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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1359597
異議申立番号 異議2019-700840  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-23 
確定日 2020-02-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6505571号発明「加熱接合用シート、及び、ダイシングテープ付き加熱接合用シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6505571号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6505571号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年9月30日に出願され、平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和元年10月23日に特許異議申立人中川賢治は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6505571号の請求項1?4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
加熱により焼結層となる層を有し、
前記層は、23℃で固形の熱分解性バインダーを含み、
前記層は、大気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、23℃から500℃まで差動型示差熱天秤による分析を行った際、500℃での重量減少量(%)から、300℃での重量減少量(%)を引いた値が、-1%?0%の範囲内であることを特徴とする加熱接合用シート。
【請求項2】
加熱により焼結層となる層を有し、
前記層は、23℃で固形の熱分解性バインダーを含み、
前記層は、下記加熱条件Aにより加熱した後の燃焼-赤外吸収法による炭素量が0%?1.6%の範囲内であることを特徴とする加熱接合用シート。
<加熱条件A>
前記層を、10MPaの加圧下で、80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒にて昇温した後、300℃で2.5分間保持する。
【請求項3】
前記層は、金属微粒子を含み、
前記金属微粒子が、銀、銅、酸化銀、酸化銅からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱接合用シート。
【請求項4】
ダイシングテープと、
前記ダイシングテープ上に積層された請求項1?3のいずれか1に記載の加熱接合用シートと
を有することを特徴とするダイシングテープ付き加熱接合用シート。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人中川賢治は、主たる証拠として国際公開第2008/065728号(以下「文献1」という。)及び従たる証拠として特表2014-503936号公報(以下「文献2」という。)を提出し、請求項1?3に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当し、同法同条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1?4に係る特許は同法同条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?4に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

4 文献の記載
(1)文献1の記載と引用発明
ア 文献1の記載
文献1には、以下の事項が記載されている(下線は合議体が付加した。以下同じ)。
「技術分野
[0001]本発明は、常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物、その製造方法、それからなるシート状接合剤、および、上記金属粒子組成物を複数の金属製部材間に介在させ,加熱等により焼結性金属粒子同士を焼結させる金属製部材の接合方法に関する。」

「発明の効果
[0008]本発明の焼結性金属粒子組成物は、常温または加熱下で可塑性を有するため、比重の大きい金属粒子と比重の小さい揮発性分散媒とが分離することがなく、所定の形状を取りやすく、しかも、形状保持性に優れている。
本発明のシート状接合剤は、 常温または加熱下で可塑性を有するため、比重の大きい金属粒子と比重の小さい揮発性分散媒とが分離することがなく、取り扱い性に優れている。
本発明の焼結性金属粒子組成物の製造方法は、常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物を、効率よく簡易に製造することができる。
本発明の金属製部材の接合方法は、常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物を使用するので、複数の金属製部材同士を精度よく強固に接合させることができる。」

「[0011]
本発明の焼結性金属粒子組成物は、(A) 平均粒径が0.001?50μmである焼結性金属粒子100重量部と、(B)常温で固体状であり、金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発する分散媒3?100重量部とからなり、常温で固体状であり、常温または加熱下で可塑性を有することを特徴とする。
[0012]
焼結性金属粒子(A)の材質は、常温で固体であり、加熱により,加圧しつつ加熱により,加圧と超音波振動印加により,または,加圧と加熱と超音波振動印加により焼結しやすければよく、金,銀,銅,パラジウム,ニッケル,スズ,アルミニウムおよびそれらの合金が例示される。これらのうちでは銀,銅,ニッケルが好ましく、加熱焼結性,熱伝導性および導電性の点で銀が特に好ましい。銀粒子は表面の一部または全部が酸化銀になっていてもよい。」

