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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1360026 |
審判番号 | 不服2019-767 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-21 |
確定日 | 2020-02-20 |
事件の表示 | 特願2018-67940「包装体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月28日出願公開、特開2018-100131〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年10月27日を出願日とする特願2015-210967号の一部を、平成29年3月15日に新たな特許出願とし、さらにその一部を平成30年3月30日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年6月12日付け :拒絶理由通知書 平成30年8月10日 :意見書及び手続補正書の提出 平成30年10月15日付け:拒絶査定 平成31年1月21日 :審判請求書の提出及び同時に手続補正書の提出 令和元年8月19日付け :拒絶理由通知書 令和元年10月21日 :意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、令和元年10月21日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のものである。 「【請求項1】 電子レンジで加熱される物体である被加熱物を収容可能な包装体であって、 シートと、 前記シートに設けられる光沢層とを含み、 前記光沢層は少なくともインキ剤を含み、 前記インキ剤は少なくともアルミペースト、希釈剤、および、着色剤を含み、 前記インキ剤が塗膜を構成した状態において、前記光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲に含まれ、 前記インキ剤が塗膜を構成した状態において、前記光沢層における前記インキ剤の塗布量は1.9?5.2g/m^(2)の範囲に含まれ、 前記光沢層は不連続である部分を含む 包装体。 【請求項2】 前記シートにより構成される袋と、 前記袋の内部に収容される前記被加熱物とを備える 請求項1に記載の包装体。」 第3 当審が通知した拒絶の理由 当審が通知した上記令和元年8月19日付け拒絶理由のうちの理由1の1)及び2)、理由2の1)、理由3の1)の概要は、次のとおりのものである。なお、本願の請求項1等に係る発明を、以下、「本願発明1」等という。 ・理由1(明確性) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が以下の1)及び2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 1)本願の特許請求の範囲の【請求項1】には、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲に含まれ」と記載されているが、ここで特定されている「アルミペースト」の技術的意味を把握することができず、本願発明1が不明確となっている。また、本願発明1を引用する本願発明2についても同様の理由により、不明確である。 2)本願の特許請求の範囲の【請求項1】には、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲に含まれ」と記載されているが、光沢層におけるアルミペーストの重量比とは何に対するどのような状態でのアルミペーストの重量比であるのかが明確でない。また、本願発明1を引用する本願発明2についても同様の理由により、不明確である。 ・理由2(実施可能要件) 本件出願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が以下の1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 1)本願の特許請求の範囲の【請求項1】には、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲に含まれ」と記載されているが、本願の明細書には、「アルミペースト」について、含有する成分や、それらの成分比率について何ら記載されておらず、また、「アルミペースト」との記載のみでは、技術常識を踏まえても、アルミペースト中のアルミニウム粉の含有比率はもちろん、他の含有成分や、それらの成分比率について把握できるものではない。よって、本願の明細書に記載された「『包装体の美観は高いことが好まし』く、『美観を高める手段の1つとして、高い輝度を有するインキ剤を含む光沢層をシートに設ける』ことが行われ、『光沢層に含まれるインキ剤としては、一般的にアルミペーストを含む金インキまたは銀インキが使用される』が、『その光沢層を含む包装体が電子レンジで加熱される場合、光沢層に含まれるアルミペーストがマイクロ波に反応してスパークし、包装体が劣化するおそれがある。』」との課題を解決するために、光沢層にどの様な「アルミペースト」を4.7%?37.2%の範囲で含有させればよいのか、明らかではなく、 本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。また、本願発明1を引用する本願発明2についても同様の理由により、本願の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。 ・理由3(サポート要件) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が以下の1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 1)発明の詳細な説明で評価している特定のアルミペースト(試料番号1?20)について、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」のものが、アルミペーストがマイクロ波に反応してスパークして包装体が劣化するのを防げるとしても、発明の詳細な説明の記載からは、あらゆる種類のアルミペーストを用いた場合でも、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」とすればすべからく上記理由2の1)に示した本願の明細書に記載された課題を解決できるとはいえないから、本願発明1において、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」とすることにより、発明の課題が解決できるといえるものではない。よって、本願発明1は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。また、本願発明1を引用する本願発明2についても、同様の理由により発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 <引用文献等一覧> 1.日本規格協会、「JIS工業用語大辞典 第5版」、97頁の「アルミニウムペースト」の項、2001年3月30日 2.特開2006-137474号公報 3.特開平8-276917号公報 第4 当審の判断 1 理由1(明確性)1)について (1)請求項1の記載 本願の特許請求の範囲の【請求項1】の記載は、上記第2に示したとおりのものであり、当該記載によると、「包装体」は「シート」と「光沢層」を含み、その「光沢層」は、「アルミペースト」、「希釈剤」、および、「着色剤」を少なくとも含む「インキ剤」を少なくとも含み、「インキ剤が塗膜を形成した状態」において、その「光沢層」における、「アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」に含まれるとされる。 (2)本願発明の課題について 本願の明細書の段落【0004】には、本願発明が解決しようとする課題について、「包装体の美観は高いことが好まし」く、「美観を高める手段の1つとして、高い輝度を有するインキ剤を含む光沢層をシートに設ける」ことが行われ、「光沢層に含まれるインキ剤としては、一般的にアルミペーストを含む金インキまたは銀インキが使用される」が、「その光沢層を含む包装体が電子レンジで加熱される場合、光沢層に含まれるアルミペーストがマイクロ波に反応してスパークし、包装体が劣化するおそれがある。」と記載され、この課題の解決については、「本願発明者が実施した試験によれば、光沢層50におけるアルミペーストの重量比が4.7?37.2%の範囲に含まれる場合、包装体1が電子レンジにより加熱されたときにスパークが発生しないことが確認された。包装体1によれば、光沢層50におけるアルミペーストの重量比が37.2%であるため、電子レンジにより加熱された場合でも劣化しにくい。」(段落【0032】)及び「本願発明者が実施した試験によれば、光沢層50におけるアルミペーストの重量比が18.6?37.2%の範囲に含まれる場合、より高い輝度がユーザーに与えられることが確認された。包装体1によれば、光沢層50におけるアルミペーストの重量比が37.2%であるため、より高い美観を有する。」(段落【0033】)と記載されている。そうすると、上記理由2の1)に示した「『包装体の美観は高いことが好まし』く、『美観を高める手段の1つとして、高い輝度を有するインキ剤を含む光沢層をシートに設ける』ことが行われ、『光沢層に含まれるインキ剤としては、一般的にアルミペーストを含む金インキまたは銀インキが使用される』が、『その光沢層を含む包装体が電子レンジで加熱される場合、光沢層に含まれるアルミペーストがマイクロ波に反応してスパークし、包装体が劣化するおそれがある。』」ことを本願発明が解決しようとする課題とするものである。 (3)アルミペーストとの関係について ア 一般に、電子レンジで照射されるマイクロ波に反応してスパークするものが金属であることは技術常識であり、請求項1に記載された「光沢層」についてみれば、アルミペーストに含まれるアルミニウム粉等の金属成分がスパークを引き起こす要因であることが明らかである。 イ 一方、アルミペーストについて、本願の明細書において、アルミニウム粉以外の含有する成分や、それらの成分の比率について記載はない。また、一般に「アルミペースト(アルミニウムペースト)」とは、「アルミニウム粉をミネラルスピリットなどに分散してペースト状にしたもの」(引用文献1)であり、「アルミニウム粉」のみを含有するものではなく、「アルミニウム粉」のほかに、アクリル樹脂や溶剤成分を含有するもの(例えば、引用文献2の段落[0035]「アルミニウムペースト中のアルミニウム微粉末の大きさは1μm?3μm、アルミニウム含有量としては60%にして、20%をアクリル樹脂、残り20%を溶剤成分としたものを用いた。」)も知られている。さらに、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比率についても、上記引用文献2においては「60%」であるが、引用文献3の段落[0052]の記載によれば、「東洋アルミニウム(株)製アルミニウムペースト(アルミニウム粉末を75重量%含有)」とあり、アルミペースト中の成分比率が「75重量%」のものも存在する。 