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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1361243
審判番号 不服2019-6141  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-13 
確定日 2020-04-02 
事件の表示 特願2015- 39625「内視鏡光源装置、内視鏡システム、及び内視鏡光源装置の作動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 5日出願公開、特開2016-158837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月27日の出願であって、平成30年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月6日付けで拒絶理由が通知され、同年10月3日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年2月5日付けで拒絶査定されたところ、令和元年5月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、平成30年10月3日付けの手続補正(以下、単に「手続補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの本願発明14は、次のとおりのものである。
「【請求項14】
観察対象の粘膜下にある血管に対して、深さ分解能を有する第1波長帯域の光を発する半導体光源である第1光源と、前記第1波長帯域よりも広帯域で連続的なスペクトルを有する第2波長帯域の光を発する半導体光源である第2光源と、450nmから500nmの波長帯域の光を含む光を低減するためのフィルタであって、粘膜下の同じ深さにある血管に対して、太さ分解能を有する第3波長帯域の光、及び、前記第3波長帯域とは異なり、かつ、血管に対して太さ分解能を有する第4波長帯域の光のみを、前記第2波長帯域の光から生成する第3の波長帯域の光及び第4の波長帯域の光生成用帯域制限フィルタと、を備える内視鏡光源装置の作動方法において、
光量比設定部が、前記第1波長帯域の光と前記第3波長帯域の光の光量比を設定するステップと、
光源制御部が、前記光量比設定部が設定する前記光量比を用いて前記第1光源及び前記第2光源を制御するステップと、
を備える内視鏡光源装置の作動方法。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。

理由3.(進歩性) この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1?17
・引用文献等 1?4
<引用文献等一覧>
1.特開2011-10998号公報
2.国際公開第2011/010534号
3.国際公開第2012/101904号
4.特開2012-152413号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用照明装置および内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な内視鏡装置は、光源装置のランプからの光を、被検体内に挿入される内視鏡挿入部に内設されたライトガイドで内視鏡先端部まで導光し、内視鏡先端部の照明窓から出射することで、被検体の観察部位を照明する。通常の生体組織の観察には白色光が用いられるが、近年においては、特定の狭帯域化された波長の光を照射して粘膜組織の状態を強調表示させたり、予め投与した蛍光物質からの自家蛍光を観察する特殊光観察が可能な内視鏡装置が活用されている(特許文献1,2)。この種の内視鏡装置では、生体組織に特殊光を照射することで、例えば粘膜層あるいは粘膜下層に発生する新生血管が観察でき、通常の観察像では得られない粘膜表面の微細構造の描写が可能になる。」

(2)「【0007】
本発明は、白色光や特殊光による生体組織の観察時に、生体組織の所望の組織情報を、診断に適したより明瞭な状態で取得できる内視鏡用光源装置および内視鏡装置を提供することを目的とする。」

(3)「【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態を説明するための内視鏡用光源装置を用いた内視鏡装置の模式的構成図、図2は図1に示す内視鏡装置のブロック構成図である。
図1に示す内視鏡装置100は、内視鏡11と、この内視鏡11が接続される制御装置13とを有する。制御装置13には、画像情報等を表示する表示部15と、入力操作を受け付ける入力部17が接続されている。内視鏡11は、内視鏡挿入部19の先端から照明光を出射する照明光学系と、被観察領域を撮像する撮像素子を含む撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。」

(4)「【0015】
制御装置13は、内視鏡先端部35の照射口37A,37Bに供給する照明光を発生する光源装置41、撮像素子21からの画像信号を画像処理するプロセッサ43を備えており、前述の表示部15と入力部17が接続されている。プロセッサ43は、内視鏡11の操作部23や入力部17からの指示に基づいて、内視鏡11から伝送されてくる撮像信号を画像処理し、表示部15へ表示用画像を生成して供給する。」

(5)「【0017】
光源装置41は、図2に示すように、中心波長445nmの青色レーザ光源(第1の光源)51と、中心波長405nmの紫色レーザ光源(第2の光源)53とを発光源として備えている。これらの各光源51,53の半導体発光素子からの発光は、光源制御部55により個別に制御されており、青色レーザ光源51の出射光と、紫色レーザ光源53の出射光との光量比は変更自在になっている。」

