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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1360889
審判番号 不服2019-9156  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-08 
確定日 2020-03-13 
事件の表示 特願2016-226917号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月31日出願公開、特開2018- 82811号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月22日の出願であって、平成30年9月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年4月3日付け(謄本送達日:同年同月9日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年7月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和1年7月8日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和1年7月8日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成30年11月22日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技が可能な遊技機であって、
原点位置と該原点位置から離れた位置との間で動作可能に設けられた、第1可動体と第2可動体とを含む可動体と、
前記可動体を動作させるための駆動手段と、
前記駆動手段による前記可動体の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記原点位置に前記可動体を位置させるための第1動作制御と、前記可動体が正常に動作可能であることを確認するための第2動作制御と、前記可動体による演出を行うための第3動作制御とを行うことが可能であり、
前記第2動作制御においては、第1速度と該第1速度よりも速い第2速度との範囲内で前記可動体が動作するように制御可能であり、
前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、
前記第1可動体と前記第2可動体との各々の前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、
前記第1動作制御における速度は、前記第1可動体と前記第2可動体とで異なり、
前記可動体は、複数種類の異常状態のうち第1異常状態が発生したときには、動作が制限される一方、該第1異常状態とは異なる第2異常状態が発生したときには、動作が制限されない
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技が可能な遊技機であって、
原点位置と該原点位置から離れた位置との間で動作可能に設けられた、第1可動体と第2可動体とを含む可動体と、
前記可動体を動作させるための駆動手段と、
前記駆動手段による前記可動体の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記原点位置に前記可動体を位置させるための第1動作制御と、前記可動体が正常に動作可能であることを確認するための第2動作制御と、前記可動体による演出を行うための第3動作制御とを行うことが可能であり、
前記第1動作制御を行った後に前記第2動作制御を行う際に、前記第1動作制御を行った後に前記可動体が前記原点位置に位置しない場合に前記第1動作制御を再度行い、さらに前記第1動作制御を所定回繰り返し行った場合に前記第2動作制御を行わないようにし、
前記第2動作制御においては、第1速度と該第1速度よりも速い第2速度との範囲内で前記可動体が動作するように制御可能であり、
前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、
前記第1可動体と前記第2可動体との各々の前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、
前記第1動作制御における速度は、前記第1可動体と前記第2可動体とで異なり、
前記可動体は、複数種類の異常状態のうち第1異常状態が発生したときには、動作が制限される一方、該第1異常状態とは異なる第2異常状態が発生したときには、動作が制限されない
ことを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第1動作制御」及び「第2動作制御」を行う「制御手段」に関して、「前記第1動作制御を行った後に前記第2動作制御を行う際に、前記第1動作制御を行った後に前記可動体が前記原点位置に位置しない場合に前記第1動作制御を再度行い、さらに前記第1動作制御を所定回繰り返し行った場合に前記第2動作制御を行わないようにし、」とする補正。

2 本件補正の目的、新規事項追加の有無
(1)上記1(2)の補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0136】、【0139】、図14等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「制御手段」が「前記第1動作制御を行った後に前記第2動作制御を行う際に、前記第1動作制御を行った後に前記可動体が前記原点位置に位置しない場合に前記第1動作制御を再度行い、さらに前記第1動作制御を所定回繰り返し行った場合に前記第2動作制御を行わないようにし」たものに限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしLは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技が可能な遊技機であって、
B 原点位置と該原点位置から離れた位置との間で動作可能に設けられた、第1可動体と第2可動体とを含む可動体と、
C 前記可動体を動作させるための駆動手段と、
D 前記駆動手段による前記可動体の動作を制御する制御手段と、
を備え、
E 前記制御手段は、
前記原点位置に前記可動体を位置させるための第1動作制御と、前記可動体が正常に動作可能であることを確認するための第2動作制御と、前記可動体による演出を行うための第3動作制御とを行うことが可能であり、
F 前記第1動作制御を行った後に前記第2動作制御を行う際に、前記第1動作制御を行った後に前記可動体が前記原点位置に位置しない場合に前記第1動作制御を再度行い、さらに前記第1動作制御を所定回繰り返し行った場合に前記第2動作制御を行わないようにし、
G 前記第2動作制御においては、第1速度と該第1速度よりも速い第2速度との範囲内で前記可動体が動作するように制御可能であり、
H 前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、
I 前記第1可動体と前記第2可動体との各々の前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、
J 前記第1動作制御における速度は、前記第1可動体と前記第2可動体とで異なり、
K 前記可動体は、複数種類の異常状態のうち第1異常状態が発生したときには、動作が制限される一方、該第1異常状態とは異なる第2異常状態が発生したときには、動作が制限されない
L ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-195589号公報(平成19年8月9日出願公開、以下「引用例1」という。)には、パチンコ機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の好適な実施形態について図面に基づいて説明する。図1はパチンコ機を示す正面図であり、図2は本体枠および前面枠を開放した状態のパチンコ機を示す斜視図である。
[1.パチンコ機の構成]
【0018】
パチンコ機1は、図1および図2に示すように、外枠2、本体枠3、遊技盤4、前面枠5等を備えて構成されている。外枠2は、上下左右の枠材によって縦長四角形の枠状に形成され、外枠2の前側下部には、本体枠3の下面を受ける下受板6を有している。外枠2の前面一側には、ヒンジ機構7によって本体枠3が前方に開閉可能に装着されている。また、本体枠3は、前枠体8、遊技盤装着枠9、および機構装着枠10を合成樹脂材によって一体成形することで構成されている。本体枠3の前側に形成された前枠体8は、外枠2前側の下受板6を除く外郭形状に対応する大きさの矩形枠状に形成されている。」

(イ)「[6-2.演出動作体]
【0065】
図7はリアユニットからカバー部材が取り外された状態を示した正面図である。3つのキャラクタ体150,152,154は、図7に示すように、表示領域42を取り囲むようにして配置されており、その上方と右側方、左側方にそれぞれ1つずつキャラクタ体150,152,154が位置する。
【0066】
キャラクタ体150,152,154は1つ1つが異なる形態にデザインされている。これらキャラクタ体150,152,154は、いずれも著名な怪奇小説に登場する何らかの「怪物」を模したものであるが、見た目上はコミカルにデフォルメされたデザインが施されている。表示領域42の右側方に位置するキャラクタ体(フランケン)150は「フランケンシュタインの怪物」を模したものであるが、その表情からはどこか間の抜けたような感じを受ける。また表示領域42の上方に位置するキャラクタ体(ドラキュラ)152は、「吸血鬼ドラキュラ」を模したものであるが、その顔立ちからはどことなく気の弱そうな印象を受ける。そして表示領域42の左側方に位置するキャラクタ体154は「オオカミ男(人間の姿から狼に変身する男)」を模したものとなっている。図7には細かく示されていないが、このキャラクタ体(オオカミ男)154の表情はマスコット的な愛嬌のあるものとなっている。
[6-3.待機収容部]
【0067】
リアユニット142には、3つのキャラクタ体150,152,154にそれぞれ対応して収容部156,158,160(待機収容部)が形成されている。収容部156にはフォトセンサ150n、収容部158にはフォトセンサ152n,153n、収容部160にはフォトセンサ154nがそれぞれ設置されている。リアユニット142は、その全体がケーシング162に覆われる構造であり、3つの収容部156,158,160はケーシング162の内側に区画して形成された状態にある。
【0068】
ケーシング162は外形がほぼ矩形をなしており、その前面は大きく開放されているが、背面は奥壁162aで塞がれている。またケーシング162の外縁は側壁162bで囲われており、側壁162bは奥壁162aの周縁から前面側へ立ち上がるようにして形成されている。そして上述した収容部156,158,160は、奥壁162aより手前側の空間内で側壁162bの内側に形成されている。
【0069】
収容部156,158,160は、いずれも表示領域42に隣接する側端がキャラクタ体150,152,154の出入口となっている。キャラクタ体150,152,154は、それぞれ収容部156,158,160に収容された状態(待機位置)と、表示画面の前面側に出現した状態(出現位置)とに変位することができる。このときキャラクタ体150,152,154は、上述した出入口を通じて出入りする。また、キャラクタ体150,152,154は、それぞれ収容部156,158,160に収容され待機位置(以下、「原位置」という。)になると、上述したフォトセンサ150n,153n,154nに検出される(キャラクタ体150,152,154の原位置にフォトセンサ150n,153n,154nがそれぞれ配置されている)。なお、フォトセンサ152nは、後述する遮蔽部材166の原位置を検出する(遮蔽部材166の原位置にフォトセンサ152nが配置されている)。」

