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審決分類 |
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) G09F 審判 全部申し立て 2項進歩性 G09F 審判 全部申し立て 発明同一 G09F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G09F |
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管理番号 | 1360466 |
異議申立番号 | 異議2017-700916 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-09-28 |
確定日 | 2020-01-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6102313号発明「画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6102313号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6102313号の請求項1ないし4、6、7に係る特許を取り消す。 同請求項5、8に係る特許を維持する。 |
理由 |
本件特許第6102313号の請求項1-4に係る特許についての出願(特願2013-28062号)は、平成25年2月15日に出願されたものであって、平成29年3月10日に設定登録がなされ、平成29年3月29日に特許掲載公報が発行され、その後、平成29年9月28日に、特許異議申立人鈴木美香により、その請求項1-4に係る特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。その後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年12月27日:取消理由通知(平成30年1月9日発送) 平成30年 3月 9日:訂正請求書・意見書(特許権者) 平成30年 5月18日:意見書(特許異議申立人) 平成30年 8月27日:取消理由通知(同年8月30日発送) 平成30年10月29日:訂正請求書・意見書(特許権者) 平成30年12月20日:意見書(特許異議申立人) 平成31年 3月29日:取消理由通知(予告 同年4月4日発送) 令和 1年 6月 3日:訂正請求書・意見書(特許権者) 令和 1年 7月29日:意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和1年6月3日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、平成30年3月9日付けの訂正請求、及び平成30年10月29日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 願書に添付した特許請求の範囲の請求項1-4に、 「【請求項1】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記2枚の基材フィルムは、それらの配向主軸が互いに略平行であるか、又は互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置。 【請求項2】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに直交する場合を除く)。 【請求項3】 前記2枚の基材フィルムのリタデーションの差が3500nm以上である、請求項1又は2に記載の画像表示装置。 【請求項4】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1?3のいずれかに記載の画像表示装置。」(以下、その順に「訂正前請求項1」等という。) と記載されているのを、 「【請求項1】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項2】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項3】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置、及び前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)。 【請求項4】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項5】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項2に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項6】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)。 【請求項7】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項3に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項8】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が45度以下である、 請求項6に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)。」(注:下線は、特許権者が訂正箇所に付した下線である。) に訂正することを求めるものであり、本件訂正請求は、以下の訂正事項からなる。 訂正事項1:請求項1を新たな請求項1にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)「前記2枚の基材フィルムは、それらの配向主軸が互いに略平行であるか、又は互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり、」と特定するものを、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり」にする訂正事項(以下「訂正事項1-1」という。)。 (イ)「前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項1-2」という。)。 (ウ)「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項1-3」という。) (エ)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く)」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項1-4」といい、訂正事項1-1?訂正事項1-4をまとめて、「訂正事項1」という。)。 訂正事項2:請求項2を新たな請求項2にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり」と特定するものを、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、」にする訂正事項(以下「訂正事項2-1」という。)。 (イ)「前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項2-2」という。)。 (ウ)「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項2-3」という。)。 (エ)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに直交する場合を除く)」と特定するものを、「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く)」にする訂正事項(以下「訂正事項2-4」といい、訂正事項2-1?訂正事項2-4をまとめて、「訂正事項2」という。)。 訂正事項3:請求項1を引用する請求項3を新たな請求項3にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)請求項1の記載を引用しないものとする訂正事項(以下「訂正事項3-1」という。 (イ)「前記2枚の基材フィルムは、それらの配向主軸が互いに略平行であるか、又は互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり」、「前記2枚の基材フィルムのリタデーションの差が3500nm以上である」と特定するものを、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり」にする訂正事項(以下「訂正事項3-2」という。) (ウ)「前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項3-3」という。)。 (エ)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置、及び前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項3-4」といい、訂正事項3-1?訂正事項3-4をまとめて、「訂正事項3」という。)。 訂正事項4:請求項1を引用する請求項4を、新たな請求項1を引用する新たな請求項4にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項4-1」という。)。 (イ)引用先の請求項1の訂正に伴う「訂正事項1-1」?「訂正事項1-3」(以下、「訂正事項4-1」、「訂正事項1-1」?「訂正事項1-3」をまとめて「訂正事項4」という。) 訂正事項5:請求項2を引用する請求項4を、新たな請求項2を引用する新たな請求項5にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項5-1」という。)。 (イ)引用先の請求項2の訂正に伴う「訂正事項2-1」?「訂正事項2-3」(以下、「訂正事項5-1」、「訂正事項2-1」?「訂正事項2-3」をまとめて「訂正事項5」という。) 訂正事項6:請求項2を引用する請求項3を新たな請求項6にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)請求項2の記載を引用しないものとする訂正事項(以下「訂正事項6-1」という。)。 (イ)「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であ」り、「前記2枚の基材フィルムのリタデーションの差が3500nm以上である」と特定されているものを、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり」に訂正する訂正事項(以下「訂正事項6-2」という。)。 (ウ)「前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項6-3」という。)。 (エ)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに直交する場合を除く)」と特定するものを、「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)」にする訂正事項(以下「訂正事項6-4」といい、「訂正事項6-1」?「訂正事項6-4」をまとめて、「訂正事項6」という。)。 訂正事項7:請求項1、3を引用する請求項4を、新たな請求項3を引用する新たな請求項7にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項7-1」という。)。 (イ)引用先の請求項3の訂正に伴う「訂正事項3-1」?「訂正事項3-3」(以下、「訂正事項7-1」、「訂正事項3-1」?「訂正事項3-3」をまとめて「訂正事項7」という。) 訂正事項8:請求項2、3を引用する請求項4を、新たな請求項6を引用する新たな請求項8にする訂正は、以下の訂正事項からなる。 (ア)「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が45度以下である」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項8-1」という。)。 (イ)「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)」との特定事項を追加する訂正事項(以下「訂正事項8-2」という。)。 (ウ)引用先の請求項6の訂正に伴う「訂正事項6-1」、「訂正事項6-2」(以下、「訂正事項8-1」、「訂正事項8-2」、「訂正事項6-1」、「訂正事項6-2」をまとめて「訂正事項8」という。)。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (1)訂正の目的 ア 訂正事項1 (ア)「訂正事項1-1」は、選択肢の一方を削除するとともに、数値範囲を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)「訂正事項1-2」?「訂正事項1-4」は、何れも、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2 (ア)「訂正事項2-1」は、数値範囲を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)「訂正事項2-2」?「訂正事項2-3」は、何れも、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)「訂正事項2-1」により、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上」のものに特定され、「訂正事項2-3」により、「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」と特定されて前記角が互いに直交する場合が除かれていることを踏まえると、「訂正事項2-4」は、実質的に、「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く)」との特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 訂正事項3 (ア)「訂正事項3-1」は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (イ)「訂正事項3-2」は、選択肢の一方を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)「訂正事項3-3」、「訂正事項3-4」は、何れも、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 エ 訂正事項4 (ア)「訂正事項4-1」は、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)「訂正事項1-1」?「訂正事項1-3」は、上記アで検討したとおり、何れも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 オ 訂正事項5 (ア)「訂正事項5-1」は、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)「訂正事項2-1」?「訂正事項2-3」は、上記イで検討したとおり、何れも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 カ 訂正事項6 (ア)「訂正事項6-1」は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (イ)「訂正事項6-2」は、選択肢の一方を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)「訂正事項6-3」は、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)「訂正事項6-4」は、実質的に、「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置」「を除く)」との特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 キ 訂正事項7 (ア)「訂正事項7-1」は、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)「訂正事項3-1」は、上記ウで検討したとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、「訂正事項3-2」、「訂正事項3-3」は、上記ウで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ク 訂正事項8 (ア)「訂正事項8-1」、「訂正事項8-2」は、特定事項を追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)「訂正事項6-1」は、上記カで検討したとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、「訂正事項6-2」は、上記カで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項の有無 ア 本件明細書には以下の記載がある。 (ア)「【0016】 本書において、単一の部材に複数の配向フィルム(フィルム群)が使用される場合、それらは1枚のフィルムとみなす。ここで、部材とは、例えば、偏光子保護フィルム、光源側飛散防止フィルム、光源側基材フィルム、視認側基材フィルム、視認側飛散防止フィルム等の機能的及び/又は目的の観点から別個の部材と判断されるものを意味する。 【0017】 画像表示装置が表示する画像における虹斑等の色調の乱れを抑制するという観点から、前記2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションの差は、好ましくは1800nm以上、好ましくは2500nm以上、好ましくは3200nm以上、好ましくは3500nm以上、好ましくは4000nm以上、好ましくは5000nm以上である。 【0018】 画像表示装置が表示する画像における虹斑等の色調の乱れを抑制するという観点から、前記2枚の高リタデーション配向フィルムは、それらの配向主軸が互いに略平行であるように配置されることが好ましい。よって、2枚の配向フィルムの配向主軸が形成する角度(2枚の高リタデーション配向フィルムが同一平面上にあると仮定する)は、好ましくは0度±20度以下であり、好ましくは0度±15度以下であり、好ましくは0度±10度以下、好ましくは0度±5度以下であり、好ましくは0度±3度以下であり、好ましくは0度±2度以下であり、好ましくは0度±1度以下であり、好ましくは0度である。尚、本書において、「以下」という用語は、「±」の次の数値にのみかかることを意味する。よって、前記「0度±20度以下」とは、0度を中心に上下20度の範囲での変動を許容することを意味する。 【0019】 上記のように2枚の高リタデーション配向フィルムは、互いの配向主軸が平行であることが好ましいが、2枚のフィルムのリタデーション差が大きいほど、上記角度の許容範囲は大きくなる。2枚のフィルムのリタデーション差が3500nm以上、好ましくは4000nm以上であれば、上記角度に関係なく虹斑を抑制できる。 【0020】 虹斑を抑制するという観点から2枚の高リタデーション配向フィルムのうち、少なくとも1枚は、その配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)が略45度であることが好ましい。具体的には、前記角は、45度±30度以下であり、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10度以下、好ましくは45度±7度以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、好ましくは45度である。2枚の高リタデーション配向フィルムのうち、より高いリタデーションを有する配向フィルムについて上記の位置関係を満たすようにすることが好ましい。」(下線は、当審が付加した。以下、同様である。) (イ)「【0106】 上記表1に示される通り、光源側基材フィルム及び視認側基材フィルムとして3000nm以上のリタデーションを有する配向フィルムを用い、各配向フィルムのリタデーションが同一である場合、明確な虹斑が発生し、視認性が顕著に低下することが確認された。一方、2枚の配向フィルムのリタデーションの値に1800nm以上の差をつけることにより、虹斑の発生が抑制され、その効果はリタデーションの差をより高くすることにより顕著になることが確認された。また、2枚の配向フィルムのリタデーション差が約3500nm以上、特に4000nm以上であれば、2枚の配向フィルムの配向主軸が形成する角が45度であっても虹斑が目立たず、さらにフィルムの配向角を大きくしても虹斑が目立たないことが確認された。…」 (ウ)表1は以下のとおりである。 イ 訂正事項1 (ア)訂正事項1-1:選択肢の一方を削除することは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。また、本件明細書の表1に記載された試験No.5のリタデーションの差は、「1900nm」であるから、「その差が1900nm以上」にすることは、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。よって、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (イ)訂正事項1-2:上記ア(ア)【0020】には、虹斑を抑制するという観点から高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角は、45度±30度以下であることが記載されている。よって、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (ウ)訂正事項1-3:本件明細書の表1に記載された試験No.5には、視認側の配向フィルムを回転させ、その配向主軸と光源側の配向フィルムの配向主軸とが形成する角による虹斑の程度を評価した結果として、概ね30度以下で虹斑が目立たなかったことが記載されている。