(6)「【0025】
図3は、紫色レーザ光源53からのレーザ光と、青色レーザ光源51からの青色レーザ光および青色レーザ光が蛍光体57により波長変換された後の光の発光スペクトルを示すグラフである。紫色レーザ光源53からの紫色レーザ光は、中心波長405nmの輝線(プロファイルA)で表される。また、青色レーザ光源51からの青色レーザ光は、中心波長445nmの輝線で表され、青色レーザ光による蛍光体57からの励起発光光は、概ね450nm?700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となる(プロファイルB)。この励起発光光と青色レーザ光によるプロファイルBによって、前述した白色光が形成される。」

(7)「【0034】
次に、上記の内視鏡装置100を、生体組織表層の血管画像の観察に利用する例を説明する。
図5は生体組織の粘膜表層の血管を模式的に表した説明図である。生体組織の粘膜表層は、粘膜深層の血管B1から樹脂状血管網等の毛細血管B2が粘膜表層までの間に形成され、生体組織の病変はその毛細血管B2等の微細構造に現れることが報告されている。そこで近年では、内視鏡装置を用いて、特定の狭帯域の波長光により粘膜表層の毛細血管を画像強調して観察し、微小病変の早期発見や、病変範囲の診断が試みられている。」

(8)「【0036】
したがって、図6に内視鏡装置による観察画像の概略的な表示例を示すように、照明光を白色光とした場合の観察画像では、比較的粘膜深層の血管像が得られる反面、粘膜表層の微細な毛細血管はぼやけて見える。一方、短波長のみの狭帯域化した照明光とした場合の観察画像では、粘膜表層の微細な毛細血管が鮮明に見えるようになる。
【0037】
本構成例では、内視鏡装置100の光源制御部55(図2参照)により、中心波長445nmの青色レーザ光源51と、中心波長405nmの紫色レーザ光源53による出射光の光量比を変更自在にしている。光量比の変更は、例えば図1に示す内視鏡11の操作部23に設けたスイッチ89の操作により行い、粘膜表層の毛細血管をより観察しやすいように画像強調することができる。つまり、青色レーザ光源51による青色レーザ光成分が多い場合は、この青色レーザ光と、蛍光体57による励起発光光とによる白色光成分が多い照明光となり、図6の白色光観察画像のような観察画像が得られる。ただし、狭帯域光である青色レーザ光が照明光に混在しているので、表層の毛細血管が画像強調された観察画像となる。」

(9)「【0045】
上記の光量比は、図2に示す光源制御部55が各光源51,53を制御することで変更するが、次に、この光量比を術者が観察画像を見ながら変更する方法を図8、図9を用いて説明する。
図8は内視鏡装置100による観察画像を表示する表示部15の表示画面71の例を示している。表示画面71には、内視鏡装置による観察画像を表示する内視鏡画像領域73と、通常の白色光照明による観察画像を内視鏡画像領域73に表示させる通常画像切り替えボタン75、紫色レーザ光の狭帯域照明光による観察画像を表示させる狭帯域光画像切り替えボタン77が設けられ、さらに光量比を調整する調整用バー79とつまみ81が設けられている。そして、マウスやキーボード等の入力部17からの指示に基づいて、つまみ81を調整用バー79内でスライド移動させ、所望の観察画像となるように光量比を調整する。
【0046】
制御部67は、調整用バー79のつまみ81の位置に応じて光量比を決定し、この光量比に対応する各光源51,53の出射光量となるように各光源51,53を駆動する。ここで、光量比と各光源51,53の出射光量との関係は、光量比対応テーブルとして記憶部83(図2参照)に記憶されており、制御部67は、記憶部83の光量比対応テーブルを参照して各光源51,53の出射光量を求める。」

