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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
審判 全部無効 2項進歩性  A61F
審判 全部無効 発明同一  A61F
管理番号 1360758
審判番号 無効2017-800138  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-10-18 
確定日 2020-03-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5180410号発明「創傷被覆材用表面シートおよび創傷被覆材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5180410号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-26〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5180410号(以下「本件特許」という。)は、平成23年5月31日(優先権主張平成22年6月1日 日本国、優先権主張番号:特願2010-126338号)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成24年10月24日 意見書(甲第2号証)・手続補正書の提出
平成25年 1月18日 設定登録
平成29年10月18日 本件審判請求
平成30年 1月12日 答弁書の提出、訂正の請求
平成30年 3月26日付け 審理事項通知
平成30年 4月23日 請求人口頭審理陳述要領書の提出
平成30年 5月14日 被請求人口頭審理陳述要領書の提出
平成30年 5月24日 請求人口頭審理陳述要領書(2)の提出
平成30年 5月24日 被請求人口頭審理陳述要領書(2)の提出
平成30年 5月24日 第1回口頭審理
平成30年 8月27日付け 審決の予告
平成30年10月26日 上申書の提出、訂正の請求
平成30年12月12日 弁駁書の提出

なお、平成30年1月12日になされた訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。

以下、「審判請求書」を「請求書」と、「口頭審理陳述要領書」を「要領書」と、また、「甲第1号証」、「乙第1号証」等をそれぞれ「甲1」、「乙1」等と略記する。

第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
平成30年10月26日の訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「上記の貫通孔(13)は上記の第1表面(11)側から第2表面(12)側への液体の透過を許容し」と記載されているのを、
「上記の貫通孔(13)は、上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持するとともに、上記の第1表面(11)側から第2表面(12)側への液体の透過を許容し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?26も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「上記のシート材は、低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成していること」と記載されているのを、
「上記のシート材は、低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成し、上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μmであること」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?26も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、「上記の第1表面(11)における表面張力が40dyne/cm以下である」と記載されているのを、
「上記の第1表面(11)における表面張力が40dyne/cm以下であり、前記の貫通孔(13)は、50?400個/cm^(2)の密度で存在する」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3?26も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記の貫通孔(13)は、上記の第1表面(11)での開口面積が直径280?1400μmの円形に相当し、上記の第2表面(12)での開口面積が上記の第1表面(11)での開口面積より小であり、50?400個/cm^(2)の密度で存在する」と記載されているのを、
「前記の貫通孔(13)は、上記の第1表面(11)での開口面積が直径280?1400μmの円形に相当し、上記の第2表面(12)での開口面積が上記の第1表面(11)での開口面積より小であり、50?400個/cm^(2)の密度で存在し、開孔率が15?60%である」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?26も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、「上記の透液層(1)は、請求項1?4のいずれかに記載の表面シート(10)からなり」と記載されているのを、
「上記の透液層(1)は、請求項4に記載の表面シート(10)からなり」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?21及び26も同様に訂正する)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項20に、「上記の吸収保持層(3)は上記の透液層(1)と一体化されておらず、透液層(1)の第2表面(12)に沿って移動可能である」と記載されているのを、
「上記の透液層(1)と上記の吸収保持層(3)とを直接積層してなり、上記の吸収保持層(3)は上記の透液層(1)と一体化されておらず、透液層(1)の第2表面(12)に沿って移動可能である」に訂正する(請求項20の記載を引用する請求項21及び26も同様に訂正する)。

2.一群の請求項
本件訂正前の請求項2?26は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア.請求項1に係る訂正事項1は、訂正前の請求項1の「貫通孔」について、「上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持するとともに、上記の第1表面(11)側から第2表面(12)側への液体の透過を許容し」との記載により、より限定するものであるから、請求項1に係る訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、請求項2?26に係る訂正事項1も、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.また、訂正事項1は、「貫通孔」について、その構成をより限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0032】に、「創傷部位と上記の第2表面(12)との間に適度な貯留空間(14)を形成でき、創傷部位上に適量の滲出液を保持する」と記載されていることに基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ.なお、請求人は、弁駁書(8?11頁)において、訂正事項1は、「上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持する」との効果を追加するものであり、貫通孔の密度が「50?400個/cm^(2)」であること、開孔率が「15?60%」であること、深さが「100?2000μm」であることを満たさないものにおいても、上記効果を奏するものが含まれることになり、訂正事項1を伴う本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものではない旨主張する。
しかし、訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0032】の記載をもとに、「貫通孔」が、創傷部位の上に滲出液を保持する「貯留空間」として観念される空間を備えるという、機能・構造を特定するものであり、効果を特定するものではない。そして、貫通孔が備える空間をさらに限定するパラメータとして、密度が50?400個/cm^(2)、開孔率が15?60%、深さが100?2000μmであることは、その空間の形状等が、より最適になるものとして特定されるものであるから、「貯留空間」の密度、開孔率及び深さが、そのように特定されないことをもって、訂正事項1を伴う本件訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものではないとはいえない。

(2)訂正事項2について
ア.請求項1に係る訂正事項2は、訂正前の請求項1の「創傷部位(15)と対面する第1表面(11)と、これとは反対側の第2表面(12)」を有する「シート材」について、その「第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法」は「100?2000μmであること」と限定するものであるから、請求項1に係る訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、請求項2?26に係る訂正事項2も、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.また、訂正事項2は、「シート材」についてより限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.そして、訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0031】に、「上記の貫通孔(13)の深さ、即ち透液層(1)の厚さでもある第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法としては、概ね100?2000μmが好ましく」と記載されていることに基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア.請求項2に係る訂正事項3は、特特許請求の範囲の請求項2が引用する請求項1の「貫通孔」について、その密度を特定して限定するものであるから、請求項2に係る訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、請求項3?26に係る訂正事項2も、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.また、訂正事項3は、「貫通孔」についてより限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.そして、訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0030】に、「また上記の貫通孔(13)は、50?400個/cm^(2)の密度で存在することが好ましく」と記載されていることに基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア.請求項4に係る訂正事項4は、訂正前の請求項4の「貫通孔」について、表面シートに対してどの程度開孔しているのかに関して、「開孔率が15?60%であり」との記載により具体的に規定し限定するものであるから、請求項4に係る訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、請求項5?26に係る訂正事項4も、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.また、訂正事項4は、「貫通孔」の「開孔率」について特定されていなかったものを、「15?60%」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.そして、訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0030】に、「第1表面(11)における貫通孔(13)の開孔率」と規定される「開孔率」として、「15?60%であることが好ましい」と記載されていることに基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5について
ア.請求項5に係る訂正事項5は、訂正前の請求項5が、「透液層」が請求項1?4のいずれかに記載の表面シート(10)からなることを規定しているところ、訂正後の請求項5は、「上記の透液層(1)は、請求項4に記載の表面シート(10)からなり」との記載により、引用する請求項を減少させるものであるから、請求項5に係る訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、請求項6?21及び26に係る訂正事項5も、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.訂正事項5は、引用する請求項を減少させるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.また、訂正事項5は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(6)訂正事項6について
ア.請求項20に係る訂正事項6は、訂正前の請求項20が請求項19を介して引用する訂正前の請求項5について、「創傷被覆材」が「透液層」及び「吸収保持層」を備えることを規定しているところ、訂正後の請求項20は、「上記の透液層(1)と上記の吸収保持層(3)とを直接積層してなり、」との記載により、「透液層」及び「吸収保持層」に係る構成をより具体的に特定し限定するものであるから、請求項20に係る訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、請求項21及び26に係る訂正事項6も、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.また、訂正事項6は、「透液層」及び「吸収保持層」について限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.そして、訂正事項6は、本件特許明細書の段落【0019】の「創傷被覆材(5)は、少なくとも2つの層、即ち、表面シート(10)からなる透液層(1)と、水を吸収して保持できるシート材からなる吸収保持層(3)とを、創傷部位に接するように使用される側から順に備えている」との記載、及び、段落【0094】の「透液層(1)の第2表面(12)に吸収保持層(3)が直接積層してある」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

