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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
管理番号 1360296
審判番号 不服2018-10183  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-25 
確定日 2020-03-05 
事件の表示 特願2017-213176「洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 8日出願公開、特開2018- 34003〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年9月5日に出願した特願2012-195380号の一部を平成29年3月6日に新たに出願した特願2017-41640号の一部を平成29年11月2日に新たに出願したものであって、平成30年4月24日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成30年5月8日)、これに対し、平成30年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により令和元年6月18日付で拒絶の理由が通知され(発送日:令和元年6月25日)、これに対し、令和元年8月26日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により令和元年9月13日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:令和元年9月17日)、これに対し、令和元年11月15日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.令和元年11月15日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年11月15日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
洗濯水を貯留する水槽を収容した筐体と、前記水槽に供給する洗剤を収容し、前記筐体への着脱が可能な洗剤収容箱と、カバー板と、を備える洗濯機において、
前記洗剤収容箱は、洗剤収容室と、前記洗剤収容室と前記カバー板との間に設けられ、前記カバー板が取り付けられる部材であって、側面断面形状がL形の部分が形成された取付部材と
を備え、
前記取付部材に前記カバー板を取り付けた状態において、前記側面断面形状がL形の部分の正面側に前記カバー板の一部が位置することにより、上記洗剤収容室の前側に、手を挿入するための凹部が形成されており、
前記取付部材の前記カバー板と対向する面には凸部が形成されており、
前記凸部は、前記側面断面形状がL形の部分の正面側で、前記カバー板に近接する下端部から立設された板状体であり、該板状体は前記カバー板と当接していることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記凹部の底部から、前記取付部材の側面部および前記側面断面形状がL形の部分の背面側の両方にかけて、上り勾配の傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。」

本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された(下線は補正箇所)。
「【請求項1】
洗濯水を貯留する水槽を収容した筐体と、前記水槽に供給する洗剤を収容し、前記筐体への着脱が可能な洗剤収容箱と、カバー板と、を備える洗濯機において、
前記洗剤収容箱は、洗剤収容室と、前記洗剤収容室と前記カバー板との間に設けられ、前記カバー板が取り付けられる部材であって、側面断面形状がL形の部分が形成された取付部材と
を備え、
前記取付部材に前記カバー板を取り付けた状態において、前記側面断面形状がL形の部分の正面側に前記カバー板の一部が位置することにより、上記洗剤収容室の前側に、手を挿入するための凹部が形成されており、
前記取付部材の前記カバー板と対向する面には凸部が形成されており、
前記凸部は、前記側面断面形状がL形の部分の正面側で、前記カバー板に近接する下端部から立設された板状体であり、該板状体によって、前記取付部材と前記カバー板との間であって、前記側面断面形状がL形の部分の下方側に隙間が形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記凹部の底部から、前記取付部材の側面部および前記側面断面形状がL形の部分の背面側の両方にかけて、上り勾配の傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。」


(2)目的要件
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
本件補正前後で請求項数は2で本件補正前後の請求項2の記載は同じであるから、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項1に対応するものとして検討する。

本件補正前の請求項1に係る発明は、凸部が板状体であって、「該板状体は前記カバー板と当接してい」たものが、本件補正後の請求項1に係る発明は、凸部が板状体であって、当該板状体によって取付部材とカバー板との間に隙間が形成されてはいるが、当該板状体がカバー板と当接する特定はなくなっている。
そうすると、本件補正前の請求項1の、「該板状体は前記カバー板と当接している」構成をどの様に限定しても、本件補正後の請求項1の、取付部材とカバー板との間に隙間が形成される構成とはならないから、本件補正は、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当しない。
なお、請求人は、令和元年11月15日付意見書で「該板状体は前記カバー板と当接している」点が削除された本件補正後の請求項1の記載に基づく主張はしているが、板状体はカバー板と当接している点を削除することが限定的減縮に該当する点については何等主張していない。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)特許法第36条第6項について
本件補正後の請求項1に「該板状体によって、前記取付部材と前記カバー板との間であって、前記側面断面形状がL形の部分の下方側に隙間が形成されている」とあり、「よって」とは「それがために」との意味であるが、請求項1の当該記載は、取付部材にカバー板を取り付けた際に、図5の板状体間に隙間が形成される意味か、板状体が図5のものより洗剤収容箱の前後方向(取付板18dの前後方向)に短くて、その短くなった分カバー板との間に隙間ができる意味か、それ以外か、特定できず不明である。なお、図5より判断すると、仮に板状体がなくても取付部材にカバー板を取り付ければ、当該箇所に取付部材とカバー板との間に隙間が形成されるから、カバー板によらなくても隙間が形成されることとなり、「該板状体によって」の意味が特定できない。

