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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1360473
異議申立番号 異議2019-700560  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-16 
確定日 2020-02-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6452473号発明「シャンプー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6452473号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6452473号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。 特許第6452473号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6452473号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成27年1月27日に特許出願され、平成30年12月21日にその特許権の設定登録がなされ、平成31年1月16日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和1年7月16日に特許異議申立人 三菱ケミカル株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年9月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月2日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたものである。

なお、本件訂正請求は、後記の第2のとおり、特許請求の範囲の一部の請求項(請求項1)を削除し、削除された請求項の記載を引用する請求項(請求項2)の記載を当該削除された請求項の記載を引用しないものとし、更に当該請求項の削除に整合するように請求項の引用関係(請求項4、5)を整理することを目的とするもののみであるから、本件訂正請求については、特許法120条の5第5項ただし書所定の特別の事情があると認め、申立人に対し、同項本文の規定による意見書の提出の機会は与えないこととした。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-5〕についてするものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「上記(A)の配合量が上記(B)の配合量よりも多い請求項1に記載のシャンプー組成物。」
とあるのを
「(A)ポリクオタニウム-73、(B)ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上、並びに(C)アニオン界面活性剤が配合され、上記(C)として、下記一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩が配合され、上記(A)の配合量が上記(B)の配合量よりも多いことを特徴とするシャンプー組成物。

[上記一般式(I)において、Rはラウリル基又はトリデシル基を表し、Xは平均付加モル数が12以下であることを表す。]」
に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4及び5も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1?3のいずれか1項に記載の」
とあるのを
「請求項2又は3に記載の」
に訂正する(請求項4の記載を直接的に引用する請求項5も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1?4のいずれか1項に記載の」
とあるのを
「請求項2?4のいずれか1項に記載の」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項2の記載をそれを引用しない形式で記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は、訂正前に請求項4及び5が引用していた請求項1が訂正事項1により削除されたことに伴い、引用関係を整理するため、訂正前の請求項4及び5がそれぞれ引用していた「請求項1?3」及び「請求項1?4」から「請求項1」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求による訂正後の請求項1?5に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明5」といい、全体をまとめて「本件発明」という。)は、令和1年12月2日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(A)ポリクオタニウム-73、(B)ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上、並びに(C)アニオン界面活性剤が配合され、
上記(C)として、下記一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩が配合され、
上記(A)の配合量が上記(B)の配合量よりも多いことを特徴とするシャンプー組成物。
【化1】

[上記一般式(I)において、Rはラウリル基又はトリデシル基を表し、Xは平均付加モル数が12以下であることを表す。]
【請求項3】
上記(B)の配合量に対する上記(A)の配合量の比(A)/(B)が3.0以下である請求項2に記載のシャンプー組成物。
【請求項4】
上記一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩として、下記一般式(Ia)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(Ia)又はその塩が配合された請求項2又は3に記載のシャンプー組成物。
【化2】

[上記一般式(Ia)において、R1はラウリル基又はトリデシル基を表し、Lは平均付加モル数が6以下であることを表す。]
【請求項5】
請求項2?4のいずれか1項に記載のシャンプー組成物による洗髪処理後、前記シャンプー組成物を洗い流した後の濡れた毛髪にトリートメント組成物を塗布して洗い流すトリートメント処理を行う方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
請求項1?5に係る特許に対して、当審が令和1年9月27日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)取消理由1
請求項1に係る発明及び同項を引用する請求項4に係る発明は、甲第2号証?甲第8号証の記載を参酌すれば、本願出願日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明である甲第1号証に開示の発明(甲1発明)と同一であり、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由2
請求項5に係る発明(請求項1又は同項を引用する請求項4を引用するもの)は、甲1発明及び参考資料に示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(3)取消理由3
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、甲第18号証の記載を参酌すれば、当業者が、請求項1?5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は取り消すべきものである。

引用文献一覧
甲第1号証:「ロイドカラーシャンプームラサキ300ml」、[online]、Amazon、[平成31年4月2日検索]、インターネット
甲第2号証:「ラウレス-6カルボン酸Na」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成31年4月5日検索]、インターネット
甲第3号証:「NIKKOL AKYPO RLM 45NV」、[online]、chemical-navi、[平成31年4月5日検索]、インターネットhttps://www.chemical-navi.com/product_search/detail452.html
甲第4号証:「Line Up」、[online]、ROYD、[平成31年4月2日検索]、インターネット
甲第5号証:「About Us」、[online]、ROYD、[平成31年4月2日検索]、インターネット
甲第6号証:「ロイドカラーシャンプームラサキ300ml」についての製造記録の写し
甲第7号証:「タイポールソフトEC430N」についてのパンフレットの写し
甲第7の2号証:「カチナールHC-200」についてのパンフレットの写し
甲第7の3号証:国際公開2012/057210号
甲第8号証:宣誓書
甲第18号証:J.Soc.Cosmet.Chem.Japan,2004,Vol.38,No.3,p.211-219
参考資料:日本化粧品工業連合会編「化粧料分野における公知技術集2012年版」平成24年3月16日発行、第158頁

2 当審の判断
(1)取消理由1及び2
本件訂正請求により、請求項1が削除され、また、請求項4及び5において引用する請求項から請求項1が削除されたから、本件発明1、4及び5に係る特許を取消理由1又は2によって取り消すことはできない。

(2)取消理由3
ア 取消理由3の具体的な理由
取消理由3の具体的な理由は、以下のとおりである。

理由(ア)ポリクオタニウム-73について
本件発明1?5には、ポリクオタニウム-73を構成するモノマーの配合比及び分子量については特定されていない。
一方、本件明細書をみても、ポリクオタニウム-73について、使用するモノマーについては記載されているものの、それらの配合比及び分子量について記載がなされていない。また、実施例において、使用したポリクオタニウム-73を構成するモノマーの配合比及び分子量について何ら具体的な記載がなされていない。
一般に、複数のモノマーから構成される共重合体において、モノマーの配合比及び分子量が異なると共重合体の性状が異なることは技術常識であることを考慮すると、ポリクオタニウム-73を構成するモノマーの配合比及び分子量がどのようなものであっても、それを配合したシャンプー組成物を洗い流した後、毛髪に厚みを付与することができるものとは直ちに認めることはできない。
そうすると、本件発明1?5のシャンプー組成物に使用し得るポリクオタニウム-73を製造し、又は入手するのには過度な試行錯誤を要するものと言わざるを得ない。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?5を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

理由(イ)ポリクオタニウム-10について
本件発明1?5には、ポリクオタニウム-10のカチオン化度について特定されていない。
一方、本件明細書をみても、「ポリクオタニウム-10は、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる構造の化合物」であると記載されているものの、そのカチオン化度について記載がなされていない。また、実施例において、使用したポリクオタニウム-10のカチオン化度について何ら具体的な記載がなされていない。
一般に、カチオン化セルロースにおいて、カチオン化度が異なると、得られる性状が異なることは甲第18号証の記載からも明らかであるから、ポリクオタニウム-10のカチオン化度がどのようなものであっても、それをポリクオタニウム-73と併せてシャンプー組成物に配合したときに、洗い流した後に感じられる毛髪の厚みを乏しくすることなく、その洗い流し過程での毛髪における指通りが良好とすることができるとは直ちに認めることができない。
そうすると、本件発明1?5のシャンプー組成物に使用し得るポリクオタニウム-10を製造し、又は入手するのには過度な試行錯誤を要するものと言わざるを得ない。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?5を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

