• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1361390
審判番号 不服2019-1095  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-28 
確定日 2020-04-13 
事件の表示 特願2013-251059「ブレーキ機能を有するハイブリッド自動車」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月20日出願公開、特開2015-74440〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月4日(パリ条約による優先権主張2013年(平成25年)10月10日(KR)大韓民国)の出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成29年5月29日付け(発送日:同年6月2日) :拒絶理由通知書
平成29年8月31日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年1月29日付け(発送日:同年2月2日) :拒絶理由通知書
平成30年4月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年9月26日付け(発送日:同年10月2日):拒絶査定
平成31年1月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和元年7月31日 :上申書の提出

第2 平成31年1月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前の平成30年4月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
エンジンを始動させるか、または前記エンジンによって電気を生成する第1モータ/発電機と;
前記エンジンの回転力がホィール側に伝達される回転力伝達経路上に配置されて、回転力を選択的に伝達するクラッチと;
前記回転力伝達経路で前記クラッチの後方に配置されて、回転力を付加したり電気を生成する第2モータ/発電機と;
前記第1モータ/発電機及び前記第2モータ/発電機と電気的に接続されるインバータと;
前記インバータと電気的に接続されて、電気エネルギーを保存したり出力するバッテリーと;
制動要求条件が満たされると、前記クラッチを解除し、前記ホィールから前記第2モータ/発電機に伝達される回転力を通じて前記第2モータ/発電機が電気を生成するようにし、前記第2モータ/発電機で生成された電気が前記第1モータ/発電機で消耗されるようにする制御部と;
を含み、
前記バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値になると、前記制動要求条件が満たされることを特徴とする、ブレーキ機能を有するハイブリッド自動車。」

(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。
「【請求項1】
エンジンを始動させるか、または前記エンジンによって電気を生成する第1モータ/発電機と;
前記エンジンの回転力がホィール側に伝達される回転力伝達経路上に配置されて、回転力を選択的に伝達するクラッチと;
前記回転力伝達経路で前記クラッチの後方に配置されて、回転力を付加したり電気を生成する第2モータ/発電機と;
前記第1モータ/発電機及び前記第2モータ/発電機と電気的に接続されるインバータと;
前記インバータと電気的に接続されて、電気エネルギーを保存したり出力するバッテリーと;
制動要求条件が満たされると、前記クラッチを解除し、前記ホィールから前記第2モータ/発電機に伝達される回転力を通じて前記第2モータ/発電機が電気を生成するようにし、前記第2モータ/発電機で生成された電気が前記第1モータ/発電機で消耗されるようにする制御部と;
を含み、
前記バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値になりつつ、前記クラッチの結合を通じて前記制動要求トルクが具現できない場合、前記制動要求条件が満たされ、
前記制御部は、前記制動要求条件に応じた制動要求トルクを演算し、前記制動要求トルクに対応して前記第2モータ/発電機が電気を生成するようにし、前記第2モータ/発電機で生成された電気は、前記インバータを通じて前記第1モータ/発電機を駆動し、
前記第2モータ/発電機から前記インバータに供給される電力は、前記第2モータ/発電機の効率、モータ制動トルク、及びモータ速度によって演算され、
前記エンジンの機械的制動パワーは、前記第1モータ/発電機の効率と前記インバータを通じて前記第1モータ/発電機に供給される電力によって演算され、
前記エンジンの目標速度は、前記機械的制動パワーによる予め設定されたマップテーブルによって演算または選択されることを特徴とする、ブレーキ機能を有するハイブリッド自動車。」

2.補正の適否
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、「制動要求条件が満たされること」に関し、以下の記載がある。

ア 「前記制御部は、前記制動要求条件に応じた制動要求トルクを演算し、前記制動要求トルクに対応して前記第2モータ/発電機が電気を生成するようにし、前記第2モータ/発電機で生成された電気は、前記インバータを通して前記第1モータ/発電機を駆動することができる。」(段落【0008】)