(ウ)「[6-6-3.動作例]
【0085】
図9はキャラクタ体(フランケン)と遮蔽部材(フランケン)との動作例である。上述した昇降スライダ150eは、図9に示すように、ステッピングモータ150hからの動力で昇降動作が与えられるものとなっており、ステッピングモータ150hからの動力は、出力軸に取り付けられたピニオン150rが昇降スライダ150eに形成されたラック150sに回転運動を与えることにより昇降スライダ150eに動力を伝達する。
【0086】
昇降スライダ150eの昇降動作は、レバー150gを介して頭部パーツ150bに伝達される。昇降スライダ150eが上昇すると、これにつられてレバー150gが引き上げられ、それによって頭部パーツ150bが支点150fを中心に回動する。このときの頭部パーツ150bの回動により、ちょうど「怪物」であるキャラクタ体(フランケン)150が頭を前に突き出すような動きが実現される。なお、昇降スライダ150eの下端部には係合溝150kが形成されており、昇降スライダ150eと頭部パーツ150bとは、係合溝150kを介して接合されている。また、係合溝150kの下方にはキャラクタ体(フランケン)の基準板150mが昇降スライダ150eに形成されており、キャラクタ体(フランケン)の基準板150mがフォトセンサ150nの凹部に収まっている状態が原位置となる(図8(a)参照)。
・・・略・・・
[6-6-6.動作例]
【0098】
図11はキャラクタ体(ドラキュラ)と遮蔽部材(ドラキュラ)との動作例である。図11に示すように、まず、1系統のリンク機構(第2のリンク機構)について、ステッピングモータ152hの動力でクランク152gが一方向(図11では反時計回り方向)に回動されることによりレバー152cが一方向(図11では時計回り方向)に回動する。レバー152cが回動することによりメインパーツ152bが一方向(図11では反時計回り方向)に回動するため、キャラクタ体(ドラキュラ)152と遮蔽部材(ドラキュラ)166とのある一端部(図11では右端部)は下方へ回動する。また、メインパーツ152bの右下方には遮蔽部材(ドラキュラ)166の基準板152mが形成されており、遮蔽部材(ドラキュラ)の基準板152mがフォトセンサ152nの凹部に収まっている状態が原位置となる(図10(a)参照)。
【0099】
残りの1系統のリンク機構(第1のリンク機構)については、そのステッピングモータ153fの動力でクランク153eが一方向(図11では時計回り方向)に回動されることによりレバー153bが一方向(図11では反時計回り方向)に回動する。レバー153bが回動すると、それによって連接棒153aが一方向(図11では左方向)に押しやられるので、その結果、キャラクタ体(ドラキュラ)152がメインパーツ152bに沿ってその先端方向(図11では左下方向)にスライドすることになる。また、連接棒153aと連なるレバー153bの右方にはキャラクタ体(ドラキュラ)152の基準板153mが形成されており、キャラクタ体(ドラキュラ)の基準板153mがフォトセンサ153nの凹部に収まっている状態が原位置となる(図10(a)参照)。
・・・略・・・
[6-6-9.動作例]
【0109】
図13はキャラクタ体(オオカミ男)と遮蔽部材(オオカミ男)との動作例である。上述したスライドブロック154dは、図13に示すように、ステッピングモータ155からの動力でスライド動作が与えられるものとなっており、ステッピングモータ155からの動力は、クランク155aとレバー155bとを介してスライドブロック154dに伝達される。このためレバー155bの下端部は、機構ボックス154aにピン接合されており、一方、レバー155bの上端部は、スライドブロック154dに対してスライダ接合されている。スライドブロック154dには、上下方向に延びるガイド溝155cが形成されており、対応するレバー155bの上端部には、ガイド溝155c内に填り込むピン155dが形成されている。なお、レバー155bにもその長手方向に沿ってガイド溝155eが形成されており、このガイド溝155e内にクランク155aの先端部が填り込んでいる。また、ガイド溝155cの上方にはキャラクタ体(オオカミ男)の基準板154mがスライドブロック154dに形成されており、キャラクタ体(オオカミ男)の基準板154mがフォトセンサ154nの凹部に収まっている状態が原位置となる(図12(a)参照)。
【0110】
このためステッピングモータ155の動力でクランク155aが一方向(図13(a)では時計回り方向)に回動されると、これによってレバー155eが一方向(図13(a)では時計回り方向)に回動する。レバー155eが回動すると、それによってスライドブロック154dが一方向(図13(a)では右方向)に押しやられるため、キャラクタ体(オオカミ男)154が収容部160内から外側方向(図13(a)では右方向)にスライドする。」

(エ)「[7-6.ランプ駆動基板]
【0122】
ランプ駆動基板112は、図15に示すように、サブ統合基板111から送信された各種コマンドに基づいて装飾ランプ49と演出ランプ44a,44bとにパラレル転送により駆動信号を送信する演出ランプ駆動部112gと、サブ統合基板111から送信された各種コマンドをパラレルデータに変換するシリアルパラレル変換部112h,112iと、シリアルパラレル変換部112hにより変換されたパラレルデータを駆動信号として受信するドライブ回路部112j,112kおよびシリアルパラレル変換部112iにより変換されたパラレルデータを駆動信号として受信するドライブ回路部112m,112nとを備える。
・・・略・・・
[7-6-2.ドライブ回路部]
【0125】
ドライブ回路部112j,112k,112m,112nは、図15に示すように、ドライブ回路部112j,112kは、キャラクタ体(フランケン)150を動作させるステッピングモータ150hと遮蔽部材(ドラキュラ)166を動作させるステッピングモータ153fとをそれぞれ駆動する駆動信号を各相(φ1,φ2,φ3,φ4)に出力し、ドライブ回路部112m,112nは、キャラクタ体(ドラキュラ)152を動作させるステッピングモータ152hとキャラクタ体(オオカミ男)154を動作させるステッピングモータ155とをそれぞれ駆動する駆動信号を各相(φ1,φ2,φ3,φ4)に出力する。ここで、ステッピングモータ150hは機構ボックス150aに接続され、キャラクタ体(フランケン)の基準板150mが機構ボックス150aに収められている。ステッピングモータ153f,152hは機構ボックス152aに接続され、キャラクタ体(ドラキュラ)の基準板153mと遮蔽部材(ドラキュラ)166の基準板152mとが機構ボックス152aに収められている。ステッピングモータ155は機構ボックス154aに接続され、キャラクタ体(オオカミ男)の基準板154mが機構ボックス154aに収められている。」

