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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1361397
審判番号 不服2019-4545  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-05 
確定日 2020-04-16 
事件の表示 特願2017-548777「ユーザ端末及び無線基地局」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月11日国際公開、WO2017/078023〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)11月1日(優先権主張 平成27年11月2日、平成27年11月4日)を国際出願日とする出願であって、平成30年4月27日に手続補正書が提出され、同年10月3日付けで拒絶理由が通知され、同年11月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月26日付けで拒絶査定されたところ、平成31年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正書が提出されたものである。その後審査官が令和1年6月27日付けで作成した前置報告書に対して、同年10月18日に上申書が提出された。


第2 平成31年4月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月5日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、平成30年11月20日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される

「 システム情報の変更指示に利用される所定の下り制御情報フォーマットの下り制御情報を受信する受信部と、
前記下り制御情報で送信される所定フラグに基づいて、システム情報の変更指示に関する情報の受信を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記所定フラグが第1の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報が前記下り制御情報で直接指示され、前記所定フラグが第2の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報がページングで指示されると判断し、前記所定フラグが第2の値である場合に、前記下り制御情報に含まれる割当て情報及び変調符号化方式(MCS)に基づいて前記システム情報の変更指示に関する情報の受信を制御することを特徴とするユーザ端末。」

との請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)を、

「 システム情報の変更指示に利用される所定の下り制御情報フォーマットの下り制御情報を受信する受信部と、
前記下り制御情報で送信される所定フラグに基づいて、システム情報の変更指示に関する情報の受信を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記所定フラグが第1の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報とEAB(Extended Access Barring)を指示する情報の少なくとも1つが前記下り制御情報で直接指示され、前記所定フラグが第2の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報がページングで指示されると判断し、前記所定フラグが第2の値である場合に、前記下り制御情報に含まれる割当て情報及び変調符号化方式(MCS)に基づいて前記システム情報の変更指示に関する情報の受信を制御することを特徴とするユーザ端末。」

との発明(以下、「本件補正発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:下線は補正箇所を示す。)


2 補正の適否
上記補正は、補正前には所定フラグが第1の値である場合に下り制御情報で直接指示される情報が「前記システム情報の変更指示に関する情報」であったものを、「前記システム情報の変更指示に関する情報とEAB(Extended Access Barring)を指示する情報の少なくとも1つ」と補正することにより、EABを指示する情報のみを下り制御情報で直接指示し、システム情報の変更指示に関する情報を指示しない構成も含むことになった。したがって、上記補正は発明を特定するために必要な事項を限定するものでなく、構成を変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮ということはできない。
また、上記補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明に該当しないことも明らかである。よって、上記補正の目的は特許法17条の2第5項(目的要件)に規定された何れの事項にも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は特許法17条の2第5項(目的要件)の規定に違反するので却下すべきものであるが、更に進め、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1 本件補正について」の項の「本件補正発明」のとおりのものと認める。

(2)引用例1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された「InterDigital, Sony,Intel, Sierra Wireless, NTT Docomo, Qualcomm, Alcatel-Lucent, Alcatel-Lucent Shanghai-Bell, MediaTek, Nokia,WF on Paging for eMTC and UE in CE(表題当審訳:CE(カバレッジ拡張)におけるeMTCとUEに対するページングにおけるWF),3GPP TSG-RAN WG1#82b R1-156286,<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_82b/Docs/R1-156286.zip>,2015年10月11日アップデート」(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「Background
・RAN1#82 Agreements
(中略)
- On indicators for system information update, ETWS, and CMAS:
・Option A: Transmit in M-PDCCH
・Option B: Transmit in PDSCH
・FFS if the paging occasion for SI update, ETWS, and/or CMAS is a cell common or not
・FFS additional information (e.g. CFI,TDD configuration) in the associated DCI or paging message
(中略)

