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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1359865
審判番号 不服2019-7924  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-13 
確定日 2020-02-14 
事件の表示 特願2015-132120号「レバー式吐出器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月19日出願公開、特開2017-13853号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月30日の出願であって、平成30年10月18日付けで拒絶理由が通知され、平成30年12月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年3月11日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和元年6月13日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和元年6月13日にした手続補正の補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年6月13日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、平成30年12月20日に提出した手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の
「容器体(2)の口頸部(8)へ装着可能な装着部材(14)からシリンダ(16)を垂下し、シリンダ(16)内へ作動部材(26)の下半部を上方付勢状態で昇降可能に挿入するとともに、作動部材(26)のノズルヘッド(36)からノズル筒(46)を前側へ突出してなり、作動部材(26)の上下動により容器体(2)内の液体をシリンダ(16)内へ吸上げてノズル筒(46)から吐出するように構成した吐出器本体(12)と、
上記装着部材(14)よりノズルヘッド(36)の後側へ起立させた支持体(52)を有し、この支持体(52)の上端からヒンジ部(60)を介してレバー(62)を一体的に前方突出するとともに、このレバー(62)の長手中間部を、上記ノズルヘッド(36)の上面を覆う蓋兼用の押圧部(68)に形成したテコ部材(50)と、
を具備し、上記レバー(62)の先部(64)を操作すると、上記押圧部(68)がノズルヘッド(36)を押し下げるように構成したレバー式吐出器において、
上記容器体の底面(B)に、当該容器体を載置する面に対する滑り止め手段(N)を設けたことを特徴とする、レバー式吐出器。」を
「口頸部(8)を起立する容器体(2)と、
上記口頸部(8)へ装着された装着部材(14)からシリンダ(16)を垂下し、シリンダ(16)内へ作動部材(26)の下半部を上方付勢状態で昇降可能に挿入するとともに、作動部材(26)のノズルヘッド(36)からノズル筒(46)を前側へ突出してなり、作動部材(26)の上下動により容器体(2)内の液体をシリンダ(16)内へ吸上げてノズル筒(46)から吐出するように構成した吐出器本体(12)と、
上記装着部材(14)よりノズルヘッド(36)の後側へ起立させた支持体(52)を有し、この支持体(52)の上端からヒンジ部(60)を介してレバー(62)を一体的に前方突出するとともに、このレバー(62)の長手中間部を、上記ノズルヘッド(36)の上面を覆う蓋兼用の押圧部(68)に形成したテコ部材(50)と、
を具備し、上記レバー(62)の先部(64)を操作すると、上記押圧部(68)がノズルヘッド(36)を押し下げるように構成したレバー式吐出器において、
上記容器体の底面(B)に、当該容器体を載置する面に対する滑り止め手段(N)が形成されたことを特徴とする、レバー式吐出器。」とする補正を含むものである(下線は補正箇所に当審で付した。)。

そして、上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、容器体(2)について「口頸部(8)を起立する」ものであって、装着部材(14)が「上記口頸部(8)へ装着され」ることの限定を付加するものであり、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。

よって、本件補正における請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の限定的減縮)を目的とするものである。

2 独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例
(1-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2000-335618号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(なお下線は当審で付与した。)。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスペンサー及びディスペンサー用ジグに係り、特に操作部をノズル上方に設置したディスペンサー及びディスペンサー用ジグに関する。」

