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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B |
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管理番号 | 1361042 |
審判番号 | 不服2019-5885 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-07 |
確定日 | 2020-03-19 |
事件の表示 | 特願2016-183208「三次元データ生成装置及び三次元データ生成方法、並びに三次元データ生成装置を備えた監視システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月29日出願公開、特開2018- 48839〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年9月20日の特許出願であって、平成30年8月24日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日に意見書が提出され、平成31年1月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、同年2月19日に拒絶査定の謄本が送達された。 これに対して、令和元年5月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされ、その後、同年8月2日に上申書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年5月7日にされた補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正により、特許請求の範囲が補正された。本件補正前及び本件補正後の請求項1の記載は、以下のとおりである。下線は補正箇所を示す。 (1)本件補正前 「観察領域に存在する物体を認識するための三次元データを生成する三次元データ生成装置であって、 前記観察領域を測定する三次元センサの測定データに基づき、前記観察領域に設定される直交三軸座標系における前記物体の測定座標を取得する測定座標取得部と、 前記直交三軸座標系のXY平面に平行な基準面を前記観察領域に定めるとともに、該基準面を複数の区画に等分し、該複数の区画のうち、前記物体の前記測定座標のXY座標値が含まれる区画に、同じ前記測定座標のZ値を該区画の代表高さとして与える区画情報作成部と、 を具備し、 前記複数の区画の各々の、前記基準面における位置と寸法と前記代表高さとを用いて、前記観察領域の三次元データを生成する、三次元データ生成装置。」 (2)本件補正後 「観察領域に存在する物体を認識するための三次元データを生成する三次元データ生成装置であって、 前記観察領域を測定する三次元センサの測定データに基づき、前記観察領域に設定される直交三軸座標系における前記物体の測定座標を取得する測定座標取得部と、 前記直交三軸座標系のXY平面に平行な基準面を前記観察領域に定めるとともに、該基準面を、要求される三次元データの精度又は許容される死角の大きさに応じて設定した寸法を各々に有する複数の区画に等分し、該複数の区画のうち、前記物体の前記測定座標のXY座標値が含まれる区画に、同じ前記測定座標のZ値を該区画の代表高さとして与える区画情報作成部と、 を具備し、 前記複数の区画の各々の、前記基準面における位置と前記寸法と前記代表高さとを用いて、前記観察領域の三次元データを生成する、三次元データ生成装置。」 2 本件補正の目的 本件補正は、請求項1に係る発明の「複数の区画」が、「要求される三次元データの精度又は許容される死角の大きさに応じて設定した寸法を各々に有する」ことを限定するものである。また、本件補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 3 独立特許要件についての判断 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献及びその記載事項 ア 原査定の拒絶理由で引用され、本願の出願日より前に公開された特開2005-157635号公報には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【0006】 本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、監視空間内において人が存在する場所によらず、精度良く混雑度を計測できる混雑度計測装置を提供することを目的とする。」 