• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1360445
異議申立番号 異議2019-700137  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-20 
確定日 2020-01-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6383003号発明「導電部材、セルスタック装置、モジュール、モジュール収納装置および導電部材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6383003号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第6383003号の請求項3ないし6に係る特許を維持する。 特許第6383003号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6383003号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)11月 6日(優先権主張平成26年11月 6日)を国際出願日とする特許出願であって、平成30年 8月10日にその特許権の設定登録がなされ、同年 8月29日にその特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、平成31年 2月21日受付(平成31年 2月20日差出)で、特許異議申立人井上敬也(以下、「申立人」という。)により、請求項1、3?6に係る本件特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成31年 4月24日付けで取消理由が通知され、これに対して、特許権者により令和 1年 7月 5日受付で意見書が提出されるとともに、訂正請求がなされ、同年 7月18日付けで訂正拒絶理由が通知されたが、これに対する意見書は提出されず、同年11月 1日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、特許権者により同年12月24日受付で意見書が提出されるとともに、訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされたものである。
なお、本件訂正請求による訂正後の全ての請求項(削除された請求項1を除く)は、下記第2で検討するように、特許異議が申し立てられていない本件訂正前の請求項2に記載された特定事項を備えるものとなったので、本件訂正について、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないものと判断した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容
特許法第120条の5第7項の規定により、令和 1年 7月 5日受付の訂正請求は、その後、本件訂正請求がなされ、取り下げられたものとみなされるから、以下、本件訂正請求について検討する。
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6383003号の特許請求の範囲を令和 1年12月24日受付の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。

(2)訂正の内容
ア 訂正事項1
本件訂正前の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
請求項2について、本件訂正前の
「前記第1層において、厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い
請求項1に記載の導電部材。」を
「クロム(Cr)を含有する基材と、
該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有する第1層とを有しており、
該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層において、厚み方向の前記基材側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度よりも高く、厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い導電部材。」と訂正する。
請求項2を引用する請求項4?6も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
請求項3について、本件訂正前の
「該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、」を
「該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層において、厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高いとともに、」と訂正する。
請求項3を引用する請求項4?6も同様に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項4について、本件訂正前の
「請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の導電部材」を
「請求項2又は請求項3に記載の導電部材」と訂正する。
請求項4を引用する請求項5?6も同様に訂正する。

2 本件訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 上記アのとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項1を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 訂正事項2は、訂正前の請求項2について、実質的な記載内容を何ら変更するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載された「第1層」について、「さらにチタン(Ti)を含有して」いることに加えて、「厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度」が「厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正前の請求項3に記載された「第1層」について、本件特許明細書の段落【0034】には、「第1層6aにおいて、厚み方向の基材5とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高いとよい。これにより、例えば第1層6aの表面に他の部材が設けられた場合に、その他の部材と第1層6aとの境界において導電性を向上させることができる。」と記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 上記アのとおり、訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4は、訂正事項1によって、訂正前の請求項1が削除されたことに伴って、訂正前の請求項4における引用請求項について、「請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の導電部材」としていたものを、「請求項2又は請求項3に記載の導電部材」と訂正するものであり、請求項1を除く、請求項2と請求項3のみを引用することとなったものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、削除された請求項1を引用するという明瞭でない記載を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。

(5)一群の請求項について
本件訂正によって、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2、4?6が連動して訂正されるとともに、本件訂正前の請求項3を引用する請求項4?6が連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項1?6は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、上記一群の請求項についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではあるが、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?6〕を訂正単位として訂正の請求をするものである。

(6)独立して特許を受けることができるかについて
特許異議が申し立てられていない、本件訂正前の請求項2についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する事項を目的とするものであって、同法同条同項ただし書第1号又は第2号に規定する事項を目的とするものではないから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件は課されない。

(7)小括
以上のとおりであるから、令和 1年12月24日受付で特許権者が行った本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を表す。

「【請求項1】(削除)
【請求項2】
クロム(Cr)を含有する基材と、
該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有する第1層とを有しており、
該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層において、厚み方向の前記基材側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度よりも高く、厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い導電部材。
【請求項3】
クロム(Cr)を含有する基材と、
該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を含有する第1層とを有しており、
該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層において、厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高いとともに、
前記第1層上に第2層が設けられており、
該第2層は亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており、
前記第2層全体におけるチタンの濃度は、前記第1層全体におけるチタンの平均濃度よりも少ない
導電部材。
【請求項4】
複数のセルと、
複数の該セルの間に配置され、隣接する該セル同士を電気的に接続する
請求項2又は請求項3に記載の導電部材とを有している
セルスタック装置。
【請求項5】
収納容器と、
該収納容器に収納された請求項4に記載のセルスタック装置とを有している
モジュール。
【請求項6】
外装ケースと、
該外装ケース内に収納された請求項5に記載のモジュールと、
前記外装ケース内に収納された、前記モジュールを作動させるための補機とを有している
モジュール収納装置。」

第4 特許異議申立の概要
申立人は、証拠方法として、下記甲第1?10号証を提出して、以下の申立理由1?5により、請求項1、3?6に係る本件特許を取り消すべきものである旨主張している。なお、上記各申立理由について、当審において取消理由として採用したか否かを「( )」に示している。

(1)申立理由1(採用)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(採用)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(採用)
本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、または、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(採用)
本件訂正前の請求項4?6に係る発明は、甲第1号証及び甲第9号証に記載された発明に基づいて、または、甲第2号証及び甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(不採用)
本件訂正前の請求項1、4?6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:Yeong-Shyung Chou 外2名、“Evaluation of a Single Cell and CandidateMaterials with High Water Content Hydrogen in a Generic Solid Oxide Fuel CellStack Test Fixture, Part II: Materials and Interface Characterization”、Int. J. Appl. Technol. 、2013年、Vol.10、No.1、97-106頁
甲第2号証:J.W.Stevenson 外4名、“Long-term oxidation behavior ofspinel-coated ferritic stainless steel for solid oxide fuel cell interconnectapplications”、Journal of Power sources、2013年、231、256-263頁
甲第3号証:特開2014-191928号公報
甲第4号証:特開2009-231172号公報
甲第5号証:特表2010-516024号公報
甲第6号証:特表2010-535290号公報
甲第7号証:特表2014-517871号公報
甲第8号証:VDM Crofer 22APU、Material Date Sheet No.4046、VDM Metals GmbH、2010年5月
甲第9号証:国際公開第2013/172451号
甲第10号証:特表2004-520479号公報

なお、甲第1号証?甲第10号証をそれぞれ甲1?甲10ということがある。

第5 取消理由の概要
平成31年 4月24日付け及び令和 1年11月 1日付けで通知した取消理由において、上記申立理由1?4に基づいて次のア、イの取消理由が通知された。

ア 本件訂正前の請求項1に係る発明は甲1に記載された発明により新規性及び進歩性を有さず、本件訂正前の請求項3に係る発明は甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づき進歩性を有さず、また、本件訂正前の請求項4?6に係る発明は甲1に記載された発明と甲3、甲9に記載された事項に基づき進歩性を有さない。
イ 本件訂正前の請求項1に係る発明は甲2に記載された発明により新規性及び進歩性を有さず、本件訂正前の請求項3に係る発明は甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づき進歩性を有さず、また、本件訂正前の請求項4?6に係る発明は甲2に記載された発明と甲3、甲9に記載された事項に基づき進歩性を有さない。

第6 当審の判断
1 甲号証の記載事項
(1)甲1の記載事項及び甲1発明
ア 本件特許の出願に係る優先日前に外国において頒布され、特許異議申立書に添付された甲第1号証(Int. J. Appl. Technol. 、2013年、Vol.10、No.1、97-106頁)には、「Evaluation of a Single Cell and CandidateMaterials with High Water Content Hydrogen in a Generic Solid Oxide Fuel CellStack Test Fixture, Part II: Materials and Interface Characterization(当審訳:包括的な固体酸化物形燃料電池セルスタックの試験治具における高含水水素環境で使用する単セルと候補物質の評価、パートII:材料と界面特性)」(論文の名称)に関して、以下の記載がある。

