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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B21J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B21J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B21J
管理番号 1360471
異議申立番号 異議2019-700179  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-05 
確定日 2020-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6387414号発明「自己穿孔リベット及び自己穿孔リベット留めする方法及び自己穿孔リベット留め接合部」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6387414号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-15〕、16について訂正することを認める。 特許第6387414号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第6387414号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)10月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月11日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日として出願され、平成30年8月17日にその特許権の設定登録がされ、同年9月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成31年3月5日に特許異議申立人ヘンロブ リミテッド(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和元年6月6日付けで取消理由を通知した。特許権者ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー(以下「特許権者」という。)は、その指定期間内である令和元年9月9日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、同年12月5日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示すために当審で付したものである。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に
「頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面においてアーチ形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さいことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。」
と記載されているのを、
「頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面においてアーチ形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さく、
前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離すことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に
「前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さい、特に0.18より小さい、及び/又は0.05より大きい、特に0.1より大きいことを特徴とする、請求項1?請求項4のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。」
と記載されているのを、
「前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さく、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きいことを特徴とする、請求項2に記載の自己穿孔リベット(10)。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に
「頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さい、特に0.18より小さい、及び/又は0.05より大きい、特に0.1より大きいことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。」
と記載されているのを、
「頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さく、前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離し、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きいことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に
「前記平面部分(20)は、環状面部分(20)として設計されかつ断面において半径方向幅(BF)を有しており、前記環状面部分(20)の前記半径方向幅(BF)の、前記シャンク径(DS)に対する比が0.05より大きい、及び/又は0.25より小さいことを特徴とする」
と記載されているのを、
「前記平面部分(20)は、環状面部分(20)として設計されかつ断面において半径方向幅(BF)を有しており、前記環状面部分(20)の前記半径方向幅(BF)の、前記シャンク径(DS)に対する比が0.05より大きいことを特徴とする」
に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に
「前記自己穿孔リベット(10)が、少なくとも500HV10の硬度を有する鋼から製造されたものであることを特徴とする、請求項1?請求項7のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。」
と記載されているのを、
「前記自己穿孔リベット(10)が、少なくとも500HV10の硬度を有する鋼から製造されたものであり、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1000N/mm^(2)より大きいことを特徴とする、請求項1?請求項3のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に
「自己穿孔リベット留め接合部(30)であって、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)及び下部加工物(36)と、自己穿孔リベット、特に請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)が変形した自己穿孔リベット(10*)とを有し、該リベットの頭部(12*)が前記上部加工物(34)に当接することを特徴とする、自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
と記載されているのを、
「自己穿孔リベット留め接合部(30)であって、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)及び下部加工物(36)と、請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)が変形した自己穿孔リベット(10*)とを有し、該リベットの頭部(12*)が前記上部加工物(34)に当接し、打抜きピース(38)が前記上部構造物(34)から切り離されていることを特徴とする、自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10に
「前記上部加工物(34)の軸線方向厚さ(L34)が、未変形状態における自己穿孔リベット(10)の前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)以上であることを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
と記載されているのを、
「前記上部加工物(34)の軸線方向厚さ(L34)が、未変形状態における自己穿孔リベット(10)の前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)以上であり、前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成し、前記シャンク(14*)が前記下部加工物(36)と前記アンダーカット(42)において当接することを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に
「打抜きピース(38)が前記上部加工物(34)から切り離されており、前記打抜きピース(38)の体積の50%未満、特に25%未満が、前記変形した自己穿孔リベット(10*)の凹所(22*)内に位置することを特徴とする、請求項9?請求項10のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
と記載されているのを、
「前記打抜きピース(38)の体積の50%未満が、前記変形した自己穿孔リベット(10*)の凹所(22*)内に位置することを特徴とする、請求項9?請求項10のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に
「前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)が、前記頭部(12*)の方向の力に対してアンダーカット(42)を形成し、前記アンダーカット(42)の、シャンク径(DS)に対する比が、0.1より小さい、及び/又は0.01より大きいことを特徴とする、請求項9?請求項11のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
と記載されているのを、
「前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)が、前記頭部(12*)の方向の力に対してアンダーカット(42)を形成し、前記アンダーカット(42)の、シャンク径(DS)に対する比が0.01より大きく、前記アンダーカットは0.05mmよりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」
に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項13に
「変形後の前記自己穿孔リベット(10*)の軸線方向長さ(LR*)の、変形前の自己穿孔リベット(10)の軸線方向長さ(LR)に対する比が、0.8より大きい、及び/又は0.95より小さいことを特徴とする」
と記載されているのを、
「変形後の前記自己穿孔リベット(10*)の軸線方向長さ(LR*)の、変形前の自己穿孔リベット(10)の軸線方向長さ(LR)に対する比が、0.95より小さいことを特徴とする」
に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項14に
「自己穿孔リベット留め接合部(30)、特に請求項9?請求項13のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)を作製する方法であって、少なくとも1つの上部加工物及び1つの下部加工物(34、36)を有する加工物配置(32)を準備するステップと、請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)を打抜き力(52)により前記加工物配置(32)内へ駆動するステップと、を含むことを特徴とする、方法。」
と記載されているのを、
「請求項9?請求項13のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)を作製する方法であって、少なくとも1つの上部加工物及び1つの下部加工物(34、36)を有する加工物配置(32)を準備するステップと、請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)を打抜き力(52)により前記加工物配置(32)内へ駆動するステップと、を含み、前記駆動するステップは、前記打抜きピース(38)を前記上部加工物(34)から切り離すことを特徴とする、方法。」