(オ)「[8.変動表示パターン]
【0128】
次に、変動表示パターンを決定するための変動表示パターンテーブルについて説明する。図16は主制御基板で選択される変動表示パターンの一例を示す一覧表図である。この変動表示パターンは、主制御基板101で更新処理されている変動表示パターン乱数に基づいて決定される。この変動表示パターン乱数は、特別図柄表示機41に表示する特別図柄と装飾図柄との変動表示パターンを決定するための乱数である。
【0129】
ここで、図16中記載の「表示用コマンド」とは、主制御基板101からサブ統合基板111に送信される2バイト構成のコマンドであり、特別図柄表示器41で特別図柄の変動表示を開始してから特別図柄の変動表示(表示領域42で装飾図柄の変動表示を開始してから装飾図柄の変動表示)が停止表示されるまでの変動時間やリーチ演出を特定するためのデータが含まれる。
・・・略・・・
【0134】
変動番号23?31の「スポットライト予告」とは、リーチ態様が形成されるまでに各々のキャラクタに応じたスーパーリーチ発展演出を行うことを予告する予告演出を行った後に、スーパーリーチ演出を実行せずに予告演出で画像表示制御したキャラクタに応じたスーパーリーチ発展演出を行う変動表示パターンである。また、変動番号32,33の「役物リーチ」とは、リーチ態様が形成された後に上述したリアユニット142に内蔵されたキャラクタ体150、152、154と遮蔽部材164、166、168とを駆動制御することによるリーチ演出を行う変動表示パターンである。」

(カ)「[11.ステッピングモータ駆動制御処理]
【0152】
次に、ステッピングモータ150h,153f,152h,155の駆動方法について説明する。図23は16ms用ステッピングモータスケジューラ起動処理の一例を示すフローチャートであり、図24はステッピングモータスケジューラの一例を示すテーブルであり、図25は2ms用ステッピングモータスケジューラ起動処理の一例を示すフローチャートであり、図26はステッピングモータスケジューラパターン設定処理の一例を示すフローチャートであり、図27は2ms用ステッピングモータスケジューラ動作処理の一例を示すフローチャートであり、図28はステッピングモータ処理の一例を示すフローチャートである。なお、ステッピングモータ150h,153f,152h,155の出力軸側から見て時計方向への回転をCW(Clock Wiseの略)とし、反時計方向への回転をCCW(Counter Clock Wiseの略)とする。また、ステッピングモータ150h,153f,152h,155は4相ステッピングモータであり、バイポーラ駆動方式により制御されている。この「バイポーラ駆動方式」とは、ステータコイルの両端に印加する電圧の正負を切り替え、電流の方向を変化させることによりコイルを励磁し、磁界を切り替える方式である。
[11-1.16ms用ステッピングモータスケジューラ起動処理]
【0153】
16ms用ステッピングモータスケジューラ起動処理が開始されると、図23に示すように、サブ統合基板111のCPU111aは、ステッピングモータ動作禁止時間が値0であるか否かを判定する(ステップS100)。このステッピングモータ動作禁止時間(本実施形態では、ステッピング動作禁止時間を5.1sと設定されている。)は、電源投入時又はリセット時に設定される時間であり、この時間内では、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166、キャラクタ体(オオカミ男)154がそれぞれ原位置にあるか否かを検査し、原位置にないときには、電源投入(リセット)用ステッピングモータスケジューラに基づいてステッピングータ150h,153f,152h,155を駆動制御して原位置に復帰させる処理(以下、「電源投入(リセット)用ステッピングモータ初期化処理」という。)を行う。」

(キ)「[13.フォトセンサ正常報知処理]
【0216】
次に、上述したキャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166及びキャラクタ体(オオカミ男)154の原位置を検出するフォトセンサ150n,153n,152n,154nが正常であるか否かを報知するフォトセンサ正常報知処理について説明する。図36はフォトセンサ正常報知処理の一例を示すフローチャートである。このフォトセンサ正常報知処理は、電源投入(リセット)時において、図31?図35に示した各種原位置復帰処理の後に行われる。
・・・略・・・
【0230】
サブ統合基板111のCPU111aは、図31?図35に示した各種原位置復帰処理と、図36に示したフォトセンサ正常報知処理と、を行う。各種原位置復帰処理では、電源投入時又はリセット時、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166及びキャラクタ体(オオカミ男)154を原位置に復帰させるためステッピングモータ150h,153f,152h,155に駆動信号を出力する。そして、図31?図35に示したN1’ステップ期間、N2ステップ期間、N3ステップ期間及びN4ステップ期間内に、フォトセンサ150n,153n,152n,154nからの検出信号が入力されたときには、入力があったフォトセンサ150n,153n,152n,154nに対応するステッピングモータ150h,153f,152h,155の駆動信号の出力を停止し、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166及びキャラクタ体(オオカミ男)154の現在位置を原位置に設定する制御を行う。例えば、上述したステップ期間内に、サブ統合基板111のCPU111aにフォトセンサ150n,153n,152nの検出信号が入力されたときには、CPU111aは、ステッピングモータ150h,153f,152hの駆動信号の出力を停止し、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及び遮蔽部材(ドラキュラ)166の可動を停止し、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及び遮蔽部材(ドラキュラ)166の現在位置を原位置に設定する制御を行う。
・・・略・・・
【0232】
フォトセンサ正常報知処理では、上述した各種原位置復帰処理によりキャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166及びキャラクタ体(オオカミ男)154の原位置が設定された後再度、ステッピングモータ150h,153f,152h,155に駆動信号を出力してキャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166、キャラクタ体(オオカミ男)154を可動させた後、それぞれの原位置に再び復帰させる制御を行う。例えば、各種原位置復帰処理によりキャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及び遮蔽部材(ドラキュラ)166の原位置がそれぞれ設定されると、その後再度、ステッピングモータ150h,153f,152hに駆動信号を出力して、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及び遮蔽部材(ドラキュラ)166を可動させた(フランケン用フォトセンサ正常報知動作及びドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作)後、それぞれの原位置に再び復帰させる制御を行う。
・・・略・・・
【0235】
ところで、図36に示したフォトセンサ正常報知処理では、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)152及びキャラクタ体(オオカミ男)154が可動される可動範囲は、例えば、上述したフランケン用フォトセンサ正常報知動作では、キャラクタ体(フランケン)150が図8に示す原位置にある状態から図9に示す可動領域限界に至るまで可動し、所定時間(本実施形態では、3秒)停止後、再びその原位置に復帰する。このように、図31に示した原位置時原位置復帰処理によりキャラクタ体(フランケン)150が表示領域42の前面側に出現する可動範囲に比べて、フランケン用フォトセンサ正常報知動作によりキャラクタ体(フランケン)150が表示領域42の前面側に出現する可動範囲の方が極めて大きくなり、例えば生産ラインの作業者には、その動きが見やすくなる。このため、フォトセンサ150n(153n,152n,154)が正常状態にあることを確認しやすくなり、好ましい。
【0236】
更に、図36に示したフォトセンサ正常報知処理では、フランケン用フォトセンサ正常報知動作、ドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作、オオカミ男用フォトセンサ正常報知動作及びフランケン・ドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作におけるステッピングモータ150h,153f,152h,155の回転速度は、図31?図35に示した各種原位置復帰処理におけるものより、本実施形態では2倍に設定されている。近年のパチンコ機では、そのライフサイクルが短命化しており、1日当たりの生産台数が厳しく設定されている。そこで、フランケン用フォトセンサ正常報知動作、ドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作、オオカミ男用フォトセンサ正常報知動作及びフランケン・ドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作によりキャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(オオカミ男)154、キャラクタ体(ドラキュラ)152及び遮蔽部材(ドラキュラ)166が可動される速度が図31?図35に示した各種原位置復帰処理におけるものより速くすることで生産性の向上を図ることができる。」