1ア「Ferritic stainless steels such as AISI441 are leading candidates formetallic interconnects due to matching CTE, electrically conducting scaleformation, reasonable oxidation resistance, low cost, and forming ability.」(p.103の左欄7-11行目)
(当審訳:AISI441といったフェライト系ステンレス鋼は、適合したCTE、電気伝導性のスケール形成、適度な酸化しにくさ、低コスト、及び、形成容易性のために、金属インターコネクトの主要な候補である。)

1イ「In nonsealing areas, the major concern is focused on the electricalconduction as well as the issue of Cr-poisoning, especially when the metallicinterconnect is exposed to an oxidizing environment at elevated temperatures.The Cr-containing ferritic stainless steels are known to form a protective andconducting oxide scale upon oxidation, typically consisting of a dense innerlayer of Cr-oxide (likely Cr_(2)O_(3)) and a thin (Cr,Mn)spinel oxide top layer.」(103頁の左欄13-21行目)
(当審訳:封止されていない領域において、主要な関心事は、Cr被毒問題のような電気伝導性に集中しており、特に、金属インターコネクトが上昇した温度において酸化性の雰囲気に曝されるときに問題となる。このクロムを含むフェライト系ステンレス鋼は、酸化により、典型的にはクロム酸化物(おおむねCr_(2)O_(3))の緻密な内部層と、薄い(Cr、Mn)スピネル酸化物の表層と、から構成された、保護的かつ伝導性の酸化物スケールを形成することが知られている。)

1ウ「(Mn,Co)-spinel protective coatings were found to have high electrical conductivity and stability when tested on small steel coupons, but needed to betested in a more realistic SOFC environment, that is, with larger interconnectsand realistic electrical current and air flow while in direct contact withcathode contact materials and the metal substrate. Figure 6 shows the typicalmicrostructure near the (Mn,Co)-spinel coated AISI441 interface with elementalline scans and several spot analyses (#1, #2, and #3), which are listed inTable II.」(103頁の左欄24-33行目)
(当審訳:(Mn,Co)スピネルの保護コートは、小型のスチール片上でテストされると、高い電気伝導性と安定性を有することが見出されているが、より現実的なSOFC環境、すなわち、より大きなインターコネクトと共に、カソード接点材料および金属基材と直接的に接触するようにして、実際の電流量および空気流量で、テストされることが必要である。図6は、(Mn,Co)スピネルでコートされたAISI441界面付近の典型的な微細構造を、元素ラインスキャンおよびいくつかの点分析(#1,#2および#3)、-これらは表2に示されている-と共に示している。)

1エ「


Fig. 6. Interfacial microstructure of the (Mn,Co)-spinel coated AISI441interconnect with elemental analysis by line scan after performance stabilitytest at 800°C for 1720 h. Three spots analysis (#1-3) were also conducted insidethe dense layer and the results are listed in Table II.」(103頁右欄上部)
(当審訳:図6 800℃で1720時間の性能安定テスト実施後の、(Mn,Co)スピネルでコートされたAISI441インターコネクトの界面微細構造を、ラインスキャンによって実施された元素分析と共に示す。図上の三つのポイント(#1?#3)の分析は、緻密層の内部で行われており、分析結果は表2に示されている。)

1オ「

」(103頁右欄中央)
(当審訳:表2(Mn,Co)スピネルでコートされたAISI441基板の界面近傍の三つの点(図6の1、2、3)における、原子%単位で表した化学分析。)

イ 上記1ア、1イによれば、甲1は、金属インターコネクトの主要な候補材料である、AISI441といったフェライト系ステンレス鋼について記載されており、このフェライト系ステンレス鋼には、その表面に酸化によって、クロム酸化物(概ねCr_(2)O_(3))の緻密な内部層と、薄い(Cr、Mn)スピネル酸化物の表層とから構成された、保護的かつ伝導性の酸化物スケールが形成されている。

ウ 上記イに記載した酸化物スケールは、クロム酸化物(概ねCr_(2)O_(3))の緻密な内部層と、(Cr、Mn)スピネル酸化物の表層から形成されているところ、当該表層は薄いものであるとされているから、酸化物スケールは、クロム酸化物(概ねCr_(2)O_(3))を主成分としているといえる。そして、Cr_(2)O_(3)が酸化第二クロムであることは技術常識であるから、酸化物スケールは、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有しているといえる。

エ 以下、図6に表示された色付きの曲線を用いて検討するが、本決定においては、図6上の曲線の色は識別できないので、異議申立書に添付された甲第1号証のFig.6又は異議申立書の第12頁の参考図1を参照されたい。
上記1エの図6は、800℃で1720時間の性能安定テスト実施後の、(Mn,Co)スピネルでコートされたAISI441インターコネクトの界面微細構造を、ラインスキャンにより元素分析した結果と共に示している。
図6には、ラインスキャンによる元素分析の結果が、各元素の濃度分布を示す複数の色つきの曲線として示されている。具体的には、Tiの濃度分布が赤色の曲線で示されており、Crの濃度分布が黄色の曲線で示されており、Mnの濃度分布が緑色の曲線で示されており、Feの濃度分布が青色の曲線で示されており、Coの濃度分布が紫色の曲線で示されている。

オ 上記1ウによれば、図6中の3ポイント(#1?#3)の点分析が行われ、その結果が表2に示されている。表2には、図6中に示された3つの点(#1?#3)における組成が原子%(at%)で示されている。
そこで、図6及び表2を参照すると、点#1は、Crを多く含む酸化物であるから、酸化物スケール上の点であり、点#2,#3は、いずれも、Mn及びCoを多く含む酸化物であるから、(Mn,Co)スピネルコート上の点であると認められる。すると、酸化物スケールと(Mn,Co)スピネルコートとの界面は、点#1と点#2との間に存在しているといえる。

カ 図6の断面写真において、画像の左端付近、より具体的には、Feの濃度曲線とCrの濃度曲線が交差する位置の付近で、白色から灰色へ、色が大きく変化していることが見て取れる。そして、各元素の濃度分布を示す色つきの曲線から、上記交差する位置よりも左側の領域は、Crと微量のTi等を含有するFeを主体とする領域であるからAISI441基材であると認められ、当該交差する位置よりも右側の領域は、上記オで検討したとおり、Crを多く含む酸化物の層であるから、酸化物スケールであると認められる。そのため、上記交差する位置が、AISI441基材と酸化物スケールとの界面であるといえる。

キ 図6の断面写真において、点#3よりも右側の領域は、緑色の曲線で示されたMnの濃度と、紫色の曲線で示されたCoの濃度が、点#3におけるMn、Coの各濃度と概略同程度の値となっていることが見て取れるから、点#3と同様、(Mn,Co)スピネルコートであるものと認められる。
なお、上記(Mn,Co)スピネルコートの層のうち、点#2と#3を含む略灰色の領域は緻密な領域とされており(上記1エ参照)、それに対して白色と黒色の斑状となっている、点#3よりも右側の領域において、黒く表示されている箇所は空洞を表しており、緻密ではない領域となっていると推定される。

ク 上記エ?キの分析に基づいて、図6にAISI441基材と、酸化物スケールと、(Mn,Co)スピネルコートのそれぞれの領域と、これら領域の界面を点線で追記した、申立人が作成した参考図1を以下に示す。
参考図1のインターコネクトは、AISI441(基材)の表面に、酸化物スケールの層と、(Mn,Co)スピネルコートの層がこの順に積層されているものであることが示されている。
[参考図1]


ケ 上記参考図1(又は図6)において、酸化物スケール層の厚み方向(左右方向)におけるTiの濃度の変化(赤色の曲線)に注目すると、厚み方向の基材(AISI441)側におけるTiの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の基材とは反対側におけるTiの濃度よりも高くなっているとともに、厚み方向の中央部から基材とは反対側にかけてTiの濃度が徐々に減少していることが見て取れる。

コ 上記1オの表2によれば、酸化物スケール上の点#1におけるTiの濃度は0.87at%である。一方、(Mn,Co)スピネルコート上の点#2,#3におけるTiの濃度はそれぞれ0.37at%および0.27at%であり、これらを単純平均すると0.32at%(=(0.37+0.27)/2)である。また、図6および参考図1において、Tiの濃度の変化(赤色の曲線)に注目すると、(Mn,Co)スピネルコートのTiの濃度は、全体的に、酸化物スケール上のTiの濃度よりも低くなっていることが見て取れる。
したがって、図6および表2によれば、(Mn,Co)スピネルコート全体におけるチタンの平均濃度は、酸化物スケールにおけるチタンの平均濃度よりも低いといえる。