Proposal
・One alternative is selected between Alt-1and Alt-2
・Alt-1: (中略)
・Alt-2: in each PO, an RRC idle UE monitors one DCI type
・The DCI include an indicator (e.g.S_flag)
・An indicator (e.g. S_flag) used in the DCI with P-RNTI for paging
- If S_flag=TRUE, the rest of DCI bits carries scheduling information of PDSCH for paging message
- If S_flag=FALSE, the rest of DCI bits carries system information update, ETWS, and CMAS without scheduling information of PDSCH」(当審注:下線は当審により付した。以下同様。)
(当審訳: 背景
・RAN1#82合意事項
(中略)
- システム情報更新、ETWS、及びCMASのインジケータについて:
・ オプションA:M-PDCCHで送信
・ オプションB:PDSCHで送信
・ SI更新、ETWS、及び/又はCMASのためのページングの機会がセル共通であるかどうかは今後の検討課題です
・ 関連するDCI又はページングメッセージにおける追加情報(例えば、CFI、TDD設定)については今後の検討課題です。
(中略)
提案
・Alt-1とAlt-2のいずれかを選択します
・Alt-1:(中略)
・Alt-2:各POで、RRCアイドルUEは1つのDCIタイプを監視します
・ DCIにはインジケーターを含みます(例えば、S_flag)
・ ページング用にP-RNTIを使用するDCIで使用されるインジケーター(例えば、S_flag)
- S_flag = TRUEの場合、残りのDCIビットはページングメッセージのPDSCHのスケジューリング情報を搬送します
- S_flag = FALSEの場合、DCIビットの残りは、PDSCHのスケジューリング情報なしで、システム情報の更新、ETWS、及びCMASを搬送します)

上記記載事項及び当業者の技術常識を考慮すると、引用例1には次の技術事項が記載されている。

a 「提案」のAlt-2によれば、RRCアイドルUEはDCIタイプを監視しており、DCIはページング用にP-RNTIを使用するものであるから、RRCアイドルUEはページング用にP-RNTIを使用するDCIのDCIタイプを監視するRRCアイドルUEといえる。

b DCIにはインジケータであるS_flagが含まれている。

c S_flag=TRUEである場合、残りのDCIビットによりページングメッセージのPDSCHのスケジューリング情報が搬送されるから、DCIによりページングメッセージのPDSCHのスケジューリング情報が搬送されるといえる。また、S_flag=FALSEである場合、DCIによりシステム情報の更新が搬送されるといえる。

以上を総合すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「ページング用にP-RNTIを使用するDCIのDCIタイプを監視するRRCアイドルUEであって、
前記DCIはS_flagを含んでおり、
S_flag=TRUEの場合、DCIによりページングメッセージのPDSCHのスケジューリング情報が搬送され、
S_flag=FALSEの場合、DCIによりシステム情報の更新が搬送される、RRCアイドルUE。」


(3)引用例4の記載事項及び公知技術
原査定の拒絶の理由に引用された「CATT,Remaining issues on paging transmission for Rel-13 low complexity UEs and UEs in enhanced coverage(表題当審訳:リリース13の低複雑度UE及び拡張カバレッジのUEに対するページング送信における残された課題),3GPP TSG-RAN WG1#82b R1-155177,<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_82b/Docs/R1-155177.zip>,2015年9月25日アップデート」(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。

「2 Discussion
(中略)・・・Each PDSCH for one coverage extension level is scheduled by a corresponding M-PDCCH. By this method, the system efficiency and volume of paging message of the MTC system can be improved. However, the overhead is still huge due to multiple M-PDCCH transmission.
Here we propose a paging transmission scheme for MTC UEs as illustrated in Figure 1 to further reduce the overhead. A single DCI is used to schedule multiple PDSCH carrying paging messages for UEs with different coverage extension levels. MCS indications for PDSCH carrying paging messages per coverage enhanced level can be included in the DCI. The M-PDCCH carrying the DCI is repeated according to the maximal coverage extension level to reach all UEs with different coverage levels. 」
(当審訳: 2 検討
(中略)
1つのカバレッジ拡張レベルの各PDSCHは、対応するM-PDCCHによってスケジュールされます。この方法により、MTCシステムのシステム効率とページングメッセージの量を改善できます。ただし、複数のM-PDCCH送信のため、オーバーヘッドは依然として大きくなります。
ここでは、オーバーヘッドをさらに削減するために、図1に示すようなMTC UEのページング送信方式を提案します。単一のDCIを使用して、カバレッジ拡張レベルが異なるUEのページングメッセージを運ぶ複数のPDSCHをスケジュールします。カバレッジ拡張レベルごとにページングメッセージを搬送するPDSCHのMCS指示は、DCIに含めることができます。 DCIを搬送するM-PDCCHは、最大カバレッジ拡張レベルに従って繰り返され、異なるカバレッジレベルを持つすべてのUEに到達します。)

引用例4はMTCシステムにおけるUEへのページング送信について記載されたものであり、上記記載から「MTC UEへのページング送信方式において、ページングメッセージを搬送するPDSCHのMCS指示を、DCIに含める。」ことは公知の技術(以下、「公知技術」という。)であると認められる。

