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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1360023
審判番号 不服2018-16232  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-05 
確定日 2020-02-20 
事件の表示 特願2016-537951「内視鏡シースアーム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/047990、平成28年 9月23日国内公表、特表2016-529032〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月23日(パリ条約による優先権主張 2013年9月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月25日付けで拒絶理由が通知され、同年4月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月23日付けで拒絶査定されたところ、同年12月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年12月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
内視鏡シースであって、
(a)内視鏡のシャフトの全てまたは一部分を受けるように構成された管と、
(b)前記シースの近位端領域に付けられたかつ前記シースの近位端領域から延びるアームと
を備え、
前記内視鏡が前記内視鏡の近位端領域にライトポストを含み、
前記アームは、前記内視鏡に関して軸に関しておよび回転に関して前記シースを正しい位置に合わせるための前記ライトポストと連絡するものである一つ以上の特徴を有すると共に、
前記一つ以上の特徴は、前記シースの回転に関する移動を防止するために前記内視鏡の前記ライトポストのまわりに少なくとも部分的に延びるソケットであると共に、前記ソケットは、前記内視鏡に相対的な前記内視鏡シースの軸に関する移動を防止するために前記内視鏡に対して前記シースを軸に関してロックすると共に、
前記アームは、前記内視鏡の一部分を受けるカラーとして構成され、
前記カラーは、前記ソケットが前記カラーの中へと延びると共に前記ライトポストの全てまたは一部分を受けるように構成されるように、前記ソケットを含むと共に、
前記カラーは、前記内視鏡シースと前記内視鏡のショルダーとの間のシールを形成するOリングを含むと共に、
前記内視鏡シースは、ハブを含み、
前記アームおよび前記管は、前記ハブに接続されると共に前記ハブから延び、
前記ハブは、前記内視鏡シースを通じた流体の進入および退出を提供するポートを含むと共に、
前記カラーは、前記ハブに対して前記Oリングを留めるロッキングリングを含む、
内視鏡シース。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年7月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び5の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
内視鏡シースであって、
(a)内視鏡のシャフトの全てまたは一部分を受けるように構成された管と、
(b)前記シースの近位端領域に付けられたかつ前記シースの近位端領域から延びるアームと
を備え、
前記内視鏡が前記内視鏡の近位端領域にライトポストを含み、
前記アームは、前記内視鏡に関して軸に関しておよび回転に関して前記シースを正しい位置に合わせるための前記ライトポストと連絡するものである一つ以上の特徴を有すると共に、
前記一つ以上の特徴は、前記シースの回転に関する移動を防止するために前記内視鏡の前記ライトポストのまわりに少なくとも部分的に延びるソケットであると共に、前記ソケットは、前記内視鏡に相対的な前記内視鏡シースの軸に関する移動を防止するために前記内視鏡に対して前記シースを軸に関してロックすると共に、
前記アームは、前記内視鏡の一部分を受けるカラーとして構成され、
前記カラーは、前記ソケットが前記カラーの中へと延びると共に前記ライトポストの全てまたは一部分を受けるように構成されるように、前記ソケットを含むと共に、
前記カラーは、前記内視鏡シースと前記内視鏡のショルダーとの間のシールを形成するOリングを含む、
内視鏡シース。」

「 【請求項5】
前記内視鏡シースは、ハブを含み、
前記アームおよび前記管は、前記ハブに接続されると共に前記ハブから延び、
前記ハブは、前記内視鏡シースを通じた流体の進入および退出を提供するポートを含む、
請求項1から4までのいずれかの内視鏡シース。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を引用する請求項5に係る発明の「前記カラー」に、「前記カラーは、前記ハブに対して前記Oリングを留めるロッキングリングを含む」との限定を付加するものであって、補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許第7811228号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審において付与した。以下同様)

