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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1360102
審判番号 不服2018-12434  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-18 
確定日 2020-03-10 
事件の表示 特願2017-102763「オブジェクト表示プログラム、情報処理装置、及びオブジェクト表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017-194977、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成25年9月20日に出願した特願2015-130194号(優先権主張平成24年9月21日(以下,「優先日」という))の一部を平成29年5月24日に新たな特許出願としたものであって,平成29年8月31日付けで拒絶の理由が通知され,同年10月25日に意見書とともに手続補正書が提出され,平成30年1月22日付けで最後の拒絶の理由が通知され,同年3月23日に意見書とともに手続補正書が提出されたが,同年6月11日付けで同年3月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされると同時に拒絶査定(謄本送達日同年6月19日)がなされ,これに対して同年9月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正がなされ,同年11月5日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,令和1年11月26日付けで当審により拒絶の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,令和2年1月20日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。


第2 平成30年6月11日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要

1 平成30年6月11日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成30年3月23日付けの手続補正(以下,「原審手続補正」という。)は,原審手続補正前の請求項1,5及び6に対し,「前記所定のイベント以外のイベントが発生した場合に、前記所定のオブジェクトを非表示としない」との事項を追加するものであるが,当該事項は,原審手続補正前の請求項1,5及び6のいずれの特定事項を限定的に減縮するものではなく,また,当該補正は,請求項の削除,誤記の訂正,又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものではないから,原審手続補正は,特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的としたものではなく,原審手続補正は,同法17条の2第5項の規定に違反するものであるから,同法53条1項の規定により却下すべきものである。

2 原査定(平成30年6月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.平成29年10月25日付け手続補正書でした補正のうち,「前記タイムライン領域において、前記所定のオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記所定のオブジェクトを非表示にする」とした点が願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,当該補正は特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.本願請求項1,2及び4乃至8に係る発明は,下記引用文献1乃至3に基づいて,また本願請求項3に係る発明は,さらに下記引用文献4に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.株式会社ガイアックスガイアックスソーシャルメディアラボ,facebook 知りたいことがズバッとわかる本 増補改訂版 初版,日本,株式会社翔泳社 佐々木 幹夫,2012年 7月 2日,第1版,第44-46, 54-55, 338-339頁
2.FC2ブログ Wikipedia,Wikipedia,2012年 6月27日,URL,https://web.archive.org/web/20120627120517/https://ja.wikipedia.org/wiki/FC2ブログ
3.江本 剛,無料で動画共有から、ツイッター連携、遠隔操作もできる!! ウィンドウズLiveの秘技10,週刊アスキー 第21巻 通巻753号,日本,株式会社アスキー・メディアワークス,2009年 9月15日,第21巻,第72頁
4.特開2002-55920号公報


第3 本願発明

本願請求項1乃至5に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明5」という。)は,令和2年1月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された,次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
タイムライン領域に表示する情報を配信するサーバに接続される情報処理装置に、
前記タイムライン領域にメッセージオブジェクトと当該メッセージオブジェクト以外の他のオブジェクトとを含む複数のオブジェクトを表示するステップと、
前記タイムライン領域に新たなオブジェクトが追加された場合に、既に表示されている前記オブジェクトを一方向に移動させるステップと、
前記タイムライン領域において、前記メッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記他のオブジェクトを一定期間非表示にするステップとを実行させる、オブジェクト表示プログラム。
【請求項2】
前記情報処理装置に、
前記サーバに対して、前記タイムライン領域において所定のイベントが発生したか否か問い合わせるステップをさらに実行させる、請求項1に記載のオブジェクト表示プログラム。
【請求項3】
前記メッセージオブジェクトを表示するステップにおいて、
前記メッセージオブジェクトを、前記メッセージオブジェクトに係る日時情報に基づく順序で表示する、請求項1又は2に記載のオブジェクト表示プログラム。
【請求項4】
タイムライン領域に表示する情報を配信するサーバに接続され、
前記タイムライン領域にメッセージオブジェクトと当該メッセージオブジェクト以外の他のオブジェクトと含む複数のオブジェクトを表示し、
前記タイムライン領域に新たなオブジェクトが追加された場合に、既に表示されている前記オブジェクトを一方向に移動させ、
前記タイムライン領域において、前記メッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記他のオブジェクトを一定期間非表示にする情報処理装置。
【請求項5】
タイムライン領域に表示する情報を配信するサーバに接続される情報処理装置が、
前記タイムライン領域にメッセージオブジェクトと当該メッセージオブジェクト以外の他のオブジェクトとを含む複数のオブジェクトを表示するステップと、
前記タイムライン領域に新たなオブジェクトが追加された場合に、既に表示されている前記オブジェクトを一方向に移動させるステップと、
前記タイムライン領域において、前記メッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記他のオブジェクトを一定期間非表示にするステップと、を実行する、オブジェクト表示方法。」


