• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
管理番号 1360474
異議申立番号 異議2019-700111  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-12 
確定日 2020-02-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6372626号発明「樹脂組成物及び積層体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6372626号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、5-8〕について訂正することを認める。 特許第6372626号の請求項1-8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
1 特許第6372626号(請求項の数5。以下、「本件特許」という。)は、平成29年5月23日(優先権主張:平成28年6月2日)を国際出願日とする特許出願(特願2017-557019号)に係るものであって、平成30年7月27日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、平成30年8月15日である。)。

2 本件特許につき平成31年2月12日に、本件特許の請求項1?5に係る特許に対して、特許異議申立人である中水麻衣(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

3 本件特許異議の申立てにおける手続きの経緯は、以下のとおりである。

平成31年 2月12日 特許異議申立書
令和 1年 5月10日付け 取消理由通知書
令和 1年 6月24日 意見書(特許権者)
令和 1年 8月 9日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和 1年10月11日 訂正の請求及び意見書(特許権者)
令和 1年11月27付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 1年12月20日 意見書(申立人)

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和1年10月11日付けでの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、5?8について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。

訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1に「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物。」とあるのを、「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含み、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物。」に訂正する。

訂正事項2:特許請求の範囲の請求項5に「第一部材の上に請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、前記樹脂組成物は、エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含み、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物である、積層体の製造方法」に訂正する。

訂正事項3:特許請求の範囲の請求項5に「第一部材の上に請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物である、積層体の製造方法」に訂正し、請求項6とする。

訂正事項4:特許請求の範囲の請求項5に「第一部材の上に請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法。」とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、「第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物であり、前記メソゲン骨格を有するエポキシモノマーは、下記一般式(I)で表される化合物を含む、積層体の製造方法。
【化1】


に訂正し、請求項7とする。

訂正事項5:特許請求の範囲の請求項5に「第一部材の上に請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、「第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物であり、前記硬化剤はフェノールノボラック樹脂を含む、積層体の製造方法」に訂正し、請求項8とする。

本件訂正請求は、訂正前の請求項1、5について、請求項5は請求項1を引用しているものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、5に対応する訂正後の請求項1、5、6、7、8は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項となるから、一群の請求項1、5?8に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「樹脂組成物」の種類を「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」を含むものへと減縮するとともに、粘度A及び粘度Bが無機充填材を含んだ状態で測定されることを特定するものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「樹脂組成物」の種類を、本願特許明細書の【0043】、【0044】、【0076】、【0123】及び【0157】に記載された「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」を含むものと特定するとともに、粘度A及び粘度Bが無機充填材を含んだ状態で測定されることを特定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項5が請求項1?請求項4のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用するものについて独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る「樹脂組成物」の種類を「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」を含むものへと減縮するとともに、粘度A及び粘度Bが無機充填材を含んだ状態で測定されることを請求項5において特定するものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「樹脂組成物」の種類を、本願特許明細書の【0043】、【0044】、【0076】、【0123】及び【0157】に記載された「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」を含むものと特定するとともに、粘度A及び粘度Bが無機充填材を含んだ状態で測定されることを請求項5において特定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が請求項1?請求項4のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項2を引用するものについて独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1?請求項4のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項3を引用するものについて独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1?請求項4のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項4を引用するものについて独立形式請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1?8に係る発明
上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1?8に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである(以下、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。また、下線は訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含み、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物。
【請求項2】
25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物。
【請求項3】
前記メソゲン骨格を有するエポキシモノマーは下記一般式(I)で表される化合物を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【化1】

一般式(I)中、R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を示す。
【請求項4】
前記硬化剤はフェノールノボラック樹脂を含む、請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含み、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物である、積層体の製造方法。
【請求項6】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物である、積層体の製造方法。
【請求項7】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物であり、前記メソゲン骨格を有するエポキシモノマーは、下記一般式(I)で表される化合物を含む、積層体の製造方法。
【化1】

【請求項8】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物であり、前記硬化剤はフェノールノボラック樹脂を含む、積層体の製造方法。」

第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件特許1?5に係る特許は、下記(1)?(3)のとおり、特許法第113条第2号、及び同法113条第4号に該当する。証拠方法として、下記(4)の甲第1号証、甲第2号証(以下、単に「甲1」等という。)を提出する。

(1)申立理由1(サポート要件)
本件訂正前の請求項1及び5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであるから、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(新規性)
本件訂正前の請求項1及び5に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであって、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(進歩性)
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲1又は甲2に基いて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

(4)証拠方法
・甲1:特許第5806760号公報
・甲2:特開2013-179272号公報

2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)令和1年5月10日付けの取消理由通知書
(理由1)(新規性)本件発明1、5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1の刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由2)(サポート要件)本件発明1、5は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(2)令和1年8月9日付けの取消理由通知書(決定の予告)
(理由1)(新規性)本件発明1、5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1の刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(理由2)(サポート要件)本件発明1、5は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
以下、詳述する。

1 令和1年8月9日付けの取消理由通知書(決定の予告)について
(1)取消理由1(新規性)
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
(1-1)
「【0033】
(B)エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ官能基および芳香環を有する化合物であり、液状エポキシ樹脂が用いられる。1種類だけ使用しても2種類以上を併用してもよい。このような液状エポキシ樹脂の具体例としては、エピクロルヒドリンとビスフェノール類等の多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるもので、例えば、ビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ノボラック型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、テトラフェニロールエタン型等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を例示することができる。その他、エピクロルヒドリンとフタル酸誘導体や脂肪酸等のカルボン酸との縮合によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、さらには様々な方法で変性したエポキシ樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。特には、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく用いられ、中でもビスフェノールA型、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。」

(1-2)
「【0070】
上記のようにして調製された接着剤組成物中の(A)導電性フィラーを除いた場合の粘度は、回転式粘度計により理測定される。なお本発明において上記粘度は、回転式粘度計としてコーンプレート型粘度計を用い、温度25℃で3°×R14コーンプレートを用い特定の回転数(rpm)で測定された値である。
【0071】
また上記のようにして調製された接着剤組成物は、その中の(A)導電性フィラーを除いた場合、回転式粘度計による回転数0.5rpmおよび5rpmの測定値より算出されるTI値(チクソトロピーインデックス)が、1?3であることが好ましい。このTI値を有することにより、ペースト作成時の作業性が向上するばかりか、電性フィラーと樹脂が適切に分散し熱硬化時の導電性フィラーのネッキング化が促進されより高い熱伝導性と導電性が得られるという効果を奏する。なお本発明において上記TI値は、上記の回転式粘度計の回転数0.5ppmの測定値を5ppmの測定値で除して算出された値である。」