そうすると、本願の請求項1の単なる「アルミペースト」との記載のみでは、アルミペースト中のアルミニウム粉の含有比率はもちろん、他の含有成分や、それらの成分比率について把握できるものではない。 ウ しかも、上記のように、本願発明1は、上記本願発明が解決しようとする課題の解決のために、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」とするものであるから、スパークの原因となるアルミニウム粉等の金属成分が、アルミペースト中にどの程度含まれているのか明確でなければ、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」に含まれる、スパークの原因となるアルミニウム粉等の金属成分の含有量が記載されていることにならない。 エ 以上のことから、本願発明1において、「アルミペースト」に含まれるアルミニウム粉等の金属成分が、「アルミペースト」中にどの程度含まれているのかが特定されていないから、「アルミペースト」の技術的意味を理解することができない。 よって、本願発明1は不明確である。また、本願発明1を引用する本願発明2についても同様の理由により、不明確である。したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (4)請求人の主張について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由1(特許法第36条第6項第2号)について>の欄において、次のとおり主張している。 (ア)「引用文献1は、「アルミペースト(アルミニウムペースト)」が技術用語として確立しているものであることを示し、その成分についても、アルミニウム粉の他、ミネラルスピリットなどを含有するものであることが技術常識であることを示している。したがって、光沢を有する一般的なインキ剤に含有されるアルミペーストについても、その成分及び成分比がある程度の範囲内に収まることは当業者の技術常識というべきであり、本願発明1でいう「アルミペースト」についても、一般的なアルミペーストとして、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比が40%?75%の範囲内に収まるものであると理解することができる。仮に、「40%」を下回る場合、インキに求められる輝度が充分に確保することができず、仮に「75%」を上回る場合、アルミニウム粉が凝集して分散し難くなるということが当業者の技術常識として認識されているからであり、こうした観点でアルミペーストに関する当業者の技術常識が形成されているといえる。」(3頁下から19行?下から9行) (イ)「これら特許文献で記載されているとおり、一般的なアルミペーストとして、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比が40%?75%の範囲内に収まるものであると理解することができる。 したがって、本願発明の「アルミペースト」とは、当業者であれば、技術常識を踏まえて、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比が40%?75%の範囲内に収まるアルミペーストであると把握することができる。なお、提出する資料4?7に係る発明の技術分野は、本願発明1の技術分野とは異なるものの、市販されているアルミペーストの成分比が開示されているために提出している。つまり、特殊用途のために作製されたアルミペーストではなく、一般用途のために作製されたアルミペーストの事例を示すべく提出しているのである。」(4頁14行?23行) (ウ)「上述したように、本願発明1の「アルミペースト」とは、当業者であれば、技術常識を踏まえて、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比が40%?75%の範囲内に収まるアルミペーストであると把握することができる。このため、本願発明1でいう「アルミペースト」がどのようなものなのか定まっていて、スパークの原因となるアルミニウム粉等の金属成分がどの程度含有しているのか把握することができ、本願発明1の技術的範囲は実質的に定まっているといえる。」(5頁下から12行?下から7行) イ 当審の判断 請求人が主張するように、「アルミペースト」が技術用語として確立しているとしても、上記(3)ウで述べたように、アルミペースト中のアルミニウム粉の重量比がスパークに影響するものであるから、本願発明1において「アルミペースト」という特定のみで発明が明確であるとはいえない。 そして、「アルミペースト」という技術用語により、アルミペーストが含有する成分や、それらの成分比率が定まることまでは、当業者の技術常識として認識されているとはいえない。請求人は、特許文献を提示し、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比が40%?75%の範囲内に収まることを主張している。