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審決分類 審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
審判 一部無効 特174条1項  G06Q
審判 一部無効 2項進歩性  G06Q
管理番号 1360271
審判番号 無効2018-800140  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-13 
確定日 2020-03-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第4831955号発明「会計処理方法および会計処理プログラムを記録した記録媒体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判の請求は、特許第4831955号についての無効審判請求であるところ、この特許は、平成16年11月29日に特許出願(特願2004-344658号。以下、「本件特許出願」という。)がなされ、平成23年9月30日に設定登録がなされたものである。
(以下、特許第4831955号の請求項1に係る発明及び特許を、それぞれ、「本件特許発明」及び「本件特許」という。)

本件無効審判の経緯は、次のとおりである。
平成30年12月13日付 審判請求書、甲1の1?甲27
平成31年 3月13日付 答弁書、乙1?乙6
令和 元年 6月26日付 審理事項通知(1)
令和 元年 7月31日付 請求人側、口頭審理陳述要領書(1)、
甲28?甲31
令和 元年 7月31日付 被請求人側、口頭審理陳述要領書(1)、
乙7?乙11
令和 元年 8月16日付 審理事項通知(2)
令和 元年 8月29日付 被請求人側、口頭審理陳述要領書(2)
令和 元年 8月30日付 請求人側、口頭審理陳述要領書(2)、
甲32?甲33
令和 元年 9月6日 口頭審理
令和 元年 9月24日付 請求人側、上申書、甲34?甲35
令和 元年 9月24日付 被請求人側、上申書、乙12
令和 元年12月24日付 審理終結通知

第2 本件特許発明
(審判請求書に倣って分説するが、その際、請求人の分説記号にSを付して枝番を示すハイフンを除いたもの(「A」、「B-1」をそれぞれ「SA」、「SB1」としたもの)を用いて表記する。)

(SA)財務諸表を作成する会計処理のためのコンピュータシステムであって、
(SB1)予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから資金(現金及び現金同等物)の受入(A1)と払出(A2)を有する資金収支計算書勘定(A)を記録する資金収支計算書勘定記憶手段と、
(SB2)資金収支計算書勘定記憶手段から、前記伝票データを変換して複式簿記での伝票データとした複式仕訳データを用いて、企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)(B1?B4)と損益勘定(行政コスト計算書勘定)(B5?B7)を作成・記録する閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段と、
(SB3)前記資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段から、さらに、前記複式仕訳データを用いて、国家の政策レベルの意思決定を記録・会計処理するために、拡張された処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1?C4)を作成・記録する損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段と、
(SC)処理された結果で、資金収支計算書、貸借対照表、損益外純資産変動計算書、損益勘定行政コスト計算書をふくむ、少なくとも1つ以上の財務諸表を作成する財務諸表作成手段と、
(SD)作成した財務諸表を表示する財務諸表表示手段とを備え、
(SE)資金収支計算書勘定(A)の期末の収支尻(貸借差額)(A3)が、当期資金増減額として、貸借対照表上の資金勘定(B1)に振替えられ、資金収支計算書勘定と貸借対照表勘定の間での勘定連絡であり、
(SF)損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段の記録は、その期における損益外の純資産増加(C3,C4)と純資産減少(C1,C2)の2つで構成され、前記損益勘定(行政コスト計算書勘定)の収支尻(貸借差額)である純経常費用(B7)が処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)の(C1)に振替えられ、
(SG)処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)の貸方と借方の差額(収支尻)が、当期純資産変動額(C5)という形で、最終的には(B)の閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の純資産(国民持分)(B4)の部に振り替えられて、(B)の閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の借方(左側)と貸方(右側)がバランスし、
(SH)一方で、処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)の借方側(勘定の左側)には純経常費用(C1)と並んで財源措置(C2)という項目もあるが、これは具体的に言えば社会保障給付や、インフラ資産を整備した際の資本的支出のような、損益外で財源を費消する取引のことを指しており、
(SI)処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)の貸方側(勘定の右側)に計上される資産形成充当財源(C4)は、財源措置として支出がなされた場合、財源は費消されるが、その一部分は、インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができ、将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したかを示しているのが資産形成充当財源(C4)であることを特徴とする
(SJ) 会計処理コンピュータシステム。

第3 無効理由
1 無効理由1(進歩性要件違反:審判請求書における無効理由1ないし3)
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)、周知技術(周知技術1ないし8)ならびに甲第13号証および甲第17号証に基づく周知技術(周知技術9)または甲第13号証もしくは甲第17号証のいずれかに記載された公知技術に基づいて、本件特許出願の前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 無効理由2(サポート要件違反:審判請求書における無効理由4及び5)
本件特許は、本件特許出願が特許法第36条第6項第1号の規定に規定する要件を満たしていないものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

3 無効理由3(新規事項追加禁止要件違反:審判請求書における無効理由6及び7)
本件特許は、本件特許出願につき平成23年2月18日付けでなされた補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。

4 無効理由4(明確性要件違反:審判請求書における無効理由8ないし11)
本件特許は、本件特許出願が特許法第36条第6項第2号の規定に規定する要件を満たしていないものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

第4 両当事者の主張と証拠方法
(以下、審判請求書、答弁書、口頭審理陳述要領書(1)、口頭審理陳述要領書(2)、上申書を「請求」、「答弁」、「1陳」、「2陳」、「上申」という。)

1 無効理由1(進歩性要件違反)について
(1)請求人の主張
ア(争点1:SB2の「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)(B1?B4)」に係る引用発明の認定相違点の認定)
甲第1号証の「貸借対照表勘定(資金、非資金資産、負債、納税者区分)」は、SB2の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」に相当し、本件特許発明と甲第1号証記載の発明(「甲1発明」)とは、「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」を作成する点で一致する。(請求77?78頁、1陳10?11頁)
甲第1号証には、「資金」、「非資金資産」、「負債」及び「納税者持分」を構成要素とする貸借対照表勘定が明確に記載され、甲第1号証の2の「一般会計関連調整勘定」を含む貸借対照表勘定は、一般会計と特別会計との間の取引がある場合の例にすぎない。(1陳8頁)
引用発明の認定に当たっては、本件特許発明の発明特定事項に相当する事項を過不足のない限度で認定すれば足りるところ、本件特許発明ではB1?B4を特定しているだけで他の構成要素を限定していない。(1陳9頁)

イ(争点2:SB3、SF及びSIの「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の「貸方側」の「資産形成充当財源(C4)」に係る引用発明の認定相違点の認定)
(ア)甲第1号証は「拡大された財源措置・納税者持分増減計算書勘定(純経常費用への財源措置、財源措置、財源措置の増加、資産・負債再評価差額)を作成する工程」を開示する。(請求37?38頁)
甲1発明の「財源措置・納税者持分増減計算書勘定(純経常費用への財源措置、財源措置、財源措置の増加、資産・負債再評価差額)」は、本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1?C4)」に相当する。(請求78?79頁)
本件特許発明の処分・蓄積勘定(C)は、その期における損益外の純資産の増加(C3、C4)と純資産の減少(C1、C2)の2つで構成され、これらは、期中における活動量(構成要素の期中変動)そのものであり、いずれもフロー情報であってストック情報ではない。(1陳12?14頁)
本件明細書【0045】、図2によれば、資産及び負債の再評価差額は、「資産形成充当財源」の下位概念として位置づけられているところ、甲第1号証の2には、「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」に「資産・負債再評価損」及び「資産・負債再評価益」が含まれており、これらを合計すると資産・負債再評価差額であり、将来世代も利用可能な資産が当期どれだけ増加したかを示しているから、「資産形成充当財源」の下位概念である。そうすると、甲1発明の「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」は、この上位概念である「資産形成充当財源」を含むということを認定することができる。(1陳14?15頁)
本件特許発明と甲1発明とは、SB3の「拡張された処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1?C4)を作成する点で一致する。(請求78?80頁)
引用発明の認定に当たっては、本件特許発明の発明特定事項に相当する事項を過不足のない限度で認定すれば足りるところ、本件特許発明ではC1?C4を特定しているだけで他の構成要素を限定していない。(1陳16?17頁)

(イ)甲第1号証は、「財源措置・納税者持分増減計算書勘定は、その期における損益外の財源措置・納税者持分の増加と財源措置・納税者持分の減少の2つで構成され、前記行政コスト計算書の収支尻(貸借差額)である純経常費用が財源措置・納税者持分増減計算書勘定の純経常費用への財源措置に振り返られ、」を開示している。(請求41?42頁)
本件特許発明と甲1発明とは、SFの損益外純資産変動計算書勘定が「その期における損益外の純資産増加(C3、C4)と純資産減少(C1,C2)の2つで構成され、前記損益勘定(行政コスト計算書勘定)の収支尻(貸借差額)である純経常費用(B7)が処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)の(C1)に振り返られ、」という点で一致する。(請求83?84頁)

(ウ)甲第1号証は、「貸借対照表の貸方側(勘定の右側)に計上される税資金による資本形成見返負債は、財源措置として支出がなされた場合、財源は費消されるが、その一部分は、インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができる」点を少なくとも開示している。(請求50?53頁)
甲1発明の「税資金による資本形成見返負債」は、本件特許発明の「資産形成充当財源」に相当し、本件特許発明と甲1発明とは、少なくとも、SIの「資産形成充当財源(C4)は、財源措置として支出がなされた場合、財源は費消されるが、その一部分は、インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができる」点で一致する。(請求86?88頁)
本件明細書において「資産及び負債の再評価差額」が「資産形成充当財源」の下位概念として位置づけられており、甲第1号証には、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」の項目として「資産・負債再評価損」及び「資産負債再評価益」が含まれ、これらの合計が「資産・負債再評価差額」であって、この上位概念である「資産形成充当財源」を認定できる。(1陳14?15頁)
「税資金による資本形成見返負債」は、資産取得時に貸方側に計上されていることから、「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示しているともいえる。被請求人の、「税資金による資本形成見返負債」が、貸借対照表の貸方側の固定負債として計上され、かつその後に損益計算書勘定の収益に振り替えて損益をゼロにする会計処理を目的とする科目であるとの主張と、請求人の、「税資金による資本形成見返負債」が、実質的には、「詳細世代も利用可能な資産が当期どれだけ増加したかを示している」といえるとの主張は、相容れない主張ではなく、両立する。(1陳17?18頁)
甲第1号証には、「公会計に企業会計と同様の発生主義を採用した例」において「損益外の取引」について、「その収支尻」が「純資産増減(changes in net assets)という調整勘定」に「要約(振替)される」旨の記載があり、公会計に企業会計と同様の発生主義を持ち込んだ場合について損益外の取引の収支尻が振り替えられる点は問題点とされておらず、変更がないと考えるのが自然かつ合理的であるから、財源措置・納税者持分増減計算書を新たに導入した場合も、損益外の取引の収支尻が振り替えられると理解するのが自然かつ合理的である。(1陳21?22頁)
SIは、勘定連絡について特定していない。(1陳23頁)
本件特許発明の「資産形成充当財源」は、フロー情報であって、ストック情報ではない。(1陳23、25頁)

ウ(争点3:SGに係る引用発明の認定相違点の認定)
甲第1号証は、「財源措置・納税者持分増減計算書勘定の貸方と借方の差額(収支尻)が、当期の財源措置・納税者持分増減額という形で、最終的には公会計貸借対照表勘定の納税者持分の部に要約されて、公会計貸借対照表勘定の借方(左側)と貸方(右側)がバランスし、」を開示している。(請求43?45頁)
甲1発明の「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」、「当期の財源措置・納税者持分増減額」は、本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」、「当期純資産変動額(C5)」に相当し、甲1発明の「要約」は振替を意味し、本件特許発明の「振り替え」に相当するから、SGは一致点である。(請求84?85頁、1陳21頁)
会計に企業会計と同様の発生主義を持ち込めば損益外の取引の収支尻が振り替えられる点は問題とされないのであり、財源措置・納税者持分増減計算書を新たに導入した場合においても、同様に理解するのが自然かつ合理的である。(1陳21?22頁)

エ(争点4:SIに係る相違点の判断)
(ア)SIに係る相違点(「資産形成充当財源」が「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」(C)の貸方側(勘定の右側)に計上される」点(「相違点9」)又は、これに加えて「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したかを示している」点(「相違点9’」))に係る構成は、(主張1)甲第13号証及び甲第17号証に記載された周知技術(同「周知技術9」)である(請求125?136頁)か、(主張2)甲第13号証に記載された公知技術である(請求125?130頁、137?138頁)か、又は、(主張3)甲第17号証に記載された公知技術である(請求131?135頁、138?139頁)。

(イ)甲1発明と(ア)に示した周知技術9又は公知技術とは、財務諸表を作成するという同一の技術分野(会計分野)に属するものであり、甲第13号証及び甲第17号証は、甲1を参考文献として挙げているから、甲1発明にアの周知技術9(公知技術)を適用する動機付けがある一方で、その適用を妨げる事情はない。(請求137?138頁)
甲第1号証に「試作品」と記載されていても、甲第1号証から発明の技術思想を把握する妨げにならないから、適用の動機付けがないことにはならない。(1陳26頁)
甲第1号証においても、各勘定間の有機的な勘定連絡がある。(1陳26頁)

(2)被請求人の主張
ア(争点1:SB2の「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)(B1?B4)」に係る引用発明の認定相違点の認定)
本件特許発明の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)は、「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」(勘定項目として「資金(現金及び現金同等物)」「資産(資産以外)」「負債」「純資産」を含む)であるのに対し、甲第1号証の貸借対照表勘定は、「資金」「非資金資産」「負債」に加え「一般会計関連調整勘定」と「納税者持分」を含むものであって、「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」と異なる「一般会計関連調整勘定」という公会計に特有の勘定科目を含む。引用発明の認定において、この「一般会計関連調整勘定」を含むものが認定されなければならない。(答弁7?10頁)

イ(争点2:SB3、SF及びSIの「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の「貸方側」の「資産形成充当財源(C4)」に係る引用発明の認定相違点の認定)
(ア)甲第1号証の財源措置・納税者持分増減計算書勘定は、「社会資本売却損」、「直接資本減耗(減価償却相当額)、「資産・負債再評価損」、「税資金(特定財源)」、「一般会計繰越金」、「一般会計留保財源取崩(財源措置への振替)」、「資本形成(資本見返負債)の財源措置への振替」、「社会資本売却益」、「資産・負債再評価益」を含んで構成されており、これらの複数の科目を除外する請求人の主張は誤りである。(答弁10頁)
本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」は、「資産形成充当財源(C4)」を構成要素とするが、甲第1号証の財源措置・納税者持分増減計算書勘定には、これに対応する構成要素がなく、両者は相違する。(答弁10?12頁)

(イ)甲第1号証の「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」は、フロー情報しか示しておらず「財源措置」のみを構成要素とするのに対し、本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」は、ストック情報を表示し「財源措置(C2)」のみならず「資産形成充当財源(C4)」をも構成要素とする点で、異なる。甲第1号証の財源措置「納税者持分増減計算書」の貸方には、「資産形成充当財源(C4)」に相当する勘定が存在しない。(答弁13?15頁)

(ウ)甲第1号証の貸借対照表に計上される「税資金による資本形成見返負債」は、貸借対照表勘定の貸方側に固定負債として計上され、かつその後に損益計算書勘定の収益に振り替えて損益をゼロにする会計処理を目的とする科目であって、財源措置としての支出相当額を計上するものであり、会計学上の機能として直ちに「将来世代も利用可能な資産が当期どれだけ増加したかを示している」科目でもない。本件特許発明の「固定資産等(インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産)の残高」を計上する「資産形成充当財源の増加」とは全くの別物である。(答弁17?19頁)
本件特許発明の「資産形成充当財源(C4)」は、「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)の貸方(勘定の右側)」に計上される勘定科目であり、仮に甲第1号証の「税資金による資本形成見返負債」が「将来世代も利用可能な資産が当期どれだけ増加したかを示している」としても、同一機能を有する勘定科目が別個の財務諸表に属する勘定に計上されるということは、甲第1号証の「公会計概念フレームワーク」と本件特許発明との間に、重要な勘定体系の変更が存在したことを如実に示している。(答弁19?20頁)
本件特許発明の処分・蓄積勘定(C)の構成要素である「資産形成充当財源(C4)」は、当期純資産変動額というフロー情報を示すのみならず、財源措置として支出がなされ、財源を費消することにより増加した金額を加算した、将来世代も利用可能な資産の額(残高)というストック情報をも表示している。これに対し、甲1の財源措置・納税者持分増減計算書勘定は、ストックの変動に関するフロー情報を示す勘定科目である。ある勘定科目がストック情報をも示す勘定科目かフロー情報のみを示す勘定科目かの相違点は、勘定組織(勘定体系)に関する重要な相違点である。(答弁21?22行)

ウ(争点3:SGに係る引用発明の認定相違点の認定)
甲第1号証に開示された構成と一致点についての請求人の主張は、否認する。甲第1号証から「財源措置・納税者持分増減計算書勘定の貸方と借方の差額(収支尻)が、当期の財源措置・納税者持分増減額という形で、最終的には公会計貸借対照表勘定の納税者持分の部に要約されて」まで読み込むことは不可能である。(答弁15?17頁)

エ(争点4:SIに係る相違点の判断)
「資産形成充当財源」が「処分・蓄積勘定」(C)の貸方側に計上される構成は、甲第13号証に記載されていない。本件特許出願に先立ち、この構成を記載した文献は一切存在しない。(答弁23?24頁)
本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書)」は、「当期純資産変動額というフロー情報」のみならず「財源措置として支出がなされ、財源を費消することにより増加した、将来世代も利用可能な資産の額」というストック情報をも示す勘定科目であり、「財源措置(C2)」のみならず「資産形成充当財源(C4)」をも構成要素とするものである。甲第1号証の「公会計概念フレームワーク」の「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」がフロー情報を示し「財源措置」のみを構成要素とすること、これと関連して「税資金による資本形成見返負債」がストック情報を示す貸借対照表勘定に計上されることと対比すれば、「公会計概念フレームワーク」と本件特許発明との間には、勘定組織(勘定体系)における重要な体系変更が介在している。ストック情報をも示す「資産形成充当財源」が処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の構成要素となることは、甲第1号証にも、副引例と主張された甲第13号証、甲第14号証、甲第17号証にも、記載されていない。(答弁25?26頁)
そもそも「公会計概念フレームワーク」は、4つの財務指標の初期的な試作を明らかにしたものにすぎず、実務的側面に関する「補論(2)」もあくまで「試作品」であり、各勘定間の有機的な有機的な勘定連絡すら設定されていない。(答弁26?27頁)

2 無効理由2(サポート要件違反)について
(1)請求人の主張
ア SB1においては、SB2、SB3と異なり、伝票データを複式簿記での伝票データに変換することが記載されていないから、「伝票データから・・・資金収支計算書勘定(A)を記録する」は、「伝票データから直接・・・資金収支計算書勘定(A)を記録する」を意味するものと解するべきであり、また、「記録する」は「作成・記録する」の意味と解するべきである。
これに対し、明細書は、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データを変換して複式簿記でのデータとした複式仕訳データを用いることを前提としており、当業者は伝票データから複式仕訳データに変換することなく、課題を解決すると認識することはできない。(請求139?141頁)

