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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01L
管理番号 1361236
審判番号 不服2019-401  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-11 
確定日 2020-04-02 
事件の表示 特願2017-508649「磁気作動ラッチを格納するロッカーアーム付バルブトレイン」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月25日国際公開、WO2016/028812、平成29年9月7日国内公表、特表2017-525886〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)8月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年8月18日(IN)インド、2015年3月30日(US)アメリカ合衆国、2015年4月30日(US)アメリカ合衆国、2015年7月9日(US)アメリカ合衆国、2015年7月22日(US)アメリカ合衆国、2015年7月31日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月30日に手続補正書が提出され、平成30年1月12日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年1月17日)、平成30年6月8日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年9月5日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成30年9月12日)、これに対し、平成31年1月11日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成31年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についてみると、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年6月8日に提出された手続補正書による)下記の(1)の記載を下記の(2)の記載に補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
燃焼室と、前記燃焼室に形成されたシートを有するポペット弁と、カムシャフトを有する型式の内燃機関のバルブトレインであって、
ロッカーアームと、カムシャフトが回転すると前記カムシャフトに設けられたカムに係合するよう構成されたカムフォロアと、を備えるロッカーアームアセンブリと、
第1位置と第2位置との間を平行移動可能なラッチピンと、コイルとを備える電磁ラッチアセンブリと、を備え、
チャンバが前記ロッカーアームに形成され、
前記コイルが前記チャンバ内に設けられ、
前記ラッチピンの前記第1及び第2位置の一方が、前記ロッカーアームアセンブリが前記カムシャフトの回転に応じて前記ポペット弁を作動させ、第1バルブリフトプロファイルを生成するよう動作する構成を提供し、
前記ラッチピンの前記第1及び第2位置の他方が、前記ロッカーアームアセンブリが前記カムシャフトの回転に応じて前記ポペット弁を作動させ、前記第1バルブリフトプロファイルとは異なる第2バルブリフトプロファイルを生成するよう動作するか、又は前記ポペット弁を休止させる構成を提供する、バルブトレイン。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
燃焼室と、前記燃焼室に形成されたシートを有するポペット弁と、カムシャフトを有する型式の内燃機関のバルブトレインであって、
ロッカーアームと、カムシャフトが回転すると前記カムシャフトに設けられたカムに係合するよう構成されたカムフォロアと、を備えるロッカーアームアセンブリと、
第1位置と第2位置との間を平行移動可能なラッチピンと、コイルとを備える電磁ラッチアセンブリと、を備え、
チャンバが前記ロッカーアームに形成され、
前記コイルが前記チャンバ内に設けられ、
前記ラッチピンの前記第1及び第2位置の一方が、前記ロッカーアームアセンブリが前記カムシャフトの回転に応じて前記ポペット弁を作動させ、第1バルブリフトプロファイルを生成するよう動作する構成を提供し、
前記ラッチピンの前記第1及び第2位置の他方が、前記ロッカーアームアセンブリが前記カムシャフトの回転に応じて前記ポペット弁を作動させ、前記第1バルブリフトプロファイルとは異なる第2バルブリフトプロファイルを生成するよう動作するか、又は前記ポペット弁を休止させる構成を提供し、
前記ロッカーアームが金属の単一片である、バルブトレイン。」

2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明における「ロッカーアーム」という発明特定事項について、「金属の単一片である」と限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

3 独立特許要件
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献、引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許第5544626号明細書(以下「引用文献」という。)には、「FINGER FOLLOWER ROCKER ARM WITH ENGINE VALVE DEACTIVATOR」に関して、図面(特に、FIG.1ないしFIG.4及びFIG.7を参照。)とともに次の記載がある(なお、下線部は当審が付与したものである。以下同様。)。

ア 「This invention relates in general to an engine valvetrain, and, more particularly, to a finger follower rocker arm design.」(明細書1欄6行ないし8行)
(当審仮訳)「本発明は、一般にエンジンのバルブトレインに係り、より詳しくは、フィンガ従動子ロッカーアームの設計に関するものである。」