「【0027】 (第1の実施の形態) 図1は、本発明の第1の実施の形態の混雑度計測装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、混雑度計測装置10は、監視空間を撮像する複数のカメラ12と、複数、例えば2台のカメラ12により得られた撮像画像から監視空間の三次元情報を算出する三次元情報算出部14と、三次元情報をカメラを基準とした座標系から監視空間を基準とした座標系に変換する座標変換部16と、基準状態における監視空間の三次元情報を基準情報として記憶しておく基準情報記憶部18と、基準情報記憶部18に記憶されている基準情報と順次算出される三次元情報とを比較して人が存在する領域を抽出する領域抽出部20と、抽出された領域に基づいて混雑度を算出する混雑度算出部22とを有する。」 「【0030】 座標変換部16は、三次元情報算出部14により算出された三次元情報を、カメラを基準としたカメラ座標系から監視空間を基準とした監視空間座標系に変換する機能を有する。監視空間座標系は、監視空間の床面をU軸、V軸からなる平面座標系で表し、床面からの高さをH軸で表した座標系である。監視空間座標系は実空間座標系ということができ、監視空間情報は実空間情報ということができる。 【0031】 基準情報記憶部18は、監視空間に人が存在しない基準状態における監視空間の三次元情報を基準情報として記憶する。ここで、記憶される三次元情報は、監視空間座標系の三次元情報である。なお、基準状態とは、ある基準時刻における監視空間の状態である。監視空間が店舗等の場合には、基準時刻は、例えば、監視空間内に人が存在しない営業時間外である。」 「【0040】 図3は、画像の類似性の評価方法について説明するための図である。今、左画像30を基準とし、左画像30をn×m画素のサイズのブロック34の単位に分割し、分割されたブロックごとに右画像32中より対応する領域を探索し、視差dを求める。対応領域決定のための類似度評価式として、 C=Σ|Li-Ri| を用いる。ここで、Li、Riは、各々左ブロック34、右ブロック36内のi番目の画素における輝度を表わしている。探索範囲38にわたって前記右ブロック36を1画素ずつ移動しながら類似度評価値Cを計算し、類似度評価値Cが最小となる位置を対応領域として決定する。このような類似度評価を左画像30のブロック毎に行うことによって、左画像30の全ブロックの視差あるいは前述の式により変換した距離z等の三次元情報を求めることができる。 【0041】 以上のように、三次元情報算出部14は、ステレオ画像処理によって、撮像画像から監視空間の三次元情報を算出することができる。なお、ステレオ画像処理による三次元計測方法としては上述の方法以外にも様々な方法が提案されており、本発明は上述の三次元計測方法に限定されるものではない。 【0042】 三次元情報算出部14により、監視空間の三次元情報が得られると、座標変換部16は、監視空間内の三次元情報をカメラ座標系(X,Y,Z)から監視空間座標系(U,V,H)に変換する。 【0043】 図4および図5は、カメラ12を基準とした座標系から監視空間を基準とした座標系への三次元情報の変換について説明するための図である。カメラ座標系と監視空間座標系は図4に示す位置関係で配置されていて、X軸とU軸とは平行である。また、図5に示すように、カメラ12は監視空間の床面から高さHcamに設置されており、物体40の光軸z方向の距離がz1、高さをhとしたときの座標変換式について説明する。以下の説明では、監視空間の床面を基準面42という。 【0044】 点(X,Y)に物体40が撮像され、また、物体40が存在しないときに点(X,Y)に撮像されている基準面42までの光軸方向の距離をz0とする。このとき、物体40の高さhは、h=Hcam×(1-Z1/Z0)として算出できる。 【0045】 また、カメラ12の直下を原点として物体40までのV軸方向の距離vは、v={Z1-(Hcam-h)cosθ}/sinθとなる。 【0046】 一方、物体40のU軸方向の位置uは、カメラ座標系XとZから算出される。すなわち、カメラ12から距離Zの位置での水平撮像範囲をWとし、撮像面の水平サイズをXWとすると、u=X/XW×Wとなる。以上の式により、座標変換部16は、三次元情報をカメラ座標系(X,Y,Z)から監視空間座標系(U,V,H)に変換する。 【0047】 図6は、監視空間の基準面42を分割した領域ごとの高さ分布を示す図である。図6に示すように、基準面42を所定の大きさに区切って小領域44に分割し、それぞれの小領域に存在する物体46の高さの高さ代表値を算出し、高さ分布H(U,V)を作成する。高さ代表値の決定方法としては、例えば、各小領域に属する物体46のうち最も高いものを選択する。」 「【0051】 最後に、混雑度算出部22は、領域抽出部20により抽出した人が存在する領域から監視空間の混雑度を算出する。 【0052】 人が存在する領域であると判定された小領域(U,V)の個数を算出し、これを混雑度の判定に用いる。つまり、抽出された領域が多いときは混雑度が高く、少ないときは混雑度が低いと判定する。また、混雑度レベルを数段階に設定しておき、人が存在するとして抽出された領域の個数に応じて混雑度レベルを判定し、出力するようにしてもよい。」 「【図4】 」 「【図6】 」 イ 上記記載から、引用文献には、次の事項が認められる。 (ア)混雑度計測装置10は、監視空間内において人が存在する場所によらず、精度良く混雑度を計測できるものである。