イ 「このような目的を達成するための本発明によるブレーキ機能を有するハイブリッド自動車において、運転者が自動車を走行する途中、要求トルクが0より小さくて、バッテリーの充電量が設定値以上であれば、第2モータ/発電機によって電気エネルギーを生成してエンジンブレーキ機能を行い、前記第2モータ/発電機で生成された電気エネルギーは、インバータを通じてバッテリーに充電されずに、前記エンジンと連結された第1モータ/発電機で消耗させることにより、前記バッテリーの充電量が設定値以上であっても、前記第2モータ/発電機を通じてエンジンブレーキ機能を安定的に行うことができる。」(段落【0017】)

ウ 「本発明の実施例において、前記制御部180は、前記バッテリー140の充電量と要求トルク量を感知し、前記バッテリー140の充電量が設定値以上であり、前記要求トルク量が負の値(ブレーキ条件)を有すると、制動要求条件が満たされることと判断する。」(段落【0027】)

エ 「これと同時に、前記制動要求条件は、加速ペダルとブレーキペダルが全て作動しないエンジンブレーキ機能が要求される条件を含むか、またはブレーキが踏まれる運転条件を含むことができる。」(段落【0029】)

オ 「したがって、本発明において、運転者が自動車を走行する途中、加速ペダルとブレーキペダルを踏んでいないか、またはブレーキが作動して要求トルクが0より小さいと、前記第2モータ/発電機120を通じて電気エネルギーを生成して、前記第2モータ/発電機120を通じてエンジンブレーキ機能を行い、前記第2モータ/発電機120で生成された電気エネルギーは、前記インバータ130を通じて前記バッテリー140に充電されずに、前記第1モータ/発電機150で消耗させることにより、前記バッテリー140の充電量が設定値以上であっても、前記第2モータ/発電機120を通じてエンジンブレーキ機能を安定的に行うことができる。」(段落【0030】)

カ 「時間によって傾度が設定された負の値を有し、予め設定されたエンジンブレーキ機能を行うためのマイナス値の要求トルクが設定され、前記要求トルクによってエンジンブレーキトルクが必要である。」(段落【0033】)

キ 「図3を参照すれば、車両の目標速度と実際速度が入力され、その差によって速度制御部がエンジン160の速度を制御し、これにより要求トルクが出力されて、このような要求トルクと充電量(SOC)によってロジックが行われる。」(段落【0036】)

ク 「図4を参照すれば、S400で、制御が開始され、S420で、前記バッテリー140の充電量(SOC)が予め設定された臨界値より大きくて、要求トルクが0より小さいかを判断する。」(段落【0039】)

ケ 「ここで、前記バッテリー140の充電量が前記臨界値より大きいことは、前記バッテリー140が十分に充電されていることを意味し、前記要求トルクが0より小さいことは、ブレーキが踏まれているか、またはエンジンブレーキ機能が行われることを意味する。」(段落【0040】)

コ 「S410で条件が満たされれば、S420が行われ、条件が満たされなければ、その他の制御を行う。前記その他の制御は、既に公知された技術であるので、これに対する詳細な説明は省略する。」(段落【0041】)

サ 「S420で、前記エンジン160の燃料噴射インジェクターをオフ(停止)させ、前記クラッチ170を解除し、S430で前記要求トルクによって前記第2モータ/発電機120のトルクを制御する。」(段落【0042】)

上記アないしサの記載からみて、当初明細書等には、「バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値にな」ると、「制動要求条件が満たされる」ことは記載されている。しかしながら、「バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値にな」り、さらに「クラッチの結合を通じて前記制動要求トルクが具現できない」場合、「制動要求条件が満たされる」ことは明記されていない。
また、当初明細書等には、「クラッチの結合」及び「クラッチの解除」に関し、上記サとともに以下の記載がある。

シ 「したがって、前記クラッチ170が結合されるか、または解除されて、燃料噴射インジェクターが制御され、前記第1モータ/発電機150が作動して、前記第2モータ/発電機120のトルクが制御される。」(段落【0037】)