(10)「【0059】
次に、青色レーザ光と紫光レーザ光の光量比の設定について説明する。
上記の説明において、図2に示す青色レーザ光源51、紫色レーザ光源53からの出射光の光量比を、入力部17からの指示により光源制御部55が任意に設定できるとした。ここでは、予め複数種の光量比を登録しておき、入力部17からいずれかの光量比を指定する場合を説明する。
【0060】
例えば、血管画像の内視鏡観察においては、内視鏡の術者毎に青レーザ光と紫色レーザ光の光量比の嗜好が異なることがある。例えば、術者Aは紫色レーザ光λa、青色レーザ光λbの光量比を60:40とした観察画像を好ましく感じ、術者Bは75:25の光量比を好ましく感じる等、嗜好による違いが生じることがある。その場合、図18に示すように、キー情報となる術者名と、術者の好みの光量比とを関係付けた光量比情報を、記憶部83(図2参照)等に光量比テーブルとして予め登録しておく。そして、入力部17から術者名に対応する情報が入力されると、制御部67は、記憶部83の光量比テーブルを参照して所望の光量比を自動的に設定する。これにより、内視鏡の術者の嗜好に応じた光量比に設定できる。」

2 引用発明
(1)引用発明′
上記1の(1)?(10)の記載を踏まえれば、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明′」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、引用発明′の認定に使用した上記摘記の区分けを、括弧内に付記してある。

「ア)内視鏡11と、この内視鏡11が接続される制御装置13と、を有する、生体組織の粘膜表層の血管画像の観察に利用する内視鏡装置100であって、(3)(7)
イ)内視鏡11は、内視鏡挿入部19の先端から照明光を出射する照明光学系と、被観察領域を撮像する撮像素子を含む撮像光学系とを有し、(3)
ウ)制御装置13は、内視鏡先端部35の照射口37A,37Bに供給する照明光を発生する光源装置41を備えており、(4)
エ)制御装置13には、画像情報等を表示する表示部15と、入力操作を受け付ける入力部17が接続されており、(3)
オ)光源装置41は、中心波長405nmの紫色レーザ光源53と中心波長445nmの青色レーザ光源51とを発光源として備え、これらの各光源51,53の半導体発光素子からの発光は、光源制御部55により個別に制御されており、青色レーザ光源51の出射光と、紫色レーザ光源53の出射光との光量比は変更自在になっており、(5)
カ)青色レーザ光源51からの青色レーザ光は、中心波長445nmの輝線で表され、青色レーザ光による蛍光体57からの励起発光光は、概ね450nm?700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となり(プロファイルB)、この励起発光光と青色レーザ光によるプロファイルBによって、白色光が形成され、(6)
キ)キー情報となる術者名と、術者の好みの光量比とを関係付けた光量比情報を、記憶部83に光量比テーブルとして予め登録しておく、(9)
ク)内視鏡装置100。」

(2)引用発明
ア 上記「1(10)及び(9)」には、上記引用発明′を前提とした「入力部17から術者名に対応する情報が入力されると、制御部67は、記憶部83の光量比テーブルを参照して所望の光量比を自動的に設定し、制御部67は、この光量比に対応する各光源51,53の出射光量となるように各光源51,53を駆動する光源装置41の駆動方法。」が記載されているといえる。

イ 上記(1)及び(2)アより、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、「引用発明′」同様に、引用発明の認定に使用した上記1での摘記の区分けも、括弧内に付記してある。
「ア)内視鏡11と、この内視鏡11が接続される制御装置13と、を有する、生体組織の粘膜表層の血管画像の観察に利用する内視鏡装置100であって、(3)(7)
イ)内視鏡11は、内視鏡挿入部19の先端から照明光を出射する照明光学系と、被観察領域を撮像する撮像素子を含む撮像光学系とを有し、(3)
ウ)制御装置13は、内視鏡先端部35の照射口37A,37Bに供給する照明光を発生する光源装置41を備えており、(4)
エ)制御装置13には、画像情報等を表示する表示部15と、入力操作を受け付ける入力部17が接続されており、(3)
オ)光源装置41は、中心波長405nmの紫色レーザ光源53と中心波長445nmの青色レーザ光源51とを発光源として備え、これらの各光源51,53の半導体発光素子からの発光は、光源制御部55により個別に制御されており、青色レーザ光源51の出射光と、紫色レーザ光源53の出射光との光量比は変更自在になっており、(5)
カ)青色レーザ光源51からの青色レーザ光は、中心波長445nmの輝線で表され、青色レーザ光による蛍光体57からの励起発光光は、概ね450nm?700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となり(プロファイルB)、この励起発光光と青色レーザ光によるプロファイルBによって、白色光が形成され、(6)
キ)キー情報となる術者名と、術者の好みの光量比とを関係付けた光量比情報を、記憶部83に光量比テーブルとして予め登録しておく、(10)
ク)内視鏡装置100において、
入力部17から術者名に対応する情報が入力されると、制御部67は、記憶部83の光量比テーブルを参照して所望の光量比を自動的に設定し、(10)
ケ)制御部67は、この光量比に対応する各光源51,53の出射光量となるように各光源51,53を駆動する、(9)
コ)光源装置41の駆動方法。(ア)」