(引1a)「 A disposable sheath incorporating one embodiment of the invention is generally indicated by the reference number 10 in FIG. 1. The sheath 10 includes an elongated telescoping sleeve member 12. Sleeve member 12 comprises a proximal sleeve section 12a and a distal sleeve section 12b joined at telescoping joint 13. The telescoping engagement of proximal sleeve section 12a and distal sleeve section 12b permits a continuous range of endoscope lengths to be accommodated by sleeve member 12, as the length of sleeve member 12 adjusts to match the length of the endoscope.
Proximal sleeve section 12a is joined to an end portion 14 of a sleeve housing 16 that is preferably formed of a plastic such as acrylonitrile-butadiene-styrene. The sleeve housing 16 includes a collar portion 18 with a depending body portion 20 that facilitates handling of the sheath 10.
A recess 24 in the collar portion 18 communicates with a bore 26 in the body portion 20, the bore 26 communicating with the hollow interior 28 ( FIG. 1 ) of the sleeve member 12. Hollow interior 28 comprises interior 28a of proximal sleeve section 12a, and interior 28b of distal sleeve section 12b. As shown in FIG. 2 , the recess 24 is adapted to receive a housing 32 of an endoscope 34. A shaft 36 of the endoscope 34 is insertable in the bore 26 and in the hollow interior 28 of the sleeve member 12. The recess 24 can be of any shape that complements the shape of the endoscope housing 32. Although not shown, the endoscope shaft 36 contains a light transmitting member and a lens, the lens being provided at a distal end portion 38 of the shaft 36.
The collar portion 18 further includes an upwardly extending yoke member 42 with a mouth 44 for securely holding the endoscope housing light port 46 to prevent rotation of the shaft 36 within sleeve member 12.
An irrigation fitting 50 joined to the collar portion 18 supports an irrigation tube 52. The tube 52 communicates with the bore 26 in the body portion 20 through a fluid passage 54 in the collar portion 18. An O-ring 58 in the collar portion 18 is adapted to surround the endoscope shaft 36 to prevent fluid regression from the bore 26 into the recess 24. Grip assist elements 60 are formed on the body portion 20 to facilitate manual handling thereof.」(2欄55行?3欄27行、当審訳:「 本発明の一実施例に含まれる使い捨てシースは図1の参照番号10で示される。シース10は、一定の細長い入れ子式のスリーブ部材12を有する。スリーブ部材12は、入れ子式継ぎ手13でつながれた近位スリーブ部12aと遠位スリーブ部12bとで構成される。近位スリーブ部12aと遠位スリーブ部12bとの入れ子式結合が、スリーブ部材12が収納されることにより内視鏡の長さに適合するように、内視鏡の長さを連続的に調整可能とする。
近位スリーブ部12aは、好ましくはアクリロニトリルブタジエンスチレンのような樹脂で成形されたスリーブハウジング16の末端14に接続される。スリーブハウジング16は、シース10の操作を簡単にするために事情によっては、本体部分20と共にカラー部18を含む。
カラー部18にある凹部24は、スリーブ部材12の中空内部28(図1)に接続した本体部20の穴26に接続する。中空内部28は、近位スリーブ部12aの内部28aと遠位スリーブ部12bの内部28bとから構成される。図2に示されるように、凹部24は、内視鏡34のハウジング32を受け入れるようになっている。内視鏡34のシャフト36は、穴26とスリーブ部材12の中空内部28に挿入可能である。凹部24は、内視鏡のハウジング32の形状を補完する形状である。図示していないが、内視鏡のシャフト36は、導光部材とシャフト36の末端部分38にあるレンズを含んでいる。
カラー部18は、スリーブ部材12の中でシャフト36の回転を防止するために、内視鏡のハウジングのライトポート46をしっかりと保持するための開口44を伴う上方に張り出したヨーク部材42を含む。
カラー部18に接続した洗浄用部材50が洗浄用チューブ52を支持する。チューブ52は、カラー部18内の流動路54を通して本体部20の穴26に接続する。カラー部18内のOリング58は、凹部24への穴26からの逆流を防止するため、内視鏡シャフト36のまわりに取り付けられる。グリップ補助部材60は、その手動操作を容易にするために、本体部20に取り付けられる。」)