に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項15に
「前記加工物配置(32)は、少なくとも前記下部加工物(36)がその中に駆動される容積を有するダイ(50)上に支持され、ダイ容積の、自己穿孔リベット(10)の体積に対する比が1.0以上及び/又は1.5以下であることを特徴とする」
と記載されているのを、
「前記加工物配置(32)は、少なくとも前記下部加工物(36)がその中に駆動される容積を有するダイ(50)上に支持され、ダイ容積の、自己穿孔リベット(10)の体積に対する比が1.0以上であることを特徴とする」
に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項5に
「前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さい、特に0.18より小さい、及び/又は0.05より大きい、特に0.1より大きいことを特徴とする、請求項1?請求項4のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。」
と記載されているのを、請求項1を引用する形式を独立形式に改め、
「頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さく、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さいことを特徴とする、自己穿孔リベット(10)。」
と記載し、新たに請求項16とする。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2に係る「自己穿孔リベット(10)」が、「高強度鋼を接続するための」と記載されていたものを、「少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)」と記載して、接続対象をより具体的に特定するとともに、「前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離す」との記載を直列的に付加するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、自己穿孔リベット(10)が、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するためのものであることは、訂正前の請求項9や明細書の段落【0002】に記載されており、上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離すことは、訂正前の請求項11や明細書の段落【0034】に記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項1が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項5の「請求項1?請求項4のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。」という記載を、「請求項2に記載の自己穿孔リベット(10)。」と限定し、さらに、「前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きい」との記載を直列的に付加するものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上部加工物(34)の引張り強さが1500N/mm^(2)より大きいことは、明細書の段落【0018】に記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項2が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項6に係る「自己穿孔リベット(10)」が、「高強度鋼を接続するための」と記載されていたものを、「少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)」と記載して、接続対象をより具体的に特定するとともに、「前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離し」及び「前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きい」との記載を直列的に付加するものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、自己穿孔リベット(10)が、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するためのものであることは、訂正前の請求項9や明細書の段落【0002】に記載されており、上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離すことは、訂正前の請求項11や明細書の段落【0034】に記載されており、上部加工物(34)の引張り強さが1500N/mm^(2)より大きいことは、明細書の段落【0018】に記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項3が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項7の「比が0.05より大きい、及び/又は0.25より小さいこと」という択一的な記載を、「比が0.05より大きいこと」と限定するものであるから、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項8の「請求項1?請求項7のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。」という記載を、「請求項1?請求項3のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。」と限定し、さらに、「前記上部加工物(34)の引張り強さは、1000N/mm^(2)より大きい」との記載を直列的に付加するものであるから、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上部加工物(34)の引張り強さが1000N/mm^(2)より大きいことは、明細書の段落【0018】や【0069】に記載されているから、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項5が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項9の「自己穿孔リベット、特に請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)」という択一的な記載を「請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)」と限定するとともに、「打抜きピース(38)が前記上部構造物(34)から切り離されている」との記載を直列的に付加するものであるから、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、打抜きピース(38)が上部構造物(34)から切り離されていることは、訂正前の請求項11や明細書の段落【0034】に記載されているから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項6が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項10に「前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成し、前記シャンク(14*)が前記下部加工物(36)と前記アンダーカット(42)において当接する」との記載を直列的に付加するものであるから、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成することは、明細書の段落【0035】に記載されている。また、シャンク(14*)が下部加工物(36)とアンダーカット(42)において当接するという事項は、図3に記載されているし、明細書の段落【0062】には、リベットの軸線方向長さが小さくなるように変形することが記載されているところ、そのリベットの変形により、シャンクの径方向の長さが大きくなり、シャンクが下部加工物に当接することは自明でもあるから、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項7が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正事項6により、訂正前の請求項11の「打抜きピース(38)が前記上部構造物(34)から切り離されて」という事項が請求項9に付加されたことに合わせて、請求項11から当該事項を削除するとともに、「50%未満、特に25%未満」という択一的な記載を「50%未満」に限定するものであるから、訂正事項8は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項12の「0.1より小さい、及び/又は0.01より大きい」という択一的な記載を「0.01より大きく」と限定するとともに、「前記アンダーカットは0.05mmよりも大きい」との記載を直列的に付加し、「請求項9?請求項11のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」という記載を「請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」と限定するものであるから、訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、アンダーカットが0.05mmよりも大きいことは、明細書の段落【0060】に記載されているから、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項9が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正前の請求項13の「0.8より大きい、及び/又は0.95より小さい」という択一的な記載を「0.95より小さい」と限定するものであるから、訂正事項10は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は、訂正前の請求項14の「自己穿孔リベット留め接合部(30)、特に請求項9?請求項13のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)」という択一的な記載を「請求項9?請求項13のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)」と限定するとともに、「前記駆動するステップは、前記打抜きピース(38)を前記上部加工物(34)から切り離す」という記載を直列的に付加するものであるから、訂正事項11は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、打抜きピース(38)を上部加工物(34)から切り離すことは、明細書の段落【0059】に記載されているから、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項11が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は、訂正前の請求項15の「1.0以上及び/又は1.5以下である」という択一的な記載を「1.0以上である」と限定するものであるから、訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項12が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正前の請求項5の「0.25より小さい、特に0.18より小さい、及び/又は0.05より大きい、特に0.1より大きい」という択一的な記載を「0.25より小さい」と限定するとともに、請求項1を引用する形式を独立形式に改めて、請求項16とするものであるから、訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項13が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3.一群の請求項及び別の訂正単位とする求め
訂正前の請求項2ないし15は、請求項3ないし5が請求項2を引用する関係にあり、請求項7ないし15が請求項2又は6を引用する関係にあるから、本件訂正請求による訂正は、一群の請求項2ないし16について請求されている。
また、訂正後の請求項16に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに一群の請求項2ないし15とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