サ 以上の検討によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「クロム(Cr)を含有するAISI441からなる基材と、
前記基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有する酸化物スケールと、
前記酸化物スケール上に設けられた、(Mn,Co)スピネルコートとを有するインターコネクトであって、
前記酸化物スケールはさらにチタン(Ti)を含有しており、
前記酸化物スケールにおいて、厚み方向の基材側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の基材とは反対側におけるチタンの濃度よりも高く、厚み方向の中央部から基材とは反対側にかけてチタンの濃度が徐々に減少しており、
前記(Mn,Co)スピネルコートは、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており、
前記(Mn,Co)スピネルコート全体におけるチタンの平均濃度は、酸化物スケールにおけるチタンの平均濃度よりも低い、
インターコネクト。」

(2)甲2の記載事項及び甲2発明
ア 本件特許の出願に係る優先日前に外国において頒布され、特許異議申立書に添付された甲第2号証(Journal of Power sources、2013年、231、256-263頁)には、「Long-term oxidation behavior of spinel-coated ferritic stainlesssteel for solid oxide fuel cell interconnect applications(当審訳:固体酸化物形燃料電池のインターコネクト用途のための、スピネルコートされたフェライト系ステンレス鋼の長期的な酸化挙動)」(論文の名称)に関して、以下の記載がある。

2ア 「Chromia-forming ferritic stainless steels arepromising interconnect materials for intermediate temperature solid oxide fuelcell (IT-SOFC) stacks due to their relatively low cost, appropriate thermal expansion behavior, electrically conductive chromium oxidebased scale, and high temperature oxidation resistance [1-3].」(256頁の左欄2?6行)
(当審訳:クロミアを形成するフェライト系ステンレス鋼は、比較的低いコスト、適切な熱膨張挙動、電気伝導性のあるクロム酸化物ベースのスケール、及び、高温での酸化されにくさのために、中間的な温度で使用される固体酸化物形燃料電池(IT-SOFC)スタック用の有望なインターコネクト材料である。」

2イ 「Electrically conductive oxide coatings have been demonstrated to be a promising approach for mitigating these challenges. Whilea number of different perovskite and spinel compositions have been evaluated ascoatings [12-19], results of previous studies at PNNL demonstrated that (Mn,Co)_(3)O_(4 )spinel coatings are among the most promising candidates [20,21]. Although several (Mn,Co)_(3)O_(4) spinel compositions were evaluated, Mn_(1.5)Co_(1.5)O_(4)(hereafter designated MC) was selected as the preferred composition, due to its relatively high electrical conductivity, matching thermal expansion behavior,and the ability to mitigate both oxygen inward and chromium outward diffusion[22].」(256頁の左欄15行?右欄10行)
(当審訳:これらの課題を軽減するために、導電性の酸化物コートが有望なアプローチであると実証されてきた。多数の異なるペロブスカイトおよびスピネル組成物がコートとして評価されてきたが、PNNLにおける以前の研究の結果によれば、(Mn,Co)_(3)O_(4)スピネルコートが最も有望なコートの一つであることが示された。いくつかの(Mn,Co)_(3)O_(4)スピネル組成物が評価されたが、相対的に高い電気導電性、熱拡散挙動への適合、及び、酸素の内方への拡散とクロムの外方への拡散の両者を軽減する能力によって、Mn_(1.5)Co_(1.5)O_(4)(以下、MCという)が最も好ましい組成物として選択された。)

2ウ 「Alternatively, small additions of a rare earth (e.g.,Ce) to MC coating materials were determined to be a means of achieving improved scale adhesion without the need for rare earths to be added to the steel itself[27]. Based on these results, spinel-coated AISI 441 was determined to be an excellent candidate for further long-term evaluation as a potential interconnect material for ITSOFC stacks. Results of long-term tests aresummarized in this paper.」(257頁の左欄21?28行)
(当審訳:もう一つの方法として、微量の希土類(例えばCe)をMCコーティング物質へ添加することは、鋼そのものに希土類を添加することを必要とせず、向上したスケールの接着性を達成する手段であると判断された。これらの結果に基づき、スピネルコートされたAISI441は、ITSOFCスクック用の潜在的なインクーコネクト材料としてのさらなる長期間の評価のための、最も優れた候補であると判断された。)

2エ 「The AISI 441 ferritic stainless steel, manufactured by Allegheny Ludlum, Inc. (Pittsburgh, PA), had a chemical composition (in wt %)of 17.6% Cr, 0.33% Mn, 0.47% Si, 0.46% Nb, 0.18% Ti, 0.20% Ni, 0.01% C, 0.045%Al, 0.024% P, 0.001% S, with Fe as the balance.」(257頁の左欄30?33行)
(当審訳:AISI441フェライト系ステンレス鋼は、アレゲニー・ラドラム社(ピツツバーグ、PA)により製造されているが、Cr:17.6%、Mn:0.33%、Si:0.47%、Nb:0.46%、Ti:0.18%、Ni:0.20%、C:0.01%,A1:0.045%、P:0.024%、S:0.001%、Fe:残り、という化学的組成(wt%)を有する。)

2オ 「As noted in the Introduction, a previous study indicated that the addition of Ce to MC spinel coatings resulted in improvedscale adhesion, as evidenced by the presence of microscopic gaps at thescale/AISI 441 interface in samples coated with Ce-free MC spinel [27].」(258頁の左欄下から6?2行)
(当審訳:序論で記載したことであるが、Ceが添加されていないMCスピネルで被覆された試料においては、スケールとAISI441との界面において微視的なギャップが存在するとの証拠が示されたことで、従来の研究は、MCスピネルコーティングへのCeの添加によってスケールの接着性が向上することを示した。)

2カ 「This suggested that the oxide scale that grew between the coating and the steel substrate was not pure chromia.」(259頁の右欄最下行?260頁の左欄2行)
(当審訳:このことは、コートと鋼基材との間で成長する酸化物スケールが、純クロミアではないことを示唆した。)

2キ 「Fig. 7-12 show elemental dot maps of the same regionfor manganese, chromium, titanium, cobalt, niobium, and silicon, respectively.These figures indicate that the oxide scale consisted of a Cr rich oxide layer in which some regions contained an enhanced amount of Mn.」(260頁の左欄9?13行)
(当審訳:図7?12は、それぞれ、同じ領域における、マンガン、クロム、チタン、コバルト、ニオブ、及びシリコン元素のドットマップを示している。これらの図は、酸化物スケールがクロムリッチな酸化物層から構成されており、該酸化物層中のいくつかの領域が、増大した量のMnを含有することを示す。)

2ク 「EBSD results on locations in the Cr rich oxide layer indicated a hexagonal corundum structure, consistent with a typical chromiascale.」(260頁の左欄18?20行)
(当審訳:クロムリッチな酸化物層の各位置におけるEBSDの結果は、六角形のコランダム構造を示しており、これは典型的なクロミアスケールに一致する。)

2ケ 「Titanium (originally present as a minor alloying element in the AISI 441 steel) was observed to be concentrated primarily inoxide precipitates between the scale and the steel substrate, but EDS analysis also indicated that some Ti was present in the oxide scale itself.」(260頁の右欄下から2行?261頁の左欄3行)
(当審訳:Ti(元々、従たる合金元素としてAISI441中に存在する)が、主として、スケールと鋼基材との間の酸化沈殿物中に濃縮されていることが観察されたが、EDS分析によれば、いくらかのTiが酸化物スケール自身中にも存在することが示された。」)

2コ 「


Fig. 15.Representative SEM cross section of the post-test Ce-MC spinel-coated AISI 441on which a series of EDS point scan analyses were performed; results of thenumbered point scans are listed in Table 2.」(262頁左欄上部)
(当審訳:図15 Ce-MCスピネルでコートされたAISI441の試験後の代表的なSEM断面写真であり、この断面上で一連のEDSポイントスキャン分析がなされ、それら数字がふられた点のスキャン分析の結果が表2に示されている。)

