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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1361108
審判番号 不服2019-5761  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-26 
確定日 2020-03-26 
事件の表示 特願2016-559432「信号再送装置、方法及び通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日国際公開、WO2015/149252、平成29年 6月15日国内公表、特表2017-516355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)3月31日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成29年10月31日付け:拒絶理由通知書
平成29年12月18日 :意見書,手続補正書の提出
平成31年 1月25日付け:拒絶査定
平成31年 4月26日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提


第2 平成31年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月26日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は,平成29年12月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「第一ユーザ装置に構成され,第二ユーザ装置とD2D(Device to Device)通信又はD2Dディスカバリーを行う信号送信装置であって,
信号を最初に送信するためにランダムに選択されたリソースと,周波数ホッピングパターンとに基づいて,前記信号を送信するリソースを確定するためのリソース確定ユニット;及び
確定された前記リソースに基づいて,前記第二ユーザ装置に前記信号を送信するための信号送信ユニットを含む,装置。」
との発明(以下,「本願発明」という。)を,
「第一ユーザ装置に構成され,第二ユーザ装置とD2D(Device to Device)通信又はD2Dディスカバリーを行う信号送信装置であって,
信号を最初に送信するためにランダムに選択されたリソースと,周波数ホッピングパターンとに基づいて,前記信号を送信するリソースを確定するためのリソース確定ユニット;及び
確定された前記リソースに基づいて,前記第二ユーザ装置に前記信号を送信するための信号送信ユニットを含み,
前記周波数ホッピングパターンとしてPUSCHホッピング類型1,又は,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンはセル専用又は共通である,
装置。」(下線は補正箇所を示す。)
との発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2 補正の適否

(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
請求項1についての上記補正は,本件補正前の請求項1の「周波数ホッピングパターン」について,「前記周波数ホッピングパターンとしてPUSCHホッピング類型1,又は,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンはセル専用又は共通である」との限定を付して,特許請求の範囲を減縮するものである。したがって,上記補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであり,同条第3項,同第4項の規定に違反するところはない。