(4) 対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比すると、

a 引用発明において、「S_flag=FALSEの場合、DCIによりシステム情報の更新が搬送され」ており、システム情報の更新によりシステム情報が変更することを踏まえれば「DCI」はシステム情報の変更指示に利用されているということができる。そして、引用発明において監視される「DCIタイプ」は技術常識を考慮すれば「DCI」のフォーマットといえ、「DCI」はDownlink Control Infomation(下り制御情報)の略号であることを踏まえれば、引用発明における「DCI」は本件補正発明における「システム情報の変更指示に利用される所定の下り制御情報フォーマットの下り制御情報」に対応するといえる。
引用発明における「RRCアイドルUE」は「DCIタイプを監視」しているからDCIを受信する受信部を有しているといえる。
したがって、引用発明と本件補正発明とは「システム情報の変更指示に利用される所定の下り制御情報フォーマットの下り制御情報を受信する受信部」を有している点で共通している。

b 引用発明の「S_flag」は「DCI」に含まれる情報であり、本件補正発明の下り制御情報で送信される「所定フラグ」に相当する。
引用発明の「システム情報の更新」は、更新によってシステム情報が変更されることから、本件補正発明の「システム情報の変更指示に関する情報」に含まれるといえる。
引用発明では、S_flag=FALSEの場合にシステム情報の更新が搬送されており、RRCアイドルUEはS_flagに基づいてシステム情報の更新の受信を制御しているといえ、当該制御を行うために制御部を有しているということができる。
したがって、引用発明と本件補正発明とは「前記下り制御情報で送信される所定フラグに基づいて、システム情報の変更指示に関する情報の受信を制御する制御部」を有している点で共通している。

c 本件補正発明の「前記システム情報の変更指示に関する情報とEAB(Extended Access Barring)を指示する情報の少なくとも1つが前記下り制御情報で直接指示され」る構成には、「前記システム情報の変更指示に関する情報」のみ下り制御情報で直接指示される構成を含んでいる。
引用発明の「DCIによりシステム情報の更新が搬送される」とは、システム情報の更新がDCIにより直接指示されることといえ、このときの場合分けの条件である「S_flag=FALSEの場合」は、本件補正発明の「所定フラグが第1の値である場合」に相当する。
そうしてみると、引用発明の「S_flag=FALSEの場合、DCIによりシステム情報の更新が搬送される」ことは本件補正発明の「前記所定フラグが第1の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報とEAB(Extended Access Barring)を指示する情報の少なくとも1つが前記下り制御情報で直接指示され」ることに含まれる。

d 技術常識に鑑みれば、引用発明におけるPDSCHの「スケジューリング情報」は「割当て情報」ということができる。そうしてみると、引用発明においてスケジューリング情報が搬送される「S_flag=TRUEの場合」は、本件補正発明において割当て情報が搬送される「所定フラグが第2の値である場合」に相当する。本件補正発明は、所定フラグが第2の値である場合、「前記システム情報の変更指示に関する情報がページングで指示されると判断」することから「システム情報の変更指示に関する情報」はページングにより搬送されることは明らかであり、「前記下り制御情報に含まれる割当て情報及び変調符号化方式(MCS)に基づいて前記システム情報の変更指示に関する情報の受信を制御する」から、当該ページングの受信が割当て情報と変調符号化方式(MCS)によって制御されるといえる。これに対して、引用発明も「S_flag=TRUEの場合」、「DCIによりページングメッセージのPDSCHのスケジューリング情報が搬送され」、「ページングメッセージ」は「ページング」により搬送される情報であることは明らかであることから、引用発明においてページングが搬送され、当該ページングがDCIに含まれるスケジューリング情報によって受信制御されるということができる。
そうしてみると、引用発明と本件補正発明とは「所定フラグが第2の値である場合」にページングが搬送され、下り制御情報に含まれる割当て情報に基づいて、前記ページングの受信が制御される点で共通するということができる。

e 引用発明における「RRCアイドルUE」はUE(ユーザ装置)であるから、本件補正発明の「ユーザ端末」に含まれる。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
システム情報の変更指示に利用される所定の下り制御情報フォーマットの下り制御情報を受信する受信部と、
前記下り制御情報で送信される所定フラグに基づいて、システム情報の変更指示に関する情報の受信を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記所定フラグが第1の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報とEAB(Extended Access Barring)を指示する情報の少なくとも1つが前記下り制御情報で直接指示され、前記所定フラグが第2の値である場合にページングが搬送され、前記下り制御情報に含まれる割当て情報に基づいて前記ページングの受信を制御することを特徴とするユーザ端末。

(相違点1)
本件補正発明では、所定フラグが第2の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報がページングで指示されると判断するのに対して、引用発明では当該構成が明らかではなく、また本件補正発明では、下り制御情報に含まれる割当て情報に基づく受信の制御が、システム情報の変更指示に関する情報に対する受信の制御であるのに対して引用発明では当該構成が明示されていない点。