(1-3)
「【0073】
[実施例1?9、比較例1?3]
A.接着剤組成物の作製
表1に記載された各材料を三本ロールにて混練し、表1に示す組成の接着剤組成物を作製した(各材料の数値は接着剤組成物の総質量に対する質量%を表す。)。使用した材料は下記の通りである。なお、混練の順番は、(A)成分および(E)成分の混練をまず最初に行い、続いて、その他の各種成分を混合し各成分が均一分散されるように混練を行った。200℃で1時間加熱後に室温まで放冷し接着剤組成物の硬化体を得た。
【0074】
(A)導電性フィラー
・銀粉[平均粒子径:5.0μm、田中貴金属工業(株)製]タップ密度6.5g/cm^(3)
・銀粉[平均粒子径:1.5μm、田中貴金属工業(株)製]タップ密度4.7g/cm^(3)
・銀粉[平均粒子径:8.0μm、田中貴金属工業(株)製]タップ密度4.2g/cm^(3)
【0075】
(B)エポキシ樹脂
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂[EPICRON EXA-830CRP、DIC(株)製、室温で液状]
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂(jER-152、三菱化学(株)社製、室温で液状)
・ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)社製HP4032D、室温で液状)
【0076】
(C)反応性希釈剤
・1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(分子量202.25)
・1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(分子量256.34)
【0077】
(D)硬化剤
・1分子内に2個以上のフェノール官能基を有する化合物[明和化成(株)製MEH8000H]
・1分子内に2個以上のアニリン官能基を有する化合物[東京化成工業(株)製4,4’-ジアミノジフェニルスルホン]
【0078】
(E)液状ゴム系樹脂
・カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴム[宇部興産(株)製CTBN-1300×13NA]
【0079】
(硬化促進剤)
・トルエンビスジメチルウレア[Carbon Scientific社製]
・イミダゾール系硬化促進剤[四国化成工業(株)社製2P4MHZ]
【0080】
(溶剤)
・γ-ブチロラクトン
・N-メチルピロリドン
【0081】
(その他)
・コアシェル粒[アイカ工業(株)製 AC-3355]
・シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング(株)社製Z-6040)」

(1-4)
「【0083】
1.粘度
(A)導電性フィラーを除いて接着剤組成物を調製し、その粘度を測定した。粘度は、回転式粘度計としてコーンプレート型粘度計を用い、温度25℃で3°×R14コーンプレートを用い回転数0.5ppmまたは5ppm、温度25℃で測定した。結果を表1に示す。
【0084】
2.TI値
(A)導電性フィラーを除いて接着剤組成物を調製し、そのTI値を測定した。TI値は、上記回転式粘度計の回転数0.5ppmの測定値を5ppmの測定値で除して算出した。結果を表1に示す。」

(1-5)
「【0088】
【表1】



(イ)甲1に記載された発明
甲1には、摘記(1-1)ないし(1-5)、特に摘記(1-3)、(1-5)の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「接着剤組成物の総質量に対して、(A)導電性フィラー 銀粉[平均粒子径:5.0μm、田中貴金属工業(株)製]タップ密度6.5g/cm^(3) 85.3質量%、(B)エポキシ樹脂 フェノールノボラック型エポキシ樹脂(jER-152、三菱化学(株)社製、室温で液状) 0.8質量%、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)社製HP4032D、室温で液状) 0.8質量%、(C)反応性希釈剤 1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(分子量202.25) 6.3質量%、(E)液状ゴム系樹脂 カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴム[宇部興産(株)製CTBN-1300×13NA] 0.5質量%、コアシェル粒子[アイカ工業(株)製 AC-3355] 2.2質量%、(D)硬化剤 1分子内に2個以上のフェノール官能基を有する化合物[明和化成(株)製MEH8000H] 0.5質量%、硬化促進剤 トルエンビスジメチルウレア[Carbon Scientific社製] 0.2質量%、イミダゾール系硬化促進剤[四国化成工業(株)社製2P4MHZ] 0.2質量%、シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング(株)社製Z-6040) 0.1質量%、溶剤 γ-ブチロラクトン 3.1質量%から上記(A)導電性フィラーを除いた各材料を三本ロールにて混練して各成分が均一分散されるように混練を行った接着剤組成物であって、回転式粘度計としてコーンプレート型粘度計を用い、温度25℃で3°×R14コーンプレートを用い回転数0.5rpmまたは5rpm、温度25℃で測定した該接着組成物の粘度は、それぞれ10.5Pa・s、2.6Pa・sであり、上記回転式粘度計の回転数0.5rpmの測定値を5rpmの測定値で除して算出したTI値(チクソトロピーインデックス)は4.0である接着剤組成物。」(以下「甲1発明」という。)

なお、甲1の【0071】、【0083】、【0084】には、「ppm」と記載されているが、当審は、これらの「ppm」は、甲1の【0070】、【0071】のほか、表1の「粘度 5rpm(Pa・s)」、「TI値 0.5/5rpm」の記載からみて、「rpm」の誤記と認定した。
そして、甲1の【0081】には、「コアシェル粒」と記載されているが、当審は、該「コアシェル粒」は、甲1の表1の記載からみて、「コアシェル粒子」の誤記と認定した。

イ 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の(B)「エポキシ樹脂」は、摘記(1-1)から、本件訂正発明1の「エポキシモノマー」に相当し、甲1発明の(D)「硬化剤」は、本件訂正発明1の「硬化剤」に相当する。また、甲1発明の「接着剤組成物」は、エポキシ樹脂を含有することからみて、本件訂正発明1の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は、
「エポキシモノマー、硬化剤を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件訂正発明1では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲1発明ではこの特定がない点。

<相違点2>
本件訂正発明1では、樹脂組成物がエポキシモノマー、硬化剤に加えてさらに「無機充填材」を含むとの特定があるのに対し、甲1発明では接着剤組成物から「(A)導電性フィラーを除いた各材料を三本ロールにて混練して各成分が均一分散されるように混練を行った接着剤組成物」である点。

<相違点3>
本件訂正発明1では、エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含む樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり」との特定があるのに対し、甲1発明では接着剤組成物から「(A)導電性フィラーを除いた各材料を三本ロールにて混練して各成分が均一分散されるように混練を行った接着剤組成物」の粘度及びチクソトロピーインデックスについて、「回転式粘度計としてコーンプレート型粘度計を用い、温度25℃で3°×R14コーンプレートを用い回転数0.5rpmまたは5rpm、温度25℃で測定した該接着組成物の粘度は、それぞれ10.5Pa・s、2.6Pa・sであり、上記回転式粘度計の回転数0.5rpmの測定値を5rpmの測定値で除して算出したTI値(チクソトロピーインデックス)は4.0」であると特定している点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2、3から検討する。
相違点2について、本件訂正発明1は、無機充填材を必須成分として含むものであるが、甲1の接着剤組成物は、回転数0.5rpmまたは5rpm、温度25℃で測定した粘度及びTI値を測定する際に導電性フィラーを除いており、無機充填材である導電性フィラーを含まないものである。してみると、甲1発明は、「無機充填材」を必須成分として含むものとはいえない。
そして、相違点3について、本件訂正発明1は、樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数を測定する際に、無機充填材を配合した樹脂組成物を用いるものである。一方、甲1には、接着剤組成物の粘度及びTI値を測定する態様について、甲1発明や甲1の【0071】には、導電性フィラーを除くと記載されており、甲1において、導電性フィラーを配合した接着剤組成物の粘度及びTI値については測定していない。
すなわち、甲1には、「導電性フィラーを配合した接着剤組成物の粘度及びTI値」を、「導電性フィラーを配合しない接着剤組成物と同様の粘度及びTI値」と同様の範囲に特定することは記載されていない。
以上によれば、相違点2、3は、実質的な相違点である。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