2サ 「

」(262頁左欄下部)
(当審訳:表2 図15(Ce-MCスピネルでコートされたAISI441)で示された複数のポイントにおけるEDSスペクトル。測定結果は原子%で表示されている。)

イ 上記2ア、2イによれば、甲2には、固体酸化物形燃料電池のインターコネクトに適用される最も有望な材料である、スピネルコートされたフェライト系ステンレス鋼について記載されており、上記スピネルコートの中でも、Mn_(1.5)Co_(1.5)O_(4)(MCスピネルと称される)は、高い電気導電性、熱拡散挙動への適合、酸素の内方への拡散とクロムの外方への拡散の両者を軽減する優れた能力を有するものとして評価されている。

ウ 上記2ウ、2オによれば、MCスピネルにおいて、微量のCeが添加されたCe-MCスピネルは、スケールの接着性を向上させるので好ましいとされている。

エ 上記2カ?2ケによれば、鋼基材とスピネルコートの間に成長する酸化物スケールは、Tiや、酸化物スケール中のいくつかの領域に増大した量のMnを含有しているものであるから、純粋なクロミア、すなわち純粋な酸化第二クロムではないけれども、EBSDの結果から、典型的なクロミアスケールとなっている。つまり、酸化物スケールは、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有しているといえる。

オ 上記2コの図15は、Ce-MCスピネルでコートされたAISI441の試験後の代表的なSEM断面写真であり、この断面上の複数のポイント(ポイント18?32)で一連のEDSポイントスキャン分析がなされ、その結果が原子%で上記2サの表2に示されている。
なお、表2において、ポイント18の組成の合計は100%になるが、それ以外のポイント(ポイント19-32)では合計が100%に満たない。これは、ポイント19-32が酸化物であり、酸素(O)の組成が省略されているためであることが、当業者であれば理解できる。

カ 上記2エによれば、フェライト系ステンレス鋼である、AISI441は、CrとTi等の微量成分を含有するFe基合金である。

キ 上記図15および表2によれば、ポイント18は、合計が100%の組成の中にO(酸素)を含まないため酸化物上の点ではなく、かつ、Crと微量のTiを含有するFe基合金であるから、AISI441基材上の点であることが理解され、ポイント19?25は、Crを多く含む酸化物であり、かつ、Ceを含んでいないことから、酸化物スケール上の点であることが理解され、ポイント26?32は、MnおよびCoを多く含む酸化物であり、かつ、微量のCeを含むことから、Ce-MCスピネルコート上の点であることが理解される。
したがって、AISI441基材と酸化物スケールとの界面は、ポイント18とポイント19の間に存在し、酸化物スケールとCe-MCスピネルコートとの界面は、ポイント25とポイント26の間に存在するといえる。
また、図15の断面写真において、ポイント18とポイント19の間の位置で、白色から灰色へと色が大きく変化しているから、この点からも、この位置が、AISI441基材と酸化物スケールとの界面であることが理解される。
また、図15の断面写真において、ポイント25とポイント26の間の位置で、色が大きく変化していると共に気孔率が大きく変化しているから、この点からも、この位置が、酸化物スケールとCe-MCスピネルコートとの界面であることが理解される。

ク 上記エ?キの分析に基づいて、図15にAISI441基材と、酸化物スケールと、Ce-MCスピネルコートの各領域と、これら領域の界面を点線で追記した、申立人が作成した参考図2を以下に示す。
参考図2によれば、図15のインターコネクトは、AISI441(基材)の表面に、酸化物スケールの層と、Ce-MCスピネルコートの層がこの順に積層されているものであることが理解できる。


ケ 表2において、参考図2で示された酸化物スケール内に含まれる、ポイント19?25におけるTiの濃度に注目すると、厚み方向の基材側のポイントであるポイント19のTiの濃度は1.0at%であり、厚み方向の中央部及び厚み方向の基材とは反対側のポイントであるポイント20からポイント25に向かって、Tiの濃度は0.6?0.5at%と徐々に低くなっている。
したがって、図15(参考図2)および表2から、酸化物スケールにおいて、厚み方向の基材側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の基材とは反対側におけるチタンの濃度よりも高くなっているとともに、厚み方向の中央部から基材とは反対側にかけてTiの濃度が徐々に減少しているといえる。

コ 表2において、参考図2で示された酸化物スケール内に含まれる、ポイント19?25におけるTiの濃度を単純平均すると0.63at%(=(1.0+0.6+0.6+0.6+0.6+0.5+0.5)/7)である。一方、参考図2で示されたCe-MCスピネルコート内に含まれる、ポイント26?32におけるTiの濃度を単純平均すると0.61at%(=(0.5+0.7+0.7+0.7+0.6+0.6+0.5)/7)である。
したがって、図15(参考図2)および表2から、Ce-MCスピネルコート全体におけるチタンの平均濃度は、酸化物スケール全体におけるチタンの平均濃度よりも低くなっているといえる。

サ 以上の検討によれば、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると言える。

「クロム(Cr)を含有するAISI441フェライト系ステンレス鋼からなる基材と、
前記基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有する酸化物スケールと
前記酸化物スケール上に設けられたCe-MCスピネルコートとを有するインターコネクトであって、
前記酸化物スケールはさらにチタン(Ti)を含有しており、
前記酸化物スケールにおいて、厚み方向の基材側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の基材とは反対側におけるチタンの濃度よりも高く、厚み方向の中央部から基材とは反対側にかけてチタンの濃度が徐々に減少しており、
前記Ce-MCスピネルコートは、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており、
前記Ce-MCスピネルコート全体におけるチタンの平均濃度は、酸化物スケール全体におけるチタンの平均濃度よりも低い、
インターコネクト。」

(3)甲3の記載事項と当該事項についての検討
ア 本件特許の出願に係る優先日前に日本国内において頒布され、特許異議申立書に添付された甲第3号証(特開2014-191928号公報)には、「セル間接続部材の製造方法およびセル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セル」(発明の名称)に関して、以下の記載がある(下線は当審で付した。また、「・・・」によって記載の省略を表す。以下同様。)。
3ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、CrおよびMnを含有する合金または酸化物からなる基材に、金属酸化物からなる保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法およびセル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セルに関する。」

3イ「【背景技術】
・・・
【0003】
インターコネクタは燃料と空気の隔壁となる部材である。
近年の開発の進展に伴い、SOFCの作動温度が下がってきている。従来の作動温度は1000℃程度であり、耐熱性の観点から基材としてランタンクロマイトに代表される金属酸化物が使用されていたが、最近は作動温度が700℃?800℃まで下がっており、合金が使用できるようになってきた。基材として合金を使用することにより、コストダウン、ロバスト性の向上が期待できる。
【0004】
前記合金としては、接合される金属酸化物の熱膨張率との整合性から、フェライト系ステンレス鋼が用いられることが多いが、耐熱性により優れたオーステナイト系ステンレス鋼であるFe-Cr-Ni合金や、ニッケル基合金であるNi-Cr合金などが用いられることもある。また、合金ではなく、(La,Ca)CrO_(3)(カルシウムドープランタンクロマイト)に代表される金属酸化物が用いられることもある。
【0005】
これらの合金等は、ほぼ例外なくCrを含んでおり、作動環境である高温大気雰囲気で表面にCr_(2)O_(3)やMnCr_(2)O_(4)の酸化被膜を形成する。この酸化被膜は経時的に膜厚が厚くなり、電気抵抗が増大するとともに、作動環境である高温大気雰囲気で6価クロムの化合物として蒸発し、空気極を被毒させて劣化を引き起こすことが知られている(Cr被毒と呼ばれる)。また、(La,Ca)CrO_(3)(カルシウムドープランタンクロマイト)を用いた場合でも合金を用いた場合よりも少ないが、Cr被毒が生じる場合がある。そこで、合金、(La,Ca)CrO_(3)(カルシウムドープランタンクロマイト)の表面に耐熱性に優れた金属酸化物材料を保護して劣化を抑制する試みがなされている。また、これらの合金等としてMnを含む材料も一般的に用いられることがある。
また、合金はSOFCの他の構成材料との熱膨張率の整合性を取るため、フェライト系ステンレスが使用されることが多い。(例:日立金属社製 ZMG232L)フェライト系ステンレスはFe、Crの他にMnを0.1?1重量%含むものが多い。」

3ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記実情から、SOFC合金インターコネクタに対して、スピネル系酸化物に代表されるSOFC作動温度付近において導電性を発現する金属酸化物材料からなる保護することは、SOFCの長期耐久性を確保する上で必須の技術となっている。スピネル系酸化物は特に緻密な構造を有するため、Crの飛散抑制効果が特に高いと考えられている。
保護膜材料としては、Co-Mn系スピネル、Zn-Co系スピネル、Zn-Co-Mn系スピネル、Zn-Mn系スピネル、スピネル酸化物でないものとしてもZnO等が用いられている。
【0009】
しかし、このような材料からなる保護膜によっても、Crの飛散抑制や、長期耐久性の向上について、さらなる改良が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明は上記実状に鑑み、より均一でかつ緻密な保護膜を形成することにより、Crの飛散を抑制し、耐久性の向上を図る技術を提供することを目的とする。」

3エ 「【課題を解決するための手段】
【0011】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、CrおよびMnを含有する合金または酸化物からなる基材に、金属酸化物からなる保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法であって、
前記基材上に、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成する塗膜形成工程を行い、前記基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件下で、前記塗膜を焼成する焼成工程を行い、前記塗膜内に前記塗膜成分とMnとが反応して生じるMn含有緻密層(以下単に緻密層と称する)を、前記基材表面に形成されるCr_(2)O_(3)層と密着形成させ、前記緻密層の厚さを1μm以上に成長させる点にある。
【0012】
〔作用効果1〕
前記基材に塗膜形成工程を行うと、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜が形成される。前記塗膜を熱処理すると、熱処理によって、ステンレスの表面に形成されるCr_(2)O_(3)酸化被膜と保護膜の間に緻密な膜が形成され、上記緻密層となる。前記熱処理は、保護膜の製造工程においても行われうるし、実使用時における発熱によっても自然に進行することが知られている。
【0013】
この緻密層は基材中のMn成分と保護膜成分が相互拡散し、反応することでできた層であるため、非常に緻密であり、酸素のバリア性が高いと考えられる。緻密層の存在により、Crの飛散(Cr被毒)の抑制による空気極劣化の低減、Cr_(2)O_(3)酸化被膜の膜厚増大速度の抑制によるオーミック抵抗増加の抑制、などが実現できる。
そのため、この緻密層を十分機能させることによって、SOFCの耐久性を延長できると考えられる。そこで、本発明者らが検討した結果、前記基材表面に形成されるCr_(2)O_(3)層と密着形成させ、前記緻密層厚さ前記を1μm以上に成長させることによって、前記緻密層は十分なCrの飛散防止を実現できるとともに抵抗増加の抑制を実現でき、好適な耐久性向上効果が期待できることがわかる。
【0014】
なお、前記焼成工程により、前記基材表面には基材に含まれるCrに由来するCr_(2)O_(3)層が形成される。このCr_(2)O_(3)層は、通常前記緻密層との密着性が高く、緻密層と基材との間における層間剥離等を防止する効果も発揮している。
【0015】
〔構成2〕
また、前記保護膜がCo、Zn、Mnから選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含むことが好ましい。
【0016】
〔作用効果2〕
保護膜材料としては、Co-Mn系スピネル、Zn-Co系スピネル、Zn-Co-Mn系スピネル、Zn-Mn系スピネル、ZnO等の、Co、Zn、Mnから選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含むものが有効に用いられる。
これらの金属酸化物成分を用いると、基材として用いられる種々材料との密着性が高く、受熱に対する耐久性が高く、かつ、緻密層を形成した際に、スピネル構造の酸素バリア性が高く、Cr飛散防止効果の高い保護膜に形成されることが明らかになっているので好ましい。本発明者らは、(Zn_(x)Co_(1-x))Co_(2)O_(4)(0.45≦x≦1.00)等のZn-Co系材料や、Co_(1.5)Mn_(1.5)O_(4)等のMn-Co系材料に代表されるものが特に有利に用いられることを既に見出している。さらに、複合酸化物として種々の化合物を検討したところ、Zn_(x)(Co_(y)Mn_((1-y)))_((3-x))O_(4)(0<x<1、0<y×(3-x)≦2)を含む保護膜は、基材、空気極等との熱膨張率の不一致(差)が小さく、特に製造工程時(保護膜の焼成時)において、一度は晒される800℃?1000℃の環境下においても基材、空気極等との熱膨張率の不一致(差)が小さいうえに、Crの飛散抑制効果がきわめて高いことを見出している。」

3オ 「【0032】
<固体酸化物形燃料電池>
本発明にかかるSOFC用セル接続部材およびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン電導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子電導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子電導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
【0033】
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子電導性の合金または酸化物からなる基材11に保護膜12を形成してあるセル接続部材1(図3に形状が断面長方形の単純形状である場合の模式図を示す)により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。・・・」

3カ 「【0038】
<セル接続部材>
前記セル接続部材1は、図1、図3に示すように、セル接続部材用の基材11の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、前記各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
【0039】
前記保護膜12は、導電性セラミックス材料を含有する塗膜形成用材料を、前記基材11に電着塗装することにより保護膜12を厚膜として形成してある。
【0040】
<保護膜>
前記保護膜12は、たとえば、Crを22%、Mnを約0.5%含むフェライト系ステンレス鋼(日立金属製ZMG232L)等からなる前記基材11の表面にたとえば、ZnCoMnO_(4)等の金属酸化物微粒子とポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)?(1.7:1)の割合で含有している混合液を用いて、アニオン電着塗装法により金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成する塗膜形成工程を行い、前記塗膜を焼成して前記塗膜中の樹脂成分を焼失させた焼成被膜を形成し、さらに前記焼成被膜を前記基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件下で焼成させて、前記基材11表面に形成されるCr_(2)O_(3)層11aと密着する金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼成工程を行うことにより形成されている。
【0041】
なお、前記塗膜形成工程はアニオン電着塗装法によったが、ディップコート、スプレーコート等他の方法によることも可能である。」

3キ 「【0042】
・・・
<実施例>
前記ステンレス鋼材からなるインターコネクタ用の基材11表面にスピネル型の金属酸化物よりなる塗膜を設けた試験片を作成し、前記試験片を各種温度で、所定時間加熱する熱処理を行うことにより、前記塗膜を焼成し(焼成工程)、保護膜12を作成した。前記保護膜12は、各試験片とも保護膜の膜厚が5?10μm程度になる条件でアニオン電着塗装し、前記保護膜12の表面に、接着層を接着して熱処理の試験を行った。各試験片について、前記保護膜12に占める緻密層12aの厚さをSEMにより測定し、熱処理による緻密層12aの変化を調べた。
【0043】
<実施例1>(B:参考)
前記金属酸化物としてZnCoMnO_(4)を用い、アニオン電着塗装により前記基材上に塗膜を形成し、1000℃で2時間焼成して保護膜12のサンプルを作成した。保護膜12の断面形状を確認したところ、図4に示すように、基材11の表面にCr_(2)O_(3)層11aが形成されるとともに、形成された塗膜が、Cr_(2)O_(3)層11aに密着する緻密層12a(本願に言うMn含有緻密層)と、塗膜表面側の多孔層とからなる保護膜12に形成されていることが分かった。この緻密層12aの厚さは約2μmであった。」

3ク 「



3ケ 「



3コ 「



イ 上記3イによれば、SOFCを構成するインターコネクタには、フェライト系ステンレス鋼、特に、耐熱性により優れたオーステナイト系ステンレス鋼が用いられることが多いが、フェライト系ステンレス鋼はCrを含むため、作動環境である高温大気雰囲気で、その表面に形成される酸化被膜Cr_(2)O_(3)が経時的に膜厚が厚くなって電気抵抗が増大し、また、6価クロムの化合物として蒸発し、空気極を被毒させて劣化を引き起こす(Cr被毒と呼ばれる)。