イ SB2、SB3について、明細書には「複式仕訳データ」についての記載は、段落【0066】【0067】の記載のみであるところ、明細書【0067】の記載は仕訳マスタについての記載であり、複式仕訳データを用いて、閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)、損益勘定(行政コスト計算書勘定)及び処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)を作成していると認識できない。(請求141?142頁)

ウ SB2について、「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」が企業会計における「閉鎖残高勘定」の意味とも「貸借対照表勘定」の意味とも異なる意味である場合、サポート要件を満たすためには、この点に関して明細書に記載または示唆がなければならないが、本件明細書には、クレームの引き写しである【0009】の記載があるだけである。(請求149頁、1陳30?31頁)

(2)被請求人の主張
ア SB1に「直接」なる文言はない。また、データ構造が異なるので単式会計に関するデータから複式会計に「直接」変換するなどおよそ不可能であり必ず複式データに変更することが必須であることは会計分野の常識である。請求人の主張は、技術的にありえないものであり明らかな誤りである。(答弁31頁)
本件特許発明の財務書類4表はすべて複式簿記を基本にして財務書類4表間の勘定連絡をしていることから、複式仕訳データを利用することは当然の前提となっている。(答弁31?32頁)

イ SB2、SB3についても、本の財務書類4表はすべて複式簿記を基本にして財務書類4表間の勘定連絡をしていることから、複式仕訳データを利用することは当然の前提となっている。(答弁32?33頁)

3 無効理由3(新規事項追加禁止要件違反)について
(1)請求人の主張
ア SB1は、平成23年2月18日付手続補正(甲23)で追加されたものであるところ、SB1においては、SB2、SB3と異なり、伝票データを複式簿記での伝票データに変換することが記載されていないから、「伝票データから・・・資金収支計算書勘定(A)を記録する」は、「伝票データから直接・・・資金収支計算書勘定(A)を記録する」を意味するものと解するべきであり、また、「記録する」は「作成・記録する」の意味と解するべきである。
これに対し、明細書は、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データを変換して複式簿記でのデータとした複式仕訳データを用いることを前提としており、当業者は伝票データから複式仕訳データに変換することなく、課題を解決すると認識することはできない。(請求142?143頁)

イ SB2、SB3は、平成23年2月18日付手続補正(甲23)で追加されたものであるところ、SB2、SB3について、明細書には「複式仕訳データ」についての記載は、段落【0066】【0067】の記載のみであるところ、明細書【0067】の記載は仕訳マスタについての記載であり、複式仕訳データを用いて、閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)、損益勘定(行政コスト計算書勘定)及び処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)を作成していると認識できない。(請求143頁)

(2)被請求人の主張
ア SB1に「直接」なる文言はない。また、データ構造が異なるので単式会計に関するデータから複式会計に「直接」変換するなどおよそ不可能であり必ず複式データに変更することが必須であることは会計分野の常識である。請求人の主張は、技術的にありえないものであり明らかな誤りである。構成B1に係る資金収支計算書勘定が複式に仕訳された伝票データに基づき作成されたことは、出願時の図1及び5からも明らかである。(答弁34頁)

イ SB2、SB3について出願時の図1、図5、【0067】に開示されている。(答弁35?37頁)

4 無効理由4(明確性要件違反)について
(1)請求人の主張
ア SB1の「予算を含む・・・伝票データ」が何を意味するのか明らかでない。「予算を含む、・・」としてあえて読点を入れていること等から、「予算を含む」という記載は「伝票データ」に係っていると解するのが自然かつ合理的であるが、そうすると、過去の事象が前提である「伝票データ」に過去の事象でない「予算」が含まれるということになる。(請求144頁)

イ SB2の「資金収支計算書勘定記憶手段から、」との記載がどの用語を修飾しているのか不明である。(請求145頁)

ウ SB2の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」は、「閉鎖残高勘定」と「貸借対照表勘定」が同じ意味であるかのようにも読めるが、他方、企業会計における「閉鎖残高勘定」と「貸借対照表勘定」は異なる意味である。「損益勘定(行政コスト掲載書勘定)」についても同様である。(請求145?149頁)

エ SB3の「前記資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段から、」との記載は、SB3のどの用語を修飾しているのか不明である。(請求149頁)

(2)被請求人の主張
ア 請求人主張は、解釈論にすぎず、明確性欠如の問題ではない。(答弁37頁)「予算を含む」の文言は、「従来の単式簿記システム」に係るものであり、「従来の単式簿記システムにより作成された伝票データ」の範囲には、決算ばかりではなく、予算を含む伝票データも含まれることを特定したものである。公会計において、会計基準の対象は、「決算」のみならず「予算」をも含み、「決算」として過去に発生した会計的な事実を処理するための伝票データのみならず、「予算」という将来の会計的な事実の見積もりについて処理するための伝票データも必要となるから、「伝票データ」が過去の会計的事実の記録のみを前提とする旨の請求人の主張は、公会計分野の技術常識に反する。(答弁36?41頁)

イ SB2の「資金収支計算書勘定記憶手段から、」の「から」とは、閉鎖残高勘定、損益勘定、処分・蓄積勘定との「勘定連絡を通じて」、閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)と損益勘定(行政コスト計算書勘定)を作成・記録することを意味するものであり、明確である。(答弁41頁)

ウ 当業者は「閉鎖残高勘定」=「貸借対照表勘定」、「損益勘定」=「損益計算書勘定」と通常理解するものであり、明確である。(答弁42頁)

エ SB3についての請求人主張は、単に請求項記載の文言の解釈問題にすぎず、明確性欠如の問題ではない。(答弁42頁)「前記資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段から、」は、「拡張された処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1?C4)を作成・記録する」を修飾することは明らかである。また、「から」とは、「勘定連絡を通じて」の意味に解釈すべきであり、この解釈は一義的で明確である。(答弁42?43行)

5 証拠方法
(1)甲号証
甲1 公会計概念フレームワーク(甲1の1)、
別添ワークシート(甲1の2)
甲2 特開2002-175395号公報
甲3 特開2002-342548号公報
甲4 特開2001-43280号公報
甲5 弥生会計04ではじめるらくらくパソコン会計(抜粋)
甲6 特開2001-283146号公報
甲7 特開2001-155097号公報
甲8 特開2003-331209号公報
甲9 特開2004-192564号公報
甲10 特開2001-344397号公報
甲11 国際公開2004/017240号
甲12 特開2002-352051号公報
甲13 憲法における公会計制度の位置付けについて
甲14 公会計の基礎的概念、勘定体系及び財務諸表体系
甲15 キャッシュ・フロー会計の生成・統合論理
甲16 財務諸表三本化の理論について
甲17 公会計制度改革の理論と実践
甲18 公会計 国家の意思決定とガバナンス(抜粋)
甲19 意見書(本件特許出願)
甲20 RIETI 憲法における公会計制度の位置付けについて
甲21 RIETIとは
甲22 所蔵雑誌一覧
甲23 手続補正書(本件特許出願)
甲24 大辞林第三版(抜粋)
甲25 広辞苑第七版(抜粋)
甲26 簿記I簿記の基礎(抜粋)
甲27 会計学大辞典(抜粋)
甲28 判決(東地民29平成31年4月24日言渡、
平成30年(ワ)第10130号)
甲29 公会計革命「国ナビ」が変える日本の財政戦略(抜粋)
甲30 財務諸表論の考え方-会計基準の背景と論点-(抜粋)
甲31 訴状
甲32 広辞苑第七版(抜粋)
甲33 公会計 国家の意思決定とガバナンス(抜粋)
甲34 国の財務書類(平成15年度)(抜粋)
甲35 国・地方自治体の会計と事業評価(抜粋)

(2)乙号証
乙1 会計学大辞典[第五版](抜粋)
乙2 「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」
(抜粋)
乙3 会計学大辞典[第五版](抜粋)
乙4 意見書(本件特許出願)
乙5 統一的な基準による地方公会計マニュアル(抜粋)
乙6 普通地方公共団体の予算の調製の様式等について
乙7 特許願(本件特許出願、特許出願時)
乙8 明細書(本件特許出願、特許出願時)
乙9 特許請求の範囲(本件特許出願、特許出願時)
乙10 要約書(本件特許出願、特許出願時)
乙11 図面(本件特許出願、特許出願時)
乙12 「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」
(抜粋)

第5 無効理由1(進歩性要件違反)についての当審の判断
1 甲号証の記載等
(1)甲第1号証(主引用発明)
甲第1号証(甲第1号証の1「公会計概念フレームワーク」(https://jicpa.or.jp/specialized_field/pdf/00726-002265.pdf、平成15年3月25日)、及び甲第1号証の2「別添ワークシート」(https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/00726-002267.pdf、平成15年3月25日))には、次の事項が記載されている。
(注:原文の○数字は、「(1)」「(2)」等と半角括弧数字で示す。また、甲第1号証の2「別添ワークシート」の摘記は省略する。)

ア「1.1定義
公会計概念フレームワークとは、公共部門における財務情報(公会計情報)の作成・報告に関する目的及び一連の概念的基礎を体系化したものであって、公会計に関する認識、測定、表示及び開示の基準(公会計基準)の設定及び財政制度の設計等のための理論的拠り所である。
・・・(中略)・・・
1.5 公会計主要財務諸表の測定の焦点
公会計情報に関する財務報告の全般的な体系である公会計財務書類のうち、公共部門の財務運営上、特に中心的な機能を果たし、かつ、相互に関連性を有すべき四つの計算書((1)公会計貸借対照表、(2)行政コスト計算書、(3)財源措置・納税者持分増減計算書、(4)公会計資金収支計算書)を総称して「公会計主要財務諸表」という。
公会計主要財務諸表の「測定の焦点(measurement focus)」とは、経済的価値変動の事実について、「どの範囲」で公会計主要財務諸表上の認識・測定の対象とし、報告主体の財政状態(financial position)、財務業績(financial performance)及び財政状態の変動(changes in financial position)を表示・報告すべきか、という問題を意味する。より具体的には、公会計主要財務諸表の構成要素(資産、負債、その差額としての持分、収益、費用、財源措置)のうち、いかなる範囲のストック情報(構成要素の期末残高)とフロー情報(構成要素の期中変動)を計上すべきか、という問題である。
・・・(略)・・・
1.5.1 企業会計上の測定の焦点
元来、企業会計においては、取引事実の「発生」の時点で(会計の基礎)、報告主体が支配する全ての「経済資源」([流動性]財務資源及び非財務資源)を認識・測定の範囲(測定の焦点)とする「発生主義」が採用されてきた。
ここで、測定の焦点とされる経済資源とは、一般には、貸借対照表上のストック情報、即ち、構成要素の期末残高(資産、負債、その差額としての持分)とともに、損益計算書上のフロー情報、即ち、損益取引(収益及び費用)を意味すると考えてよい。収益及び費用は、報告主体と第三者との外部取引による経済資源の増減であって、その結果、損益計算書から導かれる当期純利益(収益-費用)」を貸借対照表上の「利益剰余金」勘定へ要約(振替)することを通じて、フロー情報とストック情報とを架橋する役割を果たすと同時に、企業における業績ないし成果の評価基準にもなり得る。
1.5.2 公会計上の測定の焦点
これに対して、公会計の世界においては、(1)純粋な現金主義(「現金」の流出入を会計の基礎及び測定の焦点とする)、(2)修正現金主義(出納整理期間を含む「現金」の流出入を会計の基礎及び測定の焦点とする)、(3)修正発生主義(「発生主義」を会計の基礎とする一方で、「財務資源」、即ち現金及び現金同等物を中心とする流動性資産及び負債を測定の焦点とする)、(4)企業会計と同様の純粋な発生主義(「発生主義」を会計の基礎とし、全て「経済資源」、即ち、[流動性]財務資源及び非財務資源を測定の焦点とする)等、様々なバリエーションがあり得る。」(1?8頁)

イ「2.4予算編成プロセス改革
従来の予算編成プロセスにおいては、(1)いわゆる増分(increments)査定主義の下、新規要求については一般経常経費であれ、資本的支出であれ、詳細に査定する一方で、前年度からの継続分についてほぼ無条件に要求が通る、逆に、(2)資本的支出や法律・制度に基づく移転支出(国庫補助金、社会保障給付、地方交付税等)については、将来負担に与える影響が大きいにも関わらず、中長期的な視点に基づく査定が行われることはない、といった問題点が挙げられる。結果として、従来のようなやり方では、予算膨張圧力を抑えることはできなかったと言えよう。
そこで、まず、予算編成プロセスに公会計制度改革の成果を取り入れ、公会計主要財務諸表(相互に関連性を有すべき(1)公会計貸借対照表、(2)行政コスト計算書[純経常費用計算書]、(3)財源措置・納税者持分増減計算書及び(4)公会計資金収支計算書からなる体系[後述])を作成すべきである。これにより、(a)発生主義・複式簿記に基づく翌期の公会計主要財務諸表の仕上りの姿を想定しつつ、予算編成を行う、(b)会計主要財務諸表から導かれる財務分析指標を参考としつつ、中長期の財政計画を策定する、(c)決算情報を翌期の予算編成にフィードバックすること等が可能となる。」(16頁)

ウ「5.2 公会計情報の報告主体 -連結公会計財務諸表-
政府の財政運営上の責任の明確化という公会計の目的に鑑みれば、国の統治機能を担い、公共政策の遂行を目的とする経済主体であれば、その名称や勘定区分に関わらず、公会計情報に関する受託会計責任(fiduciary accountability)を負うべきである。従って、特別会計、特殊法人等についても(法形式上、別の法人格であっても)、国の統治機能を担い、公共政策の遂行を目的とする経済主体であって、経済的実態として国(一般会計及び特別会計)と実質的な結合関係にある場合においては、これら特殊法人等を連結対象とした上で、同一経済主体としての連結公会計財務諸表を作成し、開示すべきである。
連結公会計財務諸表において、一般会計、特別会計、特殊法人等の相互間での資金のやり取り(繰入・繰戻等)が、例えば、「交付金」、「補助金」、「補給金」、「出資金」、「貸付金」等、いずれの名称ないし形態でなされようとも、これら全体に要するコストや財源措置等を網羅的に認識することが可能となろう。」(35頁)

エ「6.1 公会計主要財務諸表の体系
公会計財務書類のうち、特に中心的な機能を果たし、かつ、相互に関連性を有すべき財務諸表を「公会計主要財務諸表」と称する。公会計主要財務諸表の体系は、(1)公会計貸借対照表、(2)行政コスト計算書(純経常費用計算書)、(3)財源措置・納税者持分増減計算書、(4)公会計資金収支計算書という四つの相互に関連する計算書により構成される。 このうち、(1)公会計貸借対照表は企業会計における貸借対照表に、(2)行政コスト計算書(純経常費用計算書)は損益計算書に、そして、(4)公会計資金収支計算書はキャッシュ・フロー計算書に相当するものであるが、これに加えて、フロー情報の範囲を資本取引等(一部、資本形成に係る交換取引及びその財源措置への振替を含む)にまで拡大する(3)財源措置・納税者持分増減計算書を新たに導入する。」(35?36頁)

オ「6.1.1 財源措置・納税者持分増減計算書の導入
企業会計における発生主義(「発生主義」を会計の基礎とし、全ての「経済資源」を測定の焦点とする)の場合、期中の第三者との外部取引による経済資源の増減(収益及び費用)を「損益取引」(フロー情報)として認識・測定し、その収支尻である「当期純利益」を貸借対照表上の「利益剰余金」勘定(ストック情報)へ要約(振替)することを通じて、フロー情報とストック情報とを架橋する役割を果たす。
これに対し、公会計の世界に企業会計と同様の純粋な発生主義(「発生主義」を会計の基礎とし、全ての「経済資源」を測定の焦点とする)を持ち込んだ場合、(イ)政府を始めとする公共部門はそもそも「利益」の獲得を目的としておらず、「損益取引」(フロー情報)による「利益」計算は、政府活動の業績・成果の測定としては無意味、(ロ)むしろ政府活動としては、社会資本形成等の資本的支出、社会保障給付や補助金といった非対価性(移転・分配)支出等、「損益取引」に該当しない取引(資本取引・交換取引)の方が重要であるにも関わらず認識・測定されない、といった問題点が生ずる。実際、企業会計と同様の発生主義を採用した例(IFAC IPSAS 1、 GASB 34等)によれば、これら損益外の取引については、その収支尻が「純資産増減(changes in net assets)」という調整勘定に要約(振替)されるのみである。
上記のような問題点を克服し、政府活動として重要性の高い損益外の取引(資本取引・交換取引)を認識・測定し、財務諸表に表示するためには、二つの異なる会計処理方法がある。
(a)企業会計と同様の純粋な発生主義に基づく貸借対照表及び損益計算書とは別個に、現金主義(または修正現金主義、修正発生主義)に基づく「資金収支計算書(fund financial statements)」を作成する方法
これは、「資金会計(fund accounting)」として、我が国の公益法人会計基準(昭和52年3月:公益法人監督事務連絡協議会)、米・地方政府会計基準理事会の新基準(GASB 34、1999年6月公表)等で採用されている会計処理方法である。非営利事業会計として伝統的な会計処理方法であるが、いわゆる一取引二仕訳(追加仕訳)という煩雑さがある他、キャッシュ・フロー計算書の導入により、資金収支計算書の独自性と存在意義が薄れている。
(b)直接法によるキャッシュ・フロー会計の会計処理方法に基づき、全ての資源の流出入を貸借対照表勘定、損益計算勘定、損益外計算(資本取引・交換取引)勘定へ割り振ることによって、キャッシュ・フロー計算書と同時に、貸借対照表、損益計算書、損益外計算(資本取引・交換取引)報告書を一括して作成する方法
いわゆる一取引二仕訳(追加仕訳)を回避すると同時に、貸借対照表、損益計算書、損益外計算(資本取引・交換取引)報告書、キャッシュ・フロー計算書を一括して作成できる。但し、直接法によるキャッシュ・フロー会計があまり普及していない現状では、その会計処理方法は複雑に感じられよう。
上記二方法のうち、(a)「資金会計(fund accounting)」には、非営利事業会計としての伝統もあり、相当の合理性が認められるものの、公会計・企業会計の双方に共通するキャッシュ・フロー会計の重要性とその認識の高まりという流れに鑑みれば、両者には重複する部分も多く、資金会計(fund accounting)独自の存在意義も薄れていると考えられる。当該フレームワークにおいては、(b)直接法によるキャッシュ・フロー会計を応用した「損益外計算(資本取引・交換取引)報告書」の作成及び会計処理方法を採用する。それが、新たに導入する財源措置・納税者持分増減計算書である。」(36?37頁)