(【0006】) (イ)混雑度計測装置10は、監視空間を撮像する複数のカメラ12と、複数台のカメラ12により得られた撮像画像から監視空間の三次元情報を算出する三次元情報算出部14と、三次元情報をカメラを基準とした座標系から監視空間を基準とした座標系に変換する座標変換部16と、監視空間に人が存在しない基準状態における監視空間の三次元情報を基準情報として記憶しておく基準情報記憶部18と、基準情報記憶部18に記憶されている基準情報と順次算出される三次元情報とを比較して人が存在する領域を抽出する領域抽出部20と、抽出された領域に基づいて混雑度を算出する混雑度算出部22とを有する。(【0027】、【0031】) (ウ)座標変換後の監視空間の三次元情報は、監視空間の床面をU軸、V軸からなる平面座標系とし、床面からの高さをH軸とした直交座標系で表される。(【0027】、【0030】、【0042】-【0046】、【図4】) (エ)監視空間の床面である基準面42を所定の大きさに区切って小領域44に分割し、それぞれの小領域44に存在する物体46の高さの代表値を算出して高さ分布H(U,V)を作成する。(【0043】、【0047】) (オ)小領域44は等分された複数の区画である。(【0047】、【図6】) (カ)監視空間の三次元情報は、基準面42における位置(U,V)と、それぞれの小領域44に存在する物体の高さの代表値Hとを含む情報である。(【0047】、【図6】) (キ)混雑度算出部22は、人が存在する領域であると判定された小領域(U,V)の個数を算出し、抽出された領域が多いときは混雑度が高く、少ないときは混雑度が低いと判定する。(【0051】-【0052】) ウ したがって、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「監視空間内において人が存在する場所によらず、精度良く混雑度を計測できる混雑度計測装置10であって、 混雑度計測装置10は、監視空間を撮像する複数のカメラ12と、複数台のカメラ12により得られた撮像画像から監視空間の三次元情報を算出する三次元情報算出部14と、三次元情報をカメラを基準とした座標系から監視空間を基準とした座標系に変換する座標変換部16と、監視空間に人が存在しない基準状態における監視空間の三次元情報を基準情報として記憶しておく基準情報記憶部18と、基準情報記憶部18に記憶されている基準情報と順次算出される三次元情報とを比較して人が存在する領域を抽出する領域抽出部20と、抽出された領域に基づいて混雑度を算出する混雑度算出部22とを有し、 座標変換後の監視空間の三次元情報は、監視空間の床面をU軸、V軸からなる平面座標系とし、床面からの高さをH軸とした直交座標系で表され、 監視空間の床面である基準面42を所定の大きさに等分された複数の区画である小領域44に分割し、それぞれの小領域44に存在する物体46の高さの代表値を算出して高さ分布H(U,V)を作成し、 監視空間の三次元情報は、基準面42における位置(U,V)と、それぞれの小領域44に存在する物体の高さの代表値Hとを含む情報であり、 混雑度算出部22は、人が存在する領域であると判定された小領域(U,V)の個数を算出し、抽出された領域が多いときは混雑度が高く、少ないときは混雑度が低いと判定する、 混雑度計測装置10。」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「監視空間」は、本件補正発明の「観察領域」に相当する。また、引用発明の「高さ分布H(U,V)」は、「監視空間の三次元情報」に含まれる情報であり、それを用いて「監視空間」における「人が存在する領域を抽出」することは、「三次元情報」というデータで「監視空間」に存在する物体を認識することに他ならないから、引用発明の「高さ分布H(U,V)」は、本件補正発明の「観察領域に存在する物体を認識するための三次元データ」に相当する。 イ 引用発明の「混雑度計測装置10」は、「監視空間の三次元情報を算出する三次元情報算出部14」や「座標変換部16」を有し、「監視空間の三次元情報」に含まれる「高さ分布H(U,V)」を算出するものであるから、引用発明の「混雑度計測装置10」は、本件補正発明の「三次元データ生成装置」に相当する。 ウ 引用発明の「監視空間を撮像する複数のカメラ12」は、「監視空間の三次元情報を算出する」ための「撮像画像」を得るためのものであって、本件補正発明の「観察領域を測定する三次元センサ」に相当するから、引用発明の「監視空間を撮像する複数のカメラ12と、複数台のカメラ12により得られた撮像画像から監視空間の三次元情報を算出する三次元情報算出部14と、三次元情報をカメラを基準とした座標系から監視空間を基準とした座標系に変換する座標変換部16」は、本件補正発明の「観察領域を測定する三次元センサの測定データに基づき、観察領域に設定される直交三軸座標系における物体の測定座標を取得する測定座標取得部」に相当する。 エ 引用発明では、「監視空間の三次元情報は、監視空間の床面をU軸、V軸からなる平面座標系とし、床面からの高さをH軸とした直交座標系で表され」るから、このようなUVH直交座標系におけるUV平面を監視空間の床面とすることは、本件補正発明の「直交三軸座標系のXY平面に平行な基準面を観察領域に定める」ことに相当する。 