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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45C
管理番号 1360765
審判番号 不服2017-17192  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-02 
確定日 2020-03-27 
事件の表示 特願2016-258008「キャリーバッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日出願公開、特開2018-102890〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月27日の出願であって、平成29年2月28日付けで図面の補正がなされ、平成29年4月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年6月13日付けで意見書が提出されたが、同年7月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
キャリーバッグのレバーの取り付け部をキャリーバッグの外側の下部にし、外レバー(2と13)の前傾角度を維持調整する機構を設け、キャリーバッグを直立したままで移動できるようにしたキャリーバッグ」(以下「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:登録実用新案第3060008号公報
引用文献2:特開2004-81561号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(1)「【請求項1】 ローラを具有する旅行かばん本体と、一対の外管と、一対の内管と、把っ手と、位置決めユニットと、折り曲げアームと、連動ロッドと、手で操作可能なフック係止ユニットとを備え、
前記外管は、底端が前記旅行かばん本体の底部の壁に枢設および接続され、前記旅行かばん本体との間で開閉可能であって、前記一対の外管のうち少なくとも一方の底段に内部と連通している切欠溝が形成され、
前記一対の内管は、それぞれ前記外管の中にはめられ、前記外管の軸方向に沿って摺動可能であり、
前記把っ手は、前記内管の上端に接続され、
前記位置決めユニットは、前記外管と前記内管との間に設けられ、
前記折り曲げアームは、相互に枢設および接続された二本のロッドを有し、一端は前記外管の管壁に枢設および接続され、もう一端は前記旅行かばん本体の壁に枢設され、前記外管と前記旅行かばん本体との間の開閉作動に応じて折り曲げられたりまっすぐ延ばされたりし、
前記連動ロッドは、一端が前記折り曲げアームの折り曲げ支点に枢設および接続され、もう一端は前記切欠溝を経由して前記外管の中まで延ばされ、前記内管の底端によって作動され、前記外管の軸方向に沿って摺動できて前記折り曲げアームを連動させ、
前記フック係止ユニットは、前記外管が前記旅行かばん本体の壁に閉じられたとき、前記旅行かばん本体の壁に位置決めしてその状態を保つことを特徴とする旅行かばん。」

(2)「【従来の技術】
従来より、旅行かばんの把っ手は、旅行かばんにおいて伸縮自在である。使用者の身丈に応じて長さを調整するばかりでなく、使用しない場合に収納するために、把っ手を旅行かばんの中に縮めることもできる。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、そのような従来の旅行かばんの把っ手は、使用者が旅行かばんを引っぱったり提げたりするのに使われるだけであって、旅行かばんを押し進める機能がないので十分だといえない。また、使用者が旅行かばんを提げる場合、かばんの重さが全て使用者の手にかかるので、骨が折れるほど力がかかる。一方、使用者が把っ手で旅行かばんを引っぱる場合、旅行かばんを傾斜させたあとで引っぱると力は少なくて済むが、使用者は依然として旅行かばんの重さの分力を受けるので、長時間使用すれば疲れ易い。
【0004】
したがって、本考案の目的は、本来の引っぱったり提げたりする機能以外に、押し進めることができる旅行かばんを提供することにある。
本考案のもう一つの目的は、使用者が小さな力で移動させることができる旅行かばんを提供することにある。」

(3)「 【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するための本考案の旅行かばんは、次の要素を備える。
一対の外管があり、一対の内管はそれぞれ外管の中にはめられ、外管の軸方向に沿って摺動可能である。把っ手は内管の上端に接続される。位置決めユニットが外管と内管との間に設けられ、内管を外管の予定位置に位置決めする。なお、外管の底端は旅行かばんの壁に枢設されるので、外管は旅行かばんとの間で開閉できる。また、外管と連通している切欠溝が少なくとも一つの外管の底段に軸方向に沿って設けられる。
【0006】
折り曲げアームは、相互に枢設および接続された二本のロッドから形成される。その一端は外管の管壁に枢設および接続され、もう一端は旅行かばん本体の壁に枢設されるので、外管と旅行かばんとの間の開閉作動に応じて折り曲げられたりまっすぐ延ばされたりする。連動ロッドの一端は折り曲げアームの折り曲げ支点に枢設および接続される。もう一端は切欠溝を経由して外管の中まで延ばされ、内管の底端に支持される。連動ロッドは外管の軸方向に沿って摺動できる。なお、把っ手を収納するときに旅行かばん本体の壁に当接させるために、手で操作できるフック係止ユニットが設けられる。」