(イ)「【0002】
【従来の技術】例えばシャンプー等を内容物とするボトルタイプの容器には、内容物を定量取り出す機構であるディスペンサーが取り付けられている。このディスペンサーが設けられた容器では容器を傾けることなく単に定量ポンプの頭部に設けられた押ボタンを操作するだけで所定量の内容物を容器から取り出すことができる。
【0003】従来におけるこの種の一例を図7及び図8に示す。各図に示すようにディスペンサー容器1は、内容物4が充填される容器本体2と、内容物4を容器外部へ吐出するディスペンサー3とにより構成されている。また、ディスペンサー3は、大略すると可動部と固定部とにより構成されている。尚、図7に示されるディスペンサー3は押圧操作前の状態を、また図8は押圧操作された状態を示している。
【0004】可動部は、頭部の押下げ部5、ノズル6、ステム7、弁体8、コイルスプリング9等により構成されている。一方固定部はスクリューキャップ10を締結することにより容器本体2に固定される部分であり、スクリューキャップ10、シリンダ11、充填棒12、パイプ13、リング14等により構成されている。尚、10と14を併せてキャップ19とし、15、16、はディスペンサー3内における内容物の逆流を防止する弁、18はパッキンである。
【0005】上記可動部と固定部の間に空間部A、Bが形成されており、ディスペンサー3内にパイプ13よりノズル6に至る流体通路を形成している。また、操作前状態において流体通路内には内容物4が充填されるよう構成されている。ここで、図8に示すように、押下げ部5を押圧操作するとステム7及びこれに取り付けられた弁体8は下動し、空間部Aの面積は小さくなり、空間部A内の内容物は加圧され相対的に上動し空間部Bを通りノズル6より容器本体2の外部へ吐出される。
【0006】また、押圧操作を止めると、コイルスプリング9により可動部は上動するが、この時空間部Aは減圧状態となるため容器本体2内に内容物4はパイプ13を介して空間部A内に進入し、ディスペンサー3内に充填される。一方、内容物4がディスペンサー3の内部へ充填されることにより容器本体2内が減圧されると、容器本体2の外部の空気がステム7とリンク14との間の間隙及びシリンダ11に形成された空気孔17を介して容器本体2内に流入するため、内容物4のディスペンサー3内への充填は円滑に行われる構成とされていた。」