イ 発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、毛髪を洗浄するためのシャンプー組成物に関するものである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャンプー組成物にポリクオタニウム-73を配合する検討を行っていたところ、その配合によって、シャンプー組成物を洗い流した後の毛髪の厚み(毛髪表面に被膜が形成されている感触)がある程度感じられる。この感触は、毛髪が補修されている印象を与える観点から、望ましいものである。しかし、ポリクオタニウム-73を配合したシャンプー組成物を洗い流す過程では、洗い流し易さに求められる毛髪における指通りに改善が望まる場合があった。その改善のために、ポリクオタニウム-73と他のカチオン性高分子を併用したときには、感じられていた毛髪の厚みが乏しくなってしまうことがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、ポリクオタニウム-73配合による洗い流した後に感じられる毛髪の厚みを乏しくすることなく、その洗い流し過程での毛髪における指通りが良好であるシャンプー組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等がシャンプー組成物について鋭意検討を行った結果、ポリクオタニウム-73と共に配合するカチオン性高分子として特定のものを選定すれば、洗い流す際の毛髪における指通りが向上する上に、毛髪の厚みが感じられることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係るシャンプー組成物は、(A)ポリクオタニウム-73、(B)ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-47、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上、並びに(C)アニオン界面活性剤が配合されたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るシャンプー組成物において、上記(A)の配合量が上記(B)の配合量よりも多いことが好ましい。また、上記(B)の配合量に対する上記(A)の配合量の比(A)/(B)は、3.0以下が好ましい。以上の(A)及び(B)の配合量関係であれば、洗い流す際の指通りと洗い流した後の厚み感が良好になる。」
「【0013】
(A)ポリクオタニウム-73
本実施形態のシャンプーには、アクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド及びジメチルアクリルアミドの共重合体であるポリクオタニウム-73が配合される。」
「【0016】
(B)特定のカチオン性高分子
本実施形態のシャンプーには、(B)特定のカチオン性高分子が配合される。この(B)は、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-47、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上が配合される。
【0017】
ここで、ポリクオタニウム-10は、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる構造の化合物であり、ポリクオタニウム-39は、アクリル酸、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びアクリル酸アミドを構成モノマーとする重合体であり、ポリクオタニウム-47は、アクリル酸、アクリル酸メチル及び塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムを構成モノマーとする重合体であり、ポリクオタニウム-53は、アクリル酸、アクリル酸アミド及びメタクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを構成モノマーとする重合体である。」
「【実施例】
【0031】
本発明を実施例に基づき以下に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例、比較例及び参考例の透明シャンプーを、水と、ポリクオタニウム-73、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-53、ポリクオタニウム-39、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリクオタニウム-47、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-22、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(11)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、コカミドプロピルベタイン、及びヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミドから選定した原料とを配合して製造した。製造したシャンプーにおける水と配合した原料の配合量は、下記表1?3の通りとした。
【0033】
製造した実施例、比較例又は参考例のシャンプー及び4級アンモニウム塩を配合したトリートメントを使用し、無作為に選定した肩よりも長い毛髪を有する女性に対して、毛髪処理を行った。その処理では、女性の頭部の左半分の毛髪に実施例1aのシャンプー6gを塗布し、頭部の右半分には他のシャンプー6gを塗布してから、泡立てた後に水洗した。そして、濡れた毛髪全体にカチオン界面活性剤を配合したトリートメントを馴染ませてから水洗し、毛髪を温風で乾燥させた。
【0034】
上記の毛髪処理の評価として、(1)シャンプーを泡立てた後の水洗での、毛髪における指通り、(2)シャンプーの水洗後にトリートメントを塗布する前の濡れた毛髪において、厚みがある感触、(3)シャンプーの水洗後にトリートメントを塗布する前の濡れた毛髪において、柔らかな感触、(4)温風で乾燥させた毛髪全体を目視したときのおさまり、を確認した。この確認では、5名の女性の毛髪処理において異なる評価者が行うこととし、下記表1?3の各表のシャンプー毎の対比を行った。上記(1)?(4)の評価の基準は、以下の通りとした。
◎:評価者5名中5名が良いと評価した。
○:評価者5名中3名が良いと評価した。
×:評価者5名中1名が良いと評価した。
【0035】
上記評価の結果を、水と配合した原料の配合量と共に下記表1?3に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上記表1において、比較例1aと、実施例1a?1eとを比較すると、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-53、ポリクオタニウム-39、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、又はポリクオタニウム-47を配合した実施例1a?1eが、ポリクオタニウム-73との併用により、厚み感を損なうことなく、指通りが向上したことを確認できる。また、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-53、ポリクオタニウム-39、又はヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの配合が、厚み感の向上に適し、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-53、又はポリクオタニウム-39の配合が、良好な柔らかさに適し、ポリクオタニウム-10の配合が、毛髪のおさまりの向上に適することを確認できる。
【0038】
【表2】

【0039】
上記表2、及び、別途行った実施例2bと参考例の比較評価は、(A)成分の配合量が上記(B)成分の配合量よりも多く、(B)の配合量に対する(A)の配合量の比(A)/(B)が3.0以下であると、良好な指通りと厚み感の評価となった例を示す。
【0040】
【表3】

【0041】
上記表3は、アルキルエーテルカルボン酸塩(ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(11)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム)の配合が、良好な厚み感と毛髪のおさまりに適し、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が6以下のアルキルエーテルカルボン酸塩(ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム)を配合すれば、洗い流す際の指通り、洗い流した後の毛髪の柔らかな感触、乾燥後の毛髪が良好となった例を示す。」

ウ 乙号証の記載
特許権者が令和1年12月2日付け意見書に添付して提出した乙第1、2及び4号証には、次の事項が記載されている。
(ア)乙第1号証(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook Twelfth Edition 2008(国際化粧品成分辞書・ハンドブック、第12版(2008)CTFA(米国化粧品工業会)))
(乙1-1)(最終頁24行?41行)



上記の部分訳
「ポリクオタニウム-73
・・・
定義:ポリクオタニウム-73は、塩化プロピルトリモニウムアクリルアミド、塩化エチルトリモニウムメタクリレート及びジメチルアクリルアミドモノマーから構成される4級アンモニウム塩ポリマーである。
・・・
機能:帯電防止剤;被膜形成;ヘアコンディショニング剤;髪固定剤」

(イ)乙第2号証(特開2012-107166号公報)
(乙2-1)
「【0166】
<配合例2:ヘアミスト>
共重合体(2) 4重量%
グリセリン 5重量%
(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/
メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー^(*2)1重量%
ポリクオタニウム-73^(*3) 0.5重量%
エタノール 4重量%
香料 適量
その他調整剤 適量

(*2:例えば、三菱化学(株)製「ダイヤフォーマーZ772」)
(*3:例えば、三菱化学(株)製「ダイヤスリークC802」)」

(ウ)乙第4号証(特開2014-9177号公報)
(乙4-1)
「【0004】
しかし、PEGを用いた温感タイプの毛髪化粧料には、すすぎ時に髪がからまり、使用性が著しく悪いという欠点がある。すすぎ時の髪の絡まりや、きしみを防ぐ方法として、カチオン化セルロース等のカチオン化ポリマーを使用することが知られているが、PEGにカチオン化ポリマーは不溶であり、シャンプーとしての性能を充分に発揮することができていないのが現状であった。」

(乙4-2)
「【0024】
これらの中で、特に、すすぎ時の滑らかさ、カチオン性ポリマーの溶解性の点から、カチオン化セルロースが好ましく、具体的には、レオガードGP(カチオン化度:1.2meq/g、重量平均分子量:40万)、レオガードMLP(カチオン化度:0.4meq/g、重量平均分子量:120万)、カチナールHC-100(カチオン化度:1.3meq/g、重量平均分子量:40万)、カチナールHC-200(カチオン化度:1.3meq/g、重量平均分子量:100万)、カチナールLC-100(カチオン化度:0.8meq/g、重量平均分子量:40万)、カチナールLC-200(カチオン化度:1.0meq/g、重量平均分子量:100万)が好ましい。」