請求人が提示した資料4(特開平10-176120号公報)の段落【0031】には、「シルバーライン社製」の「アルミペースト」である「商品名:SS-6246AR」なる製品の成分比率が「アルミ粉末量64重量%」であることが、資料5(特開平11-193362号公報)の段落【0010】には、「大和金属粉工業(株)製」の「アルミニウムペースト」である「スーパーファインNo.22000WN」及び「同No.18000WN」なる製品の成分比率が「アルミニウム粉末含有率:70%」であること、及び「東洋アルミニウム(株)製」の「アルミニウムペースト」である「WB0230」と「WXM0630」なる製品の成分比率が、それぞれ「アルミニウム粉末含有率:60%」と「アルミニウム粉末含有率:68%」であることが、資料6(特開2006-152259号公報)の段落【0059】には、「旭化成メタルズ社製」の「アルミペースト」である「アルミペーストMC-606」なる製品の成分比率が「アルミニウム粉/ミネラルスピリット/C9級芳香族炭化水素系有機溶剤重量比=60/19.5/19.5、アミン1%」であることが、資料7(再表2013/157156号公報)の段落【0093】には、「林化学工業社製」の「アルミニウムペースト」である「アルミペーストA2」なる製品の成分比率が「アルミニウム含有率は75質量%」であることが、それぞれ記載されている。しかし、資料4?7は、特定の製品について、アルミニウム粉の成分比率が特定されていることを示すにとどまるものである。また、当審が通知した上記令和元年8月19日付け拒絶理由で示した引用文献2(特開2006-137474号公報)の【請求項3】及び【請求項4】の記載から引用文献2には、アルミニウム微粉末の添加量が20?90%の範囲であるアルミペーストが記載されていると理解できる。よって、資料4記載の「64重量%」、資料5記載の「70%」、「60%」、「68%」、資料6記載の「60」、資料7記載の「75質量%」なる数値は、請求人の主張する「40%?75%」の範囲内の数値ではあるものの、引用文献2記載の「20?90%」なる数値も従来から知られていることに鑑みれば、これらの証拠をもって一般的なアルミペーストに含まれるアルミニウム粉等の金属成分の成分比率が40%?75%の範囲内に収まるものとまではいえない。しかも、資料4?7には、光沢を有する一般的なインキ剤に用いられるアルミペーストであるとは明記されておらず、特に資料4に記載されたアルミペーストは「熱線反射紫外線吸収能を持つプライマー塗料」に用いられるもの、資料7に記載されたアルミペーストは「透湿性樹脂の層を形成するための組成物」に用いられるものであって、光沢を有する一般的なインキ剤として用いられるものとまではいえない。そして、請求人は、数値範囲について、下限が40%という特定の値である根拠、及び上限が75%という特定の値である根拠について、何ら示していない。したがって、資料4?7によっては、一般的なアルミペーストに含まれるアルミニウム粉等の金属成分比率が40%?75%の範囲内に収まることが技術常識であると理解することはできないし、ましてや、包装材料に用いるインキ剤中のアルミペーストにおける技術常識であると理解することはできない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本願発明1及び2は明確ではなく、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2 理由1(明確性)2)について (1)本願発明1について 上記1(1)で述べたとおり、本願発明1は、「包装体」の「光沢層」における、「アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」に含まれるものである。そして、本願発明1は、「光沢層」が少なくとも「インキ剤」を含むから、本願発明1は、「光沢層」が「インキ剤」で構成されるものと、「光沢層」が「インキ剤」と「その他の成分」で構成されるものを含んでいる。 ここで、「光沢層」が「インキ剤」と「その他の成分」で構成されるものについて、「光沢層」における「アルミペーストの重量比」とは、「インキ剤」と「その他の成分」が含まれる「光沢層」における「アルミペーストの重量比」であると解される。 (2)本願の明細書の記載との関係について 本願の明細書の段落【0019】には、「光沢層50におけるアルミペーストの重量比は、塗布されたインキ剤51が塗膜を構成した状態におけるインキ剤51に含まれるアルミペーストの重量比である。」と記載されている。この記載からは、「光沢層」における「アルミペースト」の重量比は「インキ剤」に含まれる「アルミペースト」の重量比であると理解できる。しかし、「光沢層」が「インキ剤」と「その他の成分」で構成される場合には、「光沢層」における「アルミペースト」の重量比とは、通常は、「インキ剤」と「その他の成分」が含まれる「光沢層」における「アルミペースト」の重量比と理解されるところ、上記記載を参酌すると、そうではなく、「インキ剤」に含まれる「アルミペースト」の重量比と理解することもできる。 そうすると、上記(1)で述べたように、本願発明1において、「光沢層」が「インキ剤」と「その他の成分」で構成されるものについて、「前記光沢層における前記アルミペーストの重量比」とは、通常の理解に基づいて、「インキ剤」と「その他の成分」が含まれる「光沢層」における「アルミペーストの重量比」であるのか、本願の明細書の段落【0019】の記載に基づいて、「インキ剤」に含まれる「アルミペーストの重量比」であるのか、いずれであるのかが不明である。 よって、本願発明1は不明確である。また、本願発明1を引用する本願発明2についても同様の理由により、不明確である。したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (3)請求人の主張について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由1(特許法第36条第6項第2号)について>の欄において、次のとおり主張している。 「本手続補正によって、本願発明1で特定される光沢層におけるアルミペーストの重量比が「塗布されたインキ剤が塗膜を構成した状態におけるインキ剤に含まれるアルミペーストの重量比」であることが明確となった。」