よって、訂正事項1-3は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (エ)訂正事項1-4:上記ア(ア)【0018】には、虹斑等の色調の乱れを抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角度は、好ましくは0度±20度以下であり、…、好ましくは0度±1度以下であり、好ましくは0度であることが記載されている。してみると、訂正事項1-4は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 ウ 訂正事項2 (ア)訂正事項2-1:訂正事項1-1と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (イ)訂正事項2-2:訂正事項1-2と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (ウ)訂正事項2-3:訂正事項1-3と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (エ)訂正事項2-4:上記ア(ア)【0018】には、虹斑等の色調の乱れを抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角度は、好ましくは0度±20度以下であり、…、好ましくは0度±3度以下であり、…、好ましくは0度であることが記載されている。してみると、訂正事項2-4は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 エ 訂正事項3 (ア)訂正事項3-1:請求項1の記載を引用しないものとする訂正事項であるから、訂正事項3-1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (イ)訂正事項3-2:選択肢の一方を削除することは、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (ウ)訂正事項3-3:訂正事項1-2と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (エ)訂正事項3-4:「前記2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置」を除くことは、訂正事項1-4と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、上記ア(ア)【0019】には、2枚のフィルムのリタデーション差が3500nm以上…であれば、上記角度に関係なく虹斑を抑制できることが記載されている。してみると、「前記2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く」ことは、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 してみると、訂正事項3-4は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 オ 訂正事項4 訂正事項4-1:上記ア(ア)【0018】には、虹斑等の色調の乱れを抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角度は、好ましくは0度±20度以下であり、…、好ましくは0度±5度以下であり、…、好ましくは0度であることが記載されている。してみると、訂正事項4-1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 カ 訂正事項5 訂正事項5-1:上記ア(ア)【0018】には、虹斑等の色調の乱れを抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角度は、好ましくは0度±20度以下であり、…、好ましくは0度であることが記載されている。してみると、訂正事項5-1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 キ 訂正事項6 (ア)訂正事項6-1:請求項2の記載を引用しないものとする訂正事項であるから、訂正事項6-1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (イ)訂正事項6-2:選択肢の一方を削除することは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 (ウ)訂正事項6-3:訂正事項1-2と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (エ)訂正事項6-4:「前記2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置」を除くことは、訂正事項2-4と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、「前記2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く」ことは、訂正事項3-4の後半部分と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 ク 訂正事項7 訂正事項7-1は、訂正事項4-1と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 ケ 訂正事項8 (ア)訂正事項8-1:上記ア(ア)【0019】には、2枚のフィルムのリタデーション差が3500nm以上であれば、角度に関係なく虹斑を抑制できることが記載され、上記ア(イ)【0106】には、2枚の配向フィルムのリタデーション差が約3500nm以上であれば、2枚の配向フィルムの配向主軸が形成する角が45度であっても虹斑が目立たないことが記載されている。してみると、訂正事項8-1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (イ)訂正事項8-2:訂正事項5-1と同様に、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1?8はいずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 一群の請求項について 願書に添付した特許請求の範囲の請求項1-4は、特許法施行規則第45条の4で定める関係を有する一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求するものである。 4 訂正のまとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び第9項で準用する第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8〕についての訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項2】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項3】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置、及び前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)。 【請求項4】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項5】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項2に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項6】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)。 【請求項7】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項3に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項8】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が45度以下である、 請求項6に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)。」(以下、その順に「本件発明1」等といい、本件発明1-8を合わせて「本件発明」という。) 第4 取消理由、異議申立理由の概要 1 取消理由の概要 請求項1-6(注:平成30年10月29日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-6である。以下、それぞれ、「旧請求項1」等という。)に係る特許に対して、当審が平成31年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由(予告)の概要は次のとおりである。 旧請求項1-6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。よって、旧請求項1-6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 刊行物等 ・特開2004-5540号公報(以下「引用例1」という。) ・特開2011-107198号公報(甲第1号証、以下「引用例2」という。) ・特開平6-258634号公報(以下「引用例3」という。) ・特開2005-157082号公報(甲第4号証、以下「引用例4」という。) ・特開2004-170875号公報(以下「引用例5」という。) ・富山小太郎訳 「ファインマン物理学II 光 熱 波動」岩波書店 1996年2月15日 p87-p90 (特に90頁15行-同頁33行、及び図8-2参照。以下「引用例6」という。) ・オリンパス株式会社のホームページ [第2回]偏光解析の基礎 「http://microscopelabo.jp/learn/009/」及び「http://microscopelabo.jp/learn/009/index_2.html」2017年3月31日付けで掲載頁が閉鎖(甲第5号証、以下「引用例7」という。) 2 異議申立理由の概要 異議申立理由の概要は、以下のとおりである。 (1)進歩性(その1) 本件特許の請求項1-4(注:「第2 1」に記載した訂正前の請求項1?4である。以下、それぞれ、「訂正前請求項1」等という。)に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。よって、本件特許の訂正前請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 甲第1号証:特開2011-107198号公報 甲第2号証:特開2008-192620号公報 甲第3号証:特許第5051328号公報 甲第4号証:特開2005-157082号公報 甲第5号証:オリンパス株式会社のホームページ [第2回]偏光解析の基礎 「http://microscopelabo.jp/learn/009/」及び「http://microscopelabo.jp/learn/009/index_2.html」2017年3月31日付けで掲載頁が閉鎖 甲第6号証:国際公開第2011/162198号 (2)進歩性(その2) 本件特許の訂正前請求項1-4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。よって、本件特許の訂正前請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 甲第3号証:特許第5051328号公報 甲第1号証:特開2011-107198号公報 甲第2号証:特開2008-192620号公報 甲第4号証:特開2005-157082号公報 甲第5号証:オリンパス株式会社のホームページ [第2回]偏光解析の基礎 「http://microscopelabo.jp/learn/009/」及び「http://microscopelabo.jp/learn/009/index_2.html」2017年3月31日付けで掲載頁が閉鎖 甲第6号証:国際公開第2011/162198号 (3)拡大先願(その1) 本件特許の訂正前請求項1及び4に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもない。よって、本件特許の訂正前請求項1及び4に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 甲第7号証:特願2012-147139号(特開2014-10315号公報) (5)拡大先願(その2) 本件特許の訂正前請求項1、3及び4に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもない。よって、本件特許の訂正前請求項1、3及び4に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 甲第8号証:特願2012-156012号(特開2014-16591号公報) (6)特許請求の範囲の記載不備(明確性要件) 本件の訂正前請求項1-4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。よって、本件の訂正前請求項1-4に係る特許は、取り消すべきものである。 記 リタデーションの値が波長によって変動することは、光学の一般常識として知られている。訂正前請求項1、2及び、訂正前請求項1及び2を引用する訂正前請求項3、4で規定する飛散防止フィルムのリタデーションは、如何なる波長のリタデーションを意味するのか不明である。 第5 当審の判断(取消理由(予告)で通知した容易想到性について) 1 引用例の記載1 引用例の記載事項等 (1)引用例1 ア 引用例1には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 上部基板と、この上部基板と対向配置される下部基板と、前記各基板の対向面に形成された透明電極とを有するタッチパネル部と、表示パネル部を備えており、前記タッチパネル部の下部基板と表示パネル部の前面部が粘着剤層を介して密着しているタッチパネル付画像表示装置において、 タッチパネル部の上部基板と下部基板がともに高分子フィルムであり、かつ粘着剤層が、官能基濃度が5×10^(-4)モル/g以下のアクリル系重合体をベースポリマーとして含有する粘着剤により形成されていることを特徴とするタッチパネル付画像表示装置。」 (イ)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は表示パネルとタッチパネルの界面を粘着剤層を介して密着させて一体化したタッチパネル付画像表示装置であって、表示品位がよく、接着ミス等が生じた場合にも表示パネルを容易に再利用可能なタッチパネル付画像表示装置を提供することを目的とする。」 (ウ)「【0013】 【発明の実施の形態】 本発明のタッチパネル付画像表示装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、タッチパネル付画像表示装置の構成を示す模式図である。図1において、上側が観察者側に相当する。ここに示される構成は、あくまでも1例であって、本発明が図1のものに限定されるものではない。また、図1は層構造を説明するためのもので、寸法関係については誇張して描かれている。 【0014】 図1のタッチパネル付画像表示装置は、タッチパネル部1と表示パネル部2とから構成され、両者は一体化されている。タッチパネル部1は、観察者手前側に位置する上部基板11と、この上部基板に対向配置され、観察者奥側に位置する下部基板12とを有する。 【0015】 上部基板11、下部基板12はいずれも高分子フィルムである。高分子フィルムは透明基材を特に制限なく使用できる。その素材としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等があげられる。高分子フィルムは、前記素材を、溶融押し出しし、もしくは溶液流延法等によりシート状に成形したもの、又は一軸、2軸延伸したもの等があげられる。なお、上部基板11、下部基板12は、上記高分子フィルムと高分子フィルムとを貼りあわせた複合フィルムにより形成することもできる。 … 【0017】 上部基板11、下部基板12の内側には透明電極13が形成される。透明電極13は対向配置されている。また、透明電極13の間には、ドットスペーサ15が設けられ、間隔を保持している。透明電極13の形成は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法またはこれらの組合わせ法などの各種薄膜形成法を適宜に選択することができる。透明電極13の形成材としては、透明な導電性の膜を形成しうるものを適宜に選択して用いる。… … 【0020】 表示パネル部2は、従来より使用されている各種の表示パネルを用いることができる。図2では液晶セル21の両側に偏光フィルム22が貼り付けられている。 【0021】 液晶セル21は、柔軟性を有して湾曲面や大面積面等への適用が容易であり、任意な液晶セル、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどがあげられる。液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成される。液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。 【0022】 前記偏光フィルム(偏光子)は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5?80μm程度である。 … 【0024】 前記偏光子は、通常、片側または両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられる。透明保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。」 (エ)「【0070】 【実施例】 … 【0074】 (タッチパネルの作製) 厚さ175μmの透明なポリエステルフィルム(上部基板)を用い、片面にアクリル系樹脂を紫外線硬化により5μm厚になるように塗布した。次に、反対側にメラミン系樹脂を熱硬化により40nm厚になるように塗布した。次に、酸化錫10重量%のITOターゲットを用いてスパッタリング法により、20nmをになるように成膜実施し上部電極を形成した。一方、125μmの透明なポリエステルフィルム(下部基板)を用い、片面にメラミン系樹脂を熱硬化により40nm厚になるように塗布した。次に、酸化錫10重量%のITOターゲットを用いてスパッタリング法により、20nm厚になるように成膜実施し下部電極を形成した。そして、その下部電極表面にシルクスクリーンを用いて紫外線硬化型インキ(セイコーアドバンス株式会社製#9051)を1mmのピッチで直径0.08mmの小突起状に印刷し、紫外線を照射して硬化させ、ドットスペーサを形成した。上記の上部電極のITO膜を下部電極に対向させる重ね、タッチパネルを作製した。」 (オ)図1は、以下のとおりである。 イ 上記アによれば、以下の発明が記載されている。 「観察者手前側に位置する上部基板と、この上部基板と対向配置される観察者奥側に位置する下部基板と、前記各基板の対向面に形成された透明電極と、透明電極の間に設けられた間隔を保持するドットスペーサとを有するタッチパネル部と、表示パネル部を備えており、前記タッチパネル部の下部基板と表示パネル部の前面部が粘着剤層を介して密着しているタッチパネル付画像表示装置において、 タッチパネル部の上部基板と下部基板がともに高分子フィルムであり、その素材としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を2軸延伸したもの等があげられ、かつ粘着剤層が、官能基濃度が5×10^(-4)モル/g以下のアクリル系重合体をベースポリマーとして含有する粘着剤により形成され、 上部基板の膜厚は例えば、175μm、下部基板の膜厚は例えば125μmであり、 表示パネル部は、液晶セルの両側に偏光フィルム(偏光子)が貼り付けられ、 偏光子は、両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられ、 バックライトを適宜な位置に配置する、 タッチパネル付画像表示装置。」(以下「引用発明」という。) (2)引用例2 ア 引用例2には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、 バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、 前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることを特徴とする液晶表示装置の視認性改善方法。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、サングラスなどの偏光板を通して画面を観察した時、その観察角度によらず良好な視認性を確保することができる液晶表示装置の視認性改善方法、及びそれを用いた液晶表示装置に関する。」 (ウ)「【背景技術】 … 【0004】 ところで、日差しの強い屋外等の環境では、その眩しさを解消するために、偏光特性を有するサングラスを掛けた状態でLCDを視認する場合がある。この場合、観察者はLCDから射出した直線偏光を有する光を、偏光板を通して視認することとなるため、LCDに内装される偏光板の吸収軸と、サングラスなどの偏光板の吸収軸とがなす角度によっては画面が見えなくなってしまう。 【0005】 上記問題を解決するため、例えば、特許文献1では、LCD表面に位相差(4分の1波長)板を斜めに積層して直線偏光を円偏光に変換して偏光解消する方法が提案されている。」 (エ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、位相差(4分の1波長)板といえども、ある特定の波長領域の光に対してのみ4分の1波長を達成するに過ぎず、広い可視光領域に渡って均一に4分の1波長を達成する材料は得られていない。そのため特許文献1の方法では、十分な視認性改善効果は得られない。 … 【0010】 本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、サングラスなどの偏光板を通して画面を観察した時、その観察角度によらず高度に良好な視認性を確保することができる液晶表示装置を提供することにある。」 (オ)「【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のバックライト光源と特定のリタデーションを有する高分子フィルムとを組み合せて用いることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。」 (カ)「【発明の効果】 【0013】 本発明の方法では、連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオード光源において効率よく直線偏光を解消し、光源に近似したスペクトルが得られるため、サングラスなどの偏光板を通して液晶表示画面を観察する際でも、その観察角度によらず良好な視認性を確保できる。」 (キ)「【発明を実施するための形態】 … 【0020】 本発明では、前記偏光板の視認側に特定範囲のリタデーションを有する高分子フィルムを配することを特徴とする。本発明者は複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目し、本発明の着想を得たものである。すなわち、光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで視認性が顕著に改善することを見出し、本発明に至ったものである。具体的に、本発明の構成により視認性が改善するという効果は以下の技術思想による。 【0021】 直交する2つの偏光板の間に複屈折性を有する高分子フィルムを配した場合、偏光板から出射した直線偏光が高分子フィルムを通過する際に乱れが生じ、光が透過する。透過した光は高分子フィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。本発明では、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを光源とする。このため、高分子フィルムによっても達成可能な特定のリタデーション範囲に制御することにより、干渉色を示す透過光のスペクトルの包絡線形状が光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。本発明はこれにより視認性の向上を図るに至ったものである。(図3参照) 【0022】 上記効果を奏するために、本発明に用いられる高分子フィルムは、3000?30000nmのリタデーションを有していなければならない。リタデーションが3000nm未満では、サングラスなどの偏光板を通して画面を観察した時、強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。 【0023】 一方、リタデーションの上限は30000nmである。それ以上のリタデーションを有する高分子フィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか、フィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。」 (ク)図3は以下のとおりである。 (ケ)「【0038】 実験例1 ここでは、高分子フィルムとしてポリカーボネートフィルムを用いた例を示す。 … 【0041】 次に、シュミレーションにより配向ポリカーボネートフィルムの干渉色チャートを作成した。 直交ニコル間の対角位に複屈折体を配し、バックライトとして白色光源を用いた場合に直交ニコルを透過する光を干渉色として定義すると、光の透過率は次の式(1)で表される。 I/I0=1/2・sin2(π・Re/λ)・・・(1) ここで、I0は直交ニコルに入射する光の強度、Iは直交ニコルを透過した光の強度、Reは複屈折体のリタデーション、を示す。このように、透過率(I/I0)はリタデーション、光の波長によって変化するため、リタデーションの値に特有の干渉色が観察される。 【0042】 しかしながら、高分子材料は屈折率(特に可視光の短波長領域)の波長分散性が大きく、係る波長分散性は高分子材料により異なる。複屈折に波長依存性が存在すると、複屈折が波長ごとに変化する。そこで、上記式(1)を配向ポリカーボネートに適用する場合は、ポリカーボネート特有の波長分散性を考慮し、本実験例では以下の式(2)を適用した。 I/I0=1/2・sin2(π・f(λ)・Re/λ)・・・(2) ここで、f(λ)は複屈折の波長分散性を表す関数である。 【0043】 上記式(2)をもとに、配向ポリカーボネートフィルムの複屈折の波長分散性を考慮して干渉色を計算するプログラムを作成し、リタデーションと干渉色の関係を表す干渉色チャートを作成した。図2には、図1に示した白色発光ダイオードの発光スペクトルを用いて計算した、配向ポリカーボネートフィルムの干渉色チャートを示した。図1、図2より実測とシミュレーションで色は一致しており、リタデーション(Re)≧3000nm以上で干渉色の変動は著しく低下し、Re≧8000nm程度では干渉色はほぼ一定となることが判った。 【0044】 また、図3には、Re=8000nmにおいて直交ニコルを透過した光のスペクトルを示す。図中、P(λ)が光源(白色LED)の発光スペクトル、T(λ)が透過光のスペクトルである。透過光スペクトルの包絡線が光源の発光スペクトルの形状を保存した相似形を有していることから、一定となった配向ポリカーボネートフィルムの干渉色は、実効的に光源の発光スペクトルからなることが明らかとなった。また、透過光の強度は光源の強度の1/4になることが確認された。」 (コ)「【0048】 実験例2 ここでは、高分子フィルムとして配向ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた例を示す。 ジメチルテレフタレートを1000部、エチレングリコールを700部、および酢酸マンガン4水塩を0.16部をエステル交換反応缶に仕込み、120?210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で三酸価アンチモンを0.13部、正リン酸を0.017部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で133Paとした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。この条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押出し固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂を得た。 【0049】 固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂を水冷却した回転急冷ドラム上にフィルム形成ダイを通して押出し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを幅方向に100℃で4.0倍延伸した後、150℃で熱固定を行い、更に130℃から100℃に冷却しながら、幅方向に3%弛緩処理を行い、厚さ38μmの配向PETフィルム(PETフィルム-1)を得た。 【0050】 また、PETフィルム-1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚さ200μmの配向PETフィルム(PETフィルム-2)を得た。 【0051】 PETフィルム-1と同様の方法を用いて作成した未延伸フィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.4倍延伸して、厚さ700μmの配向PETフィルム(PETフィルム-3)を得た。 【0052】 上記の方法で得られた配向PETフィルムの特性を表1に示した。…」 (サ)表1は、以下のとおりである。 イ 上記ア(ア)-ア(ケ)によれば、以下の事項が開示されている。 「バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、 サングラスなどの偏光板を通して液晶表示装置の画面を観察した時、その観察角度によらず高度に良好な視認性を確保することを目的とし、 バックライト光源として連続的な発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを用いるとともに、 前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることにより、 高分子フィルムのリタデーションに特有の干渉色を示す高分子フィルムの透過光は、そのスペクトルの包絡線形状が光源の発光スペクトルの形状を保存した相似形を有し、実効的に光源の発光スペクトルからなる、 液晶表示装置。」(以下「引用例2の技術事項1」という。) ウ 上記ア(コ)、(サ)によれば、「3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルム」の例として「PETフィルム-1」、「PETフィルム-2」が記載され、その特性が表1に記載されている。 直交する二軸の屈折率をNx,Ny、厚さ方向の屈折率をNz、厚みをd(nm)とすると、厚さ方向リタデーション(Rth)は、(△Nxz×d)、(△Nyz×d)の平均値であるから、「PETフィルム-1」、「PETフィルム-2」の厚さ方向リタデーション(Rth)を算出するとともに、リタデーションと厚さ方向のリタデーションの比(Re/Rth)を算出すると、以下のとおりである。 (Rth) (Re/Rth) PETフィルム-1 4389nm 0.848 PETフィルム-2 25860nm 0.832 してみると、「3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルム」として、以下のフィルムが開示されている。 「厚み38μm、3724nmのリタデーションを有し、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.848であるPETフィルム-1、 PETフィルム-1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更して作成した、 厚み200μm、21520nmのリタデーションを有し、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.832であるPETフィルム-2」(以下「引用例2の技術事項2」という。) (3)引用例3 ア 引用例3には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 2枚の透明基板で液晶層が挾持され、該2枚の透明基板の外側にそれぞれ偏光板が配置され、前記液晶層の一方の面で表示されてなる液晶表示デバイスであって、前記液晶層の表示面側に配置されたフロント側偏光板の前面に位相差板が配置され、該位相差板はその光学軸が前記フロント側偏光板の吸収軸とほぼ35°?55°の角度をなすように配置されると共に、前記位相差板のリターデイションがほぼ4000nm以上の範囲に設定されてなる液晶表示デバイス。」 (イ)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の液晶表示デバイスのばあい、フロント側偏光板2から出射する光が直線偏光になっているため、図3に示すように観測者7が偏光めがね6をかけているばあい、見る方向によっては液晶表示面が見えなくなる。すなわちフロント側偏光板2の吸収軸の方向Cと偏光めがね6の吸収軸の方向Fとのなす角度が90°のばあい、光源5から液晶表示デバイスに入射し、フロント側偏光板2から出射する光が、自動車の運転や釣などのときに使用される偏光めがね6を透過できなくなるという欠点がある。とくに液晶表示デバイスが自動車のインジケータなど、表示計器に使用されたばあい、運転者が偏光板を使用したサングラスをかけていることがよくあるため、問題となる。 【0006】本発明の目的は、偏光めがねをかけた観測者がどの方向から眺めても、表示面が偏った着色にならないで、確実に視認できる液晶表示デバイスを提供することにある。」 (ウ)「【0009】 【作用】本発明によれば、フロント側偏光板の前面に位相差板を配設し、位相差板の光学軸の方向とフロント側偏光板の吸収軸の方向とのなす角度をほぼ35°?55°にすると共に、そのリターデイションΔn・dをほぼ4000nm以上に設定しているため、位相差板の複屈折性により常光線と異常光線とのあいだの位相のズレが1/4波長となる波長の光が、可視光の全波長領域(380nm?780nm)にわたって多数存在する。すなわち青色波長領域(380?500nm)、緑色波長領域(500nm?600nm)、赤色波長領域(600nm?780nm)のいずれの波長領域においても、透過率のわるい波長もある反面、透過率のよい波長が存在し、各色領域で、円偏光に近い楕円偏光になる。そのため、一定方向の吸収軸を有する偏光めがねを使用して、液晶表示デバイスをどの方向から見ても表示される色によって表示面が見づらくなったりすることがなく良好に認識することができる。」 (エ)「【0010】 【実施例】つぎに、図面を参照しながら本発明を説明する。図1は本発明のTN型液晶表示デバイスを偏光めがねをかけて眺めたばあいの偏光めがねの吸収軸の方向などを示す分解説明図、図2は液晶セルに電界を印加したばあいに、位相差板から出た種々の波長の光の偏光めがねの透過率を表わすグラフである。 【0011】図1において、液晶層が2枚の透明基板に挾持された液晶セル1の両側にフロント側偏光板2およびリア側偏光板3が配設され、表示面側であるフロント側偏光板2の表面側にさらに位相差板4が配設されている。また裏面側には光源5が配設されている。液晶材料としては、たとえばTN液晶が用いられ、両透明基板間で90°のねじれが生じるため、両側の透明基板に設けられるラビング方向は、たとえば図1にA、Bで示されるように90°の方向をなしている。また両偏光板2、3の吸収軸の方向C、Dは図1に示すように、フロント側とリア側とで同じ方向にして、ネガ型TN液晶表示デバイスを構成している。6は偏光めがねを示し、位相差板4の光学軸の方向をE、偏光めがね6の吸収軸の方向をFで示している。位相差板4は、フロント側偏光板2の前に一定の間隙をあけて配置してもよいし、フロント側偏光板2の表面に密着または接着してもよい。また位相差板4の表面をアングレア処理し、乱反射機能をもたせてもよい。こうすることにより液晶表示パネル表面における外光反射による視認性低下を防止する効果がある。位相差板4はたとえばポリカーボネートなどの異常光線と常光線とのあいだで位相差を生じるフィルムからなり、高分子材料が熱延伸され、一軸延伸高分子フィルムに形成されている。また位相差板4は、雲母、人工雲母、水晶などの無機物により作製することもできる。位相遅れ(リターデイション)Rと屈折率ne、noとのあいだには R=|ne-no|×d=Δn・d の関係が成り立つ。ここで、dは板材の厚さ、neは異常光線に対する屈折率、noは常光線に対する屈折率である。 【0012】前述のように表示面側に偏光板が配設された液晶表示デバイスでは、フロント側偏光板2から出射した光は、フロント側偏光板の吸収軸の方向と一致する直線偏光となっているが、本発明では位相差板4を配設しているため、位相差板4を透過する際に常光線と異常光線との間に位相のずれが生じ、楕円偏光に変わる。したがって位相差板4を配設することにより、偏光めがね6をかけて液晶表示デバイスを観賞したばあいでも、一般的にはどの方向からでも観賞できる筈である。しかし、光の波長と位相差板の厚さによっては殆ど直線偏光となったり、短軸が短い楕円偏光となったり、また可視光の波長領域は広く、波長によっては見づらい部分が生じ、見る方向によって見づらいばあいが生じる。そこで本発明者らは位相差板の光学軸の方向や厚さを種々変えて鋭意検討を重ねた結果、位相差板4をフロント側偏光板2の表面側に配置すると共に、位相差板4の光学軸方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸方向Cとのなす角度(鋭角)αをほぼ35°?55°にし、同時に位相差板のリターデイションΔn・dをほぼ4000nm以上にすることにより、偏光めがねをかけてどの方向から観賞しても良好に視認できることを見出した。 【0013】前述の構成の液晶表示デバイスを製造し、位相差板4をフロント側偏光板2の表面に密着させ、位相差板4の光学軸の方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸の方向Cとのなす角度αを、0?90°のあいだで5°または10°ずつ変えると共に、それぞれの角度αに対し、位相差板のリターデイションΔn・dを500?10000nmの範囲で変化させた。それぞれのリターデイションΔn・dの値と角度αのときに、偏光めがね6の吸収軸Fを360°回転させながら、観測者7が目視により液晶表示面の視認特性を測定した。表1にその結果を示す。 【0014】 【表1】 【0015】表1から明らかなように、リターデイションΔn・dがほぼ4000nm以上で、かつ、角度αがほぼ35°?55°の範囲では、偏光めがね6の吸収軸方向Fを360°どの方向に向けても液晶表示面が認識できた。とくにリターデイションが5000nm以上で、かつ、角度αが45°の範囲で認識状態が最も優れており(表1のa)、またリターデイションが5000nm以上で、かつ、角度αが40°?50°の範囲でも良好に認識でき、好ましかった(表1のb)。さらにリターデイションが4000nm以上で、かつ、角度αが35°?55°の範囲でもやや視認特性は低下したが認識はできた(表1のc)。また、偏光めがねの角度によっては認識できないものを-で示した。 【0016】本発明ではリターデイションが大きな位相差板を使用しているため、位相差板に入射する直線偏光の波長の違いがわずかであっても、位相差板による常光線と異常光線との位相のズレは大きなものとなり、図2に示すように、位相のズレが1/4波長となる波長の光が可視光の波長領域に多数存在する。そのため、前述の角度αがほぼ35°?55°、位相差板のリターデイションをほぼ4000nm以上にすることにより、偏光めがねをかけてどの方向から見ても、液晶表示デバイスの表示画面を認識することができる。 【0017】なお、図2は位相差板の角度αを45°、リターデイションが5000nm、偏光めがねの吸収軸方向Fをフロント側偏光板の吸収軸方向Cと直交する方向としたときの各波長に対する透過率を示す。ここでフロント側偏光板2の吸収軸方向Cと偏光めがね6の吸収軸方向Fを同一方向にし、位相差板4がないときの透過率を100%とした。」 (オ)図1、図2は以下のとおりである。 イ 上記アの記載によれば、以下の技術事項が記載されている。 「2枚の透明基板で液晶層が挾持され、該2枚の透明基板の外側にそれぞれ偏光板が配置され、前記液晶層の一方の面で表示されてなる液晶表示デバイスであって、 前記液晶層の表示面側に配置されたフロント側偏光板の前面に位相差板を配置し、該位相差板はその光学軸が前記フロント側偏光板の吸収軸とほぼ35°?55°の角度をなすように配置すると共に、前記位相差板のリターデイションをほぼ4000nm以上の範囲に設定することにより、 位相差板の複屈折性により常光線と異常光線とのあいだの位相のズレが1/4波長となる、円偏光に近い楕円偏光になる透過率のよい波長の光が、可視光の全波長領域(380nm?780nm)にわたって多数存在(青色波長領域(380?500nm)、緑色波長領域(500nm?600nm)、赤色波長領域(600nm?780nm)のいずれの波長領域においても存在)し、 偏光めがねをかけた観測者がどの方向から眺めても、表示面が偏った着色にならないで、確実に視認できる液晶表示デバイス。」(以下「引用例3の技術事項」という。) (4)引用例4 ア 引用例4には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 最前面に偏光板を有する表示素子と、 前記表示素子の前方に配置され、面内にリターデーションを有する透光性カバーと、 前記偏光板と前記透光性カバーとの間に配置され、前記透光性カバーのリターデーションの人間の視認に対する影響を低減する、面内にリターデーションを有する透光性光学素子と、 を有する表示装置。 【請求項2】 前記透光性カバーのリターデーションと前記透光性光学素子のリターデーションとの和が2000nm以上である請求項1記載の表示装置。 【請求項3】 前記透光性カバーのリターデーションと前記透光性光学素子のリターデーションとの和が4000nm以上である請求項2記載の表示装置。 … 【請求項8】 前記透光性光学素子のリターデーションの遅相軸方向が、前記偏光板の偏光軸と約45度の角度をなす請求項1-6のいずれか1項記載の表示装置。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 上述のように、最前面に偏光板を有する表示装置に、透光性カバーを設け、偏光サングラスなど偏光板を介して観察すると、表示が変化して視認性が悪化することがある。楔形水晶板などを用いて偏光解消を行えば、視認性は確保できるが、コストが高くなる。拡散フイルムで偏光解消する方法もある。この場合、コストは抑えられるが、表示にボケが生じ得る。 【0012】 本発明の目的は、最前面に偏光板を有する表示装置に、透光性カバーを設け、偏光サングラスなど偏光板を介して観察する場合にも、視認性を確保することのできる表示装置を提供することである。 【0013】 本発明の他の目的は、最前面に偏光板を有する表示装置に、透光性カバーを設け、偏光サングラスなど偏光板を介して観察する場合にも、色付き,場所による濃淡のむら等表示のばらつきを防止できる表示装置を提供することである。」 (ウ)「【0033】 リターデーションの和が4000nmの場合、場所ごとに違う濃淡や色付きはどこから見ても認められず、全体的な色付きも全くなかった。どの方向から見ても、どのような角度に偏光サングラスの偏光軸を設定しても、表示部の明るさはほぼ一定であり、非常に見易いものであった。 【0034】 リターデーションフイルムの遅相軸の方向と偏光板の偏光軸のなす角度を変えてみた。リターデーション2000nmの場合と同様、30度から60度で好ましい効果が認められ、20度から30度、および60度から70度の範囲で低減した効果が認められた。 【0035】 xy面内で,x軸から角度45度のベクトルをx成分,y成分に分解すれば,等しい大きさのx成分,y成分が生じる。角度を45度からずらせば,x成分の大きさとy成分の大きさとに差が生じる。例えば、x成分が大きいと,y成分と等しい第1のx成分と余りの第2のx成分が生じ,第2のx成分は変化を受けない定常的成分となってしまう。言い換えれば,45度から離して,干渉で変化する第1の成分が減少すると、リターデーションフイルムの効果が減少すると考えられる。角度を0度とすると、偏光板5から出射する直線偏光がリターデーションフイルムの遅相軸方向と一致するので、進相成分はなく、リターデーションフイルムを用いる効果が消滅するのであろう。」 (エ)「【0045】 以上の観察結果を検証するため、理論計算を行った。