エ 判断
(ア)ポリクオタニウム-73について
本件明細書の段落【0004】?【0006】によれば、シャンプー組成物にポリクオタニウム-73を配合することにより、シャンプー組成物を洗い流した後の厚み感を付与することができるところ、洗い流す際の指通りを改善するためにカチオン性高分子を併用すると、毛髪の厚み感が乏しくなるという問題があったが、ポリクオタニウム-73と共に配合するカチオン性高分子として、特定のもの(ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上)を選定すれば、毛髪の厚みを損なうことなく、洗い流す際の毛髪における指通りが向上することを見出して本件発明を完成させたものである。
そして、本件明細書の実施例には、(A)成分としてポリクオタニウム-73、(B)成分として、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種、及び、(C)成分としてポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、又はポリオキシエチレン(11)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムを含む原料を、表1?3の配合量で配合して、本件発明2?4の実施態様となるシャンプー組成物を製造したことが記載されている(実施例1a?1d、実施例2a、実施例3a、3b)。
そして、当該シャンプー組成物を毛髪に塗布し、泡立てた後に水洗し、濡れた毛髪にトリートメントを馴染ませてから水洗し、毛髪を温風で乾燥させたことが記載されており(段落【0033】)、本件発明5に係るトリートメント処理を行う方法について具体的に記載されている。
さらに、トリートメント処理後、乾燥した毛髪について評価を行ったところ、当該シャンプー組成物を用いた場合は、シャンプー後の濡れた髪の厚み感を損なうことなく、シャンプーを洗い流す際の指通りが向上したことが確認されている。
上記したように、ポリクオタニウム-73は、それをシャンプー組成物に配合することにより、シャンプー組成物を洗い流した後の毛髪の厚み、すなわち、毛髪表面に被膜が形成されている感触を付与することを目的として配合するものであるところ、上記記載事項(乙1-1)によれば、ポリクオタニウム-73と呼ばれる、塩化プロピルトリモニウムアクリルアミド、塩化エチルトリモニウムメタクリレート及びジメチルアクリルアミドモノマーから構成される4級アンモニウム塩ポリマーには、被膜形成機能があることは、本件特許出願時の技術常識として、当業者に認識されていたものと認められ、また、そのようなポリマーは、本件特許出願時において既に市販されていたものである(上記記載事項(乙2-1))。
そうすると、本件明細書にポリクオタニウム-73を構成するモノマーの配合比や分子量についての具体的な記載はなくとも、当業者は、本件発明において使用し得るポリクオタニウム-73を製造又は入手するのに過度な試行錯誤を要することはない。

(イ)ポリクオタニウム-10について
上記(ア)で述べたように、本件明細書の段落【0004】?【0006】によれば、シャンプー組成物にポリクオタニウム-73を配合することにより、シャンプー組成物を洗い流した後の厚み感を付与することができるところ、洗い流す際の指通りを改善するためにカチオン性高分子を併用すると、毛髪の厚み感が乏しくなるという問題があったが、ポリクオタニウム-73と共に配合するカチオン性高分子として、特定のもの(ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上)を選定すれば、毛髪の厚みを損なうことなく、洗い流す際の毛髪における指通りが向上することを見出して本件発明を完成させたものである。
そして、本件明細書の実施例1a?1d、2a、3a、3bには、本件発明2?4の実施態様となるシャンプー組成物を製造したことが記載され、当該シャンプー組成物を用いて、本件発明5に係るトリートメント処理を行う方法が記載されており、上記実施例において、(A)成分としてポリクオタニウム-73、及び(C)成分としてポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、又はポリオキシエチレン(11)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムを含むシャンプー組成物と共に配合するカチオン性高分子として、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種を用いた場合には、シャンプー後の濡れた髪の厚み感を損なうことなく、洗い流す際の指通りが向上したことを確認している。
以上のとおり、本件明細書には、カチオン性高分子として、ポリクオタニウム-10を用いた場合には、シャンプー後の濡れた髪の厚み感を損なわず、かつ、シャンプー組成物を洗い流す際の指通りを改善できることが具体的に示されている。また、ポリクオタニウム-10がヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる構造の化合物であることやそれが市販されていることは、本件出願時における技術常識と認められる。
一方、取消理由3において引用した甲第18号証には、確かに、カチオン化度の異なる4種のカチオン化セルロースを用いて調製したシャンプーのすすぎ時の指通り感が異なることが記載されている(図2)。しかしながら、当該記載は、カチオン化セルロースのカチオン化度がすすぎ時の指通りに関係することを示すに過ぎず、すすぎ時の指通りの点でシャンプー組成物として使用できない場合があることまで示すものではなく、むしろ、当該記載は、シャンプー組成物に配合するカチオン化セルロースの選択の際の指標の一つを示唆するものでもある。
そうすると、甲第18号証の記載にかかわらず、本件明細書にカチオン化ヒドロキシエチルセルロースであるポリクオタニウム-10のカチオン化度についての具体的記載がなくとも、当業者が、本件発明において使用し得るポリクオタニウム-10を、製造又は入手するのに過度な試行錯誤を要することはない。
なお、このことは、カチオン化度が異なる2つのポリクオタニウム-10の市販品(上記記載事項(乙4-2))を用いた追加の実施例において、シャンプー後の濡れた髪の厚み感を損なうことなく、洗い流す際の指通りが向上するという効果が確認されたこと(令和1年12月2日付け意見書8、9頁)からも一層明らかである。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明2?5に係る特許は、取消理由3によって取り消すべきものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由
申立人は、以下の甲第2、3、9?16号証を提出し、本件特許に対し、以下の申立理由1及び2を主張する。
なお、以下、甲第2、3、9?16号証をそれぞれ、「甲2」、「甲3」、「甲9」?「甲16」という。

甲2:「ラウレス-6カルボン酸Na」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成31年4月5日検索]、インターネット
甲3:「NIKKOL AKYPO RLM 45NV」、[online]、chemical-navi、[平成31年4月5日検索]、インターネット
甲9:特開2008-179565号公報
甲10:発明協会公開技報2008-502333号
甲11:特開2011-190221号公報
甲12:特開2007-308449号公報
甲13:特開2014-51446号公報
甲14:特公平6-39594号公報
甲15:特開2002-179535号公報
甲16:特公平6-84510号公報

(1)申立理由1(新規性)
ア 申立理由1-ア
本件発明1、4、5は、甲11?16の記載を参酌すれば、甲9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
イ 申立理由1-イ
本件発明1、4は、甲2、3、11?16の記載を参酌すれば、甲10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
ア 申立理由2-ア
本件発明1?5は、甲9に記載された発明及び甲11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
イ 申立理由2-イ
本件発明1?4は、甲10に記載された発明及び甲2、3、9、11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(明確性)
本件発明1?5は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2 甲9?16の記載
(1)甲9
甲9には、次の事項が記載されている。
(甲9-1)
「【請求項1】
カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体であって該共重合体を構成する全構成単位における前記カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位の割合が25?45モル%である共重合体と、
カルボキシル基及び/又はリン酸基を1以上含む化合物又はその塩であるアニオン性界面活性剤(D)、とを
含有してなることを特徴とする洗浄剤組成物。
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表す。)」

(甲9-2)
「【背景技術】
【0002】
シャンプー、リンス、トリートメント剤、セット剤などの毛髪化粧料には、洗浄後の毛髪の櫛どおり性や柔軟性その他の感触性を改良するために、いわゆるコンディショニング剤が配合されている。例えばシャンプーには、代表的なカチオン化ヒドロキシセルロース、カチオン化グアーガム、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、アクリルアミド共重合体等をコンディショニング剤として配合することが知られている。カチオン化ヒドロキシセルロース等を配合したシャンプーは、洗浄後に濯ぐときの指通り性は良いが、乾燥後の毛髪がごわついたかたい感触となることが指摘されている。このごわつき感を改良するために、併用する界面活性剤の選択やオイルの添加などが検討されており、なかでも、シリコ-ンを添加することにより乾燥後の感触は大きく変化する(特許文献1)。しかしながら、シリコ-ンを毛髪に付着させるためにはカチオン化ヒドロキシエチルセルロース等を多く添加する必要があるため、ごわついた感触も同時に付与することになり好ましくない。また毛髪のダメージ度が高いとその効果も低いものとなり、十分なコンディショニング効果が得られにくい。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このためカチオン化ヒドロキシセルロースに代えて、カチオン性ビニル系単量体に相当する構成単位と、特定構造のビニル系単量体に相当する構成単位とを特定比率含む共重合体を配合することが、特願2006-211271で提案され、濯ぐときの指通り性が良く、乾燥後の感触が良好であるシャンプーが得られている。しかし、カラーリング、パーマ、ドライヤーの熱等により傷んだ髪を持つ消費者からは、特に毛先などダメージ度の高い部分のすすぎ時の滑らかさを向上させ、被洗浄体の油分を過剰に奪い取らずやさしくマイルドに洗浄しうる洗浄剤組成物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、カチオン性ビニル系単量体に相当する構成単位と、特定構造のビニル系単量体に相当する構成単位とを特定比率含む共重合体と、特定界面活性剤とを洗浄剤組成物に配合することで、被洗浄体の油分を過剰に奪い取らずやさしくマイルドに洗うことが出来、洗浄後のすすぎの際の指通り、乾燥後のなめらかさ及びサラサラ感などに優れることを見出し、本発明を完成させた。」