イ 「FIG. 1 shows a finger follower type rocker arm 10 consisting of an outer body 12 that extends longitudinally to terminate in a hollow or yoke-shaped (not shown) portion 14. A socket or recess 16 contains an engine valve stem pad 18 engageable by the stem 19 of a conventional engine valve 20.
The opposite end of body 12 contains a spherical socket 22 receiving the plunger end portion of a hydraulic lash adjuster 24, only partially shown. The lash adjuster constitutes a stationary fulcrum for pivotal movement of body 12 of the rocker arm, in a manner to be described.
Rocker arm 10 contains an inner arm 26 nested within the yoke-shaped portion of body 12. It is pivotally mounted at 28 between and to the yoke-shaped end 14 of the outer body by means of a pivot pin 30. Arm 26 extends longitudinally within the outer body and towards the opposite end of body 12 terminating short thereof at the base of the body recess for pivotal arcuate movement relative to the outer body.
The arm has a follower pad 32 provided with a surface for sliding engagement with the cam lobe 34 fixed on a conventional engine camshaft, not shown. The arm 26 is biased into engagement with the cam lobe by a bucket type follower 38. It consists of a plunger 40 slidably receivable within a pocket 42 in outer body 12, and a spring 44 continually biasing the plunger against a bumper pad 46 formed on the underside of follower pad 32.
The details of construction and operation of lash adjuster 24 are not given since they are known and believed to be unnecessary for an understanding of the invention. Suffice it to say, however, that it would contain a spring together with oil pressure normally biasing the plunger outwardly with enough force on the outer body 12 to move it to compensate for any lash between the cam and rocker arm when the cam is on its base circle.
In this case, the force of spring 44 of bucket follower 38 is designed to be stronger than the force of the lash adjuster. This is to prevent any undesirable pump up of the adjuster when the cam is on its base circle that might interfere with the normal opening or closing operations of an engine valve. For this purpose, the outer body is provided with rubbing pads 48 that extend outwardly from body 12. The force of spring 44 forces the inner arm 26 counterclockwise against the cam, the lash adjuster spring and oil pressure pushing the outer body upwardly so that the bumper pad 48 also contacts the cam lobe.
Outer body portion 21 contains a stepped diameter bore 50 for receiving a locking pin or plunger 52. The plunger has a recess 54 at one end for receiving a spring 56 that is seated against the bore cover or plug 58 for biasing the pin leftwardly as seen in FIG. 1. The pin 52 is biased into the path of arcuate movement of inner arm 26 to prevent pivotal movement of the arm in a clockwise direction relative to body 12. This prevents a free-wheel movement of the inner arm relative to body 12, in effect locking the arm and body together for movement as an integral unit in a downward pivotal direction about the lash adjuster pivot center to open the engine valve.
The inner arm terminates in a turned-down end portion 59 having a cylindrical surface 60. The pin 52 is formed with a horizontal flat on its end 61 for a mating engagement with the flat underside 62 of arm end portion 59. This minimizes contact stresses between the two by allowing a slight sideways play of the arm, thus eliminating the need for precise thrust surfaces.
In normal operation, therefore, the unit 10 acts as a conventional rocker arm. Latching pin 52 is forced outwardly by spring 56 so that follower pad 32 and outer body 12 move downwardly together to open the engine valve, the bucket spring 44 returning the two upwardly as the cam moves towards its base circle.
The lash adjuster 24 is operated in a known manner by oil at a pressure of approximately 30 psi to automatically adjust for lash between the parts. A channel through the top of the plunger also supplies lubricating oil through the stepped diameter annulus 63 surrounding a portion of plunger 52 to act on a flange 64 at the rear of the plunger. The force of spring 56 normally is strong enough to oppose the fluid force. However, when desired to establish a deactivating mode of the rocker arm, the oil pressure from the lash adjuster is increased to approximately 50 psi. This is sufficient to compress spring 56 and move the latching pin 52 rightwardly to withdraw it from the path of movement of the inner arm. The inner arm is then free to pivot on the axle pin 30 and move downwardly under the influence of the cam lobe without movement of outer body 12 and, therefore, without movement of valve stem 20.」(明細書2欄38行ないし3欄58行)
(当審仮訳)「図1は、中空状又はヨーク状の(図示されていない)部分14内で終端する長手方向に延在する外側本体12のフィンガ従動子形式のロッカーアーム10を示している。ソケット又は凹部16は、従来のエンジンバルブ20のステム19によって係合可能なエンジンバルブステムパッド18を含んでいる。
本体12の反対側の端部は、油圧式ラッシュアジャスタ24のプランジャ側端部を受け入れる球状ソケット22に部分的にのみ示されている。ラッシュアジャスタは、以下に説明する方法で、ロッカーアーム本体12の回動のための固定支点を構成する。
ロッカーアーム10は、本体12のヨーク状部分内に入れ子にされた内側アーム26を含み、それはピボットピン30によって、外側本体のヨーク状端部14との間で符号28において枢着されている。アーム26は、外側本体内で長手方向に延び、本体12の反対側の端部に向かって延びており、本体凹部の底で終端し、外側本体に対して回動するように円弧状に移動する。
アームは、従来のエンジンのカムシャフトに固定されたカムロブ34と摺動係合するための面を備えた従動子パッド32(図示せず)を有している。アーム26は、バケット型のフォロアー38によりカムローブと係合するように付勢されている。外側本体12のポケット42内に摺動可能に受容可能なプランジャ40からなり、ばね44は、プランジャを従動子パッド32の下側に形成された緩衝パッド46に対して付勢する。
ラッシュアジャスタ24の構造および動作の詳細は、既知であり、本発明の理解にとって不必要であると考えられているので示されていない。しかしながら、カムが基礎円にあるときに、カムとロッカーアームとの間の任意のラッシュを補償するために、外側本体12に対して十分な力でプランジャを外方に付勢する油圧力とばねを有する。
この場合、バケット38のばね44の力は、ラッシュアジャスタの力よりも強くなるように設計されている。これは、エンジンバルブの正常な開閉動作と干渉する可能性のある基礎円上にカムがあるときに、アジャスタの望ましくないポンプアップを防止するためである。この目的のために、外側本体は、本体12から外側に延在した摩擦パッド48が設けられている。ばね44の力は、内側アーム26をカムに対して反時計方向に押し、ラッシュアジャスタスプリングおよび油圧は外側本体を上方に押し、それによって摩擦パッド48もカムローブに接触する。
外側本体部分21は、係止ピン又はプランジャ52を収容するための段付きの直径ボア50を含んでいる。プランジャは、図1に見られるように、ピンを左方に付勢するボアカバーまたはプラグ58に対して着座するばね56を受け入れるために、一端に凹部54を有している。ピン52は、内側アーム26の円弧状の移動経路内に付勢されて本体12に対して時計方向にアームの回動を防止する。これは、本体12に対して内部アームの「フリーホイール」運動を防止し、エンジンバルブを開くために、互いに移動可能にアーム及び本体をロックしてラッシュアジャスタのピボットを中心として下方に回動方向に一体のユニットとしてある。
内側アームは、円筒面60を有する下向きの端部59で終端している。ピン52は、端部59の平らな下面62と係合するために、その端部61に水平に平坦部が形成されている。これにより、アームの僅かな横方向の遊びが可能になるため、2つの間の接触応力が最小化し、したがって、正確なスラスト面の必要性を除去する。
したがって、通常の動作において、ユニット10は、従来のロッカアームとして作用する。ラッチピン52は、ばね56によって外側に付勢され、従動パッド32と外側本体12とが共に下方に移動してエンジンバルブを開き、カムが基礎円に向かって移動すると、バケットばね44が上向きに戻る。
ラッシュアジャスタ24は、部品との間のラッシュを自動的に調整するために、約30psiの圧力で油によって公知の方法で作動される。プランジャの頂部を通るチャネルはまた、プランジャ52の一部を取り囲む段付き直径環状部63を通って潤滑油を供給し、プランジャの後部のフランジ64に作用する。ばね56の力は、通常、流体の力に対抗するのに十分な強さである。しかし、ロッカアームの非作動モードを確立する必要があれば、ラッシュアジャスタからの油圧は、約50psiまで上昇する。これは、ばね56を圧縮し、ラッチピン52を右方向に移動させて、内側アームの移動経路からそれを引き出すのに十分である。次に、内側アームは、軸ピン30上で自由に枢動することができ、外側本体12の移動なしに、したがってバルブステム20の移動なしに、カムローブの影響を受けて下方に移動することができる。」

ウ 「FIGS. 2-5 illustrate the preferred embodiment of the invention in which a roller 68 replaces the sliding surface of FIG. 1, and a pair of helical torsion springs 70 replace the compression spring bucket follower 38 to maintain integrity between outer body 12 and inner arm 26.
More specifically, FIGS. 2-5 show an inner arm 26' pivotally connected to the yoke-shaped end 14' of outer body 12' on an axle 30' located at the valve stem end of arm 26'.(明細書第3欄59行-66行)
(当審仮訳)「図2-5は、ローラ68が図1の摺動面に取って代わる本発明の好ましい実施例を示しており、一対の螺旋ねじりばね70が圧縮ばねバケットフォロワ38に置き換わり、外側本体12と内側アーム26との間の一体性を維持する。
より具体的には、図2-5は、内側アーム26’が、アーム26’のバルブステムエンドに位置する車軸30’上で、外側本体12’のヨーク状端部14’に枢動可能に連結されていることを示している。」

エ 「As best seen in FIGS. 3-4, the inner arm 26' rotatably supports a roller 68 on an axle mounted in the sides of the arm, for an essentially friction free rolling engagement with the cam lobe, in contrast to that of the sliding surface of FIG. 1. Body 12' contains a bore 50' at the end opposite the valve stem, with a fluid annulus 63' and a latching pin or plunger 52'. A spring 56' biases the plunger pin inwardly towards the inner arm 26' to a latching position, and is seated against the bore end plug 58', shown in phantom. The front or left-hand end of the pin is again formed with a horizontal flat surface 76 for a mating engagement with the flat underside 62' of the depending edge of inner arm 26'. The top surface of plunger 52' has an axial keyway 78 cooperating with a peg or key 80 to prevent rotation of plunger 52' and thereby maintain the flat surfaces properly oriented and aligned.
FIG. 4 shows the arm 26' in its downwardmost clockwise position, the position attained when the cam lobe is at its maximum distance. This position prevents the pin 52' from moving outwards to ride over the top surface 32 of the arm, which would prevent a normal return of the arm upwardly. The end portion 59' of the arm again is formed with a cylindrical surface 60'. The surface prevents the pin 52 from moving axially as the surface 59' of arm 26' pivots downwardly in a free-wheeling motion when pin 52' is retracted.
The fluid annulus 63' connects to the spherical socket 22' that receives the end of a hydraulic lash adjuster, not shown. The connecting passage from the lash adjuster supplies oil to the annulus 63' at approximately 30 psi to act on the pin flange 64' in opposition to the force of spring 56'. When engine valve deactivation is desired, the oil pressure is increased to approximately 50 psi, which is sufficient to overcome the force of spring 56' and move pin 52' back out of the path of movement of inner arm 26'. This allows the arm to free-wheel under the force of the cam lobe without effecting movement of body 12' or actuation of the valve stem.
To prevent pumping up of the lash adjuster when the cam lobe is on its base circle, the inner arm is formed with bumper pads 82 (FIGS. 2-3), one on each side at the bottom. The force of the helical torsion springs 70 are designed to be greater than the lash adjuster forces so that the upward forces of the helical springs move the pads 82 to bottom against the undersurface of body 12'.」(明細書4欄11行ないし54行)
(当審仮訳)「図3-4に最もよく示されているように、内側アーム26’は、図1のアームの摺動面とは対照的に、カムローブとの本質的に摩擦なしの転がり係合のために、アームの側面に取り付けられた軸上にローラ68を回転可能に支持する。本体12’は、バルブステムと反対側の端部に、流体環状部63’とラッチピンまたはプランジャ52’とを備えたボア50’を含む。ばね56’は、プランジャピンを内側アーム26’に向かって内側にラッチ位置まで付勢し、破線で示されるボア端栓58’に対して着座する。ピンの前端又は左端は、内側アーム26の垂下縁の平坦な下面62’と係合するための水平平面76を有して形成されている。プランジャ52’の上面は、プランジャ52’の回転を防止するためにペグ又はキー80と協働する軸方向キー溝78を有し、それによって平坦面を適切に配向され且つ整列させる。
図4は、アーム26’が最も右回りの位置にあり、カムローブが最大距離にあるときに得られる位置を示している。この位置は、ピン52’が外側に移動してアームの上面32上に乗り上げるのを防止し、アームの正常な復帰を防止する。アームの端部59’にも円筒面60’が形成されている。この表面は、ピン52が後退したときに、アーム26’の表面59’がフリーホイーリング運動で下方に枢動するにつれて、ピン52’が軸方向に移動するのを防止する。
流体環状部63’は、図示しない油圧ラッシュアジャスタの端部を受け入れる球形ソケット22’に接続されている。ラッシュアジャスタからの接続通路は、バネ56’の力に対抗してピンフランジ64’に作用するために、約30psiで環状部63’にオイルを供給する。エンジンバルブの非作動化が望まれるとき、油圧は、スプリング56’の力に打ち勝つのに十分である約50psiまで上昇され、ピン52’を内側アーム26’の移動経路から後退させる。これは、本体12’の運動またはバルブステムの作動をもたらすことなく、カムローブの力の下でアームが「フリーホイール」することを可能にする。
カムローブが基礎円上にあるときにラッシュアジャスタが押し上げられるのを防止するために、内側アームは摩擦パッド82が形成されている(図2-3)、下側の各側に一つずつ配置される。螺旋ねじりバネ70の力は、バネの上向きの力がパッド82を本体12の下面に対して下側に移動させるように、ラッシュアジャスタの力より大きく設計されている。」

オ 「FIGS. 7, 8, 8a and 9 show a modification to the embodiment of FIG. 2. In this case, the latching pin or plunger 52'' is formed at its spring end with the armature 90 of an electromagnet assembly 94. It includes a solenoid 96 surrounding the armature which when energized moves the latching pin into the path of movement of the inner arm 26'' to the locking position shown to prevent the inner arm from free-wheeling. This renders the outer body and inner arm essentially integral for operation of the rocker arm in a conventional manner to actuate the engine valve stem. Shutting off the current to the solenoid permits the spring 56'' to push the plunger into the unlatching or valve disabling position.」(明細書4欄59行ないし5欄4行)
(当審仮訳)「図7-8、8a、9は、本発明の実施形態の変形例を示す。この場合、ラッチピンまたはプランジャ52’’は、そのばね端部に電磁石アセンブリ94のアーマチュア90とともに形成されている。これは、電機子を取り囲むソレノイド96を含み、付勢されたときに、内側アームがフリーホイーリングするのを防止するために図示されたロック位置への内側アーム26’’の移動経路内にラッチピンを動かす。これは、エンジンバルブステムを作動させる従来の方法でロッカーアームの作動のために外側本体および内側アームを本質的に一体化する。ソレノイドへの電流を遮断することにより、ばね56’’がプランジャをラッチ解除位置又は弁不能位置に押し込むことができる。」

カ 上記オの記載事項及びFIG.7の図示内容による実施例は、FIG.1ないしFIG.4の図示内容による実施形態の変形例であり、上記オ及びFIG.7に記載のない用語及び参照番号は、上記アないしエ及びFIG.1ないしFIG.4に記載されていることがわかる。

キ 上記アの記載事項並びにFIG.1の図示内容からみて、エンジンは燃焼室と、エンジンバルブ20とを有し、バルブトレインはカムシャフトを備えることがわかる。

ク 上記エの記載事項及びFIG.2ないしFIG.4の図示内容からみて、FIG.7も、カムロブ34に係合するローラ68を有しているといえる。

ケ 上記オの記載事項及びFIG.7の図示内容からみて、ラッチピン52’’は、外側本体12のボア50内を摺動し、ロック位置とラッチ解除位置との間を平行移動可能であることがわかる。

コ 上記オの記載事項及びFIG.7の図示内容からみて、カバー(FIG.7の右方において、ソレノイド96を取り囲む部材)と外側本体12とで空間が形成され、ソレノイド96が、該空間内に設けられていることがわかる。

サ 上記イ及びオの記載事項並びにFIG.7の図示内容からみて、ラッチピン52’’のロック位置で、ロッカーアーム10がカムシャフトの回転に応じてエンジンバルブ20を作動させ、通常の動作において従来のロッカーアームとして作用することがわかる。

シ 上記イ及びオの記載事項並びにFIG.7の図示内容からみて、ラッチピン52’’のラッチ解除位置で、エンジンバルブ20を非作動化することがわかる。

上記アないしシの記載事項並びにFIG.1ないしFIG.4及びFIG.7の図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「燃焼室と、エンジンバルブ20と、カムシャフトを有するエンジンのバルブトレインであって、
外側本体12、内側アーム26’’及びカバーと、カムシャフトが回転すると前記カムシャフトに設けられたカムロブ34に係合するローラ68と、を備えるロッカーアーム10と、
ロック位置とラッチ解除位置との間を平行移動可能なラッチピン52’’と、ソレノイド96とを備える電磁石アセンブリ94と、を備え、
カバーと前記外側本体12とで空間が形成され、
ソレノイド96が前記空間内に設けられ、
前記ラッチピン52’’の前記ロック位置及びラッチ解除位置の一方が、前記ロッカーアーム10が前記カムシャフトの回転に応じて前記エンジンバルブ20を作動させ、通常の動作において従来のロッカーアームとして作用し、
前記ラッチピンの前記ロック位置及びラッチ解除位置の他方が、エンジンバルブ20を非作動化する、
バルブトレイン。」

(3)対比・判断

本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「エンジンバルブ20」は前者の「ポペット弁」に相当し、以下同様に、「エンジン」は「内燃機関」に、「外側本体12、内側アーム26’’及びカバー」は「ロッカーアーム」に、「カムロブ34」は「カム」に、「ローラ68」は「カムフォロア」に、「ロッカーアーム10」は「ロッカーアームアセンブリ」に、「ロック位置」は「第1位置」に、「ラッチ解除位置」は「第2位置」に、「ラッチピン52’’」は「ラッチピン」に、「ソレノイド96」は「コイル」に、「電磁石アセンブリ94」は「電磁ラッチアセンブリ」に、それぞれ相当する。

後者における「空間」は、前者における「チャンバ」に相当する。また、後者における「外側本体12」は、上記したとおり、「ロッカーアーム」を構成するものであるから、後者の「カバーと外側本体12とで空間が形成され」ていることは、前者の「チャンバがロッカーアームに形成され」ていることに相当する。

後者の「通常の動作において従来のロッカーアームとして作用」することは、前者の「第1バルブリフトプロファイルを生成するよう動作する構成を提供」することに相当する。

後者の「エンジンバルブ20を非作動化」することと前者の「ロッカーアームアセンブリがカムシャフトの回転に応じてポペット弁を作動させ、第1バルブリフトプロファイルとは異なる第2バルブリフトプロファイルを生成するよう動作するか、又は前記ポペット弁を休止させる構成を提供」することとは、「ポペット弁を休止させる構成を提供」するという限りで一致する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。

[一致点]
「燃焼室と、ポペット弁と、カムシャフトを有する型式の内燃機関のバルブトレインであって、
ロッカーアームと、カムシャフトが回転すると前記カムシャフトに設けられたカムに係合するよう構成されたカムフォロアと、を備えるロッカーアームアセンブリと、
第1位置と第2位置との間を平行移動可能なラッチピンと、コイルとを備える電磁ラッチアセンブリと、を備え、
チャンバが前記ロッカーアームに形成され、
前記コイルが前記チャンバ内に設けられ、
前記ラッチピンの前記第1及び第2位置の一方が、前記ロッカーアームアセンブリが前記カムシャフトの回転に応じて前記ポペット弁を作動させ、第1バルブリフトプロファイルを生成するよう動作する構成を提供し、
前記ラッチピンの前記第1及び第2位置の他方が、前記ポペット弁を休止させる構成を提供する、
バルブトレイン。」

[相違点1]
本件補正発明は、「燃焼室に形成されたシートを有する」のに対して、引用発明は、かかる構成を有するか不明な点。

[相違点2]
本件補正発明は、ラッチピンの第1及び第2位置の他方が、「ロッカーアームアセンブリがカムシャフトの回転に応じてポペット弁を作動させ、第1バルブリフトプロファイルとは異なる第2バルブリフトプロファイルを生成するよう動作するか、又は」ポペット弁を休止させる構成を提供するのに対して、引用発明は、エンジンバルブ20を非作動化する構成を提供する点。

[相違点3]
本件補正発明は、ロッカーアームが「金属の単一片である」のに対して、引用発明は、かかる構成であるか不明な点。

上記相違点1について検討する。
エンジンの燃焼室にバルブが着座するシートを有することは、技術常識である。
そして、引用発明は、燃焼室とエンジンバルブ20とを有するエンジンであるから、上記技術常識を踏まえると、引用発明は、燃焼室にエンジンバルブ20が着座するシートを有するものといえる。
そうすると、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は、引用発明も有しているものであるから、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

仮に、上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、エンジンの燃焼室にバルブが着座するシートを有することは、例示するまでもなく周知の事項であるから、引用発明において、上記周知の事項を考慮して、燃焼室にシートを有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点2について検討する。
上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項は、「ロッカーアームアセンブリがカムシャフトの回転に応じてポペット弁を作動させ、第1バルブリフトプロファイルとは異なる第2バルブリフトプロファイルを生成するよう動作する」こと、又は「ポペット弁を休止させる構成を提供」することのいずれか一方を備えるものである。
そして、引用発明は、ポペット弁を休止させる構成を提供するものであるから、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項を満たしているといえる。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

上記相違点3について検討する。
「単一片」について、本願の発明の詳細な説明における段落【0030】には、「これらの教示のいくつかでは、ロッカーアームは単一の金属片である。しかし、ロッカーアームは強固に結合された複数の部品を具備し得る。」と記載されている。
そうすると、本件補正発明における「ロッカーアーム」が「単一片」であるとは、本願の発明の詳細な説明を参酌すると、ロッカーアームを構成する部材が結合されることで、全体として一つのまとまりであることを意味すると理解できる。
そして、引用発明は、外側本体12にカバーが連結されたものであり(FIG.7を参照。)、引用発明における「外側本体12、内側アーム26’’及びカバー」は、これらが結合されることで全体として一つのまとまりを有するものであるから、「単一片」であるといえる。

また、ロッカーアーム及び電磁石を構成する磁性体は一般に金属であるから、引用発明における「外側本体12、内側アーム26’’及びカバー」は「金属の単一片」であるといえる。

したがって、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項は、引用発明も備えているものであるから、上記相違点3は実質的な相違点ではない。

仮に、上記相違点3が実質的な相違点であったとしても、ロッカーアーム及び電磁石を構成する磁性体を金属で形成することは、当業者が容易に想起できることであるから、引用発明において、外側本体12、内側アーム26’’及びカバーを、金属で形成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明において、外側本体12及びカバーを、例えば、材料や部品点数という意味において一つの部材、すなわち「単一片」とすることも、製造の容易性等を考慮して、当業者が通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。
したがって、引用発明において、外側本体12及びカバーが金属の単一片であるように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

本件補正発明は、全体としてみても、引用発明から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明と同一である。
また、引用発明に基いて、本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)請求人の主張について
審判請求人は、平成31年1月11日の審判請求書において、次のように主張する。

「次に、本願請求項1に係る発明の上記構成に関連して、審査官殿は、拒絶査定において、『引用文献1に記載された発明は、電磁アセンブリ94(「電磁ラッチアセンブリ」相当)のラッチピン52’’だけが、単一片で構成される外側本体12’(「ロッカーアーム」相当」に形成された穴50’(「チャンバ」相当)内に設けられ、電磁アセンブリ94のソレノイド96(「コイル」相当)が当該穴50’からはみ出している(図7)。ところで、同文献に別の実施態様として開示されるばね56’及び油圧で作動するラッチピン52’は、周辺部品も含むアセンブリ全体が穴50’(「チャンバ」相当)内に収められている(図4)。そして、内燃機関における可動部品をできるだけコンパクトに設計することが一般的な課題であること、及び、アセンブリ全体がチャンバ内に収まる上記実施態様を併せて考慮すれば、引用文献1に記載された発明において、電磁アセンブリ94(「電磁ラッチアセンブリ」相当)として小さいサイズのものを選択し、ソレノイド96(「コイル」相当)も含めて穴50’(「チャンバ」相当)内に収まるようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。』旨、認定されている。
しかしながら、電磁コイルは、一般に、特定の機能に応じてそのサイズが決定されるものであり、任意に小型化可能なものではない。すなわち、ソレノイドが発生する力は、コイルを流れる電流とコイルのターン数との積に依存するものであり、コイルを小型化しながらこれらの2つのパラメータを一定に維持する唯一の方法は、コイルに使用するワイヤを細径化することである。しかしながら、ワイヤを細くすれば電気抵抗が増大し、電気抵抗が増大すれば必要な電力が増大するとともに、廃棄熱の増大にもつながることは技術常識である。熱の放散は、特にコイルがロッカーアームの内部に存在する場合、問題となるものである。したがって、本発明の出願時点において、ロッカーアームにおける電磁ラッチアセンブリのコイルとして機能し得るコイルを、ロッカーアームの内部に配置可能な程度に小型化可能であるかどうかは、当業者にとって自明とは言えない技術思想であったものである。
したがって、たとい、引用文献1に、ラッチピン(及び、その内部に含まれるばね5656、56’)52、52’が、外側本体の孔50’、52’’内に配置される構成が開示されていたとしても、それは、油圧駆動式のピンを油圧室内に配置するという当然の構成を示すものに過ぎず、この開示に基づいて本願請求項1に係る発明に想到することが当業者にとって容易であるとは、到底言えるものではない。」

しかしながら、上記(3)の相違点3の判断で示したように、本件補正発明において「単一片」とは、全体として一つのまとまりであるもののことである。そして、引用発明におけるカバーと外側本体12とで形成された空間は、本件補正発明における「チャンバ」に相当する。また、引用発明における外側本体12とカバーとは、これらが結合されることで全体として一つのまとまりを有するものであるから、本件補正発明の「単一片」であるといえる。仮に、そのようにいえないとしても、引用発明において、外側本体12及びカバーを、単一片とすることは、当業者が通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。したがって、請求人の主張を採用することはできない。

次に、請求人は「電磁コイルは、一般に、特定の機能に応じてそのサイズが決定されるものであり、任意に小型化可能なものではない。すなわち、ソレノイドが発生する力は、コイルを流れる電流とコイルのターン数との積に依存するものであり、コイルを小型化しながらこれらの2つのパラメータを一定に維持する唯一の方法は、コイルに使用するワイヤを細径化することである。しかしながら、ワイヤを細くすれば電気抵抗が増大し、電気抵抗が増大すれば必要な電力が増大するとともに、廃棄熱の増大にもつながることは技術常識である。熱の放散は、特にコイルがロッカーアームの内部に存在する場合、問題となるものである。したがって、本発明の出願時点において、ロッカーアームにおける電磁ラッチアセンブリのコイルとして機能し得るコイルを、ロッカーアームの内部に配置可能な程度に小型化可能であるかどうかは、当業者にとって自明とは言えない技術思想であった」と主張するので、「引用文献1に記載された発明において、電磁アセンブリ94(「電磁ラッチアセンブリ」相当)として小さいサイズのものを選択し、ソレノイド96(「コイル」相当)も含めて穴50’(「チャンバ」相当)内に収まるようにすること」が、当業者にとって容易であるか否かについても、以下、補足的に検討する。
この場合、本件補正発明は、「コイルがチャンバ内に設けられ」るものであるのに対して、引用発明は、ソレノイド96がカバーと外側本体12とで形成される空間に設けられるものである。
しかしながら、ロッカーアームとラッチピンの駆動部との配置は、各部材の相対的な寸法関係や、組立・製造の容易性等を考慮して決定されることであるから、引用発明において、外側本体12とソレノイド96との配置関係は、当業者が適宜決定し得ることといえる。
そうすると、引用発明において、ソレノイド96を外側本体12の内部に設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、請求人の上記主張は一般的な電磁コイルの特性について述べたものであり、引用発明のロッカーアームとコイルとの具体的な関係が明らかでなく、ラッチピンを駆動させるためのソレノイドは、ロッカーアームの内部に収容できない大きさであるともいえないから、請求人が主張するように、「引用発明において、コイルをロッカーアームの内部に配置可能な程度に小型化すること」を阻害することになるとはいえない。
また、本願の特許請求の範囲及び明細書では、廃棄熱の問題を解決するためのコイルを流れる電流やコイルのターン数、コイルに使用するワイヤの径を具体的に規定してわけでもない。
そうすると、上記のように、ロッカーアームとラッチピンの駆動部との配置は、各部材の相対的な寸法関係や、組立・製造の容易性等を考慮して決定されることであるから、引用発明において、ソレノイド96を外側本体12の内部に設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、請求人の主張に沿って検討した場合でも、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

(5)まとめ
上記(1)ないし(4)により、本件補正発明は、引用発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。または、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年1月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年6月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。

(1)本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献:米国特許第5544626号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本件補正発明は、前記第2の[理由]2で検討したとおり、本願発明に発明特定事項を付加して限定したものであるから、本願発明は、本件補正発明の発明特定事項の一部を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3に記載したとおり、引用発明と同一であるから、本願発明は、実質的に同様の理由により、引用発明と同一である。
また、本件補正発明が、前記第2の[理由]3に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、実質的に同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-31 
結審通知日 2019-11-06 
審決日 2019-11-20 
出願番号 特願2017-508649(P2017-508649)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01L)
P 1 8・ 113- Z (F01L)
P 1 8・ 121- Z (F01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志楠永 吉孝  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 齊藤 公志郎
北村 英隆
発明の名称 磁気作動ラッチを格納するロッカーアーム付バルブトレイン  
代理人 ▲高▼ 昌宏  
代理人 加藤 勉  
代理人 田上 明夫  
代理人 萼 経夫  

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