4.訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項並びに第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-26〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明
本件訂正が認められたことにより、本件特許の請求項1?26に係る発明(以下「本件発明1?26」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
創傷部位(5)の少なくとも創傷部位と対面する部位に配される表面シートであって、
上記の創傷部位(15)と対面する第1表面(11)と、これとは反対側の第2表面(12)と、両表面(11・12)間に亘って厚さ方向に貫通する多数の貫通孔(13)とを有する、樹脂製のシート材からなり、
上記の貫通孔(13)は、上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持するとともに、上記の第1表面(11)側から第2表面(12)側への液体の透過を許容し、
上記の第1表面(11)が疎水性を備えており、
上記の第1表面(11)における生理食塩水との接触角が85度以上であり、
上記のシート材は、低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成し、
上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μmであること
を特徴とする、創傷被覆材用表面シート。
【請求項2】
上記の第1表面(11)における表面張力が40dyne/cm以下であり、前記の貫通孔(13)は、50?400個/cm^(2)の密度で存在する、請求項1に記載の創傷被覆材用表面シート。
【請求項3】
上記の第1表面(11)は、シリコーン、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる1以上の撥水性物質により被覆してある、請求項1または2に記載の創傷被覆材用表面シート。
【請求項4】
上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μmであり、
前記の貫通孔(13)は、上記の第1表面(11)での開口面積が直径280?1400μmの円形に相当し、上記の第2表面(12)での開口面積が上記の第1表面(11)での開口面積より小であり、50?400個/cm^(2)の密度で存在し、開孔率が15?60%である、請求項1?3のいずれかに記載の創傷被覆材用表面シート。
【請求項5】
少なくとも透液層(1)と吸収保持層(3)との2つの層を備えた創傷被覆材であって、
創傷部位(15)と対面するように使用される側から順に、上記の透液層(1)と吸収保持層(3)とを積層してなり、
上記の透液層(1)は、請求項4に記載の表面シート(10)からなり、
上記の吸収保持層(3)は、水を吸収保持可能なシート材を含有することを特徴とする創傷被覆材。
【請求項6】
上記の吸収保持層(3)の、上記の透液層(1)とは反対側に、第2の透液層(1a)がさらに積層してある、請求項5に記載の創傷被覆材。
【請求項7】
上記の吸収保持層(3)の、創傷側とは反対側の表面に保護層(4)をさらに備え、この保護層(4)は、樹脂フィルム、織布、編布もしくは不織布からなる、請求項5に記載の創傷被覆材。
【請求項8】
上記の保護層(4)は他の全ての層を覆うとともに、この他の層より広い面積に形成されて、他の層の外側にはみ出した外縁部(6)を備えており、
上記の外縁部(6)は上記の他の層が積層された側の表面の少なくとも一部に粘着部(7)を有する、請求項7に記載の創傷被覆材。
【請求項9】
上記の保護層(4)は、上記の外縁部(6)に粘着部(7)を有しない非粘着部(8)を備えている、請求項8に記載の創傷被覆材。
【請求項10】
上記の保護層(4)は、上記の他の層の外側に、上記の外縁部(6)が形成されていない部分を備えている、請求項8に記載の創傷被覆材。
【請求項11】
上記の保護層(4)は、上記の外縁部(6)に、スリット(9)もしくは小孔を上記の他の層の外周に沿って備えている、請求項8に記載の創傷被覆材。
【請求項12】
上記の透液層(1・1a)と上記の吸収保持層(3)との間に透液制限層(2)が設けてあり、
この透液制限層(2)は疎水性材料で形成された、微多孔質のフィルム、織布、編布または不織布からなり、この透液制限層(2)を介して上記の透液層(1)から吸収保持層(3)への液体の移動を許容する、請求項5?11のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項13】
前記の透液制限層(2)はポリオレフィン系樹脂からなり、JIS L 1096に従って測定される通気度が5?2000cm^(3)/cm^(2)・Sであり、JIS L 1092に従って測定される撥水度が3級以上である、請求項12に記載の創傷被覆材。
【請求項14】
前記の透液制限層(2)が、ポリプロピレン繊維からなる不織布を用いて形成してある、請求項12または請求項13に記載の創傷被覆材。
【請求項15】
前記の吸収保持層(3)はエアレイド不織布を用いて形成してある、請求項5?14のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項16】
前記の吸収保持層(3)はフラッフパルプを有する、請求項5?15のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項17】
前記の吸収保持層(3)はさらに高吸収性ポリマーを有し、この高吸収性ポリマーと上記のフラッフパルプとの重量比が10:90?25:75である、請求項16に記載の創傷被覆材。
【請求項18】
上記の高吸収性ポリマーがポリアクリル酸ナトリウム系である、請求項17に記載の創傷被覆材。
【請求項19】
前記の吸収保持層(3)は創傷部位側で隣接する他の層と少なくとも部分的に非接合である、請求項5?18のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項20】
上記の透液層(1)と上記の吸収保持層(3)とを直接積層してなり、
上記の吸収保持層(3)は上記の透液層(1)と一体化されておらず、透液層(1)の第2表面(12)に沿って移動可能である、請求項19に記載の創傷被覆材。
【請求項21】
前記の吸収保持層(3)が、少なくとも創傷部位に沿って変形可能な伸縮性を備える、請求項5?20のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項22】
請求項1?4のいずれかに記載の表面シート(10)からなる透液層(1)を備えることを特徴とする、創傷被覆材。
【請求項23】
上記の表面シート(10)の第2表面(12)側に透液制限層(2)を積層してあり、この透液制限層(2)は疎水性材料で形成された、微多孔質のフィルム、織布、編布または不織布を用いて形成してあり、この透液制限層(2)はその厚さ方向に液体の通過を許容する、請求項22に記載の創傷被覆材。
【請求項24】
前記の透液制限層(2)はポリオレフィン系樹脂からなり、JIS L 1096に従って測定される通気度が5?2000cm^(3)/cm^(2)・Sであり、JIS L 1092に従って測定される撥水度が3級以上である、請求項23に記載の創傷被覆材。
【請求項25】
前記の透液制限層(2)が、ポリプロピレン繊維からなる不織布を用いて形成してある、請求項23または24に記載の創傷被覆材。
【請求項26】
前記の創傷部位(15)と対面する側とは反対側の表面に粘着層(21)を有する、請求項5?25のいずれかに記載の創傷被覆材。

第4 当事者の主張の要旨及び証拠方法
1.請求人の主張の要旨及び証拠方法
(1)請求人の主張の要旨
請求人は、「特許第5180410号発明の特許請求の範囲の請求項1?26に記載された発明を無効とする」、「審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めている。

(2)請求人が主張する無効理由
請求人が主張する無効理由は以下の無効理由1?4である。なお、請求書における無効理由5に係る主張は、取り下げられた。(第1回口頭審理調書「請求人」欄「5」、「6」)

《無効理由1》
本件発明1?26は、その特許出願前に日本国内において、頒布された刊行物(甲1、甲3?甲12、甲14?甲16及び甲18)に記載された発明に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
《無効理由2》
本件発明1及び2は、実用新案掲載公報(甲13)に係る実用新案登録出願の願書に添付された明細書、実用新案登録請求の範囲、又は図面に記載された考案と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
《無効理由3》
甲3によれば、「低密度ポリエチレン樹脂材料」の接触角は81度であり、「シート材」が「低密度ポリエチレン樹脂材料」のみから成形されている場合には、本件発明1の「第1表面(11)」の「生理食塩水との接触角が85度以上」であることとの間には矛盾があるため、本件特許の請求項1ないし26の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、それらの特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
《無効理由4》
本件発明1の「生理食塩水との接触角が85度以上」との事項の「接触角」には、「静的接触角」と「動的接触角」のどちらも含み得るが、「静的接触角」については、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていないため、本件発明1ないし26は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、それらの特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(3)証拠方法
請求人は、請求書に添付して甲1?甲13を、請求人要領書(1)に添付して甲14?甲17を、請求人要領書(2)に添付して甲18を、弁駁書に添付して甲19?甲22を提出した。