「[0018]
本発明の焼結性金属粒子組成物における、分散媒(B)は、常温で固体状であり、焼結性金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発することが必要である。揮発性分散媒が常温、例えば5℃?38℃で固体状でないと、本発明の焼結性金属粒子組成物が常温で固体状にならないからである。常温で固体であるためには、融点が常温より高い必要がある。しかし、融点が常温に接近しすぎていると、気温の高い日や,室温が高い作業場では形状を保持できなくなるので、常温より4℃以上高いことが好ましい。具体的には、融点が40℃以上であることが好ましい。
もっとも、加熱焼結は一般に100?300℃で行われるので、分散媒(B)の融点は、この温度範囲の焼結温度より低く、その沸点はこの温度範囲の焼結温度以下であることが好ましい。その沸点は、具体的には、60℃?300℃であることが好ましい。沸点が60℃未満であると,焼結性金属粒子組成物を調製する作業中に溶媒が揮散しやすく、沸点が300℃より大であると,焼結後も分散媒(B)が残留しかねないからである。
[0019]
そのような分散媒(B)として、ピロガロール,p-メチルベンジルアルコール,o-メチルベンジルアルコール,シル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール,α-テルピネオール,1,4-シクロヘキサンジメタノール,1,4-シクロヘキサンジオール,ピナコールなどのアルコール類、ビフェニル,ナフタレン,デュレンなどの炭化水素類、ジベンゾイルメタン,カルコン,アセチルシクロヘキサンなどのケトン類、ラウリン酸,カプリン酸などの脂肪酸類が例示される。分散媒(B)は2種類以上を併用しても良いが、その混合物が常温において固体状であることが必要である。
[0020]
分散媒(B)の配合量は、焼結性金属粒子(A)100重量部あたり3?100重量部である。もっとも、焼結性金属粒子(A)の粒径、形状、比重などおよび分散媒(B)の性状によって適切な量が変わるので、焼結性金属粒子(A)との混合物が分散媒(B)の融点以上でペースト状になるのに十分な量であり、かつ、常温で半固体状または固体状になるのに十分な量である。本発明の焼結性金属粒子組成物は、本発明の目的に反しない限り、焼結性金属粒子(A)および分散媒(B)以外に、非金属系の粉体,金属化合物や金属錯体,チクソ剤,安定剤,着色剤等の添加物を少量ないし微量含有しても良い。
[0021]
本発明の焼結性金属粒子組成物は、常温または加熱下で可塑性を有する。常温での可塑性は、適度に含水した粘土鉱物が示すような性質である。すなわち、可塑性は、常温で半固体状であり,応力を加えることにより容易に塑性変形する性質を、意味する。例えば、「立方体状の焼結性金属粒子組成物を平板上に載せて放置しても変形しない。しかし、立方体上に硬質板を載せ,該硬質板を下方に押圧すると、該立方体は厚みが薄くなり水平方向に拡がる。ところが、押圧を中止しても,厚みも面積も元に戻らない」という性質である。加熱下での可塑性は、熱可塑性プラスチックが示すような性質である。すなわち、「常温で固体状であり,応力を加えても変形しないが、ある温度以上になると,半固体状となり,応力を加えると容易に塑性変形する」という性質である。
[0022]
本発明の焼結性金属粒子組成物は、常温においてシート状(フィルム状を含む)であることが好ましい。シートの大きさは限定されず、また、シートの厚さも限定されないが、50μm?1mmの均一な厚さであることが好ましい。
シート状であると、2枚の平坦な金属製部材間に介在させるのに便利である。シートの大きさ,形状は、接合しようとする金属製部材の大きさ,形状、あるいは、接合を必要とする大きさ,形状とするとことが好ましい。
シート状の焼結性金属粒子組成物は、シート状,フィルム状,線状などの金属(ただし、焼結性金属粒子(A)と同一の金属、または、異種の金属であっても焼結時に接着しやすい金属)片を内包していてもよい。
[0023]
本発明の焼結性金属粒子組成物は、常温で半固体状または固体状であるが、加熱により,分散媒(B)の融点以上の温度になると、分散媒(B)が溶融してペースト状となり、揮散しだす。もっとも、分散媒(B)の種類によっては、さらに昇温すると揮散しだす。分散媒(B)が揮散中あるいは完全に揮散後に、焼結性金属粒子(A)の焼結温度以上になると、焼結性金属粒子(A)が焼結し、冷却すると固形状の金属となる。焼結性金属粒子(A)が,焼結途上で金属製部材に接触していると、該固形状の金属は該金属製部材に接着する。この際、焼結性金属粒子(A)と金属製部材は,同一の金属であることが好ましいが、異種の金属であっても,焼結時に接着しやすい金属であればよい。
焼結性金属粒子(A)の加熱焼結温度は、分散媒(B)の融点以上であり、かつ、分散媒(B)の揮散可能な温度以上の温度である必要がある。
[0024]
本発明の焼結性金属粒子組成物を、複数の金属製部材の接合に使用する場合は、金属製部材間に介在させ、分散媒(B)の融点以上、あるいは、分散媒(B)の融点以上,かつ,分散媒(B)の揮散可能な温度以上であり、焼結性金属粒子(A)の焼結可能な温度以上に加熱する。この温度は、具体的には、分散媒(B)の融点が100℃以下である場合に、100℃以上400℃以下の温度であることが好ましく、150℃以上300℃以下であることがより好ましい。
100℃未満で焼結する金属は稀であり、400℃を超えると分散媒(B)が突沸的に蒸発して,金属製部材の形状に悪影響が出る恐れがあるからである。
このとき焼結性金属粒子組成物に、圧力、または、圧力と超音波振動を加えても良い。圧力を加えると焼結性が向上し、圧力と超音波振動を加えると焼結性がさらに向上する。
…(略)…
[0026]本発明の焼結性金属粒子組成物は、加熱すると,加圧しつつ加熱すると,加圧しつつ超音波振動を印加すると,あるいは,加圧,加熱しつつ超音波振動を印加すると、分散媒(B)が溶融し揮散し,焼結性金属粒子(A)が焼結することにより、強度と電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状金属となる。この固形状金属は、接触していた金属製部材、例えば、金メッキ基板,銀基板,銀メッキ金属基板,銅基板等の金属系基板,電気絶縁性基板上の電極等金属部分へ接着するので、金属系基板の接合、金属部分を有する電子部品,電子装置,電気部品,電気装置等の接合に有用である。特に焼結性金属粒子(A)が銀粒子の場合は、高い強度と極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有する固形状銀になるため、好ましい。そのような接合として、コンデンサ,抵抗等のチップ部品と回路基板との接合、ダイオード,メモリ,CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合、高発熱のCPUチップと冷却板との接合が例示される。」