カ「6.1.2政府の責任明確化とマネジメントの向上
当該フレームワークが採用する公会計主要財務諸表の体系は、上記の通り、(1)公会計貸借対照表、(2)行政コスト計算書(純経常費用計算書)、(3)財源措置・納税者持分増減計算書、(4)公会計資金収支計算書という四つの相互に関連する計算書から成る。従来、政府の財政運営においては、単式簿記による歳入・歳出に基づく資金収支計算書((4))しか作成されておらず、近年、ようやく「国の貸借対照表」(財務省)や「自治体バランスシート」(総務省)といった財産目録としての棚卸表、即ち、貸借対照表((1))が作成されるに至った段階にある。
今後、公会計制度の改革を通じて、政府の財政運営上の責任明確化を図るとすれば、必然的に、個々の取引における経済資源の調達源泉と運用状態という二面性を記録する必要が生じ、複式簿記によるストック及びフロー情報の会計処理(仕訳帳)と、それらが相互に関連する財務諸表の体系(総勘定元帳)を採用すべきこととなる他、貸借対照表上の資産・負債差額についても、単なる差額概念ではなく、政府の受託者責任を示す「納税者持分(taxpayer’s equity)」として積極的に意味付けることとなる。」(37?38頁)

キ「6.2公会計財務書類全般の体系
6.2.1公会計貸借対照表
(1)公会計貸借対照表は、「資産」、「負債」、及びその残余(資産-負債)としての「納税者持分」を構成要素とし、政府の財政状態(financial position)、即ち、構成要素(資産、負債、その差額としての納税者持分)の期末残高(ストック情報)を表示する。公会計貸借対照表は、経済的資源、財務構造、資産・負債の価格変動による影響、流動性、支払能力、リスク態様、リスク・マネジメント、環境変化への対応能力等の状況を示す。
6.2.2行政コスト計算書(純経常費用計算書)
(2)行政コスト計算書(純経常費用計算書)は、「費用」及び「収益」を構成要素とし、財政状態の期中変動のうち、損益取引に関するフロー情報を表示する。行政コスト計算書(純経常費用計算書)は、いわゆる行政コスト(純経常費用)として政府活動に要する総費用及び純額を示す。
なお、行政コスト計算書の収支尻(費用・収益差額)を「純経常費用」として表示し、これに対して、(3)財源措置・納税者持分増減計算書上、「純経常費用への財源措置」がなされる構成とされる。
6.2.3財源措置・納税者持分増減計算書
(3)財源措置・納税者持分増減計算書は、財政状態の期中変動のうち、財源措置及びその他納税者持分を直接増減させる資本取引等(一部、資本形成に係る交換取引及びその財源措置への振替を含む)に関するフロー情報を示す。財源措置・納税者持分増減計算書は、「財源措置」を構成要素とし、その他納税者持分を直接増減させる科目に区分される。
6.2.4公会計資金収支計算書
(4)公会計資金収支計算書は、政府等公共部門の「現金」及び「現金同等物」の流入と流出、即ち、「資金」収支を直接的に表示する。
6.2.5連結公会計財務諸表
上記公会計主要財務諸表((1)?(4))に基づき、連結公会計財務諸表(連結公会計貸借対照表、連結行政コスト計算書、連結財源措置・納税者持分増減計算書及び連結公会計資金収支計算書からなる体系)を作成する。」(38?39頁)

ク「6.3公会計に固有の会計処理方法 -財源及び使途別会計処理-
いわゆる公企業会計の世界、即ち、特殊法人等会計処理基準(昭和62年10月:財政制度審議会公企業会計小委員会)及び独立行政法人会計基準(平成12年2月:総務庁独立行政法人会計基準研究会)等においては、従前より、財源及び使途別に企業会計とは異なる会計処理が行われてきたところである。即ち、特殊法人等の業務運営や資本形成等において、法人自らが稼得した収益による場合と、運営費交付金や補助金等、予算上の財源措置による場合とを区別し、前者(収益)の場合は企業会計と同様の会計処理を行うものの、他方、後者(予算上の財源措置)によって業務を運営、または、償却資産を取得した場合には、補助金等相当額をいったん負債(資産見返負債)として計上した後、費用が発生した段階でその相当額を取崩して収益に振替えていく会計処理方法が採用されている。
これは、補助金・交付金等、予算上の財源措置の課税利益への算入を実質的に回避し、課税を延期する「圧縮記帳」(法人税法42条、企業会計原則注解24)と同様、予算上の財源措置に対する課税によって資金が循環することを回避するとともに、(圧縮記帳ではかえって不明確になってしまう)予算上の財源措置の使途及び運用状況等を明示することを通じて、特殊法人等における経営責任を明確化することを目的としている。
税資金を財源として公共政策を実施する純粋な政府活動においては、公企業会計以上に、社会資本形成のための支出や、社会保障給付や補助金・交付金といった対価を伴わない(移転・分配)支出の比率と重要性が高まる。これらはいずれも、政府の業務の進行に応じて発生する費用や償却資産の減価に対応すべき収益の獲得を予定していないものであるから、本来、損益計算書(行政コスト計算書)上の「収益勘定」にチャージされるべき「収益的支出」、即ち、「費用」ではなく、「資本勘定」に直接チャージされる「資本的支出」ないし「非対価性(移転・分配)支出」として認識すべきものである。従って、そのような損益計算外の資本取引等(一部、資本形成に係る交換取引及びその財源措置への振替を含む)については、財源措置・納税者持分増減計算書上、明示的に財源及び使途別の会計処理を行うことを通じて、政府の財政運営上の責任を明確化すべきである。詳しくは、補論(2)「公会計に固有の会計処理方法」を参照のこと。」(39?40頁)

ケ「7.2公会計貸借対照表
公会計貸借対照表は、「資産」、「負債」、及びその残余(資産一負債)としての「納税者持分」をその構成要素とする。
・・・(中略)・・・
7.2.5納税者持分
国家のガバナンス構造上、国民は、納税を通じて政府に経済資源の運用を委託し、いわば信託法上の委託者の地位に立つと同時に、政府の資源調達における優位性(即ち、課税徴収権及び通貨発行権)の反射的効果として、国政運営の結果である世代間にわたる国の負債につき一種の無限連帯責任を負っているのと同様の地位に置かれ、他方、政府は、国民から預かった経済資源を信託財産として管理・運用し、いわば信託法上の受託者としての義務と責任(受託者責任=stewardship)を負うものと考えられる。
従って、(1)国民は、政府の顧客、即ち、政府という経済主体による対外的取引の相手方(外部者)というよりも、むしろ政府の財産的基礎を拠出する内部者(構成員)として位置付けられる他、(2)信託法(及びその母体である衡平法[equity])の考え方から類推すれば、政府を受託者、国民を委託者兼受益者と位置付ける国家のガバナンス構造の下、国民は、政府資産(信託財産)に対する物権に類する衡平法上の権利を留保しており、この権利は、いわば政府資産に対する(優先劣後構造上の)残余ないし最劣後の権利(residual claim)、即ち、持分権(equity)と位置付けられること等に鑑み、これを「納税者持分」(taxpayer’s equity)と称する。
ここに、納税者持分とは、公共部門の経済主体、即ち、政府の全ての負債を控除した残余の資産に対する権利(interest)をいう。従って、持分の額は、資産・負債差額、即ち、純資産(net assets)または正味財産(net worth)に等しい。納税者持分は、その源泉及び運用先との対応により細分類される。当該フレームワークにおいては、納税者持分について、税資金による資本形成、財源措置増減(財源余剰)累計額、直接資本減耗累計額、資産・負債再評価差額累計額及び開始時未分析差額に細分類する。」(42?49頁)

コ「7.4財源措置・納税者持分増減計算書
財源措置・納税者持分増減計算書は、「財源措置」を構成要素とし、その他、納税者持分を直接増減させる科目に区分される。
7.4.1財源措置
財源措置(resource budget)とは、当該会計期間中における財政状態の変動(changes in financial position)として、持分参加者(=納税者)からの拠出に関連する税資金の流出入等により、納税者持分を直接増減させる公会計上の資本取引をいう。
財源措置の増減については、例えば、(1)減少原因として、(行政コスト計算書上の収支尻である)純経常費用への財源措置、税資金による資本形成への財源措置、補助金・交付金への財源措置等を計上する一方で、(2)増加原因として、税資金の繰入の他、資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替、一般会計留保特定財源見返負債の取崩(財源措置への振替)等を計上する。財源措置の増減は、財源措置・納税者持分増減計算書上、個々の減少または増加原因毎に総額表示される。
その他、納税者持分を直接増減させる科目としては、(1)直接資本減耗(償却資産の減価に対応すべき収益の獲得が予定されていない場合における直接的な資本価値の減耗)、(2)資産・負債再評価差額等が挙げられる。」(52頁)

サ「7.5公会計資金収支計算書
・・・(中略)・・・
7.5.2「資金」概念の拡張
上記に鑑み、発生主義に基づく会計処理と現金主義に基づく予算準拠性の確保及び予算統制とを両立させるため、公会計資金収支計算書における「資金」概念を拡大する。即ち、「現金」のみならず、出納整理期間中の取引により発生する「短期未収金(出納整理期間中の受取)」及び「短期未払金(出納整理期間中の支払)」について、「現金同等物」として処理した上で、これらをも含めて「資金」概念を構成するとともに、公会計貸借対照表上、「資金」勘定として要約する。」(52?53頁)

シ「補論(2)「公会計に固有の会計処理方法」【試作品】
「特別会計等財務書類作成ガイドライン」は、当該フレームワークを理論的基礎としつつ、政府の予算編成担当部局が現実に公会計財務書類を作成する際、マニュアルとして機能することを企図して試作したものである。特別会計等財務書類作成ガイドラインにおいては、特別会計における典型的な会計処理を例として、より具体的に公会計に固有の会計処理方法を説明している。その内容は、特別会計のみならず広く一般会計や特殊法人等においても共通する部分が多いので、以下、関連部分を引用する。」(69頁)

ス「1財源措置・納税者持分増減計算書上の特殊な会計処理
業務の進行に応じて発生する費用及び償却資産の減価に対応すべき収益の獲得が見込まれる場合、即ち、企業会計と同様の損益計算と固定資産会計(減価償却計算)が可能な場合は、行政コスト計算書上の会計処理によることとし、他方、公共政策としての社会資本形成(資本的支出)や社会保障給付(非対価性支出)等、政府の業務の進行に応じて発生する費用及び償却資産の減価に対応すべき収益の獲得が予定されていない場合、即ち、公共政策の核心とも言うべき損益計算外の資本取引等(一部、資本形成に係る交換取引及びその財源措置への振替を含む)については、主として財源措置・納税者持分増減計算書上において、公会計に固有の会計処理を施すこととしている。
以下、財源措置・納税者持分増減計算書上、特殊な会計処理であり、かつ、応用範囲も広いと思われる資本形成見返負債の時間軸を通じた財源措置化について、(1)社会資本形成に係る財源別会計処理、(2)一般会計留保特定財源の取崩及び(3)社会資本の除売却に係る会計処理を例として説明を加える。
1.1ワークシートの活用
当該フレームワーク及び特別会計等財務書類作成ガイドラインにおいては、公会計主要財務諸表の作成方法として、ワークシートを活用する(別添ワークシート参照)。ワークシート法は、個々の会計処理の仕訳や勘定の相互関係、公会計主要財務諸表の体系全体における位置付けを理解するのに優れており、また、実際上も、公益法人会計基準(昭和52年3月:公益法人監督事務連絡協議会)等の資金会計にみられるような、いわゆる一取引二仕訳(追加仕訳)を回避する上でも有用である。
ワークシート法においては、キャッシュ・フロー計算書を直接法で作成する場合と同様の仕訳を行う。即ち、(1)資金収支計算書勘定は公会計貸借対照表上の「資金」勘定に要約、(2)財源措置・納税者持分増減計算書勘定は公会計貸借対照表上の「納税者持分の部」勘定に要約される。なお、資金収支計算書勘定においては、公会計貸借対照表上の「資金」勘定(借方勘定)と貸借を対応させるため、資金収入が借方、資金支出が貸方として処理するので、その点、留意を要する。」(69?70頁)

セ(仕訳例の内容の摘記は省略)
「1.2社会資本形成に係る財源別会計処理
社会資本形成については、その財源の別により、(a)税資金(特定財源)、(b)一般会計繰入金、(c)公債(特会債)という三つの類型の会計処理を行うことを想定している。
このうち、(a)税資金(特定財源)及び(b)一般会計繰入金については、その資本的支出時に、いずれも財源措置・納税者持分増減計算書上、「財源措置の減少」として「資本形成への財源措置」に計上するとともに、公会計貸借対照表上、(a)税資金(特定財源)については「納税者持分の部」に「資本形成見返負債」を、(b)一般会計繰入金については「一般会計関連調整勘定」に「資本形成見返負債」を計上する。その後、当該社会資本形成の「直接資本減耗」の進行に応じて資本形成見返負債の「財源措置化」を計上することにより、財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果を相殺する(網掛け部分)。
【仕訳例:税資金(特定財源)による社会資本形成の場合】
他方、(c)公債(特会債)を財源とする社会資本形成の場合、その資本的支出時に、公会計貸借対照表上、資産計上するとともに、「公債(特会債)発行残高」として負債計上する。その後、当該社会資本形成に係る「直接資本減耗」の進行とは無関係に、公会計資金収支計算書上、「公債(特会債)元本償還支出」を行っていくので、財源措置・納税者持分増減計算書上は、財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)のみが効果を有することとなる(網掛け部分)。
【仕訳例:公債(特会債)による社会資本形成の場合】」(70?71頁)

ソ(仕訳例の内容の摘記は省略)
「3 公会計主要財務諸表の体系全体に係る会計処理
・・・
3.2 資本的支出と非資金資産
特別会計等財務書類作成ガイドラインにおいては、公会計貸借対照表上、国が所有主体となるもののみを資産計上することとしている(p.7参照)。従って、資本的支出に関しては、資本移転支出(対地方・他会計等への繰入)を除く狭義の資本的支出についてのみ非資金資産項目(債権、有形固定資産、無形資産または投資等)に計上することとなる。
【仕訳例:貸付金として、30百万円支出、公共用財産(インフラ資産)向けに330百万円支出、出資金として90百万円支出の場合】
これと同時に、税資金または一般会計繰入金財源とする資本的支出の場合、前述の財源別会計処理として、財源措置・納税者持分増減計算書上、「資本形成への財源措置」を計上するとともに、公会計貸借対照表上、「資本形成見返負債」を計上する。
【仕訳例:税資金による公共用財産(インフラ資産)向けの支出70百万円の場合】
【仕訳例:一般会計繰入金による資本的支出210百万円の場合】」(76?78頁)

タ「図表11 ○○特別会計公会計貸借対照表」(80?81頁)について
(ア)「4各財務諸表の雛形」(80?89頁)は、甲第1号証において「引用」された「特別会計等財務書類作成ガイドライン」の「関連部分」であり(上記シ)、そのうち、「図表11」の「○○特別会計公会計貸借対照表」(以下、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」という。)では、その各項目について、「平成12年度」と「平成13年度」のそれぞれに対応する列にそれぞれの年度に対応する金額を一般化した「×××」が記載され、そのうち「(控除)」と記載された項目については、「×××」の前に「△」が付されている。
(イ)「特別会計ガイドラインの貸借対照表」の左側(借方)には、「【資産の部】」があり、その最後に「資産の部」の項目が示されている。
その項目として「資金」、「非資金資産」があり、そのうち、「資金」の項目として「現金」、「現金同等物(短期未収金及び短期未払金)」があり、「非資金資産」の項目として「債権」、「有価証券」、「棚卸資産」、「有形固定資産」、「無形資産」、「投資等」がある。
このうち、「有形固定資産」の項目として「土地(公園等を含む)」、「立木竹」、「建物」、「工作物」、「機械器具」、「船舶」、「航空機」、「公共用財産(インフラ資産)」、「建設仮勘定・未完成施設等」があり、さらに、「公共用財産(インフラ資産)」について、「(控除)直接資本減耗累計額」、「(1)税資金(特定財源)による資本形成」、「(控除)減価償却相当額累計額」、「(2)一般会計繰入金(一般会計債)による資本形成」、「一般会計所属資産(○○)」、「(控除)減価償却相当額累計額」、「(3)公債(特会債)による資本形成」、「(控除)減価償却相当額累計額」、「(公共用財産用地)」、「(公共用財産施設)」の各項目がこの順序で示されている。
(ウ)「特別会計ガイドラインの貸借対照表」の右側(貸方)には、「【負債の部】」、「【一般会計関連調整勘定】」、「【納税者持分の部】」があり、それぞれの最後に「負債の部」、「一般会計関連調整勘定」、「納税者持分の部」の項目が示されている。また、貸方の最後の借方の「資産の部」に対応する位置に「負債・納税者持分の部」の項目が示されている。
「【負債の部】」の項目として、「未払金及び未払い費用」、「保管金等」、「前受金及び前受収益」、「郵便貯金」、「財政融資資金預託金」、「責任準備金」、「支払備金(未払保険金)」、「政府短期証券」、「公債」、「借入金」、「引当金」がある。
「【一般会計関連調整勘定】」の項目として、「一般会計繰入金による資本形成」、「一般会計への債務移管等累計額」、「一般会計留保特定財源見返負債」があり、このうち「一般会計繰入金による資本形成」について、「一般会計繰入金による資本形成見返負債」、「(控除)直接資本減耗累計額」の各項目がこの順序で示されている。
「【納税者持分の部】」の項目として、「税資金(特定財源)による資本形成」、「税資金(特定財源)による資本形成見返負債」、「財源措置増減(財源余剰)累計額」、「資産・負債再評価差額累計額」、「開始時未分析差額」があり、このうち「税資金(特定財源)による資本形成」について、「税資金(特定財源)による資本形成見返負債」、「(控除)直接資本減耗累計額」の各項目がこの順序で示されている。

チ 「図表13 ○○特別会計財源措置・納税者持分増減計算書」(84頁)について
(ア)甲第1号証において「引用」された「特別会計等財務書類作成ガイドライン」の「関連部分」(上記シ及びタ)のうち、「図表13」の「○○特別会計財源措置・納税者持分増減計算書」(以下、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」という。)では、「財源措置・納税者持分減少原因の部」、「財源措置・納税者持分増加の部」、「財源措置・納税者持分増減額」の各項目及びそれぞれの項目に含まれた項目について、「平成12年度」と「平成13年度」のそれぞれに対応する列にそれぞれの年度に対応する金額を一般化した「×××」が記載され、そのうち「財源措置・納税者持分減少原因の部」について、「×××」の前に「△」が付されている。
(イ)「財源措置・納税者持分減少原因の部」の項目として、「財源措置の減少」、「直接資本減耗(原価償却相当額)」、「資産・負債再評価損」がある。
そのうち、「財源措置の減少」について、「純経常費用への財源措置」、「税資金(特定財源)による資本形成への財源措置」、「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」、「社会資本除売却損」があり、
「直接資本減耗(原価償却相当額)」について、「税資金(特定財源)による資本形成分」、「一般会計繰入金による資本形成分」、「公債(特会債)による資本形成分」がある。
(ウ)「財源措置・納税者持分増加の部」の項目として、「財源措置の増加」、「資産・負債再評価益」がある。
そのうち、「財源措置の増加」について、「税資金(特定財源)」、「一般会計繰入金」、「一般会計留保財源取崩(財源措置への振替)」、「資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替」、「社会資本売却益」があり、さらに、そのうち「資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替」について、「税資金分(直接資本減耗相当額)」、「一般会計繰入金(直接資本減耗相当額)」がある。