4.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-15〕、16について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2ないし16に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項2ないし16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(なお、便宜上、訂正されていない請求項1に係る発明についても記載し、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。)。

「【請求項1】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さいことを特徴とする、自己穿孔リベット(10)。
【請求項2】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面においてアーチ形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さく、
前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離すことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。
【請求項3】
前記凹所(22)が長手方向断面において尖頭アーチ形であることを特徴とする、請求項2に記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項4】
前記凹所(22)が円筒形部分を有しないことを特徴とする、請求項1?請求項3のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項5】
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さく、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きいことを特徴とする、請求項2に記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項6】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さく、前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離し、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きいことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。
【請求項7】
前記平面部分(20)は、環状面部分(20)として設計されかつ断面において半径方向幅(BF)を有しており、前記環状面部分(20)の前記半径方向幅(BF)の、前記シャンク径(DS)に対する比が0.05より大きいことを特徴とする、請求項1?請求項6のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項8】
前記自己穿孔リベット(10)が、少なくとも500HV10の硬度を有する鋼から製造されたものであり、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1000N/mm^(2)より大きいことを特徴とする、請求項1?請求項3のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項9】
自己穿孔リベット留め接合部(30)であって、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)及び下部加工物(36)と、請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)が変形した自己穿孔リベット(10*)とを有し、該リベットの頭部(12*)が前記上部加工物(34)に当接し、打抜きピース(38)が前記上部加工物(34)から切り離されていることを特徴とする、自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項10】
前記上部加工物(34)の軸線方向厚さ(L34)が、未変形状態における自己穿孔リベット(10)の前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)以上であり、前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成し、前記シャンク(14*)が前記下部加工物(36)と前記アンダーカット(42)において当接することを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項11】
前記打抜きピース(38)の体積の50%未満が、前記変形した自己穿孔リベット(10*)の凹所(22*)内に位置することを特徴とする、請求項9?請求項10のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項12】
前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)が、前記頭部(12*)の方向の力に対してアンダーカット(42)を形成し、前記アンダーカット(42)の、シャンク径(DS)に対する比が0.01より大きく、前記アンダーカットは0.05mmよりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項13】
変形後の前記自己穿孔リベット(10*)の軸線方向長さ(LR*)の、変形前の自己穿孔リベット(10)の軸線方向長さ(LR)に対する比が、0.95より小さいことを特徴とする、請求項9?請求項12のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項14】
請求項9?請求項13のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)を作製する方法であって、少なくとも1つの上部加工物及び1つの下部加工物(34、36)を有する加工物配置(32)を準備するステップと、請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)を打抜き力(52)により前記加工物配置(32)内へ駆動するステップと、を含み、前記駆動するステップは、前記打抜きピース(38)を前記上部加工物(34)から切り離すことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記加工物配置(32)は、少なくとも前記下部加工物(36)がその中に駆動される容積を有するダイ(50)上に支持され、ダイ容積の、自己穿孔リベット(10)の体積に対する比が1.0以上であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さく、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さいことを特徴とする、自己穿孔リベット(10)。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項2ないし15に係る特許に対して、当審が令和元年6月6日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

1.取消理由1(特許法36条6項2号に係る理由)
訂正前の請求項5ないし15に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

2.取消理由2(特許法29条1項3号に係る理由)
訂正前の請求項2、4ないし10及び12ないし14に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

3.取消理由3(特許法29条2項に係る理由)
訂正前の請求項15に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第5 書証及び文献並びに引用発明
申立人及び特許権者が提出した書証並びに当審が取消理由通知で示した文献は、以下のとおりである。

1.申立人が提出した甲号証
甲第1号証:国際公開第2006/087984号
甲第2号証:Curt D.Horvath、“The Future Revolutionin
Automotive High Strength Steel Usage”、[online]、
平成16年2月18日、インターネット<URL:https://
lineman.steel.org/-/media/files/autosteel/
great-designs-in-steel/gdis-2004/16---the-future-
revolution-in-automotive-ahss-usage.ashx>
甲第3号証:特開平9-317730号公報
甲第4号証:欧州特許第1229254号明細書
甲第5号証:特表2009-537757号公報
甲第6号証:Marc Reinstettel、“Laboruntersuchung zur
Prozessstabilitat beim Niet-Clinchen”Anhang、
A85ページないしA86ページ、[online]、
2008年5月13日、[令和1年5月31日検索]、
インターネット<URL:https://monarch.qucosa.de/api/
qucosa%3A18896/attachment/ATT-2/>
甲第7号証:Marc Reinstettel、“Laboruntersuchung zur
Prozessstabilitat beim Niet-Clinchen”、[online]、
2008年5月13日、[令和1年5月31日検索]、
インターネット<URL:https://monarch.qucosa.de/api/
qucosa%3A18896/attachment/ATT-1>
甲第8号証:Angela Malzによる宣言書
甲第9号証:Wolfgang Voelkner、外3名、“EFB-Forschungsbericht
Nr.50”
甲第10号証:特表2009-541057号公報
(以下、各甲号証を「甲1」などという。)