(ク)「【図9】

・・・略・・・
【図11】


・・・略・・・
【図13】



(ケ)上記(ウ)、図9、図11及び図13の記載からみて、ステッピングモータ150h,152h,155により、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及びキャラクタ体(オオカミ男)154をそれぞれ動作させるための各動作機構は相互に異なると認められる。

(コ)上記(ア)ないし(ケ)からみて、引用例1には、実施形態として、次の発明が記載されている。なお、aないしlについては本願補正発明のAないしLに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a パチンコ機1(【0018】)において、
b それぞれ収容部156、158、160に収容された状態(待機位置)(以下「原位置」という。)と、表示画面の前面側に出現した状態(出現位置)とに変位するキャラクタ体150、152、154(【0069】)と、
c キャラクタ体(フランケン)150を動作させるステッピングモータ150hと、キャラクタ体(ドラキュラ)152を動作させるステッピングモータ152hと、キャラクタ体(オオカミ男)154を動作させるステッピングモータ155と(【0125】)、
d ステッピングモータ150h、152h、155を駆動する駆動信号を出力するドライブ回路部112j、112m、112n(【0125】)、を備えるランプ駆動基板112に各種コマンドを送信するサブ統合基板111(【0122】)と、
を備え、
e サブ統合基板111は、
キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及びキャラクタ体(オオカミ男)154を原位置に復帰させるためステッピングモータ150h、152h、155に駆動信号を出力し、フォトセンサ150n、153n、152n、154nからの検出信号が入力されたときには、入力があったフォトセンサ150n、153n、152n、154nに対応するステッピングモータ150h、153f、152h、155の駆動信号の出力を停止し、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166及びキャラクタ体(オオカミ男)154の現在位置を原位置に設定する各種原位置復帰処理(【0230】)と、
各種原位置復帰処理によりキャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及び遮蔽部材(ドラキュラ)166の原位置がそれぞれ設定されると、その後再度、ステッピングモータ150h、153f、152hに駆動信号を出力して、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及び遮蔽部材(ドラキュラ)166を可動させるフランケン用フォトセンサ正常報知動作及びドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作させた後、それぞれの原位置に再び復帰させる制御を行うものであり、生産ラインの作業者に見やすくなるように、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及びキャラクタ体(オオカミ男)154が可動される可動範囲が各種原位置復帰処理の可動範囲より大きくなるようにした、フォトセンサ正常報知処理(【0230】、【0232】、【0235】)と、
「役物リーチ」の変動表示パターンが決定された際のキャラクタ体150、152、154の駆動制御(【0128】、【0134】)と、を行い、
g、h、i フォトセンサ正常報知処理における、フランケン用フォトセンサ正常報知動作、ドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作、オオカミ男用フォトセンサ正常報知動作及びフランケン・ドラキュラ用フォトセンサ正常報知動作のステッピングモータ150h、153f、152h、155の回転速度は、各種原位置復帰処理のものより、2倍に設定し(【0236】)、
j’ステッピングモータ150h、152h、155により、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及びキャラクタ体(オオカミ男)154をそれぞれ動作させるための各動作機構は相互に異なる(上記(ケ))、
l パチンコ機1(【0018】)。」(以下「引用発明」という。)

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-131789号公報(平成28年7月25日出願公開、以下「引用例2」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機などの遊技機に関する。」