(2)独立特許要件
上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。

ア 補正後の発明
補正後の発明は,上記1の「補正後の発明」のとおりのものと認める。

イ 引用発明,周知技術及び技術常識
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用された特表2012-507974号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0004】
端末は,また,別の端末とピア・ツー・ピアで通信することができる。端末の電源が入った時,または新しいエリアに移動したばかりの時には,その端末は,別の端末が存在していることを知ることができない。端末は,(i)その端末の存在を別の端末に知らせるためにピア発見信号(peer discovery signal)を送信すること,および(ii)それらの存在を確かめるために別の端末からのピア発見信号を受信することを含む発見プロセスを実行しうる。発見を効率良く実行することが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
時間ホッピングまたは時間および周波数ホッピングを使用して信号(例えば,ピア発見信号)を送信するための技術が本明細書に記述される。その技術は,半二重(half-duplex)動作,および,ある端末からの強い信号が別の端末からの弱い信号をマスクしうる感度低下(desense)シナリオにおいて,端末が効率的に別の端末を検出することを可能にしうる。
(中略)
【0010】
本明細書に記述される送信技術はWWAN,WMAN,WLANなどの様々な無線通信ネットワークに使用される。「ネットワーク」および「システム」という用語は,しばしば交換可能に使用される。WWANは符号分割多元接続(CDMA)ネットワーク,時分割多元接続(TDMA)ネットワーク,周波数分割多元接続(FDMA)ネットワーク,直交FDMA(OFDMA)ネットワーク,単一キャリアFDMA(SC-FDMA)ネットワークなどでありうる。CDMAネットワークは,ユニバーサル地上波無線アクセス(UTRA),cdma2000などの無線テクノロジを実施しうる。TDMAネットワークは,汎ヨーロッパデジタル移動通信システム(GSM(登録商標))などの無線テクノロジを実施しうる。OFDMAネットワークは,次世代UTRA(E-UTRA),ウルトラモバイルブロードバンド(UMB:Ultra Mobile Broadband),フラッシュOFDM(Flash-OFDM)(登録商標)などの無線テクノロジを実施しうる。ロング・ターム・エボリューション(LTE)は,ダウンリンク上でOFDMAを使用し,アップリンク上でSC-FDMAを使用するE-UTRAを用いる,「第3世代パートナーシッププロジェクト」(3GPP)の近く公開されるリリースである。WLANは,IEEE 802.11規格群(Wi-Fiとも呼ばれる)の1つまたは複数の規格,ハイパーLAN(HiperLAN)などを実施しうる。WMANは,IEEE 802.16規格群(WiMAXとも呼ばれる)の1つまたは複数の規格を実施しうる。本明細書に記述される送信技術は,上で言及された無線テクノロジに加えて別の無線テクノロジに使用されうる。
【0011】
図1は,任意の数の基地局,任意の数の端末,および任意の数の別のネットワークエンティティを含みうる無線通信ネットワーク100を示す。簡潔さのために,1つの基地局110および3つの端末120a,120b,120cだけが図1に示される。基地局110は複数の端末と通信する固定局であり,アクセスポイント,ノードBおよび発展型ノードB(eNB)などとも呼ばれうる。基地局110は通信カバレッジを特定の地理的エリアに提供する。「セル」という用語は,基地局のカバレッジエリアおよび/またはこのカバレッジエリアをサービスする基地局のサブシステムを指しうる。
【0012】
端末120はネットワーク全体に分散されることができ,各端末は固定またはモバイルでありうる。端末は,アクセス端末,移動局,ユーザ機器(UE),加入者ユニット,局などとも呼ばれうる。端末は,セルラ電話,携帯情報端末(PDA),無線モデム,無線通信デバイス,ハンドヘルドデバイス,ラップトップコンピュータ,コードレス電話,無線ローカルループ(WLL)局などでありうる。端末は基地局と通信する。あるいは,または,そのうえ,端末は別の端末とピア・ツー・ピアで通信しうる。
(中略)
【0015】
リソースユニットは利用可能な時間および周波数ユニットに基づいて定義されうる。リソースユニットは,セグメント,時間周波数ブロック,リソースブロック,タイルなどとも呼ばれうる。リソースユニットは,送信のために端末によって使用されうる時間および周波数リソースの基本単位でありうる。ある設計において,リソースユニットは,図2に示されるように,1つのスロットのS個のシンボル期間において1つのサブキャリアセットをカバーする。この設計において,M個のリソースユニットが各スロットにおいて利用可能であり,トータルM×N個のリソースユニットが1つのピア発見フレームにおいて利用可能である。同数のリソースユニットがピア発見フレームの各スロットにおいて利用可能でありうる。ピア発見フレーム内の各リソースユニットは,サブキャリアセットのインデックスmおよびスロットのインデックスnで構成されるインデックス(m,n)によって一意的に識別されうる。
(中略)
【0018】
ピア・ツー・ピア通信について,端末は,周期的にピア発見信号をピア発見フレーム(下の記述の大部分において単純に「フレーム」と呼ばれる)において送信することによって,その存在をその近くにいる別の端末に知らせうる。端末は,また,その近くに存在する別の端末の存在をこれらの別の端末によって送信されるピア発見信号に基づいて検出しうる。
(中略)
【0019】
ある態様において,端末は,半二重動作および感度低下による上記問題に対抗するために,時間ホッピングに基づいて選択された異なる複数のスロットで,そのピア発見信号を送信しうる。
(中略)
【0033】
別の態様において,端末は,時間および周波数ホッピングに基づいて選択されたリソースユニット上でそのピア発見信号を送信しうる。ある設計において,異なる複数のリソースユニットは,異なる複数のフレームにおいて,下記のように定義される時間および周波数ホッピング関数に基づいて選択されうる:
【数5】
m_(t+1) = (m_(t)+ Δm)mod M 式(3a)
【0034】
および
【数6】
n_(t+1) = (n_(t)+ Δn)mod N 式(3b)
【0035】
ここで,Δmはオフセット,すなわち,あるフレームから次のフレームへのサブキャリアセットの変化であり,m_(t)はフレームtで使用するために選択されたサブキャリアセットである。
【0036】
一組の方程式(3)において,加法およびモジュロ演算はサイズMおよびNのガロア体において実行されうる。リソースユニット(m_(t),n_(t))はフレームtで使用されうる。初期サブキャリアセットm_(0)および初期スロットn_(0)は,下に記述されるように,第1のフレームt=0に対して様々な方法で選択されうる。
(中略)
【0055】
全てのホッピング設計について,端末はリソースユニット(m_(0),n_(0))上でピア発見信号の第1の送信を行いうる。端末は,リソースユニット(m_(t),n_(t))上でピア発見信号の後続の送信を行いうる。ここで,t=1,2,3…である。スロットのインデックスn_(t)は時間ホッピングを用いてフレーム毎に変化しうる。サブキャリアセットのインデックスm_(t)は周波数ホッピングを用いてフレーム毎に変化しうる。ある時間にわたって異なるスロットおよび起こりうる異なるサブキャリアセットのリソースユニットを使用することは,端末が,より迅速に,別の端末を検出すること,および別の端末によって検出されることを可能にしうる。
【0056】
端末の電源が入った時,または新しいエリアに移動した時,その端末は,そのピア発見信号の送信に使用するための初期サブキャリアセットm_(0)および初期スロットn_(0)を選択しうる。端末はパラメータm_(0)およびn_(0)を様々な方法で選択することができる。ある設計において,端末は,1つのフレーム(例えば,フレームt-L(ここで,Lは1よりも大きい))内の各リソースユニットの受信電力を測定しうる。端末は,フレームt-L内のM×N個のリソースユニットについて,M×N個の受信電力を測定しうる。端末は,次に,最も低い受信電力のリソースユニットを選択しうる。端末は,次に,フレームt-L内の選択されたリソースユニットのサブキャリアセットのインデックスおよびスロットのインデックスに基づいて,フレームtで使用するための初期サブキャリアセットm_(0)および初期スロットn_(0)を決定しうる。端末は,また,各リソースユニットについて,信号対雑音比(SNR)または幾つかの別のメトリック(受信電力の代わりに)を測定する。いかなる場合においても,この設計は,別の端末からの干渉が最も少ないリソースユニットの選択に帰着しうる。別の設計において,端末は,初期サブキャリアセットm_(0)および/または初期スロットn_(0)をランダムに選択しうる。端末は別の方法でもm_(0)およびn_(0)を選択することができる。一般的に,端末は,チャネル状態,端末識別子(ID),擬似ランダム値などのあらゆる情報に基づいてパラメータ(Δm,Δn,m_(0),n_(0)等)のセットを選択しうる。
(中略)
【0068】
図8は時間および周波数ホッピングを用いた,送信のための装置800の設計を示す。装置800は,複数のフレームにおいて送信に使用する異なるリソースユニットを,選択されたソースユニット([当審注]:「ソースユニット」は,「リソースユニット」の誤記と考えられる。)が複数のフレームにおいて異なる時間および周波数ロケーションに位置するように選択するためのモジュール812,複数のフレームの選択されたリソースユニット上で信号(例えば,ピア発見信号)を送信するためのモジュール814,および,送信に使用されなかったスロットにおいて別の端末かの信号(例えば,ピア発見信号)([当審注]:「別の端末かの信号」は,「別の端末からの信号」の誤記と考えられる。)を検出するためのモジュール816を含む。」

