が差し引かれた金額(以下,「カード手数料差引金額」という)を,店舗の銀行口座に振り込む振込処理の準備を指示するための振込準備情報を,銀行サーバ12に対して送信するものであって,これは,利用者がクレジットカードで決済を希望する場合に,所定の条件が満たされると,カード会社サーバ11が,店舗の銀行口座に商品の購入代金の金額から所定のクレジットカード手数料が差し引かれた金額の振り込みを,銀行サーバ12に実行させるものである。
そうすると,引用発明1-1は,所定の条件を満たされると,カード会社サーバ11が,店舗の銀行口座に商品の購入代金の金額から所定のクレジットカード手数料が差し引かれた金額の振り込みを銀行サーバ12に実行させ,代金を利用者のクレジットカードでカード決済させる点で,本件発明1の「結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し,前記カード情報に基づいて,前記カード決済手段により,前記代金を前記カード会員のカードでカード決済させる支払代行手段」に対応する。

(ク)そうすると,本件発明1と,引用発明1-1とでは,次の点で一致又は相違する。

<一致点>
「カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段と,
購入の代金を示す金額情報と,非加盟店の口座情報と,カード会員のカード情報とを含む支払要求をカード会員の端末から受け付け,結果に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行し,前記カード情報に基づいて,前記カード決済手段により,前記代金を前記カード会員のカードでカード決済させる支払代行手段と
を有する,支払代行システム。」

<相違点>
(相違点1)
本件発明1は,支払代行システムが,「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」が含まれる支払要求を,カード会員の端末から受け付けるのに対し,引用発明1-1では,「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」が特定されておらず,カード会社サーバ11が,この「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」を含む支払要求を,カード会員の端末から受け取る構成ではない点。

(相違点2)
本件発明1は,「前記確証情報の検証の結果」に応じて,前記口座情報が示す口座に前記代金を振り込むための振込処理を実行するのに対し,引用発明1-1は,店舗の銀行口座が決済口座として利用可能であるか否かの判別により,利用可能であると判別されると,カード会社サーバ11は,取引情報に含まれる商品の購入代金の金額から所定のクレジットカード手数料が差し引かれた金額を店舗の銀行口座に振り込む振込処理の準備を指示するものであって,「前記確証情報の検証の結果」応じたものではない点。

(相違点3)
本件発明1は,代金と所定の手数料との合計額をカード会員のカードでカード決済させるのに対し,引用発明1-1は,代金のみを利用者のクレジットカードでカード決済し,クレジットカード手数料は,店舗が負担する点。

相違点の判断
(ア)相違点1について検討をする。
本件発明1の確証情報は,支払代行手段がカード会員端末から受け付けることから,カード会員が非加盟店により発行された確証情報の内容を確認したものと考えることのできるものである。そして,本件発明1は,支払代行システムが,「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」が含まれる支払要求を,カード会員の端末から受け付けるようにすることにより,非加盟店及びカード会員の両者が,処理の対象が意図した売買契約/役務提供契約であるかを確かめられ,カード支払代行システムでも売買契約/役務提供契約の確証を残せるため,支払代行サービスの不正利用を事前及び/又は事後にチェックすることができるとの効果を奏するものである。
これに対し,文献1には「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」についての記載も示唆もなく,当該技術分野における周知技術でもないことから,文献1の記載に基づき相違点1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものではない。また,相違点1の構成を採用することにより奏する効果も,当業者の予測し得る範囲内の事項ではない。

(イ)よって,相違点2,3について検討をするまでもなく,本件発明1は,引用発明1-1及び文献1の記載事項から,当業者が容易に発明をすることができるものではない。
なお,相違点2について,申立人は,オペレータや利用者などが入力した情報と,入力した情報に対応する帳票等の画像情報から読み取った情報が一致するかを判定することにより,情報が正しく入力されたかを検証することは,特開平6-68122号公報,特開2002-63375号公報,特開2003-132398号公報に記載されているように,情報が正しく入力されたことを確認するための周知の手法である旨主張する。
しかしながら,甲1発明は,相違点1で検討したとおり,「確認情報」について記載も示唆もないことから,甲1発明には,確認情報を検証しようという動機はない。そうすると,申立人の主張する周知の手法を適用しようとする動機もないことから,相違点2の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項ではない。
よって,申立人の主張は採用できない。