(4)「 【0007】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
図1および図2に示す本実施例による旅行かばんの把っ手構造10は、図7に示すように、若干のローラを具有する旅行かばん本体90の底部に取付けられる。
支持板20の底端両側にはそれぞれ枢設および接続ブロック21がある。L型の横方向断面をもつ枢設および接続プレート23を利用して、旅行かばん本体90の壁に取付ける。つまり、支持板20は、二本のピン24で二つの枢設および接続ブロック21を枢設および接続プレート23における枢設および接続ブロック25に枢設するので、枢設および接続部位を支点として、旅行かばん本体90との間で開閉の動作を行う。
【0008】
一対の外管30はそれぞれ支持板20の両側に設置される。
一対の内管33はそれぞれ外管30の中にはめられ、伸縮自在に摺動できる。
把っ手35は内管33の上端に接続され、手で握って提げることができる。
少なくとも一つの位置決めユニットは、外管と内管との間に設けられる。位置決めユニットは把っ手35のボタンに連動され、内管33を外管30に位置決めする。なお、外管30、内管33、把っ手35および位置決めユニットの構造および作動関係は既存の構造であるので、その説明を省略する。
【0009】
本実施例の特徴は次のとおりである。
外管30の側面底段には、管の内部と連通している切欠溝31が設けられる。切欠溝31は外管の軸方向に沿って平行に設けられる。
二つの折り曲げアーム40は、相互に枢設および接続された二本のロッド41、42から形成される。ピン43が二本のロッド41、42を通過して、それらを枢設および接続する。折り曲げアーム40はロッド42の末端を経由して、取付板44に枢設および接続する。取付板44は旅行かばん本体の壁に取付けられる。そうすると、二つの折り曲げアーム40は支持板20の開閉動作に応じて、折り曲げられて併合されたり、あけられたりする。弾性ユニット45はトルクスプリングを採用する。その両端は二本のロッド41、42の間に介入するので、二本のロッド41、42を併合状態から開けられた状態まで変更するのに必要な作用力を提供する。また、ロッド41に位置制限部47が設置されることにより、二本のロッド41、42が予定の角度まで開けられるときに、位置制限部47がロッド42の本体を留めて二本のロッド41、42の開けられる角度が大きくなり過ぎないように制限する。
【0010】
二つの連動ロッド50の上端は折り曲げアーム40に接続される。その底端は切欠溝31を経由して外管30の中まで延ばされ、内管33の底端に支持される。連動ロッド50の底端には連結ユニット51が接続される。ロッド52は連結ユニット51に接合され、連動ロッド50の底端として、切欠溝31から外管30の中まで延ばされる。ロッド52が外管30から脱離しないように、外管30の側壁にガイドプレート53が設置される。ガイドプレート53と外管30との間に適当な間隔をおくので、スライドパス54が形成される。スライドユニット55はスライドパス54の中に設けられ、外管30の軸方向に沿って摺動できる。ロッド52はガイドプレート53のガイド溝531を通過したあとでスライドユニット55に接続され、外管30の中まで延ばされる。ロッド52の本体中段がスライドユニット55に留められ、外管30から離れない。もちろん、スライドユニット55を外管30の外部に設けるという制限はなく、外管30の内部に設けてもよい。連動ロッド50の上端は枢設および接続ブロック57に接合され、その枢設および接続ブロック57を利用して、折り曲げアーム40の折り曲げ支点に枢設および接続される。
【0011】
フック係止ユニット60は支持板20の上方に配置される。押しユニット61は支持板20の上端に設置され、係止の位置と解除の位置との間で移行できる。二つの弾性ユニット63は支持板20と押しユニット61との間に設けられ、その弾性により押しユニット61を係止の位置にかける。押しユニット61は外向きに二つのフック65を形成する。それに対応して、取付板44に二つのフック孔441がある。支持板20が旅行かばん本体の壁に収納される場合に、押しユニット61の二つのフック65が二つのフック孔441に係止されるので、支持板20が旅行かばん本体の壁に併合されるのを保持する。」