上記サ及びシの記載からみて、当初明細書等には、燃料噴射インジェクターが制御され、第2モータ/発電機120のトルクが制御されるときにクラッチ170が結合または解除されることは記載されているといえるが、「クラッチの結合を通じて前記制動要求トルクが具現できない」場合、「制動要求条件が満たされる」ことは明記されていない。また、上記サ及びシの記載は「制動要求条件」に含まれる条件に係る記載でないから、「クラッチの結合を通じて前記制動要求トルクが具現できない」場合、「制動要求条件が満たされる」ことを示唆するものでもない。
そうすると、本件補正により追加された「前記バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値になりつつ、前記クラッチの結合を通じて前記制動要求トルクが具現できない場合、前記制動要求条件が満たされ」ることは、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項でもないから、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3.上申書における請求人の主張について
令和元年7月31日の上申書において、請求人は「出願当初明細書の段落0007、0008、0028、0042、出願当初特許請求の範囲の請求項1、請求項2に記載されておりますように、制動要求条件が満たされると、クラッチが解除され、更にクラッチが解除された状態にて制動要求トルクが実現されるようにします。また、出願当初明細書の段落0014、0015、0029、0030、0040、出願当初特許請求の範囲の請求項8、請求項9に記載されておりますように、制動要求条件は、制動要求トルクによって判断され、制動要求条件は、加速ペダルが動作しないエンジンブレーキ状態を含んでおります。なお、エンジンブレーキ状態では、クラッチは解除されておらず、つまりクラッチは結合しております。すなわち、クラッチは結合している状態で、制動要求条件が満足されているか否かを判断され、そして、クラッチが結合状態にあり且つ要求トルクが具現されていない場合に、制動要求条件が満たされることになります。
以上のことから、平成31年1月28日付け手続補正書で追加した『前記クラッチの結合を通じて前記制動要求トルクが具現できない場合』は、出願当初明細書および出願当初特許請求の範囲に記載された事項の範囲内であり、平成31年1月28日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の2第1項の規定を満たしております。」と主張する。
しかしながら、当初明細書等に記載された発明が、「クラッチは結合している状態で、制動要求条件が満足されているか否かを判断」されるものであるとしても、当初明細書等に記載された発明における「制動要求条件が満足されているか否か」は、「加速ペダルとブレーキペダルを踏んでいないか、またはブレーキが作動して要求トルクが0より小さい」ことと「バッテリー140の充電量」により判断されるものであり、「クラッチの結合」と「制動要求条件」を関連させることは記載も示唆もされていない。すなわち、「クラッチは結合している状態で、制動要求条件が満足されているか否かを判断され」ることと「クラッチが結合状態にあり且つ要求トルクが具現されていない場合に、制動要求条件が満たされる」こととは異なる技術事項であり、後者は当初明細書等に記載も示唆もされていない。
したがって、請求人の上記主張は当を得たものではなく、採用できない。

4.むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成31年1月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成30年4月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2 1.(1)に記載のとおりのものである。

2.拒絶査定の概要
原査定の概要は以下のとおりである。

この出願については、平成30年1月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由1(進歩性)によって、拒絶をすべきものです。
・請求項1、5、6に対し、引用文献等1-3
・請求項2-4、7-9に対し、引用文献等1-4

<引用文献等一覧>
1.特開2012-6525号公報
2.特開2011-189814号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2005-132181号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2006-187167号公報

そして、平成30年1月29日付け(発送日:同年2月2日)の拒絶理由通知書における理由1に係る拒絶の理由は以下のとおりである

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1に対し、引用文献等1-3
請求項2ないし8に対し、引用文献等1-4

<引用文献等一覧>
1.特開2012-6525号公報
2.特開2011-189814号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2005-132181号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2006-187167号公報

3.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2012-6525号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ハイブリッド車の回生制御装置」に関して、図面(特に、図1ないし図4を参照。)とともに次の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。)。

ア 「【0012】
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたもので、ハイブリッド車において、バッテリの充電が困難な場合にも、回生制動を制限することなく確実に実施することができるようにした、ハイブリッド車の回生制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のハイブリッド車の回生制御装置は、走行駆動が要求されると駆動輪を駆動する一方で、回生駆動が要求されると回生制動を行なって発電電力を発生する走行用モータと、エンジンに連結されて前記エンジンによる回転力で発電するモータジェネレータと、前記走行用モータへの電力供給を行なうバッテリと、前記走行用バッテリへの充電を規制すべきか否かを判定する判定手段とを備えたハイブリッド車であって、前記判定手段により前記バッテリへの充電を規制すべきであると判定された際に、前記回生制動による発電電力を用いて前記モータジェネレータを作動させて前記エンジンを駆動させるように制御する制御手段とをそなえていることを特徴としている。
【0014】
前記制御手段は、前記回生制動による発電電力から前記走行用バッテリへ充電する電力を減じた電力分を用いて、前記モータジェネレータを作動させることが好ましい。
前記エンジン駆動力を前記駆動輪へ伝達する伝達経路に、前記駆動力を断接する摩擦係合要素をそなえ、前記制御手段は、前記摩擦係合要素を駆動力遮断状態に制御することが好ましい。
【0015】
前記判定手段は、前記バッテリの充電状態(SOC)が予め設定された充電上限値よりも大きいと前記バッテリへの充電を規制すべきであると判定することが好ましい。
前記判定手段は、前記バッテリの温度状態が予め設定された温度上限値よりも大きい場合、及び/又は、前記バッテリの温度状態が予め設定された温度下限値よりも小さい場合に、前記バッテリへの充電を規制すべきであると判定することが好ましい。」