したがって、本件補正後の請求項1に記載された発明は、明確ではないから、本件補正後の請求項1の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、上記した令和元年8月26日付手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(1)最後の拒絶の理由
当審の令和元年9月13日付の最後の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「令和元年8月26日付でした手続補正(以下、「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


(1)本件補正後の請求項1には、「該板状体は前記カバー板と当接している」とあるから、凸部は、側面断面形状がL形の部分の正面側で、カバー板に近接する下端部から立設された板状体であり、該板状体は前記カバー板と当接していることとなる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

当初明細書等には、
a「【請求項1】
洗濯水を貯留する水槽を収容した筐体と、前記水槽に供給する洗剤を収容し、前記筐体への着脱が可能な洗剤収容箱と、カバー板と、を備える洗濯機において、
前記洗剤収容箱は、洗剤収容室と、側面断面形状がL形の部分が形成された取付部材とを備え、
前記側面断面形状がL形の部分の正面側が前記カバー板に覆われることにより、上記洗剤収容室の前側に、手を挿入するための凹部が形成されており、
前記取付部材の前記カバー板と対向する面には凸部が形成されており、
前記凸部によって、前記取付部材と前記カバー板との間に隙間が形成されていることを特徴とする洗濯機。」
b「本発明に係る洗濯機は、洗濯水を貯留する水槽を収容した筐体と、前記水槽に供給する洗剤を収容し、前記筐体への着脱が可能な洗剤収容箱と、カバー板と、を備える洗濯機において、前記洗剤収容箱は、洗剤収容室と、側面断面形状がL形の部分が形成された取付部材とを備え、前記側面断面形状がL形の部分の正面側が前記カバー板に覆われることにより、上記洗剤収容室の前側に、手を挿入するための凹部が形成されており、前記取付部材の前記カバー板と対向する面には凸部が形成されており、前記凸部によって、前記取付部材と前記カバー板との間に隙間が形成されている。」(【0007】)
c「洗剤収容箱18は前後に長く上面が開放された矩形箱形の洗剤収容室18aを備える。洗剤収容室18aの前部には取手部18bが設けてある。取手部18bは、後述する化粧板19(カバー板)を取り付ける取付板18dを備える。取付板18dは矩形状をなし、その左右に前後に貫通した二つの取付孔18e,18eが設けてある。」(【0035】)
d 図3?図4には、カバー板が側面断面形状がL形の部分の正面側を覆うことが、図5?図6には、取手部18bが示されている。
と記載されるにすぎず、取付部材のカバー板と対向する面には凸部が形成されており、前記凸部によって、前記取付部材と前記カバー板との間に隙間が形成されていることは記載はあるが、凸部(板状体)(令和元年8月26日付意見書参考図A参照)はカバー板と当接していることは記載も示唆も無い。

なお、請求人は令和元年8月26日付意見書において、「そして、図3に示されるとおり、取手部18bに化粧板19(カバー板)が取り付けられた状態において、側面断面形状がL形の溝18cの正面側の下端部から立設された上記の板状体が化粧板19(カバー板)と当接することは明らかであると考えます。」と主張するが、請求人が補正の根拠とする図3?図6には、凸部(板状体)(令和元年8月26日付意見書参考図A参照)はカバー板と当接していることは上述の様に記載されておらず、しかも図5において、凸部(板状体)は当該凸部(板状体)から下方に連続して形成されているリブとの間に段差があって、当該リブは凸部(板状体)よりカバー板側に出ているようにみえるから、取付部材にカバー板を取り付けると凸部(板状体)はカバー板と当接できず、凸部(板状体)とリブの高さの差分だけ凸部(板状体)とカバー板との間に隙間ができるので、請求人の上記主張は採用できない(単に明らかと主張するだけではなく何故明らかであるのか示されたい)。

したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。」


(2)当審の最後の拒絶の理由についての判断
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項は、令和元年8月26日付意見書及び令和元年11月15日付意見書を参照しても、「3.(1)」に示したとおり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
したがって、令和元年8月26日付でした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


(3)むすび
したがって、令和元年8月26日付でした手続補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-27 
結審通知日 2020-01-07 
審決日 2020-01-23 
出願番号 特願2017-213176(P2017-213176)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (D06F)
P 1 8・ 572- WZ (D06F)
P 1 8・ 575- WZ (D06F)
P 1 8・ 55- WZ (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大宮 功次  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 堀川 一郎
長馬 望
発明の名称 洗濯機  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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