(イ)「【0108】
<<異常入賞エラー2開始指定コマンド>>
メインCPU411は、確率変動機能作動スイッチへの異常入賞を検知したとき、及び、所定のスイッチに対して所定時間以上継続して異常入賞を検知したときに、異常入賞エラー2開始指定コマンド(以下、「異常入賞エラー2開始指定コマンド」を「CD3」と称することがある)をメインRAM413に設定する。「確率変動機能作動スイッチへの異常入賞を検知したとき」とは、確率変動抽選ラウンド中以外において、特定領域SW418aにより、特定領域141に対する入球が検知された場合であり、「確率変動抽選ラウンド」とは、上述した特定ラウンド、すなわち、特A及び特Cの大当たり遊技において第1大入賞口110が開放されるラウンドを示す。つまり、正規の方法で遊技が行われていれば、第1大入賞口110が閉鎖されているラウンドにおいて、特定領域SW418aが遊技球の入球を検知することはないため、確率変動機能作動スイッチへの異常入賞を検知した場合、メインCPU411はCD3をメインRAM413に設定する。
・・・略・・・
【0110】
<<異常入賞エラー1開始指定コマンド>>
メインCPU411は、大入賞口への異常入賞を検知したとき、及び、第2始動口への異常入賞を検知したときに、異常入賞エラー1開始指定コマンド(以下、「異常入賞エラー1開始指定コマンド」を「CD4」と称することがある)をメインRAM413に設定する。「大入賞口への異常入賞を検知したとき」とは、大入賞口処理(図7参照)により第1大入賞口110又は第2大入賞口111が開閉動作されている場合を除き、第1大入賞口110の閉鎖中に第1大入賞口SW416aが遊技球を検出し、或いは、第2大入賞口111の閉鎖中に第2大入賞口SW416bが遊技球を検出した場合である。正規の方法で遊技が行われていれば、大入賞口110、111の閉鎖中に遊技球が大入賞口110、111に入賞することはないため、大入賞口への異常入賞を検知した場合、メインCPU411はCD4をメインRAM413に設定する。
・・・略・・・
【0112】
<<磁石検知エラー開始指定コマンド>>
メインCPU411は、閾値以上の磁力を所定時間(例えば500ms)以上検知したときに、磁石検知エラー開始指定コマンド(以下、「磁石検知エラー開始指定コマンド」を「CD5」と称することがある)をメインRAM413に設定する。磁力は、磁気検出SW423aにより検出される。
【0113】
<<排出球確認エラー開始指定コマンド>>
メインCPU411は、払出すべき遊技球と実際に払出された遊技球のカウント値との差が閾値以上であるときに、排出球確認エラー開始指定コマンド(以下、「排出球確認エラー開始指定コマンド」を「CD6」と称することがある)をメインRAM413に設定する。「払出すべき遊技球と実際に払出された遊技球のカウント値との差が閾値以上であるとき」とは、いわゆる排出球過多或いは排出球不足の状態である。具体的には、主制御部401から賞球制御部402に出力された賞球に関するコマンドが示す遊技球の数と、払出球検出SW425aにより検出される実際に払出された遊技球の数とを比較し、両者の差が閾値以上であるときである。
【0114】
<<排出エラー開始指定コマンド>>
メインCPU411は、各入賞口SWの遊技球の合計カウント値と、枠カウントSWの遊技球のカウント値との差が閾値以上であるときに、排出エラー開始指定コマンド(以下、「排出エラー開始指定コマンド」を「CD7」と称することがある)をメインRAM413に設定する。上述したように、各入賞口105、106、110、111、112に入賞した遊技球は、遊技機100内部において特定の遊技球流通路を通過し、当該特定の遊技球流通路に枠カウントSWが設けられる。つまり、正規の方法で遊技が行われていれば、各入賞口105、106、110、111、112に入賞した遊技球を検知するスイッチ414a、414b、416a、416b及び417による遊技球の合計カウント値と、枠カウントSWによる遊技球のカウント値は一致するはずであるから、両者の差が閾値以上であるとき、メインCPU411はCD7をメインRAM413に設定する。
【0115】
<<入賞頻度異常エラー開始指定コマンド>>
メインCPU411は、基準時間内における入賞個数が閾値以上であり、それが規定回数に達したときに、入賞頻度異常エラー開始指定コマンド(以下、「入賞頻度異常エラー開始指定コマンド」を「CD8」と称することがある)をメインRAM413に設定する。一般に、発射部による遊技球の発射頻度に対して一定の制限が加えられており、例えば1分間に発射できる遊技球の数が100球までと定められている場合、正規の方法で遊技が行われていれば、この発射速度を超える頻度で各入賞口105、106、110、111、112に遊技球が入賞することはないはずである。そこで、例えば、メインCPU411は、異常回数をメインRAM413に記憶させ、10秒間における入賞個数が10個以上である場合に異常回数に「1」を加算し、また、10秒間における入賞個数が10個未満である場合に異常回数から「1」を減算して、メインRAM413に記憶された異常回数を更新し、異常回数が5回に到達した場合に、メインCPU411はCD8をメインRAM413に設定する。なお、メインRAM413に記憶させる異常回数の最小値は「0回」であり、10秒間における入賞個数が10個未満であるときに、記憶されている異常回数が「0回」である場合、異常回数は「-1回」ではなく「0回」と記憶される。
【0116】
<<扉開放エラー開始指定コマンド、扉開放エラー終了指定コマンド>>
メインCPU411は、扉枠12が開放されたときに、扉開放フラグがOFFに設定されていた場合には、扉開放フラグをONに設定すると共に扉開放エラー開始指定コマンド(以下、「扉開放エラー開始指定コマンド」を「CD9-1」と称することがある)をメインRAM413に設定し、扉枠12の開放が検知されないときに、扉開放フラグがONに設定されていた場合には、扉開放フラグをOFFに設定すると共に、扉開放エラー終了指定コマンド(以下、「扉開放エラー終了指定コマンド」を「CD9-2」と称することがある)をメインRAM413に設定する。扉枠12の開放及び閉鎖は、扉開放SW426により検出される。
【0117】
<<ソレノイドフォトセンサ異常エラー開始指定コマンド>>
メインCPU411は、大入賞口内部機構が想定の動作と閾値以上相違したときに、ソレノイドフォトセンサ異常エラー開始指定コマンド(以下、「ソレノイドフォトセンサ異常エラー開始指定コマンド」を「CD10」と称することがある)をメインRAM413に設定する。「大入賞口内部機構が想定の動作と閾値以上相違したとき」とは、主制御部401から、第1大入賞口110内の振分部材144を開閉させる振分ソレノイド422に対して電気信号が出力されたタイミング(想定の動作タイミング)と、ソレノイドフォトセンサ423bにより検出されるタイミング(すなわち、振分部材144が振分ソレノイド422により、実際に動作されたタイミング)とを比較して、両者の差が閾値(例えば500ms)以上である場合を指し、その場合において、メインCPU411はCD10をメインRAM413に設定する。
【0118】
<<スイッチ未接続エラー開始指定コマンド、スイッチ未接続エラー終了指定コマンド>>
メインCPU411は、入力スイッチの断線を検知したときに、スイッチ未接続フラグがOFFに設定されていた場合には、スイッチ未接続フラグをONに設定すると共に、スイッチ未接続エラー開始指定コマンド(以下、「スイッチ未接続エラー開始指定コマンド」を「CD11-1」と称することがある)をメインRAM413に設定し、入力スイッチの断線が検知されないときに、スイッチ未接続フラグがONに設定されていた場合には、スイッチ未接続フラグをOFFに設定すると共に、スイッチ未接続エラー終了指定コマンド(以下、「スイッチ未接続エラー終了指定コマンド」を「CD11-2」と称することがある)をメインRAM413に設定する。CPU411は、磁気検知SW423a又はソレノイドフォトセンサ423bの出力信号を所定時間(1秒)以上継続して受信した場合に、入力スイッチが断線したと判定する。
【0119】
<<皿満タンエラー開始指定コマンド、皿満タンエラー終了指定コマンド>>
メインCPU411は、満タン検出スイッチ処理(図7参照)において、満タン検出SW427a及び427bが共にONであるか否かを判定する。その判定の結果、満タン検出SW427a及び427bが共にONであり、その判定時に満タンフラグがOFFに設定されていた場合には、満タンフラグをONに設定すると共に、皿満タンエラー開始指定コマンド(以下、「皿満タンエラー開始指定コマンド」を「CD12-1」と称することがある)をメインRAM413に設定する。また、判定の結果、満タン検出SW427a及び427bが共にONでなく(一方又は双方がOFFであり)、その判定時に満タンフラグがONに設定されていた場合には、満タンフラグをOFFに設定すると共に、皿満タンエラー終了指定コマンド(以下、「皿満タンエラー終了指定コマンド」を「CD12-2」と称することがある)をメインRAM413に設定する。」