(甲9-3)
「【0033】
アミド結合を有すると毛髪等への吸着が促進されるので、ビニル系単量体(B)としてより好ましくは、一般式(1)で表されるビニル系単量体を用いる。洗浄後の髪のサラサラ感が高くゴワツキ感が無いことなどから、更に好ましくは前記式(1)のR^(2)とR^(3)の炭素数の和が2以上4以下であるものが好ましい。例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、又はN-イソプロピル(メタ)アクリルアミドである。最も好ましくはN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドである。
なお、ビニル系単量体(B)は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
ビニル系単量体(B)は、通常、ノニオン性ビニル系単量体である。」

(甲9-4)
「【0034】
[カチオン性ビニル系単量体(A)]
・・・
【0038】
なかでも、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドが好ましく用いられ、特にN-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。最も好ましくはN-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドと、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドとの併用である。」

(甲9-5)
「【0086】
また一般的に、アニオン性界面活性剤(D)のうちリン酸類は着色しており、カルボン酸類は無色であることから、色調を重視する等、目的によってはカルボン酸類が好ましく用いられる。
毛髪用の洗浄剤組成物に配合される界面活性剤の役割には、すすぎ時のなめらかさ、乾燥後のサラサラ感、乾燥後のゴワツキの無さ、などを付与することが挙げられるが、なかでも最も重要なのは、すすぎ時のなめらかさである。なぜならば洗浄剤組成物で処理した後に、リンスやコンディショナー或いは洗い流さないタイプのアウトバストリートメント剤などで処理を行う事で乾燥後の感触を高めることができるのに対し、すすぎ時のなめらかさは他の方法で補うことができないからである。またマイルド性は毛髪用洗浄剤組成物の必須性能であり、他の成分を配合しても完全に改善することが困難なため、重要である。従って、毛髪用洗浄剤組成物に配合される界面活性剤としてはマイルド性及びすすぎ時のなめらかさに優れるものが最も好ましい。」

(甲9-6)
「【0089】
本発明の洗浄剤組成物における共重合体の含有量は好ましくは0.01?5重量%とする。共重合体の含有量を0.01重量%以上とすることで、アニオン性界面活性剤(D)とのコンプレックスが生成しやすくなり、コンディショニング効果がより発現でき、例えばすすぎ時のなめらかさや乾燥後のサラサラ感がより高まる。より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.2重量%以上、最も好ましくは0.4重量%以上である。逆に洗浄剤組成物中の共重合体の濃度を5重量%以下とすることで、乾燥後の違和感が少なくなる傾向にある。より好ましくは3重量%以下であり、更に好ましくは1重量%以下である。」

(甲9-7)
「【0102】
[その他の成分]
本発明の洗浄剤組成物中には必要に応じ他の成分を配合してもよい。他の成分は特に限定されず、本発明の目的、効果を著しく阻害しない範囲で配合することが可能である。具体的には、本発明の共重合体以外の水溶性高分子、カチオン性高分子、アニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子、油分、パール化剤等である。洗浄剤組成物中に配合することのできる他の任意成分を下記に例示する。
【0103】
水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。中でもヒドロキシプロピルメチルセルロースは配合性の点で好ましく用いられる。
カチオン性高分子としては、カチオン変性セルロースエーテル誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル四級アンモニウム塩のホモポリマー、四級化ポリビニルピロリドン誘導体、ポリグリコールポリアミン縮合体、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウムハライド、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールネタクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体、ジメチルジアリルアンモニウムハライド/アクリルアミド共重合体等のカチオン性高分子等が挙げられる。中でもカチオン変性セルロースエーテル誘導体、ポリジメチルジアリルアンモニウムハライド、ジメチルジアリルアンモニウムハライド/アクリルアミド共重合体等がコンディショニング効果が高い点で好ましく用いられる。」

(甲9-8)
「【0111】
(4)洗浄剤組成物の評価
各洗浄剤組成物について、下記の通り各項目をそれぞれ評価した。なお、シャンプーの評価の際に使用した毛束は、「人毛黒髪(100%)根本揃え(未処理毛10g×30cm)」としてビューラックス社より購入し、ブリーチ処理したものを「ダメージ毛」として使用した。ダメージ毛作成は、ブリーチ剤としてはミルボン社製プロマティスブレーブオキシタン6.0(過酸化水素6%クリーム)、メロス化学社製パウダーブリーチMR2を使用し、それぞれ12g、6gを混合したものを毛束1本に塗布し、塗布後30分放置したのち、水洗及びラウロイル(EO)3硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)を塗布して洗浄することにより行った。
【0112】
なお、シャンプーには、すすぎ時のなめらかさ、乾燥後のサラサラ感、乾燥後のゴワツキの無さなどが求められるが、なかでも重要なのはすすぎ時のなめらかさである。洗浄後にリンスやコンディショナー或いは洗い流さないタイプのアウトバストリートメント剤などで処理を行う事で乾燥後の感触を高めることができるのに対し、すすぎ時のなめらかさは他の方法で補うことができないからである。またマイルド性は毛髪用洗浄剤組成物の必須性能であり、他の成分を配合しても完全に改善することが困難なため、重要である。従って、シャンプーとしては、マイルド性、すすぎ時のなめらかさ及びその持続性の評価結果が最も重要である。
【0113】
また、ボディーソープには、洗浄力を有しながらも低刺激、身体から過剰に油分を奪い取らない、乾燥後ツッパリ感がない、適度な保湿性を付与するなどが求められるが、中でも重要なのは身体から過剰に油分を奪い取らないことである。身体に適度な油分を残すことで洗浄後の乾燥後のツッパリ感や身体からの過剰な水分の蒸散が抑制されるためである。さらに好ましくは身体洗浄時、コンディショニング成分が身体表面を被覆しなめらかさを付与し、乾燥後のツッパリ感や身体からの過剰な水分の蒸散をさらに抑制することである。従って、ボディーソープとしては、マイルド性、すすぎ時のなめらかさ及びその持続性の評価結果が最も重要である。
【0114】
[配合性]
各洗浄剤組成物の透明性を目視にて観察し、配合性を以下のように3段階で評価した。ただし、シリコーン油を含有するシャンプーについては、シリコーン油添加前の配合性を評価した。
○ : ほぼ透明なシャンプー/ボディーソープが得られる
▲ : 透明性は低いが、均一なシャンプー/ボディーソープが得られる
× : 白濁又は析出が生じ、均一なシャンプー/ボディーソープが得られない
【0115】
[マイルド性]
各洗浄剤組成物のマイルド性を官能評価にて以下のように2段階で評価した。
○ : 肌への刺激がない
×:肌への刺激がある
【0116】
[すすぎ時のなめらかさ]
毛束に各シャンプーを塗布し十分に泡立て、40℃の流水中で10秒間毛束をすすいだときの指通りを官能評価し、すすぎ時のなめらかさを以下のように5段階で評価した。
5 : 指通りが非常に良好
4 : 指通りが良好
3 : 抵抗を感じるが指は通る
2 : 指は通るが、毛先で引っかかる
1 : 指が全く通らない
【0117】
[すすぎ時のなめらかさの持続性]
「すすぎ時のなめらかさ」の評価後、40℃の流水中でのすすぎを続け、なめらかさがなくなるまでの時間を官能評価し、すすぎ時のなめらかさの持続性を以下のように5段階で評価した。
5:滑らかさが長く持続する
4 : 滑らかさが持続する
3 : 滑らかさが短時間であるが続く
2 : 滑らかさが非常に短時間で消える
1 : 滑らかさを感じない
【0118】
[乾燥後の仕上がり]
毛束に各シャンプーを塗布し十分に泡立て、40℃の流水中で毛束をすすいだ後、23℃で一昼夜自然乾燥した毛束にて、なめらかさ及びさらさら感を官能評価にて5段階で評価した。
5:非常になめらかで、さらさらしている
4 : なめらかで、さらさらしている
3:なめらかさは不足しているが、さらさらしている
2:なめらかさもさらさら感も感じない
1:ごわつきを感じる」