(ウ)「【0016】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例について図面と共に説明する。図1は、本発明の一実施例であるディスペンサー21を有するディスペンサー容器20の断面を示している。そのディスペンサー21の斜視図を図3に示す。尚、図1に示すディスペンサー容器20は、その大部分が先に図7?図9を用いて説明した容器1と構成が同じであるため、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0017】図1のディスペンサー容器20に設置されているディスペンサー21は、操作レバー28と固定支持部29を有することを特徴とするものである。操作レバー28は、操作部22と作用部23と支点部24とで構成されている。次に操作レバー28の各構成要素について図1、図3を参照して説明する。操作部22は、使用者が内容物4を取り出すために押圧操作を行う部位である。例えば図1のようにノズル6の上方に操作部22を位置することで、一方の手の親指を操作部22の上方に当てて、操作部22を下方向に押圧操作することができる。
【0018】作用部23は、操作部22で加えた力が作用する部位であり、その作用する力が押下げ部5を垂直下方向に動作させ、ステム7は下動し、先に説明したようにノズル6から内容物4を吐出させることができる。従って、この動作はディスペンサー容器20の中心軸に沿って、力が下方向に作用することであり、ディスペンサー容器20を安定させることができる。
【0019】また、作用部23は押下げ部5と結合していない。これは、操作レバー28は支軸25(支軸部)を中心として回動するものであるため、操作部23と押下げ部5の位置において、操作レバー28の操作時に必然的に図中左右方向に相対的な変位が発生する。よって、操作部23と押下げ部5を固定すると、ステム7を適正に下動させることができなくなる。従って、操作部23と押下げ部5を分離することにより、上記に示したように、ディスペンサー容器20の中心軸に沿って、力が下方向に作用することになる。その結果、使用性の向上を図ることができる。
【0020】支点部24は、押圧操作における動作の中心となる支軸25(支軸部)が取り付けられる部位であり、操作レバー28はこの支軸25(支軸部)を中心として固定支持部29に対し回動可能な構成とされている。即ち、この操作レバー28は、片手使用を可能とする。次に、固定支持部29の各構成要素について図1、図3を参照して説明する。
【0021】固定支持部29は、固定部27と支持部26とで構成されている。固定部27は、容器本体2とディスペンサー21を締結させる部位であり、支持部26を設けている。この固定部27は、キャップ19(図7参照)と一体化されている。この支持部26は、支点部24と同様に支軸25(支軸部)が取り付けられる部位であり、支軸25(支軸部)を中心として操作レバー28に対し、回動可能な構成とされている。 上記構成とされたディスペンサー21において、操作部22が操作されると、操作部22で加えられた力は作用部23に接する押下げ部5に掛かり、ノズル6から内容物4が吐出する。そして、上記の操作と同時に、吐出された内容物4をその手の掌で受取ることができる。従来は、本発明の操作部22が押下げ部5の位置であったため、一方の手で押下げ部5に押圧操作を行い、もう一方の手でノズル6から吐出される内容物4を受取らなければならなかった。本発明では、片手で押圧操作と同時に内容物4の受取りができ、使用性が向上する。
【0022】この際、操作レバー28に設けられた操作部22、作用部23、支点部24の位置関係に注目すると、これはテコの原理を応用したもので、支点部24の支軸25(支軸部)を中心として操作部22に加える力が作用部23の下に位置する押下げ部5を垂直下方向に作用する。これより、押し下げ部5を直接押し下げる場合より軽い力で内容物4を取り出すことができ、使用性の向上を図ることができる。
【0023】また、図2は、本発明の一実施例であるディスペンサー用ジグ31を有するディスペンサー容器30の断面を示している。そのディスペンサー用ジグ31の斜視図を図4に示す。尚、上記と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。本実施例に係るディスペンサー用ジグ31は、ディスペンサー容器30に対し、着脱可能な構成としたことを特徴とするものである。このディスペンサー用ジグ31は、大略すると操作レバー38と固定支持部39とにより構成されている。
【0024】次に操作レバー38の各構成要素について図2、図4を参照して説明する。操作レバー38は操作部32とノズルカバー部33と作用部34と支点部35との部位で構成されている。操作部32は上記と同様であり、片手で操作でき、その手で内容物4の受取りができる。
【0025】ノズルカバー部33は、ノズル6を覆い、操作部32と作用部34の中間部位である。作用部34は、操作部32で加えた力が作用する部位であり、押下げ部5とステム7を垂直下方向に移動させることにより、内容物4を吐出する。また、作用部34と押下げ部5とを分離し、着脱可能となっている。作用部34と押下げ部5を分離することは、上記に示したように、正常な押圧動作を行うためである。
【0026】支点部35は、押圧操作における動作の中心となる支軸25(支軸部)が取り付けられる部位であり、操作レバー38はこの支軸25(支軸部)を中心として固定支持部39に対し回動可能な構成とされている。従って、操作レバー38は片手使用を可能とし、ディスペンサー容器30に着脱可能である。
【0027】次に、固定支持部39の各構成要素について図2、図4を参照して説明する。固定支持部39は固定部37と支持部36との部位で構成されている。固定部37は、キャップ19を覆うように着脱できる部位であり、支持部36を設けている。即ち、固定部37はキャップ19に着脱可能である。支持部36は、支点部34と同様に支軸25(支軸部)が取り付けられる部位であり、支軸25(支軸部)を中心として操作レバー38に対し、回動可能な構成とされている。
【0028】この固定支持部39も操作レバー38と同様に、ディスペンサー容器30に着脱可能である。よって、このディスペンサー用ジグ31を従来のディスペンサー容器に取り付け、片手で操作することが可能となり、使用性及び汎用性の向上を図ることができる。上記した実施例の他実施例について、図5及び図6を用いて以下に説明する。
【0029】上記した各実施例では操作レバー28及び38と固定支持部29及び39のそれぞれを、支軸25(支軸部)を用いて回動可能にしていた。これに対し、図5に示す他実施例では、支軸25(支軸部)を用いず、操作レバー28及び38と固定支持部29及び39それぞれを折り曲げ可能に一体化することを特徴としている。図5は、この折り曲げた部分である,支軸25(支軸部)としての折曲げ部40を示している。この折曲げ部40は、支線41(支軸部)を中心軸として、操作レバー28、38と固定支持部29、39を折り曲げ可能な状態で継続している。この機構を用いることにより、支軸25(支軸部)を用いた場合よりも、部位の個数を削減することができ、容易に構成が組み立て可能である。
【0030】一方、図6に示す他実施例では、固定部27及び37に鍔部42を設けたことを特徴としている。鍔部42は操作レバー28及び38より下部位置に、側方に延出するよう形成されている。このような鍔部42を設けることで、押圧操作により内容物4を取り出す場合に、内容物4を受取る手の甲で鍔部42を押さえる又は、内容物4を受取る手の指を鍔部42にかけることができる。これにより、内容物4が少量の場合においても、吐出操作によってディスペンサー容器20の転倒防止をすることができる。」