イ 「【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
<構成>
まず、本実施形態にかかるハイブリッド車の駆動系を説明する。
図1に示すように、本ハイブリッド車の駆動系は、走行用モータ(走行用電動機)1と、エンジン(内燃機関)2と、モータジェネレータ(ジェネレータ)3と、摩擦係合要素(動力断接クラッチ)4と、駆動輪5と、インバータ6と、走行用バッテリ(高圧電源)7と、をそなえ、走行用モータ1及びジェネレータ3は、走行用バッテリ7との間に介装されたインバータ6を通じて作動を制御される。また、インバータ6、エンジン2、動力断接クラッチ4はECU(電子制御ユニット)10によって制御される。
【0021】
なお、詳細には図示しないが、ECU10は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)及びタイマカウンタ等を含んで構成され、ECU10には、アクセル開度センサ21,エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数センサ(又は、ジェネレータ3の回転数を検出するジェネレータ回転数センサ)24といった車両側情報の各種センサや、走行用バッテリ7のバッテリセルの電流(セル電流),電圧(セル電圧)から走行用バッテリ7の充電状態(SOC)を検出する充電状態検出回路22や、走行用バッテリ7のバッテリセルの温度(セル温度)を検出する温度センサ23が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。また、ECU10には、インバータ6を通じて、走行用モータ1の電流(モータ電流)及び電圧(モータ電圧)、モータ回転数も入力される。
【0022】
走行用モータ1は、駆動輪5と常時接続されており、アクセル開度センサ21によりドライバの出力要求(アクセル踏み込み)が検知されると、走行用バッテリ7の電力を用いてモータ(電動機)として作動し出力トルクを発生して、車両の走行のための駆動トルク(走行駆動力)として駆動輪5に出力する。
また、ドライバがアクセルを開放するとこれがアクセル開度センサ21により検知され、走行用モータ1はジェネレータとして機能し、回生制動を実施する。つまり、駆動輪5からの回転トルクを受けて発電しこの発電負荷を車両の制動力として発揮する。この時には、クラッチ4を切り離し、エンジン2によるエンジンブレーキを与えないようにして、エンジンブレーキ相当の制動力を可能な限り回生制動により賄うようにすることが好ましい。
【0023】
エンジン2は、ジェネレータ3と直結されると共に動力断接クラッチ4を介して駆動輪5と断接可能に接続されている。アクセル開度センサ21により検出されるドライバの出力要求(アクセル踏み込み)が一定以上(例えば、アクセル開度が基準値以上、又は、アクセル開度増加率が基準値以上)となって走行用モータ1のみでは駆動トルクが足りない場合や、充電状態検出回路22により検出される走行用バッテリ7のSOCが基準値以下で走行用モータ1の出力を抑えたい場合には、エンジン2にも走行駆動力が要求される。
【0024】
このときには、クラッチ4を接続して、エンジン2の出力トルクを駆動輪5に供給する。この場合、ジェネレータ3を無負荷状態にしてエンジン2の出力トルクを全て駆動輪5に供給する状態と、ジェネレータ3を発電負荷状態にしてエンジン2の出力トルクの一部を駆動輪5に供給し残りのトルクでジェネレータ3を駆動する状態とを取り得る。
一方、エンジン2に走行駆動力が要求されない場合には、クラッチ4を動力遮断にする。この状態では、走行用バッテリ7のSOCが基準領域内にある限り、エンジン2は停止されるが、走行用バッテリ7のSOCが基準領域以下となり走行用バッテリ7の充電が必要になると、エンジン2が作動してジェネレータ3を駆動する。
【0025】
つまり、ECU10は、走行用バッテリ7のSOCを、予め設定した上限値と下限値とで規定した一定の範囲内に管理する。走行用バッテリのSOCが下限値或いは下限値付近まで低下したら、エンジン2の出力トルクによりジェネレータ3を駆動して発電を行なって、この電力によりSOCが上限値或いは上限値付近に到達するまで走行用バッテリ7を充電する。また、ジェネレータ3による発電のほか、上述の回生制動による発電によっても、走行用バッテリのSOCが上昇する。
【0026】
したがって、走行用バッテリ7のSOCが上限値或いは上限値付近に到達している場合には、走行用バッテリ7は更なる充電を受け入れることはできなくなる。このため、走行用バッテリ7のSOCが上限値或いは上限値付近にある場合には、回生制動すべき状況になっても回生制動を中止する或いは回生制動に制限を加えて、走行用バッテリ7のSOCが上限値を超えないようにすることが必要になる。」