2.特許権者が提出した乙号証
乙第1号証:“Materials and Processing No. 40”、
社団法人日本機械学会 機械材料・材料加工部門、
1ページないし16ページ
乙第2号証:国際公開第2012/077196号
乙第3号証:特開2002-173727号公報
乙第4号証:米国特許第7377021号明細書
(以下、各乙号証を「乙1」などという。)

3.当審が取消理由通知で示した文献
文献1:JFEスチール/ティッセンクルップスチール、
“自動車用鋼板共通規格”、[online]、9ページ、
2005年8月、[令和1年5月31日検索]、
インターネット<URL:http://www.tks-jfe.com/downloads/
20050831_tks_jfe_jp.pdf>
文献2:“鉄と鉄鋼がわかる本”、株式会社日本実業出版社、
2005年11月20日、32ページ

4.取消理由で引用した文献の記載及び引用発明
(1)甲6の記載事項及び引用発明
甲8に係る宣言書によれば、甲6は、甲7に係る博士論文に付属する書類であって、甲7が刊行された2008年5月13日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことを理解できる。そして、甲6には以下の事項が記載されている。

ア.甲6の記載事項
(ア)A85ページには、リベットの形状を示す設計図が記載されている。当該設計図に、本件特許で使用されているリベットの構成の名称及び測定値の名称等を付記した参考図1(理解の便宜のため、当審にて作成)を以下に示す。
【参考図1】


上記設計図から、頭部径(DH)を有する頭部及びシャンク径(DS)を有するシャンクを備え、前記シャンクは前記頭部とは反対側の足端部に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所を有し、前記足端部において前記シャンクが平面部分を有する、リベットにおいて、前記凹所が長手方向断面においてアーチ形であることが読み取れる。

(イ)A85ページの設計図を拡大し、凹所の軸線方向深さ(LB)を算出するための参考図2(理解の便宜のため、当審にて作成。算出の順序を丸数字で示す。)を以下に示す。
【参考図2】


三平方の定理から、凹所の軸線方向深さ(LB)は、0.42であり、シャンク径(DS)=5.3との比は0.42/5.3=0.08である。

(ウ)上記設計図から、前記凹所が円筒形部分を有しないこと、平面部分は環状面部分として設計されかつ断面において半径方向幅(BF)0.25を有することが読み取れる。そして、半径方向幅(BF)の、シャンク径(DS)に対する比は、0.25/5.3=0.047と算出される。

(エ)A85ページの凹所容積を算出するための参考図3(理解の便宜のため、当審にて作成。凹所の軸線方向をx軸としている)を以下に示す。
【参考図3】


参考図3から、凹所容積は、凹所の軸線方向断面の微小体積dV=π(r^(2)-x^(2))dxを、r=7の下、p=6.58からr=7まで定積分することにより、以下のとおり算出される。
凹所容積=∫π(r^(2)-x^(2))dx=π[r^(2)x-1/3x^(3)]=π(2/3r^(3)-r^(2)×p+1/3p^(3))=π(228.67-322.42+94.96)=3.8

(オ)A85ページの設計図を拡大し、シャンクの体積を算出するための参考図4(理解の便宜のため、当審にて作成。算出の過程を丸数字で示す。)を以下に示す。
【参考図4】


参考図4から、シャンクの軸線方向高さは、2.475となるので、シャンクの体積(凹所容積を含む)は、πDS^(2)×1/4×2.475=π×5.3^(2)×1/4×2.475=54.58である。

(カ)上記(オ)及び(カ)から、前記凹所容積の、前記シャンクの体積に対する比は、3.8/54.58=0.07と算出される。

(キ)上記設計図から、自己穿孔リベットの硬度が555Hvであることが読み取れる。

(ク)A86ページの3番目の写真に、本件特許で使用されている用語の名称及び測定値の名称等を付記した参考図5(理解の便宜のため、当審にて作成)を以下に示す。

【参考図5】



A86ページは、A85ページのリベットを用いて接合させたものであると推認される。そして、上部加工物として、H340LAD鋼(1,0mm)を接続すること、Hinterschnitt(アンダーカット)が0,287mmであることが記載されている。また、上部加工物の厚さが1,0mmであることから、上記(ア)?(キ)で示した各構成の長さの単位もmmと認定するのが自然である。

また、リベットが変形し、頭部が上部加工物に当接することが読み取れる。変形後のリベットの軸線方向長さ(LR*)が、変形後の縁部付近の上部加工物の軸線方向厚さの3.4倍であることが読み取れる。

イ.引用発明
上記ア.に示す記載事項からみて、甲6には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「頭部径(DH)を有する頭部及びシャンク径(DS)を有するシャンクを備え、前記シャンクは前記頭部とは反対側の足端部に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所を有し、前記足端部において前記シャンクが平面部分を有する、H340LAD鋼(1,0mm)を接続するためのリベットにおいて、
前記凹所が長手方向断面においてアーチ形であり、
前記凹所の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.08であること。」

(2)文献1の記載事項
文献1の9ページ上側の表には、「H340LAD+Z」鋼板の引張り強さが「410-510」(Mpa)であることが記載されている。

(3)文献2の記載事項
文献2の32ページの「冷延鋼板」の項目の左欄最終行ないし右欄1行には「高強度鋼板(引張り強度390MPa?1270MPa)」と記載されている。

第6 当審の判断
1.取消理由1(特許法36条6項2号に係る理由)について
当審は、訂正前の請求項5ないし15には、選択的な事項が記載されており、どのような場合に当該事項が選択されるのか明確でない旨の特許法36条6項2号に係る取消理由を通知した。
上記第2に示すとおり、本件訂正請求が認容された結果、訂正前の請求項5ないし15における選択的事項はいずれも削除されて、訂正後の請求項5ないし16となったため、取消理由1により、請求項5ないし16に係る特許を取り消すことはできない。