ウ 上記3ウによれば、上記イの実情に対して、SOFC合金インターコネクタに対し、金属酸化物材料によって保護することは必須であり、特に、スピネル系酸化物は緻密な構造を有するため、Crの飛散抑制効果が高く、具体的には、Co-Mn系スピネルや、Zn-Co-Mn系スピネルが保護膜として用いられているが、より均一でかつ緻密な保護膜を形成することにより、Crの飛散を抑制し、耐久性の向上を図ることが、本発明の課題である。

エ 上記3エによれば、上記ウの課題を解決するために、本発明においては、CrおよびMnを含有する合金からなる基材上に、金属酸化物微粒子を主成分として含有する未焼結の塗膜を形成し、前記基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件下で、前記塗膜を焼成することによって、前記塗膜内に前記塗膜成分とMnとが反応して生じるMn含有緻密層(緻密層と称される)を、前記基材表面に形成されるCr_(2)O_(3)層と密着形成させている。上記緻密層の形成により、Crの飛散(Cr被毒)の抑制による空気極劣化の低減や、Cr_(2)O_(3)酸化被膜の膜厚増大速度の抑制によるオーミック抵抗増加の抑制などが実現できる。

オ 上記3カ、3キによれば、Crを22%、Mnを約0.5%含むフェライト系ステンレス鋼(日立金属製ZMG232L)からなる基材11の表面に、ZnCoMnO_(4)金属酸化物微粒子を含有する混合液を用いて、塗膜を形成し、前記基材に含まれるMnが前記塗膜成分と反応する条件下で焼成することにより、前記基材11表面にCr_(2)O_(3)層11aが形成されるとともに、当該Cr_(2)O_(3)層11aに密着する緻密層12a(Mn含有緻密層)と、塗膜表面側の多孔層とからなる保護膜12が形成される。
このようにして形成されたインターコネクタの多層構造は、上記3コの図4に示されている。図4によれば、基材11の表面には、Cr_(2)O_(3)層11aが形成されるとともに、ZnCoMnO_(4)金属酸化物微粒子を含有する塗膜が焼成されて、緻密層12aを含む保護膜12が形成されている。
ここで、上記塗膜の原料としてZnCoMnO_(4)金属酸化物微粒子が用いられているので、焼成後に形成された保護膜12は、Zn-Co-Mn系スピネルとなっているといえる。

カ 上記イ?カの検討によれば、甲3には、オーステナイト系ステンレス鋼が用いられるインターコネクタの製造において、Cr被毒の抑制による空気極劣化を低減し、Cr_(2)O_(3)酸化被膜の膜厚増大速度の抑制によるオーミック抵抗増加の抑制するために、Cr及びMnを含むフェライト系ステンレス鋼からなる基材11の表面に、ZnCoMnO_(4)金属酸化物微粒子を含む塗膜を形成し、焼成することによって、上記基材の表面に、Cr_(2)O_(3)層を形成するとともに、緻密層を含むZn-Co-Mn系スピネルである保護膜を形成することが記載されている。

(4)甲9の記載事項と当該事項についての検討
ア 本件特許の出願に係る優先日前に外国において頒布され、特許異議申立書に添付された甲第9号証(国際公開第2013/172451号)には、「導電部材およびセルスタックならびに電気化学モジュール、電気化学装置」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
9ア 「[0001] 本発明は、導電基体の表面が被覆層で被覆された導電部材およびセルスタックならびに電気化学モジュール、電気化学装置に関する。」

9イ 「[0013]先ず、導電部材として燃料電池用集電部材を備えてなるセルスタック装置について図1を用いて説明する。セルスタック装置1は、固体酸化物形の燃料電池セル3を有している。この燃料電池セル3は、内部にガス流路12を有し、一対の対向する主面をもつ全体的に見て柱状の導電性支持体7と、この導電性支持体7の一方の主面上に内側電極層である燃料極層8と、固体電解質層9と、外側電極層である酸素極層10とをこの順に配置してなる発電部を備えている。導電性支持体7の他方の主面には、インターコネクタ11を配置し、柱状(中空平板状)の燃料電池セル3が構成されている。
[0014]そして、これらの燃料電池セル3の複数個を1列に配列し、隣接する燃料電池セル3間に燃料電池用集電部材(導電部材)4(以下、単に集電部材4という)を配置することで、燃料電池セル3同士を電気的に直列に接続してなるセルスタック2が構成されている。
[0015]燃料電池セル3と集電部材4とは、詳しくは後述するが、導電性接合材13を介して接合されており、それにより、複数個の燃料電池セル3を、集電部材4を介して電気的および機械的に接合して、セルスタック2を構成している。
・・・
[0019]セルスタック装置1は、燃料電池セル3の配列方向Xの両端から、集電部材4を介してセルスタック2を挟持するように、弾性変形可能な導電性の挟持部材5を配置して構成され、この挟持部材5の下端部は、ガスタンク6に固定されている。挟持部材5は、セルスタック2の両端に位置するように設けられた平板部5aと、燃料電池セル3の配列方向xに沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック2(燃料電池セル3)の発電により生じる電流を引き出すための電流引出部5bとを有している。」

9ウ 「[0032]次に、集電部材4について図2?4を用いて説明する。図2に示す集電部材4は、隣接する一方の燃料電池セル3と接合される複数の第1集電片4aと、隣接する他方の燃料電池セル3と接合される複数の第2集電片4bと、複数の第1集電片4aおよび複数の第2集電片4bの一端同士を連結する第1連結部4cと、複数の第1集電片4aおよび複数の第2集電片4bの他端同士を連結する第2連結部4dとを一組のユニットとしている。そして、これらのユニットの複数組が、燃料電池セル3の長手方向に導電性連結片4eにより連結されて構成されている。第1集電片4aおよび第2集電片4bは、燃料電池セル3に接合される部位を示し、これらの部位が燃料電池セル3により電力を取り出す集電部4fとなっている。また、第1集電片4aと第2集電片4bとの間が、酸素含有ガスが通過する空間とされている。」

9エ 「[0060]次に、セルスタック装置1を収納容器21内に収納してなる燃料電池モジュール20について図8を用いて説明する。
[0061]図8に示す燃料電池モジュール20は、燃料電池セル3にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器22をセルスタック2の上方に配置して構成されている。そして、改質器22で生成された燃料ガスは、ガス流通管23を介してガスタンク6に供給され、ガスタンク6を介して燃料電池セル3の内部に設けられたガス流路12に供給される。
[0062]なお、図8においては、収納容器21の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されているセルスタック装置1および改質器22を後方に取り出した状態を示している。ここで、図8に示した燃料電池モジュール20においては、セルスタック装置1を、収納容器21内にスライドして収納することが可能である。」

9オ 「[0064]次に、燃料電池モジュール20と、燃料電池モジュール20を作動させるための補機(図示せず)とを外装ケースに収納してなる燃料電池装置25について図9を用いて説明する。
[0065]図9に示す燃料電池装置25は、支柱26と外装板27から構成される外装ケース内を仕切板28により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール20を収納するモジュール収納室29とし、下方側を燃料電池モジュール20を作動させるための補機を収納する補機収納室30として構成されている。なお、補機収納室30に収納する補機は省略している。」

9カ 「




9キ 「



9ク 「



9ケ 「


イ 上記9イによれば、図1(a)(b)に示されているように、固体酸化物形の燃料電池セル3の複数個を1列に配列し、隣接する燃料電池セル3間に燃料電池用集電部材(導電部材)4を配置することで、燃料電池セル3同士を電気的に直列に接続してなるセルスタック2が構成される。
そして、集電部材4を介してセルスタック2を挟持するように、弾性変形可能な導電性の挟持部材5を配置し、この挟持部材5の下端部をガスタンク6に固定することによって、セルスタック装置1が構成される。

ウ 上記9ウによれば、上記イに記載した集電部材4は、図2に示されるような、略はしご形状の部材である。

エ 上記9エによれば、図8に示されているように、上記イに記載したセルスタック装置1を収納容器21内に収納することにより、燃料電池モジュール20が構成される。

オ 上記9オによれば、図9に示されているように、燃料電池モジュール20と、燃料電池モジュール20を作動させるための補機(図示せず)とを外装ケースに収納することにより、燃料電池装置25が構成される。