(ウ)「【0165】
<<特殊コマンド受信に基づく、特徴的な制御について>>
上述したように演出制御部403は、主制御部401から出力される特殊コマンドをコマンド受信処理(図14)にて受信した際に、受信した特殊コマンド(複数の異なる特殊コマンドを受信した場合には最も優先順位の高い特殊コマンド)に基づいて特殊演出を実行することとした。特殊演出は、遊技機100がどのような状態にあるかを報知する目的で実行され、その報知対象者は遊技者のみならず、遊技ホールの店員も含まれる。しかしながら、多数の遊技機が設置されている遊技ホールにおいて遊技ホールの店員は、島構造の端から多数の遊技機を見渡す形となり、特定の遊技機で特殊演出が実行されていても、通常の演出(特図判定の判定結果を示唆する演出)と見分けることが困難である。そこで本実施形態では、特殊演出が実行されていること、言い換えれば、特殊コマンドが生成される所定の条件(特殊コマンドの生成条件)が成立していることを遊技ホールの店員に知らしめる制御を行う。
【0166】
遊技機100に対して比較的距離をとった位置から遊技機100を視認した場合に、一見して目につくのは、枠可動役物である。そこで本実施形態では、特殊コマンドの受信時に枠可動役物117、118aに関して以下に示す、特殊な制御を行う。
【0167】
図20は、受信した特殊コマンドと枠可動役物の制御との関係を示す説明図である。図20(a)は、特殊演出非実行時における枠可動役物117、118aの位置が基準位置である場合における、受信した特殊コマンドと枠可動役物の制御との関係を示す説明図である。図20(b)は、特殊演出非実行時における枠可動役物117、118aの位置が作動位置である場合における、受信した特殊コマンドと枠可動役物の制御との関係を示す説明図である。ここで、「特殊演出非実行時」とは、主制御部401から受信した特殊コマンドに基づく特殊演出が実行されていない場合におけるとの意味である。本実施形態において、特殊演出非実行時に枠可動役物117、118aの位置が作動位置である(以下、「枠可動役物117、118aの位置が作動位置であること」を「作動中」と称することがあり、これに対して、「枠可動役物117、118aの位置が基準位置であること」を「非作動中」と称することがある。)場合とは、上述した、大当たり遊技中、及び、電サポ遊技中であって、解除ボタン118bが押下されていない状態を含み、更に、特図判定の判定結果を示唆する演出に枠可動役物117、118aを作動位置に移動させる演出が含まれる場合には、当該作動中も含まれる。
【0168】
図20(a)に示すように、非作動中に特殊コマンドCD1?8、CD9-1、CD12-1を受信した場合、演出制御部403は、枠可動役物117、118aが作動位置に移動することを制限すると共に、特殊コマンドCD1?8、CD9-1、CD12-1に基づく特殊演出を実行する。つまり、例えば、特殊コマンドCD1?8、CD9-1、CD12-1に基づく特殊演出の実行中に、電サポ遊技が実行されたとしても、枠可動役物117、118aは作動位置に移動されない。一方、非作動中に特殊コマンド10、CD11-1を受信した場合、演出制御部403は、枠可動役物117、118aが作動位置に移動することを制限せずに、特殊コマンドCD10、CD11-1に基づく特殊演出を実行する。つまり、例えば、特殊コマンドCD10、CD11-1に基づく特殊演出の実行中に、電サポ遊技が実行された場合には、枠可動役物117、118aが作動位置に移動される。
【0169】
図20(b)に示すように、作動中に特殊コマンドCD1?8、CD9-1、CD12-1を受信した場合、演出制御部403は、枠可動役物117、118aを基準位置に移動させると共に、枠可動役物117、118aが作動位置に移動することを制限し、特殊コマンドCD1?8、CD9-1、CD12-1に基づく特殊演出を実行する。つまり、例えば、電サポ遊技の実行中に、特殊コマンドCD1?8、CD9-1、CD12-1のいずれかを受信した場合には、枠可動役物117、118aを基準位置に移動させ、その後、特殊演出が終了するまで、枠可動役物117、118aは作動位置に移動されない。電サポ遊技の実行中において、特殊コマンドCD1?8、CD9-1、CD12-1に基づく特殊演出が終了した場合には、その後、枠可動役物117、118aが作動位置に移動される。一方、作動中に特殊コマンド10、CD11-1を受信した場合、演出制御部403は、枠可動役物117、118aを基準位置に移動させず、また、枠可動役物117、118aが基準位置に移動することを制限せずに、特殊コマンドCD10、CD11-1に基づく特殊演出を実行する。つまり、例えば、電サポ遊技の実行中に、特殊コマンドCD10、CD11-1のいずれかを受信しても、枠可動役物117、118aは基準位置に移動されず、また、特殊演出の実行中において、電サポ遊技が終了した場合には、枠可動役物117、118aが基準位置に移動される。」

(エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、引用例2には、次の事項が記載されている。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「枠可動役物を有するパチンコ遊技機において(【0001】、【0166】)、
演出制御部403は、
ソレノイドフォトセンサ異常エラー開始指定コマンドであるCD10、スイッチ未接続エラー開始指定コマンドであるCD11-1を受信した場合、枠可動役物117、118aが作動位置に移動することを制限せず、
その他のエラーを含むコマンドであるCD1?8、CD9-1、CD12-1を受信した場合、枠可動役物117、118aが作動位置に移動することを制限すること(【0108】、【0110】、【0112】ないし【0119】、【0168】)。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

ウ 引用例3
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-233862号公報(平成22年10月21日出願公開、以下「引用例3」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。
「【0004】
しかしながら、上記した従来の遊技機の構成では、1対のソレノイドを駆動制御するために、共通の駆動制御データを用いているので、1対のソレノイドに同一の動作しか行わせることができない。このため、それら1対のソレノイドを、1対の演出用可動部材に同一の動作を行わせるために用いるか、対称的な動作を行わせるために用いるか、或いは、互いに反転した動作を行わせるために用いるかによって、1対のソレノイドの配置や、各ソレノイドと各演出用可動部材との動力伝達機構を変更する必要がある。換言すれば、ソレノイドの配置や動力伝達機構に係る設計の自由度が制限されるという問題がある。また、上記した従来の遊技機では、例えば、1対のソレノイドの間の動作のばらつき(具体的には、動作速度、動作加速度、応答性等のばらつき)により、1対の演出用可動部材の動作が互いにズレることがあり、質の高い可動演出を行うことができないという問題もあった。」


(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(l)は、本願補正発明のAないしLに対応させている。

(a)(l)引用発明の「パチンコ機1」は、遊技が可能なことは自明であるから、本願補正発明の「遊技が可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「待機位置(原位置)」及び「出現位置」は、それぞれ本願補正発明の「原点位置」及び「原点位置から離れた位置」に相当する。そして、引用発明の「キャラクタ体150,152,154」は、それぞれ収容部156,158,160に収容された待機位置(原点位置)と、表示画面の前面側に出現した出現位置(原点位置から離れた位置)とに変位するものであるから、本願補正発明の「原点位置と該原点位置から離れた位置との間で動作可能に設けられた、第1可動体と第2可動体とを含む可動体」に相当する。

(c)引用発明の「ステッピングモータ150h,152h,155」は、キャラクタ体150、152、154を動作させるのであるから、本願補正発明の「前記可動体を動作させるための駆動手段」に相当する。

(d)引用発明の「サブ統合基板111」は、ステッピングモータ150h、152h、155(駆動手段)を駆動する駆動信号を出力するドライブ回路部112j、112m、112nを備えるランプ駆動基板112に各種コマンドを送信するから、本願補正発明の「前記駆動手段による前記可動体の動作を制御する制御手段」に相当する構成を備える。