(相違点2)
本件補正発明では、前記下り制御情報に割当て情報に加えて「変調符号化方式(MCS)」も含まれ、当該変調符号化方式(MCS)にも基づいて前記システム情報の変更指示に関する情報の受信が制御されているのに対して、引用発明では明らかではない点。

上記相違点1について検討する。
引用発明ではS_flag=TRUEの場合にシステム情報の更新がどのように搬送されるか明示されていないものの、MTCへのページングについて記載された引用例1にはRAN1#82の「合意事項」に、オプションBとしてシステム情報の更新の指示がPDSCHで送信されることが記載されている。(上記「(2)引用例1の記載事項及び引用発明」参照。)
そうしてみると、引用発明の前提となっている上記合意事項を踏まえれば、引用発明においてS_flag=TRUEの場合、PDSCHによりページングメッセージが伝送されることから、当該ページングメッセージによりシステム情報の更新を搬送する構成とすることは当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
そして、引用発明においてS_flag=TRUEの場合、システム情報の更新が搬送されるページングメッセージを受信するのであるから、RRCアイドルUEはシステム情報の更新がページングメッセージで指示されると判断しているといえ、また、DCIにより搬送されるスケジューリング情報は、システム情報の更新の受信を制御しているといえる。
したがって、上記相違点1とした、所定フラグが第2の値である場合に、前記システム情報の変更指示に関する情報がページングで指示されると判断し、また、下り制御情報に含まれる割当て情報に基づく受信の制御が、システム情報の変更指示に関する情報に対する受信の制御である本件補正発明の構成は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

上記相違点2について検討する。
「MTC UEへのページング送信方式において、ページングメッセージを運ぶPDSCHのMCS指示を、DCIに含める」ことは公知技術である。そうしてみると、公知技術と同様にMTC UEであるRRCアイドルUEにページングを行っている引用発明においても、MSC指示を行わなければならないことは明らかであるから、公知技術を適用してMCS指示をDCIに含めるように構成し、当該MCS指示に基づいてシステム情報の更新の受信を制御することは当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
したがって、相違点2とした、前記下り制御情報に割当て情報に加えて「変調符号化方式(MCS)」も含み、当該変調符号化方式(MCS)にも基づいて前記システム情報の変更指示に関する情報の受信が制御される構成は、当業者が引用発明及び公知技術から容易に想到できたものである。

そして、補正後の発明が奏する効果も、引用発明及び公知技術から、容易に予測できる範囲内のものである。


なお、審判請求人は令和1年10月18日に提出した上申書において、「前記所定フラグが第1の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報とEAB(Extended Access Barring)を指示する情報の少なくとも1つが前記下り制御情報で直接指示され」を「前記所定フラグが第1の値である場合に前記システム情報の変更指示に関する情報とEAB(Extended Access Barring)を指示する情報の両方が前記下り制御情報で直接指示され」とする補正案を提示しているが、本願の優先日前の2015年10月11日にアップロードされた「Nokia Networks [RAN1],[DRAFT] LS on system information broadcast and paging[online],3GPP TSG RAN WG1 #82b R1-156370,<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_82b/Docs/R1-156370.zip>」にRAN1#82bisの合意事項として、「If S_flag=FALSE, the rest of DCI bits carries system information update, ETWS,CMAS and EAB without scheduling information of PDSCH」と記載されているように、システム情報の更新とEABをDCIにより直接指示することが開示されていることから、上記補正案による発明が進歩性を有するということにはならない。


4 結語
上記のとおり本件補正は特許法17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。また、仮に本件補正が補正の目的要件に違反していなかったとしても、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合せず、特許法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成31年4月5日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2」の「1 本件補正について」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に対して上記「第2」の「3 独立特許要件について」の項中の(2)及び(3)に記載した引用例1と4が引用されている。

3 引用発明及び公知技術
引用発明及び公知技術は、上記「第2」の「3 独立特許要件について」の項中の「(2)引用例1の記載事項及び引用発明」及び「(3)引用例4の記載事項及び公知技術」の項で認定したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は本件補正発明から当該補正に係る構成を省いたものである。そうすると、本願発明の構成から当該補正に係る構成を除く本件補正発明が、上記「第2」の「3 独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-02-12 
結審通知日 2020-02-18 
審決日 2020-03-02 
出願番号 特願2017-548777(P2017-548777)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 572- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 相澤 祐介
山本 章裕
発明の名称 ユーザ端末及び無線基地局  
代理人 守屋 芳隆  
代理人 天田 昌行  
代理人 青木 宏義  

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