2 取消理由として採用した申立理由1?4(新規性進歩性)について
2-1 本件訂正前の請求項1と当該請求項1を引用する請求項4?6に係る特許について
ア 上記第2で検討したとおり、本件訂正の訂正事項1によって、請求項1が削除されるとともに、本件訂正の訂正事項4によって、当該請求項1を引用する請求項4?6も削除されたので、本件訂正前の請求項1と当該請求項1を引用する請求項4?6に係る申立理由1、2、4に関して、本件訂正後に、検討する対象となる請求項が存在しない。

2-2 本件訂正後の請求項2と当該請求項2を引用する請求項4?6に係る特許について
ア 上記第2で検討したとおり、本件訂正の訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、当該請求項1を引用しない記載とする訂正であり、実質的な記載内容を何ら変更するものではない。

イ そして、本件訂正前の請求項2と当該請求項2を引用する請求項4?6に係る特許については、異議が申し立てられておらず、取消理由も通知されていないので、本件訂正後の請求項2と当該請求項2を引用する請求項4?6に係る特許について、検討すべき申立理由又は取消理由は存在しない。

2-3 本件訂正後の請求項3と当該請求項3を引用する請求項4?6に係る特許について
(1)甲第1号証を主たる引用例とした進歩性についての取消理由
ア 本件発明3と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「クロム(Cr)を含有するAISI441からなる基材」は、本件発明3の「クロム(Cr)を含有する基材」に相当する。

(イ)甲1発明の「前記基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有する酸化物スケール」は、本件発明3の「該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を含有する第1層」に相当する。

(ウ)上記(イ)のとおり、甲1発明の「酸化物スケール」は、本件発明3の「第1層」に相当するから、甲1発明の「前記酸化物スケールはさらにチタン(Ti)を含有しており」は、本件発明3の「該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており」に相当する。

(エ)上記(イ)のとおり、甲1発明の「酸化物スケール」は、本件発明3の「第1層」に相当しており、甲1発明の「(Mn,Co)スピネルコート」はマンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有するものであるから、甲1発明の「前記酸化物スケール上に設けられた、(Mn,Co)スピネルコートとを有する」と、本件発明3の「前記第1層上に第2層が設けられており、該第2層は亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており」は、「前記第1層上に第2層が設けられており、該第2層は」「マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有して」いる点で共通する。

(オ)本件発明3は「第2層全体におけるチタンの濃度」なる特定事項を備えているところ、層全体におけるチタン濃度とはどのように定義される濃度か、この記載だけでは不明であるが、本件特許明細書の次の記載

「【0043】
また、第2層6bが亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有する場合、第2層6b全体におけるチタンの平均濃度は、第1層6a全体におけるチタンの平均濃度よりも少ないとよい。第2層6bがチタンを含有している場合には、チタンを含有する第1層6aとの接合力が向上する。一方で、亜鉛、マンガンおよびコバルトの組み合わせの合金は導電性がチタンと比べて高い。よって、第2層6b全体におけるチタンの平均濃度を少なくすることによって、高い導電性を維持することができる。
【0044】
ここで、「第2層6b全体におけるチタンの平均濃度は、第1層6a全体におけるチタンの平均濃度よりも少ない」ことの確認方法を以下に示す。まず前述と同様のマッピング画像を得る。そして、マッピングした画像上において、第2層6b全体が第1層6a全体よりも寒色で示されることとなる。」

を参照すると、「第2層全体におけるチタンの濃度」とは「第2層全体におけるチタンの平均濃度」を意味するものと解することができる。
したがって、上記(イ)のとおり、甲1発明の「酸化物スケール」は、本件発明3の「第1層」に相当しており、また、上記(エ)のとおり、甲1発明の「(Mn,Co)スピネルコート」は、本件発明3の「第2層」に相当することを勘案すると、甲1発明の「前記(Mn,Co)スピネルコート全体におけるチタンの平均濃度は、酸化物スケールにおけるチタンの平均濃度よりも低い」は、本件発明3の「前記第2層全体におけるチタンの濃度は、前記第1層全体におけるチタンの平均濃度よりも少ない」に相当する。

(カ)甲1発明の「インターコネクト」は、燃料電池を構成する導電性の部材であるから、本件発明3の「導電部材」に相当する。

イ 上記アの検討によれば、本件発明3は甲1発明と次の点で一致し、また、相違する。

<一致点>
「クロム(Cr)を含有する基材と、該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を含有する第1層とを有しており、該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層上に第2層が設けられており、該第2層はマンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており、前記第2層全体におけるチタンの濃度は、前記第1層全体におけるチタンの平均濃度よりも少ない導電部材。」

<相違点1>
「第1層」の「チタン濃度」の分布について、本件発明3は「厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い」のに対して、甲1発明では「厚み方向の中央部から基材とは反対側にかけてチタンの濃度が徐々に減少して」いる点。

<相違点2>
「マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有」する「第2層」が、本件発明3では、「マンガン(Mn)およびコバルト(Co)」以外に「亜鉛(Zn)」を含有するのに対して、甲1発明では、「亜鉛(Zn)」を含有するものではない点。

ウ 相違点についての判断
(ア)事案に鑑みて、上記相違点1について検討するに、「第1層」の「チタン濃度」の分布について、「厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い」ものであることに代えて、「厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い」ものとすることについて、甲1には記載も示唆もされていないし、甲3、甲9やその他の甲号証のいずれにおいても記載も示唆もされていない。
また、「第1層」の「チタン濃度」の分布について、「厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い」ものとすることが、固体酸化物形燃料電池における周知の技術であるともいえない。

(イ)そうすると、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明と、甲3、甲9やその他の甲号証に記載された事項または技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、請求項3を引用することにより本件発明3の特定事項の全てを備える本件発明4?6についても、同様の理由によって、甲1発明と甲3、甲9やその他の甲号証に記載された事項または技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小活
以上のとおり、本件発明3と、本件発明3を引用する本件発明4?6は、甲1とその他甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正後の請求項3と、当該請求項3を引用する請求項4?6に係る特許は、申立理由3、4によって取り消すことはできない。

(2)甲第2号証を主たる引用例とした進歩性についての取消理由
ア 本件発明3と甲2発明の対比
(ア)甲2発明の「クロム(Cr)を含有するAISI441フェライト系ステンレス鋼からなる基材」は、本件発明3の「クロム(Cr)を含有する基材」に相当する。

(イ)甲2発明の「前記基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有する酸化物スケール」は、本件発明3の「該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を含有する第1層」に相当する。

(ウ)上記(イ)のとおり、甲2発明の「酸化物スケール」は、本件発明3の「第1層」に相当するから、甲2発明の「前記酸化物スケールはさらにチタン(Ti)を含有しており」は、本件発明3の「該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており」に相当する。

(エ)上記(イ)のとおり、甲2発明の「酸化物スケール」は、本件発明3の「第1層」に相当しており、甲2発明の「Ce-MCスピネルコート」はマンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有するものであるから、甲2発明の「前記酸化物スケール上に設けられたCe-MCスピネルコートとを有する」と、本件発明3の「前記第1層上に第2層が設けられており、該第2層は亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており」は、「前記第1層上に第2層が設けられており、該第2層は」「マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有して」いる点で共通する。

(オ)本件発明3は「第2層全体におけるチタンの濃度」なる特定事項を備えているところ、層全体におけるチタン濃度とはどのように定義される濃度か、この記載だけでは不明であるが、上記(1)ア(オ)で検討した理由と同様の理由により、「第2層全体におけるチタンの濃度」とは「第2層全体におけるチタンの平均濃度」を意味するものと解することができる。
したがって、上記(イ)のとおり、甲2発明の「酸化物スケール」は、本件発明3の「第1層」に相当しており、また、上記(エ)のとおり、甲2発明の「Ce-MCスピネルコート」は、本件発明3の「第2層」に相当することを勘案すると、甲2発明の「前記Ce-MCスピネルコート全体におけるチタンの平均濃度は、酸化物スケール全体におけるチタンの平均濃度よりも低い」は、本件発明3の「前記第2層全体におけるチタンの濃度は、前記第1層全体におけるチタンの平均濃度よりも少ない」に相当する。