甲1:特開2007-130134号公報
甲2:特願2012-518387号に係る意見書、株式会社瑞光、平成24年10月24日受付
甲3:安田武夫、「プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果〈5〉」、プラスチックス、日本プラスチック工業連盟、2000年6月、51巻6号第119?127頁
甲4:牧廣他3名編、「図解プラスチック用語辞典第2版」、日刊工業新聞社、1994年11月27日第2版第1刷、507頁、772?773頁
甲5:特許庁編、「周知慣用技術集(高分子)」、平成10年7月13日発行、8頁、19?20頁
甲6:「工業大事典17」、平凡社、1962年5月30日発行、23頁
甲7:特表2003-506151号公報
甲8:特開平2-202553号公報
甲9:特開2000-345474号公報
甲10:国際公開第2008/004380号
甲11:実願平1-117534号(実開平3-56429号)のマイクロフィルム
甲12:特開2008-113781号公報
甲13:登録実用新案第3159787号公報
甲14:国際公開第2008/149505号
甲15:鈴木健司、「1.3.MEMS技術を利用した機能表面の創成と応用」、FMS研究成果報告書(平成28年3月)、工学院大学
甲16:高田保之、「ぬれと表面張力」、2004年1月、伝熱43巻178号、43?48頁
甲17:特開2010-131163号公報
甲18:牧廣他3名編、「図解プラスチック用語辞典第2版」、日刊工業新聞社、1994年11月27日第2版第1刷、646頁
甲19:国際公開第2005/000372号
甲20:特表2005-510296号公報
甲21:特開2001-105504号公報
甲22:実願昭59-165357号(実開昭61-80018号)のマイクロフィルム

2.被請求人の主張の要旨及び証拠方法
(1)被請求人の主張の要旨
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めている。

(2)証拠方法
被請求人は、答弁書に添付して乙1?乙8を、被請求人要領書(1)に添付して乙9?乙13を、請求人要領書(2)に添付して乙14及び乙15を提出した。

乙1:特開平7-80020号公報
乙2:日本医科器械学会監修、「医療用不織布ハンドブック」、株式会社南山堂、1994年10月11日第1版、15?25頁
乙3:牧廣他3名編、「図解プラスチック用語辞典第2版」、日刊工業新聞社、1994年11月27日第2版第1刷、555頁、766?767頁
乙4:「ケアリーヴ 貼り方のコツ」、[online]、ニチバン、[2018年1月9日検索]、インターネット<URL:http://www.careleaves.com/howto/>
乙5:特開2008-113934号公報
乙6:特開2010-57787号公報
乙7:「JIS K 2396:2006 自動車用つや出しコーティング剤」、財団法人日本規格協会発行、平成18年7月20日改正(第1刷発行)
乙8:福山紅陽、「撥水性の評価法」、表面技術、社団法人表面技術協会、Vol.60、No.1、21?26頁、平成21年1月1日発行
乙9:田崎裕人、「目的・用途に応じたぬれ性の制御・評価技術ノウハウ集」、株式会社技術情報協会、2008年5月30日第1刷第1版、51?53頁、104?105頁、111?112頁
乙10:日本化学会編、「新実験化学講座18 界面とコロイド」、丸善株式会社、昭和52年10月20日発行、93?99頁
乙11:特開2007-108007号公報
乙12:「協和界面科学株式会社製接触角計Drop Master」カタログ
乙13:株式会社瑞光管理部井上正紀、「実験成績報告書」、2018年5月10日
乙14:「PriceSchedule」、[online]、2001年5月1日、[2018年5月23日検索]、インターネット<URL:http://www.fisttenangstroms.com>
乙15:「First Ten Angstroms社製 FTA1000Falcon FTA1000Eagle FTA125 接触角計・表面張力測定装置」カタログ、シャスコインターナショナル株式会社

第5 無効理由についての当審の判断
1.無効理由1について
(1)甲1の記載事項
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には、以下の記載がある。
ア.「【請求項1】
上面及び傷接触表面となる下面を有する傷手当用品であって、
吸収層と、吸収層の被覆層とを有し、
下面側の被覆層は前記吸収層へ液体が移動可能なものとし、前記下面側被覆層の少なくとも傷接触表面は疎水性とし、上面側の被覆層は把持可能な摘みを有することを特徴とする傷手当用品。
【請求項2】
上面及び傷接触表面となる下面を有する傷手当用品であって、
吸収層と、吸収層の被覆層とを有し、
下面側の被覆層は積層構造とし、少なくとも傷接触表面側の層は疎水性樹脂層とし、かつ下面側の被覆層は前記吸収層へ液体が移動可能なものとし、上面側の被覆層は把持可能な摘みを有することを特徴とする傷手当用品。」
イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、傷の保護、治療に使用する傷手当用品に関する。特に、傷からの血液、滲出液等(以下、体液という。)を吸収するのに適する傷手当用品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱傷、褥瘡、及びその他の損傷の治療において、傷を保護し、傷からの体液を吸収するために、従来、ガーゼ、脱脂綿、吸収性繊維からなる層を含む多層構造のパッド等の傷手当用品が用いられている。
しかし、これらの傷手当用品は、体液を吸収し傷面が乾燥すると、傷面から除去する際に、傷面を傷つけ、痛みや出血を伴うことがあった。このような、剥離時の痛みや出血を低減するために種々の傷手当用品が提案されている。
・・・・・
【0004】
・・・・
そして、これらの傷手当用品を使用するときには、この滅菌状態を維持するために、滅菌した鑷子、ゴム手袋等を使用して、滅菌バッグやカストから傷手当用品を取り出し、患部に適用している。一般に傷手当用品は、扁平な形状なため、傷手当用品を鑷子やゴム手袋で摘んだときには、傷手当用品の傷接触面も摘むことになるが、傷手当用品が柔らかい素材で形成されているため、この摘んだ部分に皺や窪みが発生することがあった。そのため、傷手当用品を適用した際に、傷手当用品と傷との間に、この皺や窪みによる空隙が生じ、その空隙から体液が漏れたり、外部から菌が進入し易くなったりして、衛生上好ましくない場合あった。
使用する傷手当用品の大きさや形状によっては、一度に2本の鑷子を使ったり、両手にゴム手袋をはめて処置したりする場合もあり、操作が煩雑になり皺や窪みがより発生し易くなる。また、傷手当用品の傷接触面に粘着剤や軟膏等の薬剤が塗られている場合には、鑷子やゴム手袋に粘着剤や軟膏が付着してしまい、傷手当用品の傷接触表面を荒らしたり、付着した粘着剤等を分離するのに手間を要したりする場合もあった。」
ウ.「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、傷手当用品は、使用後に患部に痛みや出血を生じないように容易に除去できるようにすることは勿論のこと、使用の際に、適切な状態で患部に適用できるようにすることが衛生上重要である。
この発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、傷手当用品を患部に適用する際に、傷手当用品の傷接触表面を汚染することなく、簡単に傷手当用品を患部に適用し得る傷手当用品を提供することにある。」
エ.「【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、傷手当用品の上面側に設けた摘みにより、傷手当用品の傷接触表面に触れずに、また、傷接触表面に皺を発生させないように傷手当用品を患部に適用することができるので、簡便で衛生的な処置が可能となる。」
オ.「【0021】
図1に示すように、本実施形態の傷手当用品10は、傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層20と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層21と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層40とを備えている。被覆層20下面側の表面は、傷接触表面となるシリコーンを含む疎水性樹脂層50と、これらの層を貫通する孔60が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。
・・・・
上記実施態様においては、下面側の被覆層20は疎水性樹脂層50を備え、下面側の被覆層を2層とするものについて述べたが、疎水性樹脂層50を設けずに被覆層を1層とする場合には、前述のように、被覆層20の少なくとも傷接触表面を疎水性とすることにより、傷手当用品を取り外す際に、傷手当用品を傷から容易に分離できる。・・・・」
カ.「【0024】
・・・・
図5に示すように、第5の実施形態の傷手当用品10は、傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層23と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層24と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層40とを備え、一方向に連続する長尺物としてロール状に構成したものである。
被覆層23下面側の表面は、傷接触表面となるシリコーンを含む疎水性樹脂層50と、これらの層を貫通する孔60とが設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。
被覆層23と24は、傷手当用品の縁近傍で、傷手当用品の連続する方向と平行する方向に沿ってシール部73で互いに接合され吸収層40を被覆している。・・・・」
キ.「【0025】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る傷手当用品であり、それぞれ、a)は傷手当用品の上面からみた斜視図、b)はa)のB-B線に沿って切断した側断面図である。第6の実施形態は、摘み35を被覆層とは別の部材で形成した点が、他の実施形態と異なるところである。
図6に示すように、本実施形態の傷手当用品10は、傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層25と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層26と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層40とを備え、吸収層40の外側で被覆層25と被覆層26の外周縁をシール部74で互いに接合している。
被覆層25の下面側の表面には、傷接触表面となるシリコーンを含む疎水性樹脂層50と、これらの層を貫通する孔60が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。・・・・」
ク.「【0026】
次に、本発明の使用方法および容器に封入された傷手当用品について、図7に基づき説明する。図7において、a)は滅菌用包装材料で作成される容器90に封入された傷手当用品10を取り出す状態を示す図で、b)は傷手当用品を傷に適用する状態を示す図である。この図では、傷手当用品として、上述した第1の実施形態のものを使用して説明する。
・・・・
その後、図7のb)に示すように、もう一方の摘み30を持つと、傷手当用品10の下面が水平面を保持し得るように把持できるので、傷手当用品の傷接触表面に皺や折り目が発生しないように、傷100の上に適用することができる。」
ケ.「【0028】
次に、被覆層20?26について述べる。被覆層は、吸収層の外形を被覆し得るものであればよく、1枚又はそれ以上のシートから形成することができ、適当な位置で互いに接合し吸収層を被覆することができる。被覆層は、吸収した体液が漏れないように、吸収層の外形全体を被覆することが好ましいが、部分的に吸収層を被覆していない部分があっても良い。
以下に、被覆層の所要特性、機能等について述べる。まず、疎水性について述べる。被覆層下面側の少なくとも傷接触表面は疎水性を有する。疎水性とするためには、被覆層自体を疎水性の材料で形成しても良いし、被覆層とは別の疎水性樹脂層を塗工する等して被覆層を積層構造とし、その表面を疎水性にしても良い。傷手当用品を傷から容易に分離するためには、被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好ましい。接触角の測定は、接触角計CA-A(協和界面科学社製)を使用して該接触角計の取扱説明書「液滴法測定操作」に準拠して測定することができる。」
コ.「【0029】
次に、液体の移動について述べる。被覆層のこの疎水性の表面は、吸収層へ体液などの液体が移動し得るように形成される。被覆層の下面側を液体透過性とするためには、メッシュ、穿孔フィルム等のプラスチックシートや、編布、織布、不織布等の液体透過性の繊維状シートを使用することができる。・・・・」
サ.「【0032】
次に、被覆層の材料について述べる。被覆層を形成するプラスチックシートや繊維状シートは、これらの基材を単独で使用してもよいし、同一又は異なる種類のシートをラミネートした積層構造のシートを使用してもよい。これらのうち、液体不透過性のシートが好ましく、こうすることで、吸収層が吸収した液体が漏れ出すことを防止することができる。また、被覆層は、伸縮性のシートで形成することが好ましく、こうすることで、傷手当用品の貼付中に皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがなく、また、摘みを把持したときに、傷手当用品の下面が水平面を保持し易くなる。
被覆層の材料としては、例えば、ポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリアミド;ポリウレタン;シリコーン;等をあげることができ、これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。・・・・」
シ.「【0033】
次に、疎水性樹脂層の材料について述べる。被覆層に設ける疎水性樹脂層の材料としては、その樹脂で形成した層の表面と水との接触角が65°以上になるものを選択すればよく、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの混合物等を挙げることができる。・・・・」
ス.「【0034】
次に、吸収層について述べる。吸収層は、セルロース系繊維、パルプ、高分子吸水ポリマー等の吸水性の高い材料を単独又は併用して使用することができ、必要とされる吸収量にあわせてこれらの量を調整すればよい。特に、水吸収時にゲルを形成する物質を含ませることが好ましく、このようにすることで、創傷を湿潤状態に保ち、傷の治癒を促進することができる。・・・・」