「[0037]
[実施例1]
ガラス製容器に、市販の,還元法で製造された銀粒子をフレーク化した,1次粒子の平均粒径が4μm(レーザー回折法により測定)であるフレーク状の銀粒子100部と、分散媒(B)としてデュレン(和光純薬工業株式会社発売の試薬、融点80℃、沸点191℃)25部を投入し、90℃のホットプレート上でよく攪拌して均一なペースト状物とした。該容器をホットプレートから取り外して、25℃の雰囲気中に置いた。このペースト状の焼結性銀粒子組成物を,厚さ130μmのポリイミドシート2枚の間に挟んで、90℃に加熱されたプレス機で300μm厚となるように加圧した。ポリイミドシートごとプレス機から取り出して冷却し、ポリイミドシートから引き剥がして、シート状組成物を得た。このシート状組成物は、銀粒子が均一に分散したデュレンからなり、25℃では硬い固体状であり、90℃に昇温するとペースト状になった。すなわち、熱可塑性であった。
この焼結性銀粒子組成物の形状保持性、および、焼結性銀粒子組成物による固形状金属の接着強度を測定し、結果を表1にまとめて示した。以上の結果より、この焼結性銀粒子組成物は、フレーク状の銀粒子とデュレンの分離がなく、形状保持性に優れ、しかも、金属製部材を強固に接合するのに有用なことがわかった。
[0038]
[実施例2]
実施例1において、デュレンの代わりにピナコール(和光純薬工業株式会社発売の試薬、融点42℃、沸点175℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、焼結性金属粒子組成物を調製した。この焼結性銀粒子組成物は90℃ではペースト状である。この焼結性銀粒子組成物を,厚さ130μmのポリイミドシート2枚の間に挟んで、90℃に加熱されたプレス機で,300μm厚となるように加圧した。ポリイミドシートごとプレス機から取り出して冷却し、ポリイミドシートから引き剥がして、シート状組成物を得た。このシート状組成物は、銀粒子が均一に分散したピナコールからなり、25℃では硬い固体状であり、80℃に昇温するとペースト状になった。すなわち、熱可塑性であった。
この焼結性銀粒子組成物の形状保持性、および、焼結性銀粒子組成物による固形状金属の接着強度を測定し、結果を表1にまとめて示した。以上の結果より、この焼結性銀粒子組成物は、フレーク状の銀粒子とピナコールの分離がなく、形状保持性に優れ、しかも、金属製部材を強固に接合するのに有用なことがわかった。」