(6頁1行?3行) イ 当審の判断 令和元年10月21日になされた手続補正により、「前記インキ剤が塗膜を構成した状態において」との限定がなされたことで、「インキ剤」に含まれる「アルミペーストの重量比」とは、インキ剤を塗布する際の揮発成分も含んだ「インキ剤」に含まれる「アルミペーストの重量比」ではなく、インキ剤が塗膜を構成した状態における「インキ剤」に含まれる「アルミペーストの重量比」であることは明確となった。 しかし、「光沢層」が「インキ剤」と「その他の成分」で構成されるものについて、「前記光沢層における前記アルミペーストの重量比」とは、「インキ剤」と「その他の成分」が含まれる「光沢層」における「アルミペーストの重量比」であるのか、「インキ剤」に含まれる「アルミペーストの重量比」であるのか、いずれであるのかは依然として不明である。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本願発明1及び2は明確ではなく、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3 理由2(実施可能要件)1)について (1)請求項1の記載 本願の特許請求の範囲の【請求項1】には、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲に含まれ」と記載されている。 (2)本願の発明の詳細な説明との関係について 上記1に示したように、本願の明細書には、「アルミペースト」について、含有する成分や、それらの成分比率について何ら記載されておらず、また、「アルミペースト」との記載のみでは、技術常識を踏まえても、アルミペースト中のアルミニウム粉の含有比率はもちろん、他の含有成分や、それらの成分比率について把握できるものではない。 そして、本願の明細書には、「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」により、アルミペーストを、試料番号1?20について評価を行っているものの、そのアルミペーストの入手先すら記載されておらず、試料番号1?20のアルミペーストがどのようなものなのか、把握することができない。しかも、上述のように、アルミペーストといっても、含有するアルミニウム粉の含有率は、必ずしも同じではないから、本願の明細書の「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」により確認される事項の技術的な意味が明らかでなく、上記1(2)に示した課題を解決するために、光沢層にどの様な「アルミペースト」を4.7%?37.2%の範囲で含有させればよいのか、明らかではない。 よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているとはいえない。また、本願発明1を引用する本願発明2についても同様の理由により、本願の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (3)請求人の主張について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由2(特許法第36条第4項第1号)について>の欄において、次のとおり主張している。 「上記のように、アルミペーストは、技術用語として確立されていて、アルミペースト中のアルミニウム粉の含有比率が40%?75%の範囲内に収まるのが一般的であることは、当業者の技術常識である。そのため、「アルミペースト」の記載のみであったとしても、当業者の技術常識を踏まえれば、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比は、把握することができるというべきである。 本願明細書では、「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」により、アルミペーストを、試料番号1?20について評価を行っているが、そのアルミペーストの入手先を記載していない。しかし、本願明細書の段落[0004]で記載のとおり、包装体の光沢層に使用されるインキ剤は、一般的であるため、とくに入手が困難なものではない。インキ剤が一般的なものであり、それ故に、インキ剤に含有されるアルミペーストについても一般的なものであると理解できるから、試料番号1?20のアルミペーストがどのようなものなのか、把握することができるといえる。しかも、上述のように、アルミペーストに含有されるアルミニウム粉の成分比は、40%?75%の範囲内というように、特定の範囲内に収まるものであるから、本願明細書の「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」により確認される事項の技術的な意味は、明らかであり、本願発明1の課題を解決するために、光沢層に「アルミペースト」をどの程度含有させればよいのかは、明らかであるといえる。」(6頁下から21行?下から5行) イ 当審の判断 上記1(4)イで述べたように、「アルミペースト中のアルミニウム粉の含有比率が40%?75%の範囲内に収まるのが一般的であることは、当業者の技術常識である。」との請求人の主張は根拠がなく採用することはできない。そうすると、当該主張を前提とする上記アにおける請求人の主張は、前提において誤りであり、採用することはできない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1及び2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 4 理由3(サポート要件)1)について (1)本願発明1の解決しようとする課題は、上記1(2)で述べたとおりであり、発明の詳細な説明の記載によれば、光沢層に含まれるアルミペーストがマイクロ波に反応してスパークして包装体が劣化するおそれがあることから、本願発明1において、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」と特定したものである。 (2)しかし、上記1(3)で述べたように、本願の明細書において「アルミペースト」が、アルミニウム粉をどの程度含有するのかは記載されておらず、また、「アルミペースト」との記載のみで、アルミペースト中のアルミニウム粉等の金属成分の含有比率について把握できるものではない。そして、マイクロ波に反応してスパークする原因は、アルミニウム粉等の金属成分であることは明らかであるところ、発明の詳細な説明で、「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」により、アルミペーストを、試料番号1?20について評価を行っているといっても、試料番号1?20のアルミペーストがどのようなものなのか把握することができず、結局、マイクロ波に反応してスパークする原因であるアルミニウム粉等の金属成分が、どの程度含有されるようにすると、スパークせず、包装体が劣化しないのか確認されていない。 (3)そうすると、たとえ発明の詳細な説明で評価している特定の試料について、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」のものが、アルミペーストがマイクロ波に反応してスパークして包装体が劣化するのを防げるとしても、発明の詳細な説明の記載からは、あらゆる種類のアルミペーストを用いた場合でも、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」とすればすべからく上記課題を解決できるとはいえないから、本願発明1において、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」とすることにより、発明の課題が解決できるといえるものではない。 (4)よって、本願発明1は、本願発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。また、本願発明1を引用する本願発明2についても、同様の理由により発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。よって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (5)請求人の主張について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由3(特許法第36条第6項第1号)について>の欄において、次のとおり主張している。 「確かに、本願明細書においてアルミペーストが、アルミニウム粉をどの程度含有するのか記載していない。しかし、上述したとおり、「アルミペースト」とは技術用語として確立されていて、アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比についても、当業者の技術常識を踏まえれば、成分比が40%?75%といった特定の範囲内に収まるものであると理解することができる。そして、マイクロ波に反応してスパークする原因は、アルミニウム粉等の金属成分であることは明らかであるから、本願明細書の発明の詳細な説明で、「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」により、アルミペーストを、試料番号1?20について評価を行なっているということによって、試料番号1?20のアルミペーストがどのようなものなのか把握することができ、結局、マイクロ波に反応してスパークする原因であるアルミニウム粉等の金属成分が、どの程度含有されるようにすると、スパークせず、包装体が劣化しないのかを示唆しているといえる。」(7頁下から13行?下から3行) イ 当審の判断 上記1(4)イで述べたように、「アルミペースト中のアルミニウム粉の成分比についても、当業者の技術常識を踏まえれば、成分比が40%?75%といった特定の範囲内に収まるものであると理解することができる。」との請求人の主張は根拠がなく採用することはできない。そうすると、当該主張を前提とする上記アにおける請求人の主張は、前提において誤りであり、採用することはできない。 さらに、マイクロ波に反応してスパークする原因は、アルミニウム粉等の金属成分であるのだから、上記1(2)で述べた本願の明細書に記載された課題を解決できるか否かは、アルミペーストに含まれるアルミニウム粉等の金属成分の量に依存するものであって、たとえ同量のアルミペーストであったとしても、その成分や成分比率が異なりアルミペーストに含まれるアルミニウム粉等の金属成分の量が異なれば、上記課題を解決できるか否かの結果が異なってくるのは明らかである。そして、本願明細書の発明の詳細な説明で、「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」により、アルミペーストを、試料番号1?20について評価を行なっているが、用いたアルミペーストの成分や成分比率は記載されておらず、入手先、品番等についても記載されていないから、光沢層にアルミニウム粉等の金属成分がどの程度含有された試料であるのか把握することはできない。