ツ 以上を踏まえれば、甲第1号証について、次のとおりのことがいえる。
(ア)甲第1号証には、「当該フレームワーク」において、「公会計財務書類」について、「(a)」と「(b)」の二つの方法のうち「(b)」の「キャッシュ・フロー計算書と同時に、貸借対照表、損益計算書、損益外計算(資本取引・交換取引)報告書を一括して作成する方法」が採用されている旨が示されている(上記オ及びキ)。
このことを踏まえれば、甲第1号証には、当該フレームワークに関連して「sa 財務諸表を作成する工程」が記載されているといえる。(両当事者間に争いがない。)

(イ)当該フレームワークにおいて作成される財務諸表である「公会計財務書類」には、「政府等公共部門の「現金」及び「現金同等物」の流入と流出、即ち、「資金」収支を直接的に表示する」ものである「公会計資金収支計算書」が含まれている(上記キ)から、甲第1号証には、「sb1 資金(現金及び現金同等物)の流入と流出を有する資金収支計算書勘定を作成する工程と、」の構成が記載されている。(両当事者間に争いがない。)

(ウ)(争点1)
a(a)当該フレームワークにおいて作成される財務諸表のうち「損益計算書」に相当する書類については、「公会計財務書類」には、「財政状態の期中変動」のうち「損益取引に関するフロー情報」を表示する「行政コスト計算書(純経常費用計算書)」が含まれており、これが「「費用」及び「収益」を構成要素と」するものであるから、行政コスト計算書(費用、収益、純経常費用)を作成する工程を認定することができる。
(b)当該フレームワークにおいて作成される財務諸表のうち「貸借対照表」に相当する書類については、当該フレームワークにおいて引用された「特別会計ガイドラインの貸借対照表」(上記タ)において、その借方に「【資産の部】」、その貸方に「【負債の部】」、「【一般会計関連調整勘定】」、「【納税者持分の部】」が含まれている。そして、貸借対照表は借方と貸方とがバランスしていることが前提であって、貸方とバランスがとられる借方において、負債とも納税者持分とも区別された「一般会計関連調整勘定」を含む旨が明示されており、その内容をみても、「【資産の部】」の項目として「公共用財産(インフラ資産)」である「(2)一般会計繰入金(一般会計債)による資本形成」が含まれており、他方、「一般会計繰入金による資本形成」及び「一般会計繰入金による資本形成見返負債」は「一般会計関連調整勘定」において計上され、「納税者持分の部」において計上されておらず、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」における「納税者持分」が「資産」から「負債」を除いた残余(「資産-負債」)となっていない。
以上を踏まえれば、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」は、当該フレームワークにおける「貸借対照表」(「「資産」、「負債」、及びその残余(資産-負債)としての「納税者持分」」を構成要素とする貸借対照表。上記キ及びケ)の下位概念を示すものとなっておらず、むしろこれと異なるものとなっている。よって、甲第1号証記載の貸借対照表の認定にあたって「特別会計ガイドラインの貸借対照表」を考慮することはできるものの、その場合には、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」を「「資産」、「負債」、及びその残余(資産-負債)としての「納税者持分」」を構成要素とする貸借対照表の例として考慮することはできない。
よって、甲第1号証記載の貸借対照表の認定にあたって当該フレームワークにおいて引用された「特別会計ガイドラインの貸借対照表」を考慮するという前提のもとでは、「資金、非資金資産、負債、一般会計関連調整勘定、納税者持分」を構成要素とする貸借対照表を認定することはできるものの、「資金、非資金資産、負債、納税者持分」を構成要素とする貸借対照表を認定することはできない。
以上を踏まえて、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」を考慮するという前提にたてば、甲第1号証には、「sb2 公会計貸借対照表(資金、非資金資産、負債、一般会計関連調整勘定、納税者持分)と行政コスト計算書(費用、収益、純経常費用)を作成する工程と、」の構成が記載されていると認められる。
b この点、請求人は、上記キの記載から「一般会計関連調整勘定」が含まれていない貸借対照表を認定可能である旨及び甲1発明としては、本件特許発明の発明特定事項に相当する事項を過不足のない限度で認定すれば足りる旨、を主張する。
しかし、後述(ク)におけるSGに対応する甲1発明の認定に関する検討及び後述(コ)における「特別会計ガイドラインの貸借対照表」に係る仕訳例を前提としたSIに対応する甲1発明の認定に関する検討においては、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」(上記タ)を考慮することが前提となっており、SB2に対応する甲1発明の認定にあたって、これを考慮しないという前提に立って、上記キの記載のみから認定を行うことはできない。また、甲第1号証においては、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」は、当該フレームワークにおける「貸借対照表」の下位概念を示すものとなっておらず、むしろこれと異なるものとなっているから、「「資産」、「負債」、及びその残余(資産-負債)としての「納税者持分」」を構成要素とする貸借対照表を認定しつつ、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」をその例として考慮することはできない。いうなれば、甲第1号証においては、「「資産」、「負債」、及びその残余(資産-負債)としての「納税者持分」」を構成要素とする「特別会計ガイドラインの貸借対照表」は記載されていないのであり、甲1発明の認定にあたって、本件特許発明の発明特定事項に相当する事項を過不足のない限度で認定すれば足りるとしても、甲第1号証に記載されていないものを記載されていると認定することはできない。


(エ)(争点2)
a 甲第1号証には、キャッシュ・フロー計算書に相当する「公会計資金収支計算書」に加え「フロー情報の範囲を資本取引等(一部、資本形成に係る交換取引及びその財源措置への振替を含む)にまで拡大する」ものである「財源措置・納税者持分増減計算書」を導入する旨が記載されており(上記エ)、この「財源措置・納税者持分増減計算書」は、「当該会計期間中における財政状態の変動として、持分参加者(=納税者)からの拠出に関連する税資金の流出入等により、納税者持分を直接増減させる公会計上の資本取引」である「財源措置」とともに「納税者持分を直接増減させる科目」として「直接資本減耗」と「資産・負債再評価差額」等を含むものである(上記オ及びコ)。
そのうち、「財源措置」については、その「増減」について「個々の減少または増加原因毎」に「総額表示される」。
さらに、当該フレームワークにおいて引用された「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」(図表13)においては、財源措置・納税者持分の増減について、「財源措置・納税者持分減少原因の部」、「財源措置・納税者持分増加原因の部」、「財源措置・納税者持分増減額」の各項目及びそれぞれの項目に含まれた項目についての金額を示す「×××」ないし「△×××」が示されている。
そして、「納税者持分増加原因の部」には、「財源措置の増加」として「税資金」、「一般会計繰入金」、「一般会計留保財源取崩(財源措置への振替)」、「資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替」、等が示されるとともに、「資産・負債再評価益」が示されており、他方、「納税者持分減少原因の部」には、「財源措置の減少」として「純経常費用への財源措置」、「税資金による資本形成への財源措置」、「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」、等が示されるとともに、「直接資本減耗」及び「資産・負債再評価損」が示されている。
ここで、当該フレームワークにおける「財源措置・納税者持ち分増減計算書」における「納税者持分を直接増減させる科目」について、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」においては、「資産・負債再評価差額」については、「財源措置の減少」とともに「財源措置・納税者持分減少原因の部」に「資産・負債再評価損」が示され、他方で、「財源措置の増加」とともに「財源措置・納税者持分増加原因の部」において「資産・負債再評価益」が示されており、さらに、「直接資本減耗」も「財源措置・納税者持分減少原因の部」において示されており、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」においては、「納税者持分を直接増減させる科目」も含め、納税者持分の増加原因と納税者持分の減少原因に分けて示されているものである。
以上を踏まえれば、甲第1号証には、そこで引用された「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」の内容も併せ鑑みれば、「sb3 拡大された財源措置・納税者持分増減計算書(納税者持分増加原因として、財源措置の増加(税資金、一般会計繰入金、一般会計留保財源取崩(財源措置への振替)、資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替、等)及び資産・負債再評価益を表示し、納税者持分減少原因として、財源措置の減少(純経常費用への財源措置、税資金による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置、等)、直接資本減耗及び資産・負債再評価損を表示し、さらに、財源措置・納税者持分増減額を表示したもの)を作成する工程と、」の構成が記載されているということができる。
b この点について、請求人は、「拡大された財源措置・納税者持分増減計算書」に表示される内訳について「純経常費用への財源措置」、「財源措置」、「財源措置の増加」及び「資産・負債再評価差額」を並びのものとして主張しており、他方、被請求人は、請求人の主張が甲第1号証の財源措置・納税者持分増減計算書において複数の科目を除外するものであって誤りであると主張しているところ、以下のとおり、請求人の主張の一部及び被請求人の主張の一部については、採用できない。
まず、請求人の主張についてみると、甲第1号証における「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」における「純経常費用への財源措置」は、「財源措置・納税者持分減少原因」における「財源措置の減少原因」の一つと扱われているのであって、「財源措置」、「財源措置の増加」及び「資産・負債再評価差額」と同格の並びとしては扱われていない。してみると、請求人の主張のうち、「純経常費用への財源措置」、「財源措置」、「財源措置の増加」及び「資産・負債再評価差額」を同格の並びとする点は、甲第1号証に記載に即したものといえない。
次に被請求人の主張についてみると、(ウ)において上述したとおり、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」の「【資産の部】」の項目として、「公共用財産(インフラ資産)」である「(2)一般会計繰入金(一般会計債)による資本形成」が含まれていることと(コ)において後述する仕分け例(特に仕訳16と仕訳17)の示す内容に照らせば、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」の内容を踏まえた認定を行うにあたって、「財源措置の増加」に「一般会計繰入金」が含まれる旨や「財源措置の減少」に「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」が含まれる旨を除外することはできない。しかし、甲第1号証における「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」は、「その内容」が「特別会計のみならず広く一般会計や特殊法人においても共通する部分が多い」ことから「引用」されたものであるから、そこに含まれる「財源措置の増加」と「財源措置の減少」の項目全てを認定すべき理由はなく、被請求人の主張のうち、これらの項目全てを認定すべき旨をいう点については、採用することができない。
以上を踏まえ、当審としては、上記のとおり認定する。

(オ)「公会計主要財務諸表の体系」が「公会計貸借対照表」、「行政コスト計算書(純経常費用計算書)」、「財源措置・納税者持分増減計算書」、「公会計資金収支計算書」により構成される(上記エ)のであるから、甲第1号証には、「sc 公会計資金収支計算書、公会計貸借対照表、財源措置・納税者持分増減計算書、行政コスト計算書を含む、少なくとも1つ以上の財務諸表を作成する工程と、」の構成が記載されている。

(カ)甲第1号証には、「se 資金収支計算書勘定の期末の収支尻(貸借差額)が、公会計貸借対照表上の資金勘定に要約(振替)され、資金収支計算書勘定と公会計貸借対照表の間での勘定連絡であり、」との構成が記載されている。(上記サ及びス、両当事者間に争いがない。)

(キ)(争点2)
(エ)において上述したところに照らせば、甲第1号証の「財源措置・納税者持分増減計算書」は、財源措置の増加(税資金、一般会計繰入金、一般会計留保財源取崩(財源措置への振替)、資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替、等)及び資産・負債再評価益である「財源措置・納税者持分増加原因」と、財源措置の減少(純経常費用への財源措置、税資金による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置、等)、直接資本減耗及び資産・負債再評価損である「財源措置・納税者持分減少原因」の2つで構成されたものであるといえる。
また、この「財源措置・納税者持分減少原因」のうち「財源措置の減少」の一つである「純経常費用への財源措置」については、「行政コスト計算書の収支尻(費用・収益差額)」が「純経常費用」とされ、「財源措置・納税者持分増減計算書」の上で「純経常費用への財源措置」がなされるものである。(上記キ)
してみると、甲第1号証には、「sf 財源措置・納税者持分増減計算書勘定は、その期における損益外の財源措置・納税者持分の増加と財源措置・納税者持分の減少の2つで構成され、前記行政コスト計算書の収支尻(費用・収益差額)である純経常費用が財源措置・納税者持分増減計算書勘定の純経常費用への財源措置に振り替えられ、」の構成を記載している。

(ク)(争点3)
a 当該フレームワークにおける「ワークシート法」においては「キャッシュ・フロー計算書を直接法で作成する場合と同様の仕訳」が行われ、「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」は「公会計貸借対照表」上の「納税者持分の部」勘定に要約される」(上記ス)。また、貸借対照表である以上、企業会計における貸借対照表(いわゆるバランスシート)と同様、甲第1号証の「公会計貸借対照表」も、その借方(左側)と貸方(右側)はバランスするものといえる。
してみると、甲第1号証には、「sg 財源措置・納税者持分増減計算書勘定が公会計貸借対照表上の「納税者持分の部」勘定に最終的には要約され、また、公会計貸借対照表勘定の借方(左側)と貸方(右側)はバランスし、」の構成が記載されている。
b 請求人の主張のうち下記の主張は、いずれも甲第1号証の記載に即したものでない。
(a)請求人は、甲第1号証に「要約(振替)」という記載が存在することを指摘して、甲第1号証では「勘定に要約」という表現が「勘定に振替」の意味で用いられている(審判請求書40頁の注書)として、「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」が「公会計貸借対照表上の「納税者持分の部」勘定に要約される」旨の記載(上記ス)から、甲第1号証において、「・・要約されて、公会計貸借対照表勘定の借方(左側)と貸方(右側)がバランスし」との認定が可能であると主張している。
しかし、請求人が示した甲第1号証の記載は、「振替」以外の方法による「要約」もあり得るという前提で「要約(振替)」との記載により「振替」の方法による「要約」である旨を特に明示しているとも解することができ、請求人が指摘する記載から「要約(振替)」の意味で「要約」の文言を用いているとまで認定することはできない。
また、甲第1号証には、「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」が「公会計貸借対照表上の「納税者持分の部」勘定に要約される」旨(上記ス)は記載されているものの、この記載における「要約」が、前者の「収支尻」が後者の「納税者持分の部」に「振替」られることによって、後者の貸借がバランスするという関係を示すことを示す記載はないから、仮に請求人が指摘する記載によって「要約」が「振替」であり得るとしても、このような関係まで認定することはできない。
(このことを踏まえ、上記認定では、「・・要約され、また、・・バランスし、」とした。)
(b)請求人は、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」の「最下段」にある「財源措置・納税者持分増減額」の項目が「公会計貸借対照表」の「納税者持分の部」勘定に振り替えられると主張している。
しかし、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」においては、「財源措置・納税者持分増加原因の部」に「税資金(特定財源)」と「一般会計繰入金」の両方が含まれ、「財源措置・納税者持分減少原因の部」に「税資金(特定財源)による資本形成への財源措置」と「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」の両方が含まれて、その上で、その「最下段」に「財源措置・納税者持分増減額」の項目が設けられており、仮に「財源措置・納税者持分増減額」がこの書類の「収支尻」を示すものであるとすると、その「収支尻」は、「一般会計繰入金」と「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」に対応する金額の収支を含めた「収支尻」となっている。これに対して、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」には、「納税者持分の部」と区別された「一般会計関連調整勘定」があり、「税資金(特定財源)による資本形成」は「納税者持分の部」に示されているものの、「一般会計繰入金による資本形成」は、「一般会計調整勘定」に示されている。これらを踏まえれば、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」の「収支尻」が「特別会計ガイドラインの貸借対照表」の「納税者持分の部」に振り替えられる関係になっていないことが明らかである。
(c)請求人は、甲第1号証には「公会計に企業会計と同様の発生主義を採用した例」において「損益外の取引」について、「その収支尻」が「純資産増減(changes in net assets)という調整勘定」に「要約(振替)される」旨の記載(上記オ)を指摘して、財源措置・納税者持分増減計算書を新たに導入した場合も、損益外の取引の収支尻が振り替えられると理解するのが自然かつ合理的であると主張している。
しかし、そもそも、この記載は、甲1発明についてではなく「公会計に企業会計と同様の発生主義を採用した例」についてのものであって、「損益外の取引」の「収支尻」が「調整勘定」に「要約(振替)される」ことは、「調整勘定」の収支尻が貸借対照表に振り替えられる旨の記載ではないから、仮に甲1発明の「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」が「公会計に企業会計と同様の発生主義を採用した例」における「調整勘定」に類するものであるとしても、この記載を根拠として、「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」の「収支尻」が貸借対照表に振り替えられる旨を認定することはできない。

(ケ)甲第1号証の記載から「拡大された財源措置・納税者持分増減計算書」(上記sb3)を認定することができ、その際、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」を考慮することができるから、甲第1号証には、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」に関連して、「sh 一方で、財源措置・納税者持分増減計算書勘定の借方側(勘定の左側)には純経常費用への財源措置と並んで財源措置(税資金(特定財源)による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置)という項目もあるが、これは具体的に言えば、社会保障給付や、インフラ資産を整備した際の資本的支出のような、損益外で財源を費消する取引のことを指しており、」の構成が開示されている。(両当事者間に争いがない。(第1回口頭審理調書、被請求人発言の「4」))