(甲9-9)
「【0122】
【表1】

【0123】
[アニオン性界面活性剤の評価]
表2に、本実施例において使用したアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド(EO)付加モル数及び水溶性評価結果を示した。
【0124】
【表2】

【0125】
[実施例1?7、比較例1?5]
上記製造例で得られた共重合体4と、アニオン性界面活性剤1種とを用いて表3の組成を有する洗浄剤組成物(シャンプー)を調製した。各成分の量は、洗浄剤組成物全体を100重量部としたときの重量(重量部)で表した。残部は水である。また、防腐剤/香料/色素の「適量」とはこれらの添加量の合計が1重量部以下であることを表す。
【0126】
得られたシャンプーを用いて、配合性及びマイルド性を評価した。また、ダメージ毛に対するすすぎ時のなめらかさ及び乾燥後の仕上がりをそれぞれ評価した。結果を表3に示す。
この結果から、本発明に関わる洗浄剤組成物は、ダメージ毛に対するすすぎ時のなめらかさが非常に良好で、かつ乾燥後の仕上がりも良好であることが分かる。また配合性に優れ、肌に対する刺激が非常に弱く、マイルドであることが分かる。
【0127】
【表3】



(2)甲10
甲10には、次の事項が記載されている。
(甲10-1)(2頁29行?下から5行)
「【構成】
本開発者等は上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、カチオン性ビニル系単量体に相当する構成単位と、特定構造のビニル系単量体に相当する構成単位とを特定比率含む共重合体と種々の添加成分を配合した毛髪洗浄剤組成物が、洗浄後のすすぎの際の指通り、乾燥後のなめらかさ及びサラサラ感などに優れることを見出し、本技術を完成させた。
即ち、本技術の要旨は、カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体であって、共重合体を構成する全構成単位における前記カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位の割合が25?45モル%であることを特徴とする共重合体と、界面活性剤、その他の添加成分などを含むことを特徴とする毛髪洗浄剤組成物に存する。
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表わす。)」

(甲10-2)(4頁17行?24行)
「アミド結合を有すると毛髪等への吸着が促進されるので、ビニル系単量体(B)としてより好ましくは、一般式(1)で表されるビニル系単量体を用いる。洗浄後の髪のサラサラ感が高くゴワツキ感が無いことなどから、更に好ましくは前記式(1)のR^(2)とR^(3)の炭素数の和が2以上4以下であるものが好ましい。例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、又はN-イソプロピル(メタ)アクリルアミドである。最も好ましくはN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドである。
なお、ビニル系単量体(B)は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
ビニル系単量体(B)は、通常、ノニオン性ビニル系単量体である。」

(甲10-3)(4頁25行?5頁17行)
「[カチオン性ビニル系単量体(A)]
カチオン性ビニル系単量体(A)としては、本技術の目的を達成しうる限り特に限定されない。・・・なかでも、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドが好ましく用いられ、特にN-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。最も好ましくはN-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドと、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドとの併用である。」

(甲10-4)(8頁32行?38行)
「毛髪洗浄剤組成物中の共重合体の濃度は0.01?5重量%が好ましい。共重合体の濃度を0.01重量%以上とすることで、界面活性剤とのコンプレックスが生成しやすくなり、コンディショニング効果がより発現でき、例えばすすぎ時のなめらかさや乾燥後のサラサラ感がより高まる。共重合体の濃度は、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上である。逆に毛髪洗浄剤組成物中の共重合体の濃度を5重量%以下とすることで、乾燥後の違和感が少なくなる傾向にある。共重合体の濃度は、より好ましくは3重量%以下であり、更に好ましくは1重量%以下である。」

(甲10-5)(10頁下から17行?下から7行)
「[界面活性剤]
毛髪洗浄剤組成物は少なくとも1種の界面活性剤を含むが、なかでも少なくともアニオン性界面活性剤を含むと、本技術のカチオン性基を有する共重合体とコンプレックスを形成しやすく好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、パラフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、N-アシル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アシルメチルタウリン塩等の毛髪洗浄剤組成物に常用されているものを用いればよい。これらのアニオン性界面活性剤の対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。なお、アニオン性界面活性剤は複数種を併用してもよい。」

(甲10-6)(11頁24行?下から12行)
「[その他の配合物]
毛髪洗浄剤組成物中に配合することのできる、その他の任意成分を下記に例示する。
・・・
カチオン性高分子としては、カチオン変性セルロースエーテル誘導体、ポリジメチルジアリルアンモニウムハライド、ジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドのコポリマー等が挙げられる。
・・・
これらは、0.1?1重量%含有させることが好ましい。」

(甲10-7)(12頁17行?13頁19行)
「(2)シャンプー組成物の評価
各シャンプー組成物を、用意した毛束に塗布して、各項目についてそれぞれ評価した。なお、使用した毛束は、「人毛黒髪(100%)根本揃え(未処理毛10g×30cm)」としてビューラックス社製の市販品を「未処理毛」として使用し、「未処理毛」をブリーチ処理したものを「ダメージ毛」として使用した。ダメージ毛作成は、ブリーチ剤としてはミルボン社製プロマティスブレーブオキシタン6.0(過酸化水素6%クリーム)、メロス化学社製パウダーブリーチMR2を使用し、それぞれ12g、6gを混合したものを毛束1本に塗布し、塗布後30分放置したのち、水洗及びラウロイル(EO)3硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)を塗布して洗浄することにより行った。
なお、それぞれの各実施例群では異なる比較標準品を用いて評価した。
[配合性]
各シャンプー組成物の透過率を以下のように3段階で評価した。但しシリコーン油を含有するシャンプーについては、シリコーン油添加前の透明性を評価した。
0 : 比較標準品と同程度に透明なシャンプーが得られる
-1: 透明性は低いが、均一なシャンプーが得られる
-2: 白濁し、シャンプーが得られない
[すすぎ時のなめらかさ]
毛束を各シャンプー組成物で処理後、40℃の流水中で毛束をすすいだときの指通り(finger-combingのなめらかさ及びそのなめらかさの持続具合を4段階で評価した。
+2 : 比較標準品に比べてなめらかさ、持続性共に優れる
+1 : 比較標準品に比べてなめらかさ、持続性のどちらかが優れる
0 : 比較標準品と同程度
-1 :比較標準品と比べて劣る
[タオルドライ時の指通り]
すすいだ後の毛束をタオルで軽く押さえて水分を除去した後、指を通した時の指通り具合を4段階で評価した。
+2 : 比較標準品に比べてサラサラ感が著しく優れる
+1 : 比較標準品に比べてサラサラ感が優れる
0 : 比較標準品と同程度
-1 : 比較標準品に比べて劣る
[乾燥後のサラサラ感]
タオルドライ時に指通り評価後の毛束を、23℃、60%RHの恒温室にて一晩乾燥させた後に、毛束のサラサラ感を4段階で評価した。
+2 : 比較標準品に比べてサラサラ感が著しく優れる
+1 : 比較標準品に比べてサラサラ感が優れる
0 : 比較標準品と同程度
-1 : 比較標準品に比べて劣る
[乾燥後のゴワツキの無さ]
サラサラ感を評価した毛束にて、ゴワツキの無さを4段階で評価した。
+2 :比較標準品に比べてほとんどゴワツキを感じない
+1 :比較標準品に比べてコワツキは無いが若干感じられる
0 :比較標準品と同程度
-1 :比較標準品と比べて劣る
<単量体等の略称>
DMC : N-メタクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド
DMAPAAC : N-アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド
HEA : ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA : ヒドロキシエチルメタクリレート
DMAA : N,N-ジメチルアクリルアミド
DEAA : N,N-ジエチルアクリルアミド
JR400 : カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(UCC社製)」