(引1b)「Referring to FIGS. 2 and 5 , the length of the endoscope shaft 36 is measured from a terminal end 92 at the housing 32 to an opposite terminal end 94 at the distal end portion 38. The terminal end 94 is also referred to as the viewing end or the tip of the endoscope.」(5欄38?42行、当審訳:「図2及び図5を参照すると、内視鏡シャフト36の長さは、ハウジング32の末端92から遠位端部38における反対側の末端94までの長さである。末端94は、内視鏡の視野末端又は先端とも呼ばれる。」)

(引1c)「Irrigation fluid such as saline is pumped or pulsed in any suitable known manner through the irrigation tube 52 to the fluid passage 54 and into the annular irrigation channel 86. The channel 86 extends through the bore 26 of the body portion 20 and through the interior 28 of the sleeve member 12 for communication with the end opening 70 of the sleeve member 12.
Before irrigation fluid in the irrigation channel 86 is expelled through the end opening 70, it is diverted through the distal gap 100 across the terminal end 94 of the endoscope shaft 36 by the flange 68. The diverted irrigation fluid flushes surgical debris from the terminal end 94 of the endoscope shaft 36.」(6欄14?26行、当審訳:「生理食塩水のような洗浄液が何らかのよく知られた方法で、洗浄チューブ52を通して流動路54へそして輪上の洗浄チャネル86の中にポンプ又は振動で流されます。チャネル86は、本体部20の穴26及びスリーブ部材12の末端開口70と連通するためのスリーブ部材12の内部28に連通します。
洗浄チャネル86の洗浄液は、末端開口70を通して排出される前に、フランジ68によって内視鏡シャフト36の末端94を横切って末端の間隙100を通して分流される。分流された洗浄液は、内視鏡シャフト36の末端94から、外科的汚物を洗い流す。」)

(引1d)「The predetermined step-back of the endoscope tip 94 also facilitates suction removal of a fluid droplet from the endoscope viewing end 94. For example, in some instances a drop of irrigation fluid may be left at the viewing end 94 of the endoscope shaft 36 when a flush cycle is completed. Since a field of view is taken through the viewing end 94, the residual drop of irrigation fluid can impede vision through the endoscope. Thus a slight suction pulse at the irrigation tube 52 will draw the obscuring droplet of irrigation fluid back into the irrigation channel 86. The flange 68 facilitates suction of the droplet from the viewing end 94 of the endoscope shaft 36.」(6欄41?51行、当審訳:「内視鏡先端94の予め決められた後退は、内視鏡の視野末端94から液滴の吸い上げ除去を容易にする。例えば、いくつかの場合は、洗浄液の滴は洗浄工程が完了したときに内視鏡のシャフト36の視野末端94に残るかもしれない。視野領域は、視野末端94を通して観察されるので、洗浄液の残滴は、内視鏡の視野を妨げる。このため洗浄チューブ52の僅かな吸引律動は、視野を妨げる洗浄液の液滴を、洗浄チャネル86の中に引き込む。フランジ68は内視鏡シャフト36の視野末端94から液滴の吸い上げを容易にする。」)

(引1e)「



(イ)引用文献1に記載された発明
a 上記(引1e)の図2より、上記(引1b)の「ハウジング32の末端92」は、「凹部24」の遠位端で「本体部20」の「穴26」に接している点が見て取れる。