第5 対比
1 本願発明14と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

(1)
ア 引用発明の「ア)」「生体組織の粘膜表層の血管」は、本願発明14の「観察対象の粘膜下にある血管」に相当する。

イ 本願明細書の段落【0034】に、「第1光源20aを構成するV-LEDは、中心波長415nm、波長帯域が約400?430nmの紫色光(以下、V光という)を発光する紫色光源である。」と記載され、同じく段落【0040】に「観察対象の粘膜下にある血管に対して深さ分解能を有する第1波長帯域の光」と記載されていることから、本願発明14の第1波長帯域は、波長帯域が約400?430nmの紫色光であって、観察対象の粘膜下にある血管に対して深さ分解能を有するものといえる。

ウ そうすると、引用発明の「オ)」「中心波長405nmの紫色レーザ光源53」は、「半導体発光素子」であって、本願発明14の第1の波長帯域である約400?430nmの範囲内の「中心波長405nm」の紫色光を発光するものであるから、本願発明14の「観察対象の粘膜下にある血管に対して、深さ分解能を有する第1波長帯域の光を発する半導体光源である第1光源」に相当する。

エ 上記、ア、ウを踏まえると、引用発明の「ア)」「生体組織の粘膜表層の血管画像の観察に利用する内視鏡装置100」の、「オ)」「中心波長405nmの紫色レーザ光源53」であって、「半導体発光素子」であるものは、本願発明14の「観察対象の粘膜下にある血管に対して、深さ分解能を有する第1波長帯域の光を発する半導体光源である第1光源」に相当する。

(2)
ア 本願明細書の段落【0033】に「 光源部20は、・・・第1波長帯域よりも広帯域で連続的な分光スペクトルを有する第2波長帯域の光を発する第2光源20bの2種類の光源を備える。・・・第2光源20bは、青色LED(以下、B-LED(Blue LightEmitting Diode)という)と、B-LEDが発する青色光(以下、B光という)によって緑色波長帯域から赤色波長帯域の蛍光を発生する蛍光体とを含み、蛍光体を透過するB光と、蛍光体が発する蛍光とによって白色光を発生する。」と記載され、段落【0034】に「第2光源20bを構成するB-LEDは、中心波長450nm、波長帯域430?470nmの青色光(以下、B光という)を発する青色光源であり、第2光源20bを構成する蛍光体は、B光の照射により、波長帯域が480?650nmに及ぶ蛍光を発する。このため、蛍光体が発する蛍光には、波長帯域が約480?600nmの緑色光(以下、G光という)と、波長帯域が約600nm?680nmの赤色光(以下、R光という)が含まれる。したがって、第2光源20bが発する光は、蛍光体を透過するB光と、励起光としてB光を照射する場合に蛍光体が発生する蛍光が含むG光及びR光とからなる白色光を発する。・・・そして、第2光源20bが発する第2波長帯域の光とは白色光であり、第2波長帯域とはB光からR光の波長帯域である。」と記載されている。

イ そうすると、本願発明14の第2光源は、青色LEDと、青色LEDが発する青色光によって緑色波長帯域から赤色波長帯域の蛍光を発生する蛍光体とを含む。

ウ さらに、本願発明14の第2波長帯域は、中心波長450nm、波長帯域430?470nmの青色光と、青色光の照射により、蛍光体が発する蛍光である波長帯域が約480?600nmの緑色光と、波長帯域が約600nm?680nmの赤色光が含まれ、青色光と緑色光及び赤色光とからなる白色光である。

エ 引用発明の「オ)」「中心波長445nmの青色レーザ光源51」は、「半導体発光素子」であって、「カ)」「青色レーザ光による」「蛍光体57からの」「概ね450nm?700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布とな」る「励起発光光」と「青色レーザ光に」「よって白色光が形成される」。