第4 引用例

1 引用例1に記載された事項
当審拒絶理由において引用した,優先日前に既に公知である,株式会社ガイアックスガイアックスソーシャルメディアラボ,facebook 知りたいことがズバッとわかる本 増補改訂版 初版,日本,株式会社翔泳社 佐々木 幹夫,2012年 7月 2日,第1版,pp.44,46,54-55,184,202-203,205,339(2012年7月2日発行。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は,説明のために当審で付加。以下同様。)

A 「chapter 1
013
[タイムライン]
タイムラインを使いこなしたい
POINT
タイムラインは、自分が行ってきた活動(生まれたときから今まで)を残し、時系列に記録を表示する機能です。ユーザビリティを特化したデザイン構成により、自分の活動記録を楽しく閲覧、編集できます。ブログとしての機能や、アプリとリアルタイムで連携する機能も取り入れられており、より効率的に自分を表現することが可能になっています。ここでは、タイムラインを使いこなし、Facebookをさらに楽しむコツを紹介します。」(44ページ1乃至10行)

B 「

」(44ページ「STEP1 タイムラインで近況を投稿する」)

C 「

」(46ページ下図)

D 「

」(54ページ「STEP1 友達の近況をチェックする」)

E 「

」(55ページ「STEP2 友達の投稿に「いいね!」をつける」,「STEP3 友達の投稿にコメントを残す」)

F 「chapter 4
066
[モバイル利用の基本]
スマートフォンやiPadでFacebookを使うには?
POINT
使っているスマートフォンやiPadに、Facebookアプリをインストールしましょう。スマートフォン用にはiPhone、Andoroid、タブレット用にはiPadというように、端末ごとの無料公式アプリが用意されています。」(184ページ1乃至7行)

G 「

」(202乃至203ページ)

H 「chapter 4
078
[モバイル利用の基本]
スマートフォンから「いいね!」やコメントをしたい
POINT
スマートフォンからニュースフィードを見て、友達の投稿に「いいね!」やコメントをすることができます。ここでは、画像付き投稿の場合で説明します。また、ニュースフィードの並べ替え方法も合わせて紹介します。」(205ページ1乃至7行)

I 「

」(205ページ「投稿に「いいね!」や「コメント」を付ける」)

J 「

」(339ページ「スポンサー記事の画面例」)

2 引用発明
ア 上記記載事項Aの「ここでは、タイムラインを使いこなし、Facebookをさらに楽しむコツを紹介します。」との記載,及び上記記載事項Bの図から,引用例1からは,「Facebook」を「楽しむ」ために用いられている情報処理装置が存在し,当該情報処理装置に対して,当該情報処理装置において上記記載事項Bの図に示されるような表示を行うための情報が,Facebookのサービスを提供するサーバから転送されていることを読み取ることができるから,引用例1には,“Facebookサービスを提供するサーバからタイムライン領域に関する情報が転送され”ることが記載されているといえる。

イ 上記記載事項C,D及びJの図から,ユーザによる投稿のほかに,広告が表示されていることを読み取ることができ,上記記載事項Cの図から,ユーザによる投稿はタイムライン領域に表示されることを読み取ることができるので,引用例1には,“タイムライン領域にはユーザによる投稿が表示され,また画面には広告が表示され”ることが記載されているといえる。