b 上記aを踏まえれば、上記(ア)(引1a)?(引1e)より引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「シース10は、スリーブ部材12、本体部分20と、カラー部18とを有し、
カラー部18は、
スリーブ部材12の中空内部28に接続した本体部20の穴26に接続し、内視鏡34のハウジング32を受け入れるようになっている、内視鏡のハウジング32の形状を補完する形状である凹部24と、
スリーブ部材12の中でシャフト36の回転を防止するために、内視鏡のハウジングのライトポート46をしっかりと保持するための開口44を伴う上方に張り出したヨーク部材42と、
洗浄用チューブ52を支持する洗浄用部材50と、
その内部に、凹部24への穴26からの逆流を防止するために、内視鏡シャフト36のまわりに取り付けられたOリング58と、
を含み、
内視鏡34のシャフト36は、穴26とスリーブ部材12の中空内部28に挿入可能であり、
チューブ52は、カラー部18内の流動路54を通して本体部20の穴26に接続し、
内視鏡シャフト36は、ハウジング32の末端92から遠位端部38における反対側の末端94までであり、
ハウジング32の末端92は、凹部24の遠位端で本体部20の穴26に接しており、
生理食塩水のような洗浄液が、洗浄チューブ52を通して流動路54へそして輪上の洗浄チャネル86の中に流され、洗浄チャネル86の洗浄液は、末端開口70を通して排出され、
洗浄チューブ52は、視野を妨げる洗浄液の液滴を、洗浄チャネル86の中に引き込むシース10。」

イ 引用文献4及び5
(ア)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-117289号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(引4a)「【0061】
また、内視鏡2のライトガイドポスト2cは、シース本体部1cの一部を切り欠いて形成されるガイド溝1dに配置されるようになっている。このガイド溝1dには内視鏡固定機構であるライトガイドポストロックピン1eが同ガイド溝1dの内側面に向けて突没自在に配設されている。
【0062】
そして、内視鏡2の挿入部2aが内視鏡用シース1のシース挿入部1aの貫通孔1hに挿通され、同内視鏡2の先端面とワイパー部材11の先端部11cとが所定の力量で接触状態となる所定の位置に内視鏡2が配置されたとき、ライトガイドポスト2cはシース本体部1cのガイド溝1d内の所定の位置に配置されるようになっている。このとき、ガイド溝1d内の所定の部位にライトガイドポスト2cが配置された状態において、ライトガイドポストロックピン1eは、これに対応して形成されるライトガイドポスト2c側の穴部(特に図示せず)に嵌入するようになっている。これによって、内視鏡用シース1に対して内視鏡2が固設された状態となり、両者は一体に、かつその状態が維持されるように構成されている。」

(引4b)「図1



(イ)引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、実願昭60-109783号(実開昭62-18101号)のマイクロフィルム(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(引5a)「第5図は本考案の第2の実施例を示すものである。この実施例の保護カバー1は第1の実施例のものとほぼ同様であるが、次の点で異なる。まず、ライトガイド用口金5を挿入固定するための接続部材8の溝13をL字形状に沿って形成し、その長手方向の幅をライトガイド用口金5の外径より広く形成する。さらに、円周方向に沿う方向の幅はライトガイド用口金5の外径よりわずかに狭く形成してある。そして、硬性鏡2を保護カバー1に挿入して行き、ライトガイド用口金5を溝13の長手方向の部分に突き当るまで差し込み、突き当った後保護カバー1または硬性鏡2を回転してその溝13の円周方向の部分にライトガイド用口金5を嵌め込んで固定する。この円周方向の部分はライトガイド用口金5の外径より狭く形成してあるため、確実に嵌込み固定され、簡単に外れることはない。」(5頁14行?6頁10行)

(引5b)「



(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「シース10」、「内視鏡34」及び「シャフト36」は、それぞれ、本件補正発明の「内視鏡シース」、「内視鏡」及び「シャフト」に相当する。

(イ)引用発明の「スリーブ部材12の中空内部28」には、「内視鏡34のシャフト36」が挿入可能であるから、「内視鏡34のシャフト36」が挿入可能な「スリーブ部材12」は、本件補正発明の「(a)内視鏡のシャフトの全てまたは一部分を受けるように構成された管」に相当する。

(ウ)引用発明の「カラー部18」に含まれる「開口44を伴う上方に張り出したヨーク部材42」は、「シース10」の近位端領域にあることは明らかであるから、本件補正発明の「(b)前記シースの近位端領域に付けられたかつ前記シースの近位端領域から延びるアーム」に相当する。