(2)甲1に記載された発明
ア.甲1の上記記載(1)オ.によれば、甲1の傷手当用品は、「傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層」を備えるものであり、その「被覆層」には、貫通する「孔」が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。
また、上記記載(1)ケ.によれば、「被覆層下面側の少なくとも傷接触表面は疎水性を有」するものであり、疎水性とするためには、被覆層自体を疎水性の材料で形成しても良いし、被覆層とは別の疎水性樹脂層を塗工する等して被覆層を積層構造とし、その表面を疎水性にしても良いとされる。また、「傷手当用品を傷から容易に分離するため」に、「被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好ましい」とされる。
また、上記記載(1)サ.によれば、「シート状の被覆層」の材料は伸縮性のシートで形成することが好ましく、ポリエチレン等が使用できるとされる。

そうすると、甲1には、「シート状の被覆層」に係る以下の「甲1-1発明」が記載されているものと認められる。
「傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層であって、
被覆層には、貫通する孔が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっており、
被覆層下面側の少なくとも傷接触表面は疎水性を有し、傷手当用品を傷から容易に分離するために、被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好ましく、
被覆層は伸縮性のシートで形成することが好ましく、ポリエチレン等が使用される、
シート状の被覆層。」

イ.また、上記記載(1)キ.によれば、甲1の傷手当用品は、「傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層とを備え」るものであって、「吸収層の外側で被覆層と被覆層の外周縁をシール部で互いに接合」されている。
さらに、上記記載(1)ス.によれば、吸収層は、「セルロース系繊維、パルプ、高分子吸水ポリマー等の吸水性の高い材料を単独又は併用して使用することができ」るとされる。

これらのことから、甲1には、「傷手当用品」に係る以下の「甲1-2発明」も記載されているものといえる。
「傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層とを備えた傷手当用品であって、
吸収層の外側で被覆層と被覆層の外周縁をシール部で互いに接合され、
被覆層には、貫通する孔が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっており、
被覆層下面側の少なくとも傷接触表面は疎水性を有し、傷手当用品を傷から容易に分離するために、被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好ましく、
被覆層は伸縮性のシートで形成することが好ましく、ポリエチレン等が使用され、
吸収層は、セルロース系繊維、パルプ、高分子吸水ポリマー等の吸水性の高い材料を単独又は併用して使用することができる、
傷手当用品。」

(3)本件発明1について
ア.本件発明1と甲1-1発明を対比する。
甲1-1発明の「シート状の被覆層」は、傷手当用品の下面側に位置し、被覆層下面側は傷接触表面となるから、傷に対面する部位に配置されて、傷を被覆するものであり、本件発明1の「創傷被覆材用表面シート」に相当する。
また、甲1-1発明の「シート状の被覆層」は、シートとして厚みを有し、「下面側の傷接触表面」と、その「反対側の面」を有することは明らかであり、それぞれ本件発明1の「第1表面(11)」と、反対側の「第2表面(12)」に相当する。また、「シート状の被覆層」は、ポリエチレン等の樹脂製のシート材であり、本件発明1の「表面シート」と同様に、貫通する多数の孔が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るものである。
そして、甲1-1発明の「シート状の被覆層」の下面側の傷接触表面は、本件発明1の「第1表面(11)」と同様に、疎水性を備えるものである。
イ.そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、以下の一致点aで一致し、相違点1a及び相違点1bで相違する。
《一致点a》
「創傷部位の少なくとも創傷部位と対面する部位に配される表面シートであって、
上記の創傷部位と対面する第1表面と、これとは反対側の第2表面と、両表面間に亘って厚さ方向に貫通する多数の貫通孔とを有する、樹脂製のシート材からなり、
上記の貫通孔は上記の第1表面側から第2表面側への液体の透過を許容し、上記の第1表面が疎水性を備えている、
創傷被覆材用表面シート。」

《相違点1a》
本件発明1の表面シートは、「第1表面(11)における生理食塩水との接触角が85度以上」であるのに対し、甲1-1発明のシート状の被覆層の下面側の傷接触表面は、「傷手当用品を傷から容易に分離するために、被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好まし」いとされているが、「生理食塩水との接触角が85度以上」であるか不明である点。
《相違点1b》
本件発明1の表面シートは「低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成している」のに対し、甲1-1発明のシート状の被覆層はポリエチレン等の材料を用いている点。
《相違点1c》
本件発明1の表面シートの貫通孔は、「上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持」し、「上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μm」であるのに対し、甲1-1発明のシート状の被覆層の孔は、本件発明1のように、滲出液を保持するものであるとは特定されていないし、寸法が100?2000μmであるとも特定されていない点。