(5)「 【0012】
図3に示すように、把っ手構造が使用されない場合、旅行かばん本体の壁に併合されると同時に内管33が外管30の最低点に置かれる。各連動ロッド50の底端は、内管33が押されることにより最低点に戻る。図4に示すように、各折り曲げアームは折り曲げの収納状態に回復する。
使用者が使用したい場合は、ボタン36を押して内管33と外管30との係止状態を解除させる。図5に示すように、把っ手35によって内管33を上へ向かって引く。それから、使用者が押しユニット61を押すと、押しユニット61は下へ解除の位置まで移行する。支持板20の併合状態を解除するので、支持板20は展開する。そのときに、内管33は上昇するので、各連動ロッド50の底端は制限されず、切欠溝31に沿って自在に摺動できる。使用者が支持板20を外へあけると、図6に示すように、それと同時に各折り曲げアーム40も支持板20の連動で収納の状態から展開の状態へ変更され、各連動ロッド50を上昇させる。各折り曲げアーム40が全て展開されると、支持板20も図7に示すように最大の展開状態になるので、使用者は旅行かばん本体90を引っぱったり押し進めたりすることができる。支持板20が全て展開されて力を受けていないとき、弾性ユニット45から提供された作用力が各折り曲げアーム40の展開角度を180°より少し大きくさせるばかりでなく、各ロッド41の位置制限部はロッドに当接して位置決めさせる。使用者が把っ手を握って旅行かばん本体90を押し進めると、旅行かばん本体90は移行し、全ての重さがかばんの底におけるローラに支持されるので、省力かつ便利である。」

(6)「 【0014】
つまり、前述した構造は次の利点がある。
(1)把っ手構造10は従来からの引っぱったり提げたりする機能以外に、押し進める機能がある。使用者は便利に旅行かばんを移動させることができ、操作方式は多様化する。
(2)旅行かばんを押し進めるとき、旅行かばんは床面に置かれた状態であるので、使用者は旅行かばんの重さを受けず、のんびりと小さな力で旅行かばんを扱うことができる。
【0015】
以上から分かるように、本考案による旅行かばんは、使用が便利であって省力であるなどの利点をもち、実用性が十分ある。」

(7)上記(4)の下線部の記載から、引用文献1に記載された旅行かばんの把っ手構造10は、旅行かばん本体90の底部に取付けられることがわかる。そして、引用文献1の【図7】の記載より、その取付け位置は、明らかに旅行かばんの外側であるから、引用文献1には、旅行かばんの把っ手構造10の取り付け部を旅行かばんの外側の底部にすることが記載されているといえる。

(8)引用文献1の【図1】の記載から、把っ手構造10は、把っ手35、内管33、外管30等を有しているといえ、さらに、引用文献1の上記(3)の下線部の記載から、折り曲げアームは、相互に枢設および接続された二本のロッドから形成されて、その一端は把っ手構造10の外管の管壁に枢設および接続され、もう一端は旅行かばん本体の壁に枢設されるので、外管と旅行かばんとの間の開閉作動に応じて折り曲げられたりまっすぐ延ばされたりし、さらに、上記(5)の下線部の記載から、弾性ユニット45の作用力は各折り曲げアーム40の展開角度を180°より少し大きくさせ、折り曲げアーム40のロッド41の位置制限部はロッドに当接して位置決めされることから、把っ手構造10は、折り曲げアームの展開角度が180°より少し大きいときの傾斜角度で維持されており、折り曲げアームは、把っ手構造10の傾斜角度を維持する機構であるといえる。

(9)引用文献1の上記(6)の下線部の記載から、引用文献1に記載された旅行かばんを押し進めるとき、旅行かばんは床面に置かれた状態であり、使用者は旅行かばんの重さを受けないことがわかり、これは、旅行かばんを直立したままで移動することにより、使用者は旅行かばんの重さを受けないと解されるから、引用文献1に記載された旅行かばんは直立したままで移動できるといえる。

2 引用発明
したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。)
「旅行かばんの把っ手構造10の取り付け部を旅行かばんの外側の底部にし、把っ手構造10の傾斜角度を維持する折り曲げアーム40を設け、旅行かばんを直立したままで移動できるようにした旅行かばん」

3 引用文献2の記載
(1)「【請求項1】
バッグ本体の側部において上下方向に延びる支持杆とこの支持杆の上端部に設けられる握り部とを備える取っ手部材が、バッグ本体の側部に設けられているゴルフバッグにおいて、
取っ手部材の支持杆が、その上端側に向かうに従ってバッグ本体から離間する方向に傾斜していることを特徴とするゴルフバッグ。」