「請求の範囲
[1] (A) 平均粒径が0.001?50μmである焼結性金属粒子100重量部と、(B)常温で固体状であり,金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発する分散媒3?100重量部とからなり、常温または加熱下で可塑性を有することを特徴とする、焼結性金属粒子組成物。
[2] (A) 平均粒径が0.001?50μmである焼結性金属粒子100重量部と、(B)常温で固体状であり,金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発する分散媒3?100重量部とを、分散媒(B)の融点以上の温度で混合してペースト状とし、常温に冷却することを特徴とする、請求項1記載の焼結性金属粒子組成物の製造方法。
[3] 請求項1記載の焼結性金属粒子組成物からなりシート状であることを特徴とする、金属製部材の接合剤。
[4] 請求項1記載の焼結性金属粒子組成物または請求項3記載の接合剤を,複数の金属製部材間に介在させ、分散媒(B)の融点以上の温度に加熱して分散媒(B)を揮散させ、加熱により,加圧しつつ加熱により,加圧しつつ超音波振動印加により,または,加圧,加熱しつつ超音波振動印加により、金属粒子(A)同士を焼結させて複数の金属製部材同士を接合することを特徴とする、金属製部材の接合方法。」

イ 引用発明
(ア)文献1に記載された、常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物からなるシート状接合剤は、明細書の段落[0011]、[0012]の記載からみて、「(A)焼結性金属粒子と、(B)常温で固体状であり、金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発する分散媒とからなり、焼結性金属粒子(A)の材質は、常温で固体であり、加熱により焼結しやすければよく、金,銀,銅,パラジウム,ニッケル,スズ,アルミニウムおよびそれらの合金が例示される。」と解される。

(イ)文献1に記載された、シート状接合剤の分散媒(B)は、明細書の段落[0018]の記載からみて、「常温で固体状であり、焼結性金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発し、常温で固体であるためには、融点が常温より高く、加熱焼結の温度範囲の焼結温度より低く、その沸点は加熱焼結の温度範囲の焼結温度以下であることが好ましく、その温度範囲外であると,焼結性金属粒子組成物を調製する作業中に溶媒が揮散しやすく、または、焼結後も分散媒(B)が残留しかねないからである。」と解される。

(ウ)文献1に記載された、焼結性金属粒子組成物は、明細書の段落[0023]の記載からみて、「加熱により,分散媒(B)の融点以上の温度になると、分散媒(B)が溶融してペースト状となり、揮散しだし、分散媒(B)が揮散中あるいは完全に揮散後に、焼結性金属粒子(A)の焼結温度以上になると、焼結性金属粒子(A)が焼結し、冷却すると固形状の金属となり、焼結性金属粒子(A)が,焼結途上で金属製部材に接触していると、該固形状の金属は該金属製部材に接着し、焼結性金属粒子(A)の加熱焼結温度は、分散媒(B)の融点以上であり、かつ、分散媒(B)の揮散可能な温度以上の温度である。」と解される。

(エ)文献1に記載された、焼結性金属粒子組成物は、明細書の段落[0026]の記載からみて、「加熱すると、分散媒(B)が溶融し揮散し,焼結性金属粒子(A)が焼結することにより、固形状金属となり、この固形状金属は、接触していた金属製部材へ接着するので、金属系基板の接合、金属部分を有する電子部品,電子装置,電気部品,電気装置等の接合に有用である。」と解される。

(オ)そうすると、文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物からなるシート状接合剤であって、
焼結性金属粒子組成物は、(A)焼結性金属粒子と、(B)分散媒とからなり、
焼結性金属粒子(A)の材質は、常温で固体であり、加熱により焼結しやすく、金,銀,銅,パラジウム,ニッケル,スズ,アルミニウムおよびそれらの合金が例示され、
分散媒(B)は、常温で固体状であり、金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発し、そのため、融点は、常温より高く、加熱焼結の温度範囲の焼結温度より低く、その沸点は加熱焼結の温度範囲の焼結温度以下であり、
焼結性金属粒子組成物は、加熱により,分散媒(B)の融点以上の温度になると、分散媒(B)が溶融してペースト状となり、揮散しだし、分散媒(B)が揮散中あるいは完全に揮散後に、焼結性金属粒子(A)の焼結温度以上になると、焼結性金属粒子(A)が焼結し、冷却すると固形状の金属となり、焼結性金属粒子(A)が,焼結途上で金属製部材に接触していると、該固形状の金属は該金属製部材に接着する、焼結性金属粒子組成物であり、
焼結性金属粒子(A)の加熱焼結温度は、分散媒(B)の融点以上であり、かつ、分散媒(B)の揮散可能な温度以上の温度であり、
上記の固形状金属は、接触していた金属製部材へ接着するので、金属系基板の接合、金属部分を有する電子部品等の接合に有用である、金属製部材のシート状結合剤。」