ウ.まず、上記相違点1cについて検討する。
(ア)甲1-1発明は、「熱傷、褥瘡、及びその他の損傷の治療において、傷を保護し、傷からの体液を吸収するために、従来、ガーゼ、脱脂綿、吸収性繊維からなる層を含む多層構造のパッド等の傷手当用品が用いられている」が、「これらの傷手当用品は、体液を吸収し傷面が乾燥すると、傷面から除去する際に、傷面を傷つけ、痛みや出血を伴うことがあった」(甲1の段落【0002】)ことから、「傷手当用品を患部に適用する際に、傷手当用品の傷接触表面を汚染することなく、簡単に傷手当用品を患部に適用し得る傷手当用品を提供すること」(同段落【0006】)を課題とするものである。
この課題の解決のための具体例として、甲1では、図6の実施例を示し、
「本実施形態の傷手当用品10は、傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層25と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層26と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層40とを備え、吸収層40の外側で被覆層25と被覆層26の外周縁をシール部74で互いに接合している。
被覆層25の下面側の表面には、傷接触表面となるシリコーンを含む疎水性樹脂層50と、これらの層を貫通する孔60が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。
本実施形態の傷手当用品は、その上面が対称的な形状である略正方形に形成されており、その正方形の対称的な位置である一対の対辺の縁近傍に、これらの辺に平行するように摘み35が2つ設置されている。そして、摘み35には、指を引っ掛けたりすることもできる孔82を2つ設けている。この孔82は、ゴム手袋で作業をする場合や、傷手当用品が大きい場合に、しっかりと摘みを持つことができ、傷手当用品をまっすぐな状態に支持するのに役立つ。」(段落【0025】)と記載されている。
この記載から、甲1-1発明の「孔」は、傷からの体液が吸収層へ移動し得るように形成されるものといえる。
(イ)また、傷からの体液の移動について、甲1には、「被覆層のこの疎水性の表面は、吸収層へ体液などの液体が移動し得るように形成される。被覆層の下面側を液体透過性とするためには、メッシュ、穿孔フィルム等のプラスチックシートや、編布、織布、不織布等の液体透過性の繊維状シートを使用することができる。被覆層に疎水性樹脂層を形成する場合は、被覆層の液体が移動し得る孔を塞がないように疎水性樹脂層を塗工するか、疎水性樹脂層を塗工した後に疎水性樹脂層ごと被覆層を打ち抜けば良い。」(段落【0029】)と記載され、さらに、「吸収層は、セルロース系繊維、パルプ、高分子吸水ポリマー等の吸水性の高い材料を単独又は併用して使用することができ、必要とされる吸収量にあわせてこれらの量を調整すればよい。特に、水吸収時にゲルを形成する物質を含ませることが好ましく、このようにすることで、創傷を湿潤状態に保ち、傷の治癒を促進することができる。」(段落【0034】)と記載されている。
(ウ)これらの記載から、甲1記載の「孔」は、傷からの体液を吸収層へ移動させるように機能することに技術的意義があり、創傷を湿潤状態に保ち、傷の治癒を促進することができるのは、「孔」の機能によってではなく、吸収層において必要とされる吸収量にあわせて吸水性の高い材料の量を調整し、特に、水吸収時にゲルを形成する物質を含ませることによってであると理解できる。
そうすると、甲1-1発明の「孔」は、吸収層への体液の移動経路として、単に設けられているのであって、そのようなものに、貯留空間を有するようにして、体液を保持するように構成しようとする動機付けがあるとはいえない。
(エ)そして、甲3には、各種プラスチック材料の特性について、甲4?甲6には、ポリエチレン材料について、甲7には、孔あきフィルムを形成するのに適切なポリマーについて、甲8及び甲9には、シリコーン化合物を塗布したシートについて、甲10には、貫通孔を有するシート材について、甲11及び甲12には、表面ソートと吸収性シートが接合されていないことについて、甲14及び甲15には、生理食塩水の接触角について、甲16には、ぬれと表面張力について、甲18には、ヒートシールについて、それぞれ記載されているものの、いずれにも、甲1-1発明の「孔」を、貯留空間を有し、体液を保持するように構成しようとする示唆ないし動機付けは、記載されていない。
(オ)この点、請求人は、弁駁書(17?28頁)において、甲1-1発明に甲10記載の技術的事項を適用する動機付けはある旨を主張している。
この主張は、甲1-1発明において、「水吸収時にゲルを形成する物質を含む」「吸収層」を備えることを前提に、甲10、甲17及び弁駁書に添付して新たに提出した甲19に記載された事項から把握される技術常識(湿潤治療法が有効であること及び創傷部位側のシートに初期耐水圧性が高いものを用いることが有効であること)を踏まえると、上記動機付けがあるというものである。
しかし、たとえ、甲1-1発明が、「水吸収時にゲルを形成する物質を含む」「吸収層」を備えるものであり、甲10、甲17及び甲19から、請求人が主張する上記技術常識が把握できるとしても、甲1には、そのような技術常識を踏まえ、その具現化に繋がる記載、すなわち、甲1において「吸収層」が有する「創傷を湿潤状態に保ち、傷の治癒を促進する」という機能を、さらに「孔」にも持たせるという着想に繋がる記載は一切ない。
したがって、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用できない。
(カ)しかも、本件発明1の貫通孔は100?2000μmの寸法であるところ、甲1-1発明の孔については、そのような寸法を有するのかさえ特定されていない。
したがって、上記相違点1cに係る本件発明1の構成は、甲1-1発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。

エ.そうすると、本件発明1は、上記相違点1a及び相違点1bについて検討するまでもなく、甲1-1発明、並びに甲3?甲12,甲14?甲16及び甲18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明2?4について
本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明2?4は、上記(3)で示した判断を踏まえると、甲1-1発明、並びに甲3?甲12、甲14?甲16及び甲18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明5について
ア.本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明5と、甲1-2発明を対比すると、甲1-2発明の「傷手当用品」、「下面側に位置するシート状の被覆層」、「吸収層」は、それぞれ本件発明5の「創傷被覆材」、「透液層(表面シート)」、「吸収保持層」に相当し、以下の一致点bで一致し、相違点5a、相違点5b及び相違点5cで相違する。

《一致点b》
「少なくとも透液層と吸収保持層との2つの層を備えた創傷被覆材であって、
創傷部位と対面するように使用される側から順に、上記の透液層と吸収保持層とを積層してなり、
上記の吸収保持層は、水を吸収保持可能なシート材を含有し、
上記の透液層は、
創傷部位の少なくとも創傷部位と対面する部位に配され、上記の創傷部位と対面する第1表面と、これとは反対側の第2表面と、両表面間に亘って厚さ方向に貫通する多数の貫通孔とを有する、樹脂製のシート材からなり、
上記の貫通孔は上記の第1表面側から第2表面側への液体の透過を許容し、上記の第1表面が疎水性を備えている、表面シートからなる、
創傷被覆材。」

《相違点5a》
本件発明5の表面シートの貫通孔が、「上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持」し、「第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μmであり、貫通孔(13)は、第1表面(11)での開口面積が直径280?1400μmの円形に相当し、第2表面(12)での開口面積が第1表面(11)での開口面積より小であり、50?400個/cm^(2)の密度で存在し、開孔率が15?60%」であるのに対し、甲1-2発明のシート状の被覆層の孔は、本件発明5のように、滲出液を保持するものであるとは特定されていないし、貫通孔の寸法、密度及び開孔率も特定されていない点。
《相違点5b》
本件発明5の表面シートは、「第1表面(11)における生理食塩水との接触角が85度以上」であるのに対し、甲1-2発明のシート状の被覆層の下面側の傷接触表面は、「傷手当用品を傷から容易に分離するために、被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好まし」いとされているが、「生理食塩水との接触角が85度以上」であるか不明である点。
《相違点5c》
本件発明5の表面シートは「低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成している」のに対し、甲1-2発明のシート状の被覆層はポリエチレン等の材料を用いている点。