(2)「【従来の技術】
一般にゴルフバッグは、ウッドやアイアンあるいはパターなどの複数本のクラブを収容すると、その重量がかなり重くなり、そのため、クラブを収容したバッグを担いで持ち運ぶことは非常に重労働となり、特に年配のゴルファにとってはかなりの体力を消耗するものである。
【0003】
そこで従来では、例えば特開平7-328152号公報にも示されているように、バッグ本体の底部の一端側に左右一対の車輪を回転自由に設けると共に、バッグの側部にキャリー用の取っ手部材を設けて、この取っ手部材の握り部を手で握ってバッグ本体を車輪を介して走行移動させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら以上のゴルフバッグにあっては、取っ手部材を構成する支持杆が、バッグ本体の側部に沿って配設されていることから、支持杆の上端部に設け握り部がバッグ本体の開口部に近接することとなり、そのため、バッグを傾けて走行移動させる際に、バッグ本体に収容したクラブのヘッドが握り部を握っている手に当たって、バッグの走行移動が行い難くなったり、あるいはヘッドが取っ手部材に当接して、ヘッドが傷ついたりする不具合がある。
【0005】
本発明は以上の実情に鑑みて開発されたものであって、その目的とするところは、バッグ本体に収容したクラブが取っ手部材や取っ手部材の握り部を持つ手に不用意に当接することのないゴルフバッグを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するために、請求項1の発明は、バッグ本体の側部において上下方向に延びる支持杆とこの支持杆の上端部に設けられる握り部とを備える取っ手部材が、バッグ本体の側部に設けられているゴルフバッグにおいて、取っ手部材の支持杆が、その上端側に向かうに従ってバッグ本体から離間する方向に傾斜していることを特徴とするものである。」

(3)「【0010】
図において符号1で示すゴルフバッグは、主としてゴルフクラブ(図示せず)を収納するための筒状をしたバッグ本体2と、このバッグ本体2の下端に組み付けられてバッグ1の底を画成する有底筒状の底筒3と、この底筒3の一端側に回転自由に取り付けられた左右一対の車輪4とが備えられている。」

(4)「【0012】
またバッグ本体2の背面側側部には、取っ手部材5が設けられている。
【0013】
この取っ手部材5は、図2にも示すように、左右一対の支持杆51a・51bと、これら両支持杆51a・51bの上端を連結する握り部52とから構成されている。
【0014】
そして支持杆51a・51bは、バッグ本体2の背面側側部で且つリヤポケット22内に組み付けた収容部材6に対して出退自由となっており、取っ手5の使用に際しては、支持杆51を収容部材6から所定長さ引き出して用い、また取っ手5の不使用時には、支持杆51を収容部材6内に格納するようにしている。」

(5)「【0020】
以上の構成において、図1から図12に示す実施形態では、収容筒部61a・61bの下端部を下部ブラケット63に枢支して、この収容筒部61a・61bをバッグ本体2に対して揺動可能とすると共に、上部ブラケット62と収容筒部61a・61bとの間に位置変更切換え機構7を介装して、この位置変更切換え機構7を介して、取っ手部材5の支持杆51a・51bが、その上端側に向かうに伴いバッグ本体2に対してバッグ本体2から離間する方向に傾斜する位置とバッグ本体2の背面側部に沿う位置とに位置変更可能としたのである。」