(3)本件発明2?8について
本件発明2?7は,本件発明1の従属請求項に係る発明であり,また,本件発明8は,支払代行システムである本件発明1に対応する支払代行方法の発明であり,これらについても,上記相違点に対応する構成を有し,この相違点について容易想到ということはできない。

(4)本件発明9?10について
ア 上記(1)ア?カから,文献1には次の発明(以下,「引用発明1-2」という。)が記載されているといえる。

「カード会社サーバ11とインターネット102を介して通信を行う利用者端末2であって(【0023】),
クレジットカード会員である利用者が,利用者端末2を携行した上で所望のクレジットカードを発行するクレジットカード会社と加盟店契約を結んでいない店舗に入店し,当該店舗にて商品の購入を行い,利用者はクレジットカードでの決済を行うために(【0037】),
利用者は,利用者端末2に予めインストールされているクレジットカード決済用のプログラムを利用者端末2に実行させ,利用者端末2は,店舗情報及び購入情報を含む取引情報の登録を行うための入力画面を表示部21に表示し(【0038】),
利用者端末2の表示部21上に表示される入力画面である入力画面1001には,利用者が入店している店舗の店舗名,その店舗が利用している銀行口座の銀行名及び支店名,並びにその銀行口座の口座番号で構成される店舗情報を入力するための入力欄が設けられており,利用者は,店舗側から各情報を取得した上で入力欄に対して入力を行い(【0039】),
利用者端末2の表示部21上に表示される入力画面である入力画面2001には,利用者が使用するクレジットカードのカード番号及び暗証番号,商品の内容を示す情報,並びに当該商品の購入代金の金額で構成される購入情報を入力するための入力欄が備えられ,利用者端末2は,これらの店舗情報及び購入情報を含む取引情報をカード会社サーバ11に対して送信し(【0040】【0041】),
カード会社サーバ11は,利用者端末2から送信された取引情報を受信し(【0042】),
店舗の銀行口座が決済口座として利用可能であると判別されると,カード会社サーバ11は,取引情報に含まれる商品の購入代金(クレジットカードによる支払い代金)の金額から所定のクレジットカード手数料が差し引かれた金額(以下,「カード手数料差引金額」という)を店舗の銀行口座に振り込む振込処理の準備を指示するための振込準備情報を銀行サーバ12に対して送信し(【0045】),
銀行サーバ12は,店舗の銀行口座に対してカード手数料差引金額を振り込むための所定の振込処理を実行する(【0051】)ことで,
カード決済を行う(【0053】),
利用者端末2。」

イ 本件発明9と引用発明1-2を対比すると,次の点で相違する。
(相違点1)
本件発明9は,「前記カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報であって,前記非加盟店が提示した前記確証情報を画像データとして取り込む撮像手段」を有する構成であるのに対し,引用発明1-2には,「前記カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」に関する構成は特定されておらず,当該確証情報を撮像する撮像手段を備える構成ではない点。

(相違点2)
本件発明9は,「確証情報の画像データ」が含まれる支払要求を,支払代行システムに送信するのに対し,引用発明1-2は,「確証情報の画像データ」を含む支払要求を,カード会社サーバ11に送信する構成ではない点。

(相違点3)
本件発明9は,代金と所定の手数料との合計額をカード会員のカードでカード決済させるのに対し,引用発明1-2は,代金のみを利用者のクレジットカードでカード決済し,クレジットカード手数料は,店舗が負担する点。

(相違点4)
本件発明9は,支払代行システムから「前記振込処理及び前記カード決済の手続完了の通知を受信する」のに対し,引用発明1-2は,店舗端末3が振込完了情報を受信する点。

ウ 上記相違点1について検討をするに,上記(2)イ(ア)のとおり,文献1には「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」についての記載も示唆もなく,当該技術分野における周知技術でもないことから,文献1の記載に基づき相違点1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものではない。また,相違点1の構成を採用することにより奏する効果も,当業者の予測し得る範囲内の事項ではない。