(コ)(争点2)
a 以下、「特別会計ガイドラインの貸借対照表(上記タ、以下、「BS」という。)」及び「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書(上記チ、以下、「NW」という。)」を考慮することを前提として検討する。
(なお、以下のCFは、「特別会計ガイドライン」における「公会計資金収支計算書」である。)
上記ソにおいて摘記を省略した「仕訳例:税資金による公共用財産(インフラ資産)向けの支出70百万円の場合」には、仕訳2(BSの借方に「公共用財産(インフラ資産)」70百万円を計上するとともにCFの貸方に「税資金による資本的支出」70百万円を計上する仕訳)と仕訳3(NWの借方に「税資金による資本形成への財源措置」70百万円を計上するとともにBSに「税資金による資本形成見返負債」70百万円を計上する仕訳)が記載され、「仕訳例:一般会計繰入金による資本的支出210百万円の場合」には、仕訳16(BSの借方に「公共用財産(インフラ資産)」210百万円を計上するとともにCFの貸方に「一般会計繰入金による資本的支出」210百万円を計上する仕訳)と仕訳17(NWの借方に「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」210百万円を計上するとともにBSに「一般会計繰入金による資本形成見返負債」210百万円を計上する仕訳)が記載されているところ、ここでは、仕訳2と仕訳16が示す「インフラ資産を整備した際の資本的支出」の際、これが税資金(特定財源)による場合(仕訳2)、NWの借方の「財源措置の減少」として「税資金による資本形成への財源措置」に計上されるとともに、BSの貸方の「納税者持分の部」の「税資金による資本形成見返負債」に計上され(仕訳3)、これが一般会計繰入金による場合には、NWの借方の「財源措置の減少」として「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」に計上されるとともに、BSの貸方の「一般会計関連調整勘定」の「一般会計繰入金による資本形成見返負債」に計上される(仕訳17)。
このうち、「税資金による資本形成への財源措置」と「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」は、いずれもNWの借方に計上される「資本形成への財源措置」である。
また、BSにおける「税資金による資本形成見返負債」と「一般会計繰入金による資本形成見返負債」とは、いずれも、BSの貸方に計上される「資本形成見返負債」である。
そして、仕訳3と仕訳17からみて、上記(ウ)に示した「公会計貸借対照表」(sb2)において、「資本形成見返負債」が貸借対照表の「貸方」に属することは記載されているといえるものの、その「貸方」のうち「納税者持分」に属するとまでは記載されているとはいえない。この点、甲第1号証(上記「1」「(1)」ク)において参照されている「独立行政法人会計基準」においても、「資産見返負債」が「固定負債」として「負債」に属する項目であるとされており(乙第2号証、乙第12号証)、このことに照らせば、「資本形成見返負債」が「貸方」のうちの「負債」であるとは認定できても、「負債」でなく「納税者持分」であるとは認定できない。また、上記(エ)に示したように、sb3の「納税者持分減少原因」としての「資本形成への財源措置」や「納税者持分増加原因」としての「資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替」も税資金分と一般会計繰越金分を含むものであり(上記チ)、このことからも、「資本形成見返負債」のうち、税資金によるもののみを考慮して一般会計繰入金によるものは考慮しないということはできない。
また、「資本形成見返負債」については、甲第1号証においては、社会的資本形成に伴う「資本的支出」の時点ではなく、その後の当該社会資本形成に係る「直接資本減耗」の進行に応じて「資本形成見返負債の財源措置化」が計上され、そのことによって「財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果を相殺する」ことが予定されている(上記ソ)。
してみると、甲第1号証には、「si インフラ資産を整備をした際の資本的支出等の際の財源措置・納税者持分増減計算書の借方への「資本形成への財源措置」の計上がなされた場合、貸借対照表の貸方側(勘定の右側)に「資本形成見返負債」が計上され、この「資本形成見返負債」は、社会資本形成に係る「直接資本減耗」の進行に応じて「資本形成見返負債の財源措置化」が計上されて財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果が相殺されることが予定されているものである、」との構成が記載されている。
b この点についての請求人の主張は、いずれも、甲第1号証の記載に即したものでない。
(a)請求人は、「資本形成見返負債」のうち「税資金による資本形成見返負債」を認定すべき旨を主張している。
しかし、aに示したように、sb3の「納税者持分減少原因」としての「資本形成への財源措置」や「納税者持分増加原因」としての「資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替」も税資金分と一般会計繰越金分を含むものであり(上記チ)、このことからも、「資本形成見返負債」のうち、税資金によるもののみを考慮して一般会計繰入金によるものは考慮しないということはできない。
また、仕訳16と仕訳17によれば、資本的支出のうち、公共用財産(インフラ資産)に対する一般会計繰入金による支出(BSの借方に「公共用財産(インフラ資産)」、CFの貸方に一般会計繰入金による支出を計上)あたって、NWの借方に「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」が計上されるとともにBSに貸方に「一般会計繰入金による資本形成見返負債」が計上されるところ、BSの貸方の「一般会計繰入金による資本形成見返負債」は、「納税者持分の部」ではなく「一般会計調整勘定」の項目となっている。このことから、資本的支出に伴ってBSの借方に計上される「公共用財産(インフラ資産)」の一部及びNWに計上される「資本形成への財源措置」の一部については、それに対応する「資本形成見返負債」が、BSの貸方に計上されるものの、その「納税者持分の部」に計上されるのではなく、(「負債の部」とも「納税者持分の部」とも区別された)「一般会計調整勘定」において計上される関係となっている。
このことに照らせば、「資本形成見返負債」が貸借対照表の「貸方」のうち「納税者持分」に属する旨を認定することはできないし、「資本形成見返負債」のうち一般会計繰入金の分を除いて税資金による分のみを認定することもできない。請求人も、SHの「財源措置」については、「税資金(特定財源)による資本形成への財源措置」のみならず「一般会計繰入金による資本形成への財源措置」が含まれるとしている。
これらを踏まえれば、「資本形成見返負債」のうち「税資金による資本形成見返負債」のみを認定すべきではなく、請求人の主張は、採用できない。
(b)請求人は、「税資金による資本形成見返負債」は、「資産取得時に貸方側に計上されている」から「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示している旨を主張する。
しかし、「資本形成見返負債」は、社会資本形成に係る「直接資本減耗」の進行に応じて「資本形成見返負債の財源措置化」が計上されて財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果が相殺されることが予定されているにとどまり、資産取得がなされた当期中に貸借対照表の貸方側に計上された分が財源措置・納税者持分の増加として扱われるものでないから、「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示すものとはいえない。
(c)請求人は、本件明細書において「資産及び負債の再評価差額」が「資産形成充当財源」の下位概念として位置づけられており、甲第1号証には、「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」の項目として「資産・負債再評価損」及び「資産負債再評価益」が含まれ、これらの合計が「資産・負債再評価差額」であって、この上位概念である「資産形成充当財源」を認定できる旨、主張している。
しかし、本件明細書において「資産及び負債の再評価差額」が「資産形成充当財源」の下位概念として位置づけられているとしても、そのことは、甲第1号証記載の発明の認定と無関係の事情である。甲第1号証には、「拡大された財源措置・納税者持分増減計算書」(sb3)及び「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」のいずれについても「資産形成充当財源」の項目を認定できる内容は記載されていない。

テ (甲1発明の認定)
以上によれば、甲第1号証には、以下のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(甲1発明)
sa 財務諸表を作成する工程であって、
sb1 資金(現金及び現金同等物)の流入と流出を有する資金収支計算書勘定を作成する工程と、
sb2 公会計貸借対照表(資金、非資金資産、負債、一般会計関連調整勘定、納税者持分)と行政コスト計算書(費用、収益、純経常費用)を作成する工程と、
sb3 拡大された財源措置・納税者持分増減計算書(納税者持分増加原因として、財源措置の増加(税資金、一般会計繰入金、一般会計留保財源取崩(財源措置への振替)、資本形成(資産見返負債)の財源措置への振替、等)及び資産・負債再評価益を表示し、納税者持分減少原因として、財源措置の減少(純経常費用への財源措置、税資金による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置、等)、直接資本減耗及び資産・負債再評価損を表示し、さらに、財源措置・納税者持分増減額を表示したもの)を作成する工程と、
sc 公会計資金収支計算書、公会計貸借対照表、財源措置・納税者持分増減計算書、行政コスト計算書を含む、少なくとも1つ以上の財務諸表を作成する工程と、
se 資金収支計算書勘定の期末の収支尻(貸借差額)が、公会計貸借対照表上の資金勘定に要約(振替)され、資金収支計算書勘定と公会計貸借対照表の間での勘定連絡であり、
sf 財源措置・納税者持分増減計算書勘定は、その期における損益外の財源措置・納税者持分の増加と財源措置・納税者持分の減少の2つで構成され、前記行政コスト計算書の収支尻(費用・収益差額)である純経常費用が財源措置・納税者持分増減計算書勘定の純経常費用への財源措置に振り替えられ、
sg 財源措置・納税者持分増減計算書勘定が公会計貸借対照表上の「納税者持分の部」勘定に最終的には要約され、また、公会計貸借対照表勘定の借方(左側)と貸方(右側)はバランスし、
sh 一方で、財源措置・納税者持分増減計算書勘定の借方側(勘定の左側)には純経常費用への財源措置と並んで財源措置(税資金(特定財源)による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置)という項目もあるが、これは具体的に言えば、社会保障給付や、インフラ資産を整備した際の資本的支出のような、損益外で財源を費消する取引のことを指しており、
si インフラ資産を整備をした際の資本的支出等の際の財源措置・納税者持分増減計算書の借方への「資本形成への財源措置」の計上がなされた場合、貸借対照表の貸方側(勘定の右側)に「資本形成見返負債」が計上され、この「資本形成見返負債」は、社会資本形成に係る「直接資本減耗」の進行に応じて「資本形成見返負債の財源措置化」が計上されて財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果が相殺されることが予定されているものである、
sj 方法。

(2)甲第13号証、甲第17号証、甲第14号証について
ア 甲第13号証
甲第13号証(「憲法における公会計制度の位置付けについて」(https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/04030021.html、平成16年3月29日))には、次の事項が記載されている。
(ア)「本稿では、国家の意思決定構造の第3段階として公会計制度を位置づけ、国家の意思決定直接参加することができない将来世代の利益を制度的に補償するとともに、国家の意思決定の「正当性」を確保することを目指している。」(6頁8?10行)

(イ)「第3段階:公会計制度による将来世代の利益の制度的保証
・・・
将来世代の国民は、そもそも国家の意思決定に参加することはできない。だが、公会計制度を整備することによって、将来世代の国民の利益や将来の負担への影響を数字で明らかにするとともに、現役世代による予算編成という国会財政上のガバナンス・レベルの意思決定の責任と是非を検証可能なものとする。具体的には、まず、予算編成上のシミュレーションを通じて、国家の意思決定に直接参加することができない将来世代への負担の先送り額が明らかにすることが可能となる。また、将来世代への負担の先送りを許す財務指標の上限目標値等を予め設定した上で、その範囲内で予算編成上の財源の使途を組み替えることによって、その政権がどのような分野に重点的に資源を投入しようとしているのか、我々現役世代の受益と負担はどう変わるのか、といった点を明らかにすることができる。従って、公会計制度は、予算編成上の意思決定の責任と是非を検証可能にすることを通じて、国家の意思決定そのものを方向付け、規律付ける機能を有するといえよう(桜内、2003)。
【図表2】
これを国家の意思決定の「正当性」の確保の観点から言い換えれば、将来世代の利益や将来の負担を数字によって明らかにすることを制度的に保障することを通じて、未だ法的には実現していない将来世代の利益の方向性にも合致した国家の意思決定を行うことを意味する。これと引換えに、将来世代による国家の意思決定への「正当性」の付与がなされたものと看做すことができるのである。」(6頁11?32行)

(ウ)図表2


イ 甲第17号証
甲第17号証(「公会計制度改革の理論と実践」(「国際税制研究」第11号、平成15年10月25日))には、次の事項が記載されている。
(ア)「これに対して公会計は、国であれば首相、自治体であれば首長が、目指すべき将来のビジョンを明確に示すとともに(目的地の設定)、その実現のため、現役世代の受益と負担の関係がどうなるか、そして、将来世代に対してどれだけの負担が先送りされることとなるのか、その道筋(予算編成上の意思決定)をわかりやすく国民に提示するナビゲーションシステムとして機能する。これを略して「国ナビ」と名付けよう(図表3参照)。具体的には、予算編成上のシミュレーションを通じて、現役世代の受益と負担の関係を把握できる他、将来世代への負担の先送りを許す財務指標の上限目標値等を予め首相または首長が設定することが可能となる。その結果、(1)(原文では○数字、以下同様。)その政権がどのような分野に重点的に資源投入しようとしているのか、(2)我々現役世代の負担はどう変わるのか、更には、(3)将来世代に対して、どれだけの負担の先送りをお願いすることになるのか、首相又は首長の意思決定とその責任が国民の前に明らかとなる。」(161頁左欄9行?同頁右欄11行)

(イ)「「国ナビ」と同様のフォーマットで、地方公共団体向けに勘定科目の設定を組み替えたものが「自治ナビ」である。独立行政法人・経済産業研究所におけるプロジェクトの一環として、実際のA市(人口約13万人)の平成13年度決算データ(歳入歳出規模約550億円)をシステムに投入し、数値サンプルを出力した(図表4参照)。」(163頁3?10行)

(ウ)図表3


(エ)図表4


ウ 甲第14号証
甲第14号証(公会計の基礎的概念、勘定体系及び財務諸表体系(http://warp/ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1022127/www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseig/zaiseig150319b.pdf、平成15年3月19日))には、
「政府部門の処分勘定」について「資源配分に関する意思決定そのものについて、会計的形式に従って記録・計算」である旨、「予算編成等に活用できる処分勘定を設定の上、財務諸表を拡張したもの」等を記載したボックスからの矢印によって「財源措置・納税者持分計算書」を記載したボックスが示されている旨、「○数字の3」で「財源措置・納税者持分計算書」について「予算編成上の意思決定支援」である旨、が記載されている。

(3)周知技術について(ア?カについては、当事者間に争いがないので、各証の記載の摘記は省略。)
ア 周知技術1について
財務諸表を、会計処理のためにコンピュータシステムにより作成することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術1)であり、このことは、甲第2号証?甲第7号証の記載から、明らかである。

イ 周知技術2について
仕訳データから資金収支計算書勘定を作成することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術2)であり、このことは、甲第2号証?甲第5号証の記載から、明らかである。

ウ 周知技術3について
単式簿記システムによる作成された伝票データから仕訳データを作成することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術3)であり、このことは、甲第7号証?甲第10号証の記載から、明らかである。

エ 周知技術4について
作成された財務諸表に対応する勘定を記憶手段に記憶することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術4)であり、このことは、甲第5号証、甲第11号証、甲第12号証の記載から、明らかである。

オ 周知技術5について
複式仕訳データを用いて貸借対照表勘定及び損益計算書勘定を作成することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術5)であり、このことは、甲第2号証?甲第5号証、甲第7号証、甲第10号証の記載から、明らかである。

カ 周知技術7について
作成した財務諸表を表示することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術7)であり、このことは、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証の記載から、明らかである。

キ 周知技術6について
上記甲第13号証の記載及び甲第14号証の記載からみて、国家の政策レベルの意思決定を記録・会計処理することは、本件特許出願前の周知技術であるといえる。

ク 周知技術8について
キャッシュフロー計算書の期末の収支尻が当期資金増減額として貸借対照表上の資金勘定に振り替えられることは、本件特許出願前の周知技術(周知技術8)であり、このことは、甲第15号証(上野清貴「キャッシュ・フロー会計の生成・統合論理」、平成12年3月24日)の以下の記載から、明らかである。
「しかし、現在の複式簿記システムにはキャッシュ・フロー計算書を作成するシステムが内蔵されていないので、これを内蔵する新しいシステムを構築する必要があるが、これは、現在の複式簿記システムを応用するだけで、簡単に行うことができる。・・・現在のシステムでは収入および支出をすべて現金預金勘定で処理するが、新しいシステムでは、現金預金勘定を収入および支出別に分化し、収入および支出はさらにそれらの取引内容を的確に表す各勘定に細分化されることになる。そして、このこのように細分化された勘定が合計試算表および残高試算表に含まれるのである。この後の処理は次のようになる。まず、残高試算表における収入および支出要素を抜き出してキャッシュ・フロー計算書を構成し、資産、負債および資本要素を抜き出して貸借対照表を構成し、収益および費用要素を抜き出して損益計算書を構成する。そして、キャッシュ・フロー計算書において算定された現金増減を貸借対照表の現金預金に振替え、損益計算書において算定された損益を貸借対照表の未処分利益に振替え、各勘定を締切ることによって、複式簿記が完結する。」(69頁19行?70頁10行)

2 対比
(1)本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」について
ア 本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」は、「拡張された」ものであり(SB3)、「その期における損益外の純資産増加(C3、C4)と純資産減少(C1、C2)の2つで構成され」(SF)て「C1?C4」を有する(SB3)ものであり、その「貸方と借方の差額(収支尻)」が、「当期純資産変動額(C5)」という形で、最終的に本件特許発明の貸借対照表である「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」の「純資産(国民持分)(B4)の部」に「振り替えられ」て貸借対照表の「借方(左側)と貸方(右側)がバランス」する(SG)ものである。
イ この点に関連して、本件特許の明細書には、「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の収支尻(貸借差額)」である「当期純資産変動額」が「マイナス」になる場合」は、「国民の持分である純資産を食い潰していることを意味する」(【0030】)ことが記載されている。
ウ このことに照らせば、本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の「貸方と借方の差額(収支尻)」である「当期純資産変動額」のマイナスは、「国民の持分」である「純資産」の「食い潰し」を示すものである。