実際にはリターデーションフイルムの他にカバーが挿入されているが、カバーの主光軸とフイルムの主光軸が平行の場合、光学的には両者の和で考えても問題ないであろう。ポリカーボネート製のカバーに生じているリターデーションは、カバー単体で偏光板間に挿入した時の色付きの度合いから200nmから600nm位と考えられ、場所的なばらつきも有する。ばらつきは不定であり、シミュレーションにおいては、ばらつきは無視した。 【0046】 直交ニコル配置の一対の偏光板の間に所定のリターデーションを有するリターデーションフイルムが遅相軸を偏光軸に対して45度の角度で挿入された構成の可視光全域に亘る透過光スペクトルをシミュレーションで得た。計算に用いた偏光板は理想的なもので、全波長にわたって偏光度は100%で、光吸収はないものとした。リターデーションフイルムは完全な1軸性で、光吸収はないものとした。界面での反射は考慮した。 【0047】 図4(A)-(E)は、それぞれ、リターデーションが600nm、1000nm、2000nm、4000nm、6000nmの場合のシミュレーション結果を示すスペクトルである。透過光スペクトルは、波長に対してほぼ同じ振幅で極大値、極小値を繰り返し取る振動波形になることが判る。極大値、極小値の波長はリターデーションが変化すると左右にシフトする。リターデーションが大きくなるほど、振動の周期が短くなる。 【0048】 図4(A)-(E)は、波長380nm-780nmの透過率スペクトルである。図4(A)では,1つの極大と1つの極小がある。図4(B)では,2つの極大と1つの極小がある。図4(C)では、4つの極大と3つの極小がある。図4(D)では,7つの極大と7つの極小がある。図4(E)では,11の極大と10の極小がある。 【0049】 従来例において、カバーのみを挿入した時リターデーションは200nmから600nmである。これは、図4(A)ないし図4(A)から図4(B)とは逆方向に変化したものにほぼ相当する。可視光領域において高々1つの極大ピーク(および高々1つの極小ピーク)が現れるであろう。実際には、場所的なばらつきにより、場所的にピーク波長は変化するであろう。少ないピークを持つスペクトルはかなりの色付きを持つことが知られている。従来例において色付きが観察されたことが説明できる。リターデーションが小さい場合には極大値が1つだけ現れる。色付きは少なくなり、濃淡のばらつきが生じることになろう。 【0050】 ポリカーボネートのカバーの他にリターデーションの小さな(600nm、1000nm)リターデーションフイルムを用いた場合、表示部にはリターデーションが数百nmから千数百nm程度のリターデーションがばらついて分布していることになる。図4(A),(B),(C)から推察されるように、可視光領域に1つから2、3個程度の極大ピークと対応する極小ピークを持つスペクトルが、場所ごとにピーク波長を変化させながら出射することになる。 【0051】 図4(A)の場合は青色に、図4(B)の場合は紫色に色付くというように、数本程度以下のピークを持つスペクトルはかなり激しい色付きを持つ。リターデーションフイルムを用いても却って結果が悪くなった場合が説明できる。 【0052】 図4(C),(D),(E)のように、リターデーションが大きくなると可視光領域にかなり多く(4本以上)の極大ピークを持つスペクトルが場所毎にピーク波長位置を変化させながら出射する。この時、人間の目が波長に対して持つ積分作用により、このような複数のピークを有するスペクトルの光はもはや色に分解できず、全波長ほぼ同じ強度の白表示に見える。場所によりリタ-デーションが数百nm変化しても、スペクトルは左右にシフトしたりその周期が多少変化するだけなので、どの場所でも白表示が視認される。このようにして、色付きむらや濃淡むらを消し去ることができる。カバーの追加による濃淡むら、色付きむらを含む人間の視認に対する影響が、リターデーションフイルムの追加により抑制される。 【0053】 リターデーション2000nmで僅かな色付きが見られたのは、ピークの本数が少ないため人間の目の色分解能が僅かではあるが働いたためと考えられる。 【0054】 図5(A),(B)は、リターデーション6000nmで、リターデーションフイルムの遅相軸と偏光板の偏光軸とのなす角度を変えた場合を示す。図5(A)は30度の場合を示し、図5(B)は0度の場合を示す。図4(E)と図5(A)とを比較すると、角度を45度から離すに従い、スペクトルの振幅が小さくなることが判る。0度の時は、振動がなくなり、振幅が0になっている。これは、前述のようにリターデーションの軸方向と偏光の方向によりリターデーションで変化する成分が減少,ないし消滅すると考えることもできよう。 【0055】 このように、大きなリターデーションを有するフイルムを挿入することにより色付き、濃淡を防止できるが、これは偏光を解消しているわけではない。偏光状態を変化させ、波長によりその効果を異ならせているものである。 【0056】 直交ニコル偏光子を用いた場合、入射光は直線偏光になり、リターデーションフイルムで面内方向により異なるリターデーションをうける。遅相軸成分が反転した状態となると90度の偏光軸回転となり、直交ニコルを透過する。180度回転すると再び遮光される。中間状態では円偏光または楕円偏光となる。波長によってこのような偏光状態の変化が生じ、波長に対して振動を示す。」 (オ)図4、図5は、以下のとおりである。 イ 上記アの記載によれば、以下の事項が記載されている。 「最前面に偏光板を有する表示素子と、 前記表示素子の前方に配置され、面内にリターデーションを有する透光性カバーと、 前記偏光板と前記透光性カバーとの間に配置され、前記透光性カバーのリターデーションの人間の視認に対する影響を低減する、面内にリターデーションを有する透光性光学素子と、 を有する表示装置であって、 前記透光性カバーのリターデーションと前記透光性光学素子のリターデーションとの和が4000nm以上であり、 前記透光性光学素子のリターデーションの遅相軸方向が、前記偏光板の偏光軸と約45度の角度をなすことにより、 可視光領域にかなり多く(4本以上)の極大ピークを持つスペクトルが場所毎にピーク波長位置を変化させながら出射し、人間の目が波長に対して持つ積分作用により、このような複数のピークを有するスペクトルの光はもはや色に分解できず、全波長ほぼ同じ強度の白表示に見え、色付きむらや濃淡むらを消し去り、 偏光サングラスなど偏光板を介して観察する場合にも、色付き,場所による濃淡のむら等表示のばらつきを防止できる、 表示装置。」(以下「引用例4の技術事項」という。) (5)引用例5 ア 引用例5には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 第1および第2電極基板と、前記第1および第2電極基板間に挟持され、前記第1および第2電極基板間でねじれて配向される正の誘電率異方性を有するネマチック液晶材料を含み、液晶分子配列が前記第1および第2電極基板から各々制御される複数の表示画素に区分される液晶層と、前記第1および第2電極基板うちの少なくとも一方上に配置される偏光板と、前記複数の表示画素からなる表示画面に対応して前記偏光板上に配置される光学部材層を備え、前記光学部材層はリタデーション値が2400nm以上でかつ光学軸が水平方向に対して30度?60度の角度に設定される光学特性を持つことを特徴とする液晶表示装置。 【請求項2】 前記光学部材層はタッチパネル、フロントライト用導光板、およびカバーガラスの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。」 (イ)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上述の光学特性は、モバイル機器が例えば海や山に携行される場合に問題となる。このような場所では、ユーザが不要光を取り除いて眩しさを低減する偏光サングラスを着用していることがある。この偏光サングラスを着用した状態では、表示画面がランドスケープモードおよびポートレートモードのどちらかで著しく暗くなってしまうことがある。 【0006】 本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、表示画面の明るさが偏光サングラスの着用によって低下することを防止できる液晶表示装置を提供することを目的とする。」 (エ)「【0009】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置について添付図面を参照して説明する。この液晶表示装置はPDA(Personal Digital Assistance)のようなモバイル機器に画像モニタとして組み込まれるもので、表示画面が横長となる向きに設定されるランドスケープモードおよび表示画面が縦長となる向きに設定されるポートレートモードのいずれかで様々な画像を表示する。 … 【0017】 また、対向基板CTでは、赤、緑、および青のストライプ状カラーフィルタCFが各々対応列の画素電極PEに対向して行方向に順番に並ぶようにしてガラス板等の絶縁基板20上に形成され、ITO等の透明導電部材からなる対向電極CEがカラーフィルタCF上に形成され、さらに配向膜21が対向電極CEを覆って形成される。 … 【0020】 図4は図1に示す表示画面DSをランドスケープモードで使用する場合の光学系を示し、図5は図1に示す表示画面DSをポートレートモードで使用する場合の光学系を示す。ランドスケープモードは表示画面DSが横長になる向きであり、ポートレートモードは表示画面DSが縦長になる向きである。これらモードでは、画像表示時に着用状態にある偏光サングラス33の吸収軸が光学部材層32の光学軸および偏光板31の吸収軸に対して図4および図5に示すような関係になる。 【0021】 光学部材層32としてタッチパネルを採用し、光学部材層32および偏光板31の光学特性を水平方向に対する光学部材層光学軸の角度θ=40度、リタデーション値R=5000nm、水平方向に対する偏光板吸収軸の角度φ=175度に設定した場合、図6に示すような光透過率特性が偏光サングラス33を着用した状態で得られる。すなわち、表示画面DSはランドスケープモードおよびポートレートモードの間で同等の明るさになり、いずれか一方で著しく暗くなることが避けられる。 【0022】 …ここでは、光学部材層のリタデーション値R≧2400nmが、図6、図7および図8に示すように可視光領域で3個以上のピークを得るための条件となっている。 … 【0027】 また、光学部材層32はタッチパネル、フロントライト用導光板、およびカバーガラスのうちの1つだけでなく、これらの組み合わせ、あるいはその他の光学部材を含んだ組み合わせにより構成してもよい。但し、この場合でも、全体として光学部材層32はリタデーション値R(=Δnd、ここでΔn:屈折率,d:層厚)が2400nm以上でかつ光学軸θが水平方向に対して30度?60度の角度に設定される光学特性を持つことが必要である。」 (オ)図4?6は、以下のとおりである。 イ 上記アの記載によれば、以下の事項が記載されている。 「第1および第2電極基板と、前記第1および第2電極基板間に挟持され、前記第1および第2電極基板間でねじれて配向される正の誘電率異方性を有するネマチック液晶材料を含み、液晶分子配列が前記第1および第2電極基板から各々制御される複数の表示画素に区分される液晶層と、前記第1および第2電極基板うちの少なくとも一方上に配置される偏光板と、前記複数の表示画素からなる表示画面に対応して前記偏光板上に配置される光学部材層を備え、 前記光学部材層はリタデーション値が2400nm以上でかつ光学軸が水平方向に対して30度?60度の角度に設定される光学特性を持つことにより、 例えば、光学部材層32としてタッチパネルを採用し、光学部材層32および偏光板31の光学特性を水平方向に対する光学部材層の光学軸の角度θ=40度、リタデーション値R=5000nm、水平方向に対する偏光板吸収軸の角度φ=175度に設定することにより、 偏光サングラスを着用した状態での光透過率特性が可視光領域で3個以上のピークが得られ、 表示画面が横長となる向きに設定されるランドスケープモードおよび表示画面が縦長となる向きに設定されるポートレートモードのどちらかで表示画面の明るさが偏光サングラスの着用によって低下することを防止する、 液晶表示装置。」(以下「引用例5の技術事項1」という。) ウ 上記ア(エ)【0027】の記載によれば、以下の事項が記載されている。 「光学部材層がタッチパネル、フロントライト用導光板、およびカバーガラスの組合せで構成される場合、全体としてのレタデーション値が2400nm以上でかつ光学軸θが水平方向に対して30度?60度の角度に設定される光学特性を持つことが必要であること。」(以下「引用例5の技術事項2」という。) 3 対比(本件発明1) 本件発明1と引用発明を対比する。 (1)本件発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」と、引用発明の「バックライト」を対比すると、両者は「光源」の点で一致する。 (2)本件発明1の「画像表示セル」と、引用発明の「液晶セル」を対比する。 本件明細書の「【0010】…画像表示セルには、典型的に、液晶セル又は有機ELセルが用いられる。」との記載によれば、本件発明1の「画像表示セル」は、液晶セルが含まれる。してみると、両者は「液晶セル」の点で一致する。 (3)引用発明は、「液晶セルの両側に偏光フィルム(偏光子)が貼り付けられ」ているから、液晶セルの視認側に偏光子が貼り付けられている。よって、本件発明1と引用発明は、「前記液晶セルより視認側に配置される偏光子」の点で一致する。 (4)本件発明1の「前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム」と、引用発明の「タッチパネル部の上部基板と下部基板」であって、「下部基板」が「表示パネル部の前面部が粘着剤層を介して密着している」「上部基板と下部基板」を対比する。 引用発明の「上部基板と下部基板」は、本件発明1の「2枚の基材フィルム」に相当する。そして、引用発明の「表示パネル部は、液晶セルの両側に偏光フィルム(偏光子)が貼り付けられ」るから、「上部基板と下部基板」は偏光子より視認側に位置する。 してみると、両者は相当関係にある。 (5)本件発明1の「前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている」ことと、引用発明の「前記各基板の対向面に」「透明電極」が「形成され」ていることを対比する。 引用発明の「前記各基板」は本件発明1の「2枚の基材フィルム」に相当し、引用発明の「透明電極」は本件発明1の「透明導電層」に相当する。 してみると、両者は相当関係にある。 (6)本件発明1の「画像表示装置」と引用発明の「タッチパネル付画像表示装置」を対比すると。両者は相当関係にある。 (7)以上によれば、本件発明1と引用発明は、 「(1)光源、 (2)液晶セル、 (3)前記液晶セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:「光源」に関し、本件発明1は、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」であるのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。 相違点2:「2枚の基材フィルム」に関し、本件発明1は、 ア 「前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり」、 イ 「前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり」 ウ 「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり」、 エ 「前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり」、 オ 「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」、 カ 「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く)」 のに対し、引用発明は、そのようなものであるのか否か明らかでない点。 4 判断(本件発明1) (1)はじめに、複屈折部材と光の偏光状態に関する技術常識、周知技術について検討する。なお、以下では、複屈折を有すること、光学異方性を有すること、リタデーションを有することは、いずれも、同旨で使用しており、異方性フィルム、リタデーションフィルム、配向フィルム、位相差フィルムも、同旨で使用している。 ア 「複屈折を有する物質の板に偏光が入射する場合、偏光の偏りの方向が複屈折を有する物質の板の光軸に対し45度の傾きを持つと、x方向とy方向の振動の位相差が、物質に入り込む深さに比例して変化し、偏光状態が、直線偏光 → 楕円偏光 → 円偏光 → 楕円偏光 → 直線偏光(もとの方向に対して直角) → … と変化すること。」は、以下のとおり、光学分野における技術常識(以下「技術常識1」という。)である。 引用例6には、以下の記載がある。 「複屈折をする物質の板を偏光で照らしたとき、どのようなことが起こるかそれを調べてみよう。もし偏りの方向が光軸と平行である場合には、光はただ一つの速度で板を通り抜ける。またもし偏りの方向が光軸に垂直ならば、光はちがった速度で伝わっていく。ところが直線の偏りの方向が光軸に対したとえば45°の傾きを持つとすると、面白いことが起こる。さてすでに注意したように、45°の偏りは、同じ振幅を持ち、位相の一致しているx方向の偏りとy方向の偏りを重ね合わせることによって表すことができる(図8-2(a)の場合)。ところがx方向の偏光と、y方向の偏光は異なる速度で進むので、両者の位相は光が物質を進む際、異なる割合で変わっていく。x方向とy方向の振動は最初位相が一致してスタートしたが、物質中では両振動の位相差が物質に入り込む深さに比例する。光が物質中を進む間に偏りがどう変わるかは図8-2中の一連の図に示してある。板の厚さがちょうどx方向の偏りとy方向の偏りの間の位相のずれが90°になるようになっていれば(図8-2(c))、光は円偏光になってでていく。このような厚さのものを1/4波長板という。それは、x方向とy方向の偏光の間に1サイクルの1/4の位相差をもち込むからである。もし直線偏光を2枚の1/4波長板を通せば、再び直線偏光として出ていくが、図8-2(e)からわかるように、その振動方向はもとの方向に対して直角になる。」(90頁15-33行) 図8-2は以下のとおりである。 上記記載によれば、 「複屈折を有する物質の板に偏光が入射する場合、偏光の偏りの方向が複屈折を有する物質の板の光軸に対し45度の傾きを持つと、x方向とy方向の振動の位相差が、物質に入り込む深さに比例して変化すること。」 が開示されている。ここで、図8-2を参酌すると、x方向とy方向の振動の位相差が大きくなるに従い、偏光状態が、直線偏光 → 楕円偏光 → 円偏光 → 楕円偏光 → 直線偏光(もとの方向に対して直角) → … と変化することが理解できる。 イ 「異方体の光軸方向を平行にして二つの異方体を重ねた場合、全体のリタデーションは二つの異方体のリタデーションの和(相加)となり、異方体の光軸方向を直交して二つの異方体を重ねた場合、全体のリタデーションは二つの異方体のリタデーションの差(相滅)となり、光軸方向が平行と直交の中間では、位相量の相加から相滅まで三角関数的に減少すること。」は、以下のとおり、複屈折部材に関する技術常識(以下「技術常識2」という。)である。 (ア)引用例7には以下の記載がある。 a 「2.異方体の重ね合わせ 二つの異方体を対角位で重ねる時において、それぞれの異方体の速度の遅い光の振動方向(z’方向)を同じにして重ねた場合(図2-6a)と二つのz’方向を直交して重ねた場合(図2-6b)を考えてみる。 図2-6aのように二つの異方体のz’方向を同じ方向にして重ねた場合は速度の速いほうの偏光の振動方向が一致しているので、全体のレタデーションは二つの異方体のレタデーションの和となる。 R=R1+R2(R1、R2は異方体1、2のレタデーション) この状態を相加additionという。これに対して図2-6bは一方の異方体通過後の位相差をもう一方の位相差で打ち消す事になる。このため、全体のレタデーションは二つの異方体のレタデーションの差となる。 R=R1?R2 この状態を相減substructionという。」 b 図2-6は以下のとおりである。 (イ)特開2007-11280号公報には以下の記載がある。 a「【0107】 図14Aは第1,第2の2枚の位相差フィルム61,62の積層体でなる位相差板の製造方法を説明する図である。位相差フィルム61の面内の主屈折率をn1x,n1y、位相差フィルム62の面内の主屈折率をn2x,n2yで示している。n1xおよびn2xは各位相差フィルム61,62の遅相軸すなわち光学軸であり、n1yおよびn2yは各位相差フィルム61,62の進相軸を表している。 … 【0110】 図14Bに示したように、第1の位相差フィルム61に対する第2の位相差フィルム62の回転角度θ1が大きくなるにしたがって、フィルム全体の面内位相差量が三角関数的に減少することがわかる。ここで、θ1が0のとき、即ち第1,第2の位相差フィルム61,62の各々の遅相軸n1x,n2xがそれぞれ同一方向に配向されているときは、フィルム全体の位相差量は個々のフィルムがもつ位相差量の総和(7nm+7nm=14nm)となる。一方、θ1が90度のとき、即ち第1,第2の位相差フィルム61,62の各々の遅相軸n1x,n2xが互いに直交する場合は、個々のフィルムがもつ位相差量の差(7nm-7nm=0nm)となる。また、位相差量は積層する光学軸の角度を変えることにより任意に調整可能である。」 b 図14は以下のとおりである。 ウ 「偏光サングラスを掛けて液晶表示装置の画面を視認すると、視認する角度により視認性が低下する旨の技術課題」(以下「周知の技術課題」という。)があることは当業者に周知であり、「連続的なスペクトルを有する光源を用いるとともに、液晶表示装置の視認側偏光板の視認側に、高いリタデーション(例えば、3000nm以上)の部材(部材が複数ある場合には、全体として高いリタデーションの複数の部材)を、前記偏光板の吸収軸と前記高いリタデーションの部材の遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配置する技術手段」(以下「周知の解決手段」という。)により解決できることも、以下のとおり、周知である。 例えば、引用例2の技術事項1によれば、バックライト光源として連続的な発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを用いるとともに、液晶表示装置の偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配置することで、サングラスなどの偏光板を通して液晶表示装置の画面を観察した時、その観察角度によらず高度に良好な視認性を確保している。 