上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,

(ア)【0018】によれば,端末は,その端末の存在を別の端末に知らせるためにピア発見信号を送信するものであり,また,近くに存在する別の端末の存在を検出するために別の端末からのピア発見信号を受信し検出するものといえる。また,【0068】には,時間および周波数ホッピングを用いた,送信のための装置800が,ピア発見信号の送信,及び別の端末からのピア発見信号の検出をすることが記載されている。したがって,【0068】に記載された時間および周波数ホッピングを用いた,送信のための装置800は,上述した【0018】に記載された端末において構成される装置であるといえる。
また,【0010】の記載によれば,引用例1に記述される送信技術は,ロング・ターム・エボリューション(LTE)において使用されうるといえる。してみると,上述した,【0018】に記載された端末及び別の端末は,ロング・ターム・エボリューション(LTE)規格に準拠した端末であるといえる。
また,【0012】には,端末は別の端末とピア・ツー・ピアで通信しうること,及び,端末はユーザ機器(UE)とも呼ばれうることが記載されている。

したがって,引用例1には,「LTE規格に準拠したユーザ機器に構成され,LTE規格に準拠した別のユーザ機器とピア・ツー・ピア通信又はピア発見信号の送信及び検出を行う装置」について記載されていると認める。

(イ)【0055】には,端末は,リソースユニット(m_(0),n_(0))上でピア発見信号の第1の送信を行いうること,リソースユニット(m_(t),n_(t))上でピア発見信号の後続の送信を行いうることが記載されている。また,【0056】には,端末は,初期サブキャリアセットm_(0),及び初期スロットn_(0)をランダムに選択しうることが記載されている。してみると,【0055】に記載されたピア発見信号の第1の送信とは,ピア発見信号の最初の送信であり,リソースユニット(m_(0),n_(0))は,ピア発見信号の最初の送信のためのリソースであるといえる。

また,【0018】,【0033】-【0036】によれば,ピア発見フレームt+1のリソースであるm_(t+1)及びn_(t+1)の値は,一つ前のピア発見フレームtのリソースであるm_(t)及びn_(t)の値をパラメータとして用いる時間および周波数ホッピング関数によって算出されるといえる。してみると,当該時間および周波数ホッピング関数を再帰的に用いることにより,ピア発見フレームtのリソースであるm_(t)及びn_(t)の値が,ピア発見フレーム0のリソース,すなわちピア発見信号の最初の送信のためのリソースであるm_(0)及びn_(0)の値に基づいて算出される値といえることは,当業者にとって明らかである。

また,【0068】によれば,時間および周波数ホッピングを用いた,送信のための装置800は,複数のフレームにおいてリソースユニットを選択するモジュール812を含むといえる。そして,上述した【0018】,【0033】-【0036】,【0055】-【0056】に記載された処理は,時間および周波数ホッピングを用いて,複数のピア発見フレームにおいてリソースユニットを選択するための処理であるから,上述した【0068】に記載されたモジュール812は,上述した【0018】,【0033】-【0036】,【0055】-【0056】に記載された処理を実施するためのモジュールであるといえる。

したがって,引用例1には,「ピア発見信号を最初に送信するためのリソースユニットであってランダムに選択しうるリソースユニット(m_(0),n_(0))と,時間および周波数ホッピング関数とに基づいて,所定のピア発見フレームtでピア発見信号の送信に利用されるリソースユニット(m_(t),n_(t))を選択するためのモジュール」について記載されていると認める。

(ウ)【0068】によれば,時間および周波数ホッピングを用いた,送信のための装置800が,複数のフレームの選択されたリソースユニットに基づいてピア発見信号を送信するためのモジュール814を含むといえる。また,【0018】の記載によれば,端末は,その端末の存在を別の端末に知らせるためにピア発見信号を別の端末に送信するものであるといえる。そして,上述した【0068】に記載されたモジュール814は,上述した【0018】に記載された端末において構成されるモジュールといえることは当業者にとって明らかである。

したがって,引用例1には,「選択されたリソースユニットに基づいてLTE規格に準拠した別のユーザ機器にピア発見信号を送信するためのモジュール」について記載されていると認める。

以上を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「LTE規格に準拠したユーザ機器に構成され,LTE規格に準拠した別のユーザ機器とピア・ツー・ピア通信又はピア発見信号の送信及び検出を行う装置であって,ピア発見信号を最初に送信するためのリソースユニットであってランダムに選択しうるリソースユニット(m_(0),n_(0))と,時間および周波数ホッピング関数とに基づいて,所定のピア発見フレームtでピア発見信号の送信に利用されるリソースユニット(m_(t),n_(t))を選択するためのモジュール,及び,選択されたリソースユニットに基づいてLTE規格に準拠した別のユーザ機器にピア発見信号を送信するためのモジュールを含む装置。」

[周知技術及び技術常識]
(ア)周知例1
Intel Corporation,Link-level Analysis of LTE-based D2D Discovery Design(当審仮訳:LTEベースのD2Dディスカバリー設計のリンクレベル解析),3GPP TSG-RAN WG1♯74,R1-132943,[online],2013年8月10日アップロード,インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/
WG1_RL1/TSGR1_74/Docs/R1-132943.zip>(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「・Frequency Hopping. To exploit the benefits of frequency diversity, frequency hopping may be adopted for packet-based D2D discovery. Similar to frequency hopping for PUSCH transmission, two options of hopping pattern design may be employed: type-1 D2D discovery hopping utilizes an explicit hopping pattern; while type-2 D2D discovery hopping uses the subband hopping and mirroring mechanism. In addition, the hopping procedure may follow either intra-subframe or inter-subframe based hopping mode.」(第3葉第20行-同第24行)

(当審仮訳:
・周波数ホッピング。周波数ダイバーシティの利点を活用するために,パケットベースのD2Dディスカバリーのために周波数ホッピングを採用することができる。PUSCH送信のための周波数ホッピングと同様に,ホッピングパターン設計の2つのオプションが採用され得る:タイプ1D2Dディスカバリーホッピングは,明示的ホッピングパターンを利用する一方で,タイプ2D2Dディスカバリーホッピングは,サブバンドホッピング及びミラーリングメカニズムを使用する。さらに,ホッピング手順は,イントラサブフレームまたはインターサブフレームベースのホッピングモードのいずれかに従うことができる。)

(イ)周知例2
LG Electronics,Resource Allocation and UE Behavior for D2D Discovery(当審仮訳:D2Dディスカバリーのためのリソース割り当て及びUE挙動),3GPP TSG-RAN WG1♯76,R1-140337,[online],2014年2月1日アップロード,インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/
WG1_RL1/TSGR1_76/Docs/R1-140337.zip>(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「This contribution addresses the methods of resource allocation and UE behavior for D2D Discovery.
2. Discovery resource configuration
2.1. Basic unit of a discovery signal
(中略)
In defining the discovery resource unit, some frequency hopping allocation can be considered. This can be implemented by using the slot hopping of the current LTE PUSCH, and if multiple subframes are used, frequency hopping across subframes can be additionally considered. Such frequency hopping allocation can be effective in getting the frequency diversity gain as well as in alleviating the in-band emission problem.」(第1葉第11行-同第30行)

(当審仮訳:
この寄書は,D2Dディスカバリーのためのリソース割り当て及びUE挙動の方法を取り上げる。
2.ディスカバリーリソース構成
2.1.ディスカバリー信号の基本ユニット
(中略)
ディスカバリーリソースユニットを定義する際に,いくつかの周波数ホッピング割り当てを考慮することができる。これは,現在のLTE PUSCHのスロットホッピングを使用することによって実施することができ,複数のサブフレームが使用される場合には,複数のサブフレームにわたる周波数ホッピングをさらに考慮することができる。このような周波数ホッピング割り当ては,周波数ダイバーシティ利得を得るのに有効であり,帯域内エミッション問題を緩和するのに有効である。)

(ウ)周知例3
Intel Corporation,Discussion on Resource Allocation Methods for D2D Communication(当審仮訳:D2D通信のためのリソース割り当て方法に関する議論),3GPP TSG-RAN WG1#74bis,R1-134139,[online],2013年9月28日アップロード,インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/
tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_74b/Docs/R1-134139.zip>(以下,「周知例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「2 Peer-to-peer communication in out of network coverage
The one of the most challenging and controversial scenarios for D2D communication is the out of network coverage scenario, when no network, device synchronization and radio resource management function is available. In this scenario, the UE-autonomous or Peer Radio Head (PRH) assisted [2] radio resource management is needed in order to improve communication performance characteristics and avoid collisions. In this scenario, the design of new scheduling/resource allocation method should satisfy the following Public Safety peer-to-peer communication requirements:
(中略)
Proposal 2
・ Multi-TTI transmission instances should be considered and used when possible
・ Narrow bandwidth allocations are used to facilitate longer transmission ranges
・ Frequency hopping and repetitions in time are used to extract time and frequency diversity and potentially randomize interference.
(中略)
4 Resource Allocation for VoIP Services
The VoIP service is critical for Public Safety peer-to-peer operation in out of network coverage scenario. The following factors needs to be taken into account when VoIP service is considered: robustness, link budget, periodicity and latency, half duplex problem. All of these factors can be considered for construction of the peer-to-peer data transmission region resource grid.
4.1 VoIP Link Budget Analysis
From the previous studies in LTE Coverage Enhancement SI/WI it is known that the VoIP traffic has limited coverage in UL relative to DL and therefore link budget enhancement techniques are required [4]. The narrow band TTI bundled transmission with frequency hopping and retransmissions is beneficial for improving link budget characteristics for the VoIP service, due to increased energy per information bit, utilization of both frequency and time diversity. The link level analysis for TTI bundled transmission is shown in Figure 1. The details of link level evaluation assumptions and link budget calculations provided in Appendix A.
(中略)
Appendix A - Link Level Evaluation Assumptions
In this appendix, we provide link level evaluation assumptions that were used for VoIP link budget analysis. The assumptions for link level studies are provided in Table 2 and the example of maximum coupling loss analysis is given in Table 3.

Table 2: PUSCH VoIP AMR 12.2 kbps

」(第1葉第11行-同第16行,第3葉第1行-同第5行,第4葉第1行-同第12行,第9葉第13行-同第25行)

(当審仮訳:
2 ネットワーク圏外のピアツーピア通信
D2D通信に関する最も挑戦的かつ論争を引き起こすシナリオの一つは,ネットワークカバレージの範囲外のシナリオ,すなわちネットワーク,デバイス同期,および無線リソース管理機能が利用可能でない場合のシナリオである。このシナリオでは,UE自律またはピア無線ヘッド(PRH)支援による[2]無線リソース管理が,通信性能の特性を改善し,衝突を回避するために必要である。このシナリオでは,新しいスケジューリング/リソース割り当て方法の設計は,以下の公共安全ピアツーピア通信要件を満たすべきである。
(中略)
提案2
・マルチTTI送信インスタンスを考慮し,可能な場合に使用すべきである。
・狭帯域幅割り当ては,より長い送信範囲を得るために使用される。
・時間および周波数ダイバーシティを引き出し,干渉を潜在的にランダム化するために,周波数ホッピングおよび時間的な繰り返しが使用される。
(中略)
4 VoIPサービスのためのリソース割り当て
VoIPサービスは,ネットワークカバレージ外シナリオにおいて公共安全ピアツーピア動作のために重要である。VoIPサービスが考慮する場合には,次の要因を考慮する必要がある。それは,ロバスト性,リンクバジェット,周期性および待ち時間,半二重問題である。これらの要因のすべては,ピアツーピアデータ送信領域リソースグリッドの構築のために考慮することができる。
4.1 VoIPリンクバジェット解析
LTEカバレッジ拡張SI/WIにおける以前の研究から,VoIPトラフィックは,DLに対してULで限定されたカバレッジを有し,したがって,リンクバジェット拡張技術が必要とされることが知られている[4]。周波数ホッピングおよび再送信を伴う狭帯域TTIバンドル送信は,情報ビット当たりのエネルギーの増加,周波数および時間ダイバーシティの両方の利用に起因して,VoIPサービスのリンクバジェット特性を改善するために有益である。TTIバンドル送信に関するリンクレベル解析は,図1に示されている。リンクレベル評価仮定及びリンクバジェット計算の詳細は付録Aに提供される。
(中略)
付録A-リンクレベル評価仮定
この付録では,VoIPリンクバジェット解析に使用されたリンクレベル評価仮定を提供する。リンクレベル研究の仮定は表2に提供され,最大結合損失分析の例は表3に示されている。

表2:PUSCH VoIP AMR 12.2 kbps

)

(エ)技術常識1
本願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった3GGP規格である「Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical layer procedures (Release 12)([当審仮訳]:発展型汎用地上無線アクセス(E-UTRA);物理レイヤ手順(リリース12)),3GPP TS 36.213 V12.0.0 (2013-12),[online],2013年12月15日アップロード,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/
36.213/36213-c00.zip>には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「8.4 UE PUSCH hopping procedure
The UE shall perform PUSCH frequency hopping if the single bit Frequency Hopping (FH) field in a corresponding PDCCH/EPDCCH with DCI format 0 is set to 1 and the uplink resource block assignment is type 0 otherwise no PUSCH frequency hopping is performed.
(中略)
8.4.1 Type 1 PUSCH hopping
For PUSCH hopping type 1 the hopping bit or bits indicated in Table 8.4-1 determine n_(PRB)(i) as defined in Table 8.4-2. ([当審注]:文中の「n_(PRB)(i)」の「n」は,表記上の理由で「^(?)」(チルダ)が省略されている。)
(中略)
8.4.2 Type 2 PUSCH hopping
In PUSCH hopping type 2 the set of physical resource blocks to be used for transmission in slot n_(s) is given by the scheduling grant together with a predefined pattern according to [3] subclause 5.3.4.」(第118葉第1行-同第4行,第119葉第1行-同第2行,第119葉第11行-同第13行)

(当審仮訳:
8.4 UE PUSCH ホッピングプロシージャー
DCIフォーマット0を有する対応するPDCCH/EPDCCH内の単一ビット周波数ホッピング(FH)フィールドが1に設定され,上りリンクリソースブロック割り当てがタイプ0である場合,UEはPUSCH周波数ホッピングを実行しなければならず,そうでない場合,PUSCH周波数ホッピングは実行されない。
(中略)
8.4.1 タイプ1PUSCHホッピング
PUSCHホッピング・タイプ1の場合,表8.4-1に示されるホッピング・ビットは,表8.4-2に定義されるn_(PRB)(i)を決定する。([当審注]:文中の「n_(PRB)(i)」の「n」は,表記上の理由で「^(?)」(チルダ)が省略されている。)
(中略)
8.4.2 タイプ2PUSCHホッピング
PUSCHホッピングタイプ2では,スロットn_(s)における送信に使用される物理リソースブロックのセットは,[3]条項5.3.4に従って所定のパターンと共にスケジューリンググラントによって与えられる。)

上記の3GGP規格の記載より,「既存のPUSCH周波数ホッピングパターンとして,タイプ1PUSCHホッピング,及びタイプ2PUSCHホッピングが存在する。」ことは技術常識と認める。

(オ)技術常識2
LTE技術について解説した書籍であるErik Dahlman,Stefan Parkvall,Johan Skold,Per Beming著,服部 武,諸橋知雄,藤岡雅宣 監訳,「3G Evolutionのすべて -LTEモバイルブロード方式技術-」,丸善株式会社,平成21年12月25日発行には,以下の事項が記載されている。(著者の「Skold」の「o」は,表記上の理由で「¨」(ウムラウト)が省略されている。また,下線は,当審で付した。) そして,LTE技術について解説した書籍は3GPPの規格等に基づくものであるから,下記の事項はLTEにおける技術常識と認める。

「17.5 PUSCH周波数ホッピング
16章では,VRBの概念と物理リソースブロック(PRB)へVRBマッピングすることにより下りリンクで分散送信する方法,つまり下りリンクの伝送を周波数領域で拡散する方法を述べた.すでに述べたように,下りリンクの分散送信は2つの分離したステップからなっている。(1)連続したVRBペアが周波数の連続したPRBペアにマッピングされないようなVRBからPRBへのマッピング,と(2)リソースブロックベアの2つのリソースブロックがお互いにある周波数ギャップをあけて送信するように各リソースブロックペアを分離する.第2ステップは,スロットベースの周波数ホッピングとみなすことができる.
LTE上りリンクにも,周波数領域で分散された送信を上りリンクでも行うことを許しつつ,VRBの概念を使用することができる.しかしながら,上りリンクでは端末からの送信は常に連続したサブキャリア以上でなければならないため,下りリンク第1ステップの分散送信のような分散した周波数領域リソースブロックペアを分散させることは不可能である.むしろ,上りリンクの分散送信は下りリンクの第2ステップの分散送信と同様である,つまりサブフレーム内の第1と第2スロットで周波数を離すことである.PUSCHにおける上りリンクの分散送信は,より直接的に「PUSCH周波数ホッピング」と称することができる.
PUSCHに定義される上りリンクの周波数ホッピングには2つのタイプがある.
・セル固有のホッピング/ミラーリングパターンによるサブバンドベースのホッピング
・スケジューリング許可にもとづく厳密なホッピング情報によるホッピング」(458ページ5?25行)との記載により,「PUSCH周波数ホッピングにおいて,セル固有のホッピング/ミラーリングパターンによる周波数ホッピングを行うこと」は技術常識と認める。

上記(ア)(イ)(ウ)によれば,D2Dディスカバリーに関する通信,又はD2D通信において,周波数ダイバーシティを得るために周波数ホッピングを採用すること,及び周波数ホッピングパターンとして既存のPUSCH周波数ホッピングパターンを採用することは常套手段である。ここで,(エ)に上述したとおり,「既存のPUSCH周波数ホッピングパターンとして,タイプ1PUSCHホッピング,及びタイプ2PUSCHホッピングが存在する。」ことは,本願の出願日前の3GGP規格(3GPP TS 36.213 V12.0.0(2013-12))に規定されている技術常識である。そうすると,上述した常套手段の「既存のPUSCH周波数ホッピングパターン」が,本願の出願日前の3GGP規格に規定された既存のPUSCH周波数ホッピングパターンである「タイプ1PUSCHホッピング,又はタイプ2PUSCHホッピング」を含むことは自明である。
したがって,「D2Dディスカバリーに関する通信,又はD2D通信において,周波数ダイバーシティを得るために周波数ホッピングを採用すること,及び周波数ホッピングパターンとして,タイプ1PUSCHホッピング,又はタイプ2PUSCHホッピングを採用すること。」は周知技術(以下,「周知技術1」という。)であると認める。

ウ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,

(ア)引用発明の「LTE規格に準拠したユーザ機器」,「LTE規格に準拠した別のユーザ機器」を,それぞれ,「第一ユーザ装置」,「第二ユーザ装置」と称することは任意である。

また,「ピア・ツー・ピア通信」が,対等な機能を有する端末装置が直接又は別の端末装置を中継して通信を行う技術であることは技術常識である。一方,「D2D(Device to Device)通信」とは,3GPPのRelease 12 においてLTE規格に取り込まれた通信技術であって,LTEで使用される端末装置が基地局を介さずに,直接又は別の端末装置を中継して通信を行う技術である。そして,D2D通信は,端末装置が直接又は別の端末装置を中継して通信を行う技術である点で,ピア・ツー・ピア通信の一種といえる。更に,引用発明の「ピア・ツー・ピア通信」を行う「装置」が,信号を送信する装置であることは明らかである。してみると,補正後の発明の「信号送信装置」と引用発明の「ピア・ツー・ピア通信」を行う「装置」とは,ピア・ツー・ピア通信を行う信号送信装置である点で共通する。

また,引用発明の「ピア発見信号の送信及び検出を行う」こととは,ピア・ツー・ピア通信を開始する前に行う処理であって,自端末の存在を別の端末に知らせるためにピア発見信号を別の端末に送信する処理,及び,別の端末の存在を確かめるために別の端末からのピア発見信号を受信・検出する処理である。一方,補正後の発明の「D2Dディスカバリーを行う」こととは,D2D通信を開始する前に行う処理であって,自端末の存在を別の端末に知らせるためにD2Dディスカバリー信号を別の端末に送信する処理,及び,別の端末の存在を確かめるために別の端末からのD2Dディスカバリー信号を受信・検出する処理である。してみると,補正後の発明の「信号送信装置」と引用発明の「ピア発見信号の送信及び検出を行う装置」とは,ピア・ツー・ピア通信(補正後の発明においては,ピア・ツー・ピア通信の一種であるD2D通信)を行うにあたって,自端末の存在を別の端末に知らせるために,発見用の信号を別の端末に送信する処理を行う信号送信装置である点,及び別の端末の存在を確かめるために,別の端末からの発見用の信号を受信・検出する処理を行う信号送信装置である点で共通する。