2.取消理由2(特許法29条1項3号に係る理由)について
(1)本件発明2について
ア.本件発明2と引用発明の対比
本件発明2(上記第3)と引用発明(上記第5の4.(1)イ.)を対比すると、以下のとおりである。
(ア)引用発明の「頭部径(DH)」、「頭部」、「シャンク径(DS)」、「シャンク」「頭部とは反対側の足端部」、「軸線方向深さ(LB)」、「軸線方向凹所」、「平面部分」、「凹所の軸線方向深さ(LB)」は、それぞれ、本件発明2の「頭部径(DH)」、「頭部(12)」、「シャンク径(DS)」、「シャンク(14)」「前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)」、「軸線方向深さ(LB)」、「軸線方向凹所(22)」、「平面部分(20)」、「凹所の軸線方向深さ(LB)」に相当する。

(イ)引用発明の「前記凹所の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.08である」ことは、本件発明2の「前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さ」いことに相当する。

(ウ)引用発明の「H340LAD鋼(1,0mm)を接続する」ことと本件発明2の「少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続する」ことを対比すると、リベットによる接続は、上部の加工物と下部の加工物を接続することは自明であるから、「少なくともその一方が鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続する」という点で共通する。

(エ)引用発明の「リベット」と本件発明2の「自己穿孔リベット(10)」を対比すると、「リベット」という点で共通する。

(オ)以上をまとめると、引用発明と本件発明2は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「頭部径を有する頭部及びシャンク径を有するシャンクを備え、前記シャンクは前記頭部とは反対側の足端部に軸線方向深さをもった軸線方向凹所を有し、前記足端部において前記シャンクが平面部分を有する、少なくともその一方が鋼から形成された上部加工物と下部加工物とを接続するためのリベットにおいて、
前記凹所(22)が長手方向断面においてアーチ形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さい、リベット(10)。」

<相違点1>
接続の対象となる鋼が、引用発明は「H340LAD鋼(1,0mm)」であるのに対して、本件発明2は「高強度鋼」である点。

<相違点2>
引用発明は「リベット」であるのに対して、本件発明2は「自己穿孔リベット(10)」であって、「前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離す」ものである点。

イ.相違点の判断
(ア)相違点1について
文献1には、H340LAD鋼の引張り強度が410ないし510Mpaであることが記載され(上記第5の4.(2))、文献2には、高強度鋼板の引張り強度が390ないし1270Mpaであることが記載されており(上記第5の4.(3))、これらの記載を参照すれば、H340LAD鋼の引張り強度は高強度鋼の引張り強度の範囲に含まれることから、引用発明の「H340LAD鋼」は、請求項2に係る発明の「高強度鋼」に相当するといえる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

(イ)相違点2について
甲6のA86ページを参照すると、引用発明のリベットは、上部加工物を下部加工物の内部に折り込むように変形させて、両加工物を接合していることを理解できる。また、乙1の9及び10ページの「3.メカニカルクリンチングによる接合」の欄を参照すると、板材を局部的に折り曲げて接合する原理は、いわゆるメカニカルクリンチングとして知られているから、引用発明のリベットの接合原理は、メカニカルクリンチングであるといえる。
これに対して、本件発明2は、自己穿孔リベットであって、上部加工物から打抜きピースを切り離すものであるから、自己穿孔リベットは、当該リベット自体で上部加工物に穴を開けているということができる。そして、乙1の9ページの「2.セルフピアシングリベットによる接合」の欄を参照すると、リベットで上部加工物に穴を開け、リベットを下部加工物の内部に侵入させて接合する原理は、いわゆるセルフピアシングリベットとして知られているから、本件発明2の自己穿孔リベットの接合原理は、セルフピアシングリベットであるといえる。
そうすると、引用発明のリベットと、本件発明2の自己穿孔リベットは、基本的な接合原理が異なるから、相違点2は実質的な相違点というべきであり、本件発明2が引用発明であるということはできない。

ウ.小括
本件発明2と引用発明との上記相違点1は、実質的な相違点ではないが、上記相違点2は、実施的な相違点であるから、本件発明2が引用発明であるということはできず、取消理由2により、請求項2に係る特許を取り消すことはできない。

(2)本件発明4及び5について
本件発明4及び5は、本件発明2を引用し、本件発明2を特定する事項を全て含むから、本件発明2と同様に、本件発明4及び5が引用発明であるということはできず、取消理由2により、請求項4及び5に係る特許を取り消すことはできない。

(3)本件発明6について
本件発明6は、本件発明2と同様に、「自己穿孔リベット」であることや、「前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離」すことが特定されており、引用発明と対比すると、上記(1)ア.(オ)に示す相違点2と同様の相違点が存在するから、本件発明2と同様に、本件発明6が引用発明であるということはできず、取消理由2により、請求項6に係る特許を取り消すことはできない。

(4)本件発明7ないし10及び12ないし14について
本件発明7は、本件発明1ないし6のいずれかを引用し、本件発明8は、本件発明1ないし3のいずれかを引用し、本件発明9は、本件発明1ないし8のいずれかを引用し、本件発明10及び12ないし14は、本件発明9を直接又は間接に引用している。
これらの発明のうち、本件発明2を直接又は間接に引用するものについては、上記(2)に示す理由と同様に、取消理由2により、特許を取り消すことはできない。
また、これらの発明のうち、本件発明6を直接又は間接に引用するものについては、上記(3)に示す理由と同様に、取消理由2により、特許を取り消すことはできない。
なお、これらの発明のうち、本件発明1を直接又は間接に引用するものについては、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由を検討する際に、あわせて検討する。