(2) 本件特許発明の「資産形成充当財源(C4)」について
ア 本件特許発明の「資産形成充当財源(C4)」は、(1)で上述した「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の「貸方側(勘定の右側)」に計上され(SI)、「財源措置として支出がなされた場合」に「将来世代も利用可能な資産」が「当期どれだけ増加したか」を示す(SI)ものである。
そして、「借方側(勘定の左側)」の「財源措置(C2)」が「インフラ資産を整備した際の資本的支出」等を指す(SH)ところ、「財源措置として支出がなされた場合」に「費消」された「財源」の「一部分」は、「インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当され」るため「現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができ」ることを踏まえて、「将来世代も利用可能な資産」の当期の増加分として計上されるものである。
以上を踏まえれば、特許請求の範囲において、「資産形成充当財源(C4)」について、「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の借方側の「財源措置(C2)」に計上された金額の一部に対応する金額が「将来世代の利用可能な資産」の当期中の増加を示すものしてその支出の時点か遅くとも当期中にその貸方側に計上されるものであること、及び、「資産形成充当財源(C4)」が「現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っている」と考えられる「インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産」である「将来世代の利用可能な資産」であること、が示されている。
イ この点に関連して、本件特許の明細書においては、「財源(C3)」は、税収や他会計からの繰入金のような「流動性の高い資源として流入してきた未使用の資源」であり、他方で、「資産形成充当財源(C4)」は、「そのような財源が固定資産などに転化したもの」であって「税収等の財源が使用されて減少したが、将来世代が利用可能な資産の形で増加したと解釈できるもの」である旨(同【0029】)が記載されている。さらに、「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の実施例(段落【0033】?【0046】、図2)について、「資産形成充当財源(将来利用可能な資源)の変動額の一部」が「財源措置額(当期費消する資源の総額)の一部分」と「連動」しており、「当該会計期間中の財源措置(当期費消する資源の総額)の一部分」が「インフラ資産等の固定資産」や「貸付金・出資金等の金融資産」として「将来世代も含めて利用可能な資源」となっていることから、「その部分」について「将来利用可能な資源(資産形成充当財源)が増加したもの」として「資産形成充当財源変動計算区分」において金額を計上する旨(【0046】)が記載されている。
図2においては、行項目において、「純資産の変動原因」としての「行政コスト」、「財源の使途(損益外財源の減少)」、「資産形成充当財源の変動」が示され、この「資産形成充当財源の変動」において「減少原因(変動原因別)」、「増加原因(財源内訳別)」、「再評価差額」が示されている。また、列項目において、「将来利用可能な資源の変動額」として、「資産形成充当財源の減少」と「資産形成充当財源の増加」が示されている。
ウ 以上によれば、「資産形成充当財源(C4)」は、「将来世代も利用可能な資産」が「当期どれだけ増加したか」を示すものであり、「インフラ資本を整備した際の資本的支出」に伴って借方の「財源措置(C2)」に計上された金額の一部に対応する金額が、その支出の時点か遅くとも当期中の「将来世代の利用可能な資源」の増加を示すものとして貸方に「資産形成充当財源(C4)」として計上されるものである。
また、(1)において上述したとおり、本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の「貸方と借方の差額(収支尻)」である「当期純資産変動額」のマイナスは、「国民の持分」である「純資産」の「食い潰し」を示すものであるところ、「インフラ資本を整備した際の資本的支出」に伴う借方の「財源措置(C2)」に計上されたもののうち、「将来世代も利用可能な資産」に転化したことで「資産形成充当財源(C4)」として計上された分については、そのマイナス幅が小さくなって、その分の「純資産」の「食い潰し」がなかったものと扱われるものである。
エ 請求人は、「資産形成充当財源(C4)」がストック情報を示す旨の被請求人の主張に対し、「資産形成充当財源(C4)」は、フロー情報であって、ストック情報でない、と主張している。
本件特許発明の「資産形成充当財源(C4)」は、「財源措置として支出がなされた場合」に「将来世代も利用可能な資産」が「当期どれだけ増加したか」を示すものであるから、当期の増加を示すものであるという意味での「フロー情報」を示すことは明らかである。他方、「資産形成充当財源(C4)」が「現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っている」と考えられる「インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産」である「将来世代の利用可能な資産」であることも、特許請求の範囲の記載において示されており、被請求人の「資産形成充当財源(C4)」が「ストック情報」である旨の主張は、特許請求の範囲の記載からみて、是認できるものである。
そして、ウで上述したように、SI、SG、本件明細書の段落【0030】の記載からみて、「資産形成充当財源(C4)」は、これが計上された分について「純資産」の「食い潰し」がなかったものと扱われるものである。さらには、本件明細書の「そのような財源が固定資産などに転化したもの」であって「税収等の財源が使用されて減少したが、将来世代が利用可能な資産の形で増加したと解釈できる」(段落【0029】)、「当該会計期間中の財源措置(当期費消する資源の総額)の一部分」が「インフラ資産等の固定資産」や「貸付金・出資金等の金融資産」として「将来世代も含めて利用可能な資源」となっていることから、「その部分」について「将来利用可能な資源(資産形成充当財源)が増加したもの」として「資産形成充当財源変動計算区分」において金額を計上する(段落【0046】)等の記載においても、「資産形成充当財源」は、税収等のうち使用された分を除いた分の現金資産、固定資産、貸付金・出資金等の金融資産が貸借対照表における「資産」として計上され得るのと同様に、「資産」として計上され得ることが示されている。そして、このような「資産」として計上され得るものについては、期首や期末における有高としての残高や次期への繰越(甲第26号証)を観念することができ、「期首残高(ストック情報)+当期変動額(フロー情報)=期末残高(ストック情報)という等式が成り立つということができるのであって、その意味においてストック情報としての性質を併せ持つものといえる。
この点、企業会計における損益計算書の当期利益のように、それ自体について期首や期末における有高としての残高や次期への繰越を観念することができず、貸借対照表への振り替えによって初めて資産等のストック情報となるにすぎないものは、純然たるフロー情報であってストック情報といえないところ、本件特許発明の「資産形成充当財源」(C4)は、このような純然たるフロー情報とは異なるものである。甲第1号証の「資金」(甲第1号証の「図表14 ○○特別会計公会計資金収支計算書」(摘記を省略)において「資金収支」(フロー)と「資金期首残高」及び「資金期末残高」(ストック)とが示されている。)と同様、それ自体について期首や期末における「残高」を観念することができるストック情報としての性質を併せ持ったフロー情報であるといえる。このように、「資産形成充当財源(C4)」がストック情報を示す旨の被請求人の主張は、イにおいて上述した本件明細書の記載とも整合している。
請求人の主張は、フロー情報であればストック情報でないことを前提としたものであるところ、その前提は成り立たないから、採用することはできない。

(3)以下、対応する特定事項に即して対比する。
ア SA、SJとsa、sj
本件特許発明と甲1発明は、いずれも財務諸表の作成に係るものであるが、前者は、「会計処理のためのコンピュータシステム」であるのに対し、後者はそうではない点で相違している。(相違点1、両当事者間に争いがない。)

イ SB1とsb1
本件特許発明と甲1発明は、いずれも「資金(現金及び現金同等物)の受入と払出を有する資金収支計算書勘定を作成する」ものであり、この点で一致する。
そして、前者は、作成にあたって「予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから」作成し、作成したものを「記録する資金収支計算書勘定記憶手段」を有するのに対し、後者は、作成にあたって「予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから」作成するか否か及び作成したものを「記録する資金収支計算書勘定記憶手段」を有するか否かが不明である点で相違する。(相違点2、両当事者間に争いがない。)

ウ SB2とsb2(争点1)
(ア)本件特許発明の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)(B1?B4)」の「B1?B4」が示すB1、B2、B3、B4は、それぞれ「資金(現金及び現金同等物)」、「資産(資金以外)」、「負債」、「純資産」のことであるところ、甲1発明の「資金」、「非資金資産」、「負債」、「納税者持分」は、それぞれ、本件特許発明の「資金(現金及び現金同等物)」(B1)、「資産(資金以外)」(B2)、「負債」(B3)、「純資産」(B4)に相当し、また、これらを含む「公会計貸借対照表」は、B1?B4を含む閉鎖残高勘定である貸借対照表勘定(以下、単に「貸借対照表」という。)である点で対応しているといえる。
また、本件特許発明の「損益勘定(行政コスト計算書勘定(B5?B7)」の「B5?B7」が示すB5、B6、B7は、それぞれ「費用」、「収益」、「純経常費用」のことであり、甲1発明の「行政コスト計算書(費用、収益、純経常費用)」は、本件特許発明の「損益勘定(行政コスト計算書勘定)(B5?B7)」に相当する。
してみると、本件特許発明と甲1発明は、いずれも貸借対照表と損益勘定(行政コスト計算書勘定)(B5?B7)を作成するものであり、この点で一致する。
そして、本件特許発明は、これらを作成するにあたって「資金収支計算書勘定記憶手段から、前記伝票データを変換して複式簿記での伝票データとした複式仕訳データを用いて」おり、また、作成したこれらを「記録」する「閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段」を備えるのに対し、甲1発明は、これらを作成するにあたって、「資金収支計算書勘定記憶手段から、前記伝票データを変換して複式簿記での伝票データとした複式仕訳データを用いて」いるか否かが明らかでなく、また、作成したこれらを「記録」する「閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段」を備えているか否かが明らかでない点で、相違する(相違点3)。
さらに、本件特許発明では、貸借対照表が「(B1?B4)」、つまり、「資金(現金及び現金同等物)」(B1)、「資産(資金以外)」(B2)、「負債」(B3)、「純資産」からなるものであって「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた」ものであるのに対し、甲1発明ではB1?B4に加えて「一般会計調整勘定」を有し、「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた」ものといえない点で相違している。(相違点A)
(イ)請求人の主張については、「1(1)」の「チ(ウ)b」において上述したとおりである。

エ SB3とSB3、SFとsf、SIとsiについて(争点2)
(ア)SIとsiについて
a 本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」は、(1)において上記したとおりであるところ、甲1発明の「財源措置・納税者持分増減計算書」と本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」は、いずれも、損益勘定に示されない純資産の変動を示すものであり、損益外純資産変動計算書であるといえる。
甲1発明の「納税者持分減少原因」と「納税者持分増加原因」は、損益外純資産変動計算書における「損益外の純資産減少」と「損益外の純資産増加」である点で、本件特許発明の損益外純資産変動計算書の「借方(勘定の左側)」と「貸方(勘定の右側)」とに対応している。
甲1発明における損益外の純資産減少である「純経常費用への財源措置」は、キにおいて後述するとおり、純経常費用(損益勘定(行政コスト計算書勘定)の収支尻)が振り替えられるものであり、本件特許発明の損益外の純資産減少である「純経常費用(C1)」に相当する。また、甲1発明における損益外の純資産減少である「税資金による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置」は、本件特許発明の「財源措置(C2)」に相当し、甲1発明における損益外の純資産増加である「税資金の繰入」は、本件特許発明の「財源」(C3)に相当する。
以上を踏まえれば、両者は、いずれも、純経常費用(C1)、財源措置(C2)及び財源(C3)を示す損益外純資産変動計算書(以下、単に、「損益外純資産変動計算書」という。)である点で、本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」に対応するといえる。
甲1発明において、「インフラ資産を整備をした際の資本的支出」を示す「財源措置・納税者持分増減計算書」の「借方」の「資本形成への財源措置」への計上に伴ってなされるのは、閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の「貸方側(勘定の右側)」への「資本形成見返負債」の計上であって、甲1発明には、財源措置として支出がなされた場合に損益外純資産変動計算書の損益外の純資産増加として計上されて、「当期」において「将来世代も利用可能な資産」が「どれだけ増加したかを示している」項目はない。
この点、甲1発明の「資本形成見返負債」は、財源措置として支出がなされた場合に計上される項目であるとともに、その後に直接資本減耗が生じた部分について財源措置化されて損益外純資産変動計算書の損益外の純資産増加として計上されることが予定されているといえるから、「財源措置として支出がなされた場合」について「財源は費消されるが、その一部分は、インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができ」るものであるということはできる。しかし、甲1発明の「資本形成見返負債」は、社会資本形成に係る「直接資本減耗」の進行に応じて「資本形成見返負債の財源措置化」が計上されて財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果が相殺されることが予定されているから、財源措置として支出がなされた時点を含む「当期」に計上されて「当期」において「将来世代も利用可能な資産」が「どれだけ増加したかを示している」項目とはいえない。
これらを踏まえて、SIとsiを対比すると、両者は、いずれも、「財源措置として支出がなされた場合」に「財源は費消されるが、その一部分は、インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができ」る項目をいずれかの勘定において計上する点では一致するといえる。
そして、本件特許発明では、損益外純資産変動計算書である「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」が損益外純資産増加である「資産形成充当財源(C4)」を有しており、「財源措置として支出がなされた場合」にこれが計上され、これが「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示しているのに対し、甲1発明では、損益外純資産変動計算書が損益外純資産増加である「資産形成充当財源(C4)」を有しておらず、「財源措置として支出がなされた場合」には閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の貸方側(勘定の右側)の「資本形成見返負債」が計上され、これは「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示しておらず、損益外純資産変動計算書の損益外純資産増加として「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示していない点において、相違している。(以下、相違点B)

(イ)SB3とsb3について
本件特許発明と甲1発明とは、純経常費用(C1)、財源措置(C2)及び財源(C3)を示す損益外純資産変動計算書を作成する点で一致する。
そして、本件特許発明では、損益外純資産変動計算書を作成するのに「前記資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段から、さらに、前記複式仕訳データを用いて、国家の政策レベルの意思決定を記録・会計処理するために」行われ、また、作成した損益外純資産変動計算書を記録する「損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段を有するのに対して、甲1発明においてはこれらの構成が明らかでない点(請求人主張の相違点4に対応)において相違する。
また、作成される損益外純資産変動計算書が、本件特許発明では損益外の純資産の増加である「資産形成充当財源(C4)」を含む「拡張された処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1?C4)であるのに対し、甲1発明では、損益外の純資産の増加である「資産形成充当財源(C4)」を含まない「拡大された財源措置・納税者持分増減計算書」である点においても相違する。もっとも、SB3は、「資産形成充当財源(C4)」の具体的な内容についての特定をSIに委ねており、この相違は、実質的には、相違点Bに含まれているといえる。

(ウ)SFとsfについて
甲1発明の「その期における損益外の財源措置・納税者持分の増加」と「その期における財源措置・納税者持分の減少」の2つは、「損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段の記録」であるか否かが明らかでないこと、及び、また、「その期における損益外の財源措置・納税者持分の増加」が「資産形成充当財源(C4)」を含まないこと((ウ)で上述した相違点B)を除いて、損益外純資産変動計算書である「財源措置・納税者持分増減計算書勘定」を構成する本件特許発明の「その期における損益外の純資産増加」と「その期における損益外の純資産減少」に対応する。
また、甲1発明の「前記行政コスト計算書の収支尻(費用・収益差額)である純経常費用が財源措置・納税者持分増減計算書勘定の純経常費用への財源措置に振り替えられ」る点は、本件特許発明の「前記損益勘定(行政コスト計算書勘定)の収支尻(貸借差額)である純経常費用(B7)」が損益外純資産変動計算書の「純経常費用(C1)」に振り替えられる点に相当する。
してみると、両者は、損益外純資産変動計算書が「その期における損益外の純資産増加と純資産減少の2つで構成され、前記損益勘定(行政コスト計算書勘定)の収支尻(貸借差額)である純経常費用(B7)が損益外純資産変動計算書の「純経常費用(C1)」に振り替えられ」るものである点で一致している。
そして、本件特許発明の損益外純純資産計算書が、損益外の純資産の増加である「資産形成充当財源(C4)」を含むのに対し、甲1発明はこれを含まない点において相違していること(上記「相違点B」)に加え、本件特許発明は、損益外純資産変動計算書が「損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段の記録」であるのに対して、甲1発明は、その構成が明らかでない点(請求人主張の相違点8に対応)において相違している。

(エ)請求人の主張に対し
a 請求人は、甲第1号証の「税資金による資本形成見返負債」が本件特許発明の「資産形成充当財源(C4)」に相当する旨、少なくとも「資産形成充当財源(C4)は、財源措置として支出がなされた場合、財源は消費されるが、その一部分はインフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができる」点がSIについての一致点である旨、を主張し、これを前提とした相違点(相違点9又は相違点9’)を主張している。
しかし、甲1発明として「資本形成見返負債」のうち「一般会計繰入金」によるものを除いて「税資金」によるもののみを認定することが適切でないことは、「1(1)」の「ツ(コ)」において上述したとおりである。
そして、(ア)において上述したとおり、甲1発明の「資本形成見返負債」は、本件特許発明の「資産形成充当財源(C4)」に相当するものでなく、一致点は、「財源措置として支出がなされた場合」に「財源は費消されるが、その一部分は、インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができ」る項目をいずれかの勘定において計上する点にとどまる。
よって、請求人の主張するSIについての一致点及び相違点の主張(相違点が相違点9又は相違点9’である旨の主張)を採用することはできない。
また、上述したとおり、甲1発明の「資本形成見返負債」は、「当期」において「将来世代も利用可能な資産」が「どれだけ増加したかを示している」項目とはいえず、SIのうち「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したかを示している」も相違点である。請求人の主張のうち、相違点が相違点9である旨の主張は、これが一致点であることを前提とするものであるから、この点においても採用できない。
b 請求人は、甲第1号証の「税資金による資本形成見返負債」が「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したかを示している」といえる根拠として、これが資産取得時に貸借対照表の貸方側に計上されていること、資本減耗時の減少分を加味することができること、等を主張している。(陳述要領(1)17?18頁)
しかし、一般に貸借対照表の貸方には「資産」のみならず「負債」もあり、しかも甲1発明の貸借対照表の貸方には「資産」、「負債」のみならず「一般会計調整勘定」もあるのであるから、資本形成見返負債が貸借対照表の貸方側に計上されたことは、これが「資産」として扱われたことを意味しない。さらに、「直接資本減耗」の進行に応じて「資本形成見返負債の財源措置化」が計上されて財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果が相殺されるということは、これが進行するまでは、財源措置・納税者持分の増加としての資本形成見返負債の財源措置化が計上されないのであるから、このことは、むしろ、資本形成見返負債が「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示すものでないことを示すものとなっている。してみると、この点の請求人の主張を採用することはできない。

オ SCとsc
(ア)イにおいて上述したとおり、本件特許発明と甲1発明は、いずれも「資金(現金及び現金同等物)の受入と払出を有する資金収支計算書勘定を作成する」ものである。
また、ウ(ア)において上述したとおり、甲1発明の「公会計貸借対照表(資金、非資金資産、負債、一般会計関連調整勘定、納税者持分)」は、貸借対照表である点において、本件特許発明の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)(B1?B4)」に対応するものである。また、甲1発明の「行政コスト計算書(費用、収益、純経常費用)」は、本件特許発明の「損益勘定(行政コスト計算書勘定)(B5?B7)」に相当し、これらは「損益勘定行政コスト計算書」であるといえる。
さらに、エ(ア)において上述したとおり、本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」と甲1発明の「財源措置・納税者持分増減計算書」とは、いずれも、損益外純資産変動計算書であるといえる。この点、損益外純資産変動計算書の内容は、SCにおいて規定されていない。
以上を踏まえれば、本件特許発明と甲1発明は、いずれも「処理された結果で、資金収支計算書、貸借対照表、損益外純資産変動計算書、損益勘定行政コスト計算書を含む、少なくとも1つ以上の財務諸表を作成する」ものであり、この点で一致する。
そして、前者は、この作成をコンピュータシステムを前提とした作成手段により行うのに対し、後者は、コンピュータを用いて実現しているかが不明である点で相違する。(相違点5)
(イ)被請求人は、本件特許発明における貸借対照表、損益外純資産変動計算書に係る財務諸表が甲第1号証に記載されてない旨を主張する。(答弁12?13頁)
しかし、特許請求の範囲の記載によれば、SCにおいて、貸借対照表及び損益外純資産変動計算書の内容は特定されておらず、被請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものとなっていない。

カ SD
本件特許発明は「作成した財務諸表を表示する財務諸表表示手段」を備えるのに対し、甲1発明は、これを備えているか明らかでない点で相違する。(相違点6、両当事者間に争いがない。)

キ SEとse
本件特許発明と甲1発明とは、「資金収支計算書勘定と貸借対照表の間での勘定連絡」がある点で、両者は一致している。
さらに、甲1発明の「資金収支計算書勘定」の「貸借対照表上の資金勘定」への「振替え」が記載されているとともに、この「資金収支計算書勘定」が「資金収支」を含んでおり(甲第1号証の「図表14 ○○特別会計公会計資金収支計算書」の「資金収支」を参照)、この「資金収支」が「期末の収支尻(貸借差額)」であると捉えることができるから、甲1発明における勘定連絡が「資金収支計算書勘定」の「期末の収支尻(貸借差額)」の「貸借対照表上の資金勘定」への「振替え」による点は、明らかであるといえる(被請求人も特に争っていない)。
よって、両者は、「資金収支計算書勘定(A)の期末の収支尻(貸借差額)(A3)が、貸借対照表上の資金勘定(B1)に振替えられ、資金収支計算書勘定と貸借対照表勘定の間で勘定連絡であり」という点で一致する。
そして、本件特許発明では資金収支計算書勘定の期末の収支尻(貸借差額)(A3)が「当期資金増減額として、」貸借対照表上の資金勘定(B1)に振替えられるのに対して、甲1発明においてはこれが明らかでない点で、両者は相違する。(相違点7、両当事者間に争いがない。)

ク SGとsg(争点3)
(ア) 甲1発明は、損益外純資産変動計算書が貸借対照表に最終的に要約され、また、貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスする点において、本件特許発明と一致するといえる。
そして、損益外純資産変動計算書が貸借対照表に最終的に要約されるにあたって、本件特許発明は、「貸方と借方の差額(収支尻)」が「当期純資産変動額という形で」振替えられ、これによって貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするのに対し、甲1発明は、そのような振り替えが行われるものでなく、その振り替えによって貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするものでない点で、相違している。(以下、「相違点C」という。)
(イ) 請求人は、SGについて、本件特許発明と甲1発明とが一致している旨を主張している。
しかし、請求人主張は、「1(1)」の「ツ(ク)」及び(ア)に示したところに照らして、採用することができない。