イ 文献2の記載
次に、文献2には、以下の記載がある。
「【請求項1】
組成物であって、
約0.001マイクロメートル?約10マイクロメートルのd_(50)範囲を有し、約30wt%?約95wt%のペーストを含む金属粉と、
約50°C?約170°Cの軟化点を有し、約0.1wt%?約5wt%のペーストを含むバインダと、
少なくともバインダを溶解するのに十分な量の溶剤とを含む、組成物。
【請求項2】
金属粉は、金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、銀-パラジウム合金、または金-パラジウム合金を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
金属粉は銀粒子を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
金属粉はナノ粒子を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
金属粉はコーティングされた金属粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1つ以上の機能性添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物の層を含む膜であって、
約5ミクロン?約300ミクロンの乾燥厚を有する、膜。
【請求項8】
組成物の層は、高分子基板、ガラス基板、金属基板またはセラミック基板上にある、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
高分子基板はポリエステルを含む、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
高分子基板は剥離コーティングを含む、請求項8に記載の膜。
【請求項11】
金属粒子の膜を製造するための方法であって、
約0.001マイクロメートル?約10マイクロメートルのd50範囲を有する金属粉を含む材料を基板上に塗布するステップと、
基板上の材料を乾燥させて膜を形成するステップとを含む、方法。
【請求項12】
基板は高分子基板を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
材料を塗布するステップは、材料を印刷または鋳造するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
材料は連続層に印刷される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
材料は、多数の個別の形状を形成するよう印刷される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
材料を調製するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
構成要素に金属粒子の層を塗布するための積層プロセスであって、
高分子基板上に金属粒子の層を含む膜上に構成要素を配置して組立品を形成する工程と、
約50°C?約175°Cの熱を組立品に加える工程と、
約0.05MPa?約3MPaの圧力を組立品に加える工程と、
組立品から構成要素を外す工程とを含み、金属粒子の層が構成要素上に残り、高分子基板から分離する、プロセス。
【請求項18】
膜は構成要素と実質的に同じサイズである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
取付けのための方法であって、
基板に金属粒子の膜を塗布するステップと、
膜上にダイを配置して組立品を形成するステップと、
組立品に約40MPa未満の圧力を加えるステップと、
約175°C?約400°Cの温度で約0.25秒?約30分にわたって組立品を焼結するステップとを含む。方法。
【請求項20】
約0.5MPa?約20MPaの圧力が加えられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
約2.0MPa?約10MPaの圧力が加えられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
取付けのための方法であって、
ウェハの裏面に金属粒子の膜を塗布するステップと、
ウェハをダイシングして複数のダイを形成するステップと、
基板上に少なくとも1つのダイを配置して組立品を形成するステップと、
組立品に約40MPa未満の圧力を加えるステップと、
約175°C?約400°Cの温度で約0.25秒?約30分にわたって組立品を焼結するステップとを含む、方法。
【請求項23】
約2.0MPa?約10MPaの圧力が加えられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
取付けのための方法であって、
ダイの裏面に金属粒子の膜を塗布するステップと、
基板上にダイを配置して組立品を形成するステップと、
組立品に約40MPa未満の圧力を加えるステップと、
約175°C?約400°Cの温度で約0.25秒?約30分にわたって組立品を焼結するステップとを含む、方法。
【請求項25】
約2.0MPa?約10MPaの圧力が加えられる、請求項24に記載の方法。」