(5)取消理由2についてのむすび
以上のとおりであるから、請求項2、4ないし10及び12ないし14に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものということはできず、取り消されるべきものとはいえない。

3.取消理由3(特許法29条2項に係る理由)について
(1)本件発明15と引用発明の対比
本件発明15は、本件発明14を引用し、本件発明14は、本件発明9ないし13のいずれかに係る自己穿孔リベット留め接合部及び本件発明1ないし8のいずれかに係る自己穿孔リベットを引用するから、本件発明15のうち、本件発明2又は6に係る自己穿孔リベットを間接に引用するものについて、引用発明と対比すると、上記(1)ア.(オ)に示す相違点2が少なくとも存在する。
なお、本件発明15のうち、本件発明1を間接に引用するものについては、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由を検討する際に、あわせて検討する。

(2)相違点2の検討
相違点2を検討すると、自己穿孔リベットが存在することや、自己穿孔リベットが、上部加工物に穴を開け、下部加工物の内部に侵入して接合するという接合原理は、いわゆるセルフピアシングリベットとして、当業者にとって周知の技術的事項といえる。
しかし、引用発明のリベットは、メカニカルクリンチングを接合原理とするものであって、セルフピアシングリベットとは接合原理が異なるから、引用発明のリベットを、基本的な接合原理が異なる自己穿孔リベットに変更する動機があるとはいえないし、上記第5に示す各書証及び文献を参照しても、メカニカルクリンチングを接合原理とするリベットを自己穿孔リベットに変更することを示す記載や示唆はない。
したがって、相違点2は、上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に想到できるものとはいえないから、本件発明15と引用発明とのその余の相違点について検討するまでもなく、本件発明15は、引用発明並びに上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明15は、引用発明並びに上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、取消理由3により、請求項15に係る特許を取り消すことはできない。

4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
ア.甲1を主引用例とする特許異議申立理由
申立人は、甲1を主引用例として、訂正前の請求項6に係る発明は、甲1に記載された発明である旨の特許法29条1項に係る理由(以下「甲1を主引用例とする新規性の申立理由」という。)と、訂正前の請求項1ないし15に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨の特許法29条2項に係る理由(以下「甲1を主引用例とする進歩性の申立理由」という。)を主張している(特許異議申立書(以下「申立書」という。)17及び32ないし48ページ)。

イ.甲6を主引用例とする特許異議申立理由
申立人は、甲6を主引用例として、訂正前の請求項1ないし14に係る発明は、甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨の特許法29条2項に係る理由(以下「甲6を主引用例とする進歩性の申立理由」という。)を主張している(申立書17及び48ないし59ページ)。

(2)甲1を主引用例とする新規性の申立理由について
甲1を検討すると、甲1の「軸孔3a」は、本件発明6の「軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)」という事項に相当するといえるが、甲1の「軸孔3a」の軸線方向深さの具体的な大きさが記載されていないから、甲1には、本件発明6を特定する事項である「前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さく」という事項が記載されているということができない。
申立人は、甲1の「軸孔3a」がドリルによって形成され、ドリルビットの先端の角度が118°ないし135°であることが当業者によく知られたことであるから、甲1の「軸孔3a」の軸線方向深さが1.12mmないし1.4mmである旨を主張している(申立書33ページ)が、甲1の「軸孔3a」を形成するドリルビットの先端角が118°ないし135°であることを示す証拠がないから、申立人の主張は採用できない。
したがって、甲1を主引用例とする新規性の申立理由により、請求項6に係る特許を取り消すことはできない。

(3)甲1を主引用例とする進歩性の申立理由について
ア.本件発明1、2、6及び16について
本件発明1、2及び16は、「前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さ」いという発明特定事項を含んでおり、本件発明6及び16は、「前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さ」いという発明特定事項を含んでいる。
申立人は上記(2)に示すように、甲1の「軸孔3a」の軸線方向深さが1.12mmないし1.4mmであることを前提に、甲1を主引用例とする進歩性の申立理由を主張しているが、当該主張は前提において誤りがあるから、当該申立理由により、請求項1、2、6及び16に係る特許を取り消すことはできない。

イ.本件発明3ないし5及び7ないし15について
本件発明3ないし5及び7ないし15は、少なくとも本件発明1、2及び6のいずれかを引用するから、上記ア.と同様の理由により、当該申立理由により、請求項3ないし5及び7ないし15に係る特許を取り消すことはできない。

(4)甲6を主引用例とする進歩性の申立理由について
ア.本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明の対比
本件発明1と引用発明を対比すると、本件発明1は、「前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形」であるという事項を含んでいるのに対して、甲6に係る引用発明は、「前記凹所が長手方向断面においてアーチ形」であるから、本件発明1と引用発明は、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3>
凹所の形状が、本件発明1は「長手方向断面において切頭円錐形」であるのに対して、引用発明は「長手方向断面においてアーチ形」である点。