ケ SHとsh
エ(ア)において上述したように、甲1発明の損益外純資産変動計算書の損益外の純資産減少である「純経常費用への財源措置」は、本件特許発明の「純経常費用(C1)」に相当する。また、甲1発明の損益外純資産変動計算書の損益外の純資産減少である「税資金による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置」は、本件特許発明の「財源措置(C2)」に相当するところ、shに示された「税資金(特定財源)による資本形成への財源措置、一般会計繰入金による資本形成への財源措置」は、これに対応する「特別会計ガイドラインの財源措置・納税者持分増減計算書」に即した例示であるから、同様に、本件特許発明の「財源措置(C2)」に相当するといえる。
してみると、SHとshは、いずれも、損益外純資産変動計算書の損益外の純資産減少として「純経常費用(C1)と並んで財源措置(C2)」の項目があり、「これは具体的に言えば社会保障給付や、インフラ資産を整備した際の資本的支出のような、損益外で財源を費消する取引のことを指して」いるといえるから、両者は一致するといえる。(両当事者において争いがない。(口頭審理調書の被請求人発言の4))

(4)一致点
以上によれば、本件特許発明と甲1発明との一致点は、次のとおりである。

<一致点>
財務諸表を作成する会計処理のためのものであって、
資金(現金及び現金同等物)の受入(A1)と払出(A2)を有する資金収支計算書勘定(A)を備え、
貸借対照表と損益勘定(行政コスト計算書勘定)(B5?B7)を作成し、
損益外純資産変動計算書を作成し、
処理された結果で、資金収支計算書、貸借対照表、損益外純資産変動計算書、損益勘定行政コスト計算書をふくむ、少なくとも1つ以上の財務諸表を作成し、
資金収支計算書勘定(A)の期末の収支尻(貸借差額)(A3)が貸借対照表上の資金勘定(B1)に振替えられ、資金収支計算書勘定と貸借対照表の間での勘定連絡であり、
損益外純資産変動計算書は、その期における損益外の純資産増加と純資産減少(C1,C2)の2つで構成され、前記損益勘定(行政コスト計算書勘定)の収支尻(貸借差額)である純経常費用(B7)が損益外純資産変動計算書の純経常費用(C1)に振替えられ、
損益外純資産変動計算書が貸借対照表に最終的に要約され、また、貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスし、
一方で、処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)の借方側(勘定の左側)には純経常費用(C1)と並んで財源措置(C2)という項目もあるが、これは具体的に言えば社会保障給付や、インフラ資産を整備した際の資本的支出のような、損益外で財源を費消する取引のことを指しており、
何らかの項目は、財源措置として支出がなされた場合、財源は費消されるが、その一部分は、インフラ資産のように将来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため、その支出の時点で政府の純資産(国民持分)がまるまる毀損したわけではなく、何らかの資源が現金以外の形で会計主体としての政府の内部に残っていると考えることができるものである、
もの。

(5)相違点
また、本件特許発明と甲1発明との相違点は、次のとおりである。

<相違点>
(相違点1)
本件特許発明は、「会計処理のためのコンピュータシステム」であるのに対し、甲1発明は、そうではない点。
(相違点2)
資金収支計算書勘定の作成にあたって、本件特許発明においては、「予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから」作成し、また、作成したものを「記録する資金収支計算書勘定記憶手段」を有するのに対し、甲1発明においては、「予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから」作成するか否か、また、作成したものを「記録する資金収支計算書勘定記憶手段」を有するか否か、が明らかでない点。
(相違点3)
本件特許発明においては、貸借対照表の作成にあたって、「資金収支計算書勘定記憶手段から、前記伝票データを変換して複式簿記での伝票データとした複式仕訳データを用いて」おり、また、作成したものを「記録」する「閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段」を備えるのに対し、甲1発明においては、この作成にあたって、「資金収支計算書勘定記憶手段から、前記伝票データを変換して複式簿記での伝票データとした複式仕訳データを用いて」いるか否か、また、作成したこれらを「記録」する「閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段」を備えているか否か、が明らかでない点。
(相違点A)
本件特許発明では、貸借対照表が「(B1?B4)」、つまり、「資金(現金及び現金同等物)」(B1)、「資産(資金以外)」(B2)、「負債」(B3)、「純資産」からなるものであって「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた」ものであるのに対し、甲1発明ではB1?B4に加えて「一般会計調整勘定」を有しており、「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた」ものといえない点。
(相違点B)
本件特許発明では、損益外純資産変動計算書である「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」が損益外純資産増加である「資産形成充当財源(C4)」を有しており、「財源措置として支出がなされた場合」にこれが計上され、これが「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示しているのに対し、甲1発明では、損益外純資産変動計算書が損益外純資産増加である「資産形成充当財源(C4)」を有しておらず、「財源措置として支出がなされた場合」には閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の貸方側(勘定の右側)の「資本形成見返負債」が計上され、これは「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示しておらず、損益外純資産変動計算書の損益外純資産増加として「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示していない点。
(相違点4)
本件特許発明においては、損益外純資産変動計算書(「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」)の作成にあたって「前記資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段から、さらに、前記複式仕訳データを用いて、国家の政策レベルの意思決定を記録・会計処理するために」行うものであり、また、作成した損益外純資産変動計算書を記録する「損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段」を有するのに対して、甲1発明においては、この作成にあたって「前記資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定及び損益勘定作成・記録手段から、さらに、前記複式仕訳データを用いて、国家の政策レベルの意思決定を記録・会計処理するために」行うか否か、また、作成したものを記録する「損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段」を有するか否か、が明らかでない点。
(相違点5)
本件特許発明においては、財務諸表の作成をコンピュータシステムを前提とした作成手段により行うのに対し、甲1発明においては、コンピュータを用いて実現しているか否かが明らかでない点。
(相違点6)
本件特許発明においては、「作成した財務諸表を表示する財務諸表表示手段」を備えるのに対し、甲1発明においては、これを備えているか否かが明らかでない点。
(相違点7)
本件特許発明においては、資金収支計算書勘定の期末の収支尻(貸借差額)(A3)が「当期資金増減額として、」貸借対照表上の資金勘定(B1)に振替えられるのに対して、甲1発明においては、資金収支計算書勘定の期末の収支尻(貸借差額)が「当期資金増減額として、」貸借対照表上の資金勘定に振替えられるか否かが明らかでない点。
(相違点8)
損益外純資産変動計算書が、本件特許発明においては、「損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段の記録」であるのに対して、甲1発明は、「損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段の記録」であるか否かが明らかでない点。
(相違点C)
損益外純資産変動計算書(「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」)が貸借対照表に最終的に要約されるにあたって、本件特許発明においては、「貸方と借方の差額(収支尻)」が「当期純資産変動額という形で」振替えられ、これによって貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするのに対し、甲1発明においては、「貸方と借方の差額(収支尻)」が「当期純資産変動額という形で」振替えられるものでなく、その振り替えによって貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするものでない点。

3 相違点の判断
(1)相違点B(争点4)、相違点C(争点3)、相違点8について
ア 本件特許発明においては、相違点Bに係る、損益外純資産変動計算書(「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」)が損益外純資産増加である「資産形成充当財源(C4)」を有する点は、相違点Cに係る、損益外純資産変動計算書(「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」)の「貸方と借方の差額(収支尻)」が「当期純資産変動額という形で」振替えられることによって貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスする点を踏まえたものであり、そのことによって「資産形成充当財源(C4)」が「資産」の増加を示す情報(フロー情報)としてのみならず貸借対照表の「資産」に該当する「資産形成充当財源(C4)」の量(有高)をも示す情報(「ストック情報」)としても機能するものである。よって、相違点Bと相違点Cは、併せて検討することを要する点である。
また、相違点8についても、本件特許発明の損益外純資産変動計算書(本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」)を前提とする相違点である。
以上を踏まえて、以下、相違点B、相違点C、相違点8について、検討する。

イ 相違点B及び相違点Cを克服し、容易想到であるというためには、甲1発明の損益外純資産変動計算書について、「貸方と借方の差額(収支尻)」(貸方となる損益外純資産増加と借方となる損益外純資産減少の収支尻)が「当期純資産変動額という形で」振替えられて貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするような勘定連絡がなされること、及び、その損益外純資産変動計算書が「財源措置として支出がなされた場合」に計上される「資産形成充当財源(C4)」を有するとともに、この「資産形成充当財源(C4)は、「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示すことから、上記の勘定連絡を前提として損益外純資産変動計算書の貸方(右側)に計上されるものとなっていること、が必要となる。

ウ これに対し、甲第13号証、甲第17号証を含め、いずれの証拠方法も、これらの相違点の克服のために十分な技術的事項を開示するものでなく、甲1発明と組み合わせる公知技術や周知技術を認定することができない。
これらの証拠方法は、文言の上では「資産形成充当財源」の表現を用いているものの、いずれも、上記の勘定連絡を開示しておらず、また、上記の勘定連絡を前提として損益外純資産変動計算書の貸方に計上される項目としての「資産形成充当財源」を記載したものではないし、これらの文献からこのような「資産形成充当財源」を導くこともできない。
(ア)甲第17号証は、2003年10月に発行された雑誌に掲載された論文であるところ、ここでは、公会計を首相や首長が将来ビジョンを示すとともに現役世代の受益と負担の関係や将来世代へ先送りされる負担を含め、予算編成上の意思決定を国民に提示するナビゲーション・システムとして機能するものと位置づけ、その具体例として、「図表3」(タイトルは「国家経営のナビゲーション・システム「国ナビ」」)及びこれと同様のフォーマットである「図表4」(タイトルは「「自治ナビ」数値サンプル」)を示している。
そして、「図表3」及び「図表4」では、横軸の項目(行項目)として「納税者持分の減少」が示され、その内訳項目として、(「経常費用」、「損益外財源減少(財源の使途)」とともに)「資産形成充当財源の減少」の部が示され、さらに、「資産形成充当財源減少の部」の内訳項目として「固定資産除売却額」「貸付金等減少額」「再評価損」が示されている。また、その縦軸の項目(列項目)として、(「前期末残高」、「当期末残高」とともに)「納税者純資産の増加」と「当期純増減」が示されており、「納税者純資産の増加」において、「財源の使途」とその内訳として(純費用(行政コスト)と損益外財源減少とともに)「現役世代の受益額」と「現役世代・将来世代双方の受益額」が示され、「財源の調達」が「現役世代の負担額」であって、これの内訳として「税収(一般財源)」、「他会計からの繰入」、「その他の税源増加」がある旨が示され、さらに、「資産形成充当財源増加の部」とその内訳として「固定資産形成相当額」、「貸付金・出資金増加額」及び「再評価益」がある旨が示されている。
さらに、「図表3」では、「当期純増減」が「将来世代への負担の先送り額」を示すものとされており、また、「資産形成充当財源減少の部」の行の「資産形成充当財源増加の部」の列は、「現役世代・将来世代双方の負担額」を示すものとされている。
甲第17号証は、現役世代の受益と負担の関係や将来世代へ先送りされる負担を含めた予算編成上の意思決定を表示しようとするものであり、甲第17号証において、貸借対照表と損益外純資産計算書との勘定連絡は、開示されておらず、甲第17号証の「図表3」及び「図表4」は、どのような勘定連絡を前提としたものかが明らかでない。またこれらの図において、「現役世代の受益額」と「現役世代・将来世代双方の受益額」が区別されて表示されているということはできるものの、いずれも、「資産形成充当財源の増加」の列でなく、予算編成上の意思決定による「財源の使途」の列の項目とされているし、「資産形成充当財源」の文言を用いた行と列に着目しても、行項目である「資産形成充当財源の減少の部」と列項目である「資産形成充当財源増加の部」が交差する部分、つまり、「資産形成充当財源減少の部」の行の「資産形成充当財源増加の部」の列に該当する部分の金額は、行項目の「納税者持分の減少」の内訳である「資産形成充当財源減少の部」の金額の一部であるとして考慮される関係となっており、「現役世代・将来世代双方の受益額」ではなく「現役世代・将来世代双方の負担額」を示すものとされている。
このことに照らせば、仮に、貸借対照表の資産がその貸方に計上されることを踏まえて損益外純資産としての納税者持分の増加と減少を示す貸方と借方が設定された損益外純資産変動計算書を設けることを想定すると、甲第17号証の「図表3」及び「図表4」における「資産形成充当財源」の増加と減少は、損益外純資産変動計算書の貸方ではなくその借方となる納税者持分の減少の内訳として考慮されることになる。
してみると、甲第17号証には、本件特許発明のような、損益外純資産変動計算書と貸借対照表との勘定連絡や損益外純資産変動計算書の貸方に計上される「資産形成充当財源」は、記載されているとはいえない。
(イ)甲第13号証は、2004年3月に発表された論文であるところ、ここでの公会計は、現役世代が行う国家の意思決定による将来世代の利益や負担を数字によって明らかにすることを制度的に保障するものとして「正当性」を付与するもの、と位置づけられている。そして、甲第17号証と同様に、甲第13号証においても、貸借対照表と損益外純資産計算書との勘定連絡は、開示されていない。
甲第13号証の「図表2」(タイトルは「国家経営のナビゲーション・システム「国ナビ」」)においては、行項目毎に列項目が示す金額を表示することによって、「重点的に資源投入しようとする分野、現役世代の受益と負担の変化、将来世代への負担の先送り額」を示すものとなっているところ、この「図表2」では、その縦軸の項目(列項目)として、(「前期末残高」、「当期純増減」、「当期末残高」とともに)「納税者純資産の増加」が示され、この「納税者純資産の増加」において、(「当期費消した資源の総額」(「現役世代による当期財源措置総額」)を示す「財源の使途」、「現役世代の負担額」を示す「財源の調達」とともに)「将来利用可能な資源の増減額」を示す「将来利用可能な資源の増減額」が示され、この内訳として「資産形成充当財源減少の部」「資産形成充当財源増加の部」が示されている。これらの記載ぶりに照らせば、「資産形成充当財源」の増減を「将来利用可能な資源」の増減とすることは、記載されているといえる。
しかし、甲第17号証と同様に、行項目においては、「資産形成充当財源の増減」が(「行政コスト(経常損益)」、「財源の使途(損益外財源減少)」とともに)「納税者持分の減少」の内訳とされており、「将来利用可能な資源の増減額」として示された「資産形成充当財源」の増減についても、「納税者持分の減少」の一部として考慮される関係となっている。このことに照らせば、甲第13号証の「資産形成充当財源」の増加と減少も、甲第17号証と同様に、損益外純資産変動計算書の貸方ではなくその借方となる納税者持分の減少の内訳として考慮されることになる。
してみると、甲第13号証においても、本件特許発明のような、損益外純資産変動計算書と貸借対照表との勘定連絡や損益外純資産変動計算書の貸方に計上される「資産形成充当財源」は、記載されているとはいえない。
(ウ)以上のとおり、甲第17号証と甲第13号証のいずれかによって、損益外純資産変動計算書について、「貸方と借方の差額(収支尻)」(貸方となる損益外純資産増加と借方となる損益外純資産減少の収支尻)が「当期純資産変動額という形で」振替えられて貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするような勘定連絡がなされること、及び、その損益外純資産変動計算書の貸方となる損益外純資産増加について、「財源措置として支出がなされた場合」に計上されて「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示す「資産形成充当財源(C4)」を有することについて、公知となったいうことはできない。
また、請求人が提出したその他の証拠方法においても、本件出願前にこの点が公知となったことを示す証拠は見当たらない。
よって、請求人が示した証拠方法によっては、相違点B及び相違点Cについて容易想到であるというために必要となる技術が本件特許出願前の公知技術又は周知技術であると認定することはできない。
(エ)請求人は、甲第13号証の「図表2」について、「納税者持分の減少」は「納税者持分変動計算書勘定上、借方に計上される」という前提の元で、「財源の調達」と「資産形成充当財源の増減」の欄には「「×××」と記載されているところ、・・・マイナスを意味する「( )」がないことから、これらは納税者持分の「増加」を意味」し、「納税者持分」の「増加」は、「納税者持分変動計算書勘定上、貸方側に計上される」と主張し(審判請求127?130頁)、甲第17号証の「図表3」及び「図表4」について、「財源の調達」、「固定資産形成相当額」、「貸付金・出資金増加額」の欄にはマイナスを意味する「( )」がなく単に数字が記載されており、これらは納税者持分の「増加」を意味し、これも「納税者持分変動計算書勘定上、貸方側に計上される」と主張している。(同131?135頁)
しかし、上記(ア)、(イ)に示したとおり、甲第13号証と甲第17号証は、いずれも、「貸方と借方の差額(収支尻)」(貸方となる損益外純資産増加と借方となる損益外純資産減少の収支尻)が「当期純資産変動額という形で」振替えられて貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするような勘定連絡を記載するものでないし、甲第1号証にもこのような勘定連絡は記載されていない。してみると、甲第1号証、甲第13号証、甲第17号証の記載から、資産形成充当財源をこのような勘定連絡を踏まえて損益外純資産変動計算書の貸方に計上することが容易想到であるということはできない。
また、甲第13号証と甲第17号証は、いずれも、行項目をいずれも「納税者持分の減少」としており、甲第13号証においても、資産形成充当財源の増減を「納税者持分の減少」の一部として考慮するにとどまっており、甲第17号証においては、そもそも横軸に「資産形成充当財源」の増加を示す項目がない。この点、甲第1号証の図表11(「特別会計ガイドラインの貸借対照表」)のように、甲1発明における貸借対照表においては、貸方、借方それぞれにマイナスを意味する項目を表示することはあり得るから、甲1発明において甲第13号証や甲第17号証から認定される公知技術や周知技術を組み合わせるにあたって、マイナスの項目を借方の項目とし、プラスの項目を貸方の項目としなければならない理由はない。
してみると、甲第13号証、甲第17号証から「資産形成充当財源」の増減を「納税者持分の減少」を示す損益外資産変動計算書の借方の一部としてではなくその貸方として計上したものを認定することはできない。
(オ)請求人は、甲第17号証の図表1(摘記省略)に、取引の構成要素として、左側(借方側)に「損益外の純資産変動(-)」とあり、右側(貸方側)に「損益外の純資産変動(+)」と記載されていることから、「納税者持分の減少」と「納税者持分の増加」は、それぞれ損益外資産変動計算書の借方側と貸方側に計上されると主張している。(請求133頁)
しかし、甲第13号証、甲第17号証の「納税者持分の減少」と「納税者持分の増加」がそれぞれ損益外資産変動計算書の借方側と貸方側に対応するとはいえても、上記の勘定連絡が記載されていない以上、甲第13号証、甲第17号証において、「納税者持分の減少」として考慮されている内容を「貸方」側に計上すべきことを意味しない。