ウ 上記記載事項Eの図から,タイムライン領域に表示された友達の投稿に対して,「いいね!」を付けたり,コメントを残すことができることを読み取ることができるので,引用例1には,“タイムライン領域に表示された友達の投稿に「いいね!」やコメントを残すことができ”ることが記載されているといえる。

エ 上記記載事項Fの「スマートフォンやiPadでFacebookを使うには?…(中略)…使っているスマートフォンやiPadに、Facebookアプリをインストールしましょう。」との記載,及びHの「スマートフォンからニュースフィードを見て、友達の投稿に「いいね!」やコメントをすることができます。」との記載から,引用例1には,“スマートフォンやiPadなどでFacebookを使うためにインストールされ,スマートフォンから友達の投稿に「いいね!」やコメントをすることができ”ることが記載されているといえる。

オ 上記記載事項Gの図から,スマートフォンで投稿を行うことにより,当該投稿が順次タイムライン領域に表示され,また,そのような投稿の記事は当該領域において一方向に移動していく様子を読み取ることができるから,引用例1には,“タイムライン領域に投稿された記事は,当該タイムライン領域において一方向に移動”することが記載されているといえる。

カ 上記エの認定事項から,B,C,D,E,G,I,Jなどに示される画面制御や投稿などの処理は,スマートフォン等の情報処理装置にインストールされる“Facebookアプリ”によってなされるものであることを当業者は読み取ることができるから,以上総合して引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「Facebookサービスを提供するサーバからタイムライン領域に関する情報が転送され,
タイムライン領域にはユーザによる投稿が表示され,また画面には広告が表示され,
タイムライン領域に表示された友達の投稿に「いいね!」やコメントを残すことができ,
スマートフォンやiPadなどでFacebookを使うためにインストールされ,スマートフォンから友達の投稿に「いいね!」やコメントをすることができ,
タイムライン領域に投稿された記事は,当該タイムライン領域において一方向に移動するよう制御するFacebookアプリ。」

3 引用例2に記載された事項
当審拒絶理由において引用した,優先日前に既に公知である,特開2003-203084号(平成15年7月18日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

K 「【0002】
【従来の技術】近年の急速なデジタル技術向上に伴い、ユーザが携帯情報端末装置などを用いて自己の予定を管理する機会や、携帯情報端末装置をインターネットに接続して、外出先などで自分の予定情報を得る機会が増えている。」

L 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】携帯情報端末装置でインターネットを用いて情報を検索する場合は、PCにおいて情報を検索する場合に比べ、キーボードなどの十分な入力装置が確保されない上、十分な表示容量の表示装置も確保されない場合が多い。このため、携帯情報端末装置でインターネットを介して情報検索する場合は、入力結果及び検索結果の確認に多大な苦労を要し、かつ操作が煩雑となる。また、検索機能を備えたウェブサイトによる検索は、検索入力操作、ウェブサイトへの検索キーの送信、ウェブサイトでの検索、検索結果の携帯情報端末装置への送信と、煩雑操作と多くの過程を踏んで行われ、時間もかかる。
【0006】一方、上述したようなウェブサイトの宣伝活動は、一般に相手を特定せず無差別に行われることが多い。中には、ユーザの興味や履歴や操作内容に応じて、ユーザに関心があると推測される広告を表示したりすることもある。しかし、ユーザを1人ごと特定し、そのユーザのこれからの予定にまで対応させて宣伝活動を行うことはしていない。上述の通り、ユーザは携帯情報端末を予定管理として用いることが多く、またユーザが検索して得ようとする情報はユーザの予定に関連した情報であることが多い。従って、ウェブサイトの運営者は、ユーザの予定に合わせた的確なタイミングと方法により、そのユーザに対して宣伝活動を行うことができれば、その効果は通常の宣伝活動の効果よりも極めて大きくなると考えられる。
【0007】本発明の課題点は、かかる従来技術に鑑み、携帯情報端末装置において、ネットワークを用いて自己の予定情報を簡易操作によって短時間に入手できるようにすることである。」

M 「【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
【0041】説明中において、PIM(PersonalInformation Manager)とは個人が携帯情報端末装置においてスケジュール表や住所録、作業予定表やメモなど個人の情報を管理するためのソフトウェアを指し、PIMデータとは該PIMにより管理される個人の情報を指す。また、サービスインフォメーションとは、店舗の開店時間、閉店時間や名勝の位置、ニュースなどの情報の要約や原文、またその情報が得られるウェブサイトへのリンクを含む情報を指す。また、単位予定とは、予定の時間、予定の場所、予定の内容が各1つ以下ずつ含まれて構成される予定表を指す。また、予定パックとは、入力された予定表をサービスサーバに送信する形へ整形したものを指す。」

N 「【0080】次に、本発明の第2の実施例を説明する。第2の実施例は上述の第1の実施例とほぼ同様である。主に異なっている点は、携帯情報端末が、予定表の画面において送信した予定データと受信したサービスインフォメーションとを関連付けて記憶し表示する点である。

…(中略)…

【0087】次に、本発明の第3実施例を説明する。第3実施例は第2実施例をさらに一歩進めたものである。主に異なっている点は、ユーザの予定表の空き時間の部分に対して、その部分に適切な広告を挿入する点である。

…(中略)…

【0102】なお、ユーザが自分の予定のみを閲覧したい場合もあるため、広告についてはいつでもその表示/非表示を切り換えることができるようにする。また、広告の表示方法としては、複数の広告が挿入されている場合に、最も適切なもの又は最も優先順位の高いもののみを最初に表示し、あわせて残りの広告を表示するためのマーク等を表示させることもできる。この場合、そのマークがユーザ操作により選択されたときに、残りの広告を表示するようにする。また、ユーザが入力しようとする単位予定は広告より優先される。即ち、広告で埋められた空き時間の部分にユーザが予定を入力しようとすると、その広告は非表示になるか又は削除されるようにする。あるいはその空き時間の前後に移動可能な広告であれば、そこに移動するようにしてもよい。」

上記K乃至Nの記載の下線部に着目すると,引用例2には,

「ユーザが携帯情報端末装置などを用いて自己の予定を管理するために前記携帯情報端末装置を予定管理として用いるとともに,前記携帯情報端末装置でインターネットを用いて情報を検索する場合は,PCにおいて情報を検索する場合に比べ,キーボードなどの十分な入力装置が確保されない上,十分な表示容量の表示装置も確保されないことを背景とし,
ウェブサイトの運営者が,ユーザの予定に合わせた的確なタイミングと方法により,そのユーザに対して宣伝活動を行うものであって,
個人が携帯情報端末装置においてスケジュール表など個人の情報を管理するためのソフトウェアである,PIM(Personal Information Manager)が,
ユーザの予定表の空き時間の部分に対して,その部分に適切な広告を挿入し,
ユーザが自分の予定のみを閲覧したい場合もあるため,広告についてはいつでもその表示/非表示を切り換えることができるようにし,
広告で埋められた空き時間の部分にユーザが予定を入力しようとすると,その広告は非表示になるか又は削除されるようにすること。」

という技術的事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されているといえる。


第5 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(あ)引用発明の「Facebookサービスを提供するサーバ」は,本願発明の「タイムライン領域に表示する情報を配信するサーバ」に相当し,引用発明の「情報処理装置」は,「Facebookサービスを提供するサーバからタイムライン領域に関する情報が転送され」るものである。
また,引用発明の「Facebookアプリ」は,「タイムライン領域」に「ユーザによる投稿」を「表示」したり,「画面」に「広告」を「表示」したりといった表示を行うプログラムであり,また「ユーザによる投稿」や「広告」などはそれぞれ“オブジェクト”といい得るものであるから,本願発明の「オブジェクト表示プログラム」に相当するといえ,以上総合して引用発明と本願発明1とは,“タイムライン領域に表示する情報を配信するサーバに接続される情報処理装置に”各ステップを“実行させる,オブジェクト表示プログラム”の点で一致する。

(い)引用発明は,「タイムライン領域にはユーザによる投稿が表示され,また画面には広告が表示され」るものであり,当該「タイムライン領域」は本願発明1の「タイムライン領域」に相当し,引用発明の「ユーザによる投稿」は,本願発明1の「メッセージオブジェクト」に,引用発明において「画面」に「表示」される「広告」は,本願発明1の「メッセージオブジェクト以外の他のオブジェクト」を含む「オブジェクト」に相当するといえるから,引用発明と本願発明1とは,下記の点で相違するものの,“メッセージオブジェクトと当該メッセージオブジェクト以外の他のオブジェクトとを含むオブジェクトを表示するステップ”を有する点で一致する。