オ 引用発明の「基準面42」は本件補正発明の「基準面」に、「所定の大きさに等分された複数の区画である小領域44」は「寸法を各々に有する複数の区画」に、それぞれ相当するから、引用発明の「監視空間の床面である基準面42を所定の大きさに等分された複数の区画である小領域44に分割し」と、本件補正発明の「基準面を、要求される三次元データの精度又は許容される死角の大きさに応じて設定した寸法を各々に有する複数の区画に等分し」とは、ともに、「基準面を、寸法を各々に有する複数の区画に等分し」の点で共通する。 カ 引用発明の「それぞれの小領域44に存在する物体46の高さの代表値を算出して高さ分布H(U,V)を作成し」は、(U,V)の値が存在する小領域44に対して、(U,V)に対応する代表高さHをプロットすることを意味するから、本件補正発明の「複数の区画のうち、物体の測定座標のXY座標値が含まれる区画に、同じ前記測定座標のZ値を該区画の代表高さとして与える」に相当する。 キ 引用発明の「混雑度計測装置10」は、「監視空間の床面である基準面42を所定の大きさに等分された複数の区画である小領域44に分割し、それぞれの小領域44に存在する物体46の高さの代表値を算出して高さ分布H(U,V)を作成」するから、そのための手段を備えていると認められる。そして、その手段は、本件補正発明の「区画情報作成部」に相当する。 ク 引用発明の「監視空間の三次元情報」は、「基準面42における位置(U,V)と、小領域44毎の高さの代表値H」の情報を含むものであって、「小領域44」は「所定の大きさに等分された複数の区画」という寸法を有するものであるから、「高さの代表値H」は、「小領域44」の「所定の大きさ」に依存するものである。 よって、引用発明の「監視空間の三次元情報は、基準面42における位置(U,V)と、それぞれの小領域44に存在する物体の高さの代表値Hとを含む情報である」は、本件補正発明の「前記複数の区画の各々の、前記基準面における位置と前記寸法と前記代表高さとを用いて、前記観察領域の三次元データを生成する」に相当する。 (4)一致点及び相違点 本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「観察領域に存在する物体を認識するための三次元データを生成する三次元データ生成装置であって、 前記観察領域を測定する三次元センサの測定データに基づき、前記観察領域に設定される直交三軸座標系における前記物体の測定座標を取得する測定座標取得部と、 前記直交三軸座標系のXY平面に平行な基準面を前記観察領域に定めるとともに、該基準面を、寸法を各々に有する複数の区画に等分し、該複数の区画のうち、前記物体の前記測定座標のXY座標値が含まれる区画に、同じ前記測定座標のZ値を該区画の代表高さとして与える区画情報作成部と、 を具備し、 前記複数の区画の各々の、前記基準面における位置と前記寸法と前記代表高さとを用いて、前記観察領域の三次元データを生成する、三次元データ生成装置。」 <相違点> 「複数の区画」の「寸法」が、本件補正発明は「要求される三次元データの精度又は許容される死角の大きさに応じて設定した寸法」であるのに対し、引用発明は、所定の大きさに等分された寸法であるが、所定の大きさを決める基準等は明らかでない点。 (5)相違点についての判断 引用発明の「高さ分布H(U,V)」は、「それぞれの小領域44に存在する物体46の高さの代表値を算出して」作成されたものである。そして、高さの代表値とは、例えば小領域44に存在する複数の物体46の中で最も高いものの高さである(引用文献1の段落【0047】)。 そうすると、小領域44の寸法が、その小領域44の中に物体46が多数存在し得るほど大きい場合、その多数の物体46の中で最も高いものがその小領域にとどまる限り、それ以外の物体46がその小領域44から出て行くか否かに関係なく、その小領域44に存在する物体46の高さの代表値は変化しない。逆に、小領域44の寸法が、その小領域44の中に物体46が一つしか存在し得ないほど小さい場合、その一つの物体46がその小領域44から出て行けば、その小領域44に存在する物体46の高さの代表値は直ちに変化する。小領域44に新たな物体46が入ってくる場合も、同様である。 すなわち、「それぞれの小領域44に存在する物体46の高さの代表値を算出して」作成された「高さ分布H(U,V)」が、物体46の小領域44への出入りをどれほど精度よく反映するか、換言すれば、小領域44に人が存在するか否かをどれほど精度よく反映するかは、小領域44の寸法に依存する。 ところで、引用発明の「混雑度算出部22」は、「人が存在する領域であると判定された小領域(U,V)の個数を算出し、抽出された領域が多いときは混雑度が高く、少ないときは混雑度が低いと判定する」ものである。したがって、引用発明が「監視空間内において人が存在する場所によらず、精度よく混雑度を計測できる」ためには、小領域44に人が存在するか否かを所望の精度で判定しなければならない。 