イ.上記相違点5aについて検討する。
本件発明5の「貫通孔」は、「創傷部位と第2表面との間に貯留空間を有し、創傷部位の上に滲出液を保持」するものであるのに対し、上記(3)で述べたように、甲1記載の「孔」は、傷からの体液を吸収層へ移動させるように機能するものであって、体液を保持するものではなく、甲1-2発明の「孔」について、貯留空間を有し、体液を保持するように構成しようとする動機付けがあるとはいえない。
しかも、本件発明5は、「第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μmであり」、「貫通孔(13)は、上記の第1表面(11)での開口面積が直径280?1400μmの円形に相当し、上記の第2表面(12)での開口面積が上記の第1表面(11)での開口面積より小であり、50?400個/cm^(2)の密度で存在し、開孔率が15?60%であり、上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持する」ように構成することにより、「創傷部位と上記の第2表面(12)との間に適度な貯留空間(14)を形成でき、創傷部位上に適量の滲出液を保持するとともに、滲出液が創傷部位の表面内方向に広がることを防止できる」(本件特許明細書の段落【0032】)との効果を奏するものである。
そして、甲3?甲12、甲14?甲16及び甲18のいずれにも、甲1-2発明の「シート状の被覆層」について、傷からの体液を保持するものに換えようとする示唆ないし動機付けは記載されていない。
したがって、上記相違点5aに係る本件発明5の構成は、甲1-2発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。

ウ.そうすると、本件発明5は、上記相違点5b及び相違点5cについて検討するまでもなく、甲1-2発明、並びに甲3?甲12,甲14?甲16及び甲18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)本件発明6?21について
本件発明5の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明6?21は、上記(5)で示した判断を踏まえると、甲1-2発明、並びに甲3?甲12、甲14?甲16及び甲18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(7)本件発明22について
ア.本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明22と、甲1-2発明を対比すると、甲1-2発明の「傷手当用品」、「下面側に位置するシート状の被覆層」は、それぞれ本件発明22の「創傷被覆材」、「透液層(表面シート)」に相当し、以下の一致点cで一致し、相違点22a及び相違点22bで相違する。

《一致点c》
「創傷部位の少なくとも創傷部位と対面する部位に配される表面シートであって、
上記の創傷部位と対面する第1表面と、これとは反対側の第2表面と、両表面間に亘って厚さ方向に貫通する多数の貫通孔とを有する、樹脂製のシート材からなり、
上記の貫通孔は上記の第1表面側から第2表面側への液体の透過を許容し、上記の第1表面が疎水性を備えている表面シートからなる透液層を備えた、創傷被覆材。」

《相違点22a》
本件発明22の表面シートは、「第1表面(11)における生理食塩水との接触角が85度以上」であるのに対し、甲1-2発明のシート状の被覆層の下面側の傷接触表面は、「傷手当用品を傷から容易に分離するために、被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好まし」いとされているが、「生理食塩水との接触角が85度以上」であるか不明である点。
《相違点22b》
本件発明22の表面シートは「低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成している」のに対し、甲1-2発明のシート状の被覆層はポリエチレン等の材料を用いている点。
《相違点22c》
本件発明22の表面シートの貫通孔は、「上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持」し、「上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μm」であるのに対し、甲1-2発明のシート状の被覆層の孔は、本件発明22のように、滲出液を保持するものであるとは特定されておらず、寸法が100?2000μmであるとも特定されていない点。

イ.上記相違点22cについて検討すると、上記相違点22cは、実質的に上記相違点1cと同じ事項であり、この相違点22cに係る本件発明22の構成は、前記(3)で示した判断を踏まえると、甲1-2発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。

ウ.そうすると、本件発明22は、上記相違点22a及び相違点22bについて検討するまでもなく、甲1-2発明、並びに甲3?甲12,甲14?甲16及び甲18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(8)本件発明23?25について
本件発明22の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明23?25は、上記(7)で示した判断を踏まえると、甲1-2発明、並びに甲3?甲12、甲14?甲16及び甲18に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(9)本件発明26について
本件発明26は、本件発明5及び本件発明5の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明6?21のいずれかについて、あるいは、本件発明22及び本件発明22の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明23?25のいずれかについて、さらに「前記の創傷部位(15)と対面する側とは反対側の表面に粘着層(21)を有する」との技術的な事項を備えるものであるが、本件発明5?21に対して示した上記(5)及び(6)の判断、並びに、本件発明22?25に対して示した上記(7)及び(8)の判断を踏まえると、甲1-2発明、並びに甲3?甲12、甲14?甲16及び甲18に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(10)無効理由1についてのまとめ
上記のとおり、本件発明1?26に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、それらの特許は、同法第123条第1項第2号に該当することを理由に、無効とすることはできない。

2.無効理由2について
(1)甲13の記載事項
本件特許の優先日前の実用新案登録出願であって、優先日後に実用新案掲載公報の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に係る登録実用新案公報である甲13には、以下の記載がある。
ア.「【請求項1】
創傷部に当接する側から、透水性の表面シート、保水性シート、吸水性の中間シート、不透水性の裏面シートの順に積層された創傷被覆材において、該表面シートがJISK6768に規定する表面濡れ張力が38?54mN/mであって、かつ孔径0.1?3mm、開孔率10?50%の有孔フィルムであることを特徴とする創傷被覆材。」
イ.「【0007】
本考案は、滲出液の多少にかかわらず、創傷部を常に安定して適度な湿潤状態に保つことができ、かつ創傷部に引っ付きにくい、治癒の促進に有効な創傷被覆材の提供を目的とする。
・・・・
【0010】
本考案において、創傷部に当接する透水性の表面シートは、JISK6768(プラスチック・フィルム及びシート・ぬれ張力試験方法)に規定する表面濡れ張力が38?54mN/m、好ましくは40?50mN/mであって、かつ孔径0.1?3mm、開孔率10?50%の有孔フィルムである。
【0011】
有孔フィルムの表面濡れ張力が38mN/m未満では、撥水性が高くなって滲出液が有孔フィルム全体に均一に馴染めず、滲出液が創傷部に部分的に点在する形となって早期の治癒が望めない。一方、表面濡れ張力が54mN/mを超えると、被覆材が創傷部に引っ付き易くなって、引き剥がす際に創傷部を傷めるという問題が生起する。」
ウ.「【0012】
また、有孔フィルムの表面濡れ張力は、その孔径や開孔率とも関連し、孔径と開孔率が本考案の範囲外では表面濡れ張力が38?54mN/mであっても滲出液が溜まりすぎるかあるいは乾燥して均一な湿潤状態が保てない。かかる有孔フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を主材とする厚さ1?50μm程の上記表面濡れ張力を有するフィルムであればいかなるものでも差し支えないが、フィルムの強度や衛生性等を考慮すると厚さ3?12μmのポリエステル系フィルムが好ましく、また突孔加工によって断面すり鉢状に穿孔されたメッシュフィルムでも使用可能である。ここで、ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレイソフタレート、シクロヘキシレンジメチルテレフタレート等の結晶性又は非晶性ポリエステルフィルムが例示できる。」
エ.「【0013】
本考案の創傷被覆材は、上記表面シートの裏側に保水性シートを介して吸水性の中間シートを積層したものである。ここで保水性シートは、透水性の表面シートを通って出てくる滲出液を速やかに吸収保持し、余剰の滲出液を中間シートに吸収させる、所謂滲出液の溜まりを調整する働きを奏し、もって創傷部を常に適度な湿潤状態に保つ効果をもたらすものである。」

(2)甲13に記載された考案
上記記載イ.によれば、甲13の創傷被覆材に用いられる「表面シート」は、「創傷部に当接する表面シート」であって、「表面濡れ張力が38?54mN/m」、「孔径0.1?3mm、開孔率10?50%」の「有孔フィルム」である。
また、上記記載エ.によれば、「表面シート」は透水性を有し、滲出液が通って出てくることができる。
また、上記記載ウ.によれば、有孔フィルムである「表面シート」は、「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を主材とする厚さ1?50μm程の上記表面濡れ張力を有するフィルム」であればよく、「フィルムの強度や衛生性等を考慮すると厚さ3?12μmのポリエステル系フィルムが好まし」いとされる。