(エ)引用発明の「内視鏡シャフト36は、ハウジング32の末端92から遠位端部38における反対側の末端94までであ」ることから「内視鏡のハウジング」は、「内視鏡34」の近位端領域にある。また、引用発明の「内視鏡のハウジングのライトポート46」は、本件補正発明の「前記内視鏡の近位端領域にライトポスト」に相当するから、引用発明の「内視鏡34」と、本件補正発明の「内視鏡」とは、「前記内視鏡が前記内視鏡の近位端領域にライトポストを含」んでいる点で一致する。

(オ)引用発明の「カラー部18」にある「開口44を伴う上方に張り出したヨーク部材42」における「開口44」は、「スリーブ部材12の中でシャフト36の回転を防止するために、内視鏡のハウジングのライトポート46をしっかりと保持するための」ものであるから、引用発明の「開口44」は、本件補正発明の「前記シースの回転に関する移動を防止するために前記内視鏡の前記ライトポストのまわりに少なくとも部分的に延びるソケット」に相当する。
引用発明の「スリーブ部材12の中でシャフト36の回転を防止するために、内視鏡のハウジングのライトポート46をしっかりと保持するための開口44を伴う上方に張り出したヨーク部材42」は、本件補正発明の「前記内視鏡に関して」「回転に関して前記シースを正しい位置に合わせるための前記ライトポストと連絡するものである一つ以上の特徴」及び「前記シースの回転に関する移動を防止するために前記内視鏡の前記ライトポストのまわりに少なくとも部分的に延びるソケットである」「前記一つ以上の特徴」を有するものに相当する。
そして、引用発明の「カラー部18」と、本件補正発明の「カラー」とは、「前記ライトポストの全てまたは一部分を受けるように構成されるように、前記ソケットを含む」点で一致する。

(カ)引用発明の「カラー部18」に含まれる「凹部24」は、「内視鏡34のハウジング32を受け入れるようになって」いることから、引用発明の「カラー部18」にある「開口44を伴う上方に張り出したヨーク部材42」は、本件補正発明の「前記内視鏡の一部分を受けるカラーとして構成され」ている「アーム」に相当する。

(キ)引用発明の「ハウジング32の末端92」は、本件補正発明の「前記内視鏡のショルダー」に相当する。そして、引用発明の「ハウジング32の末端92」は、「凹部24の遠位端で本体部20の穴26に接して」いるから、「カラー部18」「の内部に、凹部24への穴26からの逆流を防止するために、内視鏡シャフト36のまわりに取り付けられたOリング58」は、「シース10」と「内視鏡34」の「ハウジング32の末端92」との間にシールを形成するものであるといえるから、引用発明の「カラー部18」と、本件補正発明の「カラー」とは、「前記内視鏡シースと前記内視鏡のショルダーとの間のシールを形成するOリングを含む」点で一致する。

(ク)引用発明の「本体部20」は、本件補正発明の「ハブ」に相当する。そして、引用発明の「カラー部18は、スリーブ部材12の中空内部28に接続した本体部20の穴26に接続し」ていることから、引用発明の「カラー部18」にある「ヨーク部材42」と「スリーブ部材12」は、「本体部20」に接続されると共に「本体部20」から延びているといえる。すると、引用発明と本件補正発明とは、「前記アームおよび前記管は、前記ハブに接続されると共に前記ハブから延び」ている点で一致する。

(ケ)引用発明の「洗浄用チューブ52」は、「生理食塩水のような洗浄液」を「洗浄チャネル86」に流し、また、「視野を妨げる洗浄液の液滴を、洗浄チャネル86の中に引き込む」ものであるから、引用発明の「洗浄用チューブ52を支持する洗浄用部材50」は、本件補正発明の「前記内視鏡シースを通じた流体の進入および退出を提供するポート」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)「内視鏡シースであって、
(a)内視鏡のシャフトの全てまたは一部分を受けるように構成された管と、
(b)前記シースの近位端領域に付けられたかつ前記シースの近位端領域から延びるアームと
を備え、
前記内視鏡が前記内視鏡の近位端領域にライトポストを含み、
前記アームは、前記内視鏡に関して回転に関して前記シースを正しい位置に合わせるための前記ライトポストと連絡するものである一つ以上の特徴を有すると共に、
前記一つ以上の特徴は、前記シースの回転に関する移動を防止するために前記内視鏡の前記ライトポストのまわりに少なくとも部分的に延びるソケットであると共に、
前記アームは、前記内視鏡の一部分を受けるカラーとして構成され、
前記カラーは、前記ライトポストの全てまたは一部分を受けるように構成されるように、前記ソケットを含むと共に、
前記カラーは、前記内視鏡シースと前記内視鏡のショルダーとの間のシールを形成するOリングを含むと共に、
前記内視鏡シースは、ハブを含み、
前記アームおよび前記管は、前記ハブに接続されると共に前記ハブから延び、
前記内視鏡シースを通じた流体の進入および退出を提供するポートを含む、
内視鏡シース。」