オ 上記(1)、ウ及びエより、引用発明の「オ)」「中心波長445nmの青色レーザ光」と「青色レーザ光による」「蛍光体57からの」「概ね450nm?700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布とな」る「励起発光光」に「よって」「形成される」「白色光」は、「中心波長405nmの紫色レーザ光」よりも広帯域で連続的なスペクトルを有することは明らかである。

カ 上記イを踏まえると、引用発明の「オ)」「中心波長445nmの青色レーザ光源51」である「半導体発光素子」と「蛍光体57」は2つまとめて、本願発明14の「前記第1波長帯域よりも広帯域で連続的なスペクトルを有する第2波長帯域の光を発する半導体光源である第2光源」に相当する。

キ 上記オ及びカを踏まえると、引用発明の「カ)」「中心波長445nmの輝線で表され」る「青色レーザ光」の「青色レーザ光源51」と、「概ね450nm?700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布とな」る「励起発光光」の「蛍光体57」は2つまとめて、本願発明14の「前記第1波長帯域よりも広帯域で連続的なスペクトルを有する第2波長帯域の光を発する半導体光源である第2光源」に相当する。

(3)
ア 第3波長帯域については、本願明細書の段落【0036】に、「主に第2光源20bが発する白色光から約450nmから約500nmの波長帯域の成分を低減した青色光(以下、Bs光という)・・・を生成する。Bs光のピーク波長は約440nm?450nmであり、Bs光は第2波長帯域の光(白色光)から生成される第3波長帯域の光である。」と記載され、同じく段落【0040】に「粘膜下の同じ深さにある血管に対して太さ分解能を有する第3波長帯域の光」と記載されていることから、本願発明14の第3波長帯域は、約440nm?450nmの青色波長帯域を含むものといえる。

イ また、第4波長帯域については、本願明細書の段落【0068】に、「血管に対して太さ分解能を有する約530nmから550nmの緑色波長帯域(第4波長帯域)を有する緑色狭帯域光(以下、Gn光)」と記載されていることから、本願発明14の第4波長帯域は、約530nmから550nmの緑色波長帯域を含むものといえる。

ウ 上記アを踏まえれば、引用発明の「オ)」「青色レーザ光源51の出射光」は「中心波長445nmの青色レーザ」であるから、本願発明14の「第3波長帯域の光」に相当する。

エ 上記(1)及びアを踏まえれば、引用発明の「ク)入力部17から術者名に対応する情報が入力されると、制御部67は、記憶部83の光量比テーブルを参照して所望の光量比を自動的に設定」することは、制御部67が、光量比を設定することであるから、本願発明14の「光量比設定部が、前記第1波長帯域の光と前記第3波長帯域の光の光量比を設定するステップ」に相当する。

オ さらに、引用発明の「ケ)制御部67は、この光量比に対応する各光源51,53の出射光量となるように各光源51,53を駆動する」ことは、本願発明14の「光源制御部が、前記光量比設定部が設定する前記光量比を用いて前記第1光源及び前記第2光源を制御するステップ」に相当する。

(4)
ア 引用発明の「光源装置41」は、「内視鏡装置100」の「光源装置41」であるから、本願発明14の「内視鏡光源装置」に相当する。

イ 引用発明の「コ)」「光源装置41の駆動方法。」は、「ク)入力部17から術者名に対応する情報が入力される」ことにより駆動する方法であるから、人による光源装置41の作動方法といえる。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、引用発明の「コ)光源装置41の駆動方法。」は、本願発明14の「内視鏡光源装置の作動方法。」に相当する。

(5)したがって、本願発明14と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

2 一致点
「観察対象の粘膜下にある血管に対して、深さ分解能を有する第1波長帯域の光を発する半導体光源である第1光源と、
前記第1波長帯域よりも広帯域で連続的なスペクトルを有する第2波長帯域の光を発する半導体光源である第2光源と、
を備える内視鏡光源装置の作動方法において、
光量比設定部が、前記第1波長帯域の光と前記第3波長帯域の光の光量比を設定するステップと、
光源制御部が、前記光量比設定部が設定する前記光量比を用いて前記第1光源及び前記第2光源を制御するステップと、
を備える内視鏡光源装置の作動方法。」