そうすると、たとえ発明の詳細な説明で評価している特定の試料について、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」のものが、アルミペーストがマイクロ波に反応してスパークして包装体が劣化するのを防げるとしても、発明の詳細な説明の記載からは、あらゆる種類のアルミペーストを用いた場合でも、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」とすればすべからく上記課題を解決できるとはいえないから、本願発明1において、「光沢層における前記アルミペーストの重量比は4.7%?37.2%の範囲」とすることにより、発明の課題が解決できるといえるものではない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (6)小括 以上のとおりであるから、本願発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 5 請求人の主張について (1)理由1(特許法第36条第6項第2号)の1)について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由1(特許法第36条第6項第2号)について>の欄において、上記1(4)アのとおり主張している。 イ 当審の判断 上記1(4)イで示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。 (2)理由1(特許法第36条第6項第2号)の2)について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由1(特許法第36条第6項第2号)について>の欄において、上記2(3)アのとおり主張している。 イ 当審の判断 上記2(3)イで示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。 (3)理由2(特許法第36条第4項第1号)の1)について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由2(特許法第36条第4項第1号)について>の欄において、上記3(3)アのとおり主張している。 イ 当審の判断 上記3(3)イで示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。 (4)理由3(特許法第36条第6項第1号)の1)について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<理由3(特許法第36条第6項第1号)について>の欄において、上記4(5)アのとおり主張している。 イ 当審の判断 上記4(5)イで示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。 (5)請求人が意見書で提示する資料14について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<資料14について>の欄において、次のとおり主張している。 (ア)「資料14は、本願明細書の段落[0020]?[0031]に記載の第1の評価試験及び第2の評価試験に関して、アルミペーストに含まれるアルミニウム粉の成分比が異なる4種類のインキを使用した場合の試験結果を示している。各インキに関する諸元は以下のとおりである。」(9頁下から10行?下から7行) (イ)「これら東京インキ社製(A)?(D)のインキを適用して、本願明細書の段落[0020]?[0031]に記載に応じた評価試験を実施した。その結果、いずれのインキを使用した場合であっても、本願発明1の課題を解決できることが確認できた。以上のことから、本願の技術分野で使用される一般的な成分比のアルミペースト、換言すれば、アルミペーストに含まれるアルミニウム粉の成分比が40%?75%の範囲に含まれるアルミペーストであれば、いずれのアルミペーストを使用した場合であっても、本願発明1のように、光沢層におけるアルミペーストの重量比が4.7%?37.2%の範囲に含まれるように調整することによって、課題を解決できることが把握できる。なお、アルミニウム粉の成分比が40%?75%の範囲に含まれるアルミペーストを含むインキであれば、例えば、東洋インキ社製等の他社製のインキを用いても同様の結果が当然得られる。」(10頁11行?20行) イ 当審の判断 本願明細書の発明の詳細な説明において、試験に用いたアルミペーストの成分や成分比率は記載されておらず、入手先、品番等についても記載されていないから、「第1の評価試験」及び「第2の評価試験」で用いた試料が光沢層にアルミニウム粉等の金属成分がどの程度含有された試料であるのか把握することはできない。よって、資料14で示している、本願明細書の段落【0020】?【0031】の第1の評価試験及び第2の評価試験に関して、アルミペーストに含まれるアルミニウム粉の成分比が異なる東京インキ社製(A)?(D)のインキを使用した場合の試験結果は、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められないから、出願後、試験結果を追加して、それらの追加試験の記載を前提に課題を解決できることを主張するものである。このような、出願後の追加試験の記載を前提とした主張は、発明の詳細な説明の記載の範囲を超える記載に関するものであり、発明の詳細な説明の記載の裏付けの根拠としては採用することはできない。 さらに、上記1(4)イで述べたように、アルミペーストに含まれるアルミニウム粉等の金属成分比率が40%?75%の範囲内に収まることが技術常識であると理解することはできないから、たとえ東京インキ社製(A)?