そうすると、甲13には、「表面シート」に係る以下の「甲13考案」が記載されている。
「創傷部に当接する表面シートであって、
表面シートは表面濡れ張力が38?54mN/m、孔径0.1?3mm、開孔率10?50%の有孔フィルムであり、
滲出液が通って出てくることができる程度の透水性を有し、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を主材とする厚さ1?50μm程の上記表面濡れ張力を有するフィルムであればよく、フィルムの強度や衛生性等を考慮すると厚さ3?12μmのポリエステル系フィルムが好ましいとされる、
創傷被覆材に用いられる表面シート。」

(3)本件発明1について
ア.本件発明1と甲13考案を対比すると、以下の一致点Aで一致し、相違点1A及び相違点1Bで相違する。
《一致点A》
「創傷部位の少なくとも創傷部位と対面する部位に配される表面シートであって、
上記の創傷部位と対面する第1表面と、これとは反対側の第2表面と、両表面間に亘って厚さ方向に貫通する多数の貫通孔とを有する、樹脂製のシート材からなり、
上記の貫通孔は上記の第1表面側から第2表面側への液体の透過を許容するものである、
創傷被覆材用表面シート。」

《相違点1A》
本件発明1は、表面シートの「第1表面が疎水性を備えており」、「第1表面における生理食塩水との接触角が85度以上である」に対し、甲13考案は、「表面シートは表面濡れ張力が38?54mN/m」である点。
《相違点1B》
本件発明1は、表面シートが「低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成している」のに対し、甲13考案は、表面シートが「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を主材」とするフィルムであって、「フィルムの強度や衛生性等を考慮すると厚さ3?12μmのポリエステル系フィルムが好ましいとされる」ものである点。
《相違点1C》
本件発明1は、表面シートの貫通孔が「上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持」し、「上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μm」であるのに対し、甲13考案は、表面シートの有孔フィルムが厚さ3?12μmである点。

イ.上記相違点1Aについて検討する。
「接触角」と「表面濡れ張力」は、ともに物質表面の疎水性に関連するものとはいえ、物質表面を評価する上で異なる物性値であり、甲13考案の表面シートの「表面濡れ張力が38?54mN/m」であることと、本件発明1の「生理食塩水との接触角が85度以上である」こととが、同一のことを示すものであるとはいえない。
したがって、上記相違点1Aは実質的な相違点である。

ウ.次に、上記相違点1Bについて検討する。
甲13考案の表面シートにはポリエチレンを用い得るものの、「フィルムの強度や衛生性等を考慮すると厚さ3?12μmのポリエステル系フィルムが好ましいとされる」ことからすれば、甲13考案の表面シートの材料として、あえてポリエチレンを選択した上で、さらにそのうちの「低密度」の樹脂材料を用いるものとまではいえない。
したがって、上記相違点1Bは実質的な相違点である。

エ.次に、上記相違点1Cについて検討する。
甲13考案の表面シートの有孔フィルムの孔が、滲出液を保持するものであるとは特定されていないし、有孔フィルムの厚さ3?12μmは、本件発明1の貫通孔の100?2000μmの範囲外である。
したがって、上記相違点1Cは実質的な相違点である。

オ.よって、本件発明1は甲13考案と同一ではない。

(4)本件発明2について
本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに技術的な事項を発明特定事項として付加している本件発明2は、上記(3)で示した判断を踏まえると、甲13考案と同一ではない。

(5)無効理由2についてのまとめ
上記のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではないから、それらの特許は、同法第123条第1項第2号に該当することを理由に、無効とすることはできない。

3.無効理由3について
本件発明1には、「表面シート」について、「創傷部位(15)と対面する第1表面(11)と、これとは反対側の第2表面(12)と、両表面(11・12)間に亘って厚さ方向に貫通する多数の貫通孔(13)とを有する、樹脂製のシート材からなり」、「第1表面(11)が疎水性を備え」、「第1表面(11)における生理食塩水との接触角が85度以上であり」、「低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成している」ものと記載されている。
この「表面シート」について、本件特許明細書には、
「上記の透液層(1)を構成する表面シート(10)としては、樹脂フィルムが好ましく、さらに詳しくは、樹脂フィルムに多数の穿孔が施された有孔フィルムが好ましい。この表面シート(10)を形成する樹脂材料としては、・・・・生理食塩水との接触角が85度以上の樹脂、例えばポリオレフィン樹脂・・・・などが好ましく、中でも、生理食塩水との接触角が91度であるポリプロピレン樹脂が特に好ましい。・・・・」(段落【0039】)、
「上記の透液層(1)は、前述のように少なくとも第1表面(11)が疎水性を備えるが、この疎水性は、材料の樹脂の性質にのみ基づくものである必要はなく、必要に応じて撥水処理を施すことにより疎水性を発揮したものであっても良い。
例えば、生理食塩水との接触角が85度未満のポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂)や、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂(生理食塩水との接触角:84度)などであっても、適切な撥水処理を施すことにより、所望の疎水性を発揮させることができる。
この場合、高密度ポリエチレン樹脂(密度範囲:930?970kg/m3)や低密度ポリエチレン樹脂(密度範囲:910?930kg/m3)が好ましく採用され、中でも、特に低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。創傷部位の形状・起伏に応じて、柔軟に閉鎖領域を形成できる上、貫通孔の形成や撥水処理を行いやすく、所望の接触角を得やすいからである。」(段落【0040】)と記載されている。
本件特許明細書のこれらの記載から、透液層(1)を構成する「表面シート」に採用される樹脂材料として、「低密度ポリエチレン樹脂」が好ましく、「生理食塩水との接触角が85度未満」であっても「適切な撥水処理を施すことにより、所望の疎水性を発揮させる」ことができることが理解される。
そうすると、「低密度ポリエチレン樹脂材料」の「生理食塩水との接触角」が85度未満であっても、「適切な撥水処理を施すことにより、所望の疎水性を発揮させ」、「生理食塩水との接触角が85度以上」とすることができるのであるから、甲3に記載の「低密度ポリエチレン樹脂材料」の接触角が81度であることと、本件発明1の「第1表面(11)における生理食塩水との接触角が85度以上であり」、「低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成している」こととは、特段矛盾するものではない。

請求人は、「『シート材』が『低密度ポリエチレン樹脂材料』のみから成形されている場合には、本件発明1の『第1表面(11)』の『生理食塩水との接触角が85度以上』であることとの間には矛盾がある」旨主張するが、本件発明1は「低密度ポリエチレン樹脂材料」のみから形成されるとは特定されておらず、「低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成している」と特定されていることからすれば、上述した本件特許明細書の記載も踏まえると、適切な撥水処理を施すことを含み得る記載であり、請求人の上記主張は、当を得たものではない。

以上より、「低密度ポリエチレン樹脂材料」の接触角が81度であることと、本件発明1の「第1表面(11)」の「生理食塩水との接触角が85度以上」であることとの間には矛盾はなく、本件発明1?26は明確であり、それらの特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の規定に適合するから、本件発明1?26に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当しない。
よって、無効理由3には理由がない。

4.無効理由4について
本件特許明細書には、「接触角」について、
「上記の透液層(1)は、少なくとも創傷部位と対面する上記の第1表面(11)が疎水性であればよく、特定の材質等のものに限定されない。
しかし、治療に必要な滲出液を創傷部位と透液層(1)との間に保ち、且つ使用後に創傷被覆材(5)を容易に剥がせるという観点から、少なくとも上記の第1表面(11)は、生理食塩水との動的接触角(以下、単に「接触角」ともいう。)が85度以上であると好ましく、さらに使用後に創傷被覆材(5)が一層簡単に剥がれ易いという点から、生理食塩水との接触角が95度以上であるとさらに好ましく、100度以上であると特に好ましい。なお、本発明で用いる「接触角」は、θ/2法によって測定した値を意味する。」(段落【0035】)、
「上記の「接触角」は、例えばJIS K 2396に従って測定される。具体的には、例えば以下のように測定する。試料のシート材を1.5?2cm四方に切り取り、接触角測定装置(商品名:FTA-100、First Ten Angstrom社製)の測定部位に配置する。前記装置に設置されたシリンジから標準液滴基準サンプル1.5μLを試料片に接触させ、液滴法により、1,3,5,10分経過後の各動的接触角を測定し(液滴供給スピード:0.5μL/秒、滴下量:1.5μL)、前記接触角測定装置により解析する。」(段落【0036】)と記載されている。
上記の記載によれば、本件特許明細書においては、「動的接触角」を「接触角」と定義し、JIS K 2396に従って市販の接触角測定装置により「動的接触角」を測定し解析して「接触角」を測定することが記載されており、「動的接触角」以外のものについて「接触角」とする記載はないから、本件特許明細書の記載を参酌すれば、本件発明1の「接触角」は、「動的接触角」を意味するものと解される。
そうすると、本件発明1の「生理食塩水との接触角が85度以上」との事項の「接触角」について、請求人が主張するように、「静的接触角」と「動的接触角」のどちらも含み得るものと解すべき余地はない。