(イ)相違点3の検討
上記相違点3について、申立人は、切頭円錐形の凹所が甲3の図2に示されており、甲3と甲6はいずれも自己穿孔リベットに関するものであるから、引用発明の凹所を切頭円錐形とすることは、甲3に基づいて当業者が容易に想到できた事項である旨を主張している(申立書49ページ)。
しかし、上記2.(1)イ.(イ)に説示するとおり、甲6のリベットはメカニカルクリンチングを接合原理とするものであるところ、甲3のリベットは、甲3の図2の記載からみて自己穿孔リベットであるから、甲3と甲6は共通するリベットではない。
そして、メカニカルクリンチングを接合原理とするリベットの凹所の形状を、接合原理が異なる自己穿孔リベットの凹所の形状に基づいて変更する動機があるとはいえないし、上記第5に示す各書証及び文献を参照しても、メカニカルクリンチングを接合原理とするリベットの凹所の形状を自己穿孔リベットの凹所の形状に基づいて変更することを示す記載や示唆はない。
したがって、上記相違点3は、上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に想到できるものとはいえないから、本件発明1と引用発明とのその余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明並びに上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は、引用発明並びに上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、甲6を主引用例とする進歩性の申立理由により、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

イ.本件発明2及び6について
上記2.(1)ア.(オ)及び上記2.(3)に示すとおり、本件発明2及び6と引用発明とは、少なくとも相違点2について相違するところ、上記3.(2)に説示する理由と同様の理由により、相違点2は、上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に想到できるものとはいえないから、本件発明2及び6と引用発明とのその余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2及び6は、引用発明並びに上記第5に示す各書証及び文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、甲6を主引用例とする進歩性の申立理由により、請求項2及び6に係る特許を取り消すことはできない。

ウ.本件発明3ないし5及び7ないし15について
本件発明3ないし5及び7ないし15は、少なくとも本件発明1、2及び6のいずれかを引用するから、上記ア.(イ)又は上記イ.に説示する理由と同様の理由で、甲6を主引用例とする進歩性の申立理由により、請求項3ないし5及び7ないし15に係る特許を取り消すことはできない。

エ.本件発明16について
本件発明16は、本件発明1と同様に、「前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形」であるという事項を含んでおり、本件発明16と引用発明を対比すると、上記相違点3が存在するから、上記ア.(イ)に説示する理由と同様の理由で、甲6を主引用例とする特許法29条2項に係る特許異議申立理由により、請求項16に係る特許を取り消すことはできない。

5.令和元年12月5日付け意見書の主張について
ア.意見書の主張の概要
申立人は、令和元年12月5日付け意見書において、おおむね以下の取消理由を主張している。

(ア)特許法36条6項2号に係る主張
本件発明2、5,6及び8は、「上部加工物(34)」や「下部加工物(36)」についての特定が含まれているところ、「上部加工物(34)」や「下部加工物(36)」は、「自己穿孔リベット(10)」の構成を特定するものではないから、発明のどのような構成を特定しているのか不明確である。
また、本件発明9の「打抜きピース(38)が前記上部加工物(34)から切り離されていること」は重複した記載であるから不明確である。
また、本件発明10の「前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成し、前記シャンク(14*)が前記下部加工物(36)と前記アンダーカット(42)において当接すること」は、「自己穿孔リベット留め接合部(30)」の望ましい形状を記載しているにすぎず、「自己穿孔リベット留め接合部(30)」の構成は不明である。
また、本件発明14の「前記駆動するステップは、前記打抜きピース(38)を前記上部加工物(34)から切り離すこと」は、接合部の所望の状態を特定しているにすぎず、「自己穿孔リベット留め接合部(30)を作製する方法」が不明である。
これらを引用する発明も不明確であるから、本件発明2ないし15は明確でない。(意見書の2、7ないし10、29及び30ページ)

(イ)特許法36条4項1号に係る主張
本件発明5及び6には、「前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きいこと」が特定されているが、「1500N/mm^(2)より大きい」引張り強さを有する上部加工物(34)に接合部を形成することのできる自己穿孔リベットについて、本件特許明細書には、実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。(意見書の2、10、11及び30ページ)

(ウ)特許法120条の5第9項で準用する126条5項に係る主張
本件発明10の「前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成し、前記シャンク(14*)が前記下部加工物(36)と前記アンダーカット(42)において当接することを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。」という事項は、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面)に記載されていない事項を含むものである。(意見書の2、11ないし13及び30ページ)

(エ)特許法29条1項3号及び2項に係る主張
本件発明2ないし16は、甲6に記載された発明であるか、又は、甲1ないし10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(意見書の2、13ないし30ページ)

イ.申立人の主張の検討
(ア)特許法36条6項2号に係る主張について
特許法36条5項の「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載」すべき旨の規定の趣旨からみて、請求項において特許を受けようとする発明について記載するに当たっては、種々の表現形式を用いることができ、例えば、「物の発明」の場合に、発明特定事項として物の結合や物の構造の表現形式を用いることができるほか、作用、機能、性質、特性、方法、用途その他の様々な表現方式を用いることができると解される。
本件発明2,5,6及び8は、「自己穿孔リベット(10)」という物の発明であるところ、「上部加工物(34)」や「下部加工物(36)」は当該リベットによる接合の対象であるから、リベットの用途という表現形式で「自己穿孔リベット(10)」を特定していることが明らかである。
また、本件発明9の「打抜きピース(38)が前記上部加工物(34)から切り離されていること」が重複した記載であるとしても、それにより発明が明確でないとはいえない。
また、本件発明10は、「自己穿孔リベット留め接合部(30)」という物の発明であるところ、「前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成し、前記シャンク(14*)が前記下部加工物(36)と前記アンダーカット(42)において当接すること」は、自己穿孔リベット留め接合部の状態という表現形式で自己穿孔リベット留め接合部を特定していることが明らかである。
また、本件発明14は、自己穿孔リベット留め接合部を作成する方法の発明であるところ、「前記駆動するステップは、前記打抜きピース(38)を前記上部加工物(34)から切り離すこと」は、接合部の状態を特定しているから、明確であるというほかない。
以上から、本件発明2ないし15が明確でない旨の申立人の主張は採用できない。