(エ)「図1



(オ)「図3



(カ)「図5



(キ)上記【0003】の「10と14を併せてキャップ19と」するとの記載を参照すると、図1から、容器本体2が、キャップ19が装着される起立する口頸部を有する点が看取できる。

(ク)図1及び図3から、操作レバー28は長手中間部に作用部23を有しており、前記作用部23は頭部の押下げ部5の上面を覆う形状であることが看取できる。

(1-2)引用例1に記載された発明
上記(1-1)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「キャップ19が装着される起立する口頸部を有する容器本体2と、
可動部は、頭部の押下げ部5、ノズル6、ステム7、弁体8、コイルスプリング9等により構成され、固定部はスクリューキャップ10を締結することにより容器本体2に固定される部分であって、スクリューキャップ10、シリンダ11、充填棒12、パイプ13、リング14等により構成されており、上記可動部と固定部の間に空間部A、Bが形成されており、パイプ13よりノズル6に至る流体通路を形成し、押下げ部5を押圧操作するとステム7及びこれに取り付けられた弁体8は下動し、空間部Aの面積は小さくなり、空間部A内の内容物は加圧され相対的に上動し空間部Bを通りノズル6より容器本体2の外部へ吐出されるディスペンサー21と、
固定支持部29は、固定部27と支持部26とで構成されており、固定部27は、容器本体2とディスペンサー21を締結させる部位であり、支持部26を設けており、この固定部27は、キャップ19と一体化されており、この支持部26は、支点部24と同様に支軸25が取り付けられる部位であり、支軸25を中心として操作レバー28に対し、回動可能な構成とされ、操作レバー28は、長手中間部に作用部23を有し、前記作用部23は頭部の押下げ部5の上面を覆う形状である固定支持部29及び操作レバー28と、
を具備し、上記構成とされたディスペンサー21において、操作部22が操作されると、操作部22で加えられた力は作用部23に接する押下げ部5に掛かり、ノズル6から内容物4が吐出する、ディスペンサー容器20。」

(2)本願補正発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「口頸部」は、その機能及び構造から、本願補正発明の「口頸部(8)」に相当し、同様に、「容器本体2」は「容器体(2)」に、「シリンダ11」は「シリンダ(16)」に、「キャップ19」は「装着部材(14)」に、「可動部」は「作動部材(26)」に、「ディスペンサー21」は「吐出器本体(21)」に、「頭部の押下げ部5」は「ノズルヘッド(36)」に、「ノズル6」は「ノズル筒(46)」に、「支持部26」は「支持体(52)」に、「支軸25」は「ヒンジ部(60)」に、「操作レバー28」は「レバー(62)」に、「作用部23」は「押圧部(68)」に、「固定支持部29及び操作レバー28」は合わせて「テコ部材(50)」に、「ディスペンサー容器20」は「レバー式吐出器」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「可動部は、頭部の押下げ部5、ノズル6、ステム7、弁体8、コイルスプリング9等により構成され、固定部はスクリューキャップ10を締結することにより容器本体2に固定される部分であって、スクリューキャップ10、シリンダ11、充填棒12、パイプ13、リング14等により構成されて」いることは、図1を参照すると、起立する口頸部に装着されるキャップ19からシリンダ11が垂下しており、シリンダ11内へ可動部の下半部といえるステム7がコイルスプリング9により上方付勢状態で昇降可能に挿入されており、頭部の押下げ部5からノズル6が前側に突出していることであるから、本願補正発明の「上記口頸部(8)へ装着された装着部材(14)からシリンダ(16)を垂下し、シリンダ(16)内へ作動部材(26)の下半部を上方付勢状態で昇降可能に挿入するとともに、作動部材(26)のノズルヘッド(36)からノズル筒(46)を前側へ突出して」いることに相当する。