以上より、本件発明1の「生理食塩水との接触角が85度以上」との事項の「接触角」は、「静的接触角」と「動的接触角」のどちらも含み得るものではなく、専ら「動的接触角」と解されるものであって、その「動的接触角」に基づく「接触角」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているから、本件発明1?26は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、それらの特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合するから、本件発明1?26に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当しない。
よって、無効理由4には理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件発明1?26に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷部位(5)の少なくとも創傷部位と対面する部位に配される表面シートであって、
上記の創傷部位(15)と対面する第1表面(11)と、これとは反対側の第2表面(12)と、両表面(11・12)間に亘って厚さ方向に貫通する多数の貫通孔(13)とを有する、樹脂製のシート材からなり、
上記の貫通孔(13)は、上記の創傷部位と上記の第2表面との間に貯留空間を有し、上記の創傷部位の上に滲出液を保持するとともに、上記の第1表面(11)側から第2表面(12)側への液体の透過を許容し、
上記の第1表面(11)が疎水性を備えており、
上記の第1表面(11)における生理食塩水との接触角が85度以上であり、
上記のシート材は、低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて形成し、
上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μmであること
を特徴とする、創傷被覆材用表面シート。
【請求項2】
上記の第1表面(11)における表面張力が40dyne/cm以下であり、
前記の貫通孔(13)は、50?400個/cm^(2)の密度で存在する、請求項1に記載の創傷被覆材用表面シート。
【請求項3】
上記の第1表面(11)は、シリコーン、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる1以上の撥水性物質により被覆してある、請求項1または2に記載の創傷被覆材用表面シート。
【請求項4】
上記の第1表面(11)と第2表面(12)との間の寸法は100?2000μmであり、
前記の貫通孔(13)は、上記の第1表面(11)での開口面積が直径280?1400μmの円形に相当し、上記の第2表面(12)での開口面積が上記の第1表面(11)での開口面積より小であり、50?400個/cm^(2)の密度で存在し、開孔率が15?60%である、請求項1?3のいずれかに記載の創傷被覆材用表面シート。
【請求項5】
少なくとも透液層(1)と吸収保持層(3)との2つの層を備えた創傷被覆材であって、
創傷部位(15)と対面するように使用される側から順に、上記の透液層(1)と吸収保持層(3)とを積層してなり、
上記の透液層(1)は、請求項4に記載の表面シート(10)からなり、
上記の吸収保持層(3)は、水を吸収保持可能なシート材を含有することを特徴とする創傷被覆材。
【請求項6】
上記の吸収保持層(3)の、上記の透液層(1)とは反対側に、第2の透液層(1a)がさらに積層してある、請求項5に記載の創傷被覆材。
【請求項7】
上記の吸収保持層(3)の、創傷側とは反対側の表面に保護層(4)をさらに備え、この保護層(4)は、樹脂フィルム、織布、編布もしくは不織布からなる、請求項5に記載の創傷被覆材。
【請求項8】
上記の保護層(4)は他の全ての層を覆うとともに、この他の層より広い面積に形成されて、他の層の外側にはみ出した外縁部(6)を備えており、
上記の外縁部(6)は上記の他の層が積層された側の表面の少なくとも一部に粘着部(7)を有する、請求項7に記載の創傷被覆材。
【請求項9】
上記の保護層(4)は、上記の外縁部(6)に粘着部(7)を有しない非粘着部(8)を備えている、請求項8に記載の創傷被覆材。
【請求項10】
上記の保護層(4)は、上記の他の層の外側に、上記の外縁部(6)が形成されていない部分を備えている、請求項8に記載の創傷被覆材。
【請求項11】
上記の保護層(4)は、上記の外縁部(6)に、スリット(9)もしくは小孔を上記の他の層の外周に沿って備えている、請求項8に記載の創傷被覆材。
【請求項12】
上記の透液層(1・1a)と上記の吸収保持層(3)との間に透液制限層(2)が設けてあり、
この透液制限層(2)は疎水性材料で形成された、微多孔質のフィルム、織布、編布または不織布からなり、この透液制限層(2)を介して上記の透液層(1)から吸収保持層(3)への液体の移動を許容する、請求項5?11のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項13】
前記の透液制限層(2)はポリオレフィン系樹脂からなり、JIS L 1096に従って測定される通気度が5?2000cm^(3)/cm^(2)・Sであり、JIS L 1092に従って測定される撥水度が3級以上である、請求項12に記載の創傷被覆材。
【請求項14】
前記の透液制限層(2)が、ポリプロピレン繊維からなる不織布を用いて形成してある、請求項12または請求項13に記載の創傷被覆材。
【請求項15】
前記の吸収保持層(3)はエアレイド不織布を用いて形成してある、請求項5?14のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項16】
前記の吸収保持層(3)はフラッフパルプを有する、請求項5?15のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項17】
前記の吸収保持層(3)はさらに高吸収性ポリマーを有し、この高吸収性ポリマーと上記のフラッフパルプとの重量比が10:90?25:75である、請求項16に記載の創傷被覆材。
【請求項18】
上記の高吸収性ポリマーがポリアクリル酸ナトリウム系である、請求項17に記載の創傷被覆材。
【請求項19】
前記の吸収保持層(3)は創傷部位側で隣接する他の層と少なくとも部分的に非接合である、請求項5?18のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項20】
上記の透液層(1)と上記の吸収保持層(3)とを直接積層してなり、
上記の吸収保持層(3)は上記の透液層(1)と一体化されておらず、透液層(1)の第2表面(12)に沿って移動可能である、請求項19に記載の創傷被覆材。
【請求項21】
前記の吸収保持層(3)が、少なくとも創傷部位に沿って変形可能な伸縮性を備える、請求項5?20のいずれかに記載の創傷被覆材。
【請求項22】
請求項1?4のいずれかに記載の表面シート(10)からなる透液層(1)を備えることを特徴とする、創傷被覆材。
【請求項23】
上記の表面シート(10)の第2表面(12)側に透液制限層(2)を積層してあり、この透液制限層(2)は疎水性材料で形成された、微多孔質のフィルム、織布、編布または不織布を用いて形成してあり、この透液制限層(2)はその厚さ方向に液体の通過を許容する、請求項22に記載の創傷被覆材。
【請求項24】
前記の透液制限層(2)はポリオレフィン系樹脂からなり、JIS L 1096に従って測定される通気度が5?2000cm^(3)/cm^(2)・Sであり、JIS L 1092に従って測定される撥水度が3級以上である、請求項23に記載の創傷被覆材。
【請求項25】
前記の透液制限層(2)が、ポリプロピレン繊維からなる不織布を用いて形成してある、請求項23または24に記載の創傷被覆材。
【請求項26】
前記の創傷部位(15)と対面する側とは反対側の表面に粘着層(21)を有する、請求項5?25のいずれかに記載の創傷被覆材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-02-06 
結審通知日 2019-02-12 
審決日 2019-02-25 
出願番号 特願2012-518387(P2012-518387)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (A61F)
P 1 113・ 536- YAA (A61F)
P 1 113・ 161- YAA (A61F)
P 1 113・ 537- YAA (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 渡邊 豊英
井上 茂夫
登録日 2013-01-18 
登録番号 特許第5180410号(P5180410)
発明の名称 創傷被覆材用表面シートおよび創傷被覆材  
代理人 後藤 未来  
代理人 市川 英彦  
代理人 青木 孝博  
代理人 白波瀬 悠美子  
代理人 市川 英彦  
代理人 後藤 未来  
代理人 日比谷 征彦  
代理人 日比谷 洋平  
代理人 花田 健史  
代理人 青木 孝博  
代理人 白波瀬 悠美子  
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