ウ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5と甲1発明を対比すると、上記イ(ア)で本件訂正発明1と甲1発明との対比について述べたのと同様に、本件訂正発明5と甲1発明は、

「エポキシモノマー、硬化剤を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1’>
本件訂正発明5では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲1発明ではこの特定がない点。

<相違点2’>
本件訂正発明5では、樹脂組成物がエポキシモノマー、硬化剤に加えてさらに「無機充填材」を含むとの特定があるのに対し、甲1発明では接着剤組成物から「(A)導電性フィラーを除いた各材料を三本ロールにて混練して各成分が均一分散されるように混練を行った接着剤組成物」である点。

<相違点3’>
本件訂正発明5では、エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含む樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり」との特定があるのに対し、甲1発明では接着剤組成物から「(A)導電性フィラーを除いた各材料を三本ロールにて混練して各成分が均一分散されるように混練を行った接着剤組成物」の粘度及びチクソトロピーインデックスについて、「回転式粘度計としてコーンプレート型粘度計を用い、温度25℃で3°×R14コーンプレートを用い回転数0.5rpmまたは5rpm、温度25℃で測定した該接着組成物の粘度は、それぞれ10.5Pa・s、2.6Pa・sであり、上記回転式粘度計の回転数0.5rpmの測定値を5rpmの測定値で除して算出したTI値(チクソトロピーインデックス)は4.0」であると特定している点。

<相違点4>
本件訂正発明5では、「第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法」 とあるのに対し、甲1発明ではこの特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2’、3’から検討する。
相違点2’、3’については、上記イ(ア)の相違点2、3と同旨であって、その判断についても同様であり、相違点2’、3’は実質的な相違点である。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明5は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

エ まとめ
よって、取消理由1は理由がなく、本件訂正発明1、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

(2)取消理由2(サポート要件)
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10042号、同年11月11日特別部判決)。
以下、上記の観点に立って、本件について検討することとする。

ア 本件明細書の記載事項
本件明細書には、以下の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器及び電気機器の部品として、一対の部材の間に絶縁等を目的とする樹脂層が配置された積層体が種々の用途に用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような積層体は、フィルム状の樹脂組成物を介して双方の部材を貼り付けることで製造されていた。
・・・
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、積層体の樹脂層を形成するのに適した塗布性と形状保持性を有し、かつ良好な熱伝導性を有する樹脂層を形成可能な樹脂組成物、及びこれを用いる積層体の製造方法を提供することを課題とする。」

(イ)「【0020】
樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数は、例えば、樹脂組成物の成分の種類、量等を変更することによって調節できる。
【0021】
樹脂組成物に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂組成物に含まれる樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。電気絶縁性と接着性の観点からは、樹脂組成物はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。樹脂組成物は、必要に応じてフィラー等の樹脂以外の成分を含んでもよい。」

(ウ)「【0043】
<エポキシ樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシモノマーと、硬化剤と、を含むエポキシ樹脂組成物であってもよい。
【0044】
[エポキシモノマー]
エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシモノマーは、1種単独でも、2種以上であってもよい。また、エポキシモノマーがオリゴマー又はプレポリマーの状態になったものを含んでいてもよい。
【0045】
エポキシモノマーの種類は特に制限されず、積層体の用途等に応じて選択できる。樹脂層に高い熱伝導性が求められる場合は、メソゲン骨格を有し、且つ、1分子内に2個のグリシジル基を有するエポキシモノマー(以下、特定エポキシモノマーともいう)を用いてもよい。特定エポキシモノマーを含むエポキシ樹脂組成物を用いて形成される樹脂層は、高い熱伝導率を示す傾向にある。
【0046】
本明細書において「メソゲン骨格」とは、液晶性を発現する可能性のある分子構造を示す。具体的には、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、これらの誘導体等が挙げられる。メソゲン骨格を有するエポキシモノマーを含むエポキシ樹脂組成物は、硬化時に高次構造を形成し易く、硬化物を作製した場合に、より高い熱伝導率を達成できる傾向にある。
【0047】
特定エポキシモノマーとしては、例えば、ビフェニル型エポキシモノマー及び3環型エポキシモノマーが挙げられる。
【0048】
ビフェニル型エポキシモノマーとしては、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、エピクロルヒドリンと4,4’-ビフェノール又は4,4’-(3,3’,5,5’-テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシモノマー、α-ヒドロキシフェニル-ω-ヒドロポリ(ビフェニルジメチレン-ヒドロキシフェニレン)等が挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、「YX4000」、「YL6121H」(以上、三菱化学株式会社製)、「NC-3000」、「NC-3100」(以上、日本化薬株式会社製)等の製品名により市販されているものが挙げられる。
【0049】
3環型エポキシモノマーとしては、ターフェニル骨格を有するエポキシモノマー、1-(3-メチル-4-オキシラニルメトキシフェニル)-4-(4-オキシラニルメトキシフェニル)-1-シクロヘキセン、1-(3-メチル-4-オキシラニルメトキシフェニル)-4-(4-オキシラニルメトキシフェニル)-ベンゼン、下記一般式(I)で表される化合物等が挙げられる。
【0050】
より高い熱伝導率を達成する観点から、特定エポキシモノマーは、エポキシモノマーとして1種単独で用いて硬化したときに、高次構造を形成可能であることが好ましく、スメクチック構造を形成可能であることがより好ましい。このようなエポキシモノマーとしては、下記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。エポキシ樹脂組成物が下記一般式(I)で表される化合物を含むことにより、より高い熱伝導率を達成することが可能となる。
【0051】
【化2】