ウ 「【0031】
なお、M1,M2は、予め得られた電池の温度特性から設定され、M1はセル温度が大きくなるほど補正係数を小さくし入力電力を規制する。M2は、セル温度が小さくなるほど補正係数を小さくし入力電力を規制する。
充電規制判定手段11では、回生時には、回生電力演算部13で演算された回生電力と、目標電池入力電力演算部16で演算された目標電池入力電力と、を比較して、回生電力が目標電池入力電力よりも大であれば、回生電力による走行用バッテリ7の充電を規制すると判定し、回生電力が目標電池入力電力以下であれば、回生電力による走行用バッテリ7の充電を規制しないと判定する。」

エ 「【0034】
<作用、効果>
本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車の回生制御装置は、上述のように構成されているので、回生制御時には、図3に示すように、ジェネレータ3が制御される。
【0035】
つまり、車両の走行中に、ドライバがアクセルを開放するとこれがアクセル開度センサ21により検知され、走行用モータ1はジェネレータとして機能し、回生制動を実施する。この時には、クラッチ4を切り離し、エンジン2によるエンジンブレーキを与えないようにして、図3に示す処理を行なう。
つまり、まず、充電状態検出回路22により検出される走行用バッテリ7のSOCに基づいて走行用バッテリ7へ入力可能な電力(電池入力電力)を演算する(ステップS10)。
【0036】
次に、セル温度Tが上限値(電池最高セル温度)Ta以上か否かを判定し(ステップS20)、セル温度Tが上限値Ta以上なら、補正係数演算部15によりマップM1を用いてセル温度Tを超えた分に応じて低下するように補正係数を設定する(ステップS30)。セル温度Tが上限値Ta以上でなければ、補正係数はデフォルト値である1のままとする。
【0037】
次に、セル温度Tが下限値(電池最低セル温度)Tb以下か否かを判定し(ステップS40)、セル温度Tが下限値Tb以下なら、補正係数演算部15によりマップM2を用いてセル温度Tを下回った分に応じて低下するように補正係数を設定する(ステップS50)。セル温度Tが下限値Tb以下以上でなければ、補正係数はデフォルト値である1のままとする。
【0038】
次に、目標電池入力電力演算部16において、電池入力電力演算部14により演算された電池入力電力に補正係数演算部15により演算された補正係数を適宜乗算補正して目標電池入力電力を演算する(ステップS60)。
そして、充電規制判定手段11により、回生電力演算部13で演算された回生電力と、目標電池入力電力演算部16で演算された目標電池入力電力とを比較して、回生電力が目標電池入力電力よりも大か否かを判定する(ステップS60)。回生電力が目標電池入力電力よりも大であれば、回生電力による走行用バッテリ7の充電を規制すると判定し、ステップS70に進むが、回生電力が目標電池入力電力以下であれば、回生電力による走行用バッテリ7の充電規制制御は行なわない。
【0039】
回生電力による走行用バッテリ7の充電を規制する場合、まず、ジェネレータ消費電力演算部17により、回生電力から目標電池入力電力を減算した値(余剰電力)を、ジェネレータ消費電力として演算する(ステップS80)。さらに、ジェネレータ目標回転数演算部18により、相関マップM3から、ジェネレータ消費電力に対応したジェネレータ回転数(=エンジン回転数)をジェネレータ目標回転数として演算する(ステップS90)。
【0040】
そして、ジェネレータ目標回転数演算部18により算出されたジェネレータ目標回転数を制御パラメータとして出力して、ジェネレータ3がジェネレータ目標回転数によりエンジン2を駆動するように、エンジン回転数センサ(又は、ジェネレータ回転数センサ)24の検出値に基づいて回転数フィードバック制御を実施する(ステップS100)。
回生制動時には、このような制御が行なわれるので、例えば、回生電力が目標電池入力電力よりも小さければ、図4(a)に示すように、回生エネルギ(回生電力)を全て走行用バッテリ7の充電にあてがい、走行用バッテリ7の充電規制制御は行なわない。また、回生電力が目標電池入力電力よりも大きいが、走行用バッテリ7のSOCは上限値に達していない場合、図4(b)に示すように、回生エネルギ(回生電力)の一部を走行用バッテリ7の充電にあてがい、残りの回生エネルギ(回生電力)をジェネレータ3によるエンジン2の駆動にあてがう。また、走行用バッテリ7のSOCが上限値に達していて、又は補正係数が0になって、目標電池入力電力が0となった場合、図4(c)に示すように、回生エネルギ(回生電力)を全てジェネレータ3によるエンジン2の駆動にあてがう。このとき、エンジン2はジェネレータ3の負荷として作用する。
【0041】
このようにして、回生電力が目標電池入力電力よりも大きい場合、つまり、走行用バッテリ7への充電を規制すべき状況下にある場合には、回生制動時は、回生制動による発電電力を用いてジェネレータ3をモータとして作動させてエンジン2を駆動するので、回生電力の一部又は全部がジェネレータ3によるエンジン2の駆動に消費され、走行用バッテリ7への充電を規制しながら回生制動を制限することなく実施することができ、走行用バッテリ7の保護を図りながら、良好なドライブフィーリングを確保することができる。
【0042】
特に、ジェネレータ3によりエンジン2を駆動する場合、走行用バッテリ7への充電を規制する電力分に応じて回生制動による発電電力を消費することにより、走行用バッテリ7のSOCを増減させることなく、通常通りの回生制動を実施することができる。
また、このようにジェネレータ3によりエンジン2を駆動する場合、予め、クラッチ4によりエンジン2が動力系と切り離されるので、駆動されるエンジン2が車両の制動フィーリングに影響を及ぼすこともなく、良好な制動フィーリングを維持することができる。」

オ 図1の図示内容から、走行用モータ1と駆動輪5は、動力断接クラッチ4からみて同じ側に配置されているといえる。

カ 上記イの段落【0021】の記載事項及び図1の図示内容から、走行用モータ1及びジェネレータ3はインバータ6と電気的に接続されており、インバータ6は走行用バッテリ7と電気的に接続されているといえる。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「エンジン2を回転駆動させるか、または前記エンジン2によって発電を行うジェネレータ3と;
エンジン2の駆動力を駆動輪5へ伝達する伝達経路に備えられ、エンジン2を駆動輪5と断接可能に接続する動力断接クラッチ4と;
伝達経路の前記動力断接クラッチ4の駆動輪5と同じ側に配置されて、駆動トルクを発生したり回生電力を発電する走行用モータ1と;
前記ジェネレータ3及び前記走行用モータ1と電気的に接続されるインバータ6と;
前記インバータ6と電気的に接続されて、充電したり走行用モータ1に電力供給を行う走行用バッテリ7と;
ドライバがアクセルを開放すると、前記動力断接クラッチ4を切り離し、前記駆動輪5からの回転トルクにより前記走行用モータ1が回生電力を発電するようにし、走行用バッテリ7のSOCが上限値に達していると、前記走行用モータ1で発電された回生電力が前記ジェネレータ3によるエンジン2の駆動にあてがう電子制御ユニット10と;
を含む、ハイブリッド車の回生制御装置。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「エンジン2」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「エンジン」に相当し、以下同様に、「エンジン2によって発電を行う」は「エンジンによって電気を生成する」に、「ジェネレータ3」は「第1モータ/発電機」に、「駆動輪5」は「ホィール側」に、「エンジン2の駆動力を駆動輪5へ伝達する伝達経路に備えられ」は「エンジンの回転力がホィール側に伝達される回転力伝達経路上に配置され」に、「伝達経路」は「回転力伝達経路」に、「エンジン2を駆動輪5と断接可能に接続する」は「回転力を選択的に伝達する」に、「動力断接クラッチ4」は「クラッチ」に、「駆動トルクを発生」は「回転力を付加」に、「走行用モータ1」は「第2モータ/発電機」に、「インバータ6」は「インバータ」に、「充電」は「電気エネルギーを保存」に、「走行用モータ1に電力供給を行う」は「出力する」に、「走行用バッテリ7」は「バッテリー」に、「切り離し」は「解除」に、「駆動輪5からの回転トルク」は「ホィールから第2モータ/発電機に伝達される回転力」に、「ジェネレータ3によるエンジン2の駆動にあてがう」は「第1モータ/発電機で消耗されるようにする」に、「電子制御ユニット10」は「制御部」に、「ハイブリッド車の回生制御装置」は「ブレーキ機能を有するハイブリッド自動車」にそれぞれ相当する。
後者の「回生電力を発電」はその機能、構成及び技術的意義からみて「電気を生成」に相当し、さらに「回生電力」は「電気」に、「発電」は「生成」にそれぞれ相当する。
後者の「伝達経路の前記動力断接クラッチ4の駆動輪5と同じ側に配置」は、「前記回転力伝達経路で前記クラッチの後方に配置」に相当する事項を備えていることは明らかである。
後者の「ドライバがアクセルを解放する」ことは、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「制動要求トルクが負の値になる」ことに相当する。そして、後者の「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」と前者の「バッテリーの充電量が臨界値以上」とは、「バッテリーの充電量が所定値以上」という限りで一致する。してみると、後者の「ドライバがアクセルを解放する」こと及び「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」ことと前者の「バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値になると、前記制動要求条件が満たされる」こととは、「バッテリーの充電量が所定値以上となり、制動要求トルクが負の値になると、所定の条件が満たされる」ことという限りで一致する。そうすると、後者の「ドライバがアクセルを解放すると、前記動力断接クラッチ4を切り離し、前記駆動輪5から前記走行用モータ1の回転トルクにより前記走行用モータ1が回生電力を発電するようにし、走行用バッテリ7のSOCが上限値に達していると、前記走行用モータ1で発電された回生電力が前記ジェネレータ3によるエンジン2の駆動にあてがう」ことと前者の「制動要求条件が満たされると、前記クラッチを解除し、前記ホィールから前記第2モータ/発電機に伝達される回転力を通じて前記第2モータ/発電機が電気を生成するようにし、前記第2モータ/発電機で生成された電気が前記第1モータ/発電機で消耗されるようにする」こととは、「所定の条件が満たされると、前記クラッチを解除し、前記ホィールから前記第2モータ/発電機に伝達される回転力を通じて前記第2モータ/発電機が電気を生成するようにし、前記第2モータ/発電機で生成された電気が前記第1モータ/発電機で消耗されるようにする」ことという限りで一致する。
また、後者の「エンジン2を回転駆動させる」と前者の「エンジンを始動させる」とは、「エンジンを駆動させる」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「エンジンを駆動させるか、または前記エンジンによって電気を生成する第1モータ/発電機と;
前記エンジンの回転力がホィール側に伝達される回転力伝達経路上に配置されて、回転力を選択的に伝達するクラッチと;
前記回転力伝達経路で前記クラッチの後方に配置されて、回転力を付加したり電気を生成する第2モータ/発電機と;
前記第1モータ/発電機及び前記第2モータ/発電機と電気的に接続されるインバータと;
前記インバータと電気的に接続されて、電気エネルギーを保存したり出力するバッテリーと;
所定の条件が満たされると、前記クラッチを解除し、前記ホィールから前記第2モータ/発電機に伝達される回転力を通じて前記第2モータ/発電機が電気を生成するようにし、前記第2モータ/発電機で生成された電気が前記第1モータ/発電機で消耗されるようにする制御部と;
を含み、
前記バッテリーの充電量が所定値以上となり、制動要求トルクが負の値になると、前記所定の条件が満たされる、ブレーキ機能を有するハイブリッド自動車。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「エンジンを駆動させる」ことに関し、前者は「エンジンを始動させる」ことであるのに対し、後者は「エンジン2を回転駆動させる」ことである点。

[相違点2]
「バッテリーの充電量が所定値以上とな」ることにおける「所定値」に関し、前者は「臨界値」であるのに対し、後者は「上限値」である点。

[相違点3]
「所定の条件が満たされる」ことに関し、前者は「バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値になると、制動要求条件が満たされる」ことであるのに対し、後者はかかる構成を備えるか不明である点。

5.判断
相違点について検討する。
相違点1について検討するに、引用発明は、エンジン2の回転駆動をジェネレータ3をモータとして回転させることにより行うものである。また、一般に、エンジンを始動するときにモータを用いることは例示するまでもない慣用手段にすぎない。そうすると、引用発明において、上記慣用手段を踏まえてエンジン2をジェネレータ3をモータとして回転させることにより始動させるようにし、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。

相違点2について検討するに、相違点2に係る本願発明の発明特定事項である「臨界値」は本願の発明の詳細な説明の段落【0027】に記載されるとおり「バッテリーの充電量の上限値と下限値の間に設定された値」である。そして、引用文献の段落【0026】(3.ウを参照。)には「走行用バッテリ7のSOCが上限値或いは上限値付近にある場合には、回生制動すべき状況になっても回生制動を中止する或いは回生制動に制限を加えて、走行用バッテリ7のSOCが上限値を超えないようにすることが必要になる。」と記載されている。そして、段落【0026】の記載から、引用文献には「SOCが上限値或いは上限値付近にある場合」であるか否かを判定するための、「SOCが上限値と下限値の間の値」を備えていることが示唆されているといえる。してみると、引用発明において、「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」ことを、「走行用バッテリ7のSOCが上限値或いは上限値付近にある場合」である「臨界値」以上とすること、すなわち、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。

相違点3について検討するに、引用文献の段落【0034】ないし【0041】の記載(3.エを参照。)をみると、引用発明は、ドライバがアクセルを開放すると回生制動を実施し、動力断接クラッチ4を切り離すとともに、段落【0035】ないし【0040】、図3及び図4に図示された処理を行う。そして、段落【0035】ないし【0040】、図3及び図4に図示された処理において、「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」場合か否かを判定するものであるから、引用発明において、「ドライバがアクセルを開放する」ことと「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」ことが同時に起き得ることは、当業者であれば容易に理解し得たことである。そして、「ドライバがアクセルを開放する」ことと「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」ことが同時に起きる場合は、「バッテリーの充電量が臨界値以上となり且つ制動要求トルクが負の値になると、制動要求条件が満たされる」場合であり、この場合、「動力断接クラッチ4を切り離し、駆動輪5からの回転トルクを走行用モータ1が回生電力を発電するよう」にすることと「走行用モータ1で発電された回生電力がジェネレータ3によるエンジン2の駆動にあてがう」ことが同時に行われることは当業者であれば容易に理解し得たことである。
してみると、引用発明も相違点3に係る本願発明の発明特定事項を備えていると理解できる。このように理解した場合、相違点3は実質的な相違であるとはいえない。
仮に、このように理解できないとしても、引用文献に「ドライバがアクセルを開放する」ことと「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」ことが同時に起き得ることは示唆されているといえるから、引用発明において、「ドライバがアクセルを開放する」ことが起き且つ「走行用バッテリ7のSOCが上限値に達している」ことが起きたときに、「動力断接クラッチ4を切り離し、駆動輪5からの回転トルクを走行用モータ1が回生電力を発電するよう」にするとともに「走行用モータ1で発電された回生電力がジェネレータ3によるエンジン2の駆動にあてがう」ようにすること、すなわち、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-19 
結審通知日 2019-11-22 
審決日 2019-12-03 
出願番号 特願2013-251059(P2013-251059)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 561- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神山 貴行  
特許庁審判長 渋谷 善弘
特許庁審判官 水野 治彦
鈴木 充
発明の名称 ブレーキ機能を有するハイブリッド自動車  
代理人 関根 毅  
代理人 関根 毅  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 堀田 幸裕  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