引用例3の技術事項によれば、液晶表示デバイスのフロント側偏光板の前面に、リターデイションをほぼ4000nm以上に設定した位相差板をその光学軸が前記フロント側偏光板の吸収軸とほぼ35°?55°の角度をなすように配置することで、偏光めがねをかけた観測者がどの方向から眺めても、表示面が偏った着色にならないで、確実に視認できるようにしている。ここで、可視光の全波長領域(380nm?780nm)にわたって透過率のよい波長の光が多数存在していること、図2の横軸に連続した波長が描かれていることから、光源は連続的なスペクトルを有しているものと認められる。 引用例4の技術事項1によれば、最前面に偏光板を有する表示素子の前方に、和が4000nm以上のリタデーションを有する透光性カバーと透光性光学素子を、透光性光学素子のリターデーションの遅相軸方向が、前記偏光板の偏光軸と約45度の角度をなすように配置することにより、偏光サングラスなど偏光板を介して観察する場合にも、色付き,場所による濃淡のむら等表示のばらつきを防止している。ここで、可視光領域にかなり多く(4本以上)の極大ピークを持つスペクトルが場所毎にピーク波長位置を変化させながら出射していること、図4の横軸に連続した波長が描かれていることから、光源は連続的なスペクトルを有しているものと認められる。 引用例5の技術事項1、2によれば、液晶表示装置の偏光板上に、リタデーション値が2400nm以上の光学部材層を、光学軸が水平方向に対して30度?60度の角度(例えば、光学部材層光学軸と偏光板の吸収軸のなす角度を45度)に配置することにより、表示画面が横長となる向きと表示画面が縦長となる向きのどちらかで表示画面の明るさが偏光サングラスの着用によって低下することを防止している。ここで、偏光サングラスを着用した状態での光透過率特性が可視光領域で3個以上のピークを得ていること、図6の横軸に連続した波長が描かれていることから、光源は連続的なスペクトルを有しているものと認められる。 なお、液晶表示パネルの画面を偏光サングラスを掛けて視認する場合には、視認する角度により、液晶表示パネルから出射した直線偏光の光が偏光眼鏡で吸収されるので見えなくなったり、暗くなって視認性が低下する。また、液晶表示パネルの画面を低リタデーションの部材を介して、偏光サングラスを掛けて視認する場合には、液晶表示パネルから出射した光の偏光状態が低リタデーションの部材により波長毎に変換(例えば、直線偏光から円偏光や楕円偏光に変換)されるため、偏光眼鏡を透過する透過率が波長毎に変わり、色斑が見えて視認性が低下する。低リタデーションの部材を介するか否かにより、暗くなるか、あるいは色斑が見えるのか見え方の点で相違するが、両者は、液晶表示パネルから出射する光が直線偏光であることと、偏光サングラスの特性に起因して生じる点で共通し、いずれも、周知の解決手段で解決できるものである。 (2)上記(1)の技術常識と周知技術を踏まえて、以下検討する。 ア 引用発明は、液晶セルを備える表示パネルの視認側にタッチパネル本体を配置したタッチパネル付画像表示装置であり、偏光サングラスを掛けた状態で視認することが想定される表示装置である。そうすると、引用発明の表示装置において、周知の技術課題を解決する目的で周知の解決手段を採用すること、すなわち、連続的な発光スペクトルを有する白色光源を用い、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を備えるようになすことは、当業者が容易に想到することである。 そして、引用発明に周知の解決手段を採用する際、 (ア)引用発明の上部基板と下部基板は、ポリエステル系樹脂を2軸延伸した高分子フィルムであって良いから、リタデーションを有する配向フィルムであって良いこと、 (イ)タッチパネルの基材フィルムとしてリタデーションを有するものは周知であること(例えば、国際公開第2012/161078号には、「[0077]タッチパネル22は、ガラス基板19と、スペーサ20を介して間隙を設けて設置した光学異方性基板23により構成されている。ガラス基板19及び光学異方性基板23のそれぞれの内面には図示しない透明導電膜が形成されている。光学異方性基板23は、例えば延伸したPETフィルムを使用している。…」と記載され、特開2008-192620号公報には、「【0032】上記タッチパネルにおいて、パネル板P1として上記本発明の透明導電性フィルム(透明基材フィルムとして位相差値が4000nm以上の延伸フィルムを用いたもの)または透明導電性積層体(貼り合せた透明基材フィルムの位相差値の合計が4000nm以上のもの)を用いた場合には、…」と記載され、特許5051328号公報には、「【請求項1】ポリエステル基材上にプライマー層が形成され、前記プライマー層上にハードコート層が形成された光学積層体であって、前記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有…する光学積層体。…【請求項9】請求項1…記載の光学積層体を用いたタッチパネルであって、前記光学積層体のハードコート層のプライマー層側と反対側の表面上に不可視電極が設けられている…タッチパネル。」と記載されている。)、 (ウ)一般に、画像表示装置には種々の機能を有する複数の光学フィルムが用いられるところ、光学フィルムに複数の機能を持たせることにより、使用する光学フィルムの枚数を低減することは周知の技術手段であること(例えば、特開2000-276301号公報には、「【0030】…透明基板を位相差板と兼ねることにより、タッチパネルの構成層数を減らして、全体の厚さを低減するとともに、製造コストを低減させ、さらに入力感度を改善することもできる。」と記載され、特開2012-32480号公報には、「【0005】次にタッチパネルについて記載する。液晶表示装置やCRT、EL、PDPなどの表示媒体の上にタッチパネル部を重ねたアウタータイプの抵抗膜式タッチパネルの場合には、外光下での視認性を良くするために上部基板の上に円偏光板(λ/4板と直線偏光板を積層した偏光板)を設けて外光反射を防止していたが、さらに薄型化が求められているため、λ/4板が電極基板も兼ねた型の部材が求められている。」と記載されている。)、 を踏まえ、引用発明の「タッチパネル部の上部基板と下部基板」として、高いリタデーションの部材(例えば「引用例2の技術事項2」のPETフィルム(リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.848あるいは0.832である。)、上記国際公開第2012/161078号に開示された位相差値が4000nm以上の透明基材フィルム、上記特許5051328号公報に開示された8000nm以上のリタデーションを有するする光学積層体等のリタデーションを有する配向フィルム)を採用し、上部基板と下部基板が全体として高いリタデーション(例えば、3000nm以上)を有するとともに、その遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が凡そ45度となるように配置し、上記相違点2のア、イ、エに係る本件発明1の発明特定事項となすことに困難性はない。 ここで、リタデーションは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△N=|Nx-Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△N×d)で定義され、膜厚が厚くなるほどリタデーションが大きくなる傾向があるところ、引用発明の上部基板と下部基板は厚さが異なる(上部基板の膜厚は例えば、175μm、下部基板の膜厚は例えば125μmである)から、互いに異なるリタデーションを有するよう為すことに困難性はなく、上記相違点2のウの前半部分(「前記2枚の飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有」すること)に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものである。そして、引用例2の技術事項2のPETフィルム-2は、厚み200μmでリタデーションが21520nmであること、上記特許5051328号公報の【0117】には、膜厚100μmでリタデーションが10000nmのポリエステル基材が記載されていることに照らせば、厚さが175μmの上部基板と、厚さが125μmの下部基板のリタデーション差は1900nm以上であってよく、上記相違点ウの後半部分(リタデーションの差が1900nm以上)に係る本件発明1の発明特定事項と為すことに困難性はない。 イ そして、引用発明の上部基板と下部基板は、全体として高いリタデーション(例えば、3000nm以上であるが、上記1(2)ア(キ)【0022】の記載によれば、「より更に好ましい下限値は10000nm」と記載され、より高いリタデーションが好ましい。)を有すればよいから、各基板のリタデーション値や各基板の配向軸の形成する角をどのように設定するかは、技術常識2を踏まえて、当業者が適宜設定する設計事項である。そして、相違点2のオ、カに係る本件発明1の発明特定事項に、全体として例えば3000nm以上の高いリタデーションを得て視認性が低下しないようにする以上の格別の技術上の意義は認められないから、例えば、2枚の基材フィルムの全体のリタデーションがなるべく大きくなるように、すなわち、相加に近い関係となるように、それぞれの配向主軸が形成する角を1度を超えて20度以下の略平行(技術常識2によれば、光軸方向が平行と直交の中間では、位相量の相加から相滅まで三角関数的に減少するから、平行から少し外れても実質的に各リタデーションの和となる状態にあるいえる。なお、本件明細書でも、「【0023】…3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する1枚の配向フィルムは、その配向主軸が略平行である限り、隣接する2枚以上の配向フィルムが組合せられることによって構成されるものであっても良い。例えば、2000nmのリタデーションを有する配向フィルムと1000nmの配向フィルムの配向主軸が平行状態にあるとき、これらは3000nmのリタデーションを有する1枚の配向フィルムとみなすことができる。ここで、略平行とは、2つの配向主軸が形成する角(2枚の配向フィルムが同一平面上にあると仮定する)が0度±20度以下、…であり、好ましくは0度である。この関係にある場合には複数のフィルムを「フィルム群」として1枚のフィルムとみなすことができる。ここで、「隣接する」とは、隣り合う配向フィルムが貼り合わされている場合及び貼り合わされてない場合の両方を含む。」と記載されている。)となし、上記相違点2のオ、カに係る本件発明1の発明特定事項と為すことは、当業者が容易に想到し得ることである。 ウ 以上によれば、引用発明に周知の解決手段を採用し、上記相違点1、2ア?カに係る本件発明1の発明特定事項となすことは、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 (2)作用効果について 本件発明1が奏する作用効果は、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に予測しうるものと認める。なお、本件明細書の【0019】に「2枚のフィルムのリタデーション差が大きいほど、上記角度の許容範囲は大きくなる。」との記載がある。しかしながら、本件発明1は物の発明であり、各リタデーションの値(差)と各配向主軸のなす角を関連付けて設定する方法の発明ではないから、角度の許容範囲が大きくなることは、本件発明1の作用効果とは認められない。 (3)特許権者の主張について(令和1年6月3日付け意見書) ア 特許権者は、令和1年6月3日付け意見書において、1枚で用いる場合には虹斑が生じない旨記載されている高リタデーション配向フィルムを2枚用いる場合、それらの配向主軸が互いに平行な状態からずれると虹斑が生じうるという課題をはじめて見出し、本件発明は、2枚の高リタデーション配向フィルム間に1900nm以上のリタデーション差を設けることにより解決するものであって、本件発明の作用効果は技術常識では説明し尽くせない格別顕著なものである旨主張するので、以下、検討する。 本件発明1は、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角について、「30度以下」であること、「1度以下」を除くことを特定事項として備える。ところで、本件明細書の表1の事件No.1、試験No.10によれば、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角が概ね20度以下であれば、Re差が0nmであっても虹斑は目立たない。そうすると、本件発明1のうち、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角が1度を超えて概ね20度以下の範囲では、Re差に関わりなく虹斑が目立たないのであるから、特許権者が主張する上記課題が生じたり、作用効果を奏するものとは認められない。よって、新たな課題を見出し、格別顕著な作用効果を奏する旨の上記特許権者の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおり、本件発明1は、引用発明、引用例2の技術事項、引用例3の技術事項、引用例4の技術事項1、2、引用例5の技術事項1、2、技術常識1、2、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 判断(本件発明2) (1)本件発明2について 本件発明2は、 ア 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり」との特定事項を有さず、 イ 本件発明1が「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く」と特定するのに替えて、「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く」と特定する、 発明である。 (2)対比 本件発明2と引用発明を対比すると、両者は、相違点1、相違点2ア、ウ?オの点で相違するとともに、以下の相違点2カ’の点で相違する。 相違点2カ’:「2枚の基材フィルム」に関し、本件発明2は「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く)」のに対し、引用発明はそのようなものであるのか否か明らかでない点。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1、相違点2ア、ウ?オ:本件発明1の判断と同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。 相違点2カ’:本件発明1の判断と同様に、2枚の基材フィルムの全体のリタデーションがなるべく大きくなるように、すなわち、相加に近い関係となるように、それぞれの配向主軸が形成する角を3度を超えて20度以下の略平行となし、上記相違点2のカ’に係る本件発明2の発明特定事項と為すことは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)小括 以上によれば、引用発明に周知の解決手段を採用し、上記相違点1、2ア、ウ?オ、カ’に係る本件発明2の発明特定事項となすことは、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 6 本件発明3 (1)本件発明3について 本件発明3は、 ア 本件発明1が「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり」と特定するのに替えて、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり」と特定し、 イ 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」との特定事項を有さず、 ウ 本件発明1に「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く」との特定事項を追加する、 発明である。 (2)対比 本件発明3と引用発明を対比すると、両者は、相違点1、相違点2ア、イ、エ、カの点で相違するとともに、以下の相違点2ウ’キの点で相違する。 相違点2ウ’:「2枚の基材フィルム」に関し、本件発明3は「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であ」るのに対し、引用発明はそのようなものであるのか否か明らかでない点。 相違点2キ:「2枚の基材フィルム」に関し、本件発明3は、「(但し」、「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)」のに対し、引用発明は、そのようなものであるのか否か明らかでない点。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1、相違点2ア、イ、ウ’の前半部分、エ、カ:本件発明1の判断と同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。 相違点2ウ’の後半部分:本件発明1の判断と同様に、引用例2の技術事項2のPETフィルム-2は、厚み200μmでリタデーションが21520nmであること、上記特許5051328号公報の【0117】には、膜厚100μmでリタデーションが10000nmのポリエステル基材が記載されていることに照らせば、厚さが175μmの上部基板と、厚さが125μmの下部基板のリタデーション差は5000nm程度あってよいから、上記相違点ウ’の後半部分(リタデーションの差が3500nm以上)に係る本件発明3の発明特定事項と為すことに困難性はない。 相違点2キ:本件発明1の判断と同様に、2枚の基材フィルムの全体のリタデーションがなるべく大きくなるように、すなわち、相加に近い関係となるように、それぞれの配向主軸が形成する角を1度を超えて20度以下の略平行となすことは、当業者が容易に想到し得ることであるから、2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除くことに困難性はない。 (4)小括 以上によれば、引用発明に周知の解決手段を採用し、上記相違点1、相違点2ア、イ、ウ’、エ、カ、キに係る本件発明3の発明特定事項となすことは、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 7 本件発明4 (1)本件発明4について 本件発明4は、 ア 本件発明1に「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との特定事項を追加し、 イ 本件発明1が「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く」と特定するものを、さらに「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)」と特定する、 発明である。 (2)対比 本件発明4と引用発明を対比すると、両者は、相違点1、相違点2ア?オの点で相違するとともに、さらに、以下の相違点2ク、カ””の点で相違する。 相違点2ク:「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」に関し、本件発明4は「白色発光ダイオードである」のに対し、引用発明はそのようなものであるのか否か明らかでない点。 相違点2カ’’:「2枚の基材フィルム」に関し、本件発明4は、「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)」のに対し、引用発明は、そのようなものであるのか否か明らかでない点。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1、相違点2ア?オ:本件発明1の判断と同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。 相違点2ク:「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」として、「白色発光ダイオード」は周知である(例えば、引用例2の技術事項1を参照。)。してみると、引用発明に上記周知の技術事項を採用し、上記相違点2クに係る本件発明4の発明特定事項と為すことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 相違点2カ’’:本件発明1の判断と同様に、2枚の基材フィルムの全体のリタデーションがなるべく大きくなるように、すなわち、相加に近い関係となるように、それぞれの配向主軸が形成する角を5度を超えて20度以下の略平行となし、上記相違点2カ’’に係る本件発明4の発明特定事項と為すことは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)小括 以上によれば、引用発明に周知の解決手段を採用し、上記相違点1、相違点2ア?オ、カ’’、クに係る本件発明4の発明特定事項となすことは、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 8 本件発明5 (1)本件発明5について 本件発明5は、本件発明2を引用する発明であり、本件発明2は上記5(1)で本件発明1と相違することを踏まえると、本件発明5は、 ア 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり」との特定事項を有さず、 イ 本件発明1に「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との特定事項を追加し、 ウ 本件発明1が「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く」と特定するものを、さらに「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く」と特定する、 発明である。 (2)対比 本件発明5と引用発明を対比すると、両者は、相違点1、相違点2ア、ウ?オ、クの点で相違するとともに、さらに、以下の相違点2カ’’’の点で相違する。 相違点2カ’’’:「2枚の基材フィルム」に関し、本件発明5は、「(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)」のに対し、引用発明は、そのようなものであるのか否か明らかでない点。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1、相違点2ア、ウ?