エ よって,相違点2?4について検討をするまでもなく,本件発明9は,引用発明1-2及び文献1の記載事項から,当業者が容易に発明をすることができるものではない。

オ 本件発明10は,端末装置である本件発明9に対応するプログラムの発明であり,上記相違点に対応する構成を有し,この相違点について容易想到ということはできない。

4 理由4-2(特許法29条2項,文献2)について
(1)文献2の記載事項(下線は,当審で付与した。)
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,支払代行システムに関するものである。」

イ 「【0006】
【課題を解決するための手段】そのために,本発明の支払代行システムにおいては,通信インターフェイスを備える支払者の支払者端末と,通信インターフェイスを備え,ネットワークに接続される支払代行サーバ内に開設された支払代行ショップと,前記支払者の口座が開設された通信インターフェイスを備える金融機関とを有し,前記支払者端末は,支払代行ショップにアクセスして,前記支払者が請求者から受け取った請求書に含まれる情報及び支払代行の依頼を送信し,前記支払代行ショップは,前記支払者端末から受信した前記請求書に含まれる情報に基づいて,前記金融機関に支払額を支払うことの承認要求を送信し,前記金融機関から承認を受信すると,前記支払額の前記請求者への支払を行う。」

ウ 「【0008】図1は本発明の実施の形態における支払代行システムの概念図である。
【0009】本実施の形態において,11は請求者である。該請求者11は,個人や通常の商店であっても,インターネット等のネットワーク上の仮想的な商店であっても,通信販売を行う企業であっても,電気,ガス,水道等を供給したり電話,放送,教育等のサービスを提供する企業,公共団体,学校等であっても,自動車税,固定資産税等の税金,反則金,罰金等を徴収する地方自治体,税務署等の公的機関であっても,いかなる者であってもよい。
【0010】そして,前記請求者11は,支払者12に対して供給したり提供した又は供給したり提供する予定の商品,サービス等の代金,料金,授業料等,あるいは,公共料金,税金,反則金,罰金等の金額が記入された請求書を発行して,送付する。なお,前記各請求書の送付は郵便等によりなされてもよいし,ファクシミリ,電子メール等によってなされてもよい。
【0011】さらに,前記請求者11はネットワークに接続されたサーバにサイトを開設し,前記支払者12が前記サイトにアクセスして請求書を入手できるようにしてもよい。この場合,前記支払者12は,後述される支払者端末13から前記サイトにアクセスして,自己の氏名,契約者番号等の支払者12を識別する情報や請求対象を特定する事項などを入力することによって,自己の請求書を入手できるようにする。なお,後述される支払代行ショップ15が,前記支払者12に代わって,前記サイトにアクセスして請求書を入手できるようにすることもできる。
【0012】また,前記各請求書には,前記支払者12の氏名,契約者番号等の支払者12を識別する情報や,支払内訳,金額等の請求情報とともに,該請求情報や前記請求書,請求者11等を識別する情報等を含む記号,文字,バーコード等から成る識別コードが付与されていてもよい。
【0013】また,前記支払者12は,代金を支払う者であって,個人でなくとも,企業,団体等であってもよい。なお,前記支払者12は支払者端末13を有する。該支払者端末13は,例えば,パーソナルコンピュータ,携帯電話,電子手帳,PDA,ゲーム機,テレビ電話等であるが,数字キー等の入力手段,通信インターフェイス,記憶手段,ディスプレー等の表示手段等を備えるものであればいかなるものであってもよい。さらに,前記支払者端末13はバーコードリーダー,OCR等の識別コード読み取り装置を備えていてもよい。
【0014】そして,前記支払者端末13は,有線又は無線の電話回線のような公衆回線又は専用回線等を介して,LANやインターネットや携帯電話ネットワークのようなデータ通信可能なネットワークに接続できるようになっている。
【0015】また,14は支払代行サーバであり,入力手段,演算手段,記憶手段,通信インターフェイス等を備え,インターネットや携帯電話ネットワークのようなデータ通信可能なネットワークに接続されている。そして,前記支払代行サーバ14内には,仮想ショップである支払代行ショップ15が開設されている。すなわち該支払代行ショップ15はネットワーク上に開設された仮想ショップである。なお,前記支払代行サーバ14及び支払代行ショップ15を運営する者は,個人,法人,営利企業,公益団体等いかなる者であってもよい。
【0016】なお,前記請求者11,支払者12及び支払代行サーバ14及び支払代行ショップ15を運営する者は,あらかじめ支払代行に関する契約を締結しておくことが望ましい。
【0017】そして,16は,銀行,信用金庫,クレジット会社等の金融機関であり,前記支払者12の口座が開設されているとともに,通信インターフェイス等を備えるコンピュータ等を有する。
【0018】また,17は,入力手段,演算手段,記憶手段,通信インターフェイス等を備え,インターネットや携帯電話ネットワークのようなデータ通信可能なネットワークに接続されている金融機関サーバである。そして,前記金融機関サーバ17内には,仮想口座18が開設されている。なお,前記金融機関サーバ17及び仮想口座18を運営する者は,個人,法人,営利企業,公益団体等いかなる者であってもよく,前記金融機関16を運営する者と同一の者であってもよい。
【0019】ここで,前記金融機関サーバ17及び仮想口座18を運営する者は,あらかじめ前記金融機関16とネット決済システムに関する契約を締結し,前記金融機関サーバ17と金融機関16のコンピュータ等とを通信可能に接続する。そして,前記金融機関サーバ17に開設された前記支払者12の仮想口座18は,金融機関16内に開設されている前記支払者12の口座から,金額を移行することができ,ネット決済を実行することが可能となっている。これにより,前記仮想口座18には,前記ネットワークを経由して,前記支払代行ショップ15がアクセスして,ネット決済を実行することができる。
【0020】なお,前記金融機関16に開設された口座に,前記ネットワークを経由して,前記支払代行ショップ15がアクセスできるようになっている場合には,前記金融機関サーバ17及び仮想口座18を省略することができる。
【0021】次に,本実施の形態の動作について説明する。
【0022】請求者11は,支払者12に対して供給したり提供した又は供給したり提供する予定の商品,サービス等の代金,料金等,あるいは,税金,反則金,罰金等の金額が記入された請求書を発行して,送付する(図における矢印21)。
【0023】すると,支払者12は,支払者端末13をインターネットや携帯電話ネットワークのようなネットワークに接続し,支払代行サーバ14内に開設された支払代行ショップ15にアクセスする。そして,前記支払者12は,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等を前記支払代行ショップ15に送信し,かつ,支払者12に代わって支払うこと,すなわち支払代行の依頼を送信する(図における矢印22)。
【0024】ここで,前記支払額は請求書に記載された請求者11に支払うべき金額である。また,前記支払代行ショップ15は,支払者12から,支払の代行を実行するための手数料を徴収するようにしてもよい。なお,前記請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等の送信は,請求書に記載されている記号,文字,バーコード等から成る識別コードを識別コード読み取り装置から入力して送信するようにしてもよいし,前記識別コードに付随する番号等のデータを入力して送信するようにしてもよい。
【0025】一方,前記支払代行ショップ15は,前記支払者端末13からの依頼を受信すると,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等を支払代行サーバ14の記憶手段に格納する。そして,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報を読み出して,これら情報に基づいて,金融機関サーバ17内に開設されている前記支払者12の仮想口座18にアクセスし,請求者11に支払額を支払うことの承認要求を送信する(図における矢印23)。
【0026】そして,前記仮想口座18は,前記支払代行ショップ15からの承認要求を受信すると,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等を金融機関サーバ17の記憶手段に格納する。そして,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報を読み出して,これら情報に基づいて,金融機関16のコンピュータ等にアクセスし,請求者11に支払額を支払うことの承認要求を送信する(図における矢印24)。
【0027】次に,前記金融機関16は,承認要求を受信すると,開設されている支払者12の口座の残高等をチェックし,請求者11に支払額を支払うことを承認するか否か判定する。そして,承認することを判定すると,承認する旨を前記仮想口座18に送信する(図における矢印25)。続いて,前記仮想口座18は,請求者11に支払額を支払うことを承認する旨を前記支払代行ショップ15に送信する(図における矢印26)。これにより,前記支払者12の仮想口座18の残高等の情報が更新される。
【0028】なお,前記金融機関サーバ17及び仮想口座18を省略して,前記金融機関16に開設された口座に前記支払代行ショップ15がアクセスできるようになっている場合には,前記支払代行ショップ15は前記金融機関16に承認要求を直接送信し,かつ,前記金融機関16から支払額を支払うことを承認する旨を直接受信する。
【0029】一方,支払額を支払うことを承認する旨を受信した前記支払代行ショップ15は,支払代行サーバ14の記憶手段に格納されている情報を読み出して,該情報に基づいて,請求者11に対して,前記支払額の支払を実行する(図における矢印27)。ここで,請求者11に対する支払い額の支払いは,現金の送金,金融機関の口座を利用する振込,為替,電子決済等のいかなる手段によるものであってもよい。これによって,支払の代行が終了する。」

エ そうすると,文献2には次の発明(以下,「引用発明2-1」という。)が記載されているといえる。

「請求者11は,個人や通常の商店であっても,インターネット等のネットワーク上の仮想的な商店であっても,通信販売を行う企業であっても,電気,ガス,水道等を供給したり電話,放送,教育等のサービスを提供する企業,公共団体,学校等であっても,自動車税,固定資産税等の税金,反則金,罰金等を徴収する地方自治体,税務署等の公的機関であっても,いかなる者であってもよく(【0009】),
金融機関サーバ17に開設された支払者12の仮想口座18によって,金融機関16内に開設されている支払者12の口座から,金額を移行することができ,ネット決済を実行することができ(【0019】),
支払代行サーバ14内には,仮想ショップである支払代行ショップ15が開設されており(【0015】),
請求者11は,支払者12に対して供給したり提供した又は供給したり提供する予定の商品,サービス等の代金,料金等,あるいは,税金,反則金,罰金等の金額が記入された請求書を発行して,送付し(【0022】),
支払者12は,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等を支払代行ショップ15に送信し,かつ,支払代行の依頼を送信し(【0023】),
支払代行ショップ15は,支払者端末13からの依頼を受信すると,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報を読み出して,これら情報に基づいて,金融機関サーバ17内に開設されている前記支払者12の仮想口座18にアクセスし,請求者11に支払額を支払うことの承認要求を送信(【0025】)し,
支払額を支払うことを承認する旨を受信した前記支払代行ショップ15は,支払代行サーバ14の記憶手段に格納されている情報を読み出して,該情報に基づいて,請求者11に対して,前記支払額の支払を実行する(【0029】)
支払代行サーバ14。」

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明2-1との対比
(ア)引用発明2-1の「支払代行サーバ14」は,後述する相違点は別にして,本件発明の「支払代行システム」に相当する。

(イ)引用発明2-1の「支払者12」と,本件発明1の「カード会員」とは,「サービス等を受ける又は受けた者」との点で共通する。

(ウ)引用発明2-1の「請求者11」と,本件発明1の「カードの非加盟店」とは,「サービス等を提供する又は提供した者」との点で共通する。

(エ)引用発明2-1の,請求者11が発行する「支払者12に対して供給したり提供した又は供給したり提供する予定の商品,サービス等の代金,料金等,あるいは,税金,反則金,罰金等の金額が記入された請求書」と,本件発明1の「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」とは,「サービス等を受ける又は受けた者が,サービス等を受ける又は受けたことを示すために,サービス等を提供する又は提供した者により発行される情報」との点で共通する。

(オ)引用発明2-1の「支払額」は,本件発明1の「購入の代金を示す金額情報」に相当する。

(カ)引用発明2-1の「支払者12を識別する情報」と,本件発明1の「非加盟店の口座情報」とは,「サービス等を提供する又は提供した者に関する情報」との点で共通する。

(キ)引用発明2-1の「請求者11を識別する情報」と,本件発明1の「カード会員のカード情報」とは,「サービス等を受ける又は受けた者に関する情報」との点で共通する。

(ク)引用発明2-1の「支払者端末13」と,本件発明1の「カード会員の端末」とは,「サービス等を受ける又は受けた者の端末」との点で共通する。

(ケ)引用発明2-1の「支払者12は,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等を支払代行ショップ15に送信し,支払代行ショップ15は,支払者端末13からの依頼を受信する」と,本件発明1の「前記購入の代金を示す金額情報と,前記非加盟店の口座情報と,前記カード会員のカード情報とを含む支払要求を前記カード会員の端末から受け付け」とは,「購入の代金を示す金額情報と,サービス等を提供する又は提供した者に関する情報と,サービス等を受ける又は受けた者に関する情報とを含む支払要求をサービス等を受ける又は受けた者の端末から受け付け」との点で共通する。

(コ)引用発明2-1の,「前記支払代行ショップ15は,支払代行サーバ14の記憶手段に格納されている情報を読み出して,該情報に基づいて,請求者11に対して,前記支払額の支払を実行する」ことは,本件発明1の「前記代金を振り込むための振込処理を実行し」に相当する。

(ケ)そうすると,本件発明1と,引用発明2-1とでは,次の点で一致又は相違する。

<一致点>
購入の代金を示す金額情報と,サービス等を提供する又は提供した者に関する情報と,サービス等を受ける又は受けた者に関する情報とを含む支払要求をサービス等を受ける又は受けた者の端末から受け付け,
前記代金を振り込むための振込処理を実行する
支払代行システム。

<相違点>
(相違点1)
本件発明1は,支払代行システムが,カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段を備える構成であるのに対し,引用発明2-1は,金融機関サーバ17に開設された支払者12の仮想口座18によって,金融機関16内に開設されている支払者12の口座から,金額を移行することができ,ネット決済を実行することができる点。

(相違点2)
本件発明1は,サービス等を受ける又は受けた者が「カード会員」であるのに対し,引用発明2-1は,サービス等を受ける又は受けた者が「支払者12」であって,カード会員であることが特定されていない点。

(相違点3)
本件発明1は,サービス等を提供する又は提供した者が「カードの非加盟店」であるのに対し,引用発明2-1は,サービス等を提供する又は提供した者が「請求者11」であって,カード非加盟店であることが特定されていない点。

(相違点4)
サービス等を受ける又は受けた者が,サービス等を受ける又は受けたことを示すために,サービス等を提供する又は提供した者により発行される情報が,本件発明1では,「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」であり,確証情報は支払代行システムによって受け付けられるのに対し,引用発明2-1では,「支払者12に対して供給したり提供した又は供給したり提供する予定の商品,サービス等の代金,料金等,あるいは,税金,反則金,罰金等の金額が記入された請求書」であって,支払代行サーバ14が受け付けることが特定されていない点。

(相違点5)
サービス等を提供する又は提供した者に関する情報が,本件発明1では「非加盟店の口座情報」であるのに対し,引用発明2-1では,「支払者12を識別する情報」であって,「非加盟店」の「口座情報」であることが特定されておらず,振り込み処理が「口座情報が示す口座」に対して行われることが特定されていない点。

(相違点6)
サービス等を受ける又は受けた者に関する情報が,本件発明1では,「カード会員のカード情報」であるのに対し,引用発明2-1では,「請求者11を識別する情報」とするのみで,会員のカード情報であることが特定されていない点。

(相違点7)
本件発明1は,「前記確証情報の検証の結果に応じて」,口座情報が示す口座に代金を振り込むための振込処理を実行するのに対し,引用発明2-1では,請求書の検証を行うことは特定されておらず,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報に基づいて,金融機関サーバ17に承認要求を送信し,承認されると,支払代行サーバ14が請求者11に支払を行う点。

(相違点8)
本件発明1は,「前記カード情報に基づいて,前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済させる」のに対し,引用発明2-1は,カード情報に基づいて決済を行うことは特定されておらず,支払者12から,支払の代行を実行するための手数料を徴収してもよいとする点。

相違点の判断
(ア)事案の性質に鑑み,相違点4,7について検討をする。
本件発明1の確証情報は,支払代行手段がカード会員端末から受け付けることから,カード会員が非加盟店により発行された確証情報の内容に不備等がないことの確認済みであると考えることのできるものである。そして,本件発明1は,支払代行システムが,「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」が含まれる支払要求を,カード会員の端末から受け付けるようにすることにより,非加盟店及びカード会員の両者が,処理の対象が意図した売買契約/役務提供契約であるかを確かめられ,カード支払代行システムでも売買契約/役務提供契約の確証を残せるため,支払代行サービスの不正利用を事前及び/又は事後にチェックすることができるとの効果を奏するものである。
これに対し,文献2には,上記摘記事項(1)ウ【0022】?【0024】を参照すると,「ここで,前記支払額は請求書に記載された請求者11に支払うべき金額である。」(【0024】)との記載から,支払者12は,支払者端末13を用いて,請求書に記載された請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等を,支払代行サーバ14に送信するものであるから,請求書それ自体を支払代行サーバ14に送信するものではないことは明らかである。文献2のその他の記載を参照しても,支払代行サーバ14が,「請求書」を受け付けること,及び,請求書の「検証の結果」に応じて,決済処理を行うことは,記載も示唆もなく,当該技術分野における周知技術でもないことから,文献2の記載に基づき相違点4,7の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものではなく,相違点4,7の構成を採用することにより奏する効果も,当業者の予測し得る範囲内の事項ではない。

(イ)よって,相違点1?3,5,6,8の点について検討をするまでもなく,本件発明1は,引用発明2-1及び文献2の記載事項から,当業者が容易に発明をすることができるものではない。

(3)請求項2?8について
本件発明2?7は,本件発明1の従属請求項に係る発明であり,また,本件発明8は,支払代行システムである本件発明1に対応する支払代行方法の発明であり,これらについても,上記相違点に対応する構成を有し,この相違点について容易想到ということはできない。

(4)本件発明9?10について
ア 上記(1)から,文献2には次の発明(以下,「引用発明2-2」という。)が記載されているといえる。

「支払代行サーバ14にインターネットや携帯電話ネットワークのようなネットワークに接続された支払者端末13であって(【0023】),
請求者11は,個人や通常の商店であっても,インターネット等のネットワーク上の仮想的な商店であっても,通信販売を行う企業であっても,電気,ガス,水道等を供給したり電話,放送,教育等のサービスを提供する企業,公共団体,学校等であっても,自動車税,固定資産税等の税金,反則金,罰金等を徴収する地方自治体,税務署等の公的機関であっても,いかなる者であってもよく(【0009】),
金融機関サーバ17に開設された支払者12の仮想口座18によって,金融機関16内に開設されている支払者12の口座から,金額を移行することができ,ネット決済を実行することができ(【0019】),
支払代行サーバ14内には,仮想ショップである支払代行ショップ15が開設されており(【0015】),
請求者11は,支払者12に対して供給したり提供した又は供給したり提供する予定の商品,サービス等の代金,料金等,あるいは,税金,反則金,罰金等の金額が記入された請求書を発行して,送付し(【0022】),
支払者12は,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報等を支払代行ショップ15に送信し,かつ,支払代行の依頼を送信し(【0023】),
支払代行ショップ15は,支払者端末13からの依頼を受信すると,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報を読み出して,これら情報に基づいて,金融機関サーバ17内に開設されている前記支払者12の仮想口座18にアクセスし,請求者11に支払額を支払うことの承認要求を送信(【0025】)し,
支払額を支払うことを承認する旨を受信した前記支払代行ショップ15は,支払代行サーバ14の記憶手段に格納されている情報を読み出して,該情報に基づいて,請求者11に対して,前記支払額の支払を実行する(【0029】)
支払者端末13。」

イ 本件発明9と引用発明2-2を対比すると,次の点で相違する。
(相違点1)
本件発明9は,カード会員の端末装置が「カードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行可能な支払代行システム」と通信するのに対し,引用発明2-2には,決済代行サーバがカードの加盟店の決済システムとしてカード決済を実行可能であることが特定されていない点。

(相違点2)
本件発明9は,「カード会員」の端末装置であるのに対し,引用発明2-1は,「支払者12」の支払者端末13であって,支払者12が「カード会員」であることが特定されていない点。

(相違点3)
本件発明9は,「前記カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報であって,前記非加盟店が提示した前記確証情報を画像データとして取り込む撮像手段」を有する構成であるのに対し,引用発明2-2には,「前記カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」は特定されておらず,当該確証情報を撮像する撮像手段を備える構成ではない点。

(相違点4)
本件発明9は,「カード会員が前記カードの非加盟店で購入したことの確証を与えるために購入の度に前記非加盟店により発行される確証情報」の「画像データ」を,確証情報は支払代行システムに送信するのに対し,引用発明2-2は,「支払者12に対して供給したり提供した又は供給したり提供する予定の商品,サービス等の代金,料金等,あるいは,税金,反則金,罰金等の金額が記入された請求書」であって,支払代行サーバ14に送信することが特定されていない点。

(相違点5)
本件発明9は,「非加盟店の口座情報」が支払代行システムに送信され,「非加盟店の口座情報」に代金が振り込まれる処理が実行されるのに対し,引用発明2-2では,「支払者12を識別する情報」が支払代行サーバ14に送信されるのであって,「非加盟店」の「口座情報」であることが特定されておらず,振り込み処理が「口座情報が示す口座」に対して行われることが特定されていない点。

(相違点6)
本件発明9は,「カード会員のカード情報」が支払代行システムに送信されるのに対し,引用発明2-2は,「請求者11を識別する情報」が支払代行サーバ14に送信されるのであって,「カード会員のカード情報」であることが特定されていない点。

(相違点7)
本件発明9は,「前記確証情報の検証の結果に応じて」,口座情報が示す口座に代金を振り込むための振込処理を実行するのに対し,引用発明2-2では,請求書の検証を行うことは特定されておらず,請求者11を識別する情報,支払者12を識別する情報,支払額を示す情報に基づいて,金融機関サーバ17に承認要求を送信し,承認されると,支払代行サーバ14が請求者11に支払を行う点。

(相違点8)
本件発明9は,「前記カード情報に基づいて,前記代金と所定の手数料との合計額を前記カード会員のカードでカード決済する」の対し,引用発明2-2は,カード情報に基づいて決済を行うことは特定されておらず,支払者12から,支払の代行を実行するための手数料を徴収してもよいとする点。

(相違点9)
本件発明9は,端末装置が「前記振込処理及び前記カード決済の手続完了の通知を受信する受信手段」を備えるのに対し,引用発明2-2は,支払者端末13がそのような受信手段を備える構成ではない点。

ウ 事案の性質に鑑み,相違点4,7について検討するに,上記4(2)イ(ア)のとおり,文献2には,支払代行サーバ14が,「請求書」を受け付けること,及び,請求書の「検証の結果」に応じて,決済処理を行うことは,記載も示唆もなく,当該技術分野における周知技術でもないことから,文献2の記載に基づき相違点4,7の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものではなく,相違点4,7の構成を採用することにより奏する効果も,当業者の予測し得る範囲内の事項ではない。

エ よって,相違点1?3,5,6,8,9の点について検討をするまでもなく,本件発明9は,引用発明2-2及び文献2の記載事項から,当業者が容易に発明をすることができるものではない。

オ 本件発明10は,端末装置である本件発明9に対応するプログラムの発明であり,これについても,上記相違点に対応する構成を有し,この相違点について容易想到ということはできない。


第5 まとめ

したがって,特許異議申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-01-31 
出願番号 特願2018-33474(P2018-33474)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G06Q)
P 1 651・ 121- Y (G06Q)
P 1 651・ 536- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田川 泰宏  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 石川 正二
松田 直也
登録日 2019-04-12 
登録番号 特許第6510692号(P6510692)
権利者 三井住友カード株式会社
発明の名称 支払代行システム、支払代行方法、端末装置、及びプログラム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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