(相違点1)アーム及びソケットが、本件補正発明は、前者について、前記内視鏡に関して「軸に関して」前記シースを正しい位置に合わせるための前記ライトポストと連絡するものであり、後者について、「内視鏡に相対的な前記内視鏡シースの軸に関する移動を防止するために前記内視鏡に対して前記シースを軸に関してロック」するものであって、「前記カラーの中へと延びる」ものであるという「一つ以上の特徴」を有するものであるのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

(相違点2)前記内視鏡シースを通じた流体の進入および退出を提供するポートが、本件補正発明は「ハブ」に含まれるのに対し、引用発明は「カラー部18」に含まれる点。

(相違点3)「カラー」が、本件補正発明は、「前記ハブに対して前記Oリングを留めるロッキングリングを含む」のに対し、引用発明はそのような特定がない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について
(ア)引用文献4及び5に記載された周知技術について
a 引用文献4に記載の「内視鏡用シース1」、「シース本体部1c」、「ガイド溝1d」、「内視鏡2」及び「ライトガイドポスト2c」は、それぞれ、引用発明の「シース10」、「カラー部18」、「開口44」、「内視鏡34」及び「ライトポート46」に相当する。

b 引用文献4に記載された「ガイド溝1d」は、「シース本体部1cの一部を切り欠いて形成され」たものであるから、「ガイド溝1d」は「シース本体部1c」の中に形成したものであるといえる。
また、「内視鏡2のライトガイドポスト2c」を「配置」し、「ライトガイドポスト2c」が「シース本体部1cのガイド溝1d内の所定の位置に配置され」たとき、「ガイド溝1d内の所定の部位にライトガイドポスト2cが配置された状態において、ライトガイドポストロックピン1eは、これに対応して形成されるライトガイドポスト2c側の穴部(特に図示せず)に嵌入する」ことによって、「内視鏡用シース1に対して内視鏡2が固設された状態」となるものであるから、引用文献4の「ライトガイドポストロックピン1e」は、「内視鏡2」に関して軸に関して「内視鏡用シース1」を正しい位置に合わせるためのものであるといえる。
そうすると、引用文献4の「ライトガイドポストロックピン1e」を有する「シース本体部1c」は、「内視鏡用2」に関して軸に関して「内視鏡用シース1」を正しい位置に合わせるための「ライトガイドポスト2c」と連絡するものであり、「ライトガイドポストロックピン1e」を有する「ガイド溝1d」が、「内視鏡2」に相対的な「内視鏡用シース1」の軸に関する移動を防止するために「内視鏡2」に対して「内視鏡用シース1」を軸に関してロックするものであって、「ガイド溝1d」が「シース本体部1c」の中に形成されているという特徴を有しているといえる。

c 引用文献5に記載された「保護カバー1」、「接続部材8」、「溝13」、「硬性鏡2」及び「ライトガイド用口金5」は、それぞれ、引用発明の「シース10」、「カラー部18」、「開口44」、「内視鏡34」及び「ライトポート46」に相当する。