(甲10-8)(13頁20行?14頁下から5行)
「[実施例1-1]
(共重合体の製造)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌装置を備えた反応器に蒸留水200重量部を仕込み、滴下ロートにN-メタクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DMC)43重量部(80重量%水溶液として54重量部)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)57重量部、及び蒸留水80重量部からなる単量体混合液を仕込み、反応器を窒素置換したのち90℃まで加熱した。反応器に、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド)0.5重量部を投入後、単量体混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後から20時間反応させたのち冷却し、共重合体(1-1)を得た。
得られた共重合体の、全構成単位中の各単量体に相当する構成単位の割合は、DMC/HEA=30/70(モル百分率)であり、重量平均分子量は230,000であり、20重量%水溶液の粘度は110mPa・sであった。結果を表1-1に示した。
(毛髪洗浄剤組成物の調製)
上記の方法によって得られた共重合体(1-1)を用いて、表1-2の組成を有するシャンプーを調製した。表における数値は全て活性成分の質量(重量部)である。
(毛髪洗浄剤組成物の評価)
上記の方法によって調製したシャンプーを用いて上記の方法により、配合性を評価した。また、未処理毛及びダメージ毛について、それぞれすすぎ時のなめらかさ、乾燥後のサラサラ感、乾燥後のゴワツキの無さを評価した。結果を表1-3に示した。
[実施例1-2?1-7]
(共重合体の製造)
表1-1(共重合体(1-2)?(1-7))に記載の単量体組成を用いたこと以外は、共重合体(1-1)の製造と同様にして共重合体(1-2)?共重合体(1-7)を製造した。得られた共重合体の、全構成単位中の各単量体に相当する構成単位のモル百分率と重量平均分子量、20%水溶液粘度を表1-1に示した、
(毛髪洗浄剤組成物の調製及び評価)
得られた共重合体を用いて、実施例1-1と同様に表1-2の組成を有するシャンプーの調製及び評価を行った。結果を表1-3に示した。」

(甲10-9)(16頁?17頁)
「表1-1:共重合体1-1?1-9

表1-2:実施例1-1?1-10、比較例1-1、1-3の毛髪洗浄剤組成物

表1-3:実施例1-1?1-10、比較例1-1、1-3の評価結果



(3)甲11
甲11には、次の事項が記載されている。
(甲11-1)
「【0023】
カチオン化高分子は、半合成カチオン化高分子、合成カチオン化高分子等に分類される。半合成カチオン化高分子としては、例えば、ポリクオタニウム-4(塩化ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム)、ポリクオタニウム-10(塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)等のカチオン化セルロース;グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等のカチオン化グアーガム;が挙げられる。また、合成カチオン化高分子としては、例えば、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-52等のジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体;ポリクオタニウム-16等のビニルピロリドン・メチルビニルイミダゾリウム共重合体;が挙げられる。以上に例示したカチオン化高分子の中で、本実施形態に係る毛髪処理剤をシャンプーとして用いる場合、毛髪の感触を良好にするものとしては、例えばカチオン化セルロース及びカチオン化グアガムから選択した一種又は二種以上である。」

(4)甲12
甲12には、次の事項が記載されている。
(甲12-1)
「【0036】
次に、成分(B)以外のカチオン化ポリマーとしては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、カチオン化タラガム誘導体、カチオン化ローカストビーンガム誘導体、ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体(米国サンドス社、カルタレチン)、特開昭53-139734号公報、特開昭60-36407号公報に記載されているカチオン性ポリマー等が挙げられ、特にカチオン化セルロース誘導体、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物が好ましい。
【0037】
また、例えば、マーコート550(NALCO社、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウム塩の共重合体;CTFA名ポリクォータニウム-7)、ルビクァットFC370(BASF社、1-ビニル-2-ピロリドンと1-ビニル-3-メチルイミダゾリウム塩の共重合体;CTFA名ポリクォータニウム-16)、ガフクァット755N(ISP社、1-ビニル-2-ピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体;CTFA名ポリクォータニウム-11)、UcareポリマーJR及び同LRシリーズ(アマーコール社、トリメチルアンモニウム置換エポキシドとヒドロキシエチルセルロースとの反応物の塩;CTFA名ポリクォータニウム-10)、ポイズC-60H、ポイズC-80M、ポイズC-150L(以上、花王社、トリメチルアンモニウム置換エポキシドとヒドロキシエチルセルロースとの反応物の塩;CTFA名ポリクォータニウム-10)、ジャガーシリーズ(ローディア社、グアーヒドロキシプロピルトリアンモニウムクロリド)、カチナールCLB-100(東邦化学工業社、ローカストビーンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)等の市販品を用いることができる。」

(5)甲13
甲13には、次の事項が記載されている。
(甲13-1)
「【0028】
本発明で用いる成分(E)、カチオン性水溶性高分子は、化粧品に通常用いられるカチオン性及び/又はノニオン性の水溶性高分子であれば、その由来や製法を問わず、天然、半合成、合成、いずれのものも使用することができるが、カチオン性水溶性高分子としては、例えば、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化グァーガム誘導体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム誘導体、カチオン化デンプン、カチオン化タラガム、カチオン化ヒアルロン酸等が挙げられる。具体的には、ポリクオタニウム-10、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリクオタニウム-4、(ポリクオタニウム-4/ヒドロキシプロピルデンプン)コポリマー、(ポリクオタニウム-4/ヒドロキシプロピルデンプン)コポリマー、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-67、ポリクオタニウム-72、ポリクオタニウム-75、等が挙げられる。これらのカチオン性水溶性高分子の中でも特にポリクオタニウム-10、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選択される1種を単独で、若しくは2種以上を組み合わせて用いることが、泡の持続性、洗い上がりの感触に優れ、より好ましい。」

(6)甲14
甲14には、次の事項が記載されている。
(甲14-1)(3頁右欄22行?32行)
「特にシャンプー組成物において使用性向上剤の目的で配合されるカチオン性高分子物質、例えばカチオン変性セルロースエーテル誘導体(ポリマーJR(U.C.C)等)、ポリビニルピロリドン誘導体四級アンモニウム(ガフコート(GAF)等)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのポリマー(マーコート(Merk)等)、ポリアクリル酸誘導体四級アンモニウム(Cartex(National Starch)等)、ポリアミド誘導体四級アンモニウム(Sandoz等)は、本発明の洗浄剤組成物に配合する事により毛髪への吸着量が増し、他の基剤に配合する以上の使用性の向上をはかる事ができる。」

(7)甲15
甲15には、次の事項が記載されている。
(甲15-1)
「【0052】水溶性カチオン性ポリマーは、例えばカチオン変性セルロースエーテル誘導体(ポリマーJR(U.C.C)等)、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのポリマー(マーコート(Merk)等)、ポリアクリル酸誘導体四級アンモニウム(Cartex(NationalStarch)等)、ポリアミド誘導体四級アンモニウム(Sandoz等)、ポリオキシエチレンポリアルキレンポリアミン(ポリコート(HENKEL)等)等が挙げられる。また、水溶性両性ポリマーとしては、例えばカルボキシル基やスルホン酸基などの陰イオン性基を有するモノマーと塩基性窒素を有するモノマーとの共重合体、カルボキシベタイン型モノマーの重合体又は共重合体、カルボキシ基やスルホン酸基などの陰イオン性基を陽イオン性ポリマーに導入したもの、塩基性窒素含有基を陰イオン性ポリマーに導入したもの、アクリルアミド基などの非イオン性基を有するモノマーと陰イオン性基を有するモノマー及び塩基性窒素含有基を有するモノマーの共重合体等が挙げられる。」