(ウ)引用発明の「上記可動部と固定部の間に空間部A、Bが形成されており、パイプ13よりノズル6に至る流体通路を形成し、押下げ部5を押圧操作するとステム7及びこれに取り付けられた弁体8は下動し、空間部Aの面積は小さくなり、空間部A内の内容物は加圧され相対的に上動し空間部Bを通りノズル6より容器本体2の外部へ吐出され、押圧操作を止めると、コイルスプリング9により可動部は上動するが、この時空間部Aは減圧状態となるため容器本体2内に内容物4はパイプ13を介して空間部A内に進入し、ディスペンサー3内に充填されるディスペンサー21」は、可動部である押下げ部5の上下動により容器本体2内の内容物4をシリンダ11内の空間部Aに吸上げてノズル6から外部へ吐出することであるから、本願補正発明の「作動部材(26)の上下動により容器体(2)内の液体をシリンダ(16)内へ吸上げてノズル筒(46)から吐出するように構成した吐出器本体(12)」に相当する。

(エ)引用発明の「固定部27と支持部26とで構成されており、固定部27は、容器本体2とディスペンサー21を締結させる部位であり、支持部26を設けており、この固定部27は、キャップ19と一体化されており、この支持部26は、支点部24と同様に支軸25が取り付けられる部位であり、支軸25を中心として操作レバー28に対し、回動可能な構成とされ」ることは、図1を参照すると、支持部26はキャップ19の後側に起立しており、支持部26の上端から支軸25を介して操作レバー28を前方に突出していることといえるから、本願補正発明の「上記装着部材(14)よりノズルヘッド(36)の後側へ起立させた支持体(52)を有し、この支持体(52)の上端からヒンジ部(60)を介してレバー(62)を」「前方突出する」ことに相当する。

(オ)引用発明の「操作レバー28は、長手中間部に作用部23を有し、前記作用部23は頭部の押下げ部5の上面を覆う形状である固定支持部29及び操作レバー28」は、作用部23が頭部の押下げ部5の上面を覆う形状であるから、蓋兼用と表現できるので、本願補正発明の「このレバー(62)の長手中間部を、上記ノズルヘッド(36)の上面を覆う蓋兼用の押圧部(68)に形成したテコ部材(50)」に相当する。

(オ)引用発明の「上記構成とされたディスペンサー21において、操作部22が操作されると、操作部22で加えられた力は作用部23に接する押下げ部5に掛かり、ノズル6から内容物4が吐出する」ことは、図1を参照すると、操作部22が操作レバー28の先部に設けられているから、本願補正発明の「上記レバー(62)の先部(64)を操作すると、上記押圧部(68)がノズルヘッド(36)を押し下げる」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「口頸部(8)を起立する容器体(2)と、
上記口頸部(8)へ装着された装着部材(14)からシリンダ(16)を垂下し、シリンダ(16)内へ作動部材(26)の下半部を上方付勢状態で昇降可能に挿入するとともに、作動部材(26)のノズルヘッド(36)からノズル筒(46)を前側へ突出してなり、作動部材(26)の上下動により容器体(2)内の液体をシリンダ(16)内へ吸上げてノズル筒(46)から吐出するように構成した吐出器本体(12)と、
上記装着部材(14)よりノズルヘッド(36)の後側へ起立させた支持体(52)を有し、この支持体(52)の上端からヒンジ部(60)を介してレバー(62)を前方突出するとともに、このレバー(62)の長手中間部を、上記ノズルヘッド(36)の上面を覆う蓋兼用の押圧部(68)に形成したテコ部材(50)と、
を具備し、上記レバー(62)の先部(64)を操作すると、上記押圧部(68)がノズルヘッド(36)を押し下げるように構成したレバー式吐出器。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点1>
支持体の上端からヒンジ部を介してレバー(62)を前方突出する構造が、本願補正発明では、「一体的」に前方突出するのに対して、引用発明では、支持部26、支軸25及び操作レバー28が別部材である点。
<相違点2>
本願補正発明では、「上記容器体の底面(B)に、当該容器体を載置する面に対する滑り止め手段(N)が形成された」のに対して、引用発明では、滑り止め手段が設けられていない点。

イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
引用例1には、「上記した各実施例では操作レバー28及び38と固定支持部29及び39のそれぞれを、支軸25(支軸部)を用いて回動可能にしていた。これに対し、図5に示す他実施例では、支軸25(支軸部)を用いず、操作レバー28及び38と固定支持部29及び39それぞれを折り曲げ可能に一体化することを特徴としている。図5は、この折り曲げた部分である,支軸25(支軸部)としての折曲げ部40を示している。この折曲げ部40は、支線41(支軸部)を中心軸として、操作レバー28、38と固定支持部29、39を折り曲げ可能な状態で継続している。この機構を用いることにより、支軸25(支軸部)を用いた場合よりも、部位の個数を削減することができ、容易に構成が組み立て可能である。」(【0029】)と記載されている。
そうすると、引用例1には、引用発明において、上記図5に図示された支軸25を用いず、操作レバー28及び38と固定支持部29及び39それぞれを折り曲げ可能に一体化することが記載されていると当業者は理解する。
したがって、引用発明において、上記記載に基づいて、上記相違点1に係る本願補正発明の事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-267383号公報の【請求項1】、【請求項3】、【0005】、【0009】、【0010】、【0012】、【0014】及び【0017】の記載を総合すると、「洗面所の洗面カウンター、浴室の洗面カウンター、流し台のカウンター等に載せておき、ポンプのヘッドを押して、ノズルから液剤を手の平に取って使用するネジ口付きボトルにおいて、安定した状態で設置するために、底面に摩擦抵抗値の大きい滑り止め構造を設ける点。」は、従来周知の事項である。
ここで、請求人は、令和元年6月13日の審判請求書において、特開2003-267383号公報は、化粧カバー部材2に嵌合する底蓋3に滑り止め構造を設けたものであって、ボトル本体41の底面に設けたものでない旨主張する。しかし、化粧カバーはボトル本体41と一体となる構造であるから、化粧カバー2及び底蓋3全体でボトルといえる構造であって、底面に摩擦抵抗値の大きい滑り止め構造を設けることによりポンプ使用時の安定性を確保するものである。
そして、引用発明のディスペンサー容器20は、シャンプー等の容器に用いるもの(【0002】)であるから、洗面所の洗面カウンター、浴室の洗面カウンター、流し台のカウンター等に設置するものであり、【0030】にも記載されているように、内容物が少量である場合に吐出操作によって転倒する可能性が高いといえるから、引用発明において、安定性を向上させることの動機付けが内在しているといえる。
そうすると、引用発明において、当該動機付けに従って、上記従来周知の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たことである。

<本願発明の効果について>
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知の事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)小括
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年6月13日にした手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年12月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 令和元年6月13日にした手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2記載事項並びに引用発明については、上記「第2 令和元年6月13日にした手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、容器体(2)について「口頸部(8)を起立する」ものであって、装着部材(14)が「上記口頸部(8)へ装着され」ることの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 令和元年6月13日にした手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比・判断」に記載したとおりの引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。
ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-04 
結審通知日 2019-12-11 
審決日 2019-12-24 
出願番号 特願2015-132120(P2015-132120)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 佐々木 正章
久保 克彦
発明の名称 レバー式吐出器  
代理人 今岡 憲  

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