d 引用文献5に記載された「溝13」は、「接続部材8」に「L字形状に沿って形成」されたものであるから、引用文献5の「溝13」は、「接続部材8」の中に形成されたものであるといえる。
また、引用文献5の「溝13」は、「ライトガイド用口金5を挿入固定するためのものであって」、「硬性鏡2を保護カバー1に挿入して行き、ライトガイド用口金5を溝13の長手方向の部分に突き当るまで差し込み、突き当った後保護カバー1または硬性鏡2を回転してその溝13の円周方向の部分にライトガイド用口金5を嵌め込んで固定する」から、引用文献5の「L字形状に沿って形成」された「溝13」は、「硬性鏡2」に関して軸に関して「保護カバー1」を正しい位置に合わせるための「ライトガイド用口金5」と連絡するものであるといえる。
すると、引用文献5の「L字形状に沿って形成」された「溝13」を有する「接続部材8」は、「硬性鏡2」に関して軸に関して「保護カバー1」を正しい位置に合わせるための「ライトガイド用口金5」と連絡するものであり、「L字形状に沿って形成」された「溝13」が、「硬性鏡2」に相対的な「保護カバー1」の軸に関する移動を防止するために「硬性鏡2」に対して「保護カバー1」を軸に関してロックするものであって、「溝13」が「接続部材8」の中に形成されているという特徴を有しているといえる。

e 以上a?dより、引用発明の「カラー部18」にある「ヨーク部材42」(本件補正発明における「アーム」)に対応するものが、「内視鏡34」に関して軸に関して「シース10」を正しい位置に合わせるための「ライトポート46」と連絡するものであり、「開口44」(本件補正発明における「ソケット」)が、「内視鏡34」に相対的な「シース10」の軸に関する移動を防止するために「内視鏡34」に対して「シース10」を軸に関してロックするものであって、「開口44」が「カラー部18」の中に形成されているという特徴有することは、周知の技術事項(以下「周知技術」という。)であるといえる。

(イ)判断
「スリーブ部材12の中でシャフト36の回転を防止するために、内視鏡のハウジングのライトポート46をしっかりと保持するための開口44」を、どの位置にどのように形成するかは、使用する内視鏡の種類等に応じ適宜設定されるものであって、上記(ア)で検討したとおり、引用発明の「カラー部18」にある「ヨーク部材42」に対応するものが、「内視鏡34」に関して軸に関して「シース10」を正しい位置に合わせるための「ライトポート46」と連絡するものであり、「開口44」が、「内視鏡34」に相対的な「シース10」の軸に関する移動を防止するために「内視鏡34」に対して「シース10」を軸に関してロックするものであって、「開口44」が「カラー部18」にある「ヨーク部材42」の中に形成されているという特徴有することは、周知の技術事項であるといえるから、上記周知技術を引用発明に適用し、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2について
引用発明の「洗浄用チューブ52を支持する洗浄用部材50」は、「シース10」の近位端領域にあれば良い程度のものであって、近位端領域にある「カラー部18」及び「本体部分20」のどちらに配置するかは、適宜選択されるものであるから、引用発明の「洗浄用チューブ52を支持する洗浄用部材50」を「本体部分20」に含ませることは、当業者が容易に想到できたことである。

ウ 相違点3について
Oリングを、Oリングを動かなくするためのロッキングリングと共に取り付けることは、当該技術分野において常套手段にすぎないから、引用発明において「カラー部分18」が「本体部分20」に対して「Oリング58」を止めるロッキングリングを含むことは、当業者が容易に想到できたことである。

エ 効果に関して
本件補正発明の奏する作用効果は、引用文献1、4及び5に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年12月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年7月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の請求項1に係る発明に対する拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3?6に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許第7811228号明細書
引用文献3:特開2012-254188号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2007-117289号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:実願昭60-109783号(実開昭62-18101号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開平8-243071号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記カラーは、前記ハブに対して前記Oリングを留めるロッキングリングを含む」との限定事項及び補正前の請求項5に係る発明の限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献4及び5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献4及び5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-17 
結審通知日 2019-09-24 
審決日 2019-10-07 
出願番号 特願2016-537951(P2016-537951)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹荒井 隆一  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 福島 浩司
信田 昌男
発明の名称 内視鏡シースアーム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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