(8)甲16
甲16には、次の事項が記載されている。
(甲16-1)(2頁右欄48行?3頁左欄8行)
「特にシャンプー組成物において使用性向上剤の目的で配合されるカチオン性高分子物質、例えばカチオン変性セルロースエーテル誘導体(ポリマーJR(U.C.C)等)、ポリビニルピロリドン誘導体四級アンモニウム(ガフコート(GAF)等)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのポリマー(マーコート(Merk)等)、ポリアクリル酸誘導体四級アンモニウム(Cartex(National Starch)等)、ポリアミド誘導体四級アンモニウム(Sandoz等)は、本発明の洗浄剤組成物に配合する事により毛髪への吸着量が増し、他の基剤に配合する以上の使用性の向上をはるか事ができる。」

3 当審の判断
(1)甲9に記載された発明を引用発明とする申立理由1-ア(新規性)
申立理由1-アは訂正前の請求項1に係る特許並びに同項を引用する請求項4及び5に係る特許に対するものであるが、本件訂正請求により、請求項1が削除され、また、請求項4及び5において、引用する請求項から請求項1が削除されたため、申立理由1-アは理由がないものとなった。

(2)甲9に記載された発明を引用発明とする申立理由2-ア(進歩性)
ア 甲9に記載された発明
上記記載事項(甲9-1)の請求項1には、「洗浄剤組成物」に係る発明が記載されているところ、上記記載事項(甲9-2)の段落【0003】には、従来技術として、特定の共重合体を配合したシャンプーを挙げた上で、さらに、痛んだ髪を持つ消費者からは、ダメージ度の高い部分のすすぎ時の滑らかさを向上させ、やさしくマイルドに洗浄しうるものが望まれているという課題があることが記載され、課題を解決するための手段として、特定の共重合体と特定の界面活性剤とを配合することにより、やさしくマイルドに洗うことができ、洗浄後のすすぎの際の指通り、乾燥後のなめらかさ及びサラサラ感などに優れることを見出したことが記載されていることからみて、請求項1に係る「洗浄剤組成物」として、毛髪の洗浄を目的とした「シャンプー組成物」が記載されているといえる。

そうすると、上記記載事項(甲9-1)の記載からみて、甲9には、次の発明が記載されているものと認められる。
「カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体であって該共重合体を構成する全構成単位における前記カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位の割合が25?45モル%である共重合体と、
カルボキシル基及び/又はリン酸基を1以上含む化合物又はその塩であるアニオン性界面活性剤(D)、とを
含有してなることを特徴とするシャンプー組成物。
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表す。)」(以下、「甲9発明」という。)

イ 本件発明2
(ア)対比
本件発明2と甲9発明とを対比する。
本件発明2の「ポリクオタニウム-73」は、本件明細書の段落【0013】によれば、「アクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド及びジメチルアクリルアミドの共重合体」であり、甲9発明の
「カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表す。)」
は、本件発明2の「ポリクオタニウム-73」と「共重合体」である点で共通する。
本件発明2の「(C)アニオン界面活性剤」は、
「一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩
【化1】

[上記一般式(I)において、Rはラウリル基又はトリデシル基を表し、Xは平均付加モル数が12以下であることを表す。]」
であるから、カルボキシル基を含むものである。そうすると、甲9発明の「カルボキシル基及び/又はリン酸基を1以上含む化合物又はその塩であるアニオン性界面活性剤」は、本件発明2の「(C)アニオン界面活性剤」と「カルボキシル基を1以上含む化合物であるアニオン界面活性剤」である点で共通する。

以上のことから、本件発明2と甲9発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「共重合体及びカルボキシル基を1以上含む化合物であるアニオン界面活性剤が配合されたシャンプー組成物」

(相違点9-1)
共重合体が、本件発明2では、「(A)ポリクオタニウム-73」であるのに対し、甲9発明では、
「カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体であって該共重合体を構成する全構成単位における前記カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位の割合が25?45モル%である共重合体
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表す。)」
である点

(相違点9-2)
本件発明2は、「(B)ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上」が配合されているのに対し、甲9発明にはそのような成分を配合することが規定されていない点

(相違点9-3)
「カルボキシル基を1以上含む化合物であるアニオン界面活性剤」が、本件発明2では、
「下記一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩
【化1】

[上記一般式(I)において、Rはラウリル基又はトリデシル基を表し、Xは平均付加モル数が12以下であることを表す。]」
に特定されるのに対し、甲9発明にはそのような特定はない点

(相違点9-4)
本件発明2は「上記(A)の配合量が上記(B)の配合量よりも多い」ものであるのに対し、甲9発明にはそのような特定がない点

なお、申立人は、特許異議申立書において、甲9に記載された発明を具体的に認定することなく、甲9の各所に記載された事項がそれぞれ本件発明2の発明特定事項に相当する旨主張するのみであるため、甲9の記載に基づき、上記のとおり引用発明(甲9発明)を認定した。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点9-2を検討する。
甲9には、カチオン性高分子を配合することが可能である旨記載されており、カチオン変性高分子として、カチオン変性セルロースエーテル誘導体及びカチオン化グアーガム誘導体が挙げられているものの(上記記載事項(甲9-7))、カチオン変性セルロースエーテル誘導体又はカチオン化グアーガムとして、「ポリクオタニウム-10」、「ポリクオタニウム-39」、「ポリクオタニウム-53」及び「ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド」のいずれについても例示すらされていない。さらに、甲9には、シャンプー組成物において、ポリクオタニウム-73及びアニオン界面活性剤と共に、「ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上」を併せて用いることが記載ないし示唆されているわけでもない。
また、甲11?16によれば、カチオン変性セルロースエーテル誘導体にポリクオタニウム-10が含まれること、甲11、13によれば、カチオン化グアーガム誘導体に、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが含まれることは明らかであるものの、甲11?16には、甲9発明におけるカチオン変性セルロースエーテル誘導体又はカチオン化グアーガム誘導体として、特に、ポリクオタニウム-10又はヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを選択することを動機付ける記載は見当たらない。
そして、本件発明2は、ポリクオタニウム-73及び特定のアニオン界面活性剤と共に配合するカチオン性高分子として、「ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上」を選択したことにより、全体として、洗い流した後に感じられる毛髪の厚みを乏しくすることなく、その洗い流し過程での毛髪における指通りが良好であるという当業者にも予測できない顕著な効果を奏するものである。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、相違点9-1、相違点9-3及び相違点9-4について検討するまでもなく、本件発明2は、甲9に記載された発明及び甲11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明3?5
本件発明3及び4は、本件発明2をさらに限定した発明であるから、上記イで説示したのと同様の理由により、甲9発明及び甲11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明5は、本件発明2の全ての発明特定事項を含むものであるから、上記イで説示したように、本件発明2が甲9発明及び甲11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明5も甲9発明及び甲11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する、甲9に記載された発明を引用発明とする申立理由2-アには理由がない。

(3)甲10に記載された発明を引用発明とする申立理由1-イ(新規性)
申立理由1-イは訂正前の請求項1に係る特許並びに同項を引用する請求項4に係る特許に対するものであるが、本件訂正請求により、請求項1が削除され、また、請求項4において、引用する請求項から請求項1が削除されたため、申立理由1-イは理由がないものとなった。

(4)甲10に記載された発明を引用発明とする申立理由2-イ(進歩性)
ア 甲10に記載された発明
上記記載事項(甲10-1)の記載からみて、甲10には、次の発明が記載されているものと認められる。
「カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体であって、共重合体を構成する全構成単位における前記カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位の割合が25?45モル%であることを特徴とする共重合体と、界面活性剤、その他の添加成分を含むことを特徴とする毛髪洗浄剤組成物
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表わす。)」(以下、「甲10発明」という。)