(6)「【0037】
以上の実施形態では、位置変更切換え機構7を一対のスライド筒71とリンク部材72とから構成して、スライド筒71を各収容筒部61a・61bにスライド自由に挿通し、このスライド筒71にリンク部材72の長さ方向一端部を枢支すると共に、このリンク部材72の長さ方向他端部を上部ブラケット62に枢支して、スライド筒71のスライドとリンク部材72の揺動により、取っ手部材5の支持杆51a・51bが、その上端側に向かうに伴いバッグ本体2から離間する方向に傾斜する位置とバッグ本体2の背面側部に沿う位置との間で揺動するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば図13及び図14に示すように構成してもよい。
【0038】
即ち図13及び図14に示す位置変更切換え機構7は、スライド筒75と、長さ方向一端部をスライド筒75に枢支した揺動アーム76と、上部ブラケット62から延びて揺動アーム76遊端が係合可能な鋸歯状の複数の係合部77を備えた係合体78とを備え、揺動アーム76とスライド筒75との間に、揺動アーム76を係合部77と係合する方向(図14において反時計方向)に揺動付勢させるためのスプリング79介装して成るものである。
【0039】
以上の位置変更切換え機構7は、揺動アーム76の遊端を、複数の係合部77中、上部ブラケット62に最も近い係合部77に係合させることで、取っ手部材5の支持杆51a・51bが、バッグ本体2の背面側部に沿う位置(図14において実線で示す位置)にセットされるのである。
【0040】
そして、かかる位置から取っ手部材5をバッグ本体2の背面側部から離間する方向に強制的に引くことで、揺動アーム76がスプリング79のバネ力に抗して揺動しながら順次係合する係合部77が変更されるのであって、揺動アーム76が係合する係合部77の選択により、支持杆51a・51bのバッグ本体2に対する傾斜角度を任意調整することが出来る。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「旅行かばん」は、本願発明の「キャリーバッグ」に相当し、また、引用発明の「把っ手構造10の取り付け部」は、本願発明の「レバーの取り付け部」に相当する。さらに、引用発明の「把っ手構造10の取り付け部を旅行かばんの外側の底部に」することは、本願発明の「レバーの取り付け部をキャリーバッグの外側の下部に」することに相当する。また、引用発明の「把っ手構造10」は、本願発明の「外レバー」に相当し、引用発明の「把っ手構造10の傾斜角度を維持する折り曲げアーム40」と本願発明の「外レバーの前傾角度を維持調整する機構」とは、「外レバーの前傾角度を維持する機構」である点において共通する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の[一致点]において一致し、[相違点]において、相違する。
[一致点]
「キャリーバッグのレバーの取り付け部をキャリーバッグの外側の下部にし、外レバーの前傾角度を維持する機構を設け、キャリーバッグを直立したままで移動できるようにしたキャリーバッグ」

[相違点]
本願発明のキャリーバッグは、「外レバーの前傾角度を維持調整する機構」が設けられているのに対し、引用発明の旅行かばんは、「把っ手構造10の傾斜角度を維持する折り曲げアーム」が設けられているものの、この折り曲げアームによる傾斜角度の調整については、特定されていない点。

第6 判断
1 相違点について
まず、引用文献2には、上記第4 3 (6)に摘記したように、ゴルフバッグのバッグ本体2に対する支持杆51a・51bの傾斜角度を維持調整することができるようにする位置変更切換え機構7について記載されており、この支持杆51a・51bは、ゴルフバッグを移動させるときに用いる取っ手部材5を握り部52と共に構成するものである(上記第4 3(4)参照。)。
そして、引用発明の把っ手構造10及び折り曲げアームと引用文献2に記載された取っ手部材5と位置変更切換え機構7とは、バッグを移動させるときに用いるレバーとその角度を維持する手段である点で共通するから、引用発明に記載された「把っ手構造10の傾斜角度を維持する折り曲げアーム」を引用文献2に記載された位置切換え機構7として、上記相違点に係る本願発明の構成を引用発明において得ることは当業者が容易に想到し得た事項である。そして、その結果得られる効果についても、引用発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が予測しえたものである。

2 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献1も本願と同様の機能を持つ部分はあるが、キャリーバッグの後ろから押して移動するのであり、本願のようにキャリーバッグの前でレバーを引いて移動するのではない」と主張する。
しかしながら、本願発明は上記第2において認定したように、キャリーバッグを後から押して移動するものであるか、引いて移動するものであるかについては、特定していないものであるから、請求人の主張は、本願発明の特定事項に基づかないものであって、認められない。
さらに、仮に本願発明の特定事項に基づく主張であったとしても、引用文献1には、旅行かばんを引いて移動することも記載(上記第4 1 (2)及び(5)(6)参照)されており、さらに引用発明の把っ手構造等が押す方向だけでなく、引く方向についても旅行かばんを移動させることができるように旅行かばん本体に固定されていることから、引用発明の旅行かばんを引いて移動するようにすることは、当業者が容易に想到し得た事項であり、請求人の主張は認められない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-03 
結審通知日 2018-10-09 
審決日 2018-11-05 
出願番号 特願2016-258008(P2016-258008)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大宮 功次金丸 治之  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 長馬 望
矢島 伸一
発明の名称 キャリーバッグ  

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