「【0022】
1つ以上の実施例に従うと、バインダは、乾燥後、膜に強度および可撓性をもたらし得る。バインダはまた、膜形成を容易にするために、基板の上に堆積されて、この基板に調合物を接着させ得る。バインダはまたさらに、膜を基板に接着させてもよく、この膜は積層プロセスによって基板に転写される。いくつかの実施例においては、さまざまな樹脂またはロジンがバインダに用いられてもよい。採用される積層プロセスおよび取付けプロセスに関連付けられる条件およびパラメータは、バインダの選択に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの非限定的な実施例においては、バインダは、約50°C?約170°Cの軟化点を有し得る。1つの非限定的な実施例においては、約90°Cの軟化点を有するバインダ、たとえばEastmanから市販されているForalynTMEの部分水素化ロジンエステルなど、が用いられてもよい。少なくとも一実施例においては、バインダは、約0.5重量パーセント?約5重量パーセントの調合物を構成し得る。」

「【0047】
1つ以上の実施例に従うと、ダイ取付けプロセスは、標準的な軟質はんだダイボンダ機器を用いてもよい。ピックアップ工具は、ダイシングテープからダイをピックアップし、力を加えてこれを加熱済み基板上に配置し得る。銀ペーストなどのペーストが、基板上、もしくは個々のダイの裏面上、ウェハ全体に印刷され得るか、または膜として塗布され得る。堆積は印刷によって実行されてもよく、または積層によって膜として施されてもよい。1つ以上の実施例に従った非限定的なプロセスの例を図7Aおよび図7Bに概略的に示す。図7Aは基板上への印刷を示し、図7Bは構成要素の裏面への印刷を示す。」

これらの記載を総合的に参酌すると、文献2には、ペーストを含む金属粉と、ペーストを含むバインダと、溶剤とを含む、組成物の層を含む膜であって、バインダは、膜を基板に接着させてもよい、膜、及び、ダイ取付けプロセスは、銀ペーストなどのペーストが、基板上、もしくは個々のダイの裏面上、ウェハ全体に膜として塗布され得るとの技術的事項が記載されている。

5 当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
ア 対比
請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。また、請求項2?4に係る発明を、順にそれぞれ「本件発明2」?「本件発明4」という。)と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「シート状結合剤」は、「常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物からなるシート状結合剤」であって、「焼結性金属粒子組成物」は、「加熱により」、「焼結性金属粒子(A)が焼結し」、「固形状金属となり」、「この固形状金属は、接触していた金属製部材へ接着するので、金属系基板の接合、金属部分を有する電子部品等の接合に有用である、シート状結合剤」であるから、「『加熱により焼結層となる層』を有する、『加熱接合用シート』」であるといえる。

(イ)引用発明において、分散媒(B)は、「常温で固体状」であるから、「23℃で固形」であると解される。

(ウ)そうすると、本件発明1と引用発明との間には、次の一致点と相違点がある。
<一致点>
「加熱により焼結層となる層を有し、
前記層は、23℃で固形の成分を含む、加熱接合用シート。」

<相違点>
<相違点1>
本件発明1は、「前記層は、23℃で固形の熱分解性バインダー」を含むのに対し、引用発明の「シート状結合剤」の「焼結性金属粒子組成物」は、「常温で固体状」である、「分散媒(B)」を含むものの、「熱分解性バインダー」を含むとは特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記層は、大気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、23℃から500℃まで差動型示差熱天秤による分析を行った際、500℃での重量減少量(%)から、300℃での重量減少量(%)を引いた値が、-1%?0%の範囲内である」のに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

イ 判断
(ア)相違点1について
a 「熱分解性バインダー」について、本件の特許明細書の段落【0044】には、以下のように記載されている。
「【0044】
本明細書において、「熱分解性バインダー」とは、加熱接合工程において熱分解させることが可能なバインダーをいう。…(略)…」
また、「加熱接合工程」について、同段落【0095】、【0097】には、以下のように記載されている。
「【0095】
次に、ピックアップした半導体チップ5を、加熱接合用シート3を介して被着体6にダイアタッチ(加熱接合)する(加熱接合工程)。被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。…(略)…」
「【0097】
前記加熱接合工程では、加熱により金属微粒子を焼結するとともに、必要に応じて熱分解性バインダーを熱分解させる。また、乾燥工程により揮発しきらなかった残留低沸点バインダーを揮発させる。加熱温度は、好ましくは180?400℃、より好ましくは190?370℃、さらに好ましくは200?350℃で行うことができる。…(略)…」