3 相違点
本願発明14が、「450nmから500nmの波長帯域の光を含む光を低減するためのフィルタであって、粘膜下の同じ深さにある血管に対して、太さ分解能を有する第3波長帯域の光、及び、前記第3波長帯域とは異なり、かつ、血管に対して太さ分解能を有する第4波長帯域の光のみを、前記第2波長帯域の光から生成する第3の波長帯域の光及び第4の波長帯域の光生成用帯域制限フィルタ」を備えるのに対して、引用発明は、そのようなフィルタを備えていない点。

第6 判断
1 相違点について
引用文献3には、 ダイクロイックフィルタ40を用いて、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された390?445nmの波長帯域の光と530?550nmの波長帯域の光を照射することで、粘膜表層の毛細血管、粘膜微細模様を強調して表示することができるNBI(Narrow BandImaging:狭帯域光観察)モード(特に【0028】、【0029】参照)が記載されている。
そして、引用発明は、生体組織の観察時に、生体組織の所望の組織情報を、診断に適したより明瞭な状態で取得しようとするものである。
そうすると、引用発明に、引用文献3に記載された上記NBIモードを採用して相違点に係る本願発明14の構成とすることは、当業者が容易に想到するものである。

2 効果について
本願発明14の奏する作用効果は、引用文献1及び3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3(1)」において、「本願請求項1は、「観察対象の粘膜下にある血管に対して、深さ分解能を有する第1波長帯域の光を発すること」と、「粘膜下の同じ深さにある血管に対して、太さ分解能を有する第3波長帯域の光、及び、血管に対して太さ分解能を有する第4波長帯域の光を生成すること」と、「第1波長帯域の光と第3波長帯域の光の光量比を設定し、粘膜に対する血管のコントラストを、血管の深さ及び太さに応じた目標コントラストにする」との3つの技術的特徴を備えることを特徴とします。
拒絶査定の備考欄においては、本願の「第1、第3、第4波長帯域の光」について、本願明細書の記載([0034]、[0036]、[0044]、[0045]、[0048]、[0050]、[0068])から、「第1波長帯域の光=400?430nm、第3波長帯域の光=約440?45nm、第4波長帯域の光=500?600nm」の波長域に限定解釈し、これら数値範囲の波長域の光については、引用文献1等に記載及び示唆されているので、進歩性が無いと判断されています。
これに対して、引用文献1の[0042]には、紫色レーザ光が粘膜微細模様のコントラストを高めることについて記載があります。しかしながら、引用文献1には、本願請求項1において、第1波長帯域の光が有する「血管に対する深さ分解能」、及び、第3波長帯域の光と第4波長帯域の光が有する「血管に対する太さ分解能」と、具体的な波長域(400?430nm、約440?45nm、500?600nm)との関係性については、記載及び示唆されていません。上記のような関係性については、他の引用文献2?4についても記載及び示唆がありません。したがって、本願請求項1の「第1、第3、第4波長帯域の光」について、本願明細書に記載の波長域に限定解釈すべき根拠はありません。
更には、「第1波長帯域の光と第3波長帯域の光の光量比を設定し、粘膜に対する血管のコントラストを、血管の深さ及び太さに応じた目標コントラストにすること」についても、引用文献1?4に記載及び示唆がありません。
したがって、本願請求項1は、引用文献1?4に対して進歩性を有すると思料します。また、また、本願請求項2?12は、請求項1に従属しますので、当然に進歩性を有すると思料します。また、本願請求項13は、請求項1の内視鏡光源装置の構成を備える内視鏡システムのクレームですので、当然に進歩性を有すると思料します。また、本願請求項14は、請求項1に対応する作動方法のクレームですので、当然に進歩性を有すると思料します。」と主張する。
しかし、「血管に対する深さ分解能」、及び「血管に対する太さ分解能」に対応する波長帯域は、いずれも引用発明が用いている波長帯域であるから、「血管に対する深さ分解能」、及び「血管に対する太さ分解能」は引用発明も備えているものといえる。
さらに、本願発明14は、血管の深さ及び太さに応じた目標コントラストに関する構成を備えていない。
したがって、出願人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明14は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-01-30 
結審通知日 2020-02-04 
審決日 2020-02-18 
出願番号 特願2015-39625(P2015-39625)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 信田 昌男
森 竜介
発明の名称 内視鏡光源装置、内視鏡システム、及び内視鏡光源装置の作動方法  
代理人 特許業務法人小林国際特許事務所  

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