イ 本件発明2
(ア)対比
本件発明2と甲10発明とを対比する。
本件発明2の「ポリクオタニウム-73」は、本件明細書の段落【0013】によれば、「アクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド及びジメチルアクリルアミドの共重合体である」であり、甲10発明の
「カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表わす。)」
は、本件発明2の「ポリクオタニウム-73」と「共重合体」である点で共通する。
甲10発明の「界面活性剤」は、本件発明2の「(C)アニオン界面活性剤」を包含するものであり、両者は「界面活性剤」である点で共通する。
甲10発明の「毛髪洗浄剤組成物」は、本件発明2の「シャンプー組成物」に相当する。

以上のことから、本件発明2と甲10発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「共重合体及び界面活性剤が配合されたシャンプー組成物」

(相違点10-1)
共重合体が、本件発明2では、「(A)ポリクオタニウム-73」であるのに対し、甲9発明では、
「カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位と、一般式(1)又は(2)で表されるビニル系単量体(B)に相当する構成単位とを含む共重合体であって該共重合体を構成する全構成単位における前記カチオン性ビニル系単量体(A)に相当する構成単位の割合が25?45モル%である共重合体
CH_(2)=C(R^(1))-CO-NR^(2)R^(3) (1)
(式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)及びR^(3)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を表し、R^(2)とR^(3)の炭素数の和は1以上4以下である。)
CH_(2)=C(R^(4))-CO(O)-(CH_(2))_(a)-(CHOH)_(b)-OH (2)
(式中、R^(4)は水素原子又はメチル基を表し、aは1?4の整数を表し、bは0又は1を表わす。)」
である点

(相違点10-2)
本件発明2は、「(B)ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上」が配合されているのに対し、甲9発明にはそのような成分を配合することが規定されていない点

(相違点10-3)
界面活性剤が、本件発明2では、「アニオン界面活性剤」であって、「下記一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩
【化1】

[上記一般式(I)において、Rはラウリル基又はトリデシル基を表し、Xは平均付加モル数が12以下であることを表す。]」
に特定されるのに対し、甲10発明にはそのような特定はない点

(相違点10-4)
本件発明2は「上記(A)の配合量が上記(B)の配合量よりも多い」ものであるのに対し、甲10発明にはそのような特定がない点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点10-2を検討する。
甲9、10には、毛髪洗浄剤組成物中に配合することができるカチオン性高分子として、カチオン変性セルロースエーテル誘導体が挙げられているものの(上記記載事項(甲10-6))、カチオン変性セルロースエーテル誘導体として、「ポリクオタニウム-10」、「ポリクオタニウム-39」、「ポリクオタニウム-53」及び「ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド」のいずれについても例示すらされていない。さらに甲10には、シャンプー組成物において、ポリクオタニウム-73及びアニオン界面活性剤と共に、「ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上」を併せて用いることが記載ないし示唆されているわけでもない。
また、甲11?16によれば、カチオン変性セルロースエーテル誘導体にポリクオタニウム-10が含まれることは明らかであるものの、甲11?16には、甲10発明におけるカチオン変性セルロースエーテル誘導体として、特に、ポリクオタニウム-10を選択することを動機付ける記載は見当たらない。
また、甲2、3には、「ラウレスー6カルボン酸Na」について記載されるだけであって、ポリクオタニウム-10を選択することを動機付ける記載は全くない。
そして、本件発明2は、ポリクオタニウム-73及び特定のアニオン界面活性剤と共に配合するカチオン性高分子として、「ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上」を選択したことにより、全体として、洗い流した後に感じられる毛髪の厚みを乏しくすることなく、その洗い流し過程での毛髪における指通りが良好であるという当業者にも予測できない顕著な効果を奏するものである。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、相違点10-1、相違点10-3及び相違点10-4について検討するまでもなく、本件発明2は、甲10に記載された発明及び甲2、3、9、11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明3、4
本件発明3及び4は、本件発明2をさらに限定した発明であるから、上記イで説示したのと同様の理由により、甲10発明及び甲2、3、9、11?16に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する、甲10に記載された発明を引用発明とする申立理由2-イには理由がない。

(5)申立理由3(明確性)
ア 申立人の主張
申立人は、本件発明における「ポリクオタニウム-73」、「ポリクオタニウム-10」、「ポリクオタニウム-39」及び「ポリクオタニウム-53」について、具体的にどのような共重合体やカチオン化セルロースを用いればよいか明確でない旨主張する。

イ 当審の判断
(ア)ポリクオタニウム-73について
本件明細書の段落【0013】には、
「(A)ポリクオタニウム-73
本実施形態のシャンプーには、アクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド及びジメチルアクリルアミドの共重合体であるポリクオタニウム-73が配合される。」
と記載されているから、本件発明における「ポリクオタニウム-73」に何ら不明確なところはない。

(イ)ポリクオタニウム-10について
本件明細書の段落【0017】には、
「ここで、ポリクオタニウム-10は、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる構造の化合物であり・・・」
と記載されているから、本件発明における「ポリクオタニウム-10」に何ら不明確なところはない。

(ウ)ポリクオタニウム-39について
本件明細書の段落【0017】には、
「ポリクオタニウム-39は、アクリル酸、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びアクリル酸アミドを構成モノマーとする重合体であり・・・」
と記載されているから、本件発明における「ポリクオタニウム-39」に何ら不明確なところはない。

(エ)ポリクオタニウム-53について
本件明細書の段落【0017】には、
「ポリクオタニウム-53は、アクリル酸、アクリル酸アミド及びメタクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを構成モノマーとする重合体である。」
と記載されているから、本件発明における「ポリクオタニウム-53」に何ら不明確なところはない。

ウ 小括
以上(ア)?(エ)のとおり、本件発明における「ポリクオタニウム-73」、「ポリクオタニウム-10」、「ポリクオタニウム-39」及び「ポリクオタニウム-53」は明確なものであり、構成モノマーの配合比やカチオン化度や分子量の記載がないからといって、それらのポリクオタニウムの範囲が格別不明確になるものでもない。
よって、申立人が主張する申立理由3には理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項2?5に係る特許について、結論のとおり決定する。

本件請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項1に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、これを却下する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(A)ポリクオタニウム-73、(B)ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-53及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選ばれた一種又は二種以上、並びに(C)アニオン界面活性剤が配合され、
上記(C)として、下記一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩が配合され、
上記(A)の配合量が上記(B)の配合量よりも多いことを特徴とするシャンプー組成物。
【化1】

[上記一般式(I)において、Rはラウリル基又はトリデシル基を表し、Xは平均付加モル数が12以下であることを表す。]
【請求項3】
上記(B)の配合量に対する上記(A)の配合量の比(A)/(B)が3.0以下である請求項2に記載のシャンプー組成物。
【請求項4】
上記一般式(I)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(I)又はその塩として、下記一般式(Ia)で表されるアルキルエーテルカルボン酸(Ia)又はその塩が配合された請求項2又は3に記載のシャンプー組成物。
【化2】

[上記一般式(Ia)において、R1はラウリル基又はトリデシル基を表し、Lは平均付加モル数が6以下であることを表す。]
【請求項5】
請求項2?4のいずれか1項に記載のシャンプー組成物による洗髪処理後、前記シャンプー組成物を洗い流した後の濡れた毛髪にトリートメント組成物を塗布して洗い流すトリートメント処理を行う方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-24 
出願番号 特願2015-13077(P2015-13077)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 周士郎  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 吉田 知美
冨永 みどり
登録日 2018-12-21 
登録番号 特許第6452473号(P6452473)
権利者 株式会社ミルボン
発明の名称 シャンプー組成物  
代理人 鎌田 文二  
代理人 合路 裕介  
代理人 北川 政徳  
代理人 鎌田 直也  
代理人 加藤 秀忠  
代理人 加藤 秀忠  
代理人 合路 裕介  
代理人 中谷 弥一郎  
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