(D)のインキを適用したものが、課題を解決できることが確認できたとしても、本願の技術分野で使用される一般的な成分比のアルミペーストであれば、いずれのアルミペーストを使用した場合であっても、課題を解決できることが把握できるとはいえない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (6)請求人が意見書で提示する資料15について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<資料15について>の欄において、次のとおり主張している。 「資料15は、先行技術文献として特開2017-81589号公報を開示している(段落[0005]参照)。特開2017-81589号公報は、本願の原出願の公開公報である。原出願に係る発明は、本願発明1と同様に、光沢層におけるアルミペーストの重量比を所定の範囲に調整することによって、本願発明1と同様の課題を解決している。資料15の段落[0006]には、「特許文献1の包装材は、アルミペーストの含有量を所定の範囲とすることで、電子レンジの使用適性(加熱時のスパークの抑制)と高輝度との両立を狙ったものであり、通常の使用では所定の効果を有している。」と記載されている。資料15の段落[0006]の記載からは、当業者であれば、一般的な成分比のアルミペーストを使用することによって、原出願に係る発明、及び、原出願に係る発明と同様の発明特定事項を含む本願発明1、2を実施できることが把握できる。」(10頁22行?31行) イ 当審の判断 資料15(特開2019-51992号公報(公開日:平成31年4月4日))は本願の公開基準日(平成27年10月27日)以降に公開されたものであって、本願の出願時の技術水準を示すものではないから、資料15の内容から、「当業者であれば、一般的な成分比のアルミペーストを使用することによって、原出願に係る発明、及び、原出願に係る発明と同様の発明特定事項を含む本願発明1、2を実施できることが把握できる」と推認することはできない。 さらに、資料15の段落【0006】には、「特許文献1の包装材は、アルミペーストの含有量を所定の範囲とすることで、電子レンジの使用適性(加熱時のスパークの抑制)と高輝度との両立を狙ったものであり、通常の使用では所定の効果を有している。」と記載されているものの、当該記載は資料15の出願時(平成30年7月23日)に知られていた先行技術文献を紹介したものにすぎないから、この記載により、「当業者であれば、一般的な成分比のアルミペーストを使用することによって、原出願に係る発明、及び、原出願に係る発明と同様の発明特定事項を含む本願発明1、2を実施できることが把握できる」と推認することはできない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (7)請求人が意見書で提示する資料16?20について ア 請求人の主張 請求人は、上記令和元年10月21日提出の意見書の<資料16?20について>の欄において、次のとおり主張している。 (ア)「資料16?20に係る発明は、本願発明1と同様に、発明特定事項にアルミペーストを含み、かつ、そのアルミペーストに含まれる成分及び成分比について開示することなく特許査定となっている。つまり、「アルミペースト」なる用語が技術用語として確立しているため、アルミペーストの成分及び成分比に関する規定がなくとも、当業者は、「アルミペースト」を理解することができ、また、発明の課題を解決して実施できるということを資料16?20は示しているのである。」(10頁下から15行?下から10行) (イ)「資料16?20のように、発明特定事項にアルミペーストを含み、かつ、そのアルミペーストに含まれる成分及び成分比について開示することなく特許査定となっている多数の事例が存在している以上、本願についても同様の基準に基づいて特許法第36条第6項第2号、同条第4項第1号、ならびに、同条第6項第1号に規定する要件について判断されるべきであり、本願のみアルミペーストに関する詳細な記載が必要であるとする合議体の判断は失当である。」(11頁下から6行?下から1行) イ 当審の判断 上記1(4)イで述べたように、「アルミペースト」が技術用語として確立しているとしても、本願発明はアルミペースト中のアルミニウム粉の重量比がスパークに影響するものであるから、資料16(特許第4789002号公報)、資料17(特許第5790371号公報)、資料18(特許第4234632号公報)、資料19(特許第3610128号公報)及び資料20(特許第2736731号公報)にアルミペーストの成分及び成分比を特定しない事例があるからといっても、本願発明において「アルミペースト」という特定のみで発明が明確になるとはいえず、また、発明の課題を解決して実施できるとはいえない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶すべきものである。 また、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-12 |
結審通知日 | 2019-12-17 |
審決日 | 2020-01-07 |
出願番号 | 特願2018-67940(P2018-67940) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B65D)
P 1 8・ 536- WZ (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 矢澤 周一郎 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
武内 大志 高山 芳之 |
発明の名称 | 包装体 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 恩田 誠 |