エ また、甲1発明について、相違点B及び相違点Cを克服し、容易想到であるというための動機付けも見当たらない。
(ア)甲1発明の「資本形成見返負債」は、社会資本形成に係る「直接資本減耗」の進行に応じて「資本形成見返負債の財源措置化」が計上されて財源措置・納税者持分の減少(直接資本減耗)と増加(資本形成見返負債の財源措置化)の効果が相殺されることが予定されているものであって、「直接資本減耗」が進行するまでは、財源措置・納税者持分の増加としての資本形成見返負債の財源措置化が計上されないのであるから、このことは、むしろ、資本形成見返負債が「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示すものでないことを示すものとなっている。
このことに照らせば、甲第1号証において、甲1発明の「資本形成見返負債」を「将来世代も利用可能な資産が、当期どれだけ増加したか」を示すものとする動機付けとなる記載はない。
(イ)請求人は、甲第1号証、甲第13号証及び甲第17号証が、いずれも財務諸表の作成という同一技術分野のものである旨、及び、甲第1号証、甲第13号証及び甲第17号証の作者がいずれも被請求人であって、甲第13号証と甲第17号証がいずれも甲第1号証を参考文献として挙げていることを動機付けの存在の根拠として主張している。(審判請求136?137頁)
しかし、(ア)で述べた点に照らせば、これらは、動機付けとして十分なものとはいえない。
(ウ)請求人は、甲1発明において、各勘定間の有機的な勘定連絡がある旨、主張する。
しかし、この主張は、甲第1号証の「要約」が振替の意味を含むことを前提とした主張であるところ、この意味が含まれないことは上述したとおりである。甲第1号証には、相違点Bと相違点Cについて容易想到というための動機づけとなる勘定連絡についての記載はない。

オ 以上のとおり、相違点Bと相違点Cについて、請求人が示した証拠方法によって容易想到であるということはできない。

カ 相違点8については、本件特許発明の損益外純資産変動計算書(本件特許発明の「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C)」)を前提とする相違点であるところ、相違点Bと相違点Cが容易想到でないから、この相違点について容易想到であるということはできない。
請求人は、甲1発明において周知技術4を適用することが容易想到であると主張しているが、この主張を採用することはできない。

(2)相違点Aについて
甲1発明は、「特別会計ガイドラインの貸借対照表」では、「負債の部」にも「納税者持分の部」とも区別された「一般会計調整勘定」を含んでおり「納税者持分」が「資産」から「負債」を除いた残余(「資産-負債」)となっていないものの、「複式簿記」を前提とするものであることは示されているから、甲1発明の貸借対照表として複式簿記において用いられている「資産」、「負債」及び「資産-負債」である「純資産」に対応する「納税者持分」からなるものとし、貸方の「一般会計調整勘定」乃至これに含まれた項目を貸方の「負債」か「納税者持分」のいずれかに属するように単に取り決めること自体は可能である。
しかし、その取り決めにあたって、損益外純資産変動計算書の「貸方と借方の差額(収支尻)」(貸方となる損益外純資産増加と借方となる損益外純資産減少の収支尻)が「当期純資産変動額という形で」振替えられて貸借対照表の借方(左側)と貸方(右側)がバランスするような勘定連絡(上記相違点C)を設定する必要があるところ、相違点Cは、(1)に示したとおり、容易想到といえない。
よって、相違点Aも、容易想到でない。

(3)その余の相違点について
ア 相違点1と相違点5
財務諸表を、会計処理のためにコンピュータシステムにより作成することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術1)であり、甲1発明において、この周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
この点、被請求人は、特に主張を行っていない。

イ 相違点2
仕訳データから資金収支計算書勘定を作成すること、単式簿記システムによる作成された伝票データから仕訳データを作成すること、及び作成された財務諸表に対応する勘定を記憶手段に記憶することは、いずれも本件特許出願前の周知技術(周知技術2、周知技術3及び周知技術4)であり、甲1発明において、これらの周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
この点、被請求人は、特に主張を行っていない。

ウ 相違点3
複式仕訳データを用いて貸借対照表勘定及び損益計算書勘定を作成すること、単式簿記システムによる作成された伝票データから仕訳データを作成すること、及び作成された財務諸表に対応する勘定を記憶手段に記憶することは、いずれも本件特許出願前の周知技術(周知技術5、周知技術3及び周知技術4)であり、甲1発明において、これらの周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
この点、被請求人は、特に主張を行っていない。

エ 相違点4
国家の政策レベルの意思決定を記録・会計処理することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術6)であり、甲1発明において、この周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
この点、被請求人は、特に主張を行っていない。

オ 相違点6
作成した財務諸表を表示することは、本件特許出願前の周知技術(周知技術7)であり、甲1発明において、この周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
この点、被請求人は、特に主張を行っていない。

カ 相違点7
キャッシュフロー計算書の期末の収支尻が当期資金増減額として貸借対照表上の資金勘定に振り替えられることは、本件特許出願前の周知技術(周知技術8)であり、甲1発明において、この周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
この点、被請求人は、特に主張を行っていない。

(3)以上のとおりであるから、周知技術1?8について周知技術であったことは認められるものの、本件特許発明と甲1発明との相違点について甲第13号証および甲第17号証に基づく周知技術(周知技術9)または甲第13号証もしくは甲第17号証のいずれかに記載された公知技術に基づいて容易想到であるということはできない。

4 小括
してみると、本件特許発明は、甲1発明、周知技術ならびに甲第13号証および甲第17号証に基づく周知技術(周知技術9)または甲第13号証もしくは甲第17号証のいずれかに記載された公知技術に基づいて、本件特許出願の前に当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないから、本件特許が特許法第29条第2項の規定に違反するものであって同法第123条第1項第2号に該当する旨をいう無効理由1は、理由がない。

第6 無効理由2(サポート要件違反)についての当審の判断
1 SB1について(「第4」「2」「(1)」のア)
ア SB1は、「予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから資金(現金及び現金同等物)の受入(A1)と払出(A2)を有する資金収支計算書勘定(A)を記録する資金収支計算書勘定記憶手段」というものであるところ、本件明細書又は図面(以下、「明細書等」という。)の段落【0023】、【0065】?【0068】、図1、図5の記載に照らせば、SB1が本件明細書に記載されており、これが、「国民が将来負担するべき負債や将来の利用可能な資源を明確にして、政策レベルの意思決定を支援できる会計処理方法及び会計処理を行うためのプログラム」の提供という本件特許発明の課題(本件明細書段落【0008】)を解決するためのものであることは、明らかである。
イ 請求人は、SB2及びSB3との記載ぶりの違いを根拠として「伝票データ」が「従来の単式簿記システムにより作成された」ものでなく「従来の単式簿記システムにより直接作成された」ものであると解するべき旨、及び、記録のために作成が前提となることを根拠として、「資金収支計算書勘定(A)」を「記録する」のみならず「作成・記録する」ものであると解するべき旨を主張する。
しかし、いずれの主張も、特許請求の範囲の記載に基づかずに特許請求の範囲の記載要件違反を主張するものであって、採用の余地がない。さらに、前者については、必要に応じてデータ変換を行うこと、単式簿記システムにより作成された伝票データから資金収支計算書勘定(A)を作成するために複式仕訳データを利用することは当然であって、そのことは本件明細書の上記記載からみても明らかである。

2 SB2、SB3について(「第4」「2」「(1)」のイ)
ア SB2の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)(B1?B4)」と「損益勘定(行政コスト計算書勘定)(B5?B7)」の「作成・記録」にあたって「前記伝票データを変換して複式簿記での伝票データとした複式仕訳データを用い」る旨、及び、SB3の、「拡張された処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1?C4)」の「作成・記録」にあたって「前記複式仕訳データを用い」る旨について、本件明細書の段落【0066】?【0068】、図1、図5の記載に照らせば、これらの旨が本件明細書に記載されていることは明らかである。
イ 請求人は、本件明細書の「複式仕訳データ」についての記載は【0066】【0067】のみであり、これらが仕訳マスタについての記載であると主張するが、「この複式仕訳データ27は、複式簿記を作成する場合のデータとなるものである。」(【0066】)、「会計処理に必要なデータが揃うと・・などの財務諸表を同時に作成することができる」(【0068】)との記載も併せみれば、上記の旨が本件明細書に記載されているといえる。

3 SB2の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」について(「第4」「2」「(1)」のウ)
SB2の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」については、SB2において「企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきた」ものである旨が明示されており、これが「企業会計」における「閉鎖残高勘定」とも「貸借対照表勘定」とも異なるものでないことが明らかであるから、これが異なるものであることを前提とした請求人の主張は、理由がない。

4 してみると、本件特許出願が特許法第36条第6項第1号の規定に規定する要件を満たしていないから本件特許が同法第123条第1項第4号に該当する旨をいう無効理由2は、理由がない。

第7 無効理由3(新規事項追加禁止要件違反)についての当審の判断
1 SB1について(「第4」「3」「(1)」のア)
ア SB1は、「予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから資金(現金及び現金同等物)の受入(A1)と払出(A2)を有する資金収支計算書勘定(A)を記録する資金収支計算書勘定記憶手段」というものであるところ、本件特許出願時の明細書(乙第8号証)の段落【0023】、【0065】?【0068】、図1、図5(乙第11号証)の記載に照らせば、SB1が本件明細書に記載されていることは、明らかである。
イ 請求人は、SB2及びSB3との記載ぶりの違いを根拠として「伝票データ」が「従来の単式簿記システムにより作成された」ものでなく「従来の単式簿記システムにより直接作成された」ものであると解するべき旨、及び、記録のために作成が前提となることを根拠として、「資金収支計算書勘定(A)」を「記録する」のみならず「作成・記録する」ものであると解するべき旨を主張する。
しかし、いずれの主張も、特許請求の範囲の記載に基づかずに特許請求の範囲の記載要件違反を主張するものであって、採用の余地がない。さらに、前者については、必要に応じてデータ変換を行うこと、単式簿記システムにより作成された伝票データから資金収支計算書勘定(A)を作成するために複式仕訳データを利用することは当然であって、そのことは本件特許出願時の明細書の上記記載からみても明らかである。

2 SB2、SB3について(「第4」「3」「(1)」のイ)
ア SB2の「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)(B1?B4)」と「損益勘定(行政コスト計算書勘定)(B5?B7)」の「作成・記録」にあたって「前記伝票データを変換して複式簿記での伝票データとした複式仕訳データを用い」る旨、及び、SB3の、「拡張された処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1?C4)」の「作成・記録」にあたって「前記複式仕訳データを用い」る旨について、本件明細書の段落【0066】?【0068】、図1、図5の記載に照らせば、これらの旨が本件特許出願時の明細書に記載されていることは明らかである。
イ 請求人は、本件特許出願時の明細書の「複式仕訳データ」についての記載は【0066】【0067】のみであり、これらが仕訳マスタについての記載であると主張するが、「この複式仕訳データ27は、複式簿記を作成する場合のデータとなるものである。」(【0066】)、「会計処理に必要なデータが揃うと・・などの財務諸表を同時に作成することができる」(【0068】)との記載も併せみれば、上記の旨が本件特許出願時の明細書に記載されているといえる。

3 してみると、本件特許出願につき平成23年2月18日付けでなされた補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから本件特許が同法第123条第1項第1号に該当する旨をいう無効理由3は、理由がない。

第8 無効理由4(明確性要件違反)についての当審の判断
1 SB1の「予算を含む、」について(「第4」「4」「(1)」のア)
ア SB1の「予算を含む、従来の単式簿記システムにより作成された伝票データから・・資金収支計算書勘定(A)を記録する」との記載からは、「予算を含む」ものが「従来の単式簿記システム」であるか「伝票データ」であるかが直ちに明らかであるとはいえない。
この点について、本件明細書には、「これまでの資金勘定(資金収支計算書勘定)が公会計のメインフレームとして使われていた理由は、国家の所有者である国民の代表者が国会で決めた予算に対して、法規範性を持たせて厳しくチェックするためには、どこから財源を調達してどのように使ったのかを完全に把握する必要があったからである。」(【0004】)、「図1の(A)の部分が示すのは、従来、単式簿記・現金主義会計で扱ってきた資金(現金及び現金同等物)の受入と払出を記録・会計処理する資金収支計算書勘定である。」(【0023】)、「図5において、従来の方式である単式会計システム21でのマスタデータと会計処理データを、マスタ登録モジュール22における変換定義23と仕訳パターン24にしたがって、データ変換モジュール25と複式仕訳入力モジュール26により複式仕訳データ27に変換する。この複式仕訳データ27は、複式簿記を作成する場合のデータとなるものである。」(【0066】)との記載があるから、「従来の単式簿記システム」が「予算を含む」ものであったことが示されており、これに対して、「会計処理に必要なデータが揃うと、図2に示すような損益外純資産変動計算書をはじめ貸借対照表、損益計算書、資金収支計算書などの財務諸表を同時に作成することができる。」(【0068】)との記載はあるものの、「従来の単式簿記システム」のデータのうちの「予算」のデータを「会計処理に必要なデータ」として複式仕訳データへの変換の対象とすべき旨の記載はないし、このような記載ぶりからみて、SB1の「予算を含む」が「伝票データ」を修飾するという解釈を採用する余地はなく、「従来の単式簿記システム」を修飾することが明らかである。
よって、SB2(SB3)の記載は、この点で明確性要件に違反するものではない。
イ 請求人は、「予算を含む、」と読点を入れていること、及び平成23年2月18日付手続補正書(甲第23号証)及び同日付意見書(甲第19号証)において「予算を含む伝票データから・・・」と規定されていたことから、「予算を含む」は「伝票データ」に係ると解するのが合理的であると主張する。
しかし、上記したとおり、「予算を含む」の係り受けは明確であるところ、読点を入れたのは、「予算を含む」が「従来」ではなく「従来の単式簿記システム」全体の修飾であることを強調する趣旨であると捉えることができ、また、特許査定に至るまでに文言の係り受けが本件明細書の記載に即して変更されることもあり得るから、これらの点があるからといって係り受けが不明確となるものではない。

2 SB2(SB3)の「・・から、」について(「第4」「4」「(1)」のイ及びエ)
ア SB2(SB3)の「・・から、」は、「X手段から、Yの勘定を作成・記録する」という一連のものとして「作成・記録する」を修飾することが文理上明らかである。そして、本件明細書の「図1の(A)の部分が示すのは、・・・資金収支計算書勘定である。期末の収支尻(貸借差額)が、当期資金増減額として、図1の(B)貸借対照表上の資金勘定に振替えられることとなる。これが資金勘定(資金収支計算書勘定)と閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の間での勘定連絡である。」(【0023】)、「こうした勘定連絡(勘定科目間の金額の連動)をきちんと設定しておくことによって、本発明による会計処理の特徴であるシミュレーション機能が現実に可能となる。一つの勘定科目の金額が変動した場合に、公会計の勘定体系である(A)(B)(C)のすべてが連動して他の勘定科目に対する金額的な波及効果が完全に計算可能となるからである。」(【0031】)の記載に照らせば、「X手段から、Yの勘定を作成・記録する」との文言によって、「X手段に記録された勘定との勘定連絡を通じて、Yの勘定を作成・記録する」ことを意味することが明らかである。
よって、SB2(SB3)の記載は、この点において、明確性要件に違反するものではない。
イ 請求人は、SE、SF、SGの記載ぶりとの違いを指摘して、「から」が勘定連絡について規定したものでないと主張している。しかし、SE、SF、SGは、勘定連絡の内容を規定しているのに対し、SB2(SB3)は、コンピュータシステムの各手段における「勘定」の「作成・記録」が、他の手段において「記録」又は「作成・記録」される勘定との勘定連絡を通じてなされることを規定しており、請求人の指摘する記載ぶりの違いは、このことを反映しているものであって、明確性要件に違反するものではない。

3 (「第4」「4」「(1)」のウ)
ア 「閉鎖残高勘定」は、「残高勘定」と称することもある(甲第27号証)ところ、「残高勘定」とは、「資産、負債および資本に属する諸勘定の一覧表示」を目的として「期末における資産、負債および資本の残高(すなわち期末有高)」が「決算仕訳」である「残高振替仕訳」によって振り替えられるものであり、この「決算仕訳」の後に「資産、負債および資本に属する諸勘定」には「次期への繰越額を明示する意味で「次期繰越」と記入」されて「元帳の締切」が行われる(甲第26号証)。他方、「貸借対照表勘定」は、「複式簿記」に係る「諸勘定を締切る際に、残高をもって繰り越される勘定の集合」であって「通常は、資産勘定、負債勘定、資本勘定に分類される」ものである(甲第27号証)。これらを踏まえれば、「閉鎖残高勘定」と「貸借対照表勘定」は、いずれも、複式簿記を前提とした通常の会計用語として、期末(決算仕訳後の元帳締切時)の「資産、負債および資本の残高(期末有高)」を示す勘定を示す用語として用いられていることが明らかである。本件明細書においても、これらを異なる意味の用語として用いていない。
また、本件明細書においては、「貸借対照表勘定」を示すにあたって「貸借対照表」と表記したり、「損益計算書勘定」を示すにあたって、「損益勘定」や「損益計算書」と表記する等、表記の一部の省略等、表記の揺れがみられるものの、これらは、単なる表記の揺れであることが明らかであって、明確性要件違反を引き起こすものとはいえない。
イ 請求人の主張のうち、「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」が不明確である旨の主張は、「閉鎖残高勘定」と「貸借対照表勘定」とが異なる意味の用語であることを前提とするものであり、前提において失当である。
また、請求人の主張のうち、「損益勘定(行政コスト計算書勘定)」が不明確である旨の主張は、「損益勘定」と「損益計算書勘定」が異なる意味であること、又は、これが同じ意味である場合には通常の会計用語の用い方と異なる用語法となることを前提としたものであるところ、これらはいずれも通常の会計用語としての「損益計算書」と同じ意味を示す用語の表記の揺れにすぎないから、前提において失当である。

4 してみると、本件特許出願が特許法第36条第6項第2号の規定に規定する要件を満たしていないから本件特許が同法第123条第1項第4号に該当する旨をいう無効理由4は、理由がない。

第9 むすび
以上のとおり、本件審判の請求に係る無効理由1ないし無効理由4は、いずれも理由がなく、本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。。
 
審理終結日 2019-12-24 
結審通知日 2020-01-06 
審決日 2020-01-20 
出願番号 特願2004-344658(P2004-344658)
審決分類 P 1 123・ 55- Y (G06Q)
P 1 123・ 121- Y (G06Q)
P 1 123・ 537- Y (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田内 幸治岩間 直純  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 松田 直也
相崎 裕恒
登録日 2011-09-30 
登録番号 特許第4831955号(P4831955)
発明の名称 会計処理方法および会計処理プログラムを記録した記録媒体  
代理人 高島 良樹  
代理人 梶井 啓順  
代理人 山口 宏  
代理人 大澤 光  
代理人 高橋 隆二  
代理人 峰 隆司  
復代理人 井上 高広  
代理人 大友 潤  
代理人 生田 哲郎  
代理人 野河 信久  
代理人 寺島 英輔  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 和田 祐造  
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