b 一方、引用発明において、「分散媒(B)は、常温で固体状であり、金属粒子(A)の焼結温度以下の温度で溶融し揮発し、そのため、融点は、常温より高く、加熱焼結の温度範囲の焼結温度より低く、その沸点は加熱焼結の温度範囲の焼結温度以下であり」、「焼結性金属粒子組成物は、加熱により,分散媒(B)の融点以上の温度になると、分散媒(B)が溶融してペースト状となり、揮散しだし、分散媒(B)が揮散中あるいは完全に揮散後に、焼結性金属粒子(A)の焼結温度以上になると、焼結性金属粒子(A)が焼結し、冷却すると固形状の金属となり、焼結性金属粒子(A)が,焼結途上で金属製部材に接触していると、該固形状の金属は該金属製部材に接着する、焼結性金属粒子組成物であり、焼結性金属粒子(A)の加熱焼結温度は、分散媒(B)の融点以上であり、かつ、分散媒(B)の揮散可能な温度以上の温度」であるから、上記4(1)イ(イ)も勘案すると、引用発明のシート状結合剤の焼結性金属粒子組成物の「分散媒(B)」は、加熱接合工程により、溶融して輝散(審決注:「輝散」の意味は揮発性の物質が蒸発して広がっていくこと)しだし、残留せず完全に輝散するものであるといえるものの、「加熱接合工程において熱分解させることが可能なバインダー」であると解することはできない。

c 更に、文献1の上記箇所以外を精査しても、文献1には、「加熱接合工程において熱分解させることが可能なバインダー」について、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点であり、また、引用発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。

(イ)相違点2について
上記(ア)のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないが、念のため、相違点2についても、以下において検討する。

上記(ア)bで検討したとおり、引用発明のシート状結合剤の焼結性金属粒子組成物の「分散媒(B)」は、加熱接合工程により、溶融して輝散しだし、残留せず完全に輝散するものであるといえるものの、文献1には、加熱接合用シート(シート状結合剤)が有する層に関し、「差動型示差熱天秤による分析」を行うことについて記載も示唆されておらず、引用発明において、シート状結合剤を、「差動型示差熱天秤」を用いて、第1の所定の温度(500℃)での重量減少量(%)から、第2の所定の温度(300℃)での重量減少量(%)を引いた値を算出し、当該値として「-1%?0%の範囲内」とすることを、当業者であれば容易になし得たということはできない。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。

(ウ)したがって、本件発明1は、引用発明であるということはできず、また、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)特許異議申立人中川賢治は、申立ての理由の「イ 引用発明の説明」において、「甲第1号証の「分散媒」は、熱で分解するものであるから本件特許発明1の「熱分解性バインダー」に相当する。これらの記載から甲第1号証には、下記のような発明が記載されている。「加熱により焼結層となる層を有し、前記層は23℃で固形の熱分解性バインダーを含む加熱接合用シート。」この発明を以下、「甲1発明」という。」と主張する(異議申立書12ページ下から6?1行を参照。甲第1号証は、文献1が対応する。)とともに、「ウ 理由」において、「[一致点] 加熱により焼結層となる層を有し、前記層は23℃で固形の熱分解性バインダーを含む加熱接合用シート。」と主張する(異議申立書17ページ10?12行を参照。)。
しかしながら、「熱分解性バインダー」の用語について、上記(ア)aで検討したように本件の特許明細書に定義されており、また、「熱分解性バインダー」の用語の技術的意味についての技術常識に照らしても、申立人の上記主張を採用することはできない。

(オ)特許異議申立人中川賢治は、申立ての理由の「ウ 理由」において、「[相違点1] 本件特許発明1は、焼結層は、大気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、23℃から500℃まで差動型示差熱天秤による分析を行った際、500℃での重量減少量(%)から、300℃での重量減少量(%)を引いた値が、-1%?0%の範囲内であるのに対し、甲1発明は、この点に関して具体的な記載がない点。」とし、「つまり、相違点1に係る構成は、甲1発明が当然有している性質を記載したのに過ぎないから、実質的な相違点といえるものではないし、このような測定法として記載することも当業者が容易になし得ることにすぎない。」と主張する(異議申立書17ページ13行?18ページ6行を参照。)。
しかしながら、上記構成を、甲1発明が当然有している性質であるとする技術常識を認めるに足る証拠は示されていない。そして、上記(イ)で相違点2について判断したとおり、引用発明において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。
よって、申立人の上記主張には理由がない。