前述のとおり、「高さ分布H(U,V)」が小領域44に人が存在するか否かをどれほど精度よく反映するかは、小領域44の寸法に依存するのであるから、引用発明では、「高さ分布H(U,V)」が小領域44に人が存在するか否かを所望の精度で反映するように、「小領域44」の寸法が定められていると認められる。 これは、「高さ分布H(U,V)」(本件補正発明の「三次元データ」に相当する。)に要求される精度に応じて「小領域44」(本件補正発明の「複数の区画」に相当する。)の寸法が定められていることにほかならない。 したがって、本件補正発明と引用発明との相違点は、実質的な差異ではない。 (6)請求人の主張 請求人は上申書において、概略、a)引用文献1は、小領域44の「大きさ」を用いて「物体を認識」することを開示も示唆もしていない、b)引用発明1の小領域44の大きさは、『要求される三次元データの精度又は許容される視覚の大きさに応じて設定した寸法』ではない、c)引用発明1は、取得した監視空間の三次元情報が死角を認識できてしまうようなものでは、混雑度を正確に計測できないため、個々の小領域44は、代表高さHを有することを前提とした、死角を無視できるような大きさに設定されるものであって、小領域44の寸法を考慮したデータが生成されないので、物体間の距離を把握することはできない、との主張をしている。 しかしながら、まず、a)に関し、上記(3)のア及びキに記載したとおり、引用発明は、「所定の大きさに等分された複数の区画」である「小領域44」毎に「高さの代表値H」をプロットした三次元情報を用いて、「人が存在する領域を抽出」することにより、物体を認識するものといえるから、引用発明は、小領域44の大きさを用いて物体を認識するものといえる。 次に、b)に関し、上記(5)に記載したとおり、引用発明の「小領域44」の寸法は、要求される三次元データの精度に応じて設定した寸法であるといえる。 さらに、c)に関し、上記(3)のキに記載したとおり、引用発明においても、小領域44毎の高さの代表値Hを含む三次元情報が得られていることから、小領域44の寸法を考慮したデータが生成されているといえる。また、請求人は、本件補正発明は、物体間の距離を把握できるものであると主張するが、本件補正発明において、「要求される三次元データの精度に応じて設定した寸法を各々に有する複数の区画」を用いることは特定されているものの、「要求される三次元データの精度」が、どの程度のものなのかは特定されておらず、必ずしも物体間の距離を把握できるような三次元データであるとは限らないため、上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (7)独立特許要件についての判断のむすび 上記で検討したとおり、本件補正発明は、引用発明に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 補正の却下の決定のむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(1)に記載したとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、次の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、次の引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献:特開2005-157635号公報(再掲) 3 引用文献の記載事項 引用文献の記載事項は、上記第2の[理由]の2の(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]の2で検討した本件補正発明から、「複数の区画」が「要求される三次元データの精度又は許容される死角の大きさに応じて設定した寸法を各々に有する」という限定を削除したものである。 そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記の限定を付加した本件補正発明は、上記第2の[理由]の2に記載したとおり、引用発明と相違しないものである。 そうすると、本願発明も、引用発明と相違しないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-01-08 |
結審通知日 | 2020-01-14 |
審決日 | 2020-01-28 |
出願番号 | 特願2016-183208(P2016-183208) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G01B)
P 1 8・ 575- Z (G01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梶田 真也、川村 大輔 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 関根 裕 |
発明の名称 | 三次元データ生成装置及び三次元データ生成方法、並びに三次元データ生成装置を備えた監視システム |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 廣瀬 繁樹 |