オ、ク:上記と同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。 相違点2カ’’’:本件発明5が引用する本件発明2は「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」との特定を有するから、2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角は、実質的に、20度を超え30度以下である。そうすると、2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角は、虹斑を低減する観点で好ましい角度である略平行(20度以下)あるいは略垂直に配置するところ、敢えて好ましい角度(20度以下)を除いて配置することは、当業者が容易になし得るものではない。したがって、相違点2カ’’’は、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとは言えない。 (4)小括 以上によれば、引用発明に周知の解決手段を採用し、相違点2カ’’’に係る本件発明5の発明特定事項となすことは、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 9 本件発明6 (1)本件発明6について 本件発明6は、 ア 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり」との特定事項を有さず、 イ 本件発明1が「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり」と特定するのに替えて、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり」と特定し、 ウ 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」との特定事項を有さず、 エ 本件発明1が「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く」と特定するのに替えて、「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く」と特定し、 オ 本件発明1に「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く」との特定事項を追加する、 発明である。 (2)対比 本件発明6と引用発明を対比すると、両者は、相違点1、相違点2ア、ウ’、エ、カ’、キの点で相違する。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1、相違点2ア、ウ’、エ、カ’、キ:上記と同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)小括 以上によれば、引用発明に周知の解決手段を採用し、上記相違点1、相違点2ア、ウ’、エ、カ’、キに係る本件発明6の発明特定事項となすことは、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 10 本件発明7 本件発明7は、本件発明3を引用する発明であり、本件発明3は上記6(1)の点で本件発明1と相違することを踏まえると、本件発明5は、 ア 本件発明1に「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との特定事項を追加し、 イ 本件発明1が「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり」と特定するのに替えて、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり」と特定し、 ウ 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」との特定事項を有さず、 エ 本件発明1が、「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く」と特定するのを、さらに「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く」と特定し、 オ 本件発明1に「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く」との特定事項を追加する、 発明である。 (2)対比 本件発明7と引用発明を対比すると、両者は、相違点1、相違点2ア、イ、ウ’、エ、カ’’、キ、クの点で相違する。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1、相違点2ア、イ、ウ’、エ、カ’’、キ、ク:上記と同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)小括 以上によれば、引用発明に周知の解決手段を採用し、上記相違点1、相違点2ア、イ、ウ’、エ、カ’’、キ、クに係る本件発明7の発明特定事項となすことは、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 11 本件発明8 (1)本件発明8について 本件発明8は、本件発明6を引用する発明であり、本件発明6は上記9(1)の点で本件発明1と相違することを踏まえると、本件発明8は、 ア 本件発明1に「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との特定事項を追加し、 イ 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり」との特定事項を有さず、 ウ 本件発明1が「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり」と特定するのに替えて、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり」と特定し、 エ 本件発明1が有する「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」との特定事項を有さず、 オ 本件発明1が「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く」と特定するのを、さらに「但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く」と特定し、 カ 本件発明1に「前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く」との特定事項を追加する、 発明である。 (2)対比 本件発明8と引用発明を対比すると、両者は、相違点1、相違点2ア、ウ’、エ、カ’’’、キ、クの点で相違する。 (3)判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1、相違点2ア、ウ’、エ、キ、ク:上記と同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。 相違点2カ’’’:上記8(3)と同様の理由により、当業者が容易になし得るものではない。したがって、本件発明8は、引用発明、「引用例2の技術事項」及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとは言えない。 第6 当審の判断(異議申立理由について) 1 進歩性(その1) (1)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証は、上記第5で検討した引用例2である。したがって、甲第1号証には、引用例2の技術事項2のPETフィルムを用いた引用例2の技術事項1の液晶表示装置が記載されており、以下の発明が開示されている。 「バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、 サングラスなどの偏光板を通して液晶表示装置の画面を観察した時、その観察角度によらず高度に良好な視認性を確保することを目的とし、 バックライト光源として連続的な発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを用いるとともに、 前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用い、 上記高分子フィルムは、例えば、厚み38μm、3724nmのリタデーションを有し、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.848であるPETフィルム-1、あるいは、PETフィルム-1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更して作成した、厚み200μm、21520nmのリタデーションを有し、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.832であるPETフィルム-2であり、 高分子フィルムのリタデーションに特有の干渉色を示す高分子フィルムの透過光は、そのスペクトルの包絡線形状が光源の発光スペクトルの形状を保存した相似形を有し、実効的に光源の発光スペクトルからなる、 液晶表示装置。」(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 (2)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 ア 本件発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」と甲1発明の「連続的な発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを用いる」「バックライト光源」を対比すると、両者は相当関係にある。 イ 本件発明1の「画像表示セル」と甲1発明の「液晶セル」を対比すると、両者は「液晶セル」の点で一致する。 ウ 本件発明1の「前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子」と甲1発明の「液晶セルの視認側に配した偏光板」を対比する。 一般に、偏光板が、偏光子と偏光子保護フィルムで構成されることは、周知である。してみると、両者は、「液晶セルの視認側に配置される偏光子」の点で一致する。 エ 本件発明1の「前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム」と、甲1発明の「前記偏光板の視認側」に「配して用い」る「高分子フィルム」を対比する。 本件発明1の「2枚の基材フィルム」は、発明の詳細な説明の記載によれば、高分子フィルムであって良いものである。してみると、両者は「前記偏光子より視認側に配置される高分子フィルム」の点で一致する。 オ 本件発明1の「前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであ」ることと、甲1発明の「3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルム」を対比すると、両者は、前記高分子フィルムは「3000nm以上30000nm以下のリタデーションを有する配向フィルム」である点で一致する。 カ 本件発明1の「前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であ」ることと、甲1発明の「上記高分子フィルムは、例えば、…リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.848であるPETフィルム-1、あるいは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.832であるPETフィルム-2であ」ることを対比する。 両者は、前記フィルムは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.848あるいは0.832であ」る点で一致する。 キ 本件発明1の「前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であ」ることと、甲1発明の「前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配」することを対比する。 両者は、「前記フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角は、凡そ45度であ」る点で一致する。 ク 本件発明1の「画像表示装置」と甲1発明の「液晶表示装置」を対比すると、両者は、「液晶表示装置」の点で一致する。 ケ 以上によれば、本件発明1と甲1発明は、 「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)液晶セル、 (3)前記液晶セルより視認側に配置される偏光子、 (4)前記偏光子より視認側に配置される高分子フィルム、 を有し、 前記フィルムは、3000nm以上30000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記フィルムは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.848あるいは0.832であり、 前記フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角は、凡そ45度である、 液晶表示装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点甲1-1:高分子フィルムに関し、本件発明1は、 ア 2枚の基材フィルムであり、 イ 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 ウ 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 エ 前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸が形成する角は、45度±30度以下であり、 オ 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 カ 但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く、 のに対し、甲1発明の高分子フィルムは、そのようなものなのか否か明らかでない点。 (3)判断(本件発明1) 以下、上記相違点について検討する。 液晶表示装置の偏光板より視認側にタッチパネルを配置することは周知技術であり、タッチパネルを構成する基材フィルムとして、4000nmの位相差を有する基材フィルムが甲第2号証に記載され、リタデーションが8000nm以上のポリエステル基材を含む光学積層体を用いたタッチパネルが甲第3号証に記載されている。そして、そのようなタッチパネルを引用発明の液晶表示装置の視認側に配置する際、甲1発明の高分子フィルムとしてタッチパネルの基材フィルムを用いることが当業者に容易であるとしても、さらに、タッチパネルの2枚の基材フィルムを、 ア いずれも3000nm以上のリタデーションを有し、 イ リタデーションの差が1900nm以上であり、 ウ それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸が形成する角は、45度±30度以下である、 ものとすることは、甲第2号証?甲第6号証の何れにも記載されておらず、また、そのように為すことが当業者に容易であるとはいえない。 してみると、本件発明1は、甲1発明と甲第2号証?甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 (4)判断(本件発明2-8) 本件発明2-8は、2枚の基材フィルムに関して本件発明1が備える ア いずれも3000nm以上のリタデーションを有し、 イ リタデーションの差が1900nm以上であり、 ウ それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸が形成する角は、45度±30度以下である、 ことを、何れも備えている。 してみると、本件発明2-8は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明と甲第2号証?甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 2 進歩性(その2) (1)甲3発明 甲第3号証には以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 ポリエステル基材上にプライマー層が形成され、前記プライマー層上にハードコート層が形成された光学積層体であって、 前記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有し、かつ、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.07?0.20であり、 前記プライマー層の屈折率(np)と、前記ポリエステル基材の遅相軸方向の屈折率(nx)及び進相軸方向の屈折率(ny)が、ny<np<nxなる関係を有し、 前記ハードコート層の屈折率(nh)と、前記ポリエステル基材の遅相軸方向の屈折率(nx)及び進相軸方向の屈折率(ny)が、ny<nh<nxなる関係を有する ことを特徴とする光学積層体。 … 【請求項7】 偏光素子を備えてなる偏光板であって、 前記偏光素子の表面に請求項1、2、3、4、5又は6記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。」 イ 「【背景技術】 【0002】 液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー等の画像表示装置は、画像表示パネルの表示画面側に偏光子が配置され、更に、最表面に反射防止性、ハードコート性等の機能を有する光学積層体が設けられている。 … 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ところが、本発明者らの研究によると、セルロースエステルフィルム代替フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムを用いた光学積層体を、偏光素子上に配置した場合、液晶表示装置に色の異なるムラ(以下、「ニジムラ」ともいう)が、特に表示画面を斜めから観察したときに生じ、液晶表示装置の表示品質が損なわれてしまうという問題点があることが判明した。」 ウ 「【0008】 本発明は、上記現状に鑑みて、ポリエステル基材とハードコート層との密着性に優れ、液晶表示装置の表示画像にニジムラ及び干渉縞が生じることを高度に抑制することができる光学積層体、該光学積層体を用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とする。」 エ 「【0015】 図1は、本発明の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。 図1に示すように、本発明の光学積層体10は、ポリエステル基材11上にプライマー層12が形成され、プライマー層12上にハードコート層13が形成されている。 このような構成の本発明の光学積層体において、上記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有する。リタデーションが8000nm未満であると、本発明の光学積層体を用いた液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じてしまう。一方、上記ポリエステル基材のリタデーションの上限としては特に限定されないが、3万nm程度であることが好ましい。3万nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られず、また、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない。 上記ポリエステル基材のリタデーションは、ニジムラ防止性及び薄膜化の観点から、1万?2万nmであることが好ましい。」 オ 「【0086】 このような本発明の光学積層体を用いた本発明の偏光板において、上記光学積層体は、上記ポリエステル基材の遅相軸と後述する偏光素子(液晶セルの視認側に配置された偏光素子)の吸収軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように配設されることが好ましい。上記ポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度が上記範囲内にあることで、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じることを極めて高度に抑制することができる。この理由は明確ではないが、以下の理由によると考えられる。 すなわち、外光や蛍光灯の光のない環境下(以下、このような環境下を「暗所」ともいう)では、本発明の光学積層体のポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度は、どのような角度であってもニジムラの発生を抑制できる。しかしながら、外光や蛍光灯の光のある環境下(以下、このような環境下を「明所」ともいう)においては、外光や蛍光灯の光は、連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではないため、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまう。 更に、液晶表示装置におけるカラーフィルターを透過したバックライトの光も連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではくなるため、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまうと推測している。 【0087】 本発明はまた、上記光学積層体又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等が挙げられる。 【0088】 上記LCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。 【0089】 本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側(基材側)から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。 … 【0092】 本発明の光学積層体は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、液晶パネル、PDP、ELD、タッチパネル、電子ペーパー等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。 【0093】 なかでも、本発明の光学積層体は、タッチパネルに好適に用いることができる。このような本発明の光学積層体を用いたタッチパネルもまた、本発明の一つである。 すなわち、本発明のタッチパネルは、本発明の光学積層体を用いたタッチパネルであって、上記光学積層体のハードコート層のプライマー層側と反対側の表面上に不可視電極が設けられていることを特徴とする。 ここで、一般的に、タッチパネルには、位置検出の方法により、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などが知られている。 上記抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性フィルムと透明導電体層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性フィルムに電流を流し透明導電体層付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルは、基材上に透明導電層を有するものを基本的構成とし、可動部分がないことが特徴であり、高耐久性、高透過率を有するため、液晶表示ディスプレイ、携帯電話及び車載用ディスプレイ等において適用されている。 … 【0094】 なお、上記不可視電極とは、透明導電体層の電極パターンが表示画面側から視認できないようにするための光学機能層が積層された状態の電極であり、その構成としては、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電体層がこの順に積層された構成が挙げられる。… 【0095】 また、本発明の光学積層体が、ポリエステル基材の両面にプライマー層及びハードコート層が形成された構成の場合、本発明のタッチパネルは、上記不可視電極は、該光学積層体の少なくとも一方のハードコート層の、プライマー層側と反対側の表面上に不可視電極が設けられている。このような構成のタッチパネルもまた、本発明の一つである。 図3は、本発明のタッチパネルの一例を模式的に示す断面図である。 図3に示した本発明のタッチパネル30において、本発明の光学積層体は、ポリエステル基材31の両面にプライマー層32が形成され、このプライマー層32のそれぞれポリエステル基材31側と反対側面上にハードコート層33が形成されている。そしてこのような本発明の光学積層体は、粘着層300介して2層積層されている(以下、表示画面側の光学積層体を上層の光学積層体、他方の光学積層体を下層の光学積層体ともいう)。更に、上層の光学積層体及び下層の光学積層体は、それぞれ、表示画面側のハードコート層33の面上に不可視電極34が積層されている。この不可視電極34は、ハードコート層33側から高屈折率層35、低屈折率層36及び透明導電体層37がこの順に積層されている。 このような本発明のタッチパネル30は、粘着層300を介して、下層の光学積層体の不可視電極34と、上層の光学積層体の表示画面側と反対側のハードコート層33とが積層されている。 また、上層の光学積層体のハードコート層33のプライマー層32側と反対側に積層された不可視電極34は、粘着層38を介してカバーガラス39が設けられ、このカバーガラス39が最表面を構成している。」 カ 「【0116】 (実施例1) 溶融ポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。 この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、その両面にプライマー層用組成物1をロールコーターにて均一に塗布した。 次いで、この塗布フィルムを引続き95℃で乾燥し、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、リタデーション=10000nm、膜厚=100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10のポリエステル基材を得た。なお、プライマー層の屈折率は1.65、膜厚は100nmであった。 【0117】 その後、形成したプライマー層上に、ハードコート層用組成物1をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。 次いで、その塗膜に紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムジャパン社製:Hバルブ(商品名)〕を用いて、照射量150mJ/cm^(2)で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmのハードコート層を形成し、光学積層体を製造した。 なお、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0118】 (実施例2) ハードコート層用組成物1に代えてハードコート層用組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造した。なお、ハードコート層の屈折率は1.61であった。 【0119】 (実施例3) 溶融ポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。 この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率5.2倍に延伸した後、その両面にプライマー層用組成物2をロールコーターにて均一に塗布した。 次いで、この塗布フィルムを引続き95℃で乾燥し、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.2倍にて延伸を行い、リタデーション=9000nm、膜厚=60μm、nx=1.73、ny=1.58、Δn=0.15のポリエステル基材を得た。なお、プライマー層の屈折率は1.57、膜厚は20nmであった。 その後、形成したプライマー層上に、ハードコート層用組成物1をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。 次いで、その塗膜に紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムジャパン社製:Hバルブ(商品名)〕を用いて、照射量150mJ/cm^(2)で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmのハードコート層を形成し、光学積層体を製造した。 なお、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0120】 (実施例4) 溶融ポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。 この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率3.5倍に延伸した後、その両面にプライマー層用組成物1をロールコーターにて均一に塗布した。 次いで、この塗布フィルムを引続き95℃で乾燥し、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、リタデーション=8750nm、膜厚=125μm、nx=1.685、ny=1.615、Δn=0.07のポリエステル基材を得た。なお、プライマー層の屈折率は1.65、膜厚は300nmであった。 その後、形成したプライマー層上に、ハードコート層用組成物1をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。 次いで、その塗膜に紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムジャパン社製:Hバルブ(商品名)〕を用いて、照射量150mJ/cm^(2)で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmのハードコート層を形成し、光学積層体を製造した。 なお、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0121】 (実施例5) 溶融ポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。 この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率5.2倍に延伸した後、その両面にプライマー層用組成物1をロールコーターにて均一に塗布した。 次いで、この塗布フィルムを引続き95℃で乾燥し、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.2倍にて延伸を行い、リタデーション=9000nm、膜厚=60μm、nx=1.73、ny=1.58、Δn=0.15のポリエステル基材を得た。なお、プライマー層の屈折率は1.65、膜厚は300nmであった。 その後、形成したプライマー層上に、ハードコート層用組成物1をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。 次いで、その塗膜に紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムジャパン社製:Hバルブ(商品名)〕を用いて、照射量150mJ/cm^(2)で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmのハードコート層を形成し、光学積層体を製造した。 なお、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0122】 (実施例6) プライマー層用組成物1に代えて、プライマー層用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。 なお、ポリエステル基材のリタデーション=10000nm、膜厚=100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10であり、プライマー層の屈折率は1.57、膜厚は20nmであった。また、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0123】 (実施例7) ハードコート層用組成物1に代えてハードコート層用組成物3を用い、プライマー層の膜厚を10nmとした以外は実施例6と同様にして、光学積層体を製造した。なお、ハードコート層の屈折率は1.61であった。 【0124】 (実施例8) 実施例6と同条件にて、ポリエステル基材、プライマー層及びハードコート層を形成し、次いで、そのハードコート層上に、バーコーターを用いて低屈折率層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。その塗膜にハードコート層と同様に乾燥、紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚100nmの低屈折率層を形成し、低屈折率層を有する光学積層体を製造した。 【0125】 (実施例9) 溶融ポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。 この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率3.5倍に延伸した後、その両面にプライマー層用組成物2をロールコーターにて均一に塗布した。 次いで、この塗布フィルムを引続き95℃で乾燥し、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、リタデーション=8750nm、膜厚=125μm、nx=1.685、ny=1.615、Δn=0.07のポリエステル基材を得た。なお、プライマー層の屈折率は1.57、膜厚は20nmであった。 その後、形成したプライマー層上に、ハードコート層用組成物1をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。 次いで、その塗膜に紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムジャパン社製:Hバルブ(商品名)〕を用いて、照射量150mJ/cm^(2)で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmのハードコート層を形成し、光学積層体を製造した。 なお、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0126】 (実施例10) プライマー層用組成物1に代えて、プライマー層用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。 なお、ポリエステル基材のリタデーション=10000nm、膜厚=100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10であり、プライマー層の屈折率は1.57、膜厚は3nmであった。また、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0127】 (実施例11) プライマー層用組成物1に代えて、プライマー層用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。 なお、ポリエステル基材のリタデーション=10000nm、膜厚=100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10であり、プライマー層の屈折率は1.57、膜厚は30nmであった。また、ハードコート層の屈折率は1.65であった。」 キ 「【0136】 (ニジムラ評価) 実施例、比較例にて作製した光学積層体を、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側の偏光素子上に配置し、液晶表示装置を作製した。なお、ポリエステル基材の遅相軸と液晶モニターの観察者側の偏光素子の吸収軸とのなす角度が0°となるように配置した。 そして、暗所及び明所(液晶モニター周辺照度400ルクス)にて、正面及び斜め方向(約50度)から目視及び偏光サングラス越しに表示画像の観察を行い、ニジムラの有無を以下の基準に従い評価した。偏光サングラス越しの観察は、目視よりも非常に厳しい評価法である。観察は10人で行い、最多数の評価を観察結果としている。 ◎:偏光サングラス越しでニジムラが観察されない。 ○:偏光サングラス越しでニジムラが観察されるが、薄く、目視ではニジムラが観察されない、実使用上問題ないレベル。 △:偏光サングラス越しでニジムラが観察され、目視ではニジムラがごく薄く観察される。 ×:偏光サングラス越しでニジムラが強く観察され、目視でもニジムラが観察される。」 ク 表1は以下のとおりである。 ケ 図3は以下のとおりである。 してみると、甲第3号証には、以下の発明が開示されている。 「光源、液晶表示セル、液晶表示セルより視認側に配置される偏光子、及び前記偏光子より視認側に配置されるタッチパネルを有し、 前記タッチパネルは2枚のポリエステル基材を有し、 前記2枚のポリエステル基材は、いずれも8000nm以上のリタデーションを有する配向フィルムである、タッチパネル付きの液晶表示装置。」(以下「甲3発明」という。) (2)本件発明1と甲3発明の対比 本件発明1と甲3発明は、 「(1)光源、 (2)液晶表示セル、 (3)前記液晶表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される、2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、8000nm以上のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点甲3-1:光源に関し、本件発明1は「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」であるのに対し、甲3発明はそのようなものなのか否か明らかでない点。 相違点甲3-2:2枚の基材フィルムに関し、本件発明1は、 ア いずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 イ 互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 ウ それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角は、45度±30度以下であり、 エ それぞれの配向主軸が形成する角は、30度以下であり、 カ それぞれの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く のに対し、甲3発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。 (3)判断(本件発明1) 事案に鑑み、はじめに、上記相違点甲3-2イについて検討する。 偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルムが、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であることについて、特許異議申立人は、2枚の配向フィルムが非平行に配置される場合において、一定以上のリタデーションの合算値を確保して虹斑を抑制するために当業者が適宜なし得ることである旨主張する。しかしながら、甲第3号証には、2枚のポリエステル基材が互いに異なるリタデーションを有することについて開示や示唆はない。また、偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルムが、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であることは、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証?甲第6号証の何れにも記載がない。してみると、引用発明において相違点甲3-2イに係る本件発明1の発明特定事項と為すことは、当業者が適宜なし得ることとは言えない。 したがって、本件発明1は、甲3発明と甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証?甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 (4)対比・判断(本件発明2-8) 本件発明2-8は、何れも、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であ」るとの特定事項、あるいは、「前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であ」るとの特定事項を備えている。 してみると、本件発明2-8は、本件発明1と同様に、甲3発明と甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証?甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 3 拡大先願(その1) 特許異議が申立てられた訂正前請求項1及び4に係る発明は、本件訂正請求が認められたことにより、本件発明1及び4であるが、念のため、以下では本件発明1?8について検討しておく。 (1)甲7発明 甲第7号証には以下の記載がある。 ア 「【0023】 <タッチパネル用センサーフィルム> 図1に示すように、タッチパネル用センサーフィルム3は、タッチパネル装置1において透明表面基板2に対向する表面側から、透明基材301と透明基材302を積層してなる多層透明基材30、保護基材33が、透明粘着層34を介して積層されている。又、後に詳細を説明する通り、透明基材301、透明基材302のそれぞれの裏面側には、導電パターン層311(X方向)、312(Y方向)がそれぞれ形成されている。」 イ 「【0026】 多層透明基材30を構成する透明基材301、302は、3000nm以上のリタデーションを有する。透明基材301、302のリタデーションが3000nm未満であると、例えば、これらを2枚積層した多層透明基材30を用いた場合であっても、タッチパネル装置1の表示画像にニジムラが生じてしまう。一方、透明基材301、302のリタデーションの上限は特に限定されないが、30000nm以下であることが好ましく、20000nm程度であることよりが好ましい。30000nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られず、又、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない。」 ウ 「【0033】 透明基材301、302を得る方法としては、上述したリタデーションを充足する方法であれば特に限定されないが、例えば、上記PET等のポリエステルからなる場合、材料のポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された未延伸ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンター等を用いて横延伸後、熱処理を施す方法が挙げられる。上記横延伸温度としては、80?130℃が好ましく、より好ましくは90?120℃である。又、横延伸倍率は2.5?6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0?5.5倍である。上記横延伸倍率が6.0倍を超えると、得られるポリエステルからなる透明基材の透明性が低下しやすくなり、延伸倍率が2.5倍未満であると、延伸張力も小さくなるため、得られる透明基材の複屈折が小さくなり、リタデーションを3000nm以上とできないことがある。 【0034】 又、本発明においては、二軸延伸試験装置を用いて、上記未延伸ポリエステルの横延伸を上記条件で行った後、該横延伸に対する流れ方向の延伸(以下、縦延伸とも言う)を行ってもよい。この場合、上記縦延伸は、延伸倍率が2倍以下であることが好ましい。上記縦延伸の延伸倍率が2倍を超えると、Δnの値を上述した好ましい範囲にできないことがある。又、上記熱処理時の処理温度はしては、100?250℃が好ましく、より好ましくは180?245℃である。」 