【0052】
一般式(I)中、R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を示す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。また、R^(1)?R^(4)のうちの2個?4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることが更に好ましい。R^(1)?R^(4)のいずれかが炭素数1?3のアルキル基である場合、R^(1)及びR^(4)の少なくとも一方が炭素数1?3のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
なお、一般式(I)で表される化合物の好ましい例は、例えば、特開2011-74366号公報に記載されている。具体的に、一般式(I)で表される化合物としては、4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゾエート及び4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3-メチルベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0054】
ここで、高次構造とは、その構成要素がミクロに配列している状態のことであり、例えば、結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造が存在しているか否かは、偏光顕微鏡での観察によって容易に判断することが可能である。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉模様が見られる場合は高次構造が存在していると判断できる。高次構造は、通常では樹脂中に島状に存在しており、ドメイン構造を形成している。そして、ドメイン構造を形成している島のそれぞれを高次構造体という。高次構造体を構成する構造単位同士は、一般的には共有結合で結合されている。
【0055】
メソゲン骨格に由来する規則性の高い高次構造には、ネマチック構造、スメクチック構造等がある。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向に向いており、配向秩序のみを持つ液晶構造である。これに対して、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、一定周期の層構造を有する液晶構造である。また、スメクチック構造の同一の周期の構造内部では、層構造の周期の方向が一様である。すなわち、分子の秩序性は、ネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。秩序性の高い高次構造が半硬化物又は硬化物中に形成されると、熱伝導の媒体であるフォノンが散乱するのを抑制することができる。このため、ネマチック構造よりもスメクチック構造の方が、熱伝導率が高くなる。
すなわち、分子の秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高く、硬化物の熱伝導性もスメクチック構造を示す場合の方が高くなる。一般式(I)で表される化合物を含むエポキシ樹脂組成物は、硬化剤と反応して、スメクチック構造を形成できるので、高い熱伝導率を発揮できると考えられる。
【0056】
エポキシ樹脂組成物を用いてスメクチック構造の形成が可能であるか否かは、下記の方法により判断することができる。
CuK_(α)1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θが0.5°?30°の範囲で、X線解析装置(例えば、株式会社リガク製)を用いてX線回折測定を行う。2θが1°?10°の範囲に回折ピークが存在する場合には、周期構造がスメクチック構造を含んでいると判断される。なお、メソゲン構造に由来する規則性の高い高次構造を有する場合には、2θが1°?30°の範囲に回折ピークが現れる。
【0057】
エポキシ樹脂組成物は、2種以上の特定エポキシモノマーと、硬化剤と、含有し、前記2種以上の特定エポキシモノマーは、互いに相溶可能であり、前記硬化剤と反応することによりスメクチック構造を形成可能である、エポキシ樹脂組成物(以下、「特定エポキシ樹脂組成物」とも称する)であってもよい。特定エポキシ樹脂組成物は、融点が低く、かつ硬化後の熱伝導性に優れている。
【0058】
本明細書において「2種以上のエポキシモノマー」とは、分子構造が異なる2種以上のエポキシモノマーを意味する。ただし、立体異性体(光学異性体、幾何異性体等)の関係にあるエポキシモノマーは「2種以上のエポキシモノマー」に該当せず、同一種類のエポキシモノマーとみなす。
【0059】
特定エポキシ樹脂組成物が、融点が低く、硬化後の熱伝導性に優れている理由は明らかではないが、2種以上の特定エポキシモノマーが互いに相溶し、スメクチック構造を形成することで、硬化前の特定エポキシ樹脂組成物の融点を低下させ、硬化後に高い熱伝導性を発揮することができると考えられる。」

(エ)「【0131】
・・・
【実施例】
【0133】
以下にエポキシ樹脂組成物の作製に用いた材料とその略号を示す。(メソゲン骨格を有するエポキシモノマーA(モノマーA))
・[4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゾエート、エポキシ当量:212g/eq、特開2011-74366号公報に記載の方法により製造]
【0134】
【化9】

(メソゲン骨格を有するエポキシモノマーB(モノマーB))
・YL6121H[ビフェニル型エポキシモノマー、三菱化学株式会社製、エポキシ当量:172g/eq]
・・・
【0146】
<実施例1>
(エポキシ樹脂組成物の調製)
メソゲン骨格を有するエポキシモノマーとして、モノマーAとモノマーBとをエポキシ当量が8:2となるように混合してエポキシモノマー混合物1を得た。後述の方法により相溶性を確認したところ、エポキシモノマー混合物1は、エポキシ樹脂組成物の硬化温度である140℃において相溶性を有していた。
【0147】
エポキシモノマー混合物1を8.19質量%と、硬化剤としてCRNを4.80質量%と、硬化促進剤としてTPPを0.09質量%と、無機充填材としてHP-40を39.95質量%と、AA-3を9.03質量%と、AA-04を9.03質量%と、添加剤としてKBM-573を0.06質量%と、溶剤としてCHNを28.85質量%と、を混合し、ワニス状のエポキシ樹脂組成物を調製した。
・・・
【0160】
<実施例2?8、比較例1、2>
溶剤(CHN)の量を変更した以外は実施例1と同様にして実施例2?8、比較例1、2のエポキシ樹脂組成物を調製した。
調製したエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして粘度、塗布性、形状保持性及び熱伝導率を測定又は評価した。結果を表1に示す。」

イ 本件訂正発明1について
本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件訂正発明1は、電子機器及び電気機器の部品として、一対の部材の間に絶縁等を目的とする樹脂層が配置された積層体に用いられるものであって、「積層体の樹脂層を形成するのに適した塗布性と形状保持性を有し、かつ良好な熱伝導性を有する樹脂層を形成可能な樹脂組成物、及びこれを用いる積層体の製造方法を提供する」ことを課題とするものである(【0001】、【0007】)。
ここで、本件訂正発明1は、「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含み、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための」「樹脂組成物」に係るものであって、樹脂組成物に配合する配合成分として「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」を配合する態様を包含するものであり、本件明細書の発明の詳細な説明には「樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数は、例えば、樹脂組成物の成分の種類、量等を変更することによって調節できる」(【0020】)、「樹脂組成物に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂組成物に含まれる樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。電気絶縁性と接着性の観点からは、樹脂組成物はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。樹脂組成物は、必要に応じてフィラー等の樹脂以外の成分を含んでもよい。」(【0021】)、「エポキシモノマーの種類は特に制限されず、樹脂層に高い熱伝導性が求められる場合は、メソゲン骨格を有し、且つ、1分子内に2個のグリシジル基を有するエポキシモノマー(以下、特定エポキシモノマーともいう)を用いてもよい。特定エポキシモノマーを含むエポキシ樹脂組成物を用いて形成される樹脂層は、高い熱伝導率を示す傾向にある。」(【0045】)と記載されている。そして、エポキシモノマーとしてメソゲン骨格を有するエポキシモノマーAを用いた例を実施例(【0133】、【0134】)として記載している。
そうすると、本件明細書には、樹脂組成物の熱伝導性について、【0045】によれば、樹脂層に高い熱伝導性が求められる場合は、メソゲン骨格を有し、且つ、1分子内に2個のグリシジル基を有するエポキシモノマー(特定エポキシモノマー)をエポキシモノマーとして用いてもよいものであって、「高い熱伝導性」ではない、すなわち「良好な熱伝導性」を課題とする場合は、エポキシモノマーの種類は特に制限されないと理解できるといえる。
したがって、本件訂正発明1において、種類が特に制限されないエポキシモノマーを用いることで、本件訂正発明1の「良好な熱伝導性を有する樹脂層を形成可能な樹脂組成物を提供する」との課題を解決できることが理解できる。

以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、本件訂正発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件訂正発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。

よって、取消理由2(サポート要件)は理由がなく、本件訂正発明1は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件訂正発明1に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。

ウ 本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1を直接引用するものであるが、上記イで本件訂正発明1について述べたのと同様の理由により、本件訂正発明5の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。