(イ)特許法36条4項1号に係る主張について
本件特許明細書の段落【0018】には、「少なくとも上部加工物の引張り強さは、1500N/mm^(2)まで及びそれより大きくすることができる」との記載がある上に、申立人は、上部加工物の引張り強さが1500N/mm^(2)より大きい場合に、本件発明5及び6を実施できない合理的な理由を説明していないから、単に、本件発明5及び6に対応する具体的な実施例の記載がないことのみを理由に、本件発明5及び6を実施できないとはいえず、申立人の主張は採用できない。

(ウ)特許法126条5項に係る主張について
本件発明10に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは、上記第2の2.(7)で説示したとおりであるから、特許法120条の5第9項で準用する126条5項に係る申立人の主張は採用できない。

(エ)特許法29条1項3号及び2項に係る主張について
ア.本件発明2、4ないし10及び12ないし14が、甲6に記載された発明であるとはいえないことは、上記2.で説示するとおりである。
また、本件発明3は本件発明2を引用し、本件発明11は本件発明9又は10を引用し、本件発明15は本件発明14を引用するから、本件発明3、11及び15が、甲6に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明16は、上記4.(4)エ.に説示するとおり、甲6に記載された発明と対比すると、相違点3が存在するから、本件発明16が、甲6に記載された発明であるとはいえない。
したがって、本件発明2ないし16が甲6に記載された発明である旨の申立人の主張は採用できない。

イ.甲1を主引用例とする進歩性の申立理由により、請求項2ないし16に係る特許を取り消すことができないことは、上記4.(3)で説示するとおりであるから、本件発明2ないし16が甲1ないし10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨の申立人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さいことを特徴とする、自己穿孔リベット(10)。
【請求項2】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面においてアーチ形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さく、
前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離すことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。
【請求項3】
前記凹所(22)が長手方向断面において尖頭アーチ形であることを特徴とする、請求項2に記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項4】
前記凹所(22)が円筒形部分を有しないことを特徴とする、請求項1?請求項3のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項5】
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さく、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きいことを特徴とする、請求項2に記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項6】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)と下部加工物(36)とを接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さく、前記上部加工物(34)から打抜きピース(38)を切り離し、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1500N/mm^(2)より大きいことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。
【請求項7】
前記平面部分(20)は、環状面部分(20)として設計されかつ断面において半径方向幅(BF)を有しており、前記環状面部分(20)の前記半径方向幅(BF)の、前記シャンク径(DS)に対する比が0.05より大きいことを特徴とする、請求項1?請求項6のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項8】
前記自己穿孔リベット(10)が、少なくとも500HV10の硬度を有する鋼から製造されたものであり、前記上部加工物(34)の引張り強さは、1000N/mm^(2)より大きいことを特徴とする、請求項1?請求項3のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)。
【請求項9】
自己穿孔リベット留め接合部(30)であって、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)及び下部加工物(36)と、請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)が変形した自己穿孔リベット(10*)とを有し、該リベットの頭部(12*)が前記上部加工物(34)に当接し、打抜きピース(38)が前記上部加工物(34)から切り離されていることを特徴とする、自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項10】
前記上部加工物(34)の軸線方向厚さ(L34)が、未変形状態における自己穿孔リベット(10)の前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)以上であり、前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)がアンダーカット(42)を形成し、前記シャンク(14*)が前記下部加工物(36)と前記アンダーカット(42)において当接することを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項11】
前記打抜きピース(38)の体積の50%未満が、前記変形した自己穿孔リベット(10*)の凹所(22*)内に位置することを特徴とする、請求項9?請求項10のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項12】
前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)が、前記頭部(12*)の方向の力に対してアンダーカット(42)を形成し、前記アンダーカット(42)の、シャンク径(DS)に対する比が0.01より大きく、前記アンダーカットは0.05mmよりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項13】
変形後の前記自己穿孔リベット(10*)の軸線方向長さ(LR*)の、変形前の自己穿孔リベット(10)の軸線方向長さ(LR)に対する比が、0.95より小さいことを特徴とする、請求項9?請求項12のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)。
【請求項14】
請求項9?請求項13のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)を作製する方法であって、少なくとも1つの上部加工物及び1つの下部加工物(34、36)を有する加工物配置(32)を準備するステップと、請求項1?請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)を打抜き力(52)により前記加工物配置(32)内へ駆動するステップと、を含み、前記駆動するステップは、前記打抜きピース(38)を前記上部加工物(34)から切り離すことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記加工物配置(32)は、少なくとも前記下部加工物(36)がその中に駆動される容積を有するダイ(50)上に支持され、ダイ容積の、自己穿孔リベット(10)の体積に対する比が1.0以上であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さく、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さいことを特徴とする、自己穿孔リベット(10)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-29 
出願番号 特願2016-538594(P2016-538594)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B21J)
P 1 651・ 121- YAA (B21J)
P 1 651・ 537- YAA (B21J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
大山 健
登録日 2018-08-17 
登録番号 特許第6387414号(P6387414)
権利者 ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
発明の名称 自己穿孔リベット及び自己穿孔リベット留めする方法及び自己穿孔リベット留め接合部  
代理人 齋藤 恭一  
代理人 村越 智史  
代理人 杉村 憲司  
代理人 村越 智史  
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