(e)引用発明の「各種原位置復帰処理」は、キャラクタ体150、152、154を原位置に復帰させるため、サブ統合基板111がステッピングモータ150h,152h,155に駆動信号を出力し、フォトセンサ150n、153n、152n、154nからの検出信号が入力されたときには、入力があったフォトセンサ150n、153n、152n、154nに対応するステッピングモータ150h、153f、152h、155の駆動信号の出力を停止し、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152、遮蔽部材(ドラキュラ)166及びキャラクタ体(オオカミ男)154の現在位置を原位置に設定するものであるから、本願補正発明の「前記原点位置に前記可動体を位置させるための第1動作制御」に相当する。
また、引用発明において、「フォトセンサ正常報知処理」は、各種原位置復帰処理後に行うものであるから、フォトセンサがキャラクタ体を検出して、原位置復帰が文字通り正常にできたことを報知するものであるといえるとともに、生産ラインの作業者に可動体の動きを見やすくなるように、言い換えれば、確認しやすくなるように、キャラクタ体150、152、152、154が可動される可動範囲を各種原位置復帰処理の可動範囲より大きくしたものである。
そして、本願補正発明の「前記可動体が正常に動作可能であることを確認するための第2動作制御」は、明細書(特に【0151】ないし【0166】)及び図面(特に図11)の記載を参照すると、確認対象役物を駆動して、原点検出センサが検出状態となっているか否かを判定するものである(S200ないしS213)ことを考慮すると、引用発明の「フォトセンサ正常報知処理」は、本願補正発明の「前記可動体が正常に動作可能であることを確認するための第2動作制御」に相当する。
また、引用発明の「「役物リーチ」の変動表示パターンが決定された際のキャラクタ体150、152、154の駆動制御」は、演出を行なうための動作制御であることが明らかであるから、本願補正発明の「前記可動体による演出を行うための第3動作制御」に相当する。
そして、引用発明において、サブ統合基板111(制御手段)は、各種原位置復帰処理(第1動作制御)と、フォトセンサ正常報知処理(第2動作制御)と、「役物リーチ」の際の駆動制御(第3動作制御)と、を行うから、引用発明のeは、本願補正発明の「E 前記制御手段は、前記原点位置に前記可動体を位置させるための第1動作制御と、前記可動体が正常に動作可能であることを確認するための第2動作制御と、前記可動体による演出を行うための第3動作制御とを行うことが可能であり、」に相当する構成を備える。

(g)引用発明は、フォトセンサ正常報知処理(第2動作制御)におけるステッピングモータ150h、153f、152h、155(駆動手段)の回転速度を、各種原位置復帰処理(第1動作制御)のものより、2倍に設定したものであり、キャラクタ体(可動体)の2倍した後の速度が本願補正発明の「第2速度」に相当し、キャラクタ体(可動体)の2倍する前の元の速度が本願補正発明の「第1速度」に相当するということができ、2倍した後の速度(第2速度)に到る加速段階も考慮すれば、フォトセンサ正常報知処理(第2動作制御)におけるキャラクタ体(可動体)の速度は、2倍する前の元の速度(第1速度)と2倍した後の速度(第2速度)との範囲内で可動体が動作するように制御しているといえる。
してみると、引用発明のg、h、iは、本願補正発明の「G 前記第2動作制御においては、第1速度と該第1速度よりも速い第2速度との範囲内で前記可動体が動作するように制御可能であり、」に相当する構成を備える。

(h)(i)上記(g)のとおり、引用発明において、各種原位置復帰処理(第1動作制御)で、2倍する前の元の速度(第1速度)でキャラクタ体(可動体)を動作させているから、引用発明のg、h、iは、本願補正発明の「H 前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、」及び「I 前記第1可動体と前記第2可動体との各々の前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能である、」に相当する構成を備える。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技が可能な遊技機であって、
B 原点位置と該原点位置から離れた位置との間で動作可能に設けられた、第1可動体と第2可動体とを含む可動体と、
C 前記可動体を動作させるための駆動手段と、
D 前記駆動手段による前記可動体の動作を制御する制御手段と、
を備え、
E 前記制御手段は、
前記原点位置に前記可動体を位置させるための第1動作制御と、前記可動体が正常に動作可能であることを確認するための第2動作制御と、前記可動体による演出を行うための第3動作制御とを行うことが可能であり、
G 前記第2動作制御においては、第1速度と該第1速度よりも速い第2速度との範囲内で前記可動体が動作するように制御可能であり、
H 前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能であり、
I 前記第1可動体と前記第2可動体との各々の前記第1動作制御においては、前記第2動作制御における前記第1速度にて前記可動体が動作するように制御可能である、
L 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項J)
「第1動作制御における速度」に関し、
本願補正発明では、「前記第1動作制御における速度は、前記第1可動体と前記第2可動体とで異な」るのに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点2(特定事項K)
「可動体」の「動作」の「制限」に関し、
本願補正発明では、「前記可動体は、複数種類の異常状態のうち第1異常状態が発生したときには、動作が制限される一方、該第1異常状態とは異なる第2異常状態が発生したときには、動作が制限されない」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点3(特定事項F)
「第1動作制御」及び「第2動作制御」に関し、
本願補正発明では、「前記第1動作制御を行った後に前記第2動作制御を行う際に、前記第1動作制御を行った後に前記可動体が前記原点位置に位置しない場合に前記第1動作制御を再度行い、さらに前記第1動作制御を所定回繰り返し行った場合に前記第2動作制御を行わないようにし」ているのに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

(5)判断
ア 相違点1について検討する。
(ア)まず、本願補正発明の「J 前記第1動作制御における速度は、前記第1可動体と前記第2可動体とで異なり、」(特定事項J)の意味について検討する。平成30年11月22日に提出された意見書において、本願補正発明の特定事項Jの根拠としている明細書の【0013】、【0175】の記載からみて、本願補正発明の特定事項Jは、複数の可動役物を同一性能のステッピングモータにて動作させる場合において、各可動役物に対応する第1動作制御において同一の制御速度を設定しても、各可動役物の大きさ、重量、動作態様、動作距離、駆動機構等の違いがある場合、各可動役物の実際の動作速度は必ずしも同一にはならないということを意味すると解釈する。

(イ)引用例3(上記(2)ウ)に記載されているように、電気的駆動手段としての1対のソレノイドに1対の演出用可動部材に同一の動作を行わせるものであっても、1対のソレノイドの間の動作のばらつき、具体的には、動作速度、動作加速度、応答性等のばらつきにより、1対の演出用可動部材の動作が互いにズレることがあることは技術常識である。

(ウ)引用発明は、ステッピングモータ150h、152h、155により、キャラクタ体(フランケン)150、キャラクタ体(ドラキュラ)152及びキャラクタ体(オオカミ男)154を動作させるための動作機構は相互に異なるものであるところ、仮に各ステッピングモータに全て同一の動作を行わせたとしても、引用発明において、キャラクタ体(可動体)の形状、動作機構等の諸元が異なれば、可動体の速度を同じに設定したとの特段の言及がない限り、上記(イ)で示した技術常識を考慮しても、各種原位置復帰処理(第1動作制御)における複数のキャラクタ体(可動体)の相互の速度が異なる蓋然性が高い。

(エ)してみると、相違点1は実質的な相違点ではない。

(オ)なお、仮に相違点1が実質的な相違点であるとしても、引用例1に、可動体の動きを同期させることや可動体の速度を同じに設定したとの特段の言及がないことを考慮すれば、引用発明において、各可動体の演出に応じて各可動体の速度を相互に異なるようになすこと、すなわち、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。

イ 相違点2について検討する。
(ア)引用例2の記載事項(上記(2)イ(エ))の「枠可動役物」、「その他のエラー」及び「『ソレノイドフォトセンサ異常エラー』及び『スイッチ未接続エラー』」は、本願補正発明の「可動体」、「第1異常状態」及び「第2異常状態」に相当する。そして、引用例2の記載事項は、ソレノイドフォトセンサ異常エラー(第1異常状態)開始指定コマンドであるCD10、スイッチ未接続エラー(第1異常状態)開始指定コマンドであるCD11-1を受信した場合、枠可動役物117、118a(可動体)が作動位置に移動することを制限せず、その他のエラー(第2異常状態)を含むコマンドであるCD1?8、CD9-1、CD12-1を受信した場合、枠可動役物117、118a(可動体)が作動位置に移動することを制限するというものである。そうすると、引用例2の記載事項は、本願補正発明の「K 前記可動体は、複数種類の異常状態のうち第1異常状態が発生したときには、動作が制限される一方、該第1異常状態とは異なる第2異常状態が発生したときには、動作が制限されない」との特定事項を備えるといえる。

(イ)遊技機において、各種の異常状態が発生し得ること、また異常状態が発生した際に作動の制限を行うことは、例えば引用例2にも記載されているように技術常識である。当該技術常識を考慮すれば、引用例1に異常状態に関する記載がないとしても、引用発明の遊技機においても、異常状態が発生した際に何らかの作動の制限を行うことは自明である。そうすると、引用発明において、異常状態が発生した際に、異常状態の種別に応じて、キャラクタ体(可動体)の動作を制限又は非制限とすること、すなわち、相違点2に係る本願補正発明の特定事項となすことは、当業者が引用例2の記載事項に基づいて容易になし得たことである。

ウ 相違点3について検討する。
(ア)可動体を有する遊技機において、可動体の原点位置検出を行う際に、原点位置検出が無い場合に、検出動作を原点位置検出があるまで、所定回数を上限として繰返し行い(リトライ処理)、所定回数に達しても原点位置検出がない場合にエラー処理とすることは、本願出願前に周知(以下「周知技術」という。例.特開2016-36513号公報(特に【0331】の「フォトセンサ93による原点位置検出がない場合(ステップ5103でNo)、CPU321は、エラーが発生したとして、変数RTに1を加算する(ステップ5104)。かかる変数RTは、エラー回数をカウントするものである。」との記載、【0334】の「このような処理を、変数RTが閾値SH1よりも大きくなるか原点位置検出があるまで、繰り返し行う。なお、ここにいう閾値SH1は、一定回数(例えば10回等)の値を事前に設定することが考えられる。」との記載、【0335】の「そして、変数RTが閾値SH1よりも大きくなっても原点位置検出がない場合(ステップ5105でYes)、CPU321は、エラー処理を行い(ステップ5108)、終了する。」との記載参照。)、特開2011-234872号公報(特に【請求項8】の「前記回収手段は、演出可動体が原点領域に回収されない場合に、リトライ処理を一回又は複数回実行するよう構成され、」との記載、【0158】の「異常が認められる場合には、リトライ処理に移行し、それでも異常が解消しない場合には、異常フラグER=1とする。」との記載参照。)、特開2013-135763号公報(特に【0229】の「複数回(図例では3回)のリトライ処理を行なって、初期位置PPや原点位置OPに復帰できない場合に、可動役物異常フラグをONして、その後の可動役物の演出を行なわないようにした・・・」との記載参照。))である。

(イ)引用発明と周知技術とは、可動体の原点位置検出を行う遊技機で共通するところ、当業者であれば周知技術を引用発明に適用することは適宜なし得ることである。具体的には、引用発明において、キャラクタ体を原位置に復帰させる原位置復帰処理を行なう際に、1回のみ検出動作を実行しただけでは、キャラクタ体を原位置で検出できず、原位置に復帰できない場合があり得ることが想定できる。
そうすると、周知技術に接した当業者であれば、引用発明において、原位置復帰処理を行う際に、1回のみ検出動作を実行し、キャラクタ体を原位置で検出できず、原位置に復帰できない場合に、所定回数繰返し検出動作を実行するようになすことは適宜なし得たことである。
してみると、引用発明において、相違点3に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

エ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果及び周知技術の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

オ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、以下のとおり概略主張している。
「(4)本願発明と引用文献に記載された発明との比較
・・・略・・・
しかし、引用文献1の「フォトセンサ正常報知処理」は、請求項1に係る発明の「第2動作制御」に相当するものではない。すなわち、引用文献1に記載された「フォトセンサ正常報知処理」は、原位置復帰処理(原位置時原位置復帰処理、原位置外時原位置復帰処理)において、フォトセンサが正常であることを確認したキャラクタ体について動作(表示領域前面側への出現動作)をさせて報知するものに過ぎない。請求項1に係る発明における上記の(d)の構成要素の「第2動作制御」は可動体を動作させて可動体が正常に動作可能であることを確認するものであり、引用文献1の「フォトセンサ正常報知処理」が「第2動作制御」に相当しないことは明らかである。・・・」

(イ)上記(3)(e)で説示したとおり、引用発明の「フォトセンサ正常報知処理」も、本願補正発明の「第2動作制御」も、ともに、可動体が原点位置に正常に復帰したことを生産ラインの作業者に確認させやすくすることで一致するから、審判請求人の主張については採用することができない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成30年11月22日に提出された手続補正書により補正された請求項1及び2に係る発明が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1.特開2007-195589号公報
引用文献2.特開2016-131789号公報
引用文献3.特開2010-233862号公報

本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に、引用文献2記載の技術思想、引用文献3に見られる周知技術を採用することにより当業者が容易に推考できたものである。

3 引用例
(1)引用例1(引用文献1)及び引用例2(引用文献2)は、上記第2〔理由〕3(2)ア及びイに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2〔理由〕1(1))は、本願補正発明(上記第2〔理由〕3(1))から、「前記第1動作制御を行った後に前記第2動作制御を行う際に、前記第1動作制御を行った後に前記可動体が前記原点位置に位置しない場合に前記第1動作制御を再度行い、さらに前記第1動作制御を所定回繰り返し行った場合に前記第2動作制御を行わないようにし、」(上記相違点3)という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記相違点1及び2でのみ相違するから、本願発明も上記第2〔理由〕3(5)ア及びイで示した理由と同様の理由により、当業者が、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基いて、容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-10 
結審通知日 2020-01-14 
審決日 2020-01-27 
出願番号 特願2016-226917(P2016-226917)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 赤坂 祐樹
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 塩川 誠人  
代理人 岩壁 冬樹  
代理人 井伊 正幸  
代理人 眞野 修二  

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