エ 「【0040】 尚、透明基材301、302は、遅相軸方向の配向角差が6°以内であることが好ましく、4°以内であることがより好ましく、2°以内であることが更に好ましい。透明基材301、302の偏光角差が6°以内にあることにより、後に説明する通り、タッチパネル装置1において、偏光板4の吸収軸と多層透明基材30の遅相軸の方向とのなす角度を0°又は90度に設置した場合のニジムラ発生を特に防止できる。透明基材301、302に、6°を超えるような大きな配向角差が存在した場合、光の透過率が上昇し、干渉色発生の原因となるからである。 【0041】 導電パターン層311、312は、多層透明基材30上、或いは、透明基材301、302上に形成された透明導電材料層をパターニングしたものでもよく、不透明な金属層をパターン形成し開口部の存在によって見かけ上透明に見えるものでもよい。」 オ 「【0051】 <タッチパネル装置> 上記説明したタッチパネル用センサーフィルム3を用いたタッチパネル装置1も又、本発明の1つである。以下、本発明の表示装置の好ましい一実施例として、タッチパネル装置1について説明する。 【0052】 タッチパネル装置1において、偏光板4、7は、所望の偏光特性を備えるものであれば特に限定されず、一般的に液晶表示装置の偏光板に用いられるものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコールフィルムが延伸されてなり、ヨウ素を含有する偏光板が好適に用いられる。 … 【0055】 液晶パネル6としては、特に限定されず、一般的に液晶表示装置の液晶パネルとして公知のものを用いることができる。例えば、図1に示すように、液晶層61の上下をガラス板62で挟んだ一般的な構造を有する液晶パネル、具体的には、TN、STN、VA、IPS及びOCB等の表示方式のものを用いることができる。 【0056】 バックライト8の一次光源は、特に限定されないが、白色発光ダイオード(白色LED)であることが好ましい。上記白色LEDとは、蛍光体方式、即ち化合物半導体を使用した青色光又は紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子のことである。なかでも、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは、連続的で幅広い発光スペクトルを有していることからニジムラの改善に有効であるとともに、発光効率にも優れるため、本発明における上記バックライトの一次光源として好適である。又、消費電力の小さい白色LEDを広汎に利用可能になるので、省エネルギー化の効果も奏することが可能となる。 … 【0060】 ここで、クロスニコル状態に置かれた2枚の偏光板を透過する光の透過率は、下記式(数2)によって表される。尚、下記数2において、I/I0は、クロスニコル状態に置かれた2枚の偏光板を透過する光の透過率を示し、Iは、クロスニコル状態に置かれた2枚の偏光板を透過した光の強度を、I0は、クロスニコル状態に置かれた2枚の偏光板に入射する光の強度を、それぞれ示す。 【0061】 (数2) I/I0=sin22θ・sin2(πRe/λ) 【0062】 又、クロスニコルに配置した偏光板間に対し、ある角度θで設置されたとき、該偏光板 間を透過する光の透過率は下記の式(数3)で表される。数2において、Iはクロスニコルに配置した偏光板間を透過した光の強度を示し、I0はクロスニコルに配置した偏光板間に入射する光の強度を示す。この場合、偏光板4の吸収軸に対して、多層透明基材30の遅相軸の方向のなす角度(θ)を45°としたときに、光の透過率は最大となるが、透過率は、多層透明基材30のリタデーション及び透過する光の波長によって変化するため、上記リタデーションの値に特有の干渉色(ニジムラ等)が観測される。ここで、上記角度(θ)を0°又は90°とした場合、上記光の透過率はゼロとなるため、干渉色は観測されなくなる。 【0063】 (数3) I/I0=sin22θ・sin2(πRe/λ)」 カ 図1は以下のとおりである。 してみると、甲第7号証には、以下の発明が開示されている。 「バックライト8としての連続的で幅広い発光スペクトルを有している白色発光ダイオード、液晶パネル6、液晶パネルより視認側に配置される偏光板4、及び、偏光板4より視認側に配置されるタッチパネルセンサーフィルム3を有し、 前記タッチパネルセンサーフィルム3は多層透明基材30を有し、 前記多層透明基材30は、リタデーション3000nm以上の透明基材301及び302を有し、 前記透明基材301及び透明基材302には透明導電材料層が形成され、 前記透明基材301及び302は、遅相軸方向の配向角差が6°以内である、 タッチパネルセンサー付きの液晶表示装置。」(以下「甲7発明」という。) (2)対比(本件発明1と甲7発明) 本件発明1と甲7発明を対比すると、両者は、 「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)液晶セル、 (3)前記液晶セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が6度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く)。」 点で一致し、以下の点で相違する。 相違点甲7:2枚の基材フィルムに関し、本件発明1は、 ア 「リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり」、 イ 「互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であ」る、 のに対し、甲7発明は、そのようなものなのか否か不明である点。 (3)判断(本件発明1) 「互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であ」る点は、実質的な相違点である。 してみると、本件発明1は、甲7発明と実質的に同一であるとはいえない。 (4)本件発明2-8について 本件発明2-8は、「互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上」あるいは「互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上」である点が特定されているから、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2-8は、甲7発明と実質的に同一であるとはいえない。 5 拡大先願(その2) 異議が申し立てられた訂正前請求項1、3及び4に係る発明は、本件訂正請求が認められたことにより、本件発明1、3、4、7となるが、念のため、以下では本件発明1?8について検討しておく。 (1)甲8発明 甲第8号証には以下の記載がある。 ア 「【0026】 図1に示す通り、本発明の多層透明基材30は、例えば、タッチパネル装置1を構成するタッチパネルセンサー用フィルムとして用いることができる他、様々な表示装置において用いる各種の機能フィルムを構成する積層体の材料として広く用いることができるものである。ここでは、まず、多層透明基材30について説明し、次に、多層透明基材30をタッチパネル用センサーフィルム3の基材として用いる場合、及びその他の機能フィルムの基材として用いる場合について順次説明する。 【0027】 <多層透明基材> 図2は、多層透明基材30の層構成を説明するための層構成の分離図面であり、多層透明基材30を構成する第1の透明基材301と第2の透明基材302(以下、両者を併せて単に「透明基材301、302」とも言う。)と、を分離した状態で示した模式図である。多層透明基材30は、それぞれ所定のリタデーションを有する第1の透明基材301と、第2の透明基材302とを、第1の透明基材301の遅相軸r1の方向と、第2の透明基材302の遅相軸r2の方向とが、平面視上、直行する状態で積層したものである。」 イ 「【0032】 第1の透明基材301と第2の透明基材302とは、いずれも、3000nm以上のリタデーションを有する。又、第2の透明基材302のリタデーションは、3000nm以上ではあるが、第1の透明基材301のリタデーションよりも小さい。 【0033】 透明基材のリタデーションが3000nm未満であると、これらを、その遅相軸が直行する状態において積層した多層透明基材とした場合であっても、タッチパネル装置1の表示画像に生じるニジムラを防止することはできない。一方、透明基材301、302のリタデーションの上限は特に限定されないが、30000nm以下であることが好ましく、20000nm程度であることよりが好ましい。30000nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られず、又、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない。 【0034】 そして、又、相対的に大きいリタデーションを有する第1の透明基材301のリタデーションと、相対的に小さいリタデーションを有する第2の透明基材302のそれぞれのリタデーションの差は、3000nm以上である。」 ウ 「【0040】 透明基材301、302を得る方法としては、上述したリタデーションを充足する方法であれば特に限定されないが、例えば、上記PET等のポリエステルからなる場合、材料のポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された未延伸ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンター等を用いて横延伸後、熱処理を施す方法が挙げられる。上記延伸温度としては、80?130℃が好ましく、より好ましくは90?120℃である。又、横延伸倍率は2.5?6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0?5.5倍である。上記横延伸倍率が6.0倍を超えると、得られるポリエステルからなる透明基材の透明性が低下し易くなり、延伸倍率が2.5倍未満であると、延伸張力も小さくなるため、得られる透明基材の複屈折が小さくなり、リタデーションを3000nm以上とできないことがある。 【0041】 又、本発明においては、二軸延伸装置を用いて、上記未延伸ポリエステルの横延伸を上記条件で行った後、該横延伸に対する流れ方向の延伸(以下、縦延伸とも言う)を行ってもよい。この場合、上記縦延伸は、延伸倍率が2倍以下であることが好ましい。上記縦延伸の延伸倍率が2倍を超えると、Δnの値を上述した好ましい範囲にできないことがある。又、上記熱処理時の処理温度はしては、100?250℃が好ましく、より好ましくは180?245℃である。」 エ 「【0050】 <タッチパネル用センサーフィルム> 本発明の多層透明基材30を用いた導電性積層体の好ましい一実施形態であるタッチパネル用センサーフィルム3について説明する。 【0051】 図1に示すように、多層透明基材30、保護基材33が、透明粘着層34を介して積層されている。又、第1の透明基材301、第2の透明基材302のそれぞれの裏面側には、導電層311(X方向)、312(Y方向)がそれぞれ形成されている。 … 【0053】 導電層311、312は、多層透明基材30上、或いは、第1の透明基材301、302上に形成された透明導電材料層をパターニングするか、或いは、不透明な導電層をパターン形成することによって形成することができる。」 オ 「【0074】 <タッチパネル装置> 上記説明したタッチパネル用センサーフィルム3や電磁波遮蔽フィルム3Aの等の導電性積層体、或いは、反射防止フィルム3B等の光学積層体の少なくともいずれか一つを備えるタッチパネル装置は、いずれも本発明の表示装置の実施形態の一つ中である。以下、その中から、タッチパネル用センサーフィルム3を液晶ディスプレイ(LCD)を備えるタッチパネル方式の表示装置に配置したタッチパネル装置1について説明する。 【0075】 図1に示すように、本発明のタッチパネル用センサーフィルム3を用いた表示装置の一例であるタッチパネル装置1は、透明表面基板2、タッチパネル用センサーフィルム3、偏光板4、カラーフィルター5、液晶パネル6がこの順序で配置された構成を有する。タッチパネル装置1は、液晶パネル6のカラーフィルター5と反対側にバックライト8を有するものであり、更に、液晶パネル6を、2つの偏光板で挟持された構造であってもよく、この場合、液晶パネル6のカラーフィルター5と反対側面に偏光板4と同構成の偏光板7が設けられることとなるが、これら2つの偏光板4、7は、通常、互いの吸収軸が90°となるように配設(クロスニコル)される。 … 【0080】 バックライト8の一次光源は、特に限定されないが、白色発光ダイオード(白色LED)であることが好ましい。上記白色LEDとは、蛍光体方式、即ち化合物半導体を使用した青色光又は紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子のことである。なかでも、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは、連続的で幅広い発光スペクトルを有していることからニジムラの改善に有効であるとともに、発光効率にも優れるため、本発明における上記バックライトの一次光源として好適である。又、消費電力の小さい白色LEDを広汎に利用可能になるので、省エネルギー化の効果も奏することが可能となる。 … 【0084】 尚、特にタッチパネル装置等の表示装置を、偏光サングラスの使用によって視認する必 要のある場合には、多層透明基材30の遅相軸の方向と、偏光板4の吸収軸とのなす角度が、45°±30°の範囲となるようにタッチパネル用センサーフィルム3と偏光板4が配設されたものを好ましく用いることができる。このような構成とすることにより、ニジムラを防止する光学特性を有効に利用して、タッチパネル用センサーフィルム全体で、直線偏光による入射光を、これと直交する直線偏光成分を有する光により出射することができ、これにより、例えば屋外不特定多数が視認する場合のディスプレイにおいて想定される様に、視認者が偏光サングラスを使用する場合でも、画面が暗転することなく表示画面を見て取ることができる。」 カ 表1は以下のとおりである。 キ 図1は以下のとおりである。 してみると、甲第8号証には、以下の発明が開示されている。 「バックライト8としての連続的で幅広い発光スペクトルを有している白色発光ダイオード、液晶パネル6、液晶パネルより視認側に配置される偏光板4、及び、偏光板4より視認側に配置されるタッチパネルセンサーフィルム3を有し、 前記タッチパネルセンサーフィルム3は多層透明基材30を有し、 前記多層透明基材30は、リタデーション3000nm以上の透明基材301及び302を有し、 多層透明基材30の遅相軸の方向と、偏光板4の吸収軸とのなす角度が、45°±30°の範囲となるようにタッチパネル用センサーフィルム3と偏光板4が配設され、 前記透明基材301及び302は、それぞれの遅相軸が互いに直交するように積層されており、かつ、透明基材301と透明基材302のリタデーションの差が3000nm以上である、 タッチパネルセンサー付きの液晶表示装置。」(以下「甲8発明」という。) (2)対比(本件発明1と甲8発明) 本件発明1と甲8発明を対比すると、両者は、 「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)液晶セル、 (3)前記液晶セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3000nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下である、 画像表示装置(但し、前記2枚の飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く)。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点甲8-1:2枚の基材フィルムに関し、本件発明1は、 ア いずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 イ 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 ウ 配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く、 のに対し、甲8発明は、基材フィルムの遅相軸が互いに直交するように積層されている点、 で相違する。 (3)判断(本件発明1) 上記相違点甲8ア、イは、何れも、何れも実質的な相違点である。 してみると、本件発明1は、甲8発明と実質的に同一であるとはいえない。 (4)本件発明2-8について 本件発明2、4、5、は、2枚のフィルムの配向主軸が形成する角に関し、「30度以下である」との特定を有し、 本件発明3、6、7は、2枚のフィルムの配向主軸が形成する角に関し、「互いに垂直である画像表示装置を除く」との特定を有し、 本件発明8は、2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角に関し、「45度以下である」との特定を有するとともに、「20度以下である画像表示装置を除く」との特定を有する。 これに対し、甲8発明では、「前記透明基材301及び302は、それぞれの遅相軸が互いに直交するように積層されて」おり、本件発明2-8と甲8発明は、2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が相違する。よって、本件発明2-8と甲8発明は、何れも実質的に同一ではない。 6 特許請求の範囲の記載不備(明確性要件) 乙1号証(清水他監訳 ロングマン物理化学辞典 朝倉書店 1998年2月10日 157頁 屈折率の項)によれば、「ふつう屈折率というときは、ナトリウムの橙色の光(λ=589.3nm)での空気に対する値をいう」ものと解される。そして、リタデーションは、面内の屈折率の差と厚さで決まるから、リタデーションを測定した波長が記載されていないとしても、第三者が不測の不利益を受ける程度に特許請求の範囲の記載が不明確であるとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明1-4、6、7は、引用発明、技術常識1、2、周知技術、周知の技術課題と周知の解決手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1-4、6、7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明5、8に係る特許については、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件発明5、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項2】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1900nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項3】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムのいずれかは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が1度以下である画像表示装置、及び前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)。 【請求項4】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項5】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項2に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項6】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び (4)前記偏光子より視認側に配置される2枚の基材フィルム、 を有し、 前記2枚の基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記2枚の基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり、 前記2枚の基材フィルムは、それぞれの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が、45度±30度以下であり、 前記2枚の基材フィルムには透明導電層が積層されている、 画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が3度以下である画像表示装置、及び前記2枚の基材フィルムの配向主軸が互いに垂直である画像表示装置を除く)。 【請求項7】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項3に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が5度以下である画像表示装置を除く)。 【請求項8】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、 前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が45度以下である、 請求項6に記載の画像表示装置(但し、前記2枚の基材フィルムの配向主軸が形成する角が20度以下である画像表示装置を除く)。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-12-06 |
出願番号 | 特願2013-28062(P2013-28062) |
審決分類 |
P
1
651・
841-
ZDA
(G09F)
P 1 651・ 161- ZDA (G09F) P 1 651・ 121- ZDA (G09F) P 1 651・ 537- ZDA (G09F) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 角田 光法 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
小松 徹三 星野 浩一 |
登録日 | 2017-03-10 |
登録番号 | 特許第6102313号(P6102313) |
権利者 | 東洋紡株式会社 |
発明の名称 | 画像表示装置 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |