• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A44B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A44B
管理番号 1361112
審判番号 不服2019-14891  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-06 
確定日 2020-03-26 
事件の表示 特願2015-79633「ジッパーテープ、ジッパーテープ付袋体、および、ジッパーテープ付袋体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月1日出願公開、特開2016-198218〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月8日を出願日とする出願であって、以降の手続は次のとおりである。
平成30年11月29日付け :拒絶理由通知
平成31年2月8日 :意見書及び手続補正書の提出
令和元年7月26日付け :拒絶査定
令和元年11月6日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出

第2 令和元年11月6日にした手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年11月6日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1. 本件補正について
上記令和元年11月6日にした手続補正は、上記平成31年2月8日にした手続補正により補正された本願特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むもので、本件補正前後の請求項1の記載は、本件補正による補正箇所に下線を付して示すと次のとおりである。
(1)本件補正前
「【請求項1】
対をなす雄部材および雌部材を備えたジッパーテープであって、
少なくとも一部に、波長吸収域が800nm以上1200nm以下の吸光材料が含有され、
前記雄部材は、少なくとも2層以上の積層構造である雄側帯状基部および前記雄側帯状基部の一面に設けられた雄部を備え、
前記雌部材は、少なくとも2層以上の積層構造である雌側帯状基部および前記雌側帯状基部の一面に設けられ前記雄部と係合可能な雌部を備え、
前記雄側帯状基部および前記雌側帯状基部の少なくともいずれか一方は、前記雄部および前記雌部と一体的に形成される基体部と、前記基体部以外の少なくとも1層に設けられ、
前記吸光材料が含有された吸光層とを備えた
ことを特徴とするジッパーテープ。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
対をなす雄部材および雌部材を備えたジッパーテープであって、
少なくとも一部に、波長吸収域が800nm以上1200nm以下の吸光材料が含有され、
前記雄部材は、少なくとも2層以上の積層構造である雄側帯状基部および前記雄側帯状基部の一面に設けられた雄部を備え、
前記雌部材は、少なくとも2層以上の積層構造である雌側帯状基部および前記雌側帯状基部の一面に設けられ前記雄部と係合可能な雌部を備え、
前記雄側帯状基部および前記雌側帯状基部の少なくともいずれか一方は、前記雄部および前記雌部と一体的に形成される基体部と、前記基体部以外の少なくとも1層に設けられ、
前記吸光材料が含有された吸光層とを備え、
前記吸光層は、前記吸光材料が樹脂組成物に含有されて形成されている
ことを特徴とするジッパーテープ。」

2. 補正の適否
本件補正のうち、上記請求項1についてするものは、本件補正前の請求項1の「吸光層」について、「前記吸光層は、前記吸光材料が樹脂組成物に含有されて形成されている」との構成を付加し限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1) 補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるもので、上記1.(2)に示したとおりのものである。

(2) 引用文献
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由、すなわち平成30年11月29日付け拒絶理由に引用された、特開平2-152662号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項及び発明が記載されている。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、咬合具および咬合具付包装用袋に関し、食品、薬品、雑貨等の防湿、防酸素等が要求され、かつ、開封後に再密封が必要な分野の包装に利用できる。」(1ページ左欄17行?右欄3行)
(イ)「〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、咬合具の材質としては、低密度ポリエチレン(LDPE)が最も広く使用されているが、このLDPEにおける溶着温度は、約140℃と高温である。このため、溶着部位の昇温に時間を要し、製袋スピードを低くしなければならず、生産能率が低下するという問題点がある。また、溶着温度が高いことから、エネルギコストが高く、しかも外観上シールじわが発生し、製品品質を低下させるという問題点もある。更に剛性も比較的高く、使用対象によっては取扱いが必ずしも容易なものではなかった。
従って、生産能率の向上、省エネルギ、外観向上の立場から溶着温度をより低くし、製袋スピードを上げるとともに剛性の低いものが要望されている。
本発明の目的は、溶着温度を低くすることができ、製袋スピードを上げられて生産効率の向上、省エネルギを図ることができ、剛性も低く取扱いが容易な咬合具および該咬合具を基材フィルムに溶着した包装用袋を提供することにある。」(2ページ左上欄4行?右上欄5行)
(ウ)「〔課題を解決するための手段〕
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、咬合具の溶着部に特定の樹脂を選定することにより、溶着温度を下げることができ、適度な柔軟性を有して前記課題を解決できることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の咬合具は、少なくとも袋本体への溶着部が、酢酸ビニル含有量1?9%、メルトインデックス0.5?6.0g/10分のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂を主体として形成されてなることを特徴とする。
また、本発明の咬合具付包装用袋は、少なくとも袋本体への溶着部が、酢酸ビニル含有量1?9%、メルトインデックス0.5?6.0g/10分のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂を主体として形成されてなる互いに咬合する一対の咬合具を袋本体に溶着し、製袋してなることを特徴とする。」(2ページ右上欄6行?左下欄4行)
(エ)「本発明の咬合具は、第1図(A)に示すように、雄型咬合具2および雌型咬合具3からなる咬合具1の全体を酢酸ビニル含有量1?9%、メルトインデックス0.5?6.0g/10分のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂を主体として形成したものでも、第1図(B)に示すように、雄型咬合具2および雌型咬合具3を、それぞれ袋本体4への溶着部2A,3Aと、咬合具体を含む他の部分である残部2B,3Bとに2層に形成し、袋本体4への溶着部2A,3Aのみを酢酸ビニル含有量1?9%、メルトインデックス0.5?6.0g/10分のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂を主体として形成し、残部2B,3Bを他の樹脂で形成してもよい。他の樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状ポリエチレン等が挙げられる。このように、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂を主体とした樹脂と他の樹脂とに多層化することにより、咬合具1の咬合強度、開封性などを適度なものに調整することができる。」(2ページ右下欄3行?3ページ左上欄2行)
(オ)「次に本発明の咬合具付包装用袋の一例としては、第2図,第3図に示すように、本発明咬合具1を袋本体4を形成する基材フィルム5に熱、高周波、超音波等、公知の手段を用いて溶着した後、端部6をシールすることにより得ることができる。この際、基材フィルム5としては、例えばアルミニウム箔等の金属箔7が積層されている多層材料であってもよい。」(3ページ左上欄12?19行)
(カ)「〔発明の効果〕
・・・
従って、各種防湿包装、脱酸素包装、耐乾燥包装用として、食品,医薬品,粘着薬(湿布薬)、雑貨等をはじめ、再封用途のために好適に用いられ、その実用的価値は非常に高いものである。」(4ページ右欄5行?5ページ左欄6行)

(キ)第1図(A)(B)




(ク)第1図(B)における符番「2」及び「3」が付されている部材に着目すると、それぞれの図示された形状と、摘記事項(エ)の「第1図(B)に示すように、雄型咬合具2および雌型咬合具3を、それぞれ袋本体4への溶着部2A、3Aと、咬合具体を含む他の部分である残部2B、3Bとに2層に形成し、」という記載から、当該符番「2」及び「3」が付された平面状の「残部(2B、3B)」から内側へ突出する様が図示された構成は、それぞれ、「雄型咬合具体」及び「雌型咬合具体」と呼ぶことのできるものである。そして、それぞれの「咬合具体」は、互いに係合するものであるから「対」をなすものであるといえる。

(ケ)第1図(B)の図示と上記摘記事項(エ)の記載から、引用文献1に記載された「溶着部2A」及び「残部2B」からなるものは、2層の積層構造であって、「雄側ベース部」と呼ぶことができる構成である。
同様に引用文献1に記載された「溶着部3A」及び「残部3B」からなるものも、2層の積層構造であって、「雌側ベース部」と呼ぶことのできる構成である。

摘記事項(ア)?(カ)、第1図(B)の図示、及び、認定事項(ク)及び(ケ)を総合すると、引用文献1には、以下の「引用発明」が記載されている。
「対をなす雄型咬合具2および雌型咬合具3を備えた咬合具1であって、
前記雄型咬合具2は、袋本体4へ溶着する溶着部2A及び残部2Bの2層の積層構造である雄側ベース部及び前記雄側ベース部の一面に設けられた雄側咬合具体を備え、
前記雌型咬合具3は、袋本体4へ溶着する溶着部3A及び残部3Bの2層の積層構造である雌側ベース部及び前記雌側ベース部の一面に設けられ前記雄側咬合具体と係合可能な雌側咬合具体を備え、
前記雄側ベース部及び前記雌側ベース部は、それぞれ前記雄側咬合具体及び前記雌側咬合具体と一体的に形成される残部2B及び残部3Bと、前記残部2B及び残部3B以外の1層に設けられる、酢酸ビニル含有量1?9%、メルトインデックス0.5?6.0g/10分のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂を主体として形成した袋本体への溶着部2A及び3Aとを備えた、
咬合具1」

イ. 引用文献2
原査定の拒絶の理由、すなわち平成30年11月29日付け拒絶理由に引用された、再公表特許第2009/022739号には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムの溶着方法に関し、更に詳細には、薬剤バッグの製造の際、溶着すべきプラスチックフィルムを被溶着物に赤外線レーザーによって溶着させる溶着方法に関する。また、本発明は、溶着すべきプラスチックフィルムを被溶着物に溶着させた薬剤バッグに関する。」
(イ) 「【0025】
赤外線レーザーの波長帯は、好ましくは、700nm?1200nmである。
【0026】
即ち、薬剤バッグに使用されるプラスチックフィルムに被溶着物を溶着するためのレーザーは、紫外線レーザーや可視光レーザーよりも波長が長く、従って、エネルギーの小さい赤外線レーザーが好ましく、その波長帯は、好ましくは、700nm?1200nmである。」
(ウ) 「【0038】
図1?図3に示すように、薬剤バッグ1は、ほぼ平坦に長手方向Aに延びる矩形のバッグ本体2を有し、バッグ本体2は、薬剤を収容する2つの室4、6を形成するようにシールされた2枚のプラスチックフィルム、即ち、オモテ側のプラスチックフィルム8aとウラ側のプラスチックフィルム8bによって形成されている。プラスチックフィルム8a、8bの材料は、医療用途に通常使用されるポリエチレン、ポリプロピレン等であり、その厚さは、例えば、250ミクロンである。なお、薬剤バッグ1を裏返せば、オモテ側及びウラ側に対応する構成要素は、逆になる。」
(エ) 「【0044】
また、薬剤バッグ1は、ポート部材16に溶着されたフィルム部分に配置され且つ赤外線レーザーを吸収して発熱する発熱要素24a、24bと、取っ手用プラスチックフィルム22a、22bが溶着された箇所に配置され且つ赤外線レーザーを吸収して発熱する発熱要素26a、26bとを有している。発熱要素24a、24b、26a、26bは、バッグ本体用プラスチックフィルム8a、8b又は取っ手用プラスチックフィルム22a、22bに塗布又は印刷されたインキであってもよいし、赤外線レーザーを吸収するインキが塗布又は印刷されたプラスチックシートであってもよいし、赤外線レーザーを吸収するインキが塗布又は印刷され且つ上記プラスチックフィルム8a、8b、22a、22bに貼り付け可能なプラスチックラベルであってもよい。インキは、レーザー吸収色素を有していれば任意であり、好ましくは黒色インキである。本実施形態では、発熱要素24a、24b、26a、26bは、オモテ側のプラスチックフィルム8a、22aのオモテ側の面及びウラ側のプラスチックフィルム8b、22bのウラ側の面(第1室4及び第2室6と反対側の面)に貼り付けられた黒色プラスチックラベルである。」
(オ) 「【0045】
次に、図4及び図5を参照して薬剤バッグ1の製造方法を説明する。図4は、バッグ本体用プラスチックフィルムのポート部材への溶着の説明図であり、図5は、取っ手用プラスチックフィルムの溶着のバッグ本体用プラスチックフィルムへの溶着の説明図である。」
(カ) 「【0050】
赤外線レーザーLを照射すると、赤外線レーザーLは、押付け部材32a、32b及び取っ手用プラスチックフィルム22a、22bを通り抜けて発熱要素26a、26bに達し、発熱要素26a、26bに吸収される。それにより、発熱要素26a、26bが発熱して、瞬間的にバッグ本体用プラスチックフィルム8a、8b及び取っ手用プラスチックフィルム22a、22bの向い合っている面同士を溶融させるのに十分な高温になる。かかる面同士をほとんど同時に溶融させて、溶着させ、きれいなシールを形成する。赤外線レーザーの出力は、互いに接触しているプラスチックフィルム8a、8bが溶着しないように調整される。・・・
・・・
【0052】
赤外線レーザー照射装置は、例えば、半導体レーザー装置であり、波長帯が700nm?1200nmのものである。赤外線レーザーは、紫外線レーザーや可視光レーザーよりも波長が長く、エネルギーの小さいので、厚さが薄い薬剤バッグ本体用のプラスチックフィルムにおいて、目的の箇所だけの溶着が行われるように制御するのに適している。従って、赤外線レーザーの照射方向に不必要な溶着を行うことを容易に防止することができる。また、照射する出力及び時間は、その照射箇所の面積(溶着範囲)との兼ね合いで適宜選択される。赤外線レーザーの1つの照射箇所の形状が円形であり、その径が2?10mm、好ましくは、3?7mmである場合、照射する出力及び時間はそれぞれ、例えば15?50W及び1?5秒である。」
(キ)
「【図1】



「【図5】



上記摘記事項(ア)?(カ)、及び【図1】、【図5】の図示を総合すると、引用文献2には、次の引用文献2記載事項が記載されている。
「プラスチックフィルムの溶着方法として、溶着させようとする平面状のプラスチックフィルム(8a、8b)及び取っ手用プラスチックフィルム(22a、22b)に接するように、波長帯が700nm?1200nmの赤外線レーザーLを吸収する色素を含むインキを塗布又は印刷によって形成した発熱要素(26a、26b)を設ける溶着方法。」

(3) 対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「雄型咬合具2」、「雌型咬合具3」、「咬合具1」は、補正発明の「雄部材」、「雌部材」、「ジッパテープ」にそれぞれ相当する。
引用発明の「雄側ベース部」、「雄側咬合具体」、「雌側ベース部」、「雌側咬合具体」は、補正発明の「雄側帯状基部」、「雄部」、「雌側帯状基部」、「雌部」にそれぞれ相当する。
そうすると、補正発明と引用発明とは次の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「対をなす雄部材および雌部材を備えたジッパーテープであって、
前記雄部材は、少なくとも2層以上の積層構造である雄側帯状基部および前記雄側帯状基部の一面に設けられた雄部を備え、
前記雌部材は、少なくとも2層以上の積層構造である雌側帯状基部および前記雌側帯状基部の一面に設けられ前記雄部と係合可能な雌部を備え、
前記雄側帯状基部および前記雌側帯状基部の少なくともいずれか一方は、前記雄部および前記雌部と一体的に形成される基体部を備えたジッパーテープ。」
<相違点>
補正発明の「ジッパーテープ」は、少なくとも一部に、波長吸収域が800nm以上1200nm以下の「吸光材料」が含有されるものであり、並びに、補正発明の「雄側帯状基部」及び「雌側帯状基部」の少なくともいずれか一方は、前記「雄部」及び前記「雌部」と一体的に形成される「基体部」と、前記「基体部」以外の少なくとも一層に設けられ、前記「吸光材料」が含有された「吸光層」とを備え、当該「吸光層」は、前記「吸光材料」が樹脂組成物に含有されて形成されているものであるのに対し、
引用発明の「咬合具1」が、吸光材料を含有するものであるか、明らかではなく、そして、引用発明の「雄側ベース部」及び「雌側ベース部」は、それぞれ前記雄側咬合具体及び前記雌側咬合具体と一体的に形成される残部2B及び残部3Bとを備えたものであるものの、「吸光材料」が含有された「吸光層」を備えたものであるかが、明らかではない点。

(4) 判断
ア. <相違点>についての判断
上記(2)ア.(オ)に摘記した、引用文献1の「本発明の咬合具付包装用袋の一例としては、第2図,第3図に示すように、本発明咬合具1を袋本体4を形成する基材フィルム5に熱、高周波、超音波等、公知の手段を用いて溶着した後、端部6をシールすることにより得ることができる。」という記載から、引用発明の「咬合具1」を「袋本体4を形成する基材フィルム5」へ溶着する手段は、「溶着部位の昇温が可能な公知の手段であればよい」ことが、理解できる。
そうすると、プラスチックフィルム溶着方法である点で共通する上記(2)イ.に示した引用文献2記載事項の「溶着方法」を適用することは当業者が容易に想到し得た事項であり、かつ、当該適用を阻害する事由は見当たらない。
そして、引用発明の「袋本体4」へ溶着する「溶着部2A」及び「溶着部3A」に対して、加熱する手段として引用文献2記載事項の方法を適用しようとするならば、加熱対象である「溶着部2A」及び「溶着部2B」に接して赤外線レーザーLを吸収する引用文献2記載事項の平面状の発熱要素(26a、26b)を配置することが必要であるから、上記<相違点>に係る構成において、「吸光層」(引用文献2記載事項の発熱要素(26a、26b)に相当)を、「雄側帯状基部」及び「雌側帯状基部」の少なくともいずれか一方において、前記「基体部」以外の少なくとも一層に設けることは、当然に採用する構成である。
さらに、引用文献2記載事項の「発熱要素(26a、26b)」は、「レーザーLを吸収する色素を含むインキ」を「塗布又は印刷によって形成」したものであり、インキは通常樹脂からなるものであるから、引用文献2記載事項の「発熱要素(26a、26b)」は、吸光材料である上記色素が樹脂組成物に含有されて形成されたものである、といえる。
したがって、引用発明において、上記<相違点>に係る補正発明の構成を備えたものとすることは、上記引用文献2記載事項を、引用発明の溶着手段として適用することで、当業者が容易になし得た事項である。

(4)作用・効果について
補正発明が奏する作用・効果は、当業者が容易に予測し得る範囲以上の格別なものであるとはいえない。

3. むすび
以上のとおりであるから、補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年2月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるもので、上記第2の1.(1)に記載したとおりのものである。

2. 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(平成30年11月29日付け拒絶理由)は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された上記引用文献1に記載された発明、及び、上記引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3. 引用文献
引用文献1及び2には、上記第2の2.(2)ア.及びイ.に示した事項が記載されていて、それぞれ、上記引用発明及び引用文献2記載事項が記載されている。

4. 対比・判断
上記第2の2.に示したように、本願発明は、補正発明において特定された「前記吸光層は、前記吸光材料が樹脂組成物に含有されて形成されている」との限定事項を省いたものである。
そうすると、補正発明の全ての特定事項を包含し、さらに限定された発明である補正発明が、上記第2の3.に示したように、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上に示したとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-27 
結審通知日 2020-01-28 
審決日 2020-02-12 
出願番号 特願2015-79633(P2015-79633)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A44B)
P 1 8・ 575- Z (A44B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木原 裕二西田 侑以  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 中村 一雄
久保 克彦
発明の名称 ジッパーテープ、ジッパーテープ付袋体、および、ジッパーテープ付袋体の製造方法  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