(2)本件発明2について
ア 本件発明2
本件発明2は、再掲すると以下のとおりのものである。
「【請求項2】
加熱により焼結層となる層を有し、
前記層は、23℃で固形の熱分解性バインダーを含み、
前記層は、下記加熱条件Aにより加熱した後の燃焼-赤外吸収法による炭素量が0%?1.6%の範囲内であることを特徴とする加熱接合用シート。
<加熱条件A>
前記層を、10MPaの加圧下で、80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒にて昇温した後、300℃で2.5分間保持する。」

イ 対比
本件発明2と引用発明とを、上記(1)アと同様に対比すると、本件発明2と引用発明との間には、次の一致点と相違点がある。
<一致点>
「加熱により焼結層となる層を有し、
前記層は、23℃で固形の成分を含む、加熱接合用シート。」

<相違点>
<相違点3>
本件発明2は、「前記層は、23℃で固形の熱分解性バインダー」を含むのに対し、引用発明の「シート状結合剤」の「焼結性金属粒子組成物」は、「常温で固体状」である、「分散媒(B)」を含むものの、「熱分解性バインダー」を含むとは特定されいない点。
<相違点4>
本件発明2は、「前記層は、下記加熱条件Aにより加熱した後の燃焼-赤外吸収法による炭素量が0%?1.6%の範囲内であることを特徴とする加熱接合用シート。
<加熱条件A>
前記層を、10MPaの加圧下で、80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒にて昇温した後、300℃で2.5分間保持する。」のに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

ウ 判断
(ア)相違点3について
相違点3は相違点1と同じ相違点であるから、相違点3については、上記(1)ウ(ア)で相違点1に示した理由と同じ理由により、相違点3は、実質的な相違点であり、また、引用発明において、相違点3に係る本件発明2の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。

(イ)相違点4について
上記(ア)のとおりであるから、相違点4について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないが、念のため、相違点4についても、以下において検討する。

上記(1)イ(ア)bで検討したとおり、引用発明のシート状結合剤の焼結性金属粒子組成物の「分散媒(B)」は、加熱接合工程により、溶融して輝散しだし、残留せず完全に輝散するものであるといえるものの、文献1には、加熱接合用シート(シート状結合剤)が有する層に関し、加熱した後の炭素量について記載も示唆もされておらず、引用発明において、シート状結合剤として、「加熱条件A」により加熱した後の燃焼-赤外吸収法による炭素量を所定の数値範囲内のものを採用することを、当業者であれば容易になし得たということはできない。
したがって、引用発明において、相違点4に係る本件発明2の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。

(ウ)したがって、本件発明2は、引用発明であるということはできず、また、本件発明2は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)特許異議申立人中川賢治は、申立の理由の「ウ 理由」において、「[相違点2] 本件特許発明2は、焼結層は、下記加熱条件Aにより加熱した後の燃焼-赤外吸収法による炭素量が0%?1.6%の範囲内である。
<加熱条件A>
前記層を、10MPaの加圧下で、80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒にて昇温した後、300℃で2.5分間保持する。
それに対し、甲1発明は、この点に関して具体的な記載がない点。」とし、「つまり、相違点2に係る構成は、甲1発明が当然有している性質を記載したのに過ぎないから、実質的な相違点といえるものではないし、このような加熱条件(つまり焼結時の加熱条件に類似した条件)を記載することも当業者が容易になし得ることにすぎない。」と主張する(異議申立書19ページ1行?20ページ4行を参照。)。
しかしながら、上記構成を、甲1発明が当然有している性質であるとする技術常識を認めるに足る証拠は示されていない。そして、上記(イ)で相違点4について判断したとおり、引用発明において、相違点4に係る本件発明2の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。
よって、申立人の上記主張には理由がない。

(3)本件発明3、4について
本件発明3、4は、それぞれ、本件発明1または本件発明2に対して、さらに技術的事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)、(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明3は、引用発明であるということはできず、本件発明3は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また、本件発明4は、引用発明及び文献2に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、文献1に記載の発明であるということはできず、また、本件発明1?4は、文献1に記載の発明及び文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-29 
出願番号 特願2015-193896(P2015-193896)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 113- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 土谷 慎吾  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 恩田 春香
西出 隆二
登録日 2019-04-05 
登録番号 特許第6505571号(P6505571)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 加熱接合用シート、及び、ダイシングテープ付き加熱接合用シート  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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