したがって,補正後の発明の「第一ユーザ装置に構成され,第二ユーザ装置とD2D(Device to Device)通信又はD2Dディスカバリーを行う信号送信装置」と,引用発明の「LTE規格に準拠したユーザ機器に構成され,LTE規格に準拠した別のユーザ機器とピア・ツー・ピア通信又はピア発見信号の送信及び検出を行う装置」は,「第一ユーザ装置に構成され,第二ユーザ装置とピア・ツー・ピア通信又は発見用の信号の送信及び受信・検出を行う信号送信装置」である点で共通する。

(イ)引用発明の「ピア発見信号」は,補正後の発明の「信号」に相当する。また,引用発明の「ピア発見信号を最初に送信するためのリソースユニットであってランダムに選択しうるリソースユニット(m_(0),n_(0))」は,補正後の発明の「信号を最初に送信するためにランダムに選択されたリソース」に相当する。

また,補正後の発明の「前記信号を送信するリソース」とは,所定のタイミングにおいて送信する信号のためのリソースであると解することができる。そうすると,補正後の発明の「周波数ホッピングパターン」と,引用発明の「時間および周波数ホッピング関数」は,双方とも,周波数ホッピングに関する技術を用いるものであって,かつ,信号を最初に送信するためにランダムに選択されたリソースから,信号を最初に送信するタイミングよりも後のタイミングにおいて送信される信号のリソースを確定するために用いられる規則であるといえる。そして,当該規則のことを「パターン」と称することは任意である。してみると,補正後の発明の「周波数ホッピングパターン」と,引用発明の「時間および周波数ホッピング関数」とは,周波数ホッピングパターンである点で共通する。

また,補正後の発明の「前記信号を送信するリソースを確定するためのリソース確定ユニット」における「ユニット」という用語と,引用発明の「所定のピア発見フレームtでピア発見信号の送信に利用されるリソースユニット(m_(t),n_(t))を選択するためのモジュール」における「モジュール」という用語は,双方とも,ひとまとまりの機能を持った構成部分のことを示す用語と解することができる。してみると,引用発明の「所定のピア発見フレームtでピア発見信号の送信に利用されるリソースユニット(m_(t),n_(t))を選択するためのモジュール」は,補正後の発明の「前記信号を送信するリソースを確定するためのリソース確定ユニット」に相当する。

したがって,補正後の発明の「信号を最初に送信するためにランダムに選択されたリソースと,周波数ホッピングパターンとに基づいて,前記信号を送信するリソースを確定するためのリソース確定ユニット」と,引用発明の「ピア発見信号を最初に送信するためのリソースユニットであってランダムに選択しうるリソースユニット(m_(0),n_(0))と,時間および周波数ホッピング関数とに基づいて,所定のピア発見フレームtでピア発見信号の送信に利用されるリソースユニット(m_(t),n_(t))を選択するためのモジュール」は,「信号を最初に送信するためにランダムに選択されたリソースと,周波数ホッピングパターンとに基づいて,前記信号を送信するリソースを確定するためのリソース確定ユニット」である点で共通する。

(ウ)引用発明の「選択されたリソースユニット」「ピア発見信号を送信するためのモジュール」は,補正後の発明の「確定された前記リソース」「信号を送信するための信号送信ユニット」に相当する。
また,(ア)で上述したとおり,引用発明の「LTE規格に準拠した別のユーザ機器」を,「第二ユーザ装置」と称することは任意である。更に,(イ)で上述したとおり,「モジュール」という用語と,「ユニット」という用語は,双方とも,ひとまとまりの機能を持った構成部分のことを示す用語と解することができる。

したがって,引用発明の「選択されたリソースユニットに基づいてLTE規格に準拠した別のユーザ機器にピア発見信号を送信するためのモジュール」は,補正後の発明の「確定された前記リソースに基づいて,前記第二ユーザ装置に前記信号を送信するための信号送信ユニット」に相当する。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「第一ユーザ装置に構成され,第二ユーザ装置とピア・ツー・ピア通信又は発見用の信号の送信及び受信・検出を行う信号送信装置であって,
信号を最初に送信するためにランダムに選択されたリソースと,周波数ホッピングパターンとに基づいて,前記信号を送信するリソースを確定するためのリソース確定ユニット;及び
確定された前記リソースに基づいて,前記第二ユーザ装置に前記信号を送信するための信号送信ユニットを含む装置。」

(相違点1)
「ピア・ツー・ピア通信又は発見用の信号の送信及び受信・検出を行う信号送信装置」に関し,補正後の発明は「D2D(Device to Device)通信又はD2Dディスカバリーを行う信号送信装置」であるのに対して,引用発明は「ピア・ツー・ピア通信又はピア発見信号の送信及び検出を行う信号送信装置」であって,D2Dとの特定のない点。

(相違点2)
「周波数ホッピングパターン」に関し,補正後の発明は「前記周波数ホッピングパターンとしてPUSCHホッピング類型1,又は,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンはセル専用又は共通である」という特定が付されているのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。

以下,上記各相違点について検討する。

(相違点1)
上記イ(ア)において述べたとおり,引用発明(引用例1に記述される送信技術)は,LTEにおいて使用されうるものである。してみれば,本願出願時においてLTE規格に取り込まれている通信技術であるD2D通信を,引用発明の「ピア・ツー・ピア通信」に適用することは,当業者が容易に想到しうることにすぎない。そして,D2D通信を引用発明に適用することに併せて,本願出願時において公知技術であるD2Dディスカバリを,引用発明の「ピア発見信号の送信及び検出を行う」ことに適用することは,当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。
したがって,引用発明において,相違点1の構成を採用することは,当業者が容易になし得ることに過ぎない。

(相違点2)
本願明細書の「【0029】(中略)例えば,該周波数ホッピングパターンはさらに,従来規格中のPUSCH(PUSCH,Physical Uplink Shared Channel)のホッピング類型であっても良い。」との記載,及び,「【0051】もう一つの実施方式では,D2D通信中にMode 1を採用する送信側ユーザ装置は,D2Dデータ送信時に,信号再送に用いるリソースと,初期送信に用いるリソースとの間の位置関係は,従来標準中のPUSCHホッピング方案(又は,ホッピング類型),即ち,Type 1 PUSCH hopping及びType 2 PUSCH hoppingを採用することができる。」との記載から,補正後の発明の「PUSCHホッピング類型1」「PUSCHホッピング類型2」が,Type 1 PUSCH hopping及びType 2 PUSCH hopping を含むことは明らかである。
また,上記イ[周知技術及び技術常識]において述べたとおり,「D2Dディスカバリーに関する通信,又はD2D通信において,周波数ダイバーシティを得るために周波数ホッピングを採用すること,及び周波数ホッピングパターンとして,タイプ1PUSCHホッピング,又はタイプ2PUSCHホッピングを採用すること。」は周知技術(周知技術1)である。
そして,引用発明と周知技術1とは,いずれも周波数ホッピングを採用して通信を行う技術である点で共通しているから,周知技術1を参酌することにより,引用発明の「時間および周波数ホッピング関数」を用いる周波数ホッピングにおいて,タイプ1PUSCHホッピング,又はタイプ2PUSCHホッピングを採用することは,当業者が容易に想到しうることに過ぎない。

また,上記イ[周知技術及び技術常識](オ)技術常識2において述べたとおり,「PUSCH周波数ホッピングにおいて,セル固有のホッピング/ミラーリングパターンによる周波数ホッピングを行うこと。」は技術常識である。そして,セル固有のホッピング/ミラーリングパターンが,セル専用のホッピングパターンといえることは当業者にとって明らかである。
してみれば,当該技術常識を参酌することにより,引用発明の「時間および周波数ホッピング関数」を用いる周波数ホッピングにおいて,セル専用のホッピングパターンを採用することは,当業者が容易に想到しうることである。

ここで,請求人は審判請求書の「(4)本願発明が特許されるべき理由 (b)」において,「請求項1,9及び14に係る発明のいずれも,「前記周波数ホッピングパターンとしてPUSCHホッピング類型1,又は,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンはセル専用又は共通」との発明特定事項を有している。当該発明特定事項は,拒絶の理由を発見しないとされた,査定時における請求項8に記載されていた発明特定事項であり,引用文献1及び2のいずれにも開示及び示唆がなく,引用文献1及び2の組み合わせによって当業者が容易に想到できたものでもない。よって,請求項1,9及び14並びにこれらの従属項に係る発明は,特許を受けることができるものである。」と主張している。
しかしながら,平成29年12月18日の手続補正書における請求項8(拒絶査定時の請求項8)に係る発明は「請求項1に記載の装置であって,モード1を採用してD2D通信を行う前記第一ユーザ装置について,前記周波数ホッピングパターンは,PUSCHホッピング類型1を採用し,又は,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンは,セル専用又は共通のものであり,モード2を採用してD2D通信を行う前記第一ユーザ装置について,前記周波数ホッピングパターンは,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンは,ユーザ装置専用のものである,装置。」であって,補正後の発明の発明特定事項である「周波数ホッピングパターンとしてPUSCHホッピング類型1,又は,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンはセル専用又は共通である」ことと比較すると,平成29年12月18日の手続補正書における請求項8は,「モード1を採用してD2D通信を行う前記第一ユーザ装置」及び「モード2を採用してD2D通信を行う前記第一ユーザ装置」という発明特定事項を有するのに対して,補正後の発明はそのような特定がされていない点で少なくとも相違している。したがって,「請求項1,9及び14に係る発明のいずれも,「前記周波数ホッピングパターンとしてPUSCHホッピング類型1,又は,PUSCHホッピング類型2を採用し,前記周波数ホッピングパターンはセル専用又は共通」との発明特定事項を有している。当該発明特定事項は,拒絶の理由を発見しないとされた,査定時における請求項8に記載されていた発明特定事項であり…」という請求人の主張は採用できない。
また,相違点2の検討において上述したとおり,引用発明の「時間および周波数ホッピング関数」を用いる周波数ホッピングにおいて,タイプ1PUSCHホッピング,又はタイプ2PUSCHホッピングを採用すること,及び,セル専用の周波数ホッピングパターンを採用することは,いずれも当業者が容易に想到しうることにすぎないことからも,上記の請求人の主張は採用できない。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,補正後の発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

3 結語

したがって,平成31年4月26日にされた手続補正(本件補正)は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成31年4月26日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,上記「第2」の項の「1 本件補正の概要」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶理由の概要は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1に対して主引用例として引用例1が引用されている。

3 引用発明等

引用発明は,上記「第2 平成31年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明,周知技術及び技術常識」の項で認定したとおりである。

4 対比・判断

そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 平成31年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

5 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-22 
結審通知日 2020-01-28 
審決日 2020-02-10 
出願番号 特願2016-559432(P2016-559432)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三浦 みちる宮田 繁仁  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 脇岡 剛
相澤 祐介
発明の名称 信号再送装置、方法及び通信システム  
代理人 特許業務法人秀和特許事務所  

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