(う)引用発明は,「タイムライン領域に投稿された記事は,当該タイムライン領域において一方向に移動する」よう制御されるものであるが,当該「タイムライン領域に投稿された記事」は,本願発明1の「前記タイムライン領域に新たなオブジェクトが追加された場合に、既に表示されている前記オブジェクトを一方向に移動させるステップ」における,「前記タイムライン領域」に「追加され」る「新たなオブジェクト」といい得るから,引用発明と本願発明1とは,“前記タイムライン領域に新たなオブジェクトが追加された場合に,既に表示されている前記オブジェクトを一方向に移動させるステップ”を有する点で一致する。

(え)以上,(あ)乃至(う)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
タイムライン領域に表示する情報を配信するサーバに接続される情報処理装置に,
メッセージオブジェクトと当該メッセージオブジェクト以外の他のオブジェクトとを含むオブジェクトを表示するステップと,
前記タイムライン領域に新たなオブジェクトが追加された場合に,既に表示されている前記オブジェクトを一方向に移動させるステップとを実行させる,オブジェクト表示プログラム。

〈相違点1〉
本願発明1が,「タイムライン領域」に「メッセージオブジェクトと当該メッセージオブジェクト以外の他のオブジェクトとを含む複数のオブジェクトを表示」するのに対し,引用発明は,「タイムライン領域にはユーザによる投稿が表示され,また画面には広告が表示され」るものであり,当該「広告」が「タイムライン領域」に表示されることが特定されていない点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「前記タイムライン領域において、前記メッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記他のオブジェクトを一定期間非表示にするステップ」を有するのに対し,引用発明は,タイムライン領域においてメッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に他のオブジェクトを一定期間非表示にすることが特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に上記相違点2について検討する。
引用例2には,上記のとおり引用例2記載事項の記載は認められるものの,タイムライン領域における,他のオブジェクトを一定期間非表示とすることまでは記載が無く,また当業者にとっても自明な事項でもない。
したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は,本願発明1を直接または間接的に引用するものであって,本願発明1の「前記タイムライン領域において、前記メッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記他のオブジェクトを一定期間非表示にするステップ」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明4及び5について
本願発明4及び5は,本願発明1とカテゴリー表現のみ異なるものであって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 当審拒絶理由の概要

<特許法29条2項について>
当審拒絶理由では,上記引用例1及び2の記載に基づいて,本願の請求項1乃至5に係る発明は,当業者が容易に発明できた旨の拒絶理由を通知したが,上記第3に記載のとおり補正されることにより,上記第5に示した理由により,本拒絶理由は解消した。

<特許法36条6項1号について>
当審拒絶理由では,本願請求項1乃至5には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,請求項1乃至5に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである旨の拒絶理由を通知したが,上記第3に記載のとおり補正されることにより,本拒絶理由は解消した。

<特許法36条6項2号について>
当審拒絶理由では,本願請求項3に係る発明は,請求項3自身を引用しており不明確である旨の拒絶理由を通知したが,上記第3に記載のとおり補正されることにより,本拒絶理由は解消した。


第7 原査定についての判断

令和2年1月20日付けの補正により,補正後の請求項1は,「前記タイムライン領域において、前記メッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記他のオブジェクトを一定期間非表示にするステップ」という技術的事項を有し,また,請求項4及び5も同様の構成を有するものとなった。当該「前記タイムライン領域において、前記メッセージオブジェクトに対する所定のイベントが発生した場合に、前記他のオブジェクトを一定期間非表示にするステップ」は,原査定における引用文献1乃至4には記載されておらず,優先日前における周知技術でもないので,本願発明1乃至5は,当業者であっても,原査定における引用文献1乃至4に基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-02-26 
出願番号 特願2017-102763(P2017-102763)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 561- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北川 純次  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
松平 英
発明の名称 オブジェクト表示プログラム、情報処理装置、及びオブジェクト表示方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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