(カ)甲2発明の「インターコネクト」は、燃料電池を構成する導電性の部材であるから、本件発明3の「導電部材」に相当する。

イ 上記アの検討によれば、本件発明3は甲2発明と次の点で一致し、また、相違する。

<一致点>
「クロム(Cr)を含有する基材と、該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を含有する第1層とを有しており、該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層上に第2層が設けられており、該第2層はマンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており、前記第2層全体におけるチタンの濃度は、前記第1層全体におけるチタンの平均濃度よりも少ない導電部材。」

<相違点3>
「第1層」の「チタン濃度」の分布について、本件発明3は「厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い」のに対して、甲2発明では「厚み方向の中央部から基材とは反対側にかけてチタンの濃度が徐々に減少して」いる点。

<相違点4>
「マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有」する「第2層」が、本件発明3では、「マンガン(Mn)およびコバルト(Co)」以外に「亜鉛(Zn)」を含有するのに対して、甲2発明では、「亜鉛(Zn)」を含有するものではない点。

ウ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について検討するに、上記相違点3は上記相違点1と同じであるから、上記(1)ウ(ア)で検討したことと同様のことがいえる。そうすると、上記相違点4について検討するまでもなく、上記(1)ウ(イ)で検討した理由と同様の理由によって、本件発明3は、甲2発明と、甲3、甲9やその他の甲号証または技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、請求項3を引用することにより本件発明3の特定事項の全てを備える本件発明4?6についても、同様の理由によって、甲2発明と、甲3、甲9やその他の甲号証または技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小活
以上のとおり、本件発明3と、本件発明3を引用する本件発明4?6は、甲2とその他甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正後の請求項3と、当該請求項3を引用する請求項4?6に係る特許は、申立理由3、4によって取り消すことはできない。

3 取消理由に採用しなかった申立理由5(サポート要件)について
ア 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ サポート要件の取消理由について上記アの手法に従って検討するにあたり、まず、本件特許明細書の記載を確認する。本件特許明細書には次の記載がある。

a「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年では、より発電効率の向上したモジュール収納装置が求められており、その1態様として、導電性が向上した導電部材、さらにはこれを備えるセルスタック装置、モジュールおよびモジュール収納装置が求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、導電性が向上した導電部材、これを備えるセルスタック装置、モジュールおよびモジュール収納装置を提供することにある。」
b「【0024】
そして、本実施形態の導電部材1においては、第1層6aがチタンを含有している。それにより、第1層6aの導電性を向上することができ、ひいては導電部材1の導電性を向上することができる。なお、第1層6aの厚みは、クロムの拡散を抑制する点から0.1μm?3μmとされている。」
c「【実施例】
【0079】
酸化第二クロムの粉末と、二酸化チタンの粉末と、バインダーを混合し、還元雰囲気において温度1500℃で2時間焼成して20×5×5mmの第1層の試料を作製した。この際、二酸化チタンの粉末は、第1層に含有されているチタンの割合が、Ti/(Ti+Cr)で図7に示す量となるように添加した。なお、二酸化チタンを添加した試料においては、透過型電子顕微鏡にて、チタンを含有している第1層であることを確認した。
【0080】
得られた各試料の導電率を、4端子法で還元雰囲気にて測定して、各試料の各温度における導電率を求め、結果を、縦軸に導電率をlogにて表し、横軸に1000/絶対温度として示した。なお、グラフにおいて右に行くほど温度が低く、上に行くほど導電率が高いことを意味している。
【0081】
図7に示した通り、二酸化チタンを含まない試料に対し、第1層にチタンが含有した各試料(第1層に含有されているチタンの割合が、Ti/(Ti+Cr)で0.1%以上)においては、特に温度が低い領域(グラフの右側)において、導電率が高くなっており、第1層がチタンを含有していることで、導電性を向上することができることが確認できた。」
d「[図7]


ウ 本願発明において解決しようとする課題(以下、単に「課題」という。)は、上記aの記載によれば、「導電性の向上した導電部材を提供すること」である。

エ 続いて、上記課題を解決できると認識できる範囲のものについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて検討する。
上記b?dの記載によれば、基材上に形成された酸化第二クロムを主成分とする第1層は、チタンを含有することにより、その導電性を向上しているものである。そして、このことは、チタンの割合Ti/(Ti+Cr)を変えた複数の第1層の試料について、その導電率を測定した図7を参照すると、チタンを含んでいない実施例(◆で表示されている)については、チタンを含有する他の実施例よりも導電率が低くなっていることが見て取れることにより、確認できる。

オ そして、本件発明2、3には、「該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており」との特定事項を備えるものであるから、第1層がチタンを含有しないものに比べて、導電性が向上していることは明らかである。

カ したがって、本件発明2、3には、発明の課題を解決するための手段が反映されているから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しているものということはできない。

キ また、本件発明2、3を引用することにより、本件発明2、3と同様に、「第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており」との特定事項を備える本件発明4?6についても、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しているものということはできない。

ク なお、本件発明2の「前記第1層において、厚み方向の前記基材側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度よりも高い」との特定事項については、本件特許明細書の段落【0032】の記載「第1層6aにおいて、厚み方向の基材5側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高いとよい。これにより、第1層6aと基材5との境界において導電性を向上させることができる。」によれば、第1層と基材との境界において導電性を向上させるという別の効果を奏するものであり、同【0036】の記載「第1層6aにおいて、厚み方向の基材5側におけるチタンの濃度は、厚み方向の基材5とは反対側におけるチタンの濃度よりも高いとよい。これにより、第1層6aにおいて基材5側に比較的多くのチタンを有しているので、基材5が上述の材料に加えてチタンを含有する場合、チタンを含有する基材5との間で接合力を向上させることができる。」によれば、第1層と基材との間で接合力を向上させるというさらに別の効果を奏するものであり、いずれにおいても、上記課題とは異なる技術的意義をもたらすものであるので、本件発明2が上記特定事項を備えることが、サポート要件についての上記判断について何ら影響を与えるものではない。

ケ 小括
以上のとおり、取消理由に採用されなかった上記申立理由5によっては、本件訂正後の請求項2?6に係る特許を取り消すことはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は適法なものである。
そして、特許異議申立書に記載した申立理由、及び取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件訂正後の請求項3?6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項3?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項1と当該請求項1を引用する請求項4?6に係る特許についての特許異議の申立ては却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
クロム(Cr)を含有する基材と、
該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を主成分として含有する第1層とを有しており、
該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層において、厚み方向の前記基材側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部及び厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度よりも高く、厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高い
導電部材。
【請求項3】
クロム(Cr)を含有する基材と、
該基材の表面に設けられた、酸化第二クロム(Cr_(2)O_(3))を含有する第1層とを有しており、
該第1層はさらにチタン(Ti)を含有しており、前記第1層において、厚み方向の前記基材とは反対側におけるチタンの濃度は、厚み方向の中央部におけるチタンの濃度よりも高いとともに、
前記第1層上に第2層が設けられており、
該第2層は亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)を含有しており、
前記第2層全体におけるチタンの濃度は、前記第1層全体におけるチタンの平均濃度よりも少ない
導電部材。
【請求項4】
複数のセルと、
複数の該セルの間に配置され、隣接する該セル同士を電気的に接続する請求項2又は請求項3に記載の導電部材とを有している
セルスタック装置。
【請求項5】
収納容器と、
該収納容器に収納された請求項4に記載のセルスタック装置とを有している
モジュール。
【請求項6】
外装ケースと、
該外装ケース内に収納された請求項5に記載のモジュールと、
前記外装ケース内に収納された、前記モジュールを作動させるための補機とを有している
モジュール収納装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-15 
出願番号 特願2016-557821(P2016-557821)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (H01M)
P 1 652・ 537- YAA (H01M)
P 1 652・ 113- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松本 陶子  
特許庁審判長 中澤 登
特許庁審判官 池渕 立
平塚 政宏
登録日 2018-08-10 
登録番号 特許第6383003号(P6383003)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 導電部材、セルスタック装置、モジュール、モジュール収納装置および導電部材の製造方法  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