よって、取消理由2(サポート要件)は理由がなく、本件訂正発明5は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件訂正発明5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。

2 令和1年5月10日付けの取消理由通知書について
令和1年5月10日付けの取消理由通知書の理由1、2については、上記1において示した取消理由通知書(決定の予告)の理由1、2と同旨の理由を通知し、その判断についても同様である。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由
1 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由の概要
(1)申立理由2(新規性)
本件訂正前の請求項1及び5に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであって、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものであると考える。

(2)申立理由3(進歩性)
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲1又は甲2に基いて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものであると考える。

(3)証拠方法
・甲1:特許第5806760号公報
・甲2:特開2013-179272号公報

2 当審の判断
(1)申立理由3(進歩性)について(甲1を主引例とした場合)
ア 甲1に記載された事項及び記載された発明
甲1に記載された事項及び記載された発明については、上記第5の1(1)ア(ア)に示したとおりである。

イ 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲1発明を対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)イ(ア)で本件訂正発明1と甲1発明との対比について述べたのと同様であり、相違点として相違点1?3が挙げられる。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2、3から検討する。
相違点2、3は、上記第5の1(1)イ(イ)から、実質的な相違点である。
次に、相違点2、3の容易想到性について検討する。
相違点2、3について、甲1において、接着剤組成物の粘度及びTI値を測定する態様について、甲1発明や甲1の【0071】には、導電性フィラーを除くと記載されている。甲1において、導電性フィラーを配合した接着剤組成物の粘度及びTI値については測定していないし、導電性フィラーを配合した接着剤組成物の粘度及びTI値を、導電性フィラーを配合しない接着剤組成物と同様の粘度及びTI値に特定することは甲1には記載されていない。
そうすると、甲1には、接着剤組成物に対し、無機充填材として導電性フィラーを配合することは記載されているが、無機充填材を配合した接着剤組成物の粘度を甲1に記載された接着剤組成物の粘度及びTI値の範囲とし、さらに本願発明で特定された範囲の粘度及びチクソトロピック指数とする動機付けがあるとはいえない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

したがって、相違点1については検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明2について
(ア)対比
本件訂正発明2と甲1発明を対比する。
甲1発明の(B)「エポキシ樹脂」は、上記第5の1(1)ア(ア)の摘記(1-1)から、本件訂正発明2の「エポキシモノマー」に相当し、甲1発明の(D)「硬化剤」は、本件訂正発明1の「硬化剤」に相当する。また、甲1発明の「接着剤組成物」は、エポキシ樹脂を含有することからみて、本件訂正発明1の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明2と甲1発明は、
「エポキシモノマー、硬化剤を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1’’>
本件訂正発明2では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲1発明ではこの特定がない点。

<相違点5>
本件訂正発明2では、樹脂組成物がエポキシモノマーとして「メソゲン骨格を有するエポキシモノマー」を含むとの特定があるのに対し、甲1発明では(B)エポキシ樹脂として「フェノールノボラック型エポキシ樹脂」、「ナフタレン型エポキシ樹脂」を含む点。

<相違点6>
本件訂正発明2では、樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり」との特定があるのに対し、甲1発明では、接着剤組成物から「(A)導電性フィラーを除いた各材料を三本ロールにて混練して各成分が均一分散されるように混練を行った接着剤組成物」の粘度及びチクソトロピーインデックスについて、「回転式粘度計としてコーンプレート型粘度計を用い、温度25℃で3°×R14コーンプレートを用い回転数0.5rpmまたは5rpm、温度25℃で測定した該接着組成物の粘度は、それぞれ10.5Pa・s、2.6Pa・sであり、上記回転式粘度計の回転数0.5rpmの測定値を5rpmの測定値で除して算出したTI値(チクソトロピーインデックス)は4.0」であると特定している点。

(イ)判断
a 事案に鑑み、まず相違点5が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1発明で配合するエポキシ樹脂である「フェノールノボラック型エポキシ樹脂」、「ナフタレン型エポキシ樹脂」は、液晶性を発現する可能性のある分子構造を示す「メソゲン骨格」(【0046】)に相当する構造を有するものとは必ずしもいえないから、本件訂正発明2の「メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂」に相当するものとはいえない。
してみると、相違点5は、実質的な相違点である。

b 次に、相違点5の容易想到性について検討する。
甲1には、エポキシ樹脂として【0033】に液状エポキシ樹脂の具体例として、多種多様なエポキシ樹脂のうちの1形態として「ビフェニル型」が挙げられ、好ましいエポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂である「ビスフェノールA型、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂」が記載されている。してみると、甲1には、エポキシ樹脂として本件明細書でメソゲン骨格であるとする「ビフェニル骨格」を有する化合物が例示されているといえる。
しかしながら、甲1には、エポキシ樹脂として、多種多様な液状エポキシ樹脂のうちの一形態として「ビフェニル型」が挙げられるに留まるものであり、特に好ましいエポキシ樹脂としては「ビスフェノールA型、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂」が記載されているものの、「ビフェニル型」が好ましいとの記載はない。してみると、甲1においてエポキシ樹脂として「メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂」を選択的に用いる動機付けがあるとはいえない。
そうすると、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

したがって、相違点1’’、6については検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

エ 本件訂正発明3、4について
本件訂正発明3、4は、本件訂正発明2を直接又は間接的に引用するものであるが、上記ウで述べたとおり、本件訂正発明2が甲1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明3、4についても同様に、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5と甲1発明を対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)イ(ア)で本件訂正発明5と甲1発明との対比について述べたのと同様であり、相違点として相違点1’?3’、4が挙げられる。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2’、3’から検討する。
相違点2’、3’については、上記イ(ア)の相違点2、3と同じであって、その判断についても上記イ(イ)と同様であるから、相違点2’、3’は実質的な相違点であり、さらに、本件訂正発明5は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

したがって、相違点1’、4については検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明5は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

カ 本件訂正発明6
(ア)対比
本件訂正発明6は、訂正前の請求項5が請求項1?請求項4のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消し、そのうち請求項2を引用するものについて独立形式請求項へ改めるための訂正によるものである。
そうすると、一致点、相違点については、本件訂正発明2及び5と同旨であり、

「エポキシモノマー、硬化剤を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1’’’>
本件訂正発明6では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲1発明ではこの特定がない点。

<相違点5’>
本件訂正発明6では、樹脂組成物がエポキシモノマーとして「メソゲン骨格を有するエポキシモノマー」を含むとの特定があるのに対し、甲1発明では、(B)エポキシ樹脂として「フェノールノボラック型エポキシ樹脂」、「ナフタレン型エポキシ樹脂」を含む点。

<相違点6’>
本件訂正発明6では、樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり」との特定があるのに対し、甲1発明では、接着剤組成物から「(A)導電性フィラーを除いた各材料を三本ロールにて混練して各成分が均一分散されるように混練を行った接着剤組成物」の粘度及びチクソトロピーインデックスについて、「回転式粘度計としてコーンプレート型粘度計を用い、温度25℃で3°×R14コーンプレートを用い回転数0.5rpmまたは5rpm、温度25℃で測定した該接着組成物の粘度は、それぞれ10.5Pa・s、2.6Pa・sであり、上記回転式粘度計の回転数0.5rpmの測定値を5rpmの測定値で除して算出したTI値(チクソトロピーインデックス)は4.0」であると特定している点。

<相違点4’>
本件訂正発明6では、「第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法」 とあるのに対し、甲1発明ではこの特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点5’から検討する。
相違点5’については、上記ウ(ア)の相違点5と同旨であって、その判断についても同旨となり、本件訂正発明6は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、相違点1’’’、6’、4’については検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明6は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

キ 本件訂正発明7、8
本件訂正発明7、8は、本件訂正発明6と同様に「メソゲン骨格を有するエポキシモノマー」を必須成分として配合するものである。
してみると、本件訂正発明7、8は、本件訂正発明6と同様に相違点5’を有するものであって、相違点5’の判断と同様に、上記カで述べたとおり、本件訂正発明6が甲1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明7、8についても同様に、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ク まとめ
よって、申立ての理由3は理由がなく、本件訂正発明1?8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

(2)申立理由2(新規性)、申立理由3(進歩性)について(甲2を主引例とした場合)(本件訂正発明1、5に対するもの)
ア 甲2に記載された事項及び記載された発明
(ア)甲2に記載された事項
(2-1)
「【請求項10】
(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤、(C)熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー、及び(F)熱可塑性樹脂を含み、該(A)成分、(C)成分、及び(F)成分の合計量に対する該(A)成分、該(C)成分、及び該(F)成分の含有量が各々10?70質量%、5?70質量%、及び5?40質量%であり、該(B)成分の含有量が該(A)成分100質量部に対して3?10質量部であり、該(D)成分の含有量が該(C)成分100質量部に対して0.01?20質量部であり、該(E)成分の含有量が該(A)成分、該(C)成分、及び該(F)成分の合計量100質量部に対して2?50質量部であり、加熱処理又は露光処理でBステージ化した後のタック力が4.9×10^(4)Pa以下であり、該Bステージ化させた樹脂組成物の硬化反応開始温度が150℃以下である樹脂組成物。
【請求項11】
(A)光重合性成分が、単官能アクリレートである請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(C)熱重合性成分が、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である請求項10又は11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(F)熱可塑性樹脂が、ゴム状ポリマー、及びポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種である請求項10?12のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項14】
さらに、(A)光重合性成分100質量部に対して0.01?20質量部の(G)熱ラジカル発生剤を含む請求項10?13のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項15】
(C)熱重合性成分と(D)熱硬化剤との混合物の硬化開始温度が150℃以下である請求項10?14のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項16】
25℃での粘度が、1?80Pa・sである請求項10?15のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項17】
チキソトロピー指数が、1.0?8.0である請求項10?16のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項18】
太陽電池モジュールの製造に用いられる請求項10?17のいずれかに記載の樹脂組成物。」

(2-2)
「【0009】
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、このような課題を鑑みてなされたものであり、従来用いられていた充填用樹脂シートよりも薄い、樹脂組成物を用いた層によって、太陽電池モジュールの組立が可能な、太陽電池モジュールの製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、印刷法によって塗布できる樹脂組成物を提供することで、樹脂封止工程における歩留まりの問題なく、また太陽電池用セルと配線部材との位置合わせや、樹脂封止工程における位置合わせなどといった煩雑な作業を低減して大幅な工程時間の短縮を可能とする、樹脂組成物及び太陽電池モジュール製造方法を提供することである。」

(2-3)
「【0033】
樹脂組成物は、スクリーン印刷によるパターン印刷に好ましく用いられる。そのような樹脂組成物の特性として、該樹脂組成物の25℃における粘度は1?80Pa・sであることが好ましい。また、スクリーンメッシュ版などのようにマスク開口部にメッシュなどが張ってある場合は、メッシュ部の抜け性の観点から10?60Pa・sであることがより好ましく、印刷後からBステージ化までの形状保持性の観点から15?50Pa・sであることがさらに好ましい。粘度を1Pa・s以上とすることにより樹脂組成物をスクリーン印刷により供給及び塗布する際、液だれの発生を抑制でき、さらに、印刷形状を保持できる傾向にある。また粘度を80Pa・s以下とすることにより、スクリーン印刷により供給及び塗布する際、印刷の欠けや擦れなどを十分に抑制することができる。
【0034】
またスクリーン印刷によるパターン印刷に好ましく用いられる樹脂組成物の特性として、チキソトロピー指数は1.0?8.0であることが好ましく、印刷欠け及びかすれ防止の観点から1.5?8.0であることがより好ましく、パターニング性の観点から2.0?4.0であることがさらに好ましい。
【0035】
チキソトロピー指数を1.0以上とすることにより樹脂組成物をスクリーン印刷により供給及び塗布する際、液だれの発生を抑制でき、さらに、印刷形状を保持できる傾向にある。またチキソトロピー指数を8.0以下とすることにより、スクリーン印刷により供給及び塗布する際、印刷の欠けや擦れなどを十分に抑制することができる。スクリーン印刷ができ、かつ良好な印刷形状が得られる樹脂組成物を得る観点から、樹脂組成物の特性として、25℃での粘度が1?80Pa・sであり、チキソトロピー指数が1.0?8.0であることが好ましい。
【0036】
本発明において、25℃での粘度は以下のように測定される。粘度計(「HBDV-III U CP(型番)」,Brookfield Eigineering Laboratories製)、及びコーンスピンドル(「CPE-51(型式)」,Brookfield Eigineering Laboratories製))を用い、樹脂組成物の量0.5mL、測定時間3分間で測定を行う。本発明の粘度値は回転数5.0rpmで測定した際の値を粘度とする。
【0037】
本発明において、チキソトロピー指数は以下のように測定される。まず、チキソトロピー指数は、前記粘度測定方法により回転数0.5rpmと回転数5rpmで測定を行う。次に次式によりチキソトロピー指数を算出した。
チキソトロピー指数=(0.5rpm粘度)/(5.0rpm粘度)」

(2-4)
「【0053】
(B)成分は、光重合開始剤であり、Bステージ化を調整するために用いられる成分である。(B)光重合開始剤は、露光処理によりラジカルを発生する化合物であることが好ましく、300?500nmに吸収を持つものが好ましく、さらに光照射によってブリーチングするものがより好ましい。」

(2-5)
「【0146】
<樹脂組成物の作製I>
(実施例1?21、比較例1?3、6?11)
遮光部屋にて、らいかい機に第1表?第3表に示す割合((A)光重合性成分、(C)熱重合性成分及びパークミルD、又は(A)光重合性成分及び(C)熱重合性成分は上記樹脂溶液の調整I及びIIにてあらかじめ溶液化しておいたものを用いた。)で材料を仕込み、常圧混練15分行い材料を混ぜ合わせた後、さらに5Torr以下の減圧下で2時間混練を行った。混練後、25μmメッシュでろ過を行い、樹脂組成物を得た。
・・・
【0148】
<粘度及びチキソトロピー指数の測定>
樹脂組成物の粘度、及びチキソトロピー指数を以下の方法により測定した。ブルックフィールド粘度計(「HBDV-III U CP(型番)」,Brookfield Eigineering Laboratories製)、及びコーンスピンドル(「CPE-51(型式)」Brookfield Eigineering Laboratories製)を用い、樹脂組成物量0.5mL、測定温度25℃、測定時間3分間での値を粘度とし、回転数0.5rpmおよび5rpmでの粘度を測定した。また、チキソトロピー指数は次式より算出した。
チキソトロピー指数=0.5rpm粘度/5rpm粘度
各実施例及び比較例の樹脂組成物について測定した粘度、及びチキソトロピー指数を第1表、及び第2表に示す。
・・・
【0151】
・・・
【表1】

【0152】
【表2】

【0153】
【表3】

【0154】
第1表?第3表における略号は次の通りである。
FA-512A:日立化成工業株式会社製、ジシクロペンタジエンアクリレート
FA-314A:日立化成工業株式会社製、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート
FA-310A:日立化成工業株式会社製、フェノキシエチルアクリレート
M-140:N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド
A-LEN-10:エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート
FA-512M:ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
1032H60:ジャパンエポキシレジン株式会社製、多官能エポキシ樹脂
YDCN700-7:東都化成株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
CTBNX-1009-SP:宇部興産株式会社製、商品名、カルボン酸末端液状ポリブタジエン
Poly bd:出光興産株式会社製、水酸基末端ポリブタジエン
R-972:日本アエロジル株式会社製
2P4MHZ:四国化成工業株式会社製、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール
C17Z:四国化成工業株式会社、2-ヘプタデシルイミダゾール
パークミルD:ジクミルパーオキサイド
パーブチルO:日油株式会社製、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート
I-379EG:チバ・ジャパン株式会社製、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン」

(2-6)
「【0157】
01 太陽電池用セル受光面に配された電極
02 太陽電池用セル裏面に配された電極
03 印刷版外枠
04 スクリーン印刷版内の樹脂で埋め込まれた部分
05 スクリーン印刷版内の開口部
06 スキージ
07 樹脂組成物(第一の樹脂組成物層、第二の樹脂組成物層、及び第三の樹脂組成物層)
081 太陽電池用セルの受光面
082 太陽電池用セルの裏面
09 太陽電池用セルのシリコン基板
10 導電性部材(第一の導電層、及び第二の導電層
11 第一の配線部材、第二の配線部材(タブ線)
12 ガラスシート
13 充填用樹脂
14 第一の太陽電池用背面シート
・・・
【図10】



(イ)甲2に記載された発明
摘記(2-1)?(2-6)の記載からみて、甲2には、以下の発明が記載されている。

「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤、(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー、及び(F)熱可塑性樹脂を含み、該(A)成分、(C)成分、及び(F)成分の合計量に対する該(A)成分、該(C)成分、及び該(F)成分の含有量が各々10?70質量%、5?70質量%、及び5?40質量%であり、該(B)成分の含有量が該(A)成分100質量部に対して3?10質量部であり、該(D)成分の含有量が該(C)成分100質量部に対して0.01?20質量部であり、該(E)成分の含有量が該(A)成分、該(C)成分、及び該(F)成分の合計量100質量部に対して2?50質量部であり、加熱処理又は露光処理でBステージ化した後のタック力が4.9×10^(4)Pa以下であり、該Bステージ化させた樹脂組成物の硬化反応開始温度が150℃以下であり、25℃での粘度が、1?80Pa・sであり、チキソトロピー指数が、1.0?8.0である、樹脂組成物。」(以下「甲2発明」という。)

イ 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の(C)「グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分」は、摘記(1-1)から、本件訂正発明1の「エポキシモノマー」に相当し、甲2発明の(D)「熱硬化剤」は、本件訂正発明1の「硬化剤」に相当し、甲2発明の(E)「フィラー」は、本件訂正発明1の「無機充填材」に相当する。また、甲2発明の「樹脂組成物」は、エポキシ樹脂を含有することからみて、本件訂正発明1の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲2発明は、
「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点7>
本件訂正発明1では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲2発明では、この特定がない点。

<相違点8>
本件訂正発明1では、「樹脂組成物がエポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」を含むとの特定があるのに対し、甲2発明では、「(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー」に加えて、さらに「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を配合する樹脂組成物である点。

<相違点9>
本件訂正発明1では、エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含む樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり」との特定があるのに対し、甲2発明では、樹脂組成物の粘度及びチキソトロピー指数について、「25℃での粘度が、1?80Pa・sであり、チキソトロピー指数が、1.0?8.0である」と特定している点。

(イ)相違点8の検討
a 事案に鑑み、まず相違点8が実質的な相違点であるか検討する。
本件明細書には、エポキシ樹脂組成物に配合するその他の成分として、「必要に応じて、上記成分に加えてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、溶剤、エラストマ、分散剤、及び沈降防止剤を挙げることができる。」(【0131】)と記載されている。
一方、甲2発明は、樹脂組成物中に「(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー」に加えて、「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」「(F)熱可塑性樹脂」を必須成分として配合するものであり、該「(A)光重合性成分」、「(B)光重合開始剤」は、摘記(2-1)、(2-5)から、それぞれ「単官能アクリレート」、「露光処理によりラジカルを発生する化合物」が挙げられ、実施例においてもそれぞれアクリレート、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オンを用いていることから、甲2発明はアクリレート及び光ラジカル重合開始剤等の「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を必須成分とすると解される。
以上のとおり、甲2には、「(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー」を必須成分として配合することが記載されているものの、その他の配合成分として「単官能アクリレート」、「露光処理によりラジカルを発生する化合物」に代表される「(A)光重合性成分」、「(B)光重合開始剤」を必須成分とするものである。一方、本件訂正発明1は、「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」のみを必須成分とするものであって、さらに本件明細書に記載されているその他の成分である「エラストマー」は、甲2発明の「(F)熱可塑性樹脂」に包含されるものと認められるが、本件明細書には、甲2発明の「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」については記載されていない。
してみると、本件訂正発明1は、「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を配合することは、予定されていないといえる。
以上によれば、相違点8は、実質的な相違点である。
したがって、相違点7、9について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。

b 次に、相違点8の容易想到性について検討する。
甲2には、実施例でも示されているとおり、「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を必須成分とするものである。
一方、本件訂正発明1は、上記aで示したとおり、「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を必須成分とするものではないし、本件明細書中にも、樹脂組成物に「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を配合することは記載されていない。
そして、甲2の課題は、「従来用いられていた充填用樹脂シートよりも薄い、樹脂組成物を用いた層によって、太陽電池モジュールの組立が可能な、太陽電池モジュールの製造方法を提供すること」であり、そのための必須成分である「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を除いた樹脂組成物とする動機付けがあるものともいえない。
そうすると、甲2において、「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤、(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー及び(F)熱可塑性樹脂」を含む樹脂組成物から、あえて「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を除くことは、当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって、相違点7、9について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5と甲1発明を対比すると、上記イ(ア)で本件訂正発明1と甲2発明との対比について述べたのと同様に、本件訂正発明5と甲2発明は、

「エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点7’>
本件訂正発明5では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲2発明では、この特定がない点。

<相違点8’>
本件訂正発明5では、「樹脂組成物がエポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材」を含むとの特定があるのに対し、甲2発明では、「(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー」に加えて、さらに「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を配合する樹脂組成物である点。

<相違点9’>
本件訂正発明5では、エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含む樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり」との特定があるのに対し、甲2発明では、樹脂組成物の粘度及びチキソトロピー指数について、「25℃での粘度が、1?80Pa・sであり、チキソトロピー指数が、1.0?8.0である」であると特定している点。

<相違点10>
本件訂正発明5では、「第一部材の上樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法」とあるのに対し、甲2発明ではこの特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点8’から検討する。
a まず、相違点8’が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
相違点8’については、上記イ(ア)の相違点8と同じであって、その判断についても同様であり、相違点8’は実質的な相違点である。

b 次に、相違点8’の容易想到性について検討する。
相違点8’については、上記イ(ア)の相違点8と同じであって、その判断についても同様であり、本件訂正発明5は、甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、相違点7’、9’、10について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明5は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
よって、申立ての理由2、3は理由がなく、本件訂正発明1、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

(3)申立理由3(進歩性)について(甲2を主引例とした場合)(本件訂正発明2?4、6?8に対するもの)
ア 本件訂正発明2について
(ア)対比
本件訂正発明2と甲2発明とを対比する。
甲2発明の(C)「グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分」は、摘記(1-1)から、本件訂正発明2の「エポキシモノマー」に相当し、甲2発明の(D)「熱硬化剤」は、本件訂正発明2の「硬化剤」に相当する。また、甲2発明の「樹脂組成物」は、エポキシ樹脂を含有することからみて、本件訂正発明2の「樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件訂正発明2と甲2発明は、
「エポキシモノマー、硬化剤を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点7’’>
本件訂正発明2では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲2発明では、この特定がない点。

<相違点8’’>
本件訂正発明2では、樹脂組成物が「メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤」を含むとの特定があるのに対し、甲2発明では、「(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー」に加えて、さらに「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を配合する樹脂組成物である点。

<相違点9’’>
本件訂正発明2では、メソゲン骨格を有するエポキシモノマー、硬化剤を含む樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり」との特定があるのに対し、甲2発明では、樹脂組成物の粘度及びチキソトロピー指数について、「25℃での粘度が、1?80Pa・sであり、チキソトロピー指数が、1.0?8.0である」であると特定している点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点8’’から検討する。
相違点8’’については、上記(2)イ(ア)の相違点8と同旨であって、その判断についても上記(2)イ(イ)と同様であり、相違点8’’は実質的な相違点であり、また、甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、相違点7’’、9’’について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明2は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件訂正発明3、4について
本件訂正発明3、4は、本件訂正発明2を直接又は間接的に引用するものであるが、上記アで述べたとおり、本件訂正発明2が甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明3、4についても同様に、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明6について
(ア)対比
本件訂正発明6は、訂正前の請求項5が請求項1?請求項4のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消し、そのうち請求項2を引用するものについて独立形式請求項へ改めるための訂正によるものである。
そうすると、一致点、相違点については、本件訂正発明2及び5と同旨であり、
「エポキシモノマー、硬化剤を含む、樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点7’’’>
本件訂正発明6では、「一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物」との特定があるのに対し、甲2発明ではこの特定がない点。

<相違点8’’’>
本件訂正発明6では、樹脂組成物が「メソゲン骨格を有するエポキシモノマー」を含むとの特定があるのに対し、甲2発明では、「(C)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である熱重合性成分、(D)熱硬化剤、(E)フィラー」に加えて、さらに「(A)光重合性成分、(B)光重合開始剤」を配合する樹脂組成物である点。

<相違点9’’’>
本件訂正発明6では、メソゲン骨格を有するエポキシモノマー、硬化剤とを含む樹脂組成物の粘度及びチクソトロピック指数について、「25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり」との特定があるのに対し、甲2発明では、樹脂組成物の粘度及びチキソトロピー指数について、「25℃での粘度が、1?80Pa・sであり、チキソトロピー指数が、1.0?8.0である」であると特定している点。

<相違点10>
本件訂正発明6では、「第一部材の上樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法」とあるのに対し、甲2発明ではこの特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点8’’’から検討する。
相違点8’’’については、上記ア(ア)の相違点8’’と同旨であって、その判断についても同旨となり、本件訂正発明6は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、相違点7’’’、9’’’、10について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明6は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

エ 本件訂正発明7、8について
本件訂正発明7、8は、本件訂正発明6の「メソゲン骨格を有するエポキシモノマー」または「硬化剤」をそれぞれさらに特定する点のみで相違するものである。
してみると、本件訂正発明7、8は、本件訂正発明6と同様に相違点8’’’を有するものであって、相違点8’’’の判断と同様に、上記ウで述べたとおり、本件訂正発明6が甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明7、8についても同様に、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ まとめ
よって、申立ての理由3は理由がなく、本件訂正発明2?4、6?8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含み、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物。
【請求項2】
25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための、樹脂組成物。
【請求項3】
前記メソゲン骨格を有するエポキシモノマーは下記一般式(I)で表される化合物を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【化1】

一般式(I)中、R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を示す。
【請求項4】
前記硬化剤はフェノールノボラック樹脂を含む、請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、エポキシモノマー、硬化剤及び無機充填材を含み、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて無機充填材を含んだ状態で測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、25℃、5min^(-1)(rpm)での粘度が0.6Pa・s?3.5Pa・sであり、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物である、積層体の製造方法。
【請求項6】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物である、積層体の製造方法。
【請求項7】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物であり、前記メソゲン骨格を有するエポキシモノマーは下記一般式(I)で表される化合物を含む、積層体の製造方法。
【化1】

【請求項8】
第一部材の上に樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の上に第二部材を配置する部材配置工程と、を含む積層体の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、25℃、5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度A(Pa・s)に対する25℃、0.5min^(-1)(rpm)の条件でE型粘度計を用いて測定される粘度B(Pa・s)の比(粘度B/粘度A)である25℃でのチクソトロピック指数が3?10であり、メソゲン骨格を有するエポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、一対の部材と、前記一対の部材の間に配置される樹脂層と、を有する積層体の前記樹脂層を塗布して形成するための樹脂組成物であり、前記硬化剤はフェノールノボラック樹脂を含む、積層体の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-28 
出願番号 特願2017-557019(P2017-557019)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保 道弘  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 大▲わき▼ 弘子
井上 猛
登録日 2018-07-27 
登録番号 特許第6372626号